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特開2023-171709車載カメラシステムおよび障害物検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171709
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】車載カメラシステムおよび障害物検知方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231128BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20231128BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20231128BHJP
【FI】
G08G1/16 D
H04N5/225 600
H04N5/232 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175334
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】下赤所 悠人
【テーマコード(参考)】
5C122
5H181
【Fターム(参考)】
5C122DA14
5C122EA06
5C122EA55
5C122FH14
5C122GG05
5C122HB10
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181LL01
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】運転室内に設置されるフロントセンシングカメラの車両直前の死角空間内の障害物の検知を良好に低減できる上に、開発、導入、保守のコストを低く抑えること。
【解決手段】この車載カメラシステムは、車両の運転室から車両の前方を撮像する撮像部と、撮像部の車両直前の死角空間を通じて前記死角空間より遠位側の路面にラインレーザーを照射するラインレーザー照射部とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転室から車両の前方を撮像する撮像部と、
前記撮像部の車両直前の死角空間を通じて前記死角空間より遠位側の路面にラインレーザーを照射するラインレーザー照射部と
を具備する車載カメラシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車載カメラシステムであって、
前記ラインレーザー照射部は、前記撮像部の光軸方向と交わる方向に連続したラインレーザーマーカーを前記路面に形成するように構成される
車載カメラシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の車載カメラシステムであって、
車両の停止状態または駐車状態から発進準備状態又は始動準備状態に遷移したとき、前記ラインレーザー照射部から前記ラインレーザーを照射させるように制御する制御部をさらに具備する
車載カメラシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の車載カメラシステムであって、
前記制御部は、前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記死角領域内の障害物の有無を判定するように構成される
車載カメラシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の車載カメラシステムであって、
前記制御部は、前記障害物の存在を判定したとき、前記車両の緊急ブレーキの発動を指示するように構成される
車載カメラシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の車載カメラシステムであって、
前記ラインレーザー照射部は、前記車両の前端部の車体の底より低い位置から前記ラインレーザーを照射するように構成される
車載カメラシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の車載カメラシステムであって、
前記死角空間は、前記車両のボンネットによって遮られる前記撮像部の視界である
車載カメラシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の車載カメラシステムであって、
前記ラインレーザーが赤色である
車載カメラシステム。
【請求項9】
車両の運転室から車両の前方を撮像し、
前記車両の直前の前記撮像部の死角空間の遠位側の路面にラインレーザーを照射し、
前記車両の停止状態または駐車状態から発進準備状態又は始動準備状態に遷移したとき、前記ラインレーザーの照射をオンにし、
前記撮像された画像に基づいて前記死角領域内の障害物の有無を判定する障害物検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、車載カメラシステムおよび障害物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されているフロントセンシングカメラは視認の優位性、ワイパーによる雨や雪、汚れのふき取りが可能である位置である車室内のルームミラーとフロントガラスの間に設置することが主流となっている。しかしこの設置場所からではボンネットがカメラの画角内に入ってしまい、車両のすぐ前が死角となる。車内の運転者からの視点からも同様の死角ができる。
【0003】
そのため従来では、フロントセンシングカメラとは別に、例えばフロントバンパーなど、死角領域を撮像可能な場所にカメラを設置したり、ミリ波レーダーを用いて死角領域内の障害物の有無を検知する技術が知られている(特許文献1等)。しかし、これらカメラやミリ波レーダーなどは車両に外付けされるので、耐環境性に乏しく、傷や汚れなどによって監視精度が低下する恐れがあるため、機器の管理が不可欠となる。また、ミリ波レーダーを用いた検知システムの開発や導入には多大なコストがかかる。
【0004】
また、車両内にレーダモジュールを搭載することは特許文献2などにより公知である。これにより、傷・汚れに対する保守管理の問題を低減可能である。しかし、反射波を車内へ侵入させるための機構を車両の外装に設ける必要があり、車両外装の設計変更が必要となるなどの課題がある。さらに、レーダー回折により例えばポールなどの細い障害物の検知漏れが生じる恐れがある。
【0005】
さらに、赤外線を用いた死角識別システムが知られる(特許文献3等)。しかし、この場合、赤外線を受光するデバイスが新たに必要となる。また、昼間は太陽光に含まれる強い赤外線に障害物検出用の赤外線が埋もれてしまい、検出精度が低下する、などの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-175603号公報
【特許文献2】特開2006-29916号公報
【特許文献3】特表2003-532959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、車室内に設置されるフロントセンシングカメラには車両のすぐ前が死角となるので、この死角領域に存在する障害物を検知するためのメカニズムが求められる。しかし、上記公知の検知システムでは、開発、導入、保守のコスト、障害物の検知精度のバラツキなどの点で問題がある。
本技術は、運転室内に設置されるフロントセンシングカメラの車両直前の死角空間内の障害物の検知を良好に低減できる上に、開発、導入、保守のコストを低く抑えることのできる車載カメラシステムおよび障害物検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る車載カメラシステムは、
車両の運転室から車両の前方を撮像する撮像部と、
前記撮像部の車両直前の死角空間を通じて前記死角空間より遠位側の路面にラインレーザーを照射するラインレーザー照射部と
を具備する。
【0009】
前記ラインレーザー照射部は、前記撮像部の光軸方向と交わる方向に連続したラインレーザーマーカーを前記路面に形成するように構成される。
【0010】
前記車載カメラシステムは、
車両の停止状態または駐車状態から発進準備状態又は始動準備状態に遷移したとき、前記ラインレーザー照射部から前記ラインレーザーを照射させるように制御する制御部をさらに具備する。
【0011】
前記制御部は、前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記死角領域内の障害物の有無を判定するように構成されてもよい。
【0012】
前記制御部は、前記障害物の存在を判定したとき、緊急ブレーキの発動を指示するように構成されてもよい。
【0013】
前記ラインレーザー照射部は、前記車両の前端部の車体の底より低い位置から前記ラインレーザーを照射するように構成されてよい。
【0014】
前記死角空間は、前記車両のボンネットによって遮られる前記撮像部の視界である。
【0015】
前記ラインレーザーが赤色である。
【0016】
本開示の他の形態に係る障害物検出方法は、
車両の運転室から車両の前方を撮像し、
前記車両の直前の前記撮像部の死角空間の遠位側の路面にラインレーザーを照射し、
前記車両の停止状態または駐車状態から発進準備状態又は始動準備状態に遷移したとき、前記ラインレーザー照射部から前記ラインレーザーを照射し、
前記撮像された画像に基づいて前記死角領域内の障害物の有無を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本技術に係る第1の実施形態の車載カメラシステムの構成を示すブロック図である。
図2】フロントセンシングカメラ10の死角空間およびラインレーザーの光路を示す図である。
図3】車両前方の上記死角空間DSに障害物が存在しない場合に死角空間DSより遠位側の路面に形成されるラインレーザーマーク35、36を示す平面図である。
図4】フロントセンシングカメラ10の撮影像の例を示す図である。
図5】死角空間DSに障害物Bが存在する場合に死角空間DSより遠位側の路面に形成されるラインレーザーマーク35、36のパターンを示す平面図である。
図6】フロントセンシングカメラ10の撮影像の他の例を示す図である。
図7】死角空間DSに障害物Bが存在するときの車両Mの始動時から自動緊急ブレーキ発動までの動作の流れを示す図である。
図8】ラインレーザーマーカー39の変形例を示す図である。
図9】ラインレーザーマーカー39の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[概要]
本実施形態の車載カメラシステム1は、
車両の運転室から車両の前方を撮像するフロントセンシングカメラ10と、
フロントセンシングカメラ10の視点より低い位置から、前記フロントセンシングカメラ10の車両前方近傍の死角空間を通して当該死角空間の遠位側の路面にラインレーザーを照射するラインレーザー照射部20と
を具備するものである。
【0019】
以下、本技術に係る実施形態を図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本技術に係る第1の実施形態の車載カメラシステムの構成を示すブロック図である。
本実施形態の車載カメラシステム1は、フロントセンシングカメラ10と、ラインレーザー照射部20と、コントロールモジュール30と、車両制御ECU40と、ブレーキシステム50と、を有する。
【0020】
フロントセンシングカメラ10は、車両の運転室内から前方を撮像するカメラであり、イメージャ部11と、カメラ制御部12と、IF部13を有する。イメージャ部11は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーなどの撮像素子を用いて撮像し、画像データを生成する。IF部13は、フロントセンシングカメラ10とコントロールモジュール30との間で制御命令や画像データの送受を行う。カメラ制御部12は、フロントセンシングカメラ10の制御およびラインレーザー照射部20のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0021】
ラインレーザー照射部20は、フロントセンシングカメラ10の視点より低い位置から、フロントセンシングカメラ10の車両前方近傍の死角空間を通過してこの死角空間より遠位側の路面にラインレーザー23を照射するユニットである。ラインレーザー照射部20は、1または複数のラインレーザー照射デバイス21、22を有する。
【0022】
コントロールモジュール30は、車両の運転支援のための制御を行うコントローラである。コントロールモジュール30は、IF部31、認識部32、制御部33、CAN(Controller Area Network)通信部34を備える。
【0023】
IF部31は、フロントセンシングカメラ10との通信用のインタフェース部である。IF部31は、フロントセンシングカメラ10のIF部13によって伝送された画像データを受信し、認識部32に供給する。また、IF部31は、コントロールモジュール30とフロントセンシングカメラ10との間で各種命令の送受を行う。認識部32は、IF部31を通じてフロントセンシングカメラ10より伝送された画像データに基づいて死角空間内の障害物の有無を認識する。制御部33は、車両制御ECU40から通知された車両の状態を示す情報に基づいてラインレーザーの照射のオン/オフを切り替える命令を生成し、IF部31を通じてフロントセンシングカメラ10に供給する。また、制御部33は、認識部32により得られた障害物有無の認識結果に基づいて、CAN通信部34を通じて車両制御ECU40に緊急ブレーキの発動を命令する。CAN通信部34は、コントロールモジュール30と車両制御ECU40との通信を処理するユニットである。
【0024】
車両制御ECU40は、コントロールモジュール30から供給された車両制御情報に基づいてブレーキシステム50などの車両各部の制御を行うコントローラである。
【0025】
[フロントセンシングカメラ10の死角空間及び配置]
図2はフロントセンシングカメラ10の死角空間およびラインレーザーの光路を示す図である。同図に示すように、フロントセンシングカメラ10は運転者の視点Vpと近い視点から車両Mの前方を撮像し得るように、例えば、車両Mの天井部分やルームミラー付近などに設置される。ここで、フロントセンシングカメラ10の垂直視野は車両Mのボンネットによって制限されることによって、車両Mの前方近傍に死角空間DSができる。このため、その死角空間DSにもし障害物Bが存在していたとしても、コントロールモジュール30において障害物Bの存在を認識できない。また、運転者の視点Vpもフロントセンシングカメラ10の視点と近い位置にあるため、運転者が目視によってその障害物Bを認識できない場合が多い。
【0026】
本実施形態の車載カメラシステム1は、フロントセンシングカメラ10の視点よりも低い位置から、フロントセンシングカメラ10の車両前方近傍の死角空間DSを通過して死角空間DSよりも遠位側の路面RFにラインレーザー23を照射するラインレーザー照射部20を備える。
ラインレーザー照射部20は、フロントセンシングカメラ10の光軸方向と交わる方向に連続したラインレーザーマーカーを形成するように構成される。
フロントセンシングカメラ10の死角空間DSに障害物Bが存在する場合、死角空間DSより遠位側の路面RFにラインレーザー23が照射されることによって形成されるラインレーザーマークに、ラインレーザー23が路面RFに到達する前に障害物Bによって遮られることによる部分的な欠落が生じる。この欠落部を有するラインレーザーマークに基づき死角空間DSにおける障害物Bの有無を認識することができる。
【0027】
ラインレーザー照射部20は、フロントセンシングカメラ10の死角空間DSを通過して死角空間DSよりも遠位側の路面RFにラインレーザー23を照射することが可能な位置、例えば、フロントバンパーの下端などに設けられる。勿論、ラインレーザー照射部20は、フロントバンパーの下端に限らず、フロントバンパー部分、フロントナンバープレート付近、ヘッドライト付近、ラジエータグリル部分に設けられてもよい。
【0028】
図3は車両前方の上記死角空間DSに障害物が存在しない場合に死角空間DSより遠位側の路面に形成されるラインレーザーマーク35、36を示す平面図である。
同図に示すように、本例のラインレーザー照射部20は、車幅方向に互いに離間した左右2カ所に配置された2機のラインレーザー照射装置21、22で構成される。35は左側のラインレーザー照射装置21より照射されたラインレーザー21aによるラインレーザーマーク、36は右側のラインレーザー照射装置22より照射されたラインレーザー22aによるラインレーザーマークを示す。本例では、死角空間DSに障害物が存在しない場合、2本ラインレーザー21a、21bにより形成されるラインレーザーマーク35、36は、例えば、死角空間DSより遠位側の路面にXの字体を描くように交わる。なお、33の点線は、死角空間DSの遠位側の境界線である。このとき、フロントセンシングカメラ10の撮影像は図4のようになる。ここで、37は死角空間DSを生む要因となる車両Mのフロントバンパーの前端部分である。
【0029】
次に、車両前方の死角空間DSに障害物Bが存在する場合について説明する。
図5は死角空間DSに障害物Bが存在する場合に死角空間DSより遠位側の路面に形成されるラインレーザーマーク35、36のパターンを示す平面図である。
この場合、ラインレーザー照射装置21、22より照射されたラインレーザー21a、22aはそれぞれ死角空間DSにおける障害物Bの位置に応じた一部の照射角範囲において障害物Bによって遮られる。このため、路面上に形成される2本のラインレーザーマーク35、36の少なくとも一方に欠落部分35a、36aが生じる。このとき、フロントセンシングカメラ10の撮影像は、図6のようになる。これにより、コントロールユニット30の認識部32は、フロントセンシングカメラ10によって得られた画像データに含まれるラインレーザーマーク35、36のパターンに基づき、死角空間DSにおける障害物Bの有無を認識することができ、さらに、運転者の視点からも、ラインレーザーマーク35、36を含む死角空間遠位側の路面を目視できるので、死角空間DS内の障害物の有無を認識することができる。
【0030】
[車載カメラシステム1の動作例]
次に、図7を参照して、本実施形態の車載カメラシステム1において、死角空間DSに障害物Bが存在するときの車両Mの始動時から自動緊急ブレーキ発動までの動作を説明する。
【0031】
運転者によってブレーキが解除されると(ステップS1)、コントロールモジュール30は、発車または始動準備情報をフロントセンシングカメラ10に発行する(ステップS2)。フロントセンシングカメラ10内のカメラ制御部12は、発車または始動準備情報を受けてイメージャ部11による車両前方の撮像を開始し、ラインレーザー照射命令をラインレーザー照射部20に供給する(ステップS3)。なお、フロントセンシングカメラ10による車両前方の撮像はブレーキ解除前から行われていてもよい。この場合には、フロントセンシングカメラ10の制御部は、発車または始動準備情報を受けたときにラインレーザー照射命令の発行だけを行うようにすればよい。
【0032】
ラインレーザー照射部20は、フロントセンシングカメラ10のカメラ制御部12からのラインレーザー照射命令を受けると、ラインレーザーの照射を開始する(ステップS4)。コントロールモジュール30内の認識部32は、ラインレーザーの照射開始後にフロントセンシングカメラ10によって得られたラインレーザーマークを含む画像データに基づき、死角空間DS内の障害物の有無を認識し、その結果をコントロールモジュール30内の制御部33に通知する(ステップS5)。コントロールモジュール30内の制御部33は、死角空間DS内に障害物が存在することの通知を受けると、CAN通信部34を通じて車両制御ECU40に緊急ブレーキの発動命令を発行する(ステップS6)。車両制御ECU40は緊急ブレーキの発動命令を受けると、車両のブレーキシステム50に緊急ブレーキを発動するように制御する(ステップS7)。
これにより、車両前方の死角空間DSに障害物が存在する場合には車両の発進をブレーキにより抑制し、障害物との衝突事故を回避することができる。
【0033】
[ラインレーザーの照射角と高さ位置について]
次に、図2を参照して、ラインレーザーの照射角βについて説明する。
フロントセンシングカメラ10から見える最も近い路面RFの位置P1は、フロントセンシングカメラ10の視点の高さ位置と車両Mのボンネットの先端位置P0によって決まる。P2を車両Mの前端からの垂線が路面RFに交わる点とすると、P0、P1、P2の3点が形成する三角は垂直面に投影された死角空間Dにあたる。死角空間DSに障害物Bが存在しない場合、ラインレーザー照射部20からのラインレーザー21a(22a)は、死角空間DSを通じて死角空間DSより遠位側の路面RFに照射される必要がある。すなわち、P1点からラインレーザー21a(22a)の路面RF上の照射点P4までの距離dが0より大きければ、死角空間DSにおける障害物Bの位置を反映したラインレーザーマーク35、36が路面RFに形成される。
【0034】
また、ラインレーザー照射部20のレーザー照射点の路面RFからの高さh1は、検知対象の障害物Bの高さが車両Mの底の高さH以上である場合には、h1<Hを満足することで、死角空間DS内の障害物Bを検知できる。
そしてラインレーザー21a(22a)の垂直照射角βは、
tan(β)=h1/(d+L)
β=arctan(h1/(d+L))
であり、d>0とh1<Hを満足する範囲でdとh1の各値を決めることによって、死角空間DS内の障害物Bを検知することが可能なβの値が得られる。
【0035】
[ラインレーザー照射部20の変形例]
ラインレーザー照射部20は、一つのラインレーザー照射装置により構成されてもよい。
ラインレーザー照射部20として一つのラインレーザー照射装置23を用いた場合には、例えば図8に示すように山形のラインレーザーマーカー38などを採用することが可能である。あるいは、図9に示すように、上記の山形のラインレーザーマーカー38の頂部を平坦にした丘形のラインレーザーマーカー39などを採用することも可能である。
【0036】
ラインレーザーの色は赤が最も有効である。その理由は、フロントセンシングカメラ10のイメージャのカラーフィルターはRCCC配列が主流であることと、またラインレーザーマーカーと、フロントセンシングカメラ10に映り込む前の車両のテイルライト(赤色)やフロントライト(白色)との間で赤色光の強度による識別性能に優れる。ことなどによる。
【0037】
[本技術の別の構成]
本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)車両の運転室から車両の前方を撮像する撮像部と、
前記撮像部の車両直前の死角空間を通じて前記死角空間より遠位側の路面にラインレーザーを照射するラインレーザー照射部と
を具備する車載カメラシステム。
(2)上記(1)の車載カメラシステムであって、
前記ラインレーザー照射部は、前記撮像部の光軸方向と交わる方向に連続したラインレーザーマーカーを前記路面に形成するように構成される
車載カメラシステム。
(3)上記(1)または(2)の車載カメラシステムであって、
車両の停止状態または駐車状態から発進準備状態又は始動準備状態に遷移したとき、前記ラインレーザー照射部から前記ラインレーザーを照射させるように制御する制御部をさらに具備する
車載カメラシステム。
(4)上記(3)の車載カメラシステムであって、
前記制御部は、前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記死角領域内の障害物の有無を判定するように構成される
車載カメラシステム。
(5)上記(4)の車載カメラシステムであって、
前記制御部は、前記障害物の存在を判定したとき、前記車両の緊急ブレーキの発動を指示するように構成される
車載カメラシステム。
(6)上記(1)から(5)のいずれかの車載カメラシステムであって、
前記ラインレーザー照射部は、前記車両の前端部の車体の底より低い位置から前記ラインレーザーを照射するように構成される
車載カメラシステム。
(7)上記(1)から(6)のいずれかの車載カメラシステムであって、
前記死角空間は、前記車両のボンネットによって遮られる前記撮像部の視界である
車載カメラシステム。
(8)上記(1)から(7)のいずれかの車載カメラシステムであって、
前記ラインレーザーが赤色である
車載カメラシステム。
【0038】
(9)車両の運転室から車両の前方を撮像し、
前記車両の直前の前記撮像部の死角空間の遠位側の路面にラインレーザーを照射し、
前記車両の停止状態または駐車状態から発進準備状態又は始動準備状態に遷移したとき、前記ラインレーザーの照射をオンにし、
前記撮像された画像に基づいて前記死角領域内の障害物の有無を判定する障害物検知方法。
(10)上記(9)の障害物検知方法であって、
前記ラインレーザー照射部は、前記撮像部の光軸方向と交わる方向に連続したラインレーザーマーカーを前記路面に形成する
障害物検知方法。
(11)上記(9)または(10)の障害物検知方法であって、
車両の停止状態または駐車状態から発進準備状態又は始動準備状態に遷移したとき、前記ラインレーザー照射部から前記ラインレーザーを照射させるように制御する
障害物検知方法。
(12)上記(11)の障害物検知方法であって、
前記制御部は、前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記死角領域内の障害物の有無を判定する
障害物検知方法。
(13)上記(12)の障害物検知方法ムであって、
前記制御部は、前記障害物の存在を判定したとき、前記車両の緊急ブレーキの発動する
障害物検知方法。
(14)上記(9)から(13)のいずれかの障害物検知方法であって、
前記車両の前端部の車体の底より低い位置から前記ラインレーザーを照射する
障害物検知方法。
(15)上記(9)から(14)のいずれかの障害物検知方法であって、
前記死角空間は、前記車両のボンネットによって遮られる前記撮像部の視界である
障害物検知方法。
(16)上記(9)から(15)のいずれかの障害物検知方法であって、
前記ラインレーザーが赤色である
障害物検知方法。
【符号の説明】
【0039】
1…車載カメラシステム
10…フロントセンシングカメラ
11…イメージャ部
12…カメラ制御部
20…ラインレーザー照射部
30…コントロールモジュール
31…IF部
32…認識部
33…制御部
40…車両制御ECU
50…ブレーキシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9