IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特開2023-171348酵素が増強されたADAMTS-13活性アッセイ
<>
  • 特開-酵素が増強されたADAMTS-13活性アッセイ 図1
  • 特開-酵素が増強されたADAMTS-13活性アッセイ 図2
  • 特開-酵素が増強されたADAMTS-13活性アッセイ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171348
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】酵素が増強されたADAMTS-13活性アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/37 20060101AFI20231124BHJP
   C12Q 1/32 20060101ALN20231124BHJP
   C12Q 1/40 20060101ALN20231124BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALN20231124BHJP
   C07K 14/745 20060101ALN20231124BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
C12Q1/37 ZNA
C12Q1/32
C12Q1/40
C12Q1/34
C07K14/745
C07K19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023082692
(22)【出願日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】22174472.5
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・シュヴァルツ
(72)【発明者】
【氏名】フランク・フィッツトゥーム
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ36
4B063QR04
4B063QR48
4B063QR65
4B063QX01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA65
4H045DA89
4H045EA50
4H045FA50
(57)【要約】
【課題】試料中のADAMTS-13活性を、効率的で、時間を節約した、自動化可能なやり方で検出することが可能な方法および手段を提供すること。
【解決手段】本発明は、試料中のADAMTS-13活性を判定するための方法であって、試料を、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)などのレポーター酵素に連結しているフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチドと接触させることを含む方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のADAMTS-13活性を判定するための方法であって、以下の工程:
a.試料を、
i.ADAMTS-13切断部位を有するフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である阻害されたレポーター酵素複合体、ならびに
ii.レポーター酵素基質
と混合して反応混合物を提供する工程;
b.活性化されたレポーター酵素によって変換された反応混合物中のレポーター酵素基質の量を測定する工程を含み、
変換されたレポーター酵素基質の測定された量は試料中のADAMTS-13活性に比例する方法。
【請求項2】
レポーター酵素は、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルファ-アミラーゼ、もしくはグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)、またはそれらの機能的バリアントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変換されたレポーター酵素基質の測定は、分光光度、輝度、または電気化学技術によって達成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
阻害されたレポーター酵素複合体は、好ましくはスペーサーを介して、より好ましくは3から10個の原子を有するスペーサーを介して互いに共有結合しているADAMTS-13切断部位を有するVWFポリペプチドおよびレポーター酵素を含む、請求項1~3のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項5】
VWFポリペプチドは、VWFのA2ドメインを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
VWFポリペプチドは、配列番号1から配列番号24のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
VWFポリペプチドは、C末端にエピトープタグ、好ましくはビオチン、FITC、ストレプトアビジン、GST、His、Flag、ACP、ELK16、HA、またはMBPを備えている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
阻害されたレポーター酵素複合体は、VWFポリペプチドに特異的に結合している抗体、アプタマー、およびアフィマーからなる群の結合相手をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
特異的に結合している結合相手は、VWFポリペプチドのエピトープタグに結合している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
試料は、体液、好ましくは、全血、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、または涙液である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ADAMTS-13切断部位を有するフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である阻害されたレポーター酵素複合体を含有する第1の試薬、ならびにレポーター酵素基質および場合によりレポーター酵素の1つまたはそれ以上の補因子を含有する第2の試薬を含むキット。
【請求項12】
試料中のADAMTS-13活性を判定するための、ADAMTS-13切断部位を有するVWFポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である阻害されたレポーター酵素複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のADAMTS-13活性を判定するための方法であって、試料を、ADAMTS-13切断部位を有し、レポーター酵素に連結しているフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチドを含む阻害されたレポーター酵素複合体と接触させることを含む方法に関する。本発明は、このような阻害されたレポーター酵素複合体、レポーター酵素基質、および場合によりレポーター酵素の1つまたはそれ以上の補因子を含有する試薬を含むキットにさらに関する。本発明は、生物学的試料中のADAMTS-13活性を判定するための、このような阻害されたレポーター酵素複合体の使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
ADAMTS-13(トロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ、メンバー13)は、インビボにおいてフォン・ヴィルブランド因子(VWF)を分解する酵素である。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)などの障害を引き起こすADAMTS-13酵素活性の先天性および後天性欠損症がある。血漿試料中のADAMTS-13活性を測定するための公知のアッセイは、リストセチン補因子アッセイによって、分解されたVWF活性の量を判定することによって作用する(特許文献1)。これは、VWFを基質として比較的少量の試料に添加し、ADAMTS-13を活性化してから、非常に長いインキュベーション期間をかけて(一晩)VWFを分解することによって達成される。このアプローチでは、血漿中のVWFの活性は大きく変動しやすいため、試料自体が混合物に与えるVWFの関与をできるだけ少なくすることが重要である。さらに、測定するのは試料のADAMTS-13活性のみであるため、基質が混合物にADAMTS-13活性を与えてはならない。
【0003】
同様に、大きなVWF多量体の喪失を検出するために、コラーゲン結合アッセイを使用することができる(特許文献2)。このADAMTS-13活性アッセイでは、少量の血漿試料しか使用することができず、天然のVWFは非常にゆっくりと分解されるため、インキュベーション期間も非常に長くなる。
【0004】
ADAMTS-13活性アッセイは、熱処理したVWF欠損血漿を使用することによって改善された。これにより、インキュベーション期間が60分に短縮された(非特許文献1を参照のこと)。先行技術の別のアッセイでは、VWFポリペプチドをADAMTS-13の基質として使用する。切断産物を定量的に測定し、ADAMTS-13活性と相関させる(特許文献3を参照のこと)。
【0005】
別のアッセイは特許文献4に記載されている。ADAMTS-13の切断部位を含有するポリペプチドを基質として使用する。断片の形成を測定する。
【0006】
別の方法は非特許文献2に記載されている。このアプローチは、ADAMTS-13活性を判定するためにポリペプチド基質を使用し、この基質は、VWFのA2ドメイン、特にA2ドメインのD1596からR1668までの73アミノ酸残基からなり、VWF73と呼ばれている。これは、検出のためにFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)試薬で修飾された。同様のアプローチが特許文献5に記載されており、VWFポリペプチド中のアミノ酸の置換または欠失によってADAMTS-13によるVWFポリペプチドのより効果的な切断が達成される。切断は同様にFRET技術によって検出される。しかし、古典的な凝固分析装置では通常、FRET検出技術を選択することができないため、そのような機器においてこれらのアプローチを応用することはできない。
【0007】
市販のアッセイ(例えば、Technozym ADAMTS-13活性試験またはHemosIL Acustar ADAMTS-13活性アッセイ)では、抗体検出法の一部としてVWF73ポリペプチドを使用する。ここでは、VWF73ポリペプチドは、試料と接触させる固相上に固定化されている。ADAMTS-13活性によって形成されるVWF断片は、次に抗体によって認識される。これらのヘテロジニアスアッセイの欠点は、洗浄工程が必要なことである。したがって、通例の凝固分析装置での処理には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/005451号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2000/050904号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/065895号(A1)
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/186646号(A1)
【特許文献5】国際公開第2013/071168号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kostousov他、2006、Thromb Res;118(6):723~31
【非特許文献2】Kokame他、2005、Br.J.Haematol.129:93~100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、試料中のADAMTS-13活性を、効率的で、時間を節約した、自動化可能なやり方で検出することが可能な方法および手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明のさらなる有利な態様を示している。
【0012】
本発明の目的は、試料を、ADAMTS-13切断部位を有するフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である阻害されたレポーター酵素複合体、ならびにレポーター酵素基質と混合して反応混合物を形成し、試料のADAMTS-13活性によって活性化されたレポーター酵素によって変換された反応混合物中のレポーター酵素基質の量を測定することによって本質的に達成される。こうして測定された変換されたレポーター酵素基質の量は、試料中のADAMTS-13活性に比例する。
【0013】
この効果は、試料中のADAMTS-13活性を効率的かつ時間を節約したやり方で判定できること、およびこの方法をホモジニアスアッセイ形式で、すなわち、洗浄工程なしで実行でき、したがって一般的な凝固分析装置での自動処理に適していることである。
【0014】
したがって、本発明は、試料中のADAMTS-13活性を判定するための方法であって、以下の工程:
a.試料を、
i.ADAMTS-13切断部位を有するフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である阻害されたレポーター酵素複合体、ならびに
ii.レポーター酵素基質
と混合して反応混合物を提供する工程;
b.活性化されたレポーター酵素によって変換された反応混合物中のレポーター酵素基質の量を測定する工程を含み、
変換されたレポーター酵素基質の測定された量が試料中のADAMTS-13活性に比例する方法を提供する。
【0015】
レポーター酵素は、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルファ-アミラーゼ、もしくはグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)、またはそれらの機能的バリアントであってもよい。特に好ましいレポーター酵素は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)である。場合により、1つまたはそれ以上の補因子を使用または存在させることができる。
【0016】
変換されたレポーター酵素基質の測定は、分光光度、輝度(例えば、蛍光測定)、または電気化学技術によって達成することができる。
【0017】
好ましい実施形態では、阻害されたレポーター酵素複合体中のADAMTS-13切断部位を有するVWFポリペプチドおよびレポーター酵素は、互いに共有結合している。スペーサーを介した結合が好ましく、3~10個の原子を有するスペーサーを介した結合が最も好ましい。
【0018】
VWFポリペプチドはVWFのA2ドメインを含むことがさらに好ましい。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態では、VWFポリペプチドは、配列番号1から配列番号24のいずれかのアミノ酸配列を有する。
【0020】
VWFポリペプチドは、C末端にエピトープタグを備えることができる。好ましいエピトープタグは、ビオチン、FITC、ストレプトアビジン、GST、His、Flag、ACP、ELK16、HA、またはMBPである。
【0021】
本発明による方法では、VWFポリペプチドのレポーター酵素への連結によるレポーター酵素の阻害は、反応混合物中のADAMTS-13活性によって取り消され、これは、連結したVWFポリペプチドのADAMTS-13酵素によるタンパク質分解切断によって達成される。ここで、連結したVWFポリペプチドによって引き起こされるレポーター酵素の阻害は、VWFポリペプチドへの抗体または何らかのその他の特異的な結合相手、例えば、アプタマーもしくはアフィマーの結合によって増強されることが特に好ましい。したがって、好ましくは、阻害されたレポーター酵素複合体は、VWFポリペプチドに特異的に結合している抗体、アプタマー、およびアフィマーからなる群の結合相手をさらに含む。
【0022】
特定の実施形態では、この場合の特異的に結合している結合相手は、VWFポリペプチドのエピトープタグに結合している。
【0023】
試料は体液、例えば、全血、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、または涙液であってもよい。
【0024】
本発明は、ADAMTS-13切断部位を有するVWFポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である阻害されたレポーター酵素複合体を含有する第1の試薬、ならびにレポーター酵素基質を含有する第2の試薬を含むキットをさらに提供する。場合により、キットは、レポーター酵素および/またはADAMTS-13プロテアーゼのための1つまたはそれ以上の補因子を含む。補因子は、第2の試薬または別の第3の試薬に存在していてもよい。
【0025】
本発明は、試料中のADAMTS-13活性を判定するための、ADAMTS-13切断部位を有するVWFポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である、阻害されたレポーター酵素複合体の使用もさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】VWFポリペプチド(3)のN末端にレポーター酵素(1)が連結している、本発明による方法の一実施形態を示した図である。VWFポリペプチド(3)の連結は、レポーター酵素(1)の活性を阻害し、それによってレポーター酵素基質(2)の変換を妨害する。ADAMTS-13(4)によるVWFポリペプチド(3)のタンパク質分解切断によって、VWFポリペプチド(3)が切断され、レポーター酵素に断片(6)だけが残る。これにより、レポーター酵素(1)の阻害が取り消されるかまたは大幅に減少するため、レポーター酵素基質(2)はレポーター酵素(1)と相互作用することができ、検出可能な産物(5)に変換される。
図2】VWFポリペプチド(3)がC末端でエピトープタグ(10)に結合していることは異なるが、図1で示された方法に実質的に対応している本発明による方法のさらなる実施形態を示した図である。前記エピトープタグは、レポーター酵素(1)の阻害の調節のために、またはタンパク質分解工程後の除去目的のために使用することができる。
図3】抗体または何らかのその他の特異的な結合相手(20)がVWFポリペプチド(3)のC末端エピトープタグ(10)に結合していることは異なるが、図2で示された方法に実質的に対応している本発明による方法のさらなる実施形態を示した図である。この相互作用は、レポーター酵素(1)の阻害の調節のために、またはタンパク質分解工程後の除去目的のために使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は特定の実施形態に関して説明されているが、この説明は限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0028】
本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する前に、本発明を理解するための重要な定義を記載する。
【0029】
この説明および添付の特許請求の範囲で使用したように、「a」および「an」の単数形はまた、文脈が明確に別段の指示をしていない限り、それぞれの複数形を含む。
【0030】
本発明に関連して、「およそ」および「約」という用語は、問題になっている機能の技術的効果をさらに確実にするために、当業者が理解する精度の間隔を意味する。この用語は、典型的には、示された数値から±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、さらに好ましくは±5%のずれを示す。
【0031】
「含む(comprising)」という用語は限定的ではないことを理解されたい。本発明の目的のために、「からなる(consisting of」または「本質的にからなる(essentially consisting of)」という用語は、「からなる(comprising of)」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。
【0032】
以後、群が少なくともある特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も包含することを意味する。
【0033】
さらに、説明または特許請求の範囲における用語「(i)」、「(ii)」、「(iii)」、または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、または「第1」、「第2」、「第3」などは、同様の要素を区別するために使用されており、必ずしも順序または時系列を説明するために必要なわけではない。
【0034】
そのように使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書で記載した本発明の実施形態は、本明細書で記載した順序とは異なる順序で使用できることを理解されたい。用語が技術、方法、または使用の工程に関連する場合、工程間に時間または時間間隔の一貫性はなく、すなわち、別段の指示がない限り、工程は同時に実行されるか、そのような工程の間に、秒、分、時間、日、週などの時間間隔が存在していてもよい。
【0035】
本明細書で記載した特定の方法、手順などは変動し得るので、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用した用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的としており、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されたい。
【0036】
図面は概略的な表現であると見なされるべきであり、図面に例示された要素は必ずしも一定の縮尺で示されているわけではない。むしろ、様々な要素は、それらの機能および一般的な目的が当業者に明らかになるように表されている。別段の定義がない限り、本明細書で使用した技術的および科学的用語は全て、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0037】
上述のように、本発明による方法は、生物学的試料におけるADAMTS-13活性のホモジニアス判定に適している。本明細書で使用した用語「ホモジニアス判定」とは、ホモジニアス相における分析の実施を意味する。このアプローチは、結合物質と非結合物質を分離する必要がなく、洗浄工程も必要ないため、迅速で簡単である。ホモジニアス判定は、試料をさらなる反応物と、好ましくは液相、例えば、適切な緩衝系中で「接触させること」を含む。
【0038】
通常、ADAMTS-13活性は亜鉛イオンおよびカルシウムイオンに依存している。反応混合物中にそれらが存在することは、本方法を実施する場合に好ましい。さらに最適な条件は、例えば、pH6(±1)、低イオン強度、反応混合物中のカルシウムイオン1~10mMおよび/または亜鉛イオン0.01~1mMである。さらなる実施形態では、特にクエン酸血漿を使用する場合、バリウムイオンが存在しており、これは、クエン酸結合カルシウムの放出によってADAMTS-13活性がさらに刺激されるからである。特定の実施形態では、pH7.4およびNaCl150mMは、これらの条件下で活性が約75%に低下するため、避けるべきである。この方法は、好ましくは+37℃でのインキュベーションを想定している。
【0039】
本明細書で記載した「ADAMTS-13活性」は、「トロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ、メンバー13」を意味し、「フォン・ヴィルブランド因子切断プロテアーゼ」(VWFCP)とも呼ばれる。ADAMTS-13は、亜鉛、カルシウム、バリウム、およびその他の金属イオンの存在下で活性化されるプロテアーゼである。フォン・ヴィルブランド因子(VWF)をアミノ酸残基Y1605とM1606との間のペプチド結合で切断する血漿タンパク質であり、したがって、そのサイズは限定されており、血小板の接着も制限されている。ADAMTS-13遺伝子の遺伝的変異または、例えば、自己抗体の発達によってADAMTS-13活性が低下した場合、非常に大きなVWF多量体の蓄積が血小板凝集を引き起こし、したがって微小血管血栓症を引き起こす可能性がある。これは、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の致命的な症候群に相当するおそれがある。本発明において、ADAMTS-13の活性は、VWFの切断に関連して測定される。
【0040】
「フォン・ヴィルブランド因子」または「VWF」は、特に、循環する血小板の血管損傷部位への結合および接着を媒介することによって、抗血友病因子のキャリアとして、および血液凝固系における血小板-血管壁メディエータとして作用するので、止血を維持するために非常に重要な大きな多量体血漿糖タンパク質である。VWF遺伝子の変異またはこのタンパク質の欠損は、フォンヴィルブランド病(VWD)を引き起こす。VWFは通常、内皮細胞および巨核球によって発現される。合成されるのは250kDaの単量体で、細胞内プロセシング、グリコシル化、多量体化、およびプロペプチドの除去を受け、最終的に成熟VWF多量体の形成を引き起こす。VWF多量体のサイズは、上述のように、VWFタンパク質のA2ドメインの特定の単一部位でVWFタンパク質を切断するADAMTS-13プロテアーゼによって調節される。
【0041】
VWF単量体は、2050アミノ酸のタンパク質である。この単量体は、特定の機能を有するいくつかの特定のドメインを含有する。単量体は、とりわけ、凝固第VIII因子に結合するD’/D3ドメイン;血小板、ヘパリン、およびおそらくコラーゲンのGPIb受容体に結合するA1ドメイン;ADAMTS-13の露出していない切断部位を露出させるために部分的に展開する必要があるA2ドメイン;コラーゲンに結合するA3ドメイン;活性化されたときにRGDモチーフが血小板インテグリンαIIbβ3に結合するC4ドメイン;このタンパク質のC末端の「シスチンノット」ドメインを含有する。単量体は発現された後、通常N-グリコシル化され、小胞体で二量体を形成し、ゴルジ体でジスルフィド結合を介してシステイン残基を架橋することよって多量体を形成するように配置される。
【0042】
本発明に包含されるVWFポリペプチド配列は、https://www.uniprot.orgにおいて寄託番号UniProtKB-P04275-1(VWF_HUMAN)で検索することができる標準的なヒト型のVWFアイソフォーム1に関する。配列番号25は、標準的なヒト型のVWFアイソフォーム1に対応する。ADAMTS-13切断部位が位置するA2ドメインは、前記標準的なVWFアイソフォーム1(P04275-1)の1498位から1668位にわたる。配列番号24はVWFのA2ドメインに対応し、D1498からR1668位を含む。
【0043】
本明細書で使用した「ADAMTS-13切断部位を有するフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチド」という用語は主に、Y1605とM1606との間にADAMTS-13切断部位を含むA2ドメイン、またはその断片を意味し、この断片はY1605とM1606(Tyr1605とMet1606との間;上記の標準配列に基づく)との間にADAMTS-13切断部位を含む。この断片は、Y1605とM1606との間の切断部位でADAMTS-13によるタンパク質分解切断を可能にする立体構造を有しており、すなわち、機能的なADAMTS-13切断部位を有している。
【0044】
VWFポリペプチドは、上記の標準配列と比較して、異なる長さであってもよく、1つまたはそれ以上のアミノ酸修飾を有していてもよい。
【0045】
例えば、VWFポリペプチドは、例えば、45から171アミノ酸、例えば、65から171アミノ酸、45から110アミノ酸、45から76アミノ酸、45から82アミノ酸、50から73アミノ酸、または50から70アミノ酸の長さであってもよい。より好ましいのは、70から82アミノ酸、72から110アミノ酸、または70から76アミノ酸の長さである。さらなる実施形態では、VWFポリペプチドは45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、または115アミノ酸の長さである。
【0046】
ADAMTS-13切断部位を有するVWFポリペプチドは、1つまたはそれ以上のアミノ酸修飾を有していてもよい。この修飾は、アミノ酸の置換、欠失もしくは付加、またはアミノ酸の化学的修飾であってもよい。前記修飾は、特定の実施形態では、ADAMTS-13による切断の切断能力および速度に影響を与えることができ;それらは、ポリペプチドの立体構造を変化させたり、ポリペプチドの折り畳み方法に影響を与えたり、検出に役立つ化学的修飾を含んだりすることができる。
【0047】
好ましい実施形態では、修飾は、配列番号25の1599、1610、および1617位に関する。より好ましくは、配列番号25の1599位のアミノ酸がQからKに変化しており、および/または配列番号25の1610位のアミノ酸がNからCに変化しており、および/または配列番号25の1617位のアミノ酸がKからRに変化している。
【0048】
代替実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸を2,3-ジアミノプロピオン酸(A2pr)に変化させることができる。特に好ましくは、配列番号25の1599位のアミノ酸はQから2,3-ジアミノプロピオン酸(A2pr)に変化しており、および/または配列番号25の1610位のアミノ酸はNから2,3-ジアミノプロピオン酸(A2pr)に変化している。代替実施形態では、A2prに変化したアミノ酸は、2-(N-メチルアミノ)ベンゾイル基および/または2,4-ジニトロフェニル基で修飾することができる。より好ましくは、1599位で変化したアミノ酸は2-(N-メチルアミノ)ベンゾイル基(Nma)で修飾され、1610位で変化したアミノ酸は2,4-ジニトロフェニル基(Dnp)で修飾されている。この組み合わせでは、修飾されたアミノ酸は、波長340nmの照射による2-(N-メチルアミノ)ベンゾイル基の励起に続いて、蛍光共鳴エネルギーがいわゆるクエンチャー、すなわち2,4-ジニトロフェニル基に移行するFRETシステムを表す。
【0049】
好ましくは、VWFポリペプチドは、配列表の配列番号1~24の配列のうちの1つを含み、以下の表1に再現される通りである。
【0050】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0051】
本明細書で使用した「阻害されたレポーター酵素複合体」という用語は、レポーター酵素およびADAMTS-13切断部位を有するVWFポリペプチドからなる複合体を意味し、この複合体は、本発明による方法におけるシグナル生成に役立つ。阻害されたレポーター酵素複合体は、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能であり、したがって試料中のADAMTS-13活性の検出を可能にする。VWFポリペプチドのADAMTS-13媒介切断の結果として活性化されたレポーター酵素は、ADAMTS-13活性の存在または量に応じてレポーター酵素基質を変換し、これは検出可能である。変換されたレポーター酵素基質の測定量は、試料中のADAMTS-13活性に比例する。検出は、様々なやり方および様々な方法で達成することができる。ここでは、分光光度測定、発光測定、蛍光測定、および電気化学的検出が好ましい。検出の性質および実施は、レポーター酵素および使用したレポーター酵素基質によって左右される。
【0052】
検出方法は、対照試料および/または較正試料の助けを借りて較正することができる。レポーター酵素は、天然型、すなわち野生型アミノ酸配列を有するものを使用することができるか、または遺伝子改変することができる。例えば、アミノ酸配列を特定の状況に適合させることができ、例えば、レポーター酵素基質の結合を最適化することができるか、または特定の宿主生物におけるタンパク質の発現能力に影響を与えることができる。さらに、相互作用物質との共有結合能力は、システイン、リジン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸などの追加のアミノ酸残基の存在または導入によって達成することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、レポーター酵素は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルファ-アミラーゼ、またはグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼである。
【0054】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)は、NADを消費しながらリンゴ酸を脱水素してオキサロ酢酸を形成する酵素である。MDHの活性は通常、MDH触媒反応、リンゴ酸+NAD→オキサロ酢酸+NADHにおけるNADHの生成を測定することによって判定される。反応の定量的測定は、例えば、340nmで直接測定することによって分光光度的に達成するか、または下流のNADHの色素による色反応後の比色測定によって、すなわち、レポーター色素の低下および450nmの吸収の判定によって、実施することができる。あるいは、NAD+の他に、NADP+、チオ-NAD+、またはチオ-NADP+を使用することも可能である。
【0055】
ベータ-ガラクトシダーゼは、ガラクトースとその有機的結合相手との間のベータ-グリコシド結合を加水分解する酵素である。ベータ-ガラクトシダーゼは通常、ガラクトースに変換される無色のレポーター基質o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)および420nmで分光光度的に定量することができる発色団o-ニトロフェノールを使用して測定される。
【0056】
グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)は、NAD+を使用してグルコース-6-リン酸を6-ホスホグルコノラクトンおよびNADHに変換する酵素である。反応の定量的測定は、例えば、340nmでNADHを直接測定することによって分光光度的に達成するか、または下流のNADHの色素による色反応後の比色測定によって、すなわち、レポーター色素の低下および450nmの吸収の判定によって、実施することができる。あるいは、NAD+の他に、NADP+、チオ-NAD+、またはチオ-NADP+を使用することも可能である。さらなる詳細は、当業者によって適切な文献資料に見出すことができる。
【0057】
レポーター酵素としてG6PDHを使用することが特に好ましい。
【0058】
本明細書で使用した「レポーター酵素基質」という用語は、レポーター酵素の活性部位に対して親和性を有し、それによって触媒反応において変換される分子を意味する。レポーター酵素基質は、選択したレポーター酵素に左右される。リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)に適したレポーター酵素基質は、NADH、NADPH、チオ-NADH、またはチオ-NADPHに変換されるNAD+、NADP+、チオ-NAD+、またはチオ-NADP+である。ベータ-ガラクトシダーゼに適したレポーター酵素基質は、とりわけo-ニトロフェノールに変換されるONPGである。さらに、特定のレポーター酵素の場合のレポーター酵素基質は、当業者には公知である。
【0059】
レポーター酵素基質に加えて、1つまたはそれ以上の補因子を反応混合物中でさらに使用することができる。本発明の文脈において、「補因子」という用語は、生化学反応の進行に寄与する低分子量物質を意味する。補因子は、例えば、レポーター酵素に共有結合もしくは非共有結合しているか、またはレポーター酵素に組み込まれている。補因子の例は、ATP、ADP、または金属イオン、例えば、亜鉛、カルシウム、バリウム、マグネシウム、または銅である。
【0060】
ADAMTS-13切断部位を有するフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である、適切な阻害されたレポーター酵素複合体は、共有結合を介してVWFポリペプチドをレポーター酵素に連結することによって提供することができる。レポーター酵素中では、共有結合は、例えば、システイン残基中のチオールまたはスルフヒドリル基の存在、リジン残基中のアミノ基の存在、またはアスパラギン酸残基もしくはグルタミン酸残基中のカルボキシル基の存在を介して生じる。典型的に、連結は活性化した分子を介して生じる。例えば、システインは、マレイミド、ジスルフィド、ヨードアセトアミド、ハロアセチレン、アジリジン、アクリロイル、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、およびその他のジスルフィドと選択的に反応することができる。リジンなどの側鎖第一級アミンを有するアミノ酸は活性化され、スクシンイミドエステル(N-ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミド、またはその他のスクシンイミジルエステル)またはPITCもしくはFITCなどの特定のイソチオシアネートに結合することができる。カルボキシル基は、カルボジイミドによる活性化によってアミン基に連結することができる。さらなる選択肢は、還元的アルキル化およびトシル化である。さらに、タンパク質への共有結合の反応基として、光反応性分子、例えば、アリールアジドまたはジアジリンを使用することが可能である。この場合、反応は紫外線照射によって惹起される。共有結合は、VWFポリペプチドのN末端のアミノ基またはVWFポリペプチドのC末端のカルボキシル基と実施することが好ましい。
【0061】
さらに好ましい実施形態では、結合はスペーサーを介して実施される。「スペーサー」という用語は、レポーター酵素をVWFポリペプチドに共有結合させる分子鎖の任意の構造を意味する。スペーサーは、炭素原子および窒素原子および/または酸素原子および/または水素原子からなっていてもよい。例えば、分子鎖は、主鎖に存在する炭素原子、窒素原子、および酸素原子の総数が、少なくとも3原子、好ましくは3原子から100原子の間、より好ましくは3原子から30原子の間、さらにより好ましくは3原子から20原子の間、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20原子であってもよい。3から10原子の長さが特に好ましい。別の実施形態では、スペーサーの主鎖の長さは、約0.4nmから約100nm、より好ましくは約0.6nmから30nmの間、例えば、0.6、0.8、1、2、4、8、10、20、25、または30nmであってもよい。さらに好ましい実施形態では、スペーサーは、ペプチドスペーサー、例えば、2から10個のグリシン残基を有するグリシンスペーサーである。さらなる実施形態では、スペーサーは、エチレングリコールをベースとした親水性スペーサーであってもよい。
【0062】
VWFポリペプチドは、自由末端、すなわち、レポーター酵素に連結していない末端に、分子エピトープタグを備えることができる。この分子エピトープタグは、N末端またはC末端に結合させることができる。VWFポリペプチドのC末端での結合が好ましい。本明細書で使用した「分子エピトープタグ」という用語は、抗体結合のエピトープとして、または別の結合相手との分子相互作用の相互作用物質として使用できる小さな有機化学分子または短いアミノ酸配列を意味する。本発明に関連して使用できる分子エピトープタグの例は、ALFAタグ、Aviタグ、Cタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、ポリアルギニンタグ、Eタグ、FLAGタグ、HAタグ、Hisタグ、Gly-Hisタグ、Mycタグ、NEタグ、Rho1D4タグ、Sタグ、SBPタグ、Softag1タグ、Softag3タグ、Spotタグ、Strepタグ、T7タグ、TCタグ、Tyタグ、V5タグ、VSVタグ、Xpressタグなどのペプチドタグである。さらなる例には、BCCPタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ、Haloタグ、SNAPタグ、CLIPタグ、HUHタグ、マルトース結合タンパク質タグ、チオレドキシンタグ、Fcタグ、CRDSATタグ、またはHiBiTタグなどのタンパク質タグが含まれる。ビオチン、FITC、ストレプトアビジン、GST、His、Flag、ACP、ELK16、HA、またはMBPのタグが特に好ましい。あるいは、エピトープタグは、相補的DNA鎖にハイブリダイズするDNAオリゴヌクレオチドの形態で存在していてもよい。
【0063】
図1および図2で例示したように、本発明による方法は、切断されていないVWFポリペプチド、好ましくは配列番号1から配列番号24までのいずれかによるVWFポリペプチドの連結によって引き起こされ、レポーター酵素がレポーター酵素基質と相互作用または定量的に相互作用することができないことに関与するレポーター酵素の阻害は、タンパク質分解性のADAMTS-13活性によって、すなわち、ADAMTS-13によって誘導される、連結したVWFポリペプチドのY1605とM1606との間の切断部位での切断によって取り消されるという事実に基づいている。好ましくはY1605で終わる断片、またはM1606で終わる断片にも連結したVWFポリペプチドのトランケーションの結果として、レポーター酵素の活性部位の遮蔽は取り消される。反応物質である酵素基質が反応混合物中に存在する場合、レポーター酵素はそれを定量的に変換することができる。基質の変換は、反応産物の測定によって測定することができる。前記測定は、使用した試料中に存在するADAMTS-13の量の定量的判定である。本明細書で使用した「定量的判定」という用語は、ADAMTS-13の量と、連結したVWFポリペプチドのタンパク質分解切断の結果として、活性化されたレポーター酵素によって変換されたレポーター酵素基質の量との間が正比例することを意味する。結果として、反応混合物中に存在するADAMTS-13活性の量を示すことが可能である。
【0064】
例えば、図3で例示したさらなる実施形態では、連結したVWFポリペプチドによる阻害は、結合相手のVWFポリペプチドの遠位端への結合によって増強される。連結したVWFポリペプチドの「遠位」端は、レポーター酵素との連結部位の反対側にあるポリペプチドの末端、または連結部位から見てポリペプチドのより離れた領域を意味すると理解されるべきである。前記末端は、好ましくは、ポリペプチドの連結していないC末端であるが、あるいは、連結していないN末端であってもよい。本明細書で使用した「結合相手」という用語は、ポリペプチドの前記遠位領域に特異的に結合できる、当業者に公知の全単位を意味する。さらなる特定の実施形態では、結合相手の結合部位は、連結したVWFポリペプチドのその他の部位またはその他の領域にあってもよく、例えば、非遠位領域のエピトープであってもよい。好ましくは、そのような結合部位は、VWFポリペプチドのY1605とM1606との間のADAMTS-13切断部位に対して遠位にある。好ましくは抗体または何らかのその他の結合相手によって認識される、例えば、上記で定義したような分子エピトープタグが遠位端に存在することがより好ましい。さらに好ましい実施形態では、抗体によって認識される末端エピトープが存在する。
【0065】
VWFポリペプチド、好ましくはADAMTS-13の存在下でレポーター酵素複合体から切断されるVWFポリペプチドの領域に結合相手がさらに結合することによって、VWFポリペプチドがタンパク質分解切断されない間にレポーター酵素の阻害が増強される。
【0066】
レポーター酵素複合体の阻害を増強するための結合相手には、例えば、特異的に結合する抗体、アプタマー、またはアフィマーが含まれる。さらに、人工抗体模倣体、すなわち、典型的には抗体の範囲内の結合親和性で標的分子に特異的に結合する高分子有機または無機構造が含まれる。
【0067】
本明細書で使用した「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を意味する。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)および任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)またはサブクラスであってもよい。さらなる実施形態では、本発明の抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、マウス、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ抗体、または免疫グロブリン分子全体が含まれる。
【0068】
本明細書で使用した「アプタマー」という用語は、標的エピトープに特異的に結合するペプチドまたは核酸を意味する。アプタマーは、典型的には、それらの選択的結合特性に基づいて、核酸および/またはペプチドのプールから選択される。「核酸アプタマー」は、短い核酸分子、例えば、RNA、DNA、PNA、CNA、HNA、LNA、もしくはANA、または当業者に公知の任意のその他の適切な核酸形式であり、タンパク質標的分子に特異的に結合することができる。「ペプチドアプタマー」は、タンパク質標的と相互作用し、それに特異的に結合することができる短いペプチドである。典型的には、ペプチドアプタマーは、両端でタンパク質足場に結合する可変ペプチドループを含む。この2つの構造の制約により、ペプチドアプタマーの結合親和性は大幅に増加し、したがって抗体の結合親和性に匹敵すると考えられる。可変ループ長は、好ましくは、10から20個のアミノ酸から構成される。
【0069】
ペプチドアプタマーの好ましいサブフォームは「アフィマー」である。これは、シスタチン群から人工的に生成されたタンパク質である。アフィマーは、プロテアーゼ阻害剤シスタチンAをベースにしており、タンパク質設計によって分子表面で個々に修飾されている。その結果、特異的なアフィマーは、特異的に選択された分子に結合することができる。シスタチン成分は、例えば、表面に挿入された配列、例えば、アルファヘリックスの立体構造を安定化するための足場として機能する。アフィマーは、生物学的半減期が長く、熱安定性が高く、比較的長期間安定して使用できるという利点がある。
【0070】
VWFポリペプチドの遠位端に特異的に結合している結合相手の存在は、連結したVWFポリペプチドの阻害効果を増加させる。特定の実施形態では、それによって、機能的なADAMTS-13切断部位を含む45から171アミノ酸のアミノ酸長を有する、上記のような比較的短いVWF断片を使用することが可能である。
【0071】
本明細書で使用した「試料」という用語は、脊椎動物の体液、好ましくは哺乳動物の体液、より好ましくはヒトの体液を含む。ADAMTS-13活性が存在する可能性がある全ての種類の体液が含まれる。特に、全血、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、または涙液が好ましい。
【0072】
本発明のさらなる態様は、ADAMTS-13切断部位を有するフォン・ヴィルブランド因子(VWF)ポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である阻害されたレポーター酵素複合体を含有する第1の試薬、ならびに本明細書で記載したようなレポーター酵素基質および場合によりレポーター酵素の1つまたはそれ以上の補因子を含有する第2の試薬を含むキットに関する。さらに、キットは、特定の実施形態では、抗体、アプタマー、またはアフィマーなどの結合相手を含有することができる。レポーター酵素およびVWFポリペプチドは、方法の文脈で本明細書で提供した、または例示的で非限定的な図で説明される、定義および説明に対応する。
【0073】
本発明によるキットは、例えば、ADAMTS-13活性の欠損またはADAMTS-13活性のレベルを判定できるようにするために、個体、例えば、患者またはヒトの試料におけるADAMTS-13活性のインビトロ判定のための診断用組成物である。その結果、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の存在またはTTPの素因を判定することがさらに可能である。さらに、キットは、使用説明が記載された添付文書を含有することができる。さらに、キットは、定義されたADAMTS-13活性を有する1つまたはそれ以上の陽性対照および/または1つまたはそれ以上の標準物質を含有することができる。本発明によるキットは、試料希釈剤および/または基質緩衝液をさらに含有することができる。
【0074】
さらなる態様では、本発明は、生物学的試料中のADAMTS-13活性を判定するための、ADAMTS-13切断部位を有するVWFポリペプチドおよびレポーター酵素を含み、ADAMTS-13によるVWFポリペプチドの酵素的切断によって活性化可能である阻害されたレポーター酵素複合体の使用に関する。レポーター酵素およびVWFポリペプチドは、方法の文脈で本明細書で提供した、または例示的で非限定的な図で説明される、定義および説明に対応する。同様に、この使用は、上記で定義した、または非限定的な図で例示した抗体、アプタマー、またはアフィマーなどの結合相手の使用に基づいている。
【0075】
以下の実施例および図は、例示のために提供されている。したがって、実施例および図は限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。当業者であれば、本明細書で提示した原理のさらなる改変を明確に想定することができるであろう。
【実施例0076】
A)阻害されたG6PDH-VWFレポーター酵素複合体を生成するためのVWF73-G6PDHコンジュゲーション
NHSエステル活性化VWF73ポリペプチド(配列番号1)を使用して、G6PDH(L.メセンテロイデス(L.mesenteroides)由来のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ;100mMリン酸ナトリウム緩衝液(SPB)、pH7.3に溶かした凍結乾燥粉末)に対してG6PDHのNH2基を介して共有結合を実施した。ここで、G6PDH100U/mLをVWF73ポリペプチド1mMに室温で4時間連結させた。次いで、過剰なVWF73ポリペプチドを、PD-10カラム(Amersham Biosciences)を使用するゲル濾過および/または、例えば、Microcon YM-30(Millipore)を使用する遠心濾過によって除去した。工程は全て室温で実施した。
【0077】
B)本発明によるADAMTS-13活性の判定
本発明による方法は、Atellica COAG 360 System(Siemens Healthineers)で自動化された方法で行った。これには、30μLのVWF73-G6PDHコンジュゲート(0.5U/mL)(試薬1)と30μLの試料および50μLの活性化緩衝液(試薬2=20mM BIS-トリス、pH6.0、BaCl2 12.5mM、ZnCl2 5mM、CaCl2 1.5mMおよび0.05%Tween-20)とを混合し、+37℃で20分間インキュベートすることが含まれた。その後、+37℃の温度に予め調整した基質溶液(試薬3=MgCl2 3.3mMを含む55mMトリス-HCl緩衝液、pH7.8に溶かしたグルコース-6-リン酸0.018MおよびNAD+0.018M)130μLを反応混合物に添加し、mOD(G6PDH活性によるNAD+の還元の結果としてのNADH+H+の形成の結果として)での反応混合物の吸光度の増加を340nmで2分間測定した。mOD測定値を使用して、酵素反応の反応速度を決定した(デルタmOD/分、ΔmOD/分)。
【0078】
このようにして、5人の健康なドナー、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の2人のドナー、およびADAMTS-13に対する自己抗体を有するがTTPの臨床診断を受けていない1人のドナーのクエン酸血漿試料を、それぞれの場合において3回の独立した反応で試験し、平均を計算した(表3を参照)。
【0079】
試料中のADAMTS-13活性は、ADAMTS-13欠損血漿で希釈した100%の任意ADAMTS-13活性を有する健康なドナー(正常血漿)の80を超えるクエン酸血漿のFFP(新鮮な凍結血漿プール)の希釈系列から調製したADAMTS-13標準曲線(0%~100%ADAMTS-13活性)と比較することによって判定した。各希釈工程は、それぞれの場合において3回の独立した反応で試験し、平均を計算した(表2を参照)。
【0080】
【表2】
【0081】
表2の結果は、VWF73-G6PDHコンジュゲートのVWF73ポリペプチドの切断および関連するG6PDH活性の再活性化が、ADAMTS-13活性に関して濃度依存的に起こることを示している。ADAMTS-13活性が増加するにつれて(正常に対する%)、連結したVWF73ポリペプチドの切断率が増加し、関連するG6PDH活性の再活性化によって、340nmの波長での反応の吸光度の増加が引き起こされる。実験の結果はまた、記載した方法によって、正常の5%のADAMTS-13活性でも、ADAMTS-13活性のない試料(ADAMTS-13欠損血漿)と十分に区別できることを示している。
【0082】
【表3】
【0083】
表3は、記載した方法によって、TTP患者試料(正常の9%を有するTTP患者01、正常の7%を有するTTP患者02)、またはADAMTS-13活性が減少したADAMTS-13自己抗体を有する患者試料(正常の21%を有する患者)は、健康な血液ドナーの試料と明確に区別できることを示している。血中のADAMTS-13活性の大幅な低下(残存活性<5~10%)は、古典的TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)(先天性または後天性)の特異的な徴候であると考えられる。
【符号の説明】
【0084】
1 レポーター酵素
2 レポーター酵素基質
3 VWFポリペプチド
4 ADAMTS-13
5 検出可能な産物
6 断片
10 エピトープタグ
20
図1
図2
図3
【配列表】
2023171348000001.app
【外国語明細書】