(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171331
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20231124BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20231124BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01F27/29 P
H01F41/04 B
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081753
(22)【出願日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2022083157
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小池 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】遠田 一重
(72)【発明者】
【氏名】風間 拓人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真史
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FG11
5E070AA01
5E070AB01
5E070BB03
5E070EA06
5E070EA10
(57)【要約】
【課題】小型の電子部品を提供する。
【解決手段】素体101と、素体101の内部に埋め込まれている電子要素201と、素体101の外面に露出するように電子要素201に接続してある電極端子501a,501bとを有する電子部品11であって、電極端子501a,501bは、素体101の内部に埋め込まれている電子要素201のワイヤ301に連続して一体的に形成してあり、素体101の主面101bに沿って面状に延在している端子本体を有し、ワイヤ301は、素体101の主面101bから素体101の外部に引き出されて電極端子501a,501bを形成してある。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、前記素体の内部に埋め込まれている電子要素と、前記素体の外面に露出するように前記電子要素に接続してある電極端子とを有する電子部品であって、
前記電極端子は、前記素体の内部に埋め込まれている前記電子要素のワイヤに連続して一体的に形成してあり、前記素体の主面に沿って面状に延在している端子本体を有し、
前記ワイヤは、前記素体の前記主面から前記素体の外部に引き出されて、前記電極端子を形成してある電子部品。
【請求項2】
前記端子本体の厚みが、前記ワイヤの厚みに比較して薄く、
前記端子本体の幅が、前記ワイヤの幅に比較して大きい請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記端子本体は、前記電子要素の中心に近づく方向に前記主面に沿って面状に延在している請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記電子要素は、前記ワイヤにより形成してあるコイル部である請求項1~3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記素体は、樹脂で構成される請求項1~3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記素体は、磁性粉を含む請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記素体に接触する前記端子本体の内面または側面の少なくとも一方の表面粗さが、前記内面と反対側の前記端子本体の外面の表面粗さより大きい請求項1~3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項8】
前記素体に接触する前記端子本体の内面と反対側の前記端子本体の外面には、メッキ膜が形成してある請求項1~3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項9】
電子要素からのワイヤの端部を、前記端部の厚みが前記端部以外の前記ワイヤの厚みより薄く、前記ワイヤの前記端部の幅が、前記端部以外の前記ワイヤの幅より広くなるように薄板状に加工して、電極端子を形成する工程と、
前記電極端子の外面を露出させて前記電子要素を覆うように素体を形成する工程と、を有する電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、たとえばコイルなどの電子要素が素体に埋め込まれた電子部品、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、これに使われる電子部品においても小型化、高性能化が進んでいる。電子部品が小型化すると、一般的に、電子部品の機械的強度は弱くなる傾向にある。一方で、電子部品の性能や信頼性については、引き続き一層の高性能化や高信頼性化が求められる。
【0003】
このような電子部品の小型化に対応するため、たとえば特許文献1に記載の電子部品においては、コアの巻芯部に巻回されたワイヤの端部を、平坦化し折り返してコアの鍔部に設置された端子電極に接続することにより、接続時に鍔部にかかる熱圧着手段の押圧力を低減し、小型化により薄くなった鍔部の損傷を防ぐようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、小型化が可能な電子部品およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る電子部品は、
素体と、前記素体の内部に埋め込まれている電子要素と、前記素体の外面に露出するように前記電子要素に接続してある電極端子とを有する電子部品であって、
前記電極端子は、前記素体の内部に埋め込まれている前記電子要素のワイヤに連続して一体的に形成してあり、前記素体の主面に沿って面状に延在している端子本体を有し、
前記ワイヤは、前記素体の前記主面から前記素体の外部に引き出されて、前記電極端子を形成してある。
【0007】
このような構成の電子部品においては、素体の内部に埋め込まれている電子要素のワイヤに連続して一体的に電極端子が形成されているため、電子要素と電極端子とを接続するための別途の部材を必要としない。その結果、電子部品の小型化が可能となる。
【0008】
上記電子部品において、前記端子本体の厚みは、前記ワイヤの厚みに比較して薄く、さらに好ましくは1/2以下に薄い。また、好ましくは、前記端子本体の幅は、前記ワイヤの幅に比較して大きく、さらに好ましくは2倍以上に大きい。
【0009】
上記いずれかの電子部品において、前記端子本体は、前記電子要素の中心に近づく方向に前記主面に沿って面状に延在していてもよい。
【0010】
上記いずれかの電子部品において、前記電子要素は、前記ワイヤにより形成してあるコイル部であってもよい。
【0011】
上記いずれかの電子部品において、前記素体は、樹脂で構成してあってもよい。また、上記いずれかの電子部品において、前記素体は、磁性粉を含んでいてもよい。
【0012】
上記いずれかの電子部品において、前記素体に接触する前記端子本体の内面または側面の少なくとも一方の表面粗さが、前記内面と反対側の前記端子本体の外面の表面粗さより大きくてもよい。
【0013】
上記いずれかの電子部品において、前記素体に接触する前記端子本体の内面と反対側の前記端子本体の外面には、メッキ膜が形成してあってもよい。
【0014】
また、本開示の一実施形態である電子部品の製造方法は、
電子要素からのワイヤの端部を、前記端部の厚みが前記端部以外の前記ワイヤの厚みより薄く、前記ワイヤの前記端部の幅が、前記端部以外の前記ワイヤの幅より広くなるように薄板状に加工して、電極端子を形成する工程と、
前記電極端子の外面を露出させて前記電子要素を覆うように素体を形成する工程と、を有する。
【0015】
このような電子部品の製造方法においては、電子要素からのワイヤの端部を薄板状に加工して電極端子を形成しているため、電子要素と電極端子とを接続するための構造が必要無く、小型の電子部品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態のコイル部品の一例を示す透視斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、第2実施形態のコイル部品の一例を示す透視斜視図である。
【
図4C】
図4Cは、第3実施形態のコイル部品の一例を示す透視斜視図である。
【
図4D】
図4Dは、第4実施形態のコイル部品の一例を示す透視斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、第5実施形態のコイル部品の電極端子を説明するための第1の模式的な図である。
【
図6B】
図6Bは、第5実施形態のコイル部品の電極端子を説明するための第2の模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下に説明する本開示の実施形態は、本開示を説明するための例示である。本開示の実施形態に係る各種構成要素、例えば数値、形状、材料、製造工程などは、技術的に問題が生じない範囲内で改変したり変更したりすることができる。
【0018】
また、本開示の図面に表された形状等は、実際の形状等とは必ずしも一致しない。説明のために形状等を改変している場合があるためである。
【0019】
第1実施形態
第1実施形態のコイル部品11について、
図1A~
図3Eを参照して説明する。
【0020】
図1A~
図2Cに示すように、コイル部品11は、素体101の内部に、電子要素としての空芯コイル(コイル部)201が封止収容された電子部品、すなわち素体101に空芯コイルが埋め込まれた電子部品である。コイル部品11は、素体101、コイル部201、および一対の電極端子501a,501bを有する。
【0021】
本実施形態のコイル部品11は、平面方向の最大辺の長さが、たとえば、5mm以下、あるいは3mm以下、あるいは0.5mm以下であり、高さが、たとえば、5mm以下、あるいは3mm以下、あるいは0.5mm以下である、小型の電子部品である。
【0022】
素体101は、内部にコイル部201を封止収容する外装部材である。素体101は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、直方体形状(六面体)であり、上面101aと、上面101aとはZ軸方向の反対側に位置する底面101bと、X軸に沿って相互に反対側に位置するX軸方向側面101e,101fと、Y軸に沿って相互に反対側に位置するY軸方向側面101c,101dとを有する。本開示において、直方体形状には、角部および稜線部が面取りされている直方体、および、角部および稜線部が丸められている直方体が含まれる。
【0023】
本実施形態において、素体101は、磁性粉を含まない樹脂材料で構成する。このような構成とすることにより、素体101の誘電率が低くなり、コイル部品11を高周波用途に適したコイル部品とすることができる。素体101の材料としては、たとえば、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方を含んでいる。素体101の材料は、熱硬化性樹脂として、たとえば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいる。ポリイミド樹脂は、たとえば、ビスマレイミド樹脂である。素体101の材料は、熱可塑性樹脂として、たとえば、結晶性ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリエチレン、液晶ポリマー及びポリフェニレンサルファイド(PPS)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいる。フッ素樹脂は、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂である。また、素体は、上記の樹脂が中空ガラスまたは針状ガラスなどのフィラーを含む、フィラー含有樹脂で構成してもよい。変形例として後述するように、素体101は、磁性粉を含む磁性粉含有樹脂で構成してもよい。
【0024】
素体101の底面101bは、コイル部品11を実装する基板などの部品設置面(基板などの実装面)に対向する主面として形成されており、底面(主面)101bには、一対の電極端子501a,501bの端子本体511a,511bの外面である第1主面(電極端子外面)521a,521bが露出している。一対の電極端子外面521a,521bは、底面101bにおいてX軸方向で離間して配置されており、端子本体511a,511b同士は互いに絶縁してある。
【0025】
コイル部品11においては、これらの電極端子外面521a,521bに対して、図示しない配線などを介して外部回路が接続可能である。また、コイル部品11は、はんだや導電性接着剤などの接合部材を用いて、回路基板などの各種基板の上に実装可能である。コイル部品11を基板に実装する場合は、底面(主面)101bが実装面(コイル部品の実装面)となり、電極端子外面521a,521bが、基板などに形成された電気回路の
一部をなすランドなどに電気的に接続される。
【0026】
本実施形態においては、コイル部品11の主面101bに垂直な方向をZ軸方向とし、主面101bの周縁を形成する2組の対向する辺縁のうち、一対の電極端子501a,501bが配置される方向に沿った方向をX軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向に対して直交する方向をY軸方向とし、コイル部品11を説明する。
【0027】
コイル部201は、導体としてのワイヤ301をコイル状に巻回することで構成してあり、本実施形態において、巻回軸が実装面に平行となる姿勢(縦置き)で素体101に収容されている。本実施形態のコイル部品11のコイル部201は、ワイヤ301を一般的なノーマルワイズで巻回したコイルであるが、ワイヤの巻回方式はこれに限定されない。たとえば、ワイヤ301をα巻きしたコイルや、フラット巻またはエッジワイズ巻きしたコイルであってもよい。
【0028】
ワイヤ301は、主として銅などの低抵抗な金属を含む導体部と、その導体部の外周を覆う絶縁被膜とで構成される。より具体的に、導体部は、無酸素銅やタフピッチ銅などの純銅、リン青銅や黄銅、丹銅、ベリリウム銅、銀-銅合金などの銅を含む合金、もしくは、銅被覆鋼線などで構成される。
【0029】
絶縁被膜は、電気絶縁性を有していればよく、特に限定されない。たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ナイロン、ポリエステル、ポリビニルホルマールなど、もしくは、上記のうち少なくとも2種の樹脂を混合した合成樹脂が例示される。
【0030】
また、本実施形態において、コイル部201を構成するワイヤ301は丸線であり、導体部の断面形状が円形となっているが、丸線に限らず、断面矩形のワイヤや、平角線などであってもよい。本実施形態においてワイヤ301の導体部の外径Φ1(
図2D参照)は、その断面形状に関わらず、たとえば、1.96×10
-11m
2~1×10
-8m
2の断面積を有するように決定され、具体的には、5μm~100μmであってよく、10μm~50μmであってもよい。
【0031】
また、本実施形態において、コイル部201の巻回軸に垂直な平面における形状は、角部が円弧上に緩やかに曲げられた長方形(ロの字状)であるが、コイル部201を巻回軸方向から見た形状はこれに限らず、楕円、長円、正円などであってもよい。
【0032】
コイル部201を構成するワイヤ301の両端部には、一対の電極端子501a,501bが形成されている。各電極端子501a,501bは、主面101bからコイル部品11の外側に露出する電極面(電極端子外面)521a,521bを有する一対の端子本体511a,511bと、コイル部201と各端子本体511a,511bとを接続する引出部581a,581bとを有する。
【0033】
電極端子501a,501bは、コイル部201を構成するワイヤ301の両端部のコイル部201から引き出された部分を加工して形成されている。コイル部201を構成するワイヤ301の両端部、すなわち、ワイヤ301の巻き始めおよび巻き終わりの部分は、
図2A~
図2Cから明らかなように、XY面内において主面101bの対角位置に近く、Z軸方向において主面101bに近い位置(Z軸方向下側の位置)に配置されている。電極端子501a,501bは、この巻き始めおよび巻き終わりの部分に連続するワイヤ301のさらに端部側の部分を加工して形成されている。
【0034】
一対の端子本体511a,511bは、それぞれ、たとえば、
図2Bに示すように平面
形状が矩形で、
図2Aに示すように厚みの薄い薄板状の部材である。各端子本体511a,511bは、ワイヤ301を潰し加工して形成されている。したがって、ワイヤ301の延在方向に直交する断面において、端子本体511a,511bの厚みは、コイル部201を形成するワイヤ301の導体部の外径(導体部の断面形状が円形以外の場合は、導体部の最小値であり、「ワイヤの厚み」ともいう。)より小さく(薄く)、端子本体511a,511bの幅は、コイル部201を形成するワイヤ301の導体部の外径(導体部の断面形状が円形以外の場合は、導体部の最大値であり、「ワイヤの幅」ともいう。)より大きい(広い)。
【0035】
本実施形態においては、
図2Dに示すように、端子本体511a,511bの厚みT2は、ワイヤ301の導体部の外径Φ1に対して小さく、たとえば50%以下(1/2以下)の薄さであってよく、厚みT2の最小厚みは、ワイヤ301の導体部の外径Φ1の5%以上(1/20以上)の薄さであってもよく、ワイヤ301の導体部の外径Φ1の10%以上(1/10以上)の薄さであってもよく、ワイヤ301の導体部の外径Φ1の25%以上(1/4以上)の薄さであってもよい。具体的には、端子本体511a,511bの厚みT2は、たとえばワイヤ301の導体部の外径Φ1が5μm~100μmのとき、3μm~60μmであってもよく、5μm~60μmであってもよく、8μm~60μmであってもよい。
【0036】
端子本体511a,511bの厚みT2を大きくすることで、電極端子501a,501bの絶対強度を上げることができ、電極端子501a,501bの破断を防止することができる。また、端子本体511a,511bの側面が素体101を構成する樹脂と密着する面積が広くなり、その結果、電極端子501a,501bと素体101との固着強度を向上させることができる。
【0037】
一方、端子本体511a,511bの幅(ワイヤ301の延在方向に直交する方向の長さ)L1は、ワイヤ301の導体部の外径Φ1に対して大きく、たとえば2倍以上であってよく、ワイヤ301の導体部の外径Φ1に対して6倍以下であってもよい。具体的には、端子本体511a,511bの幅L1は、たとえば10μm~600μmであり、一対の電極端子501a,501bが底面101bにおいてX軸方向上に離間する距離が100μm以上となる幅L1であってもよい。
【0038】
引出部581a,581bは、
図2Aに示すように、コイル部201の底面(主面101b側の面)から主面101b方向に引き出されている。このような構成とすることにより、実装面(XY面)において引出部581a,581bがコイル部201の占める領域より内側に配置され、コイル部品11の水平方向(実装面に平行な面内)におけるサイズの小型化が可能となる。
【0039】
端子本体511a,511bは、
図2Aに示すように、コイル部201の底面(主面101b側の面)と主面101bとの間に配置されている。このような構成とすることにより、実装面(XY面)において端子本体511a,511bがコイル部201の占める領域より内側に配置され、コイル部品11の水平方向(実装面に平行な面内)におけるサイズの小型化が可能となる。また、コイル部品11の等価直列抵抗(ESR)を低減することができる。
【0040】
また、端子本体511a,511bは、
図2Bに示すように、主面101bの長手方向(X軸方向)の両側の略対向する位置に配置されている。しかし、実装面に平行な面(XY面)における端子本体511a,511bの配置はこれに限定されず、コイル部201が配置されている領域内であって、2つの端子本体511a,511bの間の絶縁が確保される範囲であれば、任意の配置としてよい。
【0041】
端子本体511a,511bは、コイル部品11の外側に露出するように素体101の底面101bに沿って形成された外面521a,521bと、第1主面(外面)521a,521bの反対側の面でありコイル部品11の内部を指向して素体101に密着する第2主面(内面)531a,531bとを有する。上述したように、電極端子501a,501bはワイヤ301を加工して構成されるが、端子本体511a,511bの箇所では、ワイヤ301の外周側に存在する絶縁被膜は除去されて、ワイヤ301の導体部が露出している。
【0042】
本実施形態において、電極端子外面521a,521bは、コイル部品11の主面101bと面一に(同一平面を形成する平坦面として)形成されている。しかし、電極端子外面521a,521bは、主面101bから突出して形成してあってもよく、また、主面101bより凹んだ面として形成してあってもよい。また、電極端子外面521a,521bの表面粗さは不均一であってもよい。
【0043】
また、導体部が露出した端子本体511a,511bの電極端子外面521a,521bには、メッキ膜561a,561bが形成してある。メッキ膜561a,561bは、Sn、Au、Cu、Ni、Pt、Ag、Pdなどの金属、または、これらの金属元素のうち少なくとも1種を含む合金を、メッキにより膜状に形成して構成することができる。この種の膜は、スパッタリングなどの他の方法により形成してもよい。メッキ膜561a,561bの厚みは、たとえば50μm以下である。
【0044】
このようなメッキ膜561a,561bを形成することにより、電極端子外面521a,521bの平坦度が向上するとともに、コイル部品11を基板などに実装するためのはんだや導電性接着剤などの接合部材の接合性あるいはぬれ性が高まり、電極端子501a,501bを介した確実な接続、すなわち、コイル部品11の確実な実装が可能となる。ただし、メッキ膜561a,561bは、必ずしも形成しなくてもよい。
【0045】
電極端子501a,501bは、コイル部201の底面と素体101の主面(底面)101bとの間に配置されている。すなわち、端子本体511a,511bおよび引出部581a,581bは、実装面に平行な面(XY面)において、コイル部201が配置されている領域内に配置されている。これにより、コイル部品11の小型化が可能となっている。
【0046】
このような配置とするために、端子本体は、電子要素の中心に近づく方向に主面に沿って面状に延在していてもよい。引出部581a,581bは、
図2Aに示すように、ワイヤ301を、コイル部201の外側(X軸方向外側)から離れて内側(X軸方向内側)に(たとえば空芯コイルの巻回軸に近づく方向に)延在するように配設している。そして、コイル部201の内側の箇所で、ワイヤ301を素体101の主面101bの方向(Z軸方向)に屈曲させ、主面101bに沿って配置される端子本体511a,511bに接続している。
【0047】
より具体的には、
図2Eに示すように、引出部581a,581bは、空芯コイル201の下側角部から、巻回されているワイヤ301(空芯コイル201を構成しているワイヤ)に沿ってX軸方向内側に延在し、内側に長さL4(ワイヤの中心間距離)離れた箇所でZ方向下向きに屈曲され、端子本体511a,511bに接続されている。
【0048】
その結果、端子本体511a,511bは、コイル部201の底面と素体101の底面101bとの間に確実に配置され、実装面(XY面)においてコイル部201の占める領域より内側に配置されることが可能となる。
【0049】
引出部581a,581bとしてのワイヤ301が、コイル部201の中心側に向けて配設される長さL4は、任意の長さでよいが、その最大長さは、X軸方向に対向配置される2つの端子本体511a,511bの間に絶縁を確保できる間隔が形成される長さ、すなわち、2つの端子本体511a,511bが相互に近寄り過ぎた状態とならない長さである。
【0050】
一方、ワイヤ301が内側に向けて配設される長さL4が最も短い構成は、たとえば
図2Fに示すように、X軸方向において、端子本体511a,511bの端部が、空芯コイル201の端部と略同一となる長さL5である。このような構成であっても、端子本体511a,511bがコイル部201のZ軸方向下側に配置されている限りは、電極端子501a,501bのためにコイル部品11のサイズを大きくする必要はなく、コイル部品11を小型化できる。
【0051】
また、
図2Gに示すように、端子本体511a,511bの幅方向(X軸方向)において、端子本体511a,511bに対する引出部581a,581bの形成位置(引出部形成位置,引出部581a,581bの中心位置)591aは、端子本体511a,511bの幅方向(X軸方向)の略中央である。すなわち、引出部形成位置591aと端子本体511a,511bの幅方向(X軸方向)の外側の端部との間の長さL6と、引出部形成位置591aと端子本体511a,511bの幅方向内側の端部との間の長さL7との比L6:L7は、たとえば40:60~60:40である。
【0052】
しかしながら、たとえば
図2Hに示すように、引出部形成位置591aを、端子本体511a,511bの幅方向の中心より外側に配置して、引出部形成位置591aから端子本体外側までの長さL8と内側までの長さL9との比L8:L9を、10:90~40:60のように構成することも可能である。このような構成とすれば、
図2Eおよび
図2Fを参照して上述した引出部581a,581bを内側に這わせる長さL4(あるいはL5)を短くしつつ、端子本体511a,511bをコイル部201のZ軸方向下側の領域内に配置することが可能である。そして、このような構成とすることにより、引出部581a,581bをコイル部201の巻線部に沿って内側に延在させる長さを低減でき、引出部581a,581bによるコイル特性への影響を低減できる。
【0053】
次に、コイル部品11の製造方法について、
図3A~
図3Eを参照して説明する。
【0054】
コイル部品11の製造においては、まず、図示せぬ巻線装置によりワイヤ301を巻回し、
図3Bに示すような空芯コイル201を形成する(工程S1)。巻き終わったワイヤ301の端部311a,311bは、空芯コイル201の下側(Z軸方向下側)の部分201aに沿って所定の長さL4だけ内側(X軸方向内側)に延在させた後、外部方向(Z軸下側方向)に略直角に屈曲し、所定の長さが確保されて切断される。この段階で、空芯コイル201とワイヤ端部311a,311bとの境界部分は、引出部581a,581bとして形成される。
【0055】
次に、
図3Cに示すように、ワイヤ端部311a,311bを潰し加工して薄板状のつぶし部321a,321bを形成する(工程S2)。潰し加工は、ワイヤ301の端部311a,311bを、上下のパンチ(凸型工具)の間に配置し、あるいは所定の金型に押し当て、これをプレスすることにより行う。このとき、利用する枠や型の選択、プレス強度の設定、あるいは潰し後の切断などの後処理などを適宜行うことにより、所望の引き延ばし率、引き延ばし長さ、潰し厚さ、潰し率あるいは形状のつぶし部321a,321bを得ることができる。
【0056】
潰し加工の際、たとえば金型の幅方向の略中央にワイヤ301を配置し、幅方向に均等に力を作用させてプレスをすれば、
図2Gに示すように、引出部形成位置591aを中心とした両側の端子本体511a,511bの幅L6,L7の割合L6:L7が略50:50の端子本体511a,511bが形成できる。
【0057】
一方、潰し加工の際、ワイヤ301の一方側に壁状部材を配置した状態でプレスをすれば、または、金型の幅方向の偏った位置にワイヤ301を配置してプレスをすれば、あるいは、方向性をもたせてワイヤ301をプレスすれば、
図2Hに示すように、引出部形成位置591aを中心とした両側の端子本体511a,511bの幅L8,L9の割合L8:L9が略20:80となるような、引出部形成位置591aに対して幅方向に偏った形態の端子本体511a,511bを形成できる。
【0058】
潰し加工を行ったら、次に、電極端子501a,501bを成形(フォーミング)する(工程S3)。すなわち、
図3Dに示すように、一対のつぶし部321a,321bを、それぞれ、端部側が空芯コイル201の下部を通過して反対側に延在するように折り曲げ、余剰な部分331a,331bを切除する。つぶし部321a,321bの折り曲げと、余剰な部分331a,331bの切除とは、いずれを先に行ってもよい。
【0059】
次に、空芯コイル201を、素体101に封止(封入)する外装封止工程を行う(工程S4)。空芯コイル201の外装封止は、たとえば、複数のコイル部201を型枠内に配列し、型枠に樹脂を注入して硬化させ、その後個片化することにより行う。前工程で形成した電極端子501a,501bは、端子本体511a,511bが薄板状なので、端子本体511a,511bを下側にすれば自立することができ、外装封止工程におけるコイル部201の配列は容易に行うことができる。個々のコイル部品への個片化は、外装封止工程の後に直ちに行ってもよいし、後段の端子被膜剥離処理工程あるいはメッキ処理工程の後に行ってもよい。
【0060】
コイル部201を樹脂により外装封止したら、次に、端子被膜を剥離する処理を行う(工程S5)。電極端子外面521a,521bには、ワイヤ301の導体部を覆っていた絶縁被膜が残存していたり、潰し加工の際にワイヤ301の絶縁被膜が付着したり、あるいは、外装封止の際に封止樹脂が付着したりする場合がある。そのため、ブレードを用いた研磨、あるいは、レーザーの照射などにより、少なくとも電極端子501a,501bの外面521a,521bに付着した樹脂を除去し、電極端子外面521a,521bの外部への露出を確保する。この工程においては、同時に素体101の主面(底面)101bの全体を研磨などして、主面101bを平坦にするようにしてもよい。端子被膜を剥離する処理は、ワイヤ端部の潰し加工の前に行ってもよい。この場合、空芯コイル201を、素体101に封止(封入)する外装封止工程により、電極端子の外面を露出させて前記電子要素を覆うように素体を形成することができる。また、電極端子の外面を確実に露出させるために、外装封止工程後に、更にブレードを用いた研磨、あるいは、レーザーの照射などにより、電極端子の外面を覆っている樹脂を除去(剥離)してもよい。
【0061】
次に、
図3Eに示すように、素体101の主面101bに適切に露出した外面521a,521bに対して、メッキ膜561a,561bを形成する(工程S6)。外面521a,521bにメッキ膜561a,561bを形成する必要が無い場合には、メッキ処理は行わなくてもよい。
【0062】
コイル部品11は、このような方法により製造することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のコイル部品11においては、コイル部201を構成するワイヤ301の端部を潰し加工して電極端子501a,501bを形成しているので、コイル部201と電極端子501a,501bとを接続するための別途の部材が不要である。その結果、コイル部品11のサイズを小型化できる。また、接続部材を接合したり装着したりする処理が不要となり、製造工程が簡易になる。
【0064】
また、電子要素たるコイル部201と電極端子501a,501bとを接続するための別途の部材が存在せず、電子要素と電極端子が一体的に境界無く連続して(シームレスに)構成されているので、電子部品の抵抗成分が低減される。その結果、特に本実施形態のコイル部品11のようなインダクタにおいては、Q値を高くすることができる。このようなコイル部品11は、特に高周波用のコイル部品として有効である。
【0065】
また、本実施形態のコイル部品11においては、電子要素と電極端子との接続に係る故障が生じる可能性が無いため、故障が少なく寿命の長い信頼性の高いコイル部品を提供できる。
【0066】
また、本実施形態のコイル部品11においては、引出部581a,581bをコイル部201の下側から引き出して電極端子501a,501bに接続させているため、引出部581a,581bがコイル部201の形成範囲を超えて外側に配設する必要がなく、この点においてもコイル部品11の小型化が可能となる。
【0067】
また、このような引出部581a,581bの構成により、引出部581a,581bを短くすることができる。そのため、コイル部201の磁気特性に対する引出部581a,581bの影響を低減できるとともに、引出部581a,581bの抵抗成分を一層低減できる。その結果、この点からも、Q値を高くすることができる。
【0068】
第2実施形態
第2実施形態のコイル部品12について、
図4Aおよび
図4Bを参照して説明する。
以下の第2実施形態~第5実施形態および他の変形例の説明においては、第1実施形態のコイル部品11と同一の構成については第1実施形態と同一の符号を付するとともにその説明を省略し、第1実施形態と相違する点について説明する。
【0069】
第2実施形態のコイル部品12は、空芯コイル202と、一対の電極端子502a,502bとを有する。また、電極端子502a,502bは、端子本体511a,511bと、引出部582a,582bとを有する。
【0070】
第2実施形態のコイル部品12は、引出部582a,582bの構成が第1実施形態のコイル部品11の引出部581a,581bと異なる。第2実施形態のコイル部品12の引出部582a,582bは、
図4Aおよび
図4Bに示すように、X軸方向外側に配置される空芯コイル202を構成するワイヤ301の両端部(巻き始めおよび巻き終わり)から、そのまま主面101b側(Z軸方向下側)に延在し、端子本体511a,511bに接続(連続)されている。すなわち、第2実施形態のコイル部品12の引出部582a,582bには、コイル部202のX軸方向外側から内側に延在する部分が無い。
【0071】
その結果、第2実施形態のコイル部品12においては、引出部582a,582bの構成をシンプルにすることができる。
【0072】
第2実施形態のコイル部品12においては、実装面と平行な面(XY面)において、端子本体511a,511bが空芯コイル202の存在する範囲からはみ出して配置された構成となっているが、はみだしを少なくしたり、無くしたりすることもできる。そのために、たとえば
図2Hを参照して前述したように、端子本体511a,511bに対する引出部582a,582bの形成位置(引出部形成位置)を、端子本体511a,511bの幅方向の中心より外側にずらして配置してもよい。
【0073】
その他の構成は、第1実施形態のコイル部品11と実質的に同じである。たとえば、第2実施形態のコイル部品12も、電極端子502a,502bが空芯コイル202を構成するワイヤ301の両端部を潰し加工して形成してある。したがって、第2実施形態のコイル部品12も、第1実施形態のコイル部品11と同様な作用・効果を奏する。
【0074】
第3実施形態
第3実施形態のコイル部品13について、
図4Cを参照して説明する。
第3実施形態のコイル部品13は、コイル部203が、巻回軸が実装面に垂直となる姿勢(横置き)で素体101に収容された構成である。
【0075】
第3実施形態のコイル部品13は、コイル部203と、一対の電極端子503a,503bとを有する。また、電極端子503a,503bは、端子本体513a,513bと、引出部583a,583bとを有する。
【0076】
コイル部203は、1本のワイヤ301が内外2層に巻回されて構成された外側巻回部203aと内側巻回部203bとを有する。ワイヤ301の一方の端部は、外側巻回部203aの下部(主面101b側)からコイル部203の外部に引き出されており、ワイヤ301の他方の端部は、内側巻回部203bの下部(主面101b側)からコイル部203の外部に引き出されており、外側巻回部203aと内側巻回部203bとは、コイル部203の上部(Z軸方向上部)で連続(接続)されている。
【0077】
外側巻回部203aの下部から引き出されたワイヤ301の一方の端部は、一方の電極端子503aの引出部583aを構成し、内側巻回部203bの下部から引き出されたワイヤ301の他方の端部は、他方の電極端子503bの引出部583bを構成している。それぞれの引出部583a,583bは、主面101bに沿って配設された端子本体513a,513bに連続している。
【0078】
本実施形態においては、電極端子503a,503b(引出部583a,583bおよび端子本体513a,513b)は、
図4Cに示すように、素体101の主面101bの前側(Y軸正方向側)の辺縁に沿った位置に配置されている。しかし、実装面(主面101b)と平行な面(XY面)における各電極端子503a,503bの配置は、そのXY面においてコイル部203が占める領域の範囲内であれば、それぞれ任意の位置に配置してよい。
【0079】
第3実施形態のコイル部品13においては、コイル部203を巻回軸が実装面に対して垂直となる横置きに配設しているため、電子部品の低背化に特に有効である。また、実装面に対するコイル部203の配設領域、換言すれば、電極端子503a,503bを配設する範囲が広くなるため、電極端子503a,503bを配置する際の自由度が向上する。
【0080】
その他の構成は、第1実施形態のコイル部品11または第2実施形態のコイル部品12と実質的に同じである。たとえば、第3実施形態のコイル部品13も、電極端子503a,503bが空芯コイル203を構成するワイヤ301の両端部を潰し加工して形成してある。したがって、第3実施形態のコイル部品13も、第1実施形態のコイル部品11または第2実施形態のコイル部品12と同様な作用・効果を奏する。
【0081】
第4実施形態
第4実施形態のコイル部品14について、
図4D~
図5Aを参照して説明する。
第4実施形態のコイル部品14は、コイル部204が、平角線(平角ワイヤ)365をエッジワイズ巻きした空芯コイルで形成された構成である。
【0082】
第4実施形態のコイル部品14は、コイル部204と、一対の電極端子504a,504bとを有する。また、電極端子504a,504bは、端子本体514a,514bと、引出部584a,584bとを有する。
【0083】
コイル部204は、平角線365をエッジワイズ巻きし、巻回軸が実装面に平行となる姿勢(縦置き)で素体101に収容された構成である。平角線365の両端部は、コイル部204のX軸方向外側から内側に延在し、コイル部品14の中央側の位置で主面101b側に屈曲して端子本体514a,514bに接続(連続)している。
【0084】
第4実施形態のコイル部品14も、電極端子504a,504bは、空芯コイル204を構成する平角線365の両端部を潰し加工して形成している。
【0085】
コイル部品14の製造にあたっては、平角線365をエッジワイズ巻きし、
図5Aに示すような空芯コイル204を形成する。巻き終わった平角線365の端部は、空芯コイル204の下側(Z軸方向下側)の部分に沿って所定の長さL4だけ内側(X軸方向内側)に延在させた後、Z軸方向下側に略直角に屈曲し、所定の長さを確保して切断する。この段階で、空芯コイル204とワイヤ端部311a,311bとの境界部分は、引出部584a,584bとして形成される。
【0086】
そして、平角線365の端部を、たとえば上下のパンチの間に配置してプレスすることにより、たとえば
図5Aに示すようにつぶし部375a,375bが形成される。
【0087】
つぶし部375a,375bは、平角線365の延在方向に直交する断面において、その幅L11が、潰し加工前の平角線365の幅L10に対してたとえば2倍以上に拡がるように潰し加工してもよく、潰し加工前の平角線365の幅L10に対して2.5倍~6倍に拡がるように潰し加工してもよい。また、図示省略するが、潰し加工後の平角線(つぶし部375a,375b)の厚みは、加工前の平角線365の厚みに対して小さく、たとえば50%以下(1/2以下)に薄く加工されてもよく、つぶし部375a,375bの厚み(最小厚み)は、潰し加工前の平角線365の厚みに対し5%以上(1/20以上)に薄く加工してもよく、平角線365の厚みに対し10%以上(1/10以上)に薄く加工してもよく、平角線365の厚みに対し25%以上(1/4以上)に薄く加工してもよい。つぶし部の厚みと幅との比(厚み:幅)は、1:5~1:15であってよい。
【0088】
このような平角線365を用いたコイル部品14においても、その他の構成は、第1~第3実施形態のコイル部品11~13と実質的に同じである。したがって、第4実施形態のコイル部品14も、第1~第3実施形態のコイル部品11~13と同様な作用・効果を奏する。
【0089】
第5実施形態
第5実施形態のコイル部品について、
図6Aおよび
図6Bを参照して説明する
第5実施形態のコイル部品は、たとえば
図1Aに示すコイル部品11において、電極端子501a,501bの端子本体511a,511bが、外面(第1主面)521a,521bと、内面(第2主面)531a,531bを含む外面以外の面とで、表面粗さの異なる面に形成してあるコイル部品である。この構成(特徴)は、第1~第4実施形態のコイル部品11~14の全てに同様に適用可能であるが、ここでは、第1実施形態のコイル部品11にこの構成を適用したコイル部品15について、
図1Aを参照して説明する。
【0090】
図6Aおよび
図6Bは、
図1Aに示すコイル部品15の一方の電極端子501aの構成を模式的に示す図である。
図6Aは、電極端子501aの端子本体511aの外面521a以外の面を機械的方法(物理的方法)により粗化(粗面化)した状態を模式的に示し、
図6Bは、
図6Aの状態に対して、さらにエッチング等の化学的方法により粗化した状態を模式的に示す。
【0091】
図6Aおよび
図6Bに示すように、電極端子501a,501bの端子本体511a,511bの外面521a,521bは平坦な面に形成してあり、内面531a,531bは、所定の表面粗さを有する面に形成してある。すなわち、内面531a,531bは外面521a,521bより粗い(表面粗さが大きい)面に形成してある。
【0092】
また、端子本体511aの側面5110a(略矩形の端子本体511aの4側面(全周面、
図6Aおよび
図6BではX軸方向に対向する側面のみを符号5110aを付して示している)も、内面531aと同じ所定の表面粗さを有する面に形成してある。
【0093】
すなわち、本実施形態のコイル部品15においては、外面以外の面(内面531a、端子本体511aの側面5110a)を、外面521aよりも粗い面に形成してある。換言すれば、本実施形態のコイル部品15においては、電極端子501aの周面のうち、素体101に埋め込まれて素体を形成する樹脂(外装樹脂)に接する面について、コイル部品15の外部に露出する外面521aよりも粗い面に形成してある。具体的には、電極端子501aの端子本体511aの外面521aは、その算術平均粗さRz(JIS B 0601:2013)が、例えば、1μm~5μmに形成されてよい。また、電極端子501aの端子本体511aの外面521a以外の面は、その算術平均粗さRz(JIS B 0601:2013)が、1μm~5μmに形成されてもよい。あるいは、電極端子501aの端子本体511aの外面521a以外の面は、外面521aに対して、算術平均粗さRz(JIS B 0601:2013)が100%以上500%以下であってよく、200%以上500%以下であってよく、300%以上500%以下であってもよい。
【0094】
外面521a,521bを平坦な面に形成することにより、外面521a,521bに形成するメッキ膜561a,561b(
図1B参照)の成膜品質を向上させることができる。すなわち、めっき剥がれなどが生じることがなく、平坦度の高いメッキ膜561a,561bを形成できる。その結果、コイル部品15を外部回路に接合するための接合部材との接合性が良好となり、コイル部品15を実装したときの信頼性を高くできる。また、電極端子外面521a,521bにメッキ膜561a,561bを形成しない場合においても、電極端子外面521a,521bと接合部材あるいは外部回路との接合性を高めることができる。
【0095】
また、端子本体511a,511bの外面以外の面、すなわち、素体101に接触する面を粗い面に形成することにより、これらの面の素体101に対する密着性を向上させることができる。その結果、電極端子501a、501bと素体101とを強固に接合できる。特に、素体101は樹脂材料で形成してあるため、端子本体511a,511bの素体に接触する面を粗面とすることにより密着性が向上し、いわゆるアンカー効果が生じ、電極端子501a、501bを素体101に強固に接合できる。
【0096】
また、前述したように端子本体511aの厚みT2(
図2D参照)は任意であるところ、端子本体511aの厚みを5μm以上の比較的厚めに構成すれば、端子本体511aの側面5110a(
図6A、
図6B参照)の面積が大きくなり、これを粗化したときには素体101への食いつき性が向上する。このような形態において、端子本体511aの側面5110aの粗化は有効である。
【0097】
電極端子501a,501bにこのような粗面を形成する方法としては、潰し加工、ローレット加工、研削加工等の機械的な方法(物理的な方法)を用いてもよいし、エッチング、化学研磨、電界研磨等の化学的な方法を用いてもよいし、その両方を順次(二段階に、段階的に)行ってもよい。
【0098】
機械的方法(物理的方法)として、たとえば、
図3Aを参照して前述した潰し工程S2において、表面粗さの異なるパンチを上下で用いてワイヤ301を潰し加工してもよい。すなわち、外面521a,521bとなる側に当接するパンチは、ワイヤ301への接触面の表面粗さが粗いパンチを用い、内面531a,531bとなる側に当接するパンチは、ワイヤ301への接触面の表面粗さが小さい(精細な)パンチを用いるようにすればよい。あるいは、潰し加工を行った後に、つぶし部321a,321b(
図3C参照)の表裏に対して別途機械加工を行い、表裏の表面粗さを変更するようにしてもよい。その際、前述した端子被膜を剥離する処理は、ワイヤ端部の潰し加工の前に行ってもよい。この場合、短時間で効率良く所望の潰し加工を実施することができる。
【0099】
このような機械的粗化の結果、
図6Aに示すように、外面521a以外の面が粗面に形成され、素体101との接触面の表面積を大きくすることができ、これらの面の素体101に対する密着性を向上させることができる。特に、素体101は樹脂材料で形成してあるため、端子本体511aの外面521a以外の面を粗面とすることによりアンカー効果が生じ、この点においても密着性が向上し、端子本体511a,511bを素体101に強固に接合できる。その結果、電極端子501aと素体101とを強固に接合できる。
【0100】
また、化学的方法として、たとえばエッチングを行ってよい。たとえば、
図6Aに示すような物理的粗化がなされた表面に対して、さらにエッチングを行うことにより、
図6Bに模式的に示すように、物理的粗化された表面に対してさらに細かい凹凸を形成するような粗化(いわゆる立体的な粗化)を施すことができ、素体101との接触面の表面積を一層大きくすることができ、一層のアンカー効果を生じさせることができ、一層電極端子501aの素体101に対する密着性を向上させることができる。
【0101】
エッチングを行う際には、電極端子の全体をエッチングしてもよいが、表面を荒らさない箇所に適宜マスキングをして、任意の箇所をエッチング(粗化)するようにしてよい。たとえば、端子本体511aの外面521aにのみマスキングをしてエッチングを行うことにより、外面521a以外の面を容易にエッチングするようにしてよい。
【0102】
電極端子501a,501bの表面の粗化は、物理的粗化だけを行ってもよいし、化学的粗化だけを行ってもよいし。その両方を順次(二段階で)行ってもよい。また、電極端子501a,501bの全面(外面521a,521bを含む)を所定の粗さの面に形成した後、外面521a,521bを研磨等して精細な平坦面にすることにより、相対的に外面以外の面を粗面とする方法を採ってもよい。
【0103】
粗化は、電極端子501a,501bの全ての面(外面521a以外の全ての面)に対して行わなくてもよい。たとえば、素体101との接着面積の大きい内面531a,531bのみを粗化してもよく、また、端子本体511a,511bが素体101から剥がれ易い周面(側面)5110aのみを粗化してもよい。また、粗化の程度も、粗化する面によって異なってもよい。
【0104】
他の変形例
本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、任意好適な種々の改変が可能である。
【0105】
たとえば、上述した各実施形態において、電極端子の端子本体の厚みは均一である必要はなく、厚い場所や薄い場所が形成されていてもよい。たとえば
図1Aに示す電極端子501a,501bにおいて、ワイヤを潰し加工して形成された端子本体511a,511bの先端側(引出部581a,581bから離れた側)の板厚を、端子本体511a,511bのその他の領域(端子本体511a,511bの中心領域あるいは引出部581a,581b側の領域)の厚みより厚く構成してもよい。
【0106】
端子本体511a,511bの先端側の板厚を厚くすることに関して、その厚みは、端子本体511a,511bの中心領域の厚みより少しでも厚ければよいが、たとえば、1.01倍以上厚くなるようにしてよく、1.5以上厚くなるようにしてよく、2倍以上厚くなるようにしてよく、5以上厚くなるようにしてよく、10以上厚くなるようにしてよく、20倍以上厚くなるようにしてもよい。
【0107】
また、上記実施形態における素体101は、磁性材料を含まない樹脂材料で構成するものとしたが、磁性粉を含む磁性粉含有樹脂で構成してもよい。
【0108】
磁性粉としては、特に限定されないが、金属磁性粒子であってもよい。たとえば、純鉄、Fe-Ni系合金、Fe-Si系合金、Fe-Co系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al系合金、アモルファス金属、Feを含むナノ結晶合金、その他の軟磁性合金、またはそれらの組み合わせが例示される。
【0109】
また、磁性粒子は、フェライト粒子であってもよい。フェライト材料としては、Ni-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライトなどが例示される。
【0110】
なお、磁性粉には、適宜、副成分が添加してあってもよい。
【0111】
また、素体101に含まれる金属磁性粒子は、粒子間が互いに絶縁されていてもよい。絶縁する方法としては、たとえば、粒子表面に絶縁被膜を形成する方法が挙げられる。絶縁被膜としては、樹脂または無機材料で形成する被膜、および、熱処理により粒子表面を酸化して形成する酸化被膜が挙げられる。樹脂または無機材料で絶縁被膜を形成する場合、樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0112】
無機材料としては、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸マンガンなどのリン酸塩、ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩(水ガラス)、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、硫酸塩ガラスなどが挙げられる。磁性粒子の絶縁被膜の厚みは、5nm~200nmであってよい。絶縁被膜を形成することで、粒子間の絶縁性を高めることができ、たとえばコイル部品などの耐電圧を向上させることができる。
【0113】
また、電子部品としては、コイル部が内蔵してある素体を有するインダクタなどのコイル部品に限らず、圧粉磁心の回りにワイヤを巻回したコイル部品、リアクトル、トランス、非接触給電デバイスなどであってもよい。
【符号の説明】
【0114】
11~15…コイル部品(電子部品)
101…素体
101a…上面
101b…主面(底面)
101c~101f…側面
201~204…空芯コイル(コイル部,電子要素)
301…ワイヤ(丸線)
311a,311b…ワイヤ端部
321a,321b…つぶし部
331a,331b…切除部
365…平角線(ワイヤ)
375a,375b…つぶし部
501a~510a,501b~504b…電極端子
511a~514a,511b~514b…端子本体
521a,521b…外面(第1主面)
531a,531b…内面(第2主面)
561a,561b…メッキ膜
581a~587a,581b~584b…引出部
591a…引出部形成位置