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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171322
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】樹脂膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20231124BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20231124BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C08G18/08
C08G18/73
C08G18/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081515
(22)【出願日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2022081676
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】東 昌嗣
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG02
4J034GA33
4J034GA36
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QB03
4J034QB08
4J034QB14
4J034RA07
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】耐屈曲性、耐衝撃性、柔軟性、及び伸び率に優れた樹脂膜の提供。
【解決手段】ポリイソシアネート組成物を含む樹脂組成物を硬化させた樹脂膜であって、前記樹脂膜は、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上の構造を有し、前記樹脂膜は、動的粘弾性測定により得られる損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上60℃以下であり、23℃の貯蔵弾性率E’が5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であり、且つ、tanδのピーク値が0.5以上である、樹脂膜。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート組成物を含む樹脂組成物を硬化させた樹脂膜であって、前記樹脂膜は、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上の構造を有し、前記樹脂膜は、動的粘弾性測定により得られる損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上60℃以下であり、23℃の貯蔵弾性率E’が5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であり、且つ、tanδのピーク値が0.5以上である、樹脂膜。
【請求項2】
動的粘弾性測定により得られる0℃における貯蔵弾性率E2’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である、請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項3】
前記ウレタン構造、前記ウレア構造、前記アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上は脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートと活性水素含有化合物との反応に由来するものである、請求項1又は請求項2に記載の樹脂膜。
【請求項4】
前記樹脂膜に含まれる前記ポリイソシアネート組成物のみを、硬化後の厚さが50μmとなるよう塗工し、23℃、50RH%の条件下で1週間養生させて湿気硬化した湿気硬化膜Aであって、前記湿気硬化膜Aの動的粘弾性測定により得られる損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上10℃以下である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項5】
23℃における引張試験による伸び率が150%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項6】
23℃における引張試験による破断強度が20MPa以上である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項7】
-10℃における引張試験の伸び率が50%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項8】
JIS K5600-5-1に準じた、マンドレルの直径が2mmのマンドレル屈曲試験において、耐屈曲性を有する、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項9】
デュポン衝撃試験機における、先端半径R1/4、重り加重500gの落下試験において、落下距離50cm以上の耐衝撃性を有する、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項10】
ガラス上に作製した湿気硬化膜Aのケーニッヒ硬度が60回以下である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項11】
ヘイズが5%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項12】
前記ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートを含み、
前記ポリイソシアネート組成物は、重量平均分子量Mwが1400以上である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項13】
前記ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、数平均分子量が500以上の2官能のポリオール(a1)及び数平均分子量が500以上の3官能以上のポリオール(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールと、から誘導される、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項14】
前記ポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基平均数が1.5以上6.5以下である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項15】
前記ポリイソシアネート組成物は、平均NCO%が1.0質量%以上9.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【請求項16】
前記樹脂膜は高柔軟性シートまたはフィルムである、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムや粘接着剤は、幅広い機能を有することから様々な分野で用いられている。そのような状況下、平坦な部位だけでなく、曲面部や折り曲げの動きがある部位のような、これまで適用が少なかった用途も増えてきている。
【0003】
プラスチックフィルムや粘接着剤の用途としては、例えば、加飾フィルムによる曲面部や凹凸面への貼り合わせ、フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイ、フレキシブル回路等が挙げられる。このような用途は、近年急速にニーズが増加している。ニーズの増加に伴い、曲面や屈曲に対して追従性がよく、耐衝撃性に優れる高柔軟性のフィルムや粘接着剤がもとめられている。また、シースルーが必要な用途、光学用途、ディスプレイ用途では、さらに透明性も求められる。
【0004】
例えば、特許文献1は、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートと数平均分子量500以上1500以下のポリカプロラクトンジオール及び/又はトリオールとを、反応させることを含む、伸展性を有するポリウレタン塗料用プレポリマーの製造方法を開示している。
【0005】
また、特許文献2は、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートと数平均分子量700以上1500以下のポリテトラメチレングリコールとを反応させて得られるプレポリマーと、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートと数平均分子量500以上1500以下のポリカプロラクトンポリオールを反応させて得られるプレポリマーと、の混合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61-028518号公報
【特許文献2】特開平02-001718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2においては、動的粘弾性の観点から、柔軟性に関与する性能(耐衝撃性や耐屈曲性)の関係性について全く着目されていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐屈曲性、耐衝撃性、柔軟性、及び伸び率に優れた樹脂膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]ポリイソシアネート組成物を含む樹脂組成物を硬化させた樹脂膜であって、前記樹脂膜は、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上の構造を有し、前記樹脂膜は、動的粘弾性測定により得られる損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上60℃以下であり、23℃の貯蔵弾性率E’が5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であり、且つ、tanδのピーク値が0.5以上である、樹脂膜。
[2]動的粘弾性測定により得られる0℃における貯蔵弾性率E2’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である、[1]に記載の樹脂膜。
[3]前記ウレタン構造、前記ウレア構造、前記アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上は脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートと活性水素含有化合物との反応に由来する、[1]又は[2]に記載の樹脂膜。
[4]前記樹脂膜に含まれる前記ポリイソシアネート組成物のみを、硬化後の厚さが50μmとなるよう塗工し、23℃、50RH%の条件下で1週間養生させて湿気硬化した湿気硬化膜Aであって、前記湿気硬化膜Aの動的粘弾性測定により得られる損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上10℃以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[5]23℃における引張試験による伸び率が150%以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[6]23℃における引張試験による破断強度が20MPa以上である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[7]-10℃における引張試験の伸び率が50%以上である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[8]JIS K5600-5-1に準じた、マンドレルの直径が2mmのマンドレル屈曲試験において、耐屈曲性を有する、[1]~[7]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[9]デュポン衝撃試験機における、先端半径R1/4、重り加重500gの落下試験において、落下距離50cm以上の耐衝撃性を有する、[1]~[8]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[10]ガラス上に作製した湿気硬化膜Aのケーニッヒ硬度が60回以下である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[11]ヘイズが5%以下である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[12]前記ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートを含み、
前記ポリイソシアネート組成物は、重量平均分子量Mwが1400以上である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[13]前記ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、数平均分子量が500以上の2官能のポリオール(a1)及び数平均分子量が500以上の3官能以上のポリオール(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールと、から誘導される、[1]~[12]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[14]前記ポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基平均数が1.5以上6.5以下である、[1]~[13]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[15]前記ポリイソシアネート組成物は、平均NCO%が1.0質量%以上9.0質量%以下である、[1]~[14]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
[16]前記樹脂膜は高柔軟性シートまたはフィルムである、[1]~[15]のいずれか1つに記載の樹脂膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐屈曲性、耐衝撃性、柔軟性、及び伸び率に優れた樹脂膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「ポリオール」とは、一分子中に2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、2つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
また、本明細書において、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」は、メタクリルとアクリルとを包含し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートとを包含するものとする。
【0012】
<樹脂膜>
本実施形態は、ポリイソシアネート組成物を含む樹脂組成物を硬化させた樹脂膜である。
本実施形態の樹脂膜は、硬度が低く、耐衝撃性、耐屈曲性、柔軟性及び透明性が良好である。
【0013】
「樹脂組成物」の一態様は、後述するポリイソシアネート組成物と、架橋性官能基含有ポリマーとを含む。
【0014】
樹脂膜の一態様は、ポリイソシアネート組成物を単独で硬化させた湿気硬化膜である。
樹脂膜の一態様は、樹脂組成物を硬化させた樹脂膜であり、高柔軟性シートまたはフィルムである。
湿気硬化膜の一態様は、ポリイソシアネート組成物を単独で硬化させた膜であって、高柔軟性シートまたはフィルムである。
湿気硬化膜の一態様は、樹脂膜であって、高柔軟性シートまたはフィルムである。
本実施形態において、膜厚が250μm以上の膜をシートとし、250μm未満の膜をフィルムとする。
硬化膜の一態様は、柔軟性樹脂組成物を硬化させた高柔軟性シートである。
【0015】
本実施形態の樹脂膜は、例えば、後述する樹脂組成物を、必要に応じて溶剤で希釈又は溶解して、コーター等を用いて、被着体上に塗工し、必要に応じて乾燥し、熱によって硬化させることにより製造することができる。
本実施形態の湿気硬化膜及び高柔軟性シートは、例えば、後述するポリイソシアネート組成物を、必要に応じて溶剤で希釈又は溶解して、コーター等を用いて、被着体上に塗工し、必要に応じて乾燥し、熱によって硬化させることにより製造することができる。
【0016】
樹脂膜は、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上の構造を有する。
ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上は脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートと活性水素含有化合物との反応に由来することが好ましい。
【0017】
樹脂膜がウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上の構造を有するか否かは、以下の方法により確認できる。
(樹脂膜が含む化学構造の確認方法)
樹脂膜が含む化学構造は、FT-IR、H-NMR、C-NMR、MS等を組み合わせて分析することで確認できる。
樹脂膜が湿気硬化膜である場合にも、同様に確認できる。
【0018】
樹脂膜は、動的粘弾性測定により得られる損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上60℃以下であり、23℃の貯蔵弾性率E’が5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であり、且つ、tanδのピーク値が0.5以上である。
【0019】
樹脂膜は、動的粘弾性測定により得られる0℃における貯蔵弾性率E2’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることが好ましい。
【0020】
(湿気硬化膜A)
湿気硬化膜の一態様は、後述するポリイソシアネート組成物のみを、ガラス上に塗工し、23℃、65%湿度環境下で168時間保管後に、空気中の水分とポリイソシアネート組成物との反応により形成された膜厚50μmの湿気硬化膜Aである。
【0021】
湿気硬化膜Aは、23℃環境下でのケーニッヒ硬度が60回以下であることが好ましく、59回以下であることがより好ましく、58回以下であることがさらに好ましい。ケーニッヒ硬度が上記上限値以下であることで、硬度が低く、柔軟性により優れる。一方、湿気硬化膜Aのケーニッヒ硬度の下限値は特に限定されないが、例えば、3回とすることができ、4回とすることができ、5回とすることができる。
【0022】
湿気硬化膜Aは、損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上10℃以下であることが好ましい。
損失弾性率E’’のピーク温度は-70℃以上5℃以下が好ましく、-70℃以上0℃以下がより好ましく、-70℃以上-10℃以下がさらに好ましく、-70℃以上-15℃以下がよりいっそう好ましい。
【0023】
(耐屈曲性)
本実施形態の樹脂膜は、JIS K5600-5-1に準じた、マンドレルの直径が2mmのマンドレル屈曲試験において、耐屈曲性を有することが好ましい。
屈曲試験に用いる試験片は、後述する樹脂組成物を、30mm×100mmのブリキ板上に50μm厚みに塗工し、80℃で30分加熱し、23℃、50RH%下で1週間養生し硬化した樹脂膜を、試験片とする。
【0024】
樹脂膜が耐屈曲性を有するとは、上記マンドレル屈曲試験でひびや割れ、剥がれが生じないことを意味する。
【0025】
(耐衝撃性)
本実施形態の樹脂膜は、デュポン衝撃試験機における、先端半径R1/4、重り加重500gの落下試験において、落下距離50cm以上の耐衝撃性を有することが好ましい。
耐衝撃性試験に用いる試験片は、後述する樹脂組成物を、40mm×100mm軟鋼板を50μm厚みに塗工し80℃で30分加熱し、23℃、50RH%下で1週間養生し硬化した樹脂膜を、試験片とする。
【0026】
「落下距離50cm以上の耐衝撃性を有する」とは、落下高さが50cm又はそれ以下の場合に、樹脂膜に割れや剥がれが観察されない状態を意味する。
(柔軟性)
ケーニッヒ硬度の測定は、ケーニッヒ硬度計(BYK Gardner社のPendulum hardness tester)により23℃環境下でのケーニッヒ硬度(回)を測定する。ケーニッヒ硬度が60回以下である湿気硬化膜は、硬度が低く、柔軟性が良好である。
【0027】
(ヘイズ値)
樹脂膜は、ヘイズメーターで測定されたヘイズ値が5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
ヘイズ値の測定に用いる試験片は、上記樹脂組成物を、ヘイズ値が0.1%であるガラス上に50μm厚みに塗工し、80℃で30分加熱後、23℃、50RH%下で1週間養生し硬化した樹脂膜を用いる。
樹脂膜が架橋性官能基含有ポリマーと混合した膜である場合、ヘイズ値が上記上限値以下であることで、透明性により優れる。
硬化膜のヘイズ値の下限値は特に限定されず、0.0%に近しいほど好ましいが、例えば、0.0%とすることができ、0.05%とすることができる。
【0028】
本実施形態の樹脂膜が樹脂組成物を硬化させた樹脂膜である場合、ヘイズメーターで測定されたヘイズ値が3.0%以下であることが好ましく、2.9%以下がより好ましく、2.8%以下であることがさらに好ましい。樹脂膜のヘイズ値が上記上限値以下であることで、透明性により優れる。一方、樹脂膜のヘイズ値の下限値は特に限定されず、0.0%に近しいほど好ましいが、例えば、0.0%とすることができ、0.05%とすることができる。
【0029】
本実施形態の樹脂膜が樹脂組成物を硬化させた樹脂膜である場合、ヘイズ値の測定に用いる試験片について説明する。
まず、後述するポリイソシアネート組成物と架橋性官能基含有ポリマーとをNCO/OH=1で混合した樹脂組成物を調製する。樹脂組成物を、ヘイズ値が0.1%であるガラス上に塗工し、80℃で30分加熱後、23℃、65%RH環境下で168時間保管後に、形成された膜厚50μmの樹脂膜を試験片とする。
【0030】
後述するポリイソシアネート組成物は、樹脂組成物の硬化剤成分としても使用することができる。すなわち、本実施形態の樹脂膜は、上述したポリイソシアネート組成物と、架橋性官能基含有ポリマー(好ましくは、アクリルポリオール、ポリカーボネートジオール、ウレタンプレポリマー)と、を含む樹脂組成物を硬化させてなる。
【0031】
樹脂組成物において、架橋性官能基含有ポリマー100質量部に対して、後述するポリイソシアネート組成物の含有量が0.01質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上190質量部以下であることがより好ましく、0.10質量部以上180質量部以下であることがさらに好ましい。
【0032】
樹脂組成物において、架橋性官能基含有ポリマーの水酸基に対するポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル比NCO/OHは、必要とする樹脂膜の物性により決定されるが、通常、0.01以上50以下である。
【0033】
樹脂組成物の一態様は、後述するポリイソシアネート組成物とポリオールとを含む。
ポリオールの一例は、ガラス転移温度が-20℃以上100℃以下であり、水酸基価が5mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であり、且つ、重量平均分子量が5.0×10以上×2.0×10以下である。
樹脂組成物の一態様は、後述するポリイソシアネート組成物と、ポリオールとをポリオールの水酸基に対するポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル比NCO/OHが1となる割合で含む。
樹脂膜の一態様は、樹脂組成物を80℃で30分間硬化させ、23℃、65%RH環境下で168時間保管後に形成された膜厚50μmの樹脂膜である。
【0034】
樹脂膜は、引張試験による伸び率が140%以上であることが好ましく、145%以上がより好ましく、150%以上であることがさらに好ましく、155%以上が特に好ましく、160%以上が最も好ましい。一方、前記伸び率の上限は、例えば、5000%とすることができる。
引張試験に使用する試験片は、樹脂膜を幅10mm、長さ100mmに切断した試験片を使用する。
引張試験は、得られた試験片を、つかみ具距離が20mmになるよう引張試験機にセットし、速度20mm/分で引っ張り、伸び率を測定する。
【0035】
樹脂膜は、上記と同様の条件の引張試験による破断強度が20MPa以上であることが好ましく、21MPa以上であることがより好ましく、22MPa以上であることがさらに好ましく、23MPa以上であることが特に好ましく、24MPa以上であることがよりさらに好ましく、25MPa以上であることが殊更好ましい。
上限は特に限定されないが、例えば100MPaとすることができる。
【0036】
樹脂膜は、上記と同様の条件の引張試験であって、-10℃における引張試験の伸び率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましく、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが好ましい。
【0037】
≪高柔軟性樹脂シート≫
樹脂膜が高柔軟性樹脂シートである場合、本実施形態の高柔軟性樹脂シートは、後述する柔軟性樹脂組成物を熱又は光によって硬化させてなる。
本実施形態の高柔軟性樹脂シートは、耐屈曲性、耐衝撃性、耐久性、及び透明性に優れる。
【0038】
本実施形態の高柔軟性樹脂シートにおいて、高柔軟性樹脂層の厚みとしては、使用される用途に応じて適宜決定することができる。例えば高柔軟性樹脂層の厚みは、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、2μm以上900μm以下であることがより好ましく、3μm以上800μm以下であることがさらに好ましく、5μm以上700μm以下であることが特に好ましい。
【0039】
本実施形態の高柔軟性樹脂シートは、例えば、柔軟性樹脂組成物を基材上に塗工し、必要に応じて乾燥し、その後硬化させることによって製造することができる。
柔軟性樹脂組成物を基材上に塗工する方法としては、例えば、アプリケーター、ロールコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等を使用して塗布する方法が挙げられる。
【0040】
前記塗工後に乾燥を行う場合は、例えば、得られた積層体を乾燥機等に入れ、例えば、50℃以上150℃以下の温度で、1分間以上30分間以下乾燥させる加熱乾燥方法が挙げられる。或いは、その他の乾燥方法としては、例えば自然乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥等が挙げられる。
【0041】
基材としては、特に限定されないが、例えば、上質紙、コート紙、キャストコート紙、感熱紙、インクジェット紙等の紙;織布、不織布等の布;ポリ塩化ビニル、合成紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリイミド等の樹脂フィルム;多孔質ポリプロピレンフィルム等の多孔質樹脂フィルム;PET、ポリオレフィン等にアルミニウム等を金属蒸着した蒸着フィルム;金属箔等が例示される。基材としては、表面に剥離処理が施されたものであってもよい。
【0042】
硬化時の加熱温度としては、40℃以上160℃以下とすることができ、50℃以上160℃以下とすることができ、60℃以上160℃以下とすることができ、70℃以上160℃以下とすることができ、75℃以上155℃以下とすることができ、80℃以上150℃以下とすることができる。
【0043】
本実施形態の高柔軟性樹脂シートは、下記の方法で算出されるゲル分率が70.0質量%以上100.0質量%以下であることが好ましく、80.0質量%以上100.0質量%以下であることがより好ましく、85.0質量%以上100.0質量%以下であることがさらに好ましく、90.0質量%以上100.0質量%以下であることが特に好ましく、95.0質量%以上100.0質量%以下であることが最も好ましい。ゲル分率が上記下限値以上であることで、耐久性、耐屈曲性、耐衝撃性及び硬化性により優れる。
【0044】
(ゲル分率の算出方法)
まず、柔軟性樹脂組成物を、厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、80℃で30分間乾燥して硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み50μmの柔軟性樹脂シートを備える積層体を得る。
次に得られた積層体から、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、高柔軟性樹脂シートを得る。
次に得られた高柔軟性樹脂シートを、23℃、50%RH環境下で7日間保管後にメッシュ状のシートに包み、アセトン中に23℃で1週間浸漬し、取り出した後、120℃で2時間乾燥する。これにより、アセトンに浸漬後に乾燥した粘着性樹脂シートの質量が得られる。
アセトンに浸漬前の粘着性樹脂シートの質量に対する、アセトンに浸漬後に乾燥した粘着性樹脂シートの質量の百分率を、ゲル分率として算出する。
【0045】
本実施形態の高柔軟性樹脂シートは、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造のうち、少なくとも1種以上の構造を有する。
本実施形態の高柔軟性樹脂シートが高柔軟性樹脂シートである場合、高柔軟性樹脂シートは、動的粘弾性測定における損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上60℃以下であり、23℃の貯蔵弾性率E’が5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であり且つ、tanδの値が0.5以上である。
【0046】
まず、後述する柔軟性樹脂組成物を厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、80℃で30分間乾燥して硬化させる。
その後、23℃、50%RH環境下で7日間保管し、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムからはがし、厚み50μm、幅10mm及び長さ40mmの高柔軟性樹脂シートを得る。
【0047】
本実施形態の高柔軟性樹脂シートが下記の方法で得られる高柔軟性樹脂シートである場合、高柔軟性樹脂シートのヘイズメーターで測定されたヘイズ値が2.0%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.6%以下であることがさらに好ましく、1.3%以下であることが特に好ましく、1.0%以下であることが最も好ましい。ヘイズ値が上記上限値以下であることで、透明性により優れる。一方、高柔軟性樹脂シートのヘイズ値の下限値は特に限定されず、0.0%に近しいほど好ましいが、例えば、0.0%とすることができ、0.01%とすることができる。
【0048】
≪ポリイソシアネート組成物≫
ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、数平均分子量が500以上の2官能のポリオール(a1)及び数平均分子量が500以上の3官能以上のポリオール(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールとを含む。
【0049】
ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量は、1400以上であり、1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、2500以上であることがさらに好ましく、3000以上であることが特に好ましい。ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量の上限値は、特に限定されないが、800000とすることができる。
ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する場合がある)により測定することができる。
【0050】
ポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、ポリイソシアネート組成物単独を硬化してなる硬化膜の硬度が従来よりも低く、柔軟性及び透明性が良好なものとなる。
【0051】
また、ポリイソシアネート組成物を含む樹脂組成物と用いると、引張試験による伸び率が150%以上と従来の樹脂膜よりも高い樹脂膜であって、且つ、引張破断応力が従来の樹脂膜より高い樹脂膜が得られる。
【0052】
さらに、ポリイソシアネート組成物を用いることで、JIS K5600-5-1に準じた、マンドレルの直径が2mmのマンドレル屈曲試験において、耐屈曲性を有する樹脂膜を製造できる。マンドレル屈曲試験に使用する試験片は、ブリキ板上に50μm厚みに塗工し、80℃で30分加熱し、23℃、50RH%下で1週間養生し硬化した樹脂膜である。
さらに、ポリイソシアネート組成物を用いることで、デュポン衝撃試験機における、先端半径R1/4、重り加重500gの落下試験において、落下距離50cm以上の耐衝撃性を有する樹脂膜を製造できる。
【0053】
次いで、本実施形態に用いるポリイソシアネート組成物の各構成成分について以下に詳細を説明する。
【0054】
≪ポリイソシアネート≫
ポリイソシアネートは、一分子中にジイソシアネートと後述するポリエステルポリオール1種以上に由来する構成単位を有する。
【0055】
ポリイソシアネート組成物は、ジイソシアネートと、数平均分子量が500以上の2官能のポリオール(a1)及び数平均分子量が500以上の3官能以上のポリオール(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上のポリオールと、から誘導されるポリイソシアネートと、の混合物であってもよい。
【0056】
ポリイソシアネートは、アロファネート構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレア構造、ウレタン構造、及びビウレット構造からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の構造を有することができる。中でも、ウレタン構造、アロファネート構造、ウレア構造、からなる群より選ばれる少なくとも1つの
構造を有することが好ましく、ウレタン構造、アロファネート構造、からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有することがより好ましく、ウレタン構造を有することがさらに好ましい。
【0057】
[ジイソシアネート]
ジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0058】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6-ジイソシアナト)ヘキサノエート、1,6-ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」と略記する場合がある)、1,9-ジイソシアナトノナン、1,12-ジイソシアナトドデカン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1、6-ジイソシアナトヘキサン等が挙げられる。これら脂肪族ジイソシアネートを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
脂環族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル1-イソシアナト-3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」と略記する場合がある)、4-4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、2,5-又は2,6-ジイソシアナトメチルノルボルナン等が挙げられる。これら脂環族ジイソシアネートを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
これら脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、いずれを単独で使用してもよく、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、柔軟性、耐衝撃性、耐屈曲性を向上させる観点から、脂肪族ジイソシアネートに対する脂環族ポリイソシアネートの質量比は、0/100以上30/70以下であることが好ましい。
【0061】
中でも、ジイソシアネートとしては、HDI、PDI、IPDI、水添XDI、又は水添MDIが好ましく、HDI、PDI又はIPDIがより好ましく、HDI、PDIがさらに好ましい。
【0062】
ポリイソシアネートの製造には、上述したジイソシアネートに加えて、以下に示すようなイソシアネートモノマーを更に用いてもよい。
【0063】
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
【0064】
(2)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
【0065】
[2官能ポリオール(a1)及び3官能以上のポリオール(a2)]
2官能ポリオール(a1)は、数平均分子量が500以上であり、且つ、2官能のポリオール(ジオール)である。
3官能以上のポリオール(a2)は、数平均分子量が500以上であり、且つ、3官能以上のポリオールである。
【0066】
2官能ポリオール(a1)の数平均分子量は500以上であり、800以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。2官能ポリオール(a1)の数平均分子量が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート組成物単独を硬化させてなる硬化膜の硬度が低く、伸び率が高く、柔軟性、耐屈曲性、耐衝撃性が良好なものとなる。
【0067】
一方で、2官能ポリオール(a1)の数平均分子量の上限値について、特に限定されないが、例えば、12000とすることができ、10000とすることが好ましく、8000とすることが好ましく、6000とすることが好ましく、5000とすることがより好ましく、4500とすることがさらに好ましい。
【0068】
2官能ポリオール(a1)の数平均分子量Mnは、例えば、GPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。また、2官能ポリオール(a1)を2種以上混合して用いる場合には、その混合物の数平均分子量を算出する。
【0069】
3官能以上のポリオール(a2)の数平均分子量は500以上であり、800以上であることが好ましい。3官能以上のポリオール(a2)の数平均分子量が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート組成物単独を硬化してなる硬化膜の硬度が低く、伸び率が高く、柔軟性、耐屈曲性、耐衝撃性、柔軟性が良好なものとなる。
【0070】
一方で、3官能以上のポリオール(a2)の数平均分子量の上限値について、特に限定されないが、例えば、12000とすることができ、10000とすることが好ましく、8000とすることが好ましく、6000とすることが好ましく、5000とすることがより好ましく、4500とすることがさらに好ましく、3500とすることが好ましく、3000とすることがより好ましく、2500とすることがさらに好ましい。
【0071】
3官能以上のポリオール(a2)の数平均分子量Mnは、例えば、GPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。また、ポリエステルポリオール(B)を2種以上混合して用いる場合には、その混合物の数平均分子量を算出する。
【0072】
2官能ポリオール(a1)としては、例えば、以下の(1)、(2)、(3)、(4)のいずれかのポリオール等が挙げられる。
【0073】
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、2価のアルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール。
【0074】
(2)ε-カプロラクトンを2価のアルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0075】
(3)ポリエーテルポリオール
(4)ポリカーボネートポリオール
【0076】
中でも、2官能ポリオール(a1)としては、2官能のポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0077】
市販されている2官能のポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ダイセル社製の商品名「プラクセル210」(数平均分子量1000、水酸基価112.8mgKOH/g、酸価0.09mgKOH/g)、「プラクセル210CP」(数平均分子量1000、水酸基価112.8mgKOH/g、酸価0.16mgKOH/g)、商品名「プラクセル212」(数平均分子量1250、水酸基価90.8mgKOH/g、酸価0.09mgKOH/g)、商品名「プラクセル212CP」(数平均分子量1250、水酸基価90.2mgKOH/g、酸価0.14mgKOH/g)、「プラクセル220」(数平均分子量2000、水酸基価56.7mgKOH/g、酸価0.06mgKOH/g)、「プラクセル220CPB」(数平均分子量2000、水酸基価57.2mgKOH/g、酸価0.16mgKOH/g)、「プラクセル220CPT」(数平均分子量2000、水酸基価56.6mgKOH/g、酸価0.02mgKOH/g)、「プラクセル230」(数平均分子量3000、水酸基価37.6mgKOH/g、酸価0.07mgKOH/g)、「プラクセル240(数平均分子量4000、水酸基価28.5mgKOH/g、酸価0.07mgKOH/g)等が挙げられる。
【0078】
2官能のポリカプロラクトンポリオールとしては、耐加水分解性及びポリイソシアネート合成時の反応安定性の観点から、酸価がより低いものを用いることが好ましい。
【0079】
3官能以上のポリオール(a2)としては、3官能以上のポリオールであればよく、3官能以上10官能以下のポリオールが好ましく、3官能以上7官能以下のポリオールがより好ましく、3官能以上5官能以下のポリオールがさらに好ましく、3官能以上4官能以下のポリオールが特に好ましく、3官能のポリポリオール(トリオール)が最も好ましい。
【0080】
3官能以上のポリオール(a2)としては、例えば、以下の(1)、(2)、(3)、(4)のいずれかのポリオール等が挙げられる。
【0081】
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、3価のアルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール。
【0082】
(2)ε-カプロラクトンを3価のアルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0083】
(3)ポリエーテルポリオール
(4)ポリカーボネートポリオール
【0084】
中でも、3官能以上のポリオール(a2)としては、3官能のポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0085】
市販されている3官能のポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ダイセル社製の商品名「プラクセル305」(数平均分子量550、水酸基価305.6mgKOH/g、酸価0.50mgKOH/g)、「プラクセル308」(数平均分子量850、水酸基価195.3mgKOH/g、酸価0.38mgKOH/g)、「プラクセル309」(数平均分子量900、水酸基価187.3mgKOH/g、酸価0.20mgKOH/g)、「プラクセル312」(数平均分子量1250、水酸基価136.1mgKOH/g、酸価0.38mgKOH/g)、「プラクセル320」(数平均分子量2000、水酸基価85.4mgKOH/g、酸価0.29mgKOH/g)等が挙げられる。
【0086】
本実施形態に用いるポリイソシアネート組成物において、ジイソシアネート100質量部に対して、2官能ポリオール(a1)の含有量(仕込み量)は、0.1質量部以上900質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上800質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上700質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以上600質量部以下であることが特により好ましい。
【0087】
2官能ポリオール(a1)の含有量が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート組成物単独を硬化してなる硬化膜の硬度が低く、伸び率が高く、柔軟性、耐屈曲性、耐衝撃性、が良好なものとなる。
【0088】
また、2官能ポリオール(a1)の含有量が上記下限値以上であることで、高柔軟性シートが得られる。一方で、2官能ポリオール(a1)の含有量が上記上限値以下であることで、ポリイソシアネート組成物の製造時にゲル化することなく液体状態を維持でき、伸び率及び破断強度が高く、且つ、耐屈曲性、耐衝撃性、柔軟性が良好なものとなる。
【0089】
2官能ポリオール(a1)の含有量は、例えば、ポリイソシアネート組成物の製造時のジイソシアネート及び2官能ポリオール(a1)の配合量、並びに、得られたポリイソシアネート組成物の収率から算出することができる。
【0090】
本実施形態に用いるポリイソシアネート組成物において、ジイソシアネート100質量部に対して、3官能以上のポリオール(a2)の含有量(仕込み量)は、0.1質量部以上900質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上800質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上700質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以上600質量部以下であることが特により好ましい。
【0091】
3官能以上のポリオール(a2)の含有量が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート組成物単独を硬化してなる硬化膜の硬度が低く、伸び率が高く、柔軟性、耐屈曲性、耐衝撃性、がより良好なものとなる。
【0092】
また、高柔軟性シートが得られる。一方で、3官能以上のポリオール(a2)の含有量が上記上限値以下であることで、ポリイソシアネート組成物の製造時にゲル化することなく液体状態を維持でき、且つ、高柔軟性シートとしたときの強度がより良好なものとなる。
【0093】
3官能以上のポリオール(a2)の含有量は、例えば、ポリイソシアネート組成物の製造時のジイソシアネート及び3官能以上のポリオール(a2)の配合量、並びに、得られたポリイソシアネート組成物の収率から算出することができる。
【0094】
≪ポリイソシアネート組成物の製造方法≫
ポリイソシアネートは、上記ジイソシアネートと、数平均分子量が500以上の2官能のポリオール(a1)及び数平均分子量が500以上の3官能以上のポリオール(a2)からなる群より選ばれる1種以上のポリオールとを反応させて得られる。以下、2官能のポリオール(a1)及び3官能以上のポリオール(a2)を併せて、単にポリオールと称する場合がある。
【0095】
2官能のポリオール(a1)及び3官能以上のポリオール(a2)を組みあわせて用いる場合に、2官能のポリオール(a1)及び3官能以上のポリオール(a2)は、それぞれ単独又は混合物として用いることができる。混合物として用いる場合には、ジイソシアネートと反応させる前に混合してもよいし、それぞれのポリオールを単独でジイソシアネートと反応させてポリイソシアネートとした後で混合することもできる。
【0096】
すなわち、ポリイソシアネート組成物の製造方法としては、例えば、ジイソシアネートと、2官能のポリオール(a1)と、3官能以上のポリオール(a2)とを同時に反応させてポリイソシアネート組成物を得る方法;ジイソシアネートと、2官能のポリオール(a1)と反応させたものと、ジイソシアネートと、3官能以上のポリオール(a2)とを反応させたものとを混合して、ポリイソシアネート組成物を得る方法;ジイソシアネートと、2官能のポリオール(a1)又は3官能以上のポリオール(a2)とを反応させた後、残りのポリオールをさらに反応させてポリイソシアネート組成物を得る方法等が挙げられる。
【0097】
ポリオールとジイソシアネートとの反応は下記のように行われる。反応温度は、通常、室温(23℃程度)以上200℃以下であり、40℃以上180℃以下が好ましく、50℃以上180℃以下が好ましく、60℃以上180℃以下が好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、反応時間がより短くなり、一方、上記上限値以下であれば、望ましくない副反応によるポリイソシアネートの粘度上昇及びゲル化をより回避でき、生成するポリイソシアネートの着色もより回避できる。
【0098】
反応は、無溶媒で行なってもよく、イソシアネート基に不活性な任意の溶媒を用いて行なってもよい。また、必要であれば、イソシアネート基と水酸基の反応を促進するため、
公知の触媒を用いてもよい。
【0099】
≪ポリイソシアネート組成物の物性≫
本実施形態に用いるポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基の含有率(NCO基含有率)の平均値が、実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で、ポリイソシアネート組成物の総質量に対して1.0質量%以上9.0質量%以下であることが好ましく、1.3質量%以上8.8質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上8.6質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上8.5質量%以下であることがさらに好ましく、2.5質量%以上8.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0100】
NCO基含有率は、例えば、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基を過剰のアミン(ジブチルアミン等)と反応させ、残ったアミンを塩酸等の酸で逆滴定することによって求めることができる。
【0101】
本実施形態に用いるポリイソシアネート組成物は、平均イソシアネート官能基数が、柔軟性樹脂組成物の硬化性及び柔軟性を高める観点から、1.5以上6.5以下が好ましく、1.8以上6.3以下が好ましく、1.9以上6.1以下がより好ましい。
【0102】
本実施形態のポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート官能基数は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0103】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、酢酸ブチル、酢酸エチル等の溶剤で希釈した場合に、配合等のハンドリング性の観点から、23℃下で液体であることが好ましい。
【0104】
≪柔軟性樹脂組成物≫
本実施形態に用いる柔軟性樹脂組成物は、上述したポリイソシアネート組成物と、ガラス転移温度が-20℃以上の架橋性官能基含有ポリマーと、を含むことが好ましい。
【0105】
本実施形態に用いる柔軟性樹脂組成物は、上述したポリイソシアネート組成物を含むことで、従来よりも高柔軟性を有する硬化性、透明性、耐屈曲性、耐衝撃性、及び耐久性に優れる高柔軟性樹脂シートが得られる。
【0106】
次いで、本実施形態に用いる柔軟性樹脂組成物に含まれる各成分について以下に詳細を説明する。
【0107】
[架橋性官能基含有ポリマー]
架橋性官能基含有ポリマーのガラス転移温度は-20℃以上であり、-15℃以上であることが好ましく、-10℃以上であることが好ましく、-5℃以上であることが好ましく、0℃以上であることが好ましく、5℃以上であることが好ましい。
架橋性官能基含有ポリマーのガラス転移温度Tgが上記範囲内であることで、柔軟性樹脂組成物の硬化物の強度がより優れる傾向がある。
【0108】
架橋性官能基含有ポリマーのガラス転移温度は、例えば、架橋性官能基含有ポリマーを溶解又は分散した溶液中の有機溶剤及び水分を減圧下で飛ばした後、真空乾燥したものを、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定した値をガラス転移温度として用いることができる。
【0109】
架橋性官能基含有ポリマーの重量平均分子量Mwは、1.0×10以上5.0×10以下であることが好ましく、1.5×10以上4.0×10以下であることがより好ましく、2.0×10以上3.5×10以下であることがさらに好ましく、2.5×10以上3.0×10以下であることが特に好ましい。
【0110】
架橋性官能基含有ポリマーの重量平均分子量が上記範囲内であることで、耐屈曲性、耐衝撃性、及び耐久性がより優れる傾向がある。ポリオールの重量平均分子量Mwは、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0111】
架橋性官能基含有ポリマーとしては、上記ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基と反応し得る架橋性官能基を含有するポリマーであればよい。架橋性官能基としては、例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、ビニル基等が挙げられるが、中でも、水酸基、エポキシ基、カルボキシ基、又はビニル基が好ましく、水酸基、エポキシ基、又はカルボキシ基がより好ましく、水酸基、又はカルボキシ基がさらに好ましく、水酸基が特に好ましい。すなわち、架橋性官能基含有ポリマーとしては、ポリオールが好ましい。
【0112】
架橋性官能基含有ポリマーとして具体的には、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エポキシ樹脂、含フッ素ポリオール、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー等が挙げられる。
中でも、架橋性官能基含有ポリマーとしては、アクリル系ポリマー又はウレタン系ポリマーであることが好ましい。
【0113】
[脂肪族炭化水素ポリオール]
前記脂肪族炭化水素ポリオールとしては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物等が挙げられる。
【0114】
[ポリエーテルポリオール]
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール又はポリテトラメチレンエーテルグリコール。
【0115】
(2)アルキレンオキサイドに多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール。
【0116】
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオールを媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリンやプロピレングリコール等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
【0117】
[ポリエステルポリオール]
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオールが挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂。
【0118】
(2)ε-カプロラクトンを多価アルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0119】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、ハロゲン化型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、及びこれらエポキシ樹脂をアミノ化合物、ポリアミド化合物等で変性した樹脂等が挙げられる。
【0120】
[含フッ素ポリオール]
含フッ素ポリオールとしては、例えば、参考文献1(特開昭57-34107号公報)、参考文献2(特開昭61-275311号公報)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0121】
[アクリル系ポリマー]
アクリル系ポリマーは、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリルモノマー単位を1種以上含むものである。架橋性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、又はビニル基を含むことが好ましく、水酸基又はカルボキシ基を含むことがより好ましく、水酸基を含むことがさらに好ましい。
【0122】
アクリル系ポリマーは、架橋性官能基を単独で含んでいてもよく、異なる種類の架橋性官能基を2種以上組み合わせて含んでいてもよい。すなわち、アクリル系ポリマーは、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリルモノマーを単独で重合させてなるものであってもよく、異なる種類の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリルモノマーを2種類以上組み合わせて共重合させてなるものであってもよい。
【0123】
アクリル系ポリマーは、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリルモノマー単位に加えて、架橋性官能基を有さない重合性アクリルモノマー単位を1種以上含むことができる。
【0124】
すなわち、アクリル系ポリマーは、1種以上の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリルモノマーを重合させる、或いは、1種以上の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリルモノマーと1種以上の架橋性官能基を有さない重合性(メタ)アクリルモノマーとを共重合させることで得られる。
【0125】
アクリル系ポリマーは、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマー単位に加えて、エステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位を1種以上含むことが好ましい。
すなわち、アクリル系ポリマーは、1種以上の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーと1種以上のエステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合させなるものであってもよい。(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、架橋性官能基を有していてもよく、有さなくてもよいが、有さないことが好ましい。
【0126】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーが有するエステル基末端の炭素数としては、1以上18以下であることが好ましい。
【0127】
架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル、アクリル酸-4-ヒドロキシルブチル、アクリル酸-6-ヒドロキシヘキシル、アクリル酸-8-ヒドロキシルオクチル等の水酸基を持つアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-4-ヒドロキシルブチル、メタクリル酸-6-ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸-8-ヒドロキシルオクチル等の水酸基を持つメタクリル酸エステル類。
【0129】
(iii)グリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
(iv)アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸。
(v)メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
【0130】
エステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
アクリル系ポリマーは、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマー単位に加えて、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のその他のモノマー単位を更に含むことができる。
すなわち、アクリル系ポリマーは、1種以上の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーを重合させる、或いは、1種以上の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーと1種以上のその他のモノマーとを共重合させることで得られる。その他のモノマーは、架橋性官能基を有していてもよく、有さなくてもよいが、有さないことが好ましい。
【0132】
その他モノマーとしては、例えば、以下の(i)~(ii)に示すもの等が挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
(i)(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の不飽和アミド。
【0134】
(ii)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル。
【0135】
さらに、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとして、特開平1-261409号公報(参考文献3)、及び、特開平3-006273号公報(参考文献4)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を用いてもよい。
【0136】
重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0137】
例えば、上記のモノマー成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリル系ポリマーを得ることができる。
【0138】
水系ベースのアクリル系ポリマーを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0139】
[硬化剤成分との含有量比]
本実施形態に用いる柔軟性樹脂組成物において、架橋性官能基含有ポリマー100質量部に対して、上述したポリイソシアネート組成物の含有量が0.01質量部以上200.0質量部以下であることが好ましく、0.03質量部以上180.0質量部以下であることがより好ましく、0.05質量部以上160.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0140】
〔その他成分〕
本実施形態に用いる柔軟性樹脂組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、架橋性官能基含有ポリマーと反応しうるポリイソシアネート組成物以外の硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、粘着付与樹脂、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0141】
硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシ基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0142】
硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0143】
溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0144】
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0145】
≪柔軟性樹脂組成物の製造方法≫
柔軟性樹脂組成物は、従来公知の方法により製造できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、コーター等によりキザイフィルムに塗工した後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。
【0146】
本実施形態に用いる柔軟性樹脂組成物は、軽量化、柔軟化、密着性の向上効果を図るため、発泡させてもよい。発泡方法としては、化学的方法、物理的方法、熱膨張型のマイクロバルーンの利用等がある。各々、無機系発泡剤若しくは有機系発泡剤等の化学的発泡剤又は物理的発泡剤等の添加、或いは熱膨張型のマイクロバルーンの添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。
【0147】
また、中空フィラー(既膨張バルーン)を添加することにより、軽量化、柔軟化、密着性の向上を図ってもよい。
【0148】
本実施形態の柔軟性樹脂組成物は、密着性調整のため可塑性樹脂を添加してもよい。可塑性樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系粘樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。これら可塑性樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、可塑性樹脂の軟化点は90℃以上160℃以下であることが好ましい。
【実施例0149】
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0150】
<試験項目>
実施例及び比較例で製造されたポリイソシアネート組成物について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0151】
[物性1]
(イソシアネート基含有率)
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。
次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。
次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。
【0152】
次いで、ポリイソシアネート試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有率(NCO%)(質量%)を算出した。なお、NCO%は溶剤を含まない状態で算出される値を採用した。
【0153】
イソシアネート基含有率(質量%)=(V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0154】
[物性2]
(数平均分子量及び重量平均分子量)
数平均分子量及び重量平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量である。
【0155】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0156】
[物性3]
(平均イソシアネート官能基数)
ポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート官能基数(平均NCO数)は、下記式により求めた。なお、式中、「Mn」は、数平均分子量を意味し、上記「物性2」において測定された値を用いた。「NCO%」は、上記「物性1」において算出された値を用いた。
【0157】
平均イソシアネート官能基数=(Mn×NCO%×0.01)/42
【0158】
[物性4]
(ガラス転移温度Tg)
樹脂組成物作製用ポリオール及び架橋性官能基含有ポリマーのガラス転移温度は、以下の方法で測定した。
アクリルポリオール溶液又は架橋性官能基含有ポリマー溶液中の有機溶剤及び水分を減圧下で蒸発させた後、真空乾燥したものを、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定した値をガラス転移温度として用いた。
【0159】
[湿気硬化膜の作製]
各ポリイソシアネート組成物をそれぞれ単独で、アプリケーターを用いて剥離フィルム上に塗工し、23℃、65%湿度環境下で168時間保管後、膜厚50μmの湿気硬化膜を得た。
【0160】
[評価1]
(湿気硬化膜の柔軟性)
湿気硬化膜について、ガラス上に形成した膜をケーニッヒ硬度計(BYK Gardner社のPendulum hardness tester)により23℃環境下でのケーニッヒ硬度(回)を測定した。ケーニッヒ硬度が60回以下であるものを硬度が低く、柔軟性が良好であると評価した。
【0161】
[樹脂組成物の作製]
各ポリイソシアネート組成物と、樹脂組成物作製用ポリオールと、を、樹脂組成物作製用ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル比NCO/OHが1になる割合で混合し、樹脂組成物を得た。
【0162】
[樹脂膜の製造]
得られた各樹脂組成物を、アプリケーターを用いてポリプロピレン(PP)板上に塗工し、80℃で30分間硬化させ、23℃、65%湿度環境下で168時間保管して、膜厚50μmの樹脂膜を得た。
【0163】
[評価2]
(伸び率及び引張破断応力)
得られた樹脂膜について、幅10mm、長さ100mmの試験片とした。試験片をつかみ具距離が20mmとなるよう引張試験機にセットし、速度20mm/分で引張試験を行い、伸び率及び引張破断応力を測定した。得られた結果において、伸び率が140%以上、破断応力が20MPa以上であるものが良好であると評価した。
【0164】
[評価3]
(動的粘弾性)
上記「樹脂膜の作製」で得られた厚み50μmの硬化膜を10mm×40mmサイズに切断し、試験片とした。下記の動的粘弾性測定装置を用い、-50℃~100℃の範囲で昇温速度5℃/min、周波数1Hz、歪み0.1%で測定した。
動的粘弾性測定装置 DMA7100、メーカー:(株)日立ハイテクサイエンス
【0165】
動的粘弾性測定における損失弾性率E’’のピーク温度が-70℃以上60℃以下であり、23℃の貯蔵弾性率E’が5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であり且つ、tanδの値が0.5以上である樹脂膜を良好とした。
【0166】
[評価4]
(硬化性)
上記「樹脂膜の作製」で得られた樹脂膜を0.1g以上0.2g以下程度採取し、メッシュ状のシートにつつみ、アセトンに1週間浸漬させた後、120℃で2時間乾燥した。
次いで、以下の式を用いてゲル分率(質量%)を算出した。ゲル分率が80.0質量%以上であるものについて硬化性が良好であると評価した。
【0167】
(ゲル分率)
=(乾燥後のサンプル質量)/(酢酸エチル投入前のサンプル質量)×100
【0168】
[評価5]
(透明性)
上記「樹脂膜の作製」で得られた硬化膜をヘイズ値が0.1%であるガラス上に形成し、スガ試験機製ヘイズメーター(HMG-2DP)を用いて、光源側に、各積層体の2つの面の内、ガラスとは反対側の面(すなわち、ポリイソシアネート組成物)を配置し、ヘイズを測定した。ヘイズ値が3.0%以下のものについて透明性が良好であると評価した。
【0169】
[評価6]
(耐屈曲性)
JIS K5600-5-1に準じた、マンドレルの直径が2mmのマンドレル屈曲試験を実施した。
試験片は、30mm×100mmサイズのブリキ板上に塗工し、80℃で30分加熱したのち、23℃/50RHで1週間保管したサンプルとした。
上記マンドレル屈曲試験でひびや割れが生じないものを良好とし〇とした。ひびや割れが生じたものを×とした。
【0170】
[評価7]
(耐衝撃性)
デュポン衝撃試験機における、重り加重500gの落下試験を実施した。試験片は50mm×100mmサイズの軟鋼板上に塗工し、80℃で30分加熱したのち、23℃/50RHで1週間保管したサンプルとした。落下距離50cm以上の耐衝撃性を有するもの
を耐衝撃性が良好とした。「落下距離50cm以上の耐衝撃性を有する」とは、落下高さが50cm又は50cm以下の場合に、硬化膜に割れや剥がれが観察されない状態を意味する。
【0171】
<架橋性官能基含有ポリマーの合成>
[合成例1-1]
(樹脂組成物作製用ポリオールの製造)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに酢酸ブチル:29質量部を仕込み、窒素ガス通気下で112℃に昇温した。112℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:22.3質量部、メチルメタクリレート:8.0質量部、ブチルアクリレート:26.1質量部、スチレン:42.3質量部、アクリル酸:1.3質量部、及び、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):2質量部からなる混合物を5時間かけて滴下した。次いで、115℃で窒素ガスをフローしながら3時間攪拌した後、60℃まで冷却し、酢酸ブチル溶液を投入し、固形分量60質量%の樹脂組成物作製用ポリオールの溶液を得た。樹脂組成物作製用ポリオールは、ガラス転移温度Tgが29.5℃、樹脂固形分に対する水酸基価が139mgKOH/g、重量平均分子量Mwが2.75×10であった。
【0172】
[合成例1-2]
(樹脂組成物作製用ポリオール2の製造)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに酢酸ブチル:29質量部を仕込み、窒素ガス通気下で112℃に昇温した。112℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:22.3質量部、メチルメタクリレート:8.0質量部、ブチルアクリレート:29.1質量部、スチレン:39.3質量部、アクリル酸:1.3質量部、及び、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):2質量部からなる混合物を5時間かけて滴下した。次いで、115℃で窒素ガスをフローしながら3時間攪拌した後、60℃まで冷却し、酢酸ブチル溶液を投入し、固形分量60質量%の樹脂組成物作製用ポリオールの溶液を得た。樹脂組成物作製用ポリオール2は、ガラス転移温度Tgが24.2℃、樹脂固形分に対する水酸基価が139mgKOH/g、重量平均分子量Mwが2.86×10であった。
【0173】
<ポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例1]
(ポリイソシアネート組成物PA-a1の製造)
温度計、攪拌羽根、還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI 100質量部を仕込み、2官能のポリカプロラクトンポリオールA1(以下、「ポリオールA1」又は単に「A1」と称する場合がある)(ダイセル社製、商品名「プラクセル220」、数平均分子量2000)20質量部、及び、3官能のポリカプロラクトンポリオールB1(以下、「ポリオールB1」又は単に「B1」と称する場合がある)(ダイセル社製、商品名「プラクセル308」、数平均分子量850)30質量部を撹拌しながら、反応器内温度を95℃に保持し120分間保持した。収率が43質量%になった時点で反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート100質量部、ポリオールA1:1.0質量部、及び2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.08質量部を混合し、95℃で2時間撹拌して、ポリイソシアネート組成物PA-a1を得た。H-NMR、C-NMR分析を行い、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造の存在を確認し、ウレタン構造の割合が最も多かった。
【0174】
[実施例2]
(ポリイソシアネート組成物PA-a2の製造)
温度計、攪拌羽根、還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI 100質量部を仕込み、2官能のポリエーテルポリオールA2(以下、「ポリオールA2」又は単に「A2」と称する場合がある)(エクセノール2020,数平均分子量2000)20質量部、及び、3官能のポリカプロラクトンポリオールB1(以下、「ポリオールB1」又は単に「B1」と称する場合がある)(ダイセル社製、商品名「プラクセル308」、数平均分子量850)30質量部を撹拌しながら、反応器内温度を95℃に保持し120分間保持した。収率が42質量%になった時点で反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート100質量部、ポリオールA2:1.0質量部、及び2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.08質量部を混合し、95℃で2時間撹拌して、ポリイソシアネート組成物PA-a2を得た。H-NMR、C-NMR分析を行い、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造の存在を確認し、ウレタン構造の割合が最も多かった。
【0175】
[実施例3]
(ポリイソシアネート組成物PA-a3の製造)
温度計、攪拌羽根、還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部を仕込み、3官能のポリカプロラクトンポリオールB1(以下、「ポリオールB1」又は単に「B1」と称する場合がある)(ダイセル社製、商品名「プラクセル308」、数平均分子量850):40質量部(ポリカプロラクトンポリオールB1の水酸基に対するHDIのイソシアネート基のモル比NCO/OHが8.5となる量)を、撹拌しながら、反応器内温度を95℃に保持した。収率が42.5質量%になった時点で反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート100質量部、ポリオールB1:1.5質量部、及び2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.09質量部を混合し、95℃で2時間撹拌して、ポリイソシアネート組成物PA-a3を得た。H-NMR、C-NMR分析を行い、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造の存在を確認し、ウレタン構造の割合が最も多かった。得られたポリイソシアネート組成物PA-a3のNCO含有率は6.95質量%、重量平均分子量は1.29×10であった。
【0176】
[実施例4]
(ポリイソシアネート組成物PA-a4の製造)
温度計、攪拌羽根、還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部を仕込み、3官能のポリカプロラクトンポリオールB2(ダイセル社製、商品名「プラクセル312」、数平均分子量1250):42質量部(ポリカプロラクトンポリオールB2の水酸基に対するHDIのイソシアネート基のモル比NCO/OHが11.7となる量)を、撹拌しながら、反応器内温度を95℃に保持した。収率が41質量%になった時点で反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート100質量部、ポリオールB2:2.0質量部、及び2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.09質量部を混合し、95℃で2時間撹拌して、ポリイソシアネート組成物PA-a4を得た。得られたポリイソシアネート組成物PA-a4をH-NMR及びC-NMRで分析し、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造の存在を確認し、ウレタン構造の割合が最も多かった。得られたポリイソシアネート組成物PA-a4のNCO含有率は7.5質量%、重量平均分子量は9.50×10であった。
【0177】
[実施例5]
(ポリイソシアネート組成物PA-a5の製造)
温度計、攪拌羽根、還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI 100質量部を仕込み、2官能のポリカプロラクトンポリオールA1(以下、「ポリオールA1」又は単に「A1」と称する場合がある)(ダイセル社製、商品名「プラクセル220」、数平均分子量2000)20質量部、及び、3官能のポリカプロラクトンポリオールB1(以下、「ポリオールB1」又は単に「B1」と称する場合がある)(ダイセル社製、商品名「プラクセル308」、数平均分子量850)30質量部を撹拌しながら、反応器内温度を100℃に保持し120分間保持した。収率が43質量%になった時点で反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート100質量部、ポリオールB2:2.0質量部、及び2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.09質量部を混合し、100℃で2時間撹拌して、ポリイソシアネート組成物PA-a5を得た。H-NMR、C-NMR分析を行い、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造の存在を確認し、ウレタン構造の割合が最も多かった。
【0178】
[比較例1]
(ポリイソシアネート組成物PA-b1の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI 100質量部、及び、トリメチロールプロパン8.9質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を75℃に5時間保持しウレタン化反応を行った。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、ポリイソシアネート組成物PA-b1を得た。その後、得られたポリイソシアネート組成物に酢酸ブチルを加えて、固形分70質量%となる割合で希釈した状態は、23℃下で液体であった。
【0179】
[比較例2]
(ポリイソシアネート組成物PA-b2の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を61℃に保持し、カプリン酸テトラメチルアンモニウム0.0030質量部を加え、4.0時間後、転化率が21質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、ポリイソシアネート組成物PA-b2を得た。NCO含有率は23.2質量%、重量平均分子量は7.33×10、平均イソシアネート基数は3.29であった。NMR測定によりイソシアヌレート基の存在を確認し、イソシアヌレート基が主成分である事が確認された。得られたポリイソシアネート組成物PA-b2は23℃下で液体であった。
【0180】
(ポリエステルポリオール(A))
A1:2官能のポリカプロラクトンポリオール、ダイセル社製、商品名「プラクセル220CPT」、数平均分子量2000、水酸基価56.6mgKOH/g、酸価0.02mgKOH/g
A2:ポリエーテルポリオール、エクセノール2020、数平均分子量2000
【0181】
(その他の3価のポリオール(B))
B1:ダイセル社製、商品名「プラクセル308」
B2:ダイセル社製、商品名「プラクセル312」
B’1:トリメチロールプロパン(TMP)
【0182】
実施例1~5の樹脂膜をH-NMR、C-NMR分析により分析したところ、ウレタン構造、ウレア構造、アロファネート構造を有していた。
【0183】
実施例1~5、比較例1~2の結果をそれぞれ表1~2に記載する。実施例5の樹脂膜のみ樹脂組成物作製用ポリオール2を用いて作製した。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】