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特開2023-171380ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体、及び、ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171380
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体、及び、ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231124BHJP
   D01F 6/94 20060101ALI20231124BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20231124BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20231124BHJP
【FI】
C08J5/18 CEZ
D01F6/94 Z
B29C48/08
B29C48/92
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147738
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2021548894の分割
【原出願日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2019173425
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 章文
(72)【発明者】
【氏名】小城 優相
(72)【発明者】
【氏名】福島 靖憲
(72)【発明者】
【氏名】谷中 輝之
(72)【発明者】
【氏名】北條 健太
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、他の樹脂成分を混合しなくても溶融成形が可能となり、機械的強度等の優れた特性を有するポリフェニレンエーテル溶融押出成形体、及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むことを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融押出成形体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル溶融押出成形体であって、
前記ポリフェニレンエーテル成分が、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分(但し、スチレン系化合物で変性されたポリフェニレンエーテル成分を除く)であり、
前記ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、成形体を形成する全成分中95質量%以上であり、
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体が、フィルムであることを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融押出成形体(但し、粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体を含むものを除き、有機燐酸エステル系難燃剤を含むものを除き、籠状シルセスキオキサン部分開裂構造体を含むものを除く)。
【請求項2】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位が、下記一般式(1):
【化1】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す)
で表される繰り返し単位であり、前記転位構造が、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R3’は、前記Rから水素原子が1個除かれた2価の基を表す)
で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体。
【請求項3】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位量が、前記ポリフェニレンエーテル成分中の全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して、0.01モル%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体。
【請求項4】
前記転位構造が、核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)測定において、6.8~7.0ppmの範囲と3.8~4.0ppmの範囲にピークを示すことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体。
【請求項5】
ガラス転移点温度が190℃以上、210℃以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体。
【請求項6】
前記フィルムが、耐炎化フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体。
【請求項7】
ポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法であって、
原料であるポリフェニレンエーテルを、シリンダー及びスクリューを備えた押出機により、スクリューの周速を3.6m/min以上で溶融押出する工程を有し、
前記ポリフェニレンエーテル成分が、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分(但し、スチレン系化合物で変性されたポリフェニレンエーテル成分を除く)であり、
前記ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、成形体を形成する全成分中95質量%以上であり、
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体が、フィルムであることを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融押出成形体(但し、粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体を含むものを除き、有機燐酸エステル系難燃剤を含むものを除き、籠状シルセスキオキサン部分開裂構造体を含むものを除く)の製造方法。
【請求項8】
前記シリンダー内の温度が、250~350℃であることを特徴とする請求項7に記載のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法。
【請求項9】
前記原料のポリフェニレンエーテルが、ガラス転移点温度が170℃以上のポリフェニレンエーテルを含むことを特徴とする請求項7又は8に記載のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法。
【請求項10】
前記原料のポリフェニレンエーテルが、さらに、ガラス転移点温度が170℃未満のポリフェニレンエーテルを含むことを特徴とする請求項9に記載のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル溶融押出成形体、及び、ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと表記することもある)は、耐熱性、難燃性、強度、耐薬品性等に優れるため、ポリフェニレンエーテルから形成される成形体は幅広い分野で利用されている。しかしながら、ポリフェニレンエーテルは、一般的に高い溶融粘度を有しているため、ポリフェニレンエーテル単独やポリフェニレンエーテルが高含有量の場合には溶融成形は難しく、特に溶融紡糸して繊維とすることは困難であった。
【0003】
ポリフェニレンエーテルを含む溶融紡糸繊維としては、例えば、ポリフェニレンエーテル等の非結晶性熱可塑性樹脂とポリプロピレン等の結晶性熱可塑性樹脂とのポリマーアロイを溶融紡糸して得られるもの(例えば、特許文献1参照)、ポリフェニレンエーテルと直鎖状低密度ポリエチレン、石油樹脂、又はそれらの組合せを含む加工助剤、難燃剤を含む繊維(例えば、特許文献2参照)、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基をもつ共重合体からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる繊維(例えば、特許文献3参照)が知られている。また、特定の固有粘度を有する2種のポリフェニレンエーテル樹脂を含む組成物が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-190156号公報
【特許文献2】特表2017-502179号公報
【特許文献3】特開2008-138294号公報
【特許文献4】特表2003-531234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2においては、ポリフェニレンエーテルに、ポリプロピレン等の結晶性熱可塑性樹脂、加工助剤等を添加して加工性を向上させたものであり、ポリフェニレンエーテル含有量が低く、ポリフェニレンエーテルの優れた特徴を活かしきれないものであった。さらに、特許文献3においては、ポリフェニレンエーテル含有率が高いものの、径が0.14mmの太い繊維しか得られていないものであって、ポリフェニレンエーテルの流動性を十分に向上できていないものと考えられる。特許文献4においては、固有粘度が異なる2種のポリフェニレンエーテル樹脂を含むことによって、流動性の高いポリフェニレンエーテル配合物を得るものであった。すなわち、これらの文献においては、ポリフェニレンエーテルに、何らかの材料を加えるか、又は固有粘度を調整することで加工性や流動性を改善するものであり、ポリフェニレンエーテルに転位構造を持たせて加工性を改善することについては何ら検討されていないものであった。
【0006】
本発明の目的は、他の樹脂成分を混合しなくても溶融成形が可能となり、機械的強度等の優れた特性を有するポリフェニレンエーテル溶融押出成形体、及びポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリフェニレンエーテルの溶融押出成形について鋭意検討を行った結果、特定の転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むことを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融押出成形体に関する。
【0009】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位が、下記一般式(1):
【化1】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す)
で表される繰り返し単位であり、前記転位構造が、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R3’は、前記Rから水素原子が1個除かれた2価の基を表す)
で表される構造であることが好ましい。
【0010】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位量が、前記ポリフェニレンエーテル成分中の全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して、0.1モル%以上であることが好ましい。
【0011】
前記ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、成形体を形成する全成分中95質量%以上であることが好ましい。
【0012】
前記転位構造が、核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)測定において、6.8~7.0ppmの範囲と3.8~4.0ppmの範囲にピークを示すことが好ましい。
【0013】
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体のガラス転移点温度が190℃以上、210℃以下であることが好ましい。
【0014】
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体が、ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維であることが好ましい。
【0015】
前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維の単糸繊度が1.0dtex以上、100dtex以下であることが好ましい。
【0016】
前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維が、短繊維であることが好ましい。
【0017】
前記短繊維が、耐炎化短繊維であることが好ましい。
【0018】
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体が、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維から形成された紙であることが好ましい。
【0019】
前記紙が、耐炎化紙であることが好ましい。
【0020】
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体が、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維から形成された布帛であることが好ましい。
【0021】
前記布帛が、耐炎化布帛であることが好ましい。
【0022】
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体が、フィルムであることが好ましい。
【0023】
前記フィルムが、耐炎化フィルムであることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法であって、原料であるポリフェニレンエーテルを、シリンダー及びスクリューを備えた押出機により、スクリューの周速を3.6m/min以上で溶融押出する工程を有することを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法に関する。
【0025】
前記シリンダー内の温度が、250~350℃であることが好ましい。
【0026】
前記原料のポリフェニレンエーテルが、ガラス転移点温度が170℃以上のポリフェニレンエーテルを含むことが好ましい。
【0027】
前記原料のポリフェニレンエーテルが、さらに、ガラス転移点温度が170℃未満のポリフェニレンエーテルを含んでいても良い。
【0028】
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体が、ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維であって、前記溶融押出する工程の後、さらに、溶融したポリフェニレンエーテルを紡糸ノズルから吐出させて紡糸する工程を含むことが好ましい。
【0029】
前記紡糸ノズルの単孔吐出量は0.4g/分以下であることが好ましく、単糸繊度15dtex以下の繊維を得るためには0.2g/分以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を用いるため、溶融成形が可能となり、機械的強度等に優れたポリフェニレンエーテル溶融押出成形体を形成できるものであり、さらに、より製造が難しい溶融紡糸繊維の形成も可能としたものである。また、本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体は、機械的強度のみならず、難燃性、耐熱性、耐薬品性等に優れている。また、本発明の製造方法によると、高いスクリュー回転数で溶融押出することにより、原料ポリフェニレンエーテルの分子鎖が切断されて転位反応が生じるため、ポリフェニレンエーテルの流動性が大幅に向上され、ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体を形成できるものである。さらに、本発明の製造方法により得られる溶融成形体は、原料のポリフェニレンエーテルよりも高分子量化したポリフェニレンエーテルにより形成されているため、ガラス転移点温度は比較的高いという特徴を有する。また、本発明の製造方法によると、溶融押出工程において、ポリフェニレンエーテルの転位反応が生じるため、溶融成形が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体
本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むことを特徴とする。ここで、「オルト位の結合で連続する転位構造」とは、主鎖のパラ位の結合で連続する繰り返し単位中の一部に、オルト位で結合して、連続する側鎖を形成した構造であり、側鎖は、パラ結合で連続する繰り返し単位から形成されていてもよく、また、その中に部分的にオルト位で結合する部分を有していてもよい。
【0033】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位としては、下記一般式(1):
【化3】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す)
で表される繰り返し単位であることが好ましい。また、前記転位構造は、下記一般式(2):
【化4】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R3’は、前記Rから水素原子が1個除かれた2価の基を表す)
で表される転位構造を有することが好ましい。前記一般式(2)中の「~」は、その先の構造は特に限定されないことを示す。「~」の部分は、パラ結合で連続するフェニレンエーテル単位から形成されていてもよく、また、その中に部分的にオルト位で結合する部分を有していてもよい。
【0034】
前記転位反応とは、例えば、以下の式:
【化5】
で示すような反応であり、メチレンブリッジ転位と呼ばれることもある。
【0035】
一般的に、ポリフェニレンエーテルは、高い溶融粘度を有しており、ポリフェニレンエーテルを高含有で含む場合や、それ単独では溶融成形が難しいとされていた。本発明においては、前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むため、溶融成形が可能な程度に流動性が向上し、溶融押出成形体とすることができるものであり、より製造が難しい溶融紡糸繊維の製造も可能としたものである。以下、本発明の各構成について説明する。
【0036】
<ポリフェニレンエーテル成分>
本発明で用いるポリフェニレンエーテル成分は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有するポリフェニレンエーテルを含むものである。
【0037】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位としては、前記一般式(1)で表される繰り返し単位であることが好ましく、前記転位構造は、前記一般式(2)で表される転位構造を有することが好ましい。
【0038】
前記一般式(1)、(2)中のR、Rとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基、フェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルエチル基等の炭素数7~10のアラルキル基等も挙げることができる。
【0039】
前記炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。置換基を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0040】
これらの中でも、R、Rとしては、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0041】
前記一般式(1)、(2)中のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基、フェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルエチル基等の炭素数7~10のアラルキル基等も挙げることができる。
【0042】
前記炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0043】
これらの中でも、Rとしては、メチル基が好ましい。
【0044】
前記R3’は、前記Rから水素原子が1個除かれた2価の基を表し、メチレン基であることが好ましい。
【0045】
前記一般式(1)の繰り返し単位としては、具体的には、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル、2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル、2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル、2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテルから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。これらの中でも、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテルから誘導される繰り返し単位が好ましい。
【0046】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分は、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、又は異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体中に、前記一般式(2)で表される転位構造を有するものが好ましい。
【0047】
また、前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記一般式(1)以外の繰り返し単位を含むことができ、その場合は、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を含む共重合体中に前記一般式(2)で表される転位構造を有するものとすることができる。このような一般式(1)以外の繰り返し単位の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、前記共重合体中に5モル%以下程度であることが好ましく、含まないことがより好ましい。
【0048】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテルの分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)が40,000~100,000であることが好ましく、50,000~80,000であることがより好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、7,000~30,000であることが好ましく、8,000~20,000であることがより好ましい。また、分子量分散(Mw/Mn)は、3.5~8.0であることが好ましく、4.0~6.0であることがより好ましい。前記重量平均分子量、数平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0049】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位量は、特に限定されるものではないが、前記ポリフェニレンエーテル成分中の全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して、0.01モル%以上であることが好ましく、0.05モル%以上であることがより好ましく、0.1モル%以上であることがさらに好ましく、0.15モル%以上であることが特に好ましい。さらに単糸繊度が15dtex以下の細繊度の繊維を得るには2モル%以上が好ましい。また、転位量の上限値は特に限定されないが、20モル%以下であることが好ましく、18モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、4モル%以下であることがよりさらに好ましい。転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位量が前記範囲にあることで、溶融成形が可能な程度に流動性が向上し、溶融押出成形体とすることができる傾向にあり、好ましい。
【0050】
前記転位構造は、核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)測定において、3.8~4.0ppmの範囲と6.8~7.0ppmの範囲にピークを示すことが好ましい。通常、ポリフェニレンエーテルは、6.4~6.6ppm付近にピークを示し、これは、ポリフェニレンエーテル主鎖中のベンゼン環の3、5位の水素原子に由来するピークである。前記転移構造を有するポリフェニレンエーテルは、前記6.4~6.6ppm付近のピークに加え、3.8~4.0ppmの範囲と6.8~7.0ppmの範囲にピークを示す。前記3.8~4.0ppmの化学シフトは、前記転移構造中のR3’で示される2価の基(例えば、メチレン基等)のプロトンに由来するものであり、前記6.8~7.0ppmの化学シフトは、前記転位構造中のポリフェニレンエーテルの3、5位のR、R基のプロトン(例えば、オルト位にメチレン基を介して結合しているベンゼン環の3位と5位の水素原子)に由来するものである。
【0051】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル成分には、転位構造を有さないポリフェニレンエーテルを含んでいてもよい。転位構造を有さないポリフェニレンエーテルとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体や、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を有する共重合体等を挙げることができる。前記共重合体における一般式(1)以下の繰り返し単位の含有量としては、前述のものを挙げることができる。
【0052】
また、本発明で用いるポリフェニレンエーテル成分には、低分子量のポリフェニレンエーテルを含んでいてもよい。低分子量のポリフェニレンエーテルの分子量としては、例えば、重量平均分子量が2,000~8,000程度を挙げることができる。
【0053】
ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、成形体を形成する全成分中95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、実質的にポリフェニレンエーテル成分のみ(100質量%)からなることがさらに好ましい。ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体における前記ポリフェニレンエーテル成分の含有量が前記範囲にあることで、得られた成形体の機械的強度に優れるのみならず、耐熱性、耐薬品性、難燃性等に優れるものであり、好ましい。
【0054】
<ポリフェニレンエーテル成分以外の成分>
本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体には、前記ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分を含むことができる。ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分としては、スチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド66、ポリアミド6T、ポリアミド6T/11等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。但し、その含有量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、含まない(0質量%)ことがさらに好ましい。
【0055】
また、本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体には、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ダル剤、静電防止剤等の添加剤も添加することができる。
【0056】
<ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体>
本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体は、前記ポリフェニレンエーテル成分を含むものであり、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、後述のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法により製造することもできる。
【0057】
ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体のガラス転移点温度は、特に限定されないが、190℃以上、210℃以下であることが好ましく、190℃以上、208℃以下であることがより好ましく、200℃以上、205℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移点温度が前記範囲にあることで、溶融加工性と耐熱性をバランス良く両立させることができるため好ましい。
【0058】
前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の最大点応力は、0.4cN/dtex以上、3.0cN/dtex以下であることが好ましく、0.8cN/dtex以上、2.0cN/dtex以下であることがより好ましい。また、前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の最大点伸度は、30%以上、180%以下であることが好ましく、60%以上、150%以下であることがより好ましい。最大点応力、最大点伸度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0059】
溶融押出成形体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ペレット状、フィルム状、シート状、板状、パイプ状、チューブ状、棒状、繊維状、不織布状、紙状、布帛状等の種々の形状に成形することができる。本発明で使用するポリフェニレンエーテル成分は成形加工性に優れるため、ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維とすることができる。前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維は、高温安定性に優れるものである。前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維は、長繊維であってもよく、短繊維であってもよい。
【0060】
<ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維>
前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維の単糸繊度は、一般的な耐熱フィルターや耐熱織物等の用途であれば、1.0dtex以上、100dtex以下であることが好ましく、1.0dtex以上、50dtex以下であることがより好ましく、1.0dtex以上、15dtex以下であることがさらに好ましい。このような単糸繊度については、用いる用途によって適宜設定することができる。本発明においては、特定の転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むため、流動性が向上され、溶融紡糸が可能となり、15dtex以下の非常に細い繊維も得ることができるものである。
【0061】
2.ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法
本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の製造方法は、原料であるポリフェニレンエーテルを、シリンダー及びスクリューを備えた押出機により、スクリューの周速を3.6m/min以上で溶融押出する工程を有することを特徴とするものである。
【0062】
原料であるポリフェニレンエーテルとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、又は異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体や、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を有する共重合体を挙げることができる。前記共重合体における一般式(1)以外の繰り返し単位の含有量としては、前述のものを挙げることができる。これらの中でも、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体が好ましい。
【0063】
前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体としては、具体的には、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができるが、これらの中でも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が好ましい。
【0064】
前記ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)としては、市販品も好適に用いることができ、具体的は、例えば、SABIC Innovative Plastic製のPPO640、PPO646、PPOSA120、旭化成ケミカルズ(株)製のザイロンS201A、ザイロンS202A等を挙げることができる。
【0065】
前記原料であるポリフェニレンエーテルのガラス転移点温度は、170℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることさらに好ましい。また、ガラス転移点温度の上限値は特に限定されないが、230℃以下であることが好ましい。原料であるポリフェニレンエーテルのガラス転移点温度が前記範囲にあることで、高い耐熱性を有するポリフェニレンエーテル成型体が得られるため、好ましい。
【0066】
また、本発明で用いる原料には、異なるガラス転移点温度を有するポリフェニレンエーテルを2種以上含んでいてもよく、具体的には、前記ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルに加えて、ガラス転移点温度が170℃未満のポリフェニレンエーテルを含むことができる。ガラス転移点温度が170℃未満のポリフェニレンエーテルを加えることで、溶融粘度が低下して、流動性が向上するものの、ポリフェニレンエーテル中の転位量が低下する傾向にある。
【0067】
原料であるポリフェニレンエーテル中、前記ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルのみからなることが特に好ましい。また、ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルの含有量の上限値は特に限定されるものではないが、100質量%以下であることが好ましい。本発明においては、ガラス転移点温度が高い(すなわち高分子量)のポリフェニレンエーテルを前記範囲で含むことが、得られるポリフェニレンエーテル溶融押出成形体の機械的強度、耐熱性、耐薬品性、難燃性等に優れるため、好ましい。
【0068】
また、原料であるポリフェニレンエーテルと共に、ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分や添加剤を含むことができる。ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分や添加剤としては、前述の通りである。また、ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分の含有量は、原料中に5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、含まない(0質量%)ことがさらに好ましい。
【0069】
前記シリンダー及びスクリューを備えた押出機としては、本分野で通常用いることができる単軸押出機や二軸押出機を用いることができる。本発明においては、二軸押出機を用いることが好ましい。押出機はこれに限定されるものではなく、ポリマーに対してせん断を効果的に行うという目的が達成できるものであればよい。
【0070】
前記スクリューの周速は、原料であるポリフェニレンエーテルの転位反応が起こるスクリューの周速が必要であり、3.6m/min以上であり、3.7m/min以上であることが好ましく、3.8m/min以上であることがより好ましい。また、スクリューの周速の上限値は、特に限定されないが、94.2m/min以下であることが好ましい。本発明においては、スクリュー回転数上げてスクリューの周速を3.6m/min以上とすることで、シリンダー内の原料ポリフェニレンエーテルに高剪断力を付与することができ、その結果、ポリフェニレンエーテルの分子鎖を切断して、転位構造を有するポリフェニレンエーテルが形成できるものである。前記転位構造を有するポリフェニレンエーテルが形成することで、ポリフェニレンエーテルを溶融押出成形を可能にしたものである。
【0071】
前記スクリューの形状としては、特に限定されるものではなく、原料であるポリフェニレンエーテルの転位反応が起こる程度に剪断力を加えることができるものであればよい。
【0072】
シリンダー内の温度は、低すぎると樹脂の流動性が悪く、高すぎると流動性は改善されるものの、樹脂の熱分解による発泡現象が発生するため、そのバランスが取れる加工温度を選択する必要がある。シリンダー内の温度としては、例えば、250~350℃であることが好ましく、280~330℃であることがより好ましい。シリンダー内の温度を前記範囲にすることで、発泡現象を抑制しつつ、高分子鎖切断が起こりやすいため好ましい。
【0073】
また、前記ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体が、ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維である場合、前記溶融押出する工程の後、さらに、溶融したポリフェニレンエーテルを紡糸ノズルから吐出させて紡糸する工程を含むものである。
【0074】
ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維を製造する場合の一例を、図1を用いて説明する。原料であるポリフェニレンエーテルを図1のホッパー1からシリンダー及びスクリューを備えた押出機2に投入し、溶融したポリフェニレンエーテルはギアポンプ3により吐出速度を計量し、微細なサンドなどで構成された濾材4を通過して紡糸ノズル5から吐出されて、溶融紡糸繊維を得ることができる。また、濾材4上には、金属不織布などで構成されたフィルター6を設置することが好ましい。フィルター6を設置することで、あらかじ異物を除去することができ、前記濾材4の目詰まり等を防ぐことができるため好ましい。
【0075】
また、紡糸ノズル5の直下には、保温スペース7を設け、当該領域に、窒素等の不活性ガスを導入8して紡糸することが、酸化的架橋によるノズル詰まりの抑制の観点から好ましく、加熱トーチ9により、加熱した不活性化ガスを導入することがより好ましい。加熱した不活性ガスの温度は、100~500℃であることが好ましく、200~400℃であることがより好ましい。
【0076】
紡糸速度は、特に限定されるものではなく、求められる繊度等に応じて適宜設定することができるが、細繊度の繊維を安定して得るためには、100~400m/分程度であることが好ましく、100~200m/分程度であることがより好ましい。
【0077】
前記紡糸ノズルの単孔吐出量は、0.4g/分以下であることが好ましく、0.3g/分以下であることがより好ましく、0.2g/分以下であることがさらに好ましい。また、単孔吐出量の下限は特に限定されないが、0.05g/分以上であることが好ましく、0.1g/分以上であることがより好ましく、0.12g/分以上であることがさらに好ましい。単孔吐出量を前記範囲にすることで、細繊度のポリフェニレンエーテル繊維を得ることができるため好ましい。
【0078】
本発明の製造方法により得られたポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維の単糸繊度は、繊維の使用用途に応じて適宜設定することができるが、本発明の製造方法によれば、15dtex以下の細い繊維を得ることができるものである。これは、本発明においては、非常に高いスクリュー回転数で溶融することによって、原料ポリフェニレンエーテルに高剪断力が付与され、それにより原料ポリフェニレンエーテルに転位反応が起こり、転位構造を有するポリフェニレンエーテルが形成され、その結果、流動性が向上し、前記単糸繊度を有する溶融紡糸が得られるものである。
【0079】
<ポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維>
本発明のポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維は、例えば、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維を合糸してトウ状にした繊維をカットすることにより得ることができる。
【0080】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維の長さは特に制限されず、用途に応じて適宜調整することができるが、通常、1~500mmであり、好ましくは3~400mm、より好ましくは5~300mmである。
【0081】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維の引張強度は特に制限されないが、通常、0.8~60cN/dtexであり、好ましくは0.85~50cN/dtex、より好ましくは0.9~40cN/dtexである。なお、引張強度は、JIS L1013 8.5.1に準拠して測定する。
【0082】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維の引張伸度は特に制限されないが、通常、30~180%であり、好ましくは40~160%、より好ましくは60~150%である。なお、引張伸度は、JIS L1013 8.5.1に準拠して測定する。
【0083】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維の平衡水分率は特に制限されないが、通常、0.01~1.5%であり、好ましくは0.02~1.2%、より好ましくは0.03~1.0%である。なお、平衡水分率は、JIS L1013に準拠して測定する。
【0084】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維の190℃における高温収縮率は特に制限されないが、通常、0.1~6%であり、好ましくは0.3~5%、より好ましくは0.5~4%である。なお、190℃における高温収縮率の測定方法は実施例の記載による。
【0085】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維は、耐炎化短繊維であることが好ましい。
【0086】
前記耐炎化短繊維は、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維に耐炎化処理を施すことにより得られる。耐炎化処理は、例えば、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維を、空気中で、120~240℃で、1~30時間熱処理して不融化し(不融化処理)、その後、空気中で、260~400℃で、0.1~10時間熱処理して耐炎化する(耐炎化処理)ことにより行う。
【0087】
前記不融化処理では、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維を、空気中で、120~240℃で、1~30時間処理をする。ここで、空気中とは、特に調整されていない環境のことである。また、処理温度は、120~240℃であり、140~230℃であることが好ましく、160~220℃であることがより好ましい。また、処理時間は、1~30時間であり、1.5~25時間であることが好ましく、2~20時間であることがより好ましい。前記処理時間及び処理温度とすることで、引き続き行う耐炎化処理において、ポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維が溶融してしまうことなく、適切な耐炎化処理を施すことができる。
【0088】
前記不融化処理の後に、耐炎化処理として、空気中で、260~400℃で、0.1~10時間処理をする。空気中とは、特に調整されていない環境のことである。また、処理温度は、260~400℃であり、270~380℃であることが好ましく、280~360℃であることがより好ましい。また、処理時間は、0.1~10時間であり、0.3~8時間であることが好ましく、0.5~6時間であることがより好ましい。前記処理時間及び処理温度とすることで、ポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維にC=O結合構造が形成され、非常に高い難燃性、耐炎性、耐熱性等を示す耐炎化された短繊維が得られる。
【0089】
前記耐炎化短繊維の繊度は、特に限定されず、繊維が使用される目的に応じて適宜決定できるが、例えば、100dtex以下であることが好ましく、95dtex以下であることがより好ましく、90dtex以下であることがさらに好ましい。繊度が前記範囲にあることで、織物、編物、短繊維不織布、紙、布帛など、様々な形状に加工することができるようになるため好ましい。また、繊度の下限値は特に限定されるものではないが、0.1dtex以上であることが好ましく、0.2dtex以上であることがより好ましい。
【0090】
前記耐炎化短繊維の引張強度は、0.8cN/dtex以上であることが好ましく、0.85cN/dtex以上であることがより好ましく、0.90cN/dtex以上であることがさらに好ましい。引張強度が前記範囲にあることで、繊維としての扱い性が良好になるため好ましい。また、引張強度の上限値は特に限定されるものではないが、50cN/dtex以下であることが好ましく、40cN/dtex以下であることがより好ましい。
【0091】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維は、例えば、紙、布帛、耐熱バインダー、C/Cコンポジット、CFRPマトリックス樹脂、産業用ブラシ、及びブレーキ材等に用いることができる。
【0092】
<ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維から形成された紙>
本発明の紙は、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維から形成されるものである。前記紙は、一般的な方法で製造することができ、例えば、湿式抄紙法により製造することができる。湿式抄紙法では、例えば、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維を含む水性スラリーを作製し、ついでこの水性スラリーを通常の抄紙工程に供すればよい。水性スラリーは、バインダー(例えば、ポリビニルアルコール系繊維などの水溶性ポリマー繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)などの熱接着性ポリマー繊維)などを含んでいてもよい。なお、必要に応じて使用する繊維に対して叩解処理を行ってもよい。また、紙の均一性や圧着性を高めるために、抄紙工程後に熱プレス工程を加えてもよい。
【0093】
紙の製造に用いる前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維の長さは特に制限されないが、紙としての品質を十分なものにする観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下である。
【0094】
本発明の紙は、目的に応じて、他の繊維;紙力向上剤、定着剤、消泡剤、染料、紫外線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤;タルク、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の各種充填材を含んでいてもよい。これらの原料は、水性スラリー中に加えられることが多いが、適宜コーティングなどにより付着させてもよい。
【0095】
他の繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、セルロース系繊維、及びポリスルフォン系繊維等の汎用繊維;芳香族パラアラミド、ポリアリールケトン系繊維、及びポリスルフォン繊維などの耐熱性繊維などが挙げられる。
【0096】
本発明の紙に含まれる前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維の割合は、機械的強度、難燃性、耐熱性、高温安定性、耐薬品性等の観点から、例えば、50~100質量%であり、好ましくは55~98質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは65~90質量%である。
【0097】
本発明の紙の目付けは特に制限されず、紙の用途に応じて適宜調整することができるが、通常、5~800g/cmであり、好ましくは7~700g/cm、より好ましくは10~600g/cmである。
【0098】
本発明の紙の引張強度は特に制限されないが、通常、1~300N/cmであり、好ましくは3~250N/cm、より好ましくは5~200N/cmである。なお、引張強度は、JIS L1013 8.5.1に準拠して測定する。
【0099】
本発明の紙の引張伸度は特に制限されないが、通常、0.1~100%であり、好ましくは0.3~90%、より好ましくは0.5~80%である。なお、引張伸度は、JIS L1013 8.5.1に準拠して測定する。
【0100】
本発明の紙のLOI値は特に制限されないが、通常、25~80であり、好ましくは27~75、より好ましくは30~70である。なお、LOI値は、JIS L 1091 E法に準拠して測定する。
【0101】
本発明の紙の誘電率は特に制限されないが、通常、1.0~2.9であり、好ましくは1.1~2.8、より好ましくは1.2~2.7である。
【0102】
本発明の紙の平衡水分率は特に制限されないが、通常、0.01~1.5%であり、好ましくは0.02~1.2%、より好ましくは0.03~1.0%である。なお、平衡水分率は、JIS L1013に準拠して測定する。
【0103】
本発明の紙の190℃における高温収縮率は特に制限されないが、通常、0.1~20%であり、好ましくは0.2~15%、より好ましくは0.3~10%である。なお、190℃における高温収縮率の測定方法は実施例の記載による。
【0104】
本発明の紙は、耐炎化紙であることが好ましい。耐炎化紙は、前記耐炎化処理が施されたポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維を用いて、前記方法により製造することができる。
【0105】
前記耐炎化紙は、150℃と400℃の重量減少率の差が5.0%以下であることが好ましく、4.0%以下であることがより好ましく、3.5%以下であることがさらに好ましい。重量減少率の差が前記範囲にあることで、ポリマーの劣化が抑制され、耐久性を向上することができるため好ましい。また、重量減少率の差は、望ましくは0%であるが、通常0.1%以上程度の重量減少があり、0.15%以上程度である場合もある。
【0106】
前記耐炎化紙の比重は、1.2以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましい。比重が前記範囲にあることで、紙の耐炎化が十分に進行し、耐炎性が向上するため好ましい。また、比重の上限値は特に限定されるものではないが、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。
【0107】
前記耐炎化紙のLOI値は、30以上であることが好ましく、30を超えることがより好ましく、32以上であることがさらに好ましく、35以上であることが特に好ましい。LOI値が前記範囲にあることで、得られた耐炎化紙の難燃性が優れるため好ましい。ここで、LOI値とは、限界酸素指数のことであり、LOI値が大きい程、難燃性に優れるものである。従って、LOI値は大きければ大きい程好ましいものであり、その上限値は特に限定されないものである。
【0108】
前記耐炎化紙の引張伸度は、5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。引張伸度が前記範囲にあることで、加工性を向上させることができるため好ましい。また、引張強度の上限値は特に限定されるものではないが、100%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
【0109】
前記耐炎化紙の400℃での強力保持率が、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。400℃での強力保持率が前記範囲にあることで、高温で使用した際の耐久性が高いため好ましい。また、400℃での強力保持率の上限値は特に限定されるものではないが、100%以下であることが好ましく、99%以下であることがより好ましい。ここで、400℃での強力保持率とは、400℃で10分の熱処理を行った後の強度の保持率をいう。
【0110】
前記耐炎化紙の400℃での伸度保持率が、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。400℃での伸度保持率が前記範囲にあることで、高温で使用した際の耐久性が高いため好ましい。また、400℃での伸度保持率の上限値は特に限定されるものではないが、100%以下であることが好ましく、99%以下であることがより好ましい。ここで、400℃での伸度保持率とは、400℃で10分の熱処理を行った後の伸度の保持率をいう。
【0111】
本発明の紙は、例えば、断熱材、吸音材、耐熱フィルター、耐熱性絶縁紙、及び電磁波シールド材等に用いることができる。
【0112】
<ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維から形成された布帛>
本発明の布帛は、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維から形成されるものである。前記布帛は、さらに、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンゾイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンゾチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、獣毛繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、及びポリカーボネート繊維からなる群より選択される一種以上の繊維を含んでいてもよい。
【0113】
本発明の布帛に含まれる前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維の割合は、機械的強度、難燃性、耐熱性、高温安定性、耐薬品性等の観点から、例えば、50~100質量%であり、好ましくは55~98質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは65~90質量%である。
【0114】
本発明の布帛は、必要に応じて難燃剤、紫外線吸収剤、反射剤、有機染料、有機顔料、及び無機顔料などの添加剤を含んでいてもよい。
【0115】
本発明の布帛は、一般的な方法で製造することができ、例えば、上記繊維の紡績糸を混綿して紡績糸を得た後、単糸または双糸にてレピア織機などを用いて、綾織、平織などの組織に製織する方法が挙げられる。
【0116】
本発明の布帛の目付けは特に制限されず、布帛の用途に応じて適宜調整することができるが、通常、10~3000g/cmであり、好ましくは20~2500g/cm、より好ましくは30~2000g/cmである。
【0117】
本発明の布帛のLOI値は特に制限されないが、通常、25~80であり、好ましくは27~75、より好ましくは30~70である。なお、LOI値は、JIS L 1091 E法に準拠して測定する。
【0118】
本発明の布帛の190℃における高温収縮率は特に制限されないが、通常、0.1~20%であり、好ましくは0.2~15%、より好ましくは0.3~10%である。なお、190℃における高温収縮率の測定方法は実施例の記載による。
【0119】
本発明の布帛は、耐炎化布帛であることが好ましい。耐炎化布帛は、前記耐炎化処理が施されたポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維を用いて、前記方法により製造してもよく、あるいは、前記ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維を用いて、前記方法により布帛を作製し、その後、作製した布帛に前記耐炎化処理を施して製造してもよい。
【0120】
前記耐炎化布帛は、150℃と400℃の重量減少率の差が5.0%以下であることが好ましく、4.0%以下であることがより好ましく、3.5%以下であることがさらに好ましい。重量減少率の差が前記範囲にあることで、ポリマーの劣化が抑制され、耐久性を向上することができるため好ましい。また、重量減少率の差は、望ましくは0%であるが、通常0.1%以上程度の重量減少があり、0.15%以上程度である場合もある。
【0121】
前記耐炎化布帛の比重は、1.2以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましい。比重が前記範囲にあることで、布帛の耐炎化が十分に進行し、耐炎性が向上するため好ましい。また、比重の上限値は特に限定されるものではないが、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。
【0122】
前記耐炎化布帛のLOI値は、30以上であることが好ましく、30を超えることがより好ましく、32以上であることがさらに好ましく、35以上であることが特に好ましい。LOI値が前記範囲にあることで、得られた耐炎化布帛の難燃性が優れるため好ましい。ここで、LOI値とは、限界酸素指数のことであり、LOI値が大きい程、難燃性に優れるものである。従って、LOI値は大きければ大きい程好ましいものであり、その上限値は特に限定されないものである。
【0123】
前記耐炎化布帛の引張伸度は、5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。引張伸度が前記範囲にあることで、加工性を向上させることができるため好ましい。また、引張強度の上限値は特に限定されるものではないが、100%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
【0124】
前記耐炎化布帛の400℃での強力保持率が、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。400℃での強力保持率が前記範囲にあることで、高温で使用した際の耐久性が高いため好ましい。また、400℃での強力保持率の上限値は特に限定されるものではないが、100%以下であることが好ましく、99%以下であることがより好ましい。ここで、400℃での強力保持率とは、400℃で10分の熱処理を行った後の強度の保持率をいう。
【0125】
前記耐炎化布帛の400℃での伸度保持率が、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。400℃での伸度保持率が前記範囲にあることで、高温で使用した際の耐久性が高いため好ましい。また、400℃での伸度保持率の上限値は特に限定されるものではないが、100%以下であることが好ましく、99%以下であることがより好ましい。ここで、400℃での伸度保持率とは、400℃で10分の熱処理を行った後の伸度の保持率をいう。
【0126】
本発明の布帛は、例えば、断熱材、作業衣(消防用、レース用、飛行士用)、耐熱手袋、防災頭巾、輸送機器の内装材、耐熱性衣料、及び電磁波シールド材等に用いることができる。
【0127】
<フィルム>
本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体は、フィルムであることが好ましい。当該フィルムは、前記の方法で製造することができる。
【0128】
前記フィルムの弾性率は特に制限されないが、通常、1000~4500MPaであり、好ましくは1200~4000MPa、より好ましくは1500~3500MPaである。なお、弾性率は、JIS K7127に準拠して測定する。
【0129】
前記フィルムの最大点応力は特に制限されないが、通常、30~300MPaであり、好ましくは40~250MPa、より好ましくは50~200MPaである。なお、最大点応力は、JIS K7127に準拠して測定する。
【0130】
前記フィルムの破断点ひずみは特に制限されないが、通常、1~100%であり、好ましくは3~80%、より好ましくは5~70%である。なお、破断点ひずみは、JIS K7127に準拠して測定する。
【0131】
前記フィルムの誘電率は特に制限されないが、通常、1.8~3.2であり、好ましくは1.9~3.1、より好ましくは2.0~3.0である。なお、誘電率は、JIS C2565に準拠して測定する。
【0132】
前記フィルムの誘電正接は特に制限されないが、通常、0.0003~0.02であり、好ましくは0.0005~0.015、より好ましくは0.001~0.01である。なお、誘電率は、JIS C2565に準拠して測定する。
【0133】
前記フィルムは、耐炎化フィルムであることが好ましい。
【0134】
前記耐炎化フィルムは、前記フィルムに前記耐炎化処理を施すことにより得られる。
【0135】
前記耐炎化フィルムの弾性率は特に制限されないが、通常、1500~5500MPaであり、好ましくは2000~5000MPa、より好ましくは2500~4500MPaである。なお、弾性率は、JIS K7127に準拠して測定する。
【0136】
前記耐炎化フィルムの最大点応力は特に制限されないが、通常、1~40MPaであり、好ましくは2~30MPa、より好ましくは3~25MPaである。なお、最大点応力は、JIS K7127に準拠して測定する。
【0137】
前記耐炎化フィルムの破断点ひずみは特に制限されないが、通常、1~50%であり、好ましくは2~40%、より好ましくは3~30%である。なお、破断点ひずみは、JIS K7127に準拠して測定する。
【0138】
前記耐炎化フィルムの誘電率は特に制限されないが、通常、2.0~3.6であり、好ましくは2.2~3.4、より好ましくは2.4~3.2である。なお、誘電率は、JIS C2565に準拠して測定する。
【0139】
前記耐炎化フィルムの誘電正接は特に制限されないが、通常、0.003~0.03であり、好ましくは0.004~0.025、より好ましくは0.005~0.02である。なお、誘電率は、JIS C2565に準拠して測定する。
【0140】
本発明のフィルムは、例えば、FPC基板、カバーレイ、粘着テープ基材、積層基板成形用離型フィルム、透明耐熱保護フィルム、耐熱基板用特殊離型フィルム等に用いることができる。
【実施例0141】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性等の評価方法は以下の通りである。
【0142】
(1)繊度、単糸繊度
JIS L-1095 9.4.1に記載の方法で測定した。単糸繊度は繊度をフィラメント数で割り返して算出した。
【0143】
(2)最大点応力、最大点伸度
JIS L1013 8.5.1に準拠して測定した。最高荷重時の応力を最大点応力とし、最高荷重時の伸び率を最大点伸度とした。
【0144】
(3)ガラス転移点温度
TAインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(型式:DSC-Q100)を用いて、成形体(繊維)2mgを、窒素雰囲気下において30℃から250℃まで、昇温速度10℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0145】
(4)成形体中の転位構造量
共鳴周波数600MHzのH-NMR測定にて行った。測定装置は、BRUKER社製のNMR装置(装置名:AVANCE-NEO600)を用い、測定は以下の通りに行った。
実施例及び比較例で得られた成形体(試料)10mgを重クロロホルムに溶解後、その溶液を2時間以内にNMRチューブに充填し測定を行った。ロック溶媒には重クロロホルムを用い、待ち時間を1秒、データ取り込み時間を4秒、積算回数を64回とした。
また、溶媒として重ベンゼンを用いても良い。
転位構造量の解析は以下の通り実施した。
ポリフェニレンエーテルの3、5位のR、R基のプロトンに由来するピークと、転移構造中のR3’で示される2価の基(メチレン基等)のプロトンに由来するピークのそれぞれのピーク積分値をA、Bとし、転位構造量は以下の式により求めた。
転位構造量(mol%)=(B/(A+B))×100
【0146】
(5)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
測定装置として、東ソー(株)製のHLC-8320GPCを用いた。カラムはTSKgel SuperHM-Hを2本、TSKgel SuperH2000を直列につなぎ、使用した。移動相にクロロホルムを使用し、流速は0.6ml/分、カラムオーブンの温度を40℃とした。成形体から1g/Lの濃度のクロロホルム溶液を調製して測定を行った。重量平均分子量と数平均分子量は標準ポリスチレンにより検量線を作成して算出した。検出器のUV波長は、評価対象物の場合は283nm、標準ポリスチレンの場合は254nmとした。なお、実施例1~7、比較例2においては、前記「成形体」として、放流糸(ノズルから吐出されたポリマーを自由落下させて得た糸)を使用して測定した。
【0147】
(6)スクリューの周速
スクリューの周速は以下の式により求めた。
スクリューの周速(m/min)=スクリュー直径(mm)×0.00314×スクリュー回転数(rpm)
【0148】
<ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維>
実施例1
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO640、ガラス転移点温度(Tg):221℃、SABIC Innovative Plastic製)を、(株)テクノベル製2軸押出機(製品名:KZW15TW-30MG)を用いて押出した。前記2軸押出機は、シリンダーが4ゾーンを有しており、ホッパー側からシリンダーをそれぞれ、シリンダー1、2、3、4とし、シリンダー1~3は280℃に設定し、シリンダー4およびシリンダーヘッド部は300℃に設定し、スクリュー回転数は700rpmに設定してスクリューの周速を33.0m/minとした。
【0149】
押出機の下流には、ギアポンプを設置してポリマーの吐出速度を計量し、金属不織布フィルター(製品名:NF-07、日本精線(株)製)を介してノズル(ノズル孔直径:0.23mm、ノズル孔ランド長:0.3mm、ノズル孔数:24個)へ押し出した(総吐出量:3.5g/分、単孔吐出量:0.146g/分)。ノズル直下には面ヒータを配置し、ノズル温度が316℃となるように設定した。ノズル直下には60mmの保温スペースを設け、この領域に300℃に加熱した窒素を連続的に導入した。ノズルから吐出されたポリマーを紡糸速度100m/分にて巻き取った。得られた溶融紡糸繊維の繊度は、355dtex、単糸繊度は14.8dtex、最大点応力は0.95cN/dtex、最大点伸度は92.9%、ガラス転移点温度は204℃であった。また得られた繊維中の転位構造量は、全PPEユニットに対して2.8mol%であった。
【0150】
得られた繊維について、前記「(4)成形体(繊維)中の転位構造量」の測定方法に基づいて、H-NMR測定を行った。その結果、重クロロホルムを7.28ppmとした際、6.9ppm付近と、6.48ppm付近と、3.87ppm付近にピークが観測された。6.9ppm付近のピークが、転位により発生した(すなわち、転位構造中の)ポリフェニレンエーテルの3、5位のプロトンに、6.48ppm付近のピークが主鎖中のポリフェニレンエーテルの3、5位のプロトンに、3.87ppm付近のピークが転位により発生したメチレンブリッジのメチレンに対応するピークであった。
溶媒として重ベンゼンを用いた場合は、重ベンゼンを7.1ppmとした際、6.8ppm付近と、3.7ppm付近にピークが観測された。6.9ppm付近のピークが、転位により発生した(すなわち、転位構造中の)ポリフェニレンエーテルの3、5位のプロトンに、3.7ppm付近のピークが転位により発生したメチレンブリッジのメチレンプロトンに対応するピークであった。
【0151】
実施例2~6
スクリュー回転数、スクリューの周速、ノズル形状、紡糸条件を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして溶融紡糸繊維を得た。得られた繊維の繊維物性、放流糸特性を表1に示す。
【0152】
実施例7
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO640、ガラス転移点温度(Tg):221℃、SABIC Innovative Plastic製)90部、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPOSA120、ガラス転移点温度(Tg):159℃、SABIC Innovative Plastic製)10部を配合したものを使用し、紡糸条件を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして溶融紡糸繊維を得た。得られた繊維の繊維物性、放流糸特性を表1に示す。
【0153】
実施例8
スクリューの周速を3.8m/minに変更した以外は実施例5と同様にして溶融紡糸繊維を得た。得られた繊維の繊維物性、放流糸特性を表1に示す。
【0154】
比較例1
比較例1ではスクリュー回転数を50rpm、すなわちスクリューの周速を2.4m/minとした以外は実施例1と同様の方法で溶融紡糸繊維を製造しようとしたが、粘度が高すぎてギアポンプからポリマーを押出すことができず、ギアポンプの破壊を招いた。
【0155】
比較例2
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO640、SABIC Innovative Plastic製)を80部、ポリスチレン(679、PSジャパン(株)製)20部を配合したものを使用し、紡糸条件を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして溶融紡糸を行ったが、可紡性が非常に悪く、単孔吐出量を0.242g/分まで上げることで、ようやく紡糸速度30m/分にて単糸繊度78.4dtexの繊維を得ることができた。得られた繊維の繊維物性、放流糸特性を表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
なお、表1中の「640」は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO640、ガラス転移点温度(Tg):221℃、SABIC Innovative Plastic製)を、「SA120」は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPOSA120、ガラス転移点温度(Tg):159℃、SABIC Innovative Plastic製)を、「PS(679)」は、ポリスチレン(679、PSジャパン(株)製)を表す。
【0158】
表1に示すように、本発明の実施例では、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)のみを使用しているにも関わらず、スクリューの周速が高く、強い剪断力が与えられているため、転位構造が生成しており、溶融紡糸繊維が得られた。特に、実施例3、4では、単糸繊度6.6dtex、5.1dtexの細い繊維が得られた。また、実施例で得られた溶融紡糸繊維は、最大点応力、破断点伸度に優れていた。それに対して、比較例1では、溶融紡糸繊維を得ることができなかった。これは、比較例1では、スクリューの周速が低く、剪断力不足のため、ポリフェニレンエーテル中に転位構造が形成されず、粘度が高すぎてギアポンプからポリマーを押出すことができなかったためだと考えられる。比較例2では、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)にポリスチレンを配合しているにも関わらず、可紡性が非常に悪く、非常に太い繊維しか得ることができなかった。また、得られた繊維は、強度、伸度、ガラス転移点温度とも低いものであった。
【0159】
<ポリフェニレンエーテル溶融紡糸短繊維>
実施例9
実施例1で得られた溶融紡糸繊維を合糸してトウ状にした繊維を、ギロチンカッターで50mmの繊維長にカットして短繊維を得た。
【0160】
(1)引張強度、引張伸度
JIS L1013 8.5.1に準拠して測定した。最高荷重時の応力を引張強度とし、最高荷重時の伸び率を引張伸度とした。
【0161】
(2)高温収縮率
5cmに切り出した短繊維を、末端を固定しない状態で190℃に保たれた空気恒温槽中で10分間保持した後の繊維長(Xcm)から、次式を用いて算出した。ただし、5cmの短繊維が取れない場合は、適宜長さを変えて測定しても良い。
高温収縮率(%)=<X/5>×100
(5cmの短繊維が取れない場合は<X/処理前の長さ>×100)
【0162】
(3)平衡水分率
JIS L1013に準拠し、サンプルを120℃の雰囲気中で絶乾した後、温度20℃かつ相対湿度65%RHにおいて72時間調整し、絶乾状態でのサンプルの質量に対するサンプル中に含まれる水分率を算出し、これを百分率(%)にて表した。
【0163】
【表2】
【0164】
<耐炎化短繊維>
実施例10
実施例1で得られた溶融紡糸繊維を合糸してトウ状にした繊維を、ギロチンカッターで50mmの繊維長にカットして短繊維を得た。得られた短繊維を空気雰囲気下で200℃×120min、210℃×20min、220℃×20min、250℃×120min、280℃×120min、320℃×120minの順に熱処理して耐炎化短繊維を作製した。
【0165】
(1)引張強度、引張伸度
JIS L1013 8.5.1に準拠して測定した。最高荷重時の応力を引張強度とし、最高荷重時の伸び率を引張伸度とした。
【0166】
(2)高温収縮率
5cmに切り出した耐炎化短繊維を、末端を固定しない状態で190℃に保たれた空気恒温槽中で10分間保持した後の繊維長(Xcm)から、次式を用いて算出した。ただし、5cmの耐炎化短繊維が取れない場合は、適宜長さを変えて測定しても良い。
高温収縮率(%)=<X/5>×100
(5cmの耐炎化短繊維が取れない場合は<X/処理前の長さ>×100)
【0167】
(3)平衡水分率
JIS L1013に準拠し、サンプルを120℃の雰囲気中で絶乾した後、温度20℃かつ相対湿度65%RHにおいて72時間調整し、絶乾状態でのサンプルの質量に対するサンプル中に含まれる水分率を算出し、これを百分率(%)にて表した。
【0168】
(4)発生ガス
STM E662に準拠して測定した。
【0169】
(5)発煙量
BSS 7239に準拠して測定した。
【0170】
【表3】
【0171】
<ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維から形成された紙>
実施例11
実施例1で得られた溶融紡糸繊維を合糸してトウ状にした繊維を、ギロチンカッターで5mmの繊維長にカットして短繊維を得た。得られた短繊維を用いて湿式抄紙した。抄紙時に、明成化学工業株式会社製の界面活性剤「メイカサーフMK-37」を使用した。得られた抄紙をアルミ箔上に取り、スプレーを用いて、約5Lのイオン交換水にて洗浄した。そしてアルミ箔に挟み、温度210℃、線圧30kg/cm(25cm幅として計算)、1.0m/minのローラー速度にてカレンダープレスを実施して紙(目付:320g/cm)を作製した。
【0172】
(1)引張強度、引張伸度
JIS L1013 8.5.1に準拠して測定した。幅25mm、長さ100mmのサンプルを用い、チャック間距離が50mm、引張速度は100mm/minで測定した。引張伸度は強度が最大となるときの伸度とした。
【0173】
(2)LOI値
JIS L 1091 E法に準拠して測定した。酸素指数の決定は50mm以上燃焼し続けた時で、点火器の熱源はプロパンガスを用いた。
【0174】
(3)誘電率
厚さ50μmのサンプルについて、(株)エーイーティー製誘電率測定装置を用い、JIS C2565に準拠して空洞共振器法(TMモード)にて測定した。周波数は10GHzにて測定した。サンプルサイズは幅3mm、長さ80mmである。
【0175】
(4)平衡水分率
JIS L1013に準拠し、サンプルを120℃の雰囲気中で絶乾した後、温度20℃かつ相対湿度65%RHにおいて72時間調整し、絶乾状態でのサンプルの質量に対するサンプル中に含まれる水分率を算出し、これを百分率(%)にて表した。
【0176】
(5)高温収縮率
10cm角に切り出した紙を、末端を固定しない状態で190℃に保たれた空気恒温槽中で10分間保持した後の紙長(Xcm)から、次式を用いて算出した。
高温収縮率(%)=<X/10>×100
【0177】
【表4】
【0178】
<耐炎化紙>
実施例12
実施例11で作製した紙を空気雰囲気下で200℃×120min、210℃×20min、220℃×20min、250℃×120min、280℃×120min、320℃×120minの順に熱処理して耐炎化紙を作製した。
【0179】
(1)引張強度、引張伸度
JIS L1013 8.5.1に準拠して測定した。幅25mm、長さ100mmのサンプルを用い、チャック間距離が50mm、引張速度は100mm/minで測定した。引張伸度は強度が最大となるときの伸度とした。
【0180】
(2)発生ガス
STM E662に準拠して測定した。
【0181】
(3)発煙量
BSS 7239に準拠して測定した。
【0182】
(4)LOI値
JIS L 1091 E法に準拠して測定した。酸素指数の決定は50mm以上燃焼し続けた時で、点火器の熱源はプロパンガスを用いた。
【0183】
(5)誘電率
厚さ50μmのサンプルについて、(株)エーイーティー製誘電率測定装置を用い、JIS C2565に準拠して空洞共振器法(TMモード)にて測定した。周波数は10GHzにて測定した。サンプルサイズは幅3mm、長さ80mmである。
【0184】
(6)平衡水分率
JIS L1013に準拠し、サンプルを120℃の雰囲気中で絶乾した後、温度20℃かつ相対湿度65%RHにおいて72時間調整し、絶乾状態でのサンプルの質量に対するサンプル中に含まれる水分率を算出し、これを百分率(%)にて表した。
【0185】
(7)高温収縮率
10cm角に切り出した耐炎化紙を、末端を固定しない状態で190℃に保たれた空気恒温槽中で10分間保持した後の紙長(Xcm)から、次式を用いて算出した。
高温収縮率(%)=<X/10>×100
【0186】
【表5】
【0187】
<ポリフェニレンエーテル溶融紡糸繊維から形成された布帛>
実施例13
実施例1で得られた溶融紡糸繊維を用いて製織して、目付け150g/mの平織物を得た。
【0188】
(1)LOI値
JIS L 1091 E法に準拠して測定した。酸素指数の決定は50mm以上燃焼し続けた時で、点火器の熱源はプロパンガスを用いた。
【0189】
(2)高温収縮率
10cm角に切り出した布帛を、末端を固定しない状態で190℃に保たれた空気恒温槽中で10分間保持した後の布帛長(Xcm)から、次式を用いて算出した。
高温収縮率(%)=<X/10>×100
【0190】
【表6】
【0191】
<耐炎化布帛>
実施例14
実施例13で作製した平織物を空気雰囲気下で200℃×120min、210℃×20min、220℃×20min、250℃×120min、280℃×120min、320℃×120minの順に熱処理して耐炎化布帛を作製した。
【0192】
(1)発生ガス
STM E662に準拠して測定した。
【0193】
(2)発煙量
BSS 7239に準拠して測定した。
【0194】
(3)LOI値
JIS L 1091 E法に準拠して測定した。酸素指数の決定は50mm以上燃焼し続けた時で、点火器の熱源はプロパンガスを用いた。
【0195】
(4)高温収縮率
10cm角に切り出した耐炎化布帛を、末端を固定しない状態で190℃に保たれた空気恒温槽中で10分間保持した後の布帛長(Xcm)から、次式を用いて算出した。
高温収縮率(%)=<X/10>×100
【0196】
【表7】
【0197】
<溶融ポリフェニレンエーテルフィルム>
実施例15
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO640、ガラス転移点温度(Tg):221℃、SABIC Innovative Plastic製)を、(株)テクノベル製2軸押出機(製品名:KZW15TW-45MG)を用いて押出した。前記2軸押出機は、300℃に設定し、スクリュー回転数は700rpmに設定してスクリューの周速を33.0m/minとした。
押出機の下流には、ギアポンプを設置してポリマーの吐出速度を計量し、22.5g/minの吐出量で(株)テクノベル製Tダイ(TDS/150-SGI)へ押し出した。Tダイから押し出されたポリマーを引き取り速度3m/minで(株)テクノベル製ロール(FPU-200-SGI)で巻き取って、溶融ポリフェニレンエーテルフィルムを作製した。
【0198】
比較例3
比較例3ではスクリュー回転数を50rpm、すなわちスクリューの周速を2.4m/minとした以外は実施例15と同様の方法でフィルムを製造しようとしたが、粘度が高すぎてギアポンプからポリマーを押出すことができず、製膜することができなかった。
【0199】
(1)弾性率、最大点応力、破断点ひずみ
JIS K7127に準拠してフィルムのMD方向の弾性率、最大点応力、破断点ひずみを23℃にて測定した。
【0200】
(2)誘電率、誘電正接
厚さ50μmのフィルムについて、(株)エーイーティー製誘電率測定装置を用い、JIS C2565に準拠して空洞共振器法(TMモード)にて測定した。周波数は10GHzにて測定した。サンプルサイズは幅3mm、長さ80mmである。
【0201】
【表8】
【0202】
<耐炎化フィルム>
実施例16
実施例15で作製した溶融ポリフェニレンエーテルフィルムを空気雰囲気下で200℃×120min、210℃×20min、220℃×20min、250℃×120min、280℃×120min、320℃×120minの順に熱処理して耐炎化フィルムを作製した。
【0203】
(1)弾性率、最大点応力、破断点ひずみ
JIS K7127に準拠して耐炎化フィルムのMD方向の弾性率、最大点応力、破断点ひずみを23℃にて測定した。
【0204】
(2)誘電率、誘電正接
厚さ50μmの耐炎化フィルムについて、(株)エーイーティー製誘電率測定装置を用い、JIS C2565に準拠して空洞共振器法(TMモード)にて測定した。周波数は10GHzにて測定した。サンプルサイズは幅3mm、長さ80mmである。
【0205】
【表9】
【符号の説明】
【0206】
1 ホッパー
2 押出機
3 ギアポンプ
4 フィルター
5 紡糸ノズル
6 濾材
7 保温スペース
8 不活性ガスの導入
9 加熱トーチ
図1