(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171307
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
D06M 13/188 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
D06M13/188
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080242
(22)【出願日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2022081670
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 淳一
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA03
4L033AB01
4L033AC03
4L033BA17
(57)【要約】
【課題】天然由来繊維の問題点である耐水性、耐熱性を向上させ、熱形状記憶能を付与できると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触を向上させ、しかも天然由来繊維を着色させることもない繊維処理剤の提供。
【解決手段】以下の成分(A)及び(B)を含有する繊維処理剤。
(A):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物
(B):水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び(B)を含有する繊維処理剤。
(A):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物
(B):水
【請求項2】
成分(A)が、以下の成分(A1)及び(A2)からなる群より選ばれる1以上の化合物である、請求項1に記載の繊維処理剤。
(A1) ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない芳香族化合物
(A2) ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが11.0MPa1/2以上18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物(芳香族化合物を除く)
【請求項3】
成分(A1)が以下の一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物又はその塩である請求項2に記載の繊維処理剤。
【化1】
〔式中、=Xはメチリデン基又はオキソ基を示し、R
1は水素原子、水酸基、又は置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基若しくはアラルキルオキシ基を示し、R
2はo-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ベンジリデン基、又は置換基を有してもよいアルキレン基を示す。ただしR
2がアリール基を有しない場合は、R
1はアリール基、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基である。〕
【化2】
〔式中、A
1~A
5はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
【請求項4】
成分(A)が安息香酸又はその塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【請求項5】
繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満であり、繊維処理剤中における安息香酸又はその塩の含有量が、安息香酸(酸型)として0.8質量%以上40質量%以下である、請求項4に記載の繊維処理剤。
【請求項6】
繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満であり、繊維処理剤中における安息香酸又はその塩の含有量が、安息香酸(酸型)として5.0質量%以上40質量%以下である、請求項4に記載の繊維処理剤。
【請求項7】
繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下であり、繊維処理剤中における安息香酸又はその塩の含有量が、安息香酸(酸型)として0.8質量%以上40質量%以下である、請求項4に記載の繊維処理剤。
【請求項8】
繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下であり、繊維処理剤中における安息香酸又はその塩の含有量が、安息香酸(酸型)として5.0質量%以上40質量%以下である、請求項4に記載の繊維処理剤。
【請求項9】
成分(A)として二種以上の化合物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然由来繊維に対し、耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能を付与するための繊維処理剤に関し、好適にはかつら、エクステンション等の頭飾製品等繊維製品に用いられる天然由来繊維に対する繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
天然由来繊維は、一般に、合成繊維とは異なって、天然素材から来る自然な風合いや外観を有する。天然由来繊維のうち、再生蛋白質繊維、例えば再生コラーゲン繊維は、酸可溶性コラーゲンあるいは不溶性コラーゲンをアルカリや酵素で可溶化して紡糸原液とし、紡糸ノズルを通して凝固浴に吐出して繊維化することで得られる。
【0003】
しかし、天然由来繊維は、一般的に、合成繊維に比べて親水性が高いため吸水率が高く、多くの水を含んだ状態においては一般に機械的強度が低く、特に再生蛋白質繊維は機械的強度が極めて低い。このため、洗浄時には高い吸水率のために機械強度が著しく低下し、その後の乾燥時に破断するなど、繊維製品としての適性低下につながっている。
【0004】
また、天然由来繊維のうち、再生蛋白質繊維には、耐熱性の低さという問題もあり、例えば、ヘアアイロン等を使用した熱セットにおいては、人毛と同じような高い温度でセットした場合には収縮や縮れを発生し見栄えを損なってしまう。
【0005】
さらに、プラスチック製の合成繊維ではアイロン等による熱セット時における形状がその後の洗浄を経ても記憶され続ける(熱形状記憶能がある)が、天然由来繊維は、アイロン等による熱セット時における形状がその後の一度の洗浄で失われてしまう(熱形状記憶能がない)ため、従来のプラスチック製の合成繊維に比べて形状セットの自由度の観点で劣る部分があった。
【0006】
上記の点が、頭飾製品等繊維製品への天然由来繊維、特に再生蛋白質繊維の普及を妨げる要因となっていた。特に耐水性、すなわち濡れ時の機械強度の低下が与える影響が顕著であった。
一方、天然由来繊維である人毛繊維の分野において、本来熱形状記憶能を有しない人毛繊維に対し、新たに熱形状記憶能を付与するために特定のアルデヒド誘導体とフェノール化合物を作用させる方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、頭飾製品等繊維製品の製造場面においては繊維を強く伸長する場合もあり、特許文献1に記載の技術では処理後の繊維の伸縮性(粘り強さ)が十分とはならないこともあった。このため、伸長時の破断を防ぐため、処理後の繊維の伸縮性を高める要求があった。また、特許文献1に記載の技術では、繊維が着色する場合もあった。
【0009】
したがって本発明は、天然由来繊維における問題点である耐水性、耐熱性を改善し、熱形状記憶能を付与すると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触も向上させ、しかも天然由来繊維を着色させることもない繊維処理剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を進めた結果、カルボキシ基を有し、ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が一定値以下である化合物を含有する組成物を用いて天然由来繊維を処理することによって、繊維内部に浸透した前記化合物のカルボキシ基が天然由来繊維中の金属(主として多価金属)に強く配位することで、繊維内部を疎水化しつつ繊維からの前記化合物の漏出も防止されることを見出した。そしてその結果、天然由来繊維における耐水性と乾燥時・湿潤時の両場面での耐熱性が向上し、熱セットにより形状を付与できるのみならず、意外にも、天然由来繊維の伸縮性(粘り強さ)が処理前より向上し、人毛に近い水準まで高めることができること、更には着色も生じないことを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、以下の成分(A)及び(B)を含有する繊維処理剤を提供するものである。
(A):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物
(B):水
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天然由来繊維の問題点である耐水性、耐熱性を向上させ、熱形状記憶能を付与することができると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触を向上させ、しかも天然由来繊維を着色させることもない繊維処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔本発明において処理対象となる繊維〕
本発明の繊維処理剤の処理対象となる繊維は、金属を含有する繊維が好ましく、金属を含有する天然由来繊維又は金属を含有する合成繊維が好ましく、なかでも、金属を含有する天然由来繊維が好ましい。天然由来繊維とは、天然の動植物から採取した繊維、もしくはケラチン、コラーゲン、カゼイン、大豆、落花生、トウモロコシ、絹屑、絹蛋白質(例えば絹フィブロイン)等由来の蛋白質や多糖類等のポリマーやオリゴマーを原料として人工的に製造された繊維をいう。これらのうち、ケラチン、コラーゲン、カゼイン、大豆、落花生、トウモロコシ、絹屑、絹蛋白質(例えば絹フィブロイン)等由来の蛋白質や多糖類等のポリマーやオリゴマーを原料として人工的に製造された繊維が好ましく、ケラチン、コラーゲン、カゼイン、大豆蛋白質、落花生蛋白質、トウモロコシ蛋白質、絹蛋白質(例えば絹フィブロイン)等由来の蛋白質を原料とする再生蛋白質繊維がより好ましく、コラーゲンを原料とする再生コラーゲン繊維、絹フィブロインを原料とする再生絹繊維等の再生蛋白質繊維がより好ましく、再生コラーゲン繊維が更に好ましい。
【0014】
再生コラーゲン繊維は、公知の技術で製造することができ、また、組成もコラーゲン100%である必要はなく、品質改良のための天然あるいは合成ポリマーや添加剤が含まれていてもよい。更には、再生コラーゲン繊維を後加工したものであってもよい。再生コラーゲン繊維の形態としてはフィラメントが好ましい。フィラメントは一般にボビン巻きしたものや箱詰めした状態から取り出される。また、再生コラーゲン繊維の製造工程で乾燥工程から出てきたフィラメントを直接利用することもできる。
【0015】
金属を含有する合成繊維としては、金属処理された合成繊維でもよい。金属を含有する天然由来繊維には、天然の動植物から採取した繊維のように、元来金属を含有しているものも含まれ、この場合には改めて金属を含有させる必要はないが、例えば特開2003-027318号公報に記載の耐水化のためアルミニウム塩処理した繊維等のように、金属塩で処理したものでもよい。
【0016】
〔成分(A):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物〕
成分(A)はハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物である。本発明において、ハンセン溶解度パラメータの水素結合項とは、Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook, CRC Press, Boca Raton FL, 2007を元にしたソフトウェアパッケージHSPiP 4th Edition 4.1.07を用いて、DIYプログラムにおいて25℃で計算されるδH(MPa1/2)(分子間の水素結合によるエネルギー項)をいう。なお、成分(A)が塩である場合の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0017】
成分(A)の化合物としては、以下の(A1)及び(A2)が挙げられる。
(A1) ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない芳香族化合物
(A2) ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが11.0MPa1/2以上18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物(芳香族化合物を除く)
【0018】
成分(A1)の芳香族化合物としては、例えば以下の一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0019】
【0020】
〔式中、=Xはメチリデン基又はオキソ基を示し、R1は水素原子、水酸基、又は置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基若しくはアラルキルオキシ基を示し、R2はo-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ベンジリデン基、又は置換基を有してもよいアルキレン基を示す。ただしR2がアリール基を有しない場合は、R1はアリール基、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基である。〕
【0021】
【0022】
〔式中、A1~A5はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
【0023】
成分(A1)のうち、一般式(1)で表される芳香族化合物としては、以下に示す一般式(1A)、(1B)又は(1C)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
【0025】
〔式中、B1~B4はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、R3はヒドロキシ基、又は下記一般式(1A)-a若しくは(1A)-bで表される基を示す。〕
【0026】
【0027】
〔式中、B5~B9は前記B1~B4と同じ意味を示し、R4は水素原子又はメチル基を示し、nは0~2の整数を示す。〕
【0028】
【0029】
〔式中、D1~D4はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、E1~E5はそれぞれ独立して、D1~D4と同様の基又は一般式(1B)-aで表される基を示す。〕
【0030】
【0031】
〔式中、mは0~4の整数を示す。〕
【0032】
【0033】
〔式中、R6は水素原子又は一般式(1C)-aで表される基を示し、G1及びG2はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール基、炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基若しくはアロイルオキシ基を示す。ただし、R6が水素原子である場合、G1及びG2の少なくとも一方は、置換基を有してもよいアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、アリールアルケニル基若しくはアロイルオキシ基である。〕
【0034】
【0035】
〔式中、J1~J5はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
【0036】
一般式(1A)で表される化合物のうち、R3がヒドロキシ基である化合物としては、2-カルボキシ安息香酸(フタル酸)(ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH:13.4MPa1/2)(以下、各化合物名の後のカッコ内の数値は前述の方法で計算される水素結合項δHを示す)が挙げられる。
一般式(1A)で表される化合物のうち、R3が一般式(1A)-aで表される基である化合物としては、2-(((4-ビニルベンジル)オキシ)カルボニル)安息香酸(7.0MPa1/2)が挙げられる。
一般式(1A)で表される化合物のうち、R3が一般式(1A)-bで表される基である化合物としては、2-((2-(アクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニル)安息香酸(9.1MPa1/2)、2-((2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニル)安息香酸(8.4MPa1/2)が挙げられる。
【0037】
一般式(1B)で表される化合物としては、2-ベンゾイル安息香酸(7.5MPa1/2)、2-(2-メチルベンゾイル)安息香酸(6.9MPa1/2)、2-(3-メチルベンゾイル)安息香酸(6.6MPa1/2)、2-(4-メチルベンゾイル)安息香酸(7.2MPa1/2)、2-(2-クロロベンゾイル)安息香酸(7.1MPa1/2)、2-(3-クロロベンゾイル)安息香酸(6.9MPa1/2)、2-(4-クロロベンゾイル)安息香酸(7.5MPa1/2)、2-(4-(2-(2-(アクリロイルオキシ)エトキシ)エトキシ)ベンゾイル)安息香酸(8.7MPa1/2)が挙げられる。
【0038】
一般式(1C)で表される化合物のうち、R6が水素原子である化合物としては、フェニルこはく酸(15.8MPa1/2)、2,3-ジフェニルこはく酸(11.9MPa1/2)、(+)-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸(10.2MPa1/2)が挙げられる。
一般式(1C)で表される化合物のうち、R6が一般式(1C)-aで表される基である化合物としては、4-オキソ-4-((4-ビニルベンジル)オキシ)ブタン酸(10.1MPa1/2)が挙げられる。
【0039】
その他、一般式(1A)、(1B)及び(1C)のいずれにも包含されないが、一般式(1)に包含される化合物として、3-カルボキシ安息香酸(イソフタル酸)(12.9MPa1/2)、4-カルボキシ安息香酸(テレフタル酸)(13.7MPa1/2)、3-ベンゾイル安息香酸(7.2MPa1/2)、4-ベンゾイル安息香酸(7.9MPa1/2)が挙げられる。各化合物名の後のカッコ内の数値は前述の方法で計算される水素結合項δHである。
【0040】
成分(A1)のうち、一般式(2)で表される芳香族化合物の具体例としては、安息香酸(9.5MPa1/2)、2-メチル安息香酸(8.4MPa1/2)、3-メチル安息香酸(8.0MPa1/2)、4-メチル安息香酸(8.8MPa1/2)、2-エチル安息香酸(7.7MPa1/2)、3-エチル安息香酸(7.4MPa1/2)、4-エチル安息香酸(8.1MPa1/2)、2-プロピル安息香酸(7.0MPa1/2)、3-プロピル安息香酸(6.7MPa1/2)、4-プロピル安息香酸(7.4MPa1/2)、2-イソプロピル安息香酸(6.7MPa1/2)、3-イソプロピル安息香酸(6.5MPa1/2)、4-イソプロピル安息香酸(7.1MPa1/2)、2-n-ブチル安息香酸(6.8MPa1/2)、3-n-ブチル安息香酸(6.5MPa1/2)、4-n-ブチル安息香酸(7.2MPa1/2)、2-tert-ブチル安息香酸(6.1MPa1/2)、3-tert-ブチル安息香酸(5.9MPa1/2)、4-tert-ブチル安息香酸(6.5MPa1/2)、2-ビニル安息香酸(8.0MPa1/2)、3-ビニル安息香酸(7.7MPa1/2)、4-ビニル安息香酸(8.5MPa1/2)、2-アセチル安息香酸(8.6MPa1/2)、3-アセチル安息香酸(8.2MPa1/2)、4-アセチル安息香酸(8.9MPa1/2)、2-メトキシ安息香酸(9.7MPa1/2)、3-メトキシ安息香酸(9.3MPa1/2)、4-メトキシ安息香酸(10.1MPa1/2)、2-クロロ安息香酸(8.7MPa1/2)、3-クロロ安息香酸(8.4MPa1/2)、4-クロロ安息香酸(9.2MPa1/2)、2-ブロモ安息香酸(9.1MPa1/2)、3-ブロモ安息香酸(8.8MPa1/2)、4-ブロモ安息香酸(10.1MPa1/2)等が挙げられる。中でも、4-エチル安息香酸、4-ビニル安息香酸、安息香酸が好ましい。
【0041】
また、成分(A1)の一般式(1)、(2)以外の化合物として、フェニルブタン酸が挙げられる。
【0042】
成分(A2)の化合物としては、2,4-ヘキサジエン酸カリウム(12.5MPa1/2)が挙げられる。
【0043】
成分(A1)の芳香族化合物の前記水素結合項δHは、繊維内部を適度に疎水化する観点から、好ましくは16.0MPa1/2以下、より好ましくは13.5MPa1/2以下、更に好ましくは12.0MPa1/2以下、更に好ましくは10.0MPa1/2以下であり、また、好ましくは3.0MPa1/2以上、より好ましくは4.0MPa1/2以上、更に好ましくは5.0MPa1/2以上である。
【0044】
成分(A2)の化合物の前記水素結合項δHは、繊維内部を適度に疎水化する観点から、好ましくは16.0MPa1/2以下、より好ましくは15.0MPa1/2以下、更に好ましくは14.0MPa1/2以下、更に好ましくは13.0MPa1/2以下であり、また、好ましくは11.0MPa1/2以上、より好ましくは11.5MPa1/2以上、更に好ましくは12.0MPa1/2以上である。
【0045】
以下、成分(A)の種類別に、好ましい成分(A)の含有量を記載する。ここで、本発明において成分(A)の含有量とは、成分(A)が塩の場合は、対応する酸型の含有量をいう。成分(A)の含有量は、繊維処理剤のpH範囲によって異なるが、以下に示す範囲が好ましい。
【0046】
成分(A)のうち特に成分(A1)である安息香酸又はその塩(以下、「成分(A1-1)」と称することがある)については、繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満の場合、処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、繊維処理剤中における成分(A1-1)の含有量は、安息香酸(酸型)として、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上、更により好ましくは15質量%以上、更により好ましくは20質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは35質量%以下である。
【0047】
すなわち、成分(A)が(A1-1)安息香酸又はその塩であって、繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満の場合、本発明の繊維処理剤中における成分(A1-1)の含有量は、前記観点から、安息香酸(酸型)として、好ましくは0.8~90質量%、より好ましくは3.0~80質量%、更に好ましくは5.0~70質量%、更により好ましくは10~50質量%、更により好ましくは15~40質量%、更により好ましくは20~35質量%である。
【0048】
また、成分(A)が(A1-1)安息香酸又はその塩であって、繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下の場合、処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、繊維処理剤中における成分(A1-1)の含有量は、安息香酸(酸型)として、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上、更により好ましくは15質量%以上、更により好ましくは20質量%以上、更により好ましくは25質量%以上、更により好ましくは26質量%以上、更により好ましくは28質量%以上、更により好ましくは30質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、更により好ましくは45質量%以下、更により好ましくは40質量%以下である。
【0049】
すなわち、成分(A)が(A1-1)安息香酸又はその塩であって、繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下の場合、本発明の繊維処理剤中における成分(A1-1)の含有量は、前記観点から、安息香酸(酸型)として、好ましくは0.8~90質量%、より好ましくは3.0~80質量%、更に好ましくは5.0~70質量%、更により好ましくは10~70質量%、更により好ましくは15~50質量%、更により好ましくは20~50質量%、更により好ましくは25~45質量%、更により好ましくは26~45質量%、更により好ましくは28~40質量%、更により好ましくは30~40質量%である。
【0050】
成分(A)のうち、安息香酸又はその塩以外の成分(A1)(以下、「成分(A1-2)」と称することがある)については、繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満の場合、処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、繊維処理剤中における成分(A1-2)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更により好ましくは45質量%以下である。
【0051】
すなわち、成分(A)が(A1-2)安息香酸又はその塩以外の成分(A1)であって、繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満の場合、本発明の繊維処理剤中における成分(A1-2)の含有量は、前記観点から、好ましくは0.1~70質量%、より好ましくは0.2~60質量%、更に好ましくは0.5~50質量%、更により好ましくは1.0~45質量%である。
【0052】
また、成分(A)が(A1-2)安息香酸又はその塩以外の成分(A1)であって、繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下の場合、処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、繊維処理剤中における成分(A1-2)の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更により好ましくは40質量%以下である。
【0053】
すなわち、成分(A)が(A1-2)安息香酸又はその塩以外の成分(A1)であって、繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下の場合、本発明の繊維処理剤中における成分(A1-2)の含有量は、前記観点から、好ましくは1.0~70質量%、より好ましくは2.0~60質量%、更に好ましくは5.0~50質量%、更により好ましくは10~40質量%である。
【0054】
成分(A)が成分(A2)であって、繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満の場合、処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、繊維処理剤中における成分(A2)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である。
【0055】
すなわち、成分(A)が成分(A2)であって、繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満の場合、本発明の繊維処理剤中における成分(A2)の含有量は、前記観点から、好ましくは0.1~60質量%、より好ましくは0.2~50質量%、更に好ましくは0.5~40質量%、更により好ましくは1.0~30質量%である。
【0056】
成分(A)が成分(A2)であって、繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下の場合、処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、繊維処理剤中における成分(A2)の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更により好ましくは40質量%以下である。
【0057】
すなわち、成分(A)が成分(A2)であって、繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下の場合、本発明の繊維処理剤中における成分(A2)の含有量は、前記観点から、好ましくは1.0~70質量%、より好ましくは2.0~60質量%、更に好ましくは5.0~50質量%、更により好ましくは10~40質量%である。
【0058】
また、繊維処理剤中に成分(A)として二種以上の化合物が含まれる場合、成分(A)全体としての溶解度が上昇する傾向がある。このため、成分(A)全体の溶解性を向上して繊維処理剤の濁度を下げ、繊維を均一に処理できるようにし、それによって処理後の繊維表面の感触を向上させる観点から、繊維処理剤には成分(A)として二種以上の化合物を含むことが好ましい。繊維処理剤が成分(A)として二種以上の化合物を含む場合、その少なくとも一種は、好ましくは一般式(2)で表される芳香族化合物であり、より好ましくは安息香酸又はその塩である。成分(A)中に一般式(2)で表される芳香族化合物が含まれる場合は、成分(A)のうち当該化合物の含有量が最も高いことが好ましく、安息香酸又はその塩が含まれる場合は、成分(A)のうち当該化合物の含有量が最も高いことがより好ましい。
【0059】
繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満であり、繊維処理剤が成分(A)として二種以上の化合物を含む場合、全成分(A)中最高濃度の化合物を除いた残る成分(A)の、繊維処理剤中における含有量は、成分(A)全体の溶解性を向上して繊維処理剤の濁度を下げ、繊維を均一に処理できるようにし、それによって処理後の繊維表面の感触を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
【0060】
また、繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下であり、繊維処理剤が成分(A)として二種以上の化合物を含む場合、全成分(A)中最高濃度の化合物を除いた残る成分(A)の、繊維処理剤中における含有量は、成分(A)全体の溶解性を向上して繊維処理剤の濁度を下げ、繊維を均一に処理できるようにし、それによって処理後の繊維表面の感触を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0061】
繊維処理剤のpHがいずれの場合においても、繊維処理剤が成分(A)として二種以上の化合物を含む場合、繊維処理剤中における全成分(A)中最高濃度の化合物に対する、当該化合物を除いた残る成分(A)の質量比(全成分(A)中最高濃度の化合物を除いた残る成分(A)の質量)/(成分(A)中最高濃度の化合物の質量)は、成分(A)全体の溶解性を向上して繊維処理剤の濁度を下げ、繊維を均一に処理できるようにし、それによって処理後の繊維表面の感触を向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.25以下である。
【0062】
〔成分(B):水〕
本発明の繊維処理剤は、水を媒体とする。本発明の繊維処理剤中における成分(B)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更により好ましくは40質量%以上であり、また好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更により好ましくは85質量%以下である。
すなわち、本発明の繊維処理剤中における成分(B)の含有量は、好ましくは10~99質量%、より好ましくは20~95質量%、更に好ましくは30~90質量%、更により好ましくは40~85質量%である。
【0063】
〔カチオン性界面活性剤〕
本発明の繊維処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、カチオン性界面活性剤を含有することができる。カチオン性界面活性剤は1個の炭素数8~24のアルキル基及び3個の炭素数1~4のアルキル基を有するモノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましい。
【0064】
好ましくは、少なくとも1種のモノ長鎖アルキル四級アンモニウム界面活性剤は、下記一般式(3)で表される化合物から選択される。
【0065】
【0066】
〔式中、R7は炭素数8~22の飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、R11-CO-NH-(CH2)m-又はR11-CO-O-(CH2)m-(R11は炭素数7~21の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を示し、pは1~4の整数を示す)を示し、R8、R9及びR10は独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシルアルキル基を示し、An-は塩化物イオン、臭化物イオン、メトサルフェートイオン又はエトサルフェートイオンを示す。〕
【0067】
好適なカチオン性界面活性剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアラミドプロピルトリモニウムクロリド等の長鎖四級アンモニウム化合物が挙げられ、これらは単独で使用することもでき、これらの混合物として使用することもできる。
【0068】
本発明の繊維処理剤中におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善し、本発明の効果を一層向上させる観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
【0069】
〔シリコーン〕
また、本発明の繊維処理剤は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善し、まとまりを良くする観点からシリコーンを含むことができる。シリコーンとしてはジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーンから選ばれる1種以上が好ましい。
【0070】
ジメチルポリシロキサンとしては、いずれの環状又は非環状のジメチルポリシロキサンポリマーを用いることもでき、その例としてSH200シリーズ、BY22-019、BY22-020、BY11-026、B22-029、BY22-034、BY22-050A、BY22-055、BY22-060、BY22-083、FZ-4188(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、KF-9088、KM-900シリーズ、MK-15H、MK-88(いずれも信越化学工業株式会社)が挙げられる。
【0071】
アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基又はアンモニウム基を有するあらゆるシリコーンを用いることができ、その例として、全部又は一部の末端ヒドロキシル基がメチル基等で末端封止されたアミノ変性シリコーンオイル及び末端封止されていないアモジメチコンが挙げられる。処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善し、まとまりを良くする観点から、好ましいアミノ変性シリコーンとして、例えば次式で示される化合物が挙げられる。
【0072】
【0073】
〔式中、R'は水素原子、水酸基又はRXを示し、RXは置換又は非置換の炭素数1~20の一価炭化水素基を示し、JはRX、R"-(NHCH2CH2)aNH2、ORX又は水酸基を示し、R"は炭素数1~8の二価炭化水素基を示し、aは0~3の数を示し、b及びcはその和が数平均で、10以上20000未満、好ましくは20以上3000未満、より好ましくは30以上1000未満、更に好ましくは40以上800未満となる数を示す。〕
【0074】
好適なアミノ変性シリコーンの市販品の具体例としては、SF8452C、SS3551(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、KF-8004、KF-867S、KF-8015(いずれも信越化学工業株式会社)等のアミノ変性シリコーンオイル、SM8704C、SM8904、BY22-079、FZ-4671、FZ4672(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)等のアモジメチコンエマルションが挙げられる。
【0075】
本発明の繊維処理剤中におけるシリコーンの含有量は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善し、本発明の効果を一層向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
【0076】
〔カチオン性ポリマー〕
また、本発明の繊維処理剤は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善する観点からカチオン性ポリマーを含有することができる。
【0077】
カチオン性ポリマーは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいい、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。すなわち、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基若しくはアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む水溶液のもの、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらのうち、すすぎ時やシャンプー時の感触の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時のまとまり易さ及び保湿性という効果及び剤の安定性を向上させる観点から、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むポリマー、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、カチオン化セルロース誘導体から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、カチオン化セルロース誘導体から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0078】
好適なジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体の具体例としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体(ポリクオタニウム-6、例えばマーコート100;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22、例えばマーコート280、同295;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7、例えばマーコート550;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)等が挙げられる。
【0079】
好適な4級化ポリビニルピロリドン誘導体の具体例としては、ビニルピロリドンコポリマーとジメチルアミノエチルメタクリレートとを重合して得られるポリマー(ポリクオタニウム11、例えばガフカット734、ガフカット755、ガフカット755N(以上、アシュランド社))が挙げられる。
【0080】
好適なカチオン化セルロースの具体例としては、ヒドロキシセルロースにグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを負荷したポリマー(ポリクオタニウム10、例えばレオガードG、同GP(以上、ライオン社)、ポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M(以上、アマーコール社))や、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム-4、例えばセルコートH-100、同L-200(以上、アクゾノーベル社))等が挙げられる。
【0081】
本発明の繊維処理剤中におけるカチオン性ポリマーの含有量は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善する観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0082】
更に、本発明の繊維処理剤には、アスコルビン酸等の酸化防止剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、塩酸等のpH調整剤を含有することができる。
【0083】
〔pH〕
本発明の繊維処理剤のpHは、天然由来繊維のダメージ抑制及び耐久性向上の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上、更により好ましくは4.0以上であり、また、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは9.0以下である。なお、本発明におけるpHは25℃のときの値である。
すなわち、本発明の繊維処理剤のpHは、天然由来繊維のダメージ抑制及び耐久性向上の観点から、好ましくは2.0~11.0、より好ましくは3.0~10.0、更に好ましくは3.5~9.0、更により好ましくは4.0~9.0である。
【0084】
〔繊維処理剤の保管方法〕
以上のようにして製造された繊維処理剤を繊維に適用するまでに輸送・保管する場合、又は繊維処理剤を調製する前の原料を輸送・保管する場合には、成分(A)の輸送中の意図せぬ反応進行や再結晶を防ぐ目的で、保管温度を冷温又は高温としたり、保管容器内の空隙部分へ窒素充填したりすることもできる。
【0085】
繊維処理剤の保管温度は、凍結や再結晶が生ずるのを防ぐ観点からは、好ましくは1℃以上、より好ましくは2℃以上、更に好ましくは5℃以上であり、また、酸化着色や意図せぬ反応進行を防止する観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは15℃以下である。
【0086】
また、繊維処理剤の保管温度は、高濃度溶液の再結晶を防ぐ観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、酸化着色や意図せぬ反応進行を防止する観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0087】
〔繊維処理方法〕
(基本的処理)
本発明の繊維処理剤を用いて、下記工程(i)を含む方法で天然由来繊維を処理することにより、天然由来繊維の問題点である耐水性、耐熱性を向上させ、熱形状記憶能を付与できると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触を向上させることができる。
工程(i) 本発明の繊維処理剤に天然由来繊維を浸漬する工程
【0088】
工程(i)において、繊維処理剤に浸漬する天然由来繊維は、乾燥していても濡れていてもよい。天然由来繊維を浸漬する繊維処理剤の量は、天然由来繊維の質量に対する浴比で(繊維処理剤の質量/天然由来繊維の質量)で、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更により好ましくは10以上、更により好ましくは20以上であり、また好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは100以下である。
すなわち、上記浴比は、好ましくは2~500、より好ましくは3~250、更に好ましくは5~100、更により好ましくは10~100、更により好ましくは20~100である。
【0089】
また、工程(i)では、あらかじめ天然由来繊維をカーラー等で固定し、次いで、加熱下で、本発明の繊維処理剤に浸漬してもよい。このようにすることで、天然由来繊維に対し、熱形状記憶能と高い耐久性に加え、所望の形状を同時に付与することができる。
【0090】
工程(i)における繊維処理剤への天然由来繊維の浸漬は、加熱下において行うことが好ましく、この加熱は繊維処理剤を加温することで行われる。なお、この加熱は、加熱状態の繊維処理剤に天然由来繊維を浸漬することで行ってもよいが、低温の繊維処理剤に天然由来繊維を浸漬した後加熱することで行ってもよい。繊維処理剤の温度は、成分(A)と天然由来繊維内の繊維構成分子、例えばタンパク質分子との相互作用を大きくすることで本発明の効果を得るため、好ましくは20℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、また、天然由来繊維が熱により変性を起こし劣化するのを防ぐため、好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0091】
工程(i)における浸漬時間は、加熱温度によって適宜調整されるが、例えば、天然由来繊維に対する伸縮性向上効果を発現させる観点から、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間以上であり、また、天然由来繊維のダメージ抑制のため、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下である。
【0092】
工程(i)は、水分の蒸発が抑制される環境下で行われることが好ましい。水分の蒸発を抑制する具体的手段としては、天然由来繊維が浸漬されている繊維処理剤の容器を、水蒸気を透過しない素材でできたフィルム状物質、キャップ、フタ等で覆う方法が挙げられる。
【0093】
工程(i)の後、天然由来繊維をすすいでもよく、またすすがなくてもよいが、余剰の成分(A)による天然由来繊維の表面の感触低下を防ぐ観点から、すすぐ方が好ましい。
【0094】
これらの処理によって、天然由来繊維内に成分(A)が浸透し、繊維内の金属、例えば多価金属に強く配位することで、種々の効果を生じるものと思われる。
【0095】
〔更に追加してもよい処理〕
前述の工程(i)に加え、さらに、脱色、染色、及び疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げ、繊維伸縮性(粘り強さ)の更なる向上のための加熱処理から選ばれる1以上の各処理を追加して行ってもよい。
【0096】
この際、脱色、及び染色の各処理は、前述の工程(i)の前に行っても、後に行ってもよい。また、複数の処理を組み合わせて追加することもでき、脱色と染色の両方を追加する場合には、染色の前に脱色を行う必要があることを除けば、どの処理を先に行ってもよく、脱色と染色の間に別の処理を行うこともできる。
【0097】
一方、疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げ、繊維伸縮性(粘り強さ)のさらなる向上のための加熱処理は、前述の工程(i)の後に行う必要があるが、脱色、染色との処理順序は、特に限定されない。また、疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げ、繊維伸縮性(粘り強さ)の更なる向上のための加熱処理は、どちらを先に行ってもよい。
【0098】
(脱色)
脱色は、アルカリ剤、酸化剤及び水を含有する脱色剤組成物に天然由来繊維を浸漬することによって行われる。脱色剤組成物は通常2剤型であり、第1剤はアルカリ剤及び水を含有し、第2剤は酸化剤及び水を含有する。この2剤は、通常、別々に保管され、天然由来繊維を浸漬する前に混合される。
【0099】
好適なアルカリ剤としては、例えば、アンモニア及びその塩;アルカノールアミン(モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等)及びこれらの塩;アルカンジアミン(1,3-プロパンジアミン等)及びその塩;並びに炭酸塩(炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等);並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
脱色剤組成物(2剤型の場合、第1剤と第2剤の混合物)中におけるアルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7.5質量%以下である。
【0101】
好適な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン及び臭素酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸化剤の中でも過酸化水素が好ましい。
【0102】
脱色剤組成物中における酸化剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0103】
第1剤と第2剤を別々に保管する場合、第2剤の25℃におけるpHは、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6.0以下、より好ましくは4.0以下である。このpHは好適な緩衝剤で調整することができる。脱色剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは6.8以上であり、また、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10.0以下である。
【0104】
(染色)
染色は、染色剤組成物に天然由来繊維を浸漬することによって行われる。染色剤組成物は、染料を含有し、任意にアルカリ剤又は酸、酸化剤等を含有することができる。染料としては、直接染料、酸化染料及びこれらの組合せが挙げられる。
【0105】
直接染料の種類は特に限定されず、染色に適した任意の直接染料を使用することができる。直接染料の例としては、アニオン染料、ニトロ染料、分散染料、カチオン染料、並びに下記のHCレッド18、HCブルー18及びHCイエロー16からなる群より選択されるアゾフェノール構造を有する染料、並びにこれらの塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0106】
【0107】
カチオン染料としては、例えば、ベーシックブルー6、ベーシックブルー7、ベーシックブルー9、ベーシックブルー26、ベーシックブルー41、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン4、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ナチュラルブラウン7、ベーシックグリーン1、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド2、ベーシックレッド12、ベーシックレッド22、ベーシックレッド51、ベーシックレッド76、ベーシックバイオレット1、ベーシックバイオレット2、ベーシックバイオレット3、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー57及びベーシックイエロー87並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ベーシックレッド51、ベーシックオレンジ31、ベーシックイエロー87及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0108】
アニオン染料としては、例えば、アシッドブラック1、アシッドブルー1、アシッドブルー3、フードブルー5、アシッドブルー7、アシッドブルー9、アシッドブルー74、アシッドオレンジ3、アシッドオレンジ4、アシッドオレンジ6、アシッドオレンジ7、アシッドオレンジ10、アシッドレッド1、アシッドレッド14、アシッドレッド18、アシッドレッド27、アシッドレッド33、アシッドレッド50、アシッドレッド52、アシッドレッド73、アシッドレッド87、アシッドレッド88、アシッドレッド92、アシッドレッド155、アシッドレッド180、アシッドバイオレット2、アシッドバイオレット9、アシッドバイオレット43、アシッドバイオレット49、アシッドイエロー1、アシッドイエロー10、アシッドイエロー23、アシッドイエロー3、フードイエローNo.8、D&CブラウンNo.1、D&CグリーンNo.5、D&CグリーンNo.8、D&CオレンジNo.4、D&CオレンジNo.10、D&CオレンジNo.11、D&CレッドNo.21、D&CレッドNo.27、D&CレッドNo.33、D&Cバイオレット2、D&CイエローNo.7、D&CイエローNo.8、D&CイエローNo.10、FD&Cレッド2、FD&Cレッド40、FD&CレッドNo.4、FD&CイエローNo.6、FD&Cブルー1、フードブラック1、フードブラック2、並びにこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
これらの中でも好ましいアニオン染料は、アシッドブラック1、アシッドレッド52、アシッドバイオレット2、アシッドバイオレット43、アシッドレッド33、アシッドオレンジ4、アシッドオレンジ7、アシッドレッド27、アシッドイエロー3及びアシッドイエロー10並びにこれらの塩である。より好ましいアニオン染料は、アシッドレッド52、アシッドバイオレット2、アシッドレッド33、アシッドオレンジ4及びアシッドイエロー10並びにこれらの塩及び混合物である。
【0110】
ニトロ染料としては、例えば、HCブルーNo.2、HCブルーNo.4、HCブルーNo.5、HCブルーNo.6、HCブルーNo.7、HCブルーNo.8、HCブルーNo.9、HCブルーNo.10、HCブルーNo.11、HCブルーNo.12、HCブルーNo.13、HCブラウンNo.1、HCブラウンNo.2、HCグリーンNo.1、HCオレンジNo.1、HCオレンジNo.2、HCオレンジNo.3、HCオレンジNo.5、HCレッドBN、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCレッドNo.7、HCレッドNo.8、HCレッドNo.9、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、HCレッドNo.13、HCレッドNo.54、HCレッドNo.14、HCバイオレットBS、HCバイオレットNo.1、HCバイオレットNo.2、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCイエローNo.6、HCイエローNo.7、HCイエローNo.8、HCイエローNo.9、HCイエローNo.10、HCイエローNo.11、HCイエローNo.12、HCイエローNo.13、HCイエローNo.14、HCイエローNo.15、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、ピクラミン酸、1,2-ジアミノ-4-ニトロベンゾール、1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゾール、3-ニトロ-4-アミノフェノール、1-ヒドロキシ-2-アミノ-3-ニトロベンゾール及び2-ヒドロキシエチルピクラミン酸並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
分散染料としては、例えば、ディスパースブルー1、ディスパースブラック9及びディスパースバイオレット1及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
これらの直接染料は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、イオン性が異なる直接染料を併用することもできる。
【0113】
染色剤組成物中における直接染料の含有量は、十分な染色性を得る観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、配合性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0114】
染色剤組成物が染料として直接染料のみを含む場合は、天然由来繊維を染色するために酸化剤は不要であるが、天然由来繊維の色を明るくしたい場合は、酸化剤を組成物中に含有させることもできる。
【0115】
染色剤組成物が酸化染料を含む場合、通常は2剤型となり、第1剤は、酸化染料中間体(プレカーサー及びカプラー)及びアルカリ剤を含み、第2剤は過酸化水素等の酸化剤を含む。この2剤は、通常、別々に保管され、天然由来繊維を浸漬する前に混合される。
【0116】
酸化染料中間体としては、特に制限はなく、染色製品に通常使用されている公知のいずれかのプレカーサー及びカプラーを好適に使用することができる。
【0117】
プレカーサーとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-メトキシエチル-パラフェニレンジアミン、N-フェニルパラフェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、1,3-ビス(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-プロパノール、PEG-3,3,2’-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-アミノメチル-4-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-4-アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、2-アミノ-5-アセトアミドフェノール、3,4-ジアミノ安息香酸、5-アミノサリチル酸、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、2,5,6-トリアミノ-4-ヒドロキシピリミジン、4,5-ジアミノ-1-(4’-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-ヒドロキシエチルピラゾール並びにこれらの物質の塩及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
カプラーとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール、2,4-ジアミノ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4-ジメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4-ジアミノ-5-フルオロトルエン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4-ジクロロ-3-アミノフェノール、2-クロロ-3-アミノ-6-メチルフェノール、2-メチル-4-クロロ-5-アミノフェノール、N-シクロペンチル-メタアミノフェノール、2-メチル-4-メトキシ-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2-メチル-4-フルオロ-5-アミノフェノール、パラアミノオルトクレゾール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、5-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドール、7-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4-メチレンジオキシフェノール、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシアニリン、1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシ-3,5-ジアミノピリジン、2,3-ジアミノ-6-メトキシピリジン、2-メチルアミノ-3-アミノ-6-メトキシピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジン並びにこれらの物質の塩及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
染色剤組成物中におけるプレカーサー及びカプラーの含有量は、それぞれ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
【0120】
染色剤組成物が酸化染料を含む場合には、更にアルカリ剤を含む。好適なアルカリ剤としては、例えば、アンモニア及びその塩;アルカノールアミン(モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等)及びこれらの塩;アルカンジアミン(1,3-プロパンジアミン等)及びその塩;並びに炭酸塩(炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等);並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
染色剤組成物中におけるアルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7.5質量%以下である。
【0122】
染色剤組成物が酸化染料を含む場合における酸化剤を含む組成物(第2剤)は、酸化染料を含む組成物(第1剤)とは別に保管され、天然由来繊維を浸漬する前に混合される。好適な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン及び臭素酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸化剤の中でも過酸化水素が好ましい。
【0123】
染色剤組成物中における酸化剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0124】
第1剤と第2剤を別々に保管を行う場合、第2剤の25℃におけるpHは、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。このpHは好適な緩衝剤で調整することができる。第1剤と第2剤を混合してなる染色剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは6.8以上であり、また、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10以下である。
【0125】
染色剤組成物が酸化染料を含む場合、前に例示した直接染料を更に含むこともできる。
【0126】
染色剤組成物は、好適には、更に以下に示す界面活性剤、コンディショニング成分等を含むことができ、好適には、溶液、エマルション、クリーム、ペースト及びムースの形態をとることができる。
【0127】
染色剤組成物の温度は、染色剤組成物を天然由来繊維内部に効率よく浸透・拡散させ、染色の効果をより高める観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0128】
(後加熱:繊維伸縮性(粘り強さ)の更なる向上のための加熱処理)
更に天然由来繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、天然由来繊維にテンションをかけて延伸しながら加熱することができる。この加熱には、天然由来繊維が小規模量であればヘアアイロンを用いることが好ましく、大規模量であれば巻き取り機でテンションをかけながら温風加熱するなどにより、同等の結果を得ることができる。
【0129】
加熱時の繊維延伸率は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.5%以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは10%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは2.0%以下である。
【0130】
加熱温度は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0131】
加熱時間は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上、更に好ましくは5秒以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下、更に好ましくは20秒以下である。
【0132】
加熱後、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、天然由来繊維に対しテンションをかけて延伸しながら、水中に静置することができる。
【0133】
この際の延伸率は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.5%以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは10%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは2.0%以下である。
【0134】
水温は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下である。
【0135】
水中での静置時間は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは30分以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは3時間以下である。
【0136】
この操作により、工程(i)の処理条件次第では、繊維乾燥時において人毛に匹敵する伸縮性まで到達させることができる。
【0137】
上記各種の処理を行った繊維については、その後、通常用いられる繊維後処理、たとえば柔軟剤等の繊維処理剤による処理、コンディショナーやヘアトリートメント等のヘアケア剤による処理により、感触を向上させることもできる。
【0138】
以上の繊維処理方法によって、天然由来繊維を処理することにより、繊維内に成分(A)を含有することで、熱セットにより形状を付与することができ、耐水性、耐熱性、引張弾性率に優れ、天然由来繊維の伸縮性(粘り強さ)を高度に改善した繊維、好適には頭飾製品用繊維等を製造することができ、また、当該繊維を用いて各種の繊維製品、好適には頭飾製品等を製造することができる。
なお、本発明において好適な頭飾製品としては、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等が挙げられる。
【0139】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0140】
<1>
以下の成分(A)及び(B)を含有する繊維処理剤。
(A):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物
(B):水
【0141】
<2>
好ましくは、成分(A)が、以下の成分(A1)及び(A2)からなる群より選ばれる1以上の化合物である、<1>に記載の繊維処理剤。
(A1) ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない芳香族化合物
(A2) ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが11.0MPa1/2以上18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物(芳香族化合物を除く)
【0142】
<3>
成分(A1)が以下の一般式(1)若しくは一般式(2)で表される化合物若しくはその塩、又はフェニルブタン酸である、<2>に記載の繊維処理剤。
【0143】
【0144】
〔式中、=Xはメチリデン基又はオキソ基を示し、R1は水素原子、水酸基、又は置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基若しくはアラルキルオキシ基を示し、R2はo-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ベンジリデン基、又は置換基を有してもよいアルキレン基を示す。ただしR2がアリール基を有しない場合は、R1はアリール基、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基である。〕
【0145】
【0146】
〔式中、A1~A5はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
【0147】
<4>
一般式(1)で表される化合物が、以下に示す一般式(1A)、(1B)若しくは(1C)で表される化合物、3-カルボキシ安息香酸(イソフタル酸)、4-カルボキシ安息香酸(テレフタル酸)、3-ベンゾイル安息香酸、又は4-ベンゾイル安息香酸である、<3>に記載の繊維処理剤。
【0148】
【0149】
〔式中、B1~B4はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、R3はヒドロキシ基、又は下記一般式(1A)-a若しくは(1A)-bで表される基を示す。〕
【0150】
【0151】
〔式中、B5~B9は前記B1~B4と同じ意味を示し、R4は水素原子又はメチル基を示し、nは0~2の整数を示す。〕
【0152】
【0153】
〔式中、D1~D4はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、E1~E5はそれぞれ独立して、D1~D4と同様の基又は一般式(1B)-aで表される基を示す。〕
【0154】
【0155】
〔式中、mは0~4の整数を示す。〕
【0156】
【0157】
〔式中、R6は水素原子又は一般式(1C)-aで表される基を示し、G1及びG2はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール基、炭素数7~12のアラルキル基若しくはアリールアルケニル基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基若しくはアロイルオキシ基を示す。ただし、R6が水素原子である場合、G1及びG2の少なくとも一方は、置換基を有してもよいアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、アリールアルケニル基若しくはアロイルオキシ基である。〕
【0158】
【0159】
〔式中、J1~J5はそれぞれ独立して、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。〕
【0160】
<5>
一般式(1A)で表される化合物が、好ましくは2-カルボキシ安息香酸(フタル酸)、2-(((4-ビニルベンジル)オキシ)カルボニル)安息香酸、2-((2-(アクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニル)安息香酸、又は2-((2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニル)安息香酸である、<4>に記載の繊維処理剤。
【0161】
<6>
一般式(1B)で表される化合物が、好ましくは2-ベンゾイル安息香酸、2-(2-メチルベンゾイル)安息香酸、2-(3-メチルベンゾイル)安息香酸、2-(4-メチルベンゾイル)安息香酸、2-(2-クロロベンゾイル)安息香酸、2-(3-クロロベンゾイル)安息香酸、2-(4-クロロベンゾイル)安息香酸、又は2-(4-(2-(2-(アクリロイルオキシ)エトキシ)エトキシ)ベンゾイル)安息香酸である、<4>に記載の繊維処理剤。
【0162】
<7>
一般式(1C)で表される化合物が、好ましくはフェニルこはく酸、2,3-ジフェニルこはく酸、(+)-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸、又は4-オキソ-4-((4-ビニルベンジル)オキシ)ブタン酸である、<4>に記載の繊維処理剤。
【0163】
<8>
一般式(2)で表される化合物が、安息香酸、2-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、4-メチル安息香酸、2-エチル安息香酸、3-エチル安息香酸、4-エチル安息香酸、2-プロピル安息香酸、3-プロピル安息香酸、4-プロピル安息香酸、2-イソプロピル安息香酸、3-イソプロピル安息香酸、4-イソプロピル安息香酸、2-n-ブチル安息香酸、3-n-ブチル安息香酸、4-n-ブチル安息香酸、2-tert-ブチル安息香酸、3-tert-ブチル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、2-ビニル安息香酸、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸、2-アセチル安息香酸、3-アセチル安息香酸、4-アセチル安息香酸、2-メトキシ安息香酸、3-メトキシ安息香酸、4-メトキシ安息香酸、2-クロロ安息香酸、3-クロロ安息香酸、4-クロロ安息香酸、2-ブロモ安息香酸、3-ブロモ安息香酸、又は4-ブロモ安息香酸であり、より好ましくは4-エチル安息香酸、4-ビニル安息香酸、又は安息香酸である、<3>に記載の繊維処理剤。
【0164】
<9>
成分(A1)の芳香族化合物の水素結合項δHが、好ましくは16.0MPa1/2以下、より好ましくは13.5MPa1/2以下、更に好ましくは12.0MPa1/2以下、更に好ましくは10.0MPa1/2以下であり、また、好ましくは3.0MPa1/2以上、より好ましくは4.0MPa1/2以上、更に好ましくは5.0MPa1/2以上である、<2>~<8>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0165】
<10>
成分(A2)が、2,4-ヘキサジエン酸カリウムである、<2>に記載の繊維処理剤。
【0166】
<11>
成分(A2)の化合物の水素結合項δHが、好ましくは16.0MPa1/2以下、より好ましくは15.0MPa1/2以下、更に好ましくは14.0MPa1/2以下、更に好ましくは13.0MPa1/2以下であり、また、好ましくは11.0MPa1/2以上、より好ましくは11.5MPa1/2以上、更に好ましくは12.0MPa1/2以上である、<2>又は<10>に記載の繊維処理剤。
【0167】
<12>
成分(B)の含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更により好ましくは40質量%以上であり、また好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更により好ましくは85質量%以下である、<1>~<11>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0168】
<13>
25℃におけるpHが、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上、更により好ましくは4.0以上であり、また、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは9.0以下である、<1>~<12>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0169】
<14>
成分(A)が、(A1-1)安息香酸又はその塩を含む、<1>~<13>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0170】
<15>
繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満であって、繊維処理剤中における成分(A1-1)の含有量が、安息香酸(酸型)として、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上、更により好ましくは15質量%以上、更により好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは35質量%以下である、<14>に記載の繊維処理剤。
【0171】
<16>
繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下であって、繊維処理剤中における成分(A1-1)の含有量が、安息香酸(酸型)として、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上、更により好ましくは15質量%以上、更により好ましくは20質量%以上、更により好ましくは25質量%以上、更により好ましくは26質量%以上、更により好ましくは28質量%以上、更により好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、更により好ましくは45質量%以下、更により好ましくは40質量%以下である、<14>に記載の繊維処理剤。
【0172】
<17>
成分(A)が、(A1-2)安息香酸又はその塩以外の成分(A1)を含む、<1>~<13>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0173】
<18>
繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満であって、繊維処理剤中における成分(A1-2)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更により好ましくは45質量%以下である、<17>に記載の繊維処理剤。
【0174】
<19>
繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下であって、繊維処理剤中における成分(A1-2)の含有量が、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更により好ましくは40質量%以下である、<17>に記載の繊維処理剤。
【0175】
<20>
成分(A)が成分(A2)を含む、<1>~<13>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0176】
<21>
繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満であって、繊維処理剤中における成分(A2)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である、<20>に記載の繊維処理剤。
【0177】
<22>
繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下であって、繊維処理剤中における成分(A2)の含有量が、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更により好ましくは40質量%以下である、<20>に記載の繊維処理剤。
【0178】
<23>
成分(A)として二種以上の化合物を含む、<1>~<22>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0179】
<24>
成分(A)の少なくとも一種が、好ましくは一般式(2)で表される芳香族化合物であり、より好ましくは安息香酸又はその塩である、<23>に記載の繊維処理剤。
【0180】
<25>
好ましくは、成分(A)のうち一般式(2)で表される芳香族化合物の含有量が最も高く、より好ましくは、成分(A)のうち安息香酸又はその塩の含有量が最も高い、<24>に記載の繊維処理剤。
【0181】
<26>
繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満であって、全成分(A)中最高濃度の化合物を除いた残る成分(A)の、繊維処理剤中における含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である、<23>~<25>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0182】
<27>
繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下であって、全成分(A)中最高濃度の化合物を除いた残る成分(A)の、繊維処理剤中における含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である、<23>~<25>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0183】
<28>
繊維処理剤中における全成分(A)中最高濃度の化合物に対する、当該化合物を除いた残る成分(A)の質量比(全成分(A)中最高濃度の化合物を除いた残る成分(A)の質量)/(成分(A)中最高濃度の化合物の質量)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.25以下である、<23>~<27>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0184】
<29>
下記工程(i)を含む繊維処理方法。
工程(i) 以下の成分(A)及び(B)を含有する組成物に天然由来繊維を浸漬する工程
(A):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物
(B):水
【0185】
<30>
下記工程(i)を含む繊維処理方法。
工程(i) 以下の成分(A1-2)及び(B)を含有する組成物に天然由来繊維を浸漬する工程
(A1-2):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物(ただし、安息香酸及びその塩を除く)
(B):水
【0186】
<31>
以下の成分(A)及び(B)を含有する組成物の繊維処理剤としての使用。
(A):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物
(B):水
【0187】
<32>
以下の成分(A1-2)及び(B)を含有する組成物の繊維処理剤としての使用。
(A1-2):ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHが18.3MPa1/2以下である、カルボキシ基又はその塩を少なくとも1つ有し、縮合環を有しない化合物(ただし、安息香酸及びその塩を除く)
(B):水
【実施例0188】
実施例1~22、比較例1~3
表1及び2に示す処方の組成物を用い、下記方法に従って再生コラーゲン繊維を処理し、各種評価を行った。なお、各組成物のpHは、調製した組成物を室温(25℃)において、そのままpHメーター(HORIBA社製、F-52)で測定した。
【0189】
<処理方法>
1.再生コラーゲン繊維(※)0.50gの長さ22cmの毛束を、表中に示す浴比となる量の繊維処理剤が入った容器に浸漬し、容器の口を密閉し、容器ごと表中に示す温度のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し表中に示す時間加熱した。
※:カネカ社製再生コラーゲン繊維を市販エクステンション製品の形態で購入し、そこから繊維を切り取り毛束に小分けして評価に使用した。今回の評価では、エクステンション製品に繊維種としてUltima100%使用表記があり、色番手が30のホワイト、形状ストレートのものを使用した。
2.毛束の入った容器をウォーターバスから取り出し、室温に戻した。
3.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)でコーミングしながら乾かした。
【0190】
<評価用シャンプーの処方>
成分 (質量%)
ラウレス硫酸ナトリウム 15.5
ラウラミドDEA 1.5
EDTA-2Na 0.3
リン酸 pH7に調整する量
イオン交換水 バランス
合計 100
【0191】
<繊維引張時の平均破断伸度の増加>
耐水性、及び伸縮性(粘り強さ)の指標として、繊維引張時の平均破断伸度、すなわち引張で繊維が延伸されていったときに元の繊維長に対して何%延伸されたところで破断が起こるかについて、複数本(10本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて、以下の手順で行った。
1.毛束の根本から、繊維10本を切り取った。それぞれの繊維の根本と毛先の中間付近から3cmの繊維片を採取し、合計で10個の3cmの毛髪片を得た。
2.繊維片をDIA-STRON limited社製「MTT690 繊維自動引張り試験機」にセットした。水に浸漬した状態で30分放置後自動測定を開始し、繊維が水に浸漬された状態での平均破断伸度を求めた。数値が高いほど、伸縮性が高く粘り強さに優れ、耐久性にも優れることを示す。
次式に従い、市販品から切り取ったそのままの状態(未処理;比較例1)での繊維引張時の平均破断伸度(A%)を基準とし、処理後の毛束の平均破断伸度(B%)が、未処理の状態からどの程度(C%)増加したかを、表中に「繊維引張時の平均破断伸度の増加率 [%]」として記載した。
C(%)=B(%)-A(%)
【0192】
<繊維引張時の平均破断荷重の増加>
耐水性の指標として、繊維引張時の平均破断荷重を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて行った。また、数値としては複数本(10本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、以下の手順で行った。
1.毛束の根本から、繊維10本を切り取った。それぞれの繊維の根本と毛先の中間付近から3cmの繊維片を採取し、合計で10個の3cmの毛髪片を得た。
2.繊維片をDIA-STRON limited社製「MTT690 繊維自動引張り試験機」にセットした。水に浸漬した状態で30分放置後自動測定を開始し、繊維が水に浸漬された状態で延伸したときの破断荷重を求めた。数値が高いほど、ハリコシがあって外力による延伸に強く、耐久性にも優れることを示す。
次式に従い、市販品から切り取ったそのままの状態(未処理;比較例1)での繊維引張時の平均破断荷重(W0(gf))を基準とし、処理後の毛束の平均破断荷重(W1(gf))が、未処理の状態からどの程度(Y(gf))増加したかを、表中に「繊維引張時の平均破断荷重の増加量 [gf]」として記載した。
Y(gf)=W1(gf)-W0(gf)
【0193】
<高温アイロンセット時の収縮率>
耐熱性の指標として、高温アイロンセット時の収縮率を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて行った。また、数値としては複数本(5本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、以下の手順で行った。
1.上記<処理方法>処理直後の毛束の根本から、繊維5本を切り取り、印をつけた。これら処理後繊維5本の長さを測定し、平均値を記録(長さL1とする)した。次いで、これら印をつけた処理後繊維5本を、別途準備した未処理の再生コラーゲン繊維0.5gの毛束2本(計1g)に挟むように共に束ね、新たな毛束(以下大毛束)を作製し、大毛束全体に180℃設定のフラットアイロン(三木電器産業株式会社製/型番:AHI-938)を5cm/secの速度で3回かけた。
2.アイロン操作の後、大毛束から印をつけた処理後繊維5本を取り出し、改めてこれら印をつけた処理後繊維各5本の長さを測定し平均値を記録(長さL2とする)した。
3.高温アイロンセット時の収縮率 Sdry = { 1-(L2/L1)} x 100 [%]と定義した。Sdryが0%に近いほど、乾熱による収縮が起こりづらく、耐熱性に優れることを示す。
【0194】
<熱水加熱時の収縮率>
耐水性、耐熱性の指標として、熱水加熱時の収縮率を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて行った。また、数値としては複数本(5本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、以下の手順で行った。
1.毛束の根本から、繊維5本を切り取り、各繊維の長さの平均値を記録(長さL1とする)した上で、90℃のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し1分間加熱した。
2.加熱操作の後で、繊維5本を取り出してきて、タオルで軽く水気を切り、常温常湿で30分間乾燥した後、改めて各繊維の長さの平均値を記録(長さL2とする)した。
3.熱水加熱時の収縮率 Swet ={ 1-(L2/L1)} x 100 [%]と定義した。Swetが0%に近いほど、湿熱による収縮が起こりづらく、耐熱性に優れることを示す。
【0195】
<熱形状記憶能>
熱形状記憶能の評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて行った。なお、「I:形状付与(カール)」の結果の値が5%以下であった場合は、効果なしとして、以降の処理、評価は行わなかった。
・I:形状付与(カール)
1.再生コラーゲン繊維0.5gの長さ22cmの毛束を30℃の水道水で30秒間濡らした後、濡れた毛束を直径14mmのプラスチック製ロッドに巻き付け、クリップで固定した。
2.ロッドに巻き付けられた毛束ごと60℃のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し1分間加熱した。
3.毛束をウォーターバスから取り出し、25℃の水に1分間浸漬し、水から取り出して室温に戻した。
4.毛束をロッドから外し、クシを3回通した後、水から取り出してから3分後に、吊した状態で真横から写真を撮った。
【0196】
(評価基準)
未処理の毛束長さをL0(22cm)、処理後の毛束長さをLとして、次式に従って求められるカールアップ率=毛束長さ減少率(I)(%)をカールの巻き強さと定義した。
I=[(L0-L)/L0]×100
【0197】
・II:再形状付与(ストレート)
1.Iで評価した毛束に対し、クシを通して絡まりをとった後に、180℃設定のフラットアイロン(三木電器産業株式会社製/型番:AHI-938)で5cm/secの速度で6回スライドした。
2.水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立てた後、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルドライした。
3.吊るして20℃65%RHで12時間自然乾燥し、クシを通した後、吊した状態で真横から目視観察した。
【0198】
(評価基準)
未処理の毛束長さをL0(22cm)、処理後の毛束長さをLとして、次式に従って求められるストレート化率(ST)(%)をストレート化の達成度合いと定義した。ST=100%のとき、毛束は完全にストレート化されている。
ST=[1-(L0-L)/L0]×100
【0199】
・III:再再形状付与(カール)
1.IIで評価した毛束を30℃の水道水で30秒間濡らした後、濡れた毛束を直径14mmのプラスチック製ロッドに巻き付け、クリップで固定した。
2.ロッドに巻き付けられた毛束ごと60℃のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し1分間加熱した。
3.毛束をウォーターバスから取り出し、25℃の水に1分間浸漬し、水から取り出して室温に戻した。
4.毛束をロッドから外し、クシを3回通した後、水から取り出してから3分後に、吊した状態で真横から写真を撮った。
【0200】
(評価基準)
未処理の毛束長さをL0(22cm)、処理後の毛束長さをLとして、次式に従って求められるカールアップ率=毛束長さ減少率(I)(%)をカールの巻き強さと定義した。
I=[(L0-L)/L0]×100
【0201】
<表面感触の良さ>
表面の感触の評価は<処理方法>で処理された直後の毛束を用い、手で触れた際の感触の滑らかさについて、専門パネラー5名が下記基準によって評価し、5名の合計値を評価結果とした。
(評価基準)
5:未処理繊維(比較例1)に比べてきわめて滑らかな手触りである
4:未処理繊維(比較例1)に比べて滑らかな手触りである
3:未処理繊維(比較例1)に比べてわずかに滑らかな手触りである
2:未処理繊維(比較例1)の手触りと変わらない
1:未処理繊維(比較例1)よりもざらつき・きしみがあり手触りが劣る
【0202】
<繊維への着色抑制>
1.毛束の表裏それぞれについて、根本付近、中間付近、毛先付近を測色器(コニカミノルタ社製測色計CR-400)で測色し、合計6点の平均値を測色値とした(L,a,b)。
2.着色の程度は、未処理の色番手30ホワイトの毛束(※)(比較例1)を基準としてΔE*abで評価した。また、処理を行ったその日のうちに測色した。
(※)未処理の色番手30ホワイトの毛束
カネカ社製再生コラーゲン繊維を市販エクステンション製品の形態で購入し、そこから繊維を切り取り毛束に小分けして評価に使用した。今回の評価では、エクステンション製品に繊維種としてUltima100%使用表記があり、色番手が30のホワイト、形状ストレートのものを使用した。
ΔE*abは、未処理の色番手30ホワイトの毛束の測定値を(L0,a0,b0)、処理毛束の測定値を(L1,a1,b1)としたとき、〔(L1-L0)2+(a1-a0)2+(b1-b0)2〕1/2で定義され、着色抑制効果を以下の基準で判定した。
5:ΔE*ab ≦ 5.0
4:5.0< ΔE*ab ≦ 10.0
3:10.0< ΔE*ab ≦ 15.0
2:15.0< ΔE*ab ≦ 20.0
1:20.0< ΔE*ab
【0203】
【0204】