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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171351
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】燃料電池排ガス装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20231124BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20231124BHJP
   F01N 13/12 20100101ALI20231124BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20231124BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0662
F01N13/12
F01N13/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023082803
(22)【出願日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10 2022 112 681.1
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】520050956
【氏名又は名称】プーレム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Purem GmbH
【住所又は居所原語表記】Homburger Strasse 95, 66539 Neunkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ハマー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ビアグラー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック シャーラー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヴィンク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴァッカー
【テーマコード(参考)】
3G004
5H127
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA01
3G004CA01
3G004DA23
3G004DA24
3G004DA25
5H127AB04
5H127BA33
5H127BA41
5H127BA48
5H127EE16
5H127EE23
5H127EE24
5H127EE27
5H127FF09
5H127FF10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水を燃料電池排ガスから抽出する。
【解決手段】特に車両における、燃料電池システムのための燃料電池排ガス装置であって、燃料電池排ガスが通流可能な燃料電池排ガス管路と消音器ユニットとを備えており、消音器ユニットが、消音器ハウジングと、消音器ハウジング内に形成された少なくとも1つの消音器チャンバと、消音器ハウジングのハウジング底部によって少なくとも1つの消音器チャンバから分離された少なくとも1つの液体集合チャンバであって、少なくとも1つの消音器チャンバを少なくとも1つの液体集合チャンバに液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口が設けられており、消音器ハウジングに、少なくとも1つの液体集合チャンバから液体を導出するための少なくとも1つの液体導出開口が設けられている、液体集合チャンバとを含む、燃料電池排ガス装置。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両における、燃料電池システムのための燃料電池排ガス装置であって、燃料電池排ガス(B)が通流可能な燃料電池排ガス管路(12)と、前記燃料電池排ガス(B)が通流可能な消音器ユニット(14)とを備えており、該消音器ユニット(14)が、
-燃料電池排ガス流入領域(18)と燃料電池排ガス流出領域(22)とを備えた消音器ハウジング(20)であって、前記燃料電池排ガス管路(12)の上流側の管路区分(16)が、前記燃料電池排ガス流入領域(18)に接続しており、前記燃料電池排ガス管路(12)の下流側の管路区分(24)が、前記燃料電池排ガス流出領域(22)に接続している、消音器ハウジング(20)と、
-前記消音器ハウジング(30)内に形成された少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)と、
-前記消音器ハウジング(20)のハウジング底部(72)によって少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)から分離された少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)であって、前記ハウジング底部(72)に、少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)を少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)に液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口(74,76)が設けられており、前記消音器ハウジング(20)に、前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から液体を導出するための少なくとも1つの液体導出開口(80)が設けられている、液体集合チャンバ(70)と、
を含む、燃料電池排ガス装置。
【請求項2】
前記消音器ハウジング(20)内に、それぞれ分離壁(44)によって互いに分離された複数の消音器チャンバ(36,38)が形成されており、各消音器チャンバ(36,38)が、前記ハウジング底部(72)により前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から分離されている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項3】
前記ハウジング底部(72)に、各消音器チャンバ(36,38)に対応配置されて、少なくとも1つの液体通流開口(74,76)が設けられている、請求項2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項4】
前記消音器ハウジング(20)内に、少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)内に延びる少なくとも1つの燃料電池排ガス管(52)が設けられており、少なくとも1つの燃料電池排ガス管(52)が、少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)に対して、少なくとも1つの開口、好適には複数の開口(56,58)を介して開放している、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項5】
前記消音器ハウジング(20)が、消音器ハウジング長手方向軸線(L)の方向に細長く延びており、前記燃料電池排ガス流入領域(18)が、前記消音器ハウジング(20)の、上流側の軸方向の端部領域(32)に形成されており、前記燃料電池排ガス流出領域(22)が、前記消音器ハウジング(20)の、下流側の軸方向の端部領域(34)に形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項6】
前記燃料電池排ガス流入領域(18)が、上流側の消音器チャンバ(36)に対して開放しており、前記燃料電池排ガス流出領域(22)が、下流側の消音器チャンバ(38)に対して開放しており、前記上流側の消音器チャンバ(36)が、少なくとも1つの分離壁(44)または/および少なくとも1つの別の消音器チャンバにより、前記下流側の消音器チャンバ(38)から分離されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項7】
前記消音器ハウジング(20)内に液体分離チャンバ(40)が形成されており、前記燃料電池排ガス管路(12)の前記上流側の管路区分(16)が、前記液体分離チャンバ(40)に対して開放しており、前記液体分離チャンバ(40)が、分離壁(42)により消音器チャンバ(36)から分離されており、前記液体分離チャンバ(40)が、前記ハウジング底部(72)により前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から分離されており、前記ハウジング底部(72)に、前記液体分離チャンバ(40)を少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)に液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口(78)が設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項8】
前記液体分離チャンバ(40)内に延びる分離管路区分(46)の上流側の分離管路部分(48)が、前記燃料電池排ガス流入領域(18)において、前記燃料電池排ガス管路(12)の前記上流側の管路区分(16)に接続し、下流側の分離管路部分(50)が、前記液体分離チャンバ(40)を消音器チャンバ(36)から分離する分離壁(42)を貫通する、または/かつ少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)に対して開放しており、前記下流側の分離管路部分(50)と前記上流側の分離管路部分(48)との隣接領域において、前記液体分離チャンバ(40)に対して開放する、好適には実質的に環状の液体分離開口(66)を備えた開口領域(64)が形成されている、請求項7記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項9】
前記開口領域(64)において、前記下流側の分離管路部分(50)の上流側の端部区分(62)は、前記上流側の分離管路部分(48)の下流側の端部区分(60)内に、前記下流側の分離管路部分(50)の前記上流側の端部区分(62)と前記上流側の分離管路部分(48)の前記下流側の端部区分(60)との間に前記液体分離開口(66)が形成されているように、係合して位置決めされている、請求項8記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項10】
前記上流側の分離管路部分(48)の前記下流側の端部区分(60)が、排ガス主流方向(H)で好適には実質的に円錐形に拡張するように形成されている、または/および、前記下流側の分離管路部分(50)の前記上流側の端部区分(62)が、排ガス主流方向(H)で好適には実質的に円錐形に拡張するように形成されている、請求項9記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項11】
前記液体分離開口(66)の上流側に渦流発生ユニット(68)が設けられている、請求項8から10までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項12】
前記渦流発生ユニット(68)が、流れ中心軸線(S)に関して周方向で連続する、前記排ガス主流方向に関して角度付けされた複数の流れ変向要素(69)を備えている、請求項11記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)に対応配置されて、
-前記少なくとも1つの液体導出開口(80)の選択的な開閉のための液体放出弁(82)
または/および
-前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)内の液体水位に関する情報を提供するための液体水位センサ(84)
または/および
-前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)内に集まった液体を加熱するための加熱ユニット(86)
または/および
-前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から水素を放出するための少なくとも1つの水素放出開口(90)
が設けられている、請求項1から12までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項14】
前記燃料電池排ガス管路(12)の前記下流側の管路区分(24)内に、前記燃料電池排ガス(B)中の水素含有量に関する情報を提供するための水素センサ(30)が設けられている、請求項1から13までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項15】
前記上流側の管路区分(16)内にガス流調整弁(28)が配置されている、または/および、前記燃料電池排ガス管路(12)の前記上流側の管路区分(16)内にコンデンサユニット(31)が配置されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池排ガス装置であって、この燃料電池排ガス装置を介して、燃料電池から放出されたプロセスガスを燃料電池排ガスとして周囲に放出することができる、燃料電池排ガス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に電動モータで運転される車両において、走行用電動モータと、この種の車両における電気エネルギのその他の消費器とを運転するためのエネルギを提供することができるようにするために、燃料電池を使用することが知られている。このような燃料電池の作動時に、アノード領域に水素または著しく水素に富むアノードガスが供給される。カソード領域には、カソードガスとして酸素または酸素含有の空気が供給される。水素および酸素を水に変換しながら電流が引き起こされる。水素に富むアノード排ガスおよび著しく水を含むカソード排ガスは、燃料電池排ガスあるいはプロセスガスとして燃料電池を出る。燃料電池作動中は、少なくともカソード排ガスが周囲に放出される。様々な運転段階において、例えば燃料電池作動の開始前の特にアノード領域のパージ時に、アノード排ガス、またはこのような作動段階においてアノード領域を通って案内されるガスも、周囲に放出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特に車両における、燃料電池システムのための燃料電池排ガス装置であって、この燃料電池排ガス装置により、燃料電池作動中に発生する騒音を減衰しながら、燃料電池排ガス内に連行される液体、特に水を燃料電池排ガスから抽出することができる、燃料電池排ガス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は、特に車両における、燃料電池システムのための燃料電池排ガス装置であって、燃料電池排ガスが通流可能な燃料電池排ガス管路と、燃料電池排ガスが通流可能な消音器ユニットとを備えており、消音器ユニットが、
-燃料電池排ガス流入領域と燃料電池排ガス流出領域とを備えた消音器ハウジングであって、燃料電池排ガス管路の上流側の管路区分が、燃料電池排ガス流入領域に接続しており、燃料電池排ガス管路の下流側の管路区分が、燃料電池排ガス流出領域に接続している、消音器ハウジングと、
-消音器ハウジング内に形成された少なくとも1つの消音器チャンバと、
-消音器ハウジングのハウジング底部によって少なくとも1つの消音器チャンバから分離された少なくとも1つの液体集合チャンバであって、ハウジング底部に、少なくとも1つの消音器チャンバを少なくとも1つの液体集合チャンバに液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口が設けられており、消音器ハウジングに、少なくとも1つの液体集合チャンバから液体を導出するための少なくとも1つの液体導出開口が設けられている、液体集合チャンバと、
を含む、燃料電池排ガス装置によって解決される。
【0005】
本発明のように構成された燃料電池排ガス装置において使用される消音器ユニットは、燃料電池システムの作動中に、特に様々なガス流を圧送する空気圧縮器、例えばコンプレッサにより引き起こされる騒音を減衰する機能を、燃料電池排ガス中に含まれる液体、特に水を抽出することに結びつける。したがって、一方では、燃料電池システムの作動中に発生する騒音が、車両の周囲において実質的に認められないか、または強く減衰されてしか認められないのと同時に、高温の水または水蒸気に著しく富んだ燃料電池排ガスの流れの放出が阻止されることを保証する。消音ユニットの領域において燃料電池排ガスから引き出された水を、需要に応じて燃料電池システムの作業循環路内に戻すことができ、または液状の形態で周囲に放出することができる。
【0006】
効果的な消音のためには、消音器ハウジング内に、それぞれ分離壁によって互いに分離された複数の消音器チャンバが形成されていてよい。各消音器チャンバは、ハウジング底部によって少なくとも1つの液体集合チャンバから分離されていてよく、これにより各消音器チャンバから、この消音器チャンバ内に集まる液体を放出することができる。
【0007】
全ての消音器チャンバから液体を均一に放出するために、ハウジング底部に、各消音器チャンバに対応配置されて、少なくとも1つの液体通流開口が設けられていてよい。
【0008】
燃料電池排ガス流を、消音器ハウジングまたは消音器ハウジング内に形成された消音器チャンバによって規定して案内するために、消音器ハウジング内に、少なくとも1つの消音器チャンバ内に延びる少なくとも1つの燃料電池排ガス管が設けられており、少なくとも1つの燃料電池排ガス管が、少なくとも1つの消音器チャンバに対して、例えば管壁部に形成された少なくとも1つの開口、好適には複数の開口を介して開放していることが提案される。例えば、少なくとも1つの消音器チャンバが、燃料電池排ガス管に形成された開口と一緒に、ヘルムホルツ共振器の共振器チャンバを形成することが規定されていてもよい。
【0009】
コンパクトであるにも拘わらず、できるだけ小さな流れ抵抗を引き起こす構造のために、消音器ハウジングが、消音器ハウジング長手方向軸線の方向に細長く延びており、燃料電池排ガス流入領域が、消音器ハウジングの、上流側の軸方向の端部領域に形成されており、燃料電池排ガス流出領域が、消音器ハウジングの、下流側の軸方向の端部領域に形成されていることが規定されていてよい。したがって、燃料電池排ガスは、消音器ユニットを実質的に直線的に、実質的な流れ変向なしに通流することができる。
【0010】
燃料電池排ガス流入領域は、上流側の消音器チャンバに対して開放していてよく、燃料電池排ガス流出領域は、下流側の消音器チャンバに対して開放していてよく、上流側の消音器チャンバが、少なくとも1つの分離壁または/および少なくとも1つの別の消音器チャンバにより、下流側の消音器チャンバから分離されている。
【0011】
燃料電池排ガスから液体を分離する効果を増強するために、消音器ハウジング内に液体分離チャンバが形成されており、燃料電池排ガス管路の上流側の管路区分が液体分離チャンバに対して開放しており、液体分離チャンバが分離壁により消音器チャンバから分離されていることが提案される。液体分離チャンバは、ハウジング底部によって少なくとも1つの液体集合チャンバから分離されていてよく、ハウジング底部に、液体分離チャンバを少なくとも1つの液体集合チャンバに液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口が設けられている。
【0012】
液体分離チャンバの領域において燃料電池排ガスから液体を分離するために、液体分離チャンバ内に延びる分離管路区分の上流側の分離管路部分が、燃料電池排ガス流入領域において、燃料電池排ガス管路の上流側の管路区分に接続し、下流側の分離管路部分が、液体分離チャンバを消音器チャンバから分離する分離壁を貫通する、または/かつ少なくとも1つの消音器チャンバに対して開放していてよい。下流側の分離管路部分と上流側の分離管路部分との隣接領域において、液体分離チャンバに対して開放する、好適には実質的に環状の液体分離開口を備えた開口領域が形成されていてよい。
【0013】
この開口領域において、下流側の分離管路部分の上流側の端部区分は、上流側の分離管路部分の下流側の端部区分内に、下流側の分離管路部分の上流側の端部区分と上流側の分離管路部分の下流側の端部区分との間に液体分離開口が形成されているように、係合して位置決めされていてよい。このために、例えば、上流側の分離管路部分の下流側の端部区分が、排ガス主流方向で好適には実質的に円錐形に拡張するように形成されていてよく、または/および、下流側の分離管路部分の上流側の端部区分が、排ガス主流方向で好適には実質的に円錐形に拡張するように形成されていてよい。
【0014】
分離管路区分のこの構成において、燃料電池排ガス流の、流れ中心軸線に関して半径方向外側の領域において比較的高い密度の液体を集め、燃料電池排ガス流の、液体に富む半径方向外側の部分を、次いで液体分離開口を通じて液体分離チャンバ内に導出することができるようにするために、液体分離開口の上流側に渦流発生ユニットを設けることが提案される。このような渦流発生ユニットは、例えばディーゼル内燃機関の排ガス装置において使用され、これによって、SCR触媒ユニットの上流側の領域において、排ガス流に渦流を形成し、ひいては排ガスと、排ガス内に噴射された還元剤との改善された混合を引き起こすことができる。
【0015】
このような渦流発生ユニットは、流れ中心軸線に関して周方向で連続する、排ガス主流方向に関して角度付けされた複数の流れ変向要素を備えていてよい。
【0016】
少なくとも1つの液体集合チャンバに対応配置されて、例えばさらに、
-少なくとも1つの液体導出開口の選択的な開閉のための液体放出弁
または/および
-少なくとも1つの液体集合チャンバ内の液体水位に関する情報を提供するための液体水位センサ
または/および
-少なくとも1つの液体集合チャンバ内に集まった液体を加熱するための加熱ユニット、
または/および
-少なくとも1つの液体集合チャンバから水素を放出するための少なくとも1つの水素放出開口
が設けられていてよい。
【0017】
液体放出弁の使用は、少なくとも1つの液体集合チャンバ内に集められた液体を、十分な量が存在している場合、かつ例えば燃料電池システムの作動時に液体の戻しが必要であるかまたは有利である場合に、少なくとも1つの液体集合チャンバから導出し、かつ作業プロセスに戻すことを可能にする。十分に液体が集められているか否か、または既に少なくとも一部を液体集合チャンバから導出しなければならないほど大量の液体が集められているか否かに関する情報は、液体水位センサから提供することができる。比較的低い温度でも、少なくとも1つの液体集合チャンバ内に集められた液体を放出することができ、凍結した液体が放出をブロックしないことを保証するために、例えば加熱コイルまたはこれに類するものを備え、ひいては電気的に励起可能な加熱ユニットを作動させることができる。どのプロセスガス流が燃料電池排ガスとして燃料電池排ガス装置を通して案内されるかに依存して、燃料電池排ガスが水素も含み得るので、少なくとも1つの液体集合チャンバ内の危険な水素濃度の発生を回避するために、少なくとも1つの水素放出開口を用いて、水素を実質的に連続的に周囲へ放出する可能性が達成される。
【0018】
燃料電池排ガス管路の下流側の管路区分内に、燃料電池排ガス中の水素含有量に関する情報を提供するための水素センサが設けられていてよい。下流の管路区分を通って流れる燃料電池排ガス中の水素の濃度が過度に高いことが認識されると、燃料電池排ガスに例えば増大された空気割合が加えられて、これにより水素濃度を低下させることができる。さらに、上流側の管路区分内に、ガス流調整弁が配置されていてよい。このようなガス流調整弁によって、燃料電池排ガス装置における流れ抵抗を定義して調整することができ、これによって、燃料電池システムの作動のために必要となる背圧を維持または調節するための圧力保持弁の機能を果たすことができる。さらに、このようなガス流調整弁は、例えば、燃料電池のカソード排ガスまたは/およびアノード排ガスを、または必要な場合には、水素濃度を減じるために必要となる付加的な空気割合を燃料電池排ガス装置内に導入するために、燃料電池排ガス装置内に様々なガス流を定義して導入するように構成されていてもよい。
【0019】
燃料電池排ガス中に含まれる液体の凝縮を支援するために、燃料電池排ガス管路の上流の管路区分内に、コンデンサユニットが配置されていてよい。コンデンサユニットでは、燃料電池排ガス中に含まれる液体の凝縮を、例えば、燃料電池排ガスよりも一般的に冷たい周辺空気と燃料電池排ガスとの間の熱交換によって引き起こすことができる。冷却媒体として液体を使用することも可能である。液体内に取り込まれた熱は、例えば熱交換器において車両内室に導入すべき空気に伝達することができる。
【0020】
本発明を以下に添付の図面に関連して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】燃料電池排ガス装置を示す側面図である。
図2】消音器ユニットが開放して図示された、図1に示す燃料電池排ガス装置を横から見た斜視図である。
図3】消音器ユニットが開放して図示された、燃料電池排ガス装置を示す側面図である。
図4図1に示した燃料電池排ガス装置の消音器ユニットを示す側面図である。
図5】消音器ハウジングが開放して図示された、消音器ユニットを横から見た斜視図である。
図6】消音器ハウジングが開放して図示された、消音器ユニットを示す側面図である。
図7】渦流発生ユニットを示す斜視図である。
図8図7に示した渦流発生ユニットの軸方向の図である。
図9】渦流発生ユニットの代替的な構成を示す、図8に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1図3は、燃料電池排ガス装置10を示しており、この燃料電池排ガス装置10は、車両において電気的なエネルギを生成するために使用される燃料電池システムに対応して設けられていてよい。
【0023】
燃料電池排ガス装置10は、概して参照符号12で示される、燃料電池排ガスBが通流可能な燃料電池排ガス管路12と、燃料電池排ガス管路12内に組み込まれた消音器ユニット14とを備えている。燃料電池排ガス管路12の上流の管路区分16は、消音器ハウジング20の燃料電池排ガス流入領域18において消音器ユニット14に接続している。消音器ハウジング20の燃料電池排ガス流出領域22において、燃料電池排ガス管路12の下流側の管路区分24が消音器ユニット14に接続している。例えば、燃料電池排ガス管路12の下流側の管路区分24を介して、燃料電池システムの1つまたは複数の燃料電池から放出される燃料電池排ガスBを周囲に放出することができる。燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16の上流側の端部領域26は、様々な燃料電池排ガスをプロセスガスとして放出する、1つまたは複数の燃料電池、または燃料電池スタックのシステム領域に接続されるように形成されていてよい。例えば、アノード領域を出るプロセスガスまたは/およびカソード領域を出るプロセスガスを燃料電池排ガスBとして定義して燃料電池排ガス装置10内に導入するために、上流側の端部領域には、1つまたは各燃料電池のアノード領域または/およびカソード領域を接続することができる。さらに、例えば、周辺に対して開放した管路領域を介して、周辺空気を燃料電池排ガス装置10内に導入することができる。
【0024】
燃料電池排ガス装置10において形成された背圧または背圧内に導入されるガス流を調節するために、ガス流調整弁28が、例えば、燃料電池排ガス装置12の上流側の管路区分16の上流側の端部領域26の近傍に配置されていてよい。下流側の管路区分24には水素センサ30が設けられていてよく、これにより、下流側の管路区分24を通って流れる燃料電池排ガス流の水素濃度に関する情報を提供することができる。燃料電池作動の開始時または開始前に、アノード領域がパージされ、このアノード領域から導出されるプロセスガスが、燃料電池排ガス装置10を介して周辺に放出される場合、この燃料電池排ガス流は特に水素を含み得る。水素センサ30によって生成された信号が過度に高い水素濃度を示唆している場合、例えばガス流調整弁28を対応して制御することにより、燃料電池排ガス装置10を通って案内される燃料電池排ガスBに、上述した管路領域を介して空気割合または高めた空気割合を加えることができ、これによって、より低い水素濃度を達成することができる。
【0025】
消音器ユニット14の上流側には、概して参照符号31で示したコンデンサユニットが設けられていてよい。このコンデンサユニットは、燃料電池排ガスB中で搬送される液体、一般的に水の凝縮を促進する。消音器ユニット14において、以下に記載するように、このような凝縮された液体を燃料電池排ガスBから引き出し、集め、燃料電池プロセスに戻すことができる。
【0026】
図4図6に基づき、以下に消音器ユニット14の構造または機能を詳細に説明する。
【0027】
消音器ハウジング20は、消音器ハウジング長手方向軸線Lの方向に細長く延びていて、上流側の端部領域32において、燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16に接続するように形成されている。下流側の端部領域34において、消音器ハウジング20は、燃料電池排ガス管路の下流側の管路区分24に接続するように形成されている。例えば管路区分16,24は、管クリップまたはこれに類するものを使用して、消音器ハウジング20の対応する管片に結合することができる。
【0028】
消音器ハウジング20の内部には、2つの消音器チャンバ36,38と、液体分離チャンバ40とが形成されている。上流側の消音器チャンバ36は、分離壁42によって液体分離チャンバ40から分離されており、下流側の消音器チャンバ38は、分離壁44によって上流側の消音器チャンバ36から分離されている。燃料電池排ガス管路12の下流側の管路区分24は、下流側の消音器チャンバ38に対して開放している。液体分離チャンバ40内に配置された分離管路区分46を介して、燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16が、両消音器チャンバ36,38に対して開放している。
【0029】
分離管路区分46は、消音器ハウジング20の上流側の端部領域32において、燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16に接続する、上流側の管状の分離管路部分48と、分離壁42に接続するかまたは分離壁42を貫通する下流側の分離管路部分50と、を有している。分離管路区分46の下流側の分離管路部分50は、消音器ハウジング12の内部に延びる一部分または複数部分から形成された燃料電池排ガス管52に接続していてよく、またはこの燃料電池排ガス管52に一体的に形成されていてよい。燃料電池排ガス管52の管壁54に形成された複数の開口56を介して、この燃料電池排ガス管52は、上流側の消音器チャンバ36に対して開放している。管壁54に形成された複数の開口58を介して、燃料電池排ガス管52は、下流側の消音器チャンバ38に対して開放している。燃料電池排ガス管52は、両消音器チャンバ36,38を互いに分離する分離壁44を貫通して延びているか、または少なくとも部分的にこの分離壁44と一体に形成されていてよく、消音器ハウジング20の下流側の端部領域34において、燃料電池排ガス管路12の下流側の管路区分24に接続している。
【0030】
この構造では、消音器ユニット14を通って案内された燃料電池排ガスBが、消音器ハウジング20を実質的に流れ変向なしに消音器ハウジング-長手方向軸線Lに沿って直線的に通流することができ、これによって、消音器ユニット14によって著しい流れ抵抗が生じないことが認められる。それにも拘わらず、互いに異なる消音器チャンバ36,38との連通により、反射および吸収によって音を減衰させることが可能である。このために、例えば一方または両方の消音器チャンバ36,38内に付加的に消音性の材料、例えば多孔質の繊維の材料または発泡材料が配置されていてよい。さらに、連続する2つよりも多くの消音器チャンバが設けられていてもよく、または消音器ハウジング20の内室内に、ただ1つのこのような消音器チャンバしか設けられていなくてもよい。さらに、消音器チャンバのうちの少なくとも1つの消音器チャンバが、ヘルムホルツ共振器の共振器チャンバとして作用することができ、かつ消音器チャンバのうちの互いに異なる消音器チャンバは、付加的な燃料電池排ガス管を介して互いに連通することができる。
【0031】
上流側の分離管路部分は下流側の端部区分60を有しており、この下流側の端部区分60は、排ガス主流方向Hの方向に、流れ中心軸線Sに沿って、例えば実質的に円錐形に拡張するように形成されている。同様に、下流側の分離管路部分は、上流側の端部区分62を有しており、この上流側の端部区分62は、排ガス主流方向Hに、この領域において例えば円錐形に拡張するように形成されており、上流側の分離管路部分48の下流側の端部区分60内に係合するように位置決めされている。排ガス主流方向Hで流れ中心軸線Sに沿って半径方向に拡張する端部区分60,62の間に、分離管路区分46の開口領域64において、実質的に環状の液体分離開口66が形成されている。
【0032】
開口領域64の上流側に、例えば消音器ハウジング20の上流側の端壁を提供するハウジングカバーと一体的に形成された上流側の分離管路部分48内に、または燃料電池排ガス管路12の上流側の管路区分16内に、渦流発生ユニット68が配置されている。この渦流発生ユニット68は、流れ中心軸線Sを中心とした周方向で連続する、排ガス主流方向Hに関して角度付けされた、実質的に半径方向に延びる複数の流れ変向要素69を備えていてよい。渦流発生ユニット68によって、排ガス主流方向Hに案内される燃料電池排ガスB内に渦流が発生させられる。このような渦流と、渦流内で発生する遠心力とに基づいて、燃料電池排ガスB内で搬送される液体割合、例えば水滴またはこれに類するものに、半径方向外側に向かって負荷が加えられて、液体は燃料電池排ガス流の半径方向外側の領域により高い濃度で集まる。燃料電池排ガス流のこの半径方向外側の部分を、少なくとも部分的に液体分離開口66を通って液体分離チャンバ40内に導出することができ、これによって液体分離チャンバ40内に、燃料電池排ガス流から抽出された液体を集めることができる。
【0033】
車両に組み付けられた燃料電池排ガス装置10において、消音器ハウジング20の、鉛直方向Vにおいて下側の領域に、液体集合チャンバ70が形成されている。この液体集合チャンバ70は、好ましくは消音器ハウジング20の全長に沿って、消音器ハウジング20の上流側の端部領域32から下流側の端部領域34にまで延びていて、ハウジング底部72により、両消音器チャンバ36,38から、かつ液体分離チャンバ40からも分離されている。これらのチャンバのそれぞれに対応配置されて、ハウジング底部72にはそれぞれ少なくとも1つの液体通流開口74,76または78が形成されている。消音器チャンバ36,38のそれぞれにおいて、または液体分離チャンバ40において集まった液体は、対応配置された液体通流開口74,76,78を通って液体集合チャンバ40内に到達して、この液体集合チャンバ40内に集まることができる。
【0034】
液体集合チャンバ70に対応配置されて、液体放出弁82を備えた少なくとも1つの液体導出開口80が設けられている。図1図6では、車両に組み込まれた燃料電池排ガス装置において、消音器ハウジング20が排ガス主流方向Hで下方に向かって傾けられており、これによって、液体集合チャンバ70の、液体導出開口80が位置決めされている領域が、実質的に、液体集合チャンバ70の、鉛直方向Vで最も低い領域を形成していることが認められる。これは、液体集合チャンバ70内に含まれる液体が、基本的に液体導出開口80または液体放出弁82の領域に集まり、これにより、液体放出弁82が開放されると、液体が重力の作用を受けて液体集合チャンバ70から流出し、例えば燃料電池プロセスに戻されるか、または液体の形態で周辺に放出され得ることを意味している。
【0035】
液体集合チャンバ70に対応配置されて、図6に原理的に示されている液体水位センサ84が設けられていてよく、この液体水位センサ84の出力信号は、液体集合チャンバ70内に集められた液体の量を示している。この量が、液体、つまり水を燃料電池動作時に使用することができるほど十分に大きな場合、液体放出弁82を開放することができる。閾値水位を上回り、液体が少なくとも下流側の消音器チャンバ38の最も低い領域から液体集合チャンバ70内にもはや流出することができない恐れが生じた場合も、液体を液体集合チャンバ70から放出するために液体導出弁82を開放することができる。
【0036】
さらに、液体集合チャンバ70に、図6に原理的に図示されている加熱ユニット86が対応配置されていてよい。この加熱ユニット86は、電気的な励起により、液体集合チャンバ70内に集まった液体を加熱することができ、ひいては液体の凍結を阻止し、または既に凍結した液体を再び融かすことができる。これは、いつでもかつ特に周辺温度が比較的低い場合に、液体を液体集合チャンバ70から放出して、例えば燃料電池作動時に再び利用できることを保証する。
【0037】
さらに、液体集合チャンバ70に対応配置されて、水素放出管片88により提供される少なくとも1つの水素放出開口90を設けることができる。この水素放出開口90は、液体集合チャンバ70の最も高く位置する領域よりも鉛直方向Vに高く位置するように位置決めされていてよい。したがって、燃料電池作動時またはアノード領域のパージ時に、燃料電池排ガス装置10内に導入される水素は、この水素が液体通流開口74,76,78を介して液体集合チャンバ70内に到達した場合に、液体集合チャンバ70の、液体集合チャンバ70が水素放出開口90を介して周辺に向かって開放している最も高く位置する領域に集まることができる。したがって、液体集合チャンバ70内に到達した水素を、液体集合チャンバ70内における危険な水素濃度が形成される恐れが生じることなしに、実質的に永続的に周辺に放出することができる。
【0038】
図7図9は、燃料電池排ガス装置10において使用可能な渦流発生ユニット68の実施例をより詳細に示している。この渦流発生ユニット68は、例えば、金属薄板材料から一体的に曲げ加工されていてよく、環状または実質的に円筒形の本体88を含み、この本体88により、渦流発生ユニット68は例えば、上流側の分離管路部分48に保持されていてよい。本体68を起点として、ブレード状に形成され、周方向で連続して配置された流れ変向要素69が半径方向内方に向かって延びているので、これらの流れ変向要素69は、例えばその半径方向内側の端部領域において、周方向で部分的に重なり合う。流れ変向要素69は、排ガス主流方向Hに関して角度付けされており、つまり90°とは異なる角度で傾斜しており、これにより、排ガス主流方向Hで渦流発生ユニット68に向かって流れようとする燃料電池排ガスBは、流れ変向要素69において周方向で流れ中心軸線Sに関して変向して、渦流が発生する。
【0039】
代替的な構成では、渦流発生ユニット68は、プラスチック部分として形成されていてよい。これは、軽量かつ廉価に製造可能でありかつ耐腐食性の構造をもたらし、さらに大きな設計の自由度を有する渦流発生ユニット68の構造を可能にする。
【0040】
さらに、燃料電池排ガス装置10の別のシステム領域または構成要素、例えば燃料電池排ガス管路12および消音器ユニット14も、実質的に完全にプラスチック材料によって構成されていてよいことを示唆しておく。これは、燃料電池排ガス装置10の、容易かつ廉価に製造可能であり、かつ特に燃料電池排ガスB中に含まれる水に関して耐腐食性の構造をもたらす。
【0041】
周方向での変向の程度、ひいては発生する渦流の程度、あるいは同時に、流れ変向要素69によって引き起こされる流れ遮断の程度も、排ガス主流方向Hに関する流れ変向要素69の傾斜角に依存する。図7および図8に示した実施例では、流れ変向要素69が比較的小さく角度付けされており、つまり排ガス主流動方向Hの方向により多く配向されているので、周方向で燃料電池排ガス流のあまり大きくない変向が生じる。図9は、周方向でさらに拡大した流れ変向要素69が、排ガス主流方向に関してより強く角度付けされている渦流発生ユニット68の構成を示している。渦流発生ユニット68の、図9に示した構造によって、燃料電池排ガス流は周方向において比較的大きく変向し、これは燃料電池排ガス中に含まれる液体粒子に作用する遠心力を高めることに寄与する。
【0042】
本発明に係る燃料電池排ガス装置は、この燃料電池排ガス装置の作動のために、または車両における燃料電池システムの運転のために有利なまたは重要な機能を統合している。一方では、消音ユニットの消音機能によって、例えば燃料電池を通してプロセスガスを案内するコンプレッサにより発生する騒音を、燃料電池排ガスの流路において減らすか、またはほぼ完全に排除することができる。他方では、燃料電池排ガス中で連行される液体、特に水を、燃料電池排ガスから抽出する可能性が生じ、これにより、この水が周囲に放出されるのではなく、必要に応じて燃料電池システムの作業サイクルに戻すことができる。燃料電池プロセスにおいて使用することができない、燃料電池排ガスから分離された水は、液体の形態で周囲に放出することができる。特に消音器ユニットの領域における危険な水素濃度の発生は、水素を周辺に放出する永続的に存在する可能性によって回避される。この機能性には、特に燃料電池排ガスが消音器ユニットをほぼ直線的に通流できることも寄与する。特に消音器ユニットの内部において燃料電池排ガスを案内する管区分の強い角度付けと、この角度付けにより導入される流れ変向とが回避されている。水または水蒸気および水素は、燃料電池システムの作動中に燃料電池排ガスから導出され、必要な場合には燃料電池プロセスに戻すこともできるので、このような物質が車両の周囲に供給されることが十分に回避される。さらに強調しておくと、このような燃料電池排ガス装置は、例えば定置で作動する燃料電池システムにおいても、かつ例えば船舶またはこれに類するもので作動する燃料電池システムにおいても使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両における、燃料電池システムのための燃料電池排ガス装置であって、燃料電池排ガス(B)が通流可能な燃料電池排ガス管路(12)と、前記燃料電池排ガス(B)が通流可能な消音器ユニット(14)とを備えており、該消音器ユニット(14)が、
-燃料電池排ガス流入領域(18)と燃料電池排ガス流出領域(22)とを備えた消音器ハウジング(20)であって、前記燃料電池排ガス管路(12)の上流側の管路区分(16)が、前記燃料電池排ガス流入領域(18)に接続しており、前記燃料電池排ガス管路(12)の下流側の管路区分(24)が、前記燃料電池排ガス流出領域(22)に接続している、消音器ハウジング(20)と、
-前記消音器ハウジング(20)内に形成された少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)と、
-前記消音器ハウジング(20)のハウジング底部(72)によって少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)から分離された少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)であって、前記ハウジング底部(72)に、少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)を少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)に液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口(74,76)が設けられており、前記消音器ハウジング(20)に、前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から液体を導出するための少なくとも1つの液体導出開口(80)が設けられている、液体集合チャンバ(70)と、
を含む、燃料電池排ガス装置。
【請求項2】
前記消音器ハウジング(20)内に、それぞれ分離壁(44)によって互いに分離された複数の消音器チャンバ(36,38)が形成されており、各消音器チャンバ(36,38)が、前記ハウジング底部(72)により前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から分離されている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項3】
前記ハウジング底部(72)に、各消音器チャンバ(36,38)に対応配置されて、少なくとも1つの液体通流開口(74,76)が設けられている、請求項2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項4】
前記消音器ハウジング(20)内に、少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)内に延びる少なくとも1つの燃料電池排ガス管(52)が設けられており、少なくとも1つの燃料電池排ガス管(52)が、少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)に対して、少なくとも1つの開口、好適には複数の開口(56,58)を介して開放している、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項5】
前記消音器ハウジング(20)が、消音器ハウジング長手方向軸線(L)の方向に細長く延びており、前記燃料電池排ガス流入領域(18)が、前記消音器ハウジング(20)の、上流側の軸方向の端部領域(32)に形成されており、前記燃料電池排ガス流出領域(22)が、前記消音器ハウジング(20)の、下流側の軸方向の端部領域(34)に形成されている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項6】
前記燃料電池排ガス流入領域(18)が、上流側の消音器チャンバ(36)に対して開放しており、前記燃料電池排ガス流出領域(22)が、下流側の消音器チャンバ(38)に対して開放しており、前記上流側の消音器チャンバ(36)が、少なくとも1つの分離壁(44)または/および少なくとも1つの別の消音器チャンバにより、前記下流側の消音器チャンバ(38)から分離されている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項7】
前記消音器ハウジング(20)内に液体分離チャンバ(40)が形成されており、前記燃料電池排ガス管路(12)の前記上流側の管路区分(16)が、前記液体分離チャンバ(40)に対して開放しており、前記液体分離チャンバ(40)が、分離壁(42)により消音器チャンバ(36)から分離されており、前記液体分離チャンバ(40)が、前記ハウジング底部(72)により前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から分離されており、前記ハウジング底部(72)に、前記液体分離チャンバ(40)を少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)に液体交換のために接続する少なくとも1つの液体通流開口(78)が設けられている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項8】
前記液体分離チャンバ(40)内に延びる分離管路区分(46)の上流側の分離管路部分(48)が、前記燃料電池排ガス流入領域(18)において、前記燃料電池排ガス管路(12)の前記上流側の管路区分(16)に接続し、下流側の分離管路部分(50)が、前記液体分離チャンバ(40)を消音器チャンバ(36)から分離する分離壁(42)を貫通する、または/かつ少なくとも1つの消音器チャンバ(36,38)に対して開放しており、前記下流側の分離管路部分(50)と前記上流側の分離管路部分(48)との隣接領域において、前記液体分離チャンバ(40)に対して開放する、好適には実質的に環状の液体分離開口(66)を備えた開口領域(64)が形成されている、請求項7記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項9】
前記開口領域(64)において、前記下流側の分離管路部分(50)の上流側の端部区分(62)は、前記上流側の分離管路部分(48)の下流側の端部区分(60)内に、前記下流側の分離管路部分(50)の前記上流側の端部区分(62)と前記上流側の分離管路部分(48)の前記下流側の端部区分(60)との間に前記液体分離開口(66)が形成されているように、係合して位置決めされている、請求項8記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項10】
前記上流側の分離管路部分(48)の前記下流側の端部区分(60)が、排ガス主流方向(H)で好適には実質的に円錐形に拡張するように形成されている、または/および、前記下流側の分離管路部分(50)の前記上流側の端部区分(62)が、排ガス主流方向(H)で好適には実質的に円錐形に拡張するように形成されている、請求項9記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項11】
前記液体分離開口(66)の上流側に渦流発生ユニット(68)が設けられている、請求項8記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項12】
前記渦流発生ユニット(68)が、流れ中心軸線(S)に関して周方向で連続する、前記排ガス主流方向に関して角度付けされた複数の流れ変向要素(69)を備えている、請求項11記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)に対応配置されて、
-前記少なくとも1つの液体導出開口(80)の選択的な開閉のための液体放出弁(82)
または/および
-前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)内の液体水位に関する情報を提供するための液体水位センサ(84)
または/および
-前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)内に集まった液体を加熱するための加熱ユニット(86)
または/および
-前記少なくとも1つの液体集合チャンバ(70)から水素を放出するための少なくとも1つの水素放出開口(90)
が設けられている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項14】
前記燃料電池排ガス管路(12)の前記下流側の管路区分(24)内に、前記燃料電池排ガス(B)中の水素含有量に関する情報を提供するための水素センサ(30)が設けられている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項15】
前記上流側の管路区分(16)内にガス流調整弁(28)が配置されている、または/および、前記燃料電池排ガス管路(12)の前記上流側の管路区分(16)内にコンデンサユニット(31)が配置されている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【外国語明細書】