(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171528
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】鞍乗型電動車両
(51)【国際特許分類】
B62M 7/02 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B62M7/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175269
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2022046105の分割
【原出願日】2017-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】内山 英和
(57)【要約】
【課題】モータの大型化を抑制しながら、大きな駆動力を得ることができる鞍乗型電動車両を提供する。
【解決手段】電動二輪車は、マスタモータ11及びスレイブモータ12を備えている。マスタモータ11及びスレイブモータ12は、シャフト部材13の両端にそれぞれ取り付けられている。電動二輪車は、シャフト部材13の回転を後輪に伝達する伝達機構を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のモータと、
前記一対のモータが両端にそれぞれ取り付けられたシャフト部材と、
前記シャフト部材の回転を駆動輪に伝達する伝達機構と、
を備えることを特徴とする鞍乗型電動車両。
【請求項2】
前記一対のモータは、アウタロータ型ブラシレスモータである請求項1に記載の鞍乗型電動車両。
【請求項3】
前記一対のモータの一方の回転角度を検出する回転角度検出手段と、
前記回転角度検出手段が検出した回転角度に基づいて、前記一対のモータの回転制御を行うコントローラと、
を備える請求項1または2に記載の鞍乗型電動車両。
【請求項4】
前記一対のモータは、車体中心を挟んで対称となる位置に配置されている請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両。
【請求項5】
前記シャフト部材と前記駆動輪との間に、減速機構が介在されている請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車などの鞍乗型車両として、近年、エンジンなどの内燃機関に代えてモータを動力とした鞍乗型電動車両が開発されている。この種の鞍乗型電動車両として、駆動輪である後輪を電動モータで駆動する鞍乗型電動車両が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型電動車両は、大荷物を運んだり多人数で乗車したりして積載重量が過大となることは少ない。このため、上記特許文献1に開示された鞍乗型電動車両では、モータによって得られる駆動力に限りがあるものの、積載重量が過大とならない場合には、十分に実用に耐えられるものであった。
【0005】
しかし、鞍乗型電動車両に大荷物を搭載したり、多人数での乗車が許容されたりする場合には、十分な駆動力を得ることが難しかった。この点、モータを大型化して駆動力の増大を図ることは考えられるが、大型のモータは、開発コストがかかることが多い。また、モータが大型化すると、車両におけるモータの設置場所が限られたり、車両の重量が嵩んだりする問題がある。
【0006】
特に、東南アジア諸国では、鞍乗型電動車両によって大荷物を搭載したり多人数での乗車が行われたりすることが多い。このため、鞍乗型電動車両の駆動力の増大についての要望が大きかった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、モータの大型化を抑制しながら、大きな駆動力を得ることができる鞍乗型電動車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決した本発明の一実施形態に係る鞍乗型電動車両は、一対のモータと、前記一対のモータが両端にそれぞれ取り付けられたシャフト部材と、前記シャフト部材の回転を駆動輪に伝達する伝達機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、一対のモータがシャフト部材に駆動力を供給する。シャフト部材に供給された駆動力は、伝達機構を介して駆動輪に伝達される。このように、一対のモータで駆動輪に駆動力を供給するので、モータの大型化を抑制しながら、大きな駆動力を得ることができる。また、一対のモータは、シャフト部材の両端に取り付けられている。このため、モータの設置スペースを過度に広くしすぎないようにできる。
【0010】
また、上記の鞍乗型電動車両において、前記一対のモータは、アウタロータ型ブラシレスモータであってもよい。
【0011】
このように構成することで、駆動力の大きいモータで車輪を駆動することができる。
【0012】
また、上記の鞍乗型電動車両において、前記一対のモータの一方の回転角度を検出する回転角度検出手段と、前記回転角度検出手段が検出した回転角度に基づいて、前記一対のモータの回転制御を行うコントローラと、を備えていてもよい。
【0013】
このように構成することで、二つのモータを駆動させるコントローラを1つで済ませることができる。二つのモータを駆動するにあたっては、各モータの回転角度を検出する必要があることが多い。この点、上記の鞍乗型電動車両では、シャフト部材の両端に二つのモータが取り付けられているので、二つのモータは、常時同位相で回転する。したがって、一方のモータの回転角度を検出することにより、両方のモータの回転角度が検出できるので、1つのコントローラで二つのモータを容易に駆動することができる。
【0014】
また、上記の鞍乗型電動車両において、前記一対のモータは、車体中心を挟んで対称となる位置に配置されていてもよい。
【0015】
このように構成することで、鞍乗型車両の安定性を高めることができる。
【0016】
また、上記の鞍乗型電動車両において、前記シャフト部材と前記駆動輪との間に、減速機構が介在されていてもよい。
【0017】
このように構成することで、モータの出力を大きく変動させることなく、車輪に付与する駆動力の増減を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る鞍乗型電動車両によれば、モータの大型化を抑制しながら、大きな駆動力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動二輪車の側面図である。
【
図6】(A)は、内燃機関が取り付けられた動力発生装置の一部破断側断面図、(B)は、(A)の内燃機関が取り外された動力発生装置の一部破断側断面図、(C)は、内燃機関がモータに取り換えられた動力発生装置の一部破断側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る電動二輪車について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、前側とは車両の前進方向をいうものとし、さらに、右側及び左側とは車両が前進する方向に向かって右側及び左側をいうものとする。
【0021】
図1は、電動二輪車の側面図である。
図1に示すように、本発明の鞍乗型電動車両の一例である電動二輪車80は、駆動源としてモータを備える商業用自動二輪車である。電動二輪車80は、パワーユニット10を備えている。パワーユニット10は、車体中心にある前輪84及び後輪91よりも左方に配置されており、後輪91に対して動力を供給する。電動二輪車80は、いわゆる後輪駆動車両である。
【0022】
図1に示す電動二輪車(小型車両)80において、その車体フレーム82は複数種の鋼材を溶接等により一体に結合してなる。車体フレーム82は、前輪懸架系を操向可能に支持するヘッドパイプ83から下後方へ単一のメインチューブ88を延ばし、ヘッドパイプ83と乗員着座用のシート89との間を低部として跨り易さを向上させた所謂バックボーン型とされる。
【0023】
メインチューブ88の後端部の下方にはピボットブラケット90が延び、ピボットブラケット90には後輪懸架系のスイングアーム92の前端部が上下揺動可能に支持される。メインチューブ88の後端部の上後方にはシートフレーム93が延び、シートフレーム93上にシート89が配置されると共に、シートフレーム93とスイングアーム92との間には後輪懸架系のリアクッション94が配置される。図中符号85はフロントフォーク、符号86はステアリングステム、符号87は操向ハンドルを示す。メインチューブ88の下方には、電動二輪車80の原動機であるパワーユニット10が支持される。
【0024】
図2は、パワーユニットの一部破断側面図である。
図2に示すように、パワーユニット10は、一対のモータとしてのマスタモータ11及びスレイブモータ12を備えている。マスタモータ11及びスレイブモータ12は、いずれもアウタロータ型ブラシレスモータであり、それぞれステータ21、ステータ保持部材23、及びロータ25を備えている。マスタモータ11及びスレイブモータ12は、クランクケース50の両側にそれぞれ配置されている。また、マスタモータ11のロータ25とスレイブモータ12のロータ25は、シャフト部材13を介して接続されている。シャフト部材13は、クランクケース50内を通って配置されている。シャフト部材13には、その両端にそれぞれ取り付けられたマスタモータ11及びスレイブモータ12によって駆動力が供給される。
【0025】
シャフト部材13は、クランクケース50内に配設された軸受30,30によって自転可能に支持されている。マスタモータ11とスレイブモータ12とは、ロータ位置検出センサ(以下「位置センサ」という)35が取り付けられているか否かを除いて、おおよそ共通する構成とされている。以下、
図2~
図4を参照して、マスタモータ11とスレイブモータ12のうちのマスタモータ11の構成について説明する。また、
図2において、スレイブモータ12のうち、マスタモータ11の同一の構成要素については同一の符号を付す。
【0026】
図3は、マスタモータの斜視図、
図4は、マスタモータの分解斜視図である。
図2及び
図3に示すように、ステータ21は、コイル22を有している。また、ステータ21は、ステータコア28を備えている。ステータコア28は、
図4に示すように、放射方向に突出する複数のティース28aと、その各ティース28aに絶縁部材であるインシュレータ29が取り付けられている。コイル22は、ステータコア28のティース28aに、インシュレータ29の上から巻線されている。
【0027】
ステータ21は、
図2に示すステータ取付ボルト27によってステータ保持部材23に固定されている。ステータ保持部材23は、全体が鉄材やアルミニウム材によって略円筒状に形成された保持部23Aと、保持部23Aの内側外周縁部に延設された円板状の鍔部23Bを備えている。また、クランクケース50にはボス部51が設けられており、鍔部23Bは、取付ボルト23Cによってボス部51に締結されている。これにより、保持部23Aは、軸方向外側に向かって突出した状態になる。そして、この保持部23Aに、ステータ21が固定される。つまり、ステータ21は、ステータ保持部材23を介してボス部51に固定されている。さらに、ボス部51には、軸受30が支持されている。
【0028】
ロータ25は、有底円筒状のロータヨーク31を備えている。ロータヨーク31の内面に複数のマグネット32…が円周方向に沿って互いに離間して配置されて取り付けられている。また、ロータヨーク31の底部である側壁部33の中央には、内側に突出するシャフト接続部34が形成されている。シャフト部材13は、シャフト接続部34に挿入されてボルトBによって固定されている。なお、ロータ25のマグネット32は、ステータ21の外周面に対峙して組み付けられている。
【0029】
また、ステータ保持部材23の鍔部23Bには、回転角度検出手段の一例である位置センサ35が取付板36を介して取り付けられている。位置センサ35は、
図2に示すように、ロータ25のマグネット32の内側面に沿った位置にマグネット32とは離間して配置されている。位置センサ35は、マグネット32の磁束の変化を検出する。検出された磁束の変化は信号として後述のコントローラ60に出力される。このコントローラ60は、検出した磁束の変化に基づいて、ロータ25の回転位置(回転角度)を求める(詳細は後述する)。なお、スレイブモータ12では、位置センサ35及び取付板36が設けられていない。
【0030】
また、
図2に示すように、シャフト部材13の長手方向略中央位置には、プライマリドライブギヤ40aがシャフト部材13に一体回転可能に設けられる。プライマリドライブギヤ40aは、メインシャフト5の右側部に相対回転可能に支持されたプライマリドリブンギヤ40bに噛み合う。
【0031】
シャフト部材13の後方(
図2における下方)には、トランスミッション4が設けられている。トランスミッション4は、メインシャフト5及びカウンタシャフト6を備えている。メインシャフト5及びカウンタシャフト6は、それぞれの回転中心軸線を左右方向に沿わせて(クランク軸線と平行にして)配置される。
【0032】
メインシャフト5の右端部には多板クラッチ42が同軸支持されている。多板クラッチ42は変速用クラッチであり、右方に開放する有底円筒状をなしてメインシャフト5の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウター42aと、クラッチアウター42aの内周側に配置されてメインシャフト5の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナー42bと、を有する。クラッチアウター42aの底壁左側には、プライマリドリブンギヤ40bが一体回転可能に支持される。多板クラッチ42は、不図示のシフトペダルの変速操作に連動して不図示のクラッチ板の圧接を一時的に解除し、トランスミッション4のシフトチェンジをよりスムーズにする。
【0033】
トランスミッション4は、メインシャフト5及びカウンタシャフト6と、両シャフト5,6に跨って支持される変速ギヤ群7と、を備える。シャフト部材13の回転動力は、変速ギヤ群7の任意のギヤを介してメインシャフト5からカウンタシャフト6に伝達される。カウンタシャフト6の左端部は、機関出力部41となる。
【0034】
変速ギヤ群7は、両シャフト5,6にそれぞれ支持された変速段数分のギヤで構成される。トランスミッション4は、両シャフト5,6間で変速ギヤ群7の対応するギヤ同士が常に噛み合った常時噛み合い式とされる。両シャフト5,6に支持された各ギヤは、自身を支持するシャフトに対して相対回転可能なフリーギヤと、自身を支持するシャフトに対して一体回転可能な固定ギヤと、自身を支持するシャフトにスプライン嵌合するスライドギヤと、に分類される。トランスミッション4は、不図示のチェンジ機構の作動によりスライドギヤを移動させ、変速段に応じたギヤ列を選定する。
【0035】
シャフト部材13の回転動力は、トランスミッション4を介して後部左側の機関出力部41に出力される。機関出力部41は、駆動輪である後輪91とチェーン式伝動機構41aとを介して連係される。こうして、シャフト部材13の回転動力は、トランスミッション4及びチェーン式伝動機構41aを介して後輪91に伝達される。なお、プライマリドライブギヤ40a、プライマリドリブンギヤ40b、及び変速ギヤ群7は、減速機構を構成する。
【0036】
次に、マスタモータ11及びスレイブモータ12の制御について説明する。
図5は、電動二輪車のブロック構成図である。
図5に示すように、電動二輪車80は、マスタモータ11とスレイブモータ12とを制御するコントローラ60を備えている。マスタモータ11とスレイブモータ12とは、シャフト部材13で接続されているため、マスタモータ11のロータと、スレイブモータ12のロータとは、同期して回転する。また、マスタモータ11には、位置センサ35が取り付けられており、位置センサ35は、検出したマスタモータ11におけるロータ25の回転位置を回転位置信号としてコントローラ60に出力している。
【0037】
また、電動二輪車80は、メインスイッチ61及びアクセル62を備えている。メインスイッチ61及びアクセル62は、操作系制御部63を介してコントローラ60に電気的に接続されている。操作系制御部63は、メインスイッチ61から送信されるON/OFF信号及びアクセル62から送信されるアクセル信号等に基づいて、電動二輪車80の走行制御を行う。
【0038】
さらに、電動二輪車80は、メインバッテリ64、配線遮断器(Molded Case Circuit Breaker、以下「MCB」という)65、コンバータ66、及び負荷67を備えている。メインバッテリ64は、例えば96Vバッテリであり、コントローラ60及び操作系制御部63の制御信号に基づいて、マスタモータ11、スレイブモータ12、負荷67等に電力を供給する。MCB65は、過負荷や短絡などの要因でマスタモータ11、スレイブモータ12、または負荷67に異常な過電流が流れたときに電路を開放し、メインバッテリ64からの電源供給を遮断することにより負荷回路や電線を損傷から保護する。
【0039】
コンバータ66は、DC/DCコンバータであり、メインバッテリ64から供給される高電圧を、負荷67に応じた低電圧、ここでは12Vに変換する。負荷67には、照明やホーンなどがあり、12V電圧の電気が供給されることにより、それぞれ点灯されたり鳴らされたりする。
【0040】
コントローラ60は、メインバッテリ64から供給される直流電流を3相(U相、V相、W相)の交流電圧に変換して、マスタモータ11及びスレイブモータ12のコイルに供給する。コントローラ60は、マスタモータ11に設けられた位置センサ35から送信される回転位置信号及び操作系制御部63から送信される回転速度信号に基づいて、マスタモータ11及びスレイブモータ12の回転制御を行う。コントローラ60は、3相(U相、V相、W相)の交流電圧を供給する順序を適宜調整することによって、マスタモータ11及びスレイブモータ12の回転制御を行う。
【0041】
以上の構成を有する本実施形態に係る電動二輪車80においては、マスタモータ11及びスレイブモータ12の二つのモータによってシャフト部材13に駆動力を供給している。シャフト部材13に供給された駆動力は、プライマリドライブギヤ40a、プライマリドリブンギヤ40b、及び変速ギヤ群7等からなる伝達機構を介して後輪91に伝達される。このように、マスタモータ11及びスレイブモータ12という二つのモータで後輪91に駆動力を供給するので、モータの大型化を抑制しながら、大きな駆動力を得ることができる。また、マスタモータ11及びスレイブモータ12は、シャフト部材13の両端に取り付けられている。このため、マスタモータ11及びスレイブモータ12の設置スペースを過度に広くしすぎないようにできる。
【0042】
また、マスタモータ11及びスレイブモータ12は、いずれもアウタロータ型ブラシレスモータで構成されている。このため、インナロータ型のモータで構成されているよりも、回転軸の慣性モーメントが大きくなるので、後輪91に安定した駆動力を与えることができる。
【0043】
また、マスタモータ11及びスレイブモータ12のうち、一方のモータであるマスタモータ11の方のみのロータ25の回転角度を位置センサ35で検出している。コントローラ60では、この検出結果に基づいて、マスタモータ11及びスレイブモータ12の制御を行っている。通常、二つのブラシレスモータを制御する場合には、それぞれのブラシレスモータに対してコントローラで制御を行う必要がある。この点、上記の電動二輪車80では、マスタモータ11とスレイブモータ12とは、シャフト部材13で接続されており、同位相で回転している。このため、一方のモータであるスレイブモータ12についての回転角度を検出しなくとも、マスタモータ11の回転角度がそのままスレイブモータ12の回転角度となる。したがって、マスタモータ11の回転角度を検出することにより、マスタモータ11及びスレイブモータ12の回転角度が検出できるので、1つのコントローラで二つのモータを容易に駆動することができる。よって、コントローラを少なく済ませることができる。
【0044】
また、シャフト部材13と後輪91との間には、プライマリドライブギヤ40a、プライマリドリブンギヤ40b、及び変速ギヤ群7等からなる減速機構が介在されている。このため、モータの出力を大きく変動させることなく、後輪91に付与する駆動力の増減を図ることができる。
【0045】
また、上記の電動二輪車80では、シャフト部材13の両端にマスタモータ11及びスレイブモータ12をそれぞれ接続し、マスタモータ11及びスレイブモータ12によってシャフト部材13を回転させて後輪91に駆動力を付与している。このため、動力機関として内燃機関を搭載した自動二輪車の動力機関を内燃機関から一対のモータ及びシャフト部材等に載せ替える場合にも、その載せ替えは容易となる。
【0046】
以下、内燃機関を備える自動二輪車について説明し、続いて内燃機関を備える自動二輪車の動力機関を内燃機関から一対のモータに載せ替える手順について、具体的に説明する。(A)は、内燃機関が取り付けられた動力発生装置の一部破断側断面図、(B)は、(A)の内燃機関が取り外された動力発生装置の一部破断側断面図、(C)は、内燃機関がモータに取り換えられた動力発生装置の一部破断側断面図である。
図6(A)に示すように、パワーユニットに内燃機関を用いる自動二輪車におけるパワーユニット100は、マスタモータ11、スレイブモータ12、及びシャフト部材13等を備える代わりに、内燃機関110及びクランクシャフト120を備えている。
【0047】
内燃機関110は、シリンダ111とシリンダ111に挿入されたピストン112とを備えている。また、ピストン112には、クランクシャフト120が接続されている。自動二輪車の内燃機関110では、シリンダ111内で燃料を燃焼させ、燃料が燃焼して発生する燃焼ガスがピストン112を押し出す。ピストン112が押し出されると、クランクシャフト120が回転し、ピストン112が往復運動を行う。こうして、ピストン112の往復運動がクランクシャフト120によって回転運動に変換されて軸動力が得られる。また、クランクシャフト120には、プライマリドライブギヤ121が取り付けられている。プライマリドライブギヤ121は、プライマリドリブンギヤ40bと噛み合っている。
【0048】
また、パワーユニット100には、キックスタータ130が設けられている。キックスタータ130は、左右方向に沿って配置されたキックスピンドル131を備えている。キックスピンドル131の右端部には、キックアーム132の基端部が取り付けられる。キックスピンドル131の左側部上には、キックドライブギヤ133及び噛合い機構134が同軸支持される。キックドライブギヤ133は、キックアーム132の踏み降ろしによるキックスピンドル131の一方向への回転時にのみ、噛合い機構134を介してキックスピンドル131と一体回転する。
【0049】
キックドライブギヤ133は、変速ギヤ群7のドリブンギヤに噛み合う。キックドライブギヤ133は、変速ギヤ群7、メインシャフト5、多板クラッチ42、プライマリドリブンギヤ40b及びプライマリドライブギヤ121を介して、遠心クラッチ150に接続されている。
【0050】
図2に示す本実施形態に係るパワーユニット10は、
図6(A)に示すパワーユニット100における内燃機関110、クランクシャフト、キックスタータ130、遠心クラッチ150等を一対のモータ及びシャフト部材に載せ替えることにより、
図2に示すパワーユニット10とすることができる。この場合、まず、
図6(A)に示すパワーユニット100における内燃機関110等を、
図6(B)に示すようにして取り外す。具体的には、内燃機関110におけるシリンダ111及びピストン112、さらには、ピストン112に接続されたクランクシャフト120を取り外す。このとき、クランクシャフト120に取り付けられたプライマリドライブギヤ121と、プライマリドリブンギヤ40bとの噛み合いが解消される。なお、クランクシャフト120は、軸受30等に支持されており、この軸受30等は、そのままシャフト部材13を支持するために利用することから、取り外さずに残しておく。
【0051】
続いて、内燃機関110及びクランクシャフト120を取り外した位置に、
図6(C)に示すように、マスタモータ11、スレイブモータ12、及びシャフト部材13を取り付ける。より具体的には、クランクシャフト120が設けられていた位置と同軸状に、シャフト部材13を配置し、シャフト部材13の両端部の位置にマスタモータ11とスレイブモータ12とを配置する。このため、内燃機関110のシリンダ111が設けられていた位置には、何も設けられていない状態となる。さらに、シャフト部材13に設けられたプライマリドライブギヤ40aをプライマリドリブンギヤ40bに噛み合わせる。こうして、内燃機関をモータに載せ替える。
【0052】
このように、内燃機関を備えるパワーユニット100と、モータを備えるパワーユニット10とを比較した場合、クランクシャフト120をシャフト部材13に置き換え、内燃機関110でクランクシャフト120を回転させる代わりにマスタモータ11及びスレイブモータ12でシャフト部材13を回転させることができる。したがって、内燃機関110を搭載した自動二輪車の動力機関をマスタモータ11及びスレイブモータ12に載せ替えて電動二輪車とする場合にも、容易に動力機関の載せ替えを行うことができる。
【0053】
なお、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施形態では、一対のモータを備えていればよく、一対のモータの中央位置に第三のモータを設けてもよいし、さらにそれ以上のモータを設けてもよい。また、モータとしては、アウタロータ型ブラシレスモータを用いているが、インナロータ型ブラシレスモータを用いてもよいし、他のモータを用いてもよい。また、鞍乗型車両として二輪車としているが、三輪車やその他の鞍乗型車両でもよい。
【符号の説明】
【0054】
7…変速ギヤ群(伝達機構、減速機構)
10…パワーユニット
11…マスタモータ(アウタロータ型ブラシレスモータ)
12…スレイブモータ(アウタロータ型ブラシレスモータ)
13…シャフト部材
21…ステータ
22…コイル
23…ステータ保持部材
23A…保持部
23B…鍔部
23C…取付ボルト
25…ロータ
26…ケース
27…ステータ取付ボルト
28…ステータコア
28a…ティース
29…インシュレータ
30…軸受
31…ロータヨーク
32…マグネット
33…側壁部
34…シャフト接続部
35…位置センサ(回転角度検出手段)
36…取付板
40a…プライマリドライブギヤ(伝達機構、減速機構)
40b…プライマリドリブンギヤ(伝達機構、減速機構)
60…コントローラ
80…電動二輪車(鞍乗型電動車両)
91…後輪
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のモータと、
前記一対のモータが両端にそれぞれ取り付けられたシャフト部材と、
前記シャフト部材の回転を駆動輪に伝達する伝達機構と、
前記シャフト部材を回転自在に支持するとともに、前記伝達機構を収納する第1ケースと、を備え、
前記一対のモータは、それぞれ前記第1ケースの車幅方向外側に配置されており、
前記第1ケースの側壁により前記伝達機構と前記モータとが仕切られていることを特徴とする鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項2】
前記一対のモータは、前記第1ケースの側壁と、前記第1ケースの側方に配置された第2ケースとの間の空間に配置されている、
請求項1に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項3】
前記一対のモータは、それぞれ前記第2ケースに覆われている、
請求項2に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項4】
前記伝達機構は、減速機構を含む、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項5】
前記第1ケースの外側に、ステータを保持するステータ保持部材が設けられている、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項6】
前記シャフト部材を支持する軸受が前記第1ケース内に設けられている、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項7】
ステータと前記第1ケースの間に、前記一対のモータの一方の回転角度を検出する回転角度検出手段が設けられている、
請求項6に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項8】
前記一対のモータは、対称となる位置に配置されている、
請求項1~7のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項9】
前記シャフト部材は、前輪と後輪の間に配置されている、
請求項1~8のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項10】
前記シャフト部材は、着座用のシートの下方に配置されている、
請求項1~9のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項11】
前記伝達機構は、
前記シャフト部材と進行方向で並んで配置され、前記シャフト部材の回転力を前記駆動輪に伝達するトランスミッションと、
前記トランスミッションのシフトチェンジを行うためのクラッチ機構と、
を備える、
請求項1~10のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項12】
前記トランスミッションは、前記シャフト部材と平行で、かつ前記シャフト部材と平行に配置されたメインシャフト及びカウンタシャフトを備え、
前記シャフト部材に、前記シャフト部材と同軸上に設けられた第1平歯車と、
前記メインシャフトに設けられ、前記第1平歯車に噛合わされる第2平歯車、及び前記第2平歯車と同軸上に配置された第3平歯車と、
前記カウンタシャフトに設けられ、前記第3平歯車に噛合わされる第4平歯車、及び前記第4平歯車と同軸上に配置され前記駆動輪に動力を伝達する第5平歯車と、
を備え、
前記メインシャフトに前記クラッチ機構が取り付けられている、
請求項11に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項13】
前記一対のモータは、アウタロータ型ブラシレスモータである請求項1~12のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項14】
前記一対のモータの一方の回転角度を検出する回転角度検出手段と、
前記回転角度検出手段が検出した回転角度に基づいて、前記一対のモータの回転制御を行うコントローラと、
を備える請求項1~13のうちいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。
【請求項15】
前記シャフト部材と前記駆動輪との間に、減速機構が介在されている請求項1~14のうちのいずれか1項に記載の鞍乗型電動車両または電動二輪車。