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特開2023-171320IREのためのインピーダンスベースのアブレーション指標
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  • 特開-IREのためのインピーダンスベースのアブレーション指標 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171320
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】IREのためのインピーダンスベースのアブレーション指標
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081400
(22)【出願日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】17/747,122
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ライラ・マージアーノ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK24
4C160KK37
4C160KK47
4C160KK63
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】医療装置を提供すること。
【解決手段】医療装置がプローブを含み、このプローブは、患者の体腔内への挿入用に構成された挿入チューブと、挿入チューブの遠位側に接続された遠位側アセンブリであって、体腔内の組織に接触するように構成された複数の電極を含む、遠位側アセンブリと、を含む。この装置は更に、電極のうちの2つ以上からなるグループに、グループ内の電極に接触する組織を不可逆的に電気穿孔するのに充分な振幅で電気パルスを印加するように構成された電気信号発生器と、電気パルスの印加の結果としてのグループ内の電極と更なる電極との間の電気インピーダンスの変化を測定し、電気インピーダンスの測定された変化に応答して組織のアブレーションの尺度を出力するように結合された、コントローラと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
プローブであって、
患者の体腔内への挿入用に構成された挿入チューブと、
遠位側アセンブリであって、前記挿入チューブの遠位側に接続され、前記体腔内の組織に接触するように構成されている複数の電極を含む、遠位側アセンブリと、
を含む、プローブと、
前記電極のうちの2つ以上からなるグループに、前記グループ内の前記電極に接触する前記組織を不可逆的に電気穿孔するのに充分な振幅で電気パルスを印加するように構成された、電気信号発生器と、
前記電気パルスの印加の結果としての前記グループ内の電極と更なる電極との間の電気インピーダンスの変化を測定し、前記電気インピーダンスの前記測定された変化に応答して前記組織のアブレーションの尺度を出力するように結合された、コントローラと、
を備える、医療装置。
【請求項2】
前記更なる電極は前記患者の皮膚表面に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラは、45kHz~55kHzの周波数範囲内の前記電気インピーダンスの前記変化を測定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記電気信号発生器が前記電気パルスを印加している間に前記電気インピーダンスの前記変化を測定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電気パルスの合間に前記電気インピーダンスの前記変化を測定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記アブレーションの前記尺度は、経時的な前記電気インピーダンスの前記測定された変化の積分に基づく数値指標を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記アブレーションの前記尺度は、前記電気インピーダンスと所定のインピーダンス閾値との比較に基づく数値指標を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記挿入チューブ及び前記遠位側アセンブリは、前記患者の心臓の心房内への挿入用に構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記電気パルスは二相パルス列を含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略的には医療装置に関し、詳細には、生体組織の不可逆的電気穿孔のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不可逆的電気穿孔(irreversible electroporation、IRE)は、組織と接触しているか又は組織に近接しているプローブを介して強い電界の短パルスを印加して、細胞膜内に恒久的、それゆえ致死的なナノ細孔を形成し、それにより細胞恒常性(内部の物理的条件及び化学的条件)を崩壊させる軟組織アブレーション技術である。IRE後の細胞死は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)に起因し、全ての他の熱又は放射線ベースのアブレーション技術におけるような壊死(細胞自体の酵素の作用を通じて細胞の破壊をもたらす細胞傷害)に起因しない。IREは一般的に、正確さ、並びに細胞外マトリックス、血流、及び神経の保全が重要な領域における腫瘍のアブレーションで使用される。
【0003】
米国特許第10,166,071号は、組織アブレーション治療を評価する方法を記載している。この方法は、標的組織に隣接して医療装置を位置付けることと、医療装置を用いて第1の周波数で第1のインピーダンスの大きさを測定することと、医療装置を用いて第2の周波数で第1のインピーダンス位相を測定することと、医療装置を用いて標的組織の少なくとも一部をアブレーションすることと、医療装置を用いて第3の周波数で第2のインピーダンスの大きさを測定することと、医療装置を用いて第4の周波数で第2のインピーダンス位相を測定することと、(i)第1及び第2のインピーダンスの大きさと(ii)第1及び第2のインピーダンス位相とのうちの少なくとも1つを比較することと、比較に少なくとも部分的に基づいて、アブレーション治療の有効性の表示を提供することと、を含む。
【0004】
米国特許出願公開第2021/0106249号は、アブレーション処置を受けた組織における損傷形成評価のための方法及びシステムを説明している。一例では、損傷形成を評価する方法は、医療装置を用いて組織の一領域からのベースラインインピーダンス測定値を記録することと、医療装置を用いて組織のこの領域をアブレーションすることと、医療装置を用いて組織のこの領域からの治療後インピーダンス測定値を記録することと、ベースラインインピーダンス測定値の少なくとも1つの振幅特性を識別すること及び治療後インピーダンス測定値の少なくとも1つの振幅特性を識別することと、ベースラインインピーダンス測定値の少なくとも1つの振幅特性と治療後インピーダンス測定値の少なくとも1つの振幅特性とを比較することと、比較に基づいて有効性の表示を生成することであって、有効性の表示は、十分な損傷形成と不十分な損傷形成とのうちの一方である、ことと、有効性の表示が不十分な損傷形成である場合、組織のこの領域を再アブレーションすることと、を含む。
【0005】
米国特許出願公開第2021/0361341号は、電気穿孔治療処置中にリアルタイムモニタリングを用いて組織部位をアブレーションするための医療システムを記載している。パルス発生器は、治療処置の前に治療前(pre-treatment、PT)試験信号を生成し、治療処置中に治療中(intra-treatment、IT)試験信号を生成する。治療制御モジュールは、PT試験信号及びIT試験信号からインピーダンス値を算出し、算出されたインピーダンス値に基づいて、電気穿孔の進捗及び治療のエンドポイントを、治療が進行している間にリアルタイムで判定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に記載する本開示の実施例は、身体組織の不可逆的電気穿孔のための改良された装置及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と一緒に読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
図1】本開示の一実施例による、IRE処置の過程における医療装置の概略描写図である。
図2】本開示の一実施例による、アブレーション指標を計算するための方法を示す医療装置の表示画面の概略図である。
図3】本開示の別の一実施例による、アブレーション指標を計算するための方法を示す医療装置の表示画面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
概論
IREは、主に非熱アブレーションプロセスであり、組織温度を最大でも数度上昇させるだけである。したがって、IREは、組織温度を20~70℃上昇させ、加熱により細胞を破壊するRF(高周波)アブレーションとは異なる。IREは、非ゼロのDC電圧成分による筋収縮を回避するために、二相性のパルス(正及び負のパルスの組み合わせ)を利用する。パルスは、双極モード又は単極モードのいずれかで印加され得る。双極モードでは、カテーテルの遠位端の2つの電極間にパルスの電界が印加される。単極モードでは、カテーテルの電極と患者の皮膚上の外部電極との間に電界が印加される。2つのモードを、以下の図1で更に詳述する。
【0009】
IREパルスは、500~2000Vのパルス振幅を有する高電圧パルスである。IREパルスは、典型的には、1つの列内に最大100個の二相パルスが含まれ、1つのパルスバースト内に最大100個のパルス列が含まれる複数のパルス列としてとして送達される。パルスの振幅は、典型的には、ピークパルス電圧によって表される。
【0010】
IRE処置を行う医師が、充分な深さ及び横方向寸法のアブレーション損傷が患者の組織に形成されたかを確認するのが困難である場合がある。エネルギーの印加が少なすぎると、アブレーション位置間に隙間が残り、例えば心筋組織内の不整脈源性電流経路を永久的に切断するには不十分になるおそれがある。一方、過剰なエネルギーの印加は、望ましくない付随的な組織損傷を引き起こすおそれがある。したがって、IRE処置で達成されるアブレーションの、例えば数値的アブレーション指標の形態の定量的尺度が必要とされている。RFアブレーションの分野で使用されるアブレーション指標は、IREに必ずしも関連しないパラメータに依存するため、IRE処置での使用には適さない。
【0011】
本明細書に記載の本開示の実施例は、IRE電極と更なる電極、例えば患者の皮膚表面上の外部電極との間の電気インピーダンスの測定に基づく、具体的にはIREアブレーション処置の過程にわたる電気インピーダンスの変化に基づくIREアブレーションの尺度を提供することによって、この必要性に対処する。この測定は、アブレーション対象の組織のインピーダンスの表示を提供する。(代替的又は追加的に、電気インピーダンスは、IRE電極対間で測定されてもよい。測定されたインピーダンスの変化に基づいて、IREアブレーション指標が計算される。インピーダンスは、アブレーションの前、最中、及び後に感知されてもよい。アブレーションの最中に、インピーダンスをIREパルス列内で感知することも、これらの列の間で感知することもできる。IREアブレーション指標は、インピーダンスの急激な変化、所定の閾値(絶対閾値又はパーセンテージ閾値)を跨ぐインピーダンス、及び/又はベースラインに対する時間積分インピーダンス変化などの特徴を反映することができる。
【0012】
本開示の実施例では、遠位端に複数の電極を備える遠位側アセンブリを有する挿入チューブを備えるカテーテルなどのプローブが、患者の心臓の心房などの患者の体腔内に挿入される。電気信号発生器が、電極のうちの2つ以上からなるグループに、電極に接触する組織を不可逆的に電気穿孔するのに充分な振幅で電気パルスを印加する。コントローラが、電気パルスの印加の結果としてのグループ内の電極と患者の皮膚に取り付けられた外部電極などの更なる電極との間の電気インピーダンスの変化を測定し、電気インピーダンスの測定された変化に基づいて組織のアブレーションの尺度を出力する。アブレーションのこの尺度は、以下で更に説明するように、アブレーション指標の形態をとることができる。
【0013】
システムの説明
図1は、本開示の一実施例による、IRE処置の過程における医療装置20の概略描写図である。医師22が、電気穿孔カテーテル26(カテーテルの更なる詳細は、以下で説明される)を使用して患者24についてIRE処置を行う。図示の実施例では、IRE処置は、カテーテル26の遠位端にある遠位側アセンブリ30を使用して、心臓27の心腔内で行われる。代替的な実施例では、IRE処置を、複数の電極を有する他の種類のカテーテルを使用して実行してもよく、また、本明細書を検討することによって当業者に明らかになるように、心臓27だけでなく他の臓器及び組織でも実行することができる。
【0014】
差し込み図36に示されるように、電気穿孔カテーテル26は、シャフト28及び遠位側アセンブリ30を備え、シャフトは、遠位側アセンブリを患者24の体腔内、この場合には心臓27の心腔内に挿入するための挿入チューブとして機能する。遠位側アセンブリ30は、バスケットのスパインに沿って分布した電気穿孔電極34を有するバスケット32を含む。遠位側アセンブリ30と、シャフト28の一部とが、差し込み図38にも示されている。代替的な実施例では、遠位側アセンブリ30は、他の種類の多電極構造を備えてもよい。
【0015】
医療装置20は、コントローラ42と、典型的にはコンソール46内に存在するIREパルス発生器44として構成された電気信号発生器とを更に備える。それらのコントローラ及び信号発生器は各々、1つ以上の回路構成要素を備え得る。この種の信号発生器の更なる詳細は、米国特許出願公開第2021/0161592号及び2020年11月9日に出願された米国特許出願第17/092,662号に記載されており、どちらの開示も、ここでの言及によって本明細書に援用される。カテーテル26は、ポート又はソケットなどのIREパルスをIREパルス発生器44から遠位側アセンブリ30に伝える電気インターフェース48を介して、コンソール46に接続される。コンソール40は、キーボード及びマウスなどの入力装置49と、表示画面58とを備える。
【0016】
コントローラ42は、IREパルス発生器44を制御するとともに、選択された電極34と「リターンパッチ」66としても知られる外部電極との間の電気インピーダンスを測定する。リターンパッチ66は、典型的には患者の胴体の皮膚上の患者24とIREパルス発生器44との間に外部から結合される。(リターンパッチ66の別の用語は、「不関電極」及び「バックパッチ電極」である。)あるいは、コントローラ42は、2つの選択された電極34間のインピーダンスを測定してもよい。
【0017】
コントローラ42は、通常、45kHz~55kHzの周波数範囲内の電気インピーダンスを測定する。本発明者らは、この範囲内の電気インピーダンスがIREの結果として著しく変化することを観察した。代替的又は追加的に、他の周波数範囲が使用されてもよい。本発明者らは、電気インピーダンスの変化が本質的に一過性である場合があり、おそらくアブレーション中に細胞から流れ出る細胞内液に関連することを見出した。このため、IRE処置中のインピーダンスの測定は、特に有益である。
【0018】
コントローラ42は、医師22(又は、他のオペレータ)から、電気穿孔処置の前及び/又は最中に、処置のための設定パラメータを受信する。例えば、医師22は、入力装置49を使用して、選択された電極34に印加されるIREパルスの電気的パラメータ及び時間的パラメータを定義する。医師22は更に、アブレーション指標を計算するための1つ以上のインピーダンス閾値及び計算方法を定義する。コントローラ42は、IREを実行するために、IREパルス発生器44に適切な制御信号を渡す。
【0019】
コントローラ42を、任意の適切な追跡技術を使用して、IRE処置の最中に電極34のそれぞれの位置を追跡するように更に構成することができる。例えば、遠位側アセンブリ30が、1つ以上の電磁位置センサ(図示せず)を備え得るが、その電磁位置センサは、1つ以上の磁場発生器50が発生させる外部磁場の存在下で、センサの位置によって変化する信号を出力する。コントローラ42は、これらの信号に基づいて心臓27内の電極34の位置を確認することができる。磁場発生器50は、ケーブル52及びインターフェース54を介して、コンソール46に接続される。代替的に又は追加的に、各電極34について、コントローラ42は、電極と、様々な異なる位置で患者24の体表面に結合された複数の外部電極56との間でのそれぞれのインピーダンスを確認し、次いで、これらのインピーダンス間の比率に基づいて心臓27内の電極34の位置を計算することができる。更に別の代案として、コントローラは、例えばその開示が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号に記載されているように、電磁式追跡法及びインピーダンスに基づく追跡法の両方を使用してもよい。
【0020】
コントローラ42は、表示画面58上にウィンドウ59を表示し、ウィンドウ59は、電極34の1つ以上の対の間で経時的に測定されたインピーダンス、並びに測定されたインピーダンスに基づいて計算されたアブレーション指標を示す。任意選択的に、ウィンドウ59は、組織の温度などの他のアブレーションパラメータも表示することができる。いくつかの実施例では、コントローラ42は、被験者の身体構造の関連画像60を、例えば遠位側アセンブリ30の現在の位置及び向きを示すように注釈を付けて、表示画面58上に表示する。
【0021】
コントローラ42及びIREパルス発生器44は、典型的には、アナログ要素及びデジタル要素の両方を備える。一実施例では、コントローラ42は、IREパルス発生器44によって電極34の各々に印加されるIREパルスを監視するため、及び電極間のインピーダンスを監視するためのそれぞれのアナログ-デジタル変換器(ADC)を有する複数の入力を有するアナログフロントエンドを備える。コントローラ42は、IREパルスを調整するためのコマンド及びウィンドウ59内に表示を生成するためのコマンドをIREパルス発生器44に送信するための複数のデジタル出力回路を更に備える。
【0022】
IREパルス発生器44は、典型的には、電気穿孔用のIREパルスを生成及び増幅するためのアナログ回路と、コントローラ42からのデジタル制御信号を受信するためのデジタル入力回路とを備える。
【0023】
あるいは、制御信号をコントローラ42から電気IREパルス発生器44へとアナログ形式で伝達することも、コントローラ及びIREパルス発生器が適切に構成されているならば可能である。
【0024】
典型的には、本明細書に記載されるコントローラ42の機能は、少なくとも部分的にソフトウェアに実装される。例えば、コントローラ42は、プログラムされたデジタルコンピューティングデバイスであって、少なくとも中央演算処理ユニット(CPU)とランダムアクセスメモリ(RAM)とを備えるデジタルコンピューティングデバイスを備えることができる。ソフトウェアプログラム及び/又はデータを含むプログラムコードは、CPUによる実行及び処理のためにRAMに読み込まれる。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でコントローラにダウンロード可能である。代替的又は追加的に、プログラムコード及び/又はデータは、磁気メモリ、光メモリ、又は電子メモリなどの非一時的の有形の媒体に提供されかつ/又は記憶され得る。このようなプログラムコード及び/又はデータがコントローラに提供されると、本明細書に記載のタスクを実行するように構成されたマシン又は専用コンピュータが実現される。
【0025】
IRE処置の開始時に、医師22は、バスケット32が折り畳まれた状態でシース62を通してカテーテル26を挿入し、カテーテルがシースから出た後にのみ、バスケットを意図された機能的形状へと膨張させる。この機能的形状が、差し込み図38に示されている。医師22は、カテーテルの近位端の付近にあるマニピュレータ64を使用して、かつ/又はシース62からの偏向を使用して、カテーテルを操作することで、カテーテル26を患者24の心臓27内の標的位置へと誘導する。医師22は、遠位側アセンブリ30を、例えば心臓の心房のうちの1つの中などの心臓27内の心筋組織などの組織と接触させる。次に、医師22及びコントローラ42の制御のもとで、IREパルス発生器44は、カテーテル26を通し、それぞれ異なる電気チャネル(図示せず)を介して電気穿孔電極34へと伝達されるIREパルスを生成する。
【0026】
IREの単極モードでは、電気穿孔電流は、1つ以上の電気穿孔電極34からリターンパッチ66に流れる。
【0027】
IREの双極モードでは、電気穿孔電流は、バスケット32上の電極34の対又はより大きなグループの間を流れる。
【0028】
コントローラ42は、電極34の対の間の電気インピーダンスを測定し、この測定されたインピーダンスに基づいてアブレーション指標を計算する。コントローラ42は、アブレーション指標を表示画面58上のウィンドウ59に出力する。アブレーション指標の計算の更なる詳細を以下に説明する。
【0029】
図2は、本開示の一実施例による、インピーダンス積分からアブレーション指標を計算するための方法を示す、装置20の表示画面58上のウィンドウ59の概略図である。
【0030】
ウィンドウ59は、水平時間軸104、垂直インピーダンス軸106、及び垂直温度軸108を有するグラフィック表示102を含む。グラフィック表示102は、測定時間の関数としてコントローラ42によって測定されたインピーダンスを示す曲線110と、例えば遠位側アセンブリ30内の温度センサ(図示せず)を使用して、時間の関数としてコントローラ42によって測定された温度を示す曲線112とを含む。数値表示領域114は、現在のインピーダンス116及び現在の温度118を示す。コントローラ42によって計算されたアブレーション指標が、テキストボックス120内に表示される。時点Tは、アブレーションの開始時点を示す。曲線110は、アブレーション処置中のインピーダンスの減少を示す。曲線112は、IRE処置に典型的な定常温度レベルを示す。
【0031】
コントローラ42は、最初に、アブレーションの開始前、すなわち時点Tよりも前の定常状態インピーダンスとして定義される定常状態インピーダンス値122を測定する。コントローラ42は、現在時点tまでの曲線110と定常状態インピーダンス値122との差の積分I(t)を連続的に計算する。コントローラ42は、例えば、積分の現在値の正規化又はスケーリングなどによって、積分I(t)を適切なアブレーション指標値に変換し、アブレーション指標をテキストボックス120内に表示して、医師22に見えるようにする。アブレーション指標が時間とともに増加するにつれて、医師22は、アブレーション指標のどの値でアブレーション処置を終了すべきかを決定することができる。
【0032】
図3は、装置20の表示画面58のウィンドウ59の概略図であり、本開示の一実施例による、(曲線110によって示されるような)測定されたインピーダンスを所定のインピーダンス閾値204と比較することによってアブレーション指標を計算するための方法を示す。図2のラベルが、図3の同じ又は類似の項目を示すために使用される。
【0033】
図2と同様に、コントローラ42は、アブレーションの開始前に定常状態インピーダンス値202を測定する。インピーダンス閾値204は、絶対レベル又は定常状態インピーダンス202に対するレベルのいずれかとして(医師22によって、又はコントローラ42によって自動的に)定義される。アブレーション処置中、コントローラ42は、曲線110として示されるインピーダンスを監視し、インピーダンスが閾値204を上回っているのか、又は下回っているのかをテキストボックス120内で医師22に示す。時点Tでインピーダンス110が閾値204を下回ると、コントローラ42は、閾値を跨いだことをテキストボックス120内の適切なメッセージによって示し、その時点で医師22はアブレーション処置を終了することを選択してもよい。閾値204に対するインピーダンス110のレベルを、閾値からの絶対距離もしくは相対距離として、又はバイナリ「上/下」メッセージとして示してもよい。加えて、コントローラ42は、アブレーション中に生成された損傷の質を示す数値指標を計算して表示してもよい。
【実施例0034】
実施例1:医療装置(20)であって、プローブ(26)であって、患者(24)の体腔内への挿入用に構成された挿入チューブ(28)と、遠位側アセンブリ(30)であって、挿入チューブの遠位側に接続され、体腔内の組織に接触するように構成されている複数の電極(34)を含む、遠位側アセンブリと、を含む、プローブと、電極のうちの2つ以上からなるグループに、グループ内の電極に接触する組織を不可逆的に電気穿孔するのに充分な振幅で電気パルスを印加するように構成された電気信号発生器(44)と、電気パルスの印加の結果としてのグループ内の電極と更なる電極との間の電気インピーダンスの変化を測定し、電気インピーダンスの測定された変化に応答して組織のアブレーションの尺度を出力するように結合された、コントローラ(42)と、を備える、医療装置。
【0035】
実施例2:更なる電極は患者の皮膚表面に取り付けられる、実施例1に記載の装置。
【0036】
実施例3:コントローラは、45kHz~55kHzの周波数範囲内の電気インピーダンスの変化を測定するように構成されている、実施例1に記載の装置。
【0037】
実施例4:コントローラは、電気信号発生器が電気パルスを印加している間に電気インピーダンスの変化を測定するように構成されている、実施例1に記載の装置。
【0038】
実施例5:コントローラは、電気パルス間の合間に電気インピーダンスの変化を測定するように構成されている、実施例1に記載の装置。
【0039】
実施例6:アブレーションの尺度は、経時的な電気インピーダンスの測定された変化の積分に基づく数値指標を含む、実施例1に記載の装置。
【0040】
実施例7:アブレーションの尺度は、電気インピーダンスと所定のインピーダンス閾値との比較に基づく数値指標を含む、実施例1に記載の装置。
【0041】
実施例8:挿入チューブ及び遠位側アセンブリは、患者の心臓(27)の心房内への挿入用に構成されている、実施例1に記載の装置。
【0042】
実施例9:電気パルスは二相パルス列を含む、実施例1に記載の装置。
【0043】
実施例10:治療のための方法であって、患者(24)の体腔内に挿入されて体腔内の組織と接触するプローブ(26)上の2つ以上の電極(34)からなるグループに、グループ内の電極が接触する組織を不可逆的に電気穿孔するのに充分な振幅で電気パルスを印加することと、電気パルスの印加の結果としてのグループ内の電極と更なる電極との間の電気インピーダンスの変化を測定することと、電気インピーダンスの測定された変化に応答して組織のアブレーションの尺度を出力することと、を含む、方法。
【0044】
本開示の様々な特徴が、明確性のために別個の実施例の文脈において記載されているが、これらはまた、単一の実施例に組み合わされて提供されてもよい。逆に、簡潔にするために単一の実施例の文脈において記載されている本開示の様々な特徴が、別々に又は任意の好適な部分的組み合わせで提供されてもよい。
【0045】
上に記載される実施例は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で具体的に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本開示の範囲は、本明細書の上記した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) 医療装置であって、
プローブであって、
患者の体腔内への挿入用に構成された挿入チューブと、
遠位側アセンブリであって、前記挿入チューブの遠位側に接続され、前記体腔内の組織に接触するように構成されている複数の電極を含む、遠位側アセンブリと、
を含む、プローブと、
前記電極のうちの2つ以上からなるグループに、前記グループ内の前記電極に接触する前記組織を不可逆的に電気穿孔するのに充分な振幅で電気パルスを印加するように構成された、電気信号発生器と、
前記電気パルスの印加の結果としての前記グループ内の電極と更なる電極との間の電気インピーダンスの変化を測定し、前記電気インピーダンスの前記測定された変化に応答して前記組織のアブレーションの尺度を出力するように結合された、コントローラと、
を備える、医療装置。
(2) 前記更なる電極は前記患者の皮膚表面に取り付けられる、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記コントローラは、45kHz~55kHzの周波数範囲内の前記電気インピーダンスの前記変化を測定するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記コントローラは、前記電気信号発生器が前記電気パルスを印加している間に前記電気インピーダンスの前記変化を測定するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記コントローラは、前記電気パルスの合間に前記電気インピーダンスの前記変化を測定するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0047】
(6) 前記アブレーションの前記尺度は、経時的な前記電気インピーダンスの前記測定された変化の積分に基づく数値指標を含む、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記アブレーションの前記尺度は、前記電気インピーダンスと所定のインピーダンス閾値との比較に基づく数値指標を含む、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記挿入チューブ及び前記遠位側アセンブリは、前記患者の心臓の心房内への挿入用に構成されている、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記電気パルスは二相パルス列を含む、実施態様1に記載の装置。
図1
図2
図3
【外国語明細書】