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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171494
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】タレット型巻糸装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/048 20060101AFI20231124BHJP
   B65H 54/547 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B65H67/048 Z
B65H54/547
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023174141
(22)【出願日】2023-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000146984
【氏名又は名称】TMT神津株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 博貴
(72)【発明者】
【氏名】藤原 竜治
(57)【要約】
【課題】本発明は、タレット盤の回転により巻取位置と待機位置のスピンドルを配置転換する際、待機位置における満巻状態のスピンドルの軸回転を速やかに停止させることができるタレット型巻糸装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
周方向に回転可能に設けられたタレット盤2と、タレット盤2に配設され、共通の第2の駆動モータ200により軸回転しながら糸条を巻き取る複数のスピンドル3と、スピンドル3の軸方向に沿って往復移動することにより糸条を綾振りするトラバース装置4と、各部を制御する制御部6とを備える。タレット盤1の回転により満巻状態のスピンドル3を巻取位置から待機位置に公転させながら配置転換する過程において、該スピンドル3の軸回転を外部から強制的に制止するブレーキ装置5が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転可能に設けられたタレット盤と、
前記タレット盤に配設され、共通の駆動モータにより軸回転しながら糸条を巻き取る複数のスピンドルと、
前記スピンドルの軸方向に沿って往復移動することにより糸条を綾振りするトラバース装置と、
前記タレット盤、前記スピンドルおよび前記トラバース装置の動作を制御する制御部とを備え、
巻取位置の前記スピンドルが満巻状態になった際、前記タレット盤の回転により満巻状態の前記スピンドルを巻取位置から待機位置に配置転換し、かつ空状態の前記スピンドルを待機位置から巻取位置に配置転換するとともに、満巻状態の前記スピンドルから空状態の前記スピンドルに糸条を切り替えて、空状態の前記スピンドルに糸条を新たに巻き取るタレット型巻糸装置において、
前記タレット盤の回転により満巻状態の前記スピンドルを巻取位置から待機位置に公転させながら配置転換する過程において、該スピンドルの軸回転を外部から強制的に制止するブレーキ装置が設けられていることを特徴とするタレット型巻糸装置。
【請求項2】
前記ブレーキ装置は、前記スピンドルの待機位置の周辺に設けられ、
満巻状態の前記スピンドルが待機位置に配置される際、該スピンドルの軸回転を強制的に制止する請求項1に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項3】
前記ブレーキ装置は、タレット盤の中心位置から水平方向に延びる位置よりも下方に設けられている請求項2に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項4】
前記スピンドルは、タレット盤を貫通するスピンドル軸と、スピンドル軸の周囲において糸条を巻き取るボビンホルダと、スピンドル軸に同心状に設けられた円板部材とを備え、
前記ブレーキ装置は、前記スピンドルの前記円板部材の周面に接触することにより、満巻状態の前記スピンドルの軸回転を強制的に制止する請求項1に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項5】
前記ブレーキ装置は、前記スピンドル軸の前記円板部材に接触する接触部と、該接触部を支持する支持部と、所定の付勢力をもって前記接触部を付勢する付勢部とを備える請求項4に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項6】
前記スピンドルは、該スピンドルを軸回転させる前記駆動モータとクラッチ機構を介して接続されており、
前記ブレーキ装置は、前記クラッチ機構の接続が解除された際、前記スピンドルの軸回転を強制的に制止する請求項1に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項7】
前記ブレーキ装置は、前記クラッチ機構の接続が解除されたあと、前記タレット盤の回転により巻取位置から待機位置に公転してきた満巻状態の前記スピンドルの軸回転を制止することを開始し、該スピンドルが待機位置に配置されたときに該スピンドルの軸回転を完全に制止する請求項6に記載のタレット型巻糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスピンドルに交互に糸条を巻き取るタレット型巻糸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一対のスピンドルに交互に糸条を巻き取るタレット型巻糸装置が知られている。具体的には、周方向に回転可能に設けられたタレット盤と、タレット盤に配設され、軸回転しながら糸条を巻き取る複数のスピンドルと、スピンドルの軸方向に沿って往復移動することにより糸条を綾振りするトラバース装置と、タレット盤、スピンドルおよびトラバース装置の動作を制御する制御部とを備える。
【0003】
そして、巻取位置の前記スピンドルが満巻状態になった際、タレット盤の回転により満巻状態のスピンドルを巻取位置から待機位置に配置転換し、かつ空状態のスピンドルを待機位置から巻取位置に配置転換するとともに、満巻状態の前記スピンドルから空状態の前記スピンドルに糸条を切り替えて、空状態の前記スピンドルに糸条を新たに巻き取ることを交互に繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-323866号公報
【特許文献2】特開2012-126569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のタレット型巻糸装置では、タレット盤の回転により満巻状態のスピンドルを巻取位置から待機位置に配置転換する際、待機位置において満巻状態のスピンドルが惰性で軸回転し続ける場合があった。
【0006】
具体的には、各スピンドルが共通の駆動モータにクラッチ機構を介して接続される構造の場合、巻取位置では駆動モータと空状態のスピンドルの間のクラッチ機構を接続することにより該スピンドルの軸回転を開始する一方、待機位置では駆動モータと満巻状態のスピンドルの間のクラッチ機構を解除して該スピンドルの軸回転を停止するため、スピンドルを配置転換した直後において待機位置の満巻状態のスピンドルが駆動モータから完全にフリーな状態となって惰性的に軸回転する虞があった。
【0007】
このため、作業者が待機位置における満巻状態のスピンドルの軸回転の停止を待ってからスピンドルから糸条のパッケージを取り外すことになるため、糸条のパッケージの生産効率が低下するという問題があった。あるいはまた、作業者が自分の手で待機位置のスピンドルの軸回転を停止させると、作業者に危険が発生する他、糸条のパッケージに損傷を与える虞があるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、タレット盤の回転により巻取位置と待機位置のスピンドルを配置転換する際、待機位置における満巻状態のスピンドルの軸回転を速やかに停止させることができ、ひいては高品質の糸条のパッケージを安全かつ効率的に生産することが可能なタレット型巻糸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、周方向に回転可能に設けられたタレット盤と、前記タレット盤に配設され、共通の駆動モータにより軸回転しながら糸条を巻き取る複数のスピンドルと、前記スピンドルの軸方向に沿って往復移動することにより糸条を綾振りするトラバース装置と、前記タレット盤、前記スピンドルおよび前記トラバース装置の動作を制御する制御部とを備え、巻取位置の前記スピンドルが満巻状態になった際、前記タレット盤の回転により満巻状態の前記スピンドルを巻取位置から待機位置に配置転換し、かつ空状態の前記スピンドルを待機位置から巻取位置に配置転換するとともに、満巻状態の前記スピンドルから空状態の前記スピンドルに糸条を切り替えて、空状態の前記スピンドルに糸条を新たに巻き取るタレット型巻糸装置において、前記タレット盤の回転により満巻状態の前記スピンドルを巻取位置から待機位置に公転させながら配置転換する過程において、該スピンドルの軸回転を外部から強制的に制止するブレーキ装置が設けられていることを特徴とする。
【0010】
これによれば、タレット盤の回転により満巻状態のスピンドルを巻取位置から待機位置に公転させながら配置転換する際、満巻状態のスピンドルの軸回転を速やかに停止させることができる。
【0011】
また、前記ブレーキ装置は、前記スピンドルの待機位置の周辺に設けられ、
満巻状態の前記スピンドルが待機位置に配置される際、該スピンドルの軸回転を強制的に制止してもよい。これによれば、満巻状態のスピンドルの回転数が低くなり、かつ満巻状態のスピンドルの公転が停止するタイミングにおいて、スピンドルの軸回転をスムーズに制止することができる。
【0012】
また、前記ブレーキ装置は、タレット盤の中心位置から水平方向に延びる位置よりも下方に設けられてもよい。これによれば、巻取位置から待機位置に下方から公転してきたスピンドルを確実に制止することができる。
【0013】
また、前記スピンドルは、タレット盤を貫通するスピンドル軸と、スピンドル軸の周囲において糸条を巻き取るボビンホルダと、スピンドル軸に同心状に設けられた円板部材とを備え、前記ブレーキ装置は、前記スピンドルの前記円板部材の周面に接触することにより、満巻状態の前記スピンドルの軸回転を強制的に制止してもよい。これによれば、ブレーキ装置がスピンドルの円板部材の周面に接触することによって、満巻状態のスピンドルの軸回転を確実に制止することができる。
【0014】
また、前記ブレーキ装置は、前記スピンドル軸の前記円板部材に接触する接触部と、該接触部を支持する支持部と、所定の付勢力をもって前記接触部を付勢する付勢部とを備えてもよい。これによれば、簡易な構成にして、満巻状態のスピンドルの軸回転を確実に制止することができる。
【0015】
また、前記スピンドルは、該スピンドルを軸回転させる前記駆動モータとクラッチ機構を介して接続されており、前記ブレーキ装置は、前記クラッチ機構の接続が解除された際、前記スピンドルの軸回転を強制的に制止してもよい。これによれば、クラッチ機構の接続の解除によりスピンドルが駆動モータからフリーな状態になった際、スピンドルの軸回転を強制的に制止するため、駆動モータやブレーキ装置の負担を軽減することができる。
【0016】
また、前記ブレーキ装置は、前記クラッチ機構の接続が解除されたあと、前記タレット盤の回転により巻取位置から待機位置に公転してきた満巻状態の前記スピンドルの軸回転を制止することを開始し、該スピンドルが待機位置に配置されたときに該スピンドルの軸回転を完全に制止してもよい。これによれば、タレット盤の回転により巻取位置から待機位置に公転してきた満巻状態のスピンドルを適正な位置で確実に停止させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タレット盤の回転により満巻状態のスピンドルを巻取位置から待機位置に公転させながら配置転換する際、満巻状態のスピンドルの軸回転を速やかに停止させることができる。このため、作業者が巻取位置に配置されたスピンドルから糸条のパッケージを速やかに取り外すことがができ、高品質の糸条のパッケージを安全かつ効率的に生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るタレット型巻糸装置を示す(a)斜視図および(b)正面図である。
図2図1のタレット型巻糸装置の内部構成を示す斜視図である。
図3図1のタレット型巻糸装置の内部構成を示す平面図である。
図4図2のブレーキ装置の周辺を示す拡大図である。
図5図1のタレット型巻糸装置の電気的構成を示すブロック図である。
図6図1のタレット型巻糸装置におけるブレーキ装置によるスピンドルの制止動作の過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係るタレット型巻糸装置(以下、本装置という)の実施形態について図1図6を参照しつつ説明する。
【0020】
本装置は、図1および図2に示すように、装置の基枠1と、基枠1に設けられたタレット盤2と、該タレット盤2に配設された一対のスピンドル3と、基枠1におけるタレット盤2の正面視左側に設けられたトラバース装置4と、基枠1の背面側に設けられたブレーキ装置5と、タレット盤2、スピンドル3およびトラバース装置4の動作を制御する制御部6とを備える。
【0021】
前記タレット盤2は、金属製の薄型円盤状に形成され、基枠1内の第1の駆動モータ100に第1の回転伝達機構10を介して接続され、第1の駆動モータ100により周方向(正面から見て左周り)に沿って半回転するものとなされている。具体的には、前記タレット盤2は、図1に示すように、巻取位置A(図1の左側位置)のスピンドル3が満巻状態になった場合、周方向に沿って半回転することにより、満巻状態のスピンドル3を巻取位置A(図1の左側位置)から待機位置B(図1の右側位置)に配置転換するとともに、空状態のスピンドル3を待機位置B(図1の右側位置)から巻取位置A(図1の左側位置)に配置転換する。
【0022】
なお、前記第1の回転伝達機構10は、図2および図3に示すように、第1の駆動モータ100に接続された歯車10aと、該歯車10aに噛合する大歯車10bと、該大歯車10bとタレット盤2を連結する連結ブラケット10cを備え、第1の駆動モータ100の回転が歯車10a、大歯車10bおよび連結ブラケット10cを介してタレット盤2に伝達される。
【0023】
前記スピンドル3は、図1に示すように、タレット盤2の同心円上の対称位置において前方向に突出する態様で片持支持され、タレット盤2の回転により巻取位置Aと待機位置Bの間を公転しながら交互に配置転換される。
【0024】
また、前記スピンドル3は、タレット盤2を貫通するスピンドル軸31と、基枠1の正面側においてスピンドル軸31の周囲において糸条を巻き取るボビンホルダ32と、基枠1の背面側においてスピンドル軸31の基端部に同心状に設けられた円板部材33と、ボビンホルダ32の基端部側において糸条の切り替え時に糸条を把持する把持部34とを備える。
【0025】
また、前記スピンドル3は、基枠1内に設けられた共通の第2の駆動モータ200と第2の回転伝達機構20を介して接続されており、制御部6の命令により巻取位置Aにおいて糸条を軸回転しながら空状態から満巻状態になるまで巻き取るものとなされている。
【0026】
なお、この第2の回転伝達機構20は、図2および図3に示すように、第2の駆動モータ200に接続されたプーリー20aと、該プーリー20aに一方が巻架されるベルト20bと、該ベルト20bの他方に巻架されるプーリー20cと、一方端部に該プーリー20cが接続された回転軸20dと、該回転軸20dの他方端部に巻架されたベルト20eと、該ベルト20eの両側部に巻架されるプーリー20fとを備え、両プーリー20fが後述のクラッチ機構8を介して両スピンドル軸31に接続されている。これにより、第2の駆動モータ200の回転がプーリー20a、ベルト20b、プーリー20c、回転軸20d、ベルト20e、プーリー20f、さらにはクラッチ機構8を介して各スピンドル3に伝達される。
【0027】
また、前記スピンドル3は、スピンドル軸31と第2の回転伝達機構20の間において、第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82からなるクラッチ機構8(ドッグクラッチ)が設けられ、制御部6の命令するタレット盤2の動作に連動するドック機能によりクラッチ機構8が動作するものとなされている。具体的には、スピンドル3が巻取位置Aに配置された際、該スピンドル3のクラッチ機構8が接続状態(図6に示す第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82が噛み合った状態)になって、該スピンドル3と第2の駆動モータ200が第2の回転伝達機構20を介して回転可能に連結されるため、巻取位置Aのスピンドル3が軸回転しながら糸条を巻き取る。一方、スピンドル3が待機位置Bに配置された際、該スピンドル3のクラッチ機構8の接続状態が解除され(図6に示す第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82が離れた状態)、該スピンドル3と第2の駆動モータ200の連結も解除されるため、待機位置Bのスピンドル3が第2の駆動モータ200からフリーな状態となって軸回転を停止する。なお、本実施形態では、クラッチ機構8としてドッグクラッチを用いたが、摩擦クラッチや流体クラッチなど、その他のクラッチを用いてもよい。
【0028】
また、前記スピンドル3は、ボビンホルダ32の基端部側に糸条を把持するための把持部34が設けられている。本実施形態では、この把持部34は、ボビンホルダ32の基端部側の隙間であって、糸条の切り替え時において所定の隙間に糸条が嵌り込んだあと、該隙間が閉じて糸条を挟着することによって、糸条を把持するものとなされている。
【0029】
また、前記スピンドル3は、ボビンホルダ32の基端部側の周囲にカッター7が設けられている。このカッター7は、タレット盤2の回転により巻取位置Aの満巻状態のスピンドル3と待機位置Bの空状態のスピンドル3を互いに公転させながら配置転換する際、満巻状態のスピンドル3から空状態の前記スピンドル3に糸条を切り替えるときに糸条を切断する。
【0030】
前記トラバース装置4は、基枠1からスピンドル3の軸方向に沿って前方に突出する態様で設けられたトラバース装置本体41と、トラバース装置4に設けられたトラバースガイド42を備える。このトラバースガイド42は、駆動モータ(通常はスピンドル3を軸回転させる第2の駆動モータ200)に所定のカムシフト機構を介して接続され、スピンドル3の軸方向に沿ってスピンドル3の先端部側の折返位置と基端部側の折返位置の間を往復移動することにより、装置外から送られてきた糸条を綾振りしながら巻取位置Aで軸回転するスピンドル3に案内する。
【0031】
また、前記トラバース装置4は、満巻状態の前記スピンドル3から空状態のスピンドル3に糸条を切り替える際、トラバースガイド42が往復移動の基端部側の折返位置を越えて移動することにより、糸条を該スピンドル3の基端部側に引き込み、スピンドル3の把持部34により糸条が把持されたあと、基端部側の折返位置に再び戻るように移動する。
【0032】
前記ブレーキ装置5は、図2および図3に示すように、基枠1の背面側におけるスピンドル3の待機位置の周辺に設けられ、巻取位置Aから待機位Bに公転してきたスピンドル3の軸回転を強制的に制止する。
【0033】
具体的には、前記ブレーキ装置5は、支持フレーム11により支持されており、スピンドル軸31の基端部の円板部材33に接触する接触部51と、該接触部51を支持する支持部52と、所定の付勢力をもって前記接触部51を付勢する付勢部53とを備える。
【0034】
前記接触部51は、半球状の樹脂部材からなる頭部51aと、頭部51aに連結された軸部51bとからなり、頭部51aが待機位置Bに配置されたスピンドル3の円板部材33に接触する。なお、本実施形態では、接触部51の頭部51aは、スピンドルの巻取位置Aから待機位置Bまでの公転軌道上であって、かつタレット盤2の中心位置から水平方向に延びる位置から下方に配置されており、スピンドル3が水平方向に対して10度~15度の角度の範囲内に公転してきたときに接触するものとなされている。このため、接触部51が巻取位置Aから待機位置Bに下方から公転してきたスピンドル3の円板部材33に確実に接触することができる。
【0035】
また、前記支持部52は、前記接触部51を軸部の軸方向に移動可能な態様で支持するように支持フレーム11に固定されている。なお、本実施形態では、支持部52は、接触部51の軸部51bが水平方向に対して上方にやや傾斜するように接触部51を支持している。このため、接触部51が巻取位置Aから待機位置Bに下方から公転してきたスピンドルの公転動作を邪魔することなく円板部材33に接触することができる。
【0036】
また、前記付勢部53は、接触部51の軸部が内側に挿通される螺旋状のバネ部材であり、接触部51の頭部51aと支持部52の間において圧縮状態に設けられることにより、接触部51を巻取位置Aのスピンドル3の円板部材33の方向に付勢するものとなされている。
【0037】
而して、満巻状態のスピンドル3が巻取位置Aから待機位置Bに配置転換された際、付勢部53による所定の付勢力をもって接触部51が待機位置Bのスピンドル3の円板部材33の周面に押圧状態で接触することにより、待機位置Bのスピンドル3の軸回転を外部から摩擦力により強制的に制止することができる。
【0038】
次に本装置による糸条の巻き取りの全体の動作について説明する。
【0039】
まず、巻取位置Aの空状態のスピンドル3が糸条を把持したあと、空状態のスピンドル3が軸回転しながら糸条の巻き取っていき、所定径のパッケージの満巻状態になるまで糸条の巻き取りを継続する。
【0040】
そして、巻取位置Aのスピンドル3が満巻状態になった際、タレット盤2の回転により満巻状態のスピンドル3を巻取位置Aから待機位置Bに公転させながら配置転換し、かつ空状態のスピンドル3を待機位置Bから巻取位置Aに公転させながら配置転換するように公転させながら配置転換する。
【0041】
そして、待機位置Bの満巻状態のスピンドル3から巻取位置Aの空状態のスピンドル3に糸条を切り替えたあと、空状態のスピンドル3に糸条を新たに巻き取るとともに、満巻状態のスピンドル3から糸条のパッケージを引き抜きながら取り出す。
【0042】
次に満巻状態のスピンドル3が巻取位置Aから待機位置Bに配置変換されるときのブレーキ装置5の制止動作について、図6を参照しつつ説明する。
【0043】
まず、図6(a)に示すように、満巻状態のスピンドル3が巻取位置Aから待機位置Bの直前まで公転してきたときは、ブレーキ装置5の接触部51は該スピンドル3の円板部材33の周面に接触していない。このとき、クラッチ機構8は未だ接続状態になっているため、スピンドル3は第2の駆動モータ200により軸回転を継続している。
【0044】
そして、図6(b)に示すように、満巻状態のスピンドル3がさらに公転すると、ブレーキ装置5の接触部51が該スピンドル3の円板部材33の周面に接触し始めるため、スピンドル3の軸回転が強制的に減速し始める。このとき、クラッチ機構8の接続は解除されているため、スピンドル3は第2の駆動モータ200からフリーな状態になっており、スピンドル3は第2の駆動モータ200による軸回転を行わない。
【0045】
そして、図6(c)に示すように、満巻状態のスピンドル3がさらに公転して待機位置Bに完全に到達すると、ブレーキ装置5の接触部51が所定の付勢力をもってスピンドル3の円板部材33の周面に押圧状態で接触するため、スピンドル3の軸回転が摩擦力により強制的に制止される。このとき、クラッチ機構8の接続が解除された状態を維持しており、スピンドル3は第2の駆動モータ200から完全なフリーな状態になっており、ブレーキ装置5により軸回転を完全に停止する。
【0046】
その後、待機位置Bのスピンドル3から糸条のパッケージが取り外されたあと、巻取位置Aのスピンドル3が満巻状態になった際、タレット盤2の回転により空状態の該スピンドル3は図6(c)に示す待機位置Bから上方に公転を開始するが、ブレーキ装置5において接触部51が該スピンドル3に押されるようにして付勢部53の付勢力に抗しながら径方向外側に後退するため、該スピンドル3は待機位置Bから巻取位置Aにスムーズに公転することができる。
【0047】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…基枠
11…支持フレーム
2…タレット盤
3…スピンドル
31…スピンドル軸
32…ボビンホルダ
33…円板部材
34…把持部
4…トラバース装置
41…トラバース装置本体
42…トラバースガイド
5…ブレーキ装置
51…接触部
51a…頭部
51b…軸部
52…支持部
53…付勢部
6…制御部
7…カッター
8…クラッチ機構
81…第1のクラッチ歯
82…第2のクラッチ歯
10…第1の回転伝達機構
20…第2の回転伝達機構
100…第1の駆動モータ
200…第2の駆動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6