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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171428
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】包装体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/51 20060101AFI20231124BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231124BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20231124BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61J 1/00 20230101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K38/51
C12N9/24
A61K9/19
A61P19/04
A61J3/00 300C
A61J1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023165256
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2020503550の分割
【原出願日】2019-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2018035884
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018141542
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000195524
【氏名又は名称】生化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】樋口 美音
(57)【要約】
【課題】酵素量が少ないことに起因する力価の低下が抑制される糖分解酵素を含む医薬組成物が、容器に収容された包装体を提供する。
【解決手段】包装体は、医薬組成物と容器とを含み、前記医薬組成物はコンドロイチナーゼABCを有効成分として含む凍結乾燥製剤であり、前記容器は、前記医薬組成物を収容し、内表面に二酸化ケイ素を含有する膜を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物と容器とを含み、
前記医薬組成物はコンドロイチナーゼABCを有効成分として含む凍結乾燥製剤であり、
前記容器は前記医薬組成物を収容し、当該容器の内表面に二酸化ケイ素を備える、包装体。
【請求項2】
前記容器あたりのコンドロイチナーゼABC量が10μg未満である、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記容器あたりの酵素活性が5ユニット未満である、請求項1または請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記酵素は、力価が0.3ユニット/μg以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項5】
5℃±3℃で12ヶ月以上の貯蔵安定性を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項6】
前記容器の内表面は、二酸化ケイ素を含有する膜を備える、請求項1から請求項5にいずれか1項に記載の包装体。
【請求項7】
前記二酸化ケイ素を含有する膜が、化学気相蒸着法、物理気相蒸着法、スプレー熱分解法またはスパッタ法により形成されてなる、請求項6に記載の包装体。
【請求項8】
前記化学気相蒸着法が、プラズマ化学気相蒸着法である、請求項7に記載の包装体。
【請求項9】
前記医薬組成物が薬学上許容される担体を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項10】
前記薬学上許容される担体が、緩衝剤、デキストラン類、スクロース、ラクトース、マルトース、キシロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、血清アルブミン、ゼラチン、クレアチニン、ポリアルキレングリコール、および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載の包装体。
【請求項11】
前記薬学上許容される担体が、リン酸緩衝剤、スクロース、およびポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素を有効成分として含む医薬組成物が容器に収容された包装体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖分解酵素を有効成分として含む医薬組成物は、様々な疾患分野で利用されている。例えば、アウドラザイム(登録商標)、エラプレース(登録商標)、ナグラザイム(登録商標)、リプレガル(登録商標)、およびビミジム(登録商標)など、約3mg/バイアルから約10mg/バイアルの糖分解酵素を有効成分として含むリソソーム病治療用医薬組成物が、注射用の液体製剤として市販されている。また、例えば、特許文献1には、糖分解酵素(特にコンドロイチナーゼABC)を有効成分として含む椎間板ヘルニア治療剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/081227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体製剤と比較して、凍結乾燥製剤は、物流コストが抑えられるという点で優れている。一方、酵素の力価は凍結乾燥により低下する場合があるため、凍結乾燥製剤の製造に際しては、所望の酵素活性を有する製品が生産できるよう、工夫がされている。例えば、国際公開第2012/081227号の実施例では、少量の酵素を凍結乾燥することによる力価の低下を考慮して、投薬1回分のために必要な量である単位用量を大きく超える量で調製した酵素溶液を容器に収容した後、凍結乾燥製剤を得ている。そして当該文献では、得られた凍結乾燥製剤を溶解希釈した後、必要量を分取することで、1回投与に必要な活性成分が含まれる投与液を調製している。
【0005】
ここで、単位用量を超える量で酵素溶液を予め調製してから、その一部を1回投与量として分取する手法では、投与に使用されなかった残部の酵素は廃棄されることとなる。このため、高価な酵素の残部が無駄になる場合があった。また、一旦調製した酵素溶液から少量を取り分ける作業が必要なため、当該作業中における活性の低下にも気を配る必要があった。
【0006】
一方、本発明者は、凍結乾燥製剤を収容する包装体の製造において、収容する糖分解酵素を少量とすることで起こる力価の低下が予想外に大きくなることを見出した。本発明者はさらに、糖分解酵素の収容量が従来の医薬組成物よりも低い水準である場合、かような力価の低下が特に顕著であることをも見出した。
【0007】
したがって、本発明は、収容する糖分解酵素を少量とすることで起こる力価の低下が抑制された、糖分解酵素を有効成分として含む医薬組成物が容器に収容されてなる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、医薬組成物と容器とを含み、前記医薬組成物は糖分解酵素を有効成分として含む凍結乾燥製剤であり、前記容器は前記医薬組成物を収容し、当該容器の内表面にファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を備える、包装体に関する。
【0009】
本発明の別の側面は、医薬組成物とそれを収容する容器とを含む包装体の製造方法であり、ファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を内表面に備える容器に、糖分解酵素を含む溶液を収容する工程と、前記溶液を凍結乾燥して医薬組成物を得る工程とを含む、製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、糖分解酵素を含む医薬組成物が容器に収容された包装体であって、収容される糖分解酵素量が少ないことに起因する力価低下が抑制された包装体が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳説するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
(1)医薬組成物および包装体
医薬組成物は、糖分解酵素を有効成分として含む凍結乾燥製剤である。医薬組成物は、単位用量製剤であってもよい。本明細書において「単位用量」は、1回の投薬のために用意される必要量であり、単位用量製剤は医薬組成物が単位用量で製剤化されてなる。単位用量は、有効量に加えて、1回の投与液調製のために必要な増仕込み量を含み得る。
【0013】
包装体は、少なくとも、容器と、当該容器に収容された医薬組成物とを含む。
【0014】
「糖分解酵素」とは、医薬に用いられ得るものであれば、特に限定されない。例えば、糖分解酵素としては、グリコサミノグリカン分解酵素;グリコシダーゼ;ペプチド:N-グリカナーゼ(PNGaseF、エンドグリコシダーゼHなど)、α-L-イズロニダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、イデュルスルファーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ等を挙げることができる。グリコサミノグリカン分解酵素としては、例えば、ケラタナーゼI、ケラタナーゼIIなどのケラタナーゼ;ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIIIなどのヘパリナーゼ;ヘパリチナーゼIV、ヘパリチナーゼV、ヘパリチナーゼT-I、ヘパリチナーゼT-II、ヘパリチナーゼT-III、ヘパリチナーゼT-IVなどのヘパリチナーゼ;コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼACI、コンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼACIII、コンドロイチナーゼB、コンドロイチナーゼCなどのコンドロイチナーゼ;放線菌由来のヒアルロニダーゼ、連鎖球菌由来のヒアルロニダーゼなどのヒアルロニダーゼ等が挙げられる。またグリコシダーゼとしては、例えば、微生物由来のβ-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼなどが挙げられる。
【0015】
一実施形態では、グリコサミノグリカン分解酵素が、糖分解酵素として用いられる。グリコサミノグリカン分解酵素としては、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ヘパリナーゼ、ケラタナーゼ、ヘパラナーゼ、ヘパリチナーゼ等が挙げられる。糖分解酵素としては、中でもコンドロイチナーゼが好ましく、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼB、コンドロイチナーゼACI、コンドロイチナーゼACIIがより好ましく、コンドロイチナーゼABC(コンドリアーゼともいう)が特に好ましい。なお、コンドロイチナーゼABCは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、デルマタン硫酸等を、不飽和糖を含む二糖またはオリゴ糖に分解する酵素である。
【0016】
糖分解酵素の由来は特に限定されない。好ましい一実施形態では、微生物由来の糖分解酵素が採用される。微生物の非制限的な例としては、例えば、バチルス属、エスケリキア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、プロテウス属、アースロバクター属、ストレプトコッカス属、バクテロイデス属、アスペルギルス属、エリザベトキンギア属、およびストレプトマイセス属等が挙げられる。例えば、糖分解酵素がコンドロイチナーゼABCである場合は、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)由来のもの(例えば、プロテウス・ブルガリス由来のコンドロイチナーゼABC)が例示できる。
【0017】
糖分解酵素の製造方法等は特に限定されない。糖分解酵素の例示的な製造方法は、糖分解酵素を産生する微生物または動物細胞の培養物を得る工程、および培養物から糖分解酵素を回収する工程を含む。
【0018】
微生物によって産生される糖分解酵素は、当該微生物が本来的に有するものであってもよく、または後述する遺伝子工学的手法等により目的とする酵素を産生するように当該微生物を改変して得たものであってもよい。例えば、糖分解酵素がコンドロイチナーゼABCである場合は、プロテウス・ブルガリス等の微生物を培養して生産させてもよく、コンドロイチナーゼABCをコードするDNA等を用いて遺伝子工学的手法で生産させてもよい。また、糖分解酵素は、生物が本来的に有するものと同一アミノ酸配列であってもよいが、医薬品としての所望の目的を達成し得る限りにおいて、一部のアミノ酸が欠損、置換および/または付加等されたものであってもよい。
【0019】
微生物としては、例えば、バチルス属、エスケリキア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、プロテウス属、アースロバクター属、ストレプトコッカス属、バクテロイデス属、アスペルギルス属、エリザベトキンギア属、およびストレプトマイセス属の微生物が例示できる。微生物の生育条件(例えば、培地、培養条件等)は、用いる微生物に合わせて適宜選択され、当業者であれば任意に設定できる。微生物を用いて糖分解酵素を製造することにより、動物細胞を用いて糖分解酵素を製造する場合に比べ、安価に大量に製造することが可能である。
【0020】
糖分解酵素の製造方法は、目的の糖分解酵素をコードする遺伝子を発現する組替えベクターを宿主に導入する工程を含んでもよい。ベクターとしては、例えば、導入した遺伝子を発現させることが可能な適当な(好ましくは、プロモーター等の調節配列を含む)発現ベクター(例えば、ファージベクター、プラスミドベクター等)を使用することができる。ベクターは、宿主細胞に応じて適宜選択する。より具体的には、このような宿主-ベクター系としては、大腸菌(E.coli)と、pETシリーズ、pTrcHis、pGEX、pTrc99、pKK233-2、pEZZ18、pBAD、pRSET、およびpSE420等の原核細胞用の発現ベクターとの組み合わせ;COS-7細胞、HEK293細胞などの哺乳類細胞と、pCMVシリーズ、pME18Sシリーズ、pSVL等の哺乳類細胞用発現ベクターとの組み合わせの他、宿主細胞として昆虫細胞、酵母、枯草菌などが例示され、これらに対応する各種ベクターが例示される。
【0021】
また、上記ベクターは、組み込んだ遺伝子がコードするタンパク質と、マーカーペプチド、シグナルペプチド等との融合タンパク質を発現するように構築されたものを用いることもできる。当該ペプチドとしては例えばプロテインA、インスリンシグナル配列、Hisタグ、FLAG、CBP(カルモジュリン結合タンパク質)、GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)などが挙げられる。いずれのベクターを用いる場合であっても、常法に従って、挿入核酸配列とベクターとを連結することが可能なように制限酵素などによって処理し、必要に応じて平滑化、粘着末端の連結等を行った後、挿入核酸配列とベクターとを連結をすることができる。
【0022】
宿主のベクターによる形質転換は、常法によって行うことができる。例えば、市販のトランスフェクション用試薬を用いる方法、DEAE-デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子銃による方法等によってベクターを宿主に導入し、形質転換を行うことができる。
【0023】
糖分解酵素を産生する微生物または動物細胞の生育条件(例えば、培地、培養条件等)は、用いる微生物、細胞等に合わせて適宜選択される。例えば、大腸菌を用いる場合は、LB培地等を主成分として適宜調製した培地を用いることができる。また例えば、宿主細胞としてCOS-7細胞を用いる場合には、2%(v/v)程度のウシ胎仔血清を含有するDMEM培地を用い、37℃条件下で培養することができる。
【0024】
生育物からの糖分解酵素の回収は、産生される糖分解酵素の形態に応じて、公知のタンパク質の抽出・精製方法によって行うことができる。例えば糖分解酵素が、培地(培養液の上清)中に分泌される可溶性の形態で産生される場合には、培地を採取し、これをそのまま糖分解酵素として用いてもよい。また糖分解酵素が細胞質中に分泌される可溶性の形態、または不溶性(膜結合性)の形態で産生される場合には、窒素キャビテーション装置を用いる方法、ホモジナイズ、ガラスビーズミル法、音波処理、浸透ショック法、凍結融解法等の細胞破砕による抽出、界面活性剤抽出、またはこれらの組み合わせ等の処理操作によって抽出することができる。糖分解酵素は、塩析、硫安分画、遠心分離、透析、限外ろ過法、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法等、およびこれらの組み合わせ等の従来公知の手法により精製してもよい。
【0025】
糖分解酵素は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、糖分解酵素は、アセチル化、ポリアルキレングリコール化(例えば、ポリエチレングリコール化)、アルキル化、アシル化、ビオチン化、ラベル化(例えば、蛍光物質、発光物質などのラベル)、リン酸化、硫酸化などの、従来公知の化学修飾基が付加されたものであってもよい。
【0026】
医薬組成物は、薬学上許容される担体を含み得る。本明細書において、「薬学上許容される担体」としては、慣用の賦形剤、結合剤、緩衝剤、注射用水、等張化剤、保存剤、無痛化剤等、通常医薬に用いられる成分が例示される。
【0027】
緩衝剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、アミノ酢酸、安息香酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、エタノールアミン、アルギニン、エチレンジアミン等からなる群から選択される1種以上を含有する緩衝剤が例示され、リン酸二水素ナトリウム、およびリン酸水素二ナトリウムの少なくとも1種が好ましい。
【0028】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0029】
その他の薬学上許容される担体として具体的には、例えば、デキストラン類、スクロース、ラクトース、マルトース、キシロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、血清アルブミン、ゼラチン、クレアチニン、ポリアルキレングリコール、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)などが挙げられ、中でもスクロースおよびポリアルキレングリコールの少なくとも1種が好ましく、スクロースおよびポリエチレングリコールの少なくとも1種がより好ましい。ポリエチレングリコールは平均分子量が200以上25000以下であるものが好ましく、さらには常温で固体であるもの、例えば、平均分子量が2000以上9000以下であるものがより好ましく、3000以上4000以下であるものが更に好ましい。ポリエチレングリコールとしては、例えば平均分子量3250、3350および4000のものを例示することができる。薬学上許容される担体としてポリエチレングリコールとスクロースとの混合物を用いる場合、ポリエチレングリコール/スクロースの重量比が一般に1/10から10/1までの範囲となるようにすることが好ましく、ポリエチレングリコール/スクロースの重量比が2/1程度となるようにすることがより好ましい。
【0030】
本明細書において、「容器」とは、医薬組成物を収容できるものであれば特に限定されない。容器としては、シリンジ、バイアル、アンプル、注射器などが例示され、バイアルであることが好ましい。容器の母材はガラス、プラスチックなどが例示でき、ガラスであることが好ましい。ガラスには例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスなどが含まれる。容器は、栓部材またはキャップをさらに有することが好ましく、ゴム栓を有することがより好ましい。容器のサイズは特に限定されないが、0.5mL以上100mL以下が例示され、1mL以上10mL以下が好ましく、2mL以上4mL以下がより好ましく、3mLが更に好ましい。医薬組成物が容器に収容された包装体は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスが封入されていてもよく、あるいは、脱気されていてもよい。
【0031】
容器はその内表面に、ファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を備え得る。ファインセラミックとしては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムなどの金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物などが挙げられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体などが挙げられる。シリコーン樹脂としては、オルガノポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサンなど)およびその変性物(例えば、ポリエーテル変性、フェノール変性、アミン変性、シラノール変性、トリメチルシリル変性、カルビノール変性、カルボキシル変性、エポキシ変性、アクリル変性、メタアクリル変性など)などが挙げられる。前記材料は、容器の内表面のうち、少なくとも医薬組成物が接触する部分に備えられていればよい。前記材料は容器の内表面の少なくとも一部に備えられる。一実施形態では、容器の内表面の全面に前記材料が備えられる。別の実施形態では、容器自体が前記材料で形成されてなる。好ましい一実施形態では、容器は、内表面に前記材料を含有する膜を備える。容器が内表面に前記材料を含有する膜を有する場合、その厚みは、例えば、0.1μm以上0.2μm以下である。より好ましい一実施形態では、容器の内表面において医薬組成物が接触し得るすべての部分に前記材料を含有する膜を備える。
【0032】
凍結乾燥された酵素の貯蔵安定性、例えば力価残存率の観点から、好ましい一実施形態では、前記材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および酸窒化アルミニウムからなる群から選択される。前記材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸窒化ケイ素からなる群から選択されることがより好ましく、酸化ケイ素であることが更に好ましく、二酸化ケイ素であることが特に好ましい。
【0033】
前記材料を含有する膜は、従来公知の湿式または乾式の成膜方法で作製され得る。湿式の成膜方法には、例えば、塗布法が含まれる。前記材料を含有する膜は、例えば、化学気相蒸着法(CVD法)、物理気相蒸着法、スプレー熱分解法、スパッタ法等の乾式成膜方法により形成されてなることが好ましく、CVD法またはスプレー熱分解法により形成されてなることがより好ましい。凍結乾燥された酵素の貯蔵安定性、例えば力価残存率の観点から、CVD法により形成されてなることが更に好ましく、中でもプラズマ化学気相蒸着法(プラズマCVD法)により形成されてなることが特に好ましい。
【0034】
容器としては、例えば、内表面に酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸窒化ケイ素からなる群から選択される材料を含有し、CVD法により形成されてなる膜を備えるもの:内表面に二酸化ケイ素を含有し、CVD法により形成されてなる膜を備えるもの:内表面に酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸窒化ケイ素からなる群から選択される材料を含有し、プラズマCVD法により形成されてなる膜を備えるもの:内表面に二酸化ケイ素を含有し、プラズマCVD法により形成されてなる膜を備えるもの:などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記材料を含有する膜を内表面に備える容器としては、市販のシリカコートバイアル、シリコーンコートバイアル、またはフッ素樹脂コートバイアル等を使用してもよい。
【0036】
容器の内表面に上記したような材料が備えられることにより、例えば、金属イオン等の夾雑物が容器母材から医薬組成物へ混入することが抑制され得ると考えられる。夾雑物の混入抑制が、本発明における酵素活性の低下抑制効果と関連している可能性が考えられる。なお、以上の推定メカニズムは、本発明の技術的範囲をなんら制限するものではない。
【0037】
凍結乾燥製剤の水分含量は、例えば5%(w/w)以下であり、3%(w/w)以下であることが好ましく、2%(w/w)以下であることがより好ましい。なお、本明細書において水分含量は、電量滴定法によって測定された値である。
【0038】
ある実施形態では、容器あたりの糖分解酵素の収容量は、例えば、10μg未満である。容器あたりの糖分解酵素の収容量は、0.1μg、0.5μg、1μg、2μg、2.5μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、9.5μg、9.8μgおよび10μg未満のうちの任意数値の組合せからなる数値範囲で設定され得る。すなわち、容器あたりの糖分解酵素の収容量は、0.1μg以上、0.5μg以上、1μg以上、2μg以上、2.5μg以上、または4μg以上であってもよく、5μg以下、6μg以下、7μg以下、9.5μg以下、または9.8μg以下であってもよい。好ましい一実施形態では、容器あたりの糖分解酵素の収容量は、0.1μg以上9.8μg以下である。より好ましい一実施形態では、容器あたりの糖分解酵素の収容量は、2μg以上7μg以下である。特に好ましい一実施形態では、容器あたりの糖分解酵素の収容量は、2.5μg以上5μg以下である。
【0039】
「力価」とは、糖分解酵素1μgに対する酵素の活性(ユニット)を意味し、ユニット/μgの単位で示される。一実施形態では、凍結乾燥された糖分解酵素の力価は0.3(ユニット/μg)以上である。別の実施形態では、凍結乾燥された糖分解酵素の力価は0.3(ユニット/μg)以上1(ユニット/μg)以下である。別の実施形態では、凍結乾燥された糖分解酵素の力価は0.32(ユニット/μg)以上1(ユニット/μg)以下である。別の実施形態では、凍結乾燥された糖分解酵素の力価は0.33(ユニット/μg)以上1(ユニット/μg)以下である。別の実施形態では、凍結乾燥された糖分解酵素の力価は0.36(ユニット/μg)以上1(ユニット/μg)以下である。
【0040】
一実施形態では、凍結乾燥された糖分解酵素の力価は0.3(ユニット/μg)以上0.5(ユニット/μg)以下である。別の実施形態では、凍結乾燥された糖分解酵素の力価は0.33(ユニット/μg)以上0.5(ユニット/μg)以下、または0.36(ユニット/μg)以上0.5(ユニット/μg)以下である。
【0041】
「ユニット(U、単位)」とは、糖分解酵素が有する活性を示しており、1ユニットは、至適温度、至適pH条件下で、単位時間あたりに基質から1マイクロモルに相当する分解物を遊離させる量を意味する。例えば、糖分解酵素がコンドロイチナーゼABCの場合、1ユニットとは、pH8.0、37℃の条件下で、コンドロイチン硫酸ナトリウム(日本薬局方外医薬品規格2002に適合するコンドロイチン硫酸エステルナトリウム)から1分間あたり1マイクロモルの不飽和二糖を遊離させる量を意味する。
【0042】
一実施形態では、容器に収容する前の力価を100%とした場合、1回投与に必要な量の医薬組成物を容器に収容した後の糖分解酵素の力価は、例えば75%以上である。好ましい一実施形態では、糖分解酵素の力価は、容器に収容する前の力価を100%とした場合、1回投与に必要な量の医薬組成物を容器に収容した後の糖分解酵素の力価は、80%以上である。
【0043】
一実施形態では、容器あたりの酵素活性(糖分解酵素の酵素活性)は、例えば、5ユニット未満である。別の一実施形態では、容器あたりの酵素活性は、例えば、4.5ユニット以下である。別の一実施形態では、容器あたりの酵素活性は、例えば、4.1ユニット以下である。別の一実施形態では、容器あたりの酵素活性は、例えば、4ユニット以下である。別の一実施形態では、容器あたりの酵素活性は、例えば、0.1ユニット以上4.5ユニット以下である。別の一実施形態では、容器あたりの酵素活性は、例えば、0.1ユニット以上4.1ユニット以下である。別の一実施形態では、容器あたりの酵素活性は、例えば、0.1ユニット以上4ユニット以下である。別の一実施形態では、容器あたりの酵素活性は、0.9ユニット以上2.5ユニット以下、0.9ユニット以上2ユニット以下、1.25ユニット以上2ユニット以下、または1.5ユニットである。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、例えば、12ヶ月以上の貯蔵安定性を有する包装体が提供され得る。好ましい一実施形態では、24ヶ月以上の貯蔵安定性を有する包装体であり、より好ましい一実施形態では、36ヶ月以上の貯蔵安定性を有する包装体である。貯蔵安定性の上限は特に制限されないが、例えば、48ヶ月以下、または36ヶ月以下であり得る。
【0045】
ここで、「貯蔵安定性を有する」とは、所定条件(例えば、5℃±3℃で12ヶ月以上、25℃±2℃で6か月以上、または40℃±2℃で3ヶ月以上もしくは6ヶ月以上)で密封・遮光状態で静置して貯蔵した後における力価(%)が、薬学上許容される程度に維持されていることをいう。本明細書において「貯蔵安定性」は、例えば力価残存率(%)で評価される。例えば、5℃±3℃で12ヶ月以上の間試料を貯蔵した後の力価残存率は、例えば90%以上であり、95%以上であることが好ましい。5℃±3℃で24ヶ月以上の間試料を貯蔵した後の力価残存率は、例えば、90%以上であり、95%以上であることが好ましい。5℃±3℃で36ヶ月以上の間試料を貯蔵した後の力価残存率は、例えば、90%以上であり、95%以上であることが好ましい。25℃±2℃で6ヶ月以上の間試料を貯蔵した後の力価残存率は、例えば、90%以上であり、95%以上であることが好ましい。40℃±2℃で3ヶ月以上の間試料を貯蔵した後の力価残存率は、例えば、90%以上であり、95%以上であることが好ましい。40℃±2℃で6ヶ月以上の間試料を貯蔵した後の力価残存率は、例えば、65%以上であり、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。なお、「力価残存率(%)」とは、本発明に係る包装体を所定温度(例えば、5℃±3℃、25℃±3℃または40℃±2℃)の条件下で貯蔵した後における力価(%)を、貯蔵開始時の力価を100%として算出した値を意味する。これが100%ならば、貯蔵開始前後で酵素活性の値が等しいことになる。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、12ヶ月以上の有効期間を有する包装体が提供され得る。好ましい一実施形態では、24ヶ月以上の有効期間を有する包装体であり、より好ましい一実施形態では、36ヶ月以上の有効期間を有する包装体である。有効期間の上限は特に制限されないが、例えば、48ヶ月以下、または36ヶ月以下であり得る。
【0047】
本明細書における「有効期間」とは、医薬品がその有用性を確認された時点から一定の貯蔵方法(例えば、5℃±3℃で密封・遮光下、25℃±2℃で密封・遮光下または40℃±2℃で密封・遮光下で静置)で貯蔵した時、その確認時点における医薬品と同等の有用性が期待できる期間を意味する。
【0048】
本明細書において、前記医薬組成物の用途は、糖分解酵素の用途として公知の種々の用途が選択され得る。例えば、糖分解酵素を有効成分として含む医薬組成物の用途は、特に限定されないが、ヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の治療が例示できる。好ましい一実施形態では、医薬組成物はヘルニア症の治療用に用いられる。より好ましい一実施形態では、椎間板ヘルニア(例えば、腰椎椎間板ヘルニア)の治療用に用いられる。
【0049】
本明細書において「治療」は、完全な治癒のみならず、疾患の一部または全部の症状の改善、および疾患の進行の抑制(維持および進行速度の低下を含む)ならびに予防を含む。ここで予防とは、疾患に伴う諸症状が生じていない場合において、当該諸症状の発生を未然に防ぐことを含む。また、予防とは、例えば明確な器質的病変が認められていないものの、疾患に伴う諸症状が生じている場合において、当該器質的な病変の発生を未然に防ぐこと、および当該諸症状のうち顕在化していない症状の発展を抑制することを含む。
【0050】
本明細書において「有効成分として」および「有効量」とは、合理的なリスク/ベネフィット比に見合う量であり、且つ過度の有害副作用(毒性、刺激性など)を有さずに、所望の応答を得るのに十分な成分の量を意味する。当該「有効成分として」および「有効量」は、投与対象となる患者の症状、体格、年齢、性別等の諸要素によって変化し得る。しかしながら、当業者であれば、諸要素の組み合わせのそれぞれについての個別の試験を要するまでもなく、一または複数の具体的な試験例の結果と技術常識とに基づいて、他の場合における有効量を決定することができる。
【0051】
本明細書において「患者」とは、動物、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ等)、より好ましくはヒトを意味する。
【0052】
好ましい一実施形態では、容器に収容された医薬組成物は、滅菌状態で提供される。医薬組成物の滅菌方法は特に制限されず、ろ過滅菌、乾熱滅菌等、従来公知の手法によって行われ得る。
【0053】
医薬組成物の投与形態も特に制限されず、治療すべき疾患、症状、重症度、患者の属性(例えば、年齢など)等に応じて、適宜選択され得る。凍結乾燥製剤は、任意の溶媒(例えば、注射用水、生理食塩液など)に溶解させて使用され得る。投与形態は、例えば、椎間板内注射、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、点滴などの任意の投与経路が挙げられる。医薬組成物の投与量もまた、治療すべき疾患、症状、重症度、患者の属性(例えば、年齢など)等に応じて、当業者であれば適宜設定できる。
【0054】
本発明の好ましい具体的態様を以下に例示するが、本発明の技術的範囲を制限するものではない。以下、医薬組成物の適用が椎間板ヘルニアであるものを例に説明することもあるが、適用される疾患等を問わない「医薬組成物」であってもよいことは当然である。
【0055】
(包装体1)
有効成分: コンドロイチナーゼABC
容器の内表面が備える材料: 二酸化ケイ素
容器あたりの有効成分の収容量: 2.5μg以上10μg未満
酵素力価: 0.32(ユニット/μg)以上1(ユニット/μg)以下
容器あたりの酵素活性: 0.4ユニット以上4.5ユニット以下
適用: 椎間板ヘルニア
【0056】
(包装体2)
有効成分: コンドロイチナーゼABC
容器の内表面が備える材料: シリコーン樹脂
容器あたりの有効成分の収容量: 2.5μg以上10μg未満
酵素力価: 0.32(ユニット/μg)以上1(ユニット/μg)以下
容器あたりの酵素活性: 0.4ユニット以上4.5ユニット以下
適用: 椎間板ヘルニア
【0057】
(包装体3)
有効成分: コンドロイチナーゼABC
容器の内表面が備える材料: フッ素樹脂
容器あたりの有効成分の収容量: 2.5μg以上10μg未満
酵素力価: 0.32(ユニット/μg)以上1(ユニット/μg)以下
容器あたりの酵素活性: 1ユニット以上4.5ユニット以下
適用: 椎間板ヘルニア
【0058】
(包装体4)
有効成分: コンドロイチナーゼABC
容器の内表面が備える材料: 二酸化ケイ素、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂から選択される少なくとも1種
容器あたりの有効成分の収容量: 2μg以上5μg以下
酵素力価: 0.32(ユニット/μg)以上0.5(ユニット/μg)以下
容器あたりの酵素活性: 1.25ユニット以上2.5ユニット以下
適用: 椎間板ヘルニア
(包装体5)
有効成分: コンドロイチナーゼABC
容器の内表面が備える材料: 二酸化ケイ素、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂から選択される少なくとも1種
容器あたりの有効成分の収容量: 2.5μg以上5μg以下
酵素力価: 0.32(ユニット/μg)以上0.5(ユニット/μg)以下
容器あたりの酵素活性: 1.5ユニット
適用: 椎間板ヘルニア
【0059】
(2)キット
一実施形態では、前記包装体、およびヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の治療のための前記医薬組成物の使用を説明する添付文書またはラベルを含むキットが提供される。
【0060】
キットは、前記医薬組成物が容器に収容された包装体、ならびにヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の治療のための前記医薬組成物の使用を説明する添付文書またはラベルを含んでいればよい。すなわち、更に他の構成成分を含むものであってもよい。
【0061】
(3)製造方法
本発明の一側面は、医薬組成物とそれを収容する容器とを含む包装体の製造方法であり、ファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を内表面に備える容器に、糖分解酵素を含む溶液を収容する第1工程と、前記溶液を凍結乾燥して医薬組成物を得る第2工程とを含む、製造方法に関する。
【0062】
第1工程において、糖分解酵素を含む溶液の調製に用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝液等の緩衝液が採用され得る。また、溶液は、上記したような薬学上許容される担体を含んでいてもよい。容器に収容する糖分解酵素を含む溶液のpHは特に限定されないが、6.5以上7.5以下の範囲であることが好ましい。
【0063】
一実施形態では、第1工程において、容器あたりの酵素活性が5ユニット未満となるように、糖分解酵素を含む溶液を容器に収容する。別の実施形態では、第1工程において、容器あたりの酵素活性が4.5ユニット以下となるように、糖分解酵素を含む溶液を容器に収容する。別の実施形態では、第1工程において、容器あたりの酵素活性が4.1ユニット以下となるように、糖分解酵素を含む溶液を容器に収容する。別の実施形態では、第1工程において、容器あたりの酵素活性が0.5ユニット以上4.5ユニット以下となるように、糖分解酵素を含む溶液を容器に収容する。別の実施形態では、第1工程において、容器あたりの酵素活性が0.5ユニット以上4.1ユニット以下となるように、糖分解酵素を含む溶液を容器に収容する。好ましい一実施形態では、第1工程において、容器あたりの酵素活性が4ユニット以下となるように、糖分解酵素を含む溶液を容器に収容する。より好ましい一実施形態では、容器あたりの酵素活性が0.5ユニット以上4ユニット以下となるように、溶液を容器に収容する。別の一実施形態では、容器あたりの酵素活性が0.5ユニット以上3.5ユニット以下、1.1ユニット以上3ユニット以下、1ユニット以上2ユニット以下、1.25ユニット以上1.6ユニット以下、または1.5ユニットとなるように、溶液を容器に収容する。
【0064】
第2工程は、糖分解酵素を含む溶液を凍結させ、その凍結状態のまま昇華させることにより水分を除去して乾燥させる凍結乾燥工程を含む。第2工程においては、凍結乾燥後の医薬組成物の水分含量が、例えば5%(w/w)以下となるまで乾燥が行われる。第2工程における乾燥は、凍結乾燥後の医薬組成物の水分含量が3%(w/w)以下となるまで行われることが好ましく、2%(w/w)以下となるまで行われることがより好ましい。
【0065】
本発明に係る製造方法は、「前記(1)組成物および包装体」および「前記(2)キット」の記述、例示、好ましい範囲などがそのまま適用できる。
【0066】
本発明は、別の態様として、ヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の処置における包装体の使用であって、前記包装体は、糖分解酵素およびマトリックスメタロプロテアーゼの少なくとも1種の酵素を有効成分として含む凍結乾燥製剤である医薬組成物が、内表面にファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を備える容器に収容されてなる包装体の使用をも包含する。さらに、別の態様として、ヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の処置に使用される包装体であって、糖分解酵素およびマトリックスメタロプロテアーゼの少なくとも1種の酵素を有効成分として含む凍結乾燥製剤である医薬組成物が、内表面にファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を備える容器に収容されてなる包装体をも包含する。
【0067】
以下に本発明の実施形態を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
<1>医薬組成物と容器とを含み、前記医薬組成物は糖分解酵素およびマトリックスメタロプロテアーゼの少なくとも1種の酵素を有効成分として含む凍結乾燥製剤であり、前記容器は前記医薬組成物を収容し、当該容器の内表面にファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を備える、包装体。
【0068】
<2>前記材料が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および酸窒化アルミニウムからなる群から選択される、<1>に記載の包装体。
【0069】
<3>前記酸化ケイ素が、二酸化ケイ素である、<2>に記載の包装体。
【0070】
<4>前記容器は内表面に、前記材料を含有する膜を備える、<1>から<3>のいずれかに記載の包装体。
【0071】
<5>前記材料を含有する膜が、化学気相蒸着法、物理気相蒸着法、スプレー熱分解法またはスパッタ法により形成されてなる、<4>に記載の包装体。
【0072】
<6>前記化学気相蒸着法が、プラズマ化学気相蒸着法である、<5>に記載の包装体。
【0073】
<7>前記容器あたりの酵素の収容量が10μg未満である、<1>から<6>のいずれかに記載の包装体。
【0074】
<8>前記酵素の力価が0.3(ユニット/μg)以上である、<1>から<7>のいずれかに記載の包装体。
【0075】
<9>前記容器あたりの酵素活性が5ユニット未満である<1>から<8>のいずれかに記載の包装体。
【0076】
<10>前記酵素の酵素活性が、凍結乾燥前の値を100%とした場合に、75%以上である、<1>から<9>のいずれかに記載の包装体。
【0077】
<11>5℃±3℃で12ヶ月以上の貯蔵安定性を有する、<1>から<10>のいずれかに記載の包装体。
【0078】
<12>前記酵素がグリコサミノグリカン分解酵素である、<1>から<11>のいずれかに記載の包装体。
【0079】
<13>前記グリコサミノグリカン分解酵素がコンドロイチナーゼである、<12>に記載の包装体。
【0080】
<14>前記コンドロイチナーゼがコンドロイチナーゼABCである、<13>に記載の包装体。
【0081】
<15>前記マトリックスメタロプロテアーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ7である、<1>から<14>のいずれかに記載の包装体。
【0082】
<16>前記医薬組成物が薬学上許容される担体を含む、<1>から<15>のいずれかに記載の包装体。
【0083】
<17>前記担体が、ポリアルキレングリコールおよびスクロースの少なくとも1種を含む、<16>に記載の包装体。
【0084】
<18>前記医薬組成物が、ヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の治療用である、<1>から<17>のいずれかに記載の包装体。
【0085】
<19>前記容器が、バイアル、シリンジ、またはアンプルである、<1>から<18>のいずれかに記載の包装体。
【0086】
<20>ファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を内表面に備える容器内で、糖分解酵素およびマトリックスメタロプロテアーゼの少なくとも1種の酵素を含む溶液を凍結乾燥することにより得られてなる、医薬組成物。
【0087】
<21>前記酵素の力価が0.3ユニット/μg以上である、<20>に記載の医薬組成物。
【0088】
<22>前記酵素量が10μg未満の単位用量製剤である、<20>から<21>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0089】
<23>酵素活性が5ユニット未満である、<20>から<22>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0090】
<24>5℃±3℃で12ヶ月以上の貯蔵安定性を有する、<20>から<23>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0091】
<25>前記酵素がグリコサミノグリカン分解酵素である、<20>から<24>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0092】
<26>前記グリコサミノグリカン分解酵素がコンドロイチナーゼである、<25>に記載の医薬組成物。
【0093】
<27>前記コンドロイチナーゼがコンドロイチナーゼABCである、<26>に記載の医薬組成物。
【0094】
<28>前記マトリックスメタロプロテアーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ7である、<20>から<27>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0095】
<29>薬学上許容される担体を含む、<20>から<28>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0096】
<30>前記担体が、ポリアルキレングリコールおよびスクロースの少なくとも1種を含む、<29>に記載の医薬組成物。
【0097】
<31>前記医薬組成物が、ヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の治療用である、<20>から<30>のいずれかに記載の医薬組成物。
【0098】
<32><1>から<19>のいずれかに記載の包装体、およびヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の治療のための前記医薬組成物の使用を説明する添付文書またはラベルを含む、キット。
【0099】
<33>医薬組成物とそれを収容する容器とを含む包装体の製造方法であり、ファインセラミック、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される材料の少なくとも1種を内表面に備える容器に、糖分解酵素およびマトリックスメタロプロテアーゼの少なくとも1種の酵素を含む溶液を収容する工程と、前記溶液を凍結乾燥して医薬組成物を得る工程とを含む、製造方法。
【0100】
<34>前記材料が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および酸窒化アルミニウムからなる群から選択される、<33>に記載の製造方法。
【0101】
<35>前記酸化ケイ素が、二酸化ケイ素である、<34>に記載の製造方法。
【0102】
<36>前記容器の内表面が、前記材料を含有する膜を備える、<33>から<35>のいずれかに記載の製造方法。
【0103】
<37>前記材料を含有する膜が、化学気相蒸着法、物理気相蒸着法、スプレー熱分解法またはスパッタ法により形成されてなる、<36>に記載の製造方法。
【0104】
<38>前記化学気相蒸着法が、プラズマ化学気相蒸着法である、<37>に記載の製造方法。
【0105】
<39>前記酵素の収容量が10μg未満である、<33>から<38>のいずれかに記載の製造方法。
【0106】
<40>前記医薬組成物における酵素の力価が、0.3(ユニット/μg)以上である、<33>から<39>のいずれかに記載の製造方法。
【0107】
<41>前記容器に収容される溶液の酵素活性が5ユニット未満である、<33>から<40>のいずれかに記載の製造方法。
【0108】
<42>凍結乾燥後の前記酵素の酵素活性が、凍結乾燥前の酵素活性を100%とした場合に、75%以上である、<33>から<41>のいずれかに記載の製造方法。
【0109】
<43>前記酵素はグリコサミノグリカン分解酵素である、<33>から<42>のいずれかに記載の製造方法。
【0110】
<44>前記グリコアミノグリカン分解酵素がコンドロイチナーゼである、<43>に記載の製造方法。
【0111】
<45>前記コンドロイチナーゼがコンドロイチナーゼABCである、<44>に記載の製造方法。
【0112】
<46>前記マトリックスメタロプロテアーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ7である、<33>から<45>のいずれかに記載の製造方法。
【0113】
<47>前記医薬組成物が薬学上許容される担体を含む、<33>から<46>のいずれかに記載の製造方法。
【0114】
<48>前記担体が、ポリアルキレングリコールおよびスクロースの少なくとも1種を含む、<47>に記載の製造方法。
【0115】
<49>前記医薬組成物が、ヘルニア症、リソソーム病、ケロイド、肥厚性瘢痕、筋ジストロフィー、または脊髄損傷の治療用である、<33>から<48>のいずれかに記載の製造方法。
【0116】
<50>前記容器は、バイアル、シリンジ、またはアンプルである、<33>から<49>のいずれかに記載の製造方法。
【実施例0117】
以下、本発明をより具体的に詳説する。しかしながら、これにより本発明の技術的範囲が限定されるべきものではない。
【0118】
<調製例1>
1)コンドロイチナーゼABCの調製
コンドロイチナーゼABCは、特開平6-153947号公報に記載の方法に準じて調製した。すなわち、プロテウス・ブルガリスの培養上清から精製することによって製造した。得られたコンドロイチナーゼABCの力価は、0.40U/μgであった。
【0119】
2)コンドロイチナーゼABCの酵素活性測定と濃度測定
コンドロイチナーゼABCの酵素活性は以下の方法で測定した。
酵素試料(コンドロイチナーゼABC)を0.01%(w/v)カゼイン試薬(20mMリン酸緩衝液)で4000倍希釈した。この希釈された酵素試料100μLに基質溶液400μL(3mg/mlコンドロイチン硫酸エステルナトリウム(日本薬局方外医薬品規格)、50mM 2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、50mM酢酸ナトリウム、pH8)を加えて混和した。溶液を37℃で20分間反応させた後、100℃の水浴中で1分間加熱した。室温まで冷却後、0.05M 塩酸の5.0mLを加え、試料溶液を調製した。コンドロイチナーゼABC標準物質を0.01%(w/v)カゼイン試薬で400倍希釈した。この希釈されたコンドロイチナーゼABC標準物質の溶液100μLに対し、試料溶液の調製と同様の操作を行い、標準溶液を調製した。また、0.01%(w/v)カゼイン試薬100μLに対し、試料溶液の調製と同様の操作を行い、対照溶液を調製した。試料溶液、標準溶液並びに対照溶液につき、紫外可視吸光度測定法により、波長232nmにおける吸光度A、A、およびAを測定し、下記式により酵素溶液活性(U/mL)を求めた。ここで酵素溶液活性は、単位液量当たりの酵素活性である。
【0120】
酵素溶液活性(U/mL)=(A-A)/(A-A)×4000/400×Us
:試料溶液の吸光度
:対照溶液の吸光度
:標準溶液の吸光度
Us:コンドロチナーゼABC標準物質の酵素溶液活性(U/mL)
【0121】
なお、1U(ユニット、単位)は、上記反応条件下において1分間に不飽和二糖を1マイクロモル遊離する反応を触媒する酵素活性の値と定義した。本明細書において用いた酵素活性の値は、酵素溶液活性に基づいて求めた。
【0122】
コンドロイチナーゼABCの酵素量(タンパク量、μg)は以下のLowry法(ローリー法)で測定した。すなわち、純水で50倍希釈した酵素試料(コンドロイチナーゼABC)0.5mLにアルカリ性銅試薬2.5mL加えて混和し、室温(20℃以上25℃以下)に10分間放置した。この液に1mol/Lフェノール試薬0.25mLを加え混和し、室温に30分間放置し、試料溶液とした。ウシ血清アルブミンを水に溶かし、それぞれ30μg/mL、40μg/mL、50μg/mL、60μg/mL、または70μg/mLとなるように溶液を調製し、これら溶液0.5mLそれぞれに対し、前記50倍希釈した酵素試料と同様の操作を行い、標準溶液とした。また、水0.5mLに対し、前記50倍希釈した酵素試料と同様の操作を行い、ブランク液とした。これらの液について、波長750nmにおける吸光度を測定した。直線回帰法により標準溶液の吸光度とタンパク質濃度をプロットし、各点に最も近似した標準曲線を求めた。得られた標準曲線と試料溶液の吸光度から試料溶液中のタンパク量を求めた。
【0123】
3)酵素用緩衝液の調製
以下の組成となるよう、酵素用緩衝液を用意した。
(組成;注射用蒸留水1L中)
リン酸水素ナトリウム水和物 1.125mg
(リン酸水素ナトリウム十二水和物)
リン酸二水素ナトリウム 0.3mg
スクロース 5mg
ポリエチレングリコール3350 10mg
pH:6.5以上7.5以下。
【0124】
<参考例>
上記の酵素試料(コンドロチナーゼABC)を、酵素用緩衝液に溶解させた。得られた酵素溶液を、酵素量がそれぞれ以下になるよう、ガラスバイアル(バイアル瓶3010;不二硝子株式会社製)に収容した:
試料1: 15.0μg/バイアル(6.0U/バイアル)
試料2: 30.0μg/バイアル(12.0U/バイアル)
試料3: 60.0μg/バイアル(24.0U/バイアル)。
【0125】
これらバイアルに収容した酵素溶液を凍結乾燥した(凍結乾燥後の水分含量2%(w/w)以下)。凍結乾燥後、窒素ガスでバイアル内を復圧し、ゴム栓を打栓し、包装体を得た。
【0126】
各試料について、凍結乾燥後の酵素活性(U/バイアル)を測定した(n=3)。また、得られた酵素活性の値を基に、酵素の凍結乾燥後力価(U/μg)を算出した。その結果を表1に示す。なお、力価は酵素量当たりの酵素活性である。
【0127】
【表1】
【0128】
表1に示す通り、バイアルに収容する酵素量が少ないほど力価が低下した。
【0129】
<実施例1>
酵素用緩衝液を用いて調製したコンドロチナーゼABC溶液を、9.1μg酵素/バイアル(3.63U/バイアル;試料4から試料6)または1.3μg酵素/バイアル(0.50U/バイアル;試料7)となるように3mLサイズのガラスバイアルに収容した。ガラスバイアルとして、バイアル瓶3010(不二硝子株式会社製;試料4)、バイアル瓶3010シリコート(スプレー熱分解法(SPD法)で形成された二酸化ケイ素膜をバイアル内表面に有する;不二硝子株式会社製;試料5)およびショット(登録商標)タイプワンプラス(プラズマ化学気相蒸着法(プラズマCVD法)で形成された二酸化ケイ素膜をバイアル内表面に有する;SCHOTT社製;試料6、試料7)を用いた。
【0130】
これらバイアルに収容した酵素溶液を凍結乾燥した(凍結乾燥後の水分含量2%(w/w)以下)。乾燥後、窒素ガスでバイアル内を復圧し、ゴム栓を打栓し、単位用量が収容された包装体を得た。
【0131】
各試料について、凍結乾燥後の酵素活性(U/バイアル)を測定した(n=10)。また、得られた酵素活性の値を基に、酵素の凍結乾燥後力価(U/μg)を算出した。結果を表2に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
<実施例2>
試料4および試料6の包装体にアルミキャップで巻き締めした後、250℃で5時間乾熱滅菌した。乾熱滅菌後の酵素活性は、試料4では2.53U/バイアルであり、試料6では3.12U/バイアルであった。
【0134】
<実施例3>
バイアル瓶3010(不二硝子株式会社製;試料8)およびショット(登録商標)タイプワンプラス(SCHOTT社製;試料9)に酵素溶液を収容し、凍結乾燥した(水分含量2%(w/w)以下)。凍結乾燥後、窒素ガスでバイアル内を復圧し、ゴム栓を打栓し、包装体を得た。得られた包装体を、40±2℃、遮光の条件下で1ヶ月、3ヶ月または6カ月静置して貯蔵し、各貯蔵期間後における力価を求めた(n=3)。貯蔵開始時の力価を100%とした場合の、各貯蔵期間後における力価残存率(%)を算出した結果を表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
また、試料9を5℃±3℃、遮光の条件で12ヶ月静置して貯蔵したところ、力価残存率は98%であった。
【0137】
<調製例2>
1)コンドロイチナーゼABCの調製
調製例1と同様に、コンドロイチナーゼABCを、特開平6-153947号公報に記載の方法に準じて調製した。得られたコンドロイチナーゼABCの力価は、0.42U/μgであった。
【0138】
<実施例4>
調製例2で得られたコンドロイチナーゼABCに酵素用緩衝液を加え、酵素溶液を調製した。この酵素溶液を、9.8μg酵素/バイアル(4.1U/バイアル;試料10から試料12)となるようにガラスバイアルに収容した。ガラスバイアルとして、ショット(登録商標)タイプワンプラス(プラズマ化学気相蒸着法(プラズマCVD法)で形成された二酸化ケイ素膜をバイアル内表面に有する;SCHOTT社製;試料10)、シリコーンコートバイアル(シリコーン樹脂膜をバイアル内表面に有する:岩田硝子工業株式会社製;試料11)、フッ素コートバイアル(ポリテトラフルオロエチレン膜をバイアル内表面に有する;株式会社ユニバーサル製;試料12)を用いた。
【0139】
これらバイアルに収容した酵素溶液を凍結乾燥した(凍結乾燥後の水分含量2%(w/w)以下)。乾燥後、窒素ガスでバイアル内を復圧し、ゴム栓を打栓し、単位用量が収容された包装体を得た。
【0140】
各試料について、凍結乾燥後の酵素活性(U/バイアル)を測定した(n=3)。また、得られた酵素活性の値を基に、酵素の凍結乾燥後力価(U/μg)を算出した。結果を表4に示す。
【表4】
【0141】
本発明は具体的実施例と様々な実施形態とに関連して記載されているが、本明細書に記載される実施形態の多くの改変や応用が、本発明の精神および範囲を逸脱することなく可能であることは、当業者によって容易に理解される。
本出願は、2018年2月28日付で日本国特許庁に出願された特願2018-35884号、および2018年7月27日付で日本国特許庁に出願された特願2018-141542号に基づく優先権を主張し、その内容は参照によって全体として本出願に組み込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。