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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171396
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20231124BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20231124BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20231124BHJP
   H10K 50/00 20230101ALN20231124BHJP
【FI】
H01L29/78 616V
H01L29/78 618B
G02F1/1368
H10K59/12
H10K50/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150029
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2021185452の分割
【原出願日】2016-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2015146351
(32)【優先日】2015-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】中山 智則
(72)【発明者】
【氏名】中島 基
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体を有するトランジスタにおいて、電気特性の変動を抑制すると共に
、信頼性を向上させる。
【解決手段】トランジスタは、第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上の
第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜上の金属酸化膜と、金属酸化膜上のゲート電極と、酸化物
半導体膜、及びゲート電極上の第3の絶縁膜と、を有し、酸化物半導体膜は、ゲート電極
と重なるチャネル領域と、第3の絶縁膜と接するソース領域と、第3の絶縁膜と接するド
レイン領域と、を有し、ソース領域及びドレイン領域は、水素、ホウ素、炭素、窒素、フ
ッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、または希ガスの1以上を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタを有する半導体装置であって、
前記トランジスタは、
第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上の金属酸化膜と、
前記金属酸化膜上のゲート電極と、
前記酸化物半導体膜上及び前記ゲート電極上の第3の絶縁膜と、を有し、
前記酸化物半導体膜は、
前記ゲート電極と重なるチャネル領域と、
前記第3の絶縁膜と接するソース領域と、
前記第3の絶縁膜と接するドレイン領域と、を有し、
前記ソース領域及び前記ドレイン領域の各々は、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、または希ガスの1以上を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有する半導体装置及び該半導体装置を有する表示
装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロ
セス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に
関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装
置、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶
装置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電
気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、
半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(電界効果トラ
ンジスタ(FET)、または薄膜トランジスタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注
目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような
電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコ
ンを代表とする半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注
目されている。
【0005】
例えば、酸化物半導体として、In、Zn、Ga、Snなどを含む非晶質酸化物を用い
てトランジスタを作製する技術が開示されている(特許文献1参照)。また、自己整列ト
ップゲート構造を有する酸化物薄膜のトランジスタを作製する技術が開示されている(特
許文献2参照)。
【0006】
また、チャネルを形成する酸化物半導体層の下地絶縁層に、加熱により酸素を放出する
絶縁層を用い、該酸化物半導体層の酸素欠損を低減する半導体装置が開示されている(特
許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-165529号公報
【特許文献2】特開2009-278115号公報
【特許文献3】特開2012-009836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸化物半導体膜を有するトランジスタとしては、例えば、逆スタガ型(ボトムゲート構
造ともいう)またはスタガ型(トップゲート構造ともいう)等が挙げられる。酸化物半導
体膜を有するトランジスタを表示装置に適用する場合、スタガ型のトランジスタよりも逆
スタガ型のトランジスタの方が、作製工程が比較的簡単であり製造コストを抑えられるた
め、利用される場合が多い。しかしながら、表示装置の画面の大型化、または表示装置の
画質の高精細化(例えば、4K×2K(水平方向画素数=3840画素、垂直方向画素数
=2160画素)または8K×4K(水平方向画素数=7680画素、垂直方向画素数=
4320画素)に代表される高精細な表示装置)が進むと、逆スタガ型のトランジスタで
は、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極との間の寄生容量が生じる場合がある。該
寄生容量の大きさによっては、信号遅延等が大きくなり、表示装置の画質が劣化するとい
う問題があった。そこで、酸化物半導体膜を有するスタガ型のトランジスタについて、安
定した半導体特性及び高い信頼性を有する構造の開発が望まれている。
【0009】
また、酸化物半導体膜をチャネル領域に用いてトランジスタを作製する場合、酸化物半
導体膜のチャネル領域中に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため
問題となる。例えば、酸化物半導体膜のチャネル領域中に酸素欠損が形成されると、該酸
素欠損に起因してキャリアが生成される。酸化物半導体膜のチャネル領域中にキャリアが
生成されると、酸化物半導体膜をチャネル領域に有するトランジスタの電気特性の変動、
代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。また、トランジスタごとに電気特性がばらつ
くという問題がある。したがって、酸化物半導体膜のチャネル領域においては、酸素欠損
が少ないほど好ましい。一方で、酸化物半導体膜をチャネル領域に用いるトランジスタに
おいて、ソース電極及びドレイン電極と接する酸化物半導体膜としては、ソース電極及び
ドレイン電極との接触抵抗を低減するために酸素欠損が多く、抵抗が低い方が好ましい。
【0010】
上記問題に鑑み、本発明の一態様は、酸化物半導体を有するトランジスタにおいて、電
気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることを課題の1つとする。または、
本発明の一態様は、酸化物半導体を有するスタガ型のトランジスタを提供することを課題
の1つとする。または、本発明の一態様は、酸化物半導体を有するオン電流が大きいトラ
ンジスタを提供することを課題の1つとする。または、本発明の一態様は、酸化物半導体
を有するオフ電流が小さいトランジスタを提供することを課題の1つとする。または、本
発明の一態様は、消費電力が低減された半導体装置を提供することを課題の1つとする。
または、本発明の一態様は、新規な半導体装置を提供することを課題の1つとする。
【0011】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細
書等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽
出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジスタは、第1
の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上の第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜上の
金属酸化膜と、金属酸化膜上のゲート電極と、酸化物半導体膜、及びゲート電極上の第3
の絶縁膜と、を有し、酸化物半導体膜は、ゲート電極と重なるチャネル領域と、第3の絶
縁膜と接するソース領域と、第3の絶縁膜と接するドレイン領域と、を有し、ソース領域
及びドレイン領域は、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、
または希ガスの1以上を有する半導体装置である。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジス
タは、導電膜と、導電膜上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、酸化
物半導体膜上の第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜上の金属酸化膜と、金属酸化膜上のゲート
電極と、酸化物半導体膜、及びゲート電極上の第3の絶縁膜と、を有し、酸化物半導体膜
は、ゲート電極と重なるチャネル領域と、第3の絶縁膜と接するソース領域と、第3の絶
縁膜と接するドレイン領域と、を有し、ソース領域及びドレイン領域は、水素、ホウ素、
炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、または希ガスの1以上を有する半導体
装置である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジス
タは、導電膜と、導電膜上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、酸化
物半導体膜上の第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜上の金属酸化膜と、金属酸化膜上のゲート
電極と、酸化物半導体膜、及びゲート電極上の第3の絶縁膜と、を有し、導電膜は、ゲー
ト電極と電気的に接続され、酸化物半導体膜は、ゲート電極と重なるチャネル領域と、第
3の絶縁膜と接するソース領域と、第3の絶縁膜と接するドレイン領域と、を有し、ソー
ス領域及びドレイン領域は、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チ
タン、または希ガスの1以上を有する半導体装置である。
【0015】
上記態様において、トランジスタは、さらに、第3の絶縁膜上の第4の絶縁膜と、第3
の絶縁膜、及び第4の絶縁膜に設けられた開口部を介して、ソース領域に接続するソース
電極と、第3の絶縁膜、及び第4の絶縁膜に設けられた開口部を介して、ドレイン領域に
接続するドレイン電極と、を有すると好ましい。
【0016】
また、上記態様において、金属酸化膜は、In、Zn、Al、Ga、Y、またはSnの
1以上を有すると好ましい。
【0017】
また、上記態様において、希ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセ
ノンの1以上を有すると好ましい。
【0018】
また、上記態様において、第3の絶縁膜は、窒素、水素、フッ素の1以上を有すると好
ましい。
【0019】
また、上記態様において、酸化物半導体膜は、Inと、Znと、M(MはAl、Ga、
Y、またはSn)と、を有すると好ましい。また、上記態様において、酸化物半導体膜は
、結晶部を有し、結晶部は、c軸配向性を有すると好ましい。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、上記各態様にいずれか一つに記載の半導体装置と表示素
子とを有する表示装置である。また、本発明の他の一態様は、該表示装置とタッチセンサ
とを有する表示モジュールである。また、本発明の他の一態様は、上記各態様にいずれか
一つに記載の半導体装置、上記表示装置、または上記表示モジュールと、操作キーまたは
バッテリとを有する電子機器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様により、酸化物半導体を有するトランジスタにおいて、電気特性の変動
を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、本発明の一態様により、
酸化物半導体を有するスタガ型のトランジスタを提供することができる。または、本発明
の一態様により、酸化物半導体を有するオン電流が大きいトランジスタを提供することが
できる。または、本発明の一態様により、酸化物半導体を有するオフ電流が小さいトラン
ジスタを提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された
半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な半導体装置
を提供することができる。
【0022】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】半導体装置を説明する上面図及び断面図。
図2】半導体装置を説明する上面図及び断面図。
図3】半導体装置を説明する断面図。
図4】半導体装置を説明する断面図。
図5】半導体装置を説明する断面図。
図6】半導体装置を説明する断面図。
図7】半導体装置を説明する断面図。
図8】半導体装置を説明する断面図。
図9】半導体装置を説明する断面図。
図10】半導体装置を説明する断面図。
図11】半導体装置を説明する断面図。
図12】半導体装置を説明する断面図。
図13】半導体装置を説明する断面図。
図14】バンド構造を説明する図。
図15】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図16】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図17】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図18】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図19】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図20】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図21】酸素欠損が形成されるモデルを説明する図。
図22】酸素欠損が形成されるモデルを説明する図。
図23】計算に用いたモデルを説明する図。
図24】VFモデルの状態密度の計算結果を説明する図。
図25】計算に用いたモデルを説明する図。
図26】計算に用いたモデルを説明する図。
図27】結晶モデルの状態密度の計算結果を説明する図。
図28】V及びVFの形成エネルギーの計算結果を説明する図。
図29】Fint及びOintの形成エネルギーの計算結果を説明する図。
図30】反応原系及び生成系の形成エネルギーとエネルギー差の計算結果を説明する図。
図31】計算に用いたモデルを説明する図。
図32】InGaZnO結晶モデルの格子間における不純物(FまたはH)の安定配置のモデルを説明する図。
図33】InGaZnO結晶中のFの拡散経路のモデルを説明する図。
図34】Fの拡散経路に対応するエネルギーの変化の計算結果を説明する図。
図35】InGaZnO結晶中のHの拡散経路のモデルを説明する図。
図36】Hの拡散経路に対応するエネルギーの変化の計算結果を説明する図。
図37】CAAC-OSおよび単結晶酸化物半導体のXRDによる構造解析を説明する図、ならびにCAAC-OSの制限視野電子回折パターンを示す図。
図38】CAAC-OSの断面TEM像、ならびに平面TEM像およびその画像解析像。
図39】nc-OSの電子回折パターンを示す図、およびnc-OSの断面TEM像。
図40】a-like OSの断面TEM像。
図41】In-Ga-Zn酸化物の電子照射による結晶部の変化を示す図。
図42】表示装置の一態様を示す上面図。
図43】表示装置の一態様を示す断面図。
図44】表示装置の一態様を示す断面図。
図45】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図46】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図47】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図48】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図49】半導体装置の一態様を示す断面図。
図50】半導体装置の回路構成を説明する図。
図51】画素回路の構成を説明する図、及び画素回路の動作を説明するタイミングチャート。
図52】表示装置を説明するブロック図及び回路図。
図53】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
図54】本発明の一態様を説明するためのグラフおよび回路図。
図55】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
図56】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
図57】入出力装置の一例を示す断面図。
図58】表示モジュールを説明する図。
図59】電子機器を説明する図。
図60】表示装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの
異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形
態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明
は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0025】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている
場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を
模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0026】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0027】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位
置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関
係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明し
た語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0028】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含
む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイ
ン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間
にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すこ
とができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として
流れる領域をいう。
【0029】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路
動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明
細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとす
る。
【0030】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジス
タなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有
する素子などが含まれる。
【0031】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角
度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。ま
た、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態を
いう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0032】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ
替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変
更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」
という用語に変更することが可能な場合がある。
【0033】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ
状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態と
は、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧V
gsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソ
ースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル
型のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vt
hよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0034】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。従って、トランジスタのオ
フ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在
することを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態
、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、または、十分に低減されたオフ電流が得られ
るVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0035】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイ
ン電流が1×10-9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10-1
Aであり、Vgsが-0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-19Aであり、Vg
sが-0.8Vにおけるドレイン電流が1×10-22Aであるようなnチャネル型トラ
ンジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが-0.5Vにおいて
、または、Vgsが-0.5V乃至-0.8Vの範囲において、1×10-19A以下で
あるから、当該トランジスタのオフ電流は1×10-19A以下である、と言う場合があ
る。当該トランジスタのドレイン電流が1×10-22A以下となるVgsが存在するた
め、当該トランジスタのオフ電流は1×10-22A以下である、と言う場合がある。
【0036】
また、本明細書等では、チャネル幅Wを有するトランジスタのオフ電流を、チャネル幅
Wあたりを流れる電流値で表す場合がある。また、所定のチャネル幅(例えば1μm)あ
たりを流れる電流値で表す場合がある。後者の場合、オフ電流の単位は、電流/長さの次
元を持つ単位(例えば、A/μm)で表される場合がある。
【0037】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流
は、特に記載がない場合、室温、60℃、85℃、95℃、または125℃におけるオフ
電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保
証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例
えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トラ
ンジスタのオフ電流がI以下である、とは、室温、60℃、85℃、95℃、125℃、
当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、または、当該トラ
ンジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか
一の温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在すること
を指す場合がある。
【0038】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある
。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、
1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、また
は20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導
体装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置
等において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ
電流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、
2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含ま
れる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半
導体装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となる
Vgsの値が存在することを指す場合がある。
【0039】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電
流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0040】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。ま
た、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに
、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0041】
また、本明細書等において、半導体の不純物とは、半導体を構成する主成分以外をいう
。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより
、半導体にDOS(Density of State)が形成されることや、キャリア
移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化
物半導体を有する場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素
、第2族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、
水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素
などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を形
成する場合がある。また、半導体がシリコンを有する場合、半導体の特性を変化させる不
純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第1
5族元素などがある。
【0042】
(実施の形態1)
本実施の形態では、トランジスタを有する半導体装置、及び当該半導体装置の作製方法
の一例について、図1乃至図20を用いて説明する。
【0043】
<1-1.半導体装置の構成例1>
図1(A)(B)(C)に、トランジスタを有する半導体装置の一例を示す。なお、図
1(A)(B)(C)に示すトランジスタは、スタガ型(トップゲート構造)である。
【0044】
図1(A)は、トランジスタ100の上面図であり、図1(B)は図1(A)の一点鎖
線X1-X2間の断面図であり、図1(C)は図1(A)の一点鎖線Y1-Y2間の断面
図である。なお、図1(A)では、明瞭化のため、絶縁膜110などの構成要素を省略し
て図示している。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても図1
A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。また、一点鎖線X1-X
2方向をチャネル長(L)方向、一点鎖線Y1-Y2方向をチャネル幅(W)方向と呼称
する場合がある。
【0045】
図1(A)(B)(C)に示すトランジスタ100は、基板102上の絶縁膜104と
、絶縁膜104上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108上の絶縁膜110と
、絶縁膜110上の金属酸化膜112と、金属酸化膜112上の導電膜114と、絶縁膜
104、酸化物半導体膜108、及び導電膜114上の絶縁膜116と、を有する。なお
、酸化物半導体膜108は、導電膜114と重なるチャネル領域108iと、絶縁膜11
6と接するソース領域108sと、絶縁膜116と接するドレイン領域108dと、を有
する。
【0046】
なお、絶縁膜116は、窒素、水素、フッ素の1以上を有する。絶縁膜116と、ソー
ス領域108s及びドレイン領域108dと、が接することで、絶縁膜116中の窒素、
水素、またはフッ素の1以上がソース領域108s及びドレイン領域108d中に添加さ
れる。ソース領域108s及びドレイン領域108dは、上述の元素が添加されることで
、キャリア密度が高くなる。特に、ソース領域108s及びドレイン領域108dは、フ
ッ素を有すると好ましい。ソース領域108s及びドレイン領域108dがフッ素を有す
ると、キャリア密度を安定して高めることができる。なお、酸化物半導体がフッ素を有す
る構成については、実施の形態2にて詳細に説明する。
【0047】
また、トランジスタ100は、絶縁膜116上の絶縁膜118と、絶縁膜116、11
8に設けられた開口部141aを介して、ソース領域108sに電気的に接続される導電
膜120aと、絶縁膜116、118に設けられた開口部141bを介して、ドレイン領
域108dに電気的に接続される導電膜120bと、を有していてもよい。
【0048】
なお、本明細書等において、絶縁膜104を第1の絶縁膜と、絶縁膜110を第2の絶
縁膜と、絶縁膜116を第3の絶縁膜と、絶縁膜118を第4の絶縁膜と、それぞれ呼称
する場合がある。また、導電膜114は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜120
aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜120bは、ドレイン電極としての機能を
有する。
【0049】
また、金属酸化膜112は、絶縁膜110に酸素を供給する機能を有する。金属酸化膜
112が、絶縁膜110に酸素を供給する機能を有することで、絶縁膜110中に過剰酸
素領域を形成することが可能となる。絶縁膜110が過剰酸素領域を有することで、酸化
物半導体膜108が有するチャネル領域108i中に過剰酸素を供給することができる。
よって、チャネル領域108iに形成されうる酸素欠損を過剰酸素により補填することが
できるため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0050】
なお、酸化物半導体膜108中に過剰酸素を供給させるためには、酸化物半導体膜10
8の下方に形成される絶縁膜104に過剰酸素を供給してもよい。ただし、この場合、絶
縁膜104中に含まれる過剰酸素は、酸化物半導体膜108が有するソース領域108s
、及びドレイン領域108dにも供給されうる。ソース領域108s、及びドレイン領域
108d中に過剰酸素が供給されると、ソース領域108s、及びドレイン領域108d
の抵抗が高くなる場合がある。
【0051】
一方で、酸化物半導体膜108の上方に形成される絶縁膜110に過剰酸素を有する構
成とすることで、チャネル領域108iにのみ選択的に過剰酸素を供給させることが可能
となる。あるいは、チャネル領域108i、ソース領域108s、及びドレイン領域10
8dに過剰酸素を供給させたのち、ソース領域108s及びドレイン領域108dのキャ
リア密度を選択的に高めればよい。
【0052】
なお、金属酸化膜112は、絶縁膜110に酸素を供給する機能を有していればよく、
絶縁体、半導体、または導電体のいずれの形態でもよい。例えば、金属酸化膜112が絶
縁体または半導体の場合、金属酸化膜112は、ゲート絶縁膜として機能し、絶縁膜11
0と金属酸化膜112とでトランジスタ100のゲート絶縁膜を構成することができる。
また、金属酸化膜112が半導体または導電体の場合、金属酸化膜112は、ゲート電極
として機能し、導電膜114と金属酸化膜112とでトランジスタ100のゲート電極を
構成することができる。
【0053】
なお、金属酸化膜112は、In、Zn、Al、Ga、Y、またはSnの1以上を有す
る。例えば、金属酸化膜112を絶縁体または半導体として用いる場合、金属酸化膜11
2としては、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、または酸化イットリウムを用いればよい
。また、金属酸化膜112を半導体または導電体として用いる場合、金属酸化膜112と
しては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、またはIn-Ga-Zn酸化物を用いれ
ばよい。
【0054】
なお、金属酸化膜112として、In-Ga-Zn酸化物に代表される酸化物半導体を
用いる場合、金属酸化膜112は、絶縁膜110に酸素を供給したのち、導電膜114と
接することでキャリア密度が高くなる、または絶縁膜116から窒素、水素、またはフッ
素が供給されることで、キャリア密度が高くなる。別言すると、酸化物半導体は、酸化物
導電体(OC:Oxide Conductor)として機能する。したがって、金属酸
化膜112は、ゲート電極の一部として用いることができる。
【0055】
また、酸化物半導体膜108が有するソース領域108s及びドレイン領域108dは
、それぞれ、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素を有すると好まし
い。当該酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素としては、代表的には
水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、希ガス等が挙げられる
。また、希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセ
ノン等がある。上記酸素欠損を形成する元素が、絶縁膜116中に含まれる場合、絶縁膜
116の構成元素がソース領域108s、及びドレイン領域108dに拡散する。または
上記酸素欠損を形成する元素は、不純物添加処理によりソース領域108s、及びドレイ
ン領域108d中に添加される。
【0056】
不純物元素が酸化物半導体膜に添加されると、酸化物半導体膜中の金属元素と酸素の結
合が切断され、酸素欠損が形成される。または、不純物元素が酸化物半導体膜に添加され
ると、酸化物半導体膜中の金属元素と結合していた酸素が不純物元素と結合し、金属元素
から酸素が脱離され、酸素欠損が形成される。これらの結果、酸化物半導体膜においてキ
ャリア密度が増加し、導電性が高くなる。
【0057】
このように、本発明の一態様の半導体装置においては、酸化物半導体膜108に接する
絶縁膜110に過剰酸素を供給することで、酸化物半導体膜108が有するチャネル領域
108i中に選択的に過剰酸素を供給することができる。また、絶縁膜116が水素、窒
素、またはフッ素の1以上を有することで、絶縁膜116と接するソース領域108s、
及びドレイン領域108dのキャリア密度を選択的に高めることが可能となる。したがっ
て、電気特性の優れた半導体装置を提供することができる。
【0058】
次に、図1(A)(B)(C)に示す半導体装置の構成要素の詳細について説明する。
【0059】
[基板]
基板102としては、様々な基板を用いることができ、特定のものに限定されることは
ない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板またはシリコン基板)、SO
I基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板
、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイル
を有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、または基材フ
ィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホ
ウケイ酸ガラス、またはソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィル
ム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレン
テレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフ
ォン(PES)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の
合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ
化ビニル、ポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド
、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、または紙類などがある。特に、半導体基板、
単結晶基板、またはSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性
、サイズ、または形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトラン
ジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回
路の低消費電力化、または回路の高集積化を図ることができる。
【0060】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタを形
成してもよい。または、基板102とトランジスタの間に剥離層を設けてもよい。剥離層
は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分離し、他の
基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタを耐熱性の劣る基板や可
撓性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シ
リコン膜との無機膜の積層構造の構成、または基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成
された構成等を用いることができる。
【0061】
トランジスタが転載される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成すること
が可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィ
ルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン
、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、
再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、またはゴム基板などがある。これらの基板
を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの
形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、または薄型化を図ることができる
【0062】
[第1の絶縁膜]
絶縁膜104としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(
PLD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。また、絶縁膜104
としては、例えば、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層または積層して形成すること
ができる。なお、酸化物半導体膜108との界面特性を向上させるため、絶縁膜104に
おいて少なくとも酸化物半導体膜108と接する領域は酸化物絶縁膜で形成することが好
ましい。また、絶縁膜104として加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いること
で、加熱処理により絶縁膜104に含まれる酸素を、酸化物半導体膜108に移動させる
ことが可能である。
【0063】
絶縁膜104の厚さは、50nm以上、または100nm以上3000nm以下、また
は200nm以上1000nm以下とすることができる。絶縁膜104を厚くすることで
、絶縁膜104の酸素放出量を増加させることができると共に、絶縁膜104と酸化物半
導体膜108との界面における界面準位、並びに酸化物半導体膜108のチャネル領域1
08iに含まれる酸素欠損を低減することが可能である。
【0064】
絶縁膜104として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn酸化物
などを用いればよく、単層または積層で設けることができる。本実施の形態では、絶縁膜
104として、窒化シリコン膜と、酸化窒化シリコン膜との積層構造を用いる。このよう
に、絶縁膜104を積層構造として、下層側に窒化シリコン膜を用い、上層側に酸化窒化
シリコン膜を用いることで、酸化物半導体膜108中に効率よく酸素を導入することがで
きる。
【0065】
[酸化物半導体膜]
酸化物半導体膜108は、In-M-Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、またはSn)
等の金属酸化物で形成される。また、酸化物半導体膜108として、In-Ga酸化物、
In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0066】
なお、酸化物半導体膜108がIn-M-Zn酸化物の場合、InとMの原子数比率は
、In及びMの和を100atomic%としたときInが25atomic%より高く
、Mが75atomic%未満、またはInが34atomic%より高く、Mが66a
tomic%未満とする。
【0067】
また、酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2eV以上、または2.5eV
以上、または3eV以上であると好ましい。
【0068】
酸化物半導体膜108の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上1
00nm以下、さらに好ましくは3nm以上60nm以下である。
【0069】
酸化物半導体膜108がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜す
るために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧M
を満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比と
して、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn
=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、I
n:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1
:7等が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体膜108の原子数比はそれぞれ、上記
のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%程度
変動することがある。例えば、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga
:Zn=4:2:4.1を用いる場合、成膜される酸化物半導体膜の原子数比は、In:
Ga:Zn=4:2:3近傍となる場合がある。また、スパッタリングターゲットとして
、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:7を用いる場合、成膜される酸化物半導体膜の
原子数比は、In:Ga:Zn=5:1:6近傍となる場合がある。
【0070】
また、酸化物半導体膜108において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含
まれると、酸素欠損が増加し、n型となる場合がある。このため、酸化物半導体膜108
、特にチャネル領域108iにおいて、シリコンあるいは炭素の濃度を、2×1018
toms/cm以下、または2×1017atoms/cm以下とすることができる
。この結果、トランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特
性ともいう。)を有する。なお、上述のシリコンまたは炭素の濃度としては、例えば、二
次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectr
ometry)により測定することができる。
【0071】
また、チャネル領域108iにおいて、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ
金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、または2
×1016atoms/cm以下とすることができる。アルカリ金属及びアルカリ土類
金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ
電流が増大してしまうことがある。このため、チャネル領域108iのアルカリ金属また
はアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。この結果、トランジスタは、しき
い値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
【0072】
また、チャネル領域108iに窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キ
ャリア密度が増加し、n型となる場合がある。この結果、窒素が含まれている酸化物半導
体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、チャネル領域1
08iにおいて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、二次イオン
質量分析法により得られる窒素濃度を、5×1018atoms/cm以下とすればよ
い。
【0073】
また、チャネル領域108iにおいて、不純物元素を低減することで、酸化物半導体膜
のキャリア密度を低減することができる。このため、チャネル領域108iにおいては、
キャリア密度を1×1017/cm以下、または1×1015/cm以下、または1
×1013/cm以下、または1×1011/cm以下とすることができる。
【0074】
チャネル領域108iとして、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜
を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真
性または実質的に高純度真性と呼ぶ。あるいは、真性、または実質的に真性と呼ぶ。高純
度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、
キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、当該酸化物半導体膜にチャネ
ル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリー
オフ特性ともいう。)になりやすい。また、高純度真性または実質的に高純度真性である
酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく
小さい特性を得ることができる。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成され
るトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合があ
る。
【0075】
一方で、ソース領域108s、及びドレイン領域108dは、絶縁膜116と接する。
ソース領域108s、及びドレイン領域108dが絶縁膜116と接することで、絶縁膜
116からソース領域108s、及びドレイン領域108dに水素、窒素、フッ素の1以
上が添加されるため、キャリア密度が高くなる。
【0076】
また、酸化物半導体膜108は、非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後
述するCAAC-OS(C Axis Aligned Crystalline Ox
ide Semiconductor)、多結晶構造、後述する微結晶構造、または非晶
質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC
-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0077】
なお、酸化物半導体膜108が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の
領域、CAAC-OSの領域、及び単結晶構造の領域の二種以上を有する単層膜、あるい
はこの膜が積層された構造であってもよい。
【0078】
なお、酸化物半導体膜108において、チャネル領域108iと、ソース領域108s
及びドレイン領域108dとの結晶性が異なる場合がある。具体的には、酸化物半導体膜
108において、チャネル領域108iよりもソース領域108s及びドレイン領域10
8dの方が、結晶性が低い場合がある。これは、ソース領域108s及びドレイン領域1
08dに不純物元素が添加された際に、ソース領域108s及びドレイン領域108dに
ダメージが入ってしまい、結晶性が低下するためである。
【0079】
[第2の絶縁膜]
絶縁膜110は、トランジスタ100のゲート絶縁膜として機能する。また、絶縁膜1
10は、酸化物半導体膜108、特にチャネル領域108iに酸素を供給する機能を有す
る。例えば、絶縁膜110としては、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層または積層
して形成することができる。なお、酸化物半導体膜108との界面特性を向上させるため
、絶縁膜110において、酸化物半導体膜108と接する領域は、少なくとも酸化物絶縁
膜を用いて形成することが好ましい。絶縁膜110として、例えば酸化シリコン、酸化窒
化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いればよい。
【0080】
また、絶縁膜110の厚さは、5nm以上400nm以下、または5nm以上300n
m以下、または10nm以上250nm以下とすることができる。
【0081】
また、絶縁膜110は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴法
(ESR:Electron Spin Resonance)で観察されるシグナルが
少ない方が好ましい。例えば、上述のシグナルとしては、g値が2.001に観察される
E’センターに起因するシグナルが挙げられる。なお、E’センターは、シリコンのダン
グリングボンドに起因する。絶縁膜110としては、E’センター起因のシグナルのスピ
ン密度が、3×1017spins/cm以下、好ましくは5×1016spins/
cm以下である酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜を用いればよい。
【0082】
また、絶縁膜110には、上述のシグナル以外に二酸化窒素(NO)に起因するシグ
ナルが観察される場合がある。当該シグナルは、Nの核スピンにより3つのシグナルに分
裂しており、それぞれのg値が2.037以上2.039以下(第1のシグナルとする)
、g値が2.001以上2.003以下(第2のシグナルとする)、及びg値が1.96
4以上1.966以下(第3のシグナルとする)に観察される。
【0083】
例えば、絶縁膜110として、二酸化窒素(NO)に起因するシグナルのスピン密度
が、1×1017spins/cm以上1×1018spins/cm未満である絶
縁膜を用いると好適である。
【0084】
なお、二酸化窒素(NO)などの窒素酸化物(NO、xは0を超えて2以下、好ま
しくは1以上2以下、代表的にはNOまたはNO)は、絶縁膜110中に準位を形成す
る。当該準位は、酸化物半導体膜108のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、
窒素酸化物が、絶縁膜110及び酸化物半導体膜108の界面に拡散すると、当該準位が
絶縁膜110側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子
が、絶縁膜110及び酸化物半導体膜108界面近傍に留まるため、トランジスタのしき
い値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
【0085】
したがって、絶縁膜110としては、窒素酸化物の含有量が少ない膜を用いる、別言す
ると絶縁膜110として窒素酸化物の放出量が少ない膜を用いると、トランジスタのしき
い値電圧のシフトを低減することができる。
【0086】
窒素酸化物の放出量が少ない絶縁膜としては、例えば、酸化窒化シリコン膜を用いるこ
とができる。当該酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal
Desorption Spectroscopy)において、窒素酸化物の放出量よ
りアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×1018
/cm以上5×1019個/cm以下である。なお、上記のアンモニアの放出量は、
TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以
下の範囲での総量である。
【0087】
窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応するため、アンモニアの放
出量が多い絶縁膜を用いることで窒素酸化物が低減される。
【0088】
なお、絶縁膜110をSIMSで測定した場合、膜中の窒素濃度が6×1020ato
ms/cm以下であると好ましい。
【0089】
また、絶縁膜110として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添加され
たハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムアルミネ
ート(HfAl)、酸化ハフニウムなどのhigh-k材料を用いることでト
ランジスタのゲートリークを低減できる。
【0090】
[金属酸化膜]
金属酸化膜112は、In、Zn、Al、Ga、Y、またはSnの1以上を有する。金
属酸化膜112に用いることのできる材料の具体例としては、酸化インジウム、酸化亜鉛
、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化スズ、In-Zn酸化物、
In-Ga酸化物、In-Sn酸化物、またはIn-Ga-Zn酸化物等が挙げられる。
また、金属酸化膜112として、絶縁体または半導体を用いる場合においては、酸化アル
ミニウムが好ましい。また、金属酸化膜112として半導体または導電体を用いる場合に
おいては、In-Ga-Zn酸化物を用いると好ましい。
【0091】
また、金属酸化膜112の形成方法としては、スパッタリング法またはALD(原子層
成膜)法を用いると好ましい。また、金属酸化膜112の形成後に、酸素添加処理を行っ
てもよい。当該酸素添加処理によって、金属酸化膜112及び、絶縁膜110に過剰酸素
領域を設けることができる。なお、酸素添加処理としては、イオン注入法、イオンドーピ
ング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
【0092】
[第3の絶縁膜]
絶縁膜116は、窒素、水素、フッ素の1以上を有する。絶縁膜116としては、例え
ば、窒化物絶縁膜が挙げられる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリ
コン、窒化フッ化シリコン、フッ化窒化シリコン等を用いて形成することができる。絶縁
膜116に含まれる水素濃度は、1×1022atoms/cm以上であると好ましい
。また、絶縁膜116は、酸化物半導体膜108のソース領域108s、及びドレイン領
域108dと接する。したがって、絶縁膜116と接するソース領域108s、及びドレ
イン領域108d中の不純物(窒素、水素、またはフッ素)濃度が高くなり、ソース領域
108s、及びドレイン領域108dのキャリア密度を高めることができる。
【0093】
本実施の形態においては、絶縁膜116として、四フッ化珪素(SiF)と、窒素(
)と、を原料ガスとして用い、フッ化窒化シリコン膜を形成する。なお、四フッ化珪
素(SiF)と、一酸化二窒素(NO)と、を原料ガスとして用い、酸化フッ化シリ
コン膜を形成してもよい。
【0094】
[第4の絶縁膜]
絶縁膜118としては、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層または積層して形成す
ることができる。絶縁膜118として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸
化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはG
a-Zn酸化物などを用いればよく、単層または積層で設けることができる。
【0095】
また、絶縁膜118としては、外部からの水素、水等のバリア膜として機能する膜であ
ることが好ましい。
【0096】
絶縁膜118の厚さは、30nm以上500nm以下、または100nm以上400n
m以下とすることができる。
【0097】
[導電膜]
導電膜114、120a、120bとしては、スパッタリング法、真空蒸着法、パルス
レーザー堆積(PLD)法、熱CVD法等を用いて形成することができる。また、導電膜
114、120a、120bとしては、例えば、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、
チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、タングステンから選ばれた金属元素、ま
たは上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用
いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から
選択された金属元素を用いてもよい。また、導電膜114、120a、120bは、単層
構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の
単層構造、マンガンを含む銅膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層
構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜
を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積
層する二層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を
積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその
上にチタン膜を形成する三層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層し、さらにその上
にマンガンを含む銅膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タ
ンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一ま
たは複数を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0098】
また、導電膜114、120a、120bは、インジウム錫酸化物(Indium T
in Oxide:ITO)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングス
テンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含
むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化物(I
n-Sn-Si酸化物:ITSOともいう)等の透光性を有する導電性材料を適用するこ
ともできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とするこ
ともできる。
【0099】
また、導電膜114として、先に記載の酸化物導電体(OC)を用いてもよい。例えば
、導電膜114としては、酸化物導電体(OC)の単層構造、金属膜の単層構造、または
酸化物導電体(OC)と、金属膜との積層構造等が挙げられる。
【0100】
なお、導電膜114として、遮光性を有する金属膜の単層構造、または酸化物導電体(
OC)と遮光性を有する金属膜との積層構造を用いる場合、導電膜114の下方に形成さ
れるチャネル領域108iを遮光することができるため、好適である。
【0101】
導電膜114、120a、120bの厚さとしては、30nm以上500nm以下、ま
たは100nm以上400nm以下とすることができる。
【0102】
<1-2.半導体装置の構成例2>
次に、図1(A)(B)(C)に示す半導体装置と異なる構成について、図2(A)(
B)(C)を用いて説明する。
【0103】
図2(A)は、トランジスタ100Aの上面図であり、図2(B)は図2(A)の一点
鎖線X1-X2間の断面図であり、図2(C)は図2(A)の一点鎖線Y1-Y2間の断
面図である。
【0104】
図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aは、基板102上に形成された導
電膜106と、導電膜106上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の酸化物半導体膜10
8と、酸化物半導体膜108上の絶縁膜110と、絶縁膜110上の金属酸化膜112と
、金属酸化膜112上の導電膜114と、絶縁膜104、酸化物半導体膜108、及び導
電膜114上の絶縁膜116と、を有する。また、酸化物半導体膜108は、導電膜11
4と重なるチャネル領域108iと、絶縁膜116と接するソース領域108sと、絶縁
膜116と接するドレイン領域108dと、を有する。
【0105】
トランジスタ100Aは、先に示すトランジスタ100の構成に加え、導電膜106と
、開口部143と、を有する。
【0106】
なお、開口部143は、絶縁膜104、110、及び金属酸化膜112に設けられる。
また、導電膜106は、開口部143を介して、導電膜114と、電気的に接続される。
よって、導電膜106と導電膜114には、同じ電位が与えられる。なお、開口部143
を設けずに、導電膜106と、導電膜114と、に異なる電位を与えてもよい。または、
開口部143を設けずに、導電膜106を遮光膜として用いてもよい。例えば、導電膜1
06を遮光性の材料により形成することで、チャネル領域108iに照射される下方から
の光を抑制することができる。なお、導電膜106としては、導電膜114に用いること
のできる材料と同様の材料を用いることができる。
【0107】
なお、トランジスタ100Aの構成とする場合、導電膜106は、第1のゲート電極(
ボトムゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電膜114は、第2のゲート電極(
トップゲート電極ともいう)としての機能を有する。また、絶縁膜104は、第1のゲー
ト絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜110は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有す
る。
【0108】
このように、図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aは、先に説明したト
ランジスタ100と異なり、酸化物半導体膜108の上下にゲート電極として機能する導
電膜を有する構造である。トランジスタ100Aに示すように、本発明の一態様の半導体
装置には、複数のゲート電極を設けてもよい。
【0109】
また、図2(C)に示すように、酸化物半導体膜108は、第1のゲート電極として機
能する導電膜106と、第2のゲート電極として機能する導電膜114のそれぞれと対向
するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。
【0110】
また、導電膜114のチャネル幅方向の長さは、酸化物半導体膜108のチャネル幅方
向の長さよりも長く、酸化物半導体膜108のチャネル幅方向全体は、絶縁膜110、及
び金属酸化膜112を介して導電膜114に覆われている。また、導電膜114と導電膜
106とは、絶縁膜104、絶縁膜110、及び金属酸化膜112に設けられる開口部1
43において接続されるため、酸化物半導体膜108のチャネル幅方向の側面の一方は、
絶縁膜110を介して導電膜114と対向している。
【0111】
別言すると、トランジスタ100Aのチャネル幅方向において、導電膜106及び導電
膜114は、絶縁膜104、絶縁膜110、及び金属酸化膜112に設けられる開口部1
43において接続すると共に、絶縁膜104、絶縁膜110、及び金属酸化膜112を介
して酸化物半導体膜108を取り囲む構成である。
【0112】
このような構成を有することで、トランジスタ100Aに含まれる酸化物半導体膜10
8を、第1のゲート電極として機能する導電膜106及び第2のゲート電極として機能す
る導電膜114の電界によって電気的に取り囲むことができる。トランジスタ100Aの
ように、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成さ
れる酸化物半導体膜を電気的に取り囲むトランジスタのデバイス構造をSurround
ed channel(S-channel)構造と呼ぶことができる。
【0113】
トランジスタ100Aは、S-channel構造を有するため、導電膜106または
導電膜114によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導体膜108
に印加することができるため、トランジスタ100Aの電流駆動能力が向上し、高いオン
電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、ト
ランジスタ100Aを微細化することが可能となる。また、トランジスタ100Aは、酸
化物半導体膜108が導電膜106、及び導電膜114によって取り囲まれた構造を有す
るため、トランジスタ100Aの機械的強度を高めることができる。
【0114】
なお、トランジスタ100Aのチャネル幅方向において、酸化物半導体膜108の開口
部143が形成されていない側に、開口部143と異なる開口部を形成してもよい。
【0115】
また、トランジスタ100Aに示すように、トランジスタが、半導体膜を間に挟んで存
在する一対のゲート電極を有している場合、一方のゲート電極には信号Aが、他方のゲー
ト電極には固定電位Vbが与えられてもよい。また、一方のゲート電極には信号Aが、他
方のゲート電極には信号Bが与えられてもよい。また、一方のゲート電極には固定電位V
aが、他方のゲート電極には固定電位Vbが与えられてもよい。
【0116】
信号Aは、例えば、導通状態または非導通状態を制御するための信号である。信号Aは
、電位V1、または電位V2(V1>V2とする)の2種類の電位をとるデジタル信号で
あってもよい。例えば、電位V1を高電源電位とし、電位V2を低電源電位とすることが
できる。信号Aは、アナログ信号であってもよい。
【0117】
固定電位Vbは、例えば、トランジスタのしきい値電圧VthAを制御するための電位
である。固定電位Vbは、電位V1、または電位V2であってもよい。この場合、固定電
位Vbを生成するための電位発生回路を別途設ける必要がなく好ましい。固定電位Vbは
、電位V1、または電位V2と異なる電位であってもよい。固定電位Vbを低くすること
で、しきい値電圧VthAを高くできる場合がある。その結果、ゲートーソース間電圧V
gsが0Vのときのドレイン電流を低減し、トランジスタを有する回路のリーク電流を低
減できる場合がある。例えば、固定電位Vbを低電源電位よりも低くしてもよい。一方で
、固定電位Vbを高くすることで、しきい値電圧VthAを低くできる場合がある。その
結果、ゲート-ソース間電圧Vgsが高電源電位のときのドレイン電流を向上させ、トラ
ンジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。例えば、固定電位Vbを低電
源電位よりも高くしてもよい。
【0118】
信号Bは、例えば、導通状態または非導通状態を制御するための信号である。信号Bは
、電位V3、または電位V4(V3>V4とする)の2種類の電位をとるデジタル信号で
あってもよい。例えば、電位V3を高電源電位とし、電位V4を低電源電位とすることが
できる。信号Bは、アナログ信号であってもよい。
【0119】
信号Aと信号Bが共にデジタル信号である場合、信号Bは、信号Aと同じデジタル値を
持つ信号であってもよい。この場合、トランジスタのオン電流を向上し、トランジスタを
有する回路の動作速度を向上できる場合がある。このとき、信号Aにおける電位V1及び
電位V2は、信号Bにおける電位V3及び電位V4と、異なっていても良い。例えば、信
号Bが入力されるゲートに対応するゲート絶縁膜が、信号Aが入力されるゲートに対応す
るゲート絶縁膜よりも厚い場合、信号Bの電位振幅(V3-V4)を、信号Aの電位振幅
(V1-V2)より大きくしても良い。そうすることで、トランジスタの導通状態または
非導通状態に対して、信号Aが与える影響と、信号Bが与える影響と、を同程度とするこ
とができる場合がある。
【0120】
信号Aと信号Bが共にデジタル信号である場合、信号Bは、信号Aと異なるデジタル値
を持つ信号であってもよい。この場合、トランジスタの制御を信号Aと信号Bによって別
々に行うことができ、より高い機能を実現できる場合がある。例えば、トランジスタがn
チャネル型である場合、信号Aが電位V1であり、かつ、信号Bが電位V3である場合の
み導通状態となる場合や、信号Aが電位V2であり、かつ、信号Bが電位V4である場合
のみ非導通状態となる場合には、一つのトランジスタでNAND回路やNOR回路等の機
能を実現できる場合がある。また、信号Bは、しきい値電圧VthAを制御するための信
号であってもよい。例えば、信号Bは、トランジスタを有する回路が動作している期間と
、当該回路が動作していない期間と、で電位が異なる信号であっても良い。信号Bは、回
路の動作モードに合わせて電位が異なる信号であってもよい。この場合、信号Bは信号A
ほど頻繁には電位が切り替わらない場合がある。
【0121】
信号Aと信号Bが共にアナログ信号である場合、信号Bは、信号Aと同じ電位のアナロ
グ信号、信号Aの電位を定数倍したアナログ信号、または、信号Aの電位を定数だけ加算
もしくは減算したアナログ信号等であってもよい。この場合、トランジスタのオン電流が
向上し、トランジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。信号Bは、信号
Aと異なるアナログ信号であってもよい。この場合、トランジスタの制御を信号Aと信号
Bによって別々に行うことができ、より高い機能を実現できる場合がある。
【0122】
信号Aがデジタル信号であり、信号Bがアナログ信号であってもよい。または信号Aが
アナログ信号であり、信号Bがデジタル信号であってもよい。
【0123】
トランジスタの両方のゲート電極に固定電位を与える場合、トランジスタを、抵抗素子
と同等の素子として機能させることができる場合がある。例えば、トランジスタがnチャ
ネル型である場合、固定電位Vaまたは固定電位Vbを高く(低く)することで、トラン
ジスタの実効抵抗を低く(高く)することができる場合がある。固定電位Va及び固定電
位Vbを共に高く(低く)することで、一つのゲートしか有さないトランジスタによって
得られる実効抵抗よりも低い(高い)実効抵抗が得られる場合がある。
【0124】
なお、トランジスタ100Aのその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様で
あり、同様の効果を奏する。
【0125】
<1-3.半導体装置の構成例3>
次に、図2(A)(B)(C)に示す半導体装置と異なる構成について、図3乃至図9
を用いて説明する。
【0126】
図3(A)(B)は、トランジスタ100Bの断面図であり、図4(A)(B)は、ト
ランジスタ100Cの断面図であり、図5(A)(B)、図6(A)(B)、及び図7
A)(B)は、トランジスタ100Dの断面図であり、図8(A)(B)は、トランジス
タ100Eの断面図であり、図9(A)(B)は、トランジスタ100Fの断面図である
。なお、トランジスタ100B、トランジスタ100C、トランジスタ100D、トラン
ジスタ100E、及びトランジスタ100Fの上面図としては、図2(A)に示すトラン
ジスタ100Aと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0127】
図3(A)(B)に示すトランジスタ100Bは、先に示すトランジスタ100Aと導
電膜114、金属酸化膜112、及び絶縁膜110の形状が異なる。具体的には、トラン
ジスタ100Aは、導電膜114、金属酸化膜112、及び絶縁膜110がテーパー形状
であったのに対し、トランジスタ100Bは、導電膜114、金属酸化膜112、及び絶
縁膜110が矩形状である。具体的には、トランジスタ100Aは、トランジスタのチャ
ネル長(L)方向の断面において、導電膜114の上端部が絶縁膜110の下端部よりも
内側に形成される。別言すると、絶縁膜110の側端部は、導電膜114の側端部よりも
外側に位置する。一方で、トランジスタ100Bは、トランジスタのチャネル長(L)方
向の断面において、導電膜114の上端部と、絶縁膜110の下端部とが概略同じ位置に
形成される。
【0128】
例えば、導電膜114と、金属酸化膜112と、絶縁膜110と、を同じマスクで加工
し、ドライエッチング法を用いて、一括して加工することでトランジスタ100Bの構造
とすることができる。
【0129】
トランジスタ100Aのような構成とすることで、絶縁膜116の被覆性が向上するた
め好ましい。一方で、トランジスタ100Bのような構成とすることで、ソース領域10
8s及びドレイン領域108dと、導電膜114との端部が概略同じ位置に形成されるた
め好ましい。
【0130】
図4(A)(B)に示すトランジスタ100Cは、先に示すトランジスタ100Aと導
電膜114、金属酸化膜112、及び絶縁膜110の形状が異なる。具体的には、トラン
ジスタ100Cは、導電膜114、金属酸化膜112、及び絶縁膜110が逆テーパー形
状である。別言すると、トランジスタ100Cは、トランジスタのチャネル長(L)方向
の断面において、導電膜114の上端部が絶縁膜110の下端部よりも外側に形成される
【0131】
例えば、導電膜114と、金属酸化膜112と、絶縁膜110と、を同じマスクで加工
し、ウエットエッチング法を用いて、一括して加工することでトランジスタ100Cの構
造とすることができる。
【0132】
また、トランジスタ100Cのような構成とすることで、ゲート電極として機能する導
電膜114よりも内側にソース領域108s及びドレイン領域108dの一部が設けられ
る。なお、導電膜114と、ソース領域108sとが重なる領域、及び導電膜114と、
ドレイン領域108dとが重なる領域は、所謂オーバーラップ領域(Lov領域ともいう
)として機能する。なお、Lov領域とは、ゲート電極として機能する導電膜114と重
なり、且つチャネル領域108iよりも抵抗が低い領域である。Lov領域を有する構造
とすることで、チャネル領域108iと、ソース領域108s及びドレイン領域108d
との間に高抵抗領域が形成されないため、トランジスタのオン電流を高めることが可能と
なる。
【0133】
図5(A)(B)に示すトランジスタ100Dは、先に示すトランジスタ100Aと導
電膜114、金属酸化膜112、及び絶縁膜110の形状が異なる。具体的には、トラン
ジスタ100Dは、トランジスタのチャネル長(L)方向の断面において、導電膜114
の下端部と、金属酸化膜112との上端部の位置が異なる。導電膜114の下端部は、金
属酸化膜112の上端部よりも内側に形成される。
【0134】
例えば、トランジスタ100Dの構造としては、導電膜114と、金属酸化膜112と
、絶縁膜110と、を同じマスクで加工することができる。具体的には、まず、導電膜1
14上にマスクを形成し、当該マスクを用いて導電膜114をウエットエッチング法で加
工する。その後、金属酸化膜112及び絶縁膜110をドライエッチング法で加工するこ
とで、トランジスタ100Dの構造とすることができる。
【0135】
また、トランジスタ100Dの構造とすることで、酸化物半導体膜108中に、領域1
08fが形成される場合がある。領域108fは、チャネル領域108iとソース領域1
08sとの間、及びチャネル領域108iとドレイン領域108dとの間に形成される。
【0136】
領域108fは、高抵抗領域あるいは低抵抗領域のいずれか一方として機能する。高抵
抗領域とは、チャネル領域108iと同等の抵抗を有し、ゲート電極として機能する導電
膜114が重畳しない領域である。領域108fが高抵抗領域の場合、領域108fは、
所謂オフセット領域として機能する。領域108fがオフセット領域として機能する場合
においては、トランジスタ100Dのオン電流の低下を抑制するために、チャネル長(L
)方向において、領域108fを1μm以下とすればよい。
【0137】
また、低抵抗領域とは、チャネル領域108iよりも抵抗が低く、且つソース領域10
8s及びドレイン領域108dよりも抵抗が高い領域である。領域108fが低抵抗領域
の場合、領域108fは、所謂、LDD(Lightly Doped Drain)領
域として機能する。領域108fがLDD領域として機能する場合においては、ドレイン
領域の電界緩和が可能となるため、ドレイン領域の電界に起因したトランジスタのしきい
値電圧の変動を低減することができる。
【0138】
なお、領域108fをLDD領域とする場合には、例えば、絶縁膜116から領域10
8fに窒素、水素、フッ素の1以上を供給する、あるいは、絶縁膜110及び金属酸化膜
112をマスクとして、金属酸化膜112の上方から不純物元素を添加することで、当該
不純物元素が金属酸化膜112及び絶縁膜110を介し、酸化物半導体膜108に添加さ
れることで領域108fが形成される。
【0139】
また、図6(A)(B)に示すトランジスタ100Dは、図5(A)(B)に示すトラ
ンジスタ100Dの変形例である。図6(A)(B)に示すトランジスタ100Dは、ト
ランジスタのチャネル長(L)方向の断面において、導電膜114の下端部と、金属酸化
膜112の下端部と、絶縁膜110の下端部との位置が異なる。導電膜114の下端部は
、金属酸化膜112の上端部よりも内側に形成され、金属酸化膜112の下端部は、絶縁
膜110の上端部よりも内側に形成される。
【0140】
また、図7(A)(B)に示すトランジスタ100Dは、図5(A)(B)に示すトラ
ンジスタ100Dの変形例である。図7(A)(B)に示すトランジスタ100Dは、ト
ランジスタのチャネル長(L)方向の断面において、導電膜114の下端部と、金属酸化
膜112の上端部とが概略同じ位置に形成され、金属酸化膜112の下端部が絶縁膜11
0の上端部よりも内側に形成される。
【0141】
図8(A)(B)に示すトランジスタ100Eは、先に示すトランジスタ100Aと金
属酸化膜112、及び絶縁膜110の形状が異なる。具体的には、トランジスタ100E
は、トランジスタのチャネル長(L)方向の断面において、導電膜114の下端部が、金
属酸化膜112の上端部よりも外側に形成される。
【0142】
例えば、トランジスタ100Eの構造としては、導電膜114と、金属酸化膜112と
、絶縁膜110と、を同じマスクで加工することで形成できる。具体的には、まず、導電
膜114上にマスクを形成し、当該マスクを用いて導電膜114をドライエッチング法で
加工する。その後、エッチャント等を用い、金属酸化膜112及び絶縁膜110の上面の
エッチング、及び側面のエッチング(サイドエッチング)を行うことで、トランジスタ1
00Eの構造とすることができる。
【0143】
また、トランジスタ100Eのような構成とすることで、トランジスタ100Cと同様
に、Lov領域を設けることができる。
【0144】
図9(A)(B)に示すトランジスタ100Fは、先に示すトランジスタ100Aと比
較し、絶縁膜118上に平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜122が設けられている点が
異なる。それ以外の構成については、先に示すトランジスタ100Aと同様の構成であり
、同様の効果を奏する。
【0145】
絶縁膜122は、トランジスタ等に起因する凹凸等を平坦化させる機能を有する。絶縁
膜122としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成される。
該無機材料としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化
シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜等が挙げられる。該有機材料とし
ては、例えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる
【0146】
なお、図9(A)(B)においては、絶縁膜122が有する開口部の形状は、開口部1
41a、141bよりも大きい形状としたが、これに限定されず、例えば、開口部141
a、141bと同じ形状、または開口部141a、141bよりも小さい形状としてもよ
い。
【0147】
また、図9(A)(B)においては、絶縁膜122上に導電膜120a、120bを設
ける構成について例示したがこれに限定されず、例えば、絶縁膜118上に導電膜120
a、120bを設け、導電膜120a、120b上に絶縁膜122を設ける構成としても
よい。
【0148】
<1-4.半導体装置の構成例4>
次に、図2(A)(B)(C)に示す半導体装置と異なる構成について、図10乃至図
13を用いて説明する。
【0149】
図10(A)(B)は、トランジスタ100Gの断面図であり、図11(A)(B)は
、トランジスタ100Hの断面図であり、図12(A)(B)は、トランジスタ100J
の断面図であり、図13(A)(B)は、トランジスタ100Kの断面図である。なお、
トランジスタ100G、トランジスタ100H、トランジスタ100J、及びトランジス
タ100Kの上面図としては、図2(A)に示すトランジスタ100Aと同様であるため
、ここでの説明は省略する。
【0150】
トランジスタ100G、トランジスタ100H、トランジスタ100J、及びトランジ
スタ100Kは、先に示すトランジスタ100Aと酸化物半導体膜108の構造が異なる
。それ以外の構成については、先に示すトランジスタ100Aと同様の構成であり、同様
の効果を奏する。
【0151】
図10(A)(B)に示すトランジスタ100Gが有する酸化物半導体膜108は、絶
縁膜104上の酸化物半導体膜108_1と、酸化物半導体膜108_1上の酸化物半導
体膜108_2と、酸化物半導体膜108_2上の酸化物半導体膜108_3と、を有す
る。また、チャネル領域108i、ソース領域108s、及びドレイン領域108dは、
それぞれ、酸化物半導体膜108_1、酸化物半導体膜108_2、及び酸化物半導体膜
108_3の3層の積層構造である。
【0152】
図11(A)(B)に示すトランジスタ100Hが有する酸化物半導体膜108は、絶
縁膜104上の酸化物半導体膜108_2と、酸化物半導体膜108_2上の酸化物半導
体膜108_3と、を有する。また、チャネル領域108i、ソース領域108s、及び
ドレイン領域108dは、それぞれ、酸化物半導体膜108_2、及び酸化物半導体膜1
08_3の2層の積層構造である。
【0153】
図12(A)(B)に示すトランジスタ100Jが有する酸化物半導体膜108は、絶
縁膜104上の酸化物半導体膜108_1と、酸化物半導体膜108_1上の酸化物半導
体膜108_2と、酸化物半導体膜108_2上の酸化物半導体膜108_3と、を有す
る。また、チャネル領域108iは、酸化物半導体膜108_1、酸化物半導体膜108
_2、及び酸化物半導体膜108_3の3層の積層構造であり、ソース領域108s、及
びドレイン領域108dは、それぞれ、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜
108_2の2層の積層構造である。なお、トランジスタ100Jのチャネル幅(W)方
向の断面において、酸化物半導体膜108_3が、酸化物半導体膜108_1及び酸化物
半導体膜108_2の側面を覆う。
【0154】
図13(A)(B)に示すトランジスタ100Kが有する酸化物半導体膜108は、絶
縁膜104上の酸化物半導体膜108_2と、酸化物半導体膜108_2上の酸化物半導
体膜108_3と、を有する。また、チャネル領域108iは、酸化物半導体膜108_
2、及び酸化物半導体膜108_3の2層の積層構造であり、ソース領域108s、及び
ドレイン領域108dは、それぞれ、酸化物半導体膜108_2の単層構造である。なお
、トランジスタ100Kのチャネル幅(W)方向の断面において、酸化物半導体膜108
_3が、酸化物半導体膜108_2の側面を覆う。
【0155】
チャネル領域108iのチャネル幅(W)方向の側面またはその近傍においては、加工
におけるダメージにより欠陥(例えば、酸素欠損)が形成されやすい、あるいは不純物の
付着により汚染されやすい。そのため、チャネル領域108iが実質的に真性であっても
、電界などのストレスが印加されることによって、チャネル領域108iのチャネル幅(
W)方向の側面またはその近傍が活性化され、低抵抗(n型)領域となりやすい。また、
チャネル領域108iのチャネル幅(W)方向の側面またはその近傍がn型領域の場合、
当該n型領域がキャリアのパスとなるため、寄生チャネルが形成される場合がある。
【0156】
そこで、トランジスタ100J、及びトランジスタ100Kにおいては、チャネル領域
108iを積層構造とし、チャネル領域108iのチャネル幅(W)方向の側面を、積層
構造の一方の層で覆う構成とする。当該構成とすることで、チャネル領域108iの側面
またはその近傍の欠陥を抑制する、あるいはチャネル領域108iの側面またはその近傍
への不純物の付着を低減することが可能となる。
【0157】
<1-5.バンド構造>
ここで、絶縁膜104、酸化物半導体膜108_1、108_2、108_3、及び絶
縁膜110のバンド構造、並びに、絶縁膜104、酸化物半導体膜108_2、108_
3、及び絶縁膜110のバンド構造について、図14を用いて説明する。なお、図14
、チャネル領域108iにおけるバンド構造である。
【0158】
図14(A)は、絶縁膜104、酸化物半導体膜108_1、108_2、108_3
、及び絶縁膜110を有する積層構造の膜厚方向のバンド構造の一例である。また、図1
4(B)は、絶縁膜104、酸化物半導体膜108_2、108_3、及び絶縁膜110
を有する積層構造の膜厚方向のバンド構造の一例である。なお、バンド構造は、理解を容
易にするため絶縁膜104、酸化物半導体膜108_1、108_2、108_3、及び
絶縁膜110の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)を示す。
【0159】
また、図14(A)は、絶縁膜104、110として酸化シリコン膜を用い、酸化物半
導体膜108_1として金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2の金属酸化
物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜108_2とし
て金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=4:2:4.1の金属酸化物ターゲットを用
いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜108_3として金属元素の原子
数比をIn:Ga:Zn=1:3:2の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物
半導体膜を用いる構成のバンド図である。
【0160】
また、図14(B)は、絶縁膜104、110として酸化シリコン膜を用い、酸化物半
導体膜108_2として金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=4:2:4.1の金属
酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜108_3
として金属元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2の金属酸化物ターゲットを用
いて形成される酸化物半導体膜を用いる構成のバンド図である。
【0161】
図14(A)に示すように、酸化物半導体膜108_1、108_2、108_3にお
いて、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。また、図14(B)に示すよ
うに、酸化物半導体膜108_2、108_3において、伝導帯下端のエネルギー準位は
なだらかに変化する。換言すると、連続的に変化または連続接合するともいうことができ
る。このようなバンド構造を有するためには、酸化物半導体膜108_1と酸化物半導体
膜108_2との界面、または酸化物半導体膜108_2と酸化物半導体膜108_3と
の界面において、トラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が
存在しないとする。
【0162】
酸化物半導体膜108_1、108_2、108_3に連続接合を形成するためには、
ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用い
て各膜を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。
【0163】
図14(A)(B)に示す構成とすることで酸化物半導体膜108_2がウェル(井戸
)となり、上記積層構造を用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜
108_2に形成されることがわかる。
【0164】
なお、酸化物半導体膜108_1、108_3を設けることにより、トラップ準位を酸
化物半導体膜108_2より遠ざけることができる。
【0165】
また、トラップ準位がチャネル領域として機能する酸化物半導体膜108_2の伝導帯
下端のエネルギー準位(Ec)より真空準位から遠くなることがあり、トラップ準位に電
子が蓄積しやすくなってしまう。トラップ準位に電子が蓄積されることで、マイナスの固
定電荷となり、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがっ
て、トラップ準位が酸化物半導体膜108_2の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)よ
り真空準位に近くなるような構成にすると好ましい。このようにすることで、トラップ準
位に電子が蓄積しにくくなり、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると
共に、電界効果移動度を高めることができる。
【0166】
また、酸化物半導体膜108_1、108_3は、酸化物半導体膜108_2よりも伝
導帯下端のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体膜108_2の
伝導帯下端のエネルギー準位と、酸化物半導体膜108_1、108_3の伝導帯下端の
エネルギー準位との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、
または1eV以下である。すなわち、酸化物半導体膜108_1、108_3の電子親和
力と、酸化物半導体膜108_2の電子親和力との差が、0.15eV以上、または0.
5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下である。
【0167】
このような構成を有することで、酸化物半導体膜108_2が主な電流経路となる。す
なわち、酸化物半導体膜108_2は、チャネル領域としての機能を有し、酸化物半導体
膜108_1、108_3は、酸化物絶縁膜としての機能を有する。また、酸化物半導体
膜108_1、108_3は、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜108_2を構
成する金属元素の一種以上から構成される酸化物半導体膜を用いると好ましい。このよう
な構成とすることで、酸化物半導体膜108_1と酸化物半導体膜108_2との界面、
または酸化物半導体膜108_2と酸化物半導体膜108_3との界面において、界面散
乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないため、トラ
ンジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0168】
また、酸化物半導体膜108_1、108_3は、チャネル領域の一部として機能する
ことを防止するため、導電率が十分に低い材料を用いるものとする。そのため、酸化物半
導体膜108_1、108_3を、その物性及び/または機能から、それぞれ酸化物絶縁
膜とも呼べる。または、酸化物半導体膜108_1、108_3には、電子親和力(真空
準位と伝導帯下端のエネルギー準位との差)が酸化物半導体膜108_2よりも小さく、
伝導帯下端のエネルギー準位が酸化物半導体膜108_2の伝導帯下端エネルギー準位と
差分(バンドオフセット)を有する材料を用いるものとする。また、ドレイン電圧の大き
さに依存したしきい値電圧の差が生じることを抑制するためには、酸化物半導体膜108
_1、108_3の伝導帯下端のエネルギー準位が、酸化物半導体膜108_2の伝導帯
下端のエネルギー準位よりも真空準位に近い材料を用いると好適である。例えば、酸化物
半導体膜108_2の伝導帯下端のエネルギー準位と、酸化物半導体膜108_1、10
8_3の伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0.2eV以上、好ましくは0.5eV
以上とすることが好ましい。
【0169】
また、酸化物半導体膜108_1、108_3は、膜中にスピネル型の結晶構造が含ま
れないことが好ましい。酸化物半導体膜108_1、108_3の膜中にスピネル型の結
晶構造を含む場合、該スピネル型の結晶構造と他の領域との界面において、導電膜120
a、120bの構成元素が酸化物半導体膜108_2へ拡散してしまう場合がある。なお
、酸化物半導体膜108_1、108_3がCAAC-OSである場合、導電膜120a
、120bの構成元素、例えば、銅元素のブロッキング性が高くなり好ましい。
【0170】
また、本実施の形態においては、酸化物半導体膜108_1、108_3として、金属
元素の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2の金属酸化物ターゲットを用いて形成さ
れる酸化物半導体膜を用いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、酸
化物半導体膜108_1、108_3として、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比
]、In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比]、In:Ga:Zn=1:3:4[
原子数比]、In:Ga:Zn=1:3:6[原子数比]、またはIn:Ga:Zn=1
:10:1[原子数比]の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を用
いてもよい。あるいは、酸化物半導体膜108_1、108_3として、金属元素の原子
数比をGa:Zn=10:1の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜
を用いてもよい。この場合、酸化物半導体膜108_2として金属元素の原子数比をIn
:Ga:Zn=1:1:1の金属酸化物ターゲットを用いて形成される酸化物半導体膜を
用いると、酸化物半導体膜108_2の伝導帯下端のエネルギー準位と、酸化物半導体膜
108_1、108_3の伝導帯下端のエネルギー準位との差を0.6eV以上とするこ
とができるため好適である。
【0171】
なお、酸化物半導体膜108_1、108_3として、In:Ga:Zn=1:1:1
[原子数比]の金属酸化物ターゲットを用いる場合、酸化物半導体膜108_1、108
_3は、In:Ga:Zn=1:β1(0<β1≦2):β2(0<β2≦2)となる場
合がある。また、酸化物半導体膜108_1、108_3として、In:Ga:Zn=1
:3:4[原子数比]の金属酸化物ターゲットを用いる場合、酸化物半導体膜108_1
、108_3は、In:Ga:Zn=1:β3(1≦β3≦5):β4(2≦β4≦6)
となる場合がある。また、酸化物半導体膜108_1、108_3として、In:Ga:
Zn=1:3:6[原子数比]の金属酸化物ターゲットを用いる場合、酸化物半導体膜1
08_1、108_3は、In:Ga:Zn=1:β5(1≦β5≦5):β6(4≦β
6≦8)となる場合がある。
【0172】
<1-6.半導体装置の作製方法1>
次に、図1に示すトランジスタ100の作製方法の一例について、図15乃至図17
用いて説明する。なお、図15乃至図17は、トランジスタ100の作製方法を説明する
チャネル長(L)方向及びチャネル幅(W)方向の断面図である。
【0173】
まず、基板102上に絶縁膜104を形成する。続いて、絶縁膜104上に酸化物半導
体膜を形成する。その後、当該酸化物半導体膜を島状に加工することで、酸化物半導体膜
107を形成する(図15(A)参照)。
【0174】
絶縁膜104としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(
PLD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。本実施の形態におい
ては、絶縁膜104として、PECVD装置を用い、厚さ400nmの窒化シリコン膜と
、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜とを形成する。
【0175】
また、絶縁膜104を形成した後、絶縁膜104に酸素を添加してもよい。絶縁膜10
4に添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン
等がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理
法等がある。また、絶縁膜上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介して絶縁
膜104に酸素を添加してもよい。
【0176】
上述の酸素の脱離を抑制する膜として、インジウム、亜鉛、ガリウム、錫、アルミニウ
ム、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、またはタングス
テンの1以上を有する導電膜あるいは半導体膜を用いて形成することができる。
【0177】
また、プラズマ処理で酸素の添加を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸
素プラズマを発生させることで、絶縁膜104への酸素添加量を増加させることができる
【0178】
酸化物半導体膜107としては、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、
レーザーアブレーション法、熱CVD法等により形成することができる。なお、酸化物半
導体膜107への加工には、酸化物半導体膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し
た後、該マスクを用いて酸化物半導体膜の一部をエッチングすることで形成することがで
きる。また、印刷法を用いて、素子分離された酸化物半導体膜107を直接形成してもよ
い。
【0179】
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源
装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。また
、酸化物半導体膜を形成する場合のスパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン
)、酸素、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの
場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。
【0180】
なお、酸化物半導体膜を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板
温度を150℃以上750℃以下、または150℃以上450℃以下、または200℃以
上350℃以下として、酸化物半導体膜を成膜することで、結晶性を高めることができる
ため好ましい。
【0181】
なお、本実施の形態においては、酸化物半導体膜107として、スパッタリング装置を
用い、スパッタリングターゲットとしてIn-Ga-Zn金属酸化物(In:Ga:Zn
=4:2:4.1[原子数比])を用いて、膜厚35nmの酸化物半導体膜を成膜する。
【0182】
また、酸化物半導体膜107を形成した後、加熱処理を行い、酸化物半導体膜107の
脱水素化または脱水化をしてもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板
歪み点未満、または250℃以上450℃以下、または300℃以上450℃以下である
【0183】
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または
窒素を含む不活性ガス雰囲気で行うことができる。または、不活性ガス雰囲気で加熱した
後、酸素雰囲気で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水な
どが含まれないことが好ましい。処理時間は3分以上24時間以下とすればよい。
【0184】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0185】
酸化物半導体膜を加熱しながら成膜する、または酸化物半導体膜を形成した後、加熱処
理を行うことで、酸化物半導体膜において、SIMSにより得られる水素濃度を5×10
19atoms/cm以下、または1×1019atoms/cm以下、5×10
atoms/cm以下、または1×1018atoms/cm以下、または5×1
17atoms/cm以下、または1×1016atoms/cm以下とすること
ができる。
【0186】
次に、絶縁膜104及び酸化物半導体膜107上に絶縁膜110_0を形成する(図1
5(B)参照)。
【0187】
絶縁膜110_0としては、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を、PECVD
法を用いて形成することができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性
気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例として
は、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素
、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。
【0188】
また、絶縁膜110_0として、堆積性気体の流量に対する酸化性気体の流量を20倍
より大きく100倍未満、または40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100P
a未満、または50Pa以下とするPECVD法を用いることで、欠陥量の少ない酸化窒
化シリコン膜を形成することができる。
【0189】
また、絶縁膜110_0として、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内にお
ける圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa以
下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、絶縁膜110_
0として、緻密である酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができる
【0190】
また、絶縁膜110_0を、マイクロ波を用いたプラズマCVD法を用いて形成しても
よい。マイクロ波とは300MHzから300GHzの周波数域を指す。マイクロ波は、
電子温度が低く、電子エネルギーが小さい。また、供給された電力において、電子の加速
に用いられる割合が少なく、より多くの分子の解離及び電離に用いられることが可能であ
り、密度の高いプラズマ(高密度プラズマ)を励起することができる。このため、被成膜
面及び堆積物へのプラズマダメージが少なく、欠陥の少ない絶縁膜110_0を形成する
ことができる。
【0191】
また、絶縁膜110_0を、有機シランガスを用いたCVD法を用いて形成することが
できる。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC
)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH)、テトラメチルシクロテト
ラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘ
キサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC)、
トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH)などのシリコン含有化合物
を用いることができる。有機シランガスを用いたCVD法を用いることで、被覆性の高い
絶縁膜110_0を形成することができる。
【0192】
本実施の形態では絶縁膜110_0として、PECVD装置を用い、厚さ100nmの
酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0193】
次に、絶縁膜110_0上に金属酸化膜112_0を形成する。なお、金属酸化膜11
2_0の形成時において、金属酸化膜112_0から絶縁膜110_0中に酸素が添加さ
れる(図15(C)参照)。
【0194】
金属酸化膜112_0の形成方法としては、スパッタリング法を用い、形成時に酸素ガ
スを含む雰囲気で形成することが好ましい。形成時に酸素ガスを含む雰囲気で金属酸化膜
112_0を形成することで、絶縁膜110_0中に酸素を好適に添加することができる
。なお、金属酸化膜112_0の形成方法としては、スパッタリング法に限定されず、そ
の他の方法、例えばALD法を用いてもよい。
【0195】
なお、図15(C)において、絶縁膜110_0中に添加される酸素を矢印で模式的に
表している。
【0196】
本実施の形態においては、金属酸化膜112_0として、スパッタリング法を用いて、
膜厚10nmの酸化アルミニウム膜を成膜する。また、金属酸化膜112_0の形成後に
酸素添加処理を行ってもよい。当該酸素添加処理の方法としては、絶縁膜104の形成後
に行うことのできる酸素の添加と同様とすればよい。
【0197】
次に、金属酸化膜112_0上に導電膜114_0を形成する。その後、導電膜114
_0上の所望の位置に、リソグラフィ工程によりマスク140を形成する(図15(D)
参照)。
【0198】
本実施の形態においては、導電膜114_0として、スパッタリング法を用いて、膜厚
100nmのタングステン膜を成膜する。
【0199】
次に、マスク140上からエッチングを行い、導電膜114_0と、金属酸化膜112
_0と、絶縁膜110_0と、を加工する。その後、マスク140を除去することで、島
状の導電膜114と、島状の金属酸化膜112と、島状の絶縁膜110とを形成する(図
16(A)参照)。
【0200】
本実施の形態においては、導電膜114_0、金属酸化膜112_0、及び絶縁膜11
0_0の加工としては、ドライエッチング法を用いて行う。
【0201】
なお、導電膜114_0、金属酸化膜112_0、及び絶縁膜110_0の加工の際に
、導電膜114が重畳しない領域の酸化物半導体膜107の膜厚が薄くなる場合がある。
または、導電膜114_0、金属酸化膜112_0、及び絶縁膜110_0の加工の際に
、酸化物半導体膜107が重畳しない領域の絶縁膜104の膜厚が薄くなる場合がある。
また、導電膜114_0、金属酸化膜112_0、及び絶縁膜110_0の加工の際に、
エッチャントまたはエッチングガス(例えば、塩素など)が酸化物半導体膜107中に添
加される、あるいは導電膜114_0、金属酸化膜112_0、または絶縁膜110_0
の構成元素が酸化物半導体膜107中に添加される場合がある。
【0202】
次に、絶縁膜104、酸化物半導体膜107、及び導電膜114上から、不純物元素1
45の添加を行う(図16(B)参照)。
【0203】
不純物元素145の添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ
処理法等がある。プラズマ処理法の場合、添加する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラ
ズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、不純物元素を添加することができ
る。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置、アッシング装置、
プラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。
【0204】
なお、不純物元素145の原料ガスとして、B、PH、CH、N、NH
、AlH、AlCl、SiH、Si、F、HF、H及び希ガスの一以上
を用いることができる。または、希ガスで希釈されたB、PH、N、NH
AlH、AlCl、F、HF、及びHの一以上を用いることができる。希ガスで
希釈されたB、PH、N、NH、AlH、AlCl、F、HF、及び
の一以上を用いて不純物元素145を酸化物半導体膜107に添加することで、希ガ
ス、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、及び塩素の一以上を酸化物半導体
膜107に添加することができる。
【0205】
または、希ガスを添加した後、B、PH、CH、N、NH、AlH
AlCl、SiH、Si、F、HF、及びHの一以上を酸化物半導体膜1
07に添加してもよい。または、B、PH、CH、N、NH、AlH
AlCl、SiH、Si、F、HF、及びHの一以上を添加した後、希ガ
スを酸化物半導体膜107に添加してもよい。
【0206】
不純物元素145の添加は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件を適宜設定して制御す
ればよい。例えば、イオン注入法でアルゴンの添加を行う場合、加速電圧10kV以上1
00kV以下、ドーズ量は1×1013ions/cm以上1×1016ions/c
以下とすればよく、例えば、1×1014ions/cmとすればよい。また、イ
オン注入法でリンイオンの添加を行う場合、加速電圧30kV、ドーズ量は1×1013
ions/cm以上5×1016ions/cm以下とすればよく、例えば、1×1
15ions/cmとすればよい。
【0207】
また、本実施の形態においては、マスク140を除去してから、不純物元素145を添
加する構成について例示したが、これに限定されず、例えば、マスク140を残したまま
の状態で不純物元素145の添加を行ってもよい。
【0208】
なお、本実施の形態においては、不純物元素145として、ドーピング装置を用いて、
アルゴンを酸化物半導体膜107に添加する。ただし、これに限定されず、例えば、不純
物元素145を添加する工程を行わなくてもよい。この場合、不純物元素145を添加す
る工程を行わないため、製造工程を簡略化できる。
【0209】
次に、絶縁膜104、酸化物半導体膜107、及び導電膜114上に絶縁膜116を形
成する。なお、絶縁膜116を形成することで、絶縁膜116と接する酸化物半導体膜1
07は、ソース領域108s及びドレイン領域108dとなる。また、絶縁膜116と接
しない酸化物半導体膜107、別言すると絶縁膜110と接する酸化物半導体膜107は
チャネル領域108iとなる。これにより、チャネル領域108i、ソース領域108s
、及びドレイン領域108dを有する酸化物半導体膜108が形成される(図16(C)
参照)。
【0210】
本実施の形態では、絶縁膜116としては、絶縁膜116に用いることのできる材料を
選択することで形成できる。本実施の形態においては、絶縁膜116として、PECVD
装置を用い、厚さ100nmの窒化フッ化シリコン膜を形成する。なお、当該窒化フッ化
シリコン膜としては、例えば、原料ガスとして、SiFと、Nと、を用いて形成する
、または原料ガスとしてSiFと、Nと、SiHと、を用いて形成することができ
る。
【0211】
絶縁膜116として、窒化フッ化シリコン膜を用いることで、絶縁膜116に接するソ
ース領域108s、及びドレイン領域108dに窒化フッ化シリコン膜中の窒素、水素、
フッ素の1以上を供給することができる。特に、ソース領域108s、及びドレイン領域
108dには、フッ素が供給されると好ましい。この結果、ソース領域108s、及びド
レイン領域108dのキャリア密度を安定して高めることができる。
【0212】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成する(図16(D)参照)。
【0213】
本実施の形態では、絶縁膜118としては、絶縁膜118に用いることのできる材料を
選択することで形成できる。本実施の形態においては、絶縁膜118として、PECVD
装置を用い、厚さ300nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0214】
次に、絶縁膜118の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁膜
118及び絶縁膜116の一部をエッチングすることで、ソース領域108sに達する開
口部141aと、ドレイン領域108dに達する開口部141bと、を形成する(図17
(A)参照)。
【0215】
絶縁膜118及び絶縁膜116をエッチングする方法としては、ウエットエッチング法
及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態におい
ては、ドライエッチング法を用い、絶縁膜118、及び絶縁膜116を加工する。
【0216】
次に、開口部141a、141bを覆うように、絶縁膜118上に導電膜120を形成
する(図17(B)参照)。
【0217】
導電膜120としては、導電膜120a、120bに用いることのできる材料を選択す
ることで形成できる。本実施の形態においては、導電膜120として、スパッタリング装
置を用い、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成す
る。
【0218】
次に、導電膜120上の所望の位置に、リソグラフィ工程によりマスクを形成した後、
導電膜120の一部をエッチングすることで、導電膜120a、120bを形成する(図
17(C)参照)。
【0219】
導電膜120の加工方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のい
ずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態では、ウエットエッチング法にて銅
膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタングステン膜をエッチングすること
で導電膜120を加工し、導電膜120a、120bを形成する。
【0220】
以上の工程により、図1に示すトランジスタ100を作製することができる。
【0221】
なお、トランジスタ100を構成する膜(絶縁膜、金属酸化膜、酸化物半導体膜、導電
膜等)としては、上述の形成方法の他、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、
真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、ALD法を用いて形成することができる
。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリン
グ法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。
熱CVD法の例として、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法が挙げられる。
【0222】
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチ
ャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズ
マダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
【0223】
MOCVD法などの熱CVD法は、上記記載の導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜、金属
酸化膜などの膜を形成することができ、例えば、In-Ga-Zn-O膜を成膜する場合
には、トリメチルインジウム(In(CH)、トリメチルガリウム(Ga(CH
)、及びジメチル亜鉛(Zn(CH)を用いる。これらの組み合わせに限定さ
れず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(Ga(C)を用いる
こともでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(Zn(C)を用いることも
できる。
【0224】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒
とハフニウム前駆体を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミド
ハフニウム(TDMAH、Hf[N(CH)やテトラキス(エチルメチルアミ
ド)ハフニウムなどのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン
(O)の2種類のガスを用いる。
【0225】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶
媒とアルミニウム前駆体を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA、Al(CH
)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてHOの2種類のガスを用いる。他の
材料としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、
アルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)な
どがある。
【0226】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサ
クロロジシランを被成膜面に吸着させ、酸化性ガス(O、一酸化二窒素)のラジカルを
供給して吸着物と反応させる。
【0227】
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF
ガスとBガスを順次導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WFガスと
ガスとを用いてタングステン膜を形成する。なお、Bガスに代えてSiH
スを用いてもよい。
【0228】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-Zn-
O膜を成膜する場合には、In(CHガスとOガスを用いてIn-O層を形成し
、その後、Ga(CHガスとOガスとを用いてGaO層を形成し、更にその後Z
n(CHガスとOガスとを用いてZnO層を形成する。なお、これらの層の順番
はこの例に限らない。また、これらのガスを用いてIn-Ga-O層やIn-Zn-O層
、Ga-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、Oガスに変えてAr
等の不活性ガスで水をバブリングして得られたHOガスを用いても良いが、Hを含まな
いOガスを用いる方が好ましい。
【0229】
<1-7.半導体装置の作製方法2>
次に、図2に示すトランジスタ100Aの作製方法の一例について、図18乃至図20
を用いて説明する。なお、図18乃至図20は、トランジスタ100Aの作製方法を説明
するチャネル長(L)方向、及びチャネル幅(W)方向の断面図である。
【0230】
まず、基板102上に導電膜106を形成する。次に、基板102、及び導電膜106
上に絶縁膜104を形成し、絶縁膜104上に酸化物半導体膜を形成する。その後、当該
酸化物半導体膜を島状に加工することで、酸化物半導体膜107を形成する(図18(A
)参照)。
【0231】
導電膜106としては、導電膜112a、112bと同様の材料、及び同様の手法によ
り形成することができる。本実施の形態においては、導電膜106として、厚さ100n
mのタングステン膜をスパッタリング法により形成する。
【0232】
次に、絶縁膜104及び酸化物半導体膜107上に絶縁膜110_0を形成する。その
後、絶縁膜110_0上に金属酸化膜112_0を形成する(図18(B)参照)。
【0233】
なお、金属酸化膜112_0の形成時において、絶縁膜110_0中に酸素が添加され
る。図18(B)において、当該酸素を矢印で模式的に表している。
【0234】
次に、金属酸化膜112_0上の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した
後、金属酸化膜112_0、絶縁膜110_0、及び絶縁膜104の一部をエッチングす
ることで、導電膜106に達する開口部143を形成する(図18(C)参照)。
【0235】
開口部143の形成方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のい
ずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態においては、ドライエッチング法を
用い、開口部143を形成する。
【0236】
次に、開口部143を覆うように、金属酸化膜112_0上に導電膜114_0を形成
する(図18(D)参照)。
【0237】
なお、開口部143を覆うように、導電膜114_0を形成することで、導電膜106
と、導電膜114_0とが電気的に接続される。
【0238】
次に、導電膜114_0上の所望の位置に、リソグラフィ工程によりマスク140を形
成する(図19(A)参照)。
【0239】
次に、マスク140上から、エッチングを行い、導電膜114_0、金属酸化膜112
_0、及び絶縁膜110_0を加工する。導電膜114_0、金属酸化膜112_0、及
び絶縁膜110_0を加工することで、島状の導電膜114、島状の金属酸化膜112、
及び島状の絶縁膜110が形成される(図19(B)参照)。
【0240】
本実施の形態においては、ドライエッチング法を用い、導電膜114_0、金属酸化膜
112_0、及び絶縁膜110_0を加工する。
【0241】
次に、マスク140を除去した後、絶縁膜104、酸化物半導体膜107、及び導電膜
114上から、不純物元素145の添加を行う(図19(C)参照)。
【0242】
また、本実施の形態においては、不純物元素145として、ドーピング装置を用いて、
アルゴンを酸化物半導体膜107に添加する。
【0243】
次に、絶縁膜104、酸化物半導体膜107、及び導電膜114上に絶縁膜116を形
成する。なお、絶縁膜116を形成することで、絶縁膜116と接する酸化物半導体膜1
07は、ソース領域108s及びドレイン領域108dとなる。また、絶縁膜116と接
しない酸化物半導体膜107、別言すると絶縁膜110と接する酸化物半導体膜107は
チャネル領域108iとなる。これにより、チャネル領域108i、ソース領域108s
、及びドレイン領域108dを有する酸化物半導体膜108が形成される(図19(D)
参照)。
【0244】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成する(図20(A)参照)。
【0245】
次に、絶縁膜118の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁膜
118及び絶縁膜116の一部をエッチングすることで、ソース領域108sに達する開
口部141aと、ドレイン領域108dに達する開口部141bと、を形成する(図20
(B)参照)。
【0246】
次に、開口部141a、141bを覆うように、絶縁膜118上に導電膜120を形成
する(図20(C)参照)。
【0247】
次に、導電膜120上の所望の位置に、リソグラフィ工程によりマスクを形成した後、
導電膜120の一部をエッチングすることで、導電膜120a、120bを形成する(図
20(D)参照)。
【0248】
以上の工程により、図2に示すトランジスタ100Aを作製することができる。
【0249】
また、本実施の形態において、トランジスタが酸化物半導体膜を有する場合の例を示し
たが、本発明の一態様は、これに限定されない。本発明の一態様では、トランジスタが酸
化物半導体膜を有さなくてもよい。一例としては、トランジスタのチャネル領域、チャネ
ル領域の近傍、ソース領域、またはドレイン領域において、Si(シリコン)、Ge(ゲ
ルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、などを
有する材料で形成してもよい。
【0250】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【0251】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、酸化物半導体に形成される酸素欠損(V)、及び当該酸素
欠損に不純物(フッ素または水素)が入った場合について、詳細に説明する。
【0252】
<2-1.酸化物半導体に形成される酸素欠損(V)のモデルについて>
まず、酸化物半導体に形成される酸素欠損(V)のモデルについて、説明する。酸化
物半導体中において、酸素欠損は深い準位(dDOSともいう。)を形成する。dDOS
は、酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性を劣化させる要因となる場合がある。
ここでは、酸化物半導体中において、酸素欠損の集合体(Vクラスタともいう。)が形
成されるモデルについて検証した結果について説明する。
【0253】
図21(A)は、初期状態(酸素欠損ができる前)のInGaZnO結晶モデルを表
す図であり、図21(B)、図21(C)、図22(A)、図22(B)、及び図22
C)は、図21(A)に示す初期状態のInGaZnO結晶モデルに酸素欠損が形成さ
れるモデルを表す図である。図21(A)、図21(B)、図21(C)、図22(A)
図22(B)、及び図22(C)において、白丸は金属原子を表し、白丸の中に元素名
を記載している。また、黒丸は酸素原子を表し、点線の丸はVを表す。
【0254】
[Vの形成1]
まず、図21(A)に示す初期状態から、図21(B)に示すように、In、Znに囲
まれた酸素サイトでVが形成される。
【0255】
[Vznの形成1]
次に、図21(B)に示すモデルから、図21(C)に示すように、V近傍のZnが
放出され、Zn欠損(Vzn)が形成される。
【0256】
[Vの形成2]
次に、図21(C)に示すモデルから、図22(A)に示すように、Vzn近傍、且つ
Gaとの配位数の少ない酸素サイトにVが形成される。
【0257】
[Vznの形成2]
次に、図22(A)に示すモデルから、図22(B)に示すように、V近傍のZnが
放出され、Vznが形成される。
【0258】
[Vの形成3]
次に、図22(B)に示すモデルから、図22(C)に示すように、Vzn近傍にV
が形成される。
【0259】
以上のようにして、酸化物半導体中に1つの酸素欠損が形成されることによって、当該
酸素欠損近傍でも、新たに酸素欠損が形成され、複数の酸素欠損、または酸素欠損の集合
体(Vクラスタ)が形成される。そのため、酸素欠損が形成された場合、安定した結合
によって、酸素欠損を終端させることが重要である。
【0260】
<2-2.VのF終端について1>
次に、酸素欠損(V)を終端させるために、酸化物半導体中にフッ素が入った場合に
ついて、説明を行う。まず、VのF終端(以下、VFとする)が起こり易いか調べる
ために、FがVの外に存在するモデル、及びFがVに入ったモデルの2つのモデルに
ついて、どちらのモデルがエネルギー的に安定であるか計算を行った。
【0261】
計算に用いたモデル図を図23(A)(B)に、計算条件を表1に、それぞれ示す。な
お、図23(A)(B)において、大きい黒丸は酸素原子を表し、白丸、小さい黒丸、及
び灰丸は金属原子(それぞれ、In、Ga、Zn)を表し、点線の丸はVを表し、矢印
で示す丸はFを表す。
【0262】
【表1】

【0263】
なお、計算に用いたモデルとしては、InGaZnO結晶モデル(112原子)を用
いた。また、図23(A)は、FがVの外に存在するモデル(以下、V+Fint
デル)であり、図23(B)は、FがVに入ったモデル(以下、VF+bulkモデ
ル)である。
【0264】
なお、V及びVFの形成サイトとして、3個のInと、1個のZnと結合したIn
層の酸素サイトとした。また、FがVの外に存在するモデルの場合、Fは格子間に
存在する(Fint)とした。そこで、考えられうる格子間サイトにF原子を配置し、エ
ネルギー的に最も安定なサイトを選んだ。
【0265】
また、図23(A)に示すV+Fintモデルとしては、VとFintとは、影響
がないほど遠い位置に存在すると仮定した。この場合、FがVに入ったモデルと、図2
3(A)に示すV+Fintモデルのエネルギーを比較するには、原子数を揃える必要
がある。そこで、V+Fintモデルのエネルギー(Etot(V+Fint)をV
モデルのエネルギー(E(V))と、Fintモデル(E(Fint))のエネルギ
ーの和とし、VFモデルのエネルギー(Etot(VF))をVFモデルのエネル
ギー(E(VF)と、欠陥なしのbulkモデルのエネルギー(E(bulk))の和
とした。
【0266】
上記の関係を満たす数式を以下に示す。
【0267】
【数1】
【0268】
【数2】
【0269】
上述の数式(1)及び数式(2)で表される式で算出した相対エネルギーの結果を表2
に示す。
【0270】
【表2】
【0271】
表2に示す結果より、VFの方がV+Fintよりも相対エネルギーが低くなって
いることが分かる。これは、VとFintが離れて存在するよりも、VFという形に
なった方が安定であることを示唆している。つまり、VがIGZO膜中にあった場合、
おそらく、FintがVを埋め、VFを形成する。
【0272】
<2-3.VFモデルの状態密度>
次に、VFモデルの状態密度を算出した。VFモデルの状態密度の計算結果を図2
4に示す。
【0273】
なお、VFモデルの状態密度の算出には、汎関数にGGA(Generalized
gradient approximation)を用いた。また、図24において、
上半分がup spinを、下半分がdown spinを、それぞれ図示しており、横
軸がエネルギーを表し、横軸の0eVの位置が価電子帯上端に相当する。
【0274】
図24に示す結果から、VFが形成されると、伝導帯に電子が1個放出される。これ
は、OとFとのイオン原子価の違いによるものと示唆される。つまり、本実施の形態にお
いては、VにFが入ると、InGaZnO結晶モデルは、電子が放出されn型になり
うる。
【0275】
<2-4.VのO終端について>
次に、上記説明したVのF終端と比較するために、VのO終端について計算を行っ
た。なお、VのO終端は、V修復であり、VのO終端後には欠陥なしとなる。まず
、OがVの外に存在するモデルと、V修復後(欠陥なし)のモデルとのエネルギー比
較を行った。
【0276】
計算に用いたモデル図を図25(A)(B)に示す。なお、計算条件としては、先に示
すVFと同じとした。
【0277】
また、計算に用いたモデルとしては、InGaZnO結晶モデル(112原子)を用
いた。また、図25(A)は、OがVの外に存在するモデル(以下、V+Oint
デル)であり、図25(B)は、欠陥なしのbulkモデル(以下、bulk+bulk
モデル)である。なお、図25(A)(B)において、大きい黒丸は酸素原子を表し、白
丸、小さい黒丸、及び灰丸は金属原子(それぞれ、In、Ga、Zn)を表し、点線の丸
はVを表し、矢印で示す丸はOintを表す。
【0278】
また、図25(A)に示すV+Ointモデルとしては、VとOintとは、影響
がないほど遠い位置に存在すると仮定した。この場合、図25(B)に示すOがVに入
ったモデル(欠陥なしのモデル)と、図25(A)に示すV+Ointモデルとを比較
するには、原子数を揃える必要がある。そこで、図25(A)に示すV+Ointモデ
ルとしては、V+Ointモデルのエネルギー(Etot(V+Oint))をV
モデルのエネルギー(E(V))と、Ointモデル(E(Oint))とのエネルギ
ーの和とし、図25(B)に示すV修復後(欠陥なし)のモデルのエネルギー(Eto
(cure))を、欠陥なしのbulkモデルのエネルギー(E(bulk))の2倍
とした。
【0279】
上記の関係を満たす数式を以下に示す。
【0280】
【数3】
【0281】
【数4】
【0282】
上述の数式(3)及び数式(4)で表される式で算出した相対エネルギーの結果を表3
に示す。
【0283】
【表3】
【0284】
表3に示す結果より、V修復の方が、V+Ointよりも相対エネルギーが低くな
っていることが分かる。これは、VとOintが離れて存在するよりも、V修復とい
う形になった方が安定であることを示唆している。つまり、VがIGZO膜中にあった
場合、おそらく、OintがVを埋め、V修復する。なお、V修復のためキャリア
の生成がない。
【0285】
<2-5.VのF終端について2>
次に、上記の計算とは異なる計算方法でのVのF終端について説明する。上記の計算
においては、GGA汎関数を用いたのに対し、以下では、Hybrid汎関数を用いた。
計算条件を表4に示す。
【0286】
【表4】
【0287】
なお、表4に示す計算条件において、最初に欠陥のない結晶モデルの格子定数と原子位
置の最適化を行い、その後、各欠陥モデルを形成し、原子配置のみ最適化した。
【0288】
なお、ここでは図26(A)(B)(C)(D)に示す4つのモデルにおいて、計算を
行った。
【0289】
図26(A)は、酸素欠損(V)を表すモデル図であり、図26(B)は、VをF
で穴埋めした構造(VF)を表すモデル図であり、図26(C)は、格子間にFを挿入
した構造(Fint)を表すモデル図であり、図26(D)は、格子間にOを挿入した構
造(Oint)を表すモデル図である。なお、図26(A)(B)(C)(D)において
、大きい黒丸は酸素原子を表し、白丸、小さい黒丸、及び灰丸は金属原子(それぞれ、I
n、Ga、Zn)を表し、点線の丸はVを表し、矢印で示す白丸はFintを表し、矢
印で示す黒丸はOintを表す。
【0290】
また、図26(A)において、Vの形成位置をInO層のOとし、Znと隣接する
サイトのOとした。すなわち、Vの形成位置は、In3個とZn1個に囲まれたサイト
である。また、図26(B)において、VFの形成位置をInO層のOとし、Znと
隣接するサイトのOとした。すなわち、VFの形成位置は、In3個とZn1個に囲ま
れたサイトである。また、図26(C)において、Fintの形成位置をInO層と、
(Ga,Zn)O層との間の格子間サイトとした。すなわち、Fintの形成位置は、I
n3個とGa2個とZn1個に囲まれたサイトである。また、図26(D)において、O
intの形成位置をInO層と、(Ga,Zn)O層との間の格子間サイトとした。す
なわち、Ointの形成位置は、In3個とGa2個とZn1個に囲まれたサイトである
【0291】
また、図26(A)(B)(C)(D)で示すモデル図に対し、以下の数式を用いて欠
陥モデルの形成エネルギー(Eform(D))を算出した。なお、欠陥モデルの形成エ
ネルギー(Eform(D))としては、値が小さいほど欠陥が形成され易い。
【0292】
【数5】
【0293】
数式(5)において、E(defect,q)はqにチャージした欠陥Dを持つ格子の
全エネルギーを、E(bulk)は欠陥のない結晶の全エネルギーを、Δn(X)は系か
ら取り去った(加えた)原子Xの個数を、μ(X)は系から取り去った(加えた)原子X
に関する化学ポテンシャルを、qは欠陥を持つ系の電荷の価数を、μ(e)は電子の化学
ポテンシャル(価電子帯上端からのフェルミ準位)を、EVBMは価電子帯上端(VBM
)のエネルギーを、ΔVは静電ポテンシャルエネルギーの補正を、それぞれ表す。
【0294】
図27に欠陥のない結晶モデル(完全結晶)の状態密度の計算結果を示す。
【0295】
なお、図27において、フェルミ準位とは、最高電子占有準位を表す。なお、今回の計
算においては、Γ点のみで計算を行っているため、準位が離散的になっている。また、電
子は全て価電子帯内にあり、ギャップ内準位は存在しない。図27に示す計算結果より、
バンドギャップは3.10eVであった。
【0296】
次に、Vの形成エネルギーの計算結果を図28(A)に、VFの形成エネルギーの
計算結果を図28(B)に、Fintの形成エネルギーの計算結果を図29(A)に、O
intの形成エネルギーの計算結果を図29(B)に、それぞれ示す。なお、図28(A
)(B)、及び図29(A)(B)において、縦軸が数式(5)を用いて算出した形成エ
ネルギーを、横軸がフェルミ準位を、それぞれ示す。また、図28(A)(B)、及び図
29(A)(B)の横軸において、0.0eVは価電子帯上端(VBM)に相当し、3.
10eVは伝導帯下端(CBM)に相当する。
【0297】
また、図28(A)(B)、及び図29(A)(B)において、Xを欠陥の種類(V
、VF、Fint、またはOint)とし、qを系の電荷の価数とし、Yを単位格子当
たりのスピン数(up spin電子数-down spin電子数)とし、X(Y)
の形で表記した。
【0298】
図28(A)に示す結果より、Vの荷電状態は、フェルミ準位がVBMから2.29
eVまでは+2価であり、2.29eV以上では0価(中性)であった。
【0299】
図28(B)に示す結果より、VFの荷電状態は、フェルミ準位がVBMから2.9
4eVまでは+1価であり、2.94eV以上では-1価であった。荷電状態が変化する
フェルミエネルギーが2.94eVとCBMに近いことから、VFはドナー源(n化要
因)となる。
【0300】
図29(A)に示す結果より、Fintの荷電状態は、フェルミ準位がVBMから0.
54eV以下までは+1価であり、0.54eVからCBMまでは-1価であった。F
ntは、マイナスの荷電状態を取りやすいことから、電子をトラップする。
【0301】
図29(B)に示す結果より、Ointの荷電状態は、フェルミ準位がVBMから1.
99eV以下までは+1価であり、1.99eVから2.18eVまでは0価(中性)で
あり、2.18eVからCBMまでは-2価であった。
【0302】
<2-6.VのF終端について3>
次に、<2-5.VのF終端について2>に記載の各欠陥の形成エネルギーを用いて
、以下に示す反応式(A)及び反応式(B)の検証を行った。
・反応式(A):V + F → V
・反応式(B):VF + ex.O → F(+ex.OによるV修復)
【0303】
なお、反応式(A)において、VFの方がV + Fよりもエネルギー的に安定で
あれば、F終端が起こり易い。また、反応式(B)において、ex.Oは過剰酸素を表す
。また、反応式(A)及び反応式(B)の左側を反応原系、右側を生成系として以下説明
する場合がある。
【0304】
なお、反応式(A)の検証には、以下に示す数式(6)を用い、反応式(B)の検証に
は、以下に示す数式(7)を用いた。
【0305】
【数6】
【0306】
【数7】
【0307】
数式(6)において、ΔEは、生成系(VF)の形成エネルギーから、反応原系(
+Fint)の形成エネルギーを差分した値である。
【0308】
また、数式(7)において、ΔEは、生成系(Fint)の形成エネルギーから、反
応原系(VF+Oint)の形成エネルギーを差分した値である。
【0309】
なお、計算には、欠陥同士の相互作用がないほど離れているモデルを仮定し、エネルギ
ー差(ΔE及びΔE)が正となるフェルミ準位では、反応原系の方が安定であり、エ
ネルギー差(ΔE及びΔE)が負となるフェルミ準位では、生成系の方が安定である
。また、<2-5.VのF終端について2>に記載したように、系の安定な荷電状態は
フェルミ準位によって異なる。そこで、ΔE及びΔEを算出する際に用いる各欠陥の
形成エネルギーは、各フェルミ準位で最も安定な荷電状態とした。
【0310】
反応式(A)における、反応原系及び生成系の形成エネルギーとエネルギー差(ΔE
)の計算結果を図30(A)に示す。図30(A)に示す結果から、バンドギャップ中で
は、ΔEは、負であることから、VとFとが存在する場合、VをFで穴埋めしてV
Fが生成されやすいことが確認された。
【0311】
また、反応式(B)における、反応原系及び生成系の形成エネルギーとエネルギー差(
ΔE)の計算結果を図30(B)に示す。図30(B)に示す結果から、フェルミ準位
が1.31eV以下では、OintによるVFからのF放出は起こり難く(すなわち、
反応原系の方が安定)、1.31eV以上では、OintはVFからFを格子間に放出
し(Fint)、Vを修復する方が、安定である。
【0312】
したがって、VFが形成された膜が、VFのFが放出されるほどの過剰酸素を有す
ると、放出されたFが格子間に存在する、すなわちFintとなり、当該Fintが電子
をギャップ内にトラップする可能性がある。
【0313】
このように、酸化物半導体膜中に形成された酸素欠損(V)は、格子間にFを有する
(Fint)場合、VFを形成し、当該VFは電子を生成する。つまり、VFを有
する酸化物半導体は、n型となりうる。また、VFは、過剰酸素(ex.O)がある場
合には、格子間にFを放出しVとなり、当該Vは、過剰酸素の修復を受ける。つまり
、Fintを有する酸化物半導体となる。Fintは、電子をトラップし、負の固定電荷
を形成する。
【0314】
<2-7.Vに不純物が入った構造の安定性について>
次に、Vに不純物が入った構造の安定性について、計算を行った。ここでは、不純物
をフッ素及び水素とした。なお、Vにフッ素が入った構造をVF、Vに水素が入っ
た構造をVHとする。
【0315】
まず、Vから放出された不純物の安定配置を計算した。なお、Vから放出された不
純物の安定配置の計算では、モデル全体の電荷を中性と仮定した。
【0316】
図31に計算に用いたモデルを、表5に計算条件を、それぞれ示す。
【0317】
【表5】
【0318】
なお、図31は、InGaZnO結晶(112原子)モデルである。当該モデルを用
いて、不純物(FまたはH)が含まれるモデルを作製した。
【0319】
図32(A)(B)に、InGaZnO結晶モデルの格子間における不純物(Fまた
はH)の安定配置のモデル図を示す。なお、図32(A)がInGaZnO結晶モデル
の格子間にFが安定配置するモデル図であり、図32(B)がInGaZnO結晶モデ
ルの格子間にHが安定配置するモデル図である。
【0320】
図32(A)においては、Fは6個の酸素を頂点とする八面体中心に位置した状態がエ
ネルギー的に安定であった。また、図32(B)においては、HはInGaZnO結晶
中のOと結合する状態がエネルギー的に安定であった。
【0321】
ここで、ポーリングの電気陰性度の関係を表6に示す。
【0322】
【表6】
【0323】
表6に示す通り、Hの電気陰性度はOよりも小さく、電気陰性度の差が大きい。そのた
め、化学量論比を維持したInGaZnO結晶中に混入したHは、おそらくOとイオン
性結合した状態で存在する。すなわち、Hが結合したOは負に、Hは正に帯電している。
【0324】
一方で、Fの電気陰性度はOよりも大きいため、Oに対してマイナスになりやすい。た
だし、Hの場合よりも電気陰性度の差が小さいため、おそらく、共有結合性の寄与が大き
くなる。そのため、IGZO結晶中では、Fは(Ga,Zn)O層の金属との結合力と、
Oの反発力とが、釣り合う位置(格子間)で存在しやすい。
【0325】
次に、Vに不純物(FまたはH)がある状態とVの外に不純物(FまたはH)があ
る状態との変化を熱力学的に評価するため、化学反応経路探索手法の一つであるNEB(
Nudged Elastic Band)法を用いて、不純物(FまたはH)がV
出入りするのに必要なエネルギーと拡散頻度とを計算した。
【0326】
なお、拡散頻度を見積もるのに必要な拡散障壁(Ea)の評価には、NEB法を援用し
た。また、拡散経路の始状態及び終状態に対応するモデルを準備した。始状態は、不純物
(FまたはH)がVに入っている状態とし、終状態は、不純物(FまたはH)がV
ら放出された状態とした。すなわち、図31に示すようなInGaZnO結晶(112
原子)モデルを用いて、不純物(FまたはH)が含まれるモデルを作製し、Vを含む結
晶モデルに対し、不純物(FまたはH)がVに入ったモデル(VF、及びVH)を
始状態とし、不純物(FまたはH)がVの外に位置するモデル(V+格子間F、及び
+格子間H)を終状態とした。
【0327】
また、ここでは、モデル全体の電荷を+1とし、計算条件は、先の表5に示す条件と同
じとした。
【0328】
[VFの安定性について]
まず、VにFが入った構造であるVFの安定性の計算結果を以下に説明する。まず
、InGaZnO結晶中のFの拡散経路のモデルを図33に、Fの拡散経路に対応する
エネルギーの変化の計算結果を図34に、それぞれ示す。なお、図33に示す矢印は、V
FからのFの拡散経路を示す。
【0329】
図33及び図34に示すように、Fの拡散経路には、少なくとも1つの拡散障壁が存在
する。なお、図33において、VにFが入った状態をVFと、格子間にFがある状態
をFintと、それぞれ表記する。また、図34において、VにFが入った状態をV
Fと、VFからFが放出された状態をV+Fintと、それぞれ表記する。なお、図
34において、VFから右側がVFからのFの放出に相当し、V+Fintから左
側がVへのFの入り込み(トラップともいう)に相当する。
【0330】
図34に示す結果より、VFからFが放出される際に必要なエネルギー(拡散障壁)
は、4.59eVであり、VへのFの入り込みの際に必要なエネルギー(拡散障壁)は
、0.90eVであった。したがって、VFからFが放出するのに必要なエネルギーは
、VにFが入り込むエネルギーよりも高いため、Vに一旦Fが入り込むと放出しにく
いと示唆される。
【0331】
[VHの安定性について]
次に、VにHが入った構造であるVHの安定性の計算結果を以下に説明する。まず
、InGaZnO結晶中のHの拡散経路のモデルを図35に、Hの拡散経路に対応する
エネルギーの変化の計算結果を図36に、それぞれ示す。
【0332】
図35及び図36に示すように、Hの拡散経路には、少なくとも1つの拡散障壁が存在
する。なお、図35において、VにHが入った状態をVHと、表記する。また、図3
6において、VにHが入った状態をVHと、VHからHが放出された状態をV
H complexと、それぞれ表記する。なお、図36において、VHから右側がV
HからのHの放出に相当し、V+H complexから左側がVへのHの入り込
み(トラップともいう)に相当する。
【0333】
図36に示す結果より、VHからHが放出される際に必要なエネルギー(拡散障壁)
は、1.85eVであり、VへのHの入り込みの際に必要なエネルギー(拡散障壁)は
、1.01eVであった。したがって、VHからHが放出するのに必要なエネルギーは
、VにHが入り込むエネルギーよりも高いため、Vに一旦Hが入り込むと放出しにく
いと示唆される。
【0334】
[VFとVHとの安定性の比較について]
上記の計算の結果、VFからFが放出される際に必要なエネルギー(拡散障壁)と、
HからHが放出される際に必要なエネルギー(拡散障壁)とを比較した場合、以下の
関係になることが分かる。
・F(4.59eV) > H(1.85eV)
【0335】
次に、上記で示した拡散障壁から、不純物(FまたはH)の拡散頻度Γを以下の数式(
8)を用いて計算した。
【0336】
【数8】
【0337】
数式(8)において、νは頻度因子を、Eaは拡散障壁を、kはボルツマン定数を、
Tは絶対温度を、それぞれ表す。また、ν=1.0×1013 -1とした。
【0338】
数式(8)を用いて計算した結果を表7に示す。なお、表7では、350℃における不
純物(FまたはH)の拡散頻度、及び350℃における不純物(FまたはH)の拡散障壁
を表し、不純物(FまたはH)の経路としては、Vからの放出と、Vにトラップとの
2種類とした。
【0339】
【表7】
【0340】
以上のように、酸化物半導体中に形成されうるVFと、酸化物半導体中に形成されう
るVHと、を比較した場合、VFの方がVHよりも安定に存在する。したがって、
n型領域として機能するソース領域及びドレイン領域としては、水素を有する酸化物半導
体よりもフッ素を有する酸化物半導体とした方が、n型領域の抵抗の変化が少なく、信頼
性の高い半導体装置とすることができる。
【0341】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0342】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、酸化物半導体の構造等について、図37乃至図41を参照し
て説明する。
【0343】
<3-1.酸化物半導体の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分け
られる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS(c-axis-aligne
d crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化
物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semicon
ductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-
like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などが
ある。
【0344】
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物
半導体と、に分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC
-OS、多結晶酸化物半導体およびnc-OSなどがある。
【0345】
非晶質構造は、一般に、等方的であって不均質構造を持たない、準安定状態で原子の配
置が固定化していない、結合角度が柔軟である、短距離秩序は有するが長距離秩序を有さ
ない、などといわれている。
【0346】
すなわち、安定な酸化物半導体を完全な非晶質(completely amorph
ous)酸化物半導体とは呼べない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において
周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体とは呼べない。一方、a
-like OSは、等方的でないが、鬆(ボイドともいう。)を有する不安定な構造で
ある。不安定であるという点では、a-like OSは、物性的に非晶質酸化物半導体
に近い。
【0347】
<3-2.CAAC-OS>
まずは、CAAC-OSについて説明する。
【0348】
CAAC-OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物
半導体の一種である。
【0349】
CAAC-OSをX線回折(XRD:X-Ray Diffraction)によって
解析した場合について説明する。例えば、空間群R-3mに分類されるInGaZnO
の結晶を有するCAAC-OSに対し、out-of-plane法による構造解析を行
うと、図37(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる。このピ
ークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC-OS
では、結晶がc軸配向性を有し、c軸がCAAC-OSの膜を形成する面(被形成面とも
いう。)、または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。なお、2θが31
°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°
近傍のピークは、空間群Fd-3mに分類される結晶構造に起因する。そのため、CAA
C-OSは、該ピークを示さないことが好ましい。
【0350】
一方、CAAC-OSに対し、被形成面に平行な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、
InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。そして、2θを56°近傍に固定
し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)
を行っても、図37(B)に示すように明瞭なピークは現れない。一方、単結晶InGa
ZnOに対し、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図37(C)に示す
ように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、
XRDを用いた構造解析から、CAAC-OSは、a軸およびb軸の配向が不規則である
ことが確認できる。
【0351】
次に、電子回折によって解析したCAAC-OSについて説明する。例えば、InGa
ZnOの結晶を有するCAAC-OSに対し、CAAC-OSの被形成面に平行にプロ
ーブ径が300nmの電子線を入射させると、図37(D)に示すような回折パターン(
制限視野電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、I
nGaZnOの結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子
回折によっても、CAAC-OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成
面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面
に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図37(E
)に示す。図37(E)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、プロ
ーブ径が300nmの電子線を用いた電子回折によっても、CAAC-OSに含まれるペ
レットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図37(E)における
第1リングは、InGaZnOの結晶の(010)面および(100)面などに起因す
る。また、図37(E)における第2リングは(110)面などに起因する。
【0352】
また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron M
icroscope)によって、CAAC-OSの明視野像と回折パターンとの複合解析
像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができ
る。一方、高分解能TEM像であってもペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう。)を明確に確認することができない場合がある。そのため、CAA
C-OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0353】
図38(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC-OSの断面の高分解能
TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical A
berration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高
分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像は
、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fなどに
よって観察することができる。
【0354】
図38(A)より、金属原子が層状に配列している領域であるペレットを確認すること
ができる。ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあることが
わかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこ
ともできる。また、CAAC-OSを、CANC(C-Axis Aligned na
nocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。ペレットは、CAA
C-OSの被形成面または上面の凹凸を反映しており、CAAC-OSの被形成面または
上面と平行となる。
【0355】
また、図38(B)および図38(C)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAA
C-OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図38(D)および図38(E)は
、それぞれ図38(B)および図38(C)を画像処理した像である。以下では、画像処
理の方法について説明する。まず、図38(B)を高速フーリエ変換(FFT:Fast
Fourier Transform)処理することでFFT像を取得する。次に、取
得したFFT像において原点を基準に、2.8nm-1から5.0nm-1の間の範囲を
残すマスク処理する。次に、マスク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT
:Inverse Fast Fourier Transform)処理することで画
像処理した像を取得する。こうして取得した像をFFTフィルタリング像と呼ぶ。FFT
フィルタリング像は、Cs補正高分解能TEM像から周期成分を抜き出した像であり、格
子配列を示している。
【0356】
図38(D)では、格子配列の乱れた箇所を破線で示している。破線で囲まれた領域が
、一つのペレットである。そして、破線で示した箇所がペレットとペレットとの連結部で
ある。破線は、六角形状であるため、ペレットが六角形状であることがわかる。なお、ペ
レットの形状は、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合が多い。
【0357】
図38(E)では、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格
子配列の向きが変化している箇所を点線で示し、格子配列の向きの変化を破線で示してい
る。点線近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。点線近傍の格子点
を中心に周囲の格子点を繋ぐと、歪んだ六角形、歪んだ五角形、または歪んだ七角形など
が形成できる。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制しているこ
とがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において原子配列が稠密でないこ
とや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを
許容することができるためと考えられる。
【0358】
以上に示すように、CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において
複数のペレット(ナノ結晶)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。よって、C
AAC-OSを、CAA crystal(c-axis-aligned a-b-p
lane-anchored crystal)を有する酸化物半導体と称することもで
きる。
【0359】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の
混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥
(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
【0360】
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金
属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸
素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、
二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
【0361】
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合が
ある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャ
リア発生源となる場合がある。例えば、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップ
となる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
【0362】
不純物および酸素欠損の少ないCAAC-OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体で
ある。具体的には、8×1011/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満、
さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上のキャリ
ア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性また
は実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC-OSは、不純物濃度が低く、欠
陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0363】
<3-3.nc-OS>
次に、nc-OSについて説明する。
【0364】
nc-OSをXRDによって解析した場合について説明する。例えば、nc-OSに対
し、out-of-plane法による構造解析を行うと、配向性を示すピークが現れな
い。即ち、nc-OSの結晶は配向性を有さない。
【0365】
また、例えば、InGaZnOの結晶を有するnc-OSを薄片化し、厚さが34n
mの領域に対し、被形成面に平行にプローブ径が50nmの電子線を入射させると、図3
9(A)に示すようなリング状の回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)が観測さ
れる。また、同じ試料にプローブ径が1nmの電子線を入射させたときの回折パターン(
ナノビーム電子回折パターン)を図39(B)に示す。図39(B)より、リング状の領
域内に複数のスポットが観測される。したがって、nc-OSは、プローブ径が50nm
の電子線を入射させることでは秩序性が確認されないが、プローブ径が1nmの電子線を
入射させることでは秩序性が確認される。
【0366】
また、厚さが10nm未満の領域に対し、プローブ径が1nmの電子線を入射させると
図39(C)に示すように、スポットが略正六角状に配置された電子回折パターンを観
測される場合がある。したがって、厚さが10nm未満の範囲において、nc-OSが秩
序性の高い領域、即ち結晶を有することがわかる。なお、結晶が様々な方向を向いている
ため、規則的な電子回折パターンが観測されない領域もある。
【0367】
図39(D)に、被形成面と略平行な方向から観察したnc-OSの断面のCs補正高
分解能TEM像を示す。nc-OSは、高分解能TEM像において、補助線で示す箇所な
どのように結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできな
い領域と、を有する。nc-OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下の大きさ
であり、特に1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが
10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体(micr
o crystalline oxide semiconductor)と呼ぶことが
ある。nc-OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場
合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC-OSにおけるペレットと起源を同じくする可能
性がある。そのため、以下ではnc-OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
【0368】
このように、nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特
に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS
は、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見
られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶
質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0369】
なお、ペレット(ナノ結晶)間で結晶方位が規則性を有さないことから、nc-OSを
、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化
物半導体、またはNANC(Non-Aligned nanocrystals)を有
する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0370】
nc-OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため
、nc-OSは、a-like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くな
る。ただし、nc-OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのた
め、nc-OSは、CAAC-OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0371】
<3-4.a-like OS>
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物
半導体である。
【0372】
図40に、a-like OSの高分解能断面TEM像を示す。ここで、図40(A)
は電子照射開始時におけるa-like OSの高分解能断面TEM像である。図40
B)は4.3×10/nmの電子(e)照射後におけるa-like OSの
高分解能断面TEM像である。図40(A)および図40(B)より、a-like O
Sは電子照射開始時から、縦方向に延伸する縞状の明領域が観察されることがわかる。ま
た、明領域は、電子照射後に形状が変化することがわかる。なお、明領域は、鬆または低
密度領域と推測される。
【0373】
鬆を有するため、a-like OSは、不安定な構造である。以下では、a-lik
e OSが、CAAC-OSおよびnc-OSと比べて不安定な構造であることを示すた
め、電子照射による構造の変化を示す。
【0374】
試料として、a-like OS、nc-OSおよびCAAC-OSを準備する。いず
れの試料もIn-Ga-Zn酸化物である。
【0375】
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試
料は、いずれも結晶部を有する。
【0376】
なお、InGaZnOの結晶の単位格子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn
-O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られてい
る。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と
同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、
以下では、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZ
nOの結晶部と見なした。なお、格子縞は、InGaZnOの結晶のa-b面に対応
する。
【0377】
図41は、各試料の結晶部(22箇所から30箇所)の平均の大きさを調査した例であ
る。なお、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図41より、a-lik
e OSは、TEM像の取得などに係る電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなって
いくことがわかる。図41より、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大き
さだった結晶部(初期核ともいう。)が、電子(e)の累積照射量が4.2×10
/nmにおいては1.9nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、n
c-OSおよびCAAC-OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×10
/nmまでの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。図41
より、電子の累積照射量によらず、nc-OSおよびCAAC-OSの結晶部の大きさは
、それぞれ1.3nm程度および1.8nm程度であることがわかる。なお、電子線照射
およびTEMの観察は、日立透過電子顕微鏡H-9000NARを用いた。電子線照射条
件は、加速電圧を300kV、電流密度を6.7×10/(nm・s)、照射領
域の直径を230nmとした。
【0378】
このように、a-like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合が
ある。一方、nc-OSおよびCAAC-OSは、電子照射による結晶部の成長がほとん
ど見られない。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて
、不安定な構造であることがわかる。
【0379】
また、鬆を有するため、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比
べて密度の低い構造である。具体的には、a-like OSの密度は、同じ組成の単結
晶の密度の78.6%以上92.3%未満である。また、nc-OSの密度およびCAA
C-OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満である。単結
晶の密度の78%未満である酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0380】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、
菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnOの密度は6.357g/cmである。よ
って、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体におい
て、a-like OSの密度は5.0g/cm以上5.9g/cm未満である。ま
た、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において
、nc-OSの密度およびCAAC-OSの密度は5.9g/cm以上6.3g/cm
未満である。
【0381】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合
わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。
所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して
、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を
組み合わせて見積もることが好ましい。
【0382】
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。
なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a-like OS、nc-OS
、CAAC-OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0383】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜、組み合わせて用
いることができる。
【0384】
(実施の形態4)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の
一例について、図42乃至図44を用いて以下説明を行う。
【0385】
図42は、表示装置の一例を示す上面図である。図42に示す表示装置700は、第1
の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドラ
イバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回
路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と
、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、
第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すな
わち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は
、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお
図42には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設
けられる。
【0386】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている
領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライ
バ回路部706と、それぞれ電気的に接続されるFPC端子部708(FPC:Flex
ible printed circuit)が設けられる。また、FPC端子部708
には、FPC716が接続され、FPC716によって画素部702、ソースドライバ回
路部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号等が供給される。また、画素部
702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部
708には、信号線710が各々接続されている。FPC716により供給される各種信
号等は、信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートド
ライバ回路部706、及びFPC端子部708に与えられる。
【0387】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示
装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を
画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定
されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良
い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この
場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結
晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に実装す
る構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるも
のではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法など
を用いることができる。
【0388】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲート
ドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装
置であるトランジスタを適用することができる。
【0389】
また、表示装置700は、様々な素子を有することが出来る。該素子の一例としては、
例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有
機EL素子、無機EL素子、LEDなど)、発光トランジスタ素子(電流に応じて発光す
るトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク素子、電気泳動素子、エレクト
ロウェッティング素子、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・
エレクトロ・メカニカル・システム)ディスプレイ(例えば、グレーティングライトバル
ブ(GLV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャ
ッター(DMS)素子、インターフェアレンス・モジュレーション(IMOD)素子など
)、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
【0390】
また、EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子
放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FE
D)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conductio
n Electron-emitter Display)などがある。液晶素子を用い
た表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶
ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプ
レイ)などがある。電子インク素子又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、
電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを
実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するよ
うにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを
有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路
を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0391】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式
等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、R
GB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの
画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配
列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素によって、異なる2
色を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以
上追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよ
い。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ
表示の表示装置に適用することもできる。
【0392】
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色発光
(W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともい
う。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B
)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで
、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層
を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない
領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配
置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2
割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発
光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、Wを、それぞれの発光色を有
する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よ
りも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
【0393】
また、カラー化方式としては、上述の白色発光からの発光の一部をカラーフィルタを通
すことで赤色、緑色、青色に変換する方式(カラーフィルタ方式)の他、赤色、緑色、青
色の発光をそれぞれ用いる方式(3色方式)、または青色発光からの発光の一部を赤色や
緑色に変換する方式(色変換方式、量子ドット方式)を適用してもよい。
【0394】
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について
図43及び図44を用いて説明する。なお、図43は、図42に示す一点鎖線Q-Rに
おける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、図44は、図
42に示す一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成
である。
【0395】
まず、図43及び図44に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分につい
て以下説明する。
【0396】
<4-1.表示装置の共通部分に関する説明>
図43及び図44に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と
、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配
線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び
容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を
有する。
【0397】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、先に示すトランジスタ100と同様の
構成である。なお、トランジスタ750及びトランジスタ752の構成については、先の
実施の形態に示す、その他のトランジスタを用いてもよい。
【0398】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物
半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くすることができる。よって、画像
信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長
く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電
力を抑制する効果を奏する。
【0399】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるた
め、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表
示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するド
ライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路とし
て、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置
の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトラン
ジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0400】
容量素子790は、トランジスタ750が有する酸化物半導体膜と、同一の酸化物半導
体膜を加工する工程を経て形成される下部電極と、トランジスタ750が有するソース電
極及びドレイン電極として機能する導電膜と、同一の導電膜を加工する工程を経て形成さ
れる上部電極と、を有する。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ750
が有する第3の絶縁膜及び第4の絶縁膜と、同一の絶縁膜を形成する工程を経て形成され
る絶縁膜が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘電体として機能
する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0401】
また、図43及び図44において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容
量素子790上に平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0402】
平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂
、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料
を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで
、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平坦化絶縁膜770を設けない構成とし
てもよい。
【0403】
また、図43及び図44においては、画素部702が有するトランジスタ750と、ソ
ースドライバ回路部704が有するトランジスタ752と、を同じ構造のトランジスタを
用いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、画素部702と、ソース
ドライバ回路部704とは、異なるトランジスタを用いてもよい。
【0404】
なお、画素部702と、ソースドライバ回路部704とに、異なるトランジスタを用い
る場合においては、実施の形態1に示すスタガ型のトランジスタと、逆スタガ型のトラン
ジスタとを組み合わせて用いてもよい。具体的には、画素部702にスタガ型のトランジ
スタを用い、ソースドライバ回路部704に逆スタガ型のトランジスタを用いる構成、あ
るいは画素部702に逆スタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704に
スタガ型のトランジスタを用いる構成などが挙げられる。なお、上記のソースドライバ回
路部704を、ゲートドライバ回路部と読み替えてもよい。
【0405】
ここで、画素部702またはソースドライバ回路部704に用いることのできる、逆ス
タガ型のトランジスタを、図45乃至図49に示す。
【0406】
図45(A)は、トランジスタ300Aの上面図であり、図45(B)は、図45(A
)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し、図45(C)は、図4
5(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当する。なお、図45
(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ300Aの構成要素の一部
(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また、一点鎖線X1
-X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1-Y2方向をチャネル幅方向と呼称する場合
がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても図45(A)と
同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0407】
トランジスタ300Aは、基板302上のゲート電極として機能する導電膜304と、
基板302及び導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307と、絶
縁膜307上の酸化物半導体膜308と、酸化物半導体膜308に電気的に接続されるソ
ース電極として機能する導電膜312aと、酸化物半導体膜308に電気的に接続される
ドレイン電極として機能する導電膜312bと、を有する。また、トランジスタ300A
上、より詳しくは、導電膜312a、312b及び酸化物半導体膜308上には絶縁膜3
14、316、及び絶縁膜318が設けられる。絶縁膜314、316、318は、トラ
ンジスタ300Aの保護絶縁膜としての機能を有する。
【0408】
図46(A)は、トランジスタ300Bの上面図であり、図46(B)は、図46(A
)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し、図46(C)は、図4
6(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0409】
トランジスタ300Bは、基板302上のゲート電極として機能する導電膜304と、
基板302及び導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307と、絶
縁膜307上の酸化物半導体膜308と、酸化物半導体膜308上の絶縁膜314と、絶
縁膜314上の絶縁膜316と、絶縁膜314及び絶縁膜316に設けられる開口部34
1aを介して酸化物半導体膜308に電気的に接続されるソース電極として機能する導電
膜312aと、絶縁膜314及び絶縁膜316に設けられる開口部341bを介して酸化
物半導体膜308に電気的に接続されるドレイン電極として機能する導電膜312bと、
を有する。また、トランジスタ300B上、より詳しくは、導電膜312a、312b、
及び絶縁膜316上には絶縁膜318が設けられる。絶縁膜314及び絶縁膜316は、
酸化物半導体膜308の保護絶縁膜としての機能を有する。絶縁膜318は、トランジス
タ300Bの保護絶縁膜としての機能を有する。
【0410】
トランジスタ300Aにおいては、チャネルエッチ型の構造であったのに対し、図46
(A)(B)(C)に示すトランジスタ300Bは、チャネル保護型の構造である。
【0411】
図47(A)は、トランジスタ300Cの上面図であり、図47(B)は、図47(A
)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し、図47(C)は、図4
7(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0412】
トランジスタ300Cは、図46(A)(B)(C)に示すトランジスタ300Bと絶
縁膜314、316の形状が相違する。具体的には、トランジスタ300Cの絶縁膜31
4、316は、酸化物半導体膜308のチャネル領域上に島状に設けられる。その他の構
成は、トランジスタ300Bと同様である。
【0413】
図48(A)は、トランジスタ300Dの上面図であり、図48(B)は、図48(A
)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し、図48(C)は、図4
8(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0414】
トランジスタ300Dは、基板302上の第1のゲート電極として機能する導電膜30
4と、基板302及び導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307
と、絶縁膜307上の酸化物半導体膜308と、酸化物半導体膜308上の絶縁膜314
と、絶縁膜314上の絶縁膜316と、酸化物半導体膜308に電気的に接続されるソー
ス電極として機能する導電膜312aと、酸化物半導体膜308に電気的に接続されるド
レイン電極として機能する導電膜312bと、導電膜312a、312b及び絶縁膜31
6上の絶縁膜318と、絶縁膜318上の導電膜320a、320bと、を有する。
【0415】
また、トランジスタ300Dにおいて、絶縁膜314、316、318は、トランジス
タ300Dの第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ300Dに
おいて、導電膜320aは、表示装置に用いる画素電極としての機能を有する。また、導
電膜320aは、絶縁膜314、316、318に設けられる開口部342cを介して、
導電膜312bと接続される。また、トランジスタ300Dにおいて、導電膜320bは
、第2のゲート電極(バックゲート電極ともいう)として機能する。
【0416】
また、図48(C)に示すように導電膜320bは、絶縁膜306、307、314、
316、318に設けられる開口部342a、342bにおいて、第1のゲート電極とし
て機能する導電膜304に接続される。よって、導電膜320bと導電膜304とは、同
じ電位が与えられる。
【0417】
なお、トランジスタ300Dにおいては、開口部342a、342bを設け、導電膜3
20bと導電膜304を接続する構成について例示したが、これに限定されない。例えば
、開口部342aまたは開口部342bのいずれか一方の開口部のみを形成し、導電膜3
20bと導電膜304を接続する構成、または開口部342a及び開口部342bを設け
ずに、導電膜320bと導電膜304を接続しない構成としてもよい。なお、導電膜32
0bと導電膜304とを接続しない構成の場合、導電膜320bと導電膜304には、そ
れぞれ異なる電位を与えることができる。
【0418】
なお、トランジスタ300Dは、先に説明のS-channel構造を有する。
【0419】
また、図45(A)(B)(C)に示すトランジスタ300Aが有する酸化物半導体膜
308を複数の積層構造としてもよい。その場合の一例を図49(A)(B)(C)(D
)に示す。
【0420】
図49(A)(B)は、トランジスタ300Eの断面図であり、図49(C)(D)は
、トランジスタ300Fの断面図である。なお、トランジスタ300E、300Fの上面
図としては、図45(A)に示すトランジスタ300Aと同様である。
【0421】
図49(A)(B)に示すトランジスタ300Eが有する酸化物半導体膜308は、酸
化物半導体膜308_1と、酸化物半導体膜308_2と、酸化物半導体膜308_3と
、を有する。また、図49(C)(D)に示すトランジスタ300Fが有する酸化物半導
体膜308は、酸化物半導体膜308_2と、酸化物半導体膜308_3と、を有する。
【0422】
なお、導電膜304、絶縁膜306、絶縁膜307、酸化物半導体膜308、導電膜3
12a、導電膜312b、絶縁膜314、絶縁膜316、絶縁膜318、及び導電膜32
0a、320bとしては、それぞれ先の実施の形態1に記載の導電膜114、絶縁膜11
6、絶縁膜110、酸化物半導体膜108、導電膜120a、導電膜120b、絶縁膜1
04、絶縁膜118、絶縁膜116、導電膜114に記載の材料及び形成方法を用いれば
よい。
【0423】
また、トランジスタ300A乃至トランジスタ300Fの構造を、それぞれ自由に組み
合わせて用いてもよい。
【0424】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極と
して機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。なお、信号線710は、トランジスタ
750、752のソース電極及びドレイン電極と異なる工程を経て形成された導電膜、例
えば、ゲート電極として機能する酸化物半導体膜と同じ工程を経て形成される酸化物半導
体膜を用いてもよい。信号線710として、例えば、銅元素を含む材料を用いた場合、配
線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となる。
【0425】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC71
6を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びド
レイン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。また、接続電極760は
、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0426】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いるこ
とができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板
を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられ
る。
【0427】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構
造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、
第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設け
られる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。
【0428】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、
カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する
絶縁膜734が設けられる。
【0429】
<4-2.液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図43に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜
772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705
側に設けられ、対向電極としての機能を有する。図43に示す表示装置700は、導電膜
772と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の配向状態が変わること
によって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる。
【0430】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素
電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。また、導電膜772は、反射電極
としての機能を有する。図43に示す表示装置700は、外光を利用し導電膜772で光
を反射して着色膜736を介して表示する、所謂反射型のカラー液晶表示装置である。
【0431】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反
射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、
例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材
料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム
、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、
可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
【0432】
また、図43に示す表示装置700においては、画素部702の平坦化絶縁膜770の
一部に凹凸が設けられている。該凹凸は、例えば、平坦化絶縁膜770を樹脂膜で形成し
、該樹脂膜の表面に凹凸を設けることで形成することができる。また、反射電極として機
能する導電膜772は、上記凹凸に沿って形成される。したがって、外光が導電膜772
に入射した場合において、導電膜772の表面で光を乱反射することが可能となり、視認
性を向上させることができる。
【0433】
なお、図43に示す表示装置700は、反射型のカラー液晶表示装置について例示した
が、これに限定されない、例えば、導電膜772を可視光において、透光性のある導電膜
を用いることで透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。透過型のカラー液晶表示装置
の場合、平坦化絶縁膜770に設けられる凹凸については、設けない構成としてもよい。
【0434】
なお、図43において図示しないが、導電膜772、774の液晶層776と接する側
に、それぞれ配向膜を設ける構成としてもよい。また、図43において図示しないが、偏
光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい
。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバッ
クライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0435】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液
晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これら
の液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイ
ラルネマチック相、等方相等を示す。
【0436】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発
現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組
成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速
度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要である。また配向膜を設けなくてもよ
いのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を
防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。
また、ブルー相を示す液晶材料は、視野角依存性が小さい。
【0437】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic
)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Frin
ge Field Switching)モード、ASM(Axially Symme
tric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optical
Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroe
lectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerr
oelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる
【0438】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用し
た透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが
、例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment
)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モー
ド、ASVモードなどを用いることができる。
【0439】
<4-3.発光素子を用いる表示装置>
図44に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜
784、EL層786、及び導電膜788を有する。図44に示す表示装置700は、発
光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができ
る。なお、EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0440】
有機化合物に用いることのできる材料としては、蛍光性材料または燐光性材料などが挙
げられる。また、量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット
材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、
などが挙げられる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元
素グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、
亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(P
b)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子
ドット材料を用いてもよい。
【0441】
また、導電膜784は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜に接続される。導電膜784は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素
電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。導電膜784としては、可視光に
おいて透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることがで
きる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛
(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において
反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよ
い。
【0442】
また、図44に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜784上に絶
縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜784の一部を覆う。なお、発光素子
782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、E
L層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション
構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜784側に光を射出す
るボトムエミッション構造や、導電膜784及び導電膜788の双方に光を射出するデュ
アルエミッション構造にも適用することができる。
【0443】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重な
る位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設け
られている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。ま
た、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、図44
に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これ
に限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色
膜736を設けない構成としてもよい。
【0444】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0445】
(実施の形態5)
本実施の形態では、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、且つ書き込
み回数にも制限が無い半導体装置の回路構成の一例について図50を用いて説明する。
【0446】
<5-1.回路構成>
図50は、半導体装置の回路構成を説明する図である。図50において、第1の配線(
1st Line)と、p型トランジスタ1280aのソース電極またはドレイン電極の
一方とは、電気的に接続されている。また、p型トランジスタ1280aのソース電極ま
たはドレイン電極の他方と、n型トランジスタ1280bのソース電極またはドレイン電
極の一方とは、電気的に接続されている。また、n型トランジスタ1280bのソース電
極またはドレイン電極の他方と、n型トランジスタ1280cのソース電極またはドレイ
ン電極の一方とは、電気的に接続されている。
【0447】
また、第2の配線(2nd Line)と、トランジスタ1282のソース電極または
ドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、トランジスタ1282のソー
ス電極またはドレイン電極の他方と、容量素子1281の電極の一方及びn型トランジス
タ1280cのゲート電極とは、電気的に接続されている。
【0448】
また、第3の配線(3rd Line)と、p型トランジスタ1280a及びn型トラ
ンジスタ1280bのゲート電極とは、電気的に接続されている。また、第4の配線(4
th Line)と、トランジスタ1282のゲート電極とは、電気的に接続されている
。また、第5の配線(5th Line)と、容量素子1281の電極の他方及びn型ト
ランジスタ1280cのソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続されて
いる。また、第6の配線(6th Line)と、p型トランジスタ1280aのソース
電極またはドレイン電極の他方及びn型トランジスタ1280bのソース電極またはドレ
イン電極の一方とは、電気的に接続されている。
【0449】
なお、トランジスタ1282は、酸化物半導体(OS:Oxide Semicond
uctor)により形成することができる。したがって、図50において、トランジスタ
1282に「OS」の記号を付記してある。なお、トランジスタ1282を酸化物半導体
以外の材料により形成してもよい。
【0450】
また、図50において、トランジスタ1282のソース電極またはドレイン電極の他方
と、容量素子1281の電極の一方と、n型トランジスタ1280cのゲート電極と、の
接続箇所には、フローティングノード(FN)を付記してある。トランジスタ1282を
オフ状態とすることで、フローティングノード、容量素子1281の電極の一方、及びn
型トランジスタ1280cのゲート電極に与えられた電位を保持することができる。
【0451】
図50に示す回路構成では、n型トランジスタ1280cのゲート電極の電位が保持可
能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能であ
る。
【0452】
<5-2.情報の書き込み及び保持>
まず、情報の書き込み及び保持について説明する。第4の配線の電位を、トランジスタ
1282がオン状態となる電位にして、トランジスタ1282をオン状態とする。これに
より、第2の配線の電位がn型トランジスタ1280cのゲート電極、及び容量素子12
81に与えられる。すなわち、n型トランジスタ1280cのゲート電極には、所定の電
荷が与えられる(書き込み)。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ1282がオ
フ状態となる電位にして、トランジスタ1282をオフ状態とする。これにより、n型ト
ランジスタ1280cのゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0453】
トランジスタ1282のオフ電流は極めて小さいため、n型トランジスタ1280cの
ゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0454】
<5-3.情報の読み出し>
次に、情報の読み出しについて説明する。第3の配線の電位をLowレベル電位とした
際、p型トランジスタ1280aがオン状態となり、n型トランジスタ1280bがオフ
状態となる。この時、第1の配線の電位は第6の配線に与えられる。一方、第3の配線の
電位をHighレベル電位とした際、p型トランジスタ1280aがオフ状態となり、n
型トランジスタ1280bがオン状態となる。この時、フローティングノード(FN)に
保持された電荷量に応じて、第6の配線は異なる電位をとる。このため、第6の配線の電
位をみることで、保持されている情報を読み出すことができる(読み出し)。
【0455】
また、トランジスタ1282は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いるため、極め
てオフ電流が小さいトランジスタである。酸化物半導体を用いたトランジスタ1282の
オフ電流は、シリコン半導体などで形成されるトランジスタの10万分の1以下のオフ電
流であるため、トランジスタ1282のリークによる、フローティングノード(FN)に
蓄積される電荷の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導体を用いたトラ
ンジスタ1282により、電力の供給が無くても情報の保持が可能な不揮発性の記憶回路
を実現することが可能である。
【0456】
また、このような回路構成を用いた半導体装置を、レジスタやキャッシュメモリなどの
記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐこ
とができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰
することができる。よって、記憶装置全体、もしくは記憶装置を構成する一または複数の
論理回路において、待機状態のときに短い時間でも電源停止を行うことができるため、消
費電力を抑えることができる。
【0457】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0458】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に用いることのできる画素回路の構成
について、図51(A)を用いて以下説明を行う。
【0459】
<6-1.画素回路の構成>
図51(A)は、画素回路の構成を説明する図である。図51(A)に示す回路は、光
電変換素子1360、トランジスタ1351、トランジスタ1352、トランジスタ13
53、及びトランジスタ1354を有する。
【0460】
光電変換素子1360のアノードは配線1316に接続され、カソードはトランジスタ
1351のソース電極またはドレイン電極の一方と接続される。トランジスタ1351の
ソース電極またはドレイン電極の他方は電荷蓄積部(FD)と接続され、ゲート電極は配
線1312(TX)と接続される。トランジスタ1352のソース電極またはドレイン電
極の一方は配線1314(GND)と接続され、ソース電極またはドレイン電極の他方は
トランジスタ1354のソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、ゲート電極は
電荷蓄積部(FD)と接続される。トランジスタ1353のソース電極またはドレイン電
極の一方は電荷蓄積部(FD)と接続され、ソース電極またはドレイン電極の他方は配線
1317と接続され、ゲート電極は配線1311(RS)と接続される。トランジスタ1
354のソース電極またはドレイン電極の他方は配線1315(OUT)と接続され、ゲ
ート電極は配線1313(SE)に接続される。なお、上記接続は全て電気的な接続とす
る。
【0461】
なお、配線1314には、GND、VSS、VDDなどの電位が供給されていてもよい
。ここで、電位や電圧は相対的なものである。そのため、GNDの電位の大きさは、必ず
しも、0ボルトであるとは限らないものとする。
【0462】
光電変換素子1360は受光素子であり、画素回路に入射した光に応じた電流を生成す
る機能を有する。トランジスタ1353は、光電変換素子1360による電荷蓄積部(F
D)への電荷蓄積を制御する機能を有する。トランジスタ1354は、電荷蓄積部(FD
)の電位に応じた信号を出力する機能を有する。トランジスタ1352は、電荷蓄積部(
FD)の電位をリセットする機能を有する。トランジスタ1352は、読み出し時に画素
回路の選択を制御する機能を有する。
【0463】
なお、電荷蓄積部(FD)は、電荷保持ノードであり、光電変換素子1360が受ける
光の量に応じて変化する電荷を保持する。
【0464】
なお、トランジスタ1352とトランジスタ1354とは、配線1315と配線131
4との間で、直列接続されていればよい。したがって、配線1314、トランジスタ13
52、トランジスタ1354、配線1315の順で並んでもよいし、配線1314、トラ
ンジスタ1354、トランジスタ1352、配線1315の順で並んでもよい。
【0465】
配線1311(RS)は、トランジスタ1353を制御するための信号線としての機能
を有する。配線1312(TX)は、トランジスタ1351を制御するための信号線とし
ての機能を有する。配線1313(SE)は、トランジスタ1354を制御するための信
号線としての機能を有する。配線1314(GND)は、基準電位(例えばGND)を設
定する信号線としての機能を有する。配線1315(OUT)は、トランジスタ1352
から出力される信号を読み出すための信号線としての機能を有する。配線1316は電荷
蓄積部(FD)から光電変換素子1360を介して電荷を出力するための信号線としての
機能を有し、図51(A)の回路においては低電位線である。また、配線1317は電荷
蓄積部(FD)の電位をリセットするための信号線としての機能を有し、図51(A)の
回路においては高電位線である。
【0466】
次に、図51(A)に示す各素子の構成について説明する。
【0467】
<6-2.光電変換素子>
光電変換素子1360には、セレンまたはセレンを含む化合物(以下、セレン系材料と
する)を有する素子、あるいはシリコンを有する素子(例えば、pin型の接合が形成さ
れた素子)を用いることができる。また、酸化物半導体を用いたトランジスタと、セレン
系材料を用いた光電変換素子とを組み合わせることで信頼性を高くすることができるため
好ましい。
【0468】
<6-3.トランジスタ>
トランジスタ1351、トランジスタ1352、トランジスタ1353、およびトラン
ジスタ1354は、非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコン
などのシリコン半導体を用いて形成することも可能であるが、酸化物半導体を用いたトラ
ンジスタで形成することが好ましい。酸化物半導体でチャネル形成領域を形成したトラン
ジスタは、極めてオフ電流が低い特性を示す特徴を有している。また、酸化物半導体でチ
ャネル形成領域を形成したトランジスタとしては、例えば、実施の形態1に示すトランジ
スタを用いることができる。
【0469】
特に、電荷蓄積部(FD)と接続されているトランジスタ1351、及びトランジスタ
1353のリーク電流が大きいと、電荷蓄積部(FD)に蓄積された電荷が保持できる時
間が十分でなくなる。したがって、少なくとも当該二つのトランジスタに酸化物半導体を
用いたトランジスタを使用することで、電荷蓄積部(FD)からの不要な電荷の流出を防
止することができる。
【0470】
また、トランジスタ1352、及びトランジスタ1354においても、リーク電流が大
きいと、配線1314または配線1315に不必要な電荷の出力が起こるため、これらの
トランジスタとして、酸化物半導体でチャネル形成領域を形成したトランジスタを用いる
ことが好ましい。
【0471】
また、図51(A)において、ゲート電極が一つの構成のトランジスタについて例示し
たが、これに限定されず、例えば、複数のゲート電極を有する構成としてもよい。複数の
ゲート電極を有するトランジスタとしては、例えば、チャネル形成領域が形成される半導
体膜と重なる、第1のゲート電極と、第2のゲート電極(バックゲート電極ともいう)と
、を有する構成とすればよい。バックゲート電極としては、例えば、第1のゲート電極と
同じ電位、フローティング、または第1のゲート電極と異なる電位を与えればよい。
【0472】
<6-4.回路動作のタイミングチャート>
次に、図51(A)に示す回路の回路動作の一例について図51(B)に示すタイミン
グチャートを用いて説明する。
【0473】
図51(B)では簡易に説明するため、各配線の電位は、二値変化する信号として与え
る。ただし、各電位はアナログ信号であるため、実際には状況に応じて二値に限らず種々
の値を取り得る。なお、図51(B)に示す信号1401は配線1311(RS)の電位
、信号1402は配線1312(TX)の電位、信号1403は配線1313(SE)の
電位、信号1404は電荷蓄積部(FD)の電位、信号1405は配線1315(OUT
)の電位に相当する。なお、配線1316の電位は常時”Low”、配線1317の電位
は常時”High”とする。
【0474】
時刻Aにおいて、配線1311の電位(信号1401)を”High”、配線1312
の電位(信号1402)を”High”とすると、電荷蓄積部(FD)の電位(信号14
04)は配線1317の電位(”High”)に初期化され、リセット動作が開始される
。なお、配線1315の電位(信号1405)は、”High”にプリチャージしておく
【0475】
時刻Bにおいて、配線1311の電位(信号1401)を”Low”とするとリセット
動作が終了し、蓄積動作が開始される。ここで、光電変換素子1360には逆方向バイア
スが印加されるため、逆方向電流により、電荷蓄積部(FD)の電位(信号1404)が
低下し始める。光電変換素子1360は、光が照射されると逆方向電流が増大するので、
照射される光の量に応じて電荷蓄積部(FD)の電位(信号1404)の低下速度は変化
する。すなわち、光電変換素子1360に照射する光の量に応じて、トランジスタ135
4のソースとドレイン間のチャネル抵抗が変化する。
【0476】
時刻Cにおいて、配線1312の電位(信号1402)を”Low”とすると蓄積動作
が終了し、電荷蓄積部(FD)の電位(信号1404)は一定となる。ここで、当該電位
は、蓄積動作中に光電変換素子1360が生成した電荷量により決まる。すなわち、光電
変換素子1360に照射されていた光の量に応じて変化する。また、トランジスタ135
1およびトランジスタ1353は、酸化膜半導体でチャネル形成領域を形成したオフ電流
が極めて低いトランジスタで構成されているため、後の選択動作(読み出し動作)を行う
まで、電荷蓄積部(FD)の電位を一定に保つことが可能である。
【0477】
なお、配線1312の電位(信号1402)を”Low”とする際に、配線1312と
電荷蓄積部(FD)との間における寄生容量により、電荷蓄積部(FD)の電位に変化が
生じることがある。当該電位の変化量が大きい場合は、蓄積動作中に光電変換素子136
0が生成した電荷量を正確に取得できないことになる。当該電位の変化量を低減するには
、トランジスタ1351のゲート電極-ソース電極(もしくはゲート電極-ドレイン電極
)間容量を低減する、トランジスタ1352のゲート容量を増大する、電荷蓄積部(FD
)に保持容量を設ける、などの対策が有効である。なお、本実施の形態では、これらの対
策により当該電位の変化を無視できるものとしている。
【0478】
時刻Dに、配線1313の電位(信号1403)を”High”にすると、トランジス
タ1354が導通して選択動作が開始され、配線1314と配線1315が、トランジス
タ1352とトランジスタ1354とを介して導通する。そして、配線1315の電位(
信号1405)は、低下していく。なお、配線1315のプリチャージは、時刻D以前に
終了しておけばよい。ここで、配線1315の電位(信号1405)が低下する速さは、
トランジスタ1352のソース電極とドレイン電極間の電流に依存する。すなわち、蓄積
動作中に光電変換素子1360に照射されている光の量に応じて変化する。
【0479】
時刻Eにおいて、配線1313の電位(信号1403)を”Low”にすると、トラン
ジスタ1354が遮断されて選択動作は終了し、配線1315の電位(信号1405)は
、一定値となる。ここで、一定値となる値は、光電変換素子1360に照射されていた光
の量に応じて変化する。したがって、配線1315の電位を取得することで、蓄積動作中
に光電変換素子1360に照射されていた光の量を知ることができる。
【0480】
より具体的には、光電変換素子1360に照射されている光が強いと、電荷蓄積部(F
D)の電位、すなわちトランジスタ1352のゲート電圧は低下する。そのため、トラン
ジスタ1352のソース電極-ドレイン電極間に流れる電流は小さくなり、配線1315
の電位(信号1405)はゆっくりと低下する。したがって、配線1315からは比較的
高い電位を読み出すことができる。
【0481】
逆に、光電変換素子1360に照射されている光が弱いと、電荷蓄積部(FD)の電位
、すなわち、トランジスタ1352のゲート電圧は高くなる。そのため、トランジスタ1
352のソース電極-ドレイン電極間に流れる電流は大きくなり、配線1315の電位(
信号1405)は速く低下する。したがって、配線1315からは比較的低い電位を読み
出すことができる。
【0482】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可
能である。
【0483】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、図52
用いて説明を行う。
【0484】
<7.表示装置の回路構成>
図52(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502と
いう)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(
以下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路50
6という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成とし
てもよい。
【0485】
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されている
ことが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504
の一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回
路部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated B
onding)によって、実装することができる。
【0486】
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置され
た複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回
路部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ
504aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するため
の回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
【0487】
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、
端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力す
る。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力さ
れ、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以
下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲート
ドライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃
至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号
を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ50
4aは、別の信号を供給することも可能である。
【0488】
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、
端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元とな
る信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路
501に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは
、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信
号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与え
られる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有す
る。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有す
る。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも
可能である。
【0489】
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。
ソースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、
画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを
用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0490】
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを
介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介し
てデータ信号が入力される。また、複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ
504aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列
目の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ
504aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(
nはY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
【0491】
図52(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路5
01の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドラ
イバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保
護回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することが
できる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配
線に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び
制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0492】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該
配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0493】
図52(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路50
6を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:
静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。
ただし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに
保護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続
した構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成
とすることもできる。
【0494】
また、図52(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bに
よって駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例
えば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成
された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実
装する構成としても良い。
【0495】
また、図52(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図52(B)に示す構成
とすることができる。
【0496】
図52(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容
量素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを
適用することができる。
【0497】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定
される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複
数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位
(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の
電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0498】
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモ
ード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned M
icro-cell)モード、OCB(Optically Compensated
Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqu
id Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Li
quid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Ve
rtical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、又はTBA
(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。
また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electric
ally Controlled Birefringence)モード、PDLC(P
olymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC
(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホ
ストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様
々なものを用いることができる。
【0499】
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイ
ン電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の
電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線G
L_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、オン状態またはオフ状態になるこ
とにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0500】
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL
)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続され
る。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される
。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0501】
例えば、図52(B)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、図52(A)
に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ
550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0502】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで
保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0503】
また、図52(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図52(C)に示す構成
とすることができる。
【0504】
また、図52(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素
子562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554
のいずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる
【0505】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
配線(以下、データ線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ5
52のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電
気的に接続される。
【0506】
トランジスタ552は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデー
タの書き込みを制御する機能を有する。
【0507】
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL
_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイ
ン電極の他方に電気的に接続される。
【0508】
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0509】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552の
ソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0510】
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0511】
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0512】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0513】
図52(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、図52(A)に示すゲ
ートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552を
オン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0514】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0515】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0516】
(実施の形態8)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明したトランジスタの適用可能な回路構成の
一例について、図53乃至図56を用いて説明する。
【0517】
なお、本実施の形態においては、先の実施の形態で説明した酸化物半導体を有するトラ
ンジスタを、OSトランジスタと呼称して以下説明を行う。
【0518】
<8.インバータ回路の構成例>
図53(A)には、駆動回路が有するシフトレジスタやバッファ等に適用することがで
きるインバータの回路図を示す。インバータ800は、入力端子INに与える信号の論理
を反転した信号を出力端子OUTに出力する。インバータ800は、複数のOSトランジ
スタを有する。信号SBGは、OSトランジスタの電気特性を可変するための信号である
【0519】
図53(B)は、インバータ800の一例となる回路図である。インバータ800は、
OSトランジスタ810、およびOSトランジスタ820を有する。インバータ800は
、nチャネル型で作製することができ、所謂単極性の回路構成とすることができる。その
ため、CMOSインバータと比較して、低コストで作製することが可能である。
【0520】
OSトランジスタ810、820は、フロントゲートとして機能する第1ゲートと、バ
ックゲートとして機能する第2ゲートと、ソースまたはドレインの一方として機能する第
1端子、ソースまたはドレインの他方として機能する第2端子を有する。
【0521】
OSトランジスタ810の第1ゲートは、第2端子に接続される。OSトランジスタ8
10の第2ゲートは、信号SBGを伝える配線に接続される。OSトランジスタ810の
第1端子は、電圧VDDを与える配線に接続される。OSトランジスタ810の第2端子
は、出力端子OUTに接続される。
【0522】
OSトランジスタ820の第1ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジス
タ820の第2ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジスタ820の第1端
子は、出力端子OUTに接続される。OSトランジスタ820の第2端子は、電圧VSS
を与える配線に接続される。
【0523】
図53(C)は、インバータ800の動作を説明するためのタイミングチャートである
図53(C)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの
信号波形、信号SBGの信号波形、およびOSトランジスタ810(FET810)のし
きい値電圧の変化について示している。
【0524】
信号SBGはOSトランジスタ810の第2ゲートに与えることで、OSトランジスタ
810のしきい値電圧(VTH)を制御することができる。
【0525】
信号SBGは、VTHをマイナスシフトさせるための電圧VBG_A、VTHをプラス
シフトさせるための電圧VBG_Bを有する。第2ゲートに電圧VBG_Aを与えること
で、OSトランジスタ810はしきい値電圧VTH_Aにマイナスシフトさせることがで
きる。また、第2ゲートに電圧VBG_Bを与えることで、OSトランジスタ810は、
しきい値電圧VTH_Bにプラスシフトさせることができる。
【0526】
つまりOSトランジスタ810は、図54(A)に示すグラフのように、第2ゲートの
電圧を大きくすることで、破線840で表される曲線にシフトさせることができる。また
第2ゲートの電圧を小さくすることで、実線841で表される曲線にシフトさせることが
できる。
【0527】
しきい値電圧VTH_Bにプラスシフトさせることで、OSトランジスタ810は電流
が流れにくい状態とすることができる。図54(B)に図示するように、このとき流れる
電流Iを極めて小さくすることができる。そのため、入力端子INに与える信号がハイ
レベルでOSトランジスタ820はオン状態(ON)のとき、出力端子OUTの電圧の下
降を急峻に行うことができる。したがって、図53(C)に示すタイミングチャートにお
ける出力端子の信号波形831を急峻な変化にすることができる。また電圧VDDを与え
る配線と、電圧VSSを与える配線との間に流れる貫通電流を少なくすることができるた
め、低消費電力での動作を行うことができる。
【0528】
また、しきい値電圧VTH_Aにマイナスシフトさせることで、OSトランジスタ81
0は電流が流れやすい状態とすることができる。図54(C)に図示するように、このと
き流れる電流Iを少なくとも電流Iよりも大きくすることができる。そのため、入力
端子INに与える信号がローレベルでOSトランジスタ820はオフ状態(OFF)のと
き、出力端子OUTの電圧の上昇を急峻に行うことができる。したがって、図53(C)
に示すタイミングチャートにおける出力端子の信号波形832を急峻な変化にすることが
できる。
【0529】
なお、信号SBGによるOSトランジスタ810のVTH制御は、OSトランジスタ8
20の状態が切り替わる以前、すなわち時刻T1やT2よりも前に行うことが好ましい。
例えば、図53(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がハイレベルに切り
替わる時刻T1よりも前に、しきい値電圧VTH_Aから、しきい値電圧VTH_BにO
Sトランジスタ810のしきい値電圧を切り替えることが好ましい。また、図53(C)
に図示するように、入力端子INに与える信号がローレベルに切り替わる時刻T2よりも
前に、しきい値電圧VTH_Bからしきい値電圧VTH_AにOSトランジスタ810の
しきい値電圧を切り替えることが好ましい。
【0530】
なお、図53(C)のタイミングチャートでは、入力端子INに与える信号に応じて信
号SBGを切り替える構成を示したが、別の構成としてもよい。例えば、しきい値電圧を
制御するための電圧は、フローティング状態としたOSトランジスタ810の第2ゲート
に保持させる構成としてもよい。当該構成を実現可能な回路構成の一例について、図55
(A)に示す。
【0531】
図55(A)では、図53(B)で示した回路構成に加えて、OSトランジスタ850
を有する。OSトランジスタ850の第1端子は、OSトランジスタ810の第2ゲート
に接続される。またOSトランジスタ850の第2端子は、電圧VBG_B(あるいは電
圧VBG_A)を与える配線に接続される。OSトランジスタ850の第1ゲートは、信
号Sを与える配線に接続される。OSトランジスタ850の第2ゲートは、電圧VBG
_B(あるいは電圧VBG_A)を与える配線に接続される。
【0532】
図55(A)の動作について、図55(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
【0533】
図53(C)と同様に、OSトランジスタ810のしきい値電圧を制御するための電圧
は、入力端子INに与える信号がハイレベルに切り替わる時刻T3よりも前に、OSトラ
ンジスタ810の第2ゲートに与える構成とする。信号SをハイレベルとしてOSトラ
ンジスタ850をオン状態とし、ノードNBGにしきい値電圧を制御するための電圧V
G_Bを与える。
【0534】
ノードNBGが電圧VBG_Bとなった後は、OSトランジスタ850をオフ状態とす
る。OSトランジスタ850は、オフ電流が極めて小さいため、オフ状態にし続けること
で、一旦ノードNBGに保持させた電圧VBG_Bを保持することができる。そのため、
OSトランジスタ850の第2ゲートに電圧VBG_Bを与える動作の回数が減るため、
電圧VBG_Bの書き換えに要する分の消費電力を小さくすることができる。
【0535】
なお、図53(B)及び図55(A)の回路構成では、OSトランジスタ810の第2
ゲートに与える電圧を外部からの制御によって与える構成について示したが、別の構成と
してもよい。例えば、しきい値電圧を制御するための電圧を、入力端子INに与える信号
を基に生成し、OSトランジスタ810の第2ゲートに与える構成としてもよい。当該構
成を実現可能な回路構成の一例について、図56(A)に示す。
【0536】
図56(A)では、図53(B)で示した回路構成において、入力端子INとOSトラ
ンジスタ810の第2ゲートとの間にCMOSインバータ860を有する。CMOSイン
バータ860の入力端子は、入力端子INに接続される。CMOSインバータ860の出
力端子は、OSトランジスタ810の第2ゲートに接続される。
【0537】
図56(A)の動作について、図56(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
図56(B)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの信
号波形、CMOSインバータ860の出力波形IN_B、及びOSトランジスタ810(
FET810)のしきい値電圧の変化について示している。
【0538】
入力端子INに与える信号の論理を反転した信号である出力波形IN_Bは、図53
C)と同様に、OSトランジスタ810のしきい値電圧を制御できる。したがって、図5
4(A)乃至図54(C)で説明したように、OSトランジスタ810のしきい値電圧を
制御できる。例えば、図56(B)における時刻T4となるとき、入力端子INに与える
信号がハイレベルでOSトランジスタ820はオン状態となる。このとき、出力波形IN
_Bはローレベルとなる。そのため、OSトランジスタ810は電流が流れにくい状態と
することができ、出力端子OUTの電圧を急峻に下降させることができる。
【0539】
また、図56(B)における時刻T5となるとき、入力端子INに与える信号がローレ
ベルでOSトランジスタ820はオフ状態となる。このとき、出力波形IN_Bはハイレ
ベルとなる。そのため、OSトランジスタ810は電流が流れやすい状態とすることがで
き、出力端子OUTの電圧の上昇を急峻に行うことができる。
【0540】
以上説明したように本実施の形態の構成では、OSトランジスタを有するインバータに
おける、バックゲートの電圧を入力端子INの信号の論理にしたがって切り替える。当該
構成とすることで、OSトランジスタのしきい値電圧を制御することができる。入力端子
INに与える信号によってOSトランジスタのしきい値電圧を制御することで、出力端子
OUTの電圧の変化を急峻にすることができる。また、電源電圧を与える配線間の貫通電
流を小さくすることができる。そのため、低消費電力化を図ることができる。
【0541】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0542】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様の入出力装置について図57を用いて説明する。
【0543】
<9.入出力装置の構成例>
本発明の一態様の入出力装置は、画像を表示する機能と、タッチセンサとしての機能と
、を有する、インセル型のタッチパネルである。
【0544】
本発明の一態様の入出力装置が有する表示素子に限定は無い。液晶素子、MEMS(M
icro Electro Mechanical System)を利用した光学素子
、有機EL(Electro Luminescence)素子や発光ダイオード(LE
D:Light Emitting Diode)等の発光素子、電気泳動素子など、様
々な素子を、表示素子として適用することができる。
【0545】
本実施の形態では、横電界方式の液晶素子を用いた透過型の液晶表示装置を例に挙げて
説明する。
【0546】
本発明の一態様の入出力装置が有する検知素子(センサ素子ともいう)に限定は無い。
指やスタイラスなどの被検知体の近接又は接触を検知することのできる様々なセンサを、
検知素子として適用することができる。
【0547】
例えばセンサの方式としては、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方
式、光学方式、感圧方式など様々な方式を用いることができる。
【0548】
本実施の形態では、静電容量方式の検知素子を有する入出力装置を例に挙げて説明する
【0549】
静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。また、投
影型静電容量方式としては、自己容量方式、相互容量方式等がある。相互容量方式を用い
ると、同時多点検出が可能となるため好ましい。
【0550】
インセル型のタッチパネルとしては、代表的にはハイブリッドインセル型と、フルイン
セル型とがある。ハイブリッドインセル型は、表示素子を支持する基板と対向基板の両方
又は対向基板のみに、検知素子を構成する電極等が設けられた構成をいう。一方、フルイ
ンセル型は、表示素子を支持する基板のみに、検知素子を構成する電極等を設けた構成を
いう。本発明の一態様の入出力装置は、フルインセル型のタッチパネルである。フルイン
セル型のタッチパネルは、対向基板の構成を簡略化できるため、好ましい。
【0551】
また、本発明の一態様の入出力装置は、表示素子を構成する電極が、検知素子を構成す
る電極を兼ねるため、作製工程を簡略化でき、かつ、作製コストを低減でき、好ましい。
【0552】
また、本発明の一態様を適用することで、別々に作製された表示パネルと検知素子とを
貼り合わせる構成や、対向基板側に検知素子を作製する構成に比べて、入出力装置を薄型
化もしくは軽量化することができる、又は、入出力装置の部品点数を少なくすることがで
きる。
【0553】
また、本発明の一態様の入出力装置は、画素を駆動する信号を供給するFPCと、検知
素子を駆動する信号を供給するFPCの両方を、一方の基板側に配置する。これにより、
電子機器に組み込みやすく、また、部品点数を削減することが可能となる。なお、一つの
FPCにより、画素を駆動する信号と検知素子を駆動する信号が供給されてもよい。
【0554】
以下では、本発明の一態様の入出力装置の構成について説明する。
【0555】
[入出力装置の断面構成例1]
図57(A)に、入出力装置の隣り合う2つの副画素の断面図を示す。図57(A)に
示す2つの副画素はそれぞれ異なる画素が有する副画素である。
【0556】
図57(A)に示すように、入出力装置は、基板211上に、トランジスタ201、ト
ランジスタ203、及び液晶素子207a等を有する。また基板211上には、絶縁膜2
12、絶縁膜213、絶縁膜215、絶縁膜219等の絶縁膜が設けられている。
【0557】
例えば、赤色を呈する副画素、緑色を呈する副画素、及び青色を呈する副画素によって
1つの画素が構成されることで、表示部ではフルカラーの表示を行うことができる。なお
、副画素が呈する色は、赤、緑、及び青に限られない。画素には、例えば、白、黄、マゼ
ンタ、又はシアン等の色を呈する副画素を用いてもよい。
【0558】
副画素が有するトランジスタ201、203には、上記実施の形態で例示したトランジ
スタを適用することができる。
【0559】
液晶素子207aは、FFS(Fringe Field Switching)モー
ドが適用された液晶素子である。液晶素子207aは、導電膜251、導電膜252、及
び液晶249を有する。導電膜251と導電膜252との間に生じる電界により、液晶2
49の配向を制御することができる。導電膜251は、画素電極として機能することがで
きる。導電膜252は、共通電極として機能することができる。
【0560】
導電膜251及び導電膜252に、可視光を透過する導電性材料を用いることで、入出
力装置を、透過型の液晶表示装置として機能させることができる。また、導電膜251に
、可視光を反射する導電性材料を用い、導電膜252に可視光を透過する導電性材料を用
いることで、入出力装置を、反射型の液晶表示装置として機能させることができる。
【0561】
可視光を透過する導電性材料としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、
錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。具体的には、酸化インジウ
ム、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜
鉛酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウ
ム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化
物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛
などが挙げられる。なお、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む
膜は、例えば膜状に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる
【0562】
導電膜251に酸化物導電膜を用いることが好ましい。また、導電膜252に酸化物導
電膜を用いることが好ましい。酸化物導電膜は、酸化物半導体膜223に含まれる金属元
素を一種類以上有することが好ましい。例えば、導電膜251は、インジウムを含むこと
が好ましく、In-M-Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、またはSn)であることがさ
らに好ましい。同様に、導電膜252は、インジウムを含むことが好ましく、In-M-
Zn酸化物であることがさらに好ましい。
【0563】
なお、導電膜251と導電膜252のうち、少なくとも一方を、酸化物半導体を用いて
形成してもよい。上述の通り、同一の金属元素を有する酸化物半導体を、入出力装置を構
成する層のうち2層以上に用いることで、製造装置(例えば、成膜装置、加工装置等)を
2以上の工程で共通で用いることが可能となるため、製造コストを抑制することができる
【0564】
例えば、絶縁膜253に水素を含む窒化シリコン膜を用い、導電膜251に酸化物半導
体を用いると、絶縁膜253から供給される水素によって、酸化物半導体の導電率を高め
ることができる。
【0565】
可視光を反射する導電性材料としては、例えば、アルミニウム、銀、又はこれらの金属
材料を含む合金等が挙げられる。
【0566】
画素電極として機能する導電膜251は、トランジスタ203のソース又はドレインと
電気的に接続される。
【0567】
導電膜252は、櫛歯状の上面形状(平面形状ともいう)、又はスリットが設けられた
上面形状を有する。導電膜251と導電膜252の間には、絶縁膜253が設けられてい
る。導電膜251は、絶縁膜253を介して導電膜252と重なる部分を有する。また、
導電膜251と着色膜241とが重なる領域において、導電膜251上に導電膜252が
配置されていない部分を有する。
【0568】
絶縁膜253上には、導電膜255が設けられている。導電膜255は、導電膜252
と電気的に接続されており、導電膜252の補助配線として機能することができる。共通
電極と電気的に接続する補助配線を設けることで、共通電極の抵抗に起因する電圧降下を
抑制することができる。また、このとき、金属酸化物を含む導電膜と、金属を含む導電膜
の積層構造とする場合には、ハーフトーンマスクを用いたパターニング技術により形成す
ると、工程を簡略化できるため好ましい。
【0569】
導電膜255は、導電膜252よりも抵抗値の低い膜とすればよい。導電膜255は、
例えば、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、銀
、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらの元素を含む合金材料を用いて、単層
で又は積層して形成することができる。
【0570】
入出力装置の使用者から視認されないよう、導電膜255は、遮光膜243等と重なる
位置に設けられることが好ましい。
【0571】
着色膜241は、液晶素子207aと重なる部分を有する。遮光膜243は、トランジ
スタ201、203のうち、少なくとも一方と重なる部分を有する。
【0572】
絶縁膜245は、着色膜241や遮光膜243等に含まれる不純物が液晶249に拡散
することを防ぐオーバーコートとしての機能を有することが好ましい。絶縁膜245は、
不要であれば設けなくてもよい。
【0573】
なお、液晶249の上面及び下面のいずれか一方または双方には、配向膜が設けられて
いてもよい。配向膜は、液晶249の配向を制御することができる。例えば、図57(A
)において、導電膜252を覆う配向膜を形成してもよい。また、図57(A)において
、絶縁膜245と液晶249の間に、配向膜を有していてもよい。また、絶縁膜245が
、配向膜としての機能と、オーバーコートとしての機能の双方を有していてもよい。
【0574】
また、入出力装置は、スペーサ247を有する。スペーサ247は、基板211と基板
261との距離が一定以上近づくことを防ぐ機能を有する。
【0575】
図57(A)では、スペーサ247は、絶縁膜253上及び導電膜252上に設けられ
ている例を示すが、本発明の一態様はこれに限られない。スペーサ247は、基板211
側に設けられていてもよいし、基板261側に設けられていてもよい。例えば、絶縁膜2
45上にスペーサ247を形成してもよい。また、図57(A)では、スペーサ247が
、絶縁膜253及び絶縁膜245と接する例を示すが、基板211側又は基板261側の
いずれかに設けられた構造物と接していなくてもよい。
【0576】
スペーサ247として粒状のスペーサを用いてもよい。粒状のスペーサとしては、シリ
カなどの材料を用いることもできるが、樹脂やゴムなどの弾性を有する材料を用いること
が好ましい。このとき、粒状のスペーサは上下方向に潰れた形状となる場合がある。
【0577】
基板211及び基板261は、図示しない接着層によって貼り合わされている。基板2
11、基板261、及び接着層に囲まれた領域に、液晶249が封止されている。
【0578】
なお、入出力装置を、透過型の液晶表示装置として機能させる場合、偏光板を、表示部
を挟むように2つ配置する。偏光板よりも外側に配置されたバックライトからの光は偏光
板を介して入射される。このとき、導電膜251と導電膜252の間に与える電圧によっ
て液晶249の配向を制御し、光の光学変調を制御することができる。すなわち、偏光板
を介して射出される光の強度を制御することができる。また、入射光は着色膜241によ
って特定の波長領域以外の光が吸収されるため、射出される光は例えば赤色、青色、又は
緑色を呈する光となる。
【0579】
また、偏光板に加えて、例えば円偏光板を用いることができる。円偏光板としては、例
えば直線偏光板と1/4波長位相差板を積層したものを用いることができる。円偏光板に
より、入出力装置の表示の視野角依存を低減することができる。
【0580】
なお、ここでは液晶素子207aとしてFFSモードが適用された素子を用いたが、こ
れに限られず様々なモードが適用された液晶素子を用いることができる。例えば、VA(
Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nemati
c)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、ASM(Axi
ally Symmetric aligned Micro-cell)モード、OC
B(Optically Compensated Birefringence)モー
ド、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、A
FLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード
等が適用された液晶素子を用いることができる。
【0581】
また、入出力装置にノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モ
ードを採用した透過型の液晶表示装置を適用してもよい。垂直配向モードとしては、MV
A(Multi-Domain Vertical Alignment)モード、PV
A(Patterned Vertical Alignment)モード、ASVモー
ドなどを用いることができる。
【0582】
なお、液晶素子は、液晶の光学変調作用によって光の透過又は非透過を制御する素子で
ある。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界
又は斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、液晶素子に用いる液晶としては
、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Po
lymer Dispersed Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反
強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリッ
ク相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0583】
また、液晶材料としては、ポジ型の液晶又はネガ型の液晶のいずれを用いてもよく、適
用するモードや設計に応じて最適な液晶材料を用いればよい。
【0584】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発
現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組
成物を液晶249に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応
答速度が短く、光学的等方性である。また、ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液
晶組成物は、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくても
よいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊
を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる
【0585】
ここで、基板261よりも上部に、指又はスタイラスなどの被検知体が直接触れる基板
を設けてもよい。またこのとき、基板261と当該基板との間に偏光板又は円偏光板を設
けることが好ましい。その場合、当該基板上に保護層(セラミックコート等)を設けるこ
とが好ましい。保護層は、例えば酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、
イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの無機絶縁材料を用いることができる。また
、当該基板に強化ガラスを用いてもよい。強化ガラスは、イオン交換法や風冷強化法等に
より物理的、又は化学的な処理が施され、その表面に圧縮応力を加えたものを用いること
ができる。
【0586】
図57(A)では、左の副画素が有する導電膜252と、右の副画素が有する導電膜2
52との間に形成される容量を利用して、被検知体の近接又は接触等を検知することがで
きる。すなわち本発明の一態様の入出力装置において、導電膜252は、液晶素子の共通
電極と、検知素子の電極と、の両方を兼ねる。
【0587】
このように、本発明の一態様の入出力装置では、液晶素子を構成する電極が、検知素子
を構成する電極を兼ねるため、作製工程を簡略化でき、かつ作製コストを低減できる。ま
た、入出力装置の薄型化、軽量化を図ることができる。
【0588】
導電膜252は、補助配線として機能する導電膜255と電気的に接続されている。導
電膜255を設けることで、検知素子の電極の抵抗を低減させることができる。検知素子
の電極の抵抗が低下することで、検知素子の電極の時定数を小さくすることができる。検
知素子の電極の時定数が小さいほど、検出感度を高めることができ、さらには、検出の精
度を高めることができる。
【0589】
また、検知素子の電極と信号線との間の容量が大きすぎると、検知素子の電極の時定数
が大きくなる場合がある。そのため、トランジスタと検知素子の電極との間に、平坦化機
能を有する絶縁膜を設け、検知素子の電極と信号線との間の容量を削減することが好まし
い。例えば、図57(A)では、平坦化機能を有する絶縁膜として絶縁膜219を有する
。絶縁膜219を設けることで、導電膜252と信号線との容量を小さくすることができ
る。これにより、検知素子の電極の時定数を小さくすることができる。前述の通り、検知
素子の電極の時定数が小さいほど、検出感度を高めることができ、さらには、検出の精度
を高めることができる。
【0590】
例えば、検知素子の電極の時定数は、0秒より大きく1×10-4秒以下、好ましくは
0秒より大きく5×10-5秒以下、より好ましくは0秒より大きく5×10-6秒以下
、より好ましくは0秒より大きく5×10-7秒以下、より好ましくは0秒より大きく2
×10-7秒以下であるとよい。特に、時定数を1×10-6秒以下とすることで、ノイ
ズの影響を抑制しつつ高い検出感度を実現することができる。
【0591】
[入出力装置の断面構成例2]
図57(B)に、図57(A)とは異なる、隣り合う2つの画素の断面図を示す。図5
7(B)に示す2つの副画素はそれぞれ異なる画素が有する副画素である。
【0592】
図57(B)に示す構成例2は、導電膜251、導電膜252、絶縁膜253、及び導
電膜255の積層順が、図57(A)に示す構成例1と異なる。なお、構成例2において
、構成例1と同様の部分に関しては、上記を参照することができる。
【0593】
具体的には、構成例2は、絶縁膜219上に導電膜255を有し、導電膜255上に導
電膜252を有し、導電膜252上に絶縁膜253を有し、絶縁膜253上に導電膜25
1を有する。
【0594】
図57(B)に示す液晶素子207bのように、上層に設けられ、櫛歯状又はスリット
状の上面形状を有する導電膜251を画素電極とし、下層に設けられる導電膜252を共
通電極として用いることもできる。その場合にも、導電膜251がトランジスタ203の
ソース又はドレインと電気的に接続されればよい。
【0595】
図57(B)では、左の副画素が有する導電膜252と、右の副画素が有する導電膜2
52との間に形成される容量を利用して、被検知体の近接又は接触等を検知することがで
きる。すなわち本発明の一態様の入出力装置において、導電膜252は、液晶素子の共通
電極と、検知素子の電極と、の両方を兼ねる。
【0596】
なお、構成例1(図57(A))では、検知素子の電極と共通電極を兼ねる導電膜25
2が、画素電極として機能する導電膜251よりも表示面側(被検知体に近い側)に位置
する。これにより、導電膜251が導電膜252よりも表示面側に位置する構成例2より
も、構成例1では、検出感度が向上する場合がある。
【0597】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0598】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュール及び電子機器
について、図58乃至図60を用いて説明を行う。
【0599】
<10-1.表示モジュール>
図58に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002と
の間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続され
た表示パネル8006、バックライト8007、フレーム8009、プリント基板801
0、バッテリ8011を有する。
【0600】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
【0601】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及び表示パネル
8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0602】
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル
8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基
板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル8
006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0603】
バックライト8007は、光源8008を有する。なお、図58において、バックライ
ト8007上に光源8008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例
えば、バックライト8007の端部に光源8008を配置し、さらに光拡散板を用いる構
成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射
型パネル等の場合においては、バックライト8007を設けない構成としてもよい。
【0604】
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動
作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレ
ーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0605】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は
、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0606】
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0607】
<10-2.電子機器>
図59(A)乃至図59(G)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐
体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又
は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、
加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電
場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する
機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有することができる。
【0608】
図59(A)乃至図59(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。
例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッ
チパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(
プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々な
コンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信ま
たは受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表
示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図59(A)乃至図59(G)に
示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有すること
ができる。また、図59(A)乃至図59(G)には図示していないが、電子機器には、
複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を
撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵
)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0609】
図59(A)乃至図59(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0610】
図59(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置9
100は、表示部9001を大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上
の表示部9001を組み込むことが可能である。
【0611】
図59(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は
、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具
体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、
スピーカ、接続端子、センサ等を設けてもよい。また、携帯情報端末9101は、文字や
画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン9050(
操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001の一の面に表示することが
できる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示すること
ができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールやSNS(ソーシャル・ネッ
トワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、電子メールやSNSなどの
題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信
の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置に、情報9051の代わ
りに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
【0612】
図59(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は
、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、
情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携
帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状
態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信し
た電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位
置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示
を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0613】
図59(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末
9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信
、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表
示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行するこ
とが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハン
ズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を
有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。ま
た接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子900
6を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0614】
図59(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図であ
る。また、図59(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、図59
(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変
化する途中の状態の斜視図であり、図59(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状
態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開し
た状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末92
01が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000
に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることによ
り、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させるこ
とができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲
げることができる。
【0615】
また、図60(A)(B)は、複数の表示パネルを有する表示装置の斜視図である。な
お、図60(A)は、複数の表示パネルが巻き取られた形態の斜視図であり、図60(B
)は、複数の表示パネルが展開された状態の斜視図である。
【0616】
図60(A)(B)に示す表示装置9500は、複数の表示パネル9501と、軸部9
511と、軸受部9512と、を有する。また、複数の表示パネル9501は、表示領域
9502と、透光性を有する領域9503と、を有する。
【0617】
また、複数の表示パネル9501は、可撓性を有する。また、隣接する2つの表示パネ
ル9501は、それらの一部が互いに重なるように設けられる。例えば、隣接する2つの
表示パネル9501の透光性を有する領域9503を重ね合わせることができる。複数の
表示パネル9501を用いることで、大画面の表示装置とすることができる。また、使用
状況に応じて、表示パネル9501を巻き取ることが可能であるため、汎用性に優れた表
示装置とすることができる。
【0618】
また、図60(A)(B)においては、表示領域9502が隣接する表示パネル950
1で離間する状態を図示しているが、これに限定されず、例えば、隣接する表示パネル9
501の表示領域9502を隙間なく重ねあわせることで、連続した表示領域9502と
してもよい。
【0619】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有す
ることを特徴とする。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機
器にも適用することができる。
【0620】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【符号の説明】
【0621】
100 トランジスタ
100A トランジスタ
100B トランジスタ
100C トランジスタ
100D トランジスタ
100E トランジスタ
100F トランジスタ
100G トランジスタ
100H トランジスタ
100J トランジスタ
100K トランジスタ
102 基板
104 絶縁膜
106 導電膜
107 酸化物半導体膜
108 酸化物半導体膜
108_1 酸化物半導体膜
108_2 酸化物半導体膜
108_3 酸化物半導体膜
108d ドレイン領域
108f 領域
108i チャネル領域
108s ソース領域
110 絶縁膜
110_0 絶縁膜
112 金属酸化膜
112_0 金属酸化膜
112a 導電膜
112b 導電膜
114 導電膜
114_0 導電膜
116 絶縁膜
118 絶縁膜
120 導電膜
120a 導電膜
120b 導電膜
122 絶縁膜
140 マスク
141a 開口部
141b 開口部
143 開口部
145 不純物元素
201 トランジスタ
203 トランジスタ
207a 液晶素子
207b 液晶素子
211 基板
212 絶縁膜
213 絶縁膜
215 絶縁膜
219 絶縁膜
223 酸化物半導体膜
241 着色膜
243 遮光膜
245 絶縁膜
247 スペーサ
249 液晶
251 導電膜
252 導電膜
253 絶縁膜
255 導電膜
261 基板
300A トランジスタ
300B トランジスタ
300C トランジスタ
300D トランジスタ
300E トランジスタ
300F トランジスタ
302 基板
304 導電膜
306 絶縁膜
307 絶縁膜
308 酸化物半導体膜
308_1 酸化物半導体膜
308_2 酸化物半導体膜
308_3 酸化物半導体膜
312a 導電膜
312b 導電膜
314 絶縁膜
316 絶縁膜
318 絶縁膜
320a 導電膜
320b 導電膜
341a 開口部
341b 開口部
342a 開口部
342b 開口部
342c 開口部
501 画素回路
502 画素部
504 駆動回路部
504a ゲートドライバ
504b ソースドライバ
506 保護回路
507 端子部
550 トランジスタ
552 トランジスタ
554 トランジスタ
560 容量素子
562 容量素子
570 液晶素子
572 発光素子
700 表示装置
701 基板
702 画素部
704 ソースドライバ回路部
705 基板
706 ゲートドライバ回路部
708 FPC端子部
710 信号線
711 配線部
712 シール材
716 FPC
730 絶縁膜
732 封止膜
734 絶縁膜
736 着色膜
738 遮光膜
750 トランジスタ
752 トランジスタ
760 接続電極
770 平坦化絶縁膜
772 導電膜
774 導電膜
775 液晶素子
776 液晶層
778 構造体
780 異方性導電膜
782 発光素子
784 導電膜
786 EL層
788 導電膜
790 容量素子
800 インバータ
810 OSトランジスタ
820 OSトランジスタ
831 信号波形
832 信号波形
840 破線
841 実線
850 OSトランジスタ
860 CMOSインバータ
1280a p型トランジスタ
1280b n型トランジスタ
1280c n型トランジスタ
1281 容量素子
1282 トランジスタ
1311 配線
1312 配線
1313 配線
1314 配線
1315 配線
1316 配線
1317 配線
1351 トランジスタ
1352 トランジスタ
1353 トランジスタ
1354 トランジスタ
1360 光電変換素子
1401 信号
1402 信号
1403 信号
1404 信号
1405 信号
8000 表示モジュール
8001 上部カバー
8002 下部カバー
8003 FPC
8004 タッチパネル
8005 FPC
8006 表示パネル
8007 バックライト
8008 光源
8009 フレーム
8010 プリント基板
8011 バッテリ
9000 筐体
9001 表示部
9003 スピーカ
9005 操作キー
9006 接続端子
9007 センサ
9008 マイクロフォン
9050 操作ボタン
9051 情報
9052 情報
9053 情報
9054 情報
9055 ヒンジ
9100 テレビジョン装置
9101 携帯情報端末
9102 携帯情報端末
9200 携帯情報端末
9201 携帯情報端末
9500 表示装置
9501 表示パネル
9502 表示領域
9503 領域
9511 軸部
9512 軸受部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60