IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ホロンの特許一覧

特開2023-171699フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法
<>
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図1
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図2
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図3
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図4
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図5
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図6
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図7
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図8
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図9
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図10
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図11
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図12
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図13
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図14
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図15
  • 特開-フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171699
(43)【公開日】2023-12-04
(54)【発明の名称】フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/74 20120101AFI20231127BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
G03F1/74
H01J37/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083459
(22)【出願日】2022-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】591012668
【氏名又は名称】株式会社ホロン
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵三
【テーマコード(参考)】
2H195
5C101
【Fターム(参考)】
2H195BD32
2H195BD33
2H195BD38
2H195BD40
5C101AA03
5C101AA36
5C101FF19
5C101FF22
5C101FF26
5C101GG04
5C101HH11
5C101HH31
5C101JJ01
5C101JJ07
(57)【要約】
【目的】本発明は、フォトマスク修復装置およびフォトマスク検査方法に関し、欠陥データをもとに修復対象を選択して設計データから生成した疑似SEM画像をもとに自動修復することを目的とする。
【構成】フォトマスクの表面にガスを吹き付けるノズルと、フォトマスクを保持するステージと、2次電子を検出・増幅してSEM画像を取得する手段と、欠陥データを保存した欠陥データベースと、設計データを保存した設計データベースと、欠陥修復時に修復対象のフォトマスクの欠陥データを取出し、欠陥がある設計データを取り出して、フォトマスクのプロセスに適合した疑似SEM画像を生成する手段と、疑似SEM画像をもとに、欠陥があるフォトマスクの上のSEM画像に対応する部分に対して、ノズルからガスを噴射してエッチング、デポジションの一方あるいは切り替えて両者からなる修復を行う修復手段とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクの欠陥を修復するフォトマスク修復装置において、
フォトマスクの表面にガスを吹き付けるノズルと、
前記ノズルに対向して前記フォトマスクを保持するステージと、
前記フォトマスクに細く絞った電子ビームを照射しつつ走査して放出される2次電子を検出・増幅してSEM画像を取得する手段と、
前記フォトマスクの表面上のパターンに関する欠陥データを保存した欠陥データベースと、
前記フォトマスクの表面上のパターンの設計データを保存した設計データベースと、
前記フォトマスクの欠陥修復時に、前記欠陥データベースから修復対象のフォトマスクの欠陥データを取出し、当該欠陥データをもとに当該欠陥データの欠陥がある設計データを前記設計データベースから取り出して、当該フォトマスクのプロセスに適合した疑似SEM画像を生成する手段と、
前記生成した疑似SEM画像をもとに、前記取り出した欠陥データの欠陥がある、前記フォトマスクの上の前記SEM画像に対応する部分に対して、前記ノズルからガスを噴射してエッチング、デポジションの一方あるいは切り替えて両者からなる修復を行う修復手段と
を備えたことを特徴とするフォトマスク修復装置。
【請求項2】
前記修復手段は、前記生成した疑似SEM画像をもとに、前記取り出した欠陥データの欠陥がある、前記フォトマスクの上の前記SEM画像に対応する当該欠陥部分あるいは若干大きい領域の部分に前記ノズルからガスを噴射してエッチングした修復対象を作成後、当該修復対象に対して、前記ノズルからガスを噴射してエッチング、デポジションの一方あるいは切り替えて両者からなる修復を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク修復装置。
【請求項3】
前記ノズルからガスを前記フォトマスクに噴射する外側にエアーカーテンを設けて当該エアーカーテンの外側へのガスの漏洩を防止および付着ガスの除去を行うことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のフォトマスク修復装置。
【請求項4】
前記電子ビームが前記フォトマスクに照射する部分の半径あるいは直径に対応する、前記ガスによる反応半径あるいは反応直径を当該電子ビームの加速電圧に対応づけて実験で求めておき、前記修復部分のみ修復するように当該電子ビームを照射しつつ走査し、前記エッチング、デポジションを適切に行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のフォトマスク修復装置。
【請求項5】
フォトマスクの欠陥を修復するフォトマスク修復方法において、
フォトマスクの表面にガスを吹き付けるノズルと、
前記ノズルに対向して前記フォトマスクを保持するステージと、
戦記フォトマスクに細く絞った電子ビームを照射しつつ走査して放出される2次電子を検出・増幅してSEM画像を取得する手段と、
前記フォトマスクの表面上のパターンに関する欠陥データを保存した欠陥データベースと、
前記フォトマスクの表面上のパターンの設計データを保存した設計データベースと
を設け、
疑似SEM画像を生成する手段は、前記フォトマスクの欠陥修復時に、前記欠陥データベースから修復対象のフォトマスクの欠陥データを取出し、当該欠陥データをもとに当該欠陥データの欠陥がある設計データを前記設計データベースから取り出して、当該フォトマスクのプロセルに適合した疑似SEM画像を生成し、
修復手段は、前記生成した疑似SEM画像をもとに、前記取り出した欠陥データの欠陥がある、前記フォトマスクの上の前記SEM画像に対応する部分に対して、前記ノズルからガスを噴射してエッチング、デポジションの一方あるいは切り替えて両者からなる修復を行う
ことを特徴とするフォトマスク修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの欠陥を修復するフォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフォトマスク修復は、自動では行われず、いわばセミオートであった。例えば修復は、修正すべき図形を人間が作成、選択あるいは既存の図形をコピーするなどして決める必要があった。修正するためには熟練職人が必要とされ生産性が低かった。
【0003】
また、原理的に修復目標は1つしかないが、熟練者の行う修復は常に同じ結果とは限らない。修復により二次的にフォトマスク性能にばらつきが生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のフォトマスクの修復は、人が修正すべき図形を作成、選択、既存の図形をコピーなどして決め、修復(切除、堆積)していたため、修復する熟練者が必要とされ、自動的に修復できないという課題があった。
【0005】
また、修復は熟練者が行っていたため、常に同じ結果が得られるとは限られず、修復により二次的なフォトマスク性能にばらつきが生じてしまうなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために、同じ結果が常に得られるように、欠陥データをもとに修復対象を選択し、この修復対象について、設計データから生成した疑似SEM画像をもとに修復(エッチング、デポジション)し、修復を自動で行うことを目的とする。
【0007】
また、本発明は、上述した課題を解決するために、同じ結果が常に得られるように、欠陥データをもとに欠陥部分を切除した修復対象を作成し、この修復対象について、設計データから生成した疑似SEM画像をもとに修復あるいは再建(エッチング、デポジション)し、自動で修復を行うことを目的とする。
【0008】
そのため、本発明は、フォトマスクの欠陥を修復するフォトマスク修復装置において、フォトマスクの表面に垂直にガスを吹き付けるノズルと、ノズルに対向してフォトマスクを保持するステージと、フォトマスクに細く絞った電子ビームを照射しつつ走査して放出される2次電子および反射電子を検出・増幅してSEM画像を取得する手段と、フォトマスクの表面上のパターンに関する欠陥データを保存した欠陥データベースと、フォトマスクの表面上のパターンの設計データを保存した設計データベースと、フォトマスクの欠陥修復時に欠陥データベースから修復対象のフォトマスクの欠陥データを取出し、当該欠陥データをもとに当該欠陥データの欠陥がある設計データを設計データベースから取り出して、当該フォトマスクのプロセスに適合した疑似SEM画像を生成する手段と、生成した疑似SEM画像をもとに、取り出した欠陥データの欠陥がある、フォトマスクの上のSEM画像に対応する部分に対して、ノズルからガスを噴射してエッチング、デポジションの一方あるいは切り替えて両者からなる修復を行う修復手段とを備える。
【0009】
この際、修復手段は、生成した疑似SEM画像をもとに、取り出した欠陥データの欠陥がある、フォトマスク表面のSEM画像に対応する当該欠陥部分あるいは若干大きい領域の部分にノズルからガスを噴射してエッチングした修復対象を作成後、当該修復対象に対して、ノズルからガスを噴射してエッチング、デポジションの一方あるいは切り替えて両者からなる修復を行う。
【0010】
また、ノズルからガスをフォトマスクに噴射する外側にエアーカーテンを設けて当該エアーカーテンの外側へのガスの漏洩を防止および付着ガスの除去を行うようにする。
【0011】
また、電子ビームがフォトマスクに照射する部分の半径あるいは直径に対応する、ガスによる反応半径あるいは反応直径を当該電子ビームの加速電圧に対応づけて実験で求めておき、修復部分のみ修復するように当該電子ビームを照射しつつ走査し、エッチング、デポジションを適切に行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、欠陥データをもとに修復対象を選択し、この修復対象について、設計データから生成した疑似SEM画像をもとに修復(エッチング、デポジション)し、熟練者に依存することのない、フォトマスクの自動修復が可能となった。
【0013】
また、欠陥のある部分を削除した修復対象に対して、疑似SEM画像をもとに修復あるいは再建することにより、欠陥の形状に依存する修復不安定性を無くし、確実かつバラツキのない自動修復が可能となった。
【0014】
更に、下記の効果がある。
1 低エネルギー用の収差補正装置を用いてnmオーダーの小さな反応体積を実現でき,極めて微細な自動修復が可能となった。
2 ガスを垂直入射、回収することでガス濃度上昇、制御性が向上した。
3 反応半径を用いたプロセス制御を導入できた。
4 欠陥部分を切除した修復対象の導入により、フォトマスク修復プロセスの完全自動化ができた。
5 難エッチング材料エッチング、デポジションが可能となった。
6 プロセス量が原子層単位で容易に制御可能となった(電子ビームデジタルプロセスの実現)。
7 任意構造構築を実現できた。
【実施例0015】
図1は、本発明の1実施例構成図を示す。この図1は、サンプル13であるフォトマスク上に形成されたパターンの欠陥を修復する装置の構成図であって、フォトマスクにガスを噴射しつつ電子ビームを照射し、その電子ビームの反応範囲について、エッチングあるいはデポジションを行って欠陥を修復する装置の構成図を示す。以下詳細に説明する。
【0016】
図1において、電子銃1は、電子を発生するものである。
【0017】
ブランキング電極2は、電子銃1で発生された1次電子ビームをnsのオーダーで高速に通過あるいは遮断するものであって、平行平板であり、高電圧を印加するものである。ブランキングした電子ビームが帯電によって1次電子ビームをドリフトさせないように工夫されている。
【0018】
ブランキングアパチャー3は、ブランキング電極2に高電圧を印加して偏向された1次電子ビームを遮断するアパチャーである。
【0019】
パルスブランキング装置4は、パルス状の高電圧を発生し、ブランキング電極2に印加するものである。これにより、デューティー比の異なる電子ビームを作り出す。
【0020】
収差補正装置5は、複数段からなる電磁界を発生するオクタポールからなる電子ビーム偏向素子とトランスファーレンズからなり、低エネルギーの1次電子ビームに対する色収差を3次以上まで補正し、サンプル13上で細く絞るためのものである。ここで、必要に応じて、収差補正装置(色収差補正装置)5により、電子ビームエネルギーが100Vの時に3nm,200Vの時に2nm,500V以上の時に1nmのビームスポット径を実現できるものである。
【0021】
電子検出装置6は、細く絞った1次電子ビームをサンプル13に照射しつつ走査し、そのときに放出された2次電子を検出・増幅するものである。
【0022】
偏向装置7は、1次電子ビームを2段偏向し、細く絞った1次電子ビームをサンプル13の上を照射しつつ走査するものである。
【0023】
対物レンズ8は、1次電子ビームを細く絞ってサンプル13の上に照射するものである。ここでは、必要に応じて収差補正装置(球面、色収差補正装置)を合わせて使用し、球面および色収差を最小限に低減する。
【0024】
試料室10は、真空排気した内部に、フォトマスクなどのサンプル13などを収納する容器である。
【0025】
ガス噴射ノズル11は、ガス(エッチング用のガス、デポジション用のガス)をサンプル13の表面に垂直に噴射するためのノズルである。
【0026】
高さセンサー12は、サンプル13の高さ(対物レンズ8の先端との距離等)をリアルタイムに測定するものである。;
サンプル13は、フォトマスクなどのサンプルであって、表面に形成されたパターンの欠陥を修復する対象の試料である。
【0027】
サンプル温度制御14は、搭載したサンプル13の温度を自動調整するものである。
【0028】
レーザー計測14-1は、サンプル13の位置(X.Y.Z)を、レーザー干渉計を用いて精密にリアルタイムに測定するものである。
【0029】
Zステージ15は、サンプル13の高さ方向の位置を調整するものである。
【0030】
サンプルバイアス電圧制御16は、サンプル13に所定のバイアス電圧を印加するものである。
【0031】
XYステージ17は、サンプル13をX,Y方向に移動させるものであって、レーザー計測14-1によって精密に測定しつつ所定の位置に移動させるものである。
【0032】
真空計21は、試料室10の内部の真空を測定するものである。
【0033】
除振台21は、試料室10などの振動を除振し、サンプル13の高分解能のSEM画像の取得を可能にするためのものである。
【0034】
TMP23は、真空排気装置であって、ここでは、試料室10の内部を真空排気するものである。
【0035】
ドライポンプ24は、オイルレスの真空排気装置である。
【0036】
次に、図1の構成について、詳細に説明する。
【0037】
図1に示す、フォトマスク修正装置は所望のエネルギー、電流量を有した電子ビームを所望の位置に所望のタイミングで照射するために必要な電子銃1、ブランキング電極2、収差補正装置5、電子検出装置6、偏向装置7、対物レンズ8などからなる電子ビームコラムを有する。収差補正装置5は、低エネルギーにおける電子ビームサイズをnmオーダーに絞れるように通常の球面収差補正に加え3次以上の高次の色収差補正が可能となっている。
【0038】
修正対象を観察、エッチングあるいはデポジションの終点確認をするための電子検出装置6を有する。特に汚染耐性の強いALD型MCPを用いることが望ましい。プロセスの終点判定は二次電子や反射電子のコントラストあるいは質量分析装置などの出力に予め決められた閾値を設定することで行われる。コラム内をプロセスガスで汚染しないように対物レンズ8には2段の差動排気装置が設けられており、試料室10内に混入したプロセスガスがコラム内には侵入しないようにしてある。電子ビーム照射に伴うサンプル13の表面帯電を防止するための酸素や窒素ガスをプロセスガスとは別に導入できるようにしてある。
【0039】
電子ビームコラムを制御する電子ビームコラム制御装置や電子銃制御のための高圧電源(図示外)を有する。コラム内を10のマイナス7乗パスカル以上の超高真空に保つためのイオンポンプ等(図示外)も有している。さらに電子ビーム照射位置に対するサンプル位置を決めるためのXYZステージ17、レーザー干渉計あるいはレーザースケールなどであるレーザー計測14-1によりサンプル13の位置精密測定、サンプル温度制御14を有する。電子ビームがフォトマスクに到達できるように10のマイナス5乗パスカル以下の真空を実現できる純鉄あるいはインバーやスーパーインバー等低熱膨張材料からなる真空チャンバー(試料室10)を有し、チャンバー内を所望の真空度に保つためドライポンプ24やターボ分子ポンプ,チャンバー真空度を測定するための真空計21などを有する。
【0040】
レーザー干渉計を構成するミラー等を配置するサンプル位置制御装置の周りには超低熱膨張率材料を用いている。装置設置場所周辺環境からの振動が装置内部に伝達するのを抑えるためにアクティブ除振装置、サンプル振動を電子ビームにフィードバックして電子ビーム振動を止める装置なども付いている。
【0041】
クリーンルーム温度は±1度程度に保たれているが、マスク修正装置チャンバーの温度が大きく変動しないように±0.1度以下の温度調節装置が装置内に別途設けられている。
【0042】
フォトマスク修正を行うためには電子ビーム照射した場所においてのみ確実に化学反応を起こす必要があり、複数種類の反応ガスを必要なタイミング、流量あるいはガス圧、温度で電子ビーム照射点およびその周辺に供給するシステムを有している。自然エッチング等を避けるためにガス注入と同時に不要となったガスを瞬間的に電子ビーム照射点から除去するための強制ガス排出装置やガス供給装置を有している。
【0043】
ガス温度は一般的なヒーターやレーザー光線あるいは電子ビームによって供給されるエネルギーを用いて供給部の温度を測定しフィードバック制御することで調整できる。ヒーターはフォトマスクの温度を制御、ガス供給パイプを保温するために利用できる。レーザー光線あるいは電子ビームは修正箇所に直接ビームを当てることで修正対象箇所のガス温度を制御できる。
【0044】
反応ガスを予めイオン化して供給することもできる。イオン化には紫外線照射、電子ビーム照射、RF励起など現在使用可能なイオン化法を用いることが出来る。イオン化されたガスは電界あるいはイオン源と電子ビーム照射点の電位差を用いて修正点に効率よく導くことが出来る。そのためのバイアス電極や静電レンズを有することも特徴である。イオン銃を用いて加速したイオンを直接修正点に届けることも出来る。ここでは従来のFIBがGa等の高速で重いイオンを用いて物理的にエッチングを行うために利用していたのとは全く逆に実質的に物理的なスパッタリング効果を有さない100eV以下の低いエネルギーで修正点に軽いガスを届けることに特徴がある。クラスター化したイオンを届けることも出来る。クラスター化すればさらにそれぞれの分子の運動エネルギーを下げることが可能でサンプルダメージを防止できる。中性原子あるいは中性分子の状態で届けた方が良い場合にはイオン化された反応ガスの経路に電子ビーム照射等の中性化手段を設けてイオンの電荷を取り除くことも出来る。
【0045】
電子ビーム励起反応ガスには一般に常温で固体である化学物質(固体ソース)が利用されることが多い。スウェージロックシリンダーに入れられた固体ソースを昇華させて適切なガス圧の気体にするためのヒーターや温度制御回路および供給圧力を測定する圧力センサーあるいはマスフローメーターあるいは昇華したガスを一旦蓄積するリザバータンクがガス供給装置には含まれる。温度は0.1度程度の精度で制御することが望ましい。
【0046】
ガス供給装置にて発生させられたガスは所望の温度に保ったままパイプを通ってチャンバー内に注入される。ノズルにはヒーター等、ガス温度を調整する機能が組み込まれている。真空チャンバー内のガスデリバリー部品はチャンバー真空によって断熱されるので、直近のヒーター温度に保たれる。
【0047】
電子ビームALDやALEを実現するためにガスをパルス状に届けるためにms以下の短時間でダイヤフラムバルブをオンオフするための高速応答弁も組み込まれている。弁には温度管理機構が設けられている。弁にはソレノイド電磁弁やピエゾ式あるいはMEMSで作った静電式の弁を利用できる。応答改善のために弁をチャンバー内に設けることも出来る。ガスは固化しやすいのでパイプに詰まるのを防止するために一定温度の不活性ガスを定期的に流す、一瞬だけ高圧にして反応ガスをフラッシングさせるなどの機能を有している。反応ガスは蒸気圧が低いため常温で気体となる窒素や酸素などと比較して供給圧が低くなる傾向がある。その圧力を補うために、反応ガスとともに窒素やアルゴンあるいはヘリウムなどの不活性ガスを昇圧ガスとして同時に用いることも出来る。昇圧効果はガスソース容器に直接昇圧ガスを注入することで得られる。これら昇圧ガスは一次電子ビームとの衝突によりイオンを発生し帯電防止用のガスとしても機能する。昇圧ガスを用いると、圧力を高くできるので、ガス供給方法の自由度が増加する。従来のようにガス流を得るために必ずしも注射針のような小さな穴が開いたノズルを用いる必要は無くなるため、ガス固化による不具合発生が軽減される。
【0048】
反応ガスはプロセスごとに数種類使用されるため複数のパイプで供給される。装置を簡単にするため、ガスを混ぜても良いものに関しては、予め決められた割合にガスを混合できるガス混合装置を通してガスを1つにしてパイプを共通化するなどして簡略化を行うことができる。従来のようにチャンバー内で複数のノズルから吹き付けただけではガスは均一にならないので、本方法を使用すればプロセス結果を非常に安定化できる。一方、ガス混合により反応する場合は、それぞれ独立したガス供給系を持つことが望ましい。各供給系に流量、圧力、温度、供給タイミング等がデジタル的に数値制御できるように複数の独立した制御系を有している。装置全体はPC(図示外)によって制御され、ディスプレイ(図示外)に修復対象や修復目標あるいは修復の様子および結果のSEM画像、装置状態やプロセス条件、内容等が表示される。
【0049】
次に、図2を用いて反応ガスの導入について詳細に説明する。
【0050】
図2は、本発明の垂直ガス導入例を示す。
【0051】
図2の(a)はガス導入例1を示し、ガスカーテンが無の場合である。
【0052】
図2の(a-1)はガス導入口とサンプル13との間の距離が大きい場合の例を示し、図2の(a-2)はガス導入口とサンプル13との間の距離が小さい場合の例を示す。
【0053】
図2の(a-1)において、反応ガス導入32は、反応ガスを外側からサンプル13に垂直に噴射する(図3の(a)参照)。一方、真空引き31は、反応ガス導入32によるガス噴射の内側から真空引きする(図3の(a)参照)。これにより、ガスがサンプル13に対してリング状ノズルの外側に垂直に噴射され、その内側のリング状ノズルの部分から真空引き31されるので、ガスは外周に飛散することなく真空引き31により外部に取り出される。そして、ガスがサンプル13に垂直に噴射された状態で所定サイズの1次電子ビームを照射しつつ走査することにより、当該走査した領域がガスと1次電子ビームの照射とによりエッチングあるいはデポジションされ、パターンの欠陥部分を修復することが可能となる。ガス導入部は高温になるので、対物レンズなどが温度上昇しないように、熱および電気絶縁されていることが望ましい。リング状ノズルのガス噴出部はガスコンロのように多くの穴を開けた構造や穴からパイプが突き出ている構造でも同じ効果が得られる。
【0054】
同様に、図2の(a-2)において、反応ガス導入32は、反応ガスをサンプル13と真空引きの板との間の空間からサンプル13に噴射する。一方、真空引き31は、軸に近い内側から真空引きする。これにより、ガスがサンプル13に対してリング状ノズルの外側から噴射され、その内側の部分から真空引き31されるので、ガスは外周に飛散することなく真空引き31により外部に取り出される。そして、ガスがサンプル13に噴射された状態で所定サイズの1次電子ビームを照射しつつ走査することにより、当該走査した領域がガスと1次電子ビームの照射とによりエッチングあるいはデポジションされ、パターンの欠陥部分を修復することが可能となる。
【0055】
図2の(b)はガス導入例2を示し、ガスカーテンが有の場合である。
【0056】
図2の(b-1)はガス導入口とサンプル13との間の距離が大きい場合の例を示し、図2の(b-2)はガス導入口とサンプル13との間の距離が小さい場合の例を示す。
【0057】
図2の(b-1)において、当該例では、ガスカーテン33を図示のように、反応ガス導入32の下側に設け、反応ガス導入32によるサンプル13へのリング状ノズルの垂直の噴射の外側にリング状ノズルに噴射してカーテンとなり、反応ガスの外側への飛散を更に防止することができる。ガスカーテンは電子ビーム照射点以外の場所に付着した反応ガスを除去する機能を持っている。
【0058】
同様に、図2の(b-2)において、当該例では、噴射口とサンプル13との距離が小さいので、図示のガスカーテン33に示すように、カーテンガスをサンプル13との隙間より当該サンプル13に向けて外周から噴射することにより、更に、外側への反応ガスの飛散を防止できる。反応ガスは、図示のように、垂直にサンプル13に噴射される。
【0059】
図2について詳細に説明する。
【0060】
本発明では100ミクロン程度の非磁性の薄い板を重ね合わせて作られた扁平なマイクロダクトのようなガス供給路を持つためコンダクタンスが大きく、従来のパイプのような狭い空間をガスが通過することが無い。従って、ガス固化が起こりにくく、十分なガス圧でサンプル13の表面までガスを届けられる特徴がある。ガスは周辺から電子ビーム照射点に向かって吹き付けられるため、電子ビーム照射点におけるガス濃度を高く保つことが出来る。また、電子ビーム照射点上方にはTMPに接続された差動排気装置があるため、供給された反応ガスは速やかに回収される。必要な場所に必要な量だけ反応ガスを供給できるこの機能はフッ化キセノンガスのように自発エッチングを起こすガスに対してサイドエッチングを防止することが出来る。このガス供給路構造は板金、切削、3DプリンターあるいはMEMSのような半導体プロセスを用いて作ることが出来る。
【0061】
図3は、本発明の垂直ガス導入例(その2)を示す。
【0062】
図3の(a)はガス供給例1を示し、図3の(b)はガス供給例2(2分割)を示し、
図3の(c)はガス供給例3(4分割)を示す。
【0063】
図3の(a)において、ガスカーテン穴34は、サンプル13に噴射してカーテンとなるガスを噴射する穴である。
【0064】
電子ビーム穴35は、1次電子ビームを通過させる穴である。
【0065】
反応ガス穴36は、反応性(エッチング、デポジション)のガスをサンプル13に垂直に噴射する穴である。
【0066】
図3の(a)において、左側からガスを供給し、反応ガス穴36から反応性のガス、ガスカーテン穴34からカーテンとなるガスをそれぞれサンプル(フォトマスクなど)13の欠陥部分に垂直に噴射し、かつ電子ビーム穴35から細く絞った1次電子ビームを垂直に照射・走査することにより、当該1次電子ビームの照射・走査した部分を修復(エッチング、デポジション)することが可能となる。
【0067】
図3の(b)は、2分割の例を示す。ここで、反応ガス穴1、反応ガス穴2は、図3の(a)の反応ガス穴36を円周方向に2分割し、2つの反応ガス穴1,2を設けた例を示す。・
図3の(c)は、4分割の例を示す。ここで、反応ガス穴1、反応ガス穴2、反応ガス穴3,反応ガス穴4は、図3の(a)の反応ガス穴36を円周方向に4分割し、4つの反応ガス穴1,2、3、4を設けた例を示す。・
以上のように、反応ガス穴36について、複数に分割することにより、複数の種類の反応ガスを同時にサンプル13の欠陥部分にほぼ垂直に噴射し、修復(エッチング、デポジション)することが可能となる。
【0068】
図3について、詳細に説明する。
【0069】
本発明では、1次電子ビームの軌道やフォトマスクで発生する2次電子および反射電子等の検出に影響が出ないように、リン青銅やチタン、ステンレス、セラミックスなどの非磁性材料を用いたノズルやガス供給口を利用することが望ましい。セラミックの表面は帯電防止のためにアモルファスNiP,NiB,カニゼンメッキ等の非磁性メッキを行って導電化しておくのが望ましい。
【0070】
図4は、本発明のシステム構成図を示す。
【0071】
図4において、マスク修復装置は、サンプル13であるフォトマスクの欠陥を修復する装置であって、図示のように、画像処理装置411,画像認識装置412,プロセス手順発生装置413等から構成されるものである。
【0072】
画像処理装置411は、デバイス設計データなどを参照し、必要な画像処理を行うものである。
【0073】
画像認識装置412は、画像を認識するものである。
【0074】
プロセス手順発生装置413は、プロセスの手順を発生するものである。
【0075】
プロセス手順データベース42は、プロセスの手順を予め登録したものである。
【0076】
反応半径等電子ビーム情報データベース43は、修復対象材料あるいは反応ガスごとに、1次電子ビームの加速電圧に対応づけた反応半径などを予め実験で求めて登録したデータベースである。
【0077】
パターン3D化データベース44は、パターンの3D化に必要なデータを予め登録したものである。
【0078】
修復完了基準データベース45は、修復を完了して基準となるデータを登録したものである。
【0079】
設計データサーバー46は、フォトマスクの設計データを登録して管理するものである。
【0080】
欠陥検査装置(あるいはレビュー装置)47は、フォトマスクの欠陥の情報を予め検査するものである。本発明は、この欠陥情報によって特定された欠陥の修復を自動的に行うものである。
【0081】
図5は、本発明の反応半径説明図を示す。ここで、横軸は1次電子ビームのエネルギー(加速電圧)を表し、縦軸はその1次電子ビームによる反応半径、つまり、エッチングあるいはデポジションされる半径(実験値)を表す。反応ガスは数エレクトロンボルトの2次電子と主に反応することが知られている。
【0082】
図5に示すように、1次電子ビームの加速電圧が上昇するに従い、反応半径は大幅に増加する特性を有する。このため、大きな欠陥部分を修復する場合には高い加速電圧の1次電子ビームを用いた方が迅速に修復可能となる、一方、微細な欠陥部分を修復するには低加電圧でないと他の部分までエッチングあるいはデポジションしてしまい、修復不可能となってしまうので、適切な1次電子ビームの加速電圧を選択する必要がある。
【0083】
次に、図7について、詳細に説明する。
【0084】
1次電子ビームのエネルギーが例えば1kVの場合、電子ビーム径自身は1nm程度であるが、サンプルに注入された電子が散乱して2次電子となって再びサンプルの表面から脱出する範囲は数十nmにも及び、この範囲で化学反応が起こる。この範囲が反応半径(Rr)である。反応半径(Rr)は電子ビームエネルギーを下げることで小さくすることができる。本発明では電子ビームエネルギーを下げるために高次色収差を補正できる収差補正装置を用いて200eVで2nm程度の反応半径を実現している。
【0085】
図6は、本発明の反応半径説明図(その2)を示す。
【0086】
図6の(a)は反応半径例を示し、図6の(b)は反応領域例を示す。
【0087】
図6の(a)において、電子ビーム走査座標が図示の黒丸の中心とすると、1次電子ビームはこの中心に照射される。その結果、1次電子ビームはフォトマスクの内部に入射して散乱し、2次電子、反射電子が図示の円形の半径を持つ部分から放出され、この部分がエッチング、デポジションされることとなる。つまり、1次電子ビームの半径は小さくても、その内部での散乱等により発生する2次電子、反射電子が広がってしまい、この部分にエッチング、デポジション(反応ガスがこの付近に供給されている)が発生することとなる。
【0088】
図6の(b)において、反応領域は、1次電子ビームを図示のように照射しつつ走査したことにより、発生した領域であって、エッチング、デポジションされる領域である。図示の反応領域について、図示の目標形状境界の内部を全て均一に走査することにより、エッチングあるいはデポジションをすることが可能となる。
【0089】
図6について、詳細に説明する。
【0090】
例えば、単に設計データから得られた目標形状と欠陥を含む現行形状の差分だけに注目して電子ビームエッチングやデポジションを行うと修正後の形状は目標よりも反応半径Rr分だけ大きくなったり小さくなったりする。反応半径はnmから数十nm以上に及ぶので最先端デバイス用フォトマスクに用いる最小パターンが50nm以下になることを考慮すると誤差が大きすぎるため、修正失敗になる。本発明ではあらかじめ反応半径Rrを考慮した電子ビーム走査位置を設計データから計算して利用するため正確に設置データに基づいたフォトマスク修正(修復)を実施できる。
【0091】
フォトマスクを構成するパターンは3次元構造物であるため、フォトマスク修復には2次元情報だけでなく3次元情報の活用も必須である。例えばEUV用のフォトマスクやナノインプリント用のマスクではパターンの側壁角制御が重要である。EUVでは波長が13.5nmと短いため側壁角度の1度以下の僅かな違いで露光結果が変化する。また、ナノインプリントでは印刷時にマスク(テンプレート)が抜けやすくなるように特定の角度を正確につける必要がある。
【0092】
本発明では所望の側壁角度が得られるように、CADデータの2次元情報に加え、3次元情報も入力して所望の側壁角度あるいは3次元形状プロファイルが得られるように、電子ビーム照射パラメータやガス照射パラメータを3次元的あるいは時間関数的に装置を自動制御可能な仕組みを有している。自動的にマスク修復を行うためにはテンプレートとなる単位プロセス処理をプロセス手順(ECAMデータ)として記憶しておく必要がある。本発明ではプロセス手順データベースにプロセス手順が記録されており、ECAMデータを通じて単位プロセスを呼び出すことで自動的にマスク修復が実行される。
【0093】
図7は、本発明のプロセス条件例を示す。これは、既述した図6の(b)の目標形状境界の内部を、エッチングあるいはデポジションする場合のプロセス条件例を示す。
【0094】
図7の(a)はエッチングプロセス条件例を示す。
【0095】
図7の(a)において、図示の下記のプロセス条件は、既述した図6の(b)の目標形状境界の内部を1次電子ビームで照射しつつ走査した場合にエッチングされる条件である。
【0096】
1 ガス種類 XeF2
2 ガス圧力 0・1Pa
3 基板温度 10℃
4 電子ビームエネルギー 400eV
5 電子ビーム電流 10pA
6 電子ビーム比率 1:10
7 基板バイアス電圧 10V
8 反応半径 10nm
ここで、電子ビーム比率は、電子ビームを照射する時間割合である。
【0097】
図7の(a)について、詳細に説明する。
【0098】
エッチングガスとしては二フッ化キセノンを利用する。ガス圧力は常温で固体であるフッ化キセノンを昇華させて発生させるガスボンベ周辺に設けられたヒーターの温度を制御して所望の圧力にコントロールする。低蒸気圧用マスフローコントローラーを用いても良い。基板温度はペルチェ素子など温度制御性能に優れた装置を用いて調整する。ペルチェ素子を用いれば温めることも冷却することも自由に出来る。基板温度を測定する温度計と共にフィードバック回路を形成することで自由に基板温度を制御する。基板温度は温度変化に対して指数関数的に変化する反応ガスの吸着確率や反応後生成物の離脱速度に大きな影響を与えるため0.1度よりも正確に制御することが望ましい。電子ビームエネルギーは反応体積(反応半径で囲まれる領域)を決めるため必要に応じて高くしたり低くしたりする。本発明では色収差を高次まで補正出来る収差補正装置を用いることで低エネルギーに於いて数nmまで絞れるような工夫がされている。電子ビーム電流は反応速度を決定するため、必要なプロセス速度に成るように決定する。電子ビーム比率は電子ビームが照射されている時間と照射されていない時間のデューティー比を指している。
【0099】
1次電子ビームとガスとの化学反応を起こすためには、反応ガス分子が電子ビーム照射領域に存在することが必要である。単位面積当たりの電子ビーム照射時間に対してガス供給量が小さい場合、電子ビームが照射されても電子ビーム照射点に反応ガスが無いために化学反応は起こらない。ガス拡散および表面吸着時間と電子ビーム照射タイミングが上手くかみ合うようにデューティーを決定する。基板バイアスはフォトマスクに印加する電圧を示している。電子ビーム励起エッチング反応は基板電圧に依存することが知られており、印加する電圧に依存してサンプル表面の2次電子分布が変化するため、エッチング速度やエッチング異方性が変化する。所望のエッチング形状が得られるバイアス電圧を選択し使用する。プロセス進行に合わせてバイアス電圧を時間変化させることもできる。電子ビームサイズは最小加工サイズを決定する重要なパラメータである。電子ビームの最小径は電子ビームエネルギー、照射電流および電子光学系の収差によって決まる。本発明の装置では収差補正装置を搭載しており、電子ビーム光学系の収差を原理的に0にすることが可能である。プロセスに必要な種々のエネルギーにおいて1nmから数十ナノメートルの電子ビーム径を得ることが出来る。ここでは標準的な値として10nmを設定している。
【0100】
図7の(b)は堆積プロセス条件例を示す。
【0101】
図7の(b)において、図示の下記のプロセス条件は、既述した図6の(b)の目標形状境界の内部を1次電子ビームで照射しつつ走査した場合に堆積(デポジション)される条件である。
【0102】
1 ガス種類 W(CO)6
2 ガス圧力 0・1Pa
3 基板温度 10℃
4 電子ビームエネルギー 400eV
5 電子ビーム電流 10pA
6 電子ビーム比率 1:10
7 基板バイアス電圧 10V
8 反応半径 10nm
図7の(b)について、詳細に説明する。
【0103】
デポジションガスとしては例えばタングステンカルボニルを利用することが出来る。ガス圧力は常温で固体であるタングステンカルボニルを昇華させて発生させるガスボンベ周辺に設けられたヒーターの温度を制御して所望の圧力にコントロールする。基板温度はペルチェ素子など温度制御性能に優れた装置を用いて実行する。ペルチェ素子を用いれば温めることも冷却することも自由に出来る。基板温度を測定する温度計と共にフィードバック回路を形成することで自由に基板温度を制御する。基板温度は温度変化に対して指数関数的に変化する反応ガスの吸着確率や反応後生成物の離脱速度に大きな影響を与えるため0.1度よりも正確に制御することが望ましい。電子ビームエネルギーは反応体積を決めるため必要に応じて高くしたり低くしたりする。本発明では収差補正装置を用いることで低エネルギーに於いて数nmまで絞れるような工夫がされている。電子ビーム電流は反応速度を決定するため、必要なプロセス速度に成るように決定する。電子ビーム比率はデューティー比を指している。電子ビームとガスとの化学反応は反応ガス分子が電子ビーム照射領域に存在することが必要である。単位面積当たりの電子ビーム照射時間に対してガス供給量が小さい場合、電子ビームが照射されても化学反応は起こらない。ガス拡散および表面吸着時間と電子ビーム照射タイミングが上手くかみ合うようにデューティーを決定する。基板バイアスはフォトマスクに印可する電圧を示している。電子ビーム励起エッチング反応は基板電圧に依存することが知られており、印加する電圧に依存してエッチング速度やエッチング異方性が変化する。所望のエッチング形状が得られるバイアス電圧を選択し使用する。電子ビームサイズは最小加工サイズを決定するパラメータである。電子ビームの最小径は電子ビームエネルギー、照射電流および電子光学系の収差によって決まる。本発明の装置では収差補正装置を搭載しており、電子ビーム光学系の収差を原理的に0にすることが可能である。そのため、種々のエネルギーにおいて1nmから数十ナノメートルの電子ビーム径を得ることが出来る。ここでは標準的な値として10nmを設定している。デポジション用の膜としては金属だけではなく、炭素など酸素プラズマエッチングで除去できるようなアドホック構造を作るために用いることも出来る。炭素の場合はフェナントレインなどの炭化水素化合物が利用できる。これらを用いると中空の構造物や下地から浮いたような3D構造物を作製可能となる。
【0104】
プロセス再現性が確実に得られるように、数値で与えられたプロセスデータ(圧力、流量、温度、ガス種類、電子ビーム条件等)が電子ビーム走査に同期してリアルタイムに実現あるいは変更できるようにデジタルプロセス制御系が組まれている。これらの全体制御はPC内に記憶されたデジタルプロセス制御ソフトウェアーを動作させることにより実行される。
【0105】
図8は、本発明の修復プロセスのフローチャートを示す。
【0106】
図8において、S1は、アライメントする。これは、図1の装置に、サンプル13としてフォトマスクをロボットによりセットし、アライメントマークをもとにアライメントする。これにより、フォトマスク上の任意の座標に位置づけ、欠陥検査装置の出力する座標を利用してSEM画像を自動取得することなどが可能となる。
【0107】
S2は、修復対象を認識(SEM画像取得)する。これは、セットしたフォトマスクの欠陥情報をもとに、欠陥のある部分を含む修復対象フォトマスク表面のSEM画像を取得する(1次電子ビームでフォトマスクの該当領域を走査し、そのときに発生した2次電子を検出・増幅し、SEM画像を取得する)。
【0108】
S3は、修復点座標を用いてCADデータから目標画像抽出する。これは、S2で取得したSEM画像上の欠陥のある修復点座標を用い、CADデータ(設計データ)を参照して目標画像を抽出する。
【0109】
S4は、CADデータから目標形状に画像変換する。これは、S3でCADデータから抽出した目標画像をもとに、修復対象のフォトマスクのプロセスに対応した目標形状の画像(疑似SEM画像)に変換する。これにより、CADデータから修復対象のフォトマスクのプロセスを実行したときに生成される理想的な画像(疑似SEM画像)を自動生成することが可能となる。
【0110】
S5は、差分を評価する。これは、S4で生成氏した疑似SEM画像と、S2で取得したSEM画像との欠陥部分の差分を算出する。
【0111】
S6は、プロセス領域を特定する。これは、S5で算出した差分の領域を含む処理対象(プロセス領域)を特定する。
【0112】
S7は、プロセス方法、順番、速度、条件を設定する。これは、S6で特定したプロセス領域に、プロセス方法、順番、速度、条件を設定する。
【0113】
S8は、プロセス実行する。これは、S7で設定されたプロセス方法、順番、速度、条件で、プロセス領域の修復を実行する。
【0114】
S9は、プロセス結果評価する。これは、S8のプロセス実行後に、SEM画像を取得し、疑似SEM画像との差分を取得し、修復の度合を評価する。
【0115】
以上のS1からS9の手順により、フォトマスクの欠陥情報をもとに、欠陥がある部分を含んだ疑似SEM画像を生成し、現実のフォトマスクのSEM画像との差分を抽出し、この差分がゼロとなるように修復することにより、フォトマスクの欠陥部分を自動的に修復(エッチング、デポジション)することが可能となる。
【0116】
図9は、本発明の修復プロセスの説明図を示す。
【0117】
図9の(a)は欠陥座標例(図8のS1)を示す。
【0118】
図9の(aー1)は欠陥座標例を表し、図9の(aー2)は欠陥座標データ例を表す。これは、フォトマスク上の欠陥のある座標の表示例である。
【0119】
図9の(b)は画像例(図8のS2,S3,S4)を示す。
【0120】
図9の(b-1)はSEM画像例(図8のS2)を示し、図9の(b-2)はCAD画像例(図8のS3)を示し、図9の(b-3)は疑似SEM画像例(図8のS4)を示す。
【0121】
図9の(c)は差分画像データ例(図8のS5)を示す。これは、疑似SEM画像と、SEM画像との差分の画像の例である。
【0122】
図10は、本発明の修復説明図を示す。
【0123】
図10の(a)は欠陥範囲例を示す。これは、欠陥中心座標(x、y)とし、これを中心に範囲(Δx、Δy)の画像を欠陥画像とすることを表す。
【0124】
図10の(b)は、疑似SEM画像例を示す。
【0125】
図10の(b-1)は設計データ(CADデータ)例を模式的に示す、図10の(b-2)は疑似SEM画像例を示す。これは、設計データをもとに所定のプロセス処理を実行したときに生成される理想的な画像(疑似SEM画像)を生成したものである。
【0126】
図10の(c)は修復例を示す。
【0127】
図10の(c-1)は欠陥画像例を示す。ここでは、パターンの中間部分に右に凸のパターン(欠陥)が形成されている。
【0128】
図10の(b-2)は疑似SEM画像例を示す。これは、図10の(b-1)の欠陥画像例の設計データをもとに、当該欠陥のあるフォトマスクと同じプロセスにより生成した理想的(欠陥のない)な疑似SEM画像の例を示す。
【0129】
図10の(c)は修復例を示す。これは、図10の(c-2)の疑似SEM画像と、図10の(c-1)の欠陥画像(SEM画像)との差分をゼロとなるように、図10の(c-3)の修復(エッチング、デポジション)を実行した後の修復画像例を示す。
【0130】
次に、図8から図10について、以下具体的に詳細に説明する。
【0131】
先ず欠陥検査装置が出力する欠陥位置座標(KLARF等)に従って順番にフォトマスク上の欠陥位置のSEM画像を取得する(図8のS2)。上記欠陥位置座標を用いて修正対象デバイスの設計データベースにアクセスする(図8のS3)。図10の(a)に示したように欠陥の中心座標と共に取り込むデータの範囲を指定する。取り込む範囲は修正対象の欠陥全体および欠陥検査装置と本発明のマスク修正装置(図1)の位置座標のずれが吸収できる程度の範囲(例えば1ミクロン)を含む大きさにすることが望ましい。
【0132】
修復対象のCADデータがフォトマスク修正装置(図4)に転送される。CADデータは実際にフォトマスク上に形成されているパターンとは異なるため、図10の(b)に示したようにCADデータと実際のフォトマスクに出来上がる形状を反映したSEM画像の対応関係を学習させたGAN等のディープラーニングあるいはコーナーラウンディングやSEM画像特有の雑音等を表現する画像処理を用いた画像変換を行い、CADデータ形状をフォトマスク上の実物パターンに似せた疑似SEM画像に変換する(図8のS4)。パターンマッチングを用いて修正対象箇所の画像(欠陥画像)と疑似SEM画像(修正目標画像)の位置を合わせて、欠陥画像と疑似SEM画像の差分画像を計算する(図8のS5)。この差分画像が修復すべき形状に対応する。差分は2次元画像上の差分と3次元構造上の差分がある。2次元画像差分は2つの画像の差から求められる。3次元差分はステレオ法、切断法、モアレ法あるいはAFM等を用いて得られた構造物の3次元プロファイルと理想構造の持つ3次元プロファイルとの差分計算により求まる。このようにして修正プロセスを行う範囲、量および目標が決定される。
【0133】
電子ビーム励起プロセスには電子ビームサイズとは異なる特有の最小加工分解能が存在する。修復分解能は反応半径と本明細書では定義しており、材料に電子ビームが入射して生じる二次電子の範囲になる。その範囲は電子ビームプローブサイズよりもかなり大きく数nmから数十nmに及ぶ。この値は電子ビームのプローブサイズや修正対象材料によって変化するため、1つのプロセスパラメータとなる。
【0134】
半導体デバイスで利用されるパターンには、歩留まりを保証するためにパターン形状に制限があり、同じようなパターンが繰り返し利用される。それら基本パターンの修復プロセスを1つの単位としてシーケンスを組んで置き、それを組み合わせることで任意形状のパターン修復を実行することが出来る。
【0135】
フォトマスク修正は電子ビーム励起反応の反応半径を反応ケースごとに適宜考慮して自動修正後に目標形状との差が0に成るようにECAMファイルが生成されそれに従って自動実行される(図8のS8)
修正には難易度がある。またそれを修正する方法には色々な手順がある。簡単な修復であれば予め用意してある1つの単位プロセスで終了する場合がある。その場合は修正点に対して1つのプロセス条件を設定して電子ビームを走査しデポジションあるいはエッチングを行うことで一度に目標とする形状を実現する。複雑なパターンに対しては、単純なパターンの組み合わせに還元して単位プロセスを自動組み合わせするか、いくつかのパスあるいはレイヤーを考え、そのパスあるいはレイヤーごとに修正に使用する電子ビーム、ガス条件を変化させながら徐々に修正を行っていく方法を採用することが出来る。これらのプロセス手順はコンピュータが自動発生することも出来るし、工業ロボットの複雑な動きを教え込むのと同じ要領で人間がティ―チングすることも出来る。以上の結果、得られたファイルにそれぞれ名前を付けてECAMデータとして記録しておく。
【0136】
フォトマスク材料、修復量などを考慮して最適なプロセス方法を選択あるいはプロセス順番、電子ビームのエネルギーや電流値および走査座標位置や速度などを自動生成してプロセス実行ファイル(ECAMファイル)とする。フォトマスク修正装置(図1図4)はこのファイルに従って完全自動でフォトマスクを修正する。
【0137】
図10の(c)に示したように、プロセス実行ファイル(ECAM)に従ってフォトマスク修正装置が電子ビーム照射位置やガス種および量あるいは温度を制御しフォトマスクを自動修復する。最後にSEMを用いて修復後のパターンを平面あるいは立体的に観察し修復が正しく実行されたかどうか確認する。必要に応じて光学シミュレーションを実行あるいはAIMS等の実際の露光条件を実現できるシミュレーション顕微鏡等を利用して確認する。
【0138】
図11は、本発明の修復説明図(その2)を示す。
【0139】
図11の(a)は欠陥画像例(凸)を示す。これは、図示のように、右側に欠陥(凸」がある欠陥画像例を示す。
【0140】
図11の(a-1)は欠陥画像例(凸)を示す。
【0141】
図11の(a-2)は欠陥画像例(凸)の欠陥(凸)がある部分(あるいは少し大きい部分)を切除した後の修復対象を示す。
【0142】
図11の(a-3)は修復画像を示す。これは、図11の(a-2)の修復対象に対して、疑似SEM画像をもとに修復した後の修復画像を示す。
【0143】
図11の(b)は欠陥画像例(凹)を示す。これは、図示のように、右側に欠陥(凹)がある欠陥画像例を示す。
【0144】
図11の(b-1)は欠陥画像例(凹)を示す。
【0145】
図11の(b-2)は欠陥画像例(凹)の欠陥(凹)がある部分(あるいは少し大きい部分)を切除した後の修復対象を示す。
【0146】
図11の(b-3)は修復画像を示す。これは、図11の(b-2)の修復対象に対して、疑似SEM画像をもとに修復した後の修復画像を示す。
【0147】
次に、図11について、詳細に説明する。
【0148】
フォトマスク修正はどのように行っても成功するとは限らない。例えば、差分に当たる場所にデポジションを実行しても修正対象とデポジション部分には境界が生じ、デポジションした構造物は付着力が弱いため、数回フォトマスク洗浄等を行うと離脱してしまう。あるいは構造物がプロセス分解能に比較して小さすぎてデポジションの分解能では実現できない場合がある。また、修正対象構造は任意なのでその構造を考慮してコンピュータが自動的に修復するのは原理的に無理がある。そのような場合は、デポジションを行う領域を含む少し広い領域をエッチングによって削り、決まった形のフレッシュな領域を作り出す手順を踏むことが有効である。このように欠陥部分の切除を行うことで、作業が一定に成りかつ堆積プロセスの付着力が増加あるいは安定させることが出来る。また、堆積プロセス実施前の形状を所望の形あるいは常に決められた標準形状にすることが出来るため、予めテンプレートとしていくつかの自動処理形状についてのECAMデータを用意しておけば、修復対象の存在する周辺の影響を受けずに自動処理を用いて最適な堆積およびエッチングプロセスを行ってマスクの自動修復が実施できる。
【0149】
切除処理の応用として、余分にデポジションを行うオフセットデポジションと余分な部分を除去するエッチングを組み合わせれば、堆積プロセスによって生じた不要な形状を再度エッチングによって除去することにより、さらに望ましいフォトマスク修復形状を得ることが出来る。これらのプロセスフローはプロセス手順データベースに蓄積しておくことが出来る。
【0150】
例えば、単にデポジションを実施した場合、デポジションで得られるパターンエッジは垂直には成らず、垂れている場合がある。13.5nmを用いるEUV用のフォトマスクではエッジがだれていると反射率が変化するため、エッジは90度に切り立っている必要がある。そのような場合、デポジションオフセット量Xnmを用いる。一旦最終修正目標よりもXnm広い範囲にデポジションを行った後に、デポジションよりも相対的に垂直断面が得やすいエッチングプロセスを行って最終形状を形成することでエッジが90度に切り立ったフォトマスク修正を実現できる。具体的には設計データよりもXナノメートルだけ大きな図形に変換した図形を目標としてデポジションを行う。ついで、CADデータから得られる最終修復目標と成る図形に成るようにエッチングを行う。必要に応じてデポジションとエッチングを複数回組み合わせて修正プロセスを実行しても良い。集積回路のパターンは似たものが多いので、学習によって種々のパターンと範囲の関係を学習させて、フォトマスク修正時に現れる種々のパターンに対して適切な範囲を自動選択することができる。
【0151】
図12は、本発明の修復プロセスの全体フローチャートを示す。
【0152】
図12において、S21は、マスクロードする。これは、修復対象のフォトマスクを装置(図1)のサンプル13としてロードするように指令する。
【0153】
S22は、XYステージまでロボット搬送する。これは、S21のマスクロード指令に応じて、ロボットがフォトマスクを図1の装置のXYステージまで搬送する。
【0154】
S23は、電子ビーム加工範囲に入るようにXYステージ移動する。これは、S22でフォトマスクがXYステージに搬送されて固定された後、細く絞った1次電子ビームを当該フォトマスクに照射しつつ走査し、1次電子ビームによる加工範囲内に入るようにXYステージを移動する。
【0155】
以上によって、フォトマスクに1次電子ビームを照射しつつ走査し、エッチングあるいはデポジションできる準備が完了したこととなる。
【0156】
S24は、データ読み取りプロセス開始する。
【0157】
S25は、X1Y1-X2Y2領域の内側に堆積あるいはエッチングする。これは、後述する図13の(aー2)に示すように、ここでは、太い1次電子ビームで修復対象の少し内側の部分をプロセス(堆積、エッチング)する。これにより、修復対象の少し内側の部分の全部が太い1次電子ビームで高速に堆積あるいはエッチングされ、短時間にプロセスを実行できる。
【0158】
S26は、X1Y1-X2Y2領域のエッジ(境界)の部分に堆積あるいはエッチングする。これは、後述する図13の(aー2)に示すように、ここでは、細い1次電子ビームで細かく走査ステップを踏みながら修復対象の外側の境界の部分をプロセス(堆積、エッチング)する。これにより、修復対象の境界部分を精度良好に1次電子ビームで堆積あるいはエッチングされ、修復対象の境界部分の精度を向上させたプロセスを実行できる。
【0159】
S27は、パージガス投入する。これにより、堆積、エッチングに使用した反応性ガスを完全に外部に排気したり、中和したりなどできる。
【0160】
S28は、マスクをXYステージから取り出す。
【0161】
S29は、マスクをアンロードする。
【0162】
以上によって、修復対象のフォトマスクを装置(図1)のステージに搬送して固定し、その修復対象の境界部分を細い1次電子ビームを照射しつつ走査、内側の部分の全体を太い1次電子ビームを照射しつつ走査し、同時に噴射した反応性ガスとにより、修復対象の境界部分は精度良好、内部は高速に堆積あるいはエッチングを行い、フォトマスクの欠陥の修復を自動的に行うことが可能となった。
【0163】
次に、図12について、具体的に詳細に説明する。
【0164】
フォトマスク上のパターンのエッジ領域はエッジラフネスが小さく急峻なパターンエッジを必要とする。修復対象の設計データからパターンのエッジ領域を抽出しエッジ領域から予め決められた少し内側の範囲を境界領域と定義する(図13の(aー2)参照)。エッジ領域に対して例えば2nm程度に1次電子ビームを細く絞った条件で堆積(エッチング)プロセスを行う。それ以外の内側の領域に対しては1次電子ビームサイズを2nm以上電流値も10pAに大きくして高速に堆積(エッチング)が行われる条件を適用する。
【0165】
以上のようにすると正確な修復が実施できるとともに修復時間を短くすることが出来る。これらをプロセス手順データベースに記憶しておくことでECAMを用いて自動マスク修復に利用することが出来る。
【0166】
図13は、本発明の修復プロセスにおける電子ビームの走査説明図を示す。
【0167】
図13の(a)は、走査ビーム例を示す。
【0168】
図13の(a-1)は修復対象を示す。図示の修復対象は、フォトマスク上の欠陥のあるパターンの座標(中心座標)で特定された欠陥対象(パターン例)である。
【0169】
図13の(a-2)はエッジ領域(境界領域)を示す。これは、図13の(a-1)の欠陥対象(パターン)のうち、外側の境界から少し内側の部分をエッジ領域としたものである。このエッジ領域は、細い1次電子ビームを照射しつつ走査し、精度良好にプロセス(堆積あるいはエッチング)する領域である。エッジ領域の内側の領域は、太い1次電子ビームで大きなステップで照射しつつ走査し、短時間にプロセス(堆積、エッチング)する領域である。
【0170】
図13の(b)は、ビーム走査方法例を示す。
【0171】
図13の(b-1)は、ベクトルスキャンを示す。ベクトルスキャンは、図示の修復対象のパターンについて、例えば図示の矢印の方向に1次電子ビームを照射しつつ走査し、その境界部分(エッジ領域)を照射し、堆積あるいはエッチングして修復するものである。
【0172】
図13の(b-2)は、ラスタスキャンを示す。ラスタスキャンは、図示の修復対象のパターンについて、例えば図示の矢印の方向に示すように、一定方向のスキャンについて、必要な部分のみ照射(ここでは、境界領域(エッジ領域)のみ照射)し、堆積あるいはエッチングして修復するものである。
【0173】
図14は、本発明のダメージレスエッチング説明図を示す.これは、フォトマスク上の欠陥部分の高いところから低いところに向かって順番にエッチングし、オーバーエッチングして下地にダメージが入るのを防止したものである。
【0174】
図14の(a)は、2層の欠陥パターンがある状態を示す。
【0175】
図14の(b)は、1番目の層のパターンをエッチング処理で除去した後のパターンである。
【0176】
図14の(c)は、2番目の層のパターンをエッチング処理で除去した後のパターンである。
【0177】
以上のように、複数の層あるいは高さバラツキのある欠陥パターンがある場合には、高い層のパターンから順番にエッチングして除去することにより、他のパターンに損傷を与えることなく、エッチング処理を行うことが可能となる。
【0178】
次に、図14について、詳細に説明する。
【0179】
フォトマスク修正におけるエッチングはフォトマスク自身を傷つける可能性があるプロセスなので慎重に行う必要がある。フォトマスク上に形成されている通常のパターンの高さは精密薄膜堆積プロセスで形成されるためnmオーダーで一定である。しかしながら、露光装置やその他のプロセス装置から生じた異物あるいはプロセス異常が生じた場合必ずしもフォトマスク上に存在する物体の高さは一定ではないどころか不明である。
【0180】
そのような場合、一律に電子ビームエッチングを実行すると膜の厚いところは残り薄いところは下地までエッチングされてマスクに損傷を与える。これでは修復を正しく実行できない。本実施例では電子ビームを任意の場所に照射できる特性を活かし、エッチング対象物の高さを予め測定して3D構造を明らかにしたうえで、高さの高い所から高さが一定に成るように同じ高さを持つ場所をグルーピングして順番に1層ずつエッチングを実施する。このようにすると修復対象となる欠陥部分に高さ変動が存在しても下地の境界まで傷めずにエッチングを実行できる。
【0181】
高さの測定は、SEMを用いたステレオ画像やモアレ法等から推定することも出来るし、AFM等他の装置で測定したデータを利用しても良い。マスク修正装置内にAFMを内蔵することも出来る。それら測定した3D形状をデータベースに蓄積して呼び出すことにより、加工時に高さを知ることが出来る。ステレオSEM画像を利用した場合はその場で高さを測定出来るため加工途中に修復対象物の高さを知ることが可能で高さを測りながらエッチングを行うことが出来る。図13に示したように高い場所から順番にエッチングを実行し,最後に一番低い場所をエッチングして終了と成る。このように加工すると下地を傷めることが無いし、エッチングガスとして下地との選択比が非常に大きなものを使用しなくても選択エッチングが可能となる。
【0182】
図15は、本発明のデジタル電子ビームエッチング・堆積説明図を示す。
【0183】
図15の(a)は電子ビーム原子層エッチング(電子ビームALE)を示す。これは、従来の難エッチング材料について、予め酸素分子層を設けて(図15の(a-2)参照)、電子ビームを照射した場所に対して1原子層ごと精密にエッチング可能にしたものである。
【0184】
図15の(a-1)は、欠陥部分のあるフォトマスクの模式断面図を示す。
【0185】
図15の(a-2)は、フォトマスク上に形成された欠陥パターンの酸素分子層の模式断面図を示す。
【0186】
図15の(a-3)は、図15の(a-2)のフォトマスクの上に形成された欠陥パターンである酸素分子層の上にヘキサフルオロアセチルアセトン層を形成し、その上から電子ビームを照射した状態の模式断面図を示す。図示のように、1次電子ビームを、照射すると、ヘキサフルオロアセチルアセトン層と、その下の酸素分子層とが作用しあい錯体を形成し、揮発性となり、エッチングすることが可能となる。その結果、図15の(a-4)に示すように、エッチングされる。
【0187】
図15の(a-4)は、フォトマスク上の酸素分子層がエッチングされた後の模式断面図を示す。
【0188】
以上にように、従来の難エッチング材料であっても、酸素あるいはオゾンを供給し揮発性に変換してエッチングすることが可能となった。
【0189】
次に、図15の(a)について、詳細に説明する。
【0190】
遷移金属のように通常のフッ化キセノンを用いたエッチング方法ではエッチングされない金属のエッチングにはβジケトン類であるヘキサフルオロアセチルアセトン等を利用することが出来る。このガスを用いるとNi、Co、Pt、Cu、Ru、Pd、Fe、Mn、Ir、Tb、Ta、Tiなどの遷移金属がエッチングされたのちに形成される化合物が揮発性となり容易にNiなどのエッチングが進行する。ヘキサフルオロアセチルアセトンはニッケルあるいはニッケルの酸化物に対して錯体をつくる性質があるため、予めニッケルを酸化するプロセスを含むことが出来る。その場合には予め酸素あるいはオゾンを供給してニッケルを酸化させるか電子ビーム照射時に酸素とヘキサフルオロアセチルアセトンを同時供給することで実現できる。酸化プロセスは高速応答弁を用いて反応ガスをパルス状にフォトマスク表面に供給することで行われる。
【0191】
コバルトや銅などに対しても同様のエッチングを実施できる。このように本発明では将来 High NA EUV 露光装置で使用される難エッチング材料に対しても問題なくエッチングが実施可能でマスク修正を実施できる。金属酸化膜形成が反応律速過程にあるため、最初に酸化膜形成を行い、次にヘキサフルオロアセチルアセトン導入による金属錯体形成、最後に電子ビーム照射を行うことで被膜を蒸発除去し1つのエッチングプロセスを形成する。そのため、導入するガス量が反応律速となるようにパルス状にチャンバーに導入し、さらにガス導入サイクル回数を指定することで精密にエッチング量を制御できる。これによりエッチング終点を管理する必要が無く、かつ、ダメージレス局所エッチングを実行できる。従来のALEプロセスとは異なり、電子ビームが照射された場所のみがエッチングされるのでマスクレスでパターンを形成できる。
【0192】
図15の(b)は電子ビーム原子層デポジション(電子ビームALD)を示す。これは、従来の難デポジション材料について、予め金属錯体層を設けて(図15の(b-2)参照)、電子ビームを照射した場所に対して1原子層ごと精密にデポジション可能にしたものである。
【0193】
図15の(b-1)は、欠陥部分のあるフォトマスクの模式断面図を示す。
【0194】
図15の(b-2)は、フォトマスク上に形成された欠陥パターンの金属錯体層の模式断面図を示す。
【0195】
図15の(b-3)は、図15の(b-2)のフォトマスクの上に形成された欠陥パターンである金属錯体層の上に水素層を形成し、その上から電子ビームを照射した状態の模式断面図を示す。図示のように、1次電子ビームを、照射すると、水素層と、その下の金属錯体層とが作用しあい還元されて金属を形成し、デポジション(堆積)することが可能となる。その結果、図15の(b-4)に示すように、デポジションされる。
【0196】
図15の(b-4)は、フォトマスク上の金属錯体層が水素還元されてデポジションされた後の模式断面図を示す。
【0197】
以上にように、従来の難デポジション材料であっても、金属錯体層を還元してデポジションすることが可能となった。
【0198】
次に、図15の(b)について、詳細に説明する。
【0199】
電子ビーム励起堆積反応の前駆体として難エッチング材料である遷移金属特に、ニッケルやコバルトあるいは銅のヘキサフルオロアセチルアセトン錯体を利用することで、ニッケル、コバルトおよび銅を電子ビームデポジションすることも出来る。エッチングの場合と逆に水素などの還元剤を入れておくことが必要である。還元ガスとしては水素などが利用できる。主反応ガスに加えて反応を安定化するための化学物質であるジエチレングリコールジメチルエーテルなどを用いてもよい。水素ガスがフォトマスク表面に有効に届くように水素ガスに加えてアルゴン、ヘリウム、窒素、アンモニアガスなどを用いることも出来る。金属堆積を安定化する目的で前処理ガスを供給することも出来る。例えばH2、H2O 、H2O2などの水素含有ガスAr 、He 、Krなどの不活性ガスN2、NH3、N2O 、NO2などの窒素含有ガスなどがある。水素による金属還元反応が律速反応になるので、最初に金属錯体をサンプル表面に導入、次いで水素導入、電子ビーム照射による金属への還元の1サイクルが1回のデポジションプロセスを決定する。水素等還元ガスは高速応答弁を用いてパルス状にフォトマスク表面に供給される。エッチングの場合と同様に、サイクル数を決めることで終点検出を行わなくても所望の厚みの金属膜を得ることが出来る。電子ビームの照射された場所のみ反応が起こるので一般に知られているALDプロセスとは異なり電子ビーム走査によってマスクレスでパターン形成を実現できる。
【0200】
図16は、本発明の電子ビーム形成説明図を示す。
【0201】
図16の(a)は、支持構造例1を示す。
【0202】
図16の(a-1)は、支持構造の例を示す。ここでは、図示のように、立方体を4つ横に並べた構造である。
【0203】
図16の(a-2)は、デポジションの例を示す。これは、図16の(a-1)の支持構造の周囲に、図示のように、デポジション(堆積)した後の構造を示す。
【0204】
図16の(a-3)は、支持構造除去の例を示す。これは、図16の(a-2)のデポジションした後、内部の支持構造を除去した後の構造を示す。
【0205】
図16の(b)は、支持構造例2を示す。
【0206】
図16の(b-1)は、支持構造の例を示す。ここでは、図示のように、立方体を10個、階段状に並べた構造である。
【0207】
図16の(b-2)は、デポジションの例を示す。これは、図16の(b-1)の支持構造の周囲に、図示のように、デポジション(堆積)した後の構造を示す。
【0208】
図16の(b-3)は、支持構造除去の例を示す。これは、図16の(b-2)のデポジションした後、内部の支持構造を除去した後の構造を示す。
【0209】
次に、図16の(a)、(b)について、詳細に説明する。
【0210】
本発明の装置は3Dプリンターと同様に空中に任意のパターンを作ることも出来る。例えば、3Dプリンターで行うようにパターンの下が抜けている構造の場合、支持用の構造体を作りその上に目的とする構造体を作ったのちに支持構造を取り除く方法を用いることが出来る。
【0211】
例えば、支持構造体を炭素で作る場合にはフェナントレインなどの炭化水素化合物をチャンバーに導入して電子ビームを照射することで実現できる。炭素支持構造は酸素プラズマエッチングで容易に除去できる。同様に、酸化シリコン等を支持構造に用いることが出来る。この場合には、フッ素ガス等を用いて支持構造を除去することが出来る。
【0212】
以上の方法を用いることで3Dプリンターと同様に任意の構造物をnmオーダーで作ることが出来る。3Dプリンター同様、任意の位置にデポジションを実施できるので、任意の角度の壁や穴を作ることが出来るのは言うまでもない。1つのブロックが大きいので荒く見えるが、1つのブロックサイズを小さくするあるいはサブピクセル位置に積み上げることで、いくらでも滑らかな形状を持つ構造を作ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0213】
図1】本発明の1実施例構成図である。
図2】本発明の垂直ガス導入例である。
図3】本発明の垂直ガス導入例(その2)である。
図4】本発明のシステム構成図である。
図5】本発明の反応半径説明図である。
図6】本発明の反応半径説明図(その2)である。
図7】本発明のプロセス条件例である。
図8】本発明の修復プロセスのフローチャートである。
図9】本発明の修復プロセスの説明図である。
図10】本発明の修復説明図である。
図11】本発明の修復説明図(その2)である。
図12】本発明の修復プロセスの全体フローチャートである。
図13】本発明の修復プロセスにおける電子ビームの走査説明図である。
図14】本発明のダメージレスエッチング説明図である。
図15】本発明の電子ビームエッチング・堆積説明図である。
図16】本発明の電子ビーム形成説明図である。
【符号の説明】
【0214】
1:電子銃
2:ブランキング電極
3:ブランキングアパチャー
4:パルスブランキング装置
5:収差補正装置
6:電子検出装置
7:偏向装置
8:対物レンズ
10:試料室
11:ガス噴射ノズル
12:高さセンサー
13:サンプル
14:サンプル温度制御
14^1:レーザー計測
15:Zステージ
16:サンプルバイアス電圧制御
17:XYステージ
21:真空計
22:除振台
23:TMP
24:ドライポンプ
25:除振装置
26:ガス流量制御装置
27:ガス供給装置
31:真空引き
32:反応ガス導入
33:ガスカーテン
34:ガスカーテン穴
35:電子ビーム穴
36:反応ガス穴
41:マスク修正装置
411:画像処理装置
412:画像認識装置
413:プロセス手順発生装置
42:プロセス手順データベース
43:反応半径等電子ビームプロセス情報データベース
44:パターン3D化データベース
45:修復完了基準データベース
46:設計データサーバー
47:欠陥検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16