(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171308
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
D06M 15/233 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
D06M15/233
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080243
(22)【出願日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2022081671
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 淳一
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA03
4L033AB01
4L033AC03
4L033AC15
4L033CA12
4L033CA13
(57)【要約】
【課題】天然由来繊維における問題点である耐水性と乾燥時・湿潤時の両場面での耐熱性を向上させ、熱形状記憶能を付与できると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触を向上させることができる繊維処理剤の提供。
【解決手段】単一の組成物から構成される一剤式繊維処理剤又は複数の組成物から構成される多剤式繊維処理剤であって、その全組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する繊維処理剤。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の組成物から構成される一剤式繊維処理剤又は複数の組成物から構成される多剤式繊維処理剤であって、その全組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する繊維処理剤。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【請求項2】
成分(A)における配位性官能基が、ピアソンの硬い塩基(Hard Base)を含む基である請求項1に記載の繊維処理剤。
【請求項3】
成分(A)における配位性官能基が、COO-、O-、COOH又はOHを含む基である請求項1又は2に記載の繊維処理剤。
【請求項4】
成分(A)が以下の成分(A-1)又は(A-2)である請求項3に記載の繊維処理剤。
(A-1)配位性官能基がCOOH、COO-又はCOOHの塩を含む基である芳香族化合物
(A-2)配位性官能基がOH、O-又はOHの塩を含む基である芳香族化合物
【請求項5】
成分(A)が成分(A-1)である請求項4に記載の繊維処理剤。
【請求項6】
成分(B)がアゾ開始剤である請求項1~5のいずれか一項に記載の繊維処理剤。
【請求項7】
成分(A)を含有する繊維処理剤のpHが2.0以上6.5未満であって、繊維処理剤中における成分(A)の含有量が、非解離型として、0.1質量%以上40質量%以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【請求項8】
成分(A)を含有する繊維処理剤のpHが6.5以上11.0未満であって、繊維処理剤中における成分(A)の含有量が、非解離型として、1.0量%以上90質量%以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【請求項9】
以下の成分(A)及び成分(C)を含む組成物と、以下の成分(B)及び成分(C)を含む組成物とを含む繊維処理剤キット。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然由来繊維に対し、耐水性、耐熱性及び熱形状記憶能を付与するための繊維処理剤に関し、好適にはかつら、エクステンション等の頭飾製品等繊維製品に用いられる天然由来繊維に対する繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
天然由来繊維は、一般に、合成繊維とは異なって、天然素材から来る自然な風合いや外観を有する。天然由来繊維のうち、再生蛋白質繊維、例えば再生コラーゲン繊維は、酸可溶性コラーゲンあるいは不溶性コラーゲンをアルカリや酵素で可溶化して紡糸原液とし、紡糸ノズルを通して凝固浴に吐出して繊維化することで得られる。
【0003】
しかし、天然由来繊維は、一般的に、合成繊維に比べて親水性が高いため吸水率が高く、多くの水を含んだ状態においては一般に機械的強度が低く、特に再生蛋白質繊維は機械的強度が極めて低い。このため、洗浄時には高い吸水率のために機械強度が著しく低下し、その後の乾燥時に破断するなど、繊維製品としての適性低下につながっている。
【0004】
また、天然由来繊維のうち、再生蛋白質繊維には、耐熱性の低さという問題もあり、例えば、ヘアアイロン等を使用した熱セットにおいては、人毛と同じような高い温度でセットした場合には収縮や縮れを発生し見栄えを損なってしまう。
【0005】
さらに、プラスチック製の合成繊維ではアイロン等による熱セット時における形状がその後の洗浄を経ても記憶され続ける(熱形状記憶能がある)が、天然由来繊維は、アイロン等による熱セット時における形状がその後の一度の洗浄で失われてしまう(熱形状記憶能がない)ため、従来のプラスチック製の合成繊維に比べて形状セットの自由度の観点で劣る部分があった。
【0006】
上記の点が、頭飾製品等繊維製品への天然由来繊維、特に再生蛋白質繊維の普及を妨げる要因となっていた。特に耐水性、すなわち濡れ時の機械強度の低下が与える影響が顕著であった。
一方、天然由来繊維である人毛繊維の分野において、本来熱形状記憶能を有しない人毛繊維に対し、新たに熱形状記憶能を付与するために特定のアルデヒド誘導体とフェノール化合物を作用させる方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、頭飾製品等繊維製品の製造場面においては繊維を強く伸長する場合もあり、特許文献1に記載の技術では処理後の繊維の伸縮性(粘り強さ)が十分とはならないこともあった。このため、伸長時の破断を防ぐため、処理後の繊維の伸縮性を高める要求があった。
【0009】
したがって本発明は、天然由来繊維における問題点である耐水性、耐熱性を改善し、熱形状記憶能を付与すると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触も向上させる繊維処理剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を進めた結果、ビニル基又はビニリデン基と配位性官能基とを有する芳香族化合物、及びラジカル開始剤を含有する組成物を用いて天然由来繊維を処理することによって、繊維内部に浸透した芳香族化合物が重合するとともにその配位性官能基が天然由来繊維中の金属(主として多価金属)に強く配位することで、繊維の水中での強度や耐熱性を向上しつつ繊維からの前記芳香族化合物又はその重合物の漏出も防止されることを見出した。そしてその結果、天然由来繊維における耐水性と乾燥時・湿潤時の両場面での耐熱性が向上し、熱セットにより形状を付与できるのみならず、意外にも、天然由来繊維の伸縮性(粘り強さ)が処理前より向上し、人毛に近い水準まで高めることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、単一の組成物から構成される一剤式繊維処理剤又は複数の組成物から構成される多剤式繊維処理剤であって、その全組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する繊維処理剤を提供するものである。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【0012】
更に本発明は、以下の成分(A)及び成分(C)を含む組成物と、以下の成分(B)及び成分(C)を含む組成物とを含む繊維処理剤キットを提供するものである。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、天然由来繊維の耐水性と乾燥時・湿潤時の両場面での耐熱性を向上させ、熱形状記憶能を付与することができると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触を向上させることができる繊維処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔一剤式と多剤式〕
本発明の繊維処理剤には、単一の組成物から構成される一剤式繊維処理剤、二剤式等の複数の組成物から構成され、これら複数の組成物に繊維を順次浸漬する多剤式繊維処理剤のいずれの形態も包含される。なお、前記一剤式繊維処理剤には、複数の組成物を用時混合して単一の組成物として用いるものも含まれる。
本発明において、繊維処理剤中における含有量とは、一剤式繊維処理剤の場合は使用する単一の組成物中における含有量をいい、多剤式繊維処理剤の場合は各段階で使用するそれぞれの処理剤中における含有量をいうものとする。
【0015】
〔本発明において処理対象となる繊維〕
本発明の繊維処理剤の処理対象となる繊維は、金属を含有する繊維が好ましく、金属を含有する天然由来繊維又は金属を含有する合成繊維が好ましく、なかでも、金属を含有する天然由来繊維が好ましい。天然由来繊維とは、天然の動植物から採取した繊維、もしくはケラチン、コラーゲン、カゼイン、大豆、落花生、トウモロコシ、絹屑、絹蛋白質(例えば絹フィブロイン)等由来の蛋白質や多糖類等のポリマーやオリゴマーを原料として人工的に製造された繊維をいう。これらのうち、ケラチン、コラーゲン、カゼイン、大豆、落花生、トウモロコシ、絹屑、絹蛋白質(例えば絹フィブロイン)等由来の蛋白質や多糖類等のポリマーやオリゴマーを原料として人工的に製造された繊維が好ましく、ケラチン、コラーゲン、カゼイン、大豆蛋白質、落花生蛋白質、トウモロコシ蛋白質、絹蛋白質(例えば絹フィブロイン)等由来の蛋白質を原料とする再生蛋白質繊維がより好ましく、コラーゲンを原料とする再生コラーゲン繊維、絹フィブロインを原料とする再生絹繊維等の再生蛋白質繊維がより好ましく、再生コラーゲン繊維が更に好ましい。
【0016】
再生コラーゲン繊維は、公知の技術で製造することができ、また、組成もコラーゲン100%である必要はなく、品質改良のための天然あるいは合成ポリマーや添加剤が含まれていてもよい。更には、再生コラーゲン繊維を後加工したものであってもよい。再生コラーゲン繊維の形態としてはフィラメントが好ましい。フィラメントは一般にボビン巻きしたものや箱詰めした状態から取り出される。また、再生コラーゲン繊維の製造工程で乾燥工程から出てきたフィラメントを直接利用することもできる。
【0017】
金属を含有する合成繊維としては、金属処理された合成繊維でもよい。金属を含有する天然由来繊維には、天然の動植物から採取した繊維のように、元来金属を含有しているものも含まれ、この場合には改めて金属を含有させる必要はないが、例えば特開2003-027318号公報に記載の耐水化のためアルミニウム塩処理した繊維等のように、金属塩で処理したものでもよい。
【0018】
〔成分(A):ビニル基又はビニリデン基と配位性官能基とを有する芳香族化合物〕
成分(A)は1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物である。成分(A)における配位性官能基としては、ピアソンの硬い塩基(Hard Base)を含むものが好ましい。ピアソンの硬い塩基(Hard Base)とは、1960年代にピアソン(R. G. Pearson)によって導入されたHSAB(Hard and Soft Acids and Bases)という概念において硬い塩基に分類されるルイス塩基をいい、硬い酸に分類されるルイス酸と反応しやすいとされる。
【0019】
成分(A)の芳香族化合物における配位性官能基に含まれる硬い塩基としては、Application of the Principle of Hard and Soft Acids and Bases to Organic Chemistry, Ralph G. Pearson and Jon. Songstad, J. Am. Chem. Soc. 1967, 89, 8, 1827-1836に記載のHard Baseに相当する官能基、例えば、COO-、O-、COOH、OH、NH2等が挙げられる。これらのうち、COO-、O-、COOH、OHが好ましく、繊維の着色をより少なくし、また繊維処理した後の定着性を向上させる(洗浄時の溶出を抑制する)観点から、COO-、COOHがより好ましい。また、成分(A)における配位性官能基としては、カルボキシ基又はカテコール(1,2-ジヒドロキシベンゼン)のベンゼン環から1個の水素原子を除いた基を含む官能基が好ましい。
【0020】
以下、成分(A)の芳香族化合物を、(A-1)配位性官能基がCOOH、COO-又はCOOHの塩を含む場合、(A-2)配位性官能基がOH、O-又はOHの塩を含む場合に分けて例示する。
【0021】
(A-1)配位性官能基がCOOH、COO-又はCOOHの塩を含む場合
(A-1)としては、(A-1-a)ビニル基又はビニリデン基をスチレン骨格の一部として有する芳香族化合物、及び(A-1-b)ビニル基又はビニリデン基をアクリロイル基又はメタクリロイル基の一部として有する芳香族化合物が挙げられる。また、成分(A-1)が塩である場合の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0022】
(A-1-a)配位性官能基がCOOH、COO-又はCOOHの塩を含み、ビニル基又はビニリデン基が、スチレン骨格の一部である場合
(A-1-a)の芳香族化合物としては、以下の一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【0024】
〔式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、A1~A5はそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシ基、一般式(2)で表される基、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。式(2)中、R2は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖の飽和若しくは不飽和の2価炭化水素基若しくは2価炭化水素オキシ基、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ベンジリデン基又はフェニルC2~C4アルキレン基を示す。ただし、A1~A5は少なくとも1つのカルボキシ基又は一般式(2)で表される基を含む。〕
【0025】
(A-1-a)のうち、A1~A5が少なくとも1つのカルボキシ基を含む場合の芳香族化合物の具体例としては、2-ビニル安息香酸、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸及びこれらから選ばれる2種又は3種の混合物が挙げられるが、入手容易性や処理後繊維の表面感触の良さの観点から3種の混合物が好ましい。一方、耐水性を付与する観点からは4-ビニル安息香酸が好ましい。
【0026】
(A-1-a)のうち、A1~A5が少なくとも1つの一般式(2)で表される基を含む場合の芳香族化合物の具体例としては、4-オキソ-4-((4-ビニルベンジル)オキシ)ブタン酸、2-(((4-ビニルベンジル)オキシ)カルボニル)安息香酸が挙げられる。
【0027】
(A-1-b)配位性官能基がCOOH、COO-又はCOOHの塩を含み、そのビニル基又はビニリデン基がアクリロイル基又はメタクリロイル基の一部である場合
(A-1-b)の芳香族化合物としては、以下の一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【0029】
〔式(3)中、R3は水素原子又はメチル基を示し、B1~B4はそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシ基、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、Phはフェニレン基を示し、nは0~2の整数を示し、mは0又は1を示す。〕
【0030】
一般式(3)で表される芳香族化合物の具体例としては、2-((2-(アクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニル)安息香酸、2-((2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニル)安息香酸、2-(4-(2-(2-(アクリロイルオキシ)エトキシ)エトキシ)ベンゾイル)安息香酸が挙げられる。
【0031】
(A-2)その配位性官能基がOH、O-又はOHの塩を含む場合
(A-2)としては、以下の一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【0033】
〔式(4)中、R4は水素原子又はメチル基を示し、E1~E5はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、一般式(5)で表される基、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、G1~G5はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。ただし、E1~E5は少なくとも1つの一般式(5)で表される基を含む。〕
【0034】
一般式(4)で表される芳香族化合物の具体例としては、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸 4-ビニルベンジルが挙げられる。
【0035】
成分(A)としては、繊維の着色をより少なくし、また繊維処理した後の定着性を向上させる(洗浄時の溶出を抑制する)観点から、(A-1)に相当するものがより好ましい。
【0036】
成分(A)は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。本発明の繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、繊維処理剤のpH範囲によって異なるが、以下に示す範囲が好ましい。ここで成分(A)が塩の場合における成分(A)の含有量とは、対応する非解離型の含有量をいう。非解離型とは、酸であればカウンターイオンを水素で置き換えた状態、例えばCOO-塩であれば酸型COOH、塩基の場合はプロトンを除いた状態、例えばアンモニウム塩であればアミンの状態の含有量をいう。なお、繊維処理剤が多剤式である場合、ここでいう「繊維処理剤のpH」とは、成分(A)を含む処理剤のpHを指す。成分(A)を含む処理剤が複数ある場合、それぞれの処理剤のpHに応じて、好ましい含有量の範囲が定まる。なお、前記の通り、複数の組成物を用時混合して単一の組成物として用いるものは、一剤式繊維処理剤に含まれ、「繊維処理剤のpH」とは、混合後のpHを指す。
【0037】
繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満の場合、繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、塩の場合は非解離型として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、更により好ましくは20質量%以下、更により好ましくは15質量%以下である。
すなわち、繊維処理剤のpHが2.0以上かつ6.5未満の場合、本発明の繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、前記観点から、塩の場合は非解離型として、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.2~30質量%、更に好ましくは0.5~25質量%、更により好ましくは1.0~20質量%、更により好ましくは1.0~15質量%である。
【0038】
繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下の場合、繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、塩の場合は非解離型として、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、また、繊維表面の感触を向上する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更により好ましくは60質量%以下である。
すなわち、繊維処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下の場合、本発明の繊維処理剤中における成分(A)の含有量は、前記観点から、塩の場合は非解離型として、好ましくは1.0~90質量%、より好ましくは2.0~80質量%、更に好ましくは5.0~70質量%、更により好ましくは10~60質量%である。
【0039】
〔成分(B):ラジカル開始剤〕
成分(B)は成分(A)を重合させるためのラジカル開始剤である。成分(B)は成分(A)と同じ組成物中に含有させてもよいが、用いる繊維処理剤を多剤式、例えば二剤式とし、成分(A)を含有する組成物(第1剤)とは別の組成物(第2剤)中に含有させてもよい。成分(B)としては、過酸化物開始剤、アゾ開始剤等が挙げられる。また、レドックス開始剤として酸化剤と還元剤の組み合わせを用いることもできる。
【0040】
過酸化物開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、p-ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0041】
アゾ開始剤としては、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩等が挙げられる。
【0042】
レドックス開始剤に用いられる酸化剤としては、上述の過酸化物開始剤として挙げた化合物に加え、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、酸素、オゾン等が挙げられる。また、レドックス開始剤に用いられる還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、鉄(II価)イオン、クロムイオン、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラート、テトラメチレンジアミン、ヒドロキシメチルスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
親水性である天然由来繊維の繊維処理剤は、溶液中の化合物の繊維への浸透を促進する観点から、水溶液であることが好ましく、それゆえ繊維処理剤に配合するラジカル開始剤としても、水溶性のラジカル開始剤が好ましい。水溶性のアゾ開始剤としては、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩等が好ましい。
【0044】
ここで、水溶性のラジカル開始剤とは、JIS K8001試薬試験方法通則に従い、ラジカル開始剤の粉末1gを水中に入れ、20℃±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜたとき、30分以内に溶けるために必要な水の体積(mL)によって規定される以下の溶解の程度を示す用語において、好ましくは「溶けにくい」乃至「極めて溶けやすい」、より好ましくは「やや溶けにくい」乃至「極めて溶けやすい」、更に好ましくは「やや溶けやすい」乃至「極めて溶けやすい」、更により好ましくは「溶けやすい」乃至「極めて溶けやすい」、更により好ましくは「極めて溶けやすい」に相当するラジカル開始剤をいう。
【0045】
〈ラジカル開始剤1gを溶かすのに要する水の量〉
極めて溶けやすい:1mL未満
溶けやすい:1mL以上10mL未満
やや溶けやすい:10mL以上30mL未満
やや溶けにくい:30mL以上100mL未満
溶けにくい:100mL以上1000mL未満
極めて溶けにくい:1000mL以上10000mL未満
ほとんど溶けない:10000mL以上
【0046】
さらに、耐熱性が低い天然由来繊維の処理剤としては、低い処理温度でも効率的に開裂しラジカル開始剤として機能するような、10時間半減期温度が低いラジカル開始剤を用いることがより好ましい。なかでも、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](10時間半減期温度:61℃)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン](10時間半減期温度:57℃)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(10時間半減期温度:56℃)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(10時間半減期温度:44℃)が好ましい。
【0047】
ここで、ラジカル開始剤の10時間半減期温度とは、10時間後にラジカル開始剤の50%が分解する温度をいう。ラジカル開始剤の10時間半減期温度は、高温に弱い天然由来繊維にダメージを与えずに低温で効率的に反応を進める観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下、更により好ましくは50℃以下であり、また、常温保管中に過剰な反応性を示さず保管・輸送に有利な観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上である。
【0048】
成分(B)は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。本発明の繊維処理剤中における成分(B)の含有量は、効率的に反応を進行し処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、塩や錯体の場合は、反応の主体となる化合物の非解離型に換算、例えば過酸化物開始剤であれば過酸化物、アゾ開始剤であればアゾ化合物、レドックス開始剤であれば酸化剤、還元剤それぞれの非解離型に換算し、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.5質量%以上であり、また、濃度過剰により生成する重合物の分子量が小さくなりすぎることを防ぐ観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは20質量%以下である。なお、成分(B)としてレドックス開始剤を使用する場合、前記成分(B)の含有量は、酸化剤と還元剤それぞれの非解離型化合物の合計量を示す。
【0049】
成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)は、効率的に反応を進行し処理後の天然由来繊維により高い形状持続性と、耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を付与する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上であり、また、好ましくは200以下、より好ましくは50以下である。なお、多剤式繊維処理剤であって、成分(A)と成分(B)とが別の処理剤に含まれる場合は、両剤を仮想的に混合した混合液中の質量比(B)/(A)が前記範囲内であればよい。
【0050】
〔成分(C):水〕
本発明の繊維処理剤は、水を媒体とする。本発明の繊維処理剤中における成分(C)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更により好ましくは40質量%以上であり、また好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下、更により好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下、更により好ましくは85質量%以下である。
すなわち、本発明の繊維処理剤中における成分(C)の含有量は、好ましくは10~98質量%、より好ましくは20~97質量%、更に好ましくは30~96質量%、更により好ましくは40~95質量%、更により好ましくは40~90質量%、更により好ましくは40~85質量%である。
【0051】
〔カチオン性界面活性剤〕
本発明の繊維処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、カチオン性界面活性剤を含有することができる。カチオン性界面活性剤は1個の炭素数8~24のアルキル基及び3個の炭素数1~4のアルキル基を有するモノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましい。
【0052】
好ましくは、少なくとも1種のモノ長鎖アルキル四級アンモニウム界面活性剤は、下記一般式(6)で表される化合物から選択される。
【0053】
【0054】
〔式中、R5は炭素数8~22の飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、R9-CO-NH-(CH2)p-又はR9-CO-O-(CH2)p-(R9は炭素数7~21の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を示し、pは1~4の整数を示す)を示し、R6、R7及びR8は独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシルアルキル基を示し、An-は塩化物イオン、臭化物イオン、メトサルフェートイオン又はエトサルフェートイオンを示す。〕
【0055】
好適なカチオン性界面活性剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアラミドプロピルトリモニウムクロリド等の長鎖四級アンモニウム化合物が挙げられ、これらは単独で使用することもでき、これらの混合物として使用することもできる。
【0056】
本発明の繊維処理剤中におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善し、本発明の効果を一層向上させる観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
【0057】
〔シリコーン〕
また、本発明の繊維処理剤は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善し、まとまりを良くする観点からシリコーンを含むことができる。シリコーンとしてはジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーンから選ばれる1種以上が好ましい。
【0058】
ジメチルポリシロキサンとしては、いずれの環状又は非環状のジメチルポリシロキサンポリマーを用いることもでき、その例としてSH200シリーズ、BY22-019、BY22-020、BY11-026、B22-029、BY22-034、BY22-050A、BY22-055、BY22-060、BY22-083、FZ-4188(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、KF-9088、KM-900シリーズ、MK-15H、MK-88(いずれも信越化学工業株式会社)が挙げられる。
【0059】
アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基又はアンモニウム基を有するあらゆるシリコーンを用いることができ、その例として、全部又は一部の末端ヒドロキシル基がメチル基等で末端封止されたアミノ変性シリコーンオイル及び末端封止されていないアモジメチコンが挙げられる。処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善し、まとまりを良くする観点から、好ましいアミノ変性シリコーンとして、例えば次式で示される化合物が挙げられる。
【0060】
【0061】
〔式中、R'は水素原子、水酸基又はRXを示し、RXは置換又は非置換の炭素数1~20の一価炭化水素基を示し、JはRX、R"-(NHCH2CH2)aNH2、ORX又は水酸基を示し、R"は炭素数1~8の二価炭化水素基を示し、aは0~3の数を示し、b及びcはその和が数平均で、10以上20000未満、好ましくは20以上3000未満、より好ましくは30以上1000未満、更に好ましくは40以上800未満となる数を示す。〕
【0062】
好適なアミノ変性シリコーンの市販品の具体例としては、SF8452C、SS3551(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、KF-8004、KF-867S、KF-8015(いずれも信越化学工業株式会社)等のアミノ変性シリコーンオイル、SM8704C、SM8904、BY22-079、FZ-4671、FZ4672(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)等のアモジメチコンエマルションが挙げられる。
【0063】
本発明の繊維処理剤中におけるシリコーンの含有量は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善し、本発明の効果を一層向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
【0064】
〔カチオン性ポリマー〕
また、本発明の繊維処理剤は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善する観点からカチオン性ポリマーを含有することができる。
【0065】
カチオン性ポリマーは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいい、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。すなわち、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基若しくはアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む水溶液のもの、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらのうち、すすぎ時やシャンプー時の感触の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時のまとまり易さ及び保湿性という効果及び剤の安定性を向上させる観点から、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むポリマー、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、カチオン化セルロース誘導体から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、カチオン化セルロース誘導体から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0066】
好適なジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体の具体例としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体(ポリクオタニウム-6、例えばマーコート100;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22、例えばマーコート280、同295;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7、例えばマーコート550;ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社)等が挙げられる。
【0067】
好適な4級化ポリビニルピロリドン誘導体の具体例としては、ビニルピロリドンコポリマーとジメチルアミノエチルメタクリレートとを重合して得られるポリマー(ポリクオタニウム11、例えばガフカット734、ガフカット755、ガフカット755N(以上、アシュランド社))が挙げられる。
【0068】
好適なカチオン化セルロースの具体例としては、ヒドロキシセルロースにグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを負荷したポリマー(ポリクオタニウム10、例えばレオガードG、同GP(以上、ライオン社)、ポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M(以上、アマーコール社))や、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム-4、例えばセルコートH-100、同L-200(以上、アクゾノーベル社))等が挙げられる。
【0069】
本発明の繊維処理剤中におけるカチオン性ポリマーの含有量は、処理後の天然由来繊維の表面の感触を改善する観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0070】
更に、本発明の繊維処理剤には、アスコルビン酸等の酸化防止剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、塩酸等のpH調整剤を含有することができる。
【0071】
〔pH〕
本発明の繊維処理剤のpHは、天然由来繊維のダメージ抑制及び耐久性向上の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上、更により好ましくは4.0以上であり、また、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは9.0以下である。なお、本発明におけるpHは25℃のときの値である。
すなわち、本発明の繊維処理剤のpHは、天然由来繊維のダメージ抑制及び耐久性向上の観点から、好ましくは2.0~11.0、より好ましくは3.0~10.0、更に好ましくは3.5~9.0、更により好ましくは4.0~9.0である。
なお、多剤式繊維処理剤の場合は、それぞれの剤のpHについて上記の条件が当てはまる。ただし、各剤のpHは近い方が好ましく、具体的には、最もpHの高い剤と最もpHの低い剤のpHの差は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.0以下、更により好ましくは0.5以下である。なお、前記の通り、複数の組成物を用時混合して単一の組成物として用いるものは、一剤式繊維処理剤に含まれ、「繊維処理剤のpH」とは、混合後のpHを指す。
【0072】
〔繊維処理剤の保管方法〕
以上のようにして製造された繊維処理剤を繊維に適用するまでに輸送・保管する場合、又は繊維処理剤を調製する前の原料を輸送・保管する場合には、成分(A)の重合物の酸化着色や輸送中の意図せぬ反応進行、再結晶を防ぐ目的で、保管温度を冷温又は高温としたり、保管容器内の空隙部分へ窒素充填したりすることもできる。
【0073】
繊維処理剤の保管温度は、凍結や再結晶が生ずるのを防ぐ観点からは、好ましくは1℃以上、より好ましくは2℃以上、更に好ましくは5℃以上であり、また、酸化着色や意図せぬ反応進行を防止する観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは15℃以下である。
【0074】
また、繊維処理剤の保管温度は、高濃度溶液の再結晶を防ぐ観点からは、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、また、酸化着色や意図せぬ反応進行を防止する観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0075】
〔繊維処理方法〕
(基本的処理)
本発明の繊維処理剤を用いて、下記工程(i)を含む方法で天然由来繊維を処理することにより、天然由来繊維の問題点である耐水性、耐熱性を向上させ、熱形状記憶能を付与できると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触を向上させることができる。
工程(i) 本発明の繊維処理剤に天然由来繊維を浸漬する工程
【0076】
本発明の繊維処理剤が多剤式である場合、多剤式繊維処理剤としては、例えば、成分(A)を含有する第1剤及び成分(B)を含有する第2剤からなる二剤式繊維処理剤が挙げられる。このような多剤式繊維処理剤を用いる場合、工程(i)は、各剤に天然由来繊維を順次浸漬する多段階処理の工程となる。例えば、前記の二剤式繊維処理剤を用いる場合、工程(i)は、成分(A)を含有する第1剤に天然由来繊維を浸漬した後、成分(B)を含有する第2剤に第1剤処理後の天然由来繊維を浸漬する二段階処理の工程、又は成分(B)を含有する第2剤に天然由来繊維を浸漬した後、成分(A)を含有する第1剤に第2剤処理後の天然由来繊維を浸漬する二段階処理の工程となる。
【0077】
工程(i)において、繊維処理剤に浸漬する天然由来繊維は、乾燥していても濡れていてもよい。天然由来繊維を浸漬する繊維処理剤の量は、耐水性、耐熱性を向上させ、熱形状記憶能を付与できると共に、伸縮性(粘り強さ)、表面の感触を向上する観点から、天然由来繊維の質量に対する浴比で(繊維処理剤の質量/天然由来繊維の質量)で、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは5.0以上、更により好ましくは10以上、更により好ましくは20以上であり、また好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは100以下である。
すなわち、上記浴比は、前記観点から、好ましくは2.0~500、より好ましくは3.0~250、更に好ましくは5.0~100、更により好ましくは10~100、更により好ましくは20~100である。
【0078】
また、工程(i)では、あらかじめ天然由来繊維をカーラー等で固定し、次いで、加熱下で、本発明の繊維処理剤に浸漬してもよい。このようにすることで、天然由来繊維に対し、熱形状記憶能と高い耐久性に加え、所望の形状を同時に付与することができる。
【0079】
工程(i)における繊維処理剤への天然由来繊維の浸漬は、加熱下において行うことが好ましく、この加熱は繊維処理剤を加温することで行われる。なお、この加熱は、加熱状態の繊維処理剤に天然由来繊維を浸漬することで行ってもよいが、低温の繊維処理剤に天然由来繊維を浸漬した後加熱することで行ってもよい。繊維処理剤の温度は、成分(A)と天然由来繊維内の繊維構成分子、例えばタンパク質分子との相互作用を大きくすることで本発明の効果を得るため、好ましくは20℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、また、天然由来繊維が熱により変性を起こし劣化するのを防ぐため、好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0080】
工程(i)における浸漬時間は、加熱温度によって適宜調整されるが、例えば、天然由来繊維に対する伸縮性向上効果を発現させる観点から、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間以上であり、また、天然由来繊維のダメージ抑制のため、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下である。
【0081】
工程(i)は、水分の蒸発が抑制される環境下で行われることが好ましい。水分の蒸発を抑制する具体的手段としては、天然由来繊維が浸漬されている繊維処理剤の容器を、水蒸気を透過しない素材でできたフィルム状物質、キャップ、フタ等で覆う方法が挙げられる。
【0082】
多剤式繊維処理剤を用いる多段階処理の場合、各段階ごとに、前述の浴比、温度、浸漬時間その他の条件が適用される。なお、多段階処理の場合、各段階の間に、すすぎ、乾燥等を行ってもよい。
【0083】
工程(i)の後、天然由来繊維をすすいでもよく、また、すすがなくてもよいが、余剰の成分(A)又はその重合物による天然由来繊維の表面の感触低下を防ぐ観点から、すすぐ方が好ましい。
【0084】
これらの処理によって、天然由来繊維内に成分(A)が浸透して重合し、繊維内の金属、例えば多価金属に強く配位することで、種々の効果を生じるものと思われる。
【0085】
〔更に追加してもよい処理〕
前述の工程(i)に加え、さらに、脱色、染色、及び疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げ、繊維伸縮性(粘り強さ)の更なる向上のための加熱処理から選ばれる1以上の各処理を追加して行ってもよい。
【0086】
この際、脱色、及び染色の各処理は、前述の工程(i)の前に行っても、後に行ってもよい。また、複数の処理を組み合わせて追加することもでき、脱色と染色の両方を追加する場合には、染色の前に脱色を行う必要があることを除けば、どの処理を先に行ってもよく、脱色と染色の間に別の処理を行うこともできる。
【0087】
一方、疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げ、繊維伸縮性(粘り強さ)のさらなる向上のための加熱処理は、前述の工程(i)の後に行う必要があるが、脱色、染色との処理順序は、特に限定されない。また、疎水性付与・低摩擦化のための表面仕上げ、繊維伸縮性(粘り強さ)の更なる向上のための加熱処理は、どちらを先に行ってもよい。
【0088】
(脱色)
脱色は、アルカリ剤、酸化剤及び水を含有する脱色剤組成物に天然由来繊維を浸漬することによって行われる。脱色剤組成物は通常2剤型であり、第1剤はアルカリ剤及び水を含有し、第2剤は酸化剤及び水を含有する。この2剤は、通常、別々に保管され、天然由来繊維を浸漬する前に混合される。
【0089】
好適なアルカリ剤としては、例えば、アンモニア及びその塩;アルカノールアミン(モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等)及びこれらの塩;アルカンジアミン(1,3-プロパンジアミン等)及びその塩;並びに炭酸塩(炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等);並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
脱色剤組成物(2剤型の場合、第1剤と第2剤の混合物)中におけるアルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7.5質量%以下である。
【0091】
好適な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン及び臭素酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸化剤の中でも過酸化水素が好ましい。
【0092】
脱色剤組成物中における酸化剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0093】
第1剤と第2剤を別々に保管する場合、第2剤の25℃におけるpHは、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。このpHは好適な緩衝剤で調整することができる。脱色剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは6.8以上であり、また、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10以下である。
【0094】
(染色)
染色は、染色剤組成物に天然由来繊維を浸漬することによって行われる。染色剤組成物は、染料を含有し、任意にアルカリ剤又は酸、酸化剤等を含有することができる。染料としては、直接染料、酸化染料及びこれらの組合せが挙げられる。
【0095】
直接染料の種類は特に限定されず、染色に適した任意の直接染料を使用することができる。直接染料の例としては、アニオン染料、ニトロ染料、分散染料、カチオン染料、並びに下記のHCレッド18、HCブルー18及びHCイエロー16からなる群より選択されるアゾフェノール構造を有する染料、並びにこれらの塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0096】
【0097】
カチオン染料としては、例えば、ベーシックブルー6、ベーシックブルー7、ベーシックブルー9、ベーシックブルー26、ベーシックブルー41、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン4、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ナチュラルブラウン7、ベーシックグリーン1、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド2、ベーシックレッド12、ベーシックレッド22、ベーシックレッド51、ベーシックレッド76、ベーシックバイオレット1、ベーシックバイオレット2、ベーシックバイオレット3、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー57及びベーシックイエロー87並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ベーシックレッド51、ベーシックオレンジ31、ベーシックイエロー87及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0098】
アニオン染料としては、例えば、アシッドブラック1、アシッドブルー1、アシッドブルー3、フードブルー5、アシッドブルー7、アシッドブルー9、アシッドブルー74、アシッドオレンジ3、アシッドオレンジ4、アシッドオレンジ6、アシッドオレンジ7、アシッドオレンジ10、アシッドレッド1、アシッドレッド14、アシッドレッド18、アシッドレッド27、アシッドレッド33、アシッドレッド50、アシッドレッド52、アシッドレッド73、アシッドレッド87、アシッドレッド88、アシッドレッド92、アシッドレッド155、アシッドレッド180、アシッドバイオレット2、アシッドバイオレット9、アシッドバイオレット43、アシッドバイオレット49、アシッドイエロー1、アシッドイエロー10、アシッドイエロー23、アシッドイエロー3、フードイエローNo.8、D&CブラウンNo.1、D&CグリーンNo.5、D&CグリーンNo.8、D&CオレンジNo.4、D&CオレンジNo.10、D&CオレンジNo.11、D&CレッドNo.21、D&CレッドNo.27、D&CレッドNo.33、D&Cバイオレット2、D&CイエローNo.7、D&CイエローNo.8、D&CイエローNo.10、FD&Cレッド2、FD&Cレッド40、FD&CレッドNo.4、FD&CイエローNo.6、FD&Cブルー1、フードブラック1、フードブラック2、並びにこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
これらの中でも好ましいアニオン染料は、アシッドブラック1、アシッドレッド52、アシッドバイオレット2、アシッドバイオレット43、アシッドレッド33、アシッドオレンジ4、アシッドオレンジ7、アシッドレッド27、アシッドイエロー3及びアシッドイエロー10並びにこれらの塩である。より好ましいアニオン染料は、アシッドレッド52、アシッドバイオレット2、アシッドレッド33、アシッドオレンジ4及びアシッドイエロー10並びにこれらの塩及び混合物である。
【0100】
ニトロ染料としては、例えば、HCブルーNo.2、HCブルーNo.4、HCブルーNo.5、HCブルーNo.6、HCブルーNo.7、HCブルーNo.8、HCブルーNo.9、HCブルーNo.10、HCブルーNo.11、HCブルーNo.12、HCブルーNo.13、HCブラウンNo.1、HCブラウンNo.2、HCグリーンNo.1、HCオレンジNo.1、HCオレンジNo.2、HCオレンジNo.3、HCオレンジNo.5、HCレッドBN、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCレッドNo.7、HCレッドNo.8、HCレッドNo.9、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、HCレッドNo.13、HCレッドNo.54、HCレッドNo.14、HCバイオレットBS、HCバイオレットNo.1、HCバイオレットNo.2、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCイエローNo.6、HCイエローNo.7、HCイエローNo.8、HCイエローNo.9、HCイエローNo.10、HCイエローNo.11、HCイエローNo.12、HCイエローNo.13、HCイエローNo.14、HCイエローNo.15、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、ピクラミン酸、1,2-ジアミノ-4-ニトロベンゾール、1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゾール、3-ニトロ-4-アミノフェノール、1-ヒドロキシ-2-アミノ-3-ニトロベンゾール及び2-ヒドロキシエチルピクラミン酸並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
分散染料としては、例えば、ディスパースブルー1、ディスパースブラック9及びディスパースバイオレット1及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
これらの直接染料は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、イオン性が異なる直接染料を併用することもできる。
【0103】
染色剤組成物中における直接染料の含有量は、十分な染色性を得る観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、配合性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0104】
染色剤組成物が染料として直接染料のみを含む場合は、天然由来繊維を染色するために酸化剤は不要であるが、天然由来繊維の色を明るくしたい場合は、酸化剤を組成物中に含有させることもできる。
【0105】
染色剤組成物が酸化染料を含む場合、通常は2剤型となり、第1剤は、酸化染料中間体(プレカーサー及びカプラー)及びアルカリ剤を含み、第2剤は過酸化水素等の酸化剤を含む。この2剤は、通常、別々に保管され、天然由来繊維を浸漬する前に混合される。
【0106】
酸化染料中間体としては、特に制限はなく、染色製品に通常使用されている公知のいずれかのプレカーサー及びカプラーを好適に使用することができる。
【0107】
プレカーサーとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-メトキシエチル-パラフェニレンジアミン、N-フェニルパラフェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、1,3-ビス(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-プロパノール、PEG-3,3,2’-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-アミノメチル-4-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-4-アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、2-アミノ-5-アセトアミドフェノール、3,4-ジアミノ安息香酸、5-アミノサリチル酸、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、2,5,6-トリアミノ-4-ヒドロキシピリミジン、4,5-ジアミノ-1-(4’-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-ヒドロキシエチルピラゾール並びにこれらの物質の塩及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
カプラーとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール、2,4-ジアミノ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4-ジメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4-ジアミノ-5-フルオロトルエン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4-ジクロロ-3-アミノフェノール、2-クロロ-3-アミノ-6-メチルフェノール、2-メチル-4-クロロ-5-アミノフェノール、N-シクロペンチル-メタアミノフェノール、2-メチル-4-メトキシ-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2-メチル-4-フルオロ-5-アミノフェノール、パラアミノオルトクレゾール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、5-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドール、7-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4-メチレンジオキシフェノール、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシアニリン、1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシ-3,5-ジアミノピリジン、2,3-ジアミノ-6-メトキシピリジン、2-メチルアミノ-3-アミノ-6-メトキシピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジン並びにこれらの物質の塩及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
染色剤組成物中におけるプレカーサー及びカプラーの含有量は、それぞれ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
【0110】
染色剤組成物が酸化染料を含む場合には、更にアルカリ剤を含む。好適なアルカリ剤としては、例えば、アンモニア及びその塩;アルカノールアミン(モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等)及びこれらの塩;アルカンジアミン(1,3-プロパンジアミン等)及びその塩;並びに炭酸塩(炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等);並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
染色剤組成物中におけるアルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7.5質量%以下である。
【0112】
染色剤組成物が酸化染料を含む場合における酸化剤を含む組成物(第2剤)は、酸化染料を含む組成物(第1剤)とは別に保管され、天然由来繊維を浸漬する前に混合される。好適な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン及び臭素酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸化剤の中でも過酸化水素が好ましい。
【0113】
染色剤組成物中における酸化剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0114】
第1剤と第2剤を別々に保管を行う場合、第2剤の25℃におけるpHは、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。このpHは好適な緩衝剤で調整することができる。第1剤と第2剤を混合してなる染色剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは6.8以上であり、また、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下、更に好ましくは10以下である。
【0115】
染色剤組成物が酸化染料を含む場合、前に例示した直接染料を更に含むこともできる。
【0116】
染色剤組成物は、好適には、更に以下に示す界面活性剤、コンディショニング成分等を含むことができ、好適には、溶液、エマルション、クリーム、ペースト及びムースの形態をとることができる。
【0117】
染色剤組成物の温度は、染色剤組成物を天然由来繊維内部に効率よく浸透・拡散させ、染色の効果をより高める観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0118】
(後加熱:繊維伸縮性(粘り強さ)の更なる向上のための加熱処理)
更に天然由来繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、天然由来繊維にテンションをかけて延伸しながら加熱することができる。この加熱には、天然由来繊維が小規模量であればヘアアイロンを用いることが好ましく、大規模量であれば巻き取り機でテンションをかけながら温風加熱するなどにより、同等の結果を得ることができる。
【0119】
加熱時の繊維延伸率は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.5%以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは10%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは2.0%以下である。
【0120】
加熱温度は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0121】
加熱時間は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上、更に好ましくは5秒以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下、更に好ましくは20秒以下である。
【0122】
加熱後、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、天然由来繊維に対しテンションをかけて延伸しながら、水中に静置することができる。
【0123】
この際の延伸率は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.5%以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは10%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは2.0%以下である。
【0124】
水温は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下である。
【0125】
水中での静置時間は、繊維の伸縮性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは30分以上であり、また、繊維へのダメージ抑制の観点から、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは3時間以下である。
【0126】
この操作により、工程(i)の処理条件次第では、繊維乾燥時において人毛に匹敵する伸縮性まで到達させることができる。
【0127】
(着色の抑制又は除去))
更に、成分(A)の配位性官能基がOH又はO-を有する基である場合、本発明の繊維処理剤による処理を行った天然由来繊維における着色を抑制又は除去する目的で、塩を含有する組成物によって処理することができる。塩としては、有機塩、無機塩のいずれを使用することもできる。具体的には、有機塩としては、エチドロン酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、カテコール-3,5-ジスルホン酸二ナトリウム一水和物、フィチン酸ナトリウム等のキレート作用のある有機塩のほか、メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、2-ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられ、無機塩としては、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩のほか、塩化ナトリウム、クロルヒドロキシアルミニウムなどが挙げられる。この目的における好ましい塩としては、有機塩では、還元性のある塩(チオール化合物の塩など)、金属キレート作用のある塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエデト酸のナトリウム塩、エチドロン酸二ナトリウム等のエチドロン酸のナトリウム塩など)が挙げられ、無機塩では、還元性のある塩(亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩)が挙げられる。なかでも、還元性のある塩と金属キレート作用のある塩を併用することがより好ましい。
【0128】
本発明の繊維処理剤による処理で生じる繊維着色は、茶褐色系の酸化着色(還元性の塩による処理で対処可)、及び黄色系のカテキン金属錯体発色(キレート剤による処理で対処可)の両者であると考えられ、それぞれに対応した脱色処理を実施することで、繊維の着色をより良く抑制することができると考えられる。
【0129】
塩を含有する組成物は、水溶液であることが好ましい。また、この組成物のpHは、天然由来繊維の耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を低下させない観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは4.0以上であり、また、好ましくは9.0以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.0以下である。
【0130】
前記組成物中における塩の含有量は、天然由来繊維の着色を抑制又は除去する効果を発現させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、還元作用により天然由来繊維の耐水性、伸縮性(粘り強さ、すなわち繊維引張時の高い破断伸度)及び耐熱性を低下させない観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
【0131】
塩を含有する組成物による処理温度は、天然由来繊維の着色を抑制又は除去する効果を発現させる観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、また、繊維のダメージを回避する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0132】
塩を含有する組成物による処理時間は、天然由来繊維の着色を抑制又は除去する効果を発現させる観点から、好ましくは1秒以上、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは1分以上であり、また、繊維のダメージを回避する回避する観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは15分以下である。
【0133】
上記各種の処理を行った繊維については、その後、通常用いられる繊維後処理、たとえば柔軟剤等の繊維処理剤による処理、コンディショナーやヘアトリートメント等のヘアケア剤による処理により、感触を向上させることもできる。
【0134】
以上の繊維処理方法によって、天然由来繊維を処理することにより、繊維内に成分(A)の重合物を含有することで、熱セットにより形状を付与することができ、耐水性、耐熱性、引張弾性率に優れ、天然由来繊維の伸縮性(粘り強さ)を高度に改善した繊維、好適には頭飾製品用繊維等を製造することができ、また、当該繊維を用いて各種の繊維製品、好適には頭飾製品等を製造することができる。
なお、本発明において好適な頭飾製品としては、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等が挙げられる。
【0135】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0136】
<1>
単一の組成物から構成される一剤式繊維処理剤又は複数の組成物から構成される多剤式繊維処理剤であって、その全組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する繊維処理剤。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【0137】
<2>
成分(A)における配位性官能基が、好ましくはピアソンの硬い塩基(Hard Base)を含む基である<1>に記載の繊維処理剤。
【0138】
<3>
成分(A)における配位性官能基が、好ましくはCOO-、O-、COOH、OH又はNH2を含む基、より好ましくはCOO-、O-、COOH又はOHを含む基、更に好ましくはカルボキシ基又はカテコール(1,2-ジヒドロキシベンゼン)のベンゼン環から1個の水素原子を除いた基を含む基である、<1>又は<2>に記載の繊維処理剤。
【0139】
<4>
成分(A)が以下の成分(A-1)又は(A-2)である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
(A-1)配位性官能基がCOOH、COO-又はCOOHの塩を含む基である芳香族化合物
(A-2)配位性官能基がOH、O-又はOHの塩を含む基である芳香族化合物
【0140】
<5>
成分(A-1)が、好ましくは次の成分(A-1-a)又は(A-1-b)である、<4>に記載の繊維処理剤。
(A-1-a)ビニル基又はビニリデン基をスチレン骨格の一部として有する芳香族化合物
(A-1-b)ビニル基又はビニリデン基をアクリロイル基又はメタクリロイル基の一部として有する芳香族化合物
【0141】
<6>
成分(A-1-a)が、好ましくは以下の一般式(1)で表される化合物、より好ましくは2-ビニル安息香酸、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸若しくはこれらから選ばれる2種若しくは3種の混合物、4-オキソ-4-((4-ビニルベンジル)オキシ)ブタン酸、又は2-(((4-ビニルベンジル)オキシ)カルボニル)安息香酸である、<5>に記載の繊維処理剤。
【0142】
【0143】
〔式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、A1~A5はそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシ基、一般式(2)で表される基、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。式(2)中、R2は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖の飽和若しくは不飽和の2価炭化水素基若しくは2価炭化水素オキシ基、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ベンジリデン基又はフェニルC2~C4アルキレン基を示す。ただし、A1~A5は少なくとも1つのカルボキシ基又は一般式(2)で表される基を含む。〕
【0144】
<7>
成分(A-1-b)が、好ましくは以下の一般式(3)で表される化合物、より好ましくは2-((2-(アクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニル)安息香酸、2-((2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニル)安息香酸、又は2-(4-(2-(2-(アクリロイルオキシ)エトキシ)エトキシ)ベンゾイル)安息香酸である、<5>に記載の繊維処理剤。
【0145】
【0146】
〔式(3)中、R3は水素原子又はメチル基を示し、B1~B4はそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシ基、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、Phはフェニレン基を示し、nは0~2の整数を示し、mは0又は1を示す。〕
【0147】
<8>
成分(A-2)が、好ましくは以下の一般式(4)で表される化合物、より好ましくは3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸 4-ビニルベンジルである、<4>に記載の繊維処理剤。
【0148】
【0149】
〔式(4)中、R4は水素原子又はメチル基を示し、E1~E5はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、一般式(5)で表される基、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示し、G1~G5はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アセチル基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基若しくはアルケニルオキシ基を示す。ただし、E1~E5は少なくとも1つの一般式(5)で表される基を含む。〕
【0150】
<9>
成分(B)が、過酸化物開始剤、アゾ開始剤、又はレドックス開始剤である<1>~<8>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0151】
<10>
過酸化物開始剤が、好ましくは過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、p-ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシドから選ばれる1種以上である、<9>に記載の繊維処理剤。
【0152】
<11>
アゾ開始剤が、好ましくは2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩から選ばれる1種以上、より好ましくは2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩から選ばれる1種以上、更に好ましくは2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩から選ばれる1種以上である、<9>に記載の繊維処理剤。
【0153】
<12>
レドックス開始剤が、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、p-ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、酸素、オゾンから選ばれる酸化剤と、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、鉄(II価)イオン、クロムイオン、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラート、テトラメチレンジアミン、ヒドロキシメチルスルフィン酸ナトリウムから選ばれる還元剤の組み合わせである、<9>に記載の繊維処理剤。
【0154】
<13>
繊維処理剤中における成分(B)の含有量(多剤式繊維処理剤の場合は成分(B)を含有する組成物中における成分(B)の含有量)が、非解離型として、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは20質量%以下である、<1>~<12>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0155】
<14>
成分(C)の含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更により好ましくは40質量%以上であり、また好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下、更により好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下、更により好ましくは85質量%以下である、<1>~<13>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0156】
<15>
繊維処理剤のpHが、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上、更により好ましくは4.0以上であり、また、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは9.0以下である、<1>~<14>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0157】
<16>
成分(A)を含有する処理剤のpHが2.0以上6.5未満であって、繊維処理剤中における成分(A)の含有量が、非解離型として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、更により好ましくは20質量%以下、更により好ましくは15質量%以下である、<1>~<15>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0158】
<17>
成分(A)を含有する処理剤のpHが6.5以上かつ11.0以下であって、繊維処理剤中における成分(A)の含有量が、非解離型として、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更により好ましくは60質量%以下である、<1>~<15>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0159】
<18>
繊維処理剤中(多剤式繊維処理剤であって、成分(A)と成分(B)とが別の処理剤に含まれる場合は、両剤を仮想的に混合した混合液中)における成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上であり、また、好ましくは200以下、より好ましくは50以下である、<1>~<17>のいずれか1項に記載の繊維処理剤。
【0160】
<19>
以下の成分(A)及び成分(C)を含む組成物と、以下の成分(B)及び成分(C)を含む組成物とを含む繊維処理剤キット。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【0161】
<20>
下記工程(i)を含む繊維処理方法。
工程(i) 全組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する単一の組成物又は複数の組成物に天然由来繊維を浸漬する工程
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【0162】
<21>
下記工程(i)を含む繊維処理方法。
工程(i) 全組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する単一の組成物又は複数の組成物に天然由来繊維を浸漬する工程
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物(ただし、ビニル安息香酸及びその塩を除く)
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【0163】
<22>
全組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する単一の組成物又は複数の組成物の繊維処理剤としての使用。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【0164】
<23>
全組成中に以下の成分(A)~(C)を含有する単一の組成物又は複数の組成物の繊維処理剤としての使用。
(A):1以上のビニル基又はビニリデン基と、配位性官能基とを有する芳香族化合物(ただし、ビニル安息香酸及びその塩を除く)
(B):ラジカル開始剤
(C):水
【実施例0165】
実施例1、比較例1~3
表1に示す処方の組成物を用い、下記方法に従って再生コラーゲン繊維を処理し、各種評価を行った。なお、各組成物のpHは、調製した組成物を室温(25℃)において、そのままpHメーター(HORIBA社製、F-52)で測定した。
【0166】
<処理方法>
1.再生コラーゲン繊維(※)0.50gの長さ22cmの毛束を、表中に示す浴比となる量の繊維処理剤が入った容器に浸漬し、容器の口を密閉し、容器ごと表中に示す温度のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し表中に示す時間加熱した。
※:カネカ社製再生コラーゲン繊維を市販エクステンション製品の形態で購入し、そこから繊維を切り取り毛束に小分けして評価に使用した。今回の評価では、エクステンション製品に繊維種としてUltima100%使用表記があり、色番手が30のホワイト、形状ストレートのものを使用した。
2.毛束の入った容器をウォーターバスから取り出し、室温に戻した。
3.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)でコーミングしながら乾かした。
【0167】
<評価用シャンプーの処方>
成分 (質量%)
ラウレス硫酸ナトリウム 15.5
ラウラミドDEA 1.5
EDTA-2Na 0.3
リン酸 pH7に調整する量
イオン交換水 バランス
合計 100
【0168】
<繊維引張時の平均破断伸度の増加>
耐水性、及び伸縮性(粘り強さ)の指標として、繊維引張時の平均破断伸度、すなわち引張で繊維が延伸されていったときに元の繊維長に対して何%延伸されたところで破断が起こるかについて、複数本(10本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて、以下の手順で行った。
1.毛束の根本から、繊維10本を切り取った。それぞれの繊維の根本と毛先の中間付近から3cmの繊維片を採取し、合計で10個の3cmの毛髪片を得た。
2.繊維片をDIA-STRON limited社製「MTT690 繊維自動引張り試験機」にセットした。水に浸漬した状態で30分放置後自動測定を開始し、繊維が水に浸漬された状態での平均破断伸度を求めた。数値が高いほど、伸縮性が高く粘り強さに優れ、耐久性にも優れることを示す。
次式に従い、市販品から切り取ったそのままの状態(未処理;比較例1)での繊維引張時の平均破断伸度(A%)を基準とし、処理後の毛束の平均破断伸度(B%)が、未処理の状態からどの程度(C%)増加したかを、表中に「繊維引張時の平均破断伸度の増加率 [%]」として記載した。
C(%)=B(%)-A(%)
【0169】
<繊維引張時の平均破断荷重の増加>
耐水性の指標として、繊維引張時の平均破断荷重を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて行った。また、数値としては複数本(10本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、以下の手順で行った。
1.毛束の根本から、繊維10本を切り取った。それぞれの繊維の根本と毛先の中間付近から3cmの繊維片を採取し、合計で10個の3cmの毛髪片を得た。
2.繊維片をDIA-STRON limited社製「MTT690 繊維自動引張り試験機」にセットした。水に浸漬した状態で30分放置後自動測定を開始し、繊維が水に浸漬された状態で延伸したときの破断荷重を求めた。数値が高いほど、ハリコシがあって外力による延伸に強く、耐久性にも優れることを示す。
次式に従い、市販品から切り取ったそのままの状態(未処理;比較例1)での繊維引張時の平均破断荷重(W0(gf))を基準とし、処理後の毛束の平均破断荷重(W1(gf))が、未処理の状態からどの程度(Y(gf))増加したかを、表中に「繊維引張時の平均破断荷重の増加量 [gf]」として記載した。
Y(gf)=W1(gf)-W0(gf)
【0170】
<高温アイロンセット時の収縮率>
耐熱性の指標として、高温アイロンセット時の収縮率を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて行った。また、数値としては複数本(5本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、以下の手順で行った。
1.上記<処理方法>処理直後の毛束の根本から、繊維5本を切り取り、印をつけた。これら処理後繊維5本の長さを測定し、平均値を記録(長さL1とする)した。次いで、これら印をつけた処理後繊維5本を、別途準備した未処理の再生コラーゲン繊維0.5gの毛束2本(計1g)に挟むように共に束ね、新たな毛束(以下大毛束)を作製し、大毛束全体に180℃設定のフラットアイロン(三木電器産業株式会社製/型番:AHI-938)を5cm/secの速度で10回かけた。
2.アイロン操作の後、大毛束から印をつけた処理後繊維5本を取り出し、改めてこれら印をつけた処理後繊維各5本の長さを測定し平均値を記録(長さL2とする)した。
3.高温アイロンセット時の収縮率 Sdry = { 1-(L2/L1)} x 100 [%]と定義した。Sdryが0%に近いほど、乾熱による収縮が起こりづらく、耐熱性に優れることを示す。
【0171】
<熱水加熱時の収縮率>
耐水性、耐熱性の指標として、熱水加熱時の収縮率を用いた。評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて行った。また、数値としては複数本(5本)の繊維で評価したときの平均値を用いた。評価は、以下の手順で行った。
1.毛束の根本から、繊維5本を切り取り、各繊維の長さの平均値を記録(長さL1とする)した上で、90℃のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し1分間加熱した。
2.加熱操作の後で、繊維5本を取り出してきて、タオルで軽く水気を切り、常温常湿で30分間乾燥した後、改めて各繊維の長さの平均値を記録(長さL2とする)した。
3.熱水加熱時の収縮率 Swet = { 1-(L2/L1)} x 100 [%]と定義した。Swetが0%に近いほど、湿熱による収縮が起こりづらく、耐熱性に優れることを示す。
【0172】
<熱形状記憶能>
熱形状記憶能の評価は、上記<処理方法>で処理された直後の毛束を用いて行った。なお、「I:形状付与(カール)」の結果の値が5%以下であった場合は、効果なしとして、以降の処理、評価は行わなかった。
・I:形状付与(カール)
1.再生コラーゲン繊維0.5gの長さ22cmの毛束を30℃の水道水で30秒間濡らした後、濡れた毛束を直径14mmのプラスチック製ロッドに巻き付け、クリップで固定した。
2.ロッドに巻き付けられた毛束ごと60℃のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し1分間加熱した。
3.毛束をウォーターバスから取り出し、25℃の水に1分間浸漬し、水から取り出して室温に戻した。
4.毛束をロッドから外し、クシを3回通した後、水から取り出してから3分後に、吊した状態で真横から写真を撮った。
【0173】
(評価基準)
未処理の毛束長さをL0(22cm)、処理後の毛束長さをLとして、次式に従って求められるカールアップ率=毛束長さ減少率(I)(%)をカールの巻き強さと定義した。
I=[(L0-L)/L0]×100
【0174】
・II:再形状付与(ストレート)
1.Iで評価した毛束に対し、クシを通して絡まりをとった後に、180℃設定のフラットアイロン(三木電器産業株式会社製/型番:AHI-938)で5cm/secの速度で6回スライドした。
2.水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立てた後、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルドライした。
3.吊るして20℃65%RHで12時間自然乾燥し、クシを通した後、吊した状態で真横から目視観察した。
【0175】
(評価基準)
未処理の毛束長さをL0(22cm)、処理後の毛束長さをLとして、次式に従って求められるストレート化率(ST)(%)をストレート化の達成度合いと定義した。ST=100%のとき、毛束は完全にストレート化されている。
ST=[1-(L0-L)/L0]×100
【0176】
・III:再再形状付与(カール)
1.IIで評価した毛束を30℃の水道水で30秒間濡らした後、濡れた毛束を直径14mmのプラスチック製ロッドに巻き付け、クリップで固定した。
2.ロッドに巻き付けられた毛束ごと60℃のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し1分間加熱した。
3.毛束をウォーターバスから取り出し、25℃の水に1分間浸漬し、水から取り出して室温に戻した。
4.毛束をロッドから外し、クシを3回通した後、水から取り出してから3分後に、吊した状態で真横から写真を撮った。
【0177】
(評価基準)
未処理の毛束長さをL0(22cm)、処理後の毛束長さをLとして、次式に従って求められるカールアップ率=毛束長さ減少率(I)(%)をカールの巻き強さと定義した。
I=[(L0-L)/L0]×100
【0178】
<表面感触の良さ>
表面の感触の評価は<処理方法>で処理された直後の毛束を用い、手で触れた際の感触の滑らかさについて、専門パネラー5名が下記基準によって評価し、5名の合計値を評価結果とした。
(評価基準)
5:未処理繊維(比較例1)に比べてきわめて滑らかな手触りである
4:未処理繊維(比較例1)に比べて滑らかな手触りである
3:未処理繊維(比較例1)に比べてわずかに滑らかな手触りである
2:未処理繊維(比較例1)の手触りと変わらない
1:未処理繊維(比較例1)よりもざらつき・きしみがあり手触りが劣る
【0179】
<繊維への着色抑制>
1.毛束の表裏それぞれについて、根本付近、中間付近、毛先付近を測色器(コニカミノルタ社製測色計CR-400)で測色し、合計6点の平均値を測色値とした(L,a,b)。
2.着色の程度は、未処理の色番手30ホワイトの毛束(※)(比較例1)を基準としてΔE*abで評価した。また、処理を行ったその日のうちに測色した。
(※)未処理の色番手30ホワイトの毛束
カネカ社製再生コラーゲン繊維を市販エクステンション製品の形態で購入し、そこから繊維を切り取り毛束に小分けして評価に使用した。この評価では、エクステンション製品に繊維種としてUltima100%使用表記があり、色番手が30のホワイト、形状ストレートのものを使用した。
ΔE*abは、未処理の色番手30ホワイトの毛束の測定値を(L0,a0,b0)、処理毛束の測定値を(L1,a1,b1)としたとき、〔(L1-L0)2+(a1-a0)2+(b1-b0)2〕1/2で定義され、着色抑制効果を以下の基準で判定した。
5:ΔE*ab ≦ 5.0
4:5.0< ΔE*ab ≦ 10.0
3:10.0< ΔE*ab ≦ 15.0
2:15.0< ΔE*ab ≦ 20.0
1:20.0< ΔE*ab
【0180】
【0181】
実施例2~11
表2に示す処方の第1剤及び第2剤を用い、下記方法に従って再生コラーゲン繊維を処理し、各種評価を行った。なお、各組成物のpHは、調製した組成物を室温(25℃)において、そのままpHメーター(HORIBA社製、F-52)で測定した。
なお、表中に記載した各成分の濃度は、それぞれ第1剤中、第2剤中における濃度である。
【0182】
<処理方法>
1.再生コラーゲン繊維(※)0.5gの長さ22cmの毛束を、表中に示す浴比となる量の第1剤が入った容器に浸漬し、容器の口を密閉し、容器ごと表中に示す温度のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し表中に示す時間加熱した。
※:カネカ社製再生コラーゲン繊維を市販エクステンション製品の形態で購入し、そこから繊維を切り取り毛束に小分けして評価に使用した。今回の評価では、エクステンション製品に繊維種としてUltima100%使用表記があり、色番手が30のホワイト、形状ストレートのものを使用した。
2.毛束の入った容器をウォーターバスから取り出し、室温に戻した。
3.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)でコーミングしながら乾かした。
4.毛束を、表中に示す浴比となる量の第2剤が入った容器に浸漬し、容器の口を密閉し、容器ごと表中に示す温度のウォーターバス(製造元:株式会社東洋製作所/型番:TBS221FA)に浸漬し表中に示す時間加熱した。
5.毛束の入った容器をウォーターバスから取り出し、室温に戻した。
6.毛束を容器から取り出し、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、評価用シャンプーで60秒泡立て、水道水の30℃流水にて30秒すすぎ、タオルで軽く水気を切った後、毛束を温風ドライヤー(テスコム社製、Nobby ホワイトNB3000)でコーミングしながら乾かした。この時点で、毛束は直毛のままであった。
【0183】
【0184】
なお、上記実施例において処理された毛束を目視観察した結果、実施例9及び10を除き、着色は認められなかった。実施例9及び10は若干の着色(薄い黄色)がみられたが、ΔE*abは5.0以下であった(評価5)。
【0185】
比較例4
下記に示す処方を用い、実施例1、比較例1~3での<処理方法>に従って、再生コラーゲン繊維を処理した。処理後の毛束について、前記同様に繊維への着色の程度を評価した結果、茶褐色の着色がみられた(評価1)
原料名 配合量[質量%]
ホルムアルデヒド 10.0
レゾルシン 15.0
水 残量
pH調整剤(塩酸又は水酸化ナトリウム) (pH調整量)
合計 100.0
pH(25℃):5.5
浴比 :40
加熱条件 :50℃3h