(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171693
(43)【公開日】2023-12-04
(54)【発明の名称】提案装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20231127BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078371
(22)【出願日】2022-05-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】593214073
【氏名又は名称】オリエンタル技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】林 正剛
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設に関して、設置される設備の種別や設置される位置を含む情報を適切に生成すること。
【解決手段】使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設である対象施設について、間取りを含む条件を示す情報である初期条件情報を取得し、予め得られている学習済みモデルと前記初期条件情報とに基づいて、前記対象施設に設置される設備とその位置とを含む提案候補情報を生成する提案候補情報生成部と、前記提案候補情報を提案情報として他の装置に送信する提案制御部と、前記提案候補情報が、前記設備の設置において予め定められている制約条件を満たすか否か判定する制約制御部と、を備え、前記提案制御部は、前記制約制御部において前記制約条件を全て満たすと判定された提案候補情報を提案情報として前記他の装置に送信する、提案装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設である対象施設について、間取りを含む条件を示す情報である初期条件情報を取得し、予め得られている学習済みモデルと前記初期条件情報とに基づいて、前記対象施設に設置される設備とその位置とを含む提案候補情報を生成する提案候補情報生成部と、
前記提案候補情報を提案情報として他の装置に送信する提案制御部と、
前記提案候補情報が、前記設備の設置において予め定められている制約条件を満たすか否か判定する制約制御部と、を備え、
前記提案制御部は、前記制約制御部において前記制約条件を全て満たすと判定された提案候補情報を提案情報として前記他の装置に送信する、
提案装置。
【請求項2】
前記提案候補情報生成部は、前記制約制御部において前記制約条件の一部が満たされないと判定された場合に、前記初期条件情報に対して新たな値を付与して前記学習済みモデルに基づいて新たに提案候補情報を生成する、
請求項1に記載の提案装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の施設において設置される設備の種類や設置場所について判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等における間取りを希望者に対して提案する技術が提案されている。例えば特許文献1では、ユーザーが暮らしに求める条件等に基づいて、複数の住宅の間取りから回答者(ユーザー)の要求を満たす度合いの高い間取りを提案する技術が開示されている。ユーザーは、提案を受けた間取りの中から希望する間取りを決定し、その後にその間取りに対して好みの家具などを配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
世の中には住宅以外にも様々な種別の施設がある。その中の一つとして、例えば使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設がある。このような施設では、通常の住宅とは異なり、設置されるべき設備や設置場所などに様々な制約がある。そのため、上述したような技術で単にユーザーの要求を満たすような間取りを提案するだけでは十分ではなく、その間取りに対してどのような設備をどのように配置するのかについても提案できることが要求されている。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設に関して、設置される設備の種別や設置される位置を含む情報を適切に生成することを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設である対象施設について、間取りを含む条件を示す情報である初期条件情報を取得し、予め得られている学習済みモデルと前記初期条件情報とに基づいて、前記対象施設に設置される設備とその位置とを含む提案候補情報を生成する提案候補情報生成部と、前記提案候補情報を提案情報として他の装置に送信する提案制御部と、前記提案候補情報が、前記設備の設置において予め定められている制約条件を満たすか否か判定する制約制御部と、を備え、前記提案制御部は、前記制約制御部において前記制約条件を全て満たすと判定された提案候補情報を提案情報として前記他の装置に送信する、提案装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記の提案装置であって、前記提案候補情報生成部は、前記制約制御部において前記制約条件の一部が満たされないと判定された場合に、前記初期条件情報に対して新たな値を付与して前記学習済みモデルに基づいて新たに提案候補情報を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設に関して、設置される設備の種別や設置される位置を含む情報を適切に生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の提案システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】ユーザー端末10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
【
図3】提案装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
【
図4】初期条件情報の一部である対象施設の間取りを示す情報の具体例である。
【
図5】提案候補情報生成部233による1回目の処理によって生成された提案候補情報の具体例を示す図である。
【
図6】提案候補情報生成部233による1回目の処理によって生成された他の提案候補情報の具体例を示す図である。
【
図7】繰り返し処理の実行に際して提案候補情報生成部233によって初期条件情報に追加された値の第一具体例を示す図である。
【
図8】繰り返し処理の実行に際して提案候補情報生成部233によって初期条件情報に追加された値の第二具体例を示す図である。
【
図9】提案候補情報生成部233による2回目の処理によって生成された提案候補情報の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の提案システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。まず、提案システム100の概略について説明する。提案システム100は、提案対象施設において設置される設備の種別と各設備の設置位置とを含む情報(以下「提案情報」という。)を提案するシステムである。施設には、建物、部屋や区画、部屋の一部としてのエリア(領域)が含まれる。設備には、例えば薬品等の物質を取り扱う際に使用されるドラフトチャンバーのような機器や、壁や床などの部材が含まれる。壁や床などの部材に関しては、その材料や色等について提案がなされてもよい。提案対象施設は、使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設である。
【0011】
ユーザー端末10には、提案情報を生成するために必要となる初期条件情報が入力される。初期条件情報とは、提案対象施設に関して予め得られている情報である。初期条件情報は、例えば、間取りを示す情報であってもよいし、提案対象施設において取り扱われる予定の物質を示す情報を示す情報であってもよい。ユーザー端末10は、入力された初期条件情報を、ネットワーク90を介して提案装置20に送信する。提案装置20は、受信された初期条件情報に基づいて、提案情報を生成し、ユーザー端末10に送信する。ユーザー端末10に送信された提案情報は、提案情報を所望する者に対して提供される。
【0012】
次に、提案システム100の詳細について説明する。提案システム100は、ユーザー端末10と提案装置20とを含む。ユーザー端末10と提案装置20とは、ネットワーク90を介して通信可能に接続される。ネットワーク90は、無線通信を用いたネットワークであってもよいし、有線通信を用いたネットワークであってもよい。ネットワーク90は、複数のネットワークが組み合わされて構成されてもよい。
【0013】
図2は、ユーザー端末10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。ユーザー端末10は、例えばスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューター、専用機器などの情報機器を用いて構成される。ユーザー端末10は、通信部11、操作部12、表示部13、記憶部14及び制御部15を備える。ユーザー端末10は、提案情報を所望する者によって直接操作されてもよいし、提案情報を所望する者とコミュニケーションを取る者(例えば、提案情報を所望する者に対して営業を行っている者など)によって操作されてもよい。
【0014】
通信部11は、通信機器である。通信部11は、例えばネットワークインターフェースとして構成されてもよい。通信部11は、制御部15の制御に応じて、ネットワーク90を介して他の装置とデータ通信する。通信部11は、無線通信を行う装置であってもよいし、有線通信を行う装置であってもよい。
【0015】
操作部12は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。操作部12は、ユーザーの指示をユーザー端末10に入力する際にユーザーによって操作される。操作部12は、入力装置をユーザー端末10に接続するためのインターフェースであっても良い。この場合、操作部12は、入力装置においてユーザーの入力に応じ生成された入力信号をユーザー端末10に入力する。操作部12は、マイク及び音声認識装置を用いて構成されてもよい。この場合、操作部12はユーザーによって発話された文言を音声認識し、認識結果の文字列情報をユーザー端末10に入力する。操作部12は、ユーザーの指示をユーザー端末10に入力可能な構成であればどのように構成されてもよい。
【0016】
表示部13は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部13は、画像表示装置をユーザー端末10に接続するためのインターフェースであっても良い。この場合、表示部13は、画像データを表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0017】
記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部14は、制御部15によって使用されるデータを記憶する。記憶部14は、制御部15が処理を行う際に必要となるデータを記憶する。
【0018】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部15は、プロセッサーがプログラムを実行することによって機能する。なお、制御部15の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0019】
図3は、提案装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。提案装置20は、例えばパーソナルコンピューターやサーバー装置などの情報処理装置を用いて構成される。提案装置20は、通信部21、記憶部22及び制御部23を備える。
【0020】
通信部21は、通信機器である。通信部21は、例えばネットワークインターフェースとして構成されてもよい。通信部21は、制御部23の制御に応じて、ネットワーク90を介して他の装置とデータ通信する。通信部21は、無線通信を行う装置であってもよいし、有線通信を行う装置であってもよい。
【0021】
記憶部22は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部22は、制御部23によって使用されるデータを記憶する。記憶部22は、例えば学習済みモデル情報記憶部221、初期条件情報記憶部222、制約条件情報記憶部223及び提案情報記憶部224として機能してもよい。
【0022】
学習済みモデル情報記憶部221は、制御部23が実行する学習処理によって生成された学習済みモデルの情報を記憶する。
【0023】
初期条件情報記憶部222は、提案対象施設に関する初期条件情報を記憶する。初期条件情報記憶部222は、例えば制御部23によって取得された初期条件情報を記憶してもよい。
【0024】
制約条件情報記憶部223は、制約条件を示す情報(制約条件情報)を記憶する。制約条件とは、特定の物質を取り扱う環境に関して法律やガイドライン等において定められている制約を示す条件である。制約条件は、特に安全性に関する条件であってもよい。例えば、制約条件は、特定の物質の使用に関連する設備について、設置される位置と間取りとの関係を示す制約や、その設備と他の設備との間の関係を示す制約であってもよい。
【0025】
例えば、ある特定の物質を取り扱う設備に関して、その設備の正面から所定の距離内には他の設備が設置されてはいけない、という条件が制約条件として定められていてもよい。例えば、施設に設置された特定の設備(危険物質として特定される所定の物質を取り扱う設備)から所定の距離内に緊急シャワーが設けられているという条件が制約条件として定められてもよい。例えば、設置された設備が施設の窓を塞ぐ状態ではないことが制約条件として定められてもよい。例えば、設備と設備との間の通路の幅が所定の大きさ以上(例えば1.2メートル以上)であることが制約条件として定められてもよい。例えば、特定の物質を扱うことが目的として定められている場合には、それに応じた所定の種別の設備(例えばドラフトチャンバー)が設置されることが制約条件として定められてもよい。
【0026】
提案情報記憶部224は、制御部23によって生成された提案情報を記憶する。
【0027】
制御部23は、CPU等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部23は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、情報取得制御部231、学習制御部232、提案候補情報生成部233、制約制御部234及び提案制御部235として機能する。なお、制御部23の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0028】
情報取得制御部231は、ユーザー端末10等の他の装置から初期条件情報等の情報を取得する。情報取得制御部231は、取得された初期条件情報に含まれる各値について、明らかに誤っていることを示す訂正条件を満たしている値が無いか判定する。訂正条件とは、例えば桁数が現実的には初期条件情報として入力されるはずのない桁数であることを示す条件を含んでもよい。情報取得制御部231は、訂正条件を満たしている値がある場合には、訂正条件に対応付けて予め定義されている訂正処理を実行することで、初期条件情報の値を変更する。例えば、訂正条件として“施設内の面積が20~50平方メートルである場合には、利用人数の範囲は1~10人”という条件が設定され、これに対応付けて訂正処理として“利用人数の桁数を少なくすることで利用人数の範囲内に変更する”という処理が定義されていてもよい。この場合、例えば“30平方メートル、利用人数600人”という初期条件情報について“30平方メートル、利用人数6人”というように訂正処理によって値が変更される。
【0029】
情報取得制御部231は、さらに条件出力処理を実行してもよい。条件出力処理とは、初期条件情報に対して、新たな条件を付加する処理である。例えば、付加条件と、追加条件とが対応付けて定義されていてもよい。初期条件情報が付加条件を満たす場合には、追加条件が初期条件情報に設定されていることが必要である。そのため、情報取得制御部231は、付加条件を満たす初期条件情報が入力された場合に、対応する追加条件が満たされていない場合には、その追加条件を初期条件情報に追加する。例えば、特定の薬品を使用することが付加条件であり、その薬品を使用するための所定の設備(例えばドラフトチャンバー)を施設内に設けることが追加条件である。
【0030】
情報取得制御部231は、取得された情報をメモリー等の記憶装置に記録する。例えば、情報取得制御部231は、ユーザー端末10から取得された初期条件情報を初期条件情報記憶部222に記録する。
【0031】
学習制御部232は、使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設について過去に実際に行われた適切な(各制約条件を満たした)設計に関する情報を教師データとして用いることで学習処理を実行する。使用される教師データは、例えば入力として初期条件情報と同様の項目の値を有し、出力として提案情報と同様の項目の値を有する。学習制御部232が実施する学習処理には、教師あり学習のどのようなアルゴリズムが適用されてもよい。学習制御部232は、学習処理の結果として得られた学習済みモデルの情報を、学習済みモデル情報記憶部221に記録する。
【0032】
学習制御部232が実行する学習処理の入力の教師データとしては、初期条件情報に含まれる項目の値に加えてさらに、間取りの中において設備が配置されてはいけない領域(以下「設置禁止領域」という。)を示す情報が含められてもよい。このような設置禁止領域は、制約条件に基づいて定められてもよい。このような設置禁止領域の教師データは、例えば教師データとして用いられる設計結果の設計過程において、既に設置されることが決まった一部の設備に応じて他の設備が設置されてはいけない領域が生じた場合に、そのような領域の値が用いられてもよい。
【0033】
学習制御部232が実行する学習処理の入力の教師データとしては、初期条件情報に含まれる項目の値に加えてさらに、間取りの中において優先的に設置されることが決められた設備(以下「優先設備」という。)とその設置位置を示す情報が含められてもよい。このような情報は、予め各設備について定められた優先順位に基づいて定められてもよい。このような情報の教師データも、上述した設置禁止領域の値と同様に、例えば教師データとして用いられる設計結果の設計過程において、他の設備よりも優先的に設置されることが決まった一部の設備(優先設備)に関する情報が用いられてもよい。
【0034】
提案候補情報生成部233は、初期条件情報を含む入力値と、学習済みモデル情報記憶部221に記憶されている学習済みモデルと、に基づいて処理を行うことで、提案情報と同様の項目の値を有する提案候補情報を生成する。生成された提案候補情報について、制約条件の一部でも満たしていないと制約制御部234によって判定された場合には、繰り返し処理を実行する。繰り返し処理とは、満たしていないと判定された制約条件に応じて初期条件情報に新たな項目の値を付与し、その付与後の入力を用いて学習済みモデルに基づいて新たな提案候補情報を生成する処理である。繰り返し処理の実行において入力に付与される新たな項目の具体例として、上述した設置禁止領域や優先設備の値がある。
【0035】
制約制御部234は、提案候補情報生成部233によって生成された提案候補情報について、制約条件情報記憶部223に記憶されている制約条件を満たしているか否か判定する。制約制御部234は、提案候補情報が制約条件の全てを満たしていると判定した場合には、判定結果を提案制御部235に通知する。一方、提案候補情報が制約条件の一部でも満たしていないと判定した場合には、満たされていない制約条件を提案候補情報生成部233に通知する。また、制約制御部234は、提案候補情報が制約条件の一部でも満たしていないと判定した場合であって、提案候補情報生成部233による繰り返し処理の実行回数が所定の閾値を超えた場合には、処理対象となっている初期条件情報の送信元であるユーザー端末10に対し、その初期条件情報では適切な提案情報を生成できないことを通知してもよい。このとき、制約制御部234は、どのような制約条件が満たされなかったかをユーザー端末10に対して通知してもよい。
【0036】
提案制御部235は、提案候補情報が制約条件の全てを満たしていると判定した場合には、その提案候補情報を最終的な提案情報としてユーザー端末10に送信する。その際に、提案制御部235は、補足情報を提案候補情報に付与することによって提案情報を生成してもよい。補足情報とは、例えば“通路幅は1.2メートルに設定しています。”という文字列や、“南側のドアをメインの出入り口として想定しています。”という文字列である。このような補足情報は、例えば提案候補情報生成部233によって生成されてもよいし、提案制御部235が所定のテーブルを参照して取得しても良い。このような所定のテーブルの具体例として、提案候補情報内に関する条件と、その条件を満たした場合に出力される補足情報と、を対応付けたテーブルがある。提案制御部235は、採用された提案候補情報について上記テーブルを参照して条件を満たすか判断し、条件が満たされた場合にその条件に対応付けられている補足情報を採用してもよい。提案制御部235は、一つの提案情報のみをユーザー端末10に送信してもよいし、複数の提案情報をユーザー端末10に送信してもよい。
【0037】
図4は、初期条件情報の一部である対象施設の間取りを示す情報の具体例である。
図4に示される対象施設40は、複数の壁41と、入り口に設けられた片開き戸42と、複数の引き違い窓43と、を有する。初期条件情報には、このような間取りを示す情報に加えてさらに、この対象施設で使用される物質などの情報が含まれる。これらの情報は、例えば対象施設の提案情報の取得を望む者が所定のアンケートに回答することによって得られてもよい。より具体的には、ユーザー端末10を操作する営業担当者が、提案情報の取得を望む顧客に対して所定のアンケートを実施することによって、上述した情報が取得されてもよい。これらの情報は、ユーザー端末10に入力され、ネットワーク90を介して提案装置20に送信されてもよい。
【0038】
図5は、提案候補情報生成部233による1回目の処理によって生成された提案候補情報の具体例を示す図である。この提案候補情報では、対象施設40に対して2つの設備が設置されている。これら2つの設備の種別や仕様を示す情報は、
図5に示される情報とは別に生成されてもよい。領域51_1には第1の設備が設置され、領域51_2には第2の設備が設置されることが提案されている。例えば、この
図5に示される提案候補情報は制約条件の全てを満たす。この場合、提案制御部235は、
図5に示される提案情報をユーザー端末10に送信する。
【0039】
図6は、提案候補情報生成部233による1回目の処理によって生成された他の提案候補情報の具体例を示す図である。この提案候補情報では、対象施設40に対して3つの設備が設置されている。これら3つの設備の種別や仕様を示す情報は、
図6に示される情報とは別に生成されてもよい。領域51_1には第1の設備が設置され、領域51_2には第2の設備が設置され、領域51_3には第3の設備が設置されることが提案されている。例えば、この
図6に示される提案候補情報は制約条件の一部を満たさない。より具体的には以下の通りである。第3の設備には“正面からNメートル以内には他の設備を設置してはいけない”という制約が設けられている。しかし、第3の設備の正面(
図6で太線の破線で示す面)から領域51_2の右端までの距離(矢印52で示される距離)は、制約条件で求められているNメートルよりも短い。このように、
図6の提案候補情報の具体例では、制約条件の一部が満たされていない。
【0040】
図7は、繰り返し処理の実行に際して提案候補情報生成部233によって初期条件情報に追加された値の第一具体例を示す図である。この場合、初期条件情報に対し、2つの項目の値が付与されている。一つ目は、優先設備に関する情報であり、優先設備として第3の設備が領域51_3に設置されることが初期条件情報に付与されている。例えば、提案候補情報生成部233は、提案候補情報に含まれている複数の設備(
図7では3つ)のうち、相対的に最も優先順位の高い所定数の設備(例えば1つ)を、優先設備として決定してもよい。例えば、提案候補情報生成部233は、提案候補情報に含まれている複数の設備のうち、満たされていない制約条件の発生元となっている設備を優先設備として決定してもよい。
【0041】
二つ目は、設置禁止領域に関する情報であり、第3の設備の正面部分からNメートル以内の領域である領域54が設置禁止領域の値として付与されている。領域54の横幅を示す矢印53が示す長さは、少なくともNメートルよりも長い距離が設定される。すなわち、提案候補情報生成部233は、満たされなかった制約条件を満たすために設備を設置してはならない場所を設置禁止領域の値として決定してもよい。
【0042】
なお、このように学習済みモデルに対して優先設備及び設置禁止領域の2つの項目の値も入力される場合には、この学習済みモデルを取得するための学習の処理においても、入力の教師データにはこれら2つの値が設けられている。また、提案候補情報生成部233による1回目の処理ではこれら2つの値が付与されていないため、ゼロパディング等の周知の方法で対応がなされてもよい。
【0043】
図8は、繰り返し処理の実行に際して提案候補情報生成部233によって初期条件情報に追加された値の第二具体例を示す図である。この場合、初期条件情報に対し、1つの項目の値が付与されている。付与されている値は、設置禁止領域に関する情報である。すなわち、
図7における領域54を示す情報が、
図8において設置禁止領域として付与されている。
【0044】
なお、このように学習済みモデルに対して設置禁止領域の項目の値も入力される場合には、この学習済みモデルを取得するための学習の処理においても、入力の教師データにはこの値(設置禁止領域)が設けられている。また、提案候補情報生成部233による1回目の処理ではこの値(設置禁止領域)が付与されていないため、ゼロパディング等の周知の方法で対応がなされてもよい。
【0045】
図9は、提案候補情報生成部233による2回目の処理によって生成された提案候補情報の具体例を示す図である。具体的には、
図9は、
図7又は
図8の情報を用いて繰り返し処理が実行された結果として得られた提案候補情報である。この提案候補情報では、対象施設40に対して3つの設備が設置されている。この場合、第3の設備が設置されている領域51_3と第2の設備が設置されている領域51_2との間の距離が、矢印53の長さ(Nメートル)よりも長い。そのため、
図6の提案候補情報では満たされていなかった制約条件が満たされている。その結果、
図9に示される提案候補情報は制約条件の全てを満たす。この場合、提案制御部235は、
図9に示される提案情報をユーザー端末10に送信する。
【0046】
このように構成された提案システム100では、使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設に関して、設置される設備の種別や設置される位置を含む情報を適切に生成することが可能となる。具体的には以下の通りである。
【0047】
提案システム100では、過去に適切に設計された設計結果を教師データとして用いて学習処理が行われ、学習済みモデルが予め取得されている。使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設を提案対象施設として初期条件情報が取得され、その初期条件情報と学習済みモデルとを用いて提案候補情報が生成される。そのため、提案候補情報では、過去に適切に設計されたように、より高い確率で適切な提案候補情報が得られる。そして、提案候補情報が全ての制約条件を満たす場合には、その提案候補情報が提案情報としてユーザーに提供される。このような処理により、全ての制約条件を満たした適切な提案情報をユーザーに提供することが可能となる。
【0048】
また、もし制約条件の一部が満たされなかった場合には、初期条件情報に対して新たな項目の値を付与することで入力の値を変化させ、その入力と学習済みモデルとを用いて繰り返し処理が実行される。そのため、もし1回目の処理で適切な提案候補情報が得られなかったとしても、2回目やそれ以降の処理において適切な提案候補情報が得られる可能性がある。
【0049】
(変形例)
本実施形態では、提案装置20が学習処理と提案候補情報の生成処理とを実行している。しかしながら、学習処理は提案装置20とは異なる装置が実行してもよい。この場合、提案装置20は、学習処理を実行した装置から学習済みモデルの情報を取得して学習済みモデル情報記憶部221に記録する。この場合、提案装置20は学習制御部232を備えなくてもよい。
【0050】
提案装置20は、複数の情報処理装置を用いて実装されてもよい。例えば、クラウド等の装置を用いて提案装置20が実装されてもよい。
【0051】
制約条件情報記憶部223には、制約条件毎に、致命的な制約条件であるか否かを示す情報が対応付けて記録されていてもよい。制約制御部234は、満たさないと判定した制約条件が致命的な制約条件である場合には、提案候補情報生成部233に対して通知することに代えて、ユーザー端末10に対して満たさない制約条件と、設計について再考することを通知するように構成されてもよい。
【0052】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
100…提案システム, 10…ユーザー端末, 20…提案装置, 11…通信部, 12…操作部, 13…表示部, 14…記憶部, 15…制御部, 21…通信部, 22…記憶部, 221…学習済みモデル情報記憶部, 222…初期条件情報記憶部, 223…制約条件情報記憶部, 224…提案情報記憶部, 23…制御部, 231…情報取得制御部, 232…学習制御部, 233…提案候補情報生成部, 234…制約制御部, 235…提案制御部, 40…提案対象施設, 41…壁, 42…片開き戸, 43…引き違い窓, 51…領域, 54…設置禁止領域, 90…ネットワーク
【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設である対象施設について、間取りを含む条件を示す情報である初期条件情報を取得し、予め得られている学習済みモデルと前記初期条件情報とに基づいて、前記対象施設に設置される設備とその位置とを含む提案候補情報を生成する提案候補情報生成部と、
前記提案候補情報を提案情報として他の装置に送信する提案制御部と、
前記提案候補情報が、前記設備の設置において予め定められている制約条件を満たすか否か判定する制約制御部と、を備え、
前記学習済みモデルは、入力として初期条件情報と同様の項目の値を有し出力として対象施設において設置される設備の種別と各設備の設置位置とを有する複数の教師データを用いて予め学習処理を実行することによって得られ、
前記提案制御部は、前記制約制御部において前記制約条件を全て満たすと判定された提案候補情報を提案情報として前記他の装置に送信する、
提案装置。
【請求項2】
前記提案候補情報生成部は、前記制約制御部において前記制約条件の一部が満たされないと判定された場合に、前記初期条件情報に対して新たな値を付与して前記学習済みモデルに基づいて新たに提案候補情報を生成する、
請求項1に記載の提案装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様は、使用環境に制約が設けられた物質を使用し又は発生させる施設である対象施設について、間取りを含む条件を示す情報である初期条件情報を取得し、予め得られている学習済みモデルと前記初期条件情報とに基づいて、前記対象施設に設置される設備とその位置とを含む提案候補情報を生成する提案候補情報生成部と、前記提案候補情報を提案情報として他の装置に送信する提案制御部と、前記提案候補情報が、前記設備の設置において予め定められている制約条件を満たすか否か判定する制約制御部と、を備え、前記学習済みモデルは、入力として初期条件情報と同様の項目の値を有し出力として対象施設において設置される設備の種別と各設備の設置位置とを有する複数の教師データを用いて予め学習処理を実行することによって得られ、前記提案制御部は、前記制約制御部において前記制約条件を全て満たすと判定された提案候補情報を提案情報として前記他の装置に送信する、提案装置である。