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特開2023-171461半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171461
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
C30B29/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171415
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021092005の分割
【原出願日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】109120678
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】110101834
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521237963
【氏名又は名称】盛新材料科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAISIC MATERIALS CORP.
【住所又は居所原語表記】NO.5,ZIQIANG 1ST RD.,ZHONGLI DIST.,TAOYUAN CITY 320,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】馬 代良
(72)【発明者】
【氏名】虞 邦英
(72)【発明者】
【氏名】林 柏丞
(57)【要約】
【課題】 半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】 本開示は、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法であって:半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクを提供することであって、半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクが第1のシリコン空格子点濃度を有し、第1のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超えることと;半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクを微細化して、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を得ることであって、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子が第2のシリコン空格子点濃度及び第1の粒径を有し、第2のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超え、第1の粒径が50μm~350μmの間であることと;半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させて、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末を得ることであって、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末が第3のシリコン空格子点濃度及び第2の粒径を有し、第3のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超え、第2の粒径が1μm~50μmの間であることと、を含む製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのポリタイプの単結晶を含む高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハであって、前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハが、内部にシリコン空格子点を有し、シリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超える、高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項2】
前記シリコン空格子点濃度が5E13cm^-3未満である、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項3】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハの抵抗率が1E7Ω・cmを超える、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項4】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり3未満である、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項5】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり2未満である、請求項4に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項6】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり1未満である、請求項5に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項7】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり0.4未満である、請求項6に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項8】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり0.1未満である、請求項7に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項9】
前記1つのポリタイプの単結晶が、炭化ケイ素の3C、4H、6H、及び15Rの多形から選択される、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項10】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハの直径が90mm以上である、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項11】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハの直径が200mm以下である、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項12】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハが正軸配向を有する、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項13】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハが軸外し配向を有する、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項14】
前記軸外し配向が4°、3.5°、及び2°から選択される、請求項13に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項15】
1つのポリタイプの単結晶を含む種結晶の成長表面上で、ケイ素及び炭素を含む気体を堆積することによって成長する高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶であって、前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶が、内部にシリコン空格子点を有し、シリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超える、高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶。
【請求項16】
前記シリコン空格子点濃度が5E13cm^-3未満である、請求項15に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶。
【請求項17】
1つのポリタイプの単結晶を含む半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料であって、前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料が、内部にシリコン空格子点を有し、シリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超える、半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料。
【請求項18】
前記シリコン空格子点濃度が5E13cm^-3未満である、請求項17に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料。
【請求項19】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の厚さが10μm以上である、請求項17に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料。
【請求項20】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の厚さが5cm以下である、請求項17に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料。
【請求項21】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の直径が90mm以上である、請求項17に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料。
【請求項22】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の直径が200mm以下である、請求項17に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料。
【請求項23】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の抵抗率が1E7Ω・cmを超える、請求項17に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料。
【請求項24】
前記1つのポリタイプの単結晶が、炭化ケイ素の3C、4H、6H、及び15Rの多形から選択される、請求項17に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料。
【請求項25】
請求項17に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料から加工される半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末であって、前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超える、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末。
【請求項26】
前記シリコン空格子点濃度が5E13cm^-3未満である、請求項25に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末。
【請求項27】
半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法であって:
半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクを提供することであって、前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクが第1のシリコン空格子点濃度を有し、前記第1のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超えることと;
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクを微細化して、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を得ることであって、前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子が第2のシリコン空格子点濃度及び第1の粒径を有し、前記第2のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超え、前記第1の粒径が50μm~350μmの間であることと;
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させて、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末を得ることであって、前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末が第3のシリコン空格子点濃度及び第2の粒径を有し、前記第3のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超え、前記第2の粒径が1μm~50μmの間であることと、
を含む、製造方法。
【請求項28】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させるステップが、500g~1000gの間の量の前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を用いて実施される、請求項27に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項29】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させるステップが100℃未満の温度で実施される、請求項27に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項30】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させるステップが50%未満の相対湿度で実施される、請求項27に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項31】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させるステップが200分~600分実施される、請求項27に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項32】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させるステップが粉砕機で実施される、請求項27に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項33】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクを微細化するステップが4軸シュレッダーで実施される、請求項27に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項34】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクの直径が90mmを超える、請求項27に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項35】
前記半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクの直径が200mm以下である、請求項27に記載の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2021年1月18に出願された台湾特許出願第110101834号、及び2020年6月18日に出願された台湾特許出願第109120678号(これらの開示全体が参照により本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
[0002] 本出願は、炭化ケイ素粉末の製造方法の技術分野に関し、特に、高シリコン空格子点濃度を有する半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 半導体材料は、3段階の発展を経験してきた。第1世代は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などの基本機能材料に関し;第2世代は、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)などが代表的である、2つ以上の元素から構成される化合物半導体材料に関し;第3世代は、窒化ガリウム(GaN)及び炭化ケイ素(SiC)などの化合物半導体材料に関する。第3世代の半導体材料は、広いエネルギーバンドギャップを有する材料であり、そのため高周波数、高電圧抵抗率、及び高温抵抗率の利点を有する。第3世代の半導体材料は、エネルギー消費軽減のために良好な導電性及び放熱を有する。第3世代の半導体材料を構成する元素の体積は比較的小さく、そのためパワー半導体に適している。しかし、炭化ケイ素の生産条件の制御は困難であり、そのため炭化ケイ素ウエハの大量生産が困難となる。したがって、最終ウエハ及び用途の開発に直接影響が生じる。
【0004】
[0004] 他方、半導体産業におけるウエハとしての使用に加えて、炭化ケイ素材料は、生物医学産業における蛍光材料として使用することもできる。例えば、半絶縁性単結晶炭化ケイ素は、ルミネッセンス特性を有し、トラッキング検出ターゲットとして使用することができる。しかし、ルミネッセンス特性は、炭化ケイ素粉末の表面形態の影響を受ける。この場合、湿式プロセス(例えば、ダイヤモンドワイヤ切断を使用)によって得られる炭化ケイ素粉末は、粗い表面を有し、不純物で容易にドープされる。凝集のために、さらに粒度が増加することがある。結果として、炭化ケイ素粉末の発光効率は急激に低下する。したがって、安定な発光作用の実現は困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] 前述の従来技術の欠点を考慮して、本出願は、炭化ケイ素粉末の製造方法、特に高シリコン空格子点濃度を有する半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 本出願の実施形態において開示される半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法によると、この製造方法は:半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクを提供することであって、半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクが第1のシリコン空格子点濃度を有し、第1のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超えることと;半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルクを微細化して、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を得ることであって、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子が第2のシリコン空格子点濃度及び第1の粒径を有し、第2のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超え、第1の粒径が50μm~350μmの間であることと;半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させて、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末を得ることであって、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末が第3のシリコン空格子点濃度及び第2の粒径を有し、第3のシリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超え、第2の粒径が1μm~50μmの間であることとを含む。
【0007】
[0007] 本出願のその他の利点は、以下の記述及び図を用いてより詳細に説明される。
【0008】
[0008] しかし、この概要は、本発明のすべての態様及び実施形態を含まない場合があることと、この概要が、なんらかの方法での制限又は限定を意味するものではないことと、本明細書に開示される本発明が、それらに対する明らかな改善及び修正を含むものと当業者によって理解されるであろうこととを理解すべきである。
【0009】
[0009] 本明細書に記載の図は、本出願のさらなる理解のために使用され、本出願の一部を構成している。本出願の代表的な実施形態及び記述は、本出願を説明するために使用され、本出願を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]本出願による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶を成長させるための成長システムの概略図である。
図2】[0011]本出願の第1の実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶の抵抗率の測定結果である。
図3】[0012]本出願の第1の実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶のマイクロパイプ密度の概略図である。
図4】[0013]本出願の第1の実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶の電子常磁性共鳴スペクトルである。
図5】[0014]本出願の第2の実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶の抵抗率の測定結果である。
図6】[0015]本出願の第2の実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶のマイクロパイプ密度の概略図である。
図7】[0016]本出願の第2の実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶の電子常磁性共鳴スペクトルである。
図8】[0017]本出願の第2の実施形態による炭化ケイ素ウエハのシリコン空格子点濃度の概略図である。
図9】[0018]本出願の第2の実施形態による炭化ケイ素ウエハのフォトルミネッセンススペクトルである。
図10】[0019]本出願の第2の実施形態による炭化ケイ素ウエハのフォトルミネッセンススペクトルである。
図11】[0020]本出願の第1の実施形態によるPL/TO比の概略図である。
図12】[0021]本出願の第3の実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度の概略図である。
図13】[0022]本出願の第4の実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度の概略図である。
図14】[0023]本出願の第5の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の各スライスのシリコン空格子点濃度の概略図である。
図15】[0023]本出願の第5の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の各スライスのシリコン空格子点濃度の概略図である。
図16】[0023]本出願の第5の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の各スライスのシリコン空格子点濃度の概略図である。
図17】[0023]本出願の第5の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の各スライスのシリコン空格子点濃度の概略図である。
図18】[0024]本出願の第6の実施形態の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の加工の概略図である。
図19】[0025]本出願の第6の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素のシリコン空格子点濃度の概略図である。
図20】[0026]本出願の第6の実施形態の半絶縁性単結晶炭化ケイ素残留物の各スライスのシリコン空格子点濃度の概略図である。
図21】[0027]本出願の第6の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の波長と光度との間の関係の概略図である。
図22】[0028]本出願の第7の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法のフローチャートである。
図23】[0029]本出願の第8の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子の粒度分析図である。
図24】[0030]本出願の第8の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の粒度分析図である。
図25】[0030]本出願の第8の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の粒度分析図である。
図26】[0030]本出願の第8の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の粒度分析図である。
図27】[0030]本出願の第8の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の粒度分析図である。
図28】[0030]本出願の第8の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の粒度分析図である。
図29】[0030]本出願の第8の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の粒度分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0031] 本出願の目的、技術的解決法、及び利点をより明確にするために、本出願の技術的解決法が、本出願の特定の実施形態及び図とともに、明確及び徹底的に記載される。明らかに、記載される実施形態は、すべての実施形態ではなく、本出願の実施形態の一部のみである。本出願における実施形態に基づいて、創造的作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施形態が、本開示の保護範囲内となる。
【0012】
[0032] 以下の記述は、本発明の実施が意図される最良の形態である。この記述は、本発明の一般的原理を説明する目的で行われ、限定を意味するものと解釈すべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項を参照することによって最も良く決定される。
【0013】
[0033] 特定の構成要素を意味するために、特定の用語が、この記述及び以下の請求項全体にわたって使用される。当業者が認識しているように、製造業者は、1つの構成要素を異なる名称で呼んでいる。本文献は、機能ではなく名称が異なる構成要素の間で区別することは意図しない。「実質的な/実質的に」は、許容される誤差範囲内で、当業者が、基本的な技術的効果を実現するために、ある誤差範囲内で技術的問題を解決できることを意味する。
【0014】
[0034] さらに、「含む」(include)、「含む」(contain)という用語、及びそれらのあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことが意図される。したがって、一連の要素を含むプロセス、方法、物体、又は装置は、これらの要素のみを含むのではなく、明示的には指定されない他の要素も含み、又はプロセス、方法、物体、又は装置の固有の要素を含むことができる。さらなる限定が行われない場合、「1つの...を含む」によって限定される要素は、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置中に別の同じ要素が存在することを排除するものではない。
【0015】
[0035] 以下の実施形態では、本発明全体にわたって同じ又は類似の要素を意味するために同じ参照番号が使用される。
【0016】
[0036] 本出願は、物理的気相輸送(PVT)によって高純度単結晶系中で成長する、大型、高抵抗率、及び低欠陥の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料を開示する。高純度結晶成長原材料のSi/C比及び粒度分布、並びに結晶成長プロセス中の結晶成長温度及び時間を制御することによって、システムは炭素リッチ(Cリッチ)環境になる。浅い準位の伝導性元素が不十分な状態では、シリコン空格子点の固有の欠陥が結晶中に発生することがあり、シリコン空格子点濃度を制御することができる。ウエハを半絶縁性にするために、固有の欠陥を用いて、結晶の抵抗率を増加させる。さらに、高純度原材料のために結晶成長プロセス中に結晶中に不純物が導入される可能性はなくなる。したがって、本出願は、3cm^-2未満のマイクロパイプ欠陥を有する高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料を開示する。
【0017】
[0037] 本明細書において言及される「大型」は、少なくとも4インチ、又は4インチ~6インチの直径、及び少なくとも350μmの厚さを有する高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハを意味する。「高純度」は、成長した結晶に使用される原材料の純度が99.99%を超えることを意味する。「高抵抗率」は、室温において抵抗率が1E7Ω・cmを超える又は少なくとも1E7Ω・cmであることを意味する。さらに、結晶は、本明細書の実施形態における炭化ケイ素成長システムによって製造される炭化ケイ素結晶を意味し、炭化ケイ素結晶の切断後の最終製品は一般にウエハと呼ばれる。
【0018】
[0038] 本出願の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶又は炭化ケイ素ウエハの高抵抗率特性は、結晶又はウエハ中の固有の欠陥(シリコン空格子点)の濃度によって制御される。シリコン空格子点は結晶成長プロセス中に形成される。追加のアニーリングプロセス又は中性子衝撃プロセスは不要であり、これによって製造プロセスが簡略化される。
【0019】
[0039] 図1を参照すると、これは、本出願による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶を成長させるための成長システムの概略図である。この図に示されるように、成長システムは、るつぼ2、断熱材料3、及びヒーター7を含む。るつぼ2は、材料源6を介して成長する種結晶1を収容するために使用される。断熱材料3は、るつぼ2の外側に配置される。図に示される断熱材料3は、るつぼ2の外側を覆っているが、温度を維持できるのであれば、断熱材料3がるつぼ2の外側を実質的に覆う必要はない。したがって、この図は単なる例である。ヒーター7は熱源を提供するために使用される。図中に示されるヒーター7の数は複数であるが、システムの構成によってはヒーター7の数は1つであってもよい。図中のヒーター7の数は、単に例示を目的としており、ヒーター7の実際の数を限定するものではない。高周波ヒーター又は抵抗加熱ヒーターをヒーター7として使用することができる。より具体的な一実施形態では、加熱コイル又は加熱抵抗ワイヤ(ネット)をヒーター7として使用することができる。
【0020】
[0040] ホルダー4は、るつぼ2内部の上方に配置され、ホルダー4は、種結晶1を固定するために使用される。材料源6は、るつぼ2の下に配置することができ、種結晶1と材料源6との間の空間を炭化ケイ素結晶の成長領域5として使用することができる。種結晶1が配置される領域を種結晶領域として規定することができ、材料源6が配置される領域を材料源領域として規定することができる。したがって、空のるつぼ2は、種結晶領域、材料源領域、及び成長領域を内部に有する。非限定的な一実施形態では、るつぼ2は黒鉛るつぼであってよく、断熱材料3は、黒鉛ブランケット又は多孔質断熱炭素材料であってよい。
【0021】
[0041] 実施形態では、種結晶は炭化ケイ素であってよい。本出願において使用される種結晶は、対応するサイズ以上の単結晶を成長させるために、厚さが350μm以上であり直径が4インチ~6インチ以上である単結晶ウエハであってよい。単結晶ウエハは炭化ケイ素であってよい。るつぼ中の材料源領域は炭化ケイ素であってよい。材料源は、粉末、顆粒、又は塊状であってよく、99.99%を超える純度を有することができる。材料源の結晶相はα又はβであってよく、ケイ素/炭素の比率は0.95~1.05であってよい。
【0022】
[0042] 温度分布、雰囲気流と、るつぼ2の構造、断熱材料3の構造、及びヒーター7を有するるつぼ2中の材料源の昇華プロセスとを制御することによって、昇華した気体分子は移動して種結晶1(ウエハ)上に堆積して、炭化ケイ素結晶が形成される。成長プロセスの一実施形態では、るつぼ底部と種結晶領域との間の温度差は10℃~300℃の範囲内で制御され、アルゴンガスの流量は100sccm~1000sccmの範囲内で制御され、圧力は1torr~200torrの範囲内で制御され、結晶化中の種結晶の温度範囲は2000℃~2270℃の間で制御される。材料源の純度及び種類、並びに成長の温度範囲及び時間の制御が最も重要である。システム内部の伝導性要素が消費された後、結晶の電気的性能は、結晶内部に形成される固有の欠陥によって非常に支配されうる。
【0023】
[0043] 上記実施形態の成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は、Si及びCを含む気体材料を種結晶の表面上に堆積することによって成長させる。高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は、1つのポリタイプの単結晶を含む。高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は、内部にシリコン空格子点を有し、シリコン空格子点濃度は少なくとも5E11cm^-3を超え5E13cm^-3未満である。従来技術では、炭化ケイ素ウエハ中のシリコン空格子点濃度は、一般に約2E11cm^-3~3E11cm^-3である。
【0024】
[0044] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は90mm以上の直径を有する。
【0025】
[0045] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶の直径は200mm以下である。
【0026】
[0046] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は1E7Ω・cmを超える抵抗率を有する。
【0027】
[0047] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は1平方センチメートル当たり3未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0028】
[0048] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は1平方センチメートル当たり2未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0029】
[0049] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は1平方センチメートル当たり1未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0030】
[0050] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は1平方センチメートル当たり0.4未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0031】
[0051] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は1平方センチメートル当たり0.1未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0032】
[0052] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶は、炭化ケイ素の3C、4H、6H、及び15Rの多形から選択される1つのポリタイプの単結晶を含み、現在のところ4H多形が最も好ましい。ウエハは、炭化ケイ素の3C、4H、6H、及び15Rの多形から選択することができ、現在のところ4H多形が最も好ましい。得られるウエハは、正軸配向(positive axis orientation)など軸に沿って配向し、又は種々の軸外し配向である。例えば(限定するものではないが)、ウエハは4°、3.5°、及び2°から選択される。
【0033】
[0053] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶の厚さは少なくとも8mmである。
【0034】
[0054] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶の厚さは8mm~30mmである。
【0035】
[0055] 以下の実施形態は、本出願に開示される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素結晶の特定の製造方法を示している。高純度の成長材料及び成分が使用され、プロセスウィンドウ及び時間が調節される物理的気相輸送(PVT)によって、製造方法は、結晶成長プロセス中に不純物及び伝導性元素が結晶に入るのを効果的に阻止するだけでなく、結晶の品質を改善する。温度場の最適化及びプロセス制御によって、結晶成長表面全体がより平坦になり、結晶の固有欠陥濃度が増加する。それによって4~6インチの炭化ケイ素結晶の1E7Ω・cmの抵抗率が実現される。
【0036】
[0056] 第1の実施形態は、図1の成長システムを用いることによる6インチ単結晶炭化ケイ素結晶の成長を示す。この実施形態に使用される材料は、99.99%以上の純度を有する高純度炭化ケイ素粉末である。平均粒度は5mm~20mmである。初期のケイ素/炭素比は1である。結晶の成長後、残存する材料のケイ素/炭素比は0.85まで低下する。
【0037】
[0057] 前述の炭化ケイ素源を用いてPVT法によって4H-SiC単結晶が製造される。成長プロセスは、高温真空誘導炉中の黒鉛るつぼ中で行われる。種結晶の成長温度は約2100℃である。システムのキャリアガスとしてArが使用される。システムの結晶成長中の圧力は約5torrであり、成長時間は150時間である。約500μmの炭化ケイ素単結晶ウエハが種結晶として使用される。
【0038】
[0058] 最初に、空気抽出プロセスを行い、4H-SiC種結晶をホルダーに固定する。次に、るつぼシステム中の空気及びその他の不純物を除去するために空気を抽出する。空気の抽出後、加熱プロセスを行う。加熱プロセス中、補助ガスとして不活性ガスのArを加え、加熱コイルを使用してシステム全体を加熱する。約2100℃まで加熱し、最長150時間連続的に成長させる。第1の実施形態のプロセス条件によって、凸型の界面形状を有する6インチ単結晶炭化ケイ素ボウルを製造することができ、結晶成長速度は100~250μm/時を達成することができる。
【0039】
[0059] 成長後の結晶の抵抗率、マイクロパイプ密度、不純物元素、又はシリコン空格子点を測定することができる。成長後の結晶をスライスし、研磨して、ウエハが得られる。アニーリングなしのウエハの抵抗率を測定することができる。6インチウエハの中央における直径140mmの領域を測定すると、図2中に示されるように抵抗率値はすべて1E7Ω・cmを超える。
【0040】
[0060] X線トポグラフィーを用いて6インチウエハを分析する。結果として、マイクロパイプ数は10である。さらに、6インチのマイクロパイプの全体の密度は、マイクロパイプの数/6インチウエハの面積であり、これは10/(7.5×7.5×3.1416)=10/176.75=0.056である。すなわち、この実施形態のマイクロパイプ密度は、図3中に示されるように1平方センチメートル当たり0.1未満である。
【0041】
[0061] グロー放電質量分析計(GDMS)及び二次イオン質量分析(SIMS)を用いて6インチウエハの不純物元素を分析すると、以下の表の結果を得ることができる。ここで、N元素はSIMSによって測定され、他の元素はGDMSによって測定される。ppm及びイオン濃度の2つの単位が示されている。結晶中の伝導性不純物元素の含有量は5E15cm^-3未満である。
【0042】
【表1】
【0043】
[0062] 電子常磁性共鳴(EPR)を用いて6インチウエハを分析する。この分光法によって、結晶中の主要な欠陥がシリコン空格子点であることが示される。図4中に示されるように、シリコン空格子点濃度を示すために、光学検査の結果が使用される。シリコン空格子点濃度は5.22E11cm^-3~1.02E12cm^-3である。
【0044】
[0063] 第2の実施形態は、図1の成長システムを用いることによる4インチ単結晶炭化ケイ素ボウルの成長を示す。この実施形態に使用される材料は、99.99%以上の純度を有する高純度炭化ケイ素粉末である。平均粒度は100mm~30mmである。初期のケイ素/炭素比は1である。結晶の成長後、残存する材料のケイ素/炭素比は0.87まで低下する。
【0045】
[0064] 前述の炭化ケイ素源を用いてPVT法によって4H-SiC単結晶が製造される。成長プロセスは、高温真空誘導炉中の黒鉛るつぼ中で行われる。種結晶の成長温度は約2180℃である。システムのキャリアガスとしてArが使用される。システムの結晶成長中の圧力は約5torrであり、成長時間は200時間である。約500μmの炭化ケイ素単結晶ウエハが種結晶として使用される。
【0046】
[0065] 最初に、空気抽出プロセスを行い、4H-SiC種結晶をホルダーに固定する。次に、るつぼシステム中の空気及びその他の不純物を除去するために空気を抽出する。空気の抽出後、加熱プロセスを行う。加熱プロセス中、補助ガスとして不活性ガスのArを加え、加熱コイルを使用してシステム全体を加熱する。約2100℃まで加熱し、最長150時間連続的に成長させる。第2の実施形態のプロセス条件によって、凸型の界面形状を有する6インチ単結晶炭化ケイ素ボウルを製造することができ、結晶成長速度は100~250μm/時を達成することができる。
【0047】
[0066] 成長後の結晶の抵抗率、マイクロパイプ密度、不純物元素、又はシリコン空格子点を測定することができる。成長後の結晶をスライスし、研磨して、ウエハが得られる。アニーリングなしのウエハの抵抗率を測定することができる。6インチウエハの中央における直径140mmの領域を測定すると、図5中に示されるように抵抗率値はすべて1E7Ω・cmを超える。
【0048】
[0067] X線トポグラフィーを用いて6インチウエハを分析する。結果として、マイクロパイプ数は1である。さらに、4インチのマイクロパイプの全体の密度は、マイクロパイプの数/4インチウエハの面積であり、これは1/(5×5×3.1416)=1/78.54=0.012である。すなわち、この実施形態のマイクロパイプ密度は、図6中に示されるように1平方センチメートル当たり0.02未満である。
【0049】
[0068] グロー放電質量分析計(GDMS)及び二次イオン質量分析(SIMS)を用いて6インチウエハの不純物元素を分析すると、以下の表の結果を得ることができる。ここで、N元素はSIMSによって測定され、他の元素はGDMSによって測定される。ppm及びイオン濃度の2つの単位が示されている。結晶中の伝導性不純物元素の含有量は5E15cm^-3未満である。
【0050】
【表2】
【0051】
[0069] 電子常磁性共鳴(EPR)を用いて4インチウエハを分析する。この分光法によって、結晶中の主要な欠陥がシリコン空格子点であることが示される。図7中に示されるように、シリコン空格子点濃度を示すために、光学検査の結果が使用される。シリコン空格子点濃度は7.07E12cm^-3である。
【0052】
[0070] 第2の実施形態の結晶を切断し、図8中に示されるように、種々の位置においてスライスのシリコン空格子点濃度を分析する。一例として図1の成長システムを採用すると、合計20のスライスが切断され、20のスライスのそれぞれが、図8の横軸上の通し番号に対応する。ここで種結晶に最も近いスライスの通し番号が1である。種結晶から成長表面まで、それぞれのシリコン空格子点濃度はそれぞれ、1.9E12cm^-3、7E12cm^-3、5.9E12cm^-3、及び3.3E12cm^-3である。
【0053】
[0071] 上記実施形態による高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは、1つのポリタイプの単結晶を含む。高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは、内部にシリコン空格子点を有し、シリコン空格子点濃度は少なくとも5E11cm^-3を超え、5E13cm^-3未満である。
【0054】
[0072] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは90mm以上の直径を有する。
【0055】
[0073] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハの直径は200mm以下である。
【0056】
[0074] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは1E7Ω・cmを超える抵抗率を有する。
【0057】
[0075] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは1平方センチメートル当たり3未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0058】
[0076] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは1平方センチメートル当たり2未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0059】
[0077] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは1平方センチメートル当たり1未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0060】
[0078] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは1平方センチメートル当たり0.4未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0061】
[0079] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは1平方センチメートル当たり0.1未満のマイクロパイプ密度を有する。
【0062】
[0080] 一実施形態では、上記実施形態により形成される高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハは、炭化ケイ素の3C、4H、6H、及び15Rの多形から選択される1つのポリタイプの単結晶を含み、現在のところ4H多形が最も好ましい。ウエハは、炭化ケイ素の3C、4H、6H、及び15Rの多形から選択することができ、現在のところ4H多形が最も好ましい。得られるウエハは、正軸配向など軸に沿って配向し、又は種々の軸外し配向である。例えば(限定するものではないが)、ウエハは4°、3.5°、及び2°から選択される。
【0063】
[0081] 本出願によるウエハは、高周波数パワーデバイス、高出力デバイス、高温デバイス、光電子デバイス、及びIII族窒化物の堆積に適している。
【0064】
[0082] 本出願によるウエハは、単一光子光源、すなわち量子コンピュータの集積回路基板として適している。
【0065】
[0083] 図7を参照すると、第2の実施形態の電子常磁性共鳴(EPR)スペクトルが示されている。試料を5.5cm×7mmのサイズに切断し、9.70396×1E9Hzのマイクロ波を照射した。このスペクトル中、炭化ケイ素ウエハでは、300Kの温度において3600.70343Gでゼロ点が生じる。式hν=gμB(h:プランク定数、ν:周波数;g:g因子;μ:ボーア磁子;B:磁界)により計算すると、実施例2のNo.11ウエハのg因子は2.00343である。これはシリコン空格子点が炭化ケイ素中に含まれることを意味する(シリコン空格子点の信号はg=2.0032±0.0004である)。
【0066】
[0084] 図10を参照すると、これは第2の実施形態のウエハのフォトルミネッセンススペクトルである。幾つかのラマン信号、例えばラテラル光学モードは、ドーピングの濃度及び空格子点の濃度に対して敏感ではない。785nmのレーザー励起の場合、これは851nmの波長におけるLOモードであり、838nmの波長における4H-SiCのTOモードである。図9中、第2の実施形態のNo.19ウエハにおけるフォトルミネッセンスの、LOモードにおけるラマン信号に対する比(比(PL/LO))は5.1である。したがって、第2の実施形態のシリコン空格子点密度は約5.1÷0.7=7.29(×1E12cm^-3)である。実際には、LOモードのピークの強度及び端数はドーピング濃度に大きく影響され、(PL/LO)によるSiCの空格子点密度の予測は困難である。異なる抵抗率を有するSiCを測定するためには、異なるウエハのその安定性及びフォトルミネッセンスとしての同じ測定領域が理由で、TOモードのフォトルミネッセンス信号が、シリコン空格子点濃度の測定に使用される。図9中、第2の実施形態のフォトルミネッセンスの、TOモードにおけるラマン信号に対する比(比(PL/TO))は4.50である。結果として、4H-SiC中のシリコン空格子点密度は、次式によって計算することができる:V_Siの密度=PL/TO×7.29÷4.47=PL/TO×1.63。PL/TO比は、対応する励起光のピークを、励起スペクトルのTOモードにおけるラマン散乱ピーク(840nm付近)で割ったものである。したがって、シリコン空格子点のエレクトロルミネッセンスを発生させる単位格子当たりのシリコン空格子点密度は、(1PL/TO→1.630×10^12/cm^3)と計算することができる。
【0067】
[0085] 第1の実施形態を同じ方法で試験すると、このシリーズの最大平均空格子点密度は3.26×1E12cm^-3であった。
【0068】
[0086] 図11は、第1の実施形態のPL/TOの概略図である。一例として第1の実施形態を採用して、9つの測定性が選択される。PL/TO比が図中に示され、9つの測定点(A、B、C、D、E、F、G、H、及びI)のPL/TO比、シリコン空格子点濃度、及び抵抗率値は以下の通りである。
【0069】
【表3】
【0070】
[0087] 図12は、本出願の第3の実施形態の概略図であり、その直径は60mmである。図13は、本出願の第4の実施形態の概略図であり、その直径は120mmである。図12及び13は、マイクロパイプ密度(MPD)を示している。図中、炭化ケイ素ウエハは複数の正方形に分割され、正方形中の番号はマイクロパイプの数を意味する。第3の実施形態におけるマイクロパイプの数は60である。ウエハの面積で割ると、マイクロパイプ密度を2.1/cm^2として得ることができる。第4の実施形態におけるマイクロパイプの数は56である。ウエハの面積で割ると、マイクロパイプ密度を0.5/cm^2として得ることができる。
【0071】
[0088] 本出願の高純度結晶成長システムでは、高純度結晶成長原材料のSi/C比及び粒度分布、並びに結晶成長プロセス中の結晶成長温度及び時間を制御することによって、システムは炭素リッチ(Cリッチ)環境になる。浅い準位の伝導性元素が不十分な状態では、シリコン空格子点の固有の欠陥が結晶中に発生することがあり、シリコン空格子点濃度を制御することができる。ウエハを半絶縁性にするために、固有の欠陥を用いて、結晶の抵抗率を増加させる。
【0072】
[0089] 第5の実施形態は、図1の成長システムを用いることによる6インチ単結晶炭化ケイ素バルク材料の成長を示す。この単結晶炭化ケイ素バルク材料を第1~第4の実施形態で言及される結晶及びウエハの原材料として使用することができる。言い換えると、第1~第4の実施形態で言及される結晶及びウエハは、この実施形態のバルク材料から、又はこの実施形態と類似の方法で得られるバルク材料から加工することができる。例えば、炭化ケイ素の原材料を昇華させ、又は気相炭素源をケイ素源と反応させ、次にそれらを種結晶上に堆積させ、炭化ケイ素バルク材料に成長させる。堆積又は成長の時間が短い場合、バルク材料の厚さは10μm、20μm、又は30μmとなることができ、それらの形状は薄膜に類似のものとなる。堆積又は成長の時間が増加すると、バルク材料の厚さは8mm~3cmの間で徐々に増加し、大型の結晶が形成される。この結晶は、上記実施形態に言及される結晶になることができる。さらに、バルク材料の厚さは10μm~5cmとなることができ、薄いものは薄膜と呼ばれ、厚いものは結晶と呼ばれる。さらに、このバルク材料は、半導体プロセスによってウエハに加工することもできる。バルク材料は、上記実施形態のウエハ又は結晶の原材料として使用することができるが、以下にさらに説明される炭化ケイ素粉末の原材料としても使用することができる。
【0073】
[0090] この実施形態では、半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料はPVT法によって製造され、成長プロセスは、高温真空誘導炉中の黒鉛るつぼ中で行われる。このようにして、4H-SiCの単結晶を得ることができる。特に、使用される材料は、99.99%以上の純度を有する高純度炭化ケイ素粉末である。平均粒度は5mm~20mmである。初期のケイ素/炭素比は1である。結晶の成長後、残存する材料のケイ素/炭素比は0.85まで低下する。続いて処理ステップが行われる。最初に、炭化ケイ素粉末を黒鉛容器中に入れ、炭化ケイ素粉末を高温真空誘導炉の比較的高温の末端に導入する。次に、種結晶を高温真空誘導炉の比較的低温の末端に入れる。種結晶は、直径6インチの4H-SiC単結晶ウエハ、又は直径6インチの4H-SiC単結晶インゴットであってよく、その厚さは約500μmである。この種結晶をホルダーに固定し、ポンプを使用してるつぼシステム中の空気及びその他の不純物を除去する。加熱プロセスにおいて、不活性ガスのArを加え、水素、メタン、及びアンモニアを補助ガスとして加える。加熱コイルを使用して約2200℃までシステム全体を加熱し、最長150時間連続的に成長させる。圧力は約5torrである。第5の実施形態のプロセス条件によって、凸型の界面形状を有する6インチ単結晶炭化ケイ素ボウルを製造することができ、結晶成長速度は300μm/時を達成することができる。
【0074】
[0091] この実施形態で言及される方法は、半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の製造方法の1つにすぎないことに留意すべきである。すなわち、この実施形態で提供される半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、別の類似の方法によって製造することができる。特に、半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)などの類似の方法によって得ることができる。例えば、バルク材料が化学蒸着方法によって製造される場合、処理温度は、同じ又は類似のパラメーター下で1000℃まで下げるべきである。バルク材料が物理蒸着方法によって製造される場合、堆積速度は、同じ又は類似のパラメーター下で約10μm/時まで低下させるべきである。言い換えると、PVT法と比較すると、第5の実施形態に記載されるような同じ又は類似の半絶縁性炭化ケイ素バルク材料は、対応するパラメーターを調節した後で、PVD、CVD、及びその他の類似の方法によって得ることもできる。したがって、本出願によって請求される半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、PVT法に限定すべきではなく、同じ又は類似の条件又はプロセス下で得られる半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は本出願の範囲内となるべきである。
【0075】
[0092] 図14~17を参照すると、これらはそれぞれ、本出願の第5の実施形態の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料の各スライスのシリコン空格子点濃度である。図に示されるように、合計13のスライスが切断される。ここで、種結晶に最も近いスライスの通し番号が1であり、成長表面に最も近いスライスの通し番号が13である。例として、種結晶から成長表面まで近づくように番号が付けられた1、4、8、及び13のスライスを採用すると、シリコン空格子点濃度は、7.83E+11、7.17E+11、1.08E+12、及び5.38E+12である。最大強度、FWHM、PL/TO比、及びシリコン空格子点濃度は以下の通りである。
【0076】
【表4】
【0077】
[0093] 上記実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、1つのポリタイプの単結晶を含む。半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、内部にシリコン空格子点を有し、シリコン空格子点濃度は少なくとも5E11cm^-3を超え5E13cm^-3未満である。
【0078】
[0094] 一実施形態では、上記実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は10μm以上の厚さを有する。
【0079】
[0095] 一実施形態では、上記実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は3cm以下の厚さを有する。
【0080】
[0096] 一実施形態では、上記実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は90mm以上の直径を有する。
【0081】
[0097] 一実施形態では、上記実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は200mm以下の直径を有する。
【0082】
[0098] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は1E7Ω・cmを超える抵抗率を有する。
【0083】
[0099] 一実施形態では、上記実施形態による成長システムによって形成される半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、炭化ケイ素の3C、4H、6H、及び15Rの多形から選択される1つのポリタイプの単結晶を含み、現在のところ4H多形が最も好ましい。
【0084】
[0100] 第1~第4の実施形態に記載の結晶及びウエハの原材料として使用されることに加えて、半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、生物医学分野において「蛍光ミクロン炭化ケイ素」として使用することができる。特に、半絶縁性単結晶炭化ケイ素は、ルミネッセンス特性を有し、トラッキング検出ターゲットとして使用することができる。したがって、炭化ケイ素粉末は以下のように提供される。炭化ケイ素粉末は、前述の上記実施形態のバルク材料、結晶、若しくはウエハのいずれか1つの、自己衝突、ウォータージェット、若しくはダイヤモンド加工を用いた成形又は微細化によって得ることができる。炭化ケイ素バルク材料、結晶、又はウエハを粉末にすることによって、全表面積を増加させて発光効果を改善することができる。
【0085】
[0101] 図18~21を参照すると、これらは、本出願の第6の実施形態の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の加工、残留物のシリコン空格子点濃度、残留物の各スライスのシリコン空格子点濃度、及び波長と光度との間の関係の概略図である。一般に、バルク材料からウエハがダイシングされる場合、残留材料8が残る。残留材料8は、この実施形態の炭化ケイ素粉末9A及び粉末9Bの製造に使用することができる。
【0086】
[0102] 粉末の安定した品質を保証するために、微細化前の残留材料8に対してEPR分析を行うことができる。図19中に示されるように、残留材料8中の主要な欠陥はシリコン空格子点であり、最大シリコン空格子点濃度は7.07E12cm^-3である。さらに、残留材料8は切断してスライスにすることができ、種々の位置に対応するスライスに対してシリコン空格子点濃度分析を行うことができる。一例として図1の成長システムを採用すると、合計5つのスライスが切断される。ここで種結晶に最も近いスライスの通し番号が1であり、成長表面に最も近いスライスの通し番号が5であり、すなわち図20の横軸上の番号である。図20中に示されるように、スライス番号1からスライス番号4のシリコン空格子点濃度は比較的類似しており、スライス番号5のシリコン空格子点濃度は上記4つのスライスとは異なる。したがって、実際の粉末の製造では、類似の性質を有する粉末を得るために、番号1~4のスライスが微細化に使用される。スライス番号5が微細化に使用される場合、より高いシリコン空格子点濃度を有する粉末を得ることができ、これは、より高い強度のフォトルミネッセンス信号を必要とする粉末用途に使用することができる。
【0087】
[0103] 次に、この実施形態では、ダイヤモンドによって残留材料8を切断して粉末9Aが得られ、残留材料8を自己衝突させて粉末9Bが得られる。粉末9A及び粉末9Bの粒度は、実際の使用条件によって、1マイクロメートル~500マイクロメートルの間であってよい。この実施形態では、この値は約30マイクロメートルである。異なる加工方法であるため、粉末9Aと粉末9Bとは、異なる表面形態を有することができる。特に、自己衝突方法では、粉末が互いに衝突して、鋭く粗い表面が除去され、それによって粒子のサイズが減少する。したがって粉末9Bの表面は、粉末9Aの表面よりも滑らかである。すなわち、得られる粉末9Bは低光散乱性である。図21中に示されるように、同じ粒度の粉末9A及び粉末9Bに対して蛍光試験を行うと、粉末9Bは、より良好な光度を有することができる。自己衝突させた粉末が高い光度であることの別の理由としては、無水条件下で、粉末表面は、発光効率に影響を与える水和結合又は水素-酸素結合、並びにその他の接着又は被覆がより少ないことを挙げることができる。
【0088】
[0104] 本出願の技術的特徴をより単純にして理解できるようにするために、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法を以下に示す。半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末を得るための製造方法の原材料として使用される。さらに、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末は5E11cm^-3を超える高シリコン空格子点濃度を有する。このようにして、この製造方法によって製造された半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末は生物医学分野に使用することができる。
【0089】
[0105] 図22を参照すると、これは本出願の第7の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法のフローチャートである。この図に示されるように、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法は以下のものを含む。
【0090】
[0106] ステップS1:半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料を提供する、ここで、この半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は第1のシリコン空格子点濃度を有し、第1のシリコン空格子点濃度は5E11cm^-3を超える。
【0091】
[0107] 一実施形態では、ステップS1に使用される半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、第5の実施形態の半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料であってよい。しかし、本出願はそれに限定されるものではない。別の実施形態では、ステップS1に使用される半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、90mm~200mmの間の直径を有する半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料であってもよい。
【0092】
[0108] ステップS2:半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料を微細化して、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を得る、ここで、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子は第2のシリコン空格子点濃度及び第1の粒径を有する。シリコン空格子点濃度は5E11cm^-3を超え、第1の粒度は50μm~350μmの間である。
【0093】
[0109] 一実施形態では、ステップS2において、半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料は、4軸破砕機を用いて微細化することができる。より具体的には、4.8kgの半絶縁性単結晶炭化ケイ素バルク材料を4軸粉砕機で微細化すると、約3.66kgの半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を得ることができる。すなわち4軸粉砕機により微細化される変換効率(排出重量/投入重量)は約0.75である。
【0094】
[0110] ステップS3:半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を自己衝突させて、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末を得る、ここで、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末は第3のシリコン空格子点濃度及び第2の粒度を有する。第3のシリコン空格子点濃度は5E11cm^-3を超え、第2の粒度は1μm~50μmの間である。
【0095】
[0111] 第6の実施形態に記載のように、乾式方法(すなわち、自己衝突)によって得られる粉末は、滑らかな外観を有する。したがって、乾式方法によって得られる粉末は、湿式方法(例えば、ダイヤモンドワイヤ加工)によって得られる粉末よりも高いシリコン空格子点信号強度を有する。特に、シリコン空格子点信号強度は、1.5倍を超えて異なる場合がある。
【0096】
[0112] より高いシリコン空格子点信号強度を有する粉末が得られることに加えて、自己衝突方法は、不純物又は研磨剤の導入を減少させることもできる。したがって、自己衝突方法によって得られる粉末は、不純物の含有量がより低く、そのため製品の純度がより高くなる。
【0097】
[0113] 他方で、媒体としての水又は溶媒は、自己衝突方法では不要である。したがって、結果として粉末が凝集する、微細化プロセス中の水又は溶媒による水和結合又は水素-酸素結合の形成を防止することができる。さらに、後に乾燥が必要となる湿式方法と比較すると、後の乾燥が不要である自己衝突方法は、粉末の凝集を引き起こす後の乾燥中の強い凝集も防止することができる。
【0098】
[0114] 前述のように、ステップS3において、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を粉砕機で微細化することができる。流動床ジェットミル粉砕が粉砕機中で使用される。したがって、他の材料を含まない粉砕の場合、摩損及び工具の汚染を軽減することができる。
【0099】
[0115] 一実施形態では、ステップS3において、500g~1000gの間の半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の原材料として使用することができる。例えば、原材料としての半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子の重量は、500g、600g、700g、800g、1000g、又は上記値のあらゆる組み合わせの範囲であってよい。
【0100】
[0116] 一実施形態では、ステップS3は、100℃未満の温度で実施することができる。特に、自己衝突方法では、温度上昇による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の凝集又は化学反応を防止するために、冷風を送り込んで温度上昇を防止することができる。
【0101】
[0117] 一実施形態では、ステップS3は、50%未満の相対湿度で実施することができる。特に、粉末の凝集を引き起こす微細化プロセス中の水による水和結合又は水素-酸素結合の形成が防止されるように、自己衝突プロセス中の環境の相対湿度を調節することができる。
【0102】
[0118] 一実施形態では、ステップS3の自己衝突時間は、200分~600分で実施することができる。特に、粉末の粒度は、自己衝突時間とともに曲線的に変化する。自己衝突時間が200分未満の場合、粉末は依然として粗すぎる。他方、自己衝突時間が600分を超えると、粉末の粒度の変化速度が徐々に遅くなる。したがって、200分~600分で実施される自己衝突が、より高い効率を有することができ、予想される粉末粒度(すなわち、5μm)を得ることができる。
【0103】
[0119] 図23~29を参照すると、これらはそれぞれ、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子の粒度分析図、及び本出願の第8の実施形態による半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の粒度分析図である。第8の実施形態は、第7の実施形態の製造方法によって製造された半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の実験結果である。特に、図23は、原材料として使用される半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子の粒度分析図である。さらに、図24~29は、異なるプロセスパラメーターにより得られた6つのグループの半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の粒度分析図である。以下に、代表的なものとして「試料1」~「試料6」が使用される。
【0104】
[0120] 粒度分析チャート中、d(0.1)は、10%の粒子が記載の値よりも小さい粒度を有し、90%の粒子が記載の値よりも大きなサイズを有することを意味する。d(0.5)は、50%の粒子が記載の値よりも小さく、50%の粒子が記載の値よりも大きいことを意味する。d(0.9)は、90%の粒子が記載の値よりも小さく、10%の粒子が記載の値よりも大きいことを意味する。したがって、本出願では、メジアン粒度を表すためにd(0.5)が使用される。
【0105】
[0121] 図23中に示されるように、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子のd(0.5)は345μmである。すなわち、345μmのメジアン粒度を有する半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子が、この実施形態における自己衝突の原材料として使用される。さらに、345μmのメジアン粒度を有する半絶縁性単結晶炭化ケイ素粗粒子を、自己衝突によって微細化することで、この実施形態の試料1~6が得られる。分析結果を図24~29及び以下の表に示す。
【0106】
【表5】
【0107】
[0122] 分析結果に示されるように、試料1~試料6を得るための自己衝突が200分~600分の間実施される場合、変換効率は約75%であり、粉末のメジアン粒度は約5μmである。すなわち、本出願の第7の実施形態に開示される製造方法を用いると、第8の実施形態に示されるような半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末を得ることができる。
【0108】
[0123] 要約すると、本出願は、自己衝突によって、滑らかな外観、低い不純物含有量、及び安定な粒度を有する半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末が得られる、半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末の製造方法を提供する。半絶縁性単結晶炭化ケイ素粉末は、種々の分野で(例えば、生物医学分野の蛍光材料として)使用することができる。
【0109】
[0124] 現在又は未来の製造プロセス、方法、及びステップによって、本開示と実質的に同じ機能が得られ、実質的に同じ結果が得られるのであれば、当業者は、本開示の幾つかの実施形態に開示される内容から現在及び未来の製造プロセス、方法、及びステップを理解するであろう。したがって、本開示の範囲は、上記の製造プロセス、方法、及びステップを含んでいる。
【0110】
[0125] 以上の記述は、本出願の単なる例であり、本出願の限定を意図するものではない。本開示は、当業者による種々の修正及び変形を有することができる。本出願の意図及び原理の範囲内で行われるあらゆる修正、同等交換、改善などは、本開示の請求項の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0111】
1 種結晶
2 るつぼ
3 断熱材料
4 ホルダー
5 成長領域
6 材料源
7 ヒーター
8 残留材料
9A 粉末
9B 粉末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの多形の単結晶を含む高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハであって、前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハが、内部にシリコン空格子点を有し、シリコン空格子点濃度が5E11cm^-3を超え且つ5E13cm^-3未満であり、前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり3未満である、高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項2】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハの抵抗率が1E7Ω・cmを超える、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項3】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり2未満である、請求項に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項4】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり1未満である、請求項に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項5】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり0.4未満である、請求項に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項6】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハのマイクロパイプ密度が1平方センチメートル当たり0.1未満である、請求項に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項7】
前記1つの多形の単結晶が、炭化ケイ素の3C、4H、6H、及び15Rの多形から選択される、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項8】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハの直径が90mm以上である、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項9】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハの直径が200mm以下である、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項10】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハが正軸配向を有する、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項11】
前記高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハが軸外し配向を有する、請求項1に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【請求項12】
前記軸外し配向が4°、3.5°、及び2°から選択される、請求項11に記載の高純度半絶縁性単結晶炭化ケイ素ウエハ。
【外国語明細書】