(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171451
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20231124BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20231124BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20231124BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231124BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 220
C01B32/50
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170430
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2019196885の分割
【原出願日】2019-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】登里 朋来
(72)【発明者】
【氏名】上條 孝
(57)【要約】
【課題】設置コストを低減できる二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収コストを低減できる二酸化炭素回収方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収システムは、複数の燃焼設備のそれぞれから排出された排ガスと吸収液とを接触させて、排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる複数の吸収塔と、複数の吸収塔のそれぞれと連通する少なくとも1つの再生塔であって、複数の吸収塔のそれぞれから流出した吸収液であるCO
2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収する再生塔とを備え、再生塔の数は吸収塔の数よりも少ない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃焼設備のそれぞれから排出された排ガスと吸収液とを接触させて前記排ガス中の二酸化炭素を前記吸収液に吸収させる、前記燃焼設備ごとに設けられる複数の吸収塔と、
前記複数の吸収塔のそれぞれと連通する少なくとも1つの再生塔であって、前記複数の吸収塔のそれぞれから流出した吸収液であるCO2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収する再生塔と
を備え、
前記再生塔の数は前記吸収塔の数よりも少ない二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記複数の燃焼設備のそれぞれと前記複数の吸収塔のそれぞれとはダクトによって接続されている、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記複数の燃焼設備のそれぞれと前記複数の燃焼設備ごとに設けられた前記複数の吸収塔のそれぞれとの間の距離のそれぞれは、前記複数の燃焼設備のそれぞれと前記再生塔との間の距離のそれぞれよりも短い、請求項1または2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記再生塔に流入する二酸化炭素の流量を取得するための二酸化炭素流量取得部と、
前記再生塔において前記CO2リッチ吸収液を加熱するために前記再生塔に供給される熱媒体の流量を調整するための熱媒体流量調整部と
を備え、
前記熱媒体流量調整部は、前記二酸化炭素流量取得部による検出値に基づいて、前記熱媒体の流量を調整する、請求項1~3のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
複数の燃焼設備のそれぞれから排出された排ガスと吸収液とを別々に接触させて、各排ガス中の二酸化炭素を前記吸収液のそれぞれに吸収させるステップと、
二酸化炭素を吸収した各吸収液であるCO2リッチ吸収液を合流させてから二酸化炭素を回収するステップと
を含む二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製や石油化学等の工場には、その敷地内に燃焼設備が存在する。燃焼設備からは、二酸化炭素を含む排ガスが排出されるので、排ガスから二酸化炭素を回収する設備が設けられる。このような装置は、特許文献1に記載されるように、排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を分離して回収する再生塔とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場の敷地内に複数の燃焼設備が広範囲に点在する場合、燃焼設備ごとに吸収塔及び再生塔を設ける必要がある。そうすると、排ガスから二酸化炭素を回収する装置を設置するコストが高くなり、このような装置の導入が進まないといった問題が生じる。これに対して、工場内に1つの吸収塔及び1つの再生塔を設け、各燃焼設備と当該吸収塔とをダクトで接続し、各燃焼設備からの排ガスをまとめて処理する方法も考えられるが、燃焼設備の仕様や規模によってはダクトの外径が数メートルにも及ぶ場合があり、このような場合にはダクトの取り回しが困難となるため、このような方法は非現実的となる場合が多い。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、設置コストを低減できる二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収コストを低減できる二酸化炭素回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る二酸化炭素回収システムは、複数の燃焼設備のそれぞれから排出された排ガスと吸収液とを接触させて前記排ガス中の二酸化炭素を前記吸収液に吸収させる、前記燃焼設備ごとに設けられる複数の吸収塔と、前記複数の吸収塔のそれぞれと連通する少なくとも1つの再生塔であって、前記複数の吸収塔のそれぞれから流出した吸収液であるCO2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収する再生塔とを備え、前記再生塔の数は前記吸収塔の数よりも少ない。
【0007】
また、本開示に係る二酸化炭素回収方法は、複数の燃焼設備のそれぞれから排出された排ガスと吸収液とを別々に接触させて、各排ガス中の二酸化炭素を前記吸収液のそれぞれに吸収させるステップと、二酸化炭素を吸収した各吸収液であるCO2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収するステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法によれば、複数の燃焼設備のそれぞれから排出された排ガス中の二酸化炭素を吸収したCO2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収する再生塔が1つのみ又は吸収塔の数よりも少ない数だけ設けられているので、複数の燃焼設備ごとに吸収塔及び再生塔を設ける場合に比べて、二酸化炭素回収システムの設置コスト及び二酸化炭素回収コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態1に係る二酸化炭素回収システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る二酸化炭素回収システムのレイアウトを示す図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る二酸化炭素回収システムの変形例のレイアウトを示す図である。
【
図4】本開示の実施形態2に係る二酸化炭素回収システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態による二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
(実施形態1)
<実施形態1に係る二酸化炭素回収システムの構成>
図1に示されるように、本開示の実施形態1に係る二酸化炭素回収システム1は、工場の敷地内に設けられる複数の燃焼設備、例えば、加熱炉、改質炉、反応炉のような炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103のそれぞれから排出された排ガスと吸収液とを接触させて、排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる複数の吸収塔2,3,4,5と、吸収塔2,3,4,5のそれぞれと連通する1つの再生塔6とを備えている。
【0012】
炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103のそれぞれと、吸収塔2,3,4,5のそれぞれとは、ダクト11,12,13,14を介して接続されており、ダクト11,12,13,14のそれぞれには、ブロワー15,16,17,18及びクエンチャー45,46,47,48が設けられている。尚、ブロワー15,16,17,18はそれぞれ、クエンチャー45,46,47,48よりも上流側に設置されること(
図1の構成)に限定するものではなく、下流側に設置してもよい。
【0013】
吸収塔2,3,4,5にはそれぞれ、吸収塔2,3,4,5のそれぞれから流出した吸収液であるCO2リッチ吸収液が流通する流出管21,22,23,24が設けられている。流出管21,22,23,24はそれぞれ、各流出管を流通する各CO2リッチ吸収液が合流して再生塔6に流入するための流入管25を介して再生塔6と連通している。そして、流入管25の合流点と再生塔6への流入点との間には、流入管25のCO2リッチ吸収液と後述の流出管35のCO2リーン吸収液とが熱交換するリッチ・リーン溶液熱交換器50が配置されている。尚、流入管25を設けずに、各流出管を流通する各CO2リッチ吸収液が再生塔6に直接流入するように構成してもよく、その場合は、流出管21,22,23,24のそれぞれのCO2リッチ吸収液と後述のCO2リーン吸収液供給管31,32,33,34のそれぞれのCO2リーン吸収液とが熱交換するリッチ・リーン溶液熱交換器が配置される。
【0014】
吸収塔2,3,4,5にはそれぞれ、燃焼設備からの排ガスと接触する吸収液が供給されるCO2リーン吸収液供給管31,32,33,34が設けられている。CO2リーン吸収液供給管31,32,33,34はそれぞれ、後述する動作で再生塔6においてCO2リッチ吸収液から二酸化炭素が回収されたCO2リーン吸収液が再生塔6から流出するための流出管35を介して再生塔6と連通している。
【0015】
吸収塔2,3,4,5にはそれぞれ、吸収液と接触後の排ガスが吸収塔2,3,4,5から流出する排ガス流出管41,42,43,44が設けられている。再生塔6は、CO2リッチ吸収液から回収した二酸化炭素を使用する二酸化炭素使用装置9と、二酸化炭素ライン7を介して連通している。二酸化炭素ライン7には、二酸化炭素を昇圧するための圧縮機8が設けられている。また、再生塔6には、CO2リッチ吸収液を加熱するための熱媒体、例えば水蒸気が流通する図示しない熱媒体流通路を含む熱交換器(リボイラー)が設けられ、この熱交換器には、水蒸気を供給するための熱媒体供給ライン28と、この熱交換器から凝縮水が流出するための熱媒体排出ライン29とが接続されている。
【0016】
<実施形態1に係る二酸化炭素回収システムの動作>
次に、本開示の実施形態1に係る二酸化炭素回収システム1の動作について説明する。
図1に示されるように、炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103のそれぞれから排出された排ガスは、ブロワー15,16,17,18によってダクト11,12,13,14をそれぞれ流通し、クエンチャー45,46,47,48によってそれぞれ冷却されて、吸収塔2,3,4,5のそれぞれに流入する。吸収塔2,3,4,5のそれぞれに流入した排ガスは、CO
2リーン吸収液供給管31,32,33,34を介して吸収塔2,3,4,5のそれぞれに流入した吸収液と接触することで、排ガス中に含まれる二酸化炭素の少なくとも一部が吸収液に吸収される。二酸化炭素を吸収した吸収液は、CO
2リッチ吸収液として吸収塔2,3,4,5のそれぞれから流出して流出管21,22,23,24を流通する。
【0017】
流出管21,22,23,24のそれぞれを流通するCO2リッチ吸収液は、流入管25に流入することで合流されて再生塔6に流入する。再生塔6においてCO2リッチ吸収液は、熱媒体供給ライン28を介して再生塔6の熱交換器に供給された熱媒体である水蒸気によって加熱されることによってCO2リッチ吸収液から二酸化炭素が放出されて、CO2リーン吸収液となる。CO2リッチ吸収液を加熱した水蒸気は、熱媒体排出ライン29を介して再生塔6の熱交換器から、凝縮水として流出する。
【0018】
再生塔6においてCO2リッチ吸収液から放出された二酸化炭素は、再生塔6から流出し、圧縮機8によって二酸化炭素ライン7を流通して、二酸化炭素を使用する二酸化炭素使用装置9に供給される。再生塔6では、このようにしてCO2リッチ吸収液から二酸化炭素が回収される。一方、CO2リーン吸収液は、吸収塔2,3,4,5のそれぞれに供給される吸収液として再生塔6から流出して流出管35を流通する。流出管35を流通するCO2リーン吸収液は、CO2リーン吸収液供給管31,32,33,34のそれぞれ分配されて、吸収塔2,3,4,5のそれぞれに供給される。
【0019】
<実施形態1に係る二酸化炭素回収システムの作用効果>
本開示の実施形態1に係る二酸化炭素回収システム1によれば、複数の燃焼設備、すなわち炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103のそれぞれから排出された排ガス中の二酸化炭素を吸収したCO2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収する再生塔6及びリッチ・リーン溶液熱交換器50が1つのみ設けられているので、燃焼設備ごとに吸収塔及び再生塔を設ける場合に比べて、二酸化炭素回収システム1の設置コストを低減することができる。尚、実施形態1では、再生塔6及びリッチ・リーン溶液熱交換器50がそれぞれ1つのみ設けられているが、それぞれが複数設けられている場合でも吸収塔の数よりも少ない数であれば、燃焼設備ごとに吸収塔及び再生塔を設ける場合に比べて、二酸化炭素回収システム1の設置コストを低減することができる。
【0020】
図2に示されるように、複数の燃焼設備、すなわち炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103が工場の敷地内で広範囲に点在していても、燃焼設備ごとに設けられる吸収塔2,3,4,5を燃焼設備の近くに設けることができる。燃焼設備ごとに設けられる吸収塔2,3,4,5を燃焼設備の近くに設けることにより、炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103のそれぞれと吸収塔2,3,4,5のそれぞれとの間の距離L
11,L
12,L
13,L
14のそれぞれは、炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103のそれぞれと再生塔6との間の距離L
21,L
22,L
23,L
24のそれぞれよりも短くなる。
【0021】
燃焼設備と吸収塔2,3,4,5とを接続するダクト11,12,13,14の外径は、吸収塔2,3,4,5と再生塔6とを接続する配管すなわち、流出管21,22,23,24及び流入管25の外径と比べて著しく大きくなる傾向があるが、吸収塔2,3,4,5を燃焼設備の近くに設けるとともに吸収塔2,3,4,5と再生塔6とを接続する配管のみを取り回すことにより、外径の大きなダクト11,12,13,14を短くしてダクトの取り回しを低減することができるので、二酸化炭素回収システム1の設置が容易になる。
【0022】
<実施形態1に係る二酸化炭素回収システムの変形例>
実施形態1では、複数の燃焼設備として炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103の4つを例示したが、これらに限定するものではなく、燃焼によって二酸化炭素を含む排ガスを排出する設備であればどのような設備でもよい。また、燃焼設備の数も4つに限定するものではなく、2つ又は3つでもよく、5つ以上でもよい。
【0023】
また、実施形態1では、各燃焼設備は同じ工場の敷地内に設置されたものであったが、この形態に限定するものではない。例えば
図3に示されるように、複数のプラントA,B,C,D,Eが隣接するコンビナートにおいて、各プラントから排出される排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔A1,B1,C1,D1,E1を各プラントの近くに設けるとともに、吸収塔A1~E1のそれぞれに接続される1つの再生塔201を設けた二酸化炭素回収システム200を設置することもできる。
【0024】
この二酸化炭素回収システム200は、実施形態1に係る二酸化炭素回収システム1のような1つの工場内に設けられる複数の燃焼設備からの排ガスから二酸化炭素を回収するものではなく、複数のプラントが隣接するコンビナートから排出される排ガスから二酸化炭素を回収するものであるため、異なる企業の複数のプラントからの排ガスを処理することで、さらに二酸化炭素回収システムの設置コストの上昇を抑制することができる。特に、このようにすることで、二酸化炭素回収システムを設置する資力のない企業であっても、燃焼設備から排出される排ガスの処理を低コストで行うことができるようになる。
【0025】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る二酸化炭素回収システムについて説明する。実施形態2に係る二酸化炭素回収システムは、実施形態1に対して、二酸化炭素の回収動作を最適化するための構成を付加したものである。尚、実施形態2において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0026】
<実施形態2に係る二酸化炭素回収システムの構成>
図4に示されるように、本開示の実施形態2に係る二酸化炭素回収システム1において、ダクト11,12,13,14のそれぞれには、クエンチャー45,46,47,48と吸収塔2,3,4,5との間に、排ガスに含まれる二酸化炭素の流量を取得するための二酸化炭素流量取得部51,52,53,54が設けられている。二酸化炭素流量取得部51,52,53,54はそれぞれ、排ガスの流量を検出する流量センサと、排ガス中の二酸化炭素の濃度を検出する濃度センサとから構成することができる。両センサによる検出値を乗算することで、吸収塔2,3,4,5のそれぞれに流入する二酸化炭素の流量を検出することができる。尚、ブロワー15,16,17,18のそれぞれがクエンチャー45,46,47,48よりも下流側に設置される場合には、二酸化炭素流量取得部51,52,53,54はそれぞれ、ブロワー15,16,17,18のそれぞれと吸収塔2,3,4,5のそれぞれとの間に設けてもよい。
【0027】
CO2リーン吸収液供給管31,32,33,34のそれぞれには、CO2リーン吸収液供給管31,32,33,34のそれぞれを流通するCO2リーン吸収液の流量を調整するための流量調整部である流量調整弁61,62,63,64が設けられている。流量調整弁61,62,63,64のそれぞれと、二酸化炭素流量取得部51,52,53,54のそれぞれとは電気的に接続されている。
【0028】
流入管25には、CO2リッチ吸収液に吸収された二酸化炭素の流量を取得するための二酸化炭素流量取得部71が設けられている。二酸化炭素流量取得部71は、流入管25を流通する、すなわち再生塔6に流入するCO2リッチ吸収液の流量を検出する流量センサと、CO2リッチ吸収液に吸収されている二酸化炭素の濃度を検出する濃度センサとから構成することができる。両センサによる検出値を乗算することで、再生塔6に流入する二酸化炭素の流量を検出することができる。熱媒体供給ライン28には、再生塔6の熱交換器に供給される水蒸気の流量を調整するための熱媒体流量調整部である流量調整弁72が設けられている。流量調整弁72と二酸化炭素流量取得部71とは電気的に接続されている。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0029】
<実施形態2に係る二酸化炭素回収システムの動作>
次に、本開示の実施形態2に係る二酸化炭素回収システム1の動作について説明する。
図4に示されるように、実施形態1と同様にして、炉100、ボイラ101、スチームリフォーマー102、及びガスタービン103のそれぞれから排出された排ガスは、ダクト11,12,13,14を介して吸収塔2,3,4,5のそれぞれに流入する。実施形態2では、各排ガスが吸収塔2,3,4,5のそれぞれに流入する前に、二酸化炭素流量取得部51,52,53,54のそれぞれが、各排ガスに含まれる二酸化炭素の流量を検出する。その後、各吸収塔2,3,4,5において排ガス中の二酸化炭素が吸収液に吸収され、再生塔6において二酸化炭素を吸収した吸収液(CO
2リッチ吸収液)から二酸化炭素を回収し、二酸化炭素を回収された吸収液(CO
2リーン吸収液)が再び各吸収塔2,3,4,5に供給される動作は実施形態1と同じである。
【0030】
各吸収塔2,3,4,5において吸収液に吸収され得る二酸化炭素の量は、流入する二酸化炭素の流量と、吸収液に含まれるモノエタノールアミン等の二酸化炭素を吸収可能な成分の流量とから推定可能である。これにより、吸収塔2,3,4,5のそれぞれから流出するCO2リッチ吸収液中の二酸化炭素の濃度を推定することができる。このため、各吸収塔2,3,4,5から流出するCO2リッチ吸収液中の二酸化炭素濃度が予め設定された下限濃度、例えば0.3(mol/mol-吸収成分)以上となるようにするために、各吸収塔2,3,4,5に流入する二酸化炭素の流量と、各吸収塔2,3,4,5に供給される吸収液中の吸収成分の流量との相関関係を、マップや関係式等の形態で予め決定することができる。尚、吸収成分の流量は、吸収液中の吸収成分の濃度を決定しておけば、吸収液の流量に吸収成分の濃度を乗算することで算出することができる。
【0031】
流量調整弁61,62,63,64はそれぞれ、このような二酸化炭素の流量と吸収成分の流量との相関関係(マップや関係式等)に基づいて、二酸化炭素流量取得部51,52,53,54のそれぞれによる検出値から、各吸収塔2,3,4,5へ供給される吸収液の流量を調整する。これにより、各吸収塔2,3,4,5から流出するCO2リッチ吸収液中の二酸化炭素の濃度を予め設定された下限濃度以上にすることができる。
【0032】
CO2リッチ吸収液中の二酸化炭素の濃度が低すぎると、再生塔6での二酸化炭素の回収率が低下してしまう。しかし、実施形態2では、吸収塔2,3,4,5のそれぞれから流出するCO2リッチ吸収液中の二酸化炭素濃度が予め設定された下限濃度以上となり、その結果、CO2リッチ吸収液中の二酸化炭素の濃度をある程度高めに維持することができるので、再生塔6での二酸化炭素の回収率の低下を抑制することができる。
【0033】
実施形態2において再生塔6での二酸化炭素を回収する動作は実施形態1と同じである。ただし、実施形態2では、CO2リッチ吸収液が再生塔6に流入する前の流入管25を流通する際に、二酸化炭素流量取得部71が、CO2リッチ吸収液に吸収された二酸化炭素の流量を検出する。再生塔6に流入する二酸化炭素の流量が多ければ、再生塔6においてCO2リッチ吸収液に与える熱量をより多くする必要がある。言い換えると、再生塔6の熱交換器への水蒸気の供給量を多くする必要がある。つまり、再生塔6に流入する二酸化炭素の流量と、再生塔6の熱交換器に供給される水蒸気の流量との間には相関関係があるので、このような相関関係を、マップや関係式等の形態で予め決定しておくことで、流量調整弁72は、このような相関関係(マップや関係式等)に基づいて、二酸化炭素流量取得部71による検出値から、再生塔6のジャケットへの水蒸気の供給量を調整することができる。これにより、再生塔6における二酸化炭素の回収に必要な流量で水蒸気を再生塔6の熱交換器に供給することができるので、水蒸気の使用量を最適化することができる。
【0034】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0035】
(1)一の態様に係る二酸化炭素回収システムは、
複数の燃焼設備(炉100,ボイラ101,スチームリフォーマー102,ガスタービン103)のそれぞれから排出された排ガスと吸収液とを接触させて、前記排ガス中の二酸化炭素を前記吸収液に吸収させる複数の吸収塔(2,3,4,5)と、
前記複数の吸収塔(2,3,4,5)のそれぞれと連通する少なくとも1つの再生塔(6)であって、前記複数の吸収塔(2,3,4,5)のそれぞれから流出した吸収液であるCO2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収する再生塔(6)と
を備え、
前記再生塔(6)の数は前記吸収塔(2,3,4,5)の数よりも少ない。
【0036】
本開示の二酸化炭素回収システムによれば、複数の燃焼設備のそれぞれから排出された排ガス中の二酸化炭素を吸収したCO2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収する再生塔が1つのみ又は吸収塔の数よりも少ない数だけ設けられているので、複数の燃焼設備ごとに吸収塔及び再生塔を設ける場合に比べて、二酸化炭素回収システムの設置コストを低減することができる。
【0037】
(2)別の態様に係る二酸化炭素回収システムは、(1)に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記複数の燃焼設備(100,101,102,103)のそれぞれと前記複数の吸収塔(2,3,4,5)のそれぞれとはダクト(11,12,13,14)によって接続されている。
【0038】
このような構成によれば、複数の燃焼設備が広範囲に点在していても、燃焼設備ごとに設けられる吸収塔を燃焼設備の近くに設けることができる。燃焼設備と吸収塔とを接続するダクトの外径は、吸収塔と再生塔とを接続する配管の外径と比べて著しく大きくなる傾向があるが、吸収塔を燃焼設備の近くに設けるとともに吸収塔と再生塔とを接続する配管のみを取り回すことにより、外径の大きなダクトを短くしてダクトの取り回しを低減することができるので、二酸化炭素回収システムの設置が容易になる。
【0039】
(3)さらに別の態様に係る二酸化炭素回収システムは、(1)または(2)に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記複数の燃焼設備(100,101,102,103)のそれぞれと前記複数の燃焼設備(100,101,102,103)ごとに設けられた前記複数の吸収塔(2,3,4,5)のそれぞれとの間の距離(L11,L12,L13,L14)のそれぞれは、前記複数の燃焼設備(100,101,102,103)のそれぞれと前記再生塔(6)との間の距離(L21,L22,L23,L24)のそれぞれよりも短い。
【0040】
このような構成によれば、吸収塔が燃焼設備の近くに設けられることにより、吸収塔と再生塔とを接続する配管のみを取り回すことで、外径の大きなダクトを短くしてダクトの取り回しを低減することができるので、二酸化炭素回収システムの設置が容易になる。
【0041】
(4)さらに別の態様に係る二酸化炭素回収システムは、(1)~(3)のいずれかに記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記再生塔(6)で前記CO2リッチ吸収液から二酸化炭素を回収したCO2リーン吸収液を、前記複数の吸収塔のそれぞれにおいて前記排ガスと接触する前記吸収液として前記複数の吸収塔(2,3,4,5)のそれぞれに供給するための複数のCO2リーン吸収液供給管(31,32,33,34)と、
前記複数のCO2リーン吸収液供給管(31,32,33,34)のそれぞれを流通する前記CO2リーン吸収液の流量を調整するための流量調整部(流量調整弁61,62,63,64)と
を備え、
前記複数の吸収塔(2,3,4,5)のそれぞれから流出する前記CO2リッチ吸収液中の二酸化炭素濃度が予め設定された下限濃度以上となるように、前記流量調整部(61,62,63,64)は、前記複数のCO2リーン吸収液供給管(31,32,33,34)のそれぞれを流通する前記CO2リーン吸収液の流量を調整する。
【0042】
CO2リッチ吸収液中の二酸化炭素の濃度が低すぎると、再生塔での二酸化炭素の回収率が低下してしまう。しかし、(4)の構成によれば、複数の吸収塔のそれぞれから流出するCO2リッチ吸収液中の二酸化炭素濃度が予め設定された下限濃度以上となり、その結果、CO2リッチ吸収液中の二酸化炭素の濃度をある程度高めに維持することができるので、再生塔での二酸化炭素の回収率の低下を抑制することができる。
【0043】
(5)さらに別の態様に係る二酸化炭素回収システムは、(1)~(4)のいずれかに記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記再生塔(6)に流入する二酸化炭素の流量を取得するための二酸化炭素流量取得部(71)と、
前記再生塔(6)において前記CO2リッチ吸収液を加熱するために前記再生塔(6)に供給される熱媒体の流量を調整するための熱媒体流量調整部(流量調整弁72)と
を備え、
前記熱媒体流量調整部(72)は、前記二酸化炭素流量取得部による検出値に基づいて、前記熱媒体の流量を調整する。
【0044】
このような構成によれば、再生塔における二酸化炭素の回収に必要な流量で熱媒体を再生塔に供給することができるので、熱媒体の使用量を最適化することができる。
【0045】
(6)一の態様に係る二酸化炭素回収方法は、
複数の燃焼設備のそれぞれから排出された排ガスと吸収液とを別々に接触させて、各排ガス中の二酸化炭素を前記吸収液のそれぞれに吸収させるステップと、
二酸化炭素を吸収した各吸収液であるCO2リッチ吸収液を合流させてから二酸化炭素を回収するステップと
を含む。
【0046】
本開示の二酸化炭素回収方法によれば、複数の燃焼設備から排出された各排ガス中の二酸化炭素を吸収したCO2リッチ吸収液を合流させてから二酸化炭素を回収するので、複数の燃焼設備ごとに二酸化炭素の吸収及び二酸化炭素の回収を行う場合に比べて、二酸化炭素回収コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 二酸化炭素回収システム
2 吸収塔
3 吸収塔
4 吸収塔
5 吸収塔
6 再生塔
11 ダクト
12 ダクト
13 ダクト
14 ダクト
31 CO2リーン吸収液供給管
32 CO2リーン吸収液供給管
33 CO2リーン吸収液供給管
34 吸収液供給管
61 流量調整弁(流量調整部)
62 流量調整弁(流量調整部)
63 流量調整弁(流量調整部)
64 流量調整弁(流量調整部)
71 二酸化炭素流量取得部
72 流量調整弁(熱媒体流量調整部)
100 炉
101 ボイラ
102 スチームリフォーマー
103 ガスタービン
200 二酸化炭素回収システム
201 再生塔
A プラント
A1 吸収塔
B プラント
B1 吸収塔
C プラント
C1 吸収塔
D プラント
D1 吸収塔
E プラント
E1 吸収塔