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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171450
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】硬化性組成物及びその硬化体
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/00 20060101AFI20231124BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C08F255/00
C08F290/06
B32B15/08 U
B32B15/082 Z
B32B15/20
B32B27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170371
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2021562662の分割
【原出願日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019218685
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019218686
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020088490
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020088491
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020088492
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020088493
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒井 亨
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕章
(72)【発明者】
【氏名】八木 梓
(57)【要約】
【課題】室温及び高温下の力学強度(弾性率等)が高い硬化体が得られる組成物の提供。
【解決手段】下記(1)~(4)の条件を満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体、及び添加樹脂を含む硬化性組成物であって、前記添加樹脂は、炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマー、及び芳香族ポリエン系樹脂からなる群から選択される一種以上である硬化性組成物。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下。
(2)芳香族ビニル化合物単量体が炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下。
(3)芳香族ポリエンが分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれ、芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれ、オレフィン、芳香族ビニル化合物、芳香族ポリエンの単量体単位の合計が100質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)の条件を満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体、及び添加樹脂を含む硬化性組成物であって、前記添加樹脂は、炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマー、及び芳香族ポリエン系樹脂からなる群から選択される一種以上である、硬化性組成物。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下である。
(2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満である。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
【請求項2】
前記共重合体100質量部に対して、前記添加樹脂を1~500質量部含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記添加樹脂が、ポリフェニレンエーテル及び1,2-ポリブタジエンからなる群から選択される一種以上である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、芳香族ビニル化合物単量体、芳香族ポリエン単量体、及び極性単量体からなる群から選択される一種以上である単量体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記共重合体100質量部に対して、前記単量体を10質量部以下含む、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性組成物と溶剤とを含む、ワニス状の硬化性組成物。
【請求項7】
さらに硬化剤を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
さらに充填剤、難燃剤、及び表面変性剤からなる群から選ばれる単数または複数を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物からなる成形体。
【請求項10】
シートである請求項9に記載の成形体。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化体。
【請求項12】
300℃における貯蔵弾性率が5×105Pa以上である請求項11に記載の硬化体。
【請求項13】
電気絶縁材料である請求項11又は12に記載の硬化体。
【請求項14】
下記(1)~(4)の条件を満たすオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体と、炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマー、及び芳香族ポリエン系樹脂からなる群から選択される一種以上である添加樹脂を含む組成物から得られる硬化体であり、300℃における貯蔵弾性率が5×105Pa以上、かつ23℃、10GHzの誘電率が2.5以下2.0以上、誘電正接が0.003以下0.0005以上である電気絶縁材料。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下である。
(2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満である。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位と前記芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
【請求項15】
下記(1)~(4)の条件を満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体、及び本共重合体100質量部に対し単量体0質量部超10質量部以下を含む硬化性組成物であって、前記単量体は、芳香族ビニル化合物単量体、芳香族ポリエン単量体、及び極性単量体からなる群から選択される一種以上である硬化性組成物。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下である。
(2)共重合体中の芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満である。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
【請求項16】
単量体が極性単量体である、請求項15記載の硬化性組成物。
【請求項17】
請求項15または16記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化体であり 、300℃における貯蔵弾性率が5×105Pa以上、かつ23℃、10GHzの誘電率が2.5以下2.0以上、誘電正接が0.003以下0.0005以上である電気絶縁材料。
【請求項18】
請求項1~8、15、及び16のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む層と、銅箔とを含む積層体。
【請求項19】
請求項1~8、15、及び16のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む層と、LCP層とを含む積層体。
【請求項20】
請求項1~8、15、及び16のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む層と、銅箔及びLCP層とを含む積層体。
【請求項21】
請求項18~20のいずれか一項に記載の積層体を硬化してなる硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。本明細書においてシートとは、フィルムの概念をも包含するものとする。また、本明細書においてフィルムと記載されていても、シートの概念をも包含するものとする。
【背景技術】
【0002】
通信周波数がギガヘルツ帯及びそれ以上の高周波帯に移行することにより、低誘電特性を有する絶縁材料に対するニーズが高まっている。ポリエチレン等のポリオレフィンやポリスチレン等の芳香族ビニル化合物重合体は、分子構造中に極性基を持たないため、優れた低誘電率、低誘電正接を示す材料として知られている。しかし、これらは耐熱性を結晶融点、又はガラス転移温度に依存するため電気絶縁体としての耐熱性に課題があり、さらに熱可塑性樹脂であるために製膜プロセス上の課題がある(特許文献1)。
【0003】
パーフルオロエチレン等のフッ素系樹脂は優れた低誘電率、低誘電損失と耐熱性に優れた特徴を有するが成形加工、膜成形が困難でありデバイス適性が低い。また、配線の銅箔との接着力にも課題がある。一方、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の後硬化樹脂を用いた基板、絶縁材料はその耐熱性、易取り扱い性から広く用いられてきているが、誘電率、誘電損失が比較的高く、高周波用の絶縁材料としては改善が望まれている(特許文献2)。
【0004】
オレフィン系及びスチレン系の重合体セグメントからなるグラフト、又はブロック共重合体からなる電気絶縁材料が提案されている(特許文献3)。本材料はオレフィンやスチレン系の炭化水素系重合体の本質的な低誘電率、低誘電損失性に着目している。その製造方法は、市販のポリエチレン、ポリプロピレンにスチレンモノマ-、ジビニルベンゼンモノマーとラジカル重合開始剤の存在下、一般的なグラフト重合を行うもので、このような手法ではグラフト効率が上がらず、ポリマーの均一性が十分でないという課題がある。さらに、得られたポリマーはゲルを含んでおり、加工性、充填性が悪いという課題があった。本材料は、熱可塑性樹脂で耐熱性が十分でなく、4-メチル-1-ペンテン系等の耐熱性樹脂を加える必要がある。本材料は、所定の場所に塗布あるいは充填した後硬化させる成形方法に適用することは困難である。
【0005】
特許文献4には、複数の芳香族ビニル基を有する炭化水素化合物を架橋成分として含む架橋構造体からなる絶縁層が記載されている。実施例に具体的に記載されている本架橋成分の硬化体は剛直であり、多量の充填剤を充填することは困難であると考えられる。
【0006】
特許文献5には、特定の重合触媒から得られ、特定の組成、配合のエチレン-オレフィン(芳香族ビニル化合物)-ポリエン共重合体、非極性ビニル化合物共重合体からなる硬化体が示されている。特許文献5の実施例に具体的に記載されている硬化体は低誘電率、低誘電正接という特徴を有するが、極めて軟質であり、それ故常温及び高温での弾性率等の力学強度を向上することが必要である。薄膜の絶縁材料、例えばFPCやFCCLの層間絶縁材料やカバーレイ用途では実装工程中または実装後使用中の厚み等といった、寸法安定性を向上することが好ましい。また実施例に具体的に記載されている組成物の硬化体は金属箔、特に銅箔との密着性に改善の余地を有している。特許文献6には、同様の特定の重合触媒から得られ、特定の組成、配合のエチレン-オレフィン(芳香族ビニル化合物)-ポリエン共重合体、非極性ビニル化合物共重合体からなる硬化体が示されているが、実施例に具体的に記載されている組成物の硬化体は金属箔、特に銅箔との密着性、また低温特性にも改善の余地を有している。特許文献7にも同様の共重合体を含む組成物の硬化体が記載されているが、実施例に具体的に記載されている組成物の硬化体は金属箔、特に銅箔との密着性に改善の余地を有している。
【0007】
特許文献5、6、7には、特定の重合触媒から得られ、特定の組成、配合のエチレン-オレフィン(芳香族ビニル化合物)-ポリエン共重合体および非極性ビニル化合物からなる硬化体が示されている。これらの硬化性組成物は、比較的大量の単量体成分(芳香族ビニル化合物や芳香族ポリエン)を含んでおり、ワニス状である。このため臭気があるだけでなく、Bステージシート(半硬化体シート)を容易には製造できない課題を有している。これらの硬化性組成物は、製造設備が煩雑になる課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭52-31272号公報
【特許文献2】特開平6-192392号公報
【特許文献3】特開平11-60645号公報
【特許文献4】特開2004-087639号公報
【特許文献5】特開2010-280771号公報
【特許文献6】特開2009-161743号公報
【特許文献7】特開2010-280860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来技術では、成形加工が容易な熱可塑性の組成物も、優れた低誘電特性を有しかつ室温及び高温化での力学強度(弾性率等)が高い硬化体も得られておらず、その提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明では以下の態様を提供できる。
【0011】
下記(1)~(4)の条件を満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体、及び添加樹脂を含む硬化性組成物であって、前記添加樹脂は、炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマー、及び芳香族ポリエン系樹脂からなる群から選択される一種以上である、硬化性組成物。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下である。
(2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満である。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
【0012】
下記(1)~(4)の条件を満たすオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体と、炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマー、及び芳香族ポリエン系樹脂からなる群から選択される一種以上である添加樹脂を含む組成物から得られる硬化体であり、300℃における貯蔵弾性率が5×105Pa以上、好ましくは1×106Pa以上、かつ23℃、10GHzの誘電率が2.5以下2.0以上、誘電正接が0.003以下0.0005以上である電気絶縁材料。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下である。
(2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満である。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性組成物は、熱可塑性樹脂としての性質を有する。またその硬化性組成物を硬化して得られる硬化体は、優れた低誘電特性を有し、室温及び高温下の力学強度(弾性率等)が高い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下にさらに詳細に説明する。本明細書においては、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体を単に共重合体と記載する場合がある。本明細書における数値範囲は、別段の断わりがない限りは、その上限値及び下限値を含むものとする。本明細書においてシートとは、フィルムの概念をも包含するものとする。また、本明細書においてフィルムと記載されていても、シートと同じ意味を示すものとする。また、本明細書において硬化体は硬化物と同じ意味である。本明細書においては、含量を含有量ということもある。
【0015】
<組成物>
本明細書において、組成物(硬化性組成物)を樹脂組成物または硬化性樹脂組成物と記載する場合がある。本発明の組成物は、前記一定の範囲の組成、分子量範囲を有する前記オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体を含む。また本組成物はさらに、所定量の一種以上の「添加樹脂」を含む。さらに本組成物は他に後述する「単量体」、「硬化剤」を含んでも良い。
【0016】
<オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体>
本発明に用いることが可能な、一般的なオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体の製造方法は、例えば特開2009-161743号公報、特開2010-280771号公報、国際公開WO00/37517号に記載されている。本オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体(以下、本明細書では単に「共重合体」と記載する場合がある)は以下の(1)~(4)の条件をすべて満たす。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下、好ましくは2万以上10万以下、より好ましくは3万以上10万以下である。
(2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満、好ましくは1.5個以上7個未満、より好ましくは2個以上5個未満である。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
【0017】
本オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体は、オレフィン、芳香族ビニル化合物、芳香族ポリエンの各単量体を共重合することで得ることができる。
【0018】
オレフィン単量体とは、炭素数2以上20以下のαオレフィン及び炭素数5以上20以下の環状オレフィンから選ばれる一種以上であり、実質的に酸素や窒素、ハロゲンを含まず、炭素と水素から構成される化合物である。炭素数2以上20以下のαオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デカン、1-ドデカン、4-メチル-1-ペンテン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセンが例示できる。炭素数5以上20以下の環状オレフィンとしては、ノルボルネン、シクロペンテンが例示できる。オレフィンとして好ましくは、エチレンとエチレン以外のαオレフィンや環状オレフィンの組み合わせ、またはエチレン単独である。エチレン単独、または含まれるエチレン以外のαオレフィン/エチレンの質量比が1/7以下、より好ましくは1/10以下の場合は、得られる硬化体の銅箔や銅配線との剥離強度を高くすることができ、好ましい。さらに好ましくは、共重合体に含まれるエチレン以外のαオレフィン単量体単位の含量が6質量%以下、最も好ましくは4質量%以下、またはオレフィンがエチレン単独である。この場合、さらに銅箔や銅配線との剥離強度を高くすることができ、より好ましい。また好ましい、エチレンとエチレン以外のαオレフィンの組み合わせでは、最終的に得られる硬化体のエチレン-αオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン連鎖のガラス転移温度はαオレフィンの種類、含量により、おおむね-60℃~-5℃、好ましくは-50℃~-10℃の範囲で自由に調整することができる。
【0019】
芳香族ビニル化合物単量体は、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、例えばスチレン、パラメチルスチレン、パライソブチルスチレン、各種ビニルナフタレン、各種ビニルアントラセンが例示できる。
【0020】
芳香族ポリエン単量体としては、その分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンであり、好ましくは炭素数8以上20以下のポリエンである。芳香族ポリエン単量体としては、好ましくは分子内にビニル基を複数有する炭素数8以上20以下のポリエンであり、さらに好ましくは、オルト、メタ、パラの各種ジビニルベンゼン又はこれらの混合物、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、p-2-プロペニルスチレン、p-3-ブテニルスチレン等の芳香族ビニル構造を有し、実質的に酸素や窒素、ハロゲンを含まず、炭素と水素から構成される化合物である。また、特開2004-087639号公報に記載されている二官能性芳香族ビニル化合物、例えば1,2-ビス(ビニルフェニル)エタン(略称:BVPE)を用いることもできる。この中で好ましくは、オルト、メタ、パラの各種ジビニルベンゼン、又はこれらの混合物が用いられ、最も好ましくはメタ及びパラジビニルベンゼンの混合物が用いられる。本明細書ではこれらジビニルベンゼンをジビニルベンゼン類と記す。芳香族ポリエンとしてジビニルベンゼン類を用いた場合、硬化処理を行う際に硬化効率が高く、硬化が容易であるため好ましい。
【0021】
以上のオレフィン、芳香族ビニル化合物、芳香族ポリエンの各単量体としては、他に極性基、例えば酸素原子、窒素原子等を含むオレフィン、酸素原子や窒素原子等を含む芳香族ビニル化合物、または、酸素原子や窒素原子等を含む芳香族ポリエンを含んでいてもよいが、これら極性基を含む単量体の総質量は、本組成物の総質量の10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、極性基を含む単量体を含まないことが最も好ましい。10質量%以下にすることにより、本組成物を硬化して得られる硬化体の低誘電特性(低誘電率/低誘電損失)を向上できる。
【0022】
本共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下、好ましくは2万以上10万以下、より好ましくは3万以上10万以下である。このような範囲にすることで、未硬化の状態で、添加樹脂を添加してもべた付きにくくなり、熱可塑性を向上できる効果が得られ、さらに最終的に得られる硬化体に高い破断点強度、高い破断点伸び等の良好な物性を容易に付与することができる。数平均分子量が5000未満では、未硬化の段階での組成物の力学物性が低く、また粘着性が高いため、本組成物は熱可塑性樹脂としての成形加工が困難な場合がある。数平均分子量が10万より高いと、成形加工性が低下する場合がある。本共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物単量体単位の含量は0質量%以上70質量%以下、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは10質量%以上55質量%以下である。芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%より大きい場合には、最終的に得られる組成物の硬化体のガラス転移温度が室温付近となり、低温での靱性や伸びが低下してしまう場合が有る。芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が10質量%以上であると、本共重合体の芳香族性が向上し、難燃剤やフィラーとのなじみが良くなり、難燃剤がブリードアウトせず、フィラーを充填できる。また芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が10質量%以上であると、銅箔や銅配線との剥離強度が高い組成物の硬化体を得ることができる。
【0023】
本共重合体において、芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量は数平均分子量あたり1.5個以上20個未満、好ましくは2個以上20個未満、より好ましくは3個以上10個未満である。ビニル基及び/又はビニレン基の含有量は、以下「ビニル基含有量」と総称することもある。1.5個未満では架橋効率が低く、十分な架橋密度の硬化体を得ることが難しくなる。本ビニル基含有量が増えると、最終的に得られる硬化体の、常温下及び高温下における力学物性を向上することが容易になる。本共重合体中の数平均分子量あたりの芳香族ポリエン単位に由来するビニル基含有量は、当業者に公知のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求める標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と、1H-NMR測定により得られる芳香族ポリエン単位に由来するビニル基含量やビニレン基含量とを比較することで得ることができる。例として、1H-NMR測定により得られる各ピーク面積の強度比較により、共重合体中の芳香族ポリエン単位に由来するビニル基含量が0.095質量%であり、GPC測定による標準ポリスチレン換算数平均分子量が68000の場合、本数平均分子量中の芳香族ポリエン単位に由来するビニル基の分子量は、これらの積である64.8となり、これをビニル基の式量27で割ることで、2.4となる。すなわち、本共重合体中の数平均分子量あたりの芳香族ポリエン単位に由来するビニル基含有量は2.4個である。共重合体の1H-NMR測定で得られるピークの帰属は文献により公知である。また、1H-NMR測定で得られるピーク面積の比較から共重合体の組成を求める方法も公知である。また本明細書では共重合体中のジビニルベンゼン単位の含量をジビニルベンゼン単位に由来するビニル基のピーク強度(1H-NMR測定による)から求めている。すなわちジビニルベンゼン単位に由来するビニル基含量から、当該ビニル基1個は共重合体中のジビニルベンゼンユニット1個に由来するとしてジビニルベンゼン単位の含量を求めている。
【0024】
本共重合体において、好ましいオレフィン単量体単位含量は30質量%以上であり、特に好ましくは45質量%以上である。前記オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計は100質量%である。オレフィン単量体単位含量が30質量%以上だと、最終的に得られる硬化体の靱性(伸び)が向上し、硬化途中での割れや、硬化体の耐衝撃性の低下、硬化体のヒートサイクル試験中での割れが発生しない。本共重合体において、好ましいオレフィン単量体単位含量は90質量%以下である。
【0025】
本共重合体において、芳香族ビニル化合物単量体単位を含まない、オレフィン-芳香族ポリエン共重合体として好適なのは、具体的にはエチレン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレン-プロピレン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレン-1-ブテン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレン-1-ヘキセン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレン-1-オクテン-ジビニルベンゼン共重合体が例示できる。
【0026】
本共重合体において、芳香族ビニル化合物単量体単位を含む、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体としては、エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレン-プロピレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレン-1-ヘキセン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレン-1-オクテン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体が例示できる。
【0027】
<添加樹脂>
本発明の組成物は、含まれる共重合体100質量部に対し、炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマー、芳香族ポリエン系樹脂から選ばれる単数または複数の樹脂(本明細書においては単に「添加樹脂」と記載する)を、好ましくは合計1~500質量部、さらに好ましくは合計1~300質量部含むことができる。添加樹脂としては特に好ましくはポリフェニレンエーテル及び/または炭化水素系エラストマーを用いてよい。炭化水素系エラストマーの中では、共役ジエン系重合体が好ましい。共役ジエン系重合体の中では、1,2-ポリブタジエンが好ましい。ポリフェニレンエーテル及び/または1,2-ポリブタジエンを用いることで、単量体の使用量を減じることが可能で、例えば単量体を用いずとも本発明の好適な硬化体を得ることができる。
【0028】
<炭化水素系エラストマー>
本発明の組成物に用いる炭化水素系エラストマーの量は、共重合体100質量部に対し、1~500質量部が好ましく、1~200質量部がより好ましい。本発明の組成物に好適に用いることができる炭化水素系エラストマーは、エチレン系やプロピレン系のエラストマー、共役ジエン系重合体や芳香族ビニル化合物-共役ジエン系のブロック共重合体またはランダム共重合体、およびこれらの水素化物(水添物)から選ばれる単数または複数のエラストマーである。炭化水素系エラストマーの数平均分子量は1000以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは2万以上、最も好ましくは3万以上である。炭化水素系エラストマーの数平均分子量は好ましくは8万以下、より好ましくは6万以下である。
エチレン系エラストマーとしては、エチレン-オクテン共重合体やエチレン-1-ヘキセン共重合体等のエチレン-αオレフィン共重合体、EPR、EPDMが挙げられ、プロピレン系エラストマーとしては、アタクティックポリプロピレン、低立体規則性のポリプロピレン、プロピレン-1-ブテン共重合体等のプロピレン-αオレフィン共重合体が挙げられる。
【0029】
共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエンや1,2-ポリブタジエンが挙げられる。芳香族ビニル化合物-共役ジエン系のブロック共重合体またはランダム共重合体、およびこれらの水素化物(水添物)としては、SBS、SIS、SEBS、SEPS、SEEPS、SEEBS等が例示できる。好適に用いることができる1,2-ポリブタジエンは、例えば、JSR株式会社の製品として入手できるほか、日本曹達株式会社から、液状ポリブタジエン:製品名B-1000、2000、3000の製品名で入手することができる。また、好適に用いることができる1,2-ポリブタジエン構造を含む共重合体としては、TOTAL CRAY VALLEY社の「Ricon100」が例示できる。これら炭化水素系エラストマーから選ばれる単数または複数の樹脂が、特に室温(25℃)で液状(概ね300000mPa・S以下)の場合、本発明の組成物の未硬化状態での取扱性や成形加工性(熱可塑性樹脂としての取り扱い性)の観点からはその使用量は、共重合体100質量部に対し、好ましくは1~30質量部、特に好ましくは1~20質量部の範囲である。
【0030】
<ポリフェニレンエーテル>
ポリフェニレンエーテルとしては、市販の公知のポリフェニレンエーテルを用いることができる。ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は任意であり、組成物の成形加工性を考慮すると数平均分子量は好ましくは1万以下、最も好ましくは5000以下である。数平均分子量は好ましくは500以上、最も好ましくは1000以上である。また、本発明の組成物の硬化を目的とした添加の場合、分子末端が変性されていることが好ましく、及び/または、一分子内に複数の官能基を有していることが好ましい。官能基としては、アリル基、ビニル基、エポキシ基等の官能基が挙げられ、最も好ましくは、ラジカル重合性の官能基で有り、ビニル基、特に(メタ)アクリル基や芳香族ビニル基である。つまり、本発明の組成物においては、分子鎖の両末端がラジカル重合性の官能基で変性されている二官能性ポリフェニレンエーテルが特に好ましい。このようなポリフェニレンエーテルとしてはSABIC社のNoryl(商標)SA9000等が挙げられ、特に好ましくは三菱ガス化学社製二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(OPE-2St)を用いることができる。本発明の組成物に用いるポリフェニレンエーテルの使用量は、共重合体100質量部に対し、好ましくは1~200質量部であり、より好ましくは10~100質量部である。
【0031】
<オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマー>
また、本発明の硬化には、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマーも添加することができ、特に好ましくは、下記(1A)~(4A)の条件を満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマーも添加することができる。ここでいうオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマーとは、上記(1)~(4)の条件を満たす上記のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体は除くものである。
(1A)共重合オリゴマーの数平均分子量が500以上5000未満である。
(2A)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3A)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基含有量が数平均分子量あたり1.5個以上である。
(4A)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位含量が30質量%以上であり、前記オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
本発明の組成物に用いるオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマーの量は、共重合体100質量部に対し、好ましくは1~49質量部の範囲である。また、本発明の組成物の未硬化状態での取扱性や成形加工性の観点からは、共重合体100質量部に対し、好ましくは1~30質量部、特に好ましくは1~20質量部の範囲である。
【0032】
オレフィン、芳香族ビニル化合物、芳香族ポリエン、数平均分子量、ビニル基含有量の定義、求め方は前記共重合体の場合と同じである。本共重合オリゴマーの数平均分子量の求め方は以下の通りである。分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を求めた。測定は以下の条件で行える。
【0033】
(数平均分子量1000以上の場合)
カラム:TSK-GEL MultiporeHXL-M φ7.8×300mm(東ソー社製)を2本直列に繋いで用いる。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
検出器:RI検出器(示差屈折率検出器)
【0034】
(数平均分子量1000未満の場合)
カラム:TSKgelG3000HXL φ7.8×300mm1本、TSKgelG2000HXL φ7.8×300mm1本、TSKgelG1000HXL φ7.8×300mm(東ソー社製)4本を直列に繋いで用いる。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:0.5ml/min.
検出器:RI検出器
【0035】
<芳香族ポリエン系樹脂>
芳香族ポリエン系樹脂とは、日鉄ケミカル&マテリアル社製、ジビニルベンゼン系反応性多分岐共重合体(PDV)を包含する。このようなPDVは、例えば文献「多官能芳香族ビニル共重合体の合成とそれを用いた新規IPN型低誘電損失材料の開発」(川辺 正直他、エレクトロニクス実装学会誌 p125、Vol.12 No.2(2009))に記載されている。また芳香族ポリエン系樹脂としては、上述した芳香族ポリエン単量体を主構成単位とする芳香族ポリエン重合体樹脂も挙げられる。
【0036】
<硬化剤>
本発明の硬化性組成物に用いることができる硬化剤としては、従来芳香族ポリエン、芳香族ビニル化合物の重合、又は硬化に使用できる公知の硬化剤を用いることが可能である。このような硬化剤には、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤が例示できるが、好ましくはラジカル重合開始剤を用いることができる。好ましくは、有機過酸化物系(パーオキサイド)、アゾ系重合開始剤等であり、用途、条件に応じて自由に選択することが出来る。有機過酸化物の例が掲載されたカタログは日油社ホームページ、例えば
https://www.nof.co.jp/business/chemical/product01a.html
https://www.nof.co.jp/business/chemical/product01b.html
https://www.nof.co.jp/business/chemical/product01c.html
からダウンロ-ド可能である。また有機過酸化物の例は和光純薬社や東京化成工業社のカタログ等にも記載されている。本発明に用いられる硬化剤はこれらの会社より入手することが出来る。また公知の光、紫外線、放射線を用いる光重合開始剤を硬化剤として用いることも出来る。光重合開始剤を用いる硬化剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、または光アニオン重合開始剤が挙げられる。このような光重合開始剤は例えば東京化成工業株式会社から入手することができる。さらに、放射線あるいは電子線そのものによる硬化も可能である。また、硬化剤を含まず、含まれる原料の熱重合による架橋、硬化を行うことも可能である。
【0037】
硬化剤の使用量に特に制限はないが、一般的には組成物100質量部に対し、0.01~10質量部が好ましい。有機過酸化物系(パーオキサイド)、アゾ系重合開始剤等の硬化剤を用いる場合には、その半減期を考慮し、適切な温度、時間で硬化処理を行う。この場合の条件は、硬化剤に合わせて任意であるが、一般的には50℃から180℃程度の温度範囲が適当である。
【0038】
<単量体>
本発明の組成物が含んでよい単量体の量は任意であるが、好ましくは共重合体100質量部に対し10質量部以下である。なお本組成物は実質的に単量体を含まなくても良い。単量体が10質量部以下だと未硬化の組成物は粘稠な性質を帯びず、熱可塑性樹脂としての成形加工が容易になる。また、揮発しやすい単量体量の含量が一定以下だと、未硬化の段階での臭気が問題にならない。組成物に溶剤を添加して製品形態をワニス状にした場合、使用に際し溶剤(溶媒)の蒸発と共に単量体が失われ、単量体の実質的な含量が低下し易いという課題がある。また、製品形態が未硬化シートの場合、単量体を一定量以下含むと、保管する際の単量体の含量の変化が起こりにくい。本発明の組成物に好適に用いることができる単量体は、分子量1000未満が好ましく、500未満がより好ましい。本発明の組成物に好適に用いることができる単量体は、芳香族ビニル化合物単量体、芳香族ポリエン単量体、及び/又は極性単量体である。当該単量体としてはラジカル重合開始剤により重合させることが可能な単量体が好ましく、前記芳香族ビニル化合物や芳香族ポリエンがより好ましい。また、特開2003-212941号公報記載のBVPE(1,2-ビス(ビニルフェニル)エタン)も好適に用いることができる。硬化体の高温での力学強度(弾性率)を高める観点からは、共重合体100質量部に対し、芳香族ポリエンは1質量部以上30質量部以下が好ましい。また、絶縁材料として必要な他の材料との接着性付与、または架橋密度の向上を目的とし、比較的少量の極性単量体を使用することができる。上述の極性単量体としては、各種のマレイミド類、ビスマレイミド類、無水マレイン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アクリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明に使用可能なマレイミド類、ビスマレイミド類は例えば国際公開WO2016/114287号や特開2008-291227号に記載されており、例えば大和化成工業株式会社やDesigner molecules inc社から購入できる。これらマレイミド基含有化合物は、有機溶剤への溶解性、高周波特性、導体との高接着性、プリプレグの成形性等の観点から、ビスマレイミド類が好ましい。
【0039】
ビスマレイミド類は、下記式(B-1)で表されるビスマレイミド類が好ましい。
【0040】
式(B-1)
【化1】
【0041】
式(B-1)中、Rは炭素原子数が5以上のアルキレン基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。R及びLはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。また式(B-1)で表されるマレイミド類は、下記式(B-2)で表されることが好ましい。
【0042】
式(B-2)
【化2】
【0043】
式(B-2)中、R’はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表し、Aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。nは1~10の整数を表す。
【0044】
式(B-2)で表されるマレイミド類としては、下記式(B-3)で表される化合物を挙げることができる。式中、nは1~10の整数を表す。式(B-3)で表される化合物としては、Designer Molecules Inc社製のBMI-1500(n平均値=1.3)が挙げられる。
【0045】
式(B-3)
【化3】
【0046】
ビスマレイミド類は、ポリアミノビスマレイミド化合物として用いてもよい。ポリアミノビスマレイミド化合物は、例えば、末端に2個のマレイミド基を有する化合物と分子中に2個の一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物とをマイケル付加反応させることにより得られる。少量の添加で高い架橋効率を得ようとする場合、二官能基以上の多官能基を有する極性単量体の使用が好ましく、ビスマレイミド類、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが例示できる。組成物が含んでよい極性単量体の量は、共重合体100質量部に対し、0.1~10質量部、好ましくは0.1~5質量部の範囲である。10質量部以下の使用により、得られる硬化体の誘電率や誘電正接が低くなる。例えば誘電率は3.0より低くなり、誘電正接は0.005より低くなる。
【0047】
<溶剤(溶媒)>
本発明の組成物に対し、必要に応じて適切な溶剤を添加してもよい。溶剤は、組成物の粘度、流動性を調節するために用いる。溶剤としては、揮発性のものが好ましく、例えばシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、アセトン、イソプロパノール等が用いられる。またその使用量は、硬化前の組成物の熱可塑性樹脂としての成形加工性や取扱いの観点から、本発明の共重合体100質量部に対し10質量部以下が好ましく、また硬化中、硬化後の除去の点からは、溶剤は実質的に用いないことがより好ましい。実質的に用いないとは、5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0質量部が最も好ましい。また、ワニスとして使用する場合には、本発明の組成物に対し、適切な溶剤を添加することが好ましい。溶剤は、組成物のワニスとしての粘度、流動性を調節するために用いる。溶剤としては、大気圧下での沸点が高いと、すなわち揮発性が低いと、塗布した膜の厚さが均一になるため、ある程度以上の沸点の溶剤が好ましい。好ましい沸点は大気圧下で概ね100℃以上、好ましくは130℃以上300℃以下である。このようなワニスに適する溶剤としては、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、リモネン、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル等が用いられる。またその使用量は、本発明の組成物100質量部に対し10~2000質量部の範囲が好ましい。
【0048】
<組成物>
本発明の組成物は、上記組成物に対し、さらに充填剤、難燃剤、表面変性剤から選ばれる単数または複数を含むことができる。本発明の組成物は硬化体のマトリクスになり得る、そして硬化した際に他の材料の充填性に優れるために、これら充填剤、難燃剤、表面変性剤から選ばれる単数、または複数を含み、硬化させた後であってもその硬化体は耐衝撃性や靱性を示すことが容易である。
【0049】
<充填剤>
また、必要に応じて公知の無機、あるいは有機充填剤を添加することも出来る。これら充填剤は、熱膨張率コントロール、熱伝導性のコントロール、低価格化を目的として添加され、その使用量は目的により任意である。本発明の組成物は、特に無機充填剤を多く含むことが可能で、その使用可能な量は最大で、共重合体100質量部に対して2000質量部に達する事ができる。特に無機充填剤の添加の際には、公知の表面変性剤、例えばシランカップリング剤等を用いることが好ましい。特に、本発明の目的の一つである、低誘電率、低誘電損失性に優れた組成物を目的とする場合、無機充填剤としてはボロンナイトライド(BN)及び/またはシリカが好ましく、シリカが好ましい。シリカの中では、溶融シリカが好ましい。低誘電特性という観点からは、大量に添加配合すると特に誘電率が高くなってしまうおそれがあるため、好ましくは共重合体100質量部に対して500質量部未満、さらに好ましくは400質量部未満の充填剤を用いる。さらには低誘電特性(低誘電率、低誘電損失正接)を改善、向上させるために中空の充填剤や空隙の多い形状の充填剤を添加しても良い。
【0050】
また、無機充填剤の代わりに、高分子量または超高分子量ポリエチレン等の有機充填剤を用いることも可能である。有機充填剤はそれ自身架橋していることが耐熱性の観点からは好ましく、微粒子あるいは粉末の状態で使用されるのが好ましい。これら有機充填剤は、誘電率、誘電正接の上昇を抑えることができる。充填剤の使用量は、共重合体100質量部に対して、1質量部以上400質量部未満が最も好ましい。
【0051】
一方、本発明の組成物に1GHzにおける誘電率が好ましくは3~10000、より好ましくは5~10000の高誘電率絶縁体充填剤を混合し分散することによって誘電正接(誘電損失)の増大を抑制しつつ、誘電率が好ましくは3.1~20の高誘電率絶縁層を有する絶縁硬化体を作成することができる。絶縁硬化体からなるフィルムの誘電率を高くすることによって回路の小型化、コンデンサの高容量化が可能となり高周波用電気部品の小型化等に寄与できる。高誘電率、低誘電正接絶縁層はキャパシタ、共振回路用インダクタ、フィルター、アンテナ等の用途に適する。本発明に用いる高誘電率絶縁体充填剤としては、無機充填剤または絶縁処理を施した金属粒子が挙げられる。具体的な例は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等公知の高誘電率無機充填剤であり、他の例は例えば特開2004-087639号公報に具体的に記載されている。
【0052】
<難燃剤>
本発明の組成物には公知の難燃剤を使用することができる。好ましい難燃剤は、低誘電率、低誘電正接を保持する観点からは、リン酸エステルまたはこれらの縮合体等の公知の有機リン系や公知の臭素系難燃剤や赤リンである。特にリン酸エステルの中でも、分子内にキシレニル基を複数有する化合物が、難燃性と低誘電正接性の観点から好ましい。
【0053】
さらに難燃剤以外に難燃助剤として三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等のアンチモン系化合物またはメラミン、トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,3,4-(1H,3H,5H)-トリオン、2,4,6-トリアリロキシ1,3,5-トリアジン等の含窒素化合物を添加しても良い。これら難燃剤、難燃助剤の合計は、組成物100質量部に対して通常は1~100質量部が好ましい。また、前記ポリフェニレンエーテル(PPE)系の低誘電率かつ難燃性に優れる樹脂を難燃剤100質量部に対し、30~200質量部配合してもよい。
【0054】
<表面変性剤>
本発明の組成物には、充填剤や銅板、配線との密着性向上を目的に、各種の表面変性剤を含んで良い。表面変性剤以外の本発明の組成物100質量部に対して表面変性剤の使用量は0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。表面変性剤としては、各種のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。各種のシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤は、単数または複数を用いても良い。
【0055】
本発明においては、上記範囲で組成物の共重合体、単量体、添加樹脂、及び必要に応じて溶剤の配合比を変更することで、あるいはさらに、難燃剤や充填剤、表面変性剤の配合比を変えることで、本硬化性樹脂、あるいは組成物の流動化温度を、その目的、成形方法にあわせて調整することが出来る。具体的には、本発明の組成物は、「熱可塑性の組成物」、「半硬化状態(Bステージシート等)」、「ワニス」という製品形態を取ることができる。
【0056】
本発明の組成物は、前記のように共重合体及び硬化剤、他に、必要に応じて単量体、溶剤、添加樹脂、充填剤、難燃剤、表面変性剤から選ばれる単数、または複数を混合・溶解または溶融して得られるが、混合、溶解、溶融の方法は任意の公知の方法が採用できる。
【0057】
<熱可塑性の組成物、成形体>
本発明の組成物は、一定以上の範囲の分子量を有する共重合体を用い、しかも所定の前記添加樹脂を含むため、熱可塑性樹脂の性状を示す。そのため、架橋を起こさない条件下、熱可塑性樹脂としての公知の成形加工方法により、実質的に未硬化の状態でシート、チューブ、短冊、ペレット等の形状に成形でき、その後架橋(硬化)させることができる。本明細書においてシートとは、フィルムの概念をも包含するものとする。また、本明細書においてフィルムと記載されていても、シートの概念をも包含するものとする。
【0058】
また本組成物の好ましい実施形態は以下の通りである。室温で液状の樹脂を除く、添加樹脂として前記炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合オリゴマー、又は芳香族ポリエン系樹脂から選ばれる単数または複数の樹脂を一定割合以上含む場合は、同様に未硬化の状態で熱可塑性樹脂としての成形加工が容易となる。具体的には好ましくは共重合体100質量部に対し、前記炭化水素系エラストマー(液状樹脂を除く)、及び/またはポリフェニレンエーテルを30~200質量部の範囲で添加できる。また添加樹脂が室温で液状の場合は、共重合体100質量部に対し、好ましくは1~30質量部、特に好ましくは1~20質量部の範囲で添加できる。本熱可塑性の組成物に用いることができる単量体の使用量は、好ましくは共重合体100質量部に対し10質量部以下である。用いる共重合体の数平均分子量は5000以上10万以下、好ましくは2万以上10万以下、より好ましくは3万以上10万以下である。以上の熱可塑性の組成物は、硬化剤の作用温度以下でその熱可塑性を利用し予めシート等の各種形状に成形し、必要に応じ半導体素子や配線、または基板と積層とを組み合わせた後に加熱硬化、接着させることができる。
【0059】
本発明の組成物は、硬化剤の作用温度あるいは分解温度以下の温度で加熱溶融された組成物を公知の方法で成形したシートで提供されても良い。シートへの成形は、Tダイによる押出成形、二本ロール、基材フィルム状への押出ラミネートでも良い。この場合、硬化剤の作用温度、あるいは分解温度以下で溶融し、室温付近では固体となるように、組成物の組成、共重合体/単量体の質量比、あるいは溶剤、添加樹脂、難燃剤の選択、調整を行う。この場合のシートは実質的に未硬化状態である。その後、各種加工、組み立て工程を経て、最終的に硬化剤の作用温度、あるいは分解温度以上の温度、時間で処理し完全硬化させる。このような手法は、太陽電池(太陽光発電装置)のエチレン-酢酸ビニル樹脂系の架橋封止剤シートに用いられている、一般的な技術である。
【0060】
<半硬化状態(Bステージシート等)の成形体>
また、本発明の組成物は、部分的に架橋した状態、例えばその中に含まれる硬化剤の一部を反応させ半硬化させた状態(いわゆるBステージ状態)の成形体、例えばシート、チューブ等にすることも可能である。例えば硬化温度が異なる複数の硬化剤及び/または硬化条件を採用することで、半硬化させ、溶融粘度や流動性を制御しBステージ状態することができる。すなわち、第一段階の硬化(部分硬化)により、本硬化性樹脂や組成物を取扱容易なBステージシートに成形し、これを電子デバイス、基板に積層し圧着させた後に第二段階の硬化(完全硬化)を行い、最終形状とすることも可能である。この場合、組成物の組成、すなわち共重合体/単量体の質量比を選択し、必要であれば溶剤、添加樹脂、難燃剤を添加し、さらに過酸化物等の硬化剤を含む組成物を部分硬化させ、シート形状(Bステージ状態)に調整し、デバイスを成形、組み立てた後に、加圧下で加熱し完全硬化させることができる。組成物を部分硬化させる方法としては、公知の方向が採用できるが、例えば分解温度の異なる過酸化物を併用し、一方のみが実質的に作用する温度で所定時間処理し半硬化体シートを得て、最終的にすべての硬化剤が作用する温度で十分な時間処理し完全硬化させる方法がある。
【0061】
さらに、成形体がシートであってもよい。シートは、シート形状を維持できる程度に未硬化(半硬化)であるか、又は完全硬化後のものであってもよい。組成物の硬化の程度は、公知の動的粘弾性測定法(DMA、Dynamic Mechanical Analysis)により定量的に測定可能である。
【0062】
<ワニス状である組成物、及びその成形体>
本発明の組成物は、その組成や配合比により粘稠液体状のワニス状とすることもできる。例えば十分な量の溶剤を用いることで、及び/または液状の単量体を適量用いることでワニス状とすることができる。特にワニスとして使用する場合には、本発明の組成物に対し、適切な溶剤を添加することが好ましい。溶剤は、組成物のワニスとしての粘度、流動性を調節するために用いる。溶剤としては、大気圧下での沸点が高いと、すなわち揮発性が小さいと、塗布した膜の厚さが均一になるメリットがあるため、ある程度以上の沸点の溶剤が好ましい。好ましい沸点は大気圧下で概ね100℃以上、好ましくは130℃以上300℃以下である。このようなワニスに適する溶剤としては、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、リモネン、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル等が用いられる。またその使用量は、本発明の組成物100質量部に対し10~2000質量部の範囲が好ましい。本発明のワニス状である組成物は、重合により得た本発明の共重合体を含む重合液を利用して作ることもできる。例えば重合液を濃縮あるいは残留モノマーを除く処理を行ってもよく、必要であれば溶剤や他の樹脂成分、各種添加剤等を加え、成分濃度や溶液粘度を調整する等して、製造することもできる。
【0063】
当該ワニスは例えば基材上に塗布し、あるいは含浸させ、溶剤等を乾燥等により除去し、未硬化あるいは半硬化の成形体にできる。一般的に本成形体は、シート、フィルム、テープ状の形態を有する。
【0064】
<硬化>
組成物の硬化は含まれる硬化剤の硬化条件(温度、時間、圧力)を参考に、公知の方法で硬化を行うことができる。用いられる硬化剤が過酸化物の場合は、過酸化物ごとに開示されている半減期温度等を参考に硬化条件を決定することができる。
【0065】
<組成物から得られた硬化体>
本発明の組成物から得られた硬化体の誘電率は10GHzにおいて3.0以下2.0以上、好ましくは2.8以下2.0以上、特に好ましくは、2.5以下2.0以上である。誘電正接は0.005以下0.0003以上、好ましくは0.003以下0.0005以上である。これら誘電率や誘電正接は当業者に公知の任意の方法で求めることができ、例えば共振器法(空洞共振器摂動法や平衡型円板共振器法)により求めることができる。また、得られた硬化体の体積抵抗率は、好ましくは1×1015Ω・cm以上である。これらの値は、例えば、3GHz以上の高周波用電気絶縁材料として好ましい値である。本発明の組成物に用いられる共重合体は比較的軟質で引張伸びに富むために、これを用いた組成物から得られる硬化体は、十分な力学物性を示しつつ、比較的軟質で耐衝撃性が高く、基材の熱膨張に追従できる特徴を有することが出来る。すなわち、本発明の硬化体は室温(23℃)で測定した引張弾性率で3GPa未満、3MPa以上、好ましくは5MPa以上である。また特に充填剤を比較的多く配合した場合、本引張弾性率は3GPa以上20GPa以下の値を取ることもある。また引張破断点強度が好ましくは50MPa未満、3MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上、かつ引張破断点伸びが好ましくは30%以上300%未満、さらに好ましくは50%以上250%未満である。また特に充填剤を比較的多く配合した場合、本引張破断点伸びは30%未満の値を取ることもある。本発明の組成物の硬化体は、実用上十分な耐熱性を有することが出来る。具体的には、実用的な側面で規定すると本発明の組成物の硬化体は、300℃における貯蔵弾性率が5×105Pa以上、好ましくは1×106Pa以上の値を示すことができる。当業者らは、本明細書及び公知資料に記載の情報を参考に、上記物性パラメーターを有する、組成物の配合を決定し、硬化体を容易に作成することができる。本発明の組成物から得られた硬化体は、組成物における単量体や単量体の成分としての芳香族ポリエンを一定割合以下に抑えた条件下でも、実用上十分な耐熱性や高温下での力学物性を示すことができる。単量体や単量体の成分としての芳香族ポリエンを一定割合以下に抑えることは、前記のように、未硬化状態であっても熱可塑性樹脂としての成形加工性を保つためにも重要である。
【0066】
<組成物の用途一般>
本発明の組成物は、配線用、好ましくは高周波信号の配線用の各種絶縁材料、例えばカバーレイ、ソルダーレジスト、ビルドアップ材、層間絶縁剤、ボンディングシート、層間接着剤、フリップチップボンダー用のバンプシートとして用いることができる。さらに単層または多層であるプリント基板、フレキシブルプリント基板、CCL(カッパークラッドラミネート)、FCCL(フレキシブルカッパークラッドラミネート)基材といった、基材・基板の電気絶縁層や接着層として用いることができる。
【0067】
<組成物の未硬化シートまたは部分硬化シートとしての用途>
本発明の組成物の未硬化シートまたは部分硬化シートは、高周波用電気絶縁材料として好適に用いることができる。例えばビルドアップフィルム、ボンディングシート、カバーレイシート、フリップチップボンダー用のバンプシートあるいは基板用の絶縁層や接着層として好適に使用することができる。従来使用されてきたエポキシ樹脂やシリコーン樹脂のシートの代わりとして用いられ、硬化処理を行い、低誘電率、低誘電損失の硬化絶縁層や硬化マトリクス相を形成することができる。シートの厚さは一般的に1~300ミクロンである。本シートは、ガラスクロスやセラミックス繊維等の織布、不織布を含んでいても、含浸させてもよく、これらと多層になっていても良い。また、携帯電話等のアンテナケーブルとして、従来の同軸ケーブルの代わりに本シートで一部または全部が絶縁された、柔軟な折り曲げ可能な配線を使用することができる。例えば、LCP(液晶ポリマー)やPPEシート、フッ素系樹脂、又はポリイミド樹脂を基材として本発明のシートまたはBステージシート(カバーレイシート)で配線を被覆し硬化させ基材と接着し、絶縁材料として使用することができる。
【0068】
本発明の組成物を用いて得られた硬化体が絶縁層である多層配線基板は誘電損失が少ない高周波特性の優れた配線基板となり得る。この場合、低誘電損失性以外にハンダに耐えうる耐熱性と、ヒートサイクルあるいは熱膨張差による応力に耐えうる、ある程度の軟質性と伸び、耐衝撃性がメリットとなる。例えば、ガラスや石英からなるクロス、不織布、フィルム材、セラミック基板、ガラス基板、エポキシ等の汎用樹脂板、汎用積層板等のコア材と本硬化体からなる絶縁層付導体箔をラミネート、プレスすることで配線基板を作製することが可能である。またコア材に本組成物を含むスラリー、または溶液を塗布し乾燥、硬化させ絶縁層を形成しても良い。絶縁層の厚さは一般的に1~300ミクロンである。この様な多層配線基板は、多層化、集積化して用いることも可能である。
【0069】
本発明の特にワニス状の組成物を硬化して得られる硬化体は、前記のように電気絶縁材料として好適に使用でき、特にポッティング材、表面コート剤、カバーレイ、ソルダーレジスト、ビルドアップ材、アンダーフィル材、充填絶縁剤、層間絶縁剤、層間接着剤として、あるいは硬化体としてプリント基板、フレキシブルプリント基板、FCCL(フレキシブルカッパークラッドラミネート)基材として、あるいはビルドアップフィルム、ボンディングシート、カバーレイシート、フリップチップボンダー用のバンプシートの硬化体として電気絶縁材料、特に高周波用電気絶縁材料として使用することができる。
【0070】
本発明は別な観点では、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体を含み、300℃における貯蔵弾性率が5×105Pa以上、かつ23℃、10GHzの誘電率が2.5以下2.0以上、誘電正接が0.003以下0.0005以上である、電気絶縁材料である。
【0071】
本発明の未硬化または半硬化の熱可塑性の組成物は、特に接着剤塗布や接着処理を行わなくとも、加熱加圧処理で配線用の金属箔、特に銅箔と接着させることが可能である。ここで銅箔とは、銅の配線を含む概念であり、又その形状は任意である。特に前記オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体において、好ましくは芳香族ビニル化合物含量が10質量%以上の共重合体を用いた場合、及び/または、オレフィンがエチレン単独であるか、またはオレフィンに含まれるエチレン単量体成分に対するエチレン以外のオレフィン単量体成分の質量比が1/7以下であることで、日本工業規格(JIS)C6481:1996に準じた測定で、1N/mm以上の剥離強度を与えることができる。さらには、1.3N/mm以上の剥離強度を与えることがより好ましい。さらに好ましくは、上記共重合体において、オレフィンがエチレン単独であるか、またはオレフィンに含まれるエチレン単量体成分に対するエチレン以外のオレフィン単量体成分が1/10以下、最も好ましくは共重合体に含まれるエチレン以外のαオレフィン単量体単位の含量が4質量%以下、あるいはオレフィンがエチレン単独であれば、当該剥離強度をさらに向上可能である。一般には、接着剤や接着処理を行うことで、銅張積層シート等の積層体の誘電特性は悪化することが知られており、そのような処理を行わなくとも、日本工業規格(JIS)C6481:1996に準じた測定で、1N/mm以上の剥離強度を与えることが好ましい。このように、本発明の未硬化または半硬化の熱可塑性の組成物は、特に接着剤塗布や接着処理を行わなくとも、加熱加圧処理等の硬化処理で配線用の銅箔と接着させることが可能である。しかし本発明においては、銅箔やその他部材との接着性付与に関して、さらに前記「表面変性剤」を添加することを含む他の接着性付与対策(接着剤塗布や接着処理等)を実施することを何ら妨げるものではない。
【0072】
本発明の別の実施形態ではまた、下記(1)~(4)の条件を満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体、及び本共重合体100質量部に対し単量体0質量部超10質量部以下を含む硬化性組成物であって、前記単量体は、芳香族ビニル化合物単量体、芳香族ポリエン単量体、及び極性単量体からなる群から選択される一種以上である硬化性組成物も提供できる。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下である。
(2)共重合体中の芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満である。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
【0073】
さらに好ましくは、前記単量体が極性単量体であってよい。
【0074】
また、前記硬化性組成物を硬化して得られる硬化体であり、300℃における貯蔵弾性率が5×105Pa以上、好ましくは1×106Pa以上、かつ23℃、10GHzの誘電率が2.5以下2.0以上、誘電正接が0.003以下0.0005以上である電気絶縁材料も提供できる。
【0075】
本硬化性組成物は、前記オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体、及び樹脂を含む硬化性組成物(以下単に樹脂との組成物と記載)と同様に、前記溶剤、硬化剤、充填剤、難燃剤、及び表面変性剤からなる群から選ばれる単数または複数を含むことができる。本硬化性組成物は熱可塑性を生かし前記樹脂との組成物のようなシートを含む各種形状に成形することができる。本硬化性組成物は、前記樹脂との組成物と同様に溶剤と共にワニスとして利用することができる。本発明は、本硬化性組成物を硬化して得られる硬化体であり、前記樹脂との組成物の硬化体と同様の各種物性を示すことができる。本硬化性組成物は、前記樹脂との組成物と同様に硬化性組成物を含む層と銅箔とを含む積層体とすることができ、本積層体を硬化してなる硬化体とすることもできる。
【0076】
本発明の上述した実施形態に係る組成物、又はその他の実施形態に係る組成物はまた、LCP(Liquid Crystal Polymer、液晶ポリマー)層と共に比較的温和な硬化条件で硬化し高い接着強度を与えることが出来る。ここでLCP層とは具体的にはLCPシートやフィルムであってよい。そのため、例えばLCPシート、金属箔好ましくは銅箔、本発明の組成物を含む各種積層体とすることが出来る。本積層体の層の数や積層の順序は任意である。本発明のこのような例として、本発明の組成物は金属箔(銅箔)とLCPシートの接着層として有用である。本発明の組成物は金属箔、LCPシート双方に高い接着性を示すことが出来る。従来LCPシートと銅箔の接着は、LCPの融点(概ね280℃~330℃、あるいはそれに近い温度)まで加熱し圧着させる必要があった。しかし、本発明の組成物を接着層として用いることにより、より低い温度で、実質的には本発明の組成物の硬化温度付近での圧着でLCPと金属箔を接着させることが可能である。その際に本発明の組成物の硬化体の低誘電率、低誘電正接値は、本積層体の特に高周波信号伝送用の配線として有用性を付与する。本積層体の別な例としては、LCP層上に配置された金属配線、好ましくは銅配線をLCP層側とは対抗する側から本発明の組成物の硬化体層でカバーする構造が挙げられる。LCP基板配線上のいわゆるカバーレイとしての用途である。
【0077】
ここでLCP(液晶ポリマー)としては、溶融時に液晶状態あるいは光学的に複屈折する性質を有する熱可塑性ポリマーを指す。LCPとしては、溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーや溶融時に液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーがある。液晶ポリマーは、熱変形温度によって、I型、II型、III型と分類され、いずれの型であっても構わない。液晶ポリマーとしては、例えば、熱可塑性の芳香族液晶ポリエステル、又はこれにアミド結合が導入された熱可塑性の芳香族液晶ポリエステルアミド等を挙げることができる。LCPは、芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドに、更にイミド結合、カーボネート結合、カルボジイミド結合やイソシアヌレート結合等のイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。LCPとしては、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸からなる溶融液晶形成性ポリエステル、例えば、上野製薬社製LCP樹脂(品番A-5000、融点280℃)を用いても良い。
【0078】
LCPの融点は、DSC法で、220~400℃であることが好ましく、260~380℃であることがより好ましい。融点が前記範囲内にあると、押出成形性に優れ、かつ耐熱性に優れたフィルム、シートを得ることができる。このようなLCPは、例えば上野製薬株式会社、住友化学株式会社、ポリプラスチックス社から入手することが出来る。ここで、LCPシートとは公知のLCPシートであり、その厚さも任意である。LCPシートは、Tダイ押出法やインフレーション法、エンドレスベルト(ダブルベルトプレス)法等の公知の方法で得ることが出来る。
【実施例0079】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0080】
合成例、比較合成例で得られた共重合体の分析は以下の手段によって実施した。
【0081】
共重合体中のエチレン、ヘキセン、スチレン、ジビニルベンゼン由来のビニル基単位の含有量の決定は、1H-NMRで、それぞれに帰属されるピーク面積強度から行った。試料は重1,1,2,2-テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80~130℃で行った。
【0082】
分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を求めた。測定は以下の条件で行った。
(数平均分子量1000以上の場合)
カラム:TSK-GEL MultiporeHXL-M φ7.8×300mm(東ソー社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
検出器:RI検出器(示差屈折率検出器)
【0083】
共重合体がTHF溶媒に溶解しにくい場合、例えばエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体において、スチレン含量が40質量%より低い場合は、以下の高温GPC法により、標準ポリスチレン換算の分子量を求めた。測定は以下の条件で行った。
装置:東ソー社製HLC-8121GPC/HT
カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT、φ7.8×300mm3本、
カラム温度:140℃、
検出器:RI、
溶媒:オルトジクロロベンゼン、
送液流量:1.0ml/min、
サンプル濃度:0.1wt/vol%、サンプル注入量:100μL
【0084】
<引張試験>
JIS K-6251:2017に準拠し、厚さ約1mmフィルムシートを2号ダンベル1/2号型テストピース形状にカットし、オリエンテック社製テンシロンUCT-1T型を用い、23℃、引張速度500mm/minにて測定し、引張弾性率、引張破断点強度、引張破断点伸びを求めた。
【0085】
<DSC測定>
DSC測定は、セイコー電子社製DSC6200を用い、窒素気流下で行った。すなわち樹脂10mgを用い、α-アルミナ10mgをレファレンスとして、アルミニウムパンを用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温から240℃まで昇温した後に20℃/分で-120℃まで冷却した。その後240℃まで昇温速度10℃/分で昇温しながらDSC測定を行い、ガラス転移温度を求めた。ここでいうガラス転移温度は、JIS K7121:2012の補外ガラス転移開始温度であり、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線との交点の温度である。
【0086】
<貯蔵弾性率と架橋密度の測定>
動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社RSA-III)を使用し、周波数1Hz、温度領域-60℃~+300℃の範囲で測定した。厚み約0.1mm~0.3mmのフィルムから測定用サンプル(3mm×40mm)を切り出し測定し、貯蔵弾性率を求めた。測定に関わる主要測定パラメ-タ-は以下の通りである。
測定周波数1Hz
昇温速度3℃/分
サンプル測定長13mm
Test Type = Dynamic Temperature Ramp (DTempRamp)
Initial Static Force 5.0g
Auto Tension Sensitivity 1.0g
Max Auto Tension Rate 0.033mm/s
Max Applied Strain 1.5%
Min Allowed Force 1.0g
歪み 0.1%
【0087】
<吸水率>
ASTM D570-98に準拠し測定した。
【0088】
<誘電率及び誘電損失(誘電正接)>
誘電率、誘電正接は空洞共振器摂動法(アジレントテクノロジー製8722ES型ネットワークアナライザー、関東電子応用開発製空洞共振器)を使用し、シートから切り出した1mm×1.5mm×80mmのサンプルを用い、23℃、10GHzでの値を測定した。
【0089】
<体積抵抗率>
厚さ約0.5mmのフィルムを用い、JIS K6911:2006に従い室温で測定した。
【0090】
<オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体>
特開2009-161743号公報、特開2010-280771号公報、国際公開WO00/37517号の製造方法を参考に、モノマー量、比、重合圧力、重合温度を適宜変更し、P-1からP-4の共重合体を得た。オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計を100質量%にした。表1に共重合体の組成、数平均分子量、ガラス転移温度を示す。
【0091】
原料は以下の通りである。
ジビニルベンゼンは、新日鉄住金化学社製ジビニルベンゼン(メタ、パラ混合品、ジビニルベンゼン純度81%)を用いた。二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(OPE-2St、数平均分子量1200)は、三菱ガス化学社製のトルエン溶液製品を、さらにトルエンで希釈し、さらに大量のメタノールを加えメタノール析出を行い、風乾後、減圧乾燥することで、粉末状のポリフェニレンエーテルオリゴマーを得て用いた。SEBSとして、旭化成ケミカルズ社製タフテックH-1041(数平均分子量58000)を用いた。1,2-ポリブタジエンは、日本曹達株式会社製液状ポリブタジエン:製品名B-3000(数平均分子量3200)を用いた。硬化剤は、日油株式会社製ジクミルパーオキサイド(商品名「パークミルD」)、または2,5-ジメチルー2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3(商品名「パーヘキシン25B」)を用いた。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
実施例1
ブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社製PL2000型)を使用し、あらかじめ混練しておいた、樹脂P-1(エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)と表2に示す単量体及び樹脂の組成物(表中配合は質量部を示す)を投入し、120℃、回転速度30回/分で10分間混練し、さらに硬化剤(ジクミルパーオキサイド、日油株式会社製)を樹脂と単量体の組成物100質量部に対して1質量部加えて、本条件下5分間混練し組成物を作製した。得られた組成物を型枠と2枚のテフロン(登録商標)シートに挟み密着、密閉し、加熱プレス法(120℃、時間5分、圧力5MPa)によりプレスし、各種厚さ(厚さ1.0mm、0.5mm等)のシート(未硬化シート)を得た。得られたシートをテフロン(登録商標)シートごと、ガラス板で挟んで荷重をかけ密着させ、120℃30分、150℃30分、その後180℃120分加熱処理し硬化させた。硬化後、硝子板、テフロン(登録商標)シート及び型枠を外し、本発明の組成物のフィルム状硬化体を得た。
【0095】
実施例2~6、比較例1
実施例1と同様の手順で、表2の配合(表中配合は質量部を示す)で組成物を調製した。実施例1と同様にプレス成形し硬化処理を行った。ただし、実施例5は硬化剤以外の原料を100℃、回転速度50回/分、10分間混練した後に、硬化剤(ジクミルパーオキサイド)を加え、さらにこの条件下5分間混練を行った。ただし実施例4は、硬化剤としてパーヘキシン25Bを使用した。なお実施例3、実施例4、後述する実施例7においては1,2-ポリブタジエンは硬化剤を添加する前に加えた。実施例1~6、比較例1の硬化前の組成物の性状(室温)は、何れも軟質樹脂状、半硬質樹脂状のシートであり、シートとしての取り扱いは容易で、プレス後得はテフロン(登録商標)シートから剥がしてもシート自体の自己接着性が低く、単独のシートとして取り扱うことができた。本発明の好ましい条件を満たす実施例は、未硬化の状態で熱可塑性樹脂としての成形加工が容易であった。
【0096】
実施例7~8、比較例2~4
加熱冷却ジャケットと撹拌翼を備えた容器に、表2の配合で硬化剤以外の原料を仕込み、60℃に加温、攪拌しワニス状(粘稠液体状)の組成物を得た。その後硬化剤を加え攪拌し溶解させた。硬化剤はジクミルパーオキサイドを用いた。得られたワニス状組成物をテフロン(登録商標)シート上のテフロン(登録商標)製型枠に注ぎいれ、送風乾燥機約100℃で、その後さらに減圧下で、十分に溶剤を飛ばし、次いでテフロン(登録商標)製型枠を慎重に取り除いたところ、軟質樹脂状のシートが得られた。得られたシートをさらに型枠と2枚のテフロン(登録商標)シートに挟み密着、密閉し、加熱プレス法(120℃、時間5分、圧力1.5MPa)によりプレスし、各種厚さ(厚さ1.0mm、0.5mm等)のシート(未硬化シート)を得た。本シートは取り扱い容易で、テフロン(登録商標)シートから剥がしてもシート自体の自己接着性が低く、単独のシートとして取り扱うことができた。すなわち未硬化の状態で熱可塑性樹脂としての成形加工が容易であった。得られたシートをテフロン(登録商標)シートごと、ガラス板で挟んで荷重をかけ密着させ、120℃30分、150℃30分、その後200℃120分加熱処理し硬化させた。硬化後、硝子板、テフロン(登録商標)シート及び型枠を外し、本発明の組成物の硬化体シートを得た。
【0097】
実施例1~8で得られたシートの硬化体は、粘弾性スペクトル測定で、300℃でも溶融破断することなく弾性率測定可能で有り、300℃(573K)における貯蔵弾性率は5×105Pa以上であった。また、300℃(573K)における貯蔵弾性率から求めた架橋密度は、いずれも3×10-5mol/cm3より高く、十分に架橋が進行していることを示す。また、いずれも3GPa未満、3MPa以上の引張弾性率を示した。さらに引張破断点強度は何れも5MPa以上50MPa未満であり、引張破断点伸びはいずれも50%以上250%未満であった。誘電率、誘電正接も、本発明の範囲を満たしている。実施例1~8で得られた硬化体シートの吸水率はいずれも0.1質量%未満であり、体積抵抗率は1×1015Ω・cm以上であった。実施例1~8で得られた硬化体シートは10GHzで測定した誘電率は2.5以下2.0以上、かつ誘電正接は0.003以下0.0005以上であり、良好な低誘電特性を示した。比較例1で得られたシートの硬化体は、300℃の貯蔵弾性率や架橋密度も本発明の条件を満たしていない。比較例2で得られたシートは、多数のひび割れが発生し、絶縁材としての使用には不適であり各種物性測定は行わなかった。比較例3、4で得られたシートは、本発明の好ましい誘電率、誘電正接の範囲を満たしていなかったので、他の評価は実施しなかった。
【0098】
<銅箔の粗化面との剥離強度>
銅箔は、三井金属鉱業株式会社製(VSP series、TQ-M7-VSP、厚み12μm)を使用した。実施例1の組成物を120℃、5MPa、2分でプレス成形して得た厚さ0.3mmの未硬化シートに銅箔の粗化面を接触させるように載せ、厚さ0.3mmの型枠を用い加熱プレス機により、圧力5MPa、120℃30分、その後150℃30分、その後200℃120分で加熱加圧することで、シートと銅箔を接着硬化させた。銅箔との剥離強度測定は日本工業規格(JIS)C6481:1996に準じて90°剥離にて評価した。その結果、剥離強度は2.3N/mmであった。実施例4の組成物も同様に銅箔との剥離強度を測定したところ、1.5N/mmであった。
【0099】
<エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合オリゴマーの合成>
特開平9-40709号公報記載の製造方法を参考に容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを使用し、触媒としてジメチルメチレンビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、助触媒としてメチルアルモキサン(東ソーファイン・ケム社製、MMAO-3Aトルエン溶液)、溶媒としてシクロヘキサン、原料としてスチレン、ジビニルベンゼン、エチレンを用い、モノマー量、比、重合圧力、重合温度を適宜変更して重合を行った。得られた重合液に1-イソプロパノールを投入し、その後、重合禁止剤の存在下で大量のメタノールを投入して共重合オリゴマーを回収した。この共重合オリゴマーO-1を、50℃で2昼夜真空乾燥した。
【0100】
<オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体>
特開2009-161743号公報、特開2010-280771号公報の製造方法を参考に、モノマー量、比、重合圧力、重合温度を適宜変更し、P-5の共重合体を得た。オレフィン単量体単位と前記芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計を100質量%にした。得られたO-1、P-5の組成、数平均分子量、ガラス転移温度を表3に示す。
【0101】
ビスマレイミドは、Designer Molecules Inc社製のBMI-1500を使用した。
【0102】
シリカは、デンカ社製溶融シリカ、SFP-130MC(d50=0.6μm、比表面積6.2m2/g、真比重2.26g/cm3)を前処理せずに用いた。
【0103】
【表3】
【0104】
実施例9、10
加熱冷却ジャケットと撹拌翼を備えた容器に、表4の配合で硬化剤以外の原料を仕込み、60℃に加温、攪拌しワニス状(粘稠液体状)の組成物を得た。その後硬化剤を加え攪拌し溶解させた。硬化剤はパーヘキシン25Bを用いた。得られたワニス状組成物をテフロン(登録商標)シート上のテフロン(登録商標)製型枠に注ぎいれ、送風乾燥機約60℃で、その後さらに減圧下で、十分に溶剤を飛ばした。得られたシートをテフロン(登録商標)シートごと、鏡面金属板で挟んで荷重をかけ密着させ、120℃30分、150℃30分、その後200℃120分加熱処理し硬化させた。硬化後、金属板、テフロン(登録商標)シート及び型枠を外し、本発明の組成物の硬化体シートを得た。
【0105】
実施例11
実施例9、10と同様にして得られたワニス状組成物にシリカフィラー(樹脂成分50体積%に対しシリカフィラー50体積%)を加えさらに攪拌し、得られたスラリー状のワニスを、さらにあわとり練太郎(シンキー社製)で攪拌し、テフロン(登録商標)シート上のテフロン(登録商標)製型枠に注ぎいれ、送風乾燥機約60℃で、その後さらに減圧下で、十分に溶剤を飛ばした。得られたシートをテフロン(登録商標)シートごと、鏡面金属板で挟んで荷重をかけ密着させ、120℃30分、150℃30分、その後200℃120分加熱処理し硬化させた。硬化後、金属板、テフロン(登録商標)シート及び型枠を外し、本発明の組成物の硬化体シートを得た。
【0106】
【表4】
【0107】
実施例9、10で得られた硬化体、及び実施例11で得られたフィラー入り硬化体はいずれも本発明の硬化体の条件を満たしている。
【0108】
実施例12、13
<銅箔とLCP(液晶ポリマー)シートの接着剤としての評価>
実施例9及び10で得られたワニスを用い、以下のようにして銅箔とLCPシートとの接着性を評価した。銅箔としては前記銅箔を用い、LCPシートとしては、上野製薬社製LCP樹脂(品番A-5000、融点280℃)を用い、国際公開WO2020/153391号に記載の方法で得られた、厚さ100μmのシートを用いた。LCPシート上にワニスを塗工し、先ず60℃で風乾により溶剤を除去し、その後60℃常圧~真空下で発泡しないように慎重に溶剤を十分に除去した。溶媒除去後のワニス層厚さは約30μmであった。溶媒を除去したシートのワニス側に銅箔の粗化面を密着させ、真空下プレス機で5MPa加圧しながら、120℃30分、150℃30分、その後180℃120分加熱処理し硬化した。シートを幅10mm、長さ100mmに切り出し、LCPシートと銅箔との剥離強度測定は日本工業規格(JIS)C6481:1996に準じて90°剥離にて評価した。実施例9で得られたワニスを使用した場合、剥離強度は1.4N/mmであった。実施例10で得られたワニスを用いた場合は、1.3N/mmであった。剥離面を観察したところ、ワニス由来の硬化体とLCPシートの界面で剥離していたので、LCPシートとワニス由来の硬化体との剥離強度がそれぞれ1.4N/mmと1.3N/mmであると結論した。また、同じ試験片において、銅箔とワニス由来の硬化体の剥離強度はそれぞれ前記値より高い値であると結論した。
【0109】
比較例5
銅箔とLCPシートのみを用いて実施例と同じ条件でプレス機で加熱圧着を行ったが実質的に両者は接着しなかった。
【0110】
<第二の態様に係る実施例>
以下の原料に基づき、第二の態様に係る共重合体P-1a~P-4aを表5の組成で、上述の製法を以って調製した。
【0111】
ジビニルベンゼンは、新日鉄住金化学社製ジビニルベンゼン(メタ、パラ混合品、ジビニルベンゼン純度81%)を用いた。BVPE(1,2-ビス(ビニルフェニル)エタン)は、特開2003-212941号公報記載の合成法にて合成し用いた。m-m体、m-p体、p-p体の混合物である。1,2-PBdは日本曹達社製B-3000を用いた。二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマー(OPE-2St、数平均分子量1200)は、三菱ガス化学社製のトルエン溶液製品を、さらにトルエンで希釈し、さらに大量のメタノールを加え、メタノール析出を行い、風乾後、減圧乾燥することで、粉末状のポリフェニレンエーテルオリゴマーを得て用いた。SEBSは、旭化成ケミカルズ社製H-1041を用いた。硬化剤は、日油社製ジクミルパーオキサイド(パークミルD)を用いた。
【0112】
【表5】
【0113】
各実施例・比較例の配合等を表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
実施例1a
ブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社製PL2000型)を使用し、予め混練しておいた共重合体P-1a(エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)と単量体を投入し、100℃、回転速度50回/分で5分間混練し、さらに硬化剤(ジクミルパーオキサイド、日油社製)を共重合体と単量体の合計100質量部に対して1質量部加えて、100℃、回転速度50回/分、5分間の条件下で、混練し組成物を作製した。得られた組成物を型枠と2枚のテフロン(登録商標)シートに挟み密着、密閉し、加熱プレス法(120℃、時間5分、圧力5MPa)によりプレスし、各種厚さ(厚さ1.0mm、0.5mm等)のシート(未硬化シート)を得た。得られたシートをテフロン(登録商標)シートごと、ガラス板で挟んで荷重をかけ密着させ、120℃30分、150℃30分、その後180℃120分加熱処理し硬化させた。硬化後、硝子板、テフロン(登録商標)シート及び型枠を外し、本発明の組成物のフィルム状硬化体を得た。
【0116】
実施例2a~4a、比較例1a~2a
実施例1aと同様の手順で、表6の配合(表中配合は質量部を示す)で組成物を調製した。実施例1aと同様にプレス成形し硬化処理を行った。実施例1a~4aの硬化前の組成物の性状(室温)は、何れも軟質樹脂状、半硬質樹脂状のシートであり、シートとしての取り扱いは容易で、プレス後はテフロン(登録商標)シートから剥がしてもシート自体の自己接着性が低く、単独のシートとして取り扱うことができた。本発明の好ましい条件を満たす実施例は、未硬化の状態で熱可塑性樹脂としての成形加工が容易であった。
【0117】
一方比較例1a、2aは、攪拌機と温水ジャケットを備えた硝子製容器を用い、あらかじめ約60℃で原料を攪拌により混練し、硬化剤を加え、さらにこの条件下10分間混練を行った。実施例1aと同様にプレス成形し硬化処理を行った。比較例1a、2a共に得られた硬化前の組成物の性状(室温)は半固体状の粘稠樹脂状であった。それらは剥離シート(テフロン(登録商標)シート)から剥がした場合、ブロッキング性を示し、自己接着性が高く単独のシートとして取り扱うことが困難で有り、剥離シートで挟んだ状態でのみ取り扱いが可能であった。
【0118】
実施例1a~4aで得られた組成物シートの硬化体は、粘弾性スペクトル測定で、300℃でも溶融破断することなく弾性率測定可能で有り、300℃(573K)における貯蔵弾性率は5×105Pa以上であった。また、300℃(573K)における貯蔵弾性率から求めた架橋密度は、いずれも3×10-5mol/cm3より高く、十分に架橋が進行していることを示す。また、いずれも3GPa未満、3MPa以上の引張弾性率を示した。さらに引張破断点強度は何れも5MPa以上50MPa未満であり、引張破断点伸びはいずれも50%以上250%未満であった。誘電率、誘電正接も、本発明の範囲を満たしている。実施例1a~4aで得られた硬化体フィルムの吸水率はいずれも0.1質量%未満であり、体積抵抗率は1×1015Ω・cm以上であった。一方比較例1a、2aで得られたシートの硬化体は、室温の引張弾性率が低すぎ、また300℃の貯蔵弾性率や架橋密度も本発明の条件を満たしていない。
【0119】
<銅箔の粗化面との剥離強度>
銅箔は、三井金属鉱業株式会社製(VSP series、TQ-M7-VSP、厚み12μm)を使用した。実施例1aの組成物を120℃、5MPa、2分でプレス成形して得た厚さ0.3mmの未硬化シートに銅箔の粗化面を接触させるように乗せ、厚さ0.3mmの型枠を用い加熱プレス機により、圧力5MPa、120℃30分、その後150℃30分、その後180℃120分で加熱加圧することで、シートと銅箔を接着硬化させた。銅箔との剥離強度測定は日本工業規格(JIS) C6481:1996に準じて90°剥離にて評価した。その結果、剥離強度は1.7N/mmであった。
【0120】
以上の結果より、本発明の組成物を硬化した硬化体は優れた低誘電特性と電気絶縁性を有し、特定の範囲の弾性率、耐熱性、耐水性を示し、常温及び高温域での強度(弾性率)が実用上十分な硬化体である。また、銅箔との剥離強度も実用上十分な強度であった。さらにLCP(液晶ポリマー)シートとも比較的温和な条件下で高い剥離強度を示すことが出来る。本硬化性の組成物はフィルム状に成形可能な固体の状態を示すことができ、硬化条件以下の加熱により溶融し各種形状に成形し硬化することができる熱可塑性を示す。それ故にシートを含む様々な形状に成形することが容易で、その後に加熱硬化を行うことができる。硬化体は特に高周波用の電気絶縁材料として好適に用いることが出来る。本硬化体は、薄膜の電気絶縁材料、高周波用の電気絶縁材料として好適に使用できる。本発明は特に、組成物中に単量体(モノマー)成分の含量が少なく、実質的に含まないことも可能である。本発明の組成物は、未硬化の状態で、カバーレイフィルム、ソルダーレジストフィルム、ビルドアップフィルム、ボンディングシート、カバーレイシート、フリップチップボンダー用のバンプシート、層間絶縁剤、層間接着剤として使用できる。本発明は、プリント基板、フレキシブルプリント基板、CCL(カッパークラッドラミネート)基材、FCCL(フレキシブルカッパークラッドラミネート)基材として使用できる。さらに、基板用の絶縁層として使用できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)の条件を満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体、及び本共重合体100質量部に対し単量体0質量部超10質量部以下を含む硬化性組成物であって、前記単量体は、芳香族ビニル化合物単量体、芳香族ポリエン単量体、及び極性単量体からなる群から選択される一種以上である硬化性組成物。
(1)共重合体の数平均分子量が5000以上10万以下である。
(2)共重合体中の芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が0質量%以上70質量%以下である。
(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満である。
(4)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数または複数であり、オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。
【請求項2】
単量体が極性単量体である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化体であり 、300℃における貯蔵弾性率が5×105Pa以上、かつ23℃、10GHzの誘電率が2.5以下2.0以上、誘電正接が0.003以下0.0005以上である電気絶縁材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む層と、銅箔とを含む積層体。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む層と、LCP層とを含む積層体。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む層と、銅箔及びLCP層とを含む積層体。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の積層体を硬化してなる硬化体。