(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171605
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】検体分析システムの精度管理方法および検体分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01N35/00 B
G01N35/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176644
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2023111336の分割
【原出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若宮 裕二
(72)【発明者】
【氏名】植村 徹
(72)【発明者】
【氏名】大前 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】巴山 幸賢
(57)【要約】
【課題】信頼性が高く、ユーザの作業負担が小さい検体分析システムの精度管理方法を提供する。
【解決手段】実施形態の一例である分析装置の精度管理方法は、生体由来の細胞を含む検体を分析する分析装置を備えた検体分析システムの精度管理を行う方法である。この方法は、既知濃度の細胞を含む精度管理物質が入った容器が検体分析システムの投入部にセットされた場合に、容器を投入部から保冷部に移送して冷却保管する。そして、分析装置で精度管理物質の測定を行う際に、冷却保管されている容器を加温して精度管理物質の温度を測定温度に調整し、測定温度に調整された精度管理物質が入った容器を分析装置に搬送する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷部を備えた検体分析システムの精度管理方法であって、
既知濃度の細胞を含む精度管理物質を収容した容器を前記保冷部で冷却保管し、
前記冷却保管された前記容器を前記保冷部から取り出し、前記容器を室温環境に暴露し、
室温環境に暴露された前記容器内の前記精度管理物質を分析装置で測定する、検体分析システムの精度管理方法。
【請求項2】
前記室温環境は、15℃から30℃までの任意の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器の室温環境への暴露は、前記精度管理物質が測定温度に上昇するまで行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定温度は、20℃から26℃までの任意の温度である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記保冷部の温度は、2℃から8℃までの任意の温度である、請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
前記分析装置での測定を行う前に、前記容器の攪拌を行うことをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
所定の条件にて、前記分析装置で前記精度管理物質の再測定を行うことをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記精度管理物質は、血球を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
既知濃度の細胞を含む精度管理物質を収容した容器を冷却保管する保冷部と、
前記容器を室温環境に暴露して前記精度管理物質の温度の調整を行うために、前記保冷部から前記容器を取り出す移送部と、
前記精度管理物質を測定する分析装置と、
を備える、検体分析システム。
【請求項10】
前記室温環境は、15℃から30℃までの任意の温度である、請求項9に記載の検体分析システム。
【請求項11】
前記容器の室温環境への暴露は、前記精度管理物質が測定温度に上昇するまで行われる、請求項9又は10に記載の検体分析システム。
【請求項12】
前記測定温度は、20℃から26℃までの任意の温度である、請求項11に記載の検体分析システム。
【請求項13】
前記保冷部は、前記容器内の前記精度管理物質を2℃から8℃までの任意の温度で冷却するように構成されている、請求項9~12に記載の検体分析システム。
【請求項14】
前記分析装置は、前記精度管理物質の測定を行う前に前記容器の攪拌を行う撹拌機を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の検体分析システム。
【請求項15】
前記分析装置は、所定の条件にて、前記精度管理物質の再測定を行うように構成されている、請求項9~14のいずれか一項に記載の検体分析システム。
【請求項16】
前記精度管理物質は、血球を含む、請求項9~15のいずれか一項に記載の検体分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析システムの精度管理方法および検体分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血球等の生体由来の細胞を含む検体を分析する分析装置を備えた検体分析システムが広く知られている。このようなシステムでは、定期的に、既知濃度の細胞を含む精度管理物質を用いて分析装置の測定結果に異常が無いことを確認し、測定精度の管理を行う必要がある。
【0003】
特許文献1の装置では、精度管理物質が入った容器を含む試料ラックが装置にセットされたときに、容器に付与された識別情報を読み取り、その情報に調製処理の実施が設定されている場合に精度管理物質の調製処理を実行する。その後、恒温恒湿機能を有する保管部に試料ラックを搬送し、調製処理済みの精度管理物質を測定開始まで一時的に保管する。精度管理物質の調製処理は、溶解前待機時間、溶解後待機時間、攪拌後静置時間等の処理条件を定めた調製プロトコルに基づいて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
精度管理物質は、例えば、冷蔵庫において冷却保管され、検査室におけるルーチン検体の検査が始まる前に冷蔵庫から取り出されて測定されることが一般的である。特許文献1の装置では、ユーザがセットしたラックを保管部において一定時間保管することで精度管理物質の温度を調整するため、温度調整に要する時間だけ早くユーザが検査室に到着し、冷蔵庫から精度管理物質を取り出して試料ラックにセットし、試料ラックを装置にセットする必要があり、ユーザの負担軽減の観点で改良の余地がある。
【0006】
本発明は、精度管理検体の測定に伴うユーザの負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検体分析システムの精度管理方法は、保冷部を備えた検体分析システムの精度管理方法であって、既知濃度の細胞を含む精度管理物質を収容した容器を前記保冷部で冷却保管し、前記冷却保管された前記容器を前記保冷部から取り出し、前記容器を室温環境に暴露し、室温環境に暴露された前記容器内の前記精度管理物質を分析装置で測定する。
【0008】
本発明の検体分析システムは、既知濃度の細胞を含む精度管理物質を収容した容器を冷却保管する保冷部と、前記容器を室温環境に暴露して前記精度管理物質の温度の調整を行うために、前記保冷部から前記容器を取り出す移送部と、前記精度管理物質を測定する分析装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精度管理検体の測定に伴うユーザの負担を軽減可能な検体分析システムの精度管理方法および検体分析システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】検体分析システムを構成する各ユニットの相互接続関係を示すブロック図である。
【
図4】検体容器および検体容器が収容された検体ラックを示す斜視図である。
【
図5】検体分析システムを構成する測定ユニットおよび搬送ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図6】測定ユニットおよび搬送ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図7】検体分析システムを構成する供給ユニットの斜視図である。
【
図8】供給ユニットの構成(内部レイアウト)を模式的に示す図であって、コンベア部に検体ラックがセットされた状態を示す図である。
【
図9】供給ユニットを構成する投入部の斜視図であって、QC検体容器が投入口にセットされた状態を示す図である。
【
図10】投入部の斜視図であって、QC検体容器が保管調整ユニットの内部に搬送された状態を示す図である。
【
図11】供給ユニットを構成する保冷部の斜視図であって、カバーが閉じた状態を示す図である。
【
図12】保冷部の斜視図であって、カバーが開いた状態を示す図である。
【
図13】供給ユニットの内部構造を示す斜視図である。
【
図14】供給ユニットの内部構造を示す斜視図であって、ラック収容部を前方側から見た図である。
【
図15】供給ユニットの内部構造を示す斜視図であって、ラック収容部を後方側から見た図である。
【
図16】実施形態の一例である供給ユニットの構成(内部レイアウト)を模式的に示す図であって、QC検体ラックを供給する様子を示す図である。
【
図17】実施形態の一例である供給ユニットの構成(内部レイアウト)を模式的に示す図であって、QC検体ラックを回収する様子を示す図である。
【
図18】供給ユニットのモニタに表示されるホーム画面の一例である。
【
図19】ホーム画面の装置状態アイコンが押されたときに表示される装置状態画面の一例である。
【
図20】装置状態画面のシャットダウンアイコンが押されたときに表示されるシャットダウン画面の一例である。
【
図21】装置状態画面の取出アイコンが押されたときに表示されるQC検体取り出し画面の一例である。
【
図22】装置状態画面の投入アイコンが押されたときに表示される投入画面の一例である。
【
図23】ホーム画面のスケジュールアイコンが押されたときに表示されるスケジュール画面の一例である。
【
図24】スケジュール画面の登録アイコンが押されたときに表示されるスケジュール登録画面の一例である。
【
図25】スケジュール登録画面において、自動QCのスケジュールが入力されてOKボタンが押されたときに表示される確認画面の一例である。
【
図26】スケジュール画面のスケジュールリストが押されたときに表示される操作メニューの一例である。
【
図27】スケジュール表示領域と在庫表示領域を含むポータル画面の一例である。
【
図28】供給ユニットの構成を示すブロック図であって、あわせて供給ユニットと、測定ユニットおよび搬送コントローラとの接続関係を示す図である。
【
図29】供給ユニットの制御部に格納されているQC検体のデータベースの一例である。
【
図30】検体分析システムの一連の処理を示すフローチャートである。
【
図31】自動ウェイクアップの処理手順を示すフローチャートである。
【
図32】供給ユニットにおける自動QCの処理手順を示すフローチャートである。
【
図33】自動QCにおいて、精度管理測定に使用するQC検体容器の組み合わせを決定するための処理手順を示すフローチャートである。
【
図34】供給ユニットにおける自動洗浄の処理手順を示すフローチャートである。
【
図35】供給ユニットの保冷部にQC検体容器を保管する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図36】供給ユニットの保冷部からQC検体容器を取り出す処理の手順を示すフローチャートである。
【
図37】測定ユニットにおける検体容器の測定手順を示すフローチャートである。
【
図38】測定ユニットにおけるQC検体容器の測定手順を示すフローチャートである。
【
図39】測定ユニットにおける洗浄剤容器を用いた洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【
図40】ラック搬送・保管の処理手順を示すフローチャートである。
【
図41】ラック回収の処理手順を示すフローチャートである。
【
図42】自動QCにおける供給ユニットの動作を示す図である。
【
図43】自動洗浄における供給ユニットの動作を示す図である。
【
図44】保冷部にQC検体容器を収容する際の供給ユニットの動作を示す図である。
【
図45】ラック収容部に空ラックを収容する際の供給ユニットの動作を示す図である。
【
図46】QC検体容器の組み合わせの具体例を示す図である。
【
図47】QC検体容器の組み合わせの具体例を示す図である。
【
図48】QC検体容器の組み合わせの具体例を示す図である。
【
図49】検体分析システムのモニタに表示される旧ロットと新規ロットの精度管理結果を比較するための画面の一例である。
【
図50】シャットダウンの指示を受け付けた場合の供給ユニットの処理を説明するフローチャートである。
【
図51】検体分析システムの第1の変形例の構成を模式的に示す図である。
【
図52】検体分析システムの第2の変形例の構成を模式的に示す図である。
【
図53】供給ユニットの第1の変形例の外観を示す斜視図である。
【
図54】供給ユニットの第1の変形例の構成を模式的に示す図である。
【
図55】供給ユニットの第2の変形例の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る検体分析システムの精度管理方法および検体分析システムの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例の各構成要素を選択的に組み合わせること本発明の範囲に含まれている。
【0012】
図1および
図2は、実施形態の一例である検体分析システム1の全体構成を模式的に示す図である。
図1および
図2に示すように、検体分析システム1は、第1測定ユニット10Aと、第2測定ユニット10Bと、搬送ユニット20と、制御ユニット30とを備える。第1測定ユニット10Aと第2測定ユニット10Bは、生物由来の細胞を含む検体を分析する分析装置であって、互いに隣り合って配置されている。以下、分析装置を構成する2つの測定ユニットをまとめて「測定ブロック」と称する。搬送ユニット20は、測定ブロックの前方に配置されている。本明細書では、説明の便宜上、図面に示された前後、左右、上下等の方向を示す用語を使用する。
【0013】
検体分析システム1は、測定ブロック、搬送ユニット20、および制御ユニット30を含むモジュール10を2つ備える。2つのモジュール10は、左右方向に隣り合って配置されている。モジュール10には、2つの測定ユニットに対して1つの制御ユニット30が設けられている。第1測定ユニット10Aと第2測定ユニット10Bは、血液検体中の血球を計数する装置として構成されており、互いに同じハードウェア構成を有する。血液検体としては全血が用いられる。
【0014】
検体分析システム1は、2つのモジュール10よりも上流側に、検体ラック110がセットされる供給ユニット80を備える。検体ラック110には、複数の検体容器100が収容される。検体容器100は、血球計測用の血液検体、すなわち全血が入った容器である。供給ユニット80は、2つのモジュール10のうち上流側に配置される1つのモジュール10と隣り合って配置されている。供給ユニット80は、検体ラック110をモジュール10に搬送するためのコンベア部81を備える。本実施形態では、ユーザにより検体ラック110がコンベア部81にセットされる。
【0015】
コンベア部81は、モジュール10の搬送ユニット20に接続されており、セットされた検体ラック110を搬送ユニット20に受け渡し可能に構成されている。詳しくは後述するが、供給ユニット80には、検体容器100に加えて、既知濃度の細胞を含む精度管理物質が入ったQC検体容器150がセットされる。供給ユニット80は、QC検体容器150を冷却保管し、精度管理物質の温度を測定温度に調整してからコンベア部81に送り出す保管調整ユニット82を備える。QC検体容器150には、複数回の測定に使用可能な量の精度管理物質が入っている。例えば、1つのQC検体容器150には、測定ユニットによる24回分の測定が可能な量の精度管理物質が収容されている。以下では、1回の測定に対応する量のことを「1テスト」ともいう。
【0016】
検体分析システム1の上流側とは、検体ラック110がセットされ搬送の出発点となる側、すなわち供給ユニット80が配置される側を意味する。また、検体分析システム1の下流側とは、検体ラック110の搬送の終点となる側を意味する。
図1および
図2では、紙面右側が検体分析システム1の上流側、紙面左側が検体分析システム1の下流側である。供給ユニット80にセットされた検体ラック110は、搬送ユニット20に送られ、搬送ユニット20の機能により測定ユニットに受け渡される。
【0017】
搬送ユニット20は、複数のラック搬送路を備え、第1測定ユニット10Aと第2測定ユニット10Bに検体容器100を振り分けて供給することが可能である。搬送ユニット20は、検体分析システム1の上流側(右側)から検体ラック110を受け取って下流側(左側)に搬送するための第1搬送路21と、第1搬送路21と平行に延び、第1搬送路21よりも測定ブロック側に配置された第2搬送路22とを備える。第2搬送路22は、検体ラック110を左右方向に搬送する。第2搬送路22には、検体容器100が検体ラック110から取り出されて測定ユニットに取り込まれる取出位置P2(後述の
図5等参照)が存在する。
【0018】
搬送ユニット20は、さらに、第3搬送路23を備える。第3搬送路23は、第1搬送路21と平行に延び、第1搬送路21よりも検体分析システム1の前方に配置されている。すなわち、搬送ユニット20には、前後方向に並ぶ3つのラック搬送路が、前方から、第3搬送路23、第1搬送路21、第2搬送路22の順で設けられている。詳しくは後述するが、第3搬送路23は、検体分析システム1の下流側から上流側へラックを搬送するように構成されている。このため、第3搬送路23を単体で見れば、左側が搬送路の上流側となり、右側が搬送路の下流側となる。
【0019】
検体分析システム1は、さらに、処理ユニット40と、搬送ユニット50と、回収ユニット60とを備える。処理ユニット40は、血液検体の塗抹標本を作製する装置である。回収ユニット60は、使用済みの検体容器100(検体ラック110)を回収する装置である。処理ユニット40は、2つのモジュール10のうち下流側に配置される1つのモジュール10と隣り合って配置され、回収ユニット60は、処理ユニット40よりも検体分析システム1の下流側において、処理ユニット40と隣り合って配置されている。
【0020】
搬送ユニット50は、検体ラック110を処理ユニット40に搬送するためのラック搬送路を備え、処理ユニット40の前方に配置されている。また、搬送ユニット50は、モジュール10の搬送ユニット20および回収ユニット60に接続されている。検体ラック110に塗抹標本の作製が要求される検体容器100が含まれない場合、その検体ラック110は、処理ユニット40を通過して搬送ユニット50から回収ユニット60に搬送される。
【0021】
検体分析システム1では、検体を搬送するためのユニットとして、上流側から、供給ユニット80、上流側および下流側のモジュール10に対応する搬送ユニット20、処理ユニット40の前方に配置された搬送ユニット50、および回収ユニット60の順で配置され、隣り合うユニット同士が接続されている。そして、検体分析システム1には、供給ユニット80から回収ユニット60まで左右方向に検体ラック110を搬送可能な連続したラック搬送路が形成されている。なお、
図1および
図2に示す例では、隣り合うユニット同士が直接接続されているが、これらのユニット間に他の搬送路又は他のユニット等が介在していてもよい。
【0022】
検体分析システム1では、測定ブロックおよび搬送ユニット20が、ワゴン18の上に載置されている。ワゴン18には、測定ユニットで使用される試薬が入った試薬容器19が収納されている。処理ユニット40、搬送ユニット50、回収ユニット60、および供給ユニット80についても同様に、ワゴン90が設けられている。ワゴン18,51,61,90は、ラック搬送路が水平面に沿うように、同じ高さを有するか、又は同じ高さに調整できることが好ましい。なお、処理ユニット40および搬送ユニット50を載せるワゴン51にも、染色液等の試薬が入った試薬容器52が収納されている。
【0023】
検体分析システム1は、さらに、検体ラック110およびQC検体ラック160の搬送を管理するための搬送コントローラ70を備える。搬送コントローラ70は、供給ユニット80の下方のワゴン90内に収納されている。搬送コントローラ70は、搬送ユニット20,50,81および回収ユニット60および供給ユニット80と信号の送受信を行うことで、各ユニットのラック搬送路におけるラック搬送を制御する。また、検体分析システム1では、各ユニットおよび搬送コントローラ70が、通信ネットワークを介してホストコンピュータ120と通信可能に接続されている。
【0024】
検体分析システム1は、例えば、病院の検査室に設置される。この場合、ホストコンピュータ120の一例は、複数の検査機器に接続され、検体情報や測定オーダを集中管理する臨床検査情報システム(LIS:Laboratory Information Sysmtem)である。ホストコンピュータ120には、各検体容器100および各QC検体容器150に関する情報が登録されている。
【0025】
本明細書では、容器が収容されていないラックを空ラック170(後述の
図8等参照)と称する。空ラック170に検体容器100が収容されたものを検体ラック110と称する。空ラック170にQC検体容器150が収容されたものをQC検体ラック160と称する。
【0026】
検体分析システム1では、供給ユニット80にセットされた検体ラック110が、隣り合う搬送ユニット20の第1搬送路21に搬送される。第1搬送路21に搬入された検体ラック110は、搬送先が上流側のモジュール10でない場合、第1搬送路21により下流側のモジュール10の搬送ユニット20に搬送される。搬送先が上流側のモジュール10である場合、検体ラック110は第1搬送路21からこのモジュール10の第2搬送路22に搬送され、このモジュール10の測定ブロックで初検と、必要により再検が行われる。制御ユニット30は、初検および再検の結果をホストコンピュータ120に送信するように構成されている。
【0027】
検体ラック110に収容された全ての検体容器100について初検と必要な再検が終了すると、搬送コントローラ70は、各検体容器100について処理ユニット40で塗抹標本の作製を行う必要があるか否かをホストコンピュータ120に問い合わせる。検体ラック110に塗抹標本の作製を行う必要がある検体容器100が含まれる場合、この検体ラック110の搬送先は処理ユニット40となり、この検体ラック110は搬送ユニット20,50の搬送路を介して処理ユニット40に供給される。
【0028】
検体ラック110に塗抹標本の作製を行う必要がある検体容器100が含まれない場合、この検体ラック110の搬送先は回収ユニット60となり、検体ラック110は搬送ユニット20,50の搬送路を介して回収ユニット60に搬送される。処理ユニット40で塗抹標本の作製を行う場合も、検体ラック110は、塗抹標本の作製後、回収ユニット60に搬送される。
【0029】
図3は、検体分析システム1を構成する各ユニットの接続関係を示すブロック図である。
図1~
図3に示すように、制御ユニット30は、同じモジュール10内の測定ユニットと通信可能に接続され、同じモジュール10内の測定ユニットを制御する。制御ユニット30は、例えば、第1測定ユニット10Aと第2測定ユニット10Bを制御すると共に、搬送ユニット20の一部を制御する。制御ユニット30は、第1測定ユニット10Aと第2測定ユニット10Bから検体の測定データを受信して、測定項目に応じた検体の測定結果を生成するように構成されている。
【0030】
搬送ユニット20は、搬送コントローラ70により搬送動作が制御される第1搬送機構20aと、制御ユニット30により搬送動作が制御される第2搬送機構20bとを含む。第1搬送機構20aは、第1搬送路21と第3搬送路23のラック搬送に関連する部分を含む。第2搬送機構20bは、第2搬送路22、第1貯留部24、第2貯留部25(
図5参照)によるラック搬送に関連する部分を含む。制御ユニット30は、第1測定ユニット10A、第2測定ユニット10B、第1搬送機構20a、および第2搬送機構20bと通信可能に接続されている。
【0031】
制御ユニット30は、例えばパーソナルコンピュータである。制御ユニット30は、制御部31を備える。制御部31は、主な構成としてプロセッサと、記憶部と、入出力インターフェースとを備える。プロセッサは、例えばCPUで構成され、記憶部にインストールされた制御プログラムを読み出して実行することで、測定ユニットおよび搬送ユニットの各部の動作を制御する。プロセッサは、さらに記憶部にインストールされた解析プログラムを実行することで、測定ユニットから送信される測定データを解析して、検体に含まれる赤血球、白血球、血小板、ヘモグロビン等の血液中の成分を計数し又は定量する。記憶部は、ROM、HDD、SSD等の不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリとを含む。制御ユニット30は、LANケーブルによって測定ユニットおよび搬送ユニットに接続されている。
【0032】
検体分析システム1を構成する各ユニットは、集線装置130を介して通信可能に接続されている。集線装置130は、例えばハブにより構成される。本実施形態では、2つのモジュール10の第1搬送機構20a、搬送ユニット50、回収ユニット60、搬送コントローラ70、および供給ユニット80が集線装置130を介して通信可能に接続されている。また、上述の通り、各ユニットおよび搬送コントローラ70はホストコンピュータ120と通信可能に接続されている。制御ユニット30(制御部31)は、例えば、ホストコンピュータ120に測定オーダの問い合わせを行って測定オーダを取得し、取得した測定オーダに基づいて測定ユニットを制御する。
【0033】
処理ユニット40は、制御部41と、作製部42とを備える。制御部41は、例えば処理ユニット40に組み込まれたプロセッサと記憶部とを備え、記憶部にインストールされた制御プログラムに基づいて作製部42を制御する。作製部42は、搬送ユニット50のラック搬送路の所定位置に塗抹標本の作製対象の検体容器100が搬送されると、検体容器100から検体を吸引し、塗抹標本を作製するように構成されている。作製部42の動作は、制御部41により制御される。回収ユニット60は、2つのモジュール10のいずれかで測定が完了した検体ラック110、および処理ユニット40を経由して塗抹標本の作製が完了した検体ラック110を回収する。回収ユニット60は、ラック搬送路を備え、搬送コントローラ70により制御される。
【0034】
搬送コントローラ70は、例えばパーソナルコンピュータである。搬送コントローラ70は、制御部71を備える。制御部71のハードウェア構成は、制御ユニット30の制御部31と同様である。制御部71は、集線装置130を介して、供給ユニット80、第1搬送機構20a、搬送ユニット50、および回収ユニット60に制御信号を送信し、検体ラック110およびQC検体ラック160の搬送を制御する。制御部71は、制御ユニット30と通信可能に接続されている。制御部71は、各ユニットのセンサの検知信号に基づいて、搬送路における各検体ラック110および各QC検体ラック160の位置を把握している。
【0035】
供給ユニット80の制御部82aは、主に保管調整ユニット82の各構成要素の動作を制御する。本実施形態では、さらに、制御部82aの機能によって、検体分析システム1の各ユニットの自動ウェイクアップおよび自動シャットダウンが実行される。制御部82aのハードウェア構成は、制御部31,71と同様である。
【0036】
図4は、複数の検体容器100が収容された検体ラック110を示す斜視図である。本明細書では、説明の便宜上、検体ラック110が検体分析システム1にセットされた状態で、システムの前方を向く側を検体ラック110の前側、後方を向く側を検体ラック110の後側とする。
【0037】
図4に示すように、検体容器100は、被検者から採取された血液検体が入った有底のチューブ101と、チューブ101の開口部を塞ぐキャップ102とを備える。チューブ101は、例えば、透光性のガラス又は樹脂で構成された有底円筒状の容器である。チューブ101の開口部はゴム製のキャップ102で塞がれ、検体を収容する内部空間が密封されている。また、検体容器100には、機械可読ラベル103が設けられている。機械可読ラベル103は、例えば、検体IDを示すバーコードが印刷されたバーコードラベルであって、チューブ101の側面に貼着されている。検体IDは、検体を個別に識別可能な識別情報である。
【0038】
検体ラック110(空ラック170)は、検体容器100を収容し、検体容器100の搬送に使用されるケースであって、複数の検体容器100を起立させた状態で保持できる複数の収容部111を備える。収容部111の数は特に限定されないが、本実施形態では、10個の収容部111(1番~10番)が左右方向に一列に並んで形成されている。また、検体ラック110には、機械可読ラベル112が設けられている。機械可読ラベル112は、例えば、ラックIDを示すバーコードが印刷されたバーコードラベルである。ラックIDは、検体ラック110を個別に識別可能な識別情報である。
【0039】
検体ラック110は、底面視長方形状の底板部113と、検体容器100の高さ方向に延びて設けられ検体容器100を支持する壁部114とを備える。検体ラック110では、検体容器100が底板部113に対して略垂直に起立している。壁部114は、起立した検体容器100よりも低い高さで形成される。壁部114は、底板部113の左右両端部に形成された一対の側壁115と、底板部113の前端部に沿って形成され、2つの側壁115を連結する前壁116と、前壁116から底板部113の後端側に延びる複数の隔壁117とを含む。複数の隔壁117は、検体容器100の収容スペースを区画し、複数(
図4では10個)の収容部111を形成する。
【0040】
図4に例示するラックには9つの隔壁117が形成され、1番と2番の収容部111を区切る隔壁117の後面に、バーコードラベルである機械可読ラベル112が貼着されている。各収容部111は、上方および後方に向かって大きく開口している。このため、検体容器100が収容部111に収容された状態でも、機械可読ラベル103を読み取ることができる。なお、機械可読ラベル103、112は、
図4に示すような一次元のバーコードラベルに限らず、二次元コードであってもよい。機械可読ラベル103、112は、RFIDリーダによって読み取り可能なICタグであってもよい。
【0041】
以下、
図5および
図6を参照しながら、測定ブロックおよび搬送ユニット20の構成について詳説する。
図5では、第1送出部27Aのプレート272が第1搬送路21上から退避した位置にあり、
図6では、プレート272が第1搬送路21上に存在する。
【0042】
[測定ブロック(第1測定ユニット10A、第2測定ユニット10B)]
図5および
図6に示すように、第1測定ユニット10Aと第2測定ユニット10Bは、搬送ユニット20と前後方向に隣り合って、搬送ユニット20の後方に配置されている。第1測定ユニット10Aと第2測定ユニット10Bは、搬送ユニット20の第2搬送路22に搬送された検体ラック110から検体容器100を取り出し、検体容器100に収容された血液検体の測定を行う。
図5および
図6では、第1測定ユニット10Aの構成を図示するが、第2測定ユニット10Bも同じ装置構造を有する。
【0043】
第1測定ユニット10Aは、例えば、CBC項目とDIFF項目の測定が可能である。CBC項目は、WBC(白血球数)、RBC(赤血球数)、HGB(血色素量)、HCT(ヘマトクリット値)、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)、PLT(血小板数)等を含む。DIFF項目は、NEUT#(好中球数)、LYMPH#(リンパ球数)、MONO#(単球数)、EO#(好酸球数)、BASO#(好塩基球数)等を含む。第2測定ユニット10Bは、例えば、CBC項目およびDIFF項目に加えて、RET項目、PLT-F項目、WPC項目の測定が可能である。RET項目は、RET#(網赤血球数)等を含む。PLT-F項目は、例えばPLT#(血小板数)を含む。WPC項目では、例えば、芽球やリンパ球系の異常白血球を検出し、フラッギングする。
【0044】
1つの実施形態では、第1測定ユニット10Aが、初検としてCBC項目とDIFF項目の測定を行う。また、第2測定ユニット10Bが、初検としてCBC項目とDIFF項目の測定を行い、必要に応じて再検としてRET項目、PLT-F項目又はWPC項目の測定を行う。すなわち、第1測定ユニット10Aが初検専用の測定ユニットであり、第2測定ユニット10Bが初検に加えて再検も行うことが可能な測定ユニットである。
【0045】
第1測定ユニット10Aは、容器移送部11と、情報読取部12と、試料調製部13と、測定部14とを備える。第1測定ユニット10Aは、第2搬送路22の所定の取出位置P2において、検体ラック110の収容部111から検体容器100を取り出し、取り出した検体容器100を所定回数振って転倒攪拌し、攪拌した検体容器100を容器移送部11に設置するロボットハンド15を備える。容器移送部11は、検体容器100を起立させた状態で保持できる保持部11aを有し、容器移送部11とともに保持部11aが前後方向に移動するように構成されている。情報読取部12は、容器移送部11による検体容器100の移送経路において、ロボットハンド15によって検体容器100が設置される設置位置と後述の吸引管13aによる吸引位置との間の位置に配置され、保持部11aにセットされた検体容器100の機械可読ラベル103から検体IDを読み取る。
【0046】
試料調製部13は、吸引管13aを備える。試料調製部13は、保持部11aにセットされた検体容器100のキャップ102を吸引管13aによって貫通し、吸引管13aを介して検体を吸引する。試料調製部13は、例えば反応槽を備え、吸引した検体と試薬とを反応槽内で混合することにより測定用試料を調製する。試薬は、例えば、希釈液、溶血剤、染色液である。測定部14は、例えば、光学式検出部と、電気抵抗式検出部と、ヘモグロビン測定部とを備え、測定用試料の測定を行う。検体容器100は、検体の吸引が終了すると、容器移送部11により前方に搬送され、ロボットハンド15により検体ラック110の元の収容部111に戻される。
【0047】
第1測定ユニット10A、第2測定ユニット10B、および搬送ユニット20の一部である第2搬送機構20b(
図3参照)は、制御ユニット30により制御される。初検を行う場合、制御ユニット30は、読み取った検体IDに基づいてホストコンピュータ120に初検の測定オーダの問い合わせを行い、ホストコンピュータ120から検体の測定オーダを取得する。制御ユニット30は、初検の測定結果に基づいて再検を行うか否かを決定するための再検ルールを記憶しており、ルールにしたがって再検を行うと決定した場合、再検の測定オーダを生成する。
【0048】
検体ラック110に収容された複数の検体容器100は、初検の際、左端の収容部111から右端の収容部111まで、順に第1測定ユニット10A又は第2測定ユニット10Bに取り込まれ、検体の測定が行われる。このとき、測定ユニットの負荷が分散するように、検体容器100を取り込む測定ユニットが決定される。例えば、
図4に示す収容位置番号が奇数の検体容器100は第2測定ユニット10Bに取り込まれ、収容位置番号が偶数の検体容器100は第1測定ユニット10Aに取り込まれる。
【0049】
[搬送ユニット20]
搬送ユニット20は、上述の通り、第1搬送路21と、第2搬送路22と、第3搬送路23とを備える。3つの搬送路は、左右方向に延び、互いに平行に配置されている。第1搬送路21は、検体分析システム1の上流側から下流側(右から左)へ検体ラック110を搬送する。第2搬送路22は、右から左および左から右の左右両方に検体ラック110を搬送可能である。
【0050】
第3搬送路23は、検体分析システム1の下流側から上流側(左から右)へQC検体ラック160を搬送する。QC検体容器150は、複数回の測定に使用される精度管理物質を含み、また精度管理物質は供給ユニット80で冷却保管する必要があるため、測定ユニットでの測定終了後、供給ユニット80に戻される。本実施形態では、使用済みの検体ラック110は回収ユニット60に搬送されるので、第3搬送路23は検体ラック110を搬送しない。
【0051】
搬送ユニット20には、第1搬送路21の下流側端部と第3搬送路23の下流側端部に、可動式のストッパ21c,23bがそれぞれ設けられている。また、第1搬送路21と第3搬送路23の間であって、後述する第2貯留部25と前後方向に並ぶ位置に、可動式のストッパ21dが設けられている。以下、検体ラック110およびQC検体ラック160の搬送で共通する内容は、検体ラック110を例に挙げて、搬送ユニット20の構成を説明する。
【0052】
第1搬送路21と、第2搬送路22と、第3搬送路23は、前後方向に離れて配置されている。第1搬送路21と第2搬送路22の間には、検体ラック110を貯留可能なスペースである第1貯留部24と第2貯留部25が設けられている。第2搬送路22の右端部は第1貯留部24を介して第1搬送路21の上流側端部に繋がり、第2搬送路22の左端部は第2貯留部25を介して第1搬送路21の下流側端部に繋がっている。
【0053】
搬送ユニット20は、さらに、搬送路間および搬送路と貯留部の間で検体ラック110の受け渡しを行うための複数のラック送出部と、搬送路および貯留部における検体ラック110の位置を検知するための複数のセンサとを備える。搬送ユニット20は、検体容器100の機械可読ラベル103および検体ラック110の機械可読ラベル112から検体IDおよびラックIDをそれぞれ読み取る情報読取部26を備える。情報読取部26は、第2搬送路22の長さ方向中央部に配置されており、第1測定ユニット10Aに対応する右側の取出位置P2と第2測定ユニット10Bに対応する左側の取出位置P2の間において、上述の機械可読ラベル103、112を読み取れるように配置されている。
【0054】
搬送ユニット20は、ラック送出部として、第1送出部27Aと、第2送出部27Bと、第3送出部27Cと、第4送出部27Dとを備える。4つのラック送出部は、いずれも前後方向に移動可能に構成されたラック搬送装置である。第1送出部27Aは、第1搬送路21の上流位置から第1貯留部24に検体ラック110を押し出すように構成されている。第2送出部27Bは、第1貯留部24から第2搬送路22の右端位置に検体ラック110を搬送し、第3送出部27Cは、第2搬送路22の左端位置から第2貯留部25に検体ラック110を搬送する。また、第4送出部27Dは、第2貯留部25から第1搬送路21の下流位置に検体ラック110を搬送する。
【0055】
搬送ユニット20は、第1搬送路21と第2搬送路22の検体ラック110を検知するセンサとして、4つのセンサ28a,28b,28c,28dを備える。また、第3搬送路23の検体ラック110を検知するセンサとして、センサ28e,28fを備える。搬送ユニット20は、第1貯留部24と第2貯留部25の検体ラック110を検知するセンサとして、センサ28g,28h,28iを備える。
【0056】
以下、検体ラック110の搬送経路に沿って、搬送ユニット20の各構成要素を説明する。なお、
図5および
図6では、2つのモジュール10のうち、検体分析システム1の上流側に配置されたモジュール10を例示して説明する。
【0057】
第1搬送路21は、供給ユニット80から搬入された検体ラック110を下流側のモジュール10に搬送するための搬送ベルト21a,21bを備える。搬送ベルト21a,21bは、それぞれ、対応するステッピングモータによって独立して駆動される。すなわち、第1搬送路21は、2本のコンベアベルトを備えている。搬送ベルト21bは、第2貯留部25の前方位置から第1搬送路21の下流側端部に亘って設けられている。搬送ベルト21aは、第1搬送路21の上流側端部から搬送ベルト21bの近傍に亘って設けられている。
【0058】
第1搬送路21における検体ラック110の搬送は、搬送コントローラ70の制御下で行われる。具体的には、搬送コントローラ70が搬送ベルト21a,21bに接続されたステッピングモータに制御信号を送信し、この制御信号に基づいてモータが駆動する。なお、他の搬送路およびラック送出部における検体ラック110の搬送の場合も同様に、搬送コントローラ70又は制御ユニット30の制御下で行われる。
【0059】
供給ユニット80から第1搬送路21の上流位置に搬入された検体ラック110は、搬送ベルト21aによって下流側に向かって搬送される。検体ラック110は、センサ28aにより検知され、第1送出部27Aにより第1貯留部24に送り込まれる。センサ28aは、例えば、発光部と受光部を有する光学式センサであって、発光部と受光部が第1搬送路21を前後から挟むように配置されている。センサ28aは、発光部から出射された光が検体ラック110によって遮られ、受光部の受光レベルが下がることにより検体ラック110を検知する。なお、搬送ユニット20に設置される他のセンサにも、センサ28aと同様の光学式センサを適用できる。
【0060】
第1搬送路21の上流位置に設けられた第1送出部27Aは、検体ラック110に係合する係合部として、第1搬送路21の長さ方向に沿ったプレート271と、第1搬送路21の幅方向に沿ったプレート272とを有する。プレート271,272は、例えば、互いに連結され、平面視略L字状に配置されている。第1送出部27Aは、プレート271,272が第1搬送路21による検体ラック110の搬送を妨げない退避位置(
図5参照)と、第1搬送路21により搬送されている検体ラック110を停止させる停止位置(
図6参照)と、検体ラック110を第1貯留部24に押し出す位置との間で、前後方向に移動可能に構成されている。
【0061】
第1送出部27Aが停止位置にある状態では、
図6に示すように、プレート272のみが第1搬送路21上に配置されている。搬送ベルト21aによって搬送される検体ラック110は、プレート272に引っ掛かって停止する。この状態から、第1送出部27A(プレート271)が後方に移動することで、検体ラック110が第1貯留部24に押し出される。第1貯留部24に搬送された検体ラック110は、第1貯留部24を左右から挟むように配置されたセンサ28gにより検知される。
【0062】
第1貯留部24は、第1搬送路21から受け取った検体ラック110を貯留するスペースであって、例えば、第1搬送路21と第2搬送路22の間に、上面が水平面に平行な板状部材を配置して構成される。第1貯留部24に送り出された検体ラック110は、センサ28gにより検知され、第2送出部27Bにより適切なタイミングで第2搬送路22に送り出される。第2送出部27Bは、例えば、検体ラック110の前面に当接する係合部を有し、検体ラック110の前面の左右両端部を後方に押して、検体ラック110を第2搬送路22の右端位置に押し出す。第2搬送路22の右端位置の近傍にはセンサ28cが設置され、右端位置に搬送された検体ラック110はセンサ28cにより検知される。
【0063】
第2搬送路22は、検体ラック110を左右方向に独立して搬送する2つの搬送ベルト22a,22bを備える。搬送ベルト22a,22bは、それぞれに対応して設けられたステッピングモータにより独立して駆動される。搬送ベルト22a,22bは、前後方向に並んで配置され、第2搬送路22の右端位置から左端位置に亘って左右方向に延びている。搬送ベルト22aには、間に検体ラック110が嵌る2つの突起22cが設けられている。搬送ベルト22bにも同様に、間に検体ラック110が嵌る2つの突起22dが設けられている。検体ラック110は、これらの突起22cの間に嵌るように第2送出部27Bに送り出される。検体ラック110は、突起22cの間に嵌った状態で搬送ベルト22a,22bの駆動により左右に搬送される。
【0064】
第2搬送路22によれば、2つの検体ラック110を別々に左右方向に搬送できる。
図6に示すように、第2搬送路22には2つの検体ラック110を同時に搬入可能である。以下、先に第2搬送路22に送り込まれる検体ラック110を「先行ラック」、先行ラックの後に第2搬送路22に送り込まれる検体ラック110を「後行ラック」と称する。この場合、先行ラックについて検体の測定を行いながら、後行ラックについても並行して測定を行うことができる。
【0065】
情報読取部26は、第2搬送路22を挟むように配置されたローラ26a、26b、および読取部26cを備える。ローラ26a,26bは、互いに近づく方向に移動することが可能であり、検体容器100を前後方向に挟んだ状態でローラ26aが回転する。これにより検体容器100が回転する。読取部26cは、ローラ26bの隙間から、回転する検体容器100の機械可読ラベル103を読み取る。読取部26cは、検体ラック110のラックIDを読み取ることも可能である。読取部26cは、例えば、バーコードリーダである。情報読取部26による検体IDおよびラックIDの読み取り、測定ユニットでの検体の測定は、制御ユニット30の制御下で行われる。
【0066】
検体IDが読み取られた検体容器100は、第1測定ユニット10Aおよび第2測定ユニット10Bのいずれか一方に対応する取出位置P2に搬送され、ロボットハンド15によって検体ラック110から取り出され、測定ユニットに取り込まれる。このとき、各測定ユニットの負荷が分散するように、検体容器100を取り込む測定ユニットが決定される。測定ユニットでは初検が行われ、初検が終了すると、検体容器100は取出位置P2で元の収容部111に戻される。検体ラック110に収容された全ての検体容器100について初検および必要な再検が全て終了すると、この検体ラック110は第2搬送路の下流側端部、すなわち第2貯留部25の後方まで搬送され、第3送出部27Cによって第2貯留部25に搬送される。
【0067】
なお、先行ラックの全ての検体容器100について初検が終了したとしても、全ての検体容器100について再検の要否が決まるまでは、先行ラックは第2搬送路22に留まる必要がある。このとき、最後に初検が行われた検体容器100の再検の要否が決まるまでに所定の時間を要するので、測定効率を高めるために、後行ラックが第2搬送路22に送り込まれ、後行ラックの初検が開始される。待機中の先行ラックは、後行ラックの搬送に干渉しないように第2搬送路22の左端位置に退避される。
【0068】
第2搬送路22の左端位置の近傍には、センサ28dが設置されている。初検および必要な再検が全て終了した検体ラック110は、第3送出部27Cにより、左端位置からその前方に設けられた第2貯留部25に押し出される。第2貯留部25は、第2搬送路22から受け取った検体ラック110を貯留するスペースであって、第1貯留部24と同様に、上面が水平面に平行な板状部材を配置して構成される。第2貯留部25の検体ラック110は、センサ28h,28iにより検知され、第4送出部27Dにより適切なタイミングで第1搬送路21に押し出される。
【0069】
第2貯留部にあるラックは、搬送コントローラ70によって決定される次の搬送先に応じて、第1搬送路21か第3搬送路に搬送される。
【0070】
例えば、第2貯留部にあるラックが検体容器100を収容した検体ラック110であり、次の搬送先が処理ユニット40又は回収ユニット60である場合、検体ラック110は左方向に搬送される必要があるため第1搬送路21に送られる。例えば、第2貯留部にあるラックがQC検体容器150を収容したQC検体ラック160である場合であって、次の搬送先が隣の測定ブロックである場合、QC検体ラック160は左方向に搬送される必要があるため第1搬送路21に送られる。次の搬送先が供給ユニット80である場合、QC検体ラックは右方向に搬送される必要があるため第3搬送路に送られる。
【0071】
第2貯留部25にあるラックを第1搬送路21に搬送する場合、ストッパ21dが第1搬送路21のベルトより高い位置まで上がった状態で、第4送出部27Dがラックを前方に押す。前方向に押されたラックは、ストッパ21dに当たって第1搬送路21の下流位置において停止する。ストッパ21cが下がった状態で搬送ベルト21bが駆動すると、ラックが左方向に搬送される。
【0072】
第2貯留部25にあるラックを第3搬送路23に搬送する場合、ストッパ21dが第1搬送路21のベルトの高さと同じか、又は低い位置まで下がった状態で、第4送出部27Dがラックを前方に押す。前方向に押されたラックは、ストッパ21dの上を通過して第3搬送路23の上流位置に送られる。
【0073】
第3搬送路23は、搬送ベルト23aを備える。搬送ベルト23aは、上述の搬送ベルト21a、21bと同様にステッピングモータによって駆動される。第3搬送路23に搬送されたラックは、搬送ベルト23aによって右方向に搬送される。
【0074】
[供給ユニット80]
以下、
図7~
図29を参照しながら、供給ユニット80の構成について詳説する。
【0075】
供給ユニット80は、上述の通り、検体容器100が収容された検体ラック110を測定ユニットに供給するための装置である。供給ユニット80は、さらに、精度管理物質が入ったQC検体容器150を冷却保管し、ユーザによって予め登録されたスケジュールにしたがって、精度管理物質の温度を測定温度に調整する。その後、温調された精度管理物質が入ったQC検体容器150をラックにセットして、目的とする測定ユニットに向けて搬送する。QC検体容器150は、空ラック170に収容され、検体ラック110と同様に、QC検体容器150が収容されたQC検体ラック160として搬送ユニット20の第2搬送路22に搬送される。
【0076】
QC検体容器150は、既知濃度の細胞を含む精度管理物質を収容する点で、検体容器100と異なる。QC検体容器150は、検体容器100と同様に、チューブ101と、キャップ102とを備える。また、チューブ101の側面には、QC検体のロット番号、濃度レベル、有効期限を含む検体IDを示す機械可読ラベル103が貼着されている。機械可読ラベル103は、バーコードラベルである。なお、QC検体容器150には、検体容器100と形状が異なる容器が使用されてもよく、検体容器100およびQC検体容器150には、それぞれ2種類以上の容器が使用されてもよい。
【0077】
精度管理物質は、一般的に、コントロール試料又はQC検体とも呼ばれる。検体分析システム1では、定期的に、精度管理物質を用いて分析装置の測定結果に異常が無いことを確認し、測定精度の管理を行う必要がある。検体分析システム1は、例えば、1日1回の頻度で検体の測定を開始する前に、分析装置である第1測定ユニット10Aと第2測定ユニット10BにQC検体容器150を搬送し、精度管理物質の測定を行う。精度管理物質の測定値、例えば赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン濃度等の値は、例えば、予め制御部ユニット30の制御部31に記憶された上限値および下限値と比較される。精度管理物質の測定値が上限および下限の範囲内である場合、その精度管理結果は正常と判断され、範囲外である場合は異常と判断される。
【0078】
精度管理物質は、自動血球計数装置の精度管理に好適に用いられるコントロール血液であり、既知濃度となるように調整された全血成分を含む。全血成分とは、例えば血球であり、赤血球、白血球、血小板を含む。このような精度管理物質としては、XN-CHECK(シスメックス株式会社製)がある。精度管理物質は、低濃度、標準濃度、高濃度の3つの濃度レベルに調整された3種類の精度管理物質を含んでもよい。以下では、低濃度の精度管理物質をレベル1、標準濃度の精度管理物質をレベル2、高濃度の精度管理物質をレベル3と区別して称する。
【0079】
供給ユニット80には、例えば、複数のQC検体容器150が冷却保管される。供給ユニット80には好ましくは、濃度レベルの異なる複数種類の精度管理物質がそれぞれ入った2種類以上の容器が冷却保管される。
【0080】
図7は、供給ユニット80の外観を示す斜視図である。供給ユニット80は、ユーザがラックをセットするために外部からアクセス可能なコンベア部81の第1搬送路811(後述の
図8参照)を備える。供給ユニット80の前面には、QC検体容器150がセットされる第1投入口831Aと、第1投入口831Aを覆う第1カバー832Aとが設けられている。
【0081】
第1カバー832Aは、第1投入口831Aの全体を覆っており、ユーザにより開閉操作される。第1カバー832Aは、例えば、左側端部が筐体に対して回転可能に軸支され、左方に回転して開くように構成されている。第1カバー832Aを開くと、QC検体容器150を保持して供給ユニット80の内部へ移送する移送ホルダ834(
図8等参照)が露出する。詳しくは後述するが、QC検体容器150は移送ホルダ834にセットされる。
【0082】
供給ユニット80は、さらに、洗浄剤容器180(
図8等参照)がセットされる第2投入口831Bと、第2投入口831Bを覆う第2カバー832Bとを備える。第2投入口831Bは、第1投入口831Aの右側に隣接配置されている。第2カバー832Bは、例えば、後側端部が筐体に対して回転可能に軸支され、上方に回転して開くように構成されている。
【0083】
供給ユニット80の前面には、モニタ91が設けられている。モニタ91は、例えば、投入されたQC検体容器150の情報を含む供給ユニット80の状態に関する情報や、供給ユニット80の操作に必要な情報などを表示するための表示装置である。モニタ91は操作部としても使用可能なタッチパネルにより構成される。
【0084】
図8は、供給ユニット80の内部レイアウトを模式的に示す図である。供給ユニット80は、主要な構成要素として、コンベア部81と、保管調整ユニット82とを備える。保管調整ユニット82は、投入部83、保冷部84、移送部85、加温部86、情報読取部87、およびラック収容部88を含む。以下の説明では、検体ラック110の搬送とQC検体ラック160の搬送とで共通する内容は、検体ラック110の搬送を例に挙げて説明する。
【0085】
[コンベア部81]
コンベア部81は、供給ユニット80内で検体ラック110を搬送する複数のラック搬送路を含む。コンベア部81は、上流側から順に、第1搬送路811と、第2搬送路812と、第3搬送路813と、第4搬送路814とを備える。この4つの搬送路は繋がっており、第1搬送路811にセットされた検体ラック110は、第2搬送路812、第3搬送路813を経て第4搬送路814に送られる。第4搬送路814は、モジュール10の搬送ユニット20に接続されており、検体ラック110は、第4搬送路814から搬送ユニット20の第1搬送路21に搬送される。
【0086】
コンベア部81は、さらに、搬送ユニット20の第3搬送路23に接続され、隣り合う搬送ユニット20の第3搬送路23を経由して帰ってきたQC検体ラック160を受け取るための第5搬送路815を備える。第5搬送路815は、第4搬送路814よりもコンベア部81の前方に配置されている。第5搬送路815は、QC検体ラック160を保管調整ユニット82に戻すためのラック搬送路であって、第1搬送路811に接続されている。
【0087】
コンベア部81には、第1搬送路811と第5搬送路815の間に、第6搬送路819が設けられている。第6搬送路819は、後述の
図49に示すように、追加の供給ユニットが設けられる場合に、追加の供給ユニットから検体ラック110を搬入する場合に用いられる。第6搬送路819は、右から左へ検体ラック110を搬送する搬送ベルト819aを備える。第6搬送路819の左端位置の近傍には、検体ラック110を検知するセンサ819bが設置されている。
【0088】
第1搬送路811と第3搬送路813は、互いに平行に配置されている。第1搬送路811は、検体ラック110を前方から後方に搬送するための搬送路であり、第3搬送路813は、検体ラック110を後方から前方に搬送するための搬送路である。第2搬送路812は、左右方向に延びて設けられ、第2搬送路812の右端は第1搬送路811の後端と並んでおり、第2搬送路812の左端は第3搬送路813の後端と並んでいる。このような構成により、第2搬送路812は、第1搬送路811から送り出されたラックを受け入れて左右方向に搬送することができる。第3搬送路813は、第2搬送路812によって左端まで搬送されたラックを受け取ることができる。
【0089】
第1搬送路811と第3搬送路813は、前後方向に長く形成され、一度に複数の検体ラック110を貯留可能である。第1搬送路811には、第2搬送路812に1つずつ検体ラック110を供給するためのストッパ811aが設けられている。ストッパ811aは、上下方向に移動する可動式のストッパであって、第2搬送路812との境界部に配置されている。
【0090】
ストッパ811aは、前後方向に回転可能に設けられ、後方から前方に回転すると上方に突出した状態となり、逆方向に回転すると下方に収納される。ストッパ811aは、第1搬送路811にある検体ラック110を、第2搬送路812へ搬送する場合には上面から突出しない状態とされる。第2搬送路812へのラックの搬送が完了すると、ストッパ811aが前方向に回転し、第2搬送路812にある検体ラック110と第1搬送路811にある検体ラック110の間に介在するように位置付けられる。検体ラック110の間にストッパ811aが入ることで、2つのラックが切り離される。第3搬送路813にも、第4搬送路814との境界部に、ストッパ811aと同様の可動式のストッパ813aが設けられている。
【0091】
第2搬送路812、第4搬送路814、および第5搬送路815は、左右方向に延び、互いに平行に配置されている。第2搬送路812は、右から左および左から右の左右両方に検体ラック110を搬送可能な搬送ベルト812bを備える。第4搬送路814は、検体ラック110を搬送ユニット20の第1搬送路21に搬送するための搬送路であって、第4搬送路814の右端側に第3搬送路813が繋がっている。第5搬送路815は、搬送ユニット20の第3搬送路23から搬入されるQC検体ラック160を右方向に搬送可能な搬送ベルト815bを備える。
【0092】
コンベア部81は、搬送路間で検体ラック110の受け渡しを行うための複数のラック送出部と、搬送路における検体ラック110の位置を検知するための複数のセンサとを備える。また、コンベア部81は、第1情報読取部817Aと、第2情報読取部817Bと、第3情報読取部817Cとを備える。
【0093】
コンベア部81は、ラック送出部として、第1送出部816Aと、第2送出部816Bと、第3送出部816Cと、第4送出部816Dと、第5送出部816Eとを備える。第1送出部816Aは、検体ラック110の前面に当接して検体ラック110を後方に押す係合部816fと、係合部816fを第1搬送路811に沿って前後方向に移動させる駆動機構とを備え、検体ラック110を第1搬送路811から第2搬送路812に押し出すように構成されている。
【0094】
第1送出部816Aは、上記駆動機構として、第1搬送路811に沿って配置されたベルト816g、係合部816fとベルト816gを連結する連結部材816h、およびベルト816gを駆動させるモータ816iを備える。モータ816iには、例えば、ステッピングモータが用いられる。第1搬送路811では、係合部816fに押される検体ラック110が、先行する後方の検体ラック110に当たって止まるため、第1送出部816Aには、この状態を検知可能なトルクセンサ816jが設けられている。
【0095】
第1送出部816Aは、トルクセンサ816jが作動すると、係合部816fを
図8に示す原点位置に戻すように構成されている。係合部816fは、例えば、原点位置に戻る際に、後行の検体ラック110に係合部816fが当たったとしても検体ラック110を前方に押さないように、連結部材816hに対して後方に向かって回転可能に軸支されている。第3送出部816Cは、第1送出部816Aと同様の構造を有し、検体ラック110を第3搬送路813から第4搬送路814に押し出すように構成されている。
【0096】
第2送出部816Bは、第2搬送路812から第3搬送路813に検体ラック110を搬送し、第4送出部816Dは、第4搬送路814から搬送ユニット20の第1搬送路21に検体ラック110を搬送する。また、第5送出部816Eは、第5搬送路815から第1搬送路811にQC検体ラック160を搬送する。
【0097】
コンベア部81は、第1搬送路811の検体ラック110を検知するセンサとして、センサ818a,818bを備える。また、第2搬送路812の検体ラック110を検知するセンサとして、センサ818c,818eを備え、第3搬送路813の検体ラック110を検知するセンサとして、センサ818f,818gを備える。また、第4搬送路814の検体ラック110を検知するセンサとして、センサ818hを備え、第5搬送路815の検体ラック110を検知するセンサとして、センサ818i,818jを備える。
【0098】
コンベア部81は、さらに、第2搬送路812を移動するラックに収容された容器を検知するセンサ818dを備える。センサ818dは、第2搬送路812の中間部に設けられている。センサ818dの検知情報から第2搬送路812を移動するラックにおける容器の有無が分かるため、センサ818dにより容器が検知されない場合、第2搬送路812のラックは空ラック170であると判定できる。センサ818dの検知情報は、第2搬送路812を移動するラックの搬送先の決定に使用される。
【0099】
センサ818a,818c,818e,818f,818i,818jには、例えば、発光部と受光部が一体化された反射型の光学式センサが用いられる。また、センサ818b,818d,818g,818hには、発光部と受光部が分離されたフォトインタラプタタイプの光学式センサが用いられる。第4搬送路814には、検体ラック110の搬送に支障がない大きさの開口部814dが形成されており、この開口部814dの下にセンサ818hの発光部が配置され、第4搬送路814の右端位置の近傍に受光部が配置されている。
【0100】
第1搬送路811に検体ラック110がセットされると、センサ818bにより検知され、第1送出部816Aにより第2搬送路812の右端位置に搬送される。第2搬送路812の右端位置に搬入された検体ラック110は、センサ818cにより検知され、搬送ベルト812bにより第2搬送路812の左端位置に搬送される。第2搬送路812を右から左へ移動する検体ラック110は、第2搬送路812の中間部に配置されたセンサ818dにより、ラックに収容される容器の有無が検知される。
【0101】
第2搬送路812の左端位置において、検体ラック110はセンサ818eにより検知される。第2搬送路812の後方には、第1情報読取部817Aと第2情報読取部817Bが設けられている。第1情報読取部817Aおよび第2情報読取部817Bは、互いに近づく方向に移動可能に設けられており、検体ラック110に収容された検体容器100の検体IDを順に読み取る。第1情報読取部817Aと第2情報読取部817Bは、例えば、情報読取部87と同様の構造を有し、2つのローラが第2搬送路812を挟むように配置されている。
図8では図示を簡素化するためローラを省略している。
【0102】
第1情報読取部817Aは、
図4に示す収容位置番号が6~10の検体容器100について、第2情報読取部817Bが、収容位置番号が1~5の検体容器100について、それぞれ検体IDを読み取る。第1情報読取部817Aは、さらに検体ラック110の機械可読ラベル112からラックIDを読み取る。
【0103】
第3情報読取部817Cは、例えば、バーコードリーダである読取部を有し、ラックIDを読み取る。第3情報読取部817Cは、第4搬送路814の後方に配置されている。
【0104】
第2送出部816Bにより、第2搬送路812から第3搬送路813に搬送された検体ラック110は、センサ818f,818gにより検知され、第3送出部816Cにより第4搬送路814に搬送される。また、第4搬送路814に搬入された検体ラック110は、センサ818hにより検知され、第4送出部816Dにより搬送ユニット20の第1搬送路21に搬送される。なお、搬送ユニット20に搬送された検体ラック110は、上述の通り、検体分析システム1の下流側に配置された回収ユニット60に回収されるので、供給ユニット80には戻ってこない。
【0105】
QC検体容器150が収容されたQC検体ラック160は、ラック収容部88から第2搬送路812の右端位置に供給され、その後、検体ラック110と同様に、第2搬送路812、第3搬送路813および第4搬送路814を経由して、搬送ユニット20の第1搬送路21に搬送される。QC検体ラック160は、搬送ユニット20の第3搬送路23から、第5搬送路815に回収される。第5搬送路815に搬入されたQC検体ラック160は、センサ818iにより検知され、搬送ベルト815bにより第5搬送路815の右端位置に搬送される。QC検体ラック160は、第5搬送路815の右端位置でセンサ818jに検知され、第5送出部816Eにより第1搬送路811に搬送される。
【0106】
[投入部83]
図8に示すように、投入部83は、第1投入口831Aから取出位置P5にQC検体容器150を移送する第1投入部83Aと、第2投入口831Bから取出部839に洗浄剤容器180を移送する第2投入部83Bとを備える。取出位置P5は、移送部85がアクセス可能なQC検体容器150が取り出される位置であって、第1投入部83Aの後端部が取出位置P5となる。取出部839は、移送プレート839d、センサ839h等を備え、第2投入部83Bの後端部に設けられる。
【0107】
第1投入部83Aは、前後方向に沿って延びるQC検体容器150の移送路830Aを備える。同様に、第2投入部83Bは、前後方向に沿った洗浄剤容器180の移送路830Bを備える。本実施形態では、移送路830A,830Bが互いに平行に形成されている。第1投入口831Aの近傍および取出位置P5の近傍には、移送ホルダ834を検知するセンサ835f,835gがそれぞれ設けられている。センサ835f,835gには、例えば磁気センサ、渦電流式センサ等の近接センサが用いられる。
【0108】
第1投入部83Aには、第1投入口831Aに複数のセンサ833eが設置されている。第2投入部83Bには、移送路830Bに沿って複数のセンサ836dが設置されている。第2投入部83Bの移送路830Bは、洗浄剤容器180を移送する通路であると共に、複数の洗浄剤容器180を貯留する貯留部としても機能する。このため、移送路830Bに存在する洗浄剤容器180を検知するセンサ836dが移送路830Bに沿って複数設置されている。複数のセンサ836dの検知情報より移送路830Bに貯留されている洗浄剤容器180の数を確認できる。
【0109】
図9および
図10は、投入部83の斜視図である。
図9は移送ホルダ834が第1投入部83Aに位置する状態を、
図10は移送ホルダ834が取出位置P5に位置する状態をそれぞれ示す。
図9および
図10に示すように、投入部83は、第1投入部83Aと第2投入部83Bが一体化された装置であって、前方から後方に向かって傾斜した移送路830A,830Bを形作るフレーム833,836を備える。
【0110】
第1投入部83Aは、移送ホルダ834と、移送ホルダ834を前後方向に移動させる駆動機構835とを備える。移送ホルダ834には、QC検体容器150を1本ずつ収容可能な複数の収容部834aが設けられている。移送ホルダ834は、全体としてブロック状に形成され、その上面にQC検体容器150を挿入可能な穴である収容部834aが複数形成されている。収容部834aは、QC検体容器150が挿入された状態で、移送部85のアーム85bにより把持されるチューブ101の上部が移送ホルダ834の上面から突出する深さで形成されることが好ましい。
【0111】
移送ホルダ834の側面には、収容部834aに連通する貫通孔834bが形成されている。貫通孔834bは、左右方向に並んで移送ホルダ834の両側面に形成される。本実施形態では、前後方向に一列に並ぶ3つの収容部834aが存在し、1つの収容部834aに対して、左右に1つずつ合計6つの貫通孔834bが形成されている。センサ833eを構成する発光部および受光部は、この貫通孔834bを介して収容部834a内を光が通過するように、枠体833dの両側面に設置される。これにより、第1投入口831Aにおいて、各収容部834aのQC検体容器150の有無を検知できる。
【0112】
駆動機構835は、傾斜部833cに沿って延びる無端状のベルト835aと、移送ホルダ834とベルト835aを連結する連結部材835bと、ベルト85cが懸架される回転軸を含むモータ835cと、ベルト85cが懸架されるプーリ835dと、移送ホルダ834の移動をガイドするレール835eとを備える。移送ホルダ834は、この駆動機構835を介してフレーム833に移動可能に取り付けられている。
【0113】
移送ホルダ834は、収容部834aの少なくとも1つにQC検体容器150が収容され、第1カバー832Aが閉じられたときに、第1投入口831Aから取出位置P5に自動的に移動するように構成されている。移送ホルダ834が取出位置P5に到着すると、移送部85により収容部834aからQC検体容器150が取り出されて情報読取部87に移送される。全てのQC検体容器150が移送ホルダ834から取り出されると、移送ホルダ834は、例えば、自動的に第1投入口831Aに移動する。
【0114】
第1投入口831Aを覆う第1カバー832Aは、上述のように、移送ホルダ834が
図9に示す位置(原点位置ともいう)に存在しないときには開かないようにロックされている。移送ホルダ834が第1投入口831Aに到着してセンサ835fにより検知されると、第1カバー832Aのロックが解除される。
【0115】
第2投入部83Bは、フレーム836との間に洗浄剤容器180を挟持可能な隙間をあけて取り付けられた対向プレート837を備える。フレーム836と対向プレート837の間には、洗浄剤容器180がスライド移動可能な状態で、洗浄剤容器180のフランジ181を支持するレール838が設けられている。洗浄剤容器180は、レール838によりフランジ181が支持され吊り下げられた状態で移送路830Bをスライド移動すると共に、移送路830Bに貯留される。
【0116】
取出部839は、洗浄剤容器180を保持した状態で左右方向に移動する移送プレート839dを備え、移送プレート839dが取出部839の左端側に移動したときに、洗浄剤容器180を上方に突出させるように構成されている。また、取出部839は、移送プレート839dを移動可能に挟持する2枚の支持プレート839a,839bと、支持プレート839a,839bの下部に固定された傾斜ブロック839cと、移送プレート839dの駆動機構とを備える。取出部839には、駆動機構として、ベルト839e、モータ839f、およびプーリ839g等が設けられている。
【0117】
移送プレート839dには、プレート中央部に洗浄剤容器180を収容可能な保持部が形成されている。移送プレート839dが洗浄剤容器180を保持した状態で左方向に移動すると、洗浄剤容器180の下端部が傾斜ブロック839cの上面に当接する。傾斜ブロック839cの上面は、左側に向かって高くなるように傾斜しているため、洗浄剤容器180は傾斜ブロック839cの上面に沿って押し上げられ、移送部85により把持可能な状態となる。
【0118】
取出部839には、洗浄剤容器180の上方への突出を検知するセンサ839hが設けられている。センサ839hを構成する発光部および受光部は、支持プレート839aに取り付けられ、移送プレート839dの上に左右方向に沿った光軸が形成されるように配置される。センサ839hにより洗浄剤容器180の上方への突出が検知されると、移送部85により洗浄剤容器180が取出部839からラック収容部88の空ラック170に移送される。
【0119】
[保冷部84]
図11および
図12は、保冷部84の斜視図である。
図11は保冷部84のカバー842が閉じた状態を、
図12は保冷部84のカバー842が開いた状態をそれぞれ示す。また、
図12は吸気ダクト846の一部を取り外した状態を示す。保冷部84は、QC検体容器150を保管する保管庫であって、QC検体容器150を冷却する機能を有する。保冷部84は、QC検体容器150を冷却保管するための保冷室841aを形成するブロック状の保冷部本体841と、保冷室841aを覆うカバー842と、カバー842の開閉機構843とを備える。保冷部本体841およびカバー842は、左右方向に長い平面視長方形状を有する。保冷部84は、保冷部本体841を載せる台座848を備える。
【0120】
保冷部84は、制御部82aにより、保冷室841aの温度、カバー842の開閉等が制御される。保冷室841aの温度は、例えば2℃~8℃であり、常時略一定の温度に制御されている。なお、保冷部84の冷却は、検体分析システム1のシャットダウン後においても継続される。カバー842は、QC検体容器150を出し入れするタイミングで自動的に開閉される。
【0121】
保冷部本体841は、カバー842で覆われる保冷室841a内に、QC検体容器150を1本ずつ起立した状態で収容する複数の収容部841bを備える。収容部841bは、上方に向かって開口したQC検体容器150を挿入可能な穴であって、
図12に示す例では、9つの収容部841bが左右方向に一列に並んで形成されている。収容部841bは、QC検体容器150が挿入された状態で、移送部85のアーム85bにより把持されるチューブ101の上部が保冷部本体841の上面から突出する深さで形成されている。
【0122】
保冷部本体841には、冷却手段として、コンプレッサを備えた気化圧縮型の冷却装置等が用いられてもよいが、本実施形態では、装置の小型化等の観点から、ペルチェ素子が内蔵されている。保冷部本体841には、ペルチェ素子の放熱手段として、ファン845が設けられている。また、保冷部本体841には、ペルチェ素子により冷却される金属製の冷却ブロック、放熱フィン、温度センサ等が設けられる。
【0123】
カバー842は、保冷室841aの開口を閉じて保冷室841a内を気密かつ低温に保つ。カバー842は、保冷部本体841と同様にブロック状に形成され、保冷部本体841側を向く内面に形成された凹部842aを有する。カバー842の内面は、保冷部本体841の上面に当接する周縁部が平坦であり、中央部にカバー842の長手方向に沿って凹部842aが形成されている。カバー842の内面の周縁部には、ゴム製のパッキンが装着されていてもよい。
【0124】
カバー842は、保冷部本体841の右側端部に設けられた開閉機構843により、右方に回転して開くように構成されている。
【0125】
開閉機構843は、回転軸843aと、保冷部本体841の右側端部に固定され、回転軸843aを回転可能に支持する軸受部材843bと、カバー842の右側端部と回転軸843aを連結する連結部材843cと、回転軸843aを回転させる駆動機構とを備える。開閉機構843には、回転軸843aの駆動機構として、回転軸843aの後端に懸架された無端状のベルト843dと、ベルト843dが懸架される回転軸を有し、ベルト843dを駆動させるモータ843eとが設けられている。回転軸843aは、前後方向に延びている。また、モータ843eは、台座848に固定されている。
【0126】
開閉機構843は、軸受部材843bに取り付けられた2つのセンサ843f,843gと、回転軸843aの前端に固定された金属板843hとを備える。好適なセンサ843f,843gの一例は、磁気センサ、渦電流式センサ等の近接センサである。センサ843f,843gは、例えば、回転軸843aの回転と共に移動する金属板843hの近接を検知することにより、カバー842の開閉を検知可能に構成されている。本実施形態では、センサ843fがカバー842の開状態を検知し、センサ843gがカバー842の閉状態を検知する。
【0127】
ファン845は、ペルチェ素子の熱を逃がす放熱手段であって、保冷部本体841の後方に設置されている。ファン845には、吸気ダクト846と排気ダクト847が接続されており、ファン845の上には右方向に延びた吸気ダクト846が、ファン845の下には下方向に延びた排気ダクト847がそれぞれ設けられている。ファン845が作動すると、吸気ダクト846の吸込口から空気が吸い込まれ、発熱部を通って排気ダクト847の排気口から排気される。
【0128】
[移送部85]
図13に示すように、移送部85は、上下方向に長い板状のベース部85aと、QC検体容器150を把持する一対のアーム85bとを備える。ベース部85aは、板面が上下方向および前後方向に沿うように設けられている。一対のアーム85bは、前後方向に間隔をあけて配置され、互いに近づく方向および遠ざかる方向に移動可能である。一対のアーム85bが近づいたときにQC検体容器150が把持され、一対のアーム85bが離れたときにQC検体容器150がリリースされる。
【0129】
移送部85は、QC検体容器150を第1投入部83Aの移送ホルダ834から取り出し、情報読取部87を経由して保冷部84に移送するように構成されている。また、QC検体容器150を保冷部84から取り出し、加温部86を経由してラック収容部88に移送する。移送部85は、測定ユニットでの測定を終えてラック収容部88に回収されたQC検体容器150を保冷部84に戻し、或いは使用済みのQC検体容器150については第1回収部89Aに投入して廃棄する。
【0130】
また、移送部85は、洗浄剤容器180を第2投入部83Bから取り出し、ラック収容部88に移送するように構成されている。洗浄剤容器180は、第2投入部83Bの取出部839(
図8等参照)から取り出され、ラック収容部88の前端ラックに直接移送される。移送部85は、測定ユニットの洗浄が終了してラック収容部88に回収された使用済みの洗浄剤容器180を第2回収部89Bに投入して廃棄する。
【0131】
ベース部85aには、アーム85bの駆動機構として、前後方向に延びる無端状のベルト85cと、一対のアーム85bとベルト85cを連結する一対の連結部材85dと、ベルト85cが懸架される回転軸を含むモータ85eと、ベルト85cが懸架されるプーリ85fとが設けられている。一対のアーム85bは、この駆動機構により、ベース部85aに対して移動可能に取り付けられている。モータ85eには、例えば、ステッピングモータが用いられる。
【0132】
一対のアーム85bは、前後、左右、上下の3方向にも移動可能である。移送部85は、アーム85bが取り付けられたベース部85aを前後方向に移動させる第1駆動機構と、ベース部85aを左右方向に移動させる第2駆動機構とを備える。ベース部85aは、上端部が第1駆動機構および第2駆動機構2と係合して吊り下げられ、フレーム82fに対して前後、左右に移動可能な状態で支持されている。また、ベース部85aには、一対のアーム85bおよびベルト85c等を含むアーム85bの駆動機構を上下方向に移動させる第3駆動機構853(後述の
図14参照)が設けられている。
【0133】
一対のアーム85bは、例えば、QC検体容器150のチューブ101の上部を把持する。QC検体容器150は、チューブ101よりも外径が大きなキャップ102を備えるので、アーム85bがチューブ101の上部を把持することで、アーム85bがキャップ102に引っ掛かりQC検体容器150の抜け落ちをより確実に防止できる。また、洗浄剤容器180には、径方向外側に張り出したフランジ181が容器上端部に形成されているので、一対のアーム85bはフランジ181より少し下側の部分を把持する。
【0134】
[加温部86]
図13に示すように、加温部86は、ブロック状の加温部本体86aと、QC検体容器150を収容する収容部86bとを備える。収容部86bは、上方に向かって開口したQC検体容器150を挿入可能な穴であって、加温部本体86aに複数形成されている。収容部86bは、QC検体容器150を1本ずつ起立した状態で収容する。
図13に示す例では、6つの収容部86bが左右方向に一列に並んで形成されている。
【0135】
収容部86bは、QC検体容器150が挿入されたときに、移送部85のアーム85bにより把持されるチューブ101の上部が加温部本体86aの上面から突出する深さで形成されることが好ましい。加温部86はカバーを有さず、加温部本体86aの上面に大きな突起物は存在しない。なお、収容部86bの数、配置等は特に限定されず、例えば、収容部86bは千鳥状に配置されていてもよい。
【0136】
加温部86は、上述の通り、保冷部84で冷却保管されていたQC検体容器150を加温し、QC検体容器150に入った精度管理物質の温度を測定ユニットにおける測定温度に調整する機能を有する。測定温度は、23℃±3℃である。好適な冷却保管温度は2℃~8℃であるから、加温部86は、精度管理物質の温度を、例えば12℃~24℃程度上げる必要がある。加温部86は、QC検体容器150中の精度管理物質が測定温度となるように、収容部86bに挿入されたQC検体容器150を加温する。
【0137】
加温部86は、電力によって熱を発生するヒータを備えている。ヒータは、好ましくはアルミブロックヒータである。アルミブロックヒータは、熱媒体としてアルミブロックを使用するため、液状媒体を用いる場合と比べて容器を汚すことがなく好適である。また、アルミブロックは伝熱性が高いため昇温に要する時間も短縮できる。ヒータを備えることにより、室温が低い環境でも迅速な温度調整が可能となる。
【0138】
ヒータの設定温度は、精度管理物質を劣化させない範囲で測定温度よりも高い温度とされ、好ましい例では23℃±3℃とされる。なお、加温部86は、収容部86bに風を送るファン等の送風手段を備えていてもよく、精度管理物質の加温は、送風手段によってQC検体容器150に送風することにより行われてもよい。加温部86は、ヒータとファンを備えていてもよい。
【0139】
[情報読取部87]
図13に示すように、情報読取部87は、QC検体容器150の収容部87dを挟むように配置されたローラ87a,87b、およびQC検体容器150の機械可読ラベル103からQC検体IDを読み取る読取部87cを含む。ローラ87a,87bの少なくとも一方は、互いに近づく方向に移動可能で、かつ回転するように構成されている。情報読取部87は、ローラ87a,87bの少なくとも一方を駆動して収容部87dに配置されたQC検体容器150を回転させ、読取部87cによりQC検体IDを読み取る。読取部87cは、例えば、バーコードリーダである。
【0140】
情報読取部87には、第1投入部83AからQC検体容器150が移送され、情報読取部87でQC検体IDが読み取られたQC検体容器150が保冷部84に移送されて冷却保管される。情報読取部87は、読み取ったQC検体IDの情報を制御部82aに送信し、制御部82aは、その情報を用いて精度管理に係る処理を実行する。詳しくは後述するが、制御部82aは、QC検体IDを用いて、保冷部84におけるQC検体容器150の収容位置を管理し、精度管理測定に使用するQC検体容器150の選択を可能にする。
【0141】
[ラック収容部88]
図14および
図15は、保管調整ユニット82の内部構造を示す斜視図であって、ラック収容部88を拡大して示す。ラック収容部88は、空ラック170を前後方向に搬送可能で、かつ複数の空ラック170を貯留可能な搬送路88aを備える。搬送路88aは、保管調整ユニット82の右側端部において、前後方向に長く延びている。本実施形態では、最大7つの空ラック170を搬送路88aに貯留することができる。
【0142】
搬送路88aには、前方から順に、3つのストッパ88b,88c,88dが設けられている。ストッパ88cは、搬送路88aの前後方向中央部に配置され、搬送路88aに貯留された空ラック170の前方への移動を規制する。ストッパ88dは、ストッパ88cよりも搬送路88aの後端側に配置され、空ラック170の後方への移動を規制している。このストッパ88c,88dに挟まれた領域が、空ラック170を貯留可能な領域となり、本実施形態では、ストッパ88c,88dの前後方向の間隔が、7つ分の空ラック170の前後方向長さに対応している。
【0143】
ラック収容部88は、上述の通り、QC検体容器150および洗浄剤容器180を空ラック170に収容する場所でもある。QC検体容器150および洗浄剤容器180は、複数の空ラック170のうち、最も前方に位置する前端ラックに収容されるから、搬送路88aの前端ラックおよびその近傍の上方には、移送部85の通り道となる空間が確保されている。前端ラックの位置は、空ラック170の前方への移動を止めるストッパ88cにより決定され、本実施形態では、第1回収部89A、第2回収部89B、および加温部86と左右方向に並んでいる。
【0144】
ラック収容部88は、空ラック170、QC検体容器150が収容されたQC検体ラック160、および洗浄剤容器180が収容されたラック(以下、「洗浄剤ラック」と称する)を前後方向に搬送するための搬送アーム881を備える。搬送アーム881は、空ラック170等を前方に押すことが可能であると共に、空ラック170等を後方に引き込むことが可能である。ラック収容部88には、搬送路88aを左右両側から挟むように一対の搬送アーム881が設けられている。また、一対の搬送アーム881の先端には、搬送路88aの内側に向かって突出した爪部881aが形成されている。
【0145】
以下、
図16および
図17を参照しながら、ラック収容部88の構成について、さらに詳説する。ラック収容部88の搬送路88aは、コンベア部81の第2搬送路812と繋がり、第2搬送路812を挟んで第1搬送路811と対向するように配置されている。すなわち、第1搬送路811と搬送路88aは、前後方向に並んで配置されている。搬送路88aは、第2搬送路812の右端側に繋がり、第2搬送路812を介して第1搬送路811および第3搬送路813に接続されている。
【0146】
搬送路88aのストッパ88bは、搬送路88aの前端部に配置された可動式のストッパであって、第1搬送路811から第2搬送路812に押し出される検体ラック110等が搬送路88aに進入することを防止している。ストッパ88bは、空ラック170等を搬送路88aに搬入する際には、搬送路88aの上面から突出しないように下げられる。なお、空ラック170等はストッパ88cの後方まで搬送されるため、ストッパ88cはストッパ88bと連動して下げられる。ストッパ88b,88cは、例えば、リンク機構等により機械的に連結されていてもよい。
【0147】
搬送アーム881は、前後方向に沿って第2搬送路812の前方まで移動可能であり、第2搬送路812までQC検体ラック160等を押し出すと共に、第2搬送路812からQC検体ラック160等を搬送路88aに引き込むことが可能である。QC検体ラック160は、ラック収容部88から第2搬送路812を介して第3搬送路813、第4搬送路814に搬送される。また、第5搬送路815により供給ユニット80に戻されたQC検体ラック160は、第1搬送路811および第2搬送路812を介してラック収容部88に回収される。
【0148】
搬送アーム881は、第1送出部816Aと同様の駆動機構により前後方向に移動する。また、2つの搬送アーム881は、互いに近づく方向および離れる方向にも移動可能に構成されており、QC検体ラック160等を1つずつ第2搬送路812に送り出すことができる。具体的には、搬送アーム881の爪部881aが搬送路88a上に位置して搬送路88a上のラックに係合する係合位置と、爪部881aが搬送路88a上から退避した退避位置との間で左右方向に移動可能である。
【0149】
例えば、搬送アーム881を搬送路88aの後方から空ラック170を超えて前方に移動させ、QC検体ラック160(前端ラック)を第2搬送路812に押し出す場合、退避位置にある搬送アーム881をQC検体ラック160の位置まで移動させる。そして、搬送アーム881を係合位置に移動させて、爪部881aをQC検体ラック160と、その1つ後方の空ラック170との間に挿し込む。この状態で搬送アーム881を前方に移動させることにより、前端ラックの後面が搬送アーム881の爪部881aに押されて、QC検体ラック160は第2搬送路812に押し出される。
【0150】
ラック収容部88には、搬送路88aに沿って前方から順に、4つのセンサ882a,882b,882c,882dが設けられている。センサ882aは搬送路88aの前端側であるストッパ88b,88cの間のラックを検知し、センサ882bは前端ラックを検知する。ラック収容部88に空ラック170が貯留されている場合、QC検体容器150および洗浄剤容器180を収容できる前端ラックが常に存在するように、搬送アーム881は空ラック170を前方に移送する。
【0151】
センサ882cは、前端ラックに収容されるQC検体容器150および洗浄剤容器180を検知する。センサ882dは、搬送路88aの後端側におけるラックの有無、具体的には、ストッパ88d(
図15参照)の直前の空ラック170を検知する。センサ882dにより空ラック170が検知されていない場合、QC検体容器150又は洗浄剤容器180を収容してラックが測定ユニットに搬送されているか、そうでなければ、ラック収容部88に空ラック170を収容できる空きがあることを意味する。
【0152】
センサ882a,882b,882c,882dには、コンベア部81のセンサと同様に、光学式センサを用いることができる。例えば、センサ882a,882cに発光部と受光部が分離された光学式センサを用い、センサ882b,882dに発光部と受光部が一体化された反射型の光学式センサを用いる。詳しくは後述するが、制御部82aは、各センサの検知情報等に基づいてストッパ88b,88cおよび搬送アーム881を制御し、ラック収容部88でのラック搬送を実行する。
【0153】
[モニタ91の操作画面]
以下、
図18~
図27を参照しながら、供給ユニット80のモニタ91に表示される画面について詳説する。
【0154】
図18は、供給ユニット80のモニタ91に表示されるホーム画面1000の一例である。ホーム画面1000は、ツールバー1000Aと、操作メニューが表示されるメイン領域1000Bと、ステータスを表示するステータス表示領域1000Cとを備える。上述の通り、モニタ91はタッチパネルによって構成され、画面1000に表示されたアイコンはいずれもユーザが選択可能に表示されている。ツールバー1000Aには、後述の
図27に示すポータル画面2600を表示させるためのポータル画面表示アイコン1005が配置されている。
【0155】
メイン領域1000Bには、供給ユニット80の状態を確認し、又は供給ユニット80に対する消耗品の補充を行うための装置状態アイコン1001と、スケジュールの登録および編集を行うためのスケジュールアイコン1002とが表示される。メイン領域1000Bには、
図18に示すように、さらに他のアイコンが含まれてもよい。
【0156】
図19は、装置状態アイコン1001が選択されたことに応じて表示される装置状態画面2000の一例である。装置状態画面2000は、メイン領域に表示するコンテンツとして、QCステータスウィンドウ2001と、洗浄剤容器在庫ウィンドウ2006と、空ラック在庫ウィンドウ2007と、廃棄箱ウィンドウ2008と、温度表示ウィンドウ2009とを備える。
【0157】
QCステータスウィンドウ2001は、供給ユニット80の管理下にあるQC検体の情報を一覧表示するQC検体リスト2001Aと、管理下にあるQC検体の濃度レベルごとの残量を表示する残量表示部2001Bとを含む。
【0158】
QC検体リスト2001Aは、供給ユニット80による管理下にあるQC検体容器150の情報が一覧表示される。QC検体リスト2001Aは、例えば、
図19に示すように、保冷部84に設けられた9つの収容部841bに対応して9つの行を含む。QC検体リスト2001Aには、最も左の列から順に、収容部841bの位置番号を示す第1列と、QC検体の濃度レベルを示す第2列と、ロット番号を示す第3列と、残テスト数を示す第4列と、有効期限を示す第5列とが含まれる。
【0159】
図19の例では、例えば、位置番号1の収容部841bに収容されているQC検体容器150の情報が位置番号「1」に対応する行に表示される。
図9の例では、位置番号「1」に収容されているQC検体容器150は、濃度レベルが「レベル1」であり、ロット番号が「A001XXXX」であり、残量が20テストであり、有効期限が「2021年3月30日」として情報が登録されている。
【0160】
QC検体リスト2001Aの情報は、上述の投入部83を介してセットされたQC検体容器150の情報が情報読取部87によって読み取られることにより登録される。QC検体容器150の機械可読ラベル103には、QC検体の濃度レベルと、ロット番号と、残テスト数と、有効期限とを含む属性情報が格納されている。情報読取部87は、機械可読ラベル103から読み取った情報に基づいて上記の情報を取得し、制御部82aに送信する。情報が読み取られたQC検体容器150は移送部85によって保冷部84の空いている1つの収容部841bに収容される。制御部82aは、情報読取部87によって読み取られた上記の情報を、QC検体容器150が収容された収容部841bの位置番号に対応付けてデータベース820(後述の
図28参照)に格納する。
【0161】
QC検体リスト2001Aの情報は、供給ユニット80による管理下にあるQC検体容器150の情報を一覧表示する。QC検体容器150が保冷部84から取り出されている状態(例えば、精度管理測定のために搬送中の状態)であっても、そのQC検体容器150に対応する位置番号の行に、QC検体容器150の情報が表示される。保冷部84から取り出されているQC検体容器150の情報は、
図19にハッチングで示すように、保冷部84に保管されているQC検体容器150と区別できるように異なる背景色で表示される。
【0162】
図19に示すように、QC検体リスト2001Aは、残テスト数が所定値未満になった場合に、残量を表示する第4列の対応するセルを強調表示する。例えば、
図19の例では、残テスト数が1未満となった位置番号3のQC検体容器150に対応するセルの色が反転表示されている。強調表示の対象とする閾値は適宜設定でき、例えば、残テスト数が5未満になった場合に強調表示してもよい。これにより、ユーザは残量が少なくなった又は残量がゼロになったQC検体容器150の存在を容易に把握することができる。
【0163】
図19に示すように、QC検体リスト2001Aは、保冷部84に収容されたQC検体容器150の有効期限が過ぎた場合に、有効期限を表示する第5列の対応するセルを強調表示する。例えば、
図19の例では、有効期限が過ぎた位置番号6のQC検体容器150に対応するセルの色が反転表示されている。強調表示する条件は適宜設定でき、例えば、有効期限までの残日数が閾値を下回った場合に強調表示してもよい。例えば、有効期限までの残日数が10日を下回った場合に強調表示してもよい。これにより、ユーザは有効期限が迫っている又は有効期限を過ぎているQC検体容器150の存在を容易に把握することができる。
【0164】
図19の例では、第4列又は第5列のセルのみを強調表示しているが、行全体を強調表示してもよい。
【0165】
QC検体リスト2001Aの上部には、残量表示部2001Bが設けられている。残量表示部2001Bは、コントロール血液の種類ごと、つまりQC検体容器150の濃度レベルごとに、残り使用回数の合計を表示する。
図19の例では、濃度レベル1、2、3のQC検体の残テスト数として、それぞれ、44テスト、53テスト、1テストと表示されている。残量表示部2001Bの値は、QC検体リスト2001Aに表示されているQC検体の残テスト数を濃度レベルごとに合算した値に等しい。残量表示部2001Bによれば、濃度レベルごとの残テスト数をユーザが計算する必要がなく、管理が容易である。
【0166】
洗浄剤容器在庫ウィンドウ2006には、供給ユニット80に保管されている洗浄剤容器180の残数が表示される。上述の通り、第2投入部83Bには、移送路830Bに沿って複数のセンサ836dが設置されている。このうち、装置前方(
図8の紙面下側)にあるセンサ836dは、先頭から15本目の洗浄剤容器を検知できる位置に配置されている。制御部82aは、この前方側にあるセンサ836dからの出力に基づいて、洗浄剤容器180の残数を表示する。例えば、センサ836dによって洗浄剤容器180が検知されたときには、
図19に示すように、残数が15本以上であることを示す「15+」を表示する。いったんセンサ836dが洗浄剤容器180を検知した後、洗浄剤容器180の消費によってセンサ836dが洗浄剤容器180を検知しなくなった場合、制御部82aは、15から使用した本数を減らして在庫の本数を表示する。
【0167】
なお、後述する変形例の供給ユニット80Kでは、ユニットにセットされた全ての洗浄剤容器の数が制御部82aによって認識されているため、供給ユニット80が使用した洗浄剤容器の数に応じて、表示される在庫の本数が変更される。
【0168】
空ラック在庫ウィンドウ2007には、ラック収容部88に収容されている空ラック170の数が表示される。制御部82aは、センサ882cおよび882dの出力に基づいて空ラック170の本数を認識し、空ラック在庫ウィンドウ2007に本数を表示する。
【0169】
廃棄箱ウィンドウ2008には、廃棄箱である第1回収部89Aおよび第2回収部89Bにそれぞれ廃棄可能な容器の本数が表示される。
【0170】
温度表示ウィンドウ2009には、保冷部84の内部の温度と、加温部86の加温ブロックの温度と、外気温の温度とが表示される。
【0171】
装置状態画面2000のツールバーには、シャットダウンアイコン2003と、取出アイコン2004と、投入アイコン2005とが表示される。シャットダウンアイコン2003は、検体分析システム1の全体又は一部をシャットダウンするときに使用される。取出アイコン2004は、保冷部84に保管されているQC検体容器150を取り出すときに使用される。取出アイコン2004は、後述の
図21を用いて説明する。投入アイコン2005は、QC検体容器150を投入部83の第1投入部83Aにセットするときに使用される。
【0172】
図20は、装置状態画面2000のシャットダウンアイコン2003を押したときに表示されるシャットダウン画面2100の一例である。シャットダウン画面2100は、シャットダウンメニューを表示する。シャットダウンメニューは、「指定装置」、「システム全体」、および「供給ユニット(BT-50)単体終了」の3つの選択肢を含む。
【0173】
シャットダウン画面2100において「指定装置」が選択されると、装置選択画面2101が表示される。装置選択画面2101は、検体分析システムのレイアウトにしたがって複数の装置、すなわち測定ユニット10A、10Bと、処理ユニット40を選択可能に表示する装置選択領域2101Aを含む。ユーザは、画面の案内にしたがい、シャットダウンを行う装置を選択する。画面2101には、次に予定されている自動起動スケジュール2101Bと、次回の自動起動スケジュールの詳細を呼び出すためのボタン2101Cがあわせて表示される。ユーザが、画面に表示されている次回の自動起動スケジュールを確認したうえで画面下部のOKボタンを押すことで、選択された装置がシャットダウンされる。測定ユニットおよび処理ユニットのシャットダウンとは、例えば
図50を参照して後述する通り、洗浄剤容器を収容した洗浄剤ラックを装置に搬送して、装置において洗浄を実行し、洗浄完了後に装置の電源をオフすることである。以下では、検体分析システム1を構成する4台の測定ユニットをそれぞれ「XN-1」、「XN-2」、「XN-3」、「XN-4」とし、処理ユニット40を「SP-1」として説明する。
【0174】
シャットダウン画面2100において、「システム全体」が選択されると、システムシャットダウン確認画面2102が表示される。画面2102には、画面2101と同様に次に予定されている自動起動の予定と、次回スケジュールの詳細を呼び出すボタンが表示される。画面下部のOKボタンが押されると、システム全体がシャットダウンされる。
【0175】
「供給ユニット単体終了」が選択されると、供給ユニット80のみをシャットダウンすることについてユーザに再確認する供給ユニットシャットダウン画面2103が表示される。画面2103の画面下部のOKボタンが押されると、供給ユニット80のみが単独でシャットダウンされる。供給ユニット80のシャットダウンとは、供給ユニット80の電源をオフすることであり、洗浄剤ラックの搬送は行わない。
【0176】
画面2101~2103においてOKボタンが押されたときに、次回の自動起動スケジュールに伴う自動QCに使用する消耗品が不足する場合、画面2104が表示される。画面2104は、「スケジュールに登録されている次回実施予定の内容を実施するために必要な消耗品が不足しています。」のメッセージを含む。この画面2104は、画面2101~2103を介してシャットダウンの指示を受け付けたときに保冷部84に保管されているQC検体容器150およびラック収容部88に収容された空ラック170が、次回の自動起動スケジュールに伴う自動QCを実行するために必要な量に対して不足する場合に表示される。供給ユニット80の制御部82aは、
図19を参照して説明したように、保冷部84に保管されているQC検体容器150の濃度レベルごとの残テスト数を記憶している。また、制御部82aは、ラック収容部88に収容されている空ラック170の数も記憶している。制御部82aは、次回の自動起動の際に実行する自動QCのQC条件に基づいて、QC検体容器150の在庫が足りるか否か、空ラック110の在庫が足りるか否かを判断し、不足がある場合に、画面2104をモニタ91に表示する。ユーザは、シャットダウンを中止して消耗品を補充する場合はキャンセルを押す。そのままシャットダウンを続行する場合は、ユーザがOKボタンを押すと、指示した通りシャットダウンが続行される。シャットダウン前に画面2104が表示されることで、例えば、翌日の自動QCに必要な消耗品を補充しないまま供給ユニット80をシャットダウンしてしまうことを防げる。
【0177】
装置選択画面2101では、画面上で装置を指定してOKボタンを押すだけで所望の装置をシャットダウンできる。このため、ユーザが装置1台1台をシャットダウンする手間が不要であり、利便性が高い。また、特定の装置に洗浄剤容器180を供給するために特定の装置専用のラックバーコードを備えた洗浄剤ラックを使用するといったユーザのマニュアルの操作が不要となる点でも便利である。
【0178】
また、システム全体をシャットダウンする場合も、ユーザは、画面2102においてOKボタンを押すだけでよい。このため、ユーザが全ての装置をシャットダウンする手間が不要である。また、検体分析システム1が多数の装置を備える場合であっても、全ての装置を洗浄するために必要な洗浄剤容器180をマニュアルで準備する必要がなく、便利である。
【0179】
図21は、装置状態画面2000の取出アイコン2004が選択されたことに応じて表示されるQC検体取り出し画面2200の一例である。画面2200には、装置状態画面2000に含まれるものと同じQC検体リストと、位置選択ボタン2201とが含まれる。ユーザは、QC検体リストを確認しながら、取り出したいQC検体容器150の位置番号に対応する位置選択ボタン2201を選択し、画面下部のOKボタンを選択することができる。位置選択ボタン2201は、移送ホルダ834が載せることが可能な容器の最大数3に対応して、最大で3つを同時に選択することができる。
図21の例では、位置番号2、6、7のQC検体容器150が選択されている。
図19を参照して説明した通り、位置番号1、4、5のQC検体容器150は、保冷部84から取り出されている状態であり、取り出しできない。そのため、これらの位置番号に対応する位置選択ボタン2201は選択不可にされ、チェックボックスはグレー表示されている。
【0180】
位置選択ボタン2201により取り出したいQC検体容器150が選択されてOKボタンが押されると、選択されたQC検体容器150が保冷部84から取り出され、投入部83の取出位置P5(
図10に示す位置)において移送ホルダ834にセットされる。その後、QC検体容器150がセットされた移送ホルダ834は第1投入口831A(
図9に示す位置)まで移動する。移送ホルダ834が第1投入口831Aまで移動すると、モニタ91には、QC検体容器150(XN CHECK)が第1投入口831Aに到着したことをユーザに知らせる通知画面2210が表示される。ユーザは、第1カバー832Aを開いて、QC検体容器150を取り出すことができる。
【0181】
図22は、装置状態画面2000の投入アイコン2005が選択されたことに応じて表示される投入画面2300の一例である。投入アイコン2005が選択されると、移送ホルダ834が第1投入口831Aに位置付けられ、第1カバー832Aのロックが解除される。画面2300は、ユーザにQC検体容器150のセットを促すための画面であって、例えば、第1カバー832Aのロックが解除されたタイミングでモニタ91に表示される。ユーザが移送ホルダ834にQC検体容器150をセットし、画面下部のOKボタンを押すと、QC検体容器150が供給ユニット80の内部に移送され、保冷部84に保管される。この処理については後述する。
【0182】
図23は、ホーム画面1000においてスケジュールアイコン1002が選択されたことに応じて表示されるスケジュール画面2400の一例である。スケジュール画面2400は、1週間の各曜日に対応して設けられた7つの曜日タブ2401と、スケジュールをリスト表示するスケジュールリスト2402とを含む。曜日タブ2401は、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、日曜日の7つの曜日名を表示する7つのタブを選択可能に表示する。ユーザは、任意のタブを選択することでスケジュールを設定する曜日を指定することができる。なお、
図23では曜日ごとにスケジュールを登録する例を示しているが、例えば、日付を指定してスケジュールを登録できるようにしてもよい。例えば、週単位又は月単位のカレンダーを表示して、カレンダーの特定の日付を指定してスケジュールを登録できるようにしてもよい。
【0183】
図23では、月曜日タブが選択された状態を図示している。スケジュールリスト2402は、指定されている曜日に実行予定のスケジュールが時系列で表示されている。
図23の例では、月曜日の午前7時30分にウェイクアップ(自動起動)、13時00分に精度管理測定(自動QC)、23時00分に自動洗浄がスケジュールされている。スケジュールリスト2402の各スケジュールに対応して、ON/OFFを切り替えるためのボタン2403が設けられている。ユーザは、登録されているスケジュールを実行する場合にはボタン2403を操作して「ON」に設定し、実行しない場合には「OFF」に設定する。ONに設定されたスケジュールは、OFFに設定されない限り毎週同じ時刻に自動的に実行される。
【0184】
スケジュール画面2400のツールバーには、スケジュールを登録するための登録アイコン2404が選択可能に表示される。ユーザは、自動実行スケジュールを新たにスケジュールリスト2402に加える場合、登録アイコン2404を押す。
【0185】
図24は、スケジュール画面2400の登録アイコン2404が選択されたことに応じて表示されるスケジュール登録画面2500の一例である。画面2500は、自動実行の対象である処理を選択するメニューを表示する。
図24の例では、「起動」、「精度管理」、および「洗浄」の3つのメニューが選択可能に表示される。本実施形態において、登録されたスケジュールの情報は制御部82aの記憶部に保存される。
【0186】
スケジュール登録画面2500の「起動」メニューが選択されると、登録画面2501が表示される。画面2501は、自動ウェイクアップのスケジュールを登録するための画面である。画面2501は、自動ウェイクアップを行う曜日と時刻を入力するための複数のプルダウンボタンを含む。曜日のプルダウンボタンが選択されると、月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜、日曜の7つの曜日を選択肢として含むプルダウンメニューが表示される。ユーザは、任意の曜日を選択することができる。時刻のプルダウンは、1時間単位の時刻を指定するためのプルダウンボタンと、分単位の時刻を指定するためのプルダウンボタンとを含む。ユーザは、プルダウンメニューを操作することで時刻を指定することができる。
図24の例ではプルダウンメニューのみを例示しているが、ソフトウェアキーボードを表示して、ユーザから数値の入力を受け付ける構成であってもよい。画面2501を操作することで、ユーザは、自動ウェイクアップを実行する曜日と時刻を指定することができる。
【0187】
登録画面2501は、自動QCの実行をオン/オフするためのボタンをさらに含む。ユーザは、ボタンを操作して、自動QCを行う場合は「ON」、行わない場合は「OFF」にする。自動QCとは、保冷部84に収容されているQC検体容器150を用いた自動的な精度管理測定である。
【0188】
自動QCがONに設定された自動ウェイクアップのスケジュールが登録されると、当該スケジュールにしたがって、検体分析システム1に含まれる一又は複数の測定ユニットが自動的に起動され、さらに、起動された一又は複数の測定ユニットにQC検体容器150が自動的に供給されて精度管理測定が行われる。自動QCがOFFに設定された自動ウェイクアップのスケジュールが登録されると、自動的に検体分析システム1の各ユニットの電源がオンされるが、精度管理測定は行われない。
【0189】
登録画面2501において、自動QCボタンが「ON」に設定されて画面下部にある「OK」ボタンが押されると、登録画面2502に遷移する。スケジュール登録画面2500の「精度管理」メニューが選択された場合も、登録画面2502が表示される。検体分析システム1では、登録画面2502により、精度管理測定の条件(QC条件)の設定をユーザから受け付ける。詳しくは後述するが、検体分析システム1は、保冷部84に保管された複数のQC検体容器150の中から、QC条件とQC検体容器150の情報とにしたがって、精度管理測定に使用する一又は複数のQC検体容器150を決定し、決定したQC検体容器150を測定ユニットに搬送してQC検体の測定を行う。
【0190】
登録画面2502は、自動QCのスケジュールを作成するための画面である。画面2502は、上述の画面2501と同様に、曜日と時刻を指定するための複数のプルダウンボタンを含む。プルダウンボタンの下には、1回の自動QCにおいて使用するQC検体の種類を選択するためのボタンとして、「Level 1」、「Level 2」「Level 3」の3つの濃度レベルボタンを備える。濃度レベルボタンの下には、自動QCにおいて精度管理測定を行う対象の測定ユニットを選択するためのユニット選択画像が表示される。ユニット選択画像は、検体分析システム1のレイアウトにしたがって配置された複数のユニットを図示した画像を含む。
【0191】
ユーザは、登録画面2502において、自動QCを実行する曜日と時刻を設定する。曜日と時刻を設定するための操作は、上述の通りである。ユーザは、濃度レベルボタンを操作して、自動QCに使用するQC検体の種類を選択する。
図24の例では、QC検体の濃度レベルとしてレベル1とレベル2が指定されている。レベル3は指定が外されており、オフの状態である。ユーザは、ユニット選択画像から、自動QCにおいて精度管理測定を実行する対象の測定ユニットを選択する。
【0192】
図24では、最も右に配置されている測定ユニットXN-1と、右から3番目と4番目の測定ユニットNX-3、NX-4が選択されている。
図24に示した設定の例では、自動QCの条件として、月曜日の午前8時30分に、XN-1、XN-3、XN-4の3台の測定ユニットを対象として、レベル1とレベル2の2つのQC検体容器150を用いた精度管理測定が設定される。画面2502の画面下部の「OK」ボタンが選択されると、後述の確認画面2510が表示され、確認の操作が行われると入力されたスケジュールがリストに登録される。本実施形態において、登録された自動QCの条件は制御部82aの記憶部に保存される。
【0193】
スケジュール登録画面2500の「洗浄」メニューが選択されると、登録画面2503が表示される。画面2503は、自動洗浄のスケジュールを登録するための画面である。自動洗浄とは、第2投入部83Bに保管されている洗浄剤容器180を用いた自動的な測定ユニットおよび処理ユニットの洗浄である。登録画面2503は、QC検体の種類を選択する濃度レベルボタンを備えない点と、選択可能なユニットとして塗抹標本作製装置である処理ユニット40(SP-10)を含む点で、登録画面2502と異なるが、その他は画面2502と同様の構成を備える。
【0194】
ユーザは、登録画面2503において、画面上部のプルダウンボタンを操作して、自動洗浄を実行する曜日と時刻を指定する。ユーザは、ユニット選択画像を選択して、自動洗浄の対象であるユニットを指定する。登録画面2503の画面下部の「OK」ボタンが選択されると、確認画面での操作を経て、入力されたスケジュールがスケジュールリストに登録される。
【0195】
図25は、登録画面2502において自動QCのスケジュールが入力されて「OK」ボタンが押されたことに応じて表示される確認画面2510の一例である。
図25に示すように、確認画面2510では、指定された曜日と、時刻と、自動実行する内容が表示される。登録画面2502において、複数の濃度レベルを指定した自動QCスケジュールを作成すると、
図25に示すように、複数の濃度レベルの組み合わせが自動実行スケジュールの内容として表示される。
【0196】
図26は、
図23のスケジュール画面2400からスケジュールリストに表示されている自動実行スケジュールに対する操作を図示している。画面2400において、ユーザが操作したい自動実行スケジュールを選択すると、操作メニュー2410が表示される。操作メニュー2410は、「実行」、「編集」、および「削除」の3つを含む。
【0197】
「実行」は、選択したスケジュールを、予定されている時刻に対して前倒しで実行する場合に使用される。操作メニュー2410の「実行」が押されると、「選択されたスケジュールの内容を今すぐ実行しますか?」の確認メッセージとともに、スケジュールされている自動実行の内容を含む確認画面2420が表示される。この確認画面2420で「OK」ボタンが押されると、スケジュールされているQC条件にしたがって精度管理測定が開始される。「実行」メニューが操作されることで予定されていた時刻よりも前倒しでスケジュールが実行された場合、そのスケジュールは、当初予定されていた時刻には実行されない。
【0198】
「編集」は、既に登録されているスケジュールの内容を変更する場合に使用される。例えば、自動QCを実行する時刻を変更する場合や、自動QCで使用する濃度レベルや精度管理測定の対象のユニットを変更する場合に使用される。「編集」が押されると、編集の対象となるスケジュールの種類に応じて、
図24に示す画面2501,2502,2503のいずれかと同じ画面が表示され、画面を介して編集が可能となる。編集が行われると、スケジュールリストの内容が編集後の内容に基づいて更新される。
【0199】
「削除」は、既に登録されているスケジュールを削除する場合に使用される。削除されると、スケジュールリストから対象のスケジュールが削除される。
【0200】
図27は、ポータル画面2600の一例である。ポータル画面2600は、当日に予定されているスケジュールを一覧表示するスケジュール表示領域2601と、供給ユニット80によって保管されている消耗品の在庫の状況を表示する在庫表示領域2602とを含む。スケジュール表示領域2601に表示される内容は、スケジュール登録画面2500において登録された自動実行スケジュールのうち、操作当日の曜日に対応する、予定されているスケジュールが上から順に時系列でリスト表示される。
【0201】
在庫表示領域2602には、供給ユニット80によって保管されている消耗品の在庫の状況がグラフによって表示される。
図27の例では、現在時点を起点として将来の日付が右に向かって配置された横軸に対して、複数の種類の消耗品の残量が棒グラフで表示されている。棒グラフは、登録されているスケジュールを、供給ユニット80に保管されている消耗品の在庫を使用して予定通りに実行した場合に、いつまで消耗品が足りるかを表示する。
図27の例では、濃度レベル1、2、3のQC検体容器150と、洗浄剤容器(CCA)180の在庫の量を表す棒グラフが表示されている。グラフの下には、消耗品の在庫に関するメッセージが表示される。例えば、ラック収容部88に保管されている空ラック170が所定数を下回った場合、例えば、
図27に示すように「空ラック:補充できます」のメッセージが表示される。また、メッセージには、予定されている自動実行スケジュールを実行するために必要となる消耗品が不足する場合に、消耗品の補充をユーザに促すアラートを含む。例えば、
図27では、翌日に予定されている自動QCスケジュールに対して濃度レベル3のQC検体の残テスト数が不足している場合に、「L3:明日の自動QCに必要なテスト数が不足しています。補充してください。」と表示されている。アラートの対象となる自動実行スケジュールは、例えば当日、翌日又は次の稼働日に予定されているものであってもよいし、次に予定されている自動起動スケジュールであってもよい。アラートを確認することで、ユーザは消耗品を事前に補充することが可能である。なお、
図27では、消耗品の在庫の範囲内でスケジュールを実行可能な日付を棒グラフによって表示しているが、表示形式はグラフである必要はなく、日付のみを表示してもよい。また、表示は日付に限られず、在庫に基づいてスケジュールを実行可能な残り日数又は残り回数を数値やグラフによって表示してもよい。
【0202】
図28は、供給ユニット80の構成を示すブロック図であって、あわせて供給ユニット80と、モジュール10および搬送コントローラ70との接続関係を示す。制御部82aは、投入部83、保冷部84、移送部85、加温部86、情報読取部87、およびラック収容部88の各装置に接続されている。制御部82aは、これらの装置に制御信号を送って各装置の動作を制御する。本実施形態では、精度管理測定に係る処理のうち、保管調整ユニット82で行われる処理については制御部82aの制御下で実行される。コンベア部81、モジュール10の搬送ユニット20によるQC検体ラック160の搬送については、主に搬送コントローラ70の制御下で実行され、測定ユニットにおける精度管理物質の測定は、制御ユニット30の制御下で実行される。
【0203】
制御部82aは、制御ユニット30の制御部31および搬送コントローラ70の制御部71と同様に、コンピュータで構成され、プロセッサ、記憶部、および入出力ポートなどを備える。制御部82aには、例えば、QC検体容器150の冷却保管、移送、加温等の処理を実行するための制御プログラムがインストールされている。制御部82aには、さらに、精度管理検体に関する情報を記憶したデータベース820が格納されている。データベース820は、上述のように、保冷部84の収容部841bの位置番号に対応付けられた各QC検体容器150の情報である。
【0204】
制御ユニット30の制御部31には、精度管理測定の結果に関するデータベース310が格納されている。データベース310には、QC検体の測定結果であって、測定日時ごと、かつQC検体の濃度レベルおよびロットごとの測定結果であるQCファイルが保存されている。後述の
図49に、データベース310に保存されたQCファイルの一例を示す。ユーザは、このデータベース310によって、例えば測定ユニットの状態や、後述するQC検体のロット間差等を確認することができる。
【0205】
図29は、制御部82aに格納されているデータベース820の一例である。データベース820は、保冷部84に収容された個々のQC検体容器150の属性情報と残量情報を含む。属性情報には、QC検体の濃度レベル、ロット情報、および有効期限の少なくとも1つが含まれることが好ましい。
図29の例では、最も左の列から順に、保冷部84の収容部841bの位置番号を示す第1列と、QC検体容器150の濃度レベルを示す第2列と、ロット番号を示す第3列と、残量情報である残テスト数を示す第4列と、有効期限を示す第5列とが含まれている。このデータベース820に基づいて、上述のQC検体リスト2001Aが作成され、精度管理測定に使用する一又は複数のQC検体容器150が決定される。
【0206】
以下、
図30~
図41を参照しながら、検体分析システム1の自動QCおよび自動洗浄に係る処理の一例について詳説する。自動QCおよび自動洗浄に係る処理は、主に制御ユニット30の制御部31および供給ユニット80の制御部82aの機能により実行される。以下では、供給ユニット80の動作を示す
図42~
図45を適宜参照する。
【0207】
図30は、検体分析システム1の一連の処理を示すフローチャートである。
図30の処理は、供給ユニット80の制御部82aによって実行される。制御部82aは、自動ウェイクアップのスケジュールが登録されている場合、現在の時刻が指定された時刻の所定時間前になったか否かを判断する(ステップS1)。現在の時刻が指定された時刻の所定時間前になった場合、制御部82aは自動ウェイクアップを実行する(ステップS2)。S2の処理については
図31を参照して後述する。
【0208】
制御部82aは、自動ウェイクアップによってシステムを構成する各ユニットの電源がONされると、スケジュールされている自動QCの時刻になったか否かを判断する(ステップS10)。この判断は、制御部82aに保存された自動QCスケジュールの登録情報に基づいて行われる。制御部82aは、自動QCの時刻になったと判断したら、QC検体容器150を用いた精度管理測定を開始する(ステップS100)。S100の処理については
図32を参照して後述する。
【0209】
ステップS10においてNOの場合、制御部82aは、スケジュールされている自動洗浄の時刻になったか否かを判断する(ステップS20)。この判断は、制御部82aに保存された自動洗浄スケジュールの登録情報に基づいて行われる。制御部82aは、自動洗浄の時刻になったと判断したら、洗浄剤容器180を用いた自動洗浄を開始する(ステップS200)。S200の処理については
図34を参照して後述する。
【0210】
ステップS20においてNOの場合、制御部82aは、QC検体容器150の追加がユーザによって指示されたか否かを判断する(ステップS30)。例えば、制御部82aは、
図19の装置状態画面2000の投入アイコン2005が操作されたか否かを判断する。投入アイコン2005が操作された場合(ステップS30がYES)、制御部82aは、QC検体容器150を保冷部84に保管する処理を行う(ステップS300)。S300の処理については
図35を参照して後述する。
【0211】
ステップS30においてNOの場合、制御部82aは、QC検体容器150の取り出しがユーザによって指示されたか否かを判断する(ステップS40)。例えば、制御部82aは、
図19の装置状態画面2000の取出アイコン2004が操作されたか否かを判断する。取出アイコン2004が操作された場合(ステップS40がYES)、制御部82aは、QC検体容器150を保冷部84から取り出す処理を行う(ステップS400)。S400の処理については
図36を参照して後述する。
【0212】
ステップS40においてNOの場合、制御部82aは、供給ユニット80のコンベア部81にラックがセットされか否かを判断する(ステップS50)。制御部82aは、ラックがセットされたと判断した場合(ステップS50がYES)、ラックの種類に応じてラック保管又はラック搬送の処理を行う(ステップS500)。S500の処理については
図40を参照して後述する。
【0213】
ステップS50においてNOの場合、制御部82aは、供給ユニット80から送り出したラックがコンベア部81に戻ってきたか否かを判断する(ステップS60)。制御部82aは、ラックが戻ってきたと判断した場合(ステップS60がYES)、ラックの種類に応じて所定の回収処理を行う(ステップS600)。S600の処理については
図41を参照して後述する。
【0214】
【0215】
図31は、自動ウェイクアップの処理を示すフローチャートである。ステップS2Aにおいて、制御部82aは、供給ユニット80の電源をオンする。これにより、加温部86のヒータに対して電力の供給が開始され、加温部86内の温度が設定温度(23℃)になるまで昇温される。ステップS2Bにおいて、制御部82aは、現在の時刻が指定された時刻の所定時間前になった時点で、検体分析システム1の各ユニットへ起動コマンドを送信する。これにより、検体分析システム1を構成する全てのユニットの電源がオンされる。なお、
図24の画面2501を自動ウェイクアップを行うユニットを指定できるようにし、スケジュールの登録情報に基づき、指定されたユニットのみに起動コマンドを送信するように構成してもよい。
【0216】
所定時間は、保冷部84に保管されたQC検体容器150を、加温部86によって測定可能な温度になるまで加温するのに要する時間(以下、加温時間)より長いことが好ましい。例えば、加温時間が10分であれば、所定時間は少なくとも10分以上であることが好ましい。より好ましくは、所定時間は、加温時間に加えて、加温したQC検体を測定ユニットによって測定して測定結果を得るまでに要する時間を含む。一例では、所定時間は例えば30分である。つまりウェイクアップ時刻が8時30分に設定されている場合、制御部82aは、8時00分に起動コマンドを送信する。こうすると、ユーザがウェイクアップ時刻として指定時刻には、QC検体の加温から測定までが完了している状態にすることができ、ユーザは指定時刻にすぐに測定ユニットを使用して検査を開始できる。なお、所定時間は、固定であってもよいし、自動QCの有無やQC条件に応じて可変であってもよい。
【0217】
ステップS2Cにおいて、制御部82aは、自動QCがONに設定されているか否かを判断する。
図24の画面2501に示すように自動QCがONに設定されている場合、制御部82aは、自動ウェイクアップに続いて、ステップS100の自動QCを実行する。すなわち、自動QCがONに設定された自動ウェイクアップのスケジュールが登録されている場合、指定された曜日の指定の時刻に自動的に検体分析システム1の各ユニットの電源がオンされ、QC検体容器150を用いた精度管理測定が自動的に開始される。自動QCがOFFの設定である場合は、自動ウェイクアップのみが実行され、精度管理測定は行われない。
【0218】
図32は、供給ユニット80における自動QCの処理(
図30のステップS100)を示すフローチャートである。このフローチャートに示す手順は、自動ウェイクアップに続いて実行される自動QCだけでなく、ウェイクアップ時以外のタイミングで実行される自動QCにも適用される。ステップS101において、制御部82aは、精度管理測定の条件(QC条件)および保管中のQC検体の情報に基づいて、精度管理測定に使用するQC検体容器150の組み合わせを決定する。精度管理測定には、1本のQC検体容器150が使用されてもよいが、一般的にはQC検体の濃度レベルが異なる2本以上のQC検体容器150が使用される。
【0219】
QC条件には、精度管理測定を行う一又は複数の測定ユニットの指定が含まれる。制御部82aは、精度管理測定を行う一又は複数の測定ユニットが指定されている場合、指定された測定ユニットの数に応じて、使用する一又は複数のQC検体容器150を決定する。また、QC検体の情報にはQC検体の種類の情報が含まれ、QC条件には使用するQC検体の種類の指定が含まれる。制御部82aは、指定されたQC検体の種類とQC検体の種類の情報とに基づいて、使用する一又は複数のQC検体容器150を決定する。
【0220】
QC条件には、QC検体の種類として複数の濃度レベルの指定、使用するQC検体のロットの指定等が含まれていてもよい。制御部82aは、例えば、指定された複数の濃度レベルに基づいて、複数のQC検体容器150の組み合わせを決定する。また、指定されたロットとQC検体のロット情報とに基づいて、一又は複数のQC検体容器150を決定する。QC検体の情報には各QC検体容器150におけるQC検体の残量情報が含まれていてもよく、指定された測定ユニットの数と当該残量情報とに基づいて、一又は複数のQC検体容器150が決定されてもよい。
【0221】
詳しくは後述するが、精度管理測定に使用する第1のQC検体容器150の残量が、指定された測定ユニットの数に基づいて実施されるテスト数に満たない場合、使用する容器として、第1のQC検体容器150と第2のQC検体容器150の組み合わせを決定する。この場合、第2のQC検体容器150には、第1のQC検体容器150と同じ濃度レベルの容器が選択される。QC検体容器150の残量は、例えば、少なくともQC検体の濃度レベルおよびロット情報と、QC条件とに基づいて決定される。
【0222】
QC検体の情報には、上述のように、個々のQC検体の属性情報と残量情報が含まれる。属性情報の一例としては、QC検体の濃度レベル、ロット情報、および有効期限が挙げられる。残量情報は、例えば、QC検体の使用可能回数である。QC検体の情報は、データベース820として制御部82aの記憶部に記憶されている。QC条件も同様に、記憶部に記憶されている。
【0223】
ステップS102において、制御部82aは、QC検体容器150を保冷部84から取り出して加温部86に移送するように制御する。具体的には、制御部82aが、保冷部84を制御してカバー842を開く。制御部82aは、移送部85を制御して、S101において決定したQC検体容器150を保冷部84から取り出す。制御部82aは、データベース820に、保冷部84内の9つの収容部841bの位置番号に対応付けてQC検体容器150の情報を記憶している。制御部82aは、決定したQC検体容器150の位置番号に対応する収容部841bから容器を取り出し、加温部86にセットするよう移送部85を制御する。制御部82aは、QC検体容器150を加温部86にセットすると計時を開始する。
【0224】
ステップS103において、QC検体容器150を加温部86にセットしてから所定時間が経過すると、制御部82aは、測定温度に温調されたQC検体容器150を加温部86からラック収容部88の空ラック170に移送する。制御部82aは、移送部85を制御してQC検体容器150を空ラック170に収容する。精度管理測定に複数のQC検体容器150が使用される場合、各QC検体容器150は、記憶部に記憶された自動QCの条件に基づいて空ラック170に収容される。
【0225】
ステップS104において、制御部82aは、QC検体容器150を収容したQC検体ラック160を供給ユニット80から搬送するように制御する。制御部82aは、ラック収容部88を制御し、QC検体ラック160をコンベア部81の第2搬送路812に送り出す。制御部82aは、コンベア部81を制御し、第3搬送路813および第4搬送路814を通って、QC検体ラック160を供給ユニット80から搬送される。制御部82aは、搬送コントローラ70の制御部71にQC検体ラック160の目的地となる測定ユニットを通知する。搬送コントローラ70の制御部71は、通知を受けた測定ユニットにQC検体ラック160が搬送されるように各搬送ユニット20を制御する。
【0226】
図42は、
図32のステップS102~S104における供給ユニット80の動作を示す図である。
図42(a)に示すように、移送部85は、制御部82aの制御の下、QC検体容器150を保冷室841aの収容部841bから取り出して、加温部86の収容部86bに収容する。その後、QC検体容器150が加温部86に移送されてから所定時間が経過した時点で、
図42(b)に示すように、移送部85は、QC検体容器150をラック収容部88の空ラック170に移送する。
【0227】
精度管理測定に必要な数のQC検体容器150が空ラック170(前端ラック)の収容部111に収容されると、
図42(c)に示すように、ラック収容部88は、QC検体容器150が収容された前端ラックであるQC検体ラック160をコンベア部81の第2搬送路812に送り出す。QC検体ラック160は、コンベア部81の第3搬送路813および第4搬送路814を通って供給ユニット80から搬送される。
【0228】
図33は、精度管理測定に使用するQC検体容器150の組み合わせを決定するための処理(
図32のステップS101)の具体例を示すフローチャートである。ステップS1000において、制御部82aは、濃度レベルに関する変数Nに1をセットする。ステップS1001において、制御部82aは、濃度レベルNのQC検体の測定が必要か否かを判断する。変数Nが1である場合は、濃度レベル1のQC検体の測定の要否が判断される。ステップS1001の判断は、記憶部に記憶されたQC条件の濃度レベルの指定に基づいて行われる。例えば、
図24の画面2502に示されるようにQC条件に濃度レベル1のQC検体の測定が含まれている場合、ステップS1001でYESと判断される。濃度レベル1のQC検体の測定が指定されていない場合は、ステップS1002,S1003をスキップして、ステップS1004に進む。
【0229】
ステップS1002において、制御部82aは、データベース820に登録された濃度レベルとロット番号に基づき、保冷部84に保管中のQC検体容器150から1つのQC検体容器150を特定する。例えば、運用中の濃度レベル1のQC検体容器150のロット番号と同じロット番号のQC検体容器150の中から使用可能なQC検体容器150を特定する。同一のロット番号のQC検体容器150が複数存在する場合は、残テスト数が最も少ないものを特定する。
【0230】
ステップS1003において、制御部82aは、特定されたQC検体容器150の残テスト数が、精度管理測定のテスト数以上であるか否かを判断する。この判断は、データベース820に登録されたQC検体容器150の残テスト数の情報に基づいて行われる。すなわち、特定されたQC検体容器150の残テスト数と、これから実行しようとする精度管理測定の実施予定テスト数とを比較し、残テスト数が実施予定テスト数以上である場合にYESと判断する。
【0231】
ステップ1004において、制御部82aは、精度管理測定に必要な全ての濃度レベルのQC検体容器150が特定されたか否かを判断する。この判断は、記憶部に記憶されたQC条件の濃度レベルの指定に基づいて行われる。例えば、QC条件に濃度レベル1,2の測定が指定されている場合、濃度レベル2に関して、ステップS1001~S1003を実行する。
【0232】
ステップS1003において、制御部82aがNOと判断した場合、すなわち特定されたQC検体容器150の残テスト数が実施予定テスト数未満である場合、ステップ1005において、濃度レベルが同じで使用可能な他のQC検体容器150が保冷部84に保管されているか否かを判断する。この判断は、データベース820に基づいて行われる。濃度レベルが同じで使用可能な他のQC検体容器150が保管されている場合(ステップS1005がYES)、制御部82aは、当該他のQC検体容器150の残テスト数を先に特定されたQC検体容器150の残テスト数と合算する(ステップS1006)。そして、再びステップS1003に戻り、合算した残テスト数が、実施予定テスト数以上であるか否かを判断する。
【0233】
ステップS1003,S1005,S1006の手順は、ステップS1003でYESと判断されるまで繰り返される。濃度レベルが同じで使用可能な他のQC検体容器150が保冷部84に保管されていない場合(ステップS1005がNO)、制御部82aは、ステップS1007において自動QCエラーを出力し、自動QCのスケジュールをキャンセルする。自動QCエラーは、登録された自動QCスケジュールに対して、保管されているQC検体が不足する場合に出力される情報である。自動QCエラーの通知は、例えば、モニタ91に表示される。この場合、ユーザは濃度レベル1のQC検体容器150を供給ユニット80にセットする必要がある。
【0234】
図34は、供給ユニット80における自動洗浄の処理(
図30のステップS200)を示すフローチャートである。自動洗浄は、自動洗浄スケジュールに基づいて行われ、洗浄剤を収容した洗浄剤ラックはスケジュールで指定されたユニットに搬送される。ステップS201において、制御部82aは、第2投入部83Bに保管される洗浄剤容器180を、移送部85により把持可能な位置に移動させるように制御する。制御部82aは、第2投入部83Bの取出部839を制御し、洗浄剤容器180を移送部85によって把持可能な状態とする。
【0235】
制御部82aは、ステップS202において、洗浄剤容器180をラック収容部88の空ラック170に移送し、ステップS203において、洗浄剤容器180を収容した洗浄剤ラックを供給ユニット80から搬送するように制御する。
【0236】
図43は、
図34のステップS201~S203における供給ユニット80の動作を示す図である。洗浄剤容器180は第2投入部83Bにより第2投入口831B(
図9等参照)から移送部85がアクセス可能な取出部839に移送されるが、
図43(a)に示すように、移送プレート839dが取出部839の右端側に位置する場合、移送部85は洗浄剤容器180を把持できない。このため、
図43(b)に示すように、洗浄剤容器180を収容する移送プレート839dを取出部839の左端側に移動させる。
【0237】
これにより、移送プレート839dの下方に配置された傾斜ブロック839c(
図9等参照)の上面に洗浄剤容器180の下端部が当接して押し上げられ、移送部85により把持可能な状態となる。このとき、押し上げられた洗浄剤容器180がセンサ839hにより検知される。センサ839hにより洗浄剤容器180が検知されると、移送部85は、
図43(c)に示すように、取出部839から洗浄剤容器180を取り出し、空ラック170に移送する。洗浄剤容器180は、QC検体容器150と同様に、洗浄に必要な数が取出部839から移送され、ラック収容部88の前端ラックに収容される。洗浄剤容器180を収容した洗浄剤ラックは、QC検体ラック160と同様に、ラック収容部88からコンベア部81の第2搬送路812、第3搬送路813、第4搬送路814を通じて供給ユニット80から測定ユニットに向けて搬送される。
【0238】
図35は、供給ユニット80の保冷部84にQC検体容器150を保管する処理(
図30のステップS300)を示すフローチャートである。上述した通り、
図35の処理は、ユーザが装置状態画面2000の投入アイコン2005を操作した場合に実行される。ステップS301において、制御部82aは、第1投入部83Aの第1カバー832Aのロック機構を制御して、第1カバー832Aのロックを解除する。第1カバー832Aのロックが解除されると、ステップS302において、制御部82aはQC検体容器150のセットを促す画面を表示させる。この画面の一例は
図23の投入画面2300であり、モニタ91に表示される。
【0239】
ステップS303において、制御部82aは、QC検体容器150が移送ホルダ834にセットされ、第1カバー832Aが閉じられて投入画面2300のOKボタンが押されると、第1カバー832Aをロックするように制御する。制御部82aは、移送ホルダ834を制御して、保管調整ユニット82の内部に移送する。このとき、移送ホルダ834は第1投入部83Aの取出位置P5まで移動する。ステップS304において、制御部82aは、移送部85を制御して、QC検体容器150を取出位置P5から情報読取部87に移送する。ステップS305において、情報読取部87は、制御部82aの制御の下、QC検体容器150の情報を読み取る。
【0240】
ステップS306において、制御部82aは、移送部85を制御して、QC検体容器150を情報読取部87から保冷部84に移送する。移送部85は、制御部82aの制御の下、保冷室841aの収容部841bにQC検体容器150を収容する。ステップS307において、制御部82aは、QC検体容器150を収容した収容部841bの位置番号に対応付けて情報読取部87で取得したQC検体容器150の情報をデータベース820に登録する。情報読取部87が情報を取得した時点で、保冷部84におけるQC検体容器150の収容位置が決定されていてもよく、その場合、情報読取部87が情報を取得して制御部82aに送信したときに、収容部841bの位置番号に対応付けてQC検体容器150の情報をデータベース820に登録してもよい。
【0241】
図44は、
図35のステップS301~S306における供給ユニット80の動作を示す図である。
図44(a)に示すように、供給ユニット80の保冷部84にQC検体容器150を保管する場合、ユーザは第1投入部83Aの第1投入口831AにおいてQC検体容器150を移送ホルダ834にセットする。第1投入口831Aは第1カバー832Aで覆われているため、ユーザは第1カバー832Aを開けてQC検体容器150をセットする必要がある。第1投入部83Aには第1カバー832Aのロック機構が設けられており、移送ホルダ834が第1投入口831Aに存在する場合に、第1カバー832Aのロックが解除され、第1カバー832Aを開くことが可能となる。
【0242】
第1投入口831Aにおいて、移送ホルダ834はセンサ835fにより検知される。センサ835fが移送ホルダ834を検知すると、例えば、モニタ91の投入アイコン2005(
図23参照)が操作可能となり、投入アイコン2005が押されたときに第1カバー832Aのロックが解除される。移送ホルダ834が第1投入口831Aに存在する場合にのみ、第1カバー832Aを開放可能とすることで、移送ホルダ834が存在しない第1投入口831Aに誤ってQC検体容器150が投入されることを防止できる。
【0243】
移送ホルダ834の収容部834aにQC検体容器150がセットされ、第1カバー832Aが閉じられた場合、制御部82aは、移送ホルダ834を移動させてQC検体容器150を保管調整ユニット82の内部に移送する。第1投入口831Aには各収容部834aに対応してセンサ833eが設置されているので、センサ833eの検知情報から、QC検体容器150の有無およびQC検体容器150の投入数を検知できる。
【0244】
図44(b)に示すように、移送ホルダ834は、第1投入口831Aから保管調整ユニット82の内部の取出位置P5まで移動する。移送ホルダ834が取出位置P5に到着してセンサ835gにより検知されると、移送部85は、移送ホルダ834からQC検体容器150を取り出し、情報読取部87に1本ずつ移送する。情報読取部87では、収容部87dに配置されたQC検体容器150をローラ87a,87bが回転させ、読取部87cが機械可読ラベル103からQC検体IDを読み取る。
【0245】
図44(c)に示すように、移送部85は、情報読取部87からQC検体容器150を保冷部84に移送して、保冷室841aの収容部841bに収容する。全てのQC検体容器150の保冷部84への移送が終了すると、保冷部84はカバー842を閉じて、QC検体容器150の冷却保管を開始する。
図44(c)の例では、移送ホルダ834から全てのQC検体容器150が取り出された後、移送ホルダ834は第1投入口831Aに戻される。読み取られたQC検体IDの情報は、制御部82aに送信される。QC検体IDは、QC検体の濃度レベル、ロット番号および有効期限の情報を含んでいる。制御部82aは、受け取ったQC検体IDの情報を基にデータベース820を更新する。なお、QC検体容器150の残テスト数は未使用の状態であれば24テストであるため、制御部82aは、データベース820に新たなQC検体容器150を追加する場合、残テスト数の初期値として24を入力する。
【0246】
図36は、供給ユニット80の保冷部84からQC検体容器150を取り出す処理(
図30のS400)を示すフローチャートである。上述するように、
図36の処理は、装置状態画面2000の取出アイコン2004が操作された場合に実行される。ステップS401において、制御部82aは、移送ホルダ834を制御して保管調整ユニット82の内部に移動させる。このとき、移送ホルダ834は第1投入部83Aの取出位置P5まで移動する。ステップS402において、制御部82aは、移送部85を制御して、
図21の画面2200において指定された位置番号に対応する収容部841bに収容されたQC検体容器150を保冷部84から取り出し、取出位置P5において移送ホルダ834にセットする。
【0247】
ステップS403において、制御部82aは、QC検体容器150がセットされた移送ホルダ834を第1投入口831Aに移動させるように制御する。制御部82aは、ステップS404において、第1カバー832Aのロックを解除し、ステップS405において、QC検体容器150の到着を知らせる画面を表示させる。この画面の一例は
図21の通知画面2210であり、モニタ91に表示される。
【0248】
図37~
図39は、測定ユニットの動作を示すフローチャートである。測定ユニットの動作は、主に制御部31により制御される。以下では、第1測定ユニット10Aを例に挙げて動作を説明するが、第2測定ユニット10Bについても同様である。
【0249】
図37は、検体容器100についての測定手順の一例を示すフローチャートであるが、ステップS1101,S1102は、QC検体容器150および洗浄剤容器180についても共通である。制御部31は、ステップS1101において、第1測定ユニット10Aの前方に配置された第2搬送路22まで検体ラック110を搬送し、ステップS1102において、情報読取部26により検体IDおよびラックIDを読み取らせる。検体IDが読み取られた検体容器100は、第1測定ユニット10Aおよび第2測定ユニット10Bのいずれか一方に対応する取出位置P2に搬送される。ここでは、第1測定ユニット10Aの取出位置P2に搬送されるものとする。
【0250】
ステップS1103において、制御部31は、ステップS1102で読み取った検体IDに基づき容器の種類を判断する。取出位置P2に搬送された容器が検体容器100であると判断した場合、ステップS1104に進む。取出位置P2に搬送された容器が、QC検体容器150である場合は
図38のステップS1201に進み、洗浄剤容器180である場合は、
図39のステップS1301に進む。
【0251】
制御部31は、ステップS1104において、ホストコンピュータ120に測定オーダの問い合わせを行って測定オーダを取得し、ステップS1105において、ロボットハンド15を制御して検体ラック110の収容部111から検体容器100を取り出す。制御部31の制御の下、ステップS1106において、ロボットハンド15は取り出した検体容器100を転倒攪拌し、ステップS1507において、試料調製部13の吸引管13aが検体容器100から検体を吸引する。検体容器100は、検体の吸引が終了すると、ステップS1108において、ロボットハンド15により検体ラック110の元の収容部111に戻される。
【0252】
制御部31の制御の下、ステップS1109において、試料調製部13は、吸引した検体から測定用試料を調製し、測定部14は試料の測定(初検)を行い、測定データを解析する。ステップS1110において、制御部31は、初検の測定結果に基づいて再検を行うか否かを決定する。再検を行う場合はステップS1105に戻り、再検を行わない場合は初検の結果をホストコンピュータ120に送信する(ステップS1111)。検体ラック110に収容された全ての検体容器100について初検と必要な再検が終了すると、必要により処理ユニット40を経由して塗抹標本の作製を行った後、回収ユニット60に搬送される(ステップS1112)。
【0253】
図38は、
図37のステップS1103において、容器がQC検体容器150であった場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部31は、ステップS1201において、供給ユニット80の制御部82aにQC条件の問合せを行ってQC条件を取得し、QC条件に基づいて測定対象のQC検体容器150を目的とする第1の測定ユニットの取出位置P2に搬送する。制御部31の制御の下、ステップS1202において、ロボットハンド15はQC検体ラック160の収容部111からQC検体容器150を取り出し、ステップS1203において、取り出したQC検体容器150を転倒攪拌する。なお、登録されたQC条件の情報が予め制御部31に提供されていてもよく、その場合、ステップS1201の問合せは不要である。
【0254】
制御部31の制御の下、ステップS1204において、試料調製部13の吸引管13aがQC検体容器150からQC検体を吸引し、ステップS1205において、ロボットハンド15がQC検体ラック160の元の収容部111にQC検体容器150を戻す。ステップS1206において、試料調製部13は吸引したQC検体から測定用試料を調製し、測定部14は試料の測定(初検)を行い、測定データを解析する。制御部31は、ステップS1204でQC検体が吸引されると、供給ユニット80の制御部82aにその情報を通知する。QC検体の吸引回数の情報は、データベース820の残テスト数を更新する際に使用される。或いは、制御部82aはこの通知を受信したときに、対応するQC検体容器150についての残テスト数を減じてデータベース820を更新してもよい。
【0255】
制御部31は、QC条件として、QC検体の再測定を行う再検査が設定されている場合、再検査が必要か否かを判断する(ステップS1207)。例えば、測定値が所定の許容範囲から外れる場合、又は前回値との誤差が許容範囲から外れる場合など、測定値が異常である場合に再検査が必要と判断する。本実施形態では、1回を上限に自動で再検査を行うことを想定している。つまり、再検査によりステップS1201~S1206を繰り返した場合、再検査の結果に関わらず、ステップS1208に進む。
【0256】
制御部31は、ステップS1208において、QCエラーを出力するか否かを判断する。QCエラーは、再検査を行ってもなおQC検体の測定値が異常である場合、例えばQC検体の測定値が所定の許容範囲から外れる場合、又は前回値との誤差が許容範囲から外れる場合に出力される。QCエラーは、例えば、供給ユニット80のモニタ91に表示される。
【0257】
制御部31は、QCエラーを出力すると、搬送コントローラ70に所定の通知を行う(ステップS1209)。所定の通知には、QCエラーが出た測定ユニットを特定する情報を含む。搬送コントローラは、QCエラーが出た測定ユニットに対して検体容器100の搬送を禁止するようプログラムされている。検体分析システム1には複数の測定ユニットが存在するため、QC検体の測定値が正常である測定ユニットのみを検体容器100を供給先とし、QC検体の測定値に異常が発生した測定ユニットは検体容器100の供給先から除外する。例えば、
図1の検体分析システム1における上流側の測定ブロック10の測定ユニット10A、10BのいずれかにおいてQCエラーが発生した場合、搬送コントローラ70は、上流側の測定ブロックを検体容器100の供給先から除外し、下流側の測定ブロック10にのみ検体容器を供給することができる。このようにすることで、QCエラーが発生した、精度保証されていない測定ユニットによって誤って検体が測定されることを防止できる。さらに、QCエラーが発生して測定ユニットの復旧を行いながら、他の正常な測定ユニットによって測定を開始できるため、利便性が高い。
【0258】
QC検体の測定値に基づいて、制御部31はQCファイルを作成する(ステップS1210)。上述のように、QCファイルは、濃度レベルおよびロットごとに作成されるQC検体の測定結果であって、データベース310に保存される。測定されたQC検体と同一の濃度レベルおよびロットについてQCファイルがすでに作成されている場合は、QCファイルに新たな測定値を追加することでファイルを更新する。ステップS1211において、制御部31は、QC条件に基づき第1の測定ユニットの精度管理測定が全て終了したか否かを判断する。例えば、異なる濃度レベルのQC検体の測定が必要である場合など、全ての測定が終了していない場合は、ステップS1201~S1211を繰り返す。
【0259】
第1の測定ユニットにおける測定が全て終了した場合(ステップS1211がYES)、制御部31は、QCの結果に基づき第1の測定ユニットのステータスを更新する(ステップS1212)。ステータスは、例えば、スタンバイおよびエラーの2つを含む。スタンバイは、測定ユニットが検体を測定可能な状態である。エラーは、測定ユニットにエラーが発生している状態であり、検体の測定が不可能な状態又は禁止されている状態である。制御部31は、QC結果が正常である、つまりQCエラーがない場合、測定ユニットのステータスをスタンバイに設定する。制御部31は、検体容器100を収容した検体ラック110が搬送された場合、ステータスがスタンバイである測定ユニットに検体容器100が供給されるように搬送ユニット20を制御するようにプログラムされている。制御部31は、QCエラーがある場合、測定ユニットのステータスをエラーに設定する。制御部31は、ステータスがエラーである測定ユニットには検体を供給しないようにプログラムされている。エラーが発生した測定ユニットは、例えばユーザが手動でQC検体の測定を行うか、又はエラー復旧を行うことによって、スタンバイにすることができる。
【0260】
制御部31は、QC検体ラック160の搬送先を供給ユニット80の制御部82aに問合せて(ステップS1213)、搬送先を決定する(ステップS1214)。QC検体ラック160の搬送先として、次の測定ユニットがある場合(ステップS1214がYES)、制御部31の制御の下、搬送ユニット20はQC検体ラック160を次の測定ユニットに搬送する(ステップS1215)。例えば、次の測定ユニットが第2の測定ユニット10Bであれば、搬送ユニット20は、第2搬送路22によって第1の測定ユニット10Aから第2の測定ユニット10Bに向けてQC検体ラック160を搬送する。次の測定ユニットが隣の測定ブロックであれば、搬送ユニット20は、第1搬送路21のベルト21b(
図5参照)によって下流に向けてQC検体ラック160を搬送する。QC検体ラック160の搬送先が供給ユニットである場合(ステップS1214がNO)、搬送ユニット20はQC検体ラック160を供給ユニット80に搬送するために、第3搬送路23によってQC検体ラック160を搬送する(ステップS1216)。
【0261】
図39は、
図37のステップS1103において、容器が洗浄剤容器180であった場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。この場合、洗浄剤容器180が第1測定ユニット10Aに取り込まれて洗浄処理が行われる。制御部31は、ステップS1301において、ロボットハンド15により洗浄剤ラックの収容部111から洗浄剤容器180を取り出し、ステップS1302において、洗浄剤容器180に吸引管13aを挿入して洗浄剤を吸引し、吸引管13aと流路を洗浄する。
【0262】
洗浄剤容器180は、所定時間経過後、ラックに戻され(ステップS1303)、洗浄剤容器180を収容した洗浄剤ラックは、供給ユニット80に搬送される(ステップS1304)。その後、制御部82aは、自動シャットダウンの実行がONに設定されているか否かを判断する(ステップS1305)。この判断は、制御部82aに保存されたスケジュールの登録情報に基づいて行われる。自動シャットダウンがONに設定されている場合、例えば、使用済みの洗浄剤容器180の処理が終了した後、制御部82aは、洗浄が行われた測定ユニット10A又は10Bの電源をオフする(ステップS1306)。
【0263】
図40は、コンベア部81の第1搬送路811にセットされたラックの処理(
図30のS500)を示すフローチャートである。上述のように、供給ユニット80はユーザがラックをセットするために外部からアクセス可能な第1搬送路811を備え、ユーザにより検体ラック110および空ラック170が第1搬送路811にセットされる。第1搬送路にセットされたラックは、センサ818bによって検知される。
【0264】
ステップS501において、制御部82aは、ラックを第1搬送路811から第2搬送路812へ搬送する制御を実行し、センサ818dにより容器を検出する。ステップS502において、制御部82aは、第1搬送路811にセットされたラックが検体ラック110および空ラック170のいずれであるかを判断する。制御部82aは、ラックに容器が収容されているか否かに基づいてラックの種類を判断する。制御部82aは、容器が検出された場合は検体ラックであると判断し、容器が検出されなかったら空ラックであると判断する。なお、
図40の処理は、ユーザによってラックが第1搬送路811にセットされた場合に実行されるものであり、本実施形態では、QC検体容器150を収容したQC検体ラック160は第5搬送路815を経由して供給ユニット80に帰還することを想定しているため、S501の判断にはQC検体ラック160に対応する分岐はない。
【0265】
第1搬送路811にセットされたラックが検体ラック110である場合、制御部82aおよび搬送ユニット70の制御の下、検体ラック110は測定ユニットに搬送される(ステップS503)。第1搬送路811にセットされたラックが空ラック170である場合、空ラック170はラック収容部88に搬送され、ラック収容部88で保管される(ステップS504)。
【0266】
図45は、
図40のステップS502,S504における供給ユニット80の動作を示す図である。
図45(a)に示すように、ユーザが第1搬送路811に空ラック170をセットすると、その空ラック170はセンサ818bにより検知され、第1送出部816Aにより第1搬送路811から第2搬送路812の右端側に押し出される。次に、
図45(b)に示すように、空ラック170は、第2搬送路812の右端位置でセンサ818cにより検知され、第2搬送路812のベルト812bにより左端位置まで移動されて、センサ818eにより検知される。
【0267】
第2搬送路812において、センサ818dにより容器が検出されず、空ラック170であることが確認されると、
図45(c)に示すように、その空ラック170はベルト812bにより再び第2搬送路812の右端位置に戻される。そして、
図45(d)に示すように、センサ818cにより検知されて搬送アーム881により搬送路88aに引き込まれる。空ラック170は、搬送アーム881によりストッパ88cの後方の前端ラックの位置まで引き込まれる。このとき、空ラック170の搬送を阻害しないように、ストッパ88b,88cは連動して下げられる。
【0268】
図41は、供給ユニット80にラックが帰還したときの処理(
図30のS600)を示すフローチャートである。上述のように、供給ユニット80は隣り合う搬送ユニット20からラックを受け取るための第5搬送路815を備え、QC検体ラック160および洗浄剤ラックは供給ユニット80に戻ってくる。
【0269】
ステップS601において、制御部82aは、第2搬送路812を制御してラックを搬送し、第1情報読取部817Aと、第2情報読取部817Bによってラックに収容された容器のIDを読み取る。
【0270】
制御部82aは、容器IDが読み取られたラックを、ラック収容部88に回収するように第2搬送路812およびラック収納部88を制御する(ステップS602)。制御部82aは、ステップS601において読み取ったIDに基づいて、帰還したラックがQC検体ラック160および洗浄剤ラックのいずれであるかを判断する(ステップS603)。制御部82aは、ラックに収容された容器がQC検体容器150であれば、ラックがQC検体ラック160であると判断する。制御部82aは、ラックに収容された容器が洗浄剤容器180であれば、ラックが洗浄剤ラックであると判断する。
【0271】
回収されたラックがQC検体容器150を収容するQC検体ラック160である場合、制御部82aは、QC検体容器150を保冷部84に収容して再保管するよう、移送部85および保冷部84を制御する(ステップS604)。制御部82aは、ステップS602に処理に基づいて、データベース820を更新する(ステップS605)。具体的には、制御部82aは、測定ユニット10A、10Bから受信するQC検体容器150からの吸引の通知に基づき、データベース820におけるQC検体の残テスト数を更新する。なお、上記の形態では、ステップS602において、残量にかかわらずQC検体容器150を再保管しているが、例えば残量情報に基づいてQC検体容器150を処理してもよい。例えば、残テスト数が1以上のQC検体容器150については保冷部84に移送して保管し、残テスト数が1未満のQC検体容器150については第1回収部89Aに移送して廃棄してもよい。
【0272】
回収されたラックが洗浄剤容器180を収容する洗浄剤ラックである場合、制御部82aは、洗浄剤容器180をラックから第2回収部89Bに移送して廃棄するよう移送部85を制御する(ステップS606)。
【0273】
図46~
図48は、
図32のステップS101において、QC条件および保管中のQC検体容器150の情報に基づいてQC検体容器150の組み合わせを決定する工程を詳細に説明するための図である。以下では、
図29のデータベース820に示すQC検体容器150が保冷部84に保管されている場合を想定して説明する。
【0274】
図46は、ケースA~Cを示す。
<ケースA>
ケースAでは、以下のQC条件が設定されている。
・使用する濃度レベル:レベル1、2
・精度管理測定の対象ユニット:XN1、XN2、XN3、XN4
・ブロック跨ぎ:可
【0275】
ブロック跨ぎとは、1つのQC検体ラック160により複数の測定ブロックの精度管理測定を行うか否かに関する設定である。ブロック跨ぎ「可」であれば、1つのQC検体ラック160にセットされたQC検体容器150によって検体分析システム全体の精度管理測定が行われる。ブロック跨ぎを可とするか不可とするかは、自動QCの効率を優先するか、QC検体の管理の容易性を優先するかといった、ユーザの好みに応じて変更される。
【0276】
例えば、ブロック跨ぎ「不可」に設定すると、複数の測定ブロックの各々に対して、QC検体ラック160が搬送される。複数の測定ブロックに対して並行して精度管理測定が可能になるため、検体分析システム全体としての精度管理測定が効率的に実行できる。
【0277】
ブロック跨ぎ「可」に設定すると、1つのQC検体ラック160にセットされたQC検体容器150を用いて複数の測定ブロックを精度管理できる。精度管理測定を並行で行う場合、例えば同一の濃度レベルのQC検体容器150を複数同時に使用するため、有効期限やロット番号の管理が煩雑になる場合がある。この点、ブロック跨ぎ「可」に設定すると、例えば、第1の測定ブロックと第2の測定ブロックで同一のQC検体容器150が使用されるため、一度に消費されるQC検体容器150の数を減らすことが可能になり、管理が容易になる。
【0278】
ケースAでは、ブロック跨ぎ「可」に設定されているため、レベル1とレベル2のQC検体容器150が1つのラックに収容される。制御部82aは、運用中のロット番号と同一のロット番号のQC検体容器150の中から使用可能なQC検体容器150を特定する。ここでは、運用中のロット番号は、レベル1については「A01XXXX」であり、レベル2については「A02XXXX」るとする。この場合、レベル1については、位置番号1と2のQC検体容器150が使用可能な容器として特定される。レベル2については、位置番号4と5のQC検体容器150が使用可能な容器として特定される。
【0279】
制御部82aは、ロット番号に基づいて使用可能なQC検体容器150が1つのみに定まる場合、その容器の残テスト数が自動QCで予定されている実施予定テスト数以上であるかを判断する。上述のように、残テスト数が実施予定のテスト数に満たない場合、制御部82aは自動QCエラーを出力してスケジュールをキャンセルする。残テスト数がテスト数以上であれば、特定されたQC検体容器150をラックにセットする。
【0280】
ロット番号に基づいて使用可能なQC検体容器150が2つ以上ある場合、残テスト数が最も少ない容器の残テスト数が自動QCで予定されているテスト数以上であるかを判断する。残テスト数が実施予定テスト数以上であれば、特定された容器、つまり残テスト数が最も少ない容器をラックにセットする。残テスト数が実施予定テスト数に満たない場合、最も残テスト数の少ない容器と2番目に残テスト数の少ない他の容器の残テスト数を合算した残テスト数(合算残テスト数)が実施予定のテスト数以上であるかを判断する。
【0281】
合算残テスト数が実施予定のテスト数以上であれば、それら2つのQC検体容器150をラックにセットする。2つのQC検体容器150の合算残テスト数が実施予定のテスト数未満であれば、さらに3つ目のQC検体容器150の残テスト数を合算して同様の判断を繰り返す。ロット番号に基づいて使用可能であると特定されたQC検体容器150の全ての残テスト数を合算しても実施予定のテスト数に満たない場合は、自動QCエラーを出力してスケジュールをキャンセルする。
【0282】
ケースAでは、レベル1についてはXN1~XN4の4台の4テストが必要になる。ロット番号に基づいて特定される位置番号1と2のQC検体容器150のうち、残量テスト数が少ない位置番号1が優先して使用対象となる。位置番号1のQC検体容器150の残テスト数「3」が、実施予定のテスト数「4」と比較される。位置番号1のQC検体容器150の残テスト数は3であり、実施予定のテスト数4に満たないため、位置番号1のQC検体容器150のみではXN1~XN4で精度管理測定を行うには1テスト不足する。そのため、2番目に残テスト数が少ない位置番号2のQC検体容器150の残テスト数「24」と、位置番号1のQC検体容器150の残テスト数「3」とを合算した合算残テスト数「27」が実施予定のテスト数「4」と比較される。27テストは実施予定のテスト数以上であるため、この場合、自動QCエラーは回避され、位置番号1と2のQC検体容器150が組み合わされてラックにセットされる。言い換えると、位置番号1と2のQC検体容器150が組み合わせて、レベル1の精度管理測定が実行される。
【0283】
ケースAでは、レベル2についても、XN1~XN4の4台の4テストが必要になる。ロット番号に基づいて特定される使用可能なQC検体容器150は、位置番号4と5の容器である。位置番号4のQC検体容器150の残テスト数は7であり、実施予定のテスト数の4以上であるから、位置番号4のQC検体容器150のみで足りる。よって位置番号4のQC検体容器150がラックにセットされる。
【0284】
よって、ケースAの場合、位置番号1、2、4のQC検体容器150が組み合わされて1つのラックにセットされる。
【0285】
<ケースB>
ケースBでは、以下のQC条件が設定されている。
・使用する濃度レベル:レベル2、3
・精度管理測定の対象ユニット:XN1、XN2、XN3、XN4
・ブロック跨ぎ:可
【0286】
レベル2については、ケースAと同様に位置番号4のQC検体容器150のみで4台の精度管理測定を実行可能であるため、位置番号4のQC検体容器150が精度管理測定に使用される容器として特定される。
【0287】
レベル3については、位置番号8のQC検体容器150のみが保冷部84に保管されている。位置番号8のQC検体容器150は残テスト数が5であり、使用可能のテスト数の4以上であるため、位置番号8のQC検体容器150が精度管理測定に使用される容器として特定される。
【0288】
よって、ケースBの場合、位置番号4、8のQC検体容器150が組み合わされて1つのラックにセットされる。
【0289】
<ケースC>
ケースCでは、以下のQC条件が設定されている。
・使用する濃度レベル:レベル1、2、3
・精度管理測定の対象ユニット:XN1、XN2、XN3、XN4
・ブロック跨ぎ:可
【0290】
ケースCでは、上述のケースAおよびケースBについて説明したアルゴリズムによって位置番号1、2、4、8のQC検体容器150が精度管理測定に使用される容器として特定される。よって、ケースCの場合、特定された4つのQC検体容器150が組み合わされて1つのラックにセットされる。
【0291】
図47は、ケースD,Eを示す。
<ケースD>
ケースDでは、以下のQC条件が設定されている。
・使用する濃度レベル:レベル1、2
・精度管理測定の対象ユニット:XN1、XN2、XN3、XN4
・ブロック跨ぎ:不可
【0292】
ケースDでは、ケースAと異なりブロック跨ぎが「不可」に設定されている。この場合、1つのQC検体ラック160が搬送される測定ブロックは1つに限定される。すなわち、各測定ブロックに別のQC検体ラック160を搬送する必要がある。
【0293】
1つ目のQC検体ラック160には、1つ目の測定ブロックの精度管理測定に用いられるQC検体容器150がセットされる。1つ目のQC検体ラック160には、残テスト数が2以上であるQC検体容器150が、レベル1とレベル2のそれぞれについて特定され、それらが組み合わされてセットされる。2つ目のQC検体ラック160についても同様である。ケースDの場合、1つ目のQC検体ラック160には位置番号1と4のQC検体容器150の組み合わせがセットされ、2つ目のQC検体ラック160には位置番号2と5のQC検体容器150の組み合わせがセットされる。
【0294】
<ケースE>
ケースEでは、以下のQC条件が設定されている。
・使用する濃度レベル:レベル1、2
・精度管理測定の対象ユニット:XN1、XN2、XN3、XN4
・ブロック跨ぎ:可
・再検設定:あり
【0295】
ケースEでは、ケースAと異なり「再検あり」の条件が追加されている。再検ありとは、QC検体を測定した結果、再検査が必要になった場合に、自動的に再検査を行う条件を意味する。再検査が必要になる場合とは、例えば、測定ユニットにおいてQC検体を測定した結果、測定値が許容範囲のレンジを外れた場合や、前回値との誤差が許容範囲を外れた場合が例示される。
【0296】
ケースEでは、自動QCによる精度管理測定の結果、再検が必要になった場合に、1回を上限に自動で再検査を行うことを想定している。つまり、1台の測定ユニットが1つのQC検体容器150に対して、初検と再検査を含め最大で2回測定を行うことが想定されている。QC検体容器150は、保冷部84から取り出された後、加温部86において一定時間(例えば15分)加温されてから使用される。そのため、ラックにセットされているQC検体容器150の残テスト数が再検査に必要なテスト数に満たない場合で、かつ再検査が必要になった場合、新たにQC検体容器150を保冷部84から取り出して一定時間加温することが必要になり、時間的なロスが発生する。そこで、本実施形態では、「再検設定あり」がQC条件に入っている場合、自動再検に必要なテスト数を含めてラックにセットする。
【0297】
ケースEの場合、XN1~XN4の4台の測定ユニットが対象として指定されている。そのため、各濃度レベルについて、初検と再検を含めると8テストが確保されている必要がある。レベル1については、位置番号1のQC検体容器150は残テスト数が3であり、8に満たない。そのため、レベル1については、位置番号1と2のQC検体容器150が組み合わされてラックにセットされる。レベル2については、位置番号4のQC検体容器150は残テスト数が7であり、8に満たない。そのため、レベル2については、位置番号4と5のQC検体容器150が組み合わされてラックにセットされる。
【0298】
図48は、ケースFを示す。
<ケースF>
ケースFでは、以下のQC条件が設定されている。
・使用する濃度レベル:レベル1、2
・精度管理測定の対象ユニット:XN1、XN2、XN3、XN4
・ブロック跨ぎ:可
・ロット間差チェック:オン
【0299】
ケースFでは、ケースAと異なり、「ロット間差チェック機能オン」の条件が追加されている。ロット間差チェック機能とは、運用中のロットのQC検体と新規ロットのQC検体の両方を1回の自動QCスケジュールで測定する機能である。QC検体のロットが切り替わる場合、運用中のロットのQC検体と、新規ロットのQC検体の両方を、一定期間(例えば1週間)にわたって同じ測定ユニットで測定し、2つのロットの精度管理結果を比較することがある。言い換えると、運用中のロットと新規ロットの使用期間に一定の重複期間が生じるようにすることがある。これは、運用中のロットと新規ロットの間に大幅な乖離がないことを確認するために行われる。ロット間差チェック機能とは、この2ロットを用いた自動QCを自動的に行う機能である。
【0300】
ケースFでは、
図48に示したQC検体リストが、制御部82aのデータベース820に格納されているものとする。
図48に示すように、濃度レベル1については、P001のロットと、P002のロットのQC検体容器150が保冷部84に保管されている。レベル1については、P001が運用中のロットであり、P002が新規ロットである。レベル2については、Q001のロットと、Q002のロットのQC検体容器150が保管されている。Q001が運用中のロットであり、Q002が新規ロットである。この場合、各濃度レベルについて、運用中のロットと新規ロットが1つずつ組み合わされる。
【0301】
ケースFでは、例えば、レベル1について、位置番号1と2のQC検体容器150が組み合わされ、レベル2について、位置番号4と5のQC検体容器150が組み合わされる。すなわち、位置番号1、2、4、5のQC検体容器150を収容したQC検体ラック160が、測定ユニットXN1~4に搬送され、各測定ユニットにおいて4本のQC検体がそれぞれ測定される。
【0302】
図49は、旧ロットと新規ロットの精度管理結果を比較するための画面3000の一例である。画面3000は、例えば、供給ユニット80のモニタ92(
図7参照)に表示される。なお、モニタ92は測定ユニットなど、他の場所に設けられていてもよい。画面3000は、精度管理結果として、QC検体の測定値の日差変動を確認するためのQCチャート3001を表示している。
図49に示すように、旧ロットのQCファイルと新ロットのQCファイルを読み出し、重ね合わせの操作を行うと、旧ロットのQCチャート3002と新ロットのQCチャート3003とを重ね合わせて表示することができる。ユーザは、2本のQCチャートを比較して確認することで、精度管理結果のロット間差を確認することができる。本実施形態のロット間差チェック機能を用いれば、煩雑なロット切り替えがスムーズに行える。
【0303】
図50は、シャットダウンの指示を受け付けた場合の供給ユニット80の処理を説明するフローチャートである。制御部82aは、シャットダウンの指示を受け付けたか否かを判断する(ステップS700)。
図20を参照して説明したように、供給ユニット80の制御部82aは、画面2100~2103においてOKボタが押されることで、ユーザからのシャットダウンの指示を受け付けることができる。いずれかの画面においてOKボタンが押されると、制御部82aは、シャットダウンの指示があったと判断する(ステップS700がYES)。
【0304】
制御部82aは、ユーザによって選択されたシャットダウンのモードを判別する(ステップS701)。
図20の指定装置画面2101を介してシャットダウンが指示された場合、制御部82aは指定装置モードであると判断し、画面2101において指定された装置の数に対応する数の洗浄剤容器180をラックにセットして、指定されたユニットに向けて洗浄剤ラックを搬送するよう供給ユニット80の各部を制御する(ステップS702)。なお、洗浄剤のセットや搬送に関する供給ユニット80の制御は、
図34を参照して説明した通りである。また、洗浄剤容器180を受け取った測定ユニット10A、10Bの制御は、
図39を参照して説明した通りであり、洗浄剤を用いた洗浄後が完了すると、自動的にユニットの電源がオフされる。なお、
図39では測定ユニットのシャットダウンを例示しているが、処理ユニット40も同様に、洗浄後に自動的に電源がオフされる。
【0305】
制御部82aは、ステップS702において搬送した洗浄剤ラックが帰還したら、ラックをラック収納部88へ収納し、使用済みの洗浄剤容器180を廃棄するように供給ユニット80の各部を制御し(ステップS703)、処理を終了する。これより、ユーザによって指定された装置のみがシャットダウンされる。
【0306】
図20のシステム画面2102を介して、システム全体のシャットダウンが指示された場合、制御部82aはシステム全体モードであると判断し、全ての測定ユニット10A、10Bおよび処理ユニット40に対して洗浄剤ラックを搬送するよう供給ユニット80の各部を制御する(ステップS704)。
【0307】
制御部82aは、ステップS703と同様に、帰還した洗浄剤ラックをラック収納部88へ収納し、使用済みの洗浄剤容器180を廃棄するように供給ユニット80の各部を制御する(ステップS705)。制御部82aは、検体分析システム1の全ユニットに対して、電源をオフするコマンドを送信する(ステップS706)。これより、検体分析システム1を構成する全ての装置がシャットダウンされる。
【0308】
制御部82aは、ステップS707において、供給ユニット80の電源をオフし、処理を終了する(ステップS707)。ただし、上述した通り、保冷部84は供給ユニット80がシャットダウンされた後も電源オンの状態が維持され、QC検体が継続して冷却保管される。
【0309】
図20の画面2103を介して供給ユニット80単体でのシャットダウンが指示された場合、制御部82aは、ステップS702~706をスキップし、ステップS707の処理を実行し、処理を終了する。
【0310】
以上のように、上述の検体分析システム1および精度管理方法によれば、システム内で精度管理物質が冷却保管され、例えば、検体測定に支障がない時間帯に自動的に精度管理測定が開始される。したがって、精度管理測定を行う際に、ユーザが精度管理物質をシステムにセットする必要がなく、ユーザの負担が軽減されユーザビリティが大きく向上する。加えて、冷却保管されている精度管理物質が測定温度に調整されてから測定ユニットに供給されるため、安定した温度で精度管理物質の測定が行われ、より信頼性の高い精度管理測定が可能となる。
【0311】
なお、本発明に係る精度管理方法および検体分析システムの実施形態は、上述した実施形態、変形例以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
【0312】
図51および
図52は、第1および第2の変形例である検体分析システム1X,1Yの構成を模式的に示す図である。
図51に示すように、検体分析システム1Xは、回収ユニット60が供給ユニット80のモジュール10と反対側である右側に隣り合って設けられている点で、検体分析システム1と異なる。検体分析システム1Xの場合、回収ユニット60のラック搬送路がコンベア部81の第5搬送路815に接続されている。搬送ユニット20の第3搬送路23および第5搬送路815は、検体分析システム1ではQC検体ラック160および洗浄剤ラックを回収するための搬送路であったが、検体分析システム1Xでは検体ラック110の回収にも使用される。
【0313】
図52に示すように、検体分析システム1Yは、供給ユニット80の右側に隣り合って追加の第2供給ユニット140が設けられている点で、検体分析システム1,1Xと異なる。第2供給ユニット140は、ユーザにより検体ラック110等がセットされるユニットであって、QC検体容器150の冷却保管機能等は有さない。
図52に示す例では、供給ユニット80と回収ユニット60の間に挟まれて第2供給ユニット140が配置されている。そして、第2供給ユニット140のラック搬送路は、コンベア部81の第6搬送路819に接続されている。この場合、第6搬送路819は、第2供給ユニット140から検体ラック110等を搬入するための搬送路として機能する。
【0314】
図53および
図54は、第1の変形例である供給ユニット80Kを示す図である。供給ユニット80Kは、ユーザによりラックがセットされる第1搬送路811Kを含むコンベア部81Kを備える。コンベア部81Kの構成は、供給ユニット80の場合と同様である。供給ユニット80Kは、さらに、保冷部84K、移送部85K、加温部86K、ラック収容部88K、およびワゴン90Kを備える。
図54では、カルーセル式の保冷部84Kを図示しているが、これらの構成は、供給ユニット80の場合と同様であってもよい。また、情報読取部86等の図示しない構成についても、供給ユニット80の場合と同様であってもよい。
【0315】
供給ユニット80Kは、QC検体容器150および洗浄剤容器180がセットされる投入部83Kの構造が、供給ユニット80の投入部83の構造と異なっている。投入部83Kは、第1搬送路811Kに隣接配置され、供給ユニット80Kの前後方向にスライド可能な引き出し式の構造となっている。投入部83Kには、複数のQC検体容器150がセットされる第1収容部831Kと、複数の洗浄剤容器180がセットされる第2収容部832Kとを有する。第1収容部831Kには、例えば、3本のQC検体容器150をセット可能である。
【0316】
投入部83Kは、QC検体容器150および洗浄剤容器180を供給ユニット80Kにセットする際に、手動で前方に引き出し可能に構成されている。或いは、投入部83Kは電動式であってもよい。投入部83Kを装置前方に引き出して第1収容部831KにQC検体容器150をセットし、投入部83Kを装置後方の所定位置まで押し込むと、供給ユニット80の場合と同様に、移送部85Kが第1収容部831Kから保冷部84KにQC検体容器150を移送する。洗浄剤容器180については、第2収容部832Kで保管される。供給ユニット80Kには、例えば、洗浄剤容器180の数を検知するセンサが設置されており、洗浄剤容器180の数は
図19に示す洗浄剤容器在庫ウィンドウ2006に表示される。
【0317】
図55は、第2の変形例である供給ユニット80Xを模式的に示す図である。
図55に示すように、供給ユニット80Xは、検体ラック110およびQC検体ラック160を測定ユニットに搬送するための搬送路811Xが設けられた1階部分81Xと、保冷部84X、洗浄剤容器保管部193等が設けられた2階部分82Xとを備える。また、1階部分81Xと2階部分82Xの間でラックを搬送する昇降式の移動部190と、移動部190を移動するラックからラックIDおよび検体容器100等の検体IDを読み取る情報読取部194とを備える。
【0318】
2階部分82Xには、供給ユニット80の場合と同様に、QC検体容器150を把持して移送するための移送部85Xと、QC検体容器150のQC検体IDを読み取る情報読取部87Xとが設けられており、QC検体容器150と洗浄剤容器180を収容して搬送するための複数の空ラック170が収容されている。また、2階部分82Xには、QC検体容器150の投入口兼回収口として機能する第1投入回収部191と、洗浄剤容器180の投入口兼回収口として機能する第2投入回収部192とが設けられている。
【0319】
上述のように、QC検体容器150は、供給ユニットで測定温度に調整された後、ラックに収容されて測定ユニットに搬送されるが、複数存在する測定ユニットの一部だけが稼働している場合は、QC検体ラック160を稼働中の測定ユニットだけに搬送し、休止中の測定ユニットには搬送しないことが好ましい。
【0320】
また、供給ユニットの制御部は、QC検体容器150が保冷部84から取り出されて室温環境に置かれている時間T1を計測し、時間T1が所定時間T2を超えた場合にQC検体容器150を保冷部84に戻す処理を実行してもよい。この場合、時間T1が時間T2を超えると、QC検体の測定結果に関わらず、すなわちQC条件として再検査が設定されている場合に測定結果が異常であっても、再検査を行わずにQC検体容器150を保冷部84に戻す。この処理によれば、QC検体が室温環境に長時間置かれることが防止され、QC検体の状態を良好に保つことができる。或いは、時間T1が所定時間T2を超えた場合に当該容器を廃棄対象としてもよい。
【0321】
また、供給ユニットの制御部は、QC検体容器150の回収処理において、QC検体容器150が所定の継続使用条件を満たすか否かを判定し、継続使用条件を満たさないQC検体容器150については廃棄してもよい(例えば、
図41のステップS602)。或いは、継続使用条件を満たさないQC検体容器150を保冷部84に戻し、使用不可として冷却保管を継続してもよい。QC検体は高価であるから、QC検体容器150の自動的な廃棄が好ましくないことも考えられ、この構成によれば当該ニーズに対応できる。
【0322】
上記所定の継続使用条件とは、次回以降の精度管理測定でQC検体容器150が使用できるか否かを判断するための条件であって、QC検体の残量の他、有効期限が挙げられる。例えば、次回の精度管理測定が翌日である場合に、本日が有効期限であるQC検体容器150は継続使用条件を満たさないものとして廃棄されてもよい。
【0323】
QC検体を加温して測定温度に調整する加温部には、ヒータやファン以外に、加温を補助する機器、例えば攪拌機、振動発生器、カルーセル等の回転装置などが設けられていてもよい。
【0324】
QC検体の加温は、上記実施形態では加温部86の加温手段によってQC検体容器150を加温することにより行われるが、室温の雰囲気にQC検体容器150を暴露することにより行われてもよい。また、上記実施形態では保冷部84と加温部86が別の装置として構成され、別々の場所に設けられているが、例えば、保冷部を加温部として兼用することも可能である。保冷部に内蔵されるペルチェ素子は、一般的に冷却機能だけでなく加温機能も有するので、上記所定の条件が成立した時点で、ペルチェ素子を冷却モードから加温モードに切り替えてQC検体の加温を行うことができる。
【0325】
上記実施形態では、測定ユニットとして血球計数器を例示したが、これに限定されず、血液凝固検査、免疫検査、生化学検査などであってもよい。また、測定ユニットに供給される検体は、全血に限らず、血漿、血清、尿、リンパ液、体腔液などであってもよい。
【符号の説明】
【0326】
1 検体分析システム
10 モジュール
10A 第1測定ユニット
10B 第2測定ユニット
20 搬送ユニット
21 第1搬送路
22 第2搬送路
23 第3搬送路
30 制御ユニット
40 処理ユニット
50 搬送ユニット
60 回収ユニット
70 搬送コントローラ
80 供給ユニット
81 コンベア部
811 第1搬送路
812 第2搬送路
813 第3搬送路
814 第4搬送路
815 第5搬送路
819 第6搬送路
82 保管調整ユニット
82a 制御部
83 投入部
83A 第1投入部
83B 第2投入部
830A,830B 移送路
831A 第1投入口
831B 第2投入口
832A 第1カバー
832B 第2カバー
834 移送ホルダ
839 取出部
84 保冷部
85 移送部
86 加温部
87 情報読取部
88 ラック収容部
89A 第1回収部
89B 第2回収部
90 ワゴン
91 モニタ
100 検体容器
110 検体ラック
120 ホストコンピュータ
130 集線装置
150 QC検体容器
160 QC検体ラック
170 空ラック
180 洗浄剤容器