(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171387
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】アンテナパターン、RFIDインレイ及びRFIDラベル
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20231124BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20231124BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G06K19/077 212
G06K19/077 136
G06K19/077 156
G06K19/077 280
H01Q1/38
H01L23/12 301Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148822
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2019085500の分割
【原出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 禎光
(57)【要約】
【課題】ICチップとアンテナパターンとの機械的接続の強度を高めること。
【解決手段】アンテナパターンは、ICチップが接続されることによりRFIDインレイを構成するアンテナパターンであって、基材と、基材に金属箔により形成されたアンテナとを備え、アンテナの少なくとも一部に周囲よりも表面が粗い粗面部を有し、粗面部にICチップが接続されるICチップ接続部が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップが接続されることによりRFIDインレイを構成するアンテナパターンであって、
基材と、
前記基材に金属箔により形成されたアンテナと、
を備え、
前記アンテナの少なくとも一部であって、前記ICチップが配置される領域よりも広い所定領域に周囲よりも表面が粗い粗面部を有し、
前記粗面部の中央に前記ICチップが接続されるICチップ接続部が形成された、
アンテナパターン。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナパターンであって、
前記粗面部は、複数の窪みがライン状に形成された、
アンテナパターン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナパターンであって、
前記基材の厚さが25μm以上300μm以下である、
アンテナパターン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナパターンであって、
前記基材が紙類からなる、
アンテナパターン。
【請求項5】
ICチップとアンテナパターンとを有するRFIDインレイであって、
前記アンテナパターンは、
基材と、
前記基材に金属箔により形成されたアンテナと、
を備え、
前記アンテナの少なくとも一部であって、前記ICチップが配置される領域よりも広い所定領域に周囲よりも表面が粗い粗面部を有し、
前記ICチップが前記粗面部の中央に異方導電性材料により接続された、
RFIDインレイ。
【請求項6】
請求項5に記載のRFIDインレイであって、
前記異方導電性材料が紫外線硬化型の異方導電性接着剤である、
RFIDインレイ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のRFIDインレイであって、
前記粗面部は、複数の窪みがライン状に形成された、
RFIDインレイ。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載のRFIDインレイであって、
前記基材の厚さが25μm以上300μm以下である、
RFIDインレイ。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載のRFIDインレイであって、
前記基材が紙類からなる、
RFIDインレイ。
【請求項10】
ICチップが接続されることによってRFIDインレイを構成するアンテナパターンの製造方法であって、
基材に金属箔からなるアンテナを形成する工程と、
前記アンテナの少なくとも一部であって、前記ICチップが配置される領域よりも広い所定領域に周囲よりも表面を粗くする粗面化処理を施す工程と、を有する、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記粗面化処理を施す工程は、レーザ照射である、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記レーザ照射には、レーザパルスを照射可能な照射装置が用いられ、
前記照射装置にてバルス照射を搬送方向の直交方向に走査することにより、複数の窪みをライン状に形成する、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項13】
ICチップが接続されることによってRFIDインレイを構成するアンテナパターンの製造方法であって、
基材の連続体を搬送しながら、前記基材の連続体に形成される前記アンテナパターンの外周線よりも内側に粘着剤を塗工する粘着剤塗工工程と、
前記基材の連続体において前記粘着剤の上に前記アンテナパターンを構成する金属箔の連続体を配置する金属箔配置工程と、
前記金属箔の連続体に前記アンテナパターンの切り込みを形成する切込工程と、
前記金属箔の連続体のうち前記アンテナパターンを構成しない不要部分を除去する除去工程と、
を有し、
前記切込工程において形成された前記アンテナパターンの一部であって、前記ICチップが配置される領域よりも広い所定領域に周囲よりも表面を粗くする粗面化処理を施す工程を、前記金属箔配置工程よりも後段に有する、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記粗面化処理を施す工程は、レーザ照射である、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項15】
アンテナパターンにICチップを接続してRFIDインレイを製造するRFIDインレイの製造方法であって、
前記アンテナパターンの少なくとも一部であって、前記ICチップが配置される領域よりも広い所定領域に周囲よりも表面を粗くする粗面化処理を施す工程と、
前記アンテナパターンの前記粗面化処理が施された前記所定領域に異方導電性材料を塗工する工程と、
前記アンテナパターンに塗工された前記異方導電性材料上に前記ICチップを実装する工程と、を有する、
RFIDインレイの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載のRFIDインレイの製造方法であって、
前記粗面化処理を施す工程は、レーザ照射である、
RFIDインレイの製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のRFIDインレイの製造方法であって、
前記異方導電性材料が紫外線硬化型の異方導電性接着剤である、
RFIDインレイの製造方法。
【請求項18】
ICチップとアンテナパターンとを有するRFIDラベルであって、
前記アンテナパターンは、
基材と、
前記基材に金属箔により形成されたアンテナと、
を備え、
前記アンテナの少なくとも一部であって、前記ICチップが配置される領域よりも広い所定領域に周囲よりも表面が粗い粗面部を有し、
前記ICチップが前記粗面部の中央に異方導電性材料により接続され、
前記基材に粘着剤層が形成された、
RFIDラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDラベル、RFIDタグ等のRFID媒体に適用されるアンテナパターン、RFIDインレイ、アンテナパターンの製造方法及びRFIDインレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の製造、管理、流通等の分野において、製品に関する情報や識別情報が書き込まれたICチップから非接触通信によって情報を送受するRFID(Radio Frequency Identification)技術に対応した、いわゆる、RFIDタグ、RFIDラベル等のRFID媒体が普及している。
【0003】
上述したRFID媒体の製造方法として、以下の方法が開示されている。すなわち、基材に積層したアルミニウム等からなる金属箔に、所定のアンテナ形状のレジスト層を印刷し、化学的エッチングによって当該アンテナ形状以外を溶融除去する。そして、異方導電性ペーストのように電気的接続と機械的接続とを兼ね揃えた異方導電性材料を用いて、形成されたアンテナとICチップとを接続することにより、RFIDインレイを形成する。こうして得られたRFIDインレイからタグやラベル等の所望とするRFID媒体を製造する方法である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RFID媒体が正常に動作するためには、アンテナとアンテナに取り付けられているICチップとが、製品としての使用条件下において、機械的接続を維持できることが望まれる。しかし、異方導電性材料では、特に、ICチップとアンテナパターンとの機械的接続の強度の点において、依然として改善の余地が残されていた。
【0006】
そこで、本発明は、ICチップとアンテナパターンとの機械的接続の強度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、ICチップが接続されることによりRFIDインレイを構成するアンテナパターンであって、基材と、前記基材に金属箔により形成されたアンテナと、を備え、前記アンテナの少なくとも一部であって、前記ICチップが配置される領域よりも広い所定領域に周囲よりも表面が粗い粗面部を有し、前記粗面部の中央に前記ICチップが接続されるICチップ接続部が形成された、アンテナパターンが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ICチップが接続されるアンテナの少なくとも一部に周囲よりも表面が粗い粗面部を形成することにより、ICチップとの接着に寄与する接着面積が増加される。これにより、ICチップとアンテナパターンとの機械的接続の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るアンテナパターン及び当該アンテナパターンを備えたRFIDインレイを説明する外観図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアンテナパターンの製造方法及びRFIDインレイの製造方法を実行する製造装置を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[RFIDインレイ及びアンテナパターン]
本発明の実施形態に係るアンテナパターン1及びRFIDインレイ10について説明する。
図1は、本実施形態に係るアンテナパターン1及びアンテナパターン1を備えたRFIDインレイ10を説明する外観図である。また、
図2は、
図1のII-II線における断面図である。
【0011】
アンテナパターン1は、基材2と、基材2に金属箔により形成されたアンテナ3とを備える。アンテナパターン1は、アンテナ3の少なくとも一部に、周囲よりも表面が粗い粗面部Sを有する。RFIDインレイ10は、アンテナパターン1におけるアンテナ3の粗面部SにICチップ4がマウントされたものである。
【0012】
基材2は、汎用の接着剤又は粘着剤を用いて金属箔を積層可能な材料であればよく、上質紙、コート紙等の紙類、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート等の樹脂フィルム単体又はこれら樹脂フィルムを複数積層してなる多層フィルムを使用することができる。
【0013】
基材2の厚さは、基材2上にアンテナ3を形成してICチップ4をマウントするための強度の観点、及び、後述する製造装置100における製造上の取り扱い性の観点から、25μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0014】
基材として紙類を用いる場合には、上記範囲のなかでも、50μm以上260μm以下とすることができ、通常、80μmとすることが好ましい。また、基材として樹脂フィルムを用いる場合には、上記範囲のなかでも、25μm以上200μm以下とすることができる。基材2の厚さは、上記範囲内において、RFIDインレイ10を用いて作製される製品としてのRFID媒体の意匠性や用途等に応じて、適宜選択可能である。
【0015】
アンテナ3は、ICチップ4がマウントされるループ部31と、ICチップ4が接続されるICチップ接続部32と、ループ部31から左右対称に延びるメアンダ33,34と、メアンダ33,34の端部に接続されるキャパシタハット35,36とを備える。すなわち、アンテナ3は、ダイポールアンテナを構成する。
【0016】
アンテナ3は、
図2に示すように、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等の粘着剤Aにより基材2に接着されている。
【0017】
本実施形態では、アンテナ3は、UHF帯(300MHz~3GHz、特に860MHz~960MHz)に対応したアンテナ長さ及びアンテナ幅を有するパターンに設計される。
【0018】
アンテナ3に適用可能な金属箔としては、例えば、銅、アルミニウムがあげられる。製造コストを抑える観点から、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0019】
また、RFIDインレイ10の全体の厚さ或いはRFID媒体に形成された際の全体の厚さ、及び製造コストの観点から、金属箔の厚さは、3μm以上25μm以下であることが好ましい。本実施形態では、厚さ20μmのアルミニウム箔が用いられる。
【0020】
本実施形態では、粗面部Sは、アンテナ3におけるループ部31に形成されている。粗面部Sは、レーザ照射によって、アンテナ3(金属箔)表面を溶融させて形成することができる。一例として、レーザパルスを照射可能な照射装置を用いることができる。このような照射装置では、1回のパルス照射によって1つの窪みを形成し、照射装置をパルス間隔に応じた速度で搬送方向Tの直交方向に走査することにより、複数の窪みをライン状に形成することができる。さらに、搬送方向Tの直交方向に往復走査することにより、複数の窪みによって形成されたラインを、複数列形成することができる。
【0021】
RFIDインレイ10において、ICチップ4は、アンテナ3の粗面部Sの中央のICチップ接続部32に、異方導電性接着剤、異方導電性フィルム等の異方導電性材料Eによって電気的及び機械的に接続されている。異方導電性材料Eは、接着成分であるバインダ中に、所定粒径に調製された導電性フィラー(以下、フィラーと記す)が混合されたものであり、熱圧着又は紫外線硬化により、導電材料と電気的及び機械的に接続される。
【0022】
上述したレーザ照射によって粗面部Sを形成する場合には、窪みの深さは、異方導電性材料Eに含まれるフィラーの直径より僅かに浅くすることが好ましい。例えば、フィラーの直径が3μmの場合であれば、窪み深さは2μm、フィラーの直径が10μmの場合であれば、窪み深さは8~9μmに設定されることが好ましい。窪みの深さを上記設定とすることで、アンテナ3の窪みに嵌まり込んだフィラーの一部が、アンテナ3の他の表面よりも僅かに突出することになり、マウントされるICチップ4との接続を良好にすることができる。
【0023】
一例として、アンテナ3として、厚さ20μmのアルミニウム箔を用い、直径3μmのフィラーを含む異方導電性材料Eを用いた場合には、粗面部の窪みは、フィラー直径に対する比率が60%~90%程度の深度を有する窪みとすることが好ましい。
【0024】
以上の構成を有するRFIDインレイ10には、さらなる加工が施されることにより、ラベルのほか、タグ、リストバンド、チケット、カード等のRFID媒体を形成することができる。
【0025】
<効果>
本実施形態に係るアンテナパターン1は、アンテナ3の少なくとも一部に、周囲よりも表面が粗い粗面部Sを有する。この粗面部Sにより、異方導電性材料Eに含まれる接着成分であるバインダが粗面部Sの凹部に入り込み、ICチップ4とアンテナ3との接着強度が高められる。
【0026】
したがって、本実施形態に係るアンテナパターン1によれば、アンテナ3とICチップ4との機械的接続の強度を高めることができる。
【0027】
[アンテナパターンの製造方法]
続いて、本発明の実施形態に係るアンテナパターンの製造方法及びRFIDインレイの製造方法について説明する。
図3は、本実施形態に係るアンテナパターンの製造及びRFIDインレイの製造を実行する製造装置100の概略図である。
【0028】
本実施形態に係るアンテナパターンの製造方法は、基材2の連続体Cにアンテナ3を形成する工程として、基材2の連続体Cを搬送しながら、連続体Cに粘着剤Aを塗工する粘着剤塗工工程P1と、連続体Cにおいて粘着剤Aが塗工された面に金属箔の連続体Mを配置する金属箔配置工程P2と、金属箔の連続体Mにアンテナ3の切り込みを形成する切込工程P3と、金属箔の連続体Mのうちアンテナ3を構成しない不要部分Maを除去する除去工程P4とを有する。
【0029】
そして、本実施形態では、アンテナ3の所定領域に粗面部Sを形成するための粗面化処理を施す粗面化工程P5が、除去工程P4の後に設けられている。
【0030】
なお、
図3における矢印Tは、基材2の連続体Cの搬送方向を示す。
【0031】
粘着剤塗工工程P1は、粘着剤塗工ユニット110によって実行される。粘着剤塗工ユニット110は、粘着剤Aを貯留する粘着剤タンク111と、粘着剤タンク111から粘着剤Aを繰り出す繰り出しローラ112と、繰り出しローラ112から粘着剤Aを受け取って連続体Cに転写する版ローラ113と、圧胴114とを有する。
【0032】
粘着剤塗工工程P1において適用可能な粘着剤Aとしては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。本実施形態では、搬送される連続体Cに、フレキソ印刷や凸版印刷の方式を利用して粘着剤Aを塗工する観点から、紫外線硬化型の粘着剤を用いることが好ましい。このため、粘着剤塗工ユニット110は、粘着剤Aに紫外光を照射するUVランプ115を有する。
【0033】
版ローラ113は、基材2の連続体Cに塗工される粘着剤Aの形状に対応する凸状パターン113aが形成された版が版胴に巻き付けられたものである。版ローラ113には、複数の凸状パターン113aが形成されている。複数の凸状パターン113aは、版ローラ113の送り方向と幅方向とに並んで面付けされている。これにより、複数個のアンテナ用の粘着剤Aを同時に連続体Cに転写し、塗工できる。
【0034】
各々の凸状パターン113aは、基材2に配置されるアンテナ3の外周線よりも内側に収まる形状とされている。ここで、アンテナ3の外周線よりも内側において、搬送方向上流側の余白は、搬送方向下流側の余白よりも広くなるように粘着剤Aの塗工位置が位置決めされる。
【0035】
連続体Cに塗工される粘着剤Aの厚さは、3μm以上25μm以下であることが好ましい。3μm以上であれば、金属箔の連続体Mを基材2の連続体Cに粘着する際における十分な粘着力が得られ、25μm以下であれば、加圧によりアンテナ3の外周線よりも外側にはみ出ることがない。また、25μm以下であれば、粘着剤Aに紫外光を照射した際に速やかに定着させることができる。
【0036】
また、本実施形態においては、基材2上にアンテナ3を保持する観点から、粘着剤Aの粘着力は、180°剥離試験(JIS Z 0237 2009)において、500gf/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは、800gf/25mm以上である。さらに好ましくは、1000gf/25mm以上である。粘着力の上限値は、好ましくは、2000gf/25mmである。
【0037】
なお、
図3には示されていないが、粘着剤塗工工程P1の前には、粘着剤Aを連続体Cに転写する際における位置決めとアンテナ3の切込を形成する際における切込位置の位置決めのための基準にする基準マークを印刷する工程が実行される。
【0038】
続いて、金属箔配置工程P2は、金属箔配置ユニット120によって実行される。
【0039】
金属箔配置ユニット120は、押圧ローラ121と支持ローラ122とを有する。金属箔配置ユニット120では、連続体Cの粘着剤Aが塗工された面に連続体Cの搬送路とは別の搬送路によって搬送された金属箔の連続体Mが重ね合わせられ、押圧ローラ121と支持ローラ122との間に挿通されて貼り合わされる。
【0040】
本実施形態に係る製造方法では、アンテナ3の外周線よりも外側には粘着剤が存在しないため、金属箔の連続体Mは、アンテナ3を形成する領域以外は、連続体Cに貼着していない。
【0041】
金属箔を構成する金属としては、通常、アンテナパターンの形成に用いられる導電性金属であれば適用可能である。一例として、銅、アルミニウムが挙げられる。製造コストを抑える観点から、アルミニウムを用いることが好ましい。また、RFIDインレイ10の全体の厚さ或いはRFID媒体に形成された際の全体の厚さ、及び製造コストの観点から、金属箔の厚さは、3μm以上25μm以下であることが好ましい。本実施形態では、厚さ20μmのアルミニウム箔が用いられる。
【0042】
続いて、切込工程P3は、切込ユニット130によって実行される。
【0043】
切込ユニット130は、連続体Cに配置された金属箔の連続体Mにアンテナ3の切込を形成するダイロール131と、ダイロール131をバックアップするアンビルローラ132とを有する。ダイロール131の表面には、アンテナ3の外周線の形状の凸状刃部131aが形成されている。凸状刃部131aは、フレキシブルダイとすることができる。また、このほかに、彫刻刃、植込刃等で構成することができる。
【0044】
切込ユニット130は、連続体C及び連続体Mからなるワークを挟み込んで連続的に搬送しながら、金属箔の連続体Mに凸状刃部131aを食い込ませてアンテナ3を区画する。これにより、金属箔の連続体Mに切込を形成することができる。
【0045】
続いて、除去工程P4は、除去ユニット140によって実行される。
【0046】
除去ユニット140は、ピールローラ141とガイドローラ142とを備える。ピールローラ141の一部に金属箔の不要部分Maを沿わせて搬送方向を変更させるとともに、ガイドローラ142の一部にワークを沿わせて、不要部分Maの搬送方向とは異なる方向に搬送させることにより、連続体C及び連続体Mからなるワークから金属箔の不要部分Maを引き離す。不要部分Maには、粘着剤Aが付着していないため、回収後の再生加工処理が容易であり、再び、金属箔の連続体Mとして利用することができる。これにより、連続体Cには、所定形状の金属箔がアンテナ3として残される。
【0047】
連続体Cは、図示しない駆動部に接続された対ローラ150(ニップローラ151、従動ローラ152)に挟持されて、粗面化工程P5に搬送される。
【0048】
続いて、粗面化工程P5は、レーザ粗面化ユニット160によって実行される。
【0049】
レーザ粗面化ユニット160は、レーザパルスを照射可能なレーザ照射器161を備えレーザ照射器161は、レーザを所定のパルス間隔でアンテナ3の所定領域に照射可能とされており、レーザ照射器161をパルス間隔に応じた速度で搬送方向Tの直交方向に走査することにより、複数の窪みをライン状に形成する。また、連続体C(アンテナ3)を搬送方向Tに搬送しながら、レーザ照射器161を搬送方向Tの直交方向に往復走査することにより、アンテナ3の所定領域に複数の窪みからなるラインを複数列有する粗面部Sを形成することができる。
【0050】
図3において、粗面化工程P5及び粗面化工程P5以降の工程は、RFIDインレイの製造方法に該当する。
【0051】
RFIDインレイの製造方法は、粗面化工程P5の後に、アンテナ3に形成された粗面部Sに異方導電性材料Eを塗工する導電性材料塗工工程P11と、異方導電性材料Eが塗工されたICチップ接続部32にICチップ4を実装するICチップ実装工程P12とを有する。また、本実施形態においては、さらに、異方導電性材料Eを硬化させる硬化工程P13を有する。
【0052】
導電性材料塗工工程P11は、導電性材料吐出ユニット210によって実行される。導電性材料吐出ユニット210は、異方導電性材料Eを吐出するためのディスペンサ211を備える。本実施形態においては、異方導電性材料Eとして、異方導電性接着剤を使用することができる(以下、異方導電性接着剤Eと表す場合がある)。ディスペンサ211は、ICチップ4が実装される位置に、異方導電性接着剤Eを吐出する。
【0053】
異方導電性接着剤Eに含まれるフィラーは、例えば、樹脂性球体に金属がメッキ処理されたものである。また、バインダは、接着剤として機能し、絶縁性を有するものである。バインダとして、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化/熱可塑混合樹脂、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂等を使用することができる。バインダは、製造工程や用途に応じて、上記樹脂のなかから適宜選択可能である。
【0054】
上述した異方導電性接着剤Eでは、バインダが接着剤として機能することによって、被着体同士(アンテナ3とICチップ4)を機械的に接続することができる。また、フィラーを介して、電気的に接続することができる。
【0055】
また、このような異方導電性接着剤Eは、ディスペンサ211を用いて吐出される方法のほか、種々の印刷方式により塗工されてもよい。
【0056】
本実施形態においては、連続的に搬送される被着体に対して施工する観点から、バインダとして紫外線硬化型樹脂を含んだ異方導電性接着剤Eを用いることが好ましい。
【0057】
アンテナ3のICチップ接続部32に吐出される異方導電性接着剤Eの厚さは、粗面部Sの凹凸に浸入することができ、アンテナ3とICチップ4とを電気的及び機械的に接続可能であればよく、100μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0058】
ICチップ実装工程P12は、ICチップ実装ユニット220によって実行される。ICチップ実装ユニット220は、ICチップ実装機221を備える。ICチップ実装機221は、アンテナパターン1のICチップ接続部32を光学的に検知して、連続体Cに形成されたアンテナ3のICチップ接続部32にICチップ4を実装する。
【0059】
硬化工程P13は、硬化ユニット230によって実行される。硬化ユニット230は、紫外線硬化型の異方導電性接着剤Eを硬化させるためのUVランプ231と、熱硬化型の異方導電性接着剤Eを硬化させるための加熱装置232とを備える。
【0060】
紫外線硬化型の異方導電性接着剤Eである場合には、アンテナ3にICチップ4が実装された連続体CがUVランプ231の照射範囲を通過することによって、異方導電性接着剤Eが硬化され、ICチップ4をアンテナ3に接続することができる。
【0061】
また、熱硬化型の異方導電性接着剤Eである場合には、バインダの硬化温度まで加熱可能とされた加熱装置232における加熱部材をICチップ4に当接して加熱することによって、異方導電性接着剤Eが硬化され、ICチップ4をアンテナ3に接続することができる。
【0062】
本実施形態においては、異方導電性接着剤Eの硬化タイプに応じて、UVランプ231又は加熱装置232が切り換え可能とされている。
【0063】
硬化工程P13の後、アンテナ3にICチップ4の実装が完了した連続体Cは、巻取ローラ102によって巻き取られる。
【0064】
<効果>
本実施形態に係るアンテナパターン1の製造方法によれば、基材2に形成されたアンテナ3における少なくとも一部の領域に、周囲よりも表面を粗くする粗面化処理が施される。これにより、得られたアンテナパターン1には、周囲よりも表面が粗い粗面部Sが形成される。したがって、得られたアンテナパターン1は、粗面部Sにより、異方導電性接着剤Eとの接着面積を増加させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係るRFIDインレイの製造方法によれば、アンテナパターン1に形成された粗面部Sに、異方導電性接着剤Eが塗工され、異方導電性接着剤E上にICチップ4が実装される。
【0066】
このため、異方導電性接着剤Eに含まれるバインダが粗面部Sの凹部に入り込むことができ、異方導電性接着剤Eとアンテナ3との密着性が高められる。したがって、ICチップ4とアンテナ3との接着強度が高められる。
【0067】
したがって、本実施形態に係るRFIDインレイの製造方法によれば、アンテナ3とICチップ4との機械的接続の強度が向上されたRFIDインレイ10を製造することができる。
【0068】
さらに、本実施形態に係るRFIDインレイの製造方法において、紫外線硬化型の異方導電性接着剤Eを使用した場合には、熱硬化型の異方導電性接着剤Eに比べて硬化スピードが早いため、製造装置100のように、連続搬送による製造方法に適用された場合には、ライン速度を上げることができ、生産性を向上することができる点において、一層有利である。
【0069】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0070】
本実施形態においては、アンテナ3のループ部31に粗面部Sが形成されている。これに対して、アンテナとしての機能を損なわない範囲において、アンテナ3の全面が粗面部であってもよい。
【0071】
本実施形態においては、アンテナ3がUHF帯インレット用のダイポールアンテナである場合について説明したが、HF帯用のコイルアンテナであってもよい。
【0072】
異方導電性材料Eとしては、異方導電性接着剤のほか異方導電性フィルムを使用することができる。異方導電性フィルムは、上述したフィラー及びバインダが樹脂シートに固定されたものであり、熱圧着により用いられる。
【0073】
本実施形態に係る製造装置100では、粗面化工程P5は、金属箔配置工程P2よりも後段であれば実行可能であり、例えば、金属箔配置工程P2と切込工程P3との間に実行されてもよい。すなわち、レーザ粗面化ユニット160は、金属箔配置ユニット120と切込ユニット130との間に配置されていてもよい。
【0074】
また、粗面化工程P5は、切込工程P3と除去工程P4との間に実行されてもよい。すなわち、レーザ粗面化ユニット160は、切込ユニット130と除去ユニット140との間に配置されていてもよい。
【0075】
本実施形態に係るアンテナパターンの製造方法において、粗面化工程P5では、カレンダ表面に「しぼ加工(エンボス)模様」が形成されたエンボスローラと支持ローラとでワークを挟み込んで加圧する押圧加工等を適用してもよい。
【0076】
本実施形態では、硬化ユニット230がUVランプ231と加熱装置232とを備え、選択的に切り換え可能とされているが、異方導電性材料Eの仕様が熱硬化型であるか又は紫外線硬化型であるか、予め決まっている場合には、それに応じて、UVランプ231と加熱装置232のいずれか1つを備える構成であってもよい。
【0077】
本実施形態に係る製造装置100では、各工程P1~P5及びP11~P13を実行するための各ユニットが一連の製造ラインを構成する場合が説明されているが、粗面化工程P5を実行するレーザ粗面化ユニット160の前、或いはレーザ粗面化ユニット160の後が、異なる製造ラインとして構成されていてもよい。また、レーザ粗面化ユニット160は、独立した一つの製造装置として構成されてもよい。その場合には、各製造ライン毎に、基材2の連続体Cを巻き取る巻取ローラ102が配置される。
【0078】
本実施形態に係るRFIDインレイの製造方法では、さらに、硬化工程P13の後、連続体Cから個々のRFIDインレイを切断する工程を備えていてもよい。
【実施例0079】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0080】
[ICチップの接着強度の評価]
実施例及び比較例の供試体としてのRFIDインレイを用意し、アンテナに対するICチップの接着強度を、DieShear試験により評価した。
【0081】
DieShear試験は、以下の通りである。後述のように作製したRFIDインレイの、ICチップの側面から、規定の治具を押し当てて、基材平面に沿う方向に負荷をかけ、ICチップがアンテナから剥離したときの印加荷重を測定した。
【0082】
以下の要領にて、
図1に示すアンテナ3の形状有するアンテナパターン1を備えたRFIDインレイ10の供試体を作製した。
【0083】
<実施例1>
・基材:紙(厚さ80μm)
・アンテナ:アルミニウム箔(厚さ20μm)
・粗面部形成方法:レーザ照射(レーザ出力25~27kW、バルス周波数140kHz)による
・粗面部の形状:複数の窪みが連続してライン状に形成された溝状
ライン幅:30μm~40μm、ライン深さ:1μm~2μm
ライン間隔:50μm~60μm
・異方導電性材料:紫外線硬化型異方導電性接着剤
・ICチップタイプ:IMPINJ社製 MONZA R6
・異方導電性材料の硬化条件:温度(室温25℃)、UV照射(3000mJ/cm2~5000mJ/cm2)、照射時間(3秒)、加圧(圧力1.0N)
【0084】
<実施例2>
・基材:紙(厚さ80μm)
・アンテナ:アルミニウム箔(厚さ20μm)
・粗面部形成方法:レーザ照射(レーザ出力25~27kW、バルス周波数140kHz)による
・粗面部の形状:複数の窪みが連続してライン状に形成された溝状
ライン幅:30μm~40μm、ライン深さ:1μm~2μm
ライン間隔:50μm~60μm
・異方導電性材料:熱硬化型異方導電性接着剤
・ICチップタイプ:IMPINJ社製 MONZA R6
・異方導電性材料の硬化条件:温度(180℃)、加熱時間(8~9秒)、加圧(圧力1.0N)
【0085】
<比較例1>
比較例1の供試体は、粗面部が形成されていないアンテナを使用した以外は、実施例1と同条件にて作製された。
【0086】
<比較例2>
比較例2の供試体は、粗面部が形成されていないアンテナを使用した以外は、実施例2と同条件にて作製された。
【0087】
<評価結果>
アンテナとアンテナに実装されたICチップとの接着強度をDieShear試験によって評価した。ICチップがアンテナから剥離したときの印加荷重は、各供試体について、同条件で5回の試験を行った結果の平均値で表す。結果を第1表に示す。
【0088】
【0089】
第1表に示されるように、比較例1と実施例1とを対比すると、アンテナ表面に粗面部Sを形成したことによって、同じ異方導電性接着剤を使用した場合であっても、アンテナからICチップが剥離したときの印加荷重が6.0Nから8.0Nになった。したがって、アンテナに粗面部を形成し、粗面部に異方導電性接着剤(異方導電性材料)を介してICチップを接続することによって、ICチップとアンテナとの接着強度が高められることが明らかとなった。
【0090】
比較例2と実施例2とを対比しても同様に、同じ異方導電性接着剤を使用した場合には、粗面部が形成されている方が高い印加荷重まで耐えられることが分かった。
本発明のある態様によれば、ICチップが接続されることによりRFIDインレイを構成するアンテナパターンであって、基材と、前記基材に金属箔により形成されたアンテナと、を備え、前記アンテナの少なくとも一部であって、前記ICチップが配置される領域よりも広い所定領域に周囲よりも表面が粗い粗面部を有し、前記粗面部に前記ICチップが接続されるICチップ接続部が形成された、アンテナパターンが提供される。