(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171459
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】縁シーラントおよび積層ダムのための光学デバイス通気間隙
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231124BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20231124BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/00 Z
G02B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171305
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021503589の分割
【原出願日】2019-07-22
(31)【優先権主張番号】62/702,020
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/702,215
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514108838
【氏名又は名称】マジック リープ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Magic Leap,Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 W SUNRISE BLVD,PLANTATION,FL 33322 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウェンドン シン
(72)【発明者】
【氏名】ビクラムジト シン
(72)【発明者】
【氏名】ニール ポール リックス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ディーン シュムレン
(72)【発明者】
【氏名】エモリー ディー. キャロル
(72)【発明者】
【氏名】ケー. ブレント ビンクリー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ワイ. シュー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス メルシエ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ハドソン ウェルチ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル アンソニー クルグ
(57)【要約】
【課題】縁シーラントおよび積層ダムのための光学デバイス通気間隙の提供。
【解決手段】本開示の実施形態は、導波管の複数の層を含む光学デバイス(例えば、接眼レンズ)を対象とする。光学デバイスは、光汚染を低減させるための縁シーラントと、光学デバイスの層の間の縁シーラントのウィッキングを制限するための積層ダムと、接眼レンズの外部と内部との間の空気流を可能にするためのシーラントおよびダム内の通気間隙とを含むことができる。間隙は、ガス放出された化学物質と接眼レンズ層の(例えば、イオン性、酸性等)表面の化学反応によって引き起こされる欠陥蓄積を防止するために、未反応ポリマーおよび/または蓄積された水分の接眼レンズの内部からのガス放出を可能にする。間隙はまた、経時的に接眼レンズを物理的に変形させ得る圧力差を防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイスであって、前記光学デバイスは、
複数の光学層と、
前記複数の光学層を横断して前記光学デバイスの縁に沿って配列されている縁シーラントであって、1つ以上のシーラント間隙が、前記縁シーラント内に存在する、縁シーラントと、
前記光学デバイスの前記縁からある距離において、前記複数の光学層の間に、前記縁シーラントのウィッキングを停止させるために、前記複数の光学層の隣接する光学層の各対の間に配列されている積層ダムであって、1つ以上のダム間隙が、前記縁に沿った1つ以上の位置において、前記積層ダム内に存在し、前記1つ以上のダム間隙のそれぞれは、前記1つ以上のシーラント間隙および前記1つ以上のダム間隙を通した前記光学デバイスの内部と外部との間の空気流を可能にするために、個別のシーラント間隙の位置に対応する、積層ダムと
を備える光学デバイス。
【請求項2】
前記1つ以上のシーラント間隙は、前記光学デバイスの前記縁の臨界領域の外側に位置し、前記臨界領域は、前記光学デバイスの周辺の一部であり、前記縁シーラントは、前記臨界領域に沿った光を吸収する、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記縁シーラントは、前記臨界領域内に少なくとも部分的に配列されている、請求項2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記縁シーラントおよび前記積層ダムおよび前記複数の光学層のうちの1つの光学層の表面のうちの1つ以上のものは、少なくとも部分的に疎水性材料から成る、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記1つ以上のシーラント間隙のうちの少なくとも1つは、前記光学デバイスの前記縁に沿って前記1つ以上のダム間隙のうちの対応するものと少なくとも部分的に重複する、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記1つ以上のシーラント間隙のうちの少なくとも1つは、前記1つ以上のダム間隙のうちの対応するものと共心である、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記縁シーラントは、少なくとも2つのシーラント間隙を含み、
前記積層ダムは、少なくとも2つのダム間隙を含む、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記複数の光学層は、少なくとも3つの光学層を備える、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも3つの光学層は、赤色光を誘導するための層と、緑色光を誘導するための層と、青色光を誘導するための層とを備える、請求項8に記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記縁シーラントは、紫外線照射を吸収する、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記複数の光学層のうちの少なくとも1つの光学層は、直交瞳エキスパンダ領域、射出瞳エキスパンダ領域、内部格子結合領域のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項12】
前記縁シーラントは、前記光学デバイスの前記縁を通した横断方向における前記光学デバイスの内部から外部への光漏出を防止する、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項13】
前記縁シーラントは、前記光学デバイスの内部への光の反射を防止する、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項14】
前記縁シーラントの厚さは、約430ミクロン~約500ミクロンの範囲内である、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項15】
前記光学デバイスの前記縁と前記積層ダムとの間の前記縁シーラントの厚さは、約350ミクロンである、請求項14に記載の光学デバイス。
【請求項16】
前記積層ダムの幅は、約500ミクロンである、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項17】
請求項1に記載の光学デバイスを備える接眼レンズ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、「OPTICAL DEVICE VENTING GAPS FOR EDGE SEALANT AND LAMINATION DAM」と題されて2018年7月23日に出願された米国特許出願第62/702,215号、および、「OPTICAL DEVICE VENTING GAPS FOR EDGE SEALANT AND LAMINATION DAM」と題されて2018年7月23日に出願された米国特許出願第62/702,020号の利益を主張する。
【0002】
(背景)
光学デバイスでは、光が、所望の効果を達成するために指向および/または操作されることができる。例えば、仮想現実インターフェースにおいて使用される接眼レンズ等の光学デバイスでは、可視光が、ユーザによって知覚される画像データを提供するために指向および/または操作されることができる。種々のタイプの光学デバイスが、デバイスが所望の仕様に従って製造されかつ/または動作することを確実にするために、製造中におよび/または製造後に試験を受け得る。例えば、いくつかのタイプの光学デバイスでは、デバイスから外への光の漏出を低減させるまたは排除することが、有利であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実施形態は、概して、1つ以上の通気間隙を伴う光学デバイスを対象とする。より具体的には、実施形態は、光学デバイスの外周の少なくとも一部に沿った縁シーラントと、縁シーラントのウィッキング(wicking)を制限するための積層ダムと、光学デバイスの内部と外部との間の空気流を可能にするための積層ダムおよび縁シーラント内の1つ以上の通気間隙とを含む複数の光学層を含む光学デバイス(例えば、接眼レンズ)を対象とする。通気口によって提供される空気流はまた、光学デバイスが、熱および湿度条件(例えば、約80~100%の相対湿度における摂氏約45~65度)に曝されるとき、光学デバイスの層の間の領域からの未反応ポリマー残留物および水分の逃散を可能にする。
【0004】
一般に、本明細書に説明される主題の革新的側面は、複数の光学層と、複数の光学層を横断して光学デバイスの縁に沿って配列される縁シーラントであって、1つ以上のシーラント間隙が、縁シーラント内に存在する、縁シーラントと、光学デバイスの縁からある距離において、光学層の間に、縁シーラントのウィッキングを停止させるために、複数の光学層の隣接する層の各対の間に配列される積層ダムであって、1つ以上のダム間隙が、1つ以上のシーラント間隙および1つ以上のダム間隙を通した光学デバイスの内部と外部との間の空気流を可能にするために、各々が個別のシーラント間隙の位置に対応する縁に沿った1つ以上の位置において、積層ダム内に存在する、積層ダムとを含む光学デバイスの1つ以上の実施形態に含まれることができる。本明細書に説明される主題の革新的側面は、光学デバイスの実施形態を含む接眼レンズの1つ以上の実施形態に含まれることができる。
【0005】
1つ以上の実施形態は、随意に、以下の特徴のうちの1つ以上のものを含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、1つ以上のシーラント間隙は、光学デバイスの縁の臨界領域の外側に位置する。
【0007】
いくつかの実施形態では、シーラント間隙のうちの1つ以上のものは、対応するダム間隙の長さを超える、光学デバイスの縁に沿った長さを有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、縁シーラント、積層ダム、および複数の光学層の光学層のうちの1つの表面のうちの1つ以上のものは、疎水性材料を含む、または、少なくとも部分的に疎水性材料から成る。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つ以上のシーラント間隙のうちの少なくとも1つは、光学デバイスの縁に沿って1つ以上のダム間隙のうちの対応するものと少なくとも部分的に重複する。
【0010】
いくつかの実施形態では、1つ以上のシーラント間隙のうちの少なくとも1つは、1つ以上のダム間隙のうちの対応するものと共心である。
【0011】
いくつかの実施形態では、縁シーラントは、少なくとも2つのシーラント間隙を含み、積層ダムは、少なくとも2つのダム間隙を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の光学層は、少なくとも3つの光学層を備える。少なくとも3つの光学層は、赤色光を誘導するための層と、緑色光を誘導するための層と、青色光を誘導するための層とを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、縁シーラントは、紫外線照射を吸収する。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の光学層の光学層のうちの少なくとも1つは、直交瞳エキスパンダ領域を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の光学層の光学層のうちの少なくとも1つは、射出瞳エキスパンダ領域を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、複数の光学層の光学層のうちの少なくとも1つは、内部格子結合領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つ以上のシーラント間隙および1つ以上の縁間隙は、光学デバイスの内部と光学デバイスの外部との間の空気の流動を可能にする。
【0018】
いくつかの実施形態では、縁シーラントは、光学デバイスの縁を通した横断方向における光学デバイスの内部から外部への光漏出を防止する。
【0019】
いくつかの実施形態では、縁シーラントは、接眼レンズの内部への光の反射を防止する。
【0020】
いくつかの実施形態では、縁シーラントの厚さは、約430ミクロン~約500ミクロンの範囲内である。
【0021】
いくつかの実施形態では、光学デバイスの縁と積層ダムとの間の縁シーラントの厚さは、約350ミクロンである。
【0022】
いくつかの実施形態では、積層ダムの幅は、約500ミクロンである。
【0023】
いくつかの側面では、接眼レンズが、含む。
【0024】
本開示による側面および特徴は、本明細書に説明される側面および特徴の任意の組み合わせを含むことができることを理解されたい。すなわち、本開示による側面および特徴は、本明細書に具体的に説明される側面および特徴の組み合わせに限定されず、また、提供される側面および特徴の任意の組み合わせを含む。
【0025】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細が、付随の図面および下記の説明に記載される。本開示の他の特徴および利点が、説明および図面から、ならびに請求項から明白となる。
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
光学デバイスであって、
複数の光学層と、
前記複数の光学層を横断して前記光学デバイスの縁に沿って配列される縁シーラントであって、1つ以上のシーラント間隙が、前記縁シーラント内に存在する、縁シーラントと、
前記光学デバイスの縁からある距離において、前記光学層の間に、前記縁シーラントのウィッキングを停止させるために、前記複数の光学層の隣接する光学層の各対の間に配列される積層ダムであって、1つ以上のダム間隙が、前記1つ以上のシーラント間隙および前記1つ以上のダム間隙を通した前記光学デバイスの内部と外部との間の空気流を可能にするために、各々が個別のシーラント間隙の位置に対応する前記縁に沿った1つ以上の位置において、前記積層ダム内に存在する、積層ダムと
を備える、光学デバイス。
(項目2)
前記1つ以上のシーラント間隙は、前記光学デバイスの縁の臨界領域の外側に位置する、項目1に記載の光学デバイス。
(項目3)
前記1つ以上のシーラント間隙のうちの1つは、前記対応するダム間隙の長さを超える、前記光学デバイスの縁に沿った長さを有する、項目1に記載の光学デバイス。
(項目4)
前記縁シーラント、前記積層ダム、および前記複数の光学層の光学層のうちの1つの表面のうちの1つ以上のものは、少なくとも部分的に疎水性材料から成る、項目1に記載の光学デバイス。
(項目5)
前記1つ以上のシーラント間隙のうちの少なくとも1つは、前記光学デバイスの縁に沿って前記1つ以上のダム間隙のうちの対応するものと少なくとも部分的に重複する、項目1に記載の光学デバイス。
(項目6)
前記1つ以上のシーラント間隙のうちの少なくとも1つは、前記1つ以上のダム間隙のうちの対応するものと共心である、項目1に記載の光学デバイス。
(項目7)
前記縁シーラントは、少なくとも2つのシーラント間隙を含み、
前記積層ダムは、少なくとも2つのダム間隙を含む、項目1に記載の光学デバイス。
(項目8)
前記複数の光学層は、少なくとも3つの光学層を備える、項目1に記載の光学デバイス。
(項目9)
前記少なくとも3つの光学層は、赤色光を誘導するための層と、緑色光を誘導するための層と、青色光を誘導するための層とを備える、項目8に記載の光学デバイス。
(項目10)
前記縁シーラントは、紫外線照射を吸収する、項目1に記載の光学デバイス。
(項目11)
前記複数の光学層の光学層のうちの少なくとも1つは、直交瞳エキスパンダ領域を備える、項目1に記載の光学デバイス。
(項目12)
前記複数の光学層の光学層のうちの少なくとも1つは、射出瞳エキスパンダ領域を備える、項目1に記載の光学デバイス。
(項目13)
前記複数の光学層の光学層のうちの少なくとも1つは、内部格子結合領域を備える、項目1に記載の光学デバイス。
(項目14)
前記1つ以上のシーラント間隙および前記1つ以上の縁間隙は、前記光学デバイスの内部と前記光学デバイスの外部との間の空気の流動を可能にする、項目1に記載の光学デバイス。
(項目15)
前記縁シーラントは、前記光学デバイスの縁を通した横断方向における前記光学デバイスの内部から外部への光漏出を防止する、項目1に記載の光学デバイス。
(項目16)
前記縁シーラントは、前記接眼レンズの内部への光の反射を防止する、項目1に記載の光学デバイス。
(項目17)
前記縁シーラントの厚さは、約430ミクロン~約500ミクロンの範囲内である、項目1に記載の光学デバイス。
(項目18)
前記光学デバイスの縁と前記積層ダムとの間の前記縁シーラントの厚さは、約350ミクロンである、項目1に記載の光学デバイス。
(項目19)
前記積層ダムの幅は、約500ミクロンである、項目1に記載の光学デバイス。
(項目20)
項目1に記載の光学デバイスを備える、接眼レンズ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による、例示的接眼レンズの概略図を描写する。
【0027】
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による、例示的接眼レンズの一部の概略図を描写する。
【0028】
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による、検査装置を使用して検査されることができる例示的光学デバイスの断面概略図を描写する。
【0029】
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による、接眼レンズ内の例示的ダム配列を描写する。
【0030】
【
図5】
図5は、通気口の不在下等の接眼レンズの層の例示的変形を示す概略図を描写する。
【0031】
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、本開示の実施形態による、それぞれ、通気口の有無別の接眼レンズ変形を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の実施形態は、光汚染を低減させるための縁シーラントと、光学デバイスの層の間の縁シーラントのウィッキングを制限するための積層ダムと、接眼レンズの内部からのガス放出を可能にし、圧力差が起こることを防止するためのシーラントおよびダム内の通気間隙とを含む光学デバイス(例えば、接眼レンズ)を対象とする。間隙は、空気が接眼レンズの内部と外部との間で流動することを可能にし、他の態様で化学反応および/または圧力差によって引き起こされ得る欠陥および/または変形を防止することができる。
【0033】
接眼レンズが、下記に説明されるような導波管の複数の層を含むように構築されることができる。接眼レンズの製造中、縁シーラント(例えば、ポリマー)が、接眼レンズの外周の少なくとも一部に沿って適用されることができる。シーラントは、続けて、縁シーラントに指向される紫外線(UV)光を使用して硬化されることができる。接眼レンズはまた、シーラント材料が完全に硬化される前に、シーラント材料が特定の深度を越えて接眼レンズの層の間でウィッキングすることを制限する積層ダムを含むように製造されることができる。いくつかの実施例では、縁シーラントは、光学デバイスからの光の漏出を防止し(または少なくとも低減させ)、また、多層光学デバイスの構造を確実にして維持するために、光学デバイスに適用される。いくつかの実施例では、光学デバイスは、仮想現実、拡張現実、および/またはコンピュータビジョンインターフェースデバイスにおいて使用するために、ならびに/あるいは、画像データ、ビデオデータ、グラフィックスデータ、および/または他のタイプの視覚的に知覚可能な情報を、インターフェースデバイスを装着または他の態様で使用しているユーザに配信するために製造された接眼レンズである。シーラントは、接眼レンズから外に発する光を吸収し、光が接眼レンズの中へ戻るように反射してその光学性能を劣化させることを防止するために、適用されてもよい。
【0034】
シーラントは、多層接眼レンズの全ての層を横断する、接眼レンズの厚さ全体を横断する適用を伴って、接眼レンズの縁の少なくとも一部に適用されることができる。シーラントが多層構造に適用されると、シーラントは、接眼レンズの層の間でウィッキングし始める。故に、シーラントの硬化が、シーラント適用の完了後すぐに(例えば、直後に)開始されることができる。シーラントのために使用される特定の材料およびその粘度、硬化が開始される前の遅延、ならびに/あるいは流入物質変動(例えば、接眼レンズ内の層の間の空気間隙サイズ)を含む、種々の因子が、起こるウィッキングの量(例えば、ウィッキング長さ)に寄与し得る。例えば、層の間の空気間隙が小さいほど、より多くのウィッキングが、毛細管効果に起因して起こり得る。いくつかの実施形態では、硬化およびシーラント適用は、シーラントの全ての部分(例えば、縁の全ての部分)が同一または実質的に同一のウィッキング時間を有し得るように、一貫し得る。いくつかの実施形態では、積層ダムが、下記にさらに説明されるように、特定の深度においてシーラントのウィッキングを停止させるために、接眼レンズの層の間に配列される。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つ以上の(例えば、紫外線)光源(プローブ)が、シーラントを硬化させるために採用されることができる。例えば、シーラントは、ある時間長にわたってUV光に暴露されると硬化する黒色UV感受性ポリマーであり得る。シーラントの使用は、輝度および/またはコントラストに関して接眼レンズの光学性能を強化する一方で、接眼レンズの多層構造に機械的強度および構造的完全性を提供することもできる。
【0036】
シーラントが、シーラントおよび積層ダム内にいかなる間隙も伴うことなく、接眼レンズの外周全体に沿って連続的に適用される場合、接眼レンズの光学性能(例えば、コントラスト、効率等に関して)は、欠陥の蓄積に起因して、経時的に劣化し得る。そのような欠陥は、シーラントおよび/またはダム材料のガス放出を通して生成される化学物質が、接眼レンズ内に存在する化学物質(例えば、光学層の表面における化学物質)と反応するときに、引き起こされ得る。欠陥は、各光学層の光学格子上に経時的に蓄積し、接眼レンズ動作中の光学収差(例えば、二重像、ぼけ、ゴースト像等)につながり得る。さらに、間隙がなければ、光学層は、高度および/または温度変化によって引き起こされる閉じ込められた空気間隙の圧力の差異に起因して、経時的に変形し得る。そのような圧力差は、接眼レンズの内部の層の間および/または接眼レンズの内部と外部との間に現れ得、接眼レンズ構造の実質的な機械的変形を引き起こし得る。
【0037】
実施形態は、ダムおよびシーラントの両方を通した1つ以上の通気間隙を採用し、これは、接眼レンズの内部と外部との間の空気の流動を可能にする。間隙の使用を通して、実施形態は、接眼レンズの外部へのガス放出された化学物質の流動を可能にし、したがって、上記に説明されるような光学格子の汚染を低減させる。間隙はまた、層を横断する空気圧の平衡、および、接眼レンズの内部と外部との間の空気圧の平衡を可能にし、したがって、経時的な圧力差によって引き起こされる機械的変形を低減させるまたは排除する。ダムおよびシーラント内の間隙は、空気流を可能にするために、接眼レンズの外周に沿ったダムおよびシーラント被覆における実質的に同一の場所に提供されることができる。例えば、シーラント内の間隙は、ダム内の間隙と共心であることができる、または、ダム内の間隙と他の態様で少なくとも部分的に重複することができる。いくつかの実施形態では、ダム内の間隙を通した接眼レンズの内部へのシーラントのウィッキングを回避するために、下記にさらに説明されるように、シーラント内の間隙の幅と比較して、ダム内の間隙の幅における差異が、存在してもよい。
【0038】
間隙の有無別の接眼レンズが、試験および比較され、試験は、間隙の使用が、光学層の格子上の欠陥堆積を低減させることに役立ち、したがって、コントラストおよび効率等の光学的主要性能指標(KPI)を改良することを立証した。通気口を伴わない接眼レンズの機械的シミュレーションを通して、接眼レンズの層は、内側および外側を海面レベルまで加圧し、次いで、外側圧力を10000フィート高度における空気圧に設定し、最後に、海面レベルに戻すことによって、95マイクロメートルと同程度に変形し得ることが判定された。この変形は、光学ディスプレイにおいて二重像またはゴースト像を引き起こす光学層の間のクロストークを導入し得る。間隙の使用は、接眼レンズの欠陥堆積および圧力ベースの変形の事例を低減させるまたは防止することによって、接眼レンズ性能を改良する。
【0039】
いくつかの実施形態では、積層ダムおよび縁シール接着剤のためにおよび光学層の表面のために使用される材料は、間隙が存在するとき、他の態様では層の間に起こり得る水分凝縮を回避するために、疎水性であってもよい。積層ダムは、いくつかの実施形態では、指定された高さ(例えば、50ミクロンであるが、光学設計に依存する)のスペーサにわたって分注される硬化性光学糊である。いくつかの実施形態では、硬化性糊は、スペーサビーズ自体を組み込む。スペーサビーズは、屈折率要件および構造要件に合致するために、ガラスまたはポリマーであってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、接眼レンズは、ポリマー糊およびソーダ石灰シリカガラスビーズの懸濁液を備え、ガラスビーズは、空気間隙を維持し、光学デバイスの内部と外部との間のオフセットを維持するために、存在する。オフセットは、ガラスビーズのサイズによって定義され、反りおよび曲がりを減少させ、機械的強度を増加させることによって、層の機械的性質を強化するために存在する。いくつかの実施形態では、積層ダム懸濁液は、室温において70000センチポアズ(cP)に等しいまたは70000センチポアズ(cP)を上回る粘度を有する。いくつかの実施形態では、ソーダ石灰シリカガラスビーズの寸法は、20ミクロンに等しいまたは20ミクロンを上回る。
【0041】
図1は、本開示の実施形態による、例示的接眼レンズ102の上下図の概略図を描写する。この実施例に示されるように、接眼レンズ102は、直交瞳エキスパンダ(OPE)領域104と、射出瞳エキスパンダ(EPE)領域106と、内部結合格子(ICG)領域108とを含む種々の接眼レンズ格子領域を含むことができる。接眼レンズ102は、上記に説明されるように、接眼レンズ102の外周の少なくとも一部の周囲に(縁シールまたは縁シーラントとしても説明される)シーラント114を含むことができる。接眼レンズ102はまた、シーラントが完全に硬化する前に起こり得るシーラント材料のウィッキングを停止させるために、接眼レンズ102の層の間に配列される(ダムとしても説明される)積層ダム116を含むことができる。接眼レンズ102は、シーラント114およびダム116内に(間隙としても説明される)1つ以上の通気間隙110を含むことができ、間隙110は、接眼レンズ102の内部と外部との間の空気の流動を可能にする。そのような流動は、シーラントおよび/またはダム材料の硬化の間に生成されるガスのガス放出118を可能にし、接眼レンズ層の物理的変形を引き起こし得る圧力差の発生を防止することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、接眼レンズ102の外周の一部は、臨界光学経路としても説明される臨界領域112として特徴付けられることができる。臨界経路に沿って、シーラントの存在は、上記に説明されるように、接眼レンズ102の縁に沿った光を吸収し、光学収差を防止する。故に、間隙110は、臨界領域内の間隙が、接眼レンズの中に戻るように反射する光に起因する光学収差を引き起こし得るため、臨界領域内ではない位置における外周に沿って位置することができる。接眼レンズ102は、任意の適した数の間隙110を含むことができ、各間隙110は、適した長さを有し得る。各間隙110は、シーラント内の間隙およびダム内の間隙の両方を含むことができる。間隙110は、ダム116およびシーラント114の両方を通して適正な空気流を提供するために、ダム116およびシーラント114の両方においてほぼ同一の位置および長さであってもよい。いくつかの実施形態では、間隙110の長さは、下記にさらに説明されるように、ダム116とシーラント114との間で若干異なってもよい。
【0043】
図2は、本開示の実施形態による、例示的接眼レンズ102の一部の概略図を描写する。
図2に示される特定の寸法および公差(ミリメートル単位)は、実施例として提供され、実施形態は、示される例示的寸法および公差に限定されない。破線は、シーラント114およびダム116内の間隙110の位置付けの変動を示す。
図2は、シーラント114およびダム116の両方を通した空気の流動を可能にする1つ以上の間隙110を接眼レンズ102が含む実施形態を図示する。いくつかの実施形態では、この実施例に示されるように、シーラント114を通した間隙110の長さは、ダム116を通した間隙110の長さと異なる。例えば、ダム116を通した間隙110の長さは、シーラント114を通した間隙110の長さ未満であり得る。長さの差異は、シーラント114がダム116内の間隙を通して接眼レンズ102の内部へウィッキングすることを阻止するためであり得る。また、示されるように、シーラント114内の間隙110は、接眼レンズ外周の臨界領域の外側の場所において開始されることができる。
【0044】
一実施例では、縁シールおよび積層ダムの間隙は、OPEの上隅から4mm離れて共心である。通気間隙サイズは、3mmであり得、最小1mm~最大5mmで変動することができる。積層通気間隙は、±1mmとして規定される正確度で位置付けられることができ、縁シール通気間隙は、±2mmとして規定される正確度で位置付けられることができる。いくつかの実施形態では、縁シール通気間隙サイズは、積層ダム通気間隙サイズに基づいて判定されることができる。縁シール通気間隙は、シーラントがダム通気間隙の中へ漏出することを防止するために、積層ダム通気間隙の縁から1mmの安全区域を有することができる。縁シールは、(例えば、OPE格子の延長線と鎖線によって描写されるようなガラス縁との交点によって定義される終点を伴う)臨界領域または臨界光学経路内に留まり、臨界領域内の間隙の存在を回避することができる。
【0045】
図3は、本開示の実施形態による、例示的光学デバイス102(例えば、接眼レンズ)の断面概略
図300を描写する。示される図は、例示的接眼レンズの断面である。示されるように、接眼レンズは、複数の層302を含むことができ、複数の層302は、各々、光の特定の波長帯域のための導波管を提供する。例えば、異なる層が、赤色、緑色、または青色光を誘導するように設計されてもよい。縁シーラント114は、縁を通した横断方向における接眼レンズの内部から外部への光漏出310を防止するように試みるために、示されるような接眼レンズの縁に適用されてもよい。縁シーラント114はまた、接眼レンズの内部へ戻るような光の反射を防止してもよい。縁シーラント114は、適切な厚さ306を伴って適用されてもよく、接眼レンズの中へ、層302の間で、適切な深度308まで(ウィッキングを通して)貫通してもよい。接眼レンズは、スタックにおける(例えば、高屈折率)ガラスの複数の層から成ってもよい。ダム116もまた、シーラント114のウィッキングを止めるために使用されることができる。実施例に示されるように、ダム116は、深度308においてシーラント114のウィッキングを止めるために、接眼レンズ102の縁に対して特定の深度308において層302の間に配列されることができる。
【0046】
本明細書に説明される通気間隙は、任意の適したタイプの光学デバイスにおいて使用されることができる。いくつかの実施例では、接眼レンズは、Molecular ImprintsTMによって開発されたジェットおよびフラッシュインプリント技術(J-FILTM)を少なくとも部分的に使用して作成されてもよい。J-FIL技法は、接眼レンズのガラスの層上に回折格子を作成し、導波管ディスプレイを作成するために使用されてもよい。各層は、J-FILを使用してその表面上に作成されるポリマー格子を伴うガラスの薄層であってもよい。回折格子は、接眼レンズの基本的動作機能性を提供し得る。回折格子が大きくて幅広いガラス層上に形成されると、ガラス層は、接眼レンズの形状にレーザ切断されてもよい。ガラスの各層は、異なる色であってもよく、複数の深度平面が、存在してもよい。多数の平面は、接眼レンズを使用するユーザに対してより良好な仮想体験を提供し得る。層は、シーラントポリマー(例えば、グルードットまたはライン)を使用してスタックされてもよく、スタック全体が、シーラントを使用してシールされてもよい。層の間の空気間隙は、接眼レンズの光学性能のために保全されてもよい。層の間の間隙は、制御された寸法(例えば、略均一の幅)を有してもよい。縁シーラントポリマーは、外側環境からスタックおよび空気間隙をシールするために、層状構造の縁の周囲に適用されてもよい。縁シール糊はまた、外側粒子汚染を防止しかつ/または水分蓄積の可能性を低減させる一方で、構造の機械的完全性を確実にするための物理的係止を提供する。そのようなシールがなければ、層は、崩壊し、相互に剥離し得る。層の間の間隙は、所望の光学機能性を達成するために、任意の適した幅を有し得る。
【0047】
シーラントの使用は、接眼レンズ層の縁に当たる迷光を吸収することによって、高コントラスト接眼レンズの作成を可能にする。シーラントはまた、接眼レンズの機械的間隙および共平面性のための構造的完全性を提供する(例えば、「固定する」)。接眼レンズは、ガラスまたは他の材料の任意の適した数の層302を有してもよく、各層は、種々の周波数の光の通過を可能にするための導波管として作用してもよい。層は、特定の色の光を伝搬するように、特定の波長のために構成されてもよく、接眼レンズは、導波管を通した光が知覚され得るいくつかの深度平面を作成するために、特定の光学電力のために構成されてもよい。例えば、導波管層の第1のセットは、第1の深度平面において、赤色、緑色、および青色のための層を含んでもよく、導波管層の第2のセットは、第2の深度平面に対応する赤色、緑色、および青色光のための層の第2のセットを含んでもよい。色の順序は、接眼レンズにおいて所望の光学効果を達成するために、異なる深度平面において異なるように配列されてもよい。いくつかの実施形態では、単一の(例えば、青色)層が、複数の深度平面を被覆してもよい。いくつかの実施例では、縁シーラントは、糊、樹脂、ポリマーシーラント、インク、および/または他の粘性材料であってもよい。縁シーラントは、黒色であってもよい。多層接眼レンズの縁を黒色にすることは、縁に衝突する光の吸収を引き起こし得、かつ/または、縁に衝突する光の低減された反射を提供し得る。
【0048】
図4は、本開示の実施形態による、接眼レンズ内の例示的ダム配列を描写する。示される単位は、ミクロンである。例えば、ガラスの縁からのシーラントの厚さは、80~150ミクロンであり得、シーラントのウィッキング深度は、ウィッキングがダムによって止められるまで、350ミクロンであり得る。ダムは、500ミクロン幅であり、650ミクロン幅である間隙によって接眼レンズの格子境界から分離されることができる。ガラスの縁と格子境界との間の距離は、1500ミクロン(1.5mm)であり得る。他の適した寸法もまた、採用されることができる。
【0049】
図5は、通気口の不在下等の接眼レンズ500の層の例示的変形を示す概略図を描写する。例えば、接眼レンズは、25ミクロンの間隔と、9つの深度平面と、2つのカバーガラス層と、合計11個の層とを伴う250ミクロンの光学層を含むことができる。試験条件では、接眼レンズの内側および外側の環境は、最初に、海面レベルの圧力まで加圧された。外側空気圧は、10000フィート高度における空気圧に設定され、次いで、海面レベルの圧力に戻された。その結果、圧力差は、最大95ミクロンの面外変形である、接眼レンズ内の層のある程度の面外変形を引き起こした。
【0050】
図6Aおよび
図6Bは、本開示の実施形態による、それぞれ、通気口の有無別の接眼レンズ欠陥を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6Aの実施例では、画像600は、接眼レンズを摂氏65度および95%の相対湿度に暴露する1000時間の熱および湿度試験後の、通気口を伴わない接眼レンズ領域(例えば、OPEとEPEとの間の領域)の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図6Bにおける画像602は、類似する試験条件に曝された、通気口を含む接眼レンズ内の接眼レンズ領域のSEM画像を示す。示されるように、通気口の存在は、接眼レンズ内の汚染欠陥の発生を劇的に低減させ、かつ/または排除する。
【0051】
本明細書は、多くの具体的詳細を含有するが、これらは、本開示のまたは請求され得るものの範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の実施形態と関連付けられる特徴の実施例として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈において本明細書に説明されるある特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて実装されてもよい。逆に、単一の実施形態の文脈において説明される種々の特徴はまた、複数の実施形態において別個に、または任意の適した副次的組み合わせにおいて実装されてもよい。さらに、特徴が、ある組み合わせにおいて作用するものとして上記に説明され、さらには最初にそのように請求され得るが、請求される組み合わせからの1つ以上の特徴は、いくつかの実施例では、組み合わせから削除されてもよく、請求される組み合わせは、副次的組み合わせまたは副次的組み合わせの変形例を対象としてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態が、説明された。それにもかかわらず、種々の修正が、本開示の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解されたい。例えば、上記に示される種々の構造は、要素が、再配列され、異なるように位置付けられ、異なるように配向され、追加され、かつ/または除去されて、使用されてもよい。故に、他の実施形態も、以下の請求項の範囲内である。