(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171639
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】循環装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20231124BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231124BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20231124BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 303
B41J2/175 111
B41J2/175 153
B41J2/175 503
B41J2/18
B41J2/17
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177128
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2021543091の分割
【原出願日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2019159116
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穂積 大輔
(72)【発明者】
【氏名】杉本 宏征
(57)【要約】
【課題】脈動を吸収すること。
【解決手段】一態様に係る循環装置は、液体を貯留する貯留部と、液体を吐出する液滴吐出部とを備え、貯留部と液滴吐出部との間を連通する流路を流れる液体の循環を制御する。かかる循環装置は、ロボット部と、第1の圧力印加部と、第2の圧力印加部と、第1の弁部と、第2の弁部とを備える。ロボット部は、液滴吐出部を搭載する。第1の圧力印加部は、貯留部に貯留された液体を、貯留部と液滴吐出部との間を連通する第1の流路を通じて液滴吐出部に送給する。第2の圧力印加部は、液滴吐出部において回収された液体を、貯留部と液滴吐出部との間を連通する第2の流路を通じて貯留部に送給する。第1の弁部は、第1の圧力印加部と液滴吐出部との間に介挿される。第2の弁部は、第2の圧力印加部と液滴吐出部との間に介挿される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する貯留部と、前記液体を吐出する液滴吐出部とを備え、前記貯留部から前記液滴吐出部に供給される前記液体の循環を制御する循環装置であって、
前記液滴吐出部を搭載するロボット部と、
前記貯留部に貯留された液体を、前記貯留部と前記液滴吐出部との間を連通する第1の流路を通じて前記液滴吐出部に送給する第1の圧力印加部と、
前記液滴吐出部において回収された液体を、前記貯留部と前記液滴吐出部との間を連通する第2の流路を通じて前記貯留部に送給する第2の圧力印加部と、
前記第1の圧力印加部と前記液滴吐出部との間に介挿された第1の弁部と、
前記第2の圧力印加部と前記液滴吐出部との間に介挿された第2の弁部と、
を備えると共に、
前記第1の弁部は、前記貯留部から前記液滴吐出部に送給される液体の流量を比例制御する第1の比例弁であり、
前記第2の弁部は、前記液滴吐出部から前記貯留部に送給される液体の流量を比例制御する第2の比例弁である、
循環装置。
【請求項2】
前記ロボット部は、自在に動作可能なアーム部を備え、
前記第1の圧力印加部は、前記ロボット部が基台に組み付けられる前記アーム部の根元側に設けられ、
前記第1の弁部は、前記ロボット部に前記液滴吐出部が組み付けられる前記アーム部の先端側に設けられる
請求項1に記載の循環装置。
【請求項3】
前記ロボット部は、自在に動作可能なアーム部を備え、
前記第2の圧力印加部は、前記ロボット部が基台に組み付けられる前記アーム部の根元側に設けられ、
前記第2の弁部は、前記ロボット部に前記液滴吐出部が組み付けられる前記アーム部の先端側に設けられる
請求項1または2に記載の循環装置。
【請求項4】
前記ロボット部は、自在に動作可能なアーム部を備え、
前記第1の圧力印加部は、前記アーム部の中間位置に設けられ、
前記第1の弁部は、前記ロボット部に前記液滴吐出部が搭載される前記アーム部の先端側に設けられる
請求項1に記載の循環装置。
【請求項5】
前記ロボット部は、自在に動作可能なアーム部を備え、
前記第2の圧力印加部は、前記アーム部の中間位置に設けられ、
前記第2の弁部は、前記ロボット部に前記液滴吐出部が搭載される前記アーム部の先端側に設けられる
請求項1または4に記載の循環装置。
【請求項6】
前記第1の弁部及び前記第2の弁部のうち少なくとも一方は、前記液滴吐出部に内蔵される
請求項1に記載の循環装置。
【請求項7】
前記貯留部に貯留された前記液体を加温するヒーター部をさらに備える
請求項1~6のいずれか一項に記載の循環装置。
【請求項8】
前記第1の比例弁は、前記貯留部から前記液滴吐出部に送給される液体の流路面積を0~100%の間で連続的に変更可能である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の循環装置。
【請求項9】
前記第2の比例弁は、前記液滴吐出部から前記貯留部に送給される液体の流路面積を0~100%の間で連続的に変更可能である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の循環装置。
【請求項10】
前記第1の比例弁は、電磁式の比例切換弁または空気式の比例切換弁である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の循環装置。
【請求項11】
前記第2の比例弁は、電磁式の比例切換弁または空気式の比例切換弁である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、インクジェット記録方式を利用したインクジェットプリンタやインクジェットプロッタが知られている。このようなインクジェット方式の印刷装置には、液体を吐出させるための液体吐出ヘッドが搭載されている。
【0003】
また、インクジェット方式の印刷装置のように、液体を吐出する装置では、液体の吐出する制御する技術、吐出する液体の浪費を防止する技術、液体の交換を効率化する技術等が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-226313号公報
【特許文献2】特開2015-167934号公報
【特許文献3】特許第4235631号公報
【発明の概要】
【0005】
実施形態の一態様に係る循環装置は、液体を貯留する貯留部と、液体を吐出する液滴吐出部とを備え、貯留部から液滴吐出部に供給される液体の循環を制御する循環装置であって、液滴吐出部を搭載するロボット部と、貯留部に貯留された液体を、貯留部と液滴吐出部との間を連通する第1の流路を通じて液滴吐出部に送給する第1の圧力印加部と、液滴吐出部において回収された液体を、貯留部と液滴吐出部との間を連通する第2の流路を通じて貯留部に送給する第2の圧力印加部と、第1の圧力印加部と液滴吐出部との間に介挿された第1の弁部と、第2の圧力印加部と液滴吐出部との間に介挿された第2の弁部と、を備えると共に、第1の弁部は、貯留部から液滴吐出部に送給される液体の流量を比例制御する第1の比例弁であり、第2の弁部は、液滴吐出部から貯留部に送給される液体の流量を比例制御する第2の比例弁である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る循環装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る循環装置の循環機構の構成例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、変形例に係る循環装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、変形例に係る循環装置の循環機構の構成例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る循環装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る流量制御データの概要を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る液体の流量と時間との関係の一例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る印字中の液体の循環圧力の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本願が開示する循環装置の実施形態を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本願に係る発明が限定されるものではない。
【0008】
本願が開示する循環装置は、インクジェット記録方式を利用したインクジェットプリンタやインクジェットプロッタの他、インクジェット方式で液滴を吐出する各種装置に適用できる。
【0009】
<循環装置の構成例>
図1及び
図2を用いて、実施形態に係る循環装置の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る循環装置の構成例を模式的に示す図である。
図2は、実施形態に係る循環装置の循環機構の構成例を模式的に示す図である。
【0010】
図1又は
図2に示すように、循環装置200は、基台10と、タンク201と、吐出ポンプ202と、吸引ポンプ203と、第1比例弁204と、第2比例弁205と、ヒーター206とを備える。また、循環装置200は、
図1又は
図2に示すように、第1圧力センサ208と、第2圧力センサ209と、第3圧力センサ210と、第4圧力センサ211と、流量計212と、液滴吐出ヘッド213と、ロボット部220とを備える。かかる構成を有する循環装置200は、
図2に示すように、タンク201から液滴吐出ヘッド213に供給される液体の循環を制御する。
【0011】
基台10は、例えば室内又は室外の水平な床面に載置される。かかる基台10には、液体を貯留するタンク201が設置される。これにより、タンク201に貯留された液面の揺れを防止できる。
【0012】
基台10に組み付けられたロボット部220は、アーム部221を有する。アーム部221は、曲げ伸ばし、及び回転自在に組み付けられた複数の部品により構成される。アーム部221は、所定の指令に従って、アーム部221の先端に搭載された液滴吐出ヘッド213の移動や、かかる液滴吐出ヘッド213の位置、姿勢、並びに角度の変更などを行うことができる。
図1に例示するアーム部221は、液滴吐出ヘッド213にとって必要となる移動や、位置、姿勢、並びに角度などの変更が可能な自由度を備えていれば、
図1に示す構成に特に限定されるものではない。
【0013】
吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203は、ロボット部220が基台10に組み付けられるアーム部221の根元側に設けられる。循環装置200において、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203による脈動が少なからず発生する。実施形態に係る循環装置200は、以下に説明する第1比例弁204及び第2比例弁205を備えることにより、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203による脈動を吸収する。
【0014】
第1比例弁204は、
図2に示すように、吐出ポンプ202と液滴吐出ヘッド213との間の第1の流路RT
1に介挿され、
図1に示すように、ロボット部220に液滴吐出ヘッド213が組み付けられるアーム部221の先端側に設けられる。また、第2比例弁205は、
図2に示すように、吸引ポンプ203と液滴吐出ヘッド213との間の第2の流路RT
2に介挿され、
図1に示すように、ロボット部220に液滴吐出ヘッド213が組み付けられるアーム部221の先端側に設けられる。第1比例弁204及び第2比例弁205は、アーム部221の先端に設けられたフレーム部材(図示略)に設置することにより、アーム部221に搭載できる。これにより、第1比例弁204及び第2比例弁205の固定が強固となる。
【0015】
また、第1比例弁204及び第2比例弁205を、液滴吐出ヘッド213が組み付けられるアーム部221の先端側に搭載することにより、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203と液滴吐出ヘッド213との間にある程度の距離を設ける。これにより、循環装置200は、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203による脈動を液滴吐出ヘッド213に伝わりにくくする。さらに、循環装置200は、液滴吐出ヘッド213に至る脈動を第1比例弁204及び第2比例弁205によりできるだけ抑制できる。
【0016】
ヒーター206は、例えば、タンク201の内部及び液滴吐出ヘッド213の内部にそれぞれ設けられる。なお、ヒーター206は、タンク201の内部ではなく、ヒーター206の熱が伝わる位置であれば、タンク201に隣接して設けられてもよい。同様に、ヒーター206は、液滴吐出ヘッド213の内部ではなく、ヒーター206の熱が伝わる位置であれば、液滴吐出ヘッド213に隣接して設けられてもよい。また、ヒーター206は、タンク201および液滴吐出ヘッド213のいずれか一方に設けられてもよい。
【0017】
<変形例>
図1では、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203は、ロボット部220が基台10に組み付けられるアーム部221の根元側に搭載される例を示したが、この例には特に限定される必要はない。
図3を用いて、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203の搭載位置の変形例を説明する。
図3は、変形例に係る循環装置の構成例を模式的に示す図である。
【0018】
例えば、
図3に示すように、循環装置200は、アーム部221の先端と根元との中間地点付近にあたる中間位置に、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203を設けてもよい。
図3に示すように、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203を、アーム部221の中間位置に設けることにより、
図1に示すアーム部221の根元側に設けるよりも、各ポンプの出力効率を上げることができる。なお、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203のうちの少なくともいずれか一方をアーム部221の先端と根元との中間地点付近にあたる中間位置に設けてもよい。
【0019】
図2では、第1比例弁204が吐出ポンプ202と液滴吐出ヘッド213との間の第1の流路RT
1に介挿され、第2比例弁205が吸引ポンプ203と液滴吐出ヘッド213との間の第2の流路RT
2に介挿される例を説明した。しかしながら、この例には特に限定される必要はない。
図4を用いて、第1比例弁204及び第2比例弁205の搭載位置の変形例を説明する。
図4は、変形例に係る循環装置の循環機構の構成例を模式的に示す図である。
【0020】
図4に示すように、第1比例弁204及び第2比例弁205を液滴吐出ヘッド213に内蔵してもよい。
図4に示すように、第1比例弁204及び第2比例弁205を、
図2に示す例よりも液滴吐出ヘッド213に近づけることにより、各ポンプによる脈動に対する応答性能を向上できる。なお、第1比例弁204及び第2比例弁205のうちの少なくとも一方を液滴吐出ヘッド213に内蔵してもよい。
【0021】
また、第1比例弁204及び第2比例弁205は、
図1に示すように、それぞれアーム部221の先端側に設けられることが望ましいが、第1比例弁204及び第2比例弁205が、少なくとも第1の流路RT
1及び第2の流路RT
2にそれぞれ介挿されていれば、液滴吐出ヘッド213に脈動を伝わりにくくする一応の効果を期待できる。なお、第1比例弁204及び第2比例弁205のうちの少なくともいずれか一方をアーム部221の先端側に設けてもよい。
【0022】
また、循環装置200は、液体を循環させる機構として、吐出ポンプ202と吸引ポンプ203とを統合した1つのポンプを備えてもよい。そして、吐出ポンプ202と液滴吐出ヘッド213との間の液体の吐出側に、液体の流量を制御する比例弁を設置する。あるいは、吐出ポンプ202と液滴吐出ヘッド213との間の液体の回収側に、液体の流量を制御する比例弁を設置する。これにより、吐出ポンプ202と吸引ポンプ203とを統合したポンプを用いた場合であっても、ポンプによる脈動が液滴吐出ヘッド213に伝わりにくくなる。
【0023】
また、タンク201及び液滴吐出ヘッド213は、遮熱可能な構成としてもよい。これにより、外気温の変動を受けにくく、ヒーター206による熱効率の向上が期待できる。
【0024】
<機能構成例>
図5を用いて、実施形態に係る循環装置200の機能構成の一例を説明する。
図5は、実施形態に係る循環装置の機能構成の一例を示す図である。
【0025】
なお、
図5は、実施形態に係る循環装置200の機能構成の一例を示すものであり、実施形態に係る循環装置200の各種機能を実現できる構成であれば、
図5に示す例に特に限定される必要はない。また、
図5は、実施形態に係る循環装置200が備える構成要素を機能ブロックで表しており、一般的なその他の構成要素についての記載を省略している。また、
図5に示す循環装置200の各構成要素は機能概念的なものであり、
図5に示す例に限定されるものではなく、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0026】
図5に示すように、循環装置200は、タンク201と、吐出ポンプ202と、吸引ポンプ203と、第1比例弁204と、第2比例弁205と、ヒーター206とを備える。また、循環装置200は、入出力インターフェイス207と、第1圧力センサ208と、第2圧力センサ209と、第3圧力センサ210と、第4圧力センサ211と、流量計212と、液滴吐出ヘッド213とを備える。また、循環装置200は、ストレージ214と、プロセッサ215と、ロボット部220とを備える。
【0027】
図5に示す循環装置200は、第1の流路RT
1と、第2の流路RT
2とを備える(
図2参照)。第1の流路RT
1は、タンク201に貯留された液体を液滴吐出ヘッド213の内部に流入させるための流路である。第2の流路RT
2は、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間を連通し、液滴吐出ヘッド213に流入した液体をタンク201に還流させるための流路である。第2の流路RT
2を通じて、液滴吐出ヘッド213から外部に吐出されずに、液滴吐出ヘッド300内で回収された液体はタンク201に送り返される。第1の流路RT
1及び第2の流路RT
2は、例えば、液体の成分との相互作用がない所定の材料で形成された配管により実装できる。かかる各部を有する循環装置200は、例えば、タンク201から液滴吐出ヘッド213に供給される液体の循環を制御する。
【0028】
タンク201は、液滴吐出ヘッド213に供給される液体を貯留する。タンク201は、液滴吐出ヘッド213に供給する液体を貯留する貯留部として機能する。
【0029】
吐出ポンプ202は、タンク201に貯留された液体を、第1の流路RT1を通じて、液滴吐出ヘッド213に送給する第1の圧力印加部として機能する。吐出ポンプ202は、タンク201に貯留された液体を液滴吐出ヘッド213に送り出すための正圧を発生させる。吐出ポンプ202により、予め設定された一定の圧力で、タンク201から液滴吐出ヘッド213へと液体が送出される。
【0030】
吸引ポンプ203は、液滴吐出ヘッド213において回収された液体を、第2の流路RT2を通じてタンク201に送給する第2の圧力印加部として機能する。吸引ポンプ203は、液滴吐出ヘッド213から液体を吸引してタンク201に送り返すための負圧を発生させる。吸引ポンプ203により、予め設定された一定の圧力で、液滴吐出ヘッド213からタンク201へと液体が送り返される。
【0031】
吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203は、ギアポンプなどの回転ポンプや、ダイヤフラムポンプなど容積式ポンプにより実装できる。
【0032】
第1比例弁204は、タンク201と液滴吐出ヘッド213との間の第1の流路RT1に介挿される第1の弁部として機能する。第1比例弁204は、タンク201から液滴吐出ヘッド213に送給される液体の流量を比例制御する。第1比例弁204は、液体の流路断面積を0~100%の間で連続的に変更可能であり、液体の流量を所望の流量に制御する。例えば、第1比例弁204は、液体の流路断面積を小さくすることにより、吐出ポンプ202により液体に発生した脈動を抑制できる。
【0033】
第2比例弁205は、タンク201と液滴吐出ヘッド213との間の第2の流路RT2に介挿される第2の弁部として機能する。第2比例弁205は、液滴吐出ヘッド213からタンク201に送給される液体の流量を比例制御する。第2比例弁205は、液体の流路断面積を0~100%の間で連続的に変更可能であり、液体の流量を所望の流量に制御する。例えば、第2比例弁205は、液体の流路断面積を小さくすることにより、吸引ポンプ203により液体に発生した脈動を小さくできる。
【0034】
第1比例弁204及び第2比例弁205は、電磁式の比例切換弁、又は空気式の比例切換弁により実装できる。
【0035】
ヒーター206は、タンク201に貯留された液体及び液滴吐出ヘッド213を循環する液体を加温する。
【0036】
入出力インターフェイス207は、ロボット部220との間で各種情報をやり取りする。入出力インターフェイス207は、ロボット部220に対して、所定の動作を実行させるための制御信号を送信できる。
【0037】
第1圧力センサ208は、吐出ポンプ202により、タンク201から液滴吐出ヘッド213に送給される液体の流体圧力を測定する。第1圧力センサ208は、循環装置200における液体の循環方向において吐出ポンプ202よりも下流側の圧力を測定する。第1圧力センサ208は、測定結果をプロセッサ215に送る。
【0038】
第2圧力センサ209は、吸引ポンプ203により液滴吐出ヘッド213から吸引され、タンク201に送給される液体の流体圧力を測定する。第2圧力センサ209は、循環装置200における液体の循環方向において吸引ポンプ203よりも上流側の圧力を測定する。第2圧力センサ209は、測定結果をプロセッサ215に送る。
【0039】
第3圧力センサ210は、第1の流路RT1を通じて、第1比例弁204と液滴吐出ヘッド300との間を流れる液体の流体圧力を測定する。第3圧力センサ210は、第1比例弁204を通過し、液滴吐出ヘッド213に流れ込む直前の液体の流体圧力を測定する。すなわち、第3圧力センサ210は、循環装置200における液体の循環方向において第1比例弁204よりも下流側の流体圧力を測定する。第3圧力センサ210は、測定結果をプロセッサ215に送る。
【0040】
第4圧力センサ211は、第2の流路RT2を通じて、第2比例弁205と液滴吐出ヘッド300との間を流れる液体の流体圧力を測定する。第4圧力センサ211は、液滴吐出ヘッド213からタンク201へ送り出された直後で、第2比例弁205を通過する前の液体の流体圧力を測定する。すなわち、第4圧力センサ211は、循環装置200における液体の循環方向において第2比例弁205よりも上流側の圧力を測定する。第4圧力センサ211は、測定結果をプロセッサ215に送る。
【0041】
流量計212は、液滴吐出ヘッド213に供給される液体の流量を測定する。流量計12は、測定結果をプロセッサ215に送る。
【0042】
液滴吐出ヘッド213は、
図1に示す対象物50に向かって、タンク201から供給された液体を吐出する。液滴吐出ヘッド213は、吐出されなかった液体を回収し、回収した液体をタンク201に送り出す。
【0043】
ストレージ214は、循環装置200の各種処理に必要なプログラム及びデータを記憶する。ストレージ214は、例えば、ロボット制御データ格納部241、ポンプ制御データ格納部242及び流量制御データ格納部243を有する。
【0044】
ロボット制御データ格納部241は、ロボット部220が備えるアーム部221の動作を制御するための制御プログラム及びデータ等を記憶する。ロボット制御データ格納部241に記憶されるデータには、例えば、液滴吐出ヘッド213による作業の手順、作業時(液体吐出時)の移動方向、位置、姿勢、及び角度などのデータなどが記憶される。
【0045】
ポンプ制御データ格納部242は、予め設定されるポンプ制御用のデータを記憶する。ポンプ制御用のデータには、例えば、吐出ポンプ202が液体を送り出す際に液体に印加する圧力(正圧)の設定値や、吸引ポンプ203が液体を吸引する際に液体に印加する圧力(負圧)の設定値などが含まれる。液滴吐出ヘッド213からの液体の吐出を考慮する場合、吐出ポンプ202の正圧には、例えば、液滴吐出ヘッド213に液体が供給される際の圧力よりも1.2~3倍程度高い値が予め設定される。これに対して、吸引ポンプ203の負圧には、液滴吐出ヘッド213に液体が供給される際の圧力よりも1.2~3倍程度低い値が予め設定される。
【0046】
流量制御データ格納部243は、タンク201と液滴吐出ヘッド213との間を循環する液体の流量を制御するための流量制御データを記憶する。
図6は、実施形態に係る流量制御データの概要を示す図である。
【0047】
図6に示すように、流量制御データ格納部243に記憶される流量制御データは、制御対象の項目と、目標値の項目とを有し、これらの項目が互いに対応付けられている。制御対象の項目には、制御対象となる第1比例弁204又は第2比例弁205のいずれかが登録される。目標値には、液体の流量の制御する際の目標値が登録される。なお、第1比例弁204及び第2比例弁205のそれぞれに対応する目標値は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1比例弁204及び第2比例弁205のそれぞれに対して、一定時間における平均流量という目標値が設定されてもよい。また、例えば、第1比例弁204に対して、最大流量の50%という目標値が設定され、第2比例弁205の目標値に対して、一定時間における平均流量という目標値が設定されてもよい。
【0048】
プロセッサ215は、ストレージ214に記憶されるプログラム及びデータ等に基づいて、循環装置200における各種処理を実行する。プロセッサ215は、ストレージ214に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、循環装置200の各部を制御するための各種機能を実現する。
【0049】
(ロボットの制御)
プロセッサ215は、ロボット制御データ格納部241に記憶されて制御プログラム及びデータ等に基づいて、ロボット部220が備えるアーム部221の動作を制御する。プロセッサ215は、例えば、アーム部221の動作を制御する指令をアーム部110の駆動させるアクチュエータ等に出力することにより、アーム部221に所望の動作を実行させる。
【0050】
(ポンプの制御)
プロセッサ215は、第1圧力センサ208の測定結果及び第3圧力センサ210の測定結果に基づいて、吐出ポンプ202が液体を送り出す際に液体に印加する正圧を一定に保つように調整する。例えば、プロセッサ215は、第3圧力センサ210の測定結果から得られる液体の圧力よりも、第1圧力センサ208の測定結果の測定結果から得られる液体の圧力が1.2~3倍程度大きい圧力を保つように、吐出ポンプ202の正圧を調整する。
【0051】
また、プロセッサ215は、第2圧力センサ209及び第3圧力センサ210の測定結果に基づいて、吸引ポンプ203が液体を吸引する際に液体に印加する負圧を一定に保つように調整する。例えば、プロセッサ215は、第3圧力センサ210の測定結果から得られる液体の圧力よりも、第2圧力センサ209の測定結果の測定結果から得られる液体の圧力が1.2~3倍程度低い圧力を保つように、吸引ポンプ203の負圧を調整する。
【0052】
プロセッサ215は、吐出ポンプ202が液体に印加する正圧と、吸引ポンプ203が液体に印加する負圧との間の圧力差を一定に保つように調整することにより、タンク201と液滴吐出ヘッド213との間で液体を循環させる。
【0053】
(比例弁の制御)
プロセッサ215は、流量制御データ格納部243に記憶される流量制御データに基づいて、第1比例弁204及び第2比例弁205を通過する液体の流量を制御する。以下、
図7を用いて、プロセッサ215による流量の制御方法の一例を説明する。
図7は、実施形態に係る液体の流量と時間との関係の一例を模式的に示す図である。
【0054】
図7には、タンク201と液滴吐出ヘッド213との間を循環する液体の瞬間的な流量と時間との関係の一例を模式的に示している。
図7に示すように、タンク201と液滴吐出ヘッド213との間を循環する液体には、吐出ポンプ202による液体の供給と吸引ポンプ203による液体の回収による脈動が発生する。
【0055】
例えば、流量制御データにおいて、第3圧力センサ210に対し、流量の最大値:「Qmax」を、一定時間における流量の平均値:「Qave」に変更するという目標値MV1が設定されていると仮定する。この場合、プロセッサ15は、第3圧力センサ210の測定結果を参照しつつ、目標値MV1に近づけるように、第1比例弁204の流路断面積を狭めて、第1比例弁204を通過する液体の流量を調整する。このようにして、プロセッサ215は、第1比例弁204及び第2比例弁205を通過する液体の流量を制御できる。かかる制御により、プロセッサ215は、液滴吐出ヘッド213に供給される液体の圧力を下げ、脈動を抑制できる。
【0056】
第1比例弁204は、吐出ポンプ202と液滴吐出ヘッド213との間の第1の流路RT1に介挿され、例えば、ロボット部220に液滴吐出ヘッド213が組み付けられるアーム部221の先端側に設けられる。また、第2比例弁205は、吸引ポンプ203と液滴吐出ヘッド213との間の第2の流路RT2に介挿され、例えば、ロボット部220に液滴吐出ヘッド213が組み付けられるアーム部221の先端側に設けられる。また、プロセッサ215は、流量制御データに基づいて、第1比例弁204及び第2比例弁205の流量を制御する。このようにして、実施形態に係る循環装置200は、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203による脈動を液滴吐出ヘッド213に伝わりにくくするとともに、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203による脈動を抑制できる。
【0057】
また、本願の出願人は、上記循環装置200を用いた印字動作において、液体(インク)を連続吐出して印字を行うベタ印字後に液体が不吐出となって正しい印字が行われなかったり、液滴吐出ヘッド213から液体漏れが発生したりするという現象を発見した。
図8は、実施形態に係る印字中の液体の循環圧力の測定結果を示す図である。
図8に向かって左側の縦軸は供給圧を示し、
図8に向かって右側の縦軸は回収圧を示す。
図8の横軸は時間を示し、
図8に向かって右側に時間が流れている。
図8のグラフ領域において上側の線は供給圧の時系列変化を示し、
図8のグラフ領域における下側の線は回収圧の時系列変化を示している。
【0058】
図8に示すように、液体が吐出される前の液体の循環時における供給圧及び回収圧は、ほぼ一定の値で推移している。そして、ベタ印字に伴う液体の連続吐出の開始から終了までは、液体の供給圧及び回収圧がともに低下する。吐出終了後、液体の供給圧及び回収圧は徐々に上昇し始める。液体が不吐出となる現象等は、連続吐出の終了後、供給圧及び回収圧が完全に戻りきっていない状態で、再び液体の吐出が開始された時に発生した。
【0059】
本願の出願人は、液体が不吐出となる現象が引き起こされるメカニズムを以下のように推察した。吐出終了後も、イナータンスにより供給側から回収側に向けて液体が流れ続けるが、回収圧が低下している場合、第2比例弁205は閉じられるという挙動を取る。この結果、吐出されずに行き場を失った液体の水撃作用(ウォータハンマ)により、液体がノズルから溢れ、不吐出となるものと本願の出願人は推察した。そこで、本願の出願人は、循環装置200のプロセッサ215に、以下のような制御方法を実行させることにより、上述の課題を解決する。
【0060】
本願の出願人は、
図8に示すように、液体の吐出が終了した後、時間t
xが経過すれば、回収圧が定常時(例えば液体循環時)の設定値まで回復するという見識を得た。
図8に示す例では、吐出終了後、およそ0.5[msec(ミリ秒)]が経過すると、回収圧が液滴を吐出した当初の値である-10[kPa(キロパスカル)]程度まで回復している。そこで、プロセッサ215に、この見識に基づく制御を実行させる。具体的には、プロセッサ215は、液体の吐出が終了した後、液体の供給側にある第1比例弁204を締め、予め定められる時間の経過後に第2比例弁205を締める制御を実行する。これにより、予め定められる時間が経過するまでの間については、液体の回収側にある第2比例弁205が少なからず開放された状態となり、液体を回収側に流すことができる。この結果、水撃作用による液体の不吐出や液体漏れを防止できる。
【0061】
また、プロセッサ215は、液滴吐出ヘッド213からの液体の吐出が終了した時に、液体を回収する回収側の圧力を、定常時の設定値よりも低くなるように制御してもよい。これにより、液体の回収側から液体を引っ張る力を強くなり、回収側に効率よく液体を流すことができる。この結果、水撃作用による液体の不吐出や液体漏れを防止できる。
【0062】
また、プロセッサ215は、液滴吐出ヘッド213からの液体の吐出が終了した時に、液体を回収する回収側の圧力を制御する場合、液体の吐出による圧力降下の分だけ低くなるように制御してもよい。
図8に示す例では、回収側の圧力降下が、およそ2[kPa(キロパスカル)]であるので、プロセッサ215は、液体の吐出が終了した後、液体を回収する回収側の圧力を、液体の吐出によって生じる2[kPa(キロパスカル)]だけ低くなるように制御すればよい。これにより、第2比例弁205を締める制御と同様に、水撃作用による液体の不吐出や液体漏れを防止できる。
【0063】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記の実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成により具現化されるべきである。
【0064】
なお、タンク201は、基台10に設けなくてもよく、ロボット部220以外に設けてもよい。また、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203は、基台10に設けてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 基台
50 対象物
200 循環装置
201 タンク
202 吐出ポンプ
203 吸引ポンプ
204 第1比例弁
205 第2比例弁
206 ヒーター
207 入出力インターフェイス
208 第1圧力センサ
209 第2圧力センサ
210 第3圧力センサ
211 第4圧力センサ
212 流量計
213 液滴吐出ヘッド
214 ストレージ
215 プロセッサ
220 ロボット部
221 アーム部
241 ロボット制御データ格納部
242 ポンプ制御データ格納部
243 流量制御データ格納部