IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファースト・ソーラー・インコーポレーテッドの特許一覧

特開2023-171715ドープ光起電力半導体層および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171715
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ドープ光起電力半導体層および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/073 20120101AFI20231128BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01L31/06 420
H01L31/04 440
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126839
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2019546162の分割
【原出願日】2018-02-22
(31)【優先権主張番号】62/463,579
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510328032
【氏名又は名称】ファースト・ソーラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】グローバー,サチット
(72)【発明者】
【氏名】リー,シヤオピーン
(72)【発明者】
【氏名】マリク,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】サイードモハンマディ,シャーラム
(72)【発明者】
【氏名】シオーン,ガーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,ウエイ
(72)【発明者】
【氏名】アービン,スチュアート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光起電力素子中の多結晶薄膜半導体材料にドープするための構造および方法が提供される。光起電力半導体吸収体層を形成および処理するための方法を含む。
【解決手段】ウィンドウスタック形成される410。堆積ステップ420中に、II-VI族半導体およびドーパントをウィンドウスタック上に堆積させ、光起電力スタックを形成させる。前処理ステップ430中に、光起電力スタックは、実質的に無酸素の環境中で加熱され、かつアニールされる。処理ステップ440中に、光起電力スタックは、パッシベーション剤と接触し、高温の還元性環境中に保持される。加工ステップ450中に、光起電力スタックは、加熱され、酸素化された環境中に保持される。バックコンタクト形成ステップ460中に、バックコンタクト材料は、光起電力スタック上に形成されるか、または光起電力スタック上を被覆する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力半導体吸収体層を処理する方法であって、
還元剤を供給して還元性環境を生じさせるステップ、
吸収体層の少なくとも一部を、前記吸収体層を前記還元性環境としつつ不動態化剤に接触させるステップ、ここで前記吸収体層は第V族ドーパントでドープされ、かつ前記吸収体層は、カドミウム、およびテルルを含む、ならびに
前記還元性環境中、選択される温度、および選択される圧力で、選択される処理期間、前記吸収体層を前記不動態化剤と共にアニールするステップ
を含み、
前記還元性環境は、26,664Pa(200トル)~106,658Pa(800トル)の範囲の全圧を有し、前記還元性環境における酸素の分圧は3Pa(25ミリトル)以上133Pa(1トル)未満であり、そして、前記酸素の分圧に対する前記還元剤の分圧の比は、少なくとも3である、
方法。
【請求項2】
前記還元性環境の大部分は、不活性ガスで形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元性環境は、水素ガスと窒素ガスの混合物から本質的になる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不動態化剤は、CdClを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記吸収体層は、セレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第V族ドーパントは、ヒ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択される温度は、350℃~500℃の範囲であり、前記選択される圧力は、26,664Pa(200トル)~106,658Pa(800トル)の範囲であり、前記選択される処理期間は、5分間~45分間の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記吸収体層は、前記吸収体層の厚さ全体にわたって1×1016cm-3から5×1020cm-3の間の濃度の前記第V族ドーパントを含み、前記還元性環境中で前記吸収体層をアニールするステップは、1原子%から10原子%の間の前記第V族ドーパントを活性化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記不動態化剤は、MnCl、MgCl、NHCl、ZnCl、およびTeClのうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第V族ドーパントは、ビスマス、アンチモン、ヒ素、リン、窒素、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記還元性環境は、99.4%の窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤は、H、硫化水素、メタン、一酸化炭素、アンモニア化合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記還元剤は、Hを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記還元剤がHを含み、そしてHは、32Pa(0.24トル)~6,666Pa(50トル)の分圧で与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記吸収層は、基板を有する光起電力スタック中に備えられており、ここで、前記還元性環境で前記吸収層をアニールすることを、前記基板を、複数の様々な堆積ステーションを通って移動させた後に行い、この複数の様々な堆積ステーションはそれらの独自の蒸気ディストリビュータおよび蒸気供給源を有する、請求項1に記載の方法。。
【請求項16】
前記吸収体層が、スパッタリング、噴霧、蒸発、分子線蒸着、熱分解、近接昇華、パルスレーザー堆積、化学蒸着、電気化学堆積、原子層堆積または気相輸送堆積のうちの1つまたは複数の工程を通して、光起電力スタック中に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記アニールするステップの後、前記吸収体層が、1×1015cm-3~5×1016cm-3の範囲のp型電荷キャリア濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
本出願は、2017年2月24日に出願された米国仮特許出願第62/463,579号に基づく優先権を主張し、その全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002]光起電力素子は、光起電力効果を示す半導体材料を使用し、光を直流電気に変換することによって電力を発生させる。光起電力素子は、光起電力効果によって、光吸収が電荷キャリア、電子、または正孔を、より高いエネルギー状態に励起させる際に電流を生じさせる。より高いエネルギー状態に電荷キャリアが移行する際、例えば、電子が価電子帯から伝導帯に励起する際、バンドギャップを乗り越え、かつ電荷キャリアを移動させて電流を流すために、最小活性化エネルギーが必要とされる。半導体の伝導率は、電荷キャリア移動度と電荷キャリア濃度の積に比例する。
【0003】
[0003]ドーパントは、フェルミ準位を調節し、かつ電荷キャリア濃度を増大させるために、光起電力素子の半導体材料中に使用される。半導体へのドーパントの添加は、主として負電荷(n型)または正電荷(p型)の電荷キャリアを有する材料を製造するために利用され得る。
【0004】
[0004]CdTe系光起電力素子において、材料のバンドギャップに対して相対的に低い開回路電圧(VOC)の原因の一つは、CdTeにおける低い多数キャリア濃度および短い少数キャリア寿命である。CdTeの有効なキャリア濃度は、p型ドーパントをドープすることによって向上され得る。CdTe太陽電池のデバイス効率を制限するさらなる問題として、CdTeの高い仕事関数、およびCdTeと金属系バックコンタクト層との界面における高いバックコンタクト抵抗が挙げられる。バックコンタクト抵抗は、背部界面における多数キャリア濃度を増大させることにより改善され得る。例えば、p型CdTe材料の場合、キャリア濃度量を増大させてCdTe材料中のp型キャリアを増加させ、バックコンタクト層に接触するCdTe層の裏側に「オーミックコンタクト層」を形成させる。
【0005】
[0005]ドーパントは、フェルミ準位を調節し、かつ電荷キャリア濃度を増大させるのにある程度有効であるが、一部のドーパントは、素子の劣化に寄与すること、動作条件下で移動すること、キャリア再結合に寄与すること、または予測されるよりも少ない移動性電荷キャリアを生成することもわかっている。
【0006】
[0006]例えば、銅は、CdTeなどのp型ドープII-VI族半導体材料に使用されている。銅ドーパントは移動性が高く、バイアスの下で時間とともに移動する。銅ドーパントは、多結晶薄膜の結晶格子内に固定された状態を維持しない。これらの機構を通し、ドーパントは、素子の寿命、長期安定性、および性能に悪影響を及ぼし得る。
【0007】
[0007]多結晶CdTeに使用される見込みのあるp型ドーパントは、銅または銀などのシングルアクセプタ金属によるCdの置換、Cdサイトの空孔、および第V族元素によるTeの置換の3種類である。米国特許出願公開第2012/0042950号で議論されるように、Teの置換はCdの置換と比べて熱力学的に不利であるため、第V族元素によるTeの置換は、ほぼ不可能であると考えられている。また、Cdの蒸気圧はTeと比較して高いため、Cdは、膜からより容易に蒸発し、光起電力素子製造において用いられる高温の加工条件下で、Teに富み、Cd不足の膜を形成する。したがって、光起電力スタ
ック中の多結晶CdTe薄膜における、第V族元素によるTeの確実な置換は、達成不可能であった。
【0008】
[0008]CdTe、およびCdTe合金に効率的にドープを行い、効率的かつ安定な素子において、所望される移動性p型電荷キャリア濃度を達成することが課題となっている。さらなる課題は、拡張可能かつ費用効率の高い製造工程を用いて、そのような素子を製造することである。したがって、改良された光起電力素子、およびドープ半導体材料を形成する方法の提供が望まれる。
【発明の概要】
【0009】
[0009]図面に示される実施形態は、本来、例示および実例のためのものであり、特許請求の範囲によって規定される主題を限定することを意図するものではない。類似の構造が類似の参照番号で示される以下の図面と併せて読むことで、例示的実施形態に関する以下の詳細な説明を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]光起電力素子の実施形態における機能層の概要を示す図である。
図2】[0011]本開示の実施形態に係る光起電力素子の吸収体層を形成および処理する典型的な方法を示す図である。
図3】[0012]部分的に形成された素子における、光起電力スタックの機能層の概要を示す図である。
図4】[0013]本開示の実施形態に係る半導体層を形成するステップおよび処理するステップを含む、光起電力素子を製造する典型的な工程を示すフローチャートである。
図5】[0014]前処理を行う場合、および前処理を行わない場合の、吸収体膜のラマンスペクトルを示す図である。
図6】[0015]前処理を行う場合、および前処理を行わない場合の吸収体膜について、規格化された発光(PL)強度値をプロットしたグラフである。
図7】[0016]前処理を行う場合、および前処理を行わない場合の吸収体膜について、規格化された量子効率(QE)を波長で示す図である。
図8】[0017]前処理を行う場合、および前処理を行わない場合の、処理後のヒ素ドープCdTe吸収体について、深さに対する電荷キャリア濃度を、1立方cm当たりの原子数(上)および位相角(下)でプロットした静電容量-電圧(CV)測定結果を示す図である。
図9】[0018]処理後のヒ素ドープ吸収体膜について、DSIMSによって測定された元素濃度の深さ分布を示す図である。
図10】[0019]選択された濃度レベルの水素ガスで処理された素子を比較する、深さに対する電荷キャリア濃度のCV測定結果を示す図である。
図11】[0020]対照(左)素子および処理された(右)素子のVOC測定結果を示す図である。
図12】[0021]対照(左)素子および処理された(右)素子について、電流電圧(I-V)曲線を示す図である。
図13A】[0022]本方法の実施形態に従って処理された、ヒ素ドープ素子の測定結果を示す図であり、処理された素子中のヒ素ドーパントのDSIMS分布を示す図である。
図13B】本方法の実施形態に従って処理された、ヒ素ドープ素子の測定結果を示す図であり、電荷キャリア濃度のCV測定結果を示す図である。
図13C】本方法の実施形態に従って処理された、ヒ素ドープ素子の測定結果を示す図であり、測定されたVOCが883mVのヒ素ドープ素子に関するI-V曲線を示す図である。
図14A】[0023]本方法の実施形態に従って処理された、ヒ素ドープ素子の測定結果を示す図であり、ヒ素ドープ素子に関するQE測定結果を示す図である。
図14B】本方法の実施形態に従って処理された、ヒ素ドープ素子の測定結果を示す図であり、電荷キャリア濃度のCV測定結果を示す図である。
図14C】本方法の実施形態に従って処理された、ヒ素ドープ素子の測定結果を示す図であり、測定されたVOCが806mV、かつFFが78.3%の素子に関するI-V曲線を示す図である。
図15】[0024]処理後のアンチモンドープCdTe吸収体について、深さに対する電荷キャリア濃度をプロットした、静電容量-電圧測定結果を示す図である。
図16】[0025]処理後のリンドープCdTe吸収体について、深さに対する電荷キャリア濃度をプロットした、静電容量-電圧測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0026]光起電力(PV)素子に使用するための方法、構造、および組成が提供される。実施形態は、p型吸収体層を有する薄膜光起電力素子を提供する。実施形態は、II-VI族半導体多結晶薄膜へ第V族ドーパントをp型ドープし、かつ還元性環境中で熱処理して効率的で安定な素子において高い正孔密度を達成するための方法を含む。実施形態は、多結晶格子中の第VI族半導体元素の空孔に取り込まれた第V族ドーパントを有する、II-VI族半導体吸収体層を含む。
【0012】
[0027]添付図面と関連して以下に与えられる詳細な説明は、例を説明することを目的とし、例が構成または利用され得る形態のみを表すことを意図しない。ここで用いられる「典型的な」という語は、「例、実例、または例証としての役割を果たすこと」を意味する。したがって、「典型的」であるとして、ここに記載されるあらゆる実施形態は、他の実施形態と比較して好ましいか、または有益であると必ずしも解釈される必要はない。ここに記載される全ての実施形態は、当業者がここに記載される実施形態を実施または使用できるようにするために与えられ、特許請求の範囲によって規定される開示の範囲を限定するものではない。さらに、ここに示される、明示または暗示されるあらゆる理論によって拘束される意図はない。
【0013】
[0028]明細書、図面、および特許請求の範囲において、方法に関連する実施形態は、文脈上明確な別段の指示がない限り、特定の一連の工程によって限定されない。したがって、一部の実施形態において、方法の2つ以上のステップは同時に行われてもよい。あるいは、一部の実施形態において、方法の2つ以上のステップは逐次的に行われてもよい。方法に関連する実施形態は、特許請求の範囲、図面、または明細書におけるステップの記載順序に限定されない。結果として生じる順序が理論的に矛盾しない限り、工程ステップの順序は入れ替えられてもよい。第一および第二などの相関的な用語は、1つの実体または動作と他の実体または動作とを区別するために使用され得、指定がない限り、そのような実体または動作間の前後関係または順序を要求または暗示するものではない。
【0014】
[0029]以下の明細書および特許請求の範囲において、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、「その(the)」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、複数の指示対象を包含する。ここで用いられる、「または」という用語は、排他的に用いるよう意図されるものではなく、文脈上明確な別段の指示がない限り、考慮される被言及要素のうちの少なくとも1つを意味し、かつ被言及要素の組み合わせが考慮され得る場合を含む。
【0015】
[0030]通常、薄膜光起電力素子は、基板上に形成される、各々機能を果たす異なる材料からなる様々な層から作製される。薄膜光起電力素子は、前面電極、および背面電極を含み、それらの間に挟まれる光起電力半導体層または他の層に電気的アクセスをもたらす。
【0016】
[0031]以下の実施形態に記載される各層は、2枚以上の層または膜で構成されていても
よい。各層は、PV素子の全体もしくは一部、および/または層もしくは層の下にある材料の全体もしくは一部を被覆し得る。例えば、「層」は、表面全体または表面の一部と接触する、任意の量の材料を意味し得る。層のうちの1つを形成する工程中に、作製される層は、基板または基板構造の外表面上、通常、最上面上に形成される。基板は、堆積工程に導入される基層、および先行する堆積工程または先行する複数の堆積工程において、基層上に堆積し得た他の任意の層または追加の層を含み得る。層を基板全体にわたって堆積させ、材料の特定部分を、レーザアブレーション、スクライビング、または他の材料除去工程を通して後で除去してもよい。
【0017】
[0032]一般的に光起電力素子の製造は、スパッタリング、噴霧、蒸発、分子線蒸着、熱分解、近接昇華(CSS:closed space sublimation)、パルスレーザー堆積(PLD:pulse laser deposition)、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)、電気化学堆積(ECD:electrochemical deposition)、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)、または気相輸送堆積(VTD:vapor transport deposition)が挙げられるがこれらに限定されない、1つまたは複数の工程を通して機能層または層前駆体を、スタック中に逐次的に積み重ねて配置するステップを含む。堆積中に条件を調節してもよく、反応物および前駆体化合物の有無を調節し、形成中に層を変更してもよい。層が形成された後は、続く処理工程を通して層の物理的特性を変更することが望ましいことがある。
【0018】
[0033]光起電力素子は、一般に基板上に配置される材料からなる複数の層を含む。層は、光子エネルギーを電流に変換するための半導体吸収体、ならびに、素子へ、または素子から、生じた電流を集電および伝導するフロントコンタクトおよびバックコンタクトを含む。1つまたは複数の材料層を用いて、例えばホモ接合またはヘテロ接合などのp-n接合を形成することができる。機能的には、1つまたは複数の材料層として、吸収体層、窓層、バッファ、透明層、界面層、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。素子の性能の向上を目的として、他の多くの層が任意選択で存在してもよい。
【0019】
[0034]本開示において、層が別の層もしくは基板「の上に」配置されるか、または位置されると記載されている場合、層は、互いに直接接触してもよく、または層間に1つ(もしくは複数)の層もしくは特徴を有してもよいと理解されるべきである。さらに、相対的な位置を表す上方または下方は、見る人に対する素子の位置付けに依存するため、「の上に(on)」という語は、層同士の相対的な位置を説明し、必ずしも「の上部に(on top of)」を意味しない。さらに、「上部(top)」、「下部(bottom)」、「上方(above)」、「下方(below)」、およびこれらの語が変化したものは、便宜のために用いられ、別段の記載がない限り、あらゆる特定の位置付けを構成要素に対し要求するものではない。しかし、BがA「の上に」、かつCがBの「上に」ある場合、Bは、いずれとも接触する必要はないが、必然的にAとCの間にあるなどのように、位置付けは、各実施形態、または各例と矛盾しないままである。本開示において、ある物体が「隣接」すると記載されている場合、隣接という語は、別の物体「の隣に」、かつ別の物体「と直接接触する」ことを意味し、1つの物体が別の物体「の上に」「隣接」する可能性はあるが、「の上に」という語と同義ではないと理解されるべきである。
【0020】
[0035]本明細書、および特許請求の範囲を通し、ここで用いられる近似する言葉は、それが関連する基本的な機能に変化をもたらすことなく、許容される範囲内で変動し得る、任意の量的表現を修飾するために用いられる。したがって、「約(about)」、「おおよそ(approximately)」、および「実質的に」などの用語または複数の用語によって修飾される値は、規定される正確な値に限定されない。一部の実例において、近似する言葉は、値を測定する計器の精度に相当し得る。ここで、ならびに本明細書、および特許請求の範囲を通し、範囲の限定は、組み合わされてもよく、かつ/または置き換えられてもよく、文脈上、または言語上別段の指示がない限り、そのような範囲は同一に扱われ、そこに包含される全ての部分的範囲を含む。
【0021】
[0036]本開示の実施形態は、半導体層を処理するための方法に関する。ここで用いられる「半導体層」という用語は、1つまたは複数の他の層上にさらに配置されてもよい、半導体材料の層を指す。一部の実施形態において、半導体層は、吸収体層を含む。ここで用いられる「吸収体層」という用語は、半導電層を指し、ここで電磁波放射線の吸収は、個体中の特定の原子に電子が拘束される、より低いエネルギーの「基底状態」または「価電子帯」から、個体中を電荷キャリアが動き回ることができる、より高い「励起状態」または「伝導帯」に、吸収体層中の電子を励起させる。
【0022】
[0037]ここで用いられる「カルコゲニド」という用語は、少なくとも1つのカルコゲンと、少なくとも1つの陽性元素との化合物を指す。「カルコゲン」という用語は、テルル、セレン、または硫黄を指す。適切なカルコゲニド材料として、テルル化カドミウム、テルル化マグネシウム、テルル化水銀、テルル化鉛、テルル化亜鉛、セレン化カドミウム、セレン化水銀、セレン化鉛、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、硫化水銀、硫化亜鉛、硫化鉛、テルル化カドミウムセレン、テルル化カドミウム亜鉛、テルル化カドミウム硫黄、テルル化カドミウムマンガン、テルル化カドミウムマグネシウム、またはそれらの組み合わせなどの二元化合物、三元化合物、または四元化合物が挙げられる。上述の半導体材料は、単独で、または組み合わせて使用され得る。さらに、これらの材料は、各々の層が異なる種類の半導体材料を有するか、または各々の層が材料の組み合わせを別個の層中に有する、2つ以上の層中に存在し得る。いくつかの実施形態において、半導体層は、テルル化カドミウム(CdTe)を含む。いくつかの実施形態において、半導体層は、p型CdTeを含む。いくつかの実施形態において、半導体層は、本質的にCdTeからなる。いくつかの実施形態において、半導体層は、テルル化カドミウムセレン(CdSeTe)を含む。
【0023】
[0038]本開示の実施形態は、II-VI族半導体を含む光起電力素子を含む。原子レベルにおいて、これらの半導体材料は、カドミウム、および亜鉛などの第II族元素が、硫黄、セレン、およびテルルなどの第VI族元素と化学量論的に平衡状態にあり、かつおおよそ同等であるような格子構造を形成する傾向がある。一部の実施形態において、層の組成は、1つまたは複数の元素に「富む」よう調節される。例えば、CdTe層中のCdに富む層は、テルルよりもカドミウムを多く有する。
【0024】
[0039]層の組成は、層の厚さ全体にわたって「実質的に均質」であるとされ得る。別段の指定がない限り、「実質的に均質」とは、原子比またはドーパント濃度で、特定の領域における組成の変動が10%未満であることを示す。
【0025】
[0040]層の厚さ全体にわたって、ドーパントまたは半導体合金組成の勾配が形成されてもよい。勾配は、1つもしくは複数の方法で、例えば、選択される材料分布で材料を堆積させることによって、層の堆積中の条件を変化させることによって形成され得、または勾配は、その後アニールされて所望の濃度分布をもたらす個別の材料層を堆積させることによって形成され得る。勾配は、濃度の連続的な増加、または濃度の段階的な変化などであり得る。そのような勾配は、原子比が吸収体の厚み全体を通して変化する、三元もしくは四元合金中の原子比に適用され得、または勾配は、層中のドーパントに適用され得る。勾配を利用することで、CdTe系合金のバンドギャップを調整し、表面再結合を減少させ、電荷キャリア再結合を減少させ、拡散障壁をもたらし、バッファをもたらし、オーミックコンタクトを向上させ、かつ/または太陽光の吸収を増大させて電力変換効率を向上させることができる。
【0026】
[0041]PV素子の出力は、電流(I、または場合によりJ、単位面積当たりの電流密度)と電圧(V)の積であり、I-V曲線で示されることができる。電流ゼロ、または「開回路」において最大電圧がもたらされ(VOC)、電圧ゼロ、または「短絡」において最大電流がもたらされる(ISC)。これらの積は、ワット(W)で与えられる総潜在電力(P)であるが、これは実際には達成され得ない。達成可能な最大出力(PMAX)は、IV曲線上で最大の積IMP×VMPを与える点によって規定される。曲線因子(FF)は、Pに対するPMAXの比、すなわちIMP×VMPの積をISC×VOCの積で割った商として定義される。FFが高いほど、セルの効率が高いことを示す。PV素子の変換効率は、FFが考慮された総潜在電力(P)の総入射電力(Pin)に対する比であり、効率=(ISC×VOC×FF)/Pinと数学的に表され得る。
【0027】
[0042]ここで用いられる「有効なキャリア密度」という用語は、材料中の正孔または電子の平均濃度を指す。ここで用いられる「n型層」は、多数キャリアとして過剰の電子ドナーを有する半導体層を指し、一方「p型層」は、多数キャリアとして過剰の電子アクセプタ(「正孔」としても知られる)を有する半導体層を指す。いずれの場合においても、過剰なキャリア(電子または正孔)は、半導体に適切なドーパントを化学的にドープすることによってもたらされ得るか、または材料中に内在的に存在する欠陥によって生成され得る。
【0028】
[0043]ドープされてp型またはn型となる半導体は、場合により、各多数電荷キャリアの密度に基づいてさらに特徴付けられる。境界は厳密ではないが、一般的に材料は、電子アクセプタキャリア(すなわち、「正孔」)が約1×1011cm-3から約1×1016cm-3の範囲で存在する場合、p型であると考えられ、アクセプタキャリア密度が約1×1016cm-3を超える場合、p+型であると考えられる。同様に、材料は、電子ドナーキャリアが約1×1011cm-3から約1×1016cm-3の範囲で存在する場合、n型であると考えられ、ドナーキャリア密度が約1×1016cm-3を超える場合、n+型であると考えられる。絶対的なキャリア密度にかかわらず、キャリア濃度が少なくとも2桁(すなわち100倍)高ければ、層は、p型である層に対してp+(またはn型である層に対してn+型)であり得るため、境界は厳密でなく、重複し得る。また、約1×1018cm-3を超える電荷密度を「++」型であると考える場合もあるため、n型またはp型のいずれの層も、++層の同型のキャリア密度が+層のキャリア密度の100倍を超える場合、さらなる第三の層に対してそれ自身が「+」である同型の層に対して「++」であり得る。
【0029】
[0044]以下の説明では、その一部を構成し、かつ実例、特定の実施形態、または例として示される添付図面を参照する。以下、複数の図面を通して類似の番号が類似の要素を示す図面を参照し、光起電力素子および製造工程の態様を説明する。
【0030】
[0045]図1は、多数の層が示され、かつ記載される、本開示の実施形態に係る光起電力素子100を示す。光起電力素子100について記載される層、使用される材料、および/または層を形成する方法は、以下に記載され、かつ図面中に例示される実施形態において、置換されてもよく、記載される層に加えて含まれてもよく、または存在しなくてもよい。各層は、単一の材料からの単層堆積で、単一の材料からの多層工程によって、または複数の材料からの多層工程によって堆積し得ることがさらに理解される。
【0031】
[0046]図1の光起電力素子100は、基板層110、フロントコンタクト層120、透明n型層130、p型吸収体層140、およびバックコンタクト層150を含む。一部の実施形態において、フロントコンタクト層120は、透明n型層130でもある。したがって、透明n型層130は省略され得る。
【0032】
[0047]ここで用いられる「透明層」という用語は、約300nmから約1,300nmの、例えば約400nmから約800nmなどの範囲の波長を有する入射電磁波放射線について、最低70%の平均透過率を可能とする層を指す。一部の実施形態において、透明層は、赤外線または紫外線波長を含み得るより広範囲の波長にわたって電磁波放射線を透過させ得る。
【0033】
[0048]典型的な実施形態において、光は、基板層110から入射し、光が吸収されるp型吸収体層140に至るまで、フロントコンタクト層120および透明n型層130を通過し、電荷キャリアの放出を誘導する。p型吸収体層140と透明n型層130の間のヘテロ接合は、p-n接合を形成し、指向性のある電荷キャリア流を可能にする。その結果、フロントコンタクト層120およびバックコンタクト層150によって電流が流れる。
【0034】
[0049]光起電力素子100は、例えば1つの光起電力セルからモジュール内の隣接するセルへ、または1つの光起電力モジュールからアレイ内の隣接するモジュールへなど、生じた電流を伝える電流路をもたらす電気接続をさらに含む。あるいは、電気接続は、光生成電流によって電力がもたらされる外部の負荷デバイスへ電流を向かわせてもよい。
【0035】
[0050]基板層110は、光起電力素子を作製するために材料層が配置される表面を提供する。基板層110は、ソーダ石灰ガラス、フロートガラス、または低鉄ガラスなどの、任意の適切な基板を含む。あるいは、基板層110は、光起電力セルの基部を形成するのに適切な構造をもたらすポリマー材料、セラミック材料、金属材料、または他の材料を含んでもよい。基板は必須ではないが、後続する層で被覆するための実質的な媒体である。前面の光が基板から入射するスーパーストレート構造の層をここに概して説明するが、バックコンタクト側に基板がある本来の「基板」構造も、記載される方法に好適に使用される。
【0036】
[0051]一部の実施形態において、素子100は、反射防止層、防汚層、封入剤、界面層、バッファ層、キャッピング層、および光学反射層のうちの1つまたは複数をさらに含んでもよい。
【0037】
[0052]図2は、吸収体層140を形成および処理する典型的な方法200を示す。図1および図2を併せて参照すると、ウィンドウスタック310を含む、部分的に形成された素子を用意し210、堆積チャンバ内に置く。一部の実施形態において、ウィンドウスタック310は、基板層110、フロントコンタクト層120、および透明n型層130を含む。一部の実施形態において、ウィンドウスタック310は、ガラス製基板層110、基板層110上の透明導電性酸化物(TCO)、およびTCO上の未ドープ半導体層を含む。一部の実施形態において、ウィンドウスタック310は、基板層、基板層に隣接する透明導電性酸化物(TCO)、TCOに隣接する高抵抗透明(HRT)層、およびHRT層上の、1つまたは複数の半導体層を含む。
【0038】
[0053]吸収体堆積ステップ220中に、II-VI族型半導体材料、およびプニクトゲンドーパントは、部分的に形成された素子のウィンドウスタック310上に堆積し、図3に示されるように、ウィンドウスタック310上にドープ吸収体層340を含む光起電力スタック300を形成する。一部の実施形態において、ドーパントは、共堆積し、実質的に均一にドープされたドープ吸収体層340を有する光起電力スタック300を形成する。一部の実施形態では、堆積ステップ220中にII-VI族半導体材料を堆積させ、半導体材料の前、または後にドーパントを連続的に堆積させる。ドーパントは、その後半導体層中に拡散し、層の厚さにわたってドーパント勾配を有するドープ吸収体層340を形成する。ある実施形態において、II-VI族半導体材料は、CdTeである。ある実施形態において、II-VI族半導体材料は、CdS、CdSe、ZnTe、およびHgTeのうちの1つまたは複数と合金化されたCdTeである。
【0039】
[0054]CdTeなどの半導体層へのドープは、いくつかの方法で行われ得る。例えば、ドーパントは、CdTe源とともに堆積中に供給され得る。ドーパントは、粉末(すなわち、単相もしくは多相材料)として、またはキャリアガス中に導入され得る。ドーパントは、半導体層の堆積の間、前、後、または合間に、1つまたは複数の層を堆積させることによって導入され得る。例えば、隣接する層がCdTe層中に拡散可能なドーパントを含有してもよい。一部の実施形態において、半導体材料は、カルコゲニドであり、かつドーパントまたはドーパント前駆体は、第V族元素を含む。一部の実施形態によると、堆積ステップ220中に、少なくとも1つがプニクトゲンを含む、複数のドーパントが堆積する。
【0040】
[0055]典型的な実施形態において、半導体材料は、プニクトゲンドーパントとともに分子線エピタキシー(MBE:molecular beam epitaxy)によって堆積したCdTeを含む。別の典型的な実施形態において、半導体材料は、CdAsまたはAsHとともにCdTeを熱蒸着することによってヒ素ドーパントとともに堆積したCdTeを含む。典型的な実施形態において、半導体材料は、気相輸送堆積(VTD)によってプニクトゲンドーパントとともに堆積したCdTe合金を含む。一部の実施形態において、半導体は、本質的にカドミウム、テルル、およびヒ素元素からなる混合粉末または合金化粉末を使用し、VTDによって堆積する。ある実施形態において、原料中のプニクトゲンのモル分率は、0.05%から5.0%である。ヒ素ドーパントを用いる典型的な実施形態において、吸収体膜中のヒ素の濃度は、約1×1016cm-3から約5×1020cm-3である。ヒ素ドーパントを用いる一部の実施形態において、吸収体膜中のヒ素の濃度は、約1×1018cm-3から約5×1018cm-3である。アンチモンドーパントを用いる典型的な実施形態において、吸収体膜中のアンチモンの濃度は、約1×1017cm-3から約2×1020cm-3である。別の典型的な実施形態において、リンドーパントは、リン化カドミウム(Cd)とともに半導体材料を熱蒸着することによって取り込まれる。別の典型的な実施形態において、アンチモンドーパントは、テルル化アンチモン(SbTe)、カドミウム-アンチモン合金、または金属アンチモンとともに半導体材料を熱蒸着することによって取り込まれる。適切なドープ前駆体として、CdAs、AsSe、AsH、BiTe、SbTe、Cd、Zn、Bi(NO、Bi、PCl、PH、SbH、およびAsCl、ならびに元素形態のドーパントが挙げられるがこれらに限定されない。適切なドープ前駆体として、先に挙げた化合物と、CdTeまたは他のII-VI族材料との合金が挙げられる。
【0041】
[0056]典型的な堆積チャンバは、堆積蒸気供給源に接続された堆積ディストリビュータを含む。様々な層を堆積させるために、ディストリビュータを複数の蒸気供給源に接続させることができ、または基板を、複数の様々な堆積ステーションを通って移動させることができ、この複数の様々な堆積ステーションはそれらの独自の蒸気ディストリビュータおよび供給源を有する。
【0042】
[0057]ある実施形態において、ドーパントおよび吸収体堆積ステップ220の間、堆積チャンバは、酸素ガス、または水蒸気を実質的に含まない。例えば、堆積チャンバは、実質的に無酸素であると考えることができる。ここで用いられる、実質的に無酸素であるとは、チャンバ内の酸素に由来する分圧が、約133Pa(約1トル)未満であること、例えば、一実施形態において約67Pa(約500ミリトル)未満、別の実施形態において約13Pa(約100ミリトル)未満、さらなる実施形態において極めて低圧から約67Pa(約500ミリトル)の範囲、またはさらに別の実施形態において極めて低圧から約3Pa(約25ミリトル)の範囲などを意味し得る。同様に、チャンバは、実質的に無水蒸気であると考えることができる。ここで用いられる、実質的に無水蒸気であるとは、堆積チャンバ内の水蒸気に由来する分圧が、約133Pa(約1トル)未満であること、例えば、一実施形態において約67Pa(約500ミリトル)未満、別の実施形態において約33Pa(約250ミリトル)未満、またはさらなる実施形態において約13Pa(約100ミリトル)未満などを意味し得る。ここで用いられる、「極めて低圧」は、ゼロよりある程度高く、検査に使用される装置の検出限界であった約10-4Pa(約10-6トル)未満の圧力を意味し得る。さらなる実施形態において、堆積条件は、ドーパントおよび吸収体堆積ステップ220中に、化学的還元剤を堆積チャンバに供給するステップをさらに含む。ドーパントおよび吸収体堆積ステップ220により光起電力スタック300がもたらされる。
【0043】
[0058]処理ステップ240中に、光起電力スタック300は、熱処理され、パッシベーション剤と接触し、還元剤が供給される。還元剤は、第V族ドーパントよりもエネルギー的に有利に酸化され得る。すなわち、チャンバ内における還元剤の酸化反応のギブス自由エネルギー変化量(ΔG)は、第V族ドーパントよりも負である。光起電力スタック300は、高温の還元性環境中に保持される。一部の実施形態において、処理ステップ240は、低圧条件をさらに含む。
【0044】
[0059]パッシベーション剤は、処理ステップ240で供給される。一部の実施形態において、パッシベーション剤は、CdClである。他の適切なパッシベーション剤として、MnCl、MgCl、NHCl、ZnCl、またはTeClが挙げられる。パッシベーション剤は、単独で、または組み合わせて使用され得る。一部の実施形態において、光起電力スタック300は、高温で、還元性環境中でパッシベーション剤と接触する。他の実施形態において、光起電力スタック300は、パッシベーション剤と接触した後に高温の還元性環境中に置かれる。
【0045】
[0060]一部の実施形態において、還元剤は、Hであるか、またはHを含む。一部の実施形態において、還元剤は、本質的に還元剤と不活性ガスの混合物、例えばHとNの混合物からなるフォーミングガスの成分として与えられる。他の適切な還元剤として、メタン(CH)、一酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)、およびアンモニア化合物(NH)が挙げられる。ある実施形態において、処理ステップは、約50.0%から約99.4%のNと約0.6%から約3.0%のHとの混合物を有する環境を供給するステップを含む。ある実施形態において、処理ステップは、気体をチャンバに供給し、Hを含む環境を生じさせるステップを含む。ここに規定されるように、チャンバは、実質的に無酸素であり得る。代わりに、または加えて、チャンバは、実質的に無水蒸気であり得る。ある実施形態において、処理ステップは、気体をチャンバに供給し、本質的に100%のHからなる環境を生じさせるステップを含む。ある実施形態において、処理ステップは、原子分率が約0.5%から約100%の範囲のH、例えば一実施形態において約0.06%から約3.0%の範囲のH、または別の実施形態において約0.6%から約3.0%の範囲のHなどを含む環境を供給するステップを含む。ある実施形態において、処理ステップは、水素ガスをチャンバに供給するステップを含み、ここでチャンバ内のHの分圧は、例えば一実施形態において約400Pa(約3トル)から約6,666Pa(約50トル)の範囲、別の実施形態において約320Pa(約2.4トル)から約1,600Pa(約12トル)の範囲、さらなる実施形態において約560Pa(約4.2トル)から約2,800Pa(約21トル)の範囲、またはさらに別の実施形態において約400Pa(約3トル)から約2,000Pa(約15トル)の範囲など、約32Pa(約0.24トル)から約6,666Pa(約50トル)の範囲である。上述のように、チャンバは、実質的に酸素蒸気を含まないものとすることができる。したがって、チャンバ内の、酸素に対する還元剤の分圧比は、例えば一実施形態において約3を超える、別の実施形態において約100を超える、またはさらなる実施形態において約1,000を超えるなど、約0.24を超え得る。
【0046】
[0061]一部の実施形態において、高温は、約300℃を超える、約350℃を超える、約400℃を超える、約800℃未満、約600℃未満、約550℃未満、または約500℃未満の温度である。1つまたは複数の光起電力スタックは、例えば約5分間を超える、約15分間を超える、約20分間を超える、約30分間を超える、約30分間を超える、約90分間未満、約60分間未満、または約40分間未満の期間を含む適切な期間、熱加工され得る。
【0047】
[0062]理論によって拘束されることを望むものではないが、還元性環境中で行われる加熱ステップは、Te空孔を生じさせ、第V族ドーパントのTe空孔サイトへの移動を促進させることが示唆される。一部の実施形態において、還元性環境の温度および圧力は、還元性環境中の水素ガスと、CdTe合金を含有する半導体層との間の反応を誘導、または促進し、テルル化水素(HTe)を形成させるのに十分である。一部の実施形態において、選択される温度および圧力は、吸収体膜の相転移温度を下回る。
【0048】
[0063]処理ステップ240において、II-VI族半導体化合物のアニオンは、H、もしくは他の還元剤と、および/またはCdClなどのパッシベーション剤と反応し、層に由来するカルコゲン元素を消耗させ、TeClおよびHTeなどの揮発性種を形成する。これは、カルコゲン空孔が形成された後の再結晶中に、取り込まれたドーパントのさらなる活性化を促進させる。例えば、CdTe中、第V族ドーパントが、揮発性HTeを形成するH-Te間の反応を通して多結晶格子中に形成されたTe空孔を占有する。さらなる例として、ZnTe、CdS、またはCdSeなどの化合物とHの反応が挙げられる。理論によって拘束されることを望むものではないが、還元性環境中での不動態化および加熱処理は、Te空孔(VTe)およびCdの富化、結晶格子のTe空孔への第V族元素ドーパントの取り込み(例えば、BiTe、SbTe、AsTe、PTe)を促進させ、結果としてドーパントの活性化を促進させることが示唆される。本ステップは、塩素化を通して、粒界の不動態化、および欠陥の不動態化も達成する。
【0049】
[0064]処理ステップ240の典型的な実施形態において、ドープCdTe吸収体層340を有する光起電力スタックは、CSS系によってCdCl薄層で被覆され、吸収体層340を覆うCdCl被膜を生じさせた。参照によりここに援用される米国特許第9,318,642号に記載されるように、CdClは、加熱処理中に蒸気としても供給され得、供給は還元剤の添加とともに実行され得る。CdCl層は、例えば、スピンコート、噴霧、またはロールコートによっても供給され得る。吸収体層340を覆うCdCl被膜を有する光起電力スタックは、次いで約10分間から20分間、NとHの混合気体を有する還元性環境中で熱加工された。気体の全圧は、約39,997Pa(約300トル)から約79,993Pa(約600トル)であり、そのうちHの分圧は約400Pa(約3トル)から約6,666Pa(約50トル)であった。アニールを含む処理ステップ240中の基板110の温度は、約375℃から約475℃の範囲であった。
【0050】
[0065]処理ステップ240の別の典型的な実施形態において、光起電力スタック300は、約26,664Pa(約200トル)から約106,658Pa(約800トル)の範囲の圧力、約350℃から約500℃の範囲の温度、および水素分圧が約400Pa(約3トル)から約6,666Pa(約50トル)の範囲の還元性環境の加熱処理環境中に、約5分間から約45分間、保持される。処理ステップ240のさらなる典型的な実施形態において、光起電力スタックは、約400℃から約500℃の範囲の温度で、約5分間から約30分間の期間、チャンバ内に保持され、窒素ガス、水素ガス、および塩化カドミウム蒸気からなる還元性環境がチャンバに供給される。チャンバは、実質的に無酸素であり得る。
【0051】
[0066]次に図4を見ると、ドープ吸収体層340を有する素子を形成する方法400の例が示される。
[0067]ウィンドウスタック310が形成される410。堆積ステップ420中に、II-VI族半導体およびドーパントをウィンドウスタック310上に堆積させ、光起電力スタック300を形成させる。
【0052】
[0068]前処理ステップ430中に、光起電力スタック300は、実質的に無酸素の環境中で加熱され、かつアニールされる。一部の実施形態において、前処理ステップ430は、真空下、または低圧で行われる。一部の実施形態において、前処理ステップ430は、約101,325Pa(約760トル)の常圧以下で行われる。一部の実施形態において、前処理ステップ430は、約0.13Pa(約0.1ミリトル)以下の圧力の真空環境中で行われる。一部の実施形態において、真空環境の圧力は、例えば約0.13Pa(約1×10-4トル)から約1.3×10-6Pa(約1×10-9トル)など、約1.3Pa(約1×10-2トル)から約1.3×10-6Pa(約1×10-9トル)の範囲である。他の実施形態において、前処理ステップ430は、約73,327Pa(約550トル)以下の圧力の低圧環境中で行われる。一部の実施形態において、低圧環境の圧力は、約3,333Pa(約25トル)から約73,327Pa(約550トル)の範囲である。典型的な実施形態において、光起電力スタック300は、真空下、約300℃から約500℃の範囲(例えば、約300℃から約450℃の範囲)の温度で、約10分間から約60分間の範囲の期間、アニールされる。
【0053】
[0069]理論によって拘束されることを望むものではないが、減圧および高温でのドープ吸収体層340の前処理は、欠陥を減少させ、化学的により均一な吸収体膜を形成させ、粒子成長を促進させ、化学量論組成の回復に寄与し、かつII-VI族半導体層全体へのドーパントの取り込みを促進させることが示唆される。前処理ステップは、例えば物理蒸着(PVD:physical vapor deposition)技術で使用される条件など、約300℃未満の温度、および低圧で堆積した吸収体層に特に有益である。
【0054】
[0070]処理ステップ440中に、図2に示される工程で説明されるように、光起電力スタック300は、パッシベーション剤と接触し、高温の還元性環境中に保持される。
[0071]加工ステップ450中に、光起電力スタックは、加熱され、酸素化された環境中に保持される。典型的な実施形態において、光起電力スタックは、空気中、約150℃から約200℃の範囲の温度、常圧または常圧付近で、約30分間から約120分間の期間保持される。
【0055】
[0072]バックコンタクト形成ステップ460中に、バックコンタクト材料は、光起電力スタック上に形成されるか、または光起電力スタック上を被覆する。適切なバックコンタクト材料として、合金、金属スタック、導電性酸化物、およびグラファイト化合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
[0073]図4の方法400によって、多結晶半導体材料の結晶格子中にドーパントが取り込まれたドープ吸収体層340を有する光起電力素子の実施形態がもたらされる。ある実施形態において、ドープ半導体吸収体層340中の第V族ドーパントの濃度は、約5×1016cm-3から約2×1018cm-3の間(例えば、約5×1017cm-3から約1×1018cm-3)であり、処理されたドープ半導体吸収体層340のp型電荷キャリア濃度は、約5×1015cm-3から約5×1017cm-3の範囲(例えば、約5×1015cm-3から約5×1016cm-3)である。したがって、第V族ドーパントの見かけの活性化率は、吸収体層340中の第V族ドーパントの約0.25at%から約10at%(例えば、約1at%から約5at%)である。ある実施形態において、
処理されたドープ半導体吸収体層340中の第V族ドーパントの濃度は、吸収体層340の厚さ全体にわたって約1×1014cm-3から約1×1018cm-3の間であり、約0.5at%から約5.0at%の第V族ドーパントがCdTe結晶格子中のTe空孔を占有する。ある実施形態において、ドーパントの活性化レベルは、約1%から約10%であり、ここで、吸収体膜を還元性環境中で加熱した後、吸収体層中の約1at%から約10at%の第V族ドーパントが、II-VI族半導体多結晶格子中の第VI族型空孔を占有する。ある実施形態において、第V族ドーパントの活性化レベルは、約2%以上である。
【0057】
[0074]ある実施形態において、ウィンドウスタックを用意するステップ410は、米国特許第9,082,903号に記載されるように、ウィンドウ層を形成するステップを含む。ある実施形態において、ウィンドウスタックを用意するステップ410は、1つまたは複数の半導体層をTCO層上に堆積させるステップをさらに含む。例えば、ウィンドウスタックを用意するステップ410は、CdS層、および/またはCdSe層を堆積させるステップをさらに含み、続いて、任意選択で未ドープCdTe層を、CdS層またはCdSe層上に堆積させるステップを行う。一部の実施形態において、吸収体およびドーパント堆積ステップ420は、高温工程(約350℃から1,200℃)によって、前処理ステップを行わずに実施され、多結晶半導体材料の結晶格子中にドーパントが取り込まれたドープ吸収体層を有する光起電力素子をもたらす。典型的な実施形態において、ウィンドウスタックを用意するステップ410の後に、ウィンドウスタック310の半導体層上に堆積させる、約450℃から約600℃の温度でVTDによって行われるCdTeの堆積とともにプニクトゲンドーパントについての吸収体およびドーパント堆積ステップ420が続き、光起電力スタック300が形成される。光起電力スタックは、次いで、欠陥の不動態化およびドーパント活性化ステップ440において処理される。欠陥の不動態化およびドーパント活性化ステップ440において、光起電力スタック300は、実質的に無酸素な還元性環境中で、熱、CdCl、およびHによって処理される。条件の例として、水素分圧が約400Pa(約3トル)から約2,666Pa(約20トル)の、約33,330Pa(約250トル)から約約101,325Pa(760トル)の全圧、約350℃から約475℃の温度、約5分間から約90分間の間の合計期間が挙げられる。
【0058】
[0075]処理ステップ440中に、欠陥は不動態化され、かつプニクトゲンドーパントは活性化し、それによってプニクトゲンドーパント原子は、結晶格子中のテルル位置を占有する。処理ステップ440による光起電力スタック300の加工は、例えば一実施形態において約1ミクロンから約3ミクロンの間の厚さ、別の実施形態において約1.0ミクロンの厚さ、またはさらなる実施形態において約3.0ミクロンの厚さなど、約0.5ミクロンから約3.5ミクロンの厚さを有する吸収体層340をもたらし得る。
【0059】
[0076]処理ステップ440中に、または独立するアニールステップにおいて、吸収体層340は、ウィンドウスタック310の背面の、隣接する半導体層とともにアニールされ得、段階的な組成を有する吸収体層340であって、例えばカドミウム、テルル、およびセレンまたは硫黄の合金を含む吸収体層340を形成する。処理工程は、隣接する半導体層(例えば、CdS層、および/もしくはCdSe層)を実質的に全て消費してもよく、またはCdS層、および/もしくはCdSe層などの隣接する半導体層の一部が、ウィンドウスタックのTCO層とドープCdSeTe/CdTe吸収体層340との間に残存してもよい。同様に、処理工程は、ウィンドウスタック310の背面の、隣接する半導体層を実質的に全てドープCdTe層に混合させてもよく、またはCdTe層の一部が、バックコンタクトに隣接するセレンまたは硫黄を実質的に含まないままでもよい。
【0060】
[0077]欠陥の不動態化およびドーパント活性化処理ステップ440に続き、吸収体の表面は洗浄され、バックコンタクトが形成される460。一部の実施形態において、バック
コンタクトは、ZnTeを含んでもよく、米国特許出願公開第2014/0261667号に記載されるように形成され得る。
【0061】
[0078]一部の実施形態において、光起電力スタック300は、選択されるステップを通して加工される。一部の実施形態において、一部のステップは、組み合わされるか、または省略される。典型的な実施形態において、部分的に形成された素子は、カルコゲニドおよびドーパントを堆積させて光起電力スタック300を形成させる吸収体堆積ステップ420、実質的に無酸素で低圧の環境中で光起電力スタックをアニールする前処理ステップ430、および還元性環境中で光起電力スタック300を不動態化しかつ加熱処理する処理ステップ440のみを逐次的に経て成長する。別の典型的な実施形態において、部分的に形成された素子は、カルコゲニドおよびドーパントを堆積させて光起電力スタック300を形成させる吸収体堆積ステップ420から、還元性環境中で光起電力スタック300を不動態化しかつ加熱処理し、結果としてドーパントを活性化させる処理ステップ440までを逐次的に経て成長する。
【0062】
[0079]一部の実施形態において、光起電力スタック300は、420、440、および460の全てのステップを逐次的に経て加工される。一部の実施形態において、光起電力スタック300は、410、420、430、440、450、および460の全てのステップを逐次的に経て加工される。一部の実施形態において、加工ステップは、逐次的に、かつ速やかに行われ、ステップ間に介在する時間は実質的にない。一部の実施形態において、加工ステップは、速やかに行われない。一部の実施形態において、ステップは、繰り返し行われる。一部の実施形態において、1つまたは複数の介在するステップ、例えば冷却ステップ、洗浄ステップ、ケミカルリンス、不動態化ステップ、追加のアニールステップ、追加のドーパント堆積、および/またはバッファ層、電子反射層、もしくは光学反射層などの介在層の堆積が行われる。一部の実施形態において、バックコンタクト形成前に、1つまたは複数の追加の層が、光起電力スタック300の吸収体層340上を被覆する。
【実施例0063】
[0080]CdTe:As試料
ガラス基板上に、透明導電性酸化物(TCO)、例えばフッ素ドープ酸化スズを堆積させ、その後TCO上にウィンドウ層を堆積させて一連のウィンドウスタック部分を形成させることにより、試料を調製した。次いで、ウィンドウ層上にテルル化カドミウム(CdTe)層を堆積させた。以下にさらに記載されるようにCdTeの堆積、および処理工程を行った:ヒ素ドーパントを用いる場合、および用いない場合;堆積後の前処理真空アニールステップを行う場合、および行わない場合;ならびに還元性環境中、または不活性環境中でCdClによる活性化加熱処理を行う場合。
【0064】
[0081]一連の試料において、ウィンドウスタック部分のウィンドウ層上にヒ素ドープテルル化カドミウム層を堆積させた。ヒ素ドープテルル化カドミウム(CdTe:As)層は、約1×1018cm-3の実質的に均質なヒ素ドープ濃度を有していた。
【0065】
[0082]その後、結果として得られた一連の光起電力スタックに、約300℃から約420℃で、約20分間から約60分間、真空アニール前処理工程を施した。
[0083]その後、前処理された部品に、還元性環境中、または不活性雰囲気中、約350℃から約500℃で、約5分間から約40分間、CdCl加熱処理を施した。蒸着により、約1μmのCdClで吸収体表面を被覆した。加熱処理中、圧力は、約53,329Pa(約400トル)から約106,658Pa(約800トル)の範囲の全圧に維持された。還元性環境は、本質的に窒素、および水素からなるものであった。すなわち、還元性環境は、実質的に無酸素であり、かつ実質的に無水蒸気であった。還元性環境の不活性ガスは、本質的に窒素からなるものであった。窒素からなる不活性ガスが供給される様々な還元性環境中、選択されたフォーミングガス濃度で、一連の部品を処理した。使用されたフォーミングガスは、3%Hおよび97%Nであった。したがって、不活性ガスでフォーミングガスを希釈し、ここに記載される試験を行った。
【0066】
[0084]次いで、常圧、約170℃の空気環境中に、約1時間、試料を置いた。その後、金属製バックコンタクトで被覆した。
[0085]CdTe:As/CdSe試料
ガラス基板上にTCOを堆積させ、その後TCO上に酸化物ウィンドウ層を堆積させ、その後セレン化カドミウム(CdSe)層を堆積させて一連のウィンドウスタック部分を形成させることにより、試料を調製した。次いで、ヒ素ドーパントを有するテルル化カドミウム(CdTe)層をCdSe層上に堆積させ、ヒ素ドープ吸収体層を有する一連の光起電力スタックを形成させた。約350℃を下回る温度で堆積させた試料に真空アニール前処理を施し、一方、高温工程で堆積させた試料には前処理を行わなかった。その後、フォーミングガスおよび不活性対照を用いて形成された、選択された還元性環境中で、CdCl加熱処理による活性化処理を光起電力スタックに施した。CdClは、液体、粉末、または蒸気として、還元剤による熱処理の直前、または間に被覆することができる。試料の吸収体表面を、還元性環境中、約350℃から約450℃の範囲の温度、および約53,329Pa(約400トル)から約93,326Pa(約700トル)の全圧で、還元剤を供給する環境中、約10分間から約180分間の間の期間、CdCl蒸気と接触させた。この一連の試料に使用される還元剤は、フォーミングガスによってもたらされた。フォーミングガスは、約3%の水素、および約97%の窒素を含有した。還元剤は、選択される濃度で供給され、還元性環境へ供給される気体の残部を窒素が占める。不活性対照は、窒素を100%含有した。全圧は、任意の量の不活性対照でフォーミングガスを任意選択で希釈することによってもたらされ得る。したがって、試験される実施形態において、還元剤(すなわち、H)の最大分圧は、約1,600Pa(約12トル)から約2,800Pa(約21トル)の間であり、不活性ガス(窒素)の最小分圧は、約51,729Pa(約388トル)から約90,526Pa(約679トル)の間であった。次いで、バックコンタクトで試料を被覆した。
【0067】
[0086]CdTe:Sb試料
アンチモンドーパントを有する、1~5μmのテルル化カドミウム(CdTe)の層を、部分的に形成された素子のウィンドウ層上に堆積させ、一連の光起電力スタックを形成させることによって、一連のアンチモンドープ試料を調製した。その後、約100%のフォーミングガスを有する還元性環境中、約53,329Pa(約400トル)から約79,993Pa(約600トル)の圧力、および約400℃から約500℃の温度で行われる、CdCl加熱処理による活性化処理を光起電力スタックに施した。
【0068】
[0087]CdTe:P試料
リンドーパントを有する、1~5μmのテルル化カドミウム(CdTe)の層を、ウィンドウスタック上に堆積させ、一連の光起電力スタックを形成させることによって、一連のリンドープ試料を調製した。その後、約100%のフォーミングガスを有する還元性環境中、約53,329Pa(約400トル)から約79,993Pa(約600トル)の圧力、および約400℃から約500℃の温度で行われる、CdCl加熱処理による活性化処理を光起電力スタックに施した。
【0069】
[0088]結果
図面に示され、かつ実験結果によって評価されるように、真空アニール前処理は、CdとTeの化学量論的再平衡化、欠陥の改善、および吸収体層全体にわたって実質的に均質なAsドーパントの取り込みを促進させた。CdClおよびHによる加熱処理は、欠
陥の不動態化、キャリア濃度の増大、空乏幅の減少、および結晶格子のVTeにドーパントを取り込むことによるドーパントの活性化を促進させた。本加工の処理ステップを通し、ドーパントは活性化し、素子効率は向上した。
【0070】
[0089]図5は、吸収体とヒ素ドーパントを約200℃から約250℃の範囲の温度で共堆積させたCdTe吸収体膜のラマンスペクトルを示す。図5は、対照膜(曲線160に対応)と、実効膜(曲線162に対応)とを比較する。堆積後の真空加熱前処理を、約300℃から約420℃の範囲の温度で、約20分間から約60分間の範囲の期間、対照膜、および実効膜に施した。対照膜は、非常に強い膜中に存在するTe相を示し、Teに富む層を示す。約300℃から約420℃での、約20分間から約60分間の真空アニールは、化学量論的再平衡化を促進させ、Teのピークを排除する。AsH、またはCdAsのいずれかを用いて堆積ステップ中にドープされた膜においても、同様の結果が見出された。
【0071】
[0090]約200℃から約250℃の堆積温度で調製されたヒ素ドープCdTe素子を、前処理を行う場合と、前処理を行わない場合とで比較し、ドーパントの濃度および吸収体層全体への分布を評価した。対照は、TCOにおける、またはTCOに隣接する、吸収体膜の前方界面においてAsドーパントのスパイクを示し、ドーパントの濃度は減少し、かつ平均濃度は、吸収体全体にわたるスパイクよりも1桁低かった。堆積後の真空アニール前処理を施したスタックのドーパント分布は、吸収体全体にわたり、より均一で、かつ均質であり、ドーパント濃度範囲はより狭く、平均濃度レベルはより高かった。
【0072】
[0091]図6は、PL波長の分布および強度を比較する、規格化された発光(PL)強度値のプロットを示し、未処理(曲線164に対応)と、真空中、約300℃から約420℃ので、約20分間から約60分間アニールされた、処理されたヒ素ドープCdTe素子(曲線166に対応)とを比較する。より高い強度値、およびピーク形状のPL曲線は、処理された素子の欠陥が対照より少ないことを示す。
【0073】
[0092]図7は、ヒ素ドープCdTe素子について、波長に対する、規格化された量子効率(QE)を示す。QE測定結果は、上述したように、真空前処理を施した素子(曲線168に対応)と対照(曲線170に対応)とを比較する。対照、および前処理された素子の両方に、水素および窒素ガスを含有する還元性環境中、約400℃から約500℃の範囲の温度で、約5分間から約45分間の範囲の期間、CdClを使用して同等の活性化処理を施した。真空加熱前処理を施した素子(曲線168)のQE測定結果を対照(曲線170)と比較することにより、処理された素子のQE全体が、前処理によって向上することが測定結果から示される。活性化処理が後に続く真空前処理を用いて調製される典型的な素子のVOC測定結果は、約740mVであった。
【0074】
[0093]図8は、ヒ素ドープCdTe素子について、深さに対する電荷キャリア濃度および位相角を説明するCV曲線を示す。位相角は、インピーダンスに印加される電圧と、そこを通過する電流との間の位相差を測定し、素子が「漏洩しやすい」か、または電荷キャリアが再結合しやすいかに関する指標を与える。測定は、真空加熱前処理を行うヒ素ドープ素子(曲線172に対応)、および真空加熱前処理を行わないヒ素ドープ素子(曲線174に対応)について示される。測定結果の比較において、前処理を行わなかったヒ素ドープ対照(曲線174)と比較し、前処理された素子(曲線172)は、より良い性能特性を示す。処理された素子は、p型ドープ量の平均が2×1015cm-3を上回る良好な電荷キャリア濃度、低い空乏幅、および低漏洩を示す。グラフは、真空アニールによって処理されない素子の、測定された位相角が低いことを示し、素子が漏洩しやすく、再結合率が高くなりやすいことを示す。
【0075】
[0094]結果は、約200℃から約250℃の範囲の温度で熱蒸着によって堆積し、前処理真空アニール(pre-VCHT VA)、および還元性環境中での活性化処理を行ったヒ素ドープ吸収体層によって、欠陥がより少なく、再結合がより少なく、かつ移動性電荷キャリアの寿命がより長い素子がもたらされることを示す。測定されるように、ドープ素子の真空加熱処理は、概して効率を増大させ、VOCを増大させ、短絡電流密度を増大させ、曲線因子を向上させ、抵抗を減少させ、分流を減少させ、かつ性能を向上させた。
【0076】
[0095]図9は、還元性環境中でのCdCl活性化処理後のヒ素ドープCdTe合金の例について、元素濃度の深さ分布を示す。As176、Te(生イオンカウント)178、およびSn180についての深さ分布は、ダイナミック二次イオン質量分析(DSIMS:Dynamic secondary ion mass spectrometry)によって測定された。グラフ左側の深さゼロの点から約2μmの深さまで延びる吸収体層が示される。CdCl加熱処理の後に、素子は、吸収体全体にわたる良好なドーパント分布、および高いドーパント濃度レベルを示す。
【0077】
[0096]図10は、先に記載されたように、選択された還元性環境中でのCdClおよび加熱による処理が後に続く真空アニール前処理を施したヒ素ドープ試料について、深さに対する電荷キャリア濃度のCV曲線を示す。選択された還元性環境には、フォーミングガス100%(曲線182)、フォーミングガス20%(曲線184)、フォーミングガス2%(曲線186)、および対照としてフォーミングガス0%(曲線188)が含まれた。環境の残部は、窒素ガス(N)が占めた。全圧は、約66,661Pa(約500トル)であった。したがって、例えば、100%のフォーミングガスが供給される環境は、原子分率約3%の水素(分圧約2,000Pa(約15トル))および原子分率約97%の窒素(分圧約64,661Pa(約485トル))の、水素ガスと窒素ガスの混合物から本質的になるものであり、20%のフォーミングガスが供給される環境は、原子分率約0.6%の水素(分圧約400Pa(約3トル))および原子分率約99.4%の窒素(分圧約66,261Pa(約497トル))の、水素ガスと窒素ガスの混合物から本質的になるものであり、2%のフォーミングガスが供給される環境は、原子分率約0.06%の水素(分圧約40Pa(約0.3トル))および原子分率約99.94%の窒素(分圧約66,621Pa(約499.7トル))の、水素ガスと窒素ガスの混合物から本質的になるものであり、かつ0%のフォーミングガスが供給される対照環境は、窒素から本質的になるものであった。接合点からの距離が約0.1~0.4μmにおける曲線182は、100%フォーミングガス処理に対応する。接合点からの距離が約0.5~1.2μmにおける曲線184は、20%フォーミングガス処理に対応する。接合点からの距離が約1.4~2.2μmにおける曲線186は、2%フォーミングガス処理に対応する。接合点からの距離が約2.8~3.0μmにおける曲線188は、0%フォーミングガスによる対照に対応する。示されるように、処理ステップにおけるH濃度の上昇とともに、キャリア濃度が上昇し、かつ空孔幅が減少する。対照は実質的に消耗される。
【0078】
[0097]図11は、CdCl加熱処理後のヒ素ドープ素子のVOC測定結果の比較を示す。データ点190は、窒素中で処理された素子のVOC測定結果を示し、データ点192は、フォーミングガス約100%の還元性環境中で処理された素子の、より高いVOC測定結果を示す。還元性環境中でCdCl加熱処理によって処理された試料は、フォーミングガス環境を使用しない同等の試料と比較し、より高いVOCを良好に示す。
【0079】
[0098]図12は、対照ヒ素ドープ素子(曲線194)、および処理されたヒ素ドープ素子(曲線196)に関する、電流電圧(I-V)曲線を示す。この試料について、前述されるように、フォーミングガスを約100%有する選択された還元性環境中で、処理された素子を活性化した。
【0080】
[0099]図13Aから図13Cは、処理されたヒ素ドープ素子の測定結果を示す。図13Aは、処理された素子中のヒ素ドーパントのDSIMS分布を示す。図13Bは、電荷キャリア濃度のCV測定結果を示す。図13Cは、測定されたVOCが883mVのヒ素ドープ素子に関するI-V曲線(濃い曲線250、および薄い曲線252)を示す。
【0081】
[00100]半導体のp型、またはn型の性質は、CVおよびQEの両方を測定することに
よって決定され得る。p型の性質が規定された時点で、濃度レベルを示すDSIMSデータを用いて、p型の電荷キャリア濃度が決定され得る。単一の素子に関し、CV見かけのドープ量とDSIMS濃度の間の比は、活性化ドーパントの割合を示す。例えば、図13Aは、約2×1018/cmのDSIMS濃度を示し、図13Bは、約4.5×1016/cmのp型ドープキャリア濃度を示す。したがって、約2%の活性化が示される。素子は、高いドープレベル、良好な深さ分布、ドーパントの化学的取り込み、および高いVOCを示す。
【0082】
[00101]図14Aから図14Cは、処理されたヒ素ドープ素子の測定結果を示す。図1
4Aは、QE測定結果を示す。図14Bは、測定されたVOCが806mV、かつFFが78.3%の素子に関するI-V曲線(濃い曲線250、および薄い曲線252)を示す。図14Cは、電荷キャリア濃度のCV測定結果を示す。フォーミングガスを用いる処理により、より短い約400nmから約600nmの波長における量子効率が、約15%から約25%に向上することが観測された。
【0083】
[00102]他の多くのドーパントと比較し、ヒ素の付着係数は低い。その結果、吸収体層
全体に取り込まれるドーパント量が少なくなる可能性があるため、活性化の重要性は高まる。記載される方法を用いて製造される素子の実施形態に含まれるドーパントのレベルは、吸収体層中、100万分の1である。一部の実施形態において、ヒ素をモル分率1%でCdTe原料粉末と混合すると、吸収体全体で原子分率約0.01%、または1立方センチメートル当たり1.5×1018のヒ素がもたらされる。一部の実施形態において、ドープ半導体吸収体層のp型電荷キャリア濃度は、約1×1015cm-3から8×1016cm-3の範囲である。一部の実施形態において、ドープ半導体吸収体層のp型電荷キャリア濃度は、約1×1016cm-3から6×1016cm-3の範囲である。
【0084】
[00103]ヒ素ドーパントの濃度を変化させて実験を行った。約0.01at%の低濃度
のヒ素を有する実施形態は、記載される方法を用い、約2.4×1016cm-3の正孔濃度を確実にもたらした。表1の例の結果に示されるように、広範なドープ濃度にわたり、約3%から約5%の活性化レベルをもたらすことができる。
【0085】
【表1】
【0086】
[00105]図15は、100%フォーミングガス環境中で行われたCdCl加熱処理に
よる活性化処理後のアンチモンドープ試料について、深さに対する電荷キャリア濃度をプロットした静電容量-電圧測定結果を示す。
【0087】
[00106]図16は、約100%のフォーミングガスを有する還元性環境中、約53,3
29Pa(約400トル)から約79,993Pa(約600トル)の圧力、および約400℃から約500℃の温度で行われたCdCl加熱処理による活性化処理後のリンドープCdTe吸収体について、深さに対する電荷キャリア濃度をプロットした静電容量-電圧測定結果を示す。
【0088】
[00107]ドーパントの組成およびレベルを変え、スタックに追加の半導体化合物を組み
込み、かつ堆積条件、前処理パラメータ、および処理パラメータを変え、典型的な一連の素子をさらに調製した。収集されたデータは、与えられる例から得られた結果と一致する。
【0089】
[00108]例および比較対照試料に示されるように、空気中、またはN中での従来の堆
積後不動態化を用いると、第V族ドーパントの取り込みを行った多結晶CdTe吸収体膜を活性化させることができない。
【0090】
[00109]多結晶II-VI族半導体吸収体層中の第V族ドーパントを活性化させる方法
が提供される。典型的な方法のステップとして、第V族ドーパントがドープされた吸収体膜を用意するステップ;任意選択で、第一の加熱処理環境中で、吸収体膜に第一の加熱処理を施すステップであって、第一の加熱処理環境は、実質的に無酸素雰囲気を含み、かつ低圧または真空であり得る、ステップ;吸収体膜の表面または一部を、ハロゲン、または不動態化剤に接触させるステップ;および第二の加熱処理環境中で、吸収体膜に第二の加熱処理を施すステップ;第二の加熱処理環境中に水素ガスなどの還元剤を供給して還元性環境を形成させるステップ;それによって吸収体膜中のドーパントを活性化させるステップであって、それによって活性化ドーパントがII-VI族半導体結晶格子中の第VI族型空孔を占有する、ステップが挙げられる。
【0091】
[00110]ここに説明されるように、テルル化カドミウム多結晶吸収体層中、ならびにセ
レンおよび亜鉛を含む材料を有するテルル化カドミウム合金の多結晶吸収体層中の第V族ドーパントを活性化させる、開示される方法を示してきた。本方法は、寿命、および素子の性能を向上させる。適切な方法として、堆積後アニール加工が挙げられる。真空下、または実質的に無酸素の環境中で行われる前処理アニールステップにより、化学量論的調整、ドーパント分布、および欠陥の低減が達成される。塩化カドミウム、または他の不動態化剤で半導体スタックを処理すること、および還元ガスを供給しながらスタックを加熱することにより、ドーパントの活性化、粒子成長、および欠陥の不動態化が達成される。
【0092】
[00111]一部の実施形態において、方法、装置、および/または構造は、Cdに富む吸
収体層を形成すること;多結晶半導体格子中のカルコゲニド空孔へドーパントを取り込ませること;Te空孔を形成させること;第V族ドーパントを活性化し、電荷キャリアの移動性および密度を増大させること;結晶粒子構造の欠陥を修復すること;分流を低減させること、キャリア再結合を低減させること;任意選択で、半導体層組成に勾配をつけて構造を最適化し、かつ界面再結合を低減させること;スーパーストレート、またはサブストレート上に成長し、かつインサイチュで加工されて1つまたは複数のドープ吸収体層が形成された、高度にドープされた材料を製造すること;電子および正孔の再結合を低減すること;ならびにコスト効率の高い光起電力構造を提供することを提供する。実施形態において、記載される機能は、性能を最適化するための、素子中の光吸収および電荷キャリア流の制御を可能にする。本開示の方法および構造は、従来技術の薄膜光起電力素子と比較し、短絡電流(JSC)、開回路電圧(VOC)、および曲線因子(FF)が改善された光起電力素子を提供することができる。
【0093】
[00112]ここに提供される実施形態によると、光起電力半導体吸収体層を処理するため
の方法は、還元剤を供給して還元性環境を生じさせるステップを含むことができる。方法は、吸収体層の少なくとも一部を、吸収体層を還元性環境としつつ不動態化剤に接触させるステップを含むことができる。吸収体層は、第V族ドーパントでドープされ得る。吸収体層は、カドミウム、およびテルルを含むことができる。方法は、還元性環境中、選択される温度、および選択される圧力で、選択される処理期間、吸収体層を加熱するステップを含むことができる。
【0094】
[00113]ここに提供される実施形態によると、光起電力素子は、吸収体層を含むことが
できる。吸収体層は、カドミウム、セレン、およびテルル、ならびに第V族ドーパントを含むことができる。吸収体層中の第V族ドーパントの濃度は、吸収体層の厚さ全体にわたって約1×1016cm-3から約5×1020cm-3の間であり得る。1at%から10at%の第V族ドーパントを活性化させることができる。活性化する第V族ドーパントの一部は、CdTe結晶格子中のTe空孔を占有することができる。
【0095】
[00114]本開示の実施形態の原則および実施の態様を、例を用いて解説し、かつ説明した。しかし、ここに記載される実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、具体的に解説、および説明される以外の方法でも実施され得る。典型的な実施形態が提示されるが、多数の変形例が存在することが理解されるべきである。典型的な実施形態、または複数の典型的な実施形態は、単なる例であり、本開示の範囲、適用範囲、または構成を限定することを決して意図するものではないことも理解されるべきである。むしろ、詳細な説明は、本開示の典型的な実施形態を実行するための指針を当業者に与える。添付の特許請求の範囲に記載される本開示の範囲を逸脱することなく、典型的な実施形態において記載される要素の機能および配置に様々な変更が加えられ得ることが理解される。
[発明の態様]
[1]
光起電力半導体吸収体層を処理する方法であって、
還元剤を供給して還元性環境を生じさせるステップ、
吸収体層の少なくとも一部を、前記吸収体層を前記還元性環境としつつ不動態化剤に接触させるステップであって、前記吸収体層に第V族ドーパントがドープされ、かつ前記吸
収体層は、カドミウム、およびテルルを含む、ステップ、ならびに
前記還元性環境中、選択される温度、および選択される圧力で、選択される処理期間、
前記吸収体層を加熱するステップ
を含む方法。
[2]
前記還元剤は、H、硫化水素、メタン、一酸化炭素、アンモニア化合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
[3]
前記還元剤は、Hを含む、請求項2に記載の方法。
[4]
は、少なくとも32Pa(0.24トル)の分圧で与えられる、請求項3に記載の方法。
[5]
前記還元性環境は、少なくとも微量の酸素を含み、前記酸素の分圧に対する前記還元剤の分圧の比は、少なくとも3である、請求項2に記載の方法。
[6]
還元剤は、400Pa(3トル)から6,666Pa(50トル)の範囲の分圧で与えられる、請求項2に記載の方法。
[7]
前記還元性環境は、実質的に無酸素である、請求項1に記載の方法。
[8]
前記還元性環境の大部分は、不活性ガスで形成される、請求項1に記載の方法。
[9]
不活性剤は、Nを含む、請求項8に記載の方法。
[10]
前記不動態化剤は、CdClを含む、請求項1に記載の方法。
[11]
前記吸収体層は、セレンを含む、請求項1に記載の方法。
[12]
前記第V族ドーパントは、ヒ素を含む、請求項11に記載の方法。
[13]
前記選択される温度は、350から500の範囲であり、前記選択される圧力は、26,664Pa(200トル)から106,658Pa(800トル)の範囲であり、前記選択される処理期間は、5分間から45分間の範囲である、請求項1に記載の方法。
[14]
前記吸収体層は、前記吸収体層の厚さ全体にわたって1×1016cm-3から5×1020cm-3の間の濃度の前記第V族ドーパントを含み、前記還元性環境中で前記吸収体層を加熱するステップは、1at%から10at%の間の前記第V族ドーパントを活性化させる、請求項1に記載の方法。
[15]
前記吸収体層が前記不動態化剤と接触する前に、吸収体膜を真空アニールするステップを含み、前記真空アニールするステップは、圧力が1.3×10-7Pa(1×10-9トル)から1.3Pa(1×10-2トル)の範囲で、温度が300から500の範囲の真空に、10分間から60分間の期間、前記吸収体膜を曝露させる、請求項1に記載
の方法。
[16]
前記不動態化剤は、MnCl、MgCl、NHCl、ZnCl、およびTeClのうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
[17]
前記第V族ドーパントは、ビスマス、アンチモン、ヒ素、リン、窒素、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
[18]
約0.5μmから3.5μmの厚さにカドミウム、セレン、およびテルルを含み、かつ第V族ドーパントを含む吸収体層を含む光起電力素子であって、
前記吸収体層中の前記第V族ドーパントの濃度は、前記吸収体層の厚さ全体にわたって約1×1016cm-3から約5×1020cm-3の間であり、
1at%から10at%の前記第V族ドーパントが活性化する、光起電力素子。
[19]
前記吸収体層を覆うバックコンタクトを含み、前記バックコンタクトは、窒素ドープZnTeを含む、請求項18に記載の光起電力素子。
[20]
前記第V族ドーパントは、アンチモンを含む、請求項18または19に記載の光起電力素子。
[21]
前記第V族ドーパントは、リンを含む、請求項18または19に記載の光起電力素子。
[22]
前記第V族ドーパントは、ヒ素を含む、請求項18または19に記載の光起電力素子。
[23]
前記還元性環境は、少なくとも微量の酸素を含み、前記酸素の分圧に対する前記還元剤の分圧の比は、少なくとも3である、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
[24]
前記還元剤の分圧は、400Pa(3トル)から6,666Pa(50トル)の範囲である、請求項2から4または23のいずれか一項に記載の方法。
[25]
前記還元性環境は、実質的に無酸素である、請求項2から4または23から24のいずれか一項に記載の方法。
[26]
前記還元性環境の大部分は、不活性ガスで形成される、請求項2から4または23から25のいずれか一項に記載の方法。
[27]
不活性剤は、Nを含む、請求項26に記載の方法。
[28]
前記還元剤は、メタン、一酸化炭素、アンモニア化合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項2から4または23から27のいずれか一項に記載の方法。
[29]
前記不動態化剤は、CdClを含む、請求項2から4または23から28のいずれか一項に記載の方法。
[30]
前記吸収体層は、セレンを含む、請求項2から4または23から29のいずれか一項に記載の方法。
[31]
前記第V族ドーパントは、ヒ素を含む、請求項2から4または23から30のいずれか一項に記載の方法。
[32]
前記選択される温度は、350から500の範囲であり、前記選択される圧力は、26,664Pa(200トル)から106,658Pa(800トル)の範囲であり、前記選択される処理期間は、5分間から45分間の範囲である、請求項2から4または23から31のいずれか一項に記載の方法。
[33]
前記吸収体層は、前記吸収体層の厚さ全体にわたって1×1016cm-3から5×1020cm-3の間の濃度の前記第V族ドーパントを含み、前記還元性環境中で前記吸収体層を加熱するステップは、1at%から10at%の間の前記第V族ドーパントを活性化させる、請求項2から4または23から32のいずれか一項に記載の方法。
[34]
前記吸収体層が前記不動態化剤と接触する前に、吸収体膜を真空アニールするステップを含み、前記真空アニールするステップは、圧力が1.3×10-7Pa(1×10-9トル)から1.3Pa(1×10-2トル)の範囲で、温度が300から500の範囲の真空に、10分間から60分間の期間、前記吸収体膜を曝露させる、請求項2から4または23から33のいずれか一項に記載の方法。
[35]
前記不動態化剤は、MnCl、MgCl、NHCl、ZnCl、およびTeClのうちの1つまたは複数を含む、請求項2から4または23から34のいずれか一項に記載の方法。
[36]
前記第V族ドーパントは、ビスマス、アンチモン、ヒ素、リン、窒素、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項2から4または23から35のいずれか一項に記載の方法。
[37]
光起電力半導体吸収体層を処理する方法であって、
第V族ドーパントがドープされた吸収体膜を用意するステップであって、前記吸収体膜は、多結晶II-VI族半導体を含む、ステップ、
前記吸収体膜の少なくとも一部をCdClに接触させるステップ、
還元ガスを供給して還元性環境を生じさせるステップ、ならびに
前記還元性環境中、選択される温度、および選択される圧力で、選択される処理期間、前記吸収体膜を加熱するステップ
を含む方法。
[38]
前記II-VI族半導体は、CdTeを含み、前記還元ガスは、水素を含み、前記還元性環境は、実質的に無酸素であるか、または他の酸化剤を含まない、請求項37に記載の
方法。
[39]
前記接触させるステップの前に、前記吸収体膜を真空アニールするステップをさらに含み、前記真空アニールするステップは、圧力が1.3×10-7Pa(1×10-9トル)から0.013Pa(1×10-4トル)の範囲で、温度が300~400Cの範囲の真空に、10分間から60分間の期間、前記吸収体膜を曝露させる、請求項37または38に記載の方法。
[40]
多結晶II-VI族半導体吸収体層中の第V族ドーパントを活性化させる方法であって、
第V族ドーパントがドープされた吸収体膜を用意するステップ、
任意選択で、第一の加熱処理環境中で、前記吸収体膜に第一の加熱処理を施すステップであって、前記第一の加熱処理環境は、低圧、または真空を含む、ステップ、
前記吸収体膜の少なくとも一部を不動態化剤と接触させることによって、前記吸収体膜を不動態化するステップ、
第二の加熱処理環境中で、前記吸収体膜に第二の加熱処理を施すステップ、および
前記第二の加熱処理環境に還元ガスを供給して還元性環境を生じさせるステップであって、それによって前記ドーパントを活性化させ、それによって活性化させた前記ドーパントがII-VI族型半導体結晶格子中の第VI族型空孔を占有する、ステップ
を含む方法。
[41]
前記吸収体膜に前記第二の加熱処理を施すステップは、
前記吸収体膜を、約5~45分間の範囲の期間、前記第二の加熱処理環境に曝すステップをさらに含み、前記第二の加熱処理環境は、約26,664~106,658Pa(約200~800トル)の範囲の圧力、350~500Cの範囲の温度、および約400から6,666Pa(約3から50トル)の範囲の水素分圧を含むガス組成を有する、請求項40に記載の方法。
[42]
ドープ半導体吸収体層を形成する方法であって、
光起電力スタックの吸収体層を配置して吸収体層を形成させるステップであって、第一の堆積環境中で、ウィンドウスタック上に第一の材料および第二の材料を1つまたは複数の層で堆積させることを含み、
前記第一の材料は、II-VI族半導体、またはII-VI族半導体前駆体を含み、
前記第二の材料は、第V族ドーパント、または第V族ドーパント前駆体を含む、ステップ、
任意選択で、第一の加熱処理環境中で、吸収体膜に第一の加熱処理を施すステップ、
前記吸収体膜の少なくとも一部を第三の材料に接触させるステップであって、前記第三の材料は、不動態化剤を含む、ステップ、
第二の加熱処理環境中で、前記吸収体膜に第二の加熱処理を施すステップ、ならびに
前記第二の加熱処理環境に還元ガスを供給して還元性環境を生じさせるステップ
を含む方法。
[43]
前記第一の材料および前記第二の材料を堆積させる前に、前記ウィンドウスタック上に緩衝半導体層を堆積させることをさらに含む、請求項42に記載の方法。
[44]
前記緩衝半導体層は、CdSeを含む、請求項43に記載の方法。
[45]
前記還元ガスは、水素、メタン、および一酸化炭素のうちの1つまたは複数から選択され、
前記不動態化剤は、CdCl、MnCl、MgCl、NHCl、ZnCl、およびTeClのうちの1つまたは複数から選択されるハロゲン化合物であり、
前記第V族ドーパントは、ビスマス、アンチモン、ヒ素、リン、窒素、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項42から44のいずれか一項に記載の方法。
[46]
前記第V族ドーパント前駆体は、CdAs、AsH、BiTe、SbTe、Cd、Zn、Bi(NO、Bi、PCl、PH、Sb
、およびAsCl、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項42から45のいずれか一項に記載の方法。
[47]
前記第一の材料は、セレンを含む、請求項42から46のいずれか一項に記載の方法。
[48]
前記II-VI族半導体は、CdTeを含み、
前記第V族ドーパントは、本質的にヒ素からなり、
前記緩衝半導体層は、実質的に非ドープのCdTeをさらに含み、
前記吸収体層を配置するステップは、前記第一の材料および前記第二の材料を、約450から600Cの範囲の温度で、前記緩衝半導体層上に同時に堆積させ、前記吸収体膜を形成させることをさらに含み、
前記吸収体膜中のヒ素の濃度は、約1×1016cm-3から約5×1020cm-3
であり、
前記不動態化剤は、本質的にCdClからなり、
前記還元ガスは、水素を含み、
前記第二の加熱処理を施すステップは、前記第二の加熱処理環境中、約375~500Cの範囲の温度、水素の分圧が400~6,666Pa(3~50トル)の範囲である、
約53,329~79,993Pa(約400~600トル)の圧力で、15~60分間の範囲の期間、前記吸収体膜を処理するステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
[49]
前記II-VI族半導体は、CdTeを含み、前記第一の加熱処理は、前記吸収体膜を真空アニールするステップを含み、前記真空アニールするステップは、圧力が1.3×10-7Pa(1×10-9トル)から0.013Pa(1×10-4トル)の範囲で、温度が300~400Cの範囲の真空に、10分間から30分間の期間、前記吸収体膜を曝露させ、それによって前記吸収体膜は、前記第一の加熱処理の後に、Cdに富むCdTeを含む、請求項42から48のいずれか一項に記載の方法。
[50]
前記II-VI族半導体は、CdTeを含み、前記方法は、Teと前記還元ガスとの間の反応を促進させ、Te不足の吸収体膜を形成させることによって、CdTe結晶格子中のTe空孔への前記第V族ドーパントの占有を容易にするステップをさらに含む、請求項42から49のいずれか一項に記載の方法。
[51]
前記ドープ半導体吸収体層は、約1×1015cm-3から5×1016cm-3の範囲のp型電荷キャリア濃度を有する、請求項42から50のいずれか一項に記載の方法。
[52]
前記ドープ吸収体層中の前記第V族ドーパントの濃度は、約1×1016cm-3から約5×1020cm-3の間であり、還元性環境中で前記吸収体膜を加熱するステップの後、前記吸収体層中の1~10at%の前記第V族ドーパントは、II-VI半導体多結晶格子中の第VI族型空孔を占有する、請求項42から51のいずれか一項に記載の方法。
[53]
前記II-VI半導体は、CdTeを含み、前記不動態化剤は、CdClを含み、前記第二の加熱処理環境は、前記還元ガスと前記II-VI族半導体との、テルル化水素HTeを形成する反応を促進させるのに十分な温度および圧力をもたらす、請求項42から52のいずれか一項に記載の方法。
[54]
前記第二の材料は、前記第一の材料と同時に堆積する、請求項42から53のいずれか一項に記載の方法。
[55]
前記第二の加熱処理を施すステップ、および前記吸収体膜を前記不動態化剤に接触させるステップは、同時に行われる、請求項42から54のいずれか一項に記載の方法。
[56]
前記吸収体膜を前記不動態化剤に接触させるステップ、および前記吸収体膜に前記第二の加熱処理を施すステップは、前記接触させるステップが前記第二の加熱処理に先行して逐次的に行われる、請求項42から54のいずれか一項に記載の方法。
[57]
基板、
前記基板上に形成される透明導電性酸化物(TCO)層、
前記TCO層上に形成されるCdSe層、
窒素ドープZnTeを含むバックコンタクト、ならびに
前記CdSe層と前記バックコンタクトとの間に形成される、層厚約0.5μmから3.5μmにカドミウムおよびテルルを含むヒ素ドープ吸収体層
を含む光起電力素子であって、前記ドープ半導体吸収体層中のヒ素ドーパントの濃度は、前記吸収体層の厚さ全体にわたって約1×1016cm-3から約5×1020cm-3の間であり、0.5から5.0at%の第V族ドーパントは、CdTe結晶格子中のTe空孔を占有する、光起電力素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15
図16
【外国語明細書】