(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171318
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】光学仕上げ加工のための原位置形成ケイ素層を有する反応焼結炭化ケイ素
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20231124BHJP
C04B 41/88 20060101ALI20231124BHJP
C04B 35/573 20060101ALI20231124BHJP
C04B 41/91 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G02B5/08 A
C04B41/88 A
C04B35/573
C04B41/91 Z
G02B5/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081358
(22)【出願日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】17/663,956
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジウェン ワン
(72)【発明者】
【氏名】マイク アガジャニアン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス クームス
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン コッポラ
(72)【発明者】
【氏名】カヤノ コロナ
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042DA01
2H042DA12
2H042DC01
2H042DC05
2H042DC08
2H042DC11
2H042DD05
2H042DE07
(57)【要約】
【課題】 所望の、多相基板及び単相層を含むミラー装置を提供することである。
【解決手段】 上記多相層は、反応焼結炭化ケイ素(RB-SiC、またはSi/SiC)材料から形成される。上記単相層は、単体ケイ素から形成される。上記単相層は、原位置で、つまり、RB-SiC材料の形成と同時進行で形成される。上記単相層は、多相基板のケイ素に1つの部品として一体的に結合している。多層装置、例えばミラー装置を作る方法も記載される。1つのそのような方法は、炭化ケイ素及び炭素の多孔質塊を提供すること、溶融単体ケイ素を多孔質塊の中に浸透させてRB-SiC材料を形成すること、同時にケイ素を空洞内に流入させて研磨可能ケイ素の単相層を形成すること、空洞内のケイ素をRB-SiC材料に一体的に結合させること、ならびに所望により、単相層の表面を研磨することを含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー装置であって、
反応焼結炭化ケイ素材料を含む多相基板であって、第1面及び第2面を有する、前記多相基板、ならびに
単体ケイ素を含む単相層であって、第1面及び研磨面を有する、前記単相層
を含み、前記単相層の前記第1面に位置するケイ素が、前記多相基板の前記第2面にあるケイ素に1つの部品として一体的に結合している、前記ミラー装置。
【請求項2】
前記単体ケイ素を、相互連結した炭化ケイ素及び炭素の多孔質塊の中に浸透させる及び中を通り抜けさせること
によって前記単相層が形成される、請求項1に記載のミラー装置。
【請求項3】
前記多相基板及び前記単相層が円柱状であり、前記研磨面が円形である、請求項1に記載のミラー装置。
【請求項4】
前記研磨面が平面状である、請求項1に記載のミラー装置。
【請求項5】
前記基板の前記第2面が、平面状であり、前記研磨面に対して平行である、請求項4に記載のミラー装置。
【請求項6】
前記研磨面が非平面状である、請求項1に記載のミラー装置。
【請求項7】
前記研磨面と前記基板の前記第2面とが共通の凹面方向を有する、請求項6に記載のミラー装置。
【請求項8】
装置を作る方法であって、
炭化ケイ素及び炭素の多孔質塊を提供すること、
溶融単体ケイ素を前記多孔質塊の中に浸透させて多相反応焼結炭化ケイ素材料を形成すること、
前記溶融単体ケイ素を前記多孔質塊中の空洞の中に流入させて単体ケイ素の単相層を形成すること、ならびに
前記空洞内のケイ素を、前記反応焼結炭化ケイ素材料中のケイ素に1つの部品として一体的に結合させること
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記溶融単体ケイ素を前記多孔質塊中に浸透させる前に機械加工プロセスによって前記空洞を形成することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融単体ケイ素を前記空洞に充満させる溶湯静圧頭を維持することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記空洞内の単体ケイ素が、少なくとも0.5mmの厚さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記空洞内に前記溶融単体ケイ素が流入する前に、ケイ素炭素(silicon carbon)及び炭素の前記多孔質塊を使用して前記溶融単体ケイ素から不純物を除去すること
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
単体ケイ素の前記単相層を研磨することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
ミラー装置を作る方法であって、
炭化ケイ素及び炭素の多孔質塊を提供すること、
溶融単体ケイ素を前記多孔質塊の中に浸透させて多相反応焼結炭化ケイ素材料を形成すること、
前記溶融単体ケイ素を前記多孔質塊中の空洞の中に流入させて単体ケイ素の単相層を形成すること、ならびに
その後に単体ケイ素の前記単相層の表面を研磨すること
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記単相層の前記表面を研磨する前に、単体ケイ素の前記単相層から前記反応焼結炭化ケイ素材料の一部を除去すること
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記単相層を研磨することによって平面状のミラー面を形成することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記単相層を研磨することによって非平面状のミラー面を形成することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
反応焼結炭化ケイ素(RB-SiC、またはSi/SiC)材料は、相互連結した炭化ケイ素(SiC)粒子と炭素(C)とを含有する多孔質塊(porous mass)に溶融単体ケイ素(Si)を真空中または不活性雰囲気中で接触させる反応浸透によって形成される多相材料である。相互連結した炭化ケイ素粒子及び炭素の塊の中に溶融ケイ素が毛管作用によって引き込まれるような濡れ条件が作り出され、ケイ素は塊の中の炭素と反応してさらなる炭化ケイ素を形成する。得られたRB-SiC材料は、主として炭化ケイ素を含有するが、未反応の相互連結したケイ素も含有する。
【0002】
浸透プロセスは
図1及び
図2に例示される。
図1は、相互連結した炭化ケイ素粒子22及び炭素24を含有する多孔質塊(またはプリフォーム)20の模式断面図である。
図2は、溶融ケイ素を浸透させ、次いで冷却した後の、RB-SiC材料(セラミック材料)26の模式断面図である。浸透は、真空中または不活性雰囲気中で起こり得る。例示されるプロセスでは、溶融ケイ素は、反応性を有した状態でプリフォーム20(
図1)中に浸透し、その結果、RB-SiC材料26(
図2)は、3つの要素の微細構造を有する:(1)元の炭化ケイ素粒子22、(2)反応によって形成された炭化ケイ素(Si+C=>SiC)28、及び(3)残留(未反応)単体ケイ素30。ケイ素30は、その液体状態から凝固するにつれて膨張し、その結果、反応した凝固三成分微細構造体(solidified three-component microstructure)22、28、30が十分に緻密になる。
【0003】
このように、RB-SiC材料は、本明細書中で当該用語が使用されているように、炭化ケイ素粒子を含んだ連続ケイ素母材の十分に緻密な二相複合材である。RB-SiC材料は、米国特許出願第17/248,309号(2021年1月19日出願)、ならびに米国特許公開第2021/0331985号(2021年10月28日公開)、同第2018/0099379号(2018年4月12日公開)及び同第2017/0291279号(2017年10月12日公開)の中で言及されている。参照により、米国特許出願第17/248,309号、ならびに米国特許公開第2021/0331985号、同第2018/0099379号及び同第2017/0291279号の開示の全体を本明細書に援用する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、多相基板及び単相層を有するミラー装置に関する。多相層は、反応焼結炭化ケイ素(RB-SiC、またはSi/SiC)材料から形成される。単相層は、単体ケイ素から形成される。単相層の表面に位置するケイ素は、多相基板の表面にあるケイ素に1つの部品として一体的に結合している。単相層は、それがRB-SiC材料の形成と同時進行で(同時に)形成されるという意味で原位置(in-situ)形成され得る。
【0005】
本開示はまた、多層装置(multi-layer device)、例えばミラー装置(mirror device)を作る方法にも関する。方法は、炭化ケイ素及び炭素の多孔質塊を提供する工程、溶融単体ケイ素を多孔質塊の中に浸透させて多相RB-SiC材料を形成する工程、溶融ケイ素を多孔質塊中の空洞(cavity)の中に流入させてケイ素の単相層を形成する工程、ならびに空洞内のケイ素をRB-SiC材料中のケイ素に1つの部品として一体的に結合させる工程を含む。
【0006】
本開示はまた、ミラー装置を作る方法であって、炭化ケイ素及び炭素の多孔質塊を提供する工程、溶融単体ケイ素を多孔質塊の中に浸透させて多相RB-SiC材料を形成する工程、ケイ素を多孔質塊中の空洞の中に流入させて単体ケイ素の単相層を形成する工程、ならびにその後に単相層の表面を研磨する工程を含む、当該方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示に従って構築された基板のためのプリフォーム材料の一例の模式断面図である。
【
図2】
図1のプリフォーム材料から作られた反応焼結炭化ケイ素材料の模式断面図である。
【
図3】本開示に従って構築されたミラー装置の一例の上面図である。
【
図4】
図3に例示されるミラー装置の、
図3の線4-4に沿った断面図である。
【
図5】
図3に例示されるミラー装置の底面図である。
【
図6】本開示に従って構築された非機械加工プリフォームの一例の断面図である。
【
図7】
図6に例示される非機械加工プリフォームから作られた機械加工プリフォームの一例の断面図である。
【
図8】ケイ素浸透プロセスを開始した時の、
図7に例示される機械加工プリフォームの断面図である。
【
図9】浸透プロセス後の、
図7及び
図8に例示される機械加工プリフォームの断面図である。
【
図10】浸透プロセスを開始した時の、
図6に例示される非機械加工プリフォームから作られた機械加工プリフォームの別の例の断面図である。
【
図11】浸透プロセスを開始した時の、
図6に例示される非機械加工プリフォームから作られた機械加工プリフォームの別の例の断面図である。
【
図12】
図9の四角12の領域において
図9に例示される断面の一部を示している顕微鏡写真のコピーである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面の全体を通して、類似する要素は、類似する参照番号及び他の記号で示されている。図面は、本開示を例示及び説明する目的のために非限定的な例を示したものであり、縮尺通りに描かれてはいない。
【0009】
図3~5は、本開示に従って構築されたミラー装置40の一例を示す。装置40は、反応焼結炭化ケイ素(RB-SiC、またはSi/SiC)材料の円盤状基板42、及び単体ケイ素(Si)の円盤状層44(
図4)を含む。基板42は、上面46、底面48及び円柱状外壁50を有する。ケイ素層44は、上面52、底面54及び円柱状外壁56を有する。例示される装置40の複合材外壁50、56は円柱状であるが、本開示は、他の構成を有する装置にも関する。
【0010】
単相ケイ素層44(
図4及び
図5)は、溶融単体ケイ素を機械加工プリフォーム120(
図7)の中に流すことによって形成される。ケイ素の凝固は、ケイ素層44の上面52(
図4)を基板42の底面48に1つの部品として一体的に連結させる。例示される装置40では、円柱状壁50、56は互いに整列して複合材外壁50、56を画定しており、その結果、ケイ素層44の外壁56から半径方向の外側にはRB-SiC材料も炭化ケイ素もない。円盤状基板42の直径62は、円盤状ケイ素層44の直径62と同じである。ケイ素層44の底面54は、研磨されて光反射鏡を形成し得る。
【0011】
ミラー装置40を作る方法を
図6~9に例示する。方法の第1段階において、未機械加工(生)プリフォーム100(
図6)が提供され得る。未機械加工プリフォーム100は、
図1に例示される相互連結された炭化ケイ素(SiC)粒子22及び炭素(C)24の円柱状多孔質塊であり得る。未機械加工プリフォーム100(
図6)は、上面102、底面104及び円柱状外壁106を有する。未機械加工プリフォーム100の上面102から底面104までの高さ108は基板42の高さ110(
図4)よりも高く、未機械加工プリフォーム100の直径112(
図6)は基板42の直径62よりも大きい。
【0012】
非機械加工プリフォーム100の底面104(
図6)に円柱状空洞116(
図7)を機械加工によって掘り込んで
図7に例示される機械加工プリフォーム120が製造され得る。機械加工プリフォーム120の直径112は、未機械加工プリフォーム100の直径112(
図6)と同じであり得る。例示される構成では、円柱状空洞116は基板42(
図4)の底面48を画定し、円柱状空洞116(
図7)の直径62は基板42の直径62(
図4)と同じであり得る。空洞116は、所望のミラー曲率と一致するように、平坦(つまり平板状)及び非平板状(球状及び非球状を含む)を含めた任意の好適な形状を有し得る。空洞116の円柱状外周面126は、機械加工プリフォーム120の環状部分114によって取り囲まれ、かつ画定される。
図7に例示されるプリフォーム120は、
図1及び
図6に例示される多孔質材料の一体的な(一まとまりの)塊である。
【0013】
次に、
図8を参照して、顆粒、粒子及び/または粉末の形態であり得る単体ケイ素(原材料)130は、機械加工プリフォーム120の外壁106の周りに位置し、かつそれを取り囲んでいる。原材料130の上面136は空洞116の上面138よりも高い。プリフォーム120及びケイ素130は、好適な共通面132の上に支持されている。次に、真空下または不活性雰囲気下で熱を印加してケイ素130を溶融させ、その結果、溶融ケイ素は毛管作用によってプリフォーム120に浸透し、プリフォーム120の中を流れ、円柱状空洞116に充満する。溶融ケイ素の一部は機械加工プリフォーム120内で反応及び凝固し、その結果、プリフォーム120のすべて、または本質的にすべてがRB-SiC材料に変換される。溶融ケイ素の別の部分は、プリフォーム120内の多孔構造の中を通り抜け、空洞116の中に充満して及び中で凝固してケイ素層44(
図9)を形成する。所望により、ケイ素とRB-SiC材料の底面48との間の界面に間隙または細孔を何ら有さずに完全に空洞116に単体ケイ素を充満させてもよい。
【0014】
プリフォーム120の外側にはケイ素の余剰量134が残存する。例示されるプロセスでは、空洞116に単体ケイ素が完全に充満することを保証するのに十分な溶湯静圧がもたらされるように、プロセスの各段階においてプリフォーム120の外側の溶融ケイ素134の上面137が空洞116の上面138よりも高くされている。ケイ素層44の厚さは、所望の深さであり得る空洞116の深さによって制御され得、かつそれと等しくなり得る。このように、浸透プロセスは、プリフォーム120の中及び空洞116内に流入してついには空洞116に充満するように溶融ケイ素を誘導するための所望の溶湯静圧頭(metallostatic head for inducing molten silicon)を提供すべく、プリフォーム120を取り囲んでいる溶融ケイ素浴134の液面137が常に空洞上面138よりも高くなるように設定され得る。
【0015】
機械加工プリフォーム120の構成、及びプリフォーム120の環状底部142と共通面132との間における効果的な封止の生成は、空洞116に進入する溶融ケイ素のすべて、または実質的にすべてが最初にプリフォーム120中に浸透することをもたらす。この浸透から充満までのプロセスは、プリフォーム120の多孔質塊が原材料130から不純物、例えば酸化被膜(腐食生成物及び他の不純物)を濾別することを可能にする。不純物はプリフォーム120中に残留し、基板42のRB-SiC材料の中で凝固するが、そこでは不純物は害を及ぼさない。この浸透から充満までのプロセスに従うと、原材料130中の不純物は、研磨され得るケイ素層44の底面54まで到達しない。結果として、原材料130中に存在し得る不純物は表面54の品質に悪影響を及ぼさない。
【0016】
他方、所望によっては、機械加工プリフォームの底部環状部分に金属(ケイ素)流動の増強のための細長穴252(
図10)を設けてもよい。そのような細長穴252を有するプリフォーム250の一例は
図10に例示される。少なくともいくらかの溶融ケイ素がプリフォーム材料で最初に濾過されることなく細長穴252を通って空洞116内に直接流入することを許容するために、円柱状空洞116内に通路を形成している1つ、2つ、3つまたはそれよりも多いそのような細長穴252が存在していてもよい。
図10に示される構成は、
図8に示される構成ほど多くは濾過を提供しないが、空洞116内へのケイ素のより速やかな流入が不純物濾過に勝る優先事項とみなされる場合には望ましいとされ得る。
【0017】
再び
図9を参照して、空洞116内のケイ素が凝固した後、新しく形成されたRB-SiC材料の外環部分144(すなわち、
図9に破線で表されている面50、56の外側にある、複合材になるものよりも半径方向に外側に位置しているRB-SiC材料のすべて)は除去される。
図12に例示される構成では、ケイ素層44はまだ研磨されていない。ケイ素層44の底面54(
図9)を研磨してミラー装置40が製造され得る。
【0018】
ミラー装置40のRB-SiC材料は、低い熱膨張率、高い熱伝導率、低い密度及び高い剛性を有する。RB-SiC材料は、半導体製造装置を作るための装置の中、ならびに光学基板及びハウジングの中での使用を含めたある特定の精密機器市場に特によく適合し得る。しかしながら、RB-SiC材料は炭化ケイ素とケイ素との二相複合材であり、このことが、鏡面仕上げへと研磨されるその能力を制限している。光学研磨は、研磨される材料が単相材料である場合により簡単に実現される一定した微細構造材料除去速度で実施されることが望ましい。
【0019】
本開示の利点は、RB-SiC材料とは異なり、単相層44の単体ケイ素が容易に光学規格通りに研磨され得ることである。その結果として、ミラー装置40を被覆すること、あるいはそれに別の研磨可能材料、例えば、ニッケル平板、化学蒸着(CVD)炭化ケイ素またはプラズマ強化CVD(PECVD)ケイ素を供給する必要がなくなり得る。原位置形成ケイ素層44の存在は、被覆工程の必要性を排除し得、その結果、低減されたサイクル時間で効率的にミラー装置40が製造され得る。
【0020】
さらには、本開示は、非平坦鏡面を機械加工または研磨によって作るのに十分な備蓄となる厚い原位置ケイ素層44の形成を可能にする。単体ケイ素層44の上面及び研磨面52、54の間の厚さは、例えば少なくとも0.5mmであり得る。同程度に広い厚さでニッケル平板、CVD炭化ケイ素またはPECVDケイ素の被覆層を形成することは困難または不可能であろう。
【0021】
図11は、非機械加工プリフォーム100から形成された別の機械加工プリフォーム300を例示したものであり、未機械加工プリフォーム100の底面104にドーム形空洞302が機械加工によって掘り込まれている。例示される構成では、ドーム形空洞302は、基板の半球状(非平面状の一例)の底面を画定し、ドーム形空洞302の直径62は基板の直径62と同じであり得る。
【0022】
例示される空洞302は、所望の非平面状ミラー曲率と一致するように非平面状の下向き凹上面306を有し得る。空洞302の円柱状外周面126は、機械加工プリフォーム300の環状部分114によって取り囲まれ、かつそれによって画定される。プリフォーム300は、
図1及び
図6に例示される多孔質材料の一体的な(一まとまりの)塊である。浸透後であって所望のミラー面を形成するための研磨の前に、好適な機械加工プロセスによって環状部分114がRB-SiC材料の残部から除去され得る。
【0023】
浸透プロセスは、空洞302に単体ケイ素を充満させるために実施され得る。結果として得られる凝固ケイ素層の平面状の下面は、その後、非平面状の下向き凹となるように(つまり、上面306と同じ凹面方向を有するように)、かつ例えば少なくとも0.5mm、少なくとも1.0mm、少なくとも1.5mm、少なくとも2.0mmまたは少なくとも2.5mmの厚みとなるように研磨され得る。
【0024】
まとめると、本開示は、精密ミラー用途のための光学研磨に適した原位置形成ケイ素表面層を有するRB-SiC体に関する。単体ケイ素とRB-SiC材料とが熱膨張率(CTE)に関してほぼ一致しているため、本明細書に記載される類の原位置形成されたアセンブリは、温度に起因する応力をほとんど伴わずに安定的に操作され得、このことはアセンブリを、熱サイクルを伴う用途に十分に適したものにする。
【0025】
浸透自体は、RB-SiC材料の表面上にかなりのケイ素膜が形成されるまたは成長する機構を何らもたらさない。空洞116を設け、浸透中にそれを充満させることによって、好適に研磨されたミラーを形成するのに十分な厚さを有する単相ケイ素材料がもたらされ得る。
【0026】
RB-SiC材料は、純ケイ素に比べてはるかに大きな剛性、破壊靱性、強度、熱伝導率及び耐摩耗性を有する。それゆえ、研磨ケイ素表面以外にRB-SiC基板を有するミラー装置は、ケイ素のみから形成されたミラーに勝る多くの性能上の利点を提供する。本開示は、レーザー光線を正確に指向するためのガルバノミラー、他のレーザー関係のミラー、宇宙用ミラー、ステージ位置決めミラー及び高エネルギーレーザー(HEL)ミラーを含めた高性能ミラーの製造に適用できる。
【0027】
本出願はまた、セラミック特性が望ましいとはいえ摩擦学的理由、例えば、化学的シール、自動車用装置、例えば、ピストンライナー、ピストンピン及びロッカー、ならびに半導体デバイス製造用装置、例えばウェハスクラッチの防止または軽減のためのケイ素表面を有するウェハボートのために滑らかな単相のより低硬度の表面が必要とされる環境にも適用できる。
【0028】
本開示はまた、セラミック特性が所望または要求されるとはいえ機械加工を簡単にするために比較的柔らかい表面材料が好まれる環境、例えば、機械加工によってねじ山が形成されるケイ素の局所領域にも適用できる。
【0029】
別記の特許請求の範囲は、新規なものとして特許請求され、米国特許証による保護が望まれる。
【外国語明細書】