(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171711
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】木材牽引方法
(51)【国際特許分類】
A01G 23/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A01G23/00 551F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083467
(22)【出願日】2022-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】596177559
【氏名又は名称】インターマン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田平 美嗣
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一般的なウィンチを用いて、連続的に且つ効率的に伐採木材の牽引を行うことができる木材牽引方法を提供することである。
【解決手段】ウィンチ1と、シーブ3,4と、これらウィンチ1およびシーブ3,4に巻回され、始端と終端が接続された無端ロープ2と、ロープ用固定器具5とを用いて木材6を牽引し、シーブ4近傍の移動元位置から、ウィンチ1近傍の移動先位置まで木材6を移動させる木材牽引方法では、無端ロープ2に伐採木材6を結わえつけ、この無端ロープ2をウィンチ1とシーブ4の間で一方向に周回することで、効率的かつ連続的に伐採木材6の牽引を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンチと、シーブと、これらウィンチおよびシーブに巻回され、始端と終端が接続された無端ロープとを用いて木材を牽引し、前記ウィンチおよび前記シーブの一方の近傍の移動元位置から、前記ウィンチおよび前記シーブの他方近傍の移動先位置まで前記木材を移動させる木材牽引方法であって、
前記無端ロープは、前記ウィンチおよびシーブに巻回された状態で、前記ウィンチを駆動させた際に、前記移動元位置から前記移動先位置へ移動する牽引側と、前記移動先位置から前記移動元位置へ戻る帰還側からなり、
前記移動元位置において、牽引側で前記無端ロープに前記木材を接続するステップと、
前記ウィンチを駆動させることで前記無端ロープを一方向に周回させ、前記無端ロープを介して前記木材を前記移動元位置から前記移動先位置まで牽引するステップと、
前記移動先位置において前記木材を前記無端ロープから取り外すステップとからなり、
前記無端ロープを前記一方向に周回させながら、上記ステップを繰り返すことで、前記木材を多数連続的に前記移動元位置から前記移動先位置へ移動させることを特徴とする木材牽引方法。
【請求項2】
前記木材はロープ用固定器具を介して前記無端ロープに接続し、上記各ステップに加えて、更に、
前記移動先位置において、前記ロープ用固定器具を前記無端ロープの牽引側から取り外して、前記ウィンチの反対側の前記無端ロープの帰還側に接続するステップと、
前記ウィンチを駆動させることで前記無端ロープを前記一方向に周回させ、前記ロープ用固定器具を前記移動元位置に移動させるステップと、
前記ロープ用固定器具を前記無端ロープの帰還側から取り外して、前記シーブの反対側の前記無端ロープの牽引側に接続するステップと
からなることを特徴とする請求項1に記載の木材牽引方法。
【請求項3】
前記木材は巻き結びによって直接前記無端ロープに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の木材牽引方法。
【請求項4】
前記ウィンチの近傍に別のシーブが設けられており、前記無端ロープは、この別のシーブにも巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の木材牽引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伐採木材の牽引を行う為の木材牽引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放置竹林が増えてきている。竹という植物は、毎年3メートルほどの地下茎を伸ばし、そこからタケノコを生やす。雑木林に隣接して放置竹林があると、竹は、雑木林の中にどんどん地下茎を伸ばして陣地を拡大する。タケノコは、わずか2、3ヵ月で10数メートル、元気な竹の場合には、20数メートルの高さまで育ち、内側の雑木から光を奪って枯らしていく。 こうして、雑木林は、次々に竹藪に変わっていってしまう。
【0003】
これらの竹は、もともとは人口的に植栽されたものであるが、近時の林業関係の労働力不足、竹林の維持管理コストの圧迫、竹林管理者の老齢化等により、急傾斜地や起伏の多い山間部あるいは茶畑、野菜畑、果樹園等のある丘陵地帯でも放置竹林面積が急拡大し、隣接の他人所有の茶畑や、野菜畑、果樹園等に地下茎から地上に成長させてそれらの作物を荒らしたり、檜等の植林を壊滅させる事例も多発してその荒廃が全国的に大きな社会問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放置竹林は、一般的な木材と比較して劣悪な環境にある場合が多い。例えば、道路から離れた傾斜地といった、重機が入れないような地形に位置することがある。このような環境で放置竹林の整備は、ウィンチを用いて伐採竹を遠く離れた位置から引き寄せるといった作業を繰り返す方法がよく用いられる。
【0006】
しかし、伐採竹を遠く離れた位置から引き寄せた後、次の伐採竹の引き寄せを行うには、ウィンチのドラムをフリー状態にして再度引き寄せようとする材木がある位置まで作業者がワイヤの先端を持って歩いていかなければならず、非常に労力を要する。
【0007】
これに対して、例えば特許文献1においては、パワーショベルのブームに別個の駆動源でそれぞれ独立に回転するメインとサブの2個のドラムを並列配置させてそれぞれのワイヤの端部と材木把持ワイヤとを連結具47で連結させ、適宜の立木に係止させたシーブ49を変向点としてそれぞれのドラムの回転駆動時に他のドラムをフリー状態としてメインワイヤの繰り出し作業軽減、木材の動力牽引等を行なわせるウィンチが提案されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1のウィンチによる搬出方法では、メインとサブの2個のドラムを備えた特殊なウィンチを必要するため、一般的なウィンチで手軽に行うことができない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、一般的なウィンチを用いて、連続的に且つ効率的に伐採木材の牽引を行うことのできる木材牽引方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の1つの様相による木材牽引方法は、ウィンチと、シーブと、これらウィンチおよびシーブに巻回され、始端と終端が接続された無端ロープとを用いて木材を牽引し、前記ウィンチおよび前記シーブの一方の近傍の移動元位置から、前記ウィンチおよび前記シーブの他方近傍の移動先位置まで前記木材を移動させる木材牽引方法であって、前記無端ロープは、前記ウィンチおよびシーブに巻回された状態で、前記ウィンチを駆動させた際に、前記移動元位置から前記移動先位置へ移動する牽引側と、前記移動先位置から前記移動元位置へ戻る帰還側からなり、前記移動元位置において、牽引側で前記無端ロープに前記木材を接続するステップと、前記ウィンチを駆動させることで前記無端ロープを一方向に周回させ、前記無端ロープを介して前記木材を前記移動元位置から前記移動先位置まで牽引するステップと、前記移動先位置において前記木材を前記無端ロープから取り外すステップとからなり、前記無端ロープを前記一方向に周回させながら、上記ステップを繰り返すことで、前記木材を多数連続的に前記移動元位置から前記移動先位置へ移動させることを特徴とする。
【0011】
また、一つの実施例では、前記木材はロープ用固定器具を介して前記無端ロープに接続し、上記各ステップに加えて、更に、前記移動先位置において、前記ロープ用固定器具を前記無端ロープの牽引側から取り外して、前記ウィンチの反対側の前記無端ロープの帰還側に接続するステップと、前記ウィンチを駆動させることで前記無端ロープを前記一方向に周回させ、前記ロープ用固定器具を前記移動元位置に移動させるステップと、前記ロープ用固定器具を前記無端ロープの帰還側から取り外して、前記シーブの反対側の前記無端ロープの牽引側に接続するステップとからなることを特徴とする。
【0012】
更に、一つの実施例では、前記木材は巻き結びによって直接前記無端ロープに接続されていることを特徴とする。
【0013】
更に、一つの実施例では、前記ウィンチの近傍に別のシーブが設けられており、前記無端ロープは、この別のシーブにも巻回されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係わる木材牽引方法によれば、一般的なウィンチを用いて、連続的に且つ効率的に伐採木材の牽引を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図であり、伐採木材を移動先位置へ牽引した様子を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図であり、伐採木材を集材した様子を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例1に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図であり、ロープ用固定器具を移動元位置へ戻す様子を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例1に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図であり、ロープ用固定器具を移動元位置へ戻す様子を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例1に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図であり、別の伐採木材を牽引する様子を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例2に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例2に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図であり、伐採木材を移動先位置へ牽引した様子を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例2に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図であり、伐採木材を集材した様子を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施例2に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図であり、別の伐採木材を牽引する様子を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施例3に係る木材牽引方法の実施態様を説明するための説明図である。
【
図12】
図12は、複数の伐採木材を牽引する例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、複数の伐採木材を牽引する別の例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、伐採木材の先端に取り付ける先導キャップを示す斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施例1に係る木材牽引方法の実施態様において、ウィンチを移動元位置の近傍に設置した例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施例2に係る木材牽引方法の実施態様において、ウィンチを移動元位置の近傍に設置した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施例1による木材牽引方法の実施例を説明する。
図1は、本発明に係る木材牽引方法の実施例1を示す説明図である。この木材牽引方法は、一般的なウィンチ1、ロープ2、シーブ3、4およびロープ用固定器具5を用いる。
【0017】
ウィンチ1としては、ワーピングドラムまたはキャプスタンウインチと呼ばれるものを用い、木材を引き寄せたい位置(移動先位置という)近傍に固定する。シーブ3は、ウィンチ1の近くの支柱に固定されており、シーブ4は、牽引したい伐採木材6の近くの位置(移動元位置という)近傍に設けられた支柱7に固定されている。ここでは、立ち木を支柱7として用いている。なお、一般的な移動先位置と移動元位置との距離は、概ね60mから100mくらいである。通常、50m以上の距離があれば、この方法を採用することによって作業効率が改善する。
【0018】
ロープ2は、柔軟性のある一般的なロープまたはザイルを用い、ウィンチ1のドラム8とシーブ3、4に巻回されており、無端ループ状に始端と終端が接続された無端ロープとなっている。ロープ2は、ウィンチ1のドラム8の周囲に複数回巻回されることで、スリップすることなく牽引することが可能となっている。ここでは、ロープ2を、ウィンチ1を駆動させた際に、移動元位置から移動先位置へ移動する牽引側2a(図の下側のロープ)と、移動先位置から前記移動元位置へ戻る帰還側2b(図の上側のロープ)に分けて考える。ただし、以下の説明では、ロープ2の帰還側2bとは、シーブ3とシーブ4の間の部分を意味し、ウィンチ1とシーブ3との間は、牽引側2aでも帰還側2bでもない。
【0019】
ロープ用固定器具5は、ロープ2の任意の位置に自由に取り付けることのできる固定器具であって、例えば、アッセンダーやキトークリップ(商品名)などを用いることができる。このロープ用固定器具5に木材を結びつけて牽引を行う。
【0020】
次に、本発明による木材牽引方法の実施例による木材牽引の手順を
図1乃至
図3を参照しながら説明する。まず、ロープ用固定器具5を、移動元位置近傍のロープ2の牽引側2aに接続する。そして、ロープ用固定器具5に、伐採木材6を括り付ける。
【0021】
次に、
図2に示したように、ウィンチ1を駆動させることでロープ2を一方向(図面上では左回り)に周回させ、ロープ2を介して伐採木材6をウィンチ1近傍の移動先位置まで牽引する。そして、ウィンチ1の駆動を一旦停止する。
【0022】
その後、
図3に示したように、伐採木材6をロープ用固定器具5から取り外して集材する。更に、ロープ用固定器具5は、ロープ2の牽引側2aから取り外し、
図4に示したように、ウィンチ1の反対側のロープ2の帰還側2bに接続する。
【0023】
次に、ウィンチ1を再度駆動させることでロープ2を同じ一方向に周回させ、
図5に示したように、ロープ用固定器具5を移動元位置に移動させる。ロープ用固定器具5は、移動元位置において、帰還側2bから取り外して、シーブ4の反対側のロープ2の牽引側2aに接続する。
【0024】
そして、
図6に示したように、別の伐採木材6を、ロープ用固定器具5に接続し、上記工程を繰り返す。従って、ウィンチ1を駆動させることでロープ2を同一方向に周回させ、伐採木材6を連続的に集材させることができる。
すなわち、この木材牽引方法でも、やはり一般的なウィンチ1、ロープ2、シーブ3、4を用いる。しかし、この実施例では、ロープ用固定器具5を用いないで、伐採木材6を直接ロープ2に括り付ける。従って、より少ない手順で、伐採木材6を連続的に集材させることが可能となっている。
伐採木材6の集材と、別の伐採木材6のロープ2への括り付けが終わると、再度ウィンチ1を駆動させ、別の伐採木材6をウィンチ1近傍の移動先位置まで牽引する。これを繰り返すことで、伐採木材6を連続的に集材させることができる。