(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171548
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】中空パッケージおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/08 20060101AFI20231124BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L23/08 A
H01L23/30 R
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175759
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2018246180の分割
【原出願日】2018-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】内藤 理
(72)【発明者】
【氏名】本田 那央
(72)【発明者】
【氏名】箱根 吉浩
(72)【発明者】
【氏名】押田 裕己
(72)【発明者】
【氏名】砂田 衛
(57)【要約】
【課題】中空部が設けられた素子の耐成形性に優れるとともに狭い間隙への充填性に優れたパッケージを得るための封止技術を提供する。
【解決手段】中空パッケージ103は、基板109、素子111、隔壁113および天板115を備え、基板109、隔壁113および天板115で覆われた一つ以上の閉じられた中空部117が設けられ、基板109、隔壁113および天板115が封止用樹脂組成物の硬化物で封止されている。天板115および隔壁113はいずれも有機材料により構成されており、天板115の厚さ、隔壁113の厚さ、隔壁の幅および中空部117の最長幅が特定の範囲にある。封止用樹脂組成物は、(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ樹脂を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂ならびに(B)無機充填材を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に搭載された、半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子と、
前記基板の上部に前記素子の外周を取り囲むように設けられた隔壁と、
前記隔壁の上面に接して設けられるとともに前記素子の上部を覆う天板と、
を備え、
前記基板、前記隔壁および前記天板で覆われた一つ以上の閉じられた中空部が設けられているとともに、前記基板、前記隔壁および前記天板が封止用樹脂組成物の硬化物で封止されている中空パッケージであって、
前記天板および前記隔壁がいずれも有機材料により構成されており、
前記天板の厚さが10μm以上50μm以下であり、
前記隔壁の厚さが5μm以上30μm以下であり、前記隔壁の幅が5μm以上200μm以下であり、
前記基板の素子搭載面に垂直な断面における前記中空部の最長幅が60μm以上1000μm以下であり、
前記封止用樹脂組成物が、
(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂、ならびに
(B)無機充填材
を含む、中空パッケージ。
【請求項2】
前記有機材料が、感光性ドライフィルムレジストである、請求項1に記載の中空パッケージ。
【請求項3】
前記有機材料が、ネガ型感光性ドライフィルムレジストである、請求項2に記載の中空パッケージ。
【請求項4】
前記有機材料が、光酸発生剤とエポキシ樹脂とを含有するネガ型感光性ドライフィルムレジストである、請求項3に記載の中空パッケージ。
【請求項5】
前記成分(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1乃至4いずれか1項に記載の中空パッケージ。
【請求項6】
以下の工程1および工程2:
(工程1)基板上に、少なくとも1種の有機材料により構成された隔壁と天板とを形成することで、一つ以上の閉じられた中空部を設ける工程
(工程2)封止用樹脂組成物を0.1MPa以上、5.0MPa未満の低圧で圧縮成形し、前記基板、前記隔壁および前記天板を樹脂封止する工程
を含む、中空パッケージの製造方法であって、
前記工程1が、半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子が前記中空部内に配置されるように前記素子を前記基板上に搭載する工程を含み、
前記封止用樹脂組成物が、
(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂、および
(B)無機充填材
を含む、中空パッケージの製造方法。
【請求項7】
前記有機材料が、感光性ドライフィルムレジストである、請求項6に記載の中空パッケージの製造方法。
【請求項8】
前記有機材料が、ネガ型感光性ドライフィルムレジストである、請求項7に記載の中空パッケージの製造方法。
【請求項9】
前記有機材料が、光酸発生剤とエポキシ樹脂とを含有するネガ型感光性ドライフィルムレジストである、請求項8に記載の中空パッケージの製造方法。
【請求項10】
前記成分(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項6乃至9いずれか1項に記載の中空パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空パッケージおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの封止に関する技術として、特許文献1(米国特許出願公開第2017/0047232号明細書)に記載のものがある。同文献には、基板の上面にバルク弾性波(Bulk Acoustic Wave:BAW)フィルタ素子等の表面実装素子を搭載し、シート状の封止樹脂組成物で表面実装素子を被覆し、封止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0047232号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のパッケージ開発環境において、薄型化、小型化、端子間隔の狭ピッチ化といった要求が高まってきていることを踏まえ、上記文献に記載の技術について本発明者らが検討したところ、中空部を有する素子を封止する場合にも、成形後に中空構造が安定的に維持されるとともに、チップ下の狭い間隙への充填性に優れたパッケージを得るという点で改善の余地があることが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、中空部が設けられた素子の耐成形性に優れるとともに狭い間隙への充填性に優れたパッケージを得るための封止技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
基板と、
前記基板に搭載された、半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子と、
前記基板の上部に前記素子の外周を取り囲むように設けられた隔壁と、
前記隔壁の上面に接して設けられるとともに前記素子の上部を覆う天板と、
を備え、
前記基板、前記隔壁および前記天板で覆われた一つ以上の閉じられた中空部が設けられているとともに、前記基板、前記隔壁および前記天板が封止用樹脂組成物の硬化物で封止されている中空パッケージであって、
前記天板および前記隔壁がいずれも有機材料により構成されており、
前記天板の厚さが10μm以上50μm以下であり、
前記隔壁の厚さが5μm以上30μm以下であり、前記隔壁の幅が5μm以上200μm以下であり、
前記基板の素子搭載面に垂直な断面における前記中空部の最長幅が60μm以上1000μm以下であり、
前記封止用樹脂組成物が、
(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂、ならびに
(B)無機充填材
を含む、中空パッケージが提供される。
【0007】
また、本発明によれば、
以下の工程1および工程2:
(工程1)基板上に、少なくとも1種の有機材料により構成された隔壁と天板とを形成することで、一つ以上の閉じられた中空部を設ける工程
(工程2)封止用樹脂組成物を0.1MPa以上、5.0MPa未満の低圧で圧縮成形し、前記基板、前記隔壁および前記天板を樹脂封止する工程
を含む、中空パッケージの製造方法であって、
前記工程1が、半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子が前記中空部内に配置されるように前記素子を前記基板上に搭載する工程を含み、
前記封止用樹脂組成物が、
(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂、および
(B)無機充填材
を含む、中空パッケージの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中空部が設けられた素子の耐成形性に優れるとともに狭い間隙への充填性に優れたパッケージを得るための封止技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態における構造体の構成を示す断面図である。
【
図2】本実施形態における構造体の製造工程を示す断面図である。
【
図3】本実施形態における構造体の製造工程を示す断面図である。
【
図4】中空部が設けられた構造体の耐成形性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。また、数値範囲の「X~Y」は断りがなければ、「X以上Y以下」を表す。
【0011】
(中空パッケージ、構造体)
図1は、本実施形態における構造体の構成の一例を示す断面図である。
図1に示した構造体100は、基板101上に、中空パッケージ103およびパッケージ105が搭載されたものである。基板101としては、たとえばインターポーザ等の有機基板を用いることができる。
中空パッケージ103およびパッケージ105はいずれも封止材107により封止されている。封止材107は、封止用樹脂組成物の硬化物からなる。
以下、中空パッケージ103およびパッケージ105をそれぞれ説明する。
【0012】
はじめに、中空パッケージ103について説明する。中空パッケージ103は、基板109と、基板109に搭載された、半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上の素子111と、基板109の上部に素子111の外周を取り囲むように設けられた隔壁113と、隔壁113の上面に接して設けられるとともに素子111の上部を覆う天板115と、を備える。中空パッケージ103には、基板109、隔壁113および天板115で覆われた一つ以上の閉じられた中空部117が設けられている。そして、基板109、隔壁113および天板115が封止材107により封止されている。封止材107は、封止用樹脂組成物の硬化物である。封止用樹脂組成物の構成については後述する。
中空パッケージ103は、天板115の上部に設けられたバンプ119により基板101にフリップチップ接続されている。また、バンプ119と基板101上の導電体とを接続する配線(不図示)が、天板115の上面および側面、隔壁113の側面ならびに基板101の上面にわたって設けられていてもよい。
【0013】
素子111は、半導体素子、MEMSおよび電子部品からなる群から選択される1種以上であればよく、具体的には中空構造が設けられたパッケージに適用される素子である。かかる素子111の具体例として、BAWフィルタ、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタ等の高周波フィルタが挙げられる。
【0014】
基板109の材料は、素子111の種類等に応じて選択できる。基板109は、たとえばシリコン基板等の半導体基板であってもよい。また、素子111が高周波フィルタであるとき、基板109の材料として、好ましくはタンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)等の圧電体が挙げられる。
【0015】
隔壁113および天板115の大きさは、素子111の大きさにより設定できる。
隔壁113の厚さは、素子111の周囲に中空部117を確保する観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上である。また、中空パッケージ103の薄型化の観点から、隔壁113の厚さは、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
隔壁113の幅は、耐成形性を向上する観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。また、中空パッケージ103の小型化の観点から、隔壁113の幅は、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。
ここで、隔壁113の厚さは、基板109に垂直方向の隔壁113の長さをいい、隔壁113の幅は、基板109の面内方向の隔壁113の長さをいう。
【0016】
天板115の厚さは、耐成形性を向上する観点から、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。また、中空パッケージ103の薄型化の観点から、天板115の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
ここで、天板115の厚さは、基板109に垂直方向の天板115の長さをいう。
【0017】
基板109の素子搭載面に垂直な断面における中空部117の最長幅は、素子111の周囲に中空部117を確保する観点から、好ましくは60μm以上であり、より好ましくは100μm以上である。また、中空パッケージ103の小型化の観点から、中空部117の上記最長幅は、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは800μm以下である。
中空部117の断面形状として、たとえば矩形が挙げられる。また、中空部117の平面形状として、たとえば正方形、矩形、多角形、円形、楕円形、またはそれらが結合した形状が挙げられる。
【0018】
隔壁113および天板115は、いずれも好ましくは有機材料により構成される。隔壁113と天板115の材料は、同種であっても異種であってもよい。
隔壁113および天板115の少なくとも一方が有機材料であるとき、かかる有機材料は、隔壁113および天板115を簡便な工程で安定的に形成する観点から、好ましくは感光性ドライフィルムレジストであり、より好ましくはネガ型感光性ドライフィルムレジストであり、さらに好ましくは光酸発生剤とエポキシ樹脂とを含有するネガ型感光性ドライフィルムレジストである。
また、同様の観点から、隔壁113および天板115は、好ましくは感光性樹脂組成物の硬化物により構成される。以下、感光性樹脂組成物の構成を具体的に説明する。
【0019】
(感光性樹脂組成物)
隔壁113または天板115の形成に用いられる感光性樹脂組成物として、ポリイミド、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、ポリベンゾオキサゾール、マレイミド、アクリレート樹脂、フェノール樹脂またはエポキシ樹脂等を主成分とする各種感光性樹脂組成物が使用可能であるが、たとえば国際公開第2012/008472号に記載のものを用いることができる。このとき、感光性樹脂組成物は、好ましくは光酸発生剤およびエポキシ樹脂を含む。
【0020】
光酸発生剤は、好ましくはトリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含み、より好ましくはトリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとして、たとえばBASF社製Irgacure(登録商標)PAG 290を用いることができる。
【0021】
感光性樹脂組成物中の光酸発生剤の含有量は、光酸発生剤とエポキシ樹脂との合計量を100質量%として、好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下である。
【0022】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、感光性樹脂組成物の硬化収縮率を低下する観点から、好ましくは150g/eq.以上である。また、感光性樹脂組成物の架橋密度が過度に低下して硬化膜の強度や耐薬品性、耐熱性、耐クラック性等が低下することを抑制する観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは500g/eq.以下である。
ここで、エポキシ当量は、JIS K7236に準拠した方法で測定される。
【0023】
また、エポキシ樹脂の軟化点は、マスクスティッキングを抑制する観点、および、常温での軟化を抑制する観点から、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上である。また、基板109への貼合性を高める観点から、エポキシ樹脂の軟化点は、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。
ここで、軟化点は、JIS K7234に準拠した方法で測定される。
【0024】
エポキシ樹脂は、より好ましくは上述した範囲のエポキシ当量および上述した範囲の軟化点を有し、かかるエポキシ樹脂の具体例として、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020、EOCN-4400H、EPPN-201、EPPN-501H、EPPN-502H、XD-1000、BREN-S、NER-7604、NER-7403、NER-1302、NER-7516、NC-3000H(いずれも商品名、日本化薬社製)、エピコート157S70(商品名、三菱化学社製)、EHPE3150(商品名、ダイセル化学工業社製)が挙げられる。
【0025】
エポキシ樹脂の具体例として、ノボラック型エポキシ樹脂、オレフィンを有する化合物の酸化反応によって得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
また、硬化物の耐薬品性、プラズマ耐性および透明性が高く、さらに硬化物が低吸湿であるという点から、好ましいエポキシ樹脂の具体例として、エピコート157(三菱化学社製、エポキシ当量180~250g/eq.、軟化点80~90℃)、EPON SU-8(商品名、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ社製、エポキシ当量195~230g/eq.、軟化点80~90℃)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;
NC-3000(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量270~300g/eq.、軟化点55~75℃)等のビフェニル-フェノールノボラック型エポキシ樹脂;
NER-7604およびNER-7403(いずれも商品名、アルコール性水酸基の一部がエポキシ化されたビスフェノールF型エポキシ樹脂、日本化薬社製、エポキシ当量200~500g/eq.、軟化点55~75℃)、NER-1302およびNER-7516(いずれも商品名、アルコール性水酸基の一部がエポキシ化されたビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬社製、エポキシ当量200~500g/eq.、軟化点55~75℃)等のアルコール性水酸基の一部がエポキシ化されたビスフェノールA型もしくはF型エポキシ樹脂;
EOCN-1020(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量190~210g/eq.、軟化点55~85℃)等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;
NC-6300(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量230~235g/eq.、軟化点70~72℃)等の多官能エポキシ樹脂;
特開平10-97070号公報に製法が記載されたポリカルボン酸エポキシ樹脂(エポキシ当量は通常300~900g/eq.)等の、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、1分子中に少なくとも1個以上の水酸基および1個のカルボキシル基を有する化合物との反応物に、多塩基酸無水物を反応させることにより得られるエポキシ樹脂;
EPPN-201(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量180~200g/eq.、軟化点65~78℃)等のトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂;
EPPN-501H(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量162~172g/eq.、軟化点51~57℃)、EPPN-501HY(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量163~175g/eq.、軟化点57~63℃)、EPPN-502H(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量158~178g/eq.、軟化点60~72℃)等のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;
EHPE3150(商品名、ダイセル化学工業社製、エポキシ当量170~190g/eq.、軟化点70~85℃)等の脂環式エポキシ樹脂;
XD-1000(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量245~260g/eq.、軟化点68~78℃)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ならびに
特開2007-291263号公報に記載の方法により得られる共縮合物であるエポキシ樹脂(エポキシ当量は、通常400~900g/eq.)が挙げられる。
【0026】
感光性樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、中空部117の耐成形性を向上する観点から、光酸発生剤とエポキシ樹脂との合計量を100質量%として、好ましくは85質量%以上であり、また、好ましくは99.9質量%以下である。
【0027】
感光性樹脂組成物は、光酸発生剤およびエポキシ樹脂以外の成分を含んでもよく、かかる成分の具体例として、混和性のある反応性エポキシモノマーおよび溶剤の1種以上を含んでもよい。
感光性樹脂組成物が反応性エポキシモノマーを含むことにより、パターンの性能を改良することができる。反応性エポキシモノマーの具体例として、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(ADEKA製、ED506)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ADEKA製、ED505)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(低塩素タイプ、ナガセケムテックス社製、EX321L)、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等が挙げられ、好ましくはこれらのうち低塩素製造法または精製工程を経た低塩素タイプのものである。
反応性エポキシモノマーの含有量は、光酸発生剤、エポキシ樹脂および適宜反応性エポキシモノマーの合計をレジストの固形分とした場合、マスクスティッキングを抑制する観点から、上記固形分中に好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下である。
尚、本明細書における反応性エポキシモノマーとは、GPCの測定結果に基づいて、ポリスチレン換算で算出した重量平均分子量が1,000以下の室温で液状のエポキシ化合物を意味する。
【0028】
また、感光性樹脂組成物が溶剤を含むことにより、感光性樹脂組成物の粘度を下げ、塗膜性を向上することができる。溶剤としては、インキ、塗料等に通常用いられる有機溶剤であって、感光性樹脂組成物の各構成成分を溶解することができるものであれば制限なく用いることができる。溶剤の具体例としては、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類;メタノール、エタノール、セロソルブ、メチルセロソルブ等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。
溶剤の含有量は、主成分の溶解性や成分の揮発性、組成物の液粘度等を適正に保持する観点から、感光性樹脂組成物全体に対して好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0029】
また、感光性樹脂組成物は、基板に対する組成物の密着性を向上させる観点から、密着性付与剤をさらに含んでもよい。密着性付与剤は、たとえばシランカップリング剤およびチタンカップリング剤などのカップリング剤であり、好ましくはシランカップリング剤である。
密着性付与剤の含有量は、硬化膜の物性低下を抑制する観点から、感光性樹脂組成物全体に対して好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。
【0030】
感光性樹脂組成物は、さらに紫外線を吸収し、吸収した光エネルギーを光酸発生剤に供与する観点から、増感剤を含んでもよい。
増感剤の具体例として、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類、9,10-ジメトキシ-2-エチルアントラセン等の9位と10位にC1~C4アルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体)が挙げられる。9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体は、さらに置換基を有していてもよい。
増感剤は、より好ましくは2,4-ジエチルチオキサントンおよび9,10-ジメトキシ-2-エチルアントラセンである。
増感剤は少量でも効果が発揮されることから、その含有量は、光酸発生剤に対してたとえば0質量%超であり、また、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。
【0031】
また、光酸発生剤由来のイオンによる影響を低減する必要がある場合には、感光性樹脂組成物は、有機アルミニウム化合物などのイオン捕捉剤をさらに含んでもよい。
イオン捕捉剤の配合量は、光酸発生剤およびエポキシ樹脂および適宜反応性エポキシモノマーの合計をレジストの固形分とした場合、かかる固形分に対してたとえば0質量%超であり、また、好ましくは10質量%以下である。
【0032】
感光性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を含んでもよい。
熱可塑性樹脂としては、たとえばポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリカーボネートが挙げられる。
着色剤としては、たとえばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジン・グリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックが挙げられる。
増粘剤としては、たとえばオルベン、ベントン、モンモリロナイトが挙げられる。
消泡剤としては、たとえばシリコーン系、フッ素系および高分子系等の消泡剤が挙げられる。
これらの添加剤の配合量は、使用目的に応じ適宜することができるが、感光性樹脂組成物全体に対して、たとえばそれぞれ0.1質量%以上であり、また、30質量%以下である。
【0033】
また、感光性樹脂組成物は、無機充填材をさらに含んでもよい。無機充填材の具体例として、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉が挙げられる。
無機充填材の配合比率は、たとえば感光性樹脂組成物中0質量%超であり、また、たとえば60質量%以下である。
【0034】
感光性樹脂組成物は、中空部117の耐成形性を向上する観点から、好ましくは、光酸発生剤を0.1質量部以上15質量部以下、エポキシ樹脂を85質量部以上99.9質量部以下、反応性エポキシモノマーを1質量部以上10質量部以下、溶剤を5.8質量部以上2090質量部以下含み、必要に応じて、上述の密着性付与剤、増感剤、イオン捕捉剤、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤および無機充填材を添加してもよい。
【0035】
次に、感光性樹脂組成物の製造方法を説明する。
本実施形態において、感光性樹脂組成物は、たとえば所定の配合量の原料成分を、通常の方法で混合、攪拌することにより得られ、必要に応じてディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いて分散、混合してもよい。また、混合後、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過してもよい。
【0036】
次に、感光性樹脂組成物の性状について説明する。感光性樹脂組成物は、たとえば液状とすることができる。
また、感光性樹脂組成物は好ましくはドライフィルムレジストである。ドライフィルムレジストは、ベースフィルム上に、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いて感光性樹脂組成物を塗布した後、たとえば45℃以上100℃以下に設定した乾燥炉で乾燥し、所定量の溶剤を除去して得られる。また、レジスト上に適宜カバーフィルム等を積層してもよい。レジストの基材となるベースフィルムおよびカバーフィルムの具体例として、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、TAC、ポリイミド等のフィルムが挙げられる。これらフィルムはシリコーン系離型処理剤や非シリコーン系離型処理剤等により離型処理されていてもよい。
【0037】
次に、
図1に戻り、パッケージ105について説明する。パッケージ105は、半導体素子121がバンプ123により基板101の素子搭載面にフリップチップ接続されてなる。パッケージ105においては、半導体素子121およびバンプ123が、封止材107により封止されている。
【0038】
パッケージ105の具体例として、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、SiP(System In Package)、LGA(Land Grid Allay)が挙げられる。
【0039】
次に、封止材107について説明する。封止材107は、封止用樹脂組成物の硬化物である。
図1においては、基板101の素子搭載面全面にわたって設けられており、中空パッケージ103およびパッケージ105を封止している。
【0040】
(封止用樹脂組成物)
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、中空パッケージ103の基板109、隔壁113および天板115の封止に用いられるものであり、以下の成分(A)および(B)を含む。
(A)分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むエポキシ樹脂
(B)無機充填材
【0041】
(成分(A))
成分(A)のエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を2つ含むエポキシ樹脂および分子内にエポキシ基を3つ以上含むエポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
封止用樹脂組成物の充填特性を向上する観点、および、中空パッケージの耐成形性を向上する観点から、成分(A)は、好ましくはビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;およびビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含み、より好ましくはビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0042】
封止用樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、成形時に好適な流動性を得て充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。
中空パッケージ103の耐成形性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下である。
【0043】
(成分(B))
成分(B)の無機充填材としては、一般的に封止用樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。無機充填材の具体例として、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ;アルミナ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、汎用性に優れている観点から、無機充填材がシリカを含むことが好ましく、溶融シリカを用いることがより好ましい。
【0044】
無機充填材の大きさについては、封止用樹脂組成物の流動性を高め、半導体素子等の素子111と基板との間にボイト等の発生なく封止用樹脂組成物を充填できる観点から、目開き20μmの篩を通したときの篩下画分の含有量が、無機充填材全体に対して好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。また、上記目開き20μmの篩を通したときの篩下画分の含有量の上限に制限はなく、100質量%以下である。
【0045】
封止用樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、得られる半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の無機充填材全体の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0046】
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂および無機充填材以外の成分を含んでもよい。
たとえば、封止用樹脂組成物は、硬化剤をさらに含んでもよい。
【0047】
(硬化剤)
硬化剤は、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0048】
重付加型の硬化剤としては、たとえばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノールなどのフェノール樹脂硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0049】
触媒型の硬化剤としては、たとえばベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0050】
縮合型の硬化剤としては、たとえばフェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0051】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、および保存安定性等についてのバランスを向上させる観点から、フェノール樹脂硬化剤が好ましい。フェノール樹脂硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量、分子構造は限定されない。
【0052】
硬化剤に用いられるフェノール樹脂硬化剤としては、たとえばビフェニルアラルキル型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂等の変性トリフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性および充填性を向上させる観点からは、フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂等の多官能型フェノール樹脂を用いることがより好ましい。また、同様の観点から、ビフェニルアラルキル系フェノール樹脂およびトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群から選択される1種以上を用いることも好ましい。
【0053】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図る観点から封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の硬化物を封止材とする半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0054】
また、封止用樹脂組成物には、上述した成分以外の成分を含んでもよく、たとえばカップリング剤、硬化促進剤、流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、低応力成分、難燃剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤のうち1種以上を適宜配合することができる。
このうち、カップリング剤は、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、2級アミノシラン等のアミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム化合物等の公知のカップリング剤から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
硬化促進剤は、たとえば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
流動性付与剤の具体例として、2,3-ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類、ならびにパラフィンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
イオン捕捉剤の具体例として、ハイドロタルサイトが挙げられる。
低応力成分の具体例として、シリコーンオイル、シリコーンゴムが挙げられる。
難燃剤の具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンが挙げられる。
着色剤の具体例として、カーボンブラック、ベンガラが挙げられる。
酸化防止剤の具体例として、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物が挙げられる。
【0055】
封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、硬化物の耐熱性を向上させる観点から、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。
また、硬化物のTgの上限に制限はないが、硬化物の靭性を向上する観点から、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
ここで、硬化物のガラス転移温度は、熱機械分析(Thermal Mechanical Analysis:TMA)装置(セイコーインスツル社製、TMA100)を用いて測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件で測定される。
【0056】
本実施形態において、封止用樹脂組成物の形状は、好ましくはタブレット状または粒子状である。粒子状の封止用樹脂組成物として、具体的には、粉粒体のものが挙げられる。ここで、封止用樹脂組成物が粉粒体であるとは、粉末状または顆粒状のいずれかである場合を指す。
【0057】
次に、封止用樹脂組成物の製造方法を説明する。
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また得られた封止用樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
【0058】
本実施形態においては、上述した構成の感光性樹脂組成物および封止用樹脂組成物をそれぞれ用いるとともに、隔壁113および天板115の大きさを所定の大きさとすることにより、中空パッケージ103における中空部117が安定的に維持されるとともに、複数のバンプ123間等の狭い間隙の充填性に優れた構造体100を得ることができる。
【0059】
なお、
図1においては、基板101上に中空パッケージ103およびパッケージ105が搭載された例を示したが、本実施形態において、構造体は、中空パッケージのみが搭載されたものであってもよいし、中空パッケージと中空部を有しない素子とが混載されていてもよい。また、構造体が複数のパッケージを含むとき、複数のパッケージは後工程で個片化されてもよい。
【0060】
次に、中空パッケージ103およびこれを備える構造体100の製造方法を説明する。本実施形態において、中空パッケージ103の製造方法は、以下の工程1および工程2を含む。
(工程1)基板109上に、少なくとも1種の有機材料により構成された隔壁113と天板115とを形成することで、一つ以上の閉じられた中空部117を設ける工程
(工程2)前述した本実施形態における封止用樹脂組成物を0.1MPa以上、5.0MPa未満の低圧で圧縮成形し、基板109、隔壁113および天板115を樹脂封止する工程
以下、
図2(a)~
図2(d)を参照してさらに具体的に説明する。
図2(a)~
図2(d)は、構造体100の製造工程を示す断面図である。
【0061】
まず、
図2(a)に示したように、基板109上に素子111を搭載する。
次に、
図2(b)に示したように、基板109の素子搭載面に、素子111の外周を取り囲む隔壁113を素子111から離隔して形成し、隔壁113上に隔壁113の上部を覆う天板115を形成するとともに、中空部117を設ける。但し、
図3(a)~
図3(e)を参照して後述するように、場合によっては隔壁形成後に素子111を搭載し、最後に天板115を形成することもあり得る。
【0062】
所定の平面形状を有する隔壁113および天板115の形成は、たとえば、前述した感光性樹脂組成物を用いて、国際公開第2012/008472号に記載の方法を用いておこなうことができる。
具体的には、液状の感光性樹脂組成物を使用する場合、たとえばスピンコーター等を用いて、素子111が設けられた基板109上に感光性樹脂組成物をたとえば0.1μm以上1000μm以下の厚さで塗布し、たとえば60℃以上130℃以下で5分間以上60分間以下の時間熱処理して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成する。その後、隔壁113の平面形状に応じたパターンを有するマスクを載置して、紫外線を照射し、たとえば50℃以上130℃以下で1分間以上50分間以下の加熱処理をおこなう。その後、未露光部分を、現像液を用い、たとえば15℃以上50℃以下で1分間以上180分間以下現像してパターンを形成する。
これをたとえば130℃以上200℃以下の温度で加熱処理して、永久保護膜が得られる。現像液としては、たとえばγ-ブチロラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤、あるいは、これらの有機溶剤と水の混合液等を用いることができる。現像にはパドル型、スプレー型、シャワー型等の現像装置を用いてもよく、適宜超音波照射をおこなってもよい。
【0063】
また、ドライフィルムレジストを使用する場合には、たとえばカバーフィルムを除去し、ハンドロール、ラミネーター等により、たとえば温度30℃以上100℃以下、圧力0.05MPa以上2MPa以下で基板109に転写し、液状の感光性樹脂組成物の場合に準じて露光、露光後ベーク、現像、加熱処理をすればよい。
天板115については隔壁113の形成後、上述のドライフィルムレジストを使用する場合の方法に準じて形成することができる。
フィルム状の感光性樹脂組成物(ドライフィルムレジスト)を用いることにより、基板109への塗布、および乾燥の工程を省略することができるため、隔壁113および天板115の製造工程を簡素化することができる。
【0064】
天板115の形成後、天板115の上面すなわち隔壁113との接合面の裏面の所定の位置に、ソルダーバンプ等のバンプ119を形成する(
図2(b))。
【0065】
図2(a)および
図2(b)では、基板109上に複数の素子111を搭載する例を示しており、この場合、
図2(c)に示したように、基板109を素子111ごとに個片化することにより、複数のパッケージを得る。
【0066】
次いで、基板101上の所定の位置に、個片化したパッケージをバンプ119にてフリップチップ接続する。構造体100の製造においては、また、基板101上の所定の位置に半導体素子121をバンプ123にてフリップチップ接続する(
図2(d))。
【0067】
その後、基板101の素子搭載面を本実施形態における封止用樹脂組成物で封止し、封止材107を形成する。このとき、中空パッケージ103の耐成形性を向上する観点、および、バンプ123間等の狭い間隙への充填性を向上する観点から、好ましくは圧縮成形により封止材107を形成する。
同様の観点から、圧縮成形における成形圧力は、好ましくは0.1MPa以上であり、より好ましくは0.5MPa以上であり、また、好ましくは5.0MPa未満であり、より好ましくは3.0MPa以下、さらに好ましくは2.0MPa以下、さらにより好ましくは1.0MPa以下である。
【0068】
以上の工程により、中空パッケージ103およびパッケージ105を備える構造体100を得ることができる。本実施形態においては、成分(A)および(B)を含む封止用樹脂組成物を用いた圧縮成形法による低圧成形をおこなうことにより、中空パッケージ103に設けられた中空部117の耐成形性を優れたものとすることができるとともに、パッケージ105において、バンプ123が狭ピッチで配置される場合にも、バンプ123の間隙の充填特性を優れたものとすることができる。
【0069】
なお、以上においては、基板109上に、素子111を搭載した後、隔壁113および天板115を形成したが、各部材の形成順序はこれ以外としてもよい。たとえば、
図3(a)~
図3(e)は、構造体110の別の製造工程を示す断面図である。
【0070】
図3(a)~
図3(e)に示した製造工程では、まず、基板109上の所定の位置に隔壁113を形成する(
図3(a))。その後、素子111を、その外周を隔壁113に取り囲まれるように、基板109上に搭載する(
図3(b))。
次いで、隔壁113上に隔壁113の上部を覆う天板115を形成するとともに、中空部117を設ける(
図3(c))。
これらの各工程は、たとえば、
図2(a)および
図2(b)を参照して前述した工程に準じておこなうことができる。
【0071】
その後、
図2(b)および
図2(c)を参照した各工程に準じて、ソルダーバンプ等のバンプ119を形成し(
図3(c))、基板109を素子111ごとに個片化することにより、複数のパッケージを得る(
図3(d))。そして、
図2(d)を参照した工程に準じて、個片化したパッケージを、基板101上の所定の位置にフリップチップ接続する(
図3(e))。
【0072】
以上の工程によっても、中空パッケージ103およびパッケージ105を備える構造体100が得られ、前述した効果と同様の効果が得られる。
【0073】
以上、実施形態に基づき、本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
【実施例0074】
以下、本実施形態について、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
表1に示す配合で封止用樹脂組成物を調製し、得られた組成物の硬化物により素子を封止したときの充填特性および中空部の耐成形性を評価した。
はじめに、以下の例で用いた封止用樹脂組成物の原料成分を示す。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC3000L)及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャバンエポキシレジン社製、jER(登録商標)YL6810)の混合樹脂
エポキシ樹脂2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC3000L)
(硬化剤)
硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS)
(触媒)
触媒1:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート及びテトラフェニルホスホニウム-4,4'-スルフォニルジフェノラート
(無機充填材)
無機充填材1:溶融球状シリカ(マイクロン社製、TS-6021)目開き20μmの篩を通過した画分:100質量%
【0076】
(封止用樹脂組成物の調製)
表1に記載の配合に基づき、2軸型混練押出機を用いて110℃、7分間の条件で原材料を混練した。得られた混練物を、脱気、冷却を行った後に粉砕機で粉砕し、粒状の封止用樹脂組成物を得た。
【0077】
(封止用樹脂組成物の物性)
(Tg)
圧縮成形機(TOWA社製、PMC1040)を用いて、金型に、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、得られた封止用樹脂組成物を圧縮成形することにより硬化物を得た。この硬化物は、長さ10mm、幅4mm、厚さ4mmであった。
次いで、得られた硬化物を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業社製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定をおこない、Tgを算出した。
【0078】
(評価)
(充填特性)
基板(銅回路を備えるプリント配線基板)上に、厚さ100μm、5mm×5mm各の半導体素子をバンプでフリップチップ接続した。バンプの材料はCu、バンプ高さ50μm、バンプ径90μm、バンプ間のピッチは90μmとした。1つの基板上に、上記半導体素子を6つ接着し、半導体素子を搭載した面が下向きになるようにして、基板固定手段により上型に固定した。次いで、封止用樹脂組成物からなる樹脂粒状体を下型キャビティ内に供給したのち、キャビティ内を減圧にしながら、圧縮成形機(TOWA社製)によりパネル成形し、成形品を得た。この際の成形条件は、金型温度150℃または175℃、成形圧力1.0MPaまたは2.0MPa、硬化時間300秒とした。
得られた成形品を個片化せず、そのまま、keyence社製マイクロスコープ用いて充填性を評価した。6つの半導体素子について、バンプ間の領域において未充填、ボイド等の充填不良の有無を確認し、6つの素子数のうち充填不良が生じた素子の数を充填不良発生率(%)とした。
【0079】
【0080】
表1より、実施例1で得られた封止用樹脂組成物は、狭い間隙への充填性に優れていた。
【0081】
(中空部の耐成形性)
中空部が設けられた構造体を実施例1の封止用樹脂組成物で封止した際の中空部の耐成形性を評価した。
【0082】
ネガ型感光性ドライフィルムレジストとして、SU-8 3000CF DFRシリーズ(商品名、日本化薬社製、エポキシ樹脂および光酸発生剤等を含む厚さ20μm(3020CF)、30μm(3030CF)および45μm(3045CF)の各ドライフィルムレジスト)を用いた。
【0083】
中空部が設けられた構造体は以下の手順で形成した。すなわち、シリコンウェハ上に、ネガ型感光性ドライフィルムレジストのカバーフィルムを剥離して、ロール温度70℃、エアー圧力0.2MPa、速度0.5m/minで所定の回数ラミネートし、所定の厚さの感光性樹脂組成物層を得た。この感光性樹脂組成物層に、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いてパターン露光(ソフトコンタクト、i線)をおこなった。その後、ホットプレートにより95℃で4分間の露光後ベークをおこない、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて浸漬法により23℃で5分間現像処理をおこない、ウェハ上に硬化した樹脂パターンを得た。その後、温風対流式オーブンを用いて180℃、60分間のハードベークを施した。得られた樹脂パターンは、所定の高さおよび幅のライン状の樹脂が所定の間隔で平行に配置された形状を有し、これを隔壁とした。
次に、隔壁が形成されたウェハ上に、感光性ドライフィルムレジストのカバーフィルムを剥離して、ロール温度40℃、エアー圧力0.1MPa、速度1.0m/minで所定の回数ラミネートし、所定の厚さの感光性樹脂組成物層を得た。そして、隔壁の形成方法に準じてパターン露光、露光後ベーク、現像処理およびハードベークをおこない、隣接する隔壁間の上部を覆う樹脂パターンを所定の幅および厚さで形成し、これを天板とした。
隔壁および天板のサイズを以下に示す。
隔壁の厚さ(空隙の高さ):20μm
隔壁の間隔(空隙の幅):10~500μm(10μm毎に作製)
隔壁の幅:30μm
天板の厚さ:20μm、30μmまたは45μm
天板の幅:上記隔壁の間隔それぞれに両隔壁の幅の和(60μm)を加えたもの。70~560μm
【0084】
天板および隔壁からなる構造体が形成されたウェハを圧縮成形機(TOWA社製)内に配置し、実施例1の封止用樹脂組成物を用い圧縮成形し、試料を得た。圧縮成形条件は、金型温度175℃、成形圧力1.0MPa、2.0MPaまたは3.0MPa、硬化時間120秒とした。
【0085】
実施例1で得られた試料について、中空部の耐成形性を評価した。すなわち、各試料について、中空部の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、以下に基づき天板の最大変位(Maximum cap displacement:δmax)を測定し、δmaxが5μm未満のものを合格とした。
δmax=隔壁上の天板表面高さ-隔壁の間隔の中点における天板表面の高さ
【0086】
図4は、各天板厚における成形圧力(MPa)と、δmaxについて合格が得られた天板幅の最大値(μm)との関係を示す図である。