(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171644
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】人型玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/46 20060101AFI20231124BHJP
A63H 3/36 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A63H3/46 A
A63H3/36 C
A63H3/36 D
A63H3/46 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177258
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2020077229の分割
【原出願日】2018-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(72)【発明者】
【氏名】▲タカ▼橋 俊
(57)【要約】
【課題】人型玩具の可動部のフレキシビリティを向上させること。
【解決手段】人型玩具は、直立姿勢において上下に隣り合う位置関係にある上パーツ及び下パーツと、これらを連結する関節構造を備える。関節構造は、上方ジョイントと下方ジョイントとを有する。上方ジョイントは、上パーツ側に設けられていて、前後方向への揺動によって下パーツに対する上パーツの前後揺動を可能にする。下方ジョイントは、直立姿勢において上方ジョイントよりも当該人型玩具の前方で、且つ、下パーツ側に設けられていて、前後方向への揺動によって下パーツに対する上パーツの前後揺動を可能にする。人型玩具は、前後揺動により下パーツに対して上パーツを傾斜することで、前屈又は後屈できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立姿勢において上下に隣り合う位置関係にある上パーツ及び下パーツと、
前記下パーツに対して前記上パーツを前屈又は後屈させる前後揺動を可能に、前記上パーツと前記下パーツとを連結する関節構造と、
を備え、
前記関節構造は、
前記上パーツ側に設けられた上方ジョイントであって、当該上方ジョイントでの揺動運動によって前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な上方ジョイントと、
前記直立姿勢において前記人型玩具からみて前記上方ジョイントよりも前方で、且つ、前記下パーツ側に設けられた下方ジョイントであって、当該下方ジョイントでの揺動運動によって前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な下方ジョイントと、
を有する、
人型玩具。
【請求項2】
前記関節構造は、
前記上方ジョイントと前記下方ジョイントとを接続する中間部に設けられた中間ジョイントであって、当該中間ジョイントでの揺動運動によって前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な中間ジョイント、
を有する、
請求項1に記載の人型玩具。
【請求項3】
前記上方ジョイントと前記中間ジョイントとの間の距離は、前記中間ジョイントと前記下方ジョイントとの間の距離よりも短い、
請求項2に記載の人型玩具。
【請求項4】
前記関節構造は、
前記中間ジョイントと前記下方ジョイントとを連結する部材、
を有し、
前記下方ジョイントを基準とした前記中間ジョイントの後屈方向への揺動移動時に前記部材が接触することで、前記中間ジョイントの後屈方向への揺動移動を制限させる制限部、
を備えた請求項2又は3に記載の人型玩具。
【請求項5】
前記関節構造は、前記下方ジョイントに対して前記中間ジョイントを前屈方向へ揺動させ、且つ、前記中間ジョイントに対して前記上方ジョイントを後屈方向へ揺動させることが可能な構造を有する、
請求項2~4の何れか一項に記載の人型玩具。
【請求項6】
前記上パーツは、頭部のパーツであり、
前記下パーツは、体幹部の上方のパーツである、
請求項2~5の何れか一項に記載の人型玩具。
【請求項7】
前記関節構造は、
前記上方ジョイントと前記下方ジョイントとを連結する部材、
を有し、
前記下方ジョイントを基準とした前記上方ジョイントの後屈方向への揺動移動時に前記部材が接触することで、前記上方ジョイントの後屈方向への揺動移動を制限させる制限部、
を備えた請求項1に記載の人型玩具。
【請求項8】
前記制限部は、前記直立姿勢において前記部材が接触する位置に設けられ、
前記関節構造は、前記直立姿勢から、前記上方ジョイントでの揺動運動によって、前記下パーツに対する前記上パーツの後屈方向への揺動が可能に構成された、
請求項7に記載の人型玩具。
【請求項9】
前記上パーツは、体幹部の上方のパーツであり、
前記下パーツは、体幹部の下方のパーツである、
請求項7又は8に記載の人型玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人型玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
可動部を備えた玩具が知られている。例えば、特許文献1には、遠隔操作により玩具の可動部を動かして楽しむ玩具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動部を備えた玩具のうち、特に男の子に人気なのが、マンガや、アニメ、特撮映画、ゲーム、小説、など(以下、総括して「原作」と呼ぶ。)に登場する変身ヒーローや、兵士、大型人型ロボット、などのキャラクタを再現した人型玩具である。
【0005】
ユーザは、原作に登場するキャラクタの人型玩具を購入すると、是非とも原作で見たポーズと同じポーズをさせてみたいと思う。しかし、そもそも原作に登場するキャラクタは空想の存在であり、それらを人型玩具として立体的に造形した場合に人間のような自然なポーズを実現できるかについては、原作では考慮されていない場合が多い。そのため、人型玩具を商品化するにあたり、人型玩具に原作通りのポーズを取らせるには可動部の可動範囲が不十分となり、ポーズの再現が不完全となるケースがあった。ユーザの立場からすると、可動部のフレキシビリティが不十分であるため、原作のポーズに近づけようとしても無理があり、残念な感覚を抱く場合があった。
【0006】
本発明は、人型玩具の可動部のフレキシビリティを向上させることを課題として考案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、直立姿勢において上下に隣り合う位置関係にある上パーツ及び下パーツと、前記下パーツに対して前記上パーツを前屈又は後屈させる前後揺動を可能に、前記上パーツと前記下パーツとを連結する関節構造と、を備え、前記関節構造は、前記上パーツ側に設けられた上方ジョイントであって、当該上方ジョイントでの揺動運動によって前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な上方ジョイントと、前記直立姿勢において前記人型玩具からみて前記上方ジョイントよりも前方で、且つ、前記下パーツ側に設けられた下方ジョイントであって、当該下方ジョイントでの揺動運動によって前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な下方ジョイントと、を有する、人型玩具である。
【0008】
また、前記関節構造は、前記上方ジョイントと前記下方ジョイントとを接続する中間部に設けられた中間ジョイントであって、当該中間ジョイントでの揺動運動によって前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な中間ジョイント、を有する、としてもよい。
【0009】
また、前記上方ジョイントと前記中間ジョイントとの間の距離は、前記中間ジョイントと前記下方ジョイントとの間の距離よりも短い、としてもよい。
【0010】
また、前記関節構造は、前記中間ジョイントと前記下方ジョイントとを連結する部材、を有し、前記下方ジョイントを基準とした前記中間ジョイントの後屈方向への揺動移動時に前記部材が接触することで、前記中間ジョイントの後屈方向への揺動移動を制限させる制限部、を備えるとしてもよい。
【0011】
また、前記関節構造は、前記下方ジョイントに対して前記中間ジョイントを前屈方向へ揺動させ、且つ、前記中間ジョイントに対して前記上方ジョイントを後屈方向へ揺動させることが可能な構造を有する、としてもよい。
【0012】
また、前記上パーツは、頭部のパーツであり、前記下パーツは、体幹部の上方のパーツである、としてもよい。
【0013】
また、前記関節構造は、前記上方ジョイントと前記下方ジョイントとを連結する部材、を有し、前記下方ジョイントを基準とした前記上方ジョイントの後屈方向への揺動移動時に前記部材が接触することで、前記上方ジョイントの後屈方向への揺動移動を制限させる制限部、を備えるとしてもよい。
【0014】
また、前記制限部は、前記直立姿勢において前記部材が接触する位置に設けられ、前記関節構造は、前記直立姿勢から、前記上方ジョイントでの揺動運動によって、前記下パーツに対する前記上パーツの後屈方向への揺動が可能に構成されることとしてもよい。
【0015】
また、前記上パーツは、体幹部の上方のパーツであり、前記下パーツは、体幹部の下方のパーツである、としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、人型玩具の可動部のフレキシビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】人型玩具の直立姿勢における前面外観図(正面外観図)。
【
図2】人型玩具が有する関節構造の位置関係を説明するための主たる構造部の配置図。
【
図4】第1関節構造の各パーツの形状を単純化して表し、人型玩具にとっての左斜め上から見た斜視図。
【
図6】第1関節構造を直立状態から前屈状態へ遷移させる際の動作について説明するための図。
【
図7】第1関節構造を直立状態から後屈状態へ遷移させる際の動作について説明するための図。
【
図9】第2関節構造の各パーツの形状を単純化して表し、人型玩具にとっての左斜め上から見た斜視図。
【
図11】第2関節構造を直立状態から前屈状態へ遷移させる際の動作について説明するための図。
【
図12】第2関節構造を直立状態から後屈状態へ遷移させる際の動作について説明するための図。
【
図13】人型玩具の体幹部を中心とした直立姿勢における縦断面図。
【
図14】人型玩具の体幹部を中心とした、第1関節構造と第2関節構造を前屈させた状態における縦断面図。
【
図15】人型玩具の体幹部を中心とした、第1関節構造と第2関節構造を後屈させた状態における縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明を適用した実施形態の一例である人型玩具2の直立姿勢における前面外観図(正面外観図)である。なお、各図に示した矢印による方向表記は、人型玩具2にとっての上下、前後、左右の方向を示している。以降の説明における方向はこれに基づくものとする。
人型玩具2は、マンガや、アニメ、特撮映画、ゲーム、小説などを原作とするキャラクタを立体造形物として再現した玩具である。本実施形態の人型玩具2は、人型ロボットを模したデザインを有し、部位別のパーツを組み付けて作られる玩具である。
【0019】
図2は、人型玩具2が有する関節構造3(3a,3b,…)の位置関係を説明するための主たる構造部の配置図である。人型玩具2は、直立姿勢において上下に隣り合う位置関係にある上パーツ及び下パーツを、下パーツに対して上パーツを前屈又は後屈させる前後揺動を可能に連結する関節構造として、第1関節構造3aと第2関節構造3bとを有する。
【0020】
第1関節構造3aは、上パーツを頭部4とし、下パーツを体幹部6の上方のパーツである上体幹パーツ62として、両者を連結する。上体幹パーツ62は、本実施形態の人型玩具2にとっての胸部あるいは胴体部に相当する。
第2関節構造3bは、上パーツを体幹部6の上方のパーツである上体幹パーツ62とし、下パーツを体幹部6の下方のパーツである下体幹パーツ64として、両者を連結する。下体幹パーツ64は、本実施形態の人型玩具2にとっての腰部に相当する。
【0021】
先ず、第1関節構造3aについて説明する。
図3は、第1関節構造3aを簡略化して側面視した模式図である。
図4は、第1関節構造3aの各パーツの形状を単純化して表し、人型玩具2にとっての左斜め上から見た直立姿勢における斜視図である。
図5は、
図4の分解図である。
【0022】
図3に示すように、第1関節構造3aは、上方ジョイント11と、下方ジョイント12と、中間ジョイント13と、上方ジョイント11と中間ジョイント13と連結する上方連結部材14と、中間ジョイント13と下方ジョイント12とを連結する下方連結部材15と、を有する。
【0023】
上方ジョイント11は、第1関節構造3aにとっての上パーツ側に設けられたジョイントであって、当該上方ジョイントでの揺動運動によって下パーツに対する上パーツの前後揺動を可能にする。具体的には、上方ジョイント11は、ボールジョイントであって、上方連結部材14の上端部の球状部11qと、頭部4の下面に設けられたソケット11sと、により実現される(
図4、
図5参照)。
【0024】
下方ジョイント12は、直立姿勢において人型玩具2からみて上方ジョイント11よりも前方で、且つ、第1関節構造3aにとっての下パーツ側に設けられたジョイントであって、当該下方ジョイントでの揺動運動によって下パーツに対する上パーツの前後揺動を可能にする。具体的には、下方ジョイント12は、上体幹パーツ62の上面の凹部62h内に固定された軸受部12uに、下方連結部材15に設けられた左右方向の軸部12jを嵌着して実現される(
図4、
図5参照)。
【0025】
中間ジョイント13は、上方ジョイント11と下方ジョイント12とを接続する中間部に設けられたジョイントであって、当該ジョイントでの揺動運動によって下パーツに対する上パーツの前後揺動を可能にする。具体的には、中間ジョイント13は、下方連結部材15の上後部に設けられた左右方向の軸部13jを、上方連結部材14の下端に設けられた軸受部13uに嵌着して実現される(
図4、
図5参照)。
【0026】
直立姿勢において、上方ジョイント11の直下に中間ジョイント13が位置するように設定されており、上方連結部材14は側面視すると直状である。
【0027】
下方連結部材15は、中央部材15cの前端部に、下方へ向けた下方延設部15dを有し、当該延設部に下方ジョイント12の軸部12jを有する(
図5参照)。また、下方連結部材15は、中央部材15cの後端部に、上方へ向けた上方延設部15uを有し、上方延設部15uに中間ジョイント13の軸部13jを有する。そして、直立姿勢において、中央部材15cの後方側下面は、上体幹パーツ62の後方上面に接触するように設定されている(
図3参照)。すなわち、上体幹パーツ62の後方上面は、後方(人型玩具2にとっての後屈方向)への下方連結部材15の揺動、つまりは中間ジョイント13の揺動移動を制限する制限部62sとして機能する。
【0028】
なお、上方連結部材14の上下長は、人型玩具2にとっての首の長さに相当し、下方連結部材15の前後長は、上体幹パーツ62の上部前端から首の下端部までの長さに相当する。本実施形態では、上方連結部材14の上下長の方が下方連結部材15の前後長よりも短く設定されている。ジョイント間の距離に置き換えて言うと、上方ジョイント11と中間ジョイント13との間の距離は、中間ジョイント13と下方ジョイント12との間の距離よりも短くなるように設定されている。
【0029】
また、上体幹パーツ62の上面で、下方連結部材15の左右側方に該当する場所には、右襟部67Rと左襟部67Lが突設され(
図3では図示略)、上体幹パーツ62の上面で、下方連結部材15の後方側に該当する場所には、背部62bが上方へ凸状に成形されている。その為、下方連結部材15の前後左右は壁部により囲繞されている。人型玩具2のデザインとしては、襟や背嚢により首周りが覆われた格好となる。
【0030】
図6は、第1関節構造3aを直立状態から前屈状態へ遷移させる際の動作について説明するための図である。まず、基準となる人型玩具2の直立姿勢では、第1関節構造3aは直立状態にあり、上方連結部材14は上下を向いて、下方連結部材15の後方側の底面は上体幹パーツ62の後方上面である制限部62sに接触している(
図3参照)。
【0031】
図6(1)に示すように、人型玩具2を直立姿勢から、頷く程度に僅かに下方に頭部4を傾かせる場合、第1関節構造3aを、上方ジョイント11で、前方へ揺動運動をさせるように変位させればよい。これにより、人型玩具2は顎を引いた状態となる。
【0032】
図6(2)に示すように、人型玩具2を
図6(1)の姿勢よりも深く前方に頭部4を傾かせる場合、第1関節構造3aを、中間ジョイント13で前方への揺動運動をさせるように変位させればよい。このとき、上方ジョイント11での前方への揺動運動をさらに加えることもできる。これにより、人型玩具2は、首の付け根から大きく前に傾けた状態となる。
【0033】
図6(3)に示すように、人型玩具2を直立姿勢から、頷きよりも深く前方をのぞき込むように頭部4を傾かせる場合、第1関節構造3aは、下方ジョイント12で下方連結部材15を前方(人型玩具2にとっての前屈方向)へ揺動させればよい。このとき、上方ジョイント11と中間ジョイント13と上方連結部材14とは、纏めて前方へ揺動移動される。勿論、上方ジョイント11での前方への揺動運動や、中間ジョイント13での前方への揺動運動も適宜加えることができる。これにより、人型玩具2の首の付け根が持ち上がって前方へ移動した状態となり、頷きよりも深く前方且つ下方を見るような「のぞき込むような状態」を人型玩具2に取らせることが可能となる。
【0034】
こうした第1関節構造3aの動作により、人型玩具2の直立姿勢を原作にできるだけ合わせるように再現しつつも、「顎を引いた状態」から「のぞき込むような状態」まで首を前屈させる姿勢を取らせることが可能となる。人型玩具2におけるこうしたポーズの再現性は、従来に無いレベルであり、人型玩具2の可動部のフレキシビリティを向上させ、大いにユーザを魅了するであろう。
【0035】
例えば、人型玩具2が、狙撃用ライフルを装備したロボット兵器を再現したデザインである場合、人型玩具2に、狙撃のための膝撃ち姿勢を取らせることができる。具体的には、第1関節構造3aで頭部4を「のぞき込むような状態」にまで変化させ、上方ジョイント11で頭部4を左右に振ると、人型玩具2に、膝撃ち姿勢で構える狙撃用ライフルのスコープを覗かせるような姿勢を取らせることができる。この膝撃ち姿勢は、狙撃用ライフルを装備したロボット兵器にとっての「決めポーズ」の1つであり、従来の関節構造では実現できなかった。
【0036】
しかし、第1関節構造3aによれば、人型玩具2にとっての首の付け根を持ち上げて頭部4を「のぞき込むような状態」にまでまで変化させることができるので、頭部4の顎部分が、右襟部67R及び左67Lを乗り越えるかのような位置まで到達し得る。よって、十分な頭部4の傾きが確保され、従来では再現不可能なポーズを本実施形態では再現可能になる。
【0037】
図7は、第1関節構造3aを直立状態から後屈状態へ遷移させる際の動作について説明するための図である。
図7(1)に示すように、人型玩具2を直立姿勢から、僅かに後方に頭部4を傾かせる場合、第1関節構造3aは、上方ジョイント11で、後方への揺動運動をさせるように変位させればよい。これにより、人型玩具2は顎を上げた状態となる。
【0038】
図7(2)に示すように、人型玩具2を
図7(1)の姿勢よりも頭部4を更に傾かせる場合、第1関節構造3aを、中間ジョイント13で後方への揺動運動をさせるように変位させればよい。このとき、下方連結部材15の中央部材15cの後方側下面が、上体幹パーツ62の後方上面(制限部62s)により揺動が規制されているので、中間ジョイント13は直立姿勢における位置から揺動移動できない。これによって、人型玩具2は、首を付け根から後方へ傾けて斜め上方前方を見上げるような斜めに見上げた状態となる。
【0039】
図7(3)に示すように、人型玩具2を
図7(2)の姿勢よりも更に深く後方一杯まで頭部4を傾かせる場合、第1関節構造3aは、1)下方ジョイント12で下方連結部材15を前方(人型玩具2にとっての前屈方向)へ揺動させて、中間ジョイント13を直立姿勢の位置よりも持ち上げ、2)持ち上がった中間ジョイント13の回動で上方連結部材14を後方へ揺動させ、3)上方ジョイント11の回動で頭部4を後方へ揺動させる。これにより、人型玩具2は、頭部4が斜めに見上げ状態よりも深く後方へ傾斜した直上を見上げる状態となる。各部の寸法関係によっては、真上よりも更に頭部4を反らせて、後方斜め上まで見上げる姿勢とすることも可能となる。
【0040】
こうした第1関節構造3aの動作により、原作のキャラクタデザインのままに人型玩具2の直立姿勢を再現しつつも、「顎を上げた状態」から「直上を見上げる状態」まで首を後屈させる姿勢を取らせることが可能となる。人型玩具2におけるこうしたポーズの再現性は従来に無いレベルであり、先に述べた前屈と合わせて人型玩具2の可動部のフレキシビリティを向上させ、更にユーザを魅了するであろう。
【0041】
例えば、人型玩具2が、狙撃用ライフルを装備したロボット兵器を再現したデザインである場合、人型玩具2に、狙撃のための伏せ撃ち姿勢を取らせることが可能になる。伏せ撃ち姿勢もまた、この種のロボット兵器にとっての「決めポーズ」の1つである。
【0042】
「伏せ撃ち姿勢」を取らせるには、人型玩具2は、ライフルを構えてうつ伏せになり、ライフルのスコープを覗くために頭部4を反らせることになる。こうした伏せ撃ち姿勢は、人間であればなんのことはない姿勢であるが、従来の人型玩具では不可能な姿勢であった。しかし、第1関節構造3aによれば、首の付け根を直立姿勢の位置よりも斜め上へ持ち上げてから、頭部4を首の付け根から一杯に後方へ傾けることができるので、頭部4の後頭部が背部62bと干渉することがなくなる。これにより、従来では不可能であった「直上を見上げる状態」とすることが可能となり、人型玩具2は、ライフルのスコープを覗きながらの伏せ撃ち姿勢が可能となる。
【0043】
次に、第2関節構造3bについて説明する。
図8は、第2関節構造3bを簡略化して側面視した模式図である。
図9は、第2関節構造3bの各パーツの形状を単純化して表し、人型玩具2にとっての左斜め上から見た直立姿勢における斜視図である。
図10は、
図9の分解図である。
なお、
図9及び
図10において、上体幹パーツ62は、その第2関節構造3bとの接続部のみを図示している。実際には、図中の上体幹パーツ62にハッチングされた面から上方へ、図示が省略されている上体幹パーツ62が存在する。
【0044】
図8に示すように、第2関節構造3bは、上方ジョイント21と、下方ジョイント22と、ロールジョイント23と、ヨージョイント24と、ロールジョイント23と上方ジョイント21とを連結する上方連結部材25と、上方ジョイント21と下方ジョイント22とを連結する中間連結部材26と、下方ジョイント22とヨージョイント24とを連結する下方連結部材27と、を有する。
【0045】
上方ジョイント21は、第2関節構造3bにとっての上パーツ側に設けられたジョイントであって、当該上方ジョイントでの揺動運動によって下パーツに対する上パーツの前後揺動を可能にする。具体的には、上方ジョイント21は、上方連結部材25に設けられた左右方向の軸部21jと、中間連結部材26の後方から上方に延設された延設部26eの上端に設けられた軸受部21uと、により実現される(
図9、
図10参照)。
【0046】
下方ジョイント22は、直立姿勢において人型玩具2からみて上方ジョイント21よりも前方で、且つ、第2関節構造3bにとっての下パーツ側に設けられたジョイントであって、下方ジョイント22での揺動運動によって下パーツに対する上パーツの前後揺動を可能にする。具体的には、下方ジョイント22は、下方連結部材27に設けられた左右方向の軸部22jと、中間連結部材26の前端に設けられた軸受部22uと、により実現される(
図9、
図10参照)。
【0047】
ロールジョイント23は、第2関節構造3bにとっての上パーツ側に設けられたジョイントであって、当該ジョイントでの揺動運動によって下パーツに対する上パーツのローリング、すなわち上下揺動を可能にする。直立姿勢において、ロールジョイント23は前後方向を向いている。具体的には、ロールジョイント23は、上体幹パーツ62に設けられた前後方向の軸部23jと、上方連結部材25に設けられた軸受23uと、により実現される(
図9、
図10参照)。
【0048】
ヨージョイント24は、第2関節構造3bにとっての下パーツ側に設けられたジョイントであって、当該ジョイントでの揺動運動によって下パーツに対する上パーツのヨーイングすなわち左右揺動を可能にする。直立姿勢において、ヨージョイント24は、上下方向を向いている。具体的には、ヨージョイント24は、下体幹パーツ64の上端より突設された上下方向の軸部24jと、下方連結部材27に設けられた軸受部24uと、により実現される(
図9、
図10参照)。
【0049】
なお、中間連結部材26は、直立姿勢において、その後方底部が下体幹パーツ64の制限部64sの上面に接触する位置に設けられている。つまり、中間連結部材26は人型玩具2の直立姿勢における位置よりも下方への揺動は制限されていることになる。
【0050】
図11は、第2関節構造3bを直立状態から前屈状態へ遷移させる際の動作について説明するための図である。
人型玩具2の直立姿勢から、前方に上体幹パーツ62を傾かせる場合、第2関節構造3bを、下方ジョイント22で前方へ揺動運動をさせるように変位させ、中間連結部材26から上の構成要素の全てを前方へ揺動させる。すなわち、直立姿勢から、上方ジョイント21での揺動運動によって、下パーツに対する上パーツの前屈方向への揺動が実現される。
【0051】
これにより、人型玩具2は、横から見ると、上体幹パーツ62と下体幹パーツ64との対向部の前方を支点とするように前屈する。こうした、あたかも人が腹部をひしゃげて縮み、背中側が延びるかのようにして前屈するポーズを本実施形態では実現可能となる。
【0052】
図12は、第2関節構造3bを直立状態から後屈状態へ遷移させる際の動作について説明するための図である。人型玩具2の直立姿勢から、後方に上体幹パーツ62を傾かせる場合、中間連結部材26が人型玩具2の直立姿勢における位置よりも下方へ揺動することを制限されているので、上方ジョイント21で後方への揺動運動を行い、上方連結部材25から上の構成要素の全てを後方へ揺動させる。
【0053】
これにより、人型玩具2は、横から見ると、上体幹パーツ62と下体幹パーツ64との対向部の後方を支点とするように後屈する。こうした、あたかも人が腹部を伸ばすようにして背を反らせるポーズを本実施形態では実現可能となる。
【0054】
図11および
図12を参照して説明した第2関節構造3bの構造的作用効果として、第2関節構造3bを前屈状態あるいは後屈状態にしようとすると、自動的に、上方ジョイント21と下方ジョイント22のうち相対的に屈曲方向寄りのジョイントで第2関節構造3bが揺動運動することになる。従って、ユーザは、人型玩具2に前屈や後屈をさせようとした場合、上体幹パーツ62と下体幹パーツ64とをそれぞれ手に持って所望する方向へ折るように操作するだけでよい。すなわち、「前屈させたいから下方ジョイント22で曲げよう」とか、「後屈させたいから上方ジョイント21で曲げよう」という意識をユーザに働かせることのない、人型玩具2の可動部に関する高いフレキシビリティが得られる。
【0055】
図13は、人型玩具2の体幹部6を中心とした直立姿勢における縦断面図である。
図14は、人型玩具2の体幹部6を中心とした、第1関節構造3aと第2関節構造3bを前屈させた状態における縦断面図である。
図15は、人型玩具2の体幹部6を中心とした、第1関節構造3aと第2関節構造3bを後屈させた状態における縦断面図である。
これらの図を見比べると、人型玩具2が人型らしい自然な前屈姿勢や後屈姿勢が可能になることがわかる。
【0056】
なお、本発明を適用可能な実施形態は上記の例に限るものでは無く、発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜構成要素の追加・省略・変更が可能である。
【0057】
例えば、人型玩具2のデザインは、ロボット兵器に限らず、変身ヒーローや、人間の兵士、想像上の人型生物(例えば、竜の頭とウロコの皮膚を持つ竜人、ワーウルフ、など)、一部に人型を有するキャラクタ等であれば適宜選択可能である。
【0058】
また、第2関節構造3bでは、上方ジョイント21とロールジョイント23とを、1つのボールジョイントに置き換えることができる。同様に、下方ジョイント22とヨージョイント24を、1つのボールジョイントに置き換えることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、第1関節構造3aを首の関節構造として用いた例を示したが、腕や脚、尻尾など体幹から突き出た部位との関節にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
2…人型玩具
3…関節構造
3a…第1関節構造
3b…第2関節構造
4…頭部
6…体幹部
11…上方ジョイント
12…下方ジョイント
13…中間ジョイント
14…上方連結部材
15…下方連結部材
21…上方ジョイント
22…下方ジョイント
23…ロールジョイント
24…ヨージョイント
25…上方連結部材
26…中間連結部材
27…下方連結部材
62…上体幹パーツ
62b…背部
62s…制限部
64…下体幹パーツ
64s…制限部
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立姿勢において上下に隣り合う位置関係にある上パーツ及び下パーツと、
前記下パーツに対して前記上パーツを前屈又は後屈可能な前後揺動を可能に、前記上パーツと前記下パーツとを連結する関節構造と、
を備え、
前記関節構造は、
前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な上方ジョイントと、
前記直立姿勢において前記人型玩具からみて前記上方ジョイントよりも前方に設けられ、前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な下方ジョイントと、
前記上方ジョイントと前記上パーツとの間に設けられた第1ジョイントと、
前記下方ジョイントと前記下パーツとの間に設けられた第2ジョイントと、
を有する、
人型玩具。
【請求項2】
前記上方ジョイントと前記下方ジョイントとを連結する連結部材を有し、
前記連結部材は、前記直立姿勢において前記下パーツの上面と接する
請求項1に記載の人型玩具。
【請求項3】
前記関節構造は、
前記上方ジョイントと前記下方ジョイントとを連結する連結部材を有し、
前記下方ジョイントを基準とした前記上方ジョイントの後屈方向への揺動移動時に前記連結部材が接触することで、前記上方ジョイントの後屈方向への揺動移動を制限させる制限部、
を備えた請求項1に記載の人型玩具。
【請求項4】
前記制限部は、前記直立姿勢において前記連結部材が接触する位置に設けられ、
前記関節構造は、前記直立姿勢から、前記上方ジョイントでの揺動運動によって、前記下パーツに対する前記上パーツの後屈方向への揺動が可能に構成された、
請求項3に記載の人型玩具。
【請求項5】
前記上パーツは、頭部のパーツであり、
前記下パーツは、体幹部の上方のパーツである、
請求項1~4の何れか一項に記載の人型玩具。
【請求項6】
前記上パーツは、体幹部の上方のパーツであり、
前記下パーツは、体幹部の下方のパーツである、
請求項1~4の何れか一項に記載の人型玩具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の態様は、直立姿勢において上下に隣り合う位置関係にある上パーツ及び下パーツと、前記下パーツに対して前記上パーツを前屈又は後屈させる前後揺動を可能に、前記上パーツと前記下パーツとを連結する関節構造と、を備え、前記関節構造は、前記上パーツ側に設けられた上方ジョイントであって、当該上方ジョイントでの揺動運動によって前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な上方ジョイントと、前記直立姿勢において前記人型玩具からみて前記上方ジョイントよりも前方で、且つ、前記下パーツ側に設けられた下方ジョイントであって、当該下方ジョイントでの揺動運動によって前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な下方ジョイントと、を有する、人型玩具である。また本発明の態様は、直立姿勢において上下に隣り合う位置関係にある上パーツ及び下パーツと、前記下パーツに対して前記上パーツを前屈又は後屈可能な前後揺動を可能に、前記上パーツと前記下パーツとを連結する関節構造と、 を備え、前記関節構造は、前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な上方ジョイントと、前記直立姿勢において前記人型玩具からみて前記上方ジョイントよりも前方に設けられ、前記下パーツに対する前記上パーツの前記前後揺動が可能な下方ジョイントと、前記上方ジョイントと前記上パーツとの間に設けられた第1ジョイントと、前記下方ジョイントと前記下パーツとの間に設けられた第2ジョイントと、を有する。