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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171414
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】毒性対象減消装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 8/80 20210101AFI20231124BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20231124BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20231124BHJP
【FI】
F24F8/80 218
A61L9/20
F24F8/22
F24F8/80 236
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023161732
(22)【出願日】2023-09-25
(62)【分割の表示】P 2021167209の分割
【原出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
(57)【要約】
【課題】簡易な構造によって、流体を吸い込みながら、流体に含まれている毒性対象等を確実に分解又は不活化及び/又は死滅させて減消させつつ、毒性対象を減消させた後の流体を外部に減速的に排出することで徐々に且つ確実に拡散させることなく毒性対象を減消させる手段を提供する。
【解決手段】流体を吸い込む吸込部と、流体を排出する排出部と、流体に含まれる毒性対象を分解及び/又は不活化及び/又は滅菌させる波動を放出する減消手段と、吸込部及び排出部を連通させる流路と、を具え、吸込部は、流路の上方に配設され、排出部は、吸込部よりも下方に配設される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸い込む吸込部と、
上記流体を排出する排出部と、
上記流体に含まれる毒性対象を分解及び/又は不活化及び/又は滅菌させる波動を放出する減消手段と、
上記吸込部及び上記排出部を連通させる流路と、を具え、
上記吸込部は、上記流路の上方に配設され、
上記排出部は、上記吸込部よりも下方に配設されることを特徴とする毒性対象減消装置。
【請求項2】
前記排出部における流体の排出口の総開口面積は、前記吸込部における流体の吸込口の開口面積よりも大きく、
前記吸込部から吸込む流体の流速と比較し、前記排出部から排出する流体の流速を低下させることを特徴とする請求項1記載の毒性対象減消装置。
【請求項3】
前記吸込部は、筐体の端面に配されることを特徴とする請求項1又は2記載の毒性対象減消装置。
【請求項4】
前記排出口は、前記筐体の周面に配されることを特徴とする請求項2記載の毒性対象減消装置。
【請求項5】
前記排出口は、前記筐体の周方向に沿って複数配され、
各前記排出口の開口面積の総和としての総開口面積が前記吸込口の開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項4記載の毒性対象減消装置。
【請求項6】
前記排出部は、前記吸込部が流体を吸込可能な領域以外の領域に流体を排出することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の毒性対象減消装置。
【請求項7】
前記減消手段は、前記流路に紫外線を放射して毒性対象を減消させる紫外線光源を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の毒性対象装置。
【請求項8】
前記紫外線光源は、略管形状を有し、前記流路内に配されることを特徴とする請求項7記載の毒性対象減消装置。
【請求項9】
前記毒性対象は、菌、ウイルス及び/又は有害分子であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の毒性対象減消装置。
【請求項10】
前記吸込部及び/又は前記排出部と、前記流路との間に異物が付着し得るフィルタを配することを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の毒性対象減消装置。
【請求項11】
前記流路内で前記減消手段から放出された波動を繰り返し反射させる反射面を有することを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の毒性対象減消装置。
【請求項12】
前記反射面は、前記流路を形成する内周面の一部又は全域に配されることを特徴とする請求項11記載の毒性対象減消装置。
【請求項13】
前記流路は、両端部に流体が通過し得る開口部と、端部間を連通させる内部空間とを有する筒形部によって形成されることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の毒性対象減消装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毒性対象減消装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の空気を浄化する空気清浄機が知られており、このような空気清浄機によれば空気と共に臭気物質、塵埃、花粉、菌、ウイルス及びVOC(揮発性有機化合物)等の汚染物質を吸込口から吸引し、フィルタ等で集塵している(例えば、特許文献1参照)。
また、フィルタと静電霧化装置とを具える空気清浄機が提案されている。この空気清浄機は、室内に浮遊する塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等を吸気口から空気清浄機内に取り込むと共に、静電霧化装置からはナノコロイドを粒子として含有した帯電水滴を放出し、送風ファンにより清浄空気と一緒に排気口から放出している。帯電水滴は、吸気口近傍に放出されて塵埃・煙・花粉・細菌・かび・アレルゲン・ウイルス等を帯電、粗大化させ、フィルタで捕集し易くしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-175113号公報
【特許文献1】特開2011-226744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された空気清浄機は、吸引した空気を上方に吹き出してこれによって還流してくる空気中の汚染物質の濃度を検知しているため、噴き出した空気によって室内の空気を攪拌してしまう。即ち、所定の領域内で汚染物質が滞留していた場合、空気清浄機の動作によって汚染物質を室内空間に散乱、攪拌、拡散させてしまう。また、汚染物質の内、ウイルスは、花粉や菌と比べてその大きさが極めて小さいため、フィルタの性能によっては全く捕集することができないということがある。そのような場合、空気清浄機によって噴き出した空気の還流に乗って捕集できなかったウイルスを室内で循環させ、却って室内空間でウイルスを散乱、攪拌、拡散させてしまい、病気の感染等を拡大させてしまうという問題がある。
また、特許文献2に記載された空気清浄機においても、排気口から放出している清浄空気で室内の空気を攪拌しているため、室内で滞留しているウイルスを散乱、攪拌、拡散させてしまい、病気の感染等を拡大させてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、流体を吸い込みながら、流体に含まれている毒性対象等を確実に分解又は不活化及び/又は死滅させて減消させつつ、空間内で毒性対象を拡散させること無く徐々に且つ確実に毒性対象を減消させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の毒性対象減消装置は、流体を吸い込む吸込部と、上記流体を排出する排出部と、上記流体に含まれる毒性対象を分解及び/又は不活化及び/又は滅菌させる波動を放出する減消手段と、上記吸込部及び上記排出部を連通させる流路と、を具え、上記吸込部は、上記流路の上方に配設され、上記排出部は、上記吸込部よりも下方に配設されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記排出部における流体の排出口の総開口面積が、前記吸込部における流体の吸込口の開口面積よりも大きく、前記吸込部から吸込む流体の流速と比較し、前記排出部から排出する流体の流速を低下させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記吸込部が、筐体の端面に配されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記排出口が、前記筐体の周面に配されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記排出口が、前記筐体の周方向に沿って複数配され、各前記排出口の開口面積の総和としての総開口面積が前記吸込口の開口面積よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記排出部が、前記吸込部が流体を吸込可能な領域以外の領域に流体を排出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記減消手段が、前記流路に紫外線を放射して毒性対象を減消させる紫外線光源を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記紫外線光源が、略管形状を有し、前記流路内に配されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記毒性対象が、菌、ウイルス及び/又は有害分子であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記吸込部及び/又は前記排出部と、前記流路との間に異物が付着し得るフィルタを配することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記流路内で前記減消手段から放出された波動を繰り返し反射させる反射面を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記反射面が、前記流路を形成する内周面の一部又は全域に配されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の毒性対象減消装置は、前記流路が、両端部に流体が通過し得る開口部と、端部間を連通させる内部空間とを有する筒形部によって形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な構造によって、流体を吸い込みながら、流体に含まれている毒性対象等を確実に分解又は不活化及び/又は死滅させて減消させつつ、空間内で毒性対象を拡散させること無く徐々に且つ確実に毒性対象を減消させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の毒性対象減消装置を示す斜視図である。
図2】本発明の毒性対象減消装置を示す断面図である。
図3】筐体を除いた装置内部を示す斜視図である。
図4】紫外線抑制部を示す図である。
図5】毒性対象減消装置内部での空気の流れを示す図である。
図6】室内での空気の流れを示す図である。
図7】案内板を示す図である。
図8】案内板を示す図である。
図9】外面にヒートシンクを設けた筒形部を示す図である。
図10】毒性対象減消装置の他の例を示す断面図である。
図11】気流誘発部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の毒性対象減消装置の実施形態について説明する。毒性対象減消装置は、流体を吸い込む吸込部と、上記流体を排出する排出部と、上記流体に含まれる毒性対象を分解及び/又は不活化及び/又は滅菌させる波動(紫外線)を放出する減消手段と、上記吸込部及び上記排出部を連通させる流路を形成し、内周面に上記波動を繰り返し高次に反射させる反射面を有する筒形部と、を具えるものである。また、上記吸込部から流体を吸込んだときの流速と比して、排出部から排出する流体の流速が抑制されるように、排出部の開口を設定する。
【0022】
なお、ここで流体とは、気体、液体、粉体を含む概念であり、毒性対象とは、菌やウイルス等の病原微生物の他、有害分子を含んだホルムアルデヒドや亜硫酸ガス、亜硝酸ガス、臭気成分等を含むものであって少なくとも人体に対して毒性を有し、流体と共に移動する対象物である。
【0023】
図1は本発明の毒性対象減消装置1を示す斜視図、図2は本発明の毒性対象減消装置1を示す断面図である。毒性対象減消装置1は、立設される略筒形状の筐体2を具える。筐体2の上端面には、外部の空気を吸い込むための吸込部4が形成され、筐体2の周面には、外部へ空気を排出するための排出部6が形成される。
【0024】
また、筐体2の内部には、略筒形であって内周面が円周形状を成す筒形部8、毒性対象を減消させる減消手段としての紫外線放射部10、空気を流動させるための送風部12(流動発生部)等を配設している。吸込部4は、筐体2上部を開口させた吸込口を有し、吸込口を介して外部の空気が装置内部に流入する。
吸込部4近傍には、不図示のフィルタが配設され、フィルタとしては、例えば、主に50μm以上の粒子を捕集する粗塵用フィルタ、主に25μm以上の粒子を捕集する中高性能フィルタ(MEPAフィルタ)、0.3μmの粒子を捕集するHEPAフィルタ、0.15μmの粒子を捕集するULPAフィルタ等があり得る。勿論、フィルタは適宜位置、数で配することができ、例えば排出口6近傍等にも配することができる。
【0025】
排出部6は、筐体2の略中途部分に形成され、複数の排出口を筐体2の周面に沿って設けている。例えば、筐体2が略矩形断面の筒形状である場合、矩形を成す各面に排出口を形成している。また、排出口の総開口面積は、吸込口の開口面積と比して十分に大きくなるように例えば2倍以上に設定される。また、筐体2を矩形断面の筒形状とした場合、各面において排出口の開口面積を吸込口の開口面積の1/4を超え、好ましくは等倍を超える大きさとして総開口面積を2倍以上に設定することが望ましい。
【0026】
筐体2は、その内部に略筒形状の筒形部8、紫外線放射部10(減消手段)及び空気を流動させるための送風部12等を配する。筒形部8は、両端部に空気が通過し得る開口部と、端部間を連通させる内部空間(空洞)を有する。なお筒形部8の空洞は、空気の流動を案内し得る流路として機能する。従って、吸込部4を介して流入した空気は、筒形部8の一端部(上端部)から他端部(下端部)に向けて筒形部8内を通過する。また筒形部8は、内周面の横断面形状が略無端形状を有する。ここでは略円周形状の内周面を有するものとするが、勿論筒形部8の内周面は、横断面形状が多角形状(三角形状、四角形状、五角形状等)、楕円形状、長円形状、定幅図形(ルーローの多角形)等であってもよい。
【0027】
図3は筐体2を除いた装置内部を示す斜視図であり、筒形部8は、下端部を毒性対象減消装置1の基部1aに対して間隙を有するように固定されている。従って、基部1aと筒形部8との間には、通気口8aが形成される。また筒形部8は、筐体2に対して径方向に流路となる間隙を有する。即ち、筒形部8の外径は、筐体2の内径よりも小さく設定される。これにより、筐体2と筒形部8との間隙が、排出部6が連通する。
【0028】
毒性対象減消装置1内部では、吸込部4、筒形部8内側の空間、通気口8a、筒形部8と筐体2との間隙及び排出部6が流動可能に連通した流路が形成される。なお、流路内で空気の流動を妨げないように、筒形部8の空洞の横断面積は、吸込部4の開口面積以上とする。また、通気口8aの大きさ(開口面積)は、筒形部8の空洞の横断面積以上とし、筒形部8と筐体2との間隙の横断面積は、通気口8aの大きさ以上とする。
【0029】
筒形部8は、内周全域に反射面9を有する。反射面9は、紫外線を高次に繰り返し反射させ得る紫外線反射性材料によって成る。紫外線反射性材料は、拡散透過率が1%/1mm以上20%/1mm以下であり、且つ紫外線領域における全反射率が60%/1mm以上99.9%/1mm以下であって、拡散透過率と紫外線領域における全反射率との和は90%/1mm以上であることが好ましい。このような紫外線反射性材料としては、銀材、アルミニウム材、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene PTFE)、シリコン樹脂、内部に0.05μm以上10μm以下の気泡を含む石英ガラス、内部に0.05μm以上10μm以下の結晶粒を含む部分結晶化石英ガラス、0.05μm以上10μm以下の結晶粒状のアルミナ焼結体、及び0.05μm以上10μm以下の結晶粒状のムライト焼結体、炭酸マグネシウムやバリウム等のうちの少なくともいずれか一つを含むもの等があり得る。
反射面9は、金属(銀、アルミニウム、ニッケル、銅等)の薄膜を筒形部8の内面に設けることによっても構成し得る。また、適宜の母材表面に蒸着やスパッタリング等によって紫外線反射性材料を付着させて形成することも出来る。
【0030】
また、反射面9に銀材、アルミニウム材を用いる場合、表面の酸化を防止する為、コーティングとして機能する保護膜を表面に施してもよい。この場合の保護膜は、反射面9による反射率を低下させない素材、例えばアクリル樹脂、石英ガラス、PTFE等を用いることが出来る。尚、PTFEで保護膜を形成する方法には、蒸着やスパッタリング等が有り得る。
【0031】
また、反射面9は、筒形部8の表面上に薄膜を多層化させて形成するようにしてもよい。例えば、金属の薄膜、金属等を主成分とする合金の薄膜、酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム等)の膜等を重ねて多層化させることで反射面9を形成してもよい。なお一層当たりの膜の厚みは、例えば、紫外線の波長の1/4の整数倍(即ち、波長の1/4の奇数倍又は偶数倍)等に設定する。具体的に反射させる主な紫外線の波長を253.7(nm)と設定した場合、1層の厚みを63.4(nm)や、126.8(nm)、190.3(nm)等とすることができる。勿論、一層当たりの膜厚は、適宜設定可能であり、厚みが数10μm程度の所謂厚膜であってもよく、数μm程度の所謂薄膜であってもよく、数nm以下の所謂超薄膜であってもよい。また、多層膜を形成するに当たっては、母材表面を予め鏡面状態としつつ、屈折率及び/又は誘電率の異なる層を交互に形成するものであってもよい。
【0032】
また、筒形部8の内周面に、光触媒活性物質による膜を設けた領域を形成してもよい。即ち、紫外線の照射によって活性表面を生じさせることで、殺菌、抗ウイルス、消臭、有機塩素化合物・ホルムアルデヒド等を分解による空気の浄化等、毒性対象の減消を行ってもよい。なお、光触媒活性物質としては、酸化チタン、酸化タングステン等がある。
【0033】
紫外線放射部10は、毒性対象の分解、不活化、消毒、除菌、殺菌、滅菌等の減消行う紫外線を放射し、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、ネオン灯及び/又はLED等が有り得る。
紫外線放射部10は、長尺の管形状を有して筒形部8の内側、即ち空気の流路内に配置される。また紫外線放射部10は、その長手方向が筒形部8の軸方向に平行で、筒形部8の中心軸と略重畳するように配される。従って、紫外線放射部10は、反射面9に囲繞される。結果、紫外線放射部10から放射された紫外線は、反射面9で反射する。
【0034】
紫外線放射部10から放射される紫外線は、波長が200~300nm程度であることが好ましく、250~270nm近傍に設定することがより望ましい。勿論、紫外線は、少なくとも毒性対象を減消させ得るものであれば波長が260nm未満の近紫外線(UV-C)、遠紫外線(波長10~200nm)、極端紫外線(波長10~121nm)等であってもよい。また、波長が300nmを超える近紫外線(UV-A、UV-B)であってもよい。
【0035】
また、紫外線放射部10には、紫外線LED(Light Emitting Diode)を適用してもよい。このような紫外線LEDとして、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いたもの等がある。紫外線LEDは、例えば、略直線状に複数配設、又は面内に縦及び/又は横に整列して複数配設して紫外線放射部を構成することができる。
【0036】
なお、紫外線放射部10は、複数配してもよいことは言うまでもない。紫外線放射部10を複数配すればその分紫外線量が増加するので、毒性対象の減消効率を向上させることができる。
【0037】
また、筐体2には、紫外線放射部10から放射された紫外線が吸込部4を介して漏出しないように、紫外線抑制部14が配設される。紫外線抑制部14は、図4に示すように、屈折(屈曲)させた形状の板状部材を所定間隔で複数並列させることで成る。この場合の板状部材は、適宜形状を有し、例えば軸方向に対して傾斜した傾斜面14aを含み、軸方向視で該傾斜面14a同士を一部重畳させて並列させて紫外線放射部10から紫外線が外部に漏れるのを防止する。
【0038】
送風部12は、所謂プロペラ様の部材であり、筒形部8の軸心周りに回転する回転体、回転体の外周面に形成された複数の羽根、回転体を回転させるモータ等を具えて構成される。また、送風部12の種類、形状等は、特に限定されるものではなく、例えば、軸流ファン(プロペラファン)、斜流ファン、遠心ファン(多翼ファン、シロッコファン、ラジアルファン、プレートファン、ターボファン、リミットロードファン、エアフォイルファン等)、遠心軸流ファン、渦流ファン、横断流ファン(クロスフローファン等)等が有り得る。勿論、送風部12を複数設置してもよい。例えば、筒形部8の軸方向の両端部や、吸込部4の近傍等に送風部12を配設することも可能であり、複数の送風部12によって流動を発生させることも可能である。
【0039】
毒性対象減消装置1は、送風部12によって空気を流動させると共に、紫外線放射部10によって筒形部8内部で紫外線を放射する。具体的には、送風部12を駆動させることにより、吸込部4を介して外部から空気を吸込みつつ、該空気を装置内部で流動させて排出部6から排出する。
ここで、図5は毒性対象減消装置1内部での空気の流れを示す図であり、図5に示すように吸込部4から流入した空気は、筒形部8内で上部から下部へと流動し、また通気口8aを介して筒形部8と筐体2との間隙に沿って上昇するように流動し、排出部6を介して外部へ排出される。
【0040】
また、筒形部8内部は、高密度、高線量の紫外線領域が作出される。即ち、筒形部8の内側で紫外線放射部10が紫外線を放射することにより、当該紫外線は、反射面9によって繰り返し反射するので、紫外線の線量が上昇する。従って、筒形部8内を上部から下部へと流下している空気中の毒性対象は、紫外線領域を通過して高線量の紫外線に晒されて減消する。
【0041】
また、毒性対象を減消させた後の空気は、排出部6を介して外部へ排出され、このとき排出部6が周方向の略全域に存しており、流動してきた空気が複数の方向で排出される。また、上記の通り排出部6の開口面積を吸込部4の開口面積よりも広げて吹き出し速度を低下させている。これにより塵埃の巻き上げを防止すると共に、室内に存する虞の有り得る未処理の空気(毒性対象)等の拡散を防止する。
【0042】
毒性対象減消装置1は、室内に設置して使用することができる。例えば、図6に示すように室内の中央部に毒性対象減消装置1を設置したとき、吸込部4は、上向きに開口しているので、優先的に装置上の空気(及び毒性対象)を吸い込む。このような吸込部4は、人の呼気又は呼気を含んだ空気が滞留している高さに相当する位置或いは、人の呼気又は呼気を含んだ空気が滞留している高さ以下の位置(例えば、地面から70~90cmの位置等)に配設することが好ましい。一例として人の呼気や排気が溜まり易い、口腔や鼻腔等の呼吸器の在る高さ位置の近傍に吸込部4を配することができる。なお、吸込部4の位置は、地面から70cm未満の高さや、90cm以上の高さに配してもよいことは言うまでもない。
【0043】
排出部6は、吸込部4よりも上方の領域と異なる領域、即ち、吸込部4よりも下方で且つ周囲(四方)に略均等に空気を排出する。また排出部6からは各方向に微弱な風速(吹き出し速度)で空気を排出する為、排出した空気によって室内の空気が対流することが殆ど無い。従って、人の呼気に含まれる毒性対象等が、排出された空気によって拡散するのを防ぐことができる。
但し、排出部6の位置が吸込部4の位置に近い程、排出部6から排出された空気が吸込部4で吸い込まれ易くなってしまうため、吸込部4に対して排出部6を離間させることが望ましく、また排出部6からの空気は、特に限定されるものではないものの、水平に或いは下方に向けることが望ましい。
【0044】
また、排出部6は、吸込部4に対し十分に低い位置に配置することが好ましく、このような配置によれば、口腔や鼻腔よりも低い位置から空気を排出でき、人の呼気や排気が溜りやすい領域での気流(吸込部4に向かう空気の流れ)を乱すことを抑制することができる。
【0045】
上述したように、本発明の毒性対象減消装置1は、空気の流路である筒形部8内に高線量の紫外線領域を作出するので、空気と共に流下してくる毒性対象を筒形部8内で減消することができる。また吸込部4と比較して排出部6の開口の総面積を拡げているため、吸込部4で吸い込む空気の吸込み速度よりも遅い吹き出し速度で空気を排出する。これにより、排気によって強制的に起こる室内の空気の流れを抑え、空間中に漂う毒性対象を拡散させてしまうのを抑制することができる。換言すれば、毒性対象の存在可能性の高い領域の空気を吸い込ませながら、吸い込んだ空気に含まれている毒性対象を確実に減消させつつ、毒性対象減消後の空気を吸込領域と異なる領域であって、毒性対象の存在可能性の低い領域の空間に向けて排出することで、空間内の空気を殆ど攪拌することなく徐々に且つ確実に空間内に存在する毒性対象を減消させることができる。
このように、毒性対象減消装置1は、空気を吸い込みながら、マイクロ飛沫やエアロゾル等に付着した菌類やウイルス類等を紫外線によって十分に不活化及び/又は死滅させたり、有毒分子を紫外線によって確実に分解させたりする等、毒性対象を減消させる為、空間内に滞留している毒性対象を拡散させること無く徐々に且つ確実に減消させることができる。
【0046】
また、略全周面に設けた排出部6の穴から空気を排出するので、結果、毒性対象減消装置1を中心に放射状に空気を分散させて排出する。これによっても周囲で強制的に発生する空気の流れを抑制でき、空間内で滞留している毒性対象を周囲に拡散させることを抑制できる。更に毒性対象を周囲に拡散させないようにすることで、装置の利用者にウイルス感染等に対する不安を感じさせることが無く、安心感を与えることができる。
【0047】
なお、毒性対象減消装置1に配設するフィルタは、吸込部近傍に限定するものではなく、適宜位置に設置することができる。またフィルタの設置数等も限定するものではなく、例えば、筒形部8内や、排出部6近傍等に配してもよい。また、フィルタの配設数による圧力損失の影響を利用して排出する空気の吹き出し速度を抑制してもよい。
【0048】
なお、紫外線放射部10は、紫外線を放射し続けることで徐々に温度が上昇し得るため、放射時間によって温度の影響を大きく受けてしまう。即ち、放射時間によって徐々に出力が低下してしまうため、紫外線放射部10の排熱(放熱)を促進させる構造を具えることが望ましい。例えば、熱伝導率の高い材料で筒形部8を形成し、熱の対流を利用して排熱を促進させることができる。
【0049】
また、筒形部8内部に空気の流動を案内するための案内板(案内部)を配してもよい。このような案内板によって紫外線放射部10を中心に空気を旋回させるように流動させれば、排熱効率を向上させることができる。また、筒形部8内部で空気を旋回させることで、毒性対象の紫外線放射部10に対する姿勢が変化し得、毒性対象に対して様々な向きで紫外線を放射することができる。即ち、埃や塵の陰に存している毒性対象に紫外線を放射し易くなって確実に毒性対象を減消することができる。
【0050】
また、案内板は、筒形部8と同様に、熱伝導率の高い材料で形成することができ、更に紫外線放射部10の排熱を促進させることができる。ここで図7に示すように案内板20は、長手方向の一端から他端にかけて略90°位相をずらすように徐々に湾曲した形状等が有り得る。勿論、案内板20の形状は、適宜設定し得、長手方向に沿ってずれる位相の角度が90°を超えている形状であってもよいことは言うまでもない。
【0051】
また、筒形部8は、外面(外周面)にヒートシンクを設け、更に紫外線放射部10の排熱を促進させてもよい。即ち、図9に示すように筒形部8の外面に凹凸(凹部と凸部を交互)を設けることで、筒形部8全体の排熱効率を向上させてもよい。なお凹凸の形状や延在する方向、配列方向等は、図9に示すように筒形部8の軸方向に沿って延在し且つ周方向に沿って複数並設させるものに限定するものではないことは言うまでもない。
凹凸は、例えば、筒形部8の周方向に沿って周回状を成し、且つ軸方向に複数形成させてよい。また、凹凸を軸方向に対して斜め向きに複数形成してもよく、凹凸を列状に複数形成してもよく、略ローレット状(四角目、あや目状等)に凹凸を形成してもよい。なお、筒形部8の内面においても、同様の凹凸を形成してもよいことは言うまでもない。
【0052】
また、案内板20は、筒形部8と同様に紫外線反射性材料によって形成することで、高線量の紫外線領域を作出させてもよいが、紫外線を透過させる紫外線透過性部材によって形成してもよい。そのようにしても、紫外線放射部10から放射されて案内板20を透過した紫外線は、反射面8で反射して再度案内板20を透過し得、毒性対象の減消を殆ど妨げることがない。なお、紫外線透過性材料は、例えば、ガラス、石英(SiO)、サファイア(Al)、PTFE等の非晶質のフッ素系樹脂、アクリル樹脂等が有り得る。
【0053】
また、案内板20を一巻き以上の螺旋形状とした場合、空気との接触面積が増加し、排熱効率を向上させることができる一方、圧力損失が大きく成り得るが、この圧力損失を利用して排出部からの吹き出し速度を調整するようにしてもよい。
【0054】
また、案内板20の枚数は二枚に限定するものではなく、例えば、図8に示すように四枚の案内板20を配する等、三枚以上の案内板20を配することも可能である。勿論、案内板20の枚数を増やす程、筒形部8内部を通過する空気と全案内板20との総接触面積が増加するので、排熱効率が向上し得る。
案内板20は、筒形部8の軸方向に沿った領域の略全域に亘って延在するように形成し得るが、勿論、これに限定されるものではなく、筒形部8の一端部又は他端部から軸方向の中途部分まで延在していてもよく、また筒形部8の一端部及び他端部を除いた中途部分にのみ存していてもよい。また、案内板20は、筒形部8の一端部と、中途部分とに配設される等、筒形部8内で軸方向に沿って断続的に配設されていてもよい。
【0055】
また、案内板20以外の部材によって筒形部8内部で旋回気流を発生させてもよい。ここで、図10は毒性対象減消装置1の他の例を示す断面図であり、筒形部8と送風部12との間で旋回気流を誘発する案内部としての気流誘発部30を設けることができる。
【0056】
図11は気流誘発部30を示す斜視図であり、気流誘発部30は、円筒形状の外枠部30aの一端側内周面に、周方向に沿って所定の間隔で案内部としての羽根32を複数具える。羽根32は、通過する空気が螺旋状に旋回するように、軸方向に対して傾斜させた向きで配列される。
羽根32は、送風部12よりも流動向きの上流に位置する為、羽根32の下流側に配される。従って送風部12によって発生する気流は、気流誘導部30によって強制的に旋回し得、当該気流誘導部30よりも上流側の筒形部8内でも徐々に旋回気流が発生し得る。
【0057】
なお、気流誘発部30の配置は、筒形部8と送風部12との間に限定するものではなく、適宜位置に設定し得る。従って、気流誘発部30を筒形部8内に配してもよく、また吸込部4と筒形部8との間に配してもよい。また気流誘発部30を複数設けてもよいことは言うまでもない。なお、気流誘発部30の羽根32の内側表面、即ち、筒形部8の軸方向における中央側を向く面には、紫外線を反射させ得る高反射層を設けて筒形部8の外側に向かう紫外線を内部に向けて反射させるようにしてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態において、筐体2を断面矩形形状としたが、これに限定するものではない。即ち、少なくとも筒形部8を囲繞可能であれば、筐体2は、円筒形状、円柱形状、直方体形状、多角柱形状等の適宜形状があり得る。また筐体2の頂部に吸込部4を形成する場合、頂部を平坦な形状としてもよいが、錐形状等のように筐体2の頂部に物が載置されるのを防止する形状とすることが好ましい。このようにすれば、筐体2上に物を載置し難くなり、吸込部4の一部又は全部が塞がることを防止し、吸気量の低下を防止することができる。
【0059】
また、筐体2における吸込部4及び排出部6の配置は特に限定するものではない。少なくとも吸込部4は、該室内を漂って滞留している毒性対象を効率良く吸い込み得る位置に設定する。また排出部6は、滞留している毒性対象を室内で拡散させないように、空気を排出する位置に設定する。
【0060】
なお、吸込部4の吸込口の開口及び排出部6の排出口の開口は、例えば、吸込部4を介した空気の吸気量を250L/s以上で、且つ排出部6からの吹き出す空気の速度が1~2m/s以下となるように、各々の大きさを設定してもよい。
なお、吸気量は、装置の設置環境等によって適宜設定されるものである。例えば、人の集まる部屋や空間等に設置する場合、部屋の店員又は当該装置の周囲に存する人の総排気量に相当するように給気量を設定してもよい。一人の一分間当たりの排気量が5~8リットルであることから、十人分の呼気を略全て吸込み得る吸気量を設定する場合、吸気量が80L/m以上となるように、送風部12の回転数や羽根の大きさ等を設定する。
【0061】
なお、筐体2の向きは、図1に示すような縦置きに限定されるものではなく、横置き即ち軸方向が水平となるように配してもよい。その場合、毒性対象の存在可能性の高い領域の空気を吸い込み、且つ毒性対象の存在可能性の高い領域を避けて空気を排出し得るように、吸込部と排出部とを配する。例えば、横置きにしたときの筐体の天面の一部に吸込部を設け、当該天面を除いた筐体の周面や軸方向における端面等に排出部を配することが望ましい。
【0062】
また、内部の流路は、流動方向に沿った下流側に向かって徐々に横断面積を大きくなるように設定してもよい。このようにすれば、流下する空気の流速が徐々に遅くなって排出部6における空気の吹き出し速度が低下してより周囲の気流を乱すことを抑制することができる。
【0063】
なお、本発明の毒性対象減消装置は、周囲の空気を取り込んで空気中の病原微生物の不活化、滅菌等を目的として利用する場合には、例えば、オフィス、会議室、飲食店、ショールーム、図書館、学校、幼稚園、保育園、商店、娯楽施設(カラオケボックス、水族館、プラネタリウム、映画館、美術館、博物館、ボウリング場等)、乗り物(車、飛行機、船、電車)等の人の集まる空間或いは人が密集し易い空間に設置することができる。
【0064】
また、毒性対象の減消を紫外線の照射により行ったが、更に毒性対象を減消し得る程度に流路内を加熱する加熱手段や、局所的にミクロな放電現象を発生させたり、対向配置した一対の正負電極によって電極に毒性対象(特に病原微生物)を吸着させたりする電場を流路内に作出し、毒性対象を減消し得る電場作出手段を設けてもよい。勿論、紫外線光源に代えて、加熱手段及び/又は電場作出手段を配して毒性対象の減消を行うようにしてもよい。
【0065】
また、毒性対象減消装置は、温度センサ、湿度センサ、人感センサ、汚れセンサの中の少なくともひとつのセンサを具え、センサによる検出に基づいて、流動発生手段による流動を制御してもよい。例えば、センサによって周囲に人の存在を検知しているときに、流動発生手段の動作を行うようにしてもよい。また、流動発生手段の停止は、センサが人を検知しなくなったとき、流動発生手段が動作を行ってから所定時間を経過したとき等とすることができる。
【0066】
また、減消手段として、紫外線放射部10を例に説明したが、毒性対象を減消させることができれば、音波、電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線及び/又はγ線等の波動を放射する放射部を用いてもよい。
【0067】
また、温度センサ、湿度センサ、人感センサ、汚れセンサ、パーティクルカウンタ等のセンサを設け、当該センサによる検出に基づいて、送風部12による流動及び紫外線放射部10による紫外線放射を制御してもよい。例えば、人感センサによって人を感知したときに動作を開始するように制御してもよく、また、人を感知しなくなったとき、或いは感知しなくなってから所定時間経過したとき動作を停止するように制御してもよい。
或いは、パーティクルカウンタによる微粒子のカウント数が一定以下となったら、運転を停止するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…毒性対象減消装置、2…筐体、4…吸込部、6…排出部、8…筒形部、9…反射面、10…紫外線放射部、12…送風部、14…紫外線抑制部、20…案内板、30…気流誘発部。
図1
図2
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図5
図6
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図11