(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171416
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】除水機
(51)【国際特許分類】
B05B 15/00 20180101AFI20231124BHJP
【FI】
B05B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023162955
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2021068087の分割
【原出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】596066219
【氏名又は名称】株式会社ケイズベルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】里薗 勝成
(57)【要約】
【課題】除水対象物の形態に合わせて、固定位置におけるエア噴射と、移動しながらのエア噴射との選択切り替えが可能であり、以て、除水対象物の形態いかんに関わらず、常に均一で安定した除水作業を行うことができる除水機を提供することを課題とする。
【解決手段】上下方向に通気可能なコンベア33により搬送されてくる除水対象物に対し、搬送面の上側及び下側からエアを噴射して表面の除水を行う除水機であって、ノズルパイプ2からのエア噴射は、ノズルパイプ2が静止した状態でのエア噴射と、ノズルパイプ2が水平方向に円運動しながらのエア噴射とが選択切り替え可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアにより搬送されてくる除水対象物に対し、多数の噴射ノズルを備えたノズルパイプからエア噴射して前記除水対象物の表面の除水を行う除水機であって、
前記ノズルパイプからのエア噴射は、前記ノズルパイプが静止した状態でのエア噴射と、前記ノズルパイプが水平方向に円運動しながらのエア噴射とが選択切り替え可能であることを特徴とする除水機。
【請求項2】
前記ノズルパイプは、前記コンベアの上側及び下側に配置される、請求項1に記載の除水機。
【請求項3】
前記ノズルパイプの水平方向への円運動は、2本の前記ノズルパイプが連結板で水平に連結され、前記連結板に設置した駆動機構により前記連結板が円軌道を描くように駆動されることにより行われる、請求項1に記載の除水機。
【請求項4】
前記駆動機構は、本体ケース内に固定設置されるギアボックスと、前記ギアボックスに配備される駆動モーターと、前記ギアボックス内に組み込まれるギア組と、前記ギアボックスから出るギア軸に固定される円板と、前記各円板に取り付けられる偏心軸とから成り、前記各偏心軸が前記連結板に固定される、請求項3に記載の除水機。
【請求項5】
前記ギアボックス内に組み込まれるギア組は、前記駆動モーターの駆動軸に固定される駆動ギアと、前記駆動ギアに歯合する4つの被動ギアにより構成され、前記被動ギアのギア軸が前記ギアボックスから突出してそれぞれに前記円板が固定される、請求項4に記載の除水機。
【請求項6】
前記コンベアの上側に配置される前記ノズルパイプは、前記除水対象物に合わせての高さ位置調整が可能である、請求項2に記載の除水機。
【請求項7】
前記噴射ノズルは、固定式又は回転式である、請求項1に記載の除水機。
【請求項8】
前記エア噴射位置における前記コンベア上に飛散防止カバーが被せられる、請求項1に記載の除水機。
【請求項9】
前記コンベアの上方に、前記エア噴射時における前記除水対象物の安定搬送を確保するための押止手段が配設される、請求項1に記載の除水機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除水機に関するものであり、より詳細には、洗浄、殺菌、冷却などの工程を経ることで表面が濡れた、レトルトパックやアルミパック・トレーなどの製品を、段ボール詰めや番重詰めを行う直前にエア噴射して、その表面の水分を除去する除水機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記除水機においては、エアはノズルから吐出されるが、ノズルは除水に大きな影響を与えるため、各メーカーにおいて様々な形状のノズルが開発されている。その形状は様々であるが、多くの除水機の場合、ノズルは1本のノズルパイプ(チャンバー)に複数配置される。そして、そのノズルパイプが、処理対象物を搬送するコンベアの上部及び下部に、進行方向と直角に搬送面を跨ぐように配置され、搬送されてくる除水対象物に上下両方向からエア噴射して除水する構成となっている。
【0003】
この構成の場合、ノズルパイプはコンベアの搬送面に対して固定状態にあるので、各ノズルは常にコンベアの同じ位置にエア噴射することになる。このことは、除水対象物においてエア噴射を直接受けない部分が生じ、その部分の除水が十分にできない場合があり得ることを意味する。
【0004】
上記構成のノズルパイプの場合、ノズルは固定されていて移動することはないが、エアの圧力により自転可能な回転ノズルを複数取り付けた構成のノズルパイプも知られている(特許第6586675号公報)。
【0005】
しかし、この回転ノズルを用いた構成の場合、除水に際して飛散する水滴に含まれるカルキ成分が、回転ノズルを軸支するベアリング等に固着し、回転ノズルがエア圧だけでは回転しなくなることがしばしば起きていた。そのように回転ノズルが回転しなくなると、エアの当たらない部分ができて除水できない箇所が生ずるという問題が起こる。また、回転ノズルは、回転はするが位置は変わらず、同じ位置で回転するだけであるので、除水対象物にエア噴射が十分に当たらない箇所が生ずる可能性がある。
【0006】
このように、除水機としては、ノズルが固定されている固定ノズル式のものと、ノズルが回転する回転ノズル式のものとが知られており、それぞれ、除水対象物の形状等により優位性(向き・不向き)があるところから、顧客がそのいずれかを選択して使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、除水機としては、ノズルが固定されている固定ノズル式のものと、ノズルが回転する回転ノズル式のものとが知られており、それぞれ、除水対象物の形状等により優位性(向き・不向き)があるところから、顧客が任意に選択して使用しているが、これらいずれのタイプの除水機の場合も、ノズルパイプが移動することはなく、同じ位置でのエア噴射であるため、除水漏れが起こる可能性があった。
【0009】
本発明は、従来の除水機におけるこのような問題に鑑みてなされたもので、除水対象物の形状等に合わせて、ノズルパイプの位置を固定した状態でのエア噴射と、移動させながらのエア噴射との選択切り替えが可能であり、以て、除水対象物の形態いかんに関わらず、常に均一で安定した除水作業を行うことができる除水機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、コンベアにより搬送されてくる除水対象物に対し、多数の噴射ノズルを備えたノズルパイプからエア噴射して前記除水対象物の表面の除水を行う除水機であって、
前記ノズルパイプからのエア噴射は、前記ノズルパイプが静止した状態でのエア噴射と、前記ノズルパイプが水平方向に円運動しながらのエア噴射とが選択切り替え可能であることを特徴とする除水機である。
【0011】
一実施形態においては、前記ノズルパイプは、前記コンベアの上側及び下側に配置される。
【0012】
一実施形態においては、前記ノズルパイプの水平方向への円運動は、2本の前記ノズルパイプが連結板で水平に連結され、前記連結板に設置した駆動機構により前記連結板が円軌道を描くように駆動されることにより行われる。
【0013】
一実施形態においては、前記駆動機構は、本体ケース内に固定設置されるギアボックスと、前記ギアボックスに配備される駆動モーターと、前記ギアボックス内に組み込まれるギア組と、前記ギアボックスから出るギア軸に固定される円板と、前記各円板に取り付けられる偏心軸とから成り、前記各偏心軸が前記連結板に固定される。前記ギアボックス内に組み込まれるギア組は、前記駆動モーターの駆動軸に固定される駆動ギアと、前記駆動ギアに歯合する4つの被動ギアにより構成され、前記被動ギアのギア軸が前記ギアボックスから突出してそれぞれに前記円板が固定される。
【0014】
一実施形態においては、前記コンベアの上側に配置される前記ノズルパイプは、前記除水対象物に合わせての高さ位置調整が可能である。また、前記噴射ノズルは、固定式又は回転式である。
【0015】
一実施形態においては、前記エア噴射位置における前記コンベア上に飛散防止カバーが被せられる。また、前記コンベアの上方に、前記エア噴射時における前記除水対象物の安定搬送を確保するための押止手段が配設される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る除水機は上記のとおりであって、ノズルパイプからのエア噴射は、除水対象物の形態に合わせて、ノズルパイプが静止した状態でのエア噴射と、ノズルパイプが水平方向に円運動しながらのエア噴射とが選択切り替え可能であるので、除水対象物の形態いかんに関わらず、常に均一で安定した除水作業を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る除水機の全体構成例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る除水機の要部の構成例を示す概略平面図である。
【
図3】本発明に係る除水機の要部の構成例を示す縦断面図である。
【
図4】本発明に係る除水機の要部の構成例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る除水機は、コンベアにより搬送されてくる除水対象物に対し、多数の噴射ノズルを備えたノズルパイプからエア噴射して前記除水対象物の表面の除水を行うものであって、ノズルパイプからのエア噴射が、ノズルパイプが静止した状態でのエア噴射と、ノズルパイプが移動しながらのエア噴射との選択切り替えが可能であり、更に、ノズルパイプは、水平方向に円運動しながらのエア噴射が可能であることを特徴とするものである。
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態について、
図1乃至
図4に依拠して説明する。各図に示されるように、本発明に係る除水機は、ブロワーを内蔵した架台ケース41上に、除水機構部1と搬送部31とを設置して成り、搬送部31を構成するコンベア33により搬送されてくる、レトルトパックやアルミパック等の除水対象物に対し、除水機構部1からコンベア33の搬送面の上側及び下側に伸びるノズルパイプ2からエア噴射して、除水対象物外表面からの除水を行う装置である。
【0020】
図示したノズルパイプ2は、コンベア33の搬送面の上側に配置されるもので、ノズル2aが下向きになっているが、コンベア33の搬送面の下側に配置されるノズルパイプはこれを上下反転させたもので、ノズル2aは上向きとなる。通例、上側のノズルパイプ2と下側のノズルパイプ2は対にされて、複数対(図示した例では2対)配設される。図示した例における噴射ノズル2aは、ノズルパイプ2に固定された固定式のものであるが、エア圧で回転する回転式のものであってもよい。
【0021】
搬送部31は、搬送部ケース32と、搬送部ケース32内上部に配架されるコンベア33と、搬送部ケース32の一端部に連設されるモーター室内に配備されて、コンベア33を循環駆動するモーターとから成る。搬送部ケース32の底部には、落下してくる水滴を回収するための引き出し36が設置される。コンベア33としては、上下方向に通気自在であるワイヤーコンベアが用いられる。また、本体ケース4の上面に、高さ調整ハンドル15が設置される。この高さ調整ハンドル15は、その回転操作により、搬送されてくる除水対象物の高さ(厚み)に応じて、上側のノズルパイプ2を上下動調整するためのものである。
【0022】
更に必要に応じ、搬送部ケース32の中間部上に、エアにより吹き飛ばされた水滴の飛散を防止するための飛散防止カバー37が配設される。飛散防止カバー37は、防水機構部1の本体ケース4の前面にヒンジ止めされていて、その正面に取り付けられている把手38を持って開閉可能である。飛散防止カバー37のコンベア33の搬送方向両側面には、ノレン39が設置される。なお、図示してないが、コンベア33の上流端には、除水対象物搬入用コンベアが近接設置され、その下流端には、除水対象物搬出用コンベアが近接設置され、それぞれの間で除水対象物の受け渡しが行われる。
【0023】
ノズルパイプ2には、架台ケース41内のブロワーから伸びる可撓ホースが接続され、コンベア33の搬送面の上側及び下側に、その搬送面を横切るように配置される。通例、ノズルパイプ2は、コンベア33の搬送方向に対して直交方向に伸びるが、上流側あるいは下流側に若干角度を持たせる場合もある。また、噴射方向も、真下又は真上ではなく、少し傾ける場合もある。
【0024】
図2~4に示す実施形態においては、コンベア33の上側及び下側にそれぞれ2本のノズルパイプ2が、水平方向に円運動しながらエア噴射を行うように構成されている。そのために、2本のノズルパイプ2,2が連結板45で連結され、連結板45上に設置された駆動機構により、連結板45が円軌道を描くように駆動されることにより、ノズルパイプ2,2が水平方向に円軌道を描くように動作する。
【0025】
駆動機構は、本体ケース4の内側に設置されるギアボックス46と、ギアボックス46上に配備される駆動モーター47と、ギアボックス46内に組み込まれるギア組と、ギアボックス46の下面から出るギア軸48に固定される円板49と、各円板49に取り付けられる偏心軸50とから成り、各偏心軸50が連結板45に固定される。ギアボックス46内に組み込まれるギア組は、駆動モーター47の駆動軸に固定される駆動ギア51と、駆動ギア51に歯合する4つの被動ギア52とにより構成され、被動ギア52のギア軸48がギアボックス46の下面から突出し、それぞれ先端部に円板49が固定される。
【0026】
この構成の場合は、駆動モーター47が作動すると、その駆動軸に固定されている駆動ギア51が回転し、それに噛合している4つの被動ギア52が回転駆動され、その被動ギア52の回転が、ギア軸48を介してそのまま円板49に伝達される。そして、円板49が回転すると、その偏心軸50がギア軸48を軸に回転する結果、偏心軸50が固定されている連結板45が円運動し、連結板45に固定されているノズルパイプ2が円軌道を描いて移動する。
【0027】
かかる構成の除水機の作用について説明すると、図示せぬ除水対象物搬入用コンベアから次々とコンベア33上に供給される除水対象物は、コンベア33に搬送され、ノレン39をかいくぐって飛散防止カバー37内に入り、そこを通過中にノズルパイプ2によって上方及び下方からエア噴射を受けて除水された後、飛散防止カバー37から出て、図示せぬ除水対象物搬出用コンベアに乗り移って搬出される。
【0028】
ノズルパイプ2は、コンベア33の進行方向に対して直交方向に伸び、エア噴射しつつ上述したようにして水平方向に円運動するため、通過する除水対象物の上下両面にくまなくエア噴射可能となり、除水漏れを起こすことが皆無となる。
【0029】
ピストン運動の速度は、駆動モーター47の回転速度調整により、除水対象物の搬送速度、除水対象物の性状等に応じて調整可能である。また、除水対象物の高さ(厚み)に応じ、上側のノズルパイプ2の高さ位置を変更して、上側のノズルパイプ2と除水対象物の間隔を調整できるので、種々のサイズ、性状の除水対象物に対し、常に安定した除水を行うことが可能となる。
【0030】
なお、除水対象物によっては、下側からのエア噴射を受けて跳ね上がったり、上下からのエア噴射によるエアカーテンに押さえられて進行しなくなったりすることが想定される。そのために、コンベア33の上方に、エア噴射時における除水対象物の安定搬送を確保するための押止手段が配設されることがある。その押止手段としては、例えば、コンベア33上方に、除水対象物を押さえ止める押止バーやフリーローラーを配することが考えられ、あるいは、コンベア33と同速進行する押さえコンベア(ワイヤーコンベア)を配設して、除水対象物を挟み込んで搬送することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る除水機は上記のとおりであって、ノズルパイプからのエア噴射は、除水対象物の形態に合わせて、ノズルパイプが静止した状態でのエア噴射と、ノズルパイプが水平方向に円運動しながらのエア噴射とが選択切り替え可能であるので、除水対象物の形態いかんに関わらず、常に均一で安定した除水作業を行うことができる効果のあるものであり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0032】
1 除水機構部
2 上側のノズルパイプ
3 下側のノズルパイプ
4 本体ケース
31 搬送部
32 搬送部ケース
33 コンベア
37 飛散防止カバー
41 架台ケース
45 連結板
46 ギアボックス
47 駆動モーター
48 ギア軸
49 円板
50 偏心軸
51 駆動ギア
52 被動ギア