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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171338
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20231124BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 8/96 20060101ALI20231124BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/25
A61K8/34
A61K8/96
A61Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082129
(22)【出願日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2022082591
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】江澤 あやめ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB372
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC472
4C083AC642
4C083AC792
4C083AC842
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD222
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD532
4C083AD662
4C083BB13
4C083CC13
4C083DD23
4C083DD30
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、スクラブ剤によるマッサージ効果、使用時のべたつきのなさに優れる油性化粧料を提供すること。
【解決手段】次の(A)~(D);
(A)デキストリン脂肪酸エステル
(B)煙霧状シリカ
(C)スクラブ剤
(D)25℃で液状の油剤
を含有する油性化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)デキストリン脂肪酸エステル
(B)煙霧状シリカ
(C)スクラブ剤
(D)25℃で液状の油剤
を含有する油性化粧料。
【請求項2】
前記成分(C)スクラブ剤の平均粒子径が50~600μmである請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
前記成分(C)スクラブ剤が、糖類、糖アルコール、及び植物種子粉砕粒子よりなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の油性化粧料。
【請求項4】
前記成分(D)25℃で液状の油剤の25℃における粘度が、10~2,000,000mPa・sである請求項1又は2に記載の油性化粧料。
【請求項5】
前記成分(D)が、次の成分(D1)、及び成分(D2)である請求項1又は2に記載の油性化粧料。
(D1)25℃における粘度が10mPa・s以上10,000mPa・s未満である油剤
(D2)25℃における粘度が10,000mPa・s以上2,000,000mPa・s以下である油剤
【請求項6】
前記成分(B)の含有量が、1~15質量%である請求項1又は2に記載の油性化粧料。
【請求項7】
口唇化粧料である請求項1又は2に記載の油性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、口唇のケアを目的とした口唇化粧料においてはリップクリームのみならず様々な商品が求められており、口唇ケアの機能だけではなくその外観審美性も重要な要素の一つである。中でもスクラブ剤を含有する口唇化粧料は、塗布時にスクラブ剤が唇上を動くことにより、口唇に適度なマッサージ効果を付与することで口唇をケアする商品である。スクラブ剤を配合した商品についてはこれまでに様々な検討がなされており、例えば顔料を含むカプセルとスクラブ剤とを一定の割合で組み合わせることで、所望のタイミングに軽い摩擦を加えることで色調の変化とスクラブ剤によるマッサージ効果を得られる油性化粧料に関する技術(特許文献1参照)等があった。また、例えば、特定の炭化水素系ワックス、炭化水素油、極性油、デキストリン脂肪酸エステルを特定の割合で組み合わせることで、高温での保存安定性に優れ、仕上がりの艶と潤いが持続する口唇化粧料に関する技術(特許文献2参照)や、デキストリン脂肪酸エステルと特定のショ糖脂肪酸エステル、30℃において固形の油分を特定の割合で組み合わせることで、高温安定性と塗膜の光沢性に優れ、色材の発色性も良好な化粧料に関する技術(特許文献3参照)等があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/020351号パンフレット
【特許文献2】特開2014-34522号公報
【特許文献3】特開2006-306829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術を用い、ワックスやデキストリン脂肪酸エステルを含有する油性化粧料にスクラブ剤を含有する場合、高温において化粧料の粘度が下がることにより、スクラブ剤が沈降する傾向があった。またスクラブ剤の沈降を抑えられる程度にワックスやデキストリン脂肪酸エステルを含有すると、外観の透明性が下がったり、使用時にべたつきが出てしまうなど、満足いくものが得られなかった。従って本発明の課題は、高温でのスクラブ剤の沈降抑制しながらも外観の透明性を有し、スクラブ剤によるマッサージ効果と使用時のべたつきのなさに優れる油性化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、デキストリン脂肪酸エステル、煙霧状シリカと25℃で液状の油剤を組み合わせた油性ゲルは高温における粘度変化が小さく、高温でのスクラブ剤の沈降を抑制し、さらに高い外観の透明性、べたつきのなさとスクラブ剤によるマッサージ効果に優れる油性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]
次の成分(A)~(D);
(A)デキストリン脂肪酸エステル
(B)煙霧状シリカ
(C)スクラブ剤
(D)25℃で液状の油剤
を含有する油性化粧料に関するものである。
[2]
前記成分(C)スクラブ剤の平均粒子径が50~600μmである[1]に記載の油性化粧料に関するものである。
[3]
前記成分(C)スクラブ剤が、糖類、糖アルコール、及び植物種子粉砕粒子よりなる群から選択される1種又は2種以上である[1]又は[2]に記載の油性化粧料に関するものである。
[4]
前記成分(D)25℃で液状の油剤の25℃における粘度が、10~2,000,000mPa・sである[1]又は[2]に記載の油性化粧料に関するものである。
[5]
前記成分(D)が、次の成分(D1)、及び成分(D2)である[1]又は[2]に記載の油性化粧料に関するものである。
(D1)25℃における粘度が10mPa・s以上10,000mPa・s未満である油剤
(D2)25℃における粘度が10,000mPa・s以上2,000,000mPa・s以下である油剤
[6]
前記成分(B)の含有量が、1~15質量%である[1]又は[2]に記載の油性化粧料に関するものである。
[7]
口唇化粧料である[1]又は[2]に記載の油性化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさ、スクラブ剤によるマッサージ効果に優れる油性化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細について以下に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0009】
本発明における成分(A)デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンと脂肪酸のエステルである。本発明における成分(A)に用いられる脂肪酸は、特に限定されないが、炭素数8~22の脂肪酸が好ましく、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪酸がより好ましい。このような脂肪酸として具体的にはエチルヘキサン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸等を例示することができる。本発明における成分(A)は、具体的には、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等が挙げられる。これらの中でも、外観の透明性の観点から、パルミチン酸デキストリン及び/又は(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンが好ましい。成分(A)の市販品としては、例えば、レオパールKL2、レオパールTL2、レオパールMKL2、レオパールTT2、ユニフィルマHVY(何れも千葉製粉社製)等を用いることができる。
【0010】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されないが、油性化粧料全量に対して、0.2質量%(以下、単に「%」と略す)以上が好ましく、0.5%以上がより好ましく、1%以上がさらにより好ましい。また、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらにより好ましい。また、0.2~5%が好ましく、0.5~4%がより好ましく、1~3%がさらにより好ましい。この範囲であれば、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさにより優れる為より好ましい。
【0011】
本発明における成分(B)煙霧状シリカは、100nm以下の微細な非晶質のシリカである。このような煙霧状シリカは、例えば、四塩化ケイ素を水素と酸素炎中で加水分解して得られるものが挙げられ、通常化粧料に用いられるものであれば、いずれのものも使用することができる。さらに煙霧状シリカは疎水化処理して用いても良く、その疎水化処理の方法としては、特に限定はされないが、トリメチルシリルクロライドやヘキサメチルジシラザンによるトリメチルシロキシ処理、オクチルシラン化処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼き付け処理、金属石鹸によるコーティング等が挙げられる。本発明においては、高温でのスクラブ剤の沈降抑制の観点から、疎水化処理した煙霧状シリカがより好ましい。
【0012】
本発明における成分(B)の市販品としては、AEROSIL 90、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 200F、AEROSIL 300、AEROSIL 380、AEROSIL R972、AEROSIL R974、AEROSIL R976S、AEROSIL RX200、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL R812、AEROSIL RA200H(いずれも日本アエロジル社製)、タラノックス500(タルコ社製)、キャボジルTS-530(キャボット社製)等が挙げられる。
【0013】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、油性化粧料全量に対して、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がさらにより好ましい。また、15%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下がさらにより好ましい。また、1~15%が好ましく、2~12%がより好ましく、3~10%がさらにより好ましい。この範囲であれば、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさにより優れる為より好ましい。
【0014】
本発明の油性化粧料において、前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合(A)/(B)は、特に限定されないが、0.04以上が好ましく、0.08以上がより好ましく、0.1以上がさらにより好ましい。また、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1以下がさらにより好ましい。また、0.04~3が好ましく、0.08~2がより好ましく、0.1~1がさらにより好ましい。この範囲であれば、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、スクラブ剤によるマッサージ効果により優れる為より好ましい。
【0015】
本発明における成分(C)スクラブ剤は、通常化粧料に用いられるものであれば、種類に特に限定されるものではなく、いずれのものも使用することができる。例えば、単糖、オリゴ糖、多糖等の糖類、糖アルコール、植物種子粉砕粒子、シリカ(ただし成分(B)に該当するものを除く)等が挙げられる。成分(C)の具体的な成分としては、グルコース、フルクトース、キシロース、マンノース、ガラクトース等の単糖、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース等のオリゴ糖、グルコマンナン、デンプン、セルロース等の多糖類、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、エリスリトール等の糖アルコール、モモ核、アンズ核、テウチグルミ殻粒等の植物種子粉砕粒子、シリカ等が挙げられる。これらの中でも、スクラブ剤によるマッサージ効果の観点から、糖類、糖アルコール、及び植物種子粉砕粒子よりなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく、糖類、及び糖アルコールよりなる群から選択される1種又は2種以上がより好ましく、スクロース、グルコマンナン、デンプン、及びセルロースよりなる群から選択される1種又は2種以上がさらにより好ましく、スクロース及び/又はグルコマンナンが最も好ましい。
【0016】
本発明における成分(C)スクラブ剤の平均粒子径は、特に限定されないが、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらにより好ましい。また、600μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、400μm以下がさらにより好ましい。また、50~600μmが好ましく、100~500μmがより好ましく、150~400μmがさらにより好ましい。この範囲であれば、スクラブ剤によるマッサージ効果により優れる為より好ましい。なお、スクラブ剤の平均粒子径は、レーザー型乾式粒度分布測定装置(セイシン企業社製PRO7000S等)を用い、体積平均粒子径(D50)として測定することができる。
【0017】
本発明における成分(C)スクラブ剤は、特に限定されないが、例えば、球状、板状、不定形等、種々の形状をとることができる。スクラブ剤によるマッサージ効果の観点から、球状又は不定形が好ましく、不定形がより好ましい。ここで、不定形とは、種々の形状が混在し、形状が限定できないものを指す。
【0018】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、油性化粧料全量に対して、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上がさらにより好ましい。また、20%以下が好ましく、17%以下がより好ましく、15%以下がさらにより好ましい。また、1~20%が好ましく、3~17%がより好ましく、5~15%がさらにより好ましい。この範囲であれば、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、スクラブ剤によるマッサージ効果により優れる為より好ましい。
【0019】
本発明における成分(D)25℃で液状の油剤は、25℃において流動性を有する油剤である。成分(D)は、通常化粧料に用いられるものであれば、いずれのものも使用することができ、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。それぞれ具体的には、スクワラン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン(イソドデカン)ポリブテン、水添ポリイソブテン(流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン)、水添ポリデセン等の炭化水素油、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、セバシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、リンゴ酸ジイソステアリル、トリメリト酸トリトリデシル、デカエチルヘキサン酸ポリグリセリル-10、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(フィトステリル/2-オクチルドデシル)、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物等のエステル油、イソステアリン酸等の高級脂肪酸、デシルテトラデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコールが挙げられる。
【0020】
本発明における成分(D)の25℃における粘度は、特に限定されないが、10mPa・s以上が好ましく、30mPa・s以上がより好ましく、50mPa・s以上がさらにより好ましい。また、2,000,000mPa・s以下が好ましく、1,500,00mPa・s以下がより好ましく、1,000,000mPa・s以下がさらにより好ましい。また、10~2,000,000mPa・sが好ましく、30~1,500,000mPa・sがより好ましく、50~1,000,000mPa・sがさらにより好ましい。この範囲であれば、べたつきのなさ、高温でのスクラブ剤の沈降抑制により優れる為より好ましい。なお、本発明における油剤の粘度は、試料を25℃で一日放置後、単一円筒型回転粘度計ビスメトロン型式VS-A1(芝浦システム社製)で測定することができる。
【0021】
本発明において成分(D)は、2種以上組み合わせて用いることで、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、べたつきのなさ、スクラブ剤によるマッサージ効果により優れるためより好ましい。特に、低粘度の油剤と高粘度の油剤を組み合わせて用いることで、中粘度の油剤のみを使用する場合と比べ、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、スクラブ剤によるマッサージ効果により優れるためより好ましい。ここで、低粘度の油剤とは、10mPa・s以上1,000mPa・s未満の油剤を意味し、中粘度の油剤とは、1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満の油剤を意味し、高粘度の油剤とは、10,000mPa・s以上2,000,000mPa・s以下の油剤を意味する。成分(D)として、成分(D1)25℃における粘度が10mPa・s以上10,000mPa・s未満である油剤、及び(D2)25℃における粘度が10,000mPa・s以上2,000,000mPa・s以下である油剤を組み合わせて用いることがより好ましい。さらに、成分(D1)は、20mPa・s以上8,000mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以上6,000mPa・s以下がより好ましい。また、成分(D2)は、15,000mPa・s以上1,500,000mPa・s以下が好ましく、20,000mPa・s以上1,000,000mPa・s以下がより好ましい。
【0022】
このような成分(D1)としては、特に限定されないが、例えば、水添ポリイソブテンとしては、パールリーム6(日油社製、粘度50mPa・s)、ジメチルポリシロキサンとしては、シリコンKF-96A-20CS(信越化学工業社製、粘度20mPa・s)、シリコンKF-96A-100CS(信越化学工業社製、粘度100mPa・s)、イソノナン酸イソトリデシルとしては、サラコス913(日清オイリオグループ社製、粘度11mPa・s)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルとしては、MYRITOL GTEH(BASF社製、粘度11mPa・s)、エチルヘキサン酸セチルとしては、サラコス816T(日清オイリオグループ社製、粘度14mPa・s)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールとしては、エステモールN-01(日清オイリオグループ社製、粘度19mPa・s)、デシルテトラデカノールとしては、リソノール24SP(高級アルコール工業社製、粘度70mPa・s)、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイルとしては、LUSPLAN DD-IS(日本精化社製、粘度300mPa・s)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2としては、コスモール43V(日清オイリオグループ社製、粘度448mPa・s)、デカエチルヘキサン酸ポリグリセリル-10としては、Sフェイス KEH-1010(坂本薬品工業社製、粘度500mPa・s)、トリメリト酸トリトリデシルとしては、DOCADIT TM 13N(日清オイリオグループ社製、粘度565mPa・s)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2としては、コスモール42V(日清オイリオグループ社製、粘度1160mPa・s)、リンゴ酸ジイソステアリルとしては、コスモール222(日清オイリオグループ社製、粘度5,500mPa・s)等が挙げられる。
【0023】
このような成分(D2)としては、例えば、ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物としては、LUSPLAN DD-DHR(日本精化社製、粘度33,000mPa・s)、水添ポリイソブテンとしては、パールリーム18(日油社製、粘度40,000mPa・s)、パールリーム24(日油社製、粘度110,000mPa・s)、パールリーム46(日油社製、粘度1,000,000mPa・s)、等が挙げられる。
【0024】
本発明における成分(D)の含有量は特に限定されないが、油性化粧料全量に対して、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらにより好ましい。また、90%以下が好ましく、88%以下がより好ましく、85%以下がさらにより好ましい。また、60~90%が好ましく、65~88%がより好ましく、70~85%がさらにより好ましい。この範囲であれば、べたつきのなさにより優れる為より好ましい。
【0025】
本発明における成分(D1)の含有量は、特に限定されないが、成分(D)に対して、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらにより好ましい。また、90%以下が好ましく、88%以下がより好ましく、85%以下がさらにより好ましい。また、50~90%が好ましく、55~88%がより好ましく、60~85%がさらにより好ましい。また、(D2)の含有量は、特に限定されないが、成分(D)に対して、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、15%以上がさらにより好ましい。また、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がさらにより好ましい。また、10~40%が好ましく、12~35%がより好ましく、15~30%がさらにより好ましい。この範囲であれば、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、べたつきのなさ、スクラブ剤によるマッサージ効果により優れるためより好ましい。
【0026】
本発明の油性化粧料は、上記の成分(A)~(D)の他に、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、成分(D)以外の油性成分、成分(A)、(B)以外のゲル化剤、成分(C)以外の粉体、界面活性剤、繊維、水性成分、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で含有することができる。
【0027】
本発明の油性化粧料は、通常公知の製法で得ることができる。以下に製造方法の例を示すが、これに限定されるものではない。例えば、成分(A)、(D)及び必要に応じてその他成分を90℃に加熱溶解し、成分(B)及び(C)を添加し、容器に充填、必要に応じて成型を経て得ることができる。
【0028】
本発明の油性化粧料の25℃における粘度は、特に限定されないが、1,000mPa・s以上が好ましく、5,000mPa・s以上がより好ましく、10,000mPa・s以上がさらにより好ましい。また、2,000,000mPa・s以下が好ましく、1,500,000mPa・s以下がより好ましく、1,000,000mPa・s以下がさらにより好ましい。また、1,000~2,000,000mPa・sが好ましく、5,000~1,500,000mPa・sがより好ましく、10,000~1,000,000mPa・sがさらにより好ましい。この範囲であれば、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0029】
本発明の油性化粧料における油性とは、油を連続相とし、実質的に水を含有しないものである。ここで、実質的に含有しないとは、全く含有しないか、含有したとしても本発明に影響を与えない程度に微量であることを意味する。例えば、水の含有量としては、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下がさらにより好ましく、全く含有しないことが最も好ましい。この範囲であれば、べたつきのなさにより優れるため、より好ましい。
【0030】
本発明の油性化粧料において、700nmにおける光の透過率は、成分(C)を含有しない状態で70%以上が好ましく、72%以上がより好ましく、75%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、外観の透明性により優れるため、より好ましい。スクラブ剤を含有する場合は、メッシュ等を用いてスクラブ剤を除去して透過率を測定する。ここで、メッシュは、スクラブ剤の平均粒子径に応じて100μm、200μm、300μm、400μm、500μm等、適宜スクラブ剤の平均粒子径より小さい径のメッシュを選択することができる。本発明において、光の透過率は、分光色差計(SE-7700 日本電色工業社製)にてガラスセル(光路長10mm、光路幅40mm、高さ45mm)を用いて25℃における700nmの透過率で測定することができる。
【0031】
本発明の油性化粧料は、特に限定されないが、例えば、口紅、リップグロス、リップクリーム、リキッドルージュ等の口唇化粧料、アイシャドウ、アイブロウ、ファンデーション、頬紅、ハイライター等のメーキャップ化粧料、化粧油等の基礎化粧料、毛髪着色料、スタイリング剤等の毛髪化粧料等が挙げられ、これらの中でも、口唇化粧料が好ましい。
【0032】
なお、本発明は以下の構成をとることもできる。
[1]
次の成分(A)~(D);
(A)デキストリン脂肪酸エステル
(B)煙霧状シリカ
(C)スクラブ剤
(D)25℃で液状の油剤
を含有する油性化粧料。
[2]
前記成分(C)スクラブ剤の平均粒子径が50~600μmである[1]に記載の油性化粧料。
[3]
前記成分(C)スクラブ剤が、糖類、糖アルコール、及び植物種子粉砕粒子よりなる群から選択される1種又は2種以上である[1]又は[2]に記載の油性化粧料。
[4]
前記成分(D)25℃で液状の油剤の25℃における粘度が、10~2,000,000mPa・sである[1]~[3]のいずれか一つに記載の油性化粧料。
[5]
前記成分(D)が、次の成分(D1)、及び成分(D2)である[1]~[4]のいずれか一つに記載の油性化粧料。
(D1)25℃における粘度が10mPa・s以上10,000mPa・s未満である油剤
(D2)25℃における粘度が10,000mPa・s以上2,000,000mPa・s以下である油剤
[6]
前記成分(B)の含有量が、1~15質量%である[1]~[5]のいずれか一つに記載の油性化粧料。
[7]
口唇化粧料である[1]~[6]のいずれか一つに記載の油性化粧料。
【実施例0033】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0034】
実施例1~16及び比較例1~5:リップクリーム
下記表1~2に示す処方のリップクリームを下記製造方法にて調製し、イ.高温でのスクラブ剤の沈降抑制、ロ.外観の透明性、ハ.べたつきのなさ、ニ.スクラブ剤によるマッサージ効果、について、下記評価方法により評価した。その結果も併せて表1~2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
*1:レオパールKL2(千葉製粉社製)
*2:レオパールTT2(千葉製粉社製)
*3:CIREWAX90(CIREBELLE社製社製)
*4:AEROSIL R976S(日本アエロジル社製)
*5:AEROSIL 380S(日本アエロジル社製)
*6:SILICA MICRO BEAD BA-1(日揮触媒化成社製)
【0037】
【表2】
【0038】
(製造方法)
A:成分(1)~(3)、(12)~(15)を100℃に加熱し均一に混合する。
B:Aに成分(4)~(7)、(16)~(20)を加え均一に混合分散する。
C:Bに(8)~(11)を加え混合する。
D:Cを80℃でチューブ容器に充填し、室温に冷却してリップクリームを得た。
【0039】
(評価方法)
評価項目イ.~ニ.について、下記の通り評価を行い、評価結果を表1~2に示す。
【0040】
(評価方法1)
イ.高温でのスクラブ剤の沈降抑制
<測定条件>
透明容器(直径4cm、高さ8cmの円柱状容器)に80g充填した実施例、比較例のリップクリームを50℃の恒温槽に静置し、1週間後、30℃の恒温槽に3h静置したのちに外観の評価を実施した。スクラブ剤の沈降が見られるかを目視にて以下の判定基準に従って判定した。
【0041】
<判定基準>
(判定) :(評価)
◎ :全体が均一でスクラブ剤の沈降が全く見られない
○ :不均一な部分が見られるが、スクラブ剤の沈降は見られない
△ :一部スクラブ剤の沈降が見られる
× :半量以上のスクラブ剤の沈降が見られる
【0042】
(評価方法2)
ロ.外観の透明性
<測定条件>
実施例、比較例において、スクラブ剤を含まない各試料を、ガラスセル(光路長10mm、光路幅40mm、高さ45mm)に流し込み、25℃にて分光色差計(SE-7700 日本電色工業社製)を用い700nmにおける透過率を測定した。測定した透過率を下記判定基準に従って判定した。判定結果と透過率を表1~2に示す。
【0043】
<判定基準>
(判定) :(評価)
○ :透過率70%以上
× :透過率70%未満
【0044】
(評価方法3)
ハ.べたつきのなさ
ニ.スクラブ剤によるマッサージ効果
実施例、比較例のリップクリームについて化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人が実施例、比較例のリップクリームを口唇に塗布し、下記評価基準にて5段階評価し評点をつけ、パネル全員の評点の平均点を算出し、下記判定基準に従って判定した。なお、ハ.については、実施例、比較例のリップクリームを塗布した時にべたつきを感じるかどうかを、ニ.については、実施例、比較例のリップクリームを唇に塗布し、唇をすり合わせる際にスクラブ剤によるマッサージ効果を感じるかどうかを、評価した。
【0045】
<評価基準>
(評点) :(評価)
4 :非常に良い
3 :良い
2 :普通
1 :悪い
0 :非常に悪い
<判定基準>
(判定) :(評点の平均点)
◎ :3点を超える
○ :2点を超え3点以下
△ :1点を超え2点以下
× :1点以下
【0046】
表1~2の結果から明らかなように、実施例1~16のリップクリームは、いずれも高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさ、スクラブ剤によるマッサージ効果に優れたものであった。一方、成分(A)を含有しない比較例1は、高温において粘度が下がり、高温でのスクラブ剤の沈降抑制に満足のいく品質が得られず、成分(A)の代わりに合成ワックスを含有する比較例2は、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性に満足のいく品質が得られず、成分(B)を含有しない比較例3は、高温において粘度が下がり、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、べたつきのなさに満足のいく品質が得られず、成分(B)の代わりに球状シリカを含有する比較例4は、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさ、スクラブ剤によるマッサージ効果に満足のいく品質が得られず、成分(B)の代わりにセルロースを含有する比較例5は、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさに満足のいく品質が得られなかった。
【0047】
実施例17:油性液状リップスクラブ
(成分) (%)
(1)パルミチン酸デキストリン*1 1.2
(2)(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン*2 0.3
(3)リンゴ酸ジイソステアリル(25℃粘度2,700mPa・s) 残量
(4)ジカプリン酸ネオペンチルグリコール
(25℃粘度19mPa・s) 15
(5)ワセリン 2
(6)水添ポリイソブテン(25℃粘度110,000mPa・s) 20
(7)ジメチルシリル化シリカ *3 5
(8)スクロース(平均粒子径300μm) 12
(9)ジブチルヒドロキシトルエン 0.05
(10)ジプロピレングリコール 0.5
(11)赤色202号 0.2
(12)黄色4号 0.1
(13)二酸化チタン 0.01
(14)トコフェロール 0.1
(15)l―メントール 0.5
(16)ガラス末*7 1
(17)(PET/ポリメタクリル酸メチル)ラミネート *8 1
*7:マイクログラスメタシャインMT1080RY(日本板硝子社製)
*8:オーロラフレークレッド 0.05(角八魚鱗箔社製)
【0048】
(製造方法)
A:成分(1)~(6)を100℃に加熱し、均一溶解する。
B:Aに成分(7)~(17)を加え、均一に分散する。
C:Bを90℃でアプリケーター容器に流し込み、室温に冷却して油性リップスクラブを得た。
【0049】
実施例17の油性液状リップスクラブは、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさ、スクラブ剤によるマッサージ効果に優れたものであった。
【0050】
実施例18:油性液状リップスクラブ
(成分) (%)
(1)パルミチン酸デキストリン*1 1.8
(2)イソステアリン酸デキストリン *9 3
(3)トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2*10
(25℃粘度448mPa・s) 残量
(4)ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2*11
(25℃粘度1160mPa・s) 10
(5)ジメチコン(25℃粘度20mPa・s)*12 5
(6)ワセリン 2
(7)ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物*13
(25℃粘度33,000mPa・s) 20
(8)ジメチルシリル化シリカ *3 5
(9)イソドデカン 5
(10)セルロース(平均粒子径300μm) 12
(11)ジブチルヒドロキシトルエン 0.05
(12)フェノキシエタノール 0.5
(13)赤色202号 0.2
(14)黄色4号 0.1
(15)二酸化チタン 0.01
(16)トコフェロール 0.1
(17)バニリルブチル 0.2
(18)ローズマリーエキス 0.1
(19)水 0.1
*9:ユニフィルマHVY(千葉製粉社製)
*10:コスモール43V(日清オイリオグループ社製)
*11:コスモール42V(日清オイリオグループ社製)
*12:シリコンKF-96A-20CS(信越化学工業社製)
*13:LUSPLAN DD-DHR(日本精化社製)
【0051】
(製造方法)
A:成分(1)~(7)を100℃に加熱し、均一に溶解する。
B:Aに成分(8)~(19)を加え、均一に分散する。
C:Bを90℃でジャー容器に流し込み、室温に冷却して油性液状リップスクラブを得た。
【0052】
実施例18の油性液状リップスクラブは、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさ、スクラブ剤によるマッサージ効果に優れたものであった。
【0053】
実施例19:油性リップバーム
(成分) (%)
(1)パルミチン酸デキストリン*1 1
(2)(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン*2 2
(3)ジカプリン酸ネオペンチルグリコール
(25℃粘度19mPa・s) 7
(4)イソノナン酸イソトリデシル(25℃粘度11mPa・s) 15
(5)トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2
(25℃粘度448mPa・s) 残量
(6)トリメリト酸トリトリデシル(25℃粘度565mPa・s) 15
(7)水添ポリイソブテン(25℃粘度40,000mPa・s) 10
(8)水添ポリイソブテン(25℃粘度110,000mPa・s) 6
(9)水添ポリイソブテン(25℃粘度1,000,000mPa・s) 2
(10)セラミドNG 0.03
(11)ジメチルシリル化シリカ*4 7
(12)スクロース(不定形、平均粒子径300μm) 5
(13)グルコマンナン(不定形、平均粒子径300μm) 3
(14)ペンチレングリコール 0.3
(15)赤色201号 0.1
(16)ステアロイルグルタミン酸2Na1%処理二酸化チタン
(平均粒子径250nm)*14 0.03
(17)赤色218号 0.001
(18)香料 0.02
【0054】
(製造方法)
A:成分(1)~(10)を100℃に加熱し、均一に溶解する。
B:Aに成分(11)~(18)を加え、均一に分散する。
C:Bを90℃でジャー容器に流し込み、室温に冷却して油性リップバームを得た。
【0055】
実施例19の油性リップバームは、高温でのスクラブ剤の沈降抑制、外観の透明性、べたつきのなさ、スクラブ剤によるマッサージ効果に優れたものであった。