(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171598
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】証券取引執行を最適化するためのシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20231124BHJP
【FI】
G06Q40/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176539
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2020540250の分割
【原出願日】2018-10-01
(31)【優先権主張番号】62/566,789
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520115071
【氏名又は名称】インペラティブ エクセキューション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジニス ロマン
(57)【要約】
【課題】取引執行を最適化する。
【解決手段】証券の直近取引に対する市場反応を計算するステップと、計算された市場反応、並びに過去の市場データ及びリアルタイムの市場データのうちの少なくとも1つに応じて、証券についてのマッチングパラメータを算出するステップと、次のマッチングのための取引窓を算出するステップと、窓中に取引を執行するステップと、によって取引執行を最適化するためのシステム及び方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引システムにおける取引執行を最適化する方法であって、
前記取引システムが、クライアントデバイスから証券のリアルタイム注文を受信するステップと、
前記取引システムが、前記証券の直近取引に対する市場反応を計算するステップと、
前記取引システムが、前記市場反応、並びに前記証券についての過去の市場データ及び前記証券についてのリアルタイムの市場データのうちの少なくとも1つに応じて、前記証券についてのマッチング時間及びマッチングサイズを算出するステップと、
前記取引システムが、前記マッチング時間及び前記マッチングサイズに従って、前記証券の取引を執行するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記算出するステップは、前記取引を執行するステップの後の逆選択を低減するために、複数の計算された市場反応及び複数の過去の市場データに基づいて機械学習するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記算出するステップは、前記取引を執行するステップの後の市場影響を低減するために、複数の計算された市場反応及び複数の過去の市場データに基づいて機械学習するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記算出するステップは、前記取引を執行するステップの後の逆選択を低減するために、前記マッチング時間及び前記マッチングサイズを選択するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記算出するステップは、前記取引を執行するステップの後の市場影響を低減するために、前記マッチング時間及び前記マッチングサイズを選択するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マッチング時間は取引時間窓である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マッチングサイズは、注文の部分約定のための最大閾値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記算出するステップは、前記取引システムが、前記市場反応と、前記証券の前記過去の市場データ及び前記証券のリアルタイムの市場データの少なくとも一方に基づいて、前記証券のマッチング価格を計算することを含み、
前記執行するステップは、前記取引システムが、前記マッチング価格に従って前記証券の取引を執行することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マッチング時間はマッチングレジデンシ時間閾値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
証券取引執行を最適化するための取引システムであって、
証券の直近取引に対する市場反応を計算するためのプロセッサと、
前記市場反応、並びに過去の市場データ及びリアルタイムの市場データのうちの少なくとも1つに応じて、前記証券についてのマッチング時間及びマッチングサイズを算出するための機械学習エンジンと、
クライアントデバイスから前記証券のリアルタイム注文を受信し、前記マッチング時間及び前記マッチングサイズに従って前記証券の取引を執行するためのマッチングエンジンと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
前記機械学習エンジンは、複数の計算された市場反応及び複数の過去の市場データを利用して前記マッチング時間及び前記マッチングサイズを算出することにより、前記証券の前記取引後の逆選択を低減する、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記機械学習エンジンは、複数の計算された市場反応及び複数の過去の市場データを利用して前記マッチング時間及び前記マッチングサイズを算出することにより、前記証券の前記取引後の市場影響を低減する、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記マッチング時間及び前記マッチングサイズが算出されることにより、前記証券の前記取引後の逆選択を低減する、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記マッチング時間及び前記マッチングサイズが算出されることにより、前記証券の前記取引後の市場影響を低減する、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記マッチング時間は取引時間窓である、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記マッチングサイズは、注文の部分約定のための最大閾値である、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記機械学習エンジンは、前記市場反応と、前記証券の前記過去の市場データ及び前記証券のリアルタイムの市場データの少なくとも一方に基づいて、前記証券のマッチング価格を計算し、
前記マッチングエンジンは、前記マッチング価格に従って前記証券の取引を執行する、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記マッチング時間はマッチングレジデンシ時間閾値を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月2日に出願された米国仮特許出願第62/566,789号の優先権を主張し、この出願の内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
公設市場の効率は、証券における投資家に多大な影響を及ぼすことがある。1株当たり1ペニーの追加の取引支出が、投資信託、年金基金及びヘッジファンド等の大量のトレーダに年当たり数億ドルのコストを課すことがある。かかる取引コストは、「執行コスト」として必然的に顧客及び取引先に回され、そして、投資家のリターンを直接的に減少させる。数十年にわたって複利計算すると、そのような比較的小さい取引非効率性であっても、合計が非常に大きくなり、個人の引退者から経済全体までの市場内の株を保有する全ての人に影響を及ぼす。
【0003】
証券取引所は、市場参加者同士の間の取引を促進する際に重要な役割を演ずる。単純な機械的な意味において、為替は投資家のそれぞれの売買注文をマッチングさせて、完了取引についてレポートする。それらのマッチング過程は、どの注文がマッチングさせられる資格があり、それが何時であるかを管理する公定のルールの組に従う。特定の証券の市場効率は、かかるマッチングルールがどのようにうまく設計され、実装されているかに依存する。
【0004】
Limit Order Book(LOB)方法を用いる為替において、市場参加者は、特定量での特定価格で証券を売買するように注文を出す。特定量での指定値以下の価格で証券を買う注文は、「入札」と呼ばれる。特定量での指定値以上の価格で証券を売る注文は、「申し出」と呼ばれる。最高価格を有する入札は、「最高入札」と呼ばれ、最低価格を有する申し出は、「安値オファー」と呼ばれる。好況市場中には、様々な異なる価格での入札及び申し出があってもよい。いずれかの特定時間において、全ての入札及び申し出価格、並びにそれらの価格でのそれらの総量の組が、LOBの状態である。
【0005】
活発な取引日中に、市場参加者は、様々な時間にそれぞれの証券に対する入札及び申し出を出すことによって、証券への即時アクセスのための機会を市場に概して提供することになる。このことは、流動性として知られている。かかる入札及び/又は申し出を受け取ることによる取引を望む市場参加者が、利用できる最善の価格で直ちに取引するために注文を出してもよい。それらは、成行注文として知られている。
【0006】
LOBベースシステムにおいて、最高入札価格は、典型的には、安値オファー価格よりも低い。そうでなければ、それらの注文は、マッチングされて、取引に結びついてもよい。取引のサイズは、マッチングに利用可能な最大割当量、すなわち、最高入札量と安値オファー量とのうちのより小さいものであってもよい。取引が完了された後、最高入札及び安値オファー量は、取引のサイズによって効果的に低減される。マッチングは、マッチング可能な最高入札又は安値オファーの量が使い果たされるまで、継続する。マッチング可能な入札/申し出がLOBベースシステム内で使い果たされた後には、ギャップが、最高入札価格と安値オファー価格との間に存在する。
【0007】
入札と申し出とが取引日中にマッチング可能になると直ぐに、取引が生じることを可能にするLOB方法又はシステムは、Continuous Limit Order Book(CLOB、連続指値注文控帳)と呼ばれる。マッチングが取引日中の特定時間に生じることを制限するLOB方法又はシステムは、Discontinuous Limit Order Book(DLOB、不連続指値注文控帳)と呼ばれる。
【0008】
米国の証券市場において設定された最も一般的なルールセットは、CLOBを実装し、そして、概して、マッチングの直接性及び実行の速度について最適化される。CLOBの1つの長所は、市場参加者が新しい情報で「価格を迅速に調べる」ことを可能にし得ることである。かかる情報の例としては、企業収益最新情報、政府による経済資料の公表、直近金融市場活動、報道特別番組、及び証券価格に具体的な影響を及ぼす別のイベントが挙げられる。CLOBは、また、通常、小規模(小売サイズの)注文に対してうまく機能し、比較的より小さいサイズの入札及び申し出がマイクロ秒内でマッチングされるのを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0015323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、CLOBベースシステムは、401(k)プランマネージャ及び投資信託等の機関投資家、並びに比較的大量の証券の取引を求める別の投資家に対しては、しばしばそれほどうまく機能しない。CLOBベースシステムが迅速に注文をマッチングさせることを可能にするCLOBベースシステムのある特定の特徴は、また、不利な副作用をもたらす、すなわち、ある特定の市場参加者は、別の市場参加者を上回る情報上の有利さを発展させて、それらの別の市場参加者の損害に対するその情報に基づいて取引することが可能であることがある。その情報上の有利さに基づいた追加の入札及び申し出の存在が、追加の流動性を特定の証券に提供する取引を生じさせる一方で、そのタイプの取引は、また、大量の証券の取引を求める機関投資家に有意な経費を課すことがある。
【0011】
CLOBベースシステムに関与する機関投資家に特に有害である追加のコストの例としては、「逆選択」が挙げられる。口語では「狙い撃ちにされる」として知られているが、逆選択は、別の当事者(「非対称の相手方」)が、証券についての投資家の指値注文に対して、その証券の価格が動こうとする直前に、すなわち、投資家の利益となるように市場を動かすことになる情報の公開直後に取引するときに生じる。その非対称の相手方は、典型的には、正確な短期統計物価見通しを利用する短期トレーダ、例えば、差し迫った価格変更を予想する物価見通しモデルを用いる高頻度トレーダである。かかる非対称の相手方は、例えば、注文を出すことにより、投資家が自らの注文を修正又は削除できるよりも速く、投資家の比較的大規模な注文をマッチングさせ、次いで、予測された価格変更が生じるときに、利益を確保するために投資家の原注文を複製することになる。そのようにして、非対称の相手方は、投資家の支出で利益を得る。
【0012】
逆選択は、例えば、取引が生じた後に、価格の平均変化によって測定されてもよい。トレーダが100ドル/株で株式を買い、そして、購入の直後にその株の価格が95ドルまで下落するならば、トレーダは、5ドルの価格差は、なんらかの別の取って代わる市場要因を妨げる逆選択であるとみなしてもよい。
【0013】
代替の市場設計は、DLOBベースシステムを実装し、この場合、注文のマッチングは、取引日中に、連続的にではなく、むしろ予定された時間に生じる。かかる設計は、限られた成功と共に1980年代から試みられてきた。不連続性をマッチング過程に導入すること、例えば、マッチングのラウンドが特定の時間に生じることは、短期逆選択を低減してもよいが、しばしば流動性問題を生じさせる、すなわち、次のマッチングラウンドまで延期されてきた注文は、延期中に満了する注文とのマッチングに失敗する。
【0014】
従来のDLOBは、通常、例えば、100ミリ秒毎に、5秒毎に、又は別の時間間隔毎に定期的にマッチングする。いくつかの既存のDLOBは、250~500ミリ秒毎にマッチングすることよって、わずかにランダム化される。しかし、マッチングのためのDLOBの時間間隔が取引ダイナミクスに依存しないので、それは、通常、ある特定の証券についてはあまりに稀であり、別の証券についてはあまりに頻繁である。マッチングがより頻繁である程、その証券に対する市場の流動性が増すけれども、より大きい逆選択が生じる。なんらかの校正、とりわけ証券毎のマッチング頻度、不安定性体制、価格差、時刻、その他についてのダイナミック校正を欠いているので、既存のDLOBは、商業的に不成功であった。
【0015】
機関投資家についての市場非効率性の別の例は、証券の注文及び取引に応じた証券の価格変化であり、「市場影響」として知られている。機関投資家が注文を出し、そして、為替における及び代替の取引システム(ATS)における取引に関与するとき、いくつかの市場参加者は、(入札若しくは申し出又はその2つの組合せかどうかに関係なく)、注文出しでのパターン及び経時的な証券の価格の変化を検出することによって、機関投資家の注文の方向を予測することができる。かかる参加者は、しばしば、次いで、それらの予測に基づいて行動して、自身の注文を取り消すか若しくは調整するか、又は予測される機関投資家の注文より前に取引さえする。その結果は、機関投資家が、証券に対する自身の注文についてのより不良のマッチングを受け取ることになる。それらの市場参加者は、機関投資家の支出で有効に利益を得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態は、より効率的な証券市場を形成して、逆選択及び投資家に対する市場影響作用の両方を低減し、同時に、マッチングエンジンルールセットを校正及び制御するための新規な機械学習の使用によって流動性を最大化することを可能にする。本発明の実施形態に従うと、機械学習が、制御ループ内で用いられて、連続的に市場及びマッチングエンジンからの新たなデータを組み込むことにより、マッチング時間窓を調整してより良好なマッチングを生じさせる。Machine Learning Engine(MLE、機械学習エンジン)は、オペレータの優先順位に基づいて、いくつかのパラメータを最適化することができる。
【0017】
例えば、本発明の一実施形態に従うと、機械学習を用いることによってCLOBとDLOBとの利点を組み合わせることにより、最適の予定されたマッチング時間を計算する、すなわち、マッチング時間をそれぞれの証券が最大流動性を申し出るのに間に合って十分に近いようにし、その上、比較的大きい注文を有する投資家に対して逆選択をもたらす取引を、別の市場参加者が組織的に実行することを利益の無いものにするのに間に合って十分に遠いようにする。正味の影響は、比較的大きい注文を有する投資家によって経験される逆選択の低減でなければならない。その代替として、MLEが、注文を部分的にだけ充填して、市場影響を低減し、そして、逆選択を最小化するように、マッチングエンジンに指示してもよい。
【0018】
本発明の別の実施形態は、ある手段によって注文控帳の執行を改善してもよく、当該手段とは、それぞれのマッチングに対して、投資家の比較的より大規模な注文についてのより少ない情報を市場に提供するサイズ及び価格を選択することにより、不可能でなければ、その注文の実際のサイズ及び価格を予測することをより困難にして、その注文がマッチングされるときの市場影響を低減することである。
【0019】
本発明の更なる実施形態に従って、取引執行を最適化する方法が提供され、当該方法は、証券の直近取引に対する市場反応を計算するステップと、市場反応、並びに証券についての過去の市場データ及び証券についてのリアルタイムの市場データのうちの少なくとも1つに応じて、証券についてのマッチングパラメータを算出するステップと、マッチングパラメータに従って証券の取引を執行するステップと、を含む。
【0020】
本発明の更に別の実施形態に従って、証券取引執行を最適化するためのシステムが、証券の直近取引に対する市場反応を計算するためのプロセッサと、市場反応、並びに過去の市場データ及びリアルタイムの市場データのうちの少なくとも1つに応じて、証券についてのマッチングパラメータを算出するための機械学習エンジンと、マッチングパラメータに従って証券の取引を執行するためのマッチングエンジンと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に従うシステムアーキテクチャである。
【
図2】本発明の別の実施形態に従うシステム及び方法についてのブロック図である。
【
図3】本発明の更なる実施形態に従う、最適マッチング時間を計算するための方法を表すフローチャートである。
【
図4】本発明の別の実施形態に従う、取引を執行するための方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
改善された注文マッチングシステム及び方法が、開示される。説明を容易にするためであって、限定としてではなく、本発明の実施形態が、会社株式等の証券をマッチングするためのシステム及び方法に関して説明される。本発明の実施形態は、かかる証券の取引に限定されないけれども、債券(例えば、会社、政府、特殊目的)、通貨、オプション、デリバティブ、別の金融商品(例えば、ローン、リース、抵当、手形、商業手形、その他)、商品、不動産、別の実物資産、デジタル化資産、暗号通貨、その他を取引するために有利に実装されてもよい。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に従うシステムアーキテクチャ100を表す。システム100において、コンピュータ化為替101及びクライアントデバイス105が、ネットワーク102を介して接続されている。コンピュータ化為替101は、また、ネットワーク102を介して、又は異なるネットワーク(図示せず)を介して1つ又は複数のデータ源103に接続されており、データ源のそれぞれが、随意にアプリケーションプログラミングインタフェース(API)104を有する。好ましくは、ネットワーク102は、また、データ源103をクライアントデバイス105と接続することにより、かかるデバイスがデータにアクセスすることを可能にし、当該データは、データ源103からコンピュータ為替101によって受け取られたデータと同一であるか、類似するか、又はそのサブセットである。
【0024】
コンピュータ化為替101は、好ましくは、1つ又は複数のプロセス又はアプリケーションサーバ108、及び随意にインターフェース107を含む。サーバ108は、取引を執行し、そして、内部ネットワーク構造を介して相互運用するように構成されてもよく、又は、例えば、プレゼンテーションサーバ、データベースサーバ、アプリケーションサーバ、及び本発明の実施形態の局面を実装するように一緒に構成された別の関連サーバのような階層構造を有してもよい。サーバ108は、好ましくは、汎用型コンピュータ、クラウドサーバ、又は分散コンピューティングネットワークである。
【0025】
インターフェース107は、好ましくは、ローカルAPI、ウェブAPI、又はプログラムAPI等のアプリケーションプログラムインターフェース(API)であり、その代替として、コンピュータをコンピュータネットワークに接続するネットワークインターフェースコントローラ、又はコンピュータを仮想プライベートネットワークに接続する仮想ネットワークインターフェースであってもよい。その代替として、インターフェース107は、インターフェースアプリケーションであってもよく、当該インターフェースアプリケーションは、ユーザインターフェースをコンピュータ化為替101と相互作用するユーザに提供することにより、例えば、注文を出し、取引を監視し、市場データを精査等する。
【0026】
ネットワーク102は、好ましくは、TCP/IP、FTP、UPnP、NFS又はCIFS等の1つ又は複数の商用通信プロトコルを用いる通信ネットワークである。ネットワーク102は、無線又は有線であってもよく、当該ネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)、インターネット、イントラネット、エクストラネット、公衆電話交換回線網(PSTN)、携帯電話ネットワーク、衛星通信ネットワーク、赤外線ネットワーク、別のタイプの無線ネットワーク、その他、又は前述のものの組合せを含む。
【0027】
データ源103は、好ましくは、市場、為替、及び/又は市況報告サービスであり、当該市況報告サービスは、例えば、証券、債券、通貨、派生商品、その他に関する過去及びリアルタイムの価格並びに取引データを提供する。API104は、好ましくは、ローカルAPI、ウェブAPI、又はプログラムAPIであり、その代替として、コンピュータをコンピュータネットワークに接続するネットワークインターフェースコントローラ、又はコンピュータを仮想プライベートネットワークに接続する仮想ネットワークインターフェースであってもよい。その代替として、API104は、インターフェースアプリケーションであってもよく、当該インターフェースアプリケーションは、ユーザインターフェースを1つ又は複数データ源103と相互作用するユーザに提供して、例えば、取引を監視し、市場データを精査等する。
【0028】
クライアントデバイス105は、好ましくは、従来の受注管理システム(OMS)又は従来の執行管理システム(EMS)を実行させるか、又はこれらの一部であるパソコン、タブレットコンピュータ又はスマートフォン等の従来のコンピューティング装置である。クライアントデバイス105は、好ましくは、個々のユーザが注文を出し、取引を監視し、市場データを精査し、口座状態を精査等するためのユーザインターフェースを提供する。クライアントデバイス105は、随意に、注文を出し、注文状態に関する情報を受け取るためのインターネットブラウザ又はモバイルアプリケーションを含む。その代替として、クライアントデバイス105が、例えば、証券、債券、通貨、派生商品、及び/又はその他を取引するための取引アルゴリズム等を実行する1つ又は複数のコンピュータを含む。
【0029】
好ましい動作において、ユーザは、1つ又は複数のクライアントデバイス105を介して注文に入る。クライアントデバイス105は、ネットワーク102を介して注文をコンピュータ化為替101に送る。随意に、ユーザは、ネットワーク102を介してデータ源103からの市場データにアクセスする。コンピュータ化為替101は、ネットワーク102を介してデータ源103から過去の及び現在の市場データを受け取る。コンピュータ化為替101によって受け取られた注文は、サーバ108によるマッチング過程の対象になる。マッチングが実行され、注文が充填された後に、充填された注文に関する情報が、ネットワーク102を介してデータ源103まで及び/又は別の市場参加者等(図示せず)まで送られる。
【0030】
図2は、本発明の実施形態に従うシステム又は方法の機能ブロック図である。コンピュータ化為替101の好ましい実施形態が、取引システム205として示されている。取引システム205は、機械学習エンジン206と、市場反応モジュール207と、マッチングエンジン208と、を備える。好ましくは、機械学習エンジン206は、リアルタイムの市場データ201と、過去の注文データ202と、過去の市場データ203と、市場反応データ207と、を受け取り、そして、それぞれを利用して、マッチングエンジン208に提供されている注文マッチングパラメータを計算する。マッチングエンジン208は、マッチングパラメータを用いてリアルタイムの注文204をマッチングすることにより、逆選択を最小化する。
【0031】
リアルタイム市場データ源201は、例えば、証券、債券、通貨、派生商品、その他の価格、サイズ、タイミング、その他についてのリアルタイムの市場データを提供する。かかるデータは、証券取引所、その代替の取引プラットフォーム、又は別の信頼できる市場データ源のいずれかから取得される。過去の注文データ源202は、例えば、証券、債券、通貨、派生商品、その他の注文についての価格、サイズ、タイミング、その他の過去のデータを提供する。過去市場データ源203は、例えば、証券、債券、通貨、派生商品、その他の価格、サイズ、タイミング、その他についての過去の市場データを提供する。機械学習エンジン206に提供される市場データは、好ましくは、時間経過に伴う(過去の)及び取引中に流動する(リアルタイムの)全ての注文及び取引の公表価格と、かかる市場データから計算された要約統計量と、を含む。かかる統計量は、例えば、価格不安定性、価格差の変化、取引が活発な市場における買/売注文アンバランス、サイズ変化の間のタイミング、直近取引サイズ、注文控帳サイズに対する取引サイズの比、取引時の控帳内の価格に対する取引価格の比を含んでもよい。
【0032】
データ源201、202及び203は、好ましくは、データ源103である。リアルタイム注文204は、好ましくは、クライアントデバイス105によって提供されてもよい。
【0033】
市場反応モジュール207は、直近に充填された注文が、取引された項目、例えば、取引が完了した後の特定の時間に取引された証券の市場価格にどのように影響を及ぼしたかについて定量する。単純な例として、取引された項目の金額は、別の取って代わる市場要因がないとき、取引が、取引の市場影響であると見なされた後に、増減する。より進歩した市場反応実装において、複数の取引に反応した複数の価格変動は、市場反応におけるパターンを識別して市場影響を定量するように評価されてもよい。随意に、市場反応モジュール207は、取引された項目についての市場価値への過去の注文の市場影響を定量する際に、過去の注文データ202及び/又は過去の市場データ203を利用する。
【0034】
好ましくは、市場反応は、例えば、注文がマッチングエンジン208に提出されること、又は特定の取引が執行されること等の特定のイベント後の控帳内での変化によって測定される。それらのイベントの前後の控帳の間の差が、多くの方法で測定されてもよい。例えば、控帳の差は、入札におけるそれぞれの価格/水準/サイズの、申し出における相当する価格/水準/サイズに対する比として測定されてもよい。別の例示的測定は、売り気配株数の加重合計に対する買い気配株数の加重合計の比較である。
【0035】
取引後の市場反応を追跡するために、市場反応モジュール207は、利用可能な現場における注文価格及びサイズの変化を監視し、当該現場は、それらの注文控帳の内容及び関心の取引に追従する後続の取引を開示する。市場反応モジュール207によって好ましく監視されるデータの例は、後続の取引のタイミング、サイズ及び/又は価格を含む。株式市場では、例えば、市場反応モジュール207は、好ましくは、新たな最高入札及び新たな最高付け値を追跡し、そして、即時トランザクションに対して証券の当時の最高価格を反映する。
【0036】
機械学習エンジン206及びマッチングエンジン208は、好ましくは、1つの論理システムとして作動する。機械学習エンジン206は、好ましくは、それが計算した最適化マッチングパラメータであって、例えば、取引又は一連の取引を執行するために、いつ注文をマッチングするべきか、どれほどの注文をマッチングするべきか、いくらの価格でマッチングが生じるべきかについての最適化マッチングパラメータをマッチングエンジン208に知らせる。
【0037】
用語「機械学習」とは、コンピュータを「トレーニングする」ことにより、所定の1組の入力に対して所望の出力を生成するという過程を指す。トレーニングは、入力及び出力の例をコンピュータに系統的に提示することを含む。「学習」は、コンピュータが、例の全てを入力と出力との間の関係についての大規模モデルに統合し、そして、1組の新たな入力に応じて増加する正確度を伴って正しい出力を予測する能力を獲得するときに生じる。機械学習エンジン206の出力についての正確度は、例えば、新たな入力によってそれを試験して、予測された出力値と「正しい」出力値との間の「誤差」を測定することによって定量されてもよい。
【0038】
多数の機械学習方法が、当該技術分野において公知である。かかる方法は、コンピュータがコンピュータに提供された例内に包含された情報を表示する態様によって、及びシステムが「学習」するために利用するトレーニング過程のタイプによって変化することがある。機械学習システム及び方法の例としては、ニューラルネットワーク、回帰、ベイジアン法、及びディープラーニング法が挙げられる。
【0039】
本発明の一実施形態では、機械学習エンジン206は、リアルタイムの注文204として提出された注文からのデータ、並びにリアルタイムの市場データ201に含まれる、別の為替及び取引現場からの市場データに基づいてトレーニングされる。好ましくは、機械学習エンジン206は、リアルタイムの市場データ201、過去の注文データ202、過去の市場データ203、及びリアルタイムの注文204の組合せを利用して、特定の取引される項目、例えば、証券に関する予測モデルを作成する。かかるデータは、過去の及び生の注文、並びに取引が執行された後に観測された逆選択及び市場反応を含んでもよい。機械学習エンジン206についての目標は、予測モデルを作成することであり、当該予測モデルは、どのマッチング時間、注文価格、及び注文量が逆選択及び市場反応を最小化するかを予測することになる。
【0040】
この文脈において、逆選択は、好ましくは、取引が執行された後の一連の時点での、証券の新たな市場価格と証券の実際の仲間値段との間の価格差によって測定される。例えば、機械学習エンジン206は、
AdvSel_at_time_0 = price_at_time_0 - trade_price
AdvSel_at_time_1 = price_at_time_1 - trade_price
…
AdvSel_at_time_n = price_at_time_n - trade_price
を算出してもよく、ここに、nは、取引後の時間の時間ステップ(例えば、マイクロ秒)に等しく、trade_priceは、特定の取引が執行された価格である。時間ステップは、その代替として、呼値変化又は別の取引等の有意なイベントをカウントしてもよい。
【0041】
「price_at_time_n」は、National Best Bid and Offer(NBBO、全米最良気配)、又は現在の及び直近の表示価格から計算された統計量であってもよい。いくつかの代替の統計方法は、Recent Volume Weighted Average Price(VWAP、直近出来高加重平均価格)及びWeighted-Mid Price(加重和価格)を含む。Recent VWAP方法に従うと、「直近」が、以前のN個の取引にわたって、又はK期間にわたって、又はV直近体積にわたって計算される。Weighted-mid price方法に従うと、価格は、為替における全ての利用可能な表示価格、及びそれらの注文控帳を利用可能にするAlternative Trading Systems(ATS、代替取引システム)から計算され、この場合、結果へのそれぞれの価格の寄与が、表示された注文の量によって加重される。
【0042】
機械学習エンジン206が取引日にわたってより多くのデータを処理するとき、マッチングパラメータの正確度が、改善するはずである。機械学習手法は、いかなる静的ルールセットよりも優れており、その理由は、それが、変化する市況に自動的に適合しながら、同時に逆選択及び/又は市場反応の最小化を試みるからである。例えば、機械学習エンジン206が、低い不安定性の日よりもより高い不安定性の日により迅速に注文をマッチングさせるように学習してもよく、一方、静的ルールセットが、その日の不安定性の量に関わらず、同じ速さで注文をマッチングさせることになる。
【0043】
機械学習エンジン206は、本発明の代替の実施形態に従って、従来の機械学習アルゴリズムを利用して実装されてもよい。好ましい実施形態は、強化学習及び教師あり学習方法を用いて、それぞれの証券についての最適マッチングモデルを作成する。
【0044】
強化学習方法を用いると、機械学習エンジン206は、試行錯誤を用いて絶えずそれ自体をトレーニングする環境に曝されていることによって、特定の決定をなすようにトレーニングされる。機械学習エンジン206は、過去の経験及び試みから学習して、どんな決定がより良い結果を生じさせるかを学習する。強化学習方法の例としては、マルコフ決定過程に従う方法がある。
【0045】
教師あり学習は、トレーニングデータから関数を推測するという機械学習方法である。トレーニングデータは、1組のトレーニング例から構成されている。機械学習エンジン206は、好ましくは、教師あり学習をそれぞれのトレーニング例を用いて実施し、当該トレーニング例は、入力オブジェクト(典型的には、ベクトル)及び所望の出力値(「教師信号」とも呼ばれる)からなる対である。トレーニング過程は、機械学習エンジン206がそれのモデルを、予測精度についての所望の水準を十分に達成するように調整するまで、継続する。教師あり学習の例としては、回帰、決定木、ランダムフォレスト、KNN、及びロジスティック回帰が挙げられるが、これに限定されない。機械学習の別の一般的方法が、https://en.wikipedia.org/wiki/Machine_learning(2017年10月2日に最後にアクセスした)に開示されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0046】
本発明の実施形態における機械学習エンジン206内に有利に実装されてもよい別の機械学習方法は、ディープラーニング法の変形を含む。ディープラーニング(別名、深層学習又は階層学習)は、特定のタスクを行うアルゴリズムと対照的に、学習データ表現に基づいている。ディープラーニング法は、教師あり、部分的に教師あり、又は教師なしであってもよい。
【0047】
本発明の別の実施形態では、機械学習エンジン206は、入力として、過去の市場データ、リアルタイムの市場データ、市場データから計算された統計量(直近の不安定性、直近のリターン、直近の取引、控帳圧力、トレーダ圧力)、及び市場反応(それぞれの取引後の様々な時点でマッチングエンジンから測定された控帳変化、並びに追従する取引)を受け取り、そして、出力として、次のマッチングを何時実行するべきかについてのマッチング時間範囲(最低値、最高値)、どれほどの量の注文をマッチングするべきかについてのマッチングサイズ範囲(最低値、最高値)、マッチングに参加するためにそれぞれの注文がどれほどの期間、控帳上にある必要があるかについての将来の注文に関するマッチングレジデンシターゲット(最低値、最高値)、及び次のマッチングのための注文についてのサイズ割当てを受け取る。本発明の更なる実施形態において、機械学習エンジン206は、マッチングエンジン208へのそれの命令中にランダムマッチング時間、サイズ、及び価格を挿入することにより、別の市場参加者の能力を低減して、それの作用を予測する。
【0048】
好ましい動作では、機械学習エンジン206は、専門家による手動によって構成された初期状態、又はランダムな状態のいずれかにおいて開始する。機械学習エンジン206は、次いで、過去の注文データ202及び過去の市場データ203、並びにリアルタイムの市場データ201に接続され、そして、マッチングエンジン208によって用いられるべきマッチングパラメータを発生させることを始める。それぞれの取引がマッチングエンジン208によって完了された後に、市場反応モジュール207が、取引後の様々な時間点での市場影響を計算し、そして、市場影響データが機械学習エンジン206に提供されて、新しい情報、例えば、入出力対によってそれの内部モデルを更新する。
【0049】
機械学習エンジン206は、逆選択及び/又は市場影響が最小化され、後続のトレーニングが有意には結果を改善しないという局所最適条件が見つけられるまで、学習過程を反復する。随意に、機械学習エンジン206は、次いで、新たな状態から開始して、学習を継続することにより、新たな最適条件を見つけてもよい。それぞれの異なる学習アルゴリズムは、それの学習を更新するためのそれの閾値のそれの状態についての異なる表現もまた有してもよい。例えば、ニューラルネットワークでは、学習過程の状態が、ニューロン同士の間のリンクにおける加重、それぞれのニューロンについての発火閾値において、及び閾値処理関数においてコード化される。
【0050】
更なる代替実施形態では、機械学習エンジン206は、マッチングエンジン208にマッチングパラメータを付与することにより、1つ又は複数の注文についての部分充填に意図的に関与する。
【0051】
機械学習エンジン206は、連続的に又は異なる時間にそれの内部モデルを更新して、マッチングエンジン208に最良のマッチングパラメータを提供してもよい。好ましくは、マッチングエンジン206は、新たな市況に迅速に適合するだけでなく、市場参加者の活動に反応するのに十分な頻度で動作する。従来のマッチングロジックは、かかる変化する状況に適合しない。
【0052】
マッチングエンジン208は、従来のATS、又は、売買注文を受け取り、取引を生み出す為替マッチングエンジンである。例えば、「買い」注文は、(すぐに入手可能な価格で買うための)「市場」、又は所定の限界以下の価格で買うための「限界」であってもよい。「売り」注文は、(すぐに入手可能な価格で売るための)「市場」、又は所定の限界以上の価格で売るための「限界」であってもよい。典型的には、マッチングは、重複する価格を有する少なくとも1つの買い注文と1つの売り注文とがあり、そして、価格保護のための局所調整が満たされたときに、マッチングエンジン208によって生み出される。米国では、規則NMSは、現場が、それの注文の価格がある特定の「保護された」現場のNBBO、例えば、マッチング時の為替の外側にあるならば、マッチングできないことを規定する。
【0053】
価格によってマッチングするための資格を得る注文は、指定注文において対にされる。典型的には、マッチングは、サイズ優先順位、時間優先順位、又は比例割当てに基づいて注文される。例えば、注文は、マッチングの資格を得るために、注文控帳上の「レジデンシ」のある特定の期間(例えば、最小のマイクロ秒数)を有することが必要とされてもよい。このように、注文が「あまりに新しい」ならば、それはマッチングの資格を得ることが許可されない。その代替として、注文は、マッチングの資格を得るために、ある特定の最小サイズであることが必要とされてもよい。最小サイズは、為替のルールによって、注文を提出する実体によって、又はマッチングアルゴリズムによって指定されてもよい。
【0054】
図3は、最適マッチング時間が、本発明の実施形態に従って機械学習エンジン206によって計算される方法を表すフローチャートである。好ましくは、最適マッチング時間の計算は、公的に利用可能なデータ、及びマッチングエンジン208に提出されたリアルタイムの注文に基づいて個々の証券に対してなされる。
【0055】
公表データ、及びマッチングエンジン208に提出された注文データが、ステップ301において収集される。このデータが用いられて、取引日中の様々な時間において証券の過去の不安定性を計算する(ステップ302)。不安定性は、証券の価格における統計的変動の測定であり、典型的には、特定の時間のものとして計算される。取引日内のそれぞれの時点に対して、不安定性が、様々な期間にわたって計算されてもよい。不安定性値がマッチングエンジン208によって用いられて、不安定性が閾値未満である期間を識別することによって証券に対する最適マッチング時間を計算する(ステップ303)。
【0056】
図4は、本発明の実施形態に従うフローチャートである。
図4に示すステップは、好ましくは、機械学習エンジン206及び/又はマッチングエンジン208によって実行される。最初に、特定の証券の最後の取引への市場反応が算出され、そして、好ましくは、いずれかの逆選択の範囲が決定される(ステップ401)。ステップ402において、マッチングパラメータが、市場反応、過去の市場データ、過去の注文データ、リアルタイムの注文データ、及び/又はリアルタイムの市場データを用いて算出される。
【0057】
マッチングパラメータの1つの例は、
図3と関連して説明されるような、証券についての最適マッチング時間である。未決済の申し出と入札とが、機械学習エンジン206によってマッチングエンジン208まで送られたマッチングパラメータに基づいて、マッチングされ、充填され、若しくは部分的にマッチングされ、部分的に充填されるか、又は後の時間まで延期される(ステップ403)。ステップ404において、それぞれのマッチングされた注文(又は、一部の注文)が、マッチングエンジン208によって執行される。執行された注文は、次いで、マッチングエンジン208によって、取引報告施設(TRF)、為替及び/又は別の取引システムまで送られる(ステップ405)。
【0058】
上記の様々な実装が、多くの異なる様々な動作環境、及び処理及び記憶目的のための集積回路、チップを組み込む1つ又は複数の電子デバイスにおいて適用可能である。ハードウェア、ソフトウェア及び/又はファームウェアについての適切な構成が、取引用の市場データと連結するためのコンピュータの能力を改善するために、ここで開示される。本開示のシステム又は方法は、また、本明細書に開示された同一の機能を実行するために一緒に作動するいくつかの上記の例示的システムを含む。
【0059】
上記の例示的実施形態のうちの大部分は、TCP/IP、FTP、UPnP、NFS及びCIFS等の1つ又は複数の商用通信プロトコルを用いる少なくとも1つの通信ネットワークを利用する。ネットワーク102は、無線又は有線であってもよく、当該ネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、仮想プライベートネットワーク、インターネット、イントラネット、エクストラネット、一般加入電話網、赤外線ネットワーク、無線ネットワーク、及び組み合わされた上記のネットワークのうちの1つ又は複数を含む。
【0060】
本発明の例は、様々なデータストア及び別のメモリ又は記憶メディアから形成されたデータベースを含んでもよい。これらの構成要素は、上記のように、サーバのうちの1つ又は複数のものの内にあってもよく、又は、サーバのネットワーク内にあってもよい。ある特定の実施形態では、情報は、ストレージエリアネットワーク(SAN)内にあってもよい。同様に、上記のコンピュータ、サーバ又は別のネットワークデバイスに帰属させられた機能を実行するためのファイルが、必要に応じて、局所的に及び/又は遠隔で記憶されてもよい。クライアントデバイスを含む、上記のそれぞれの計算システムは、データ/制御/及び電力バスを介して電気的に結合されているハードウェア要素を組み込んでもよい。例えば、かかるコンピューティングシステム内の1つ又は複数のプロセッサは、クライアントデバイスのうちの1つ又は複数のための中央処理装置(CPU)であってもよい。クライアントデバイスは、少なくとも1つのユーザデバイス(例えば、マウス、キーボード、制御装置、キーパッド、又はタッチセンサ式ディスプレイ)、及び少なくとも1つの出力装置(例えば、ディスプレイ、プリンタ、又はスピーカ)を更に含んでもよい。かかるクライアントデバイスは、また、1つ又は複数の記憶装置を含んでもよく、当該記憶装置は、ディスクドライブ、光学記憶デバイス、及びランダムアクセスメモリ(RAM)又は読取り専用メモリ(ROM)等のソリッドステート記憶デバイス、並びに着脱可能なメディアデバイス、メモリカード、フラッシュカード、その他を含む。
【0061】
上記の計算機システムは、また、前述のように、コンピュータ可読記録媒体読取装置、通信装置(例えば、モデム、ネットワークカード(無線若しくは有線の)、又は赤外線通信装置)、及びメモリを含んでもよい。コンピュータ可読記録媒体読取装置は、遠隔式、局所式、固定式及び/又は取外し可能記憶装置、並びにコンピュータ可読情報を一時的に及び/又はより恒久的に含む、格納する、伝達する及び検索するための記録媒体を代表するコンピュータ可読記憶媒体に接続可能であるか、又はこれを受け取るように構成されている。システム及び様々なデバイスは、また、典型的に、いくつかのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、又は少なくとも1つの作動メモリデバイス内部にある別の要素を含むことになり、当該別の要素は、オペレーティングシステム、及びクライアントアプリケーション又はウェブブラウザ等のアプリケーションプログラムを含む。理解すべきは、代替実施形態は、上記のものからの多数の変形を有してもよいことである。例えば、カスタマイズされたハードウェアが、また、用いられてもよく、及び/又は特定の要素が、ハードウェア、ソフトウェア(アプレット等の移植可能ソフトウェアを含む)、又はその両方内に実装されてもよい。更に、ネットワーク入出力装置等の別のコンピューティング装置への接続が用いられてもよい。
【0062】
コード又はコードの部分を具備するための記録媒体及び別の非一過性コンピュータ読取り可能媒体が、当該技術分野で認知され又は用いられるいずれかの適切なメディアを含んでもよく、当該メディアとしては、コンピュータ読取り可能命令、データ構造、プログラムモジュール又は別のデータ等の情報の記憶のためのいずれかの方法又は技術において実装される揮発性及び不揮発性、取外し可能及び取外し不可能メディア等が挙げられるが、これに限定されず、当該揮発性及び不揮発性、取外し可能及び取外し不可能メディアとしては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ若しくは別の記憶装置技術、CD―ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)若しくは別の光記憶装置、磁性カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置若しくは別の磁気記憶装置、又は所望の情報を記憶するために用いられてもよく、システムデバイスによってアクセスされてもよい別の媒体が挙げられる。本明細書に提供された開示及び教示に基づいて、当業者であれば、様々な実施形態を実装するための別の態様及び/又は方法を認識することになる。
【0063】
明細書及び図面は、限定的な意味を示すものではなく、例示的なものと見なされるべきである。しかしながら、請求項に述べられたような本発明のより広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることは明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引システムにおける取引執行を最適化する方法であって、
前記取引システムが、クライアントデバイスから証券のリアルタイム注文を受信するステップと、
前記取引システムが、前記証券の直近取引に対する市場反応を計算するステップと、
前記取引システムが、前記市場反応、並びに前記証券についての過去の市場データ及び前記証券についてのリアルタイムの市場データのうちの少なくとも1つに応じて、前記証券についてのマッチング時間及びマッチングサイズを算出するステップと、
前記取引システムが、前記マッチング時間及び前記マッチングサイズに従って、前記証券の取引を執行するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
証券取引執行を最適化するシステムであって、
市場反応モジュールであって、証券の直近取引による、それ以後の時点における複数の証券価格反応を算出するプロセッサを含む、市場反応モジュールと、
前記証券のリアルタイムの注文及び前記証券のリアルタイムの価格データに基づいて訓練された機械学習エンジンであって、前記証券の価格不安定性の予測モデルを、計算された前記複数の証券価格反応、過去の証券価格データ、リアルタイムの証券価格データ、過去の証券注文データ、及びリアルタイムの証券注文データにもとづき作成し、前記予測モデルを用いて、マッチング時間窓と、価格不安定性閾値を下回る前記証券の注文量を予測する、機械学習エンジンと、
前記証券に対する入札を前記証券に対する申し出とマッチングして、前記証券の取引を成立させ、予測された前記マッチング時間窓と価格不安定性の注文量に基づいて前記証券の前記取引の執行量を低減し、且つ、前記証券の前記取引の前記執行を延期し、前記証券の前記低減した量の取引を予測された前記マッチング時間窓と価格不安定性の注文量の範囲内で執行する、マッチングエンジンと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記機械学習エンジンが、前記マッチング時間窓と価格不安定性閾値を下回る前記証券の注文量を予測することで、前記証券の前記取引後の逆選択を低減する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記機械学習エンジンが、前記マッチング時間窓と価格不安定性閾値を下回る前記証券の注文量を予測することで、前記証券の前記取引後の市場影響を低減する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。