IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171282
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】雑草抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20231124BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A01M21/00 A
C08L1/02 ZNM
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076858
(22)【出願日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2022083136
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】田村 直之
(72)【発明者】
【氏名】金野 晴男
(72)【発明者】
【氏名】杉村 裕介
【テーマコード(参考)】
2B121
4J002
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121BB28
2B121BB31
2B121EA25
2B121FA01
2B121FA12
4J002AB011
4J002AB031
4J002GT00
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】無害で、作業効率もよく、使用後の処分も容易で、かつ腐敗による悪臭を生じにくく、土壌組成への影響が小さく、生分解性のある雑草抑制剤と雑草の抑制方法の提供。
【解決手段】セルロース微細繊維を含有する雑草抑制剤とする。セルロース微細繊維は化学変性されていることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース微細繊維を含有することを特徴とする雑草抑制剤。
【請求項2】
前記セルロース微細繊維が化学変性されていることを特徴とする、請求項1に記載の雑草抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の雑草抑制剤を使用することを含む、雑草の抑制方法。
【請求項4】
植物性バイオマス材料を前記雑草抑制剤と共に散布することを含む、請求項3に記載の雑草の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草の生育を抑制する雑草抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、除草対策には様々な除草剤が使用されてきたが、化学薬品を使用する除草剤は人畜に対する毒性を少なからず有していることが知られている。
【0003】
一方、人体や環境に対して比較的安全な除草対策として、フィルム状(被覆型)マルチ(防草シート)の利用があるが、これらは、敷設場所が限られるうえ、敷設に多大の手間がかかる。さらにマルチシートは、一般に生分解性がなく、廃棄時の手間とコストがかかる問題もある。そこで、無害で、作業効率もよく、さらに使用後の処分も容易な雑草抑制剤として、紙の繊維や製紙スラッジを使用した雑草抑制剤が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008―271948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において雑草抑制剤として用いられる製紙工場の抄紙工程で出る製紙スラッジには、澱粉などの成分が含まれているため、腐敗が激しく、時間経過とともに悪臭が生じるという問題があった。また製紙スラッジには抄紙に使用する炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどの無機分が多量に含まれており、土壌散布後に分解されず、土壌の組成を大きく変える可能性が懸念される。さらに製紙スラッジには製紙の際に使用される紙力剤、歩留剤など生分解性のない成分も含まれており、土壌への影響が懸念される。
【0006】
そこで本発明は、無害で、作業効率もよく、使用後の処分も容易で、かつ腐敗による悪臭を生じにくく、土壌組成への影響が小さく、生分解性のある雑草抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下を提供する。
(1)セルロース微細繊維を含有することを特徴とする雑草抑制剤。
(2)前記セルロース微細繊維が化学変性されていることを特徴とする、(1)に記載の雑草抑制剤。
(3)(1)又は(2)に記載の雑草抑制剤を使用することを含む、雑草の抑制方法。
(4)植物性バイオマス材料を前記雑草抑制剤と共に散布することを含む、(3)に記載の雑草の抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無害で、作業効率もよく、使用後の処分も容易で、かつ腐敗による悪臭を生じにくく、土壌組成への影響が小さく、生分解性のある雑草抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の雑草抑制剤について説明する。
【0010】
(雑草)
本発明において抑制対象の雑草としては、下記のものに限らないが、例えば、一年生雑草ではノビエ類、カヤツリグサ、メヒシバ、アカザ、ハコベ、ナズナ、スズメノカタビラなどが挙げられ、多年生雑草では、ススキ、カタバミ、クズ、イタドリ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、ヨシ、ササ類、スギナ、マツバイなどが挙げられる。本発明の雑草抑制剤は上記のような雑草の出芽および成長を抑制できる。
【0011】
(セルロース微細繊維)
本発明に用いるセルロース微細繊維は、セルロースを原料とする微細繊維である。セルロース微細繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、2nm~10μm程度である。セルロース微細繊維は、例えば、1μm~10μm程度、好ましくは3μm~7μm程度の平均繊維径となるように解繊されたものであってもよいし、また、2nm~1μm、好ましくは3nm~500nm、より好ましくは3nm~100nm、さらに好ましくは3nm~50nm程度の平均繊維径となるように微細に解繊されたものであってもよい。セルロース微細繊維の平均繊維径および平均繊維長は、ABB株式会社製ファイバーテスターやバルメット社製フラクショネータ、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を繊維径の大きさによって適宜選択し用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径および繊維長を平均することによって得ることができる。セルロース微細繊維は、セルロース原料を解繊することによって製造することができる。
【0012】
本発明に用いるセルロース微細繊維のアスペクト比は、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。アスペクト比の上限は特に限定されないが、1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0013】
セルロース原料は、セルロースを含んでいればよく、特に限定されないが、例えば、植物由来のセルロース原料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、晒クラフトパルプ(BKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等))、動物(例えばホヤ類)由来のセルロース原料、藻類由来のセルロース原料、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))由来のセルロース原料、微生物産生物由来のセルロース原料等が挙げられる。セルロース原料としては、これらのいずれかであってもよいし2種類以上の組み合わせであってもよいが、好ましくは植物又は微生物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)であり、より好ましくは植物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)である。
【0014】
セルロースは、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性を行うことが可能である。本発明においては、解繊の進行を促進するという観点から、化学変性して得られたセルロース原料(化学変性セルロース)を解繊して製造された化学変性セルロース微細繊維を用いることが好ましい。
【0015】
化学変性としては、セルロースにアニオン性基を導入するアニオン変性が好ましい。アニオン変性とは、具体的には、酸化または置換反応によってピラノース環にアニオン性基を導入することである。本発明において前記酸化反応とはピラノース環のC6位をカルボキシ基に酸化する反応をいう。また、本発明において置換反応とは、当該酸化以外の置換反応によってピラノース環にアニオン性基を導入する反応である。アニオン変性としては、酸化(カルボキシ化)、カルボキシアルキル化(例えばカルボキシメチル化)、エステル化等が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシ化)と、カルボキシメチル化がより好ましい。
【0016】
使用できるセルロース微細繊維としては、TEMPO酸化セルロース微細繊維、オゾン酸化セルロース微細繊維、カルボキシアルキル化セルロース微細繊維、カルボキシメチル化セルロース微細繊維、リン酸エステル化セルロース微細繊維、亜リン酸エステル化セルロース微細繊維、カチオン化セルロース微細繊維、スルホン化セルロース微細繊維、ザンテート化セルロース微細繊維、機械解繊セルロース微細繊維等を挙げることができ、特にTEMPO酸化セルロース微細繊維、カルボキシメチル化セルロース微細繊維がより好ましい。
【0017】
(化学変性)
(酸化)
化学変性セルロースとして、アニオン変性セルロースの一種である酸化(カルボキシ化)したセルロースを用いることができる。酸化セルロース(「カルボキシ化セルロース」とも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法で酸化(カルボキシ化)することにより得ることができる。酸化(カルボキシ化)方法の一例として、セルロース原料を、N-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシ基(-COOH)またはカルボキシレート基(-COO)とを有するセルロース繊維を得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
【0018】
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であればいずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)およびその誘導体(例えば4-ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。N-オキシル化合物の使用量は、セルロース原料を酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.01~10mmolが好ましく、0.01~1mmolがより好ましく、0.01~0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1~4mmol/L程度がよい。
【0019】
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
【0020】
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。酸化剤の適切な使用量は、例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.5~500mmolが好ましく、0.5~50mmolがより好ましく、2.5~25mmolがさらに好ましい。また、例えば、N-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
【0021】
セルロース原料の酸化工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。よって、反応温度は4~40℃が好ましく、また15~30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシ基が生成するため、反応液のpHが低下する。酸化反応を効率よく進行させるために、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を随時反応系中に添加して、反応液のpHを9~12、好ましくは10~11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5~6時間、例えば、0.5~4時間程度である。
【0022】
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後にろ別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する塩による反応阻害を受けることなく、セルロース原料に効率よくカルボキシ基を導入することができる。
【0023】
酸化(カルボキシ化)方法の別の例として、オゾン処理により酸化する方法が挙げられるが、本発明においては、TEMPOにより酸化(TEMPO酸化)する方法により得られた酸化セルロースを解繊して得られたTEMPO酸化セルロース微細繊維を使用することが好ましい。
【0024】
酸化セルロースを解繊して得られる酸化セルロース微細繊維に含まれる、セルロース微細繊維の絶乾質量に対するカルボキシ基の量は、好ましくは0.6mmol/g以上、より好ましくは0.8mmol/g以上、更に好ましくは1.0mmol/g以上である。上限は、好ましくは2.2mmol/g以下、より好ましくは2.0mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。従って、0.6mmol/g~2.2mmol/gが好ましく、0.8mmol/g~2.0mmol/gがより好ましく、1.0mmol/g~1.8mmol/gが更に好ましい。
【0025】
酸化セルロースのカルボキシ基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整することができる。酸化セルロースのカルボキシ基量と、酸化セルロースを解繊して酸化セルロース微細繊維としたときのカルボキシ基量は通常、同じである。
【0026】
上記の工程で得られる酸化セルロースにおいて、セルロース原料に導入したカルボキシ基は、通常、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩の形態である(これを「塩型」と呼ぶ。)。解繊工程の前に、酸化セルロースのアルカリ金属塩を、ホスホニウム塩、イミダゾリニウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の他のカチオン塩に置換してもよい。置換は、公知の方法で行うことができる。
【0027】
(カルボキシアルキル化)
化学変性セルロースの一例として、アニオン変性セルロースの一種であるカルボキシアルキル化セルロースを用いることができる。好ましくは、カルボキシメチル化セルロースである。カルボキシアルキル化セルロースは公知の方法で得てもよく、また市販品を用いてもよい。セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシアルキル置換度は0.60未満であることが好ましい。さらにアニオン基がカルボキシメチル基である場合、カルボキシメチル置換度は0.60未満であることが好ましい。当該置換度が0.60以上であると結晶性が低下し、溶解成分の割合が増加するため、微細繊維としての機能が失われる。またカルボキシアルキル置換度の下限値は0.01以上が好ましい。操業性を考慮すると当該置換度は0.02~0.50であることが特に好ましく、0.10~0.30であることが更に好ましい。このようなカルボキシアルキル化セルロースを製造する方法の一例として、以下の工程を含む方法が挙げられる。当該変性は置換反応による変性である。カルボキシメチル化セルロースを例にして説明する。
【0028】
i)発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0~70℃、好ましくは10~ 60℃、かつ反応時間15分~8時間、好ましくは30分~7時間、マーセル化処理する工程、
ii)次いで、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05~10.0倍モル添加し、反応温度30~90℃、好ましくは40~80℃、かつ反応時間30分~10時間、好ましくは1時間~4時間、エーテル化反応を行う工程。
【0029】
発底原料としては前述のセルロース原料を使用できる。溶媒としては、3~20質量倍の水または低級アルコール、具体的には水、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、または2種以上の混合媒体を使用できる。低級アルコールを混合する場合、その混合割合は60~95質量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5~20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用できる。
【0030】
前述のとおり、セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は0.60未満であり、0.01以上0.60未満であることが好ましい。セルロースにカルボキシメチル置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カルボキシメチル置換基を導入したセルロースは容易に解繊することができる。なお、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換基が0.01より小さいと、解繊が十分でない場合がある。カルボキシメチル化セルロースにおける置換度と微細繊維としたときの置換度は通常、同じである。
【0031】
本発明では、上記の工程で得られるカルボキシアルキル化セルロースにおいて、セルロース原料に導入したカルボキシアルキル基は、通常、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩の形態である(これを「塩型」と呼ぶ。)。解繊工程の前に、カルボキシアルキル化セルロースのアルカリ金属塩を、ホスホニウム塩、イミダゾリニウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の他のカチオン塩に置換してもよい。置換は、公知の方法で行うことができる。
【0032】
(エステル化)
化学変性セルロースの一例として、アニオン変性セルロースの一種であるエステル化したセルロースを用いることもできる。一例として、リン酸エステル化したセルロースの製造方法としては、セルロース原料にリン酸系化合物の粉末や水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸系化合物の水溶液を添加する方法等が挙げられる。リン酸系化合物としてはリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらのエステルが挙げられる。これらは塩の形態であってもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由からリン酸基を有する化合物が好ましい。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらは1種、あるいは2種以上を併用してリン酸基を導入することができる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。特にリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。また、反応を均一に進行できかつリン酸基導入の効率が高くなることから前記リン酸系化合物は水溶液として用いることが望ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましいが、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3~7が好ましい。
【0033】
リン酸エステル化セルロースの製造方法の具体例として、以下の方法を挙げることができる。固形分濃度0.1~10質量%のセルロース原料の懸濁液に、リン酸系化合物を撹拌しながら添加してセルロースにリン酸基を導入する。セルロース原料を100質量部とした際に、リン酸系化合物の添加量はリン元素量として、0.2~500質量部であることが好ましく、1~400質量部であることがより好ましい。リン酸系化合物の割合が前記下限値以上であれば、セルロース微細繊維の収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えると収率向上の効果は頭打ちとなるので、コスト面から好ましくない。
【0034】
リン酸系化合物に加えて他の化合物の粉末や水溶液を混合してもよい。他の化合物としては、特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。ここでの「塩基性」は、フェノールフタレイン指示薬の存在下で水溶液が桃~赤色を呈すること、または水溶液のpHが7より大きいことと定義される。塩基性を示す窒素含有化合物としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。中でも低コストで扱いやすい尿素が好ましい。他の化合物の添加量はセルロース原料の固形分100質量部に対して、2~1000質量部が好ましく、100~700質量部がより好ましい。反応温度は0~95℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、1~600分程度であり、30~480分がより好ましい。エステル化反応の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率が良好となる。得られたリン酸エステル化セルロース懸濁液を脱水した後、セルロースの加水分解を抑える観点から、100~170℃で加熱処理することが好ましい。さらに、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下、好ましくは110℃以下で加熱し、水を除いた後、100~170℃で加熱処理することが好ましい。
【0035】
リン酸エステル化されたセルロースのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001以上0.40未満であることが好ましい。セルロースにリン酸基置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、リン酸基を導入したセルロースは容易に解繊することができる。グルコース単位当たりのリン酸基置換度が0.001より小さいと、十分に解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのリン酸基置換度が0.40より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、微細繊維として得られなくなる場合がある。解繊を効率よく行なうために、上記で得たリン酸エステル化されたセルロース原料は煮沸した後、冷水で洗浄する等の洗浄処理がなされることが好ましい。これらのエステル化による変性は置換反応による変性である。リン酸エステル化セルロースにおける置換度と微細繊維としたときの置換度は通常、同じである。
【0036】
本発明では、上記の工程で得られるリン酸エステル化セルロースにおいて、セルロース原料に導入したリン酸基は、通常、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩の形態である(これを「塩型」と呼ぶ。)。解繊工程の前に、リン酸エステル化セルロースのアルカリ金属塩を、ホスホニウム塩、イミダゾリニウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の他のカチオン塩に置換してもよい。置換は、公知の方法で行うことができる。
【0037】
(解繊)
セルロース原料または化学変性されたセルロース原料(化学変性セルロース)を解繊する装置は特に限定されない。例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式、などの解繊装置や、リファイナー、キャビテーション噴流装置などを用いて原料(通常は原料の水分散体)にせん断力を印加することが好ましい。特に、7MPa程度の圧力で効率よく解繊できるキャビテーション噴流装置や、原料(通常は水分散体)に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。また、解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、予備処理を施すことも可能である。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて行うことができる。解繊装置での処理(パス)回数は、1回でもよいし2回以上でもよく、2回以上が好ましい。
【0038】
解繊を行う際には通常、まず、分散媒にセルロース原料または化学変性セルロースを分散して分散体を調製する。分散媒は、セルロース原料や化学変性セルロースを分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒、それらの混合溶媒が挙げられる。
【0039】
分散体中のセルロース原料または化学変性セルロースの固形分濃度は、通常は0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。これにより、固形分の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は、通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
【0040】
解繊に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
【0041】
本発明の雑草抑制剤に用いるセルロース微細繊維は、固形分0.5質量%の水分散液とした際に、B型粘度(25℃、60rpm)で10mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは100mPa・s、さらに好ましくは500mPa・s以上であることが好ましい。特に100mPa・s以上の粘度を有するセルロース微細繊維は保水性が高く、微細繊維に含まれる水が土壌にすぐには漏出しにくいので、ゲル状の微細セルロース繊維が土壌の上に長い期間保持されやすく、雑草抑制効果がより長く維持できる。
【0042】
(雑草抑制剤)
本発明の雑草抑制剤は、セルロース微細繊維を含むものであり、本発明の雑草抑制剤を土地に散布すると、土壌の上に被膜ができて日光と二酸化炭素を遮断し、雑草の出芽、生長を抑制することができる。また、セルロース微細繊維は水分を保持しやすいため、植物に水分が供給されにくくなり、雑草抑制効果を発現できる。また、セルロース微細繊維は生分解性材料で構成されており、土壌組成への影響が小さい。さらに、セルロース微細繊維はセルロースの結晶化度が高いため腐敗による悪臭を生じにくい。
【0043】
本発明の雑草抑制剤を土壌に散布した後に形成される被膜は、被膜の乾燥とともに雑草の根を巻き込んで強く収縮するため、雑草抑制だけでなく除草の効果も得られる。収縮した乾燥物は回収して廃棄してもよいし、時間の経過と共に微生物によって分解されて最終的には二酸化炭素と水に分解するため、土壌に混ぜ込んでもよい。必要な時期に再度散布を行うことで継続的に雑草を抑制することができる
【0044】
本発明の雑草抑制剤におけるセルロース微細繊維の濃度としては、固形分濃度が0.1~10質量%となる量が好ましく、0.2~3質量%がより好ましい。尚、ここで言う固形分濃度とは、雑草抑制剤全体の質量に対するセルロース微細繊維の乾燥質量%である。上記濃度の範囲であることで、必要量の雑草抑制剤を散布するのに適度な水分量と適度な粘度となり、散布の効率が良い。
【0045】
本発明の雑草抑制剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記セルロース微細繊維以外にも種々添加剤を含んでよい。
【0046】
本発明の雑草抑制剤の使用量は特に限定されないが、特に効果的な使用量は、1mの土壌にセルロース微細繊維の固形分量が0.1~100gになるように均一に散布することが望ましい。使用量が多すぎると散布に時間がかり、コストもかかるため、好ましくない。使用量が少なすぎると雑草抑制効果を発揮し難い。
【0047】
本発明の雑草抑制剤の散布方法としては、スプレー、高圧洗浄機等の器具を使ってもよいし、ひしゃく等で必要箇所に撒いてもよい。さらにセルロース微細繊維の散布前後で農薬タイプの雑草抑制剤を使用することも可能である。
【0048】
(植物性バイオマス材料)
本発明の雑草抑制剤は、植物性バイオマス材料と共に散布すると効果的である。散布の順番は問わず、雑草抑制剤と植物性バイオマス材料を混合してから散布してもよいし、片方ずつを順に散布してもよいが、強固な被膜が形成されるという理由で、両者を先に混合してから散布するか、植物性バイオマス材料を散布した後に雑草抑制剤を散布することが好ましい。植物性バイオマス材料とは、生物資源のうち植物を起源とするものであり、生分解性があるものである。例えば、農林水産物、稲わら、もみがら、食品廃棄物、木くず、落ち葉枯れ木、麦わら、草刈り後の雑草、農業残渣物などがその例として挙げられるが、この限りではない。
【0049】
本発明の雑草抑制剤の使用場所は、雑草の生えるあらゆる土地が対象となり、特に限定されない。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
(カルボキシ基量の測定方法)
酸化セルロースにおけるカルボキシ基量は以下のようにして測定した。酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定した。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いてカルボキシ基量を算出した:
カルボキシ基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕
【0052】
(カルボキシメチル置換度の測定方法)
1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。
2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、塩型のカルボキシメチル化(CM化)セルロースを水素型CM化セルロースにした。
3)水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。
4)80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。
5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定した。
6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出した:
A=[(100×F’-(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのHSOのファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
【0053】
(平均繊維径、アスペクト比の測定方法)
セルロース微細繊維の平均繊維径および平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)により求めた。アスペクト比は下記の式により算出した。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0054】
(B型粘度の測定方法)
TV-10型粘度計(東機産業社)を用いて、所定の濃度のセルロース微細繊維の水分散液のB型粘度を、25℃、60rpmの条件で測定した。
【0055】
(製造例1)
(酸化セルロース微細繊維の製造)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mgと臭化ナトリウム514gを溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物を塩酸を用いて酸性化処理した後、ガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(酸化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシ基量は1.6mmol/gであった。
【0056】
上記の工程で得られた酸化セルロースを水で2.5%(w/v)に調整し、7MPaのキャビテーション噴流装置で10回処理して、酸化セルロース微細繊維1の水分散液を得た。得られた酸化セルロース微細繊維1は、平均繊維径が15nm、アスペクト比が262であった。
【0057】
(製造例2)
(カルボキシメチル化セルロース微細繊維の製造)
回転数を100rpmに調節した5L容の二軸ニーダーに、イソプロパノール(IPA)1089質量部と、水酸化ナトリウム31質量部を水121質量部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量で200質量部仕込んだ。30℃で60分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつモノクロロ酢酸ナトリウム117質量部を添加し、30℃で30分間撹拌した後、30分かけて70℃に昇温し、70℃で60分間カルボキシメチル化反応をさせた。マーセル化反応時及びカルボキシメチル化反応時の反応媒中の水の割合は、10質量%である。反応終了後、中和し、65%含水メタノールで洗浄し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.27のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。なお、カルボキシメチル置換度の測定方法は、先述の通りである。
【0058】
得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を水に分散し、2.5%(w/v)水分散液とした。これを、7MPaのキャビテーション噴流装置で30回処理し、カルボキシメチル化セルロース微細繊維1の水分散液を得た。得られたカルボキシメチル化セルロース微細繊維1は、平均繊維径が24nm、アスペクト比が87であった。
【0059】
(製造例3)
製造例1で得られた酸化セルロースを、水で2.0%(w/v)に調整し、ラボリファイナー(相川鉄工株式会社製)で2回処理し、酸化セルロース微細繊維2の水分散液を得た。得られた酸化セルロース微細繊維2は、平均繊維径が5μm、アスペクト比が20であった。
【0060】
(製造例4)
製造例2で得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を水に分散し、2.0%(w/v)水分散液とした。これを、リファイナーで2回処理し、カルボキシメチル化セルロース微細繊維2の水分散液を得た。得られたカルボキシメチル化セルロース微細繊維2は、平均繊維径が6μm、アスペクト比が38であった。
【0061】
(実施例1、比較例1)
まず、雑草が茂っている土地約0.25mを第1区画(実施例1)とし、第1区画に隣り合う土地約0.25mを第2区画(比較例1)とし、両区画に生えている雑草をすべて抜いて除去した。次に、製造例1の酸化セルロース微細繊維1の水分散液を0.5質量%に水で希釈し(B型粘度:700mPa・s)、9月第3週に、第1区画に対して、1m当たり680mL(酸化セルロース微細繊維の固形分として1m当たり3.4g)を、霧吹き機を用いて340g/分の流量で0.5分間散布した。一方、第2区画には、何も散布しなかった。そして、散布から2か月後に、第1区画及び第2区画における雑草の生育状況を調査したところ、この雑草抑制剤を散布した第1区画には雑草がほとんど生育していないのに対し、第2区画には雑草が多く繁茂していた。第1区画に散布した雑草抑制剤のゲルは乾燥被膜となり、悪臭もなく、雑草の根を巻き込んで小さく収縮していた。
【0062】
(実施例2、比較例2)
実施例1、比較例1と同様に、第3区画(実施例2)と第4区画(比較例2)とを設定した。また、酸化セルロース微細繊維1に代えて、製造例2で得られたカルボキシメチル化セルロース微細繊維1の水分散液を0.5質量%に希釈したもの(B型粘度:550mPa・s)を用いたこと以外は実施例1および比較例1とそれぞれ同様にして行ったところ、第3区画(実施例2)には雑草がほとんど生育していないのに対し、第4区画(比較例2)には雑草が多く繁茂していた。第3区画における雑草抑制剤の被膜の状態は、実施例1と同様であった。
【0063】
(実施例3~4、比較例3~4)
実施例1と同様に、第5区画(実施例3)、第6区画(比較例3)、第7区画(実施例4)、第8区画(比較例5)を設定して雑草を除去し、製造例1の酸化セルロース微細繊維1の水分散液(0.5質量%濃度)を使用した。2月第4週に、第5区画に対して、1m当たり5L(酸化セルロース微細繊維の固形分として1m当たり25g)を、電動噴霧器(マキタ社製、型番MUS156D)を用いて5g/分の流量で1.25分間散布した。第6区画には、何も散布しなかった。第7区画には、区画表層全体を被覆するように枯草125gを敷き、その上から第5区画と同じ酸化セルロース微細繊維の水分散液を同様に散布した。第8区画は、酸化セルロース微細繊維の水分散液を散布しなかった以外は第7区画と同様に実施した。散布から3週間後に、各区画における雑草の生育状況を調査したところ、第5区画は雑草抑制剤の被膜がある箇所にはほとんど雑草が生育していなかったが、ひび割れた膜の隙間から雑草が少し生育していた。今回発生した雑草が地下茎で増殖する種の雑草(スギナ)であったため、地下茎が残っている場合には雑草抑制剤の被膜が破れた隙間から成長したと考えられる。一方、何も散布していない第6区画は雑草が繁茂していた。第7区画は枯草と微細セルロース繊維によって非常に強固な被膜が形成されており、雑草がほとんど生育していなかった。第8区画は枯草の隙間を押しのけるような形で雑草が生育しており、第5区画よりも雑草の量は多かった。
【0064】
(実施例5、比較例5)
実施例3、比較例3と同様に、第9区画(実施例5)と第10区画(比較例5)とを設定した。また、酸化セルロース微細繊維1に代えて、製造例3で得られた酸化セルロース微細繊維2の水分散液を0.5質量%に希釈したもの(B型粘度:525mPa・s)を用いたこと以外は実施例3および比較例3とそれぞれ同様にして行ったところ、第9区画(実施例5)には雑草がほとんど生育していないのに対し、第10区画(比較例5)には雑草が多く繁茂していた。
【0065】
(実施例6、比較例6)
実施例3、比較例3と同様に、第11区画(実施例6)と第12区画(比較例6)とを設定した。また、酸化セルロース微細繊維1に代えて、製造例4で得られたカルボキシメチル化セルロース微細繊維2の水分散液を0.5質量%に希釈したもの(B型粘度:225mPa・s)を用いたこと以外は実施例3および比較例3とそれぞれ同様にして行ったところ、第11区画(実施例6)には雑草がほとんど生育していないのに対し、第12区画(比較例6)には雑草が多く繁茂していた。