(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171727
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】担持体
(51)【国際特許分類】
B01J 23/89 20060101AFI20231128BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20231128BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20231128BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20231128BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B01J23/89 M
H01M4/92
H01M4/88
H01M4/88 K
H01M4/90 M
H01M4/86 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142835
(22)【出願日】2023-09-04
(62)【分割の表示】P 2019224979の分割
【原出願日】2019-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 明
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 敦
(72)【発明者】
【氏名】角山 寛規
(57)【要約】
【課題】工業的に量産可能で、活性が高いクラスター担持体を提供することを目的とする。
【解決手段】PtとNiとを含んだ合金のクラスターを担体に担持した担持体である。Ptの担持量が1×10
-14ng/cm
2以上1×10
5ng/cm
2以下である。クラスター担持体は、容易に製造できるため、工業的に量産できる。そして、このクラスター担持体は、質量活性(触媒活性)が高く、標準触媒(TEC10E50E)の質量活性を大きく上回る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PtとNiとを含んだ合金のクラスターを担体に担持した担持体であって、
Ptの担持量が1×10-14ng/cm2以上1×105ng/cm2以下である、担持体。
【請求項2】
前記担体は、導電性材料からなる、請求項1に記載の担持体。
【請求項3】
前記クラスターの組成が、Pt3Ni、Pt4Ni、Pt6Ni、及びPt6Ni2からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の担持体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の担持体を製造する製造方法であって、
前記クラスターを生成する生成工程と、
前記クラスターを前記担体にランディングして担持する担持工程と、
を備えた、担持体の製造方法。
【請求項5】
前記クラスターのうち特定範囲の質量を有する特定質量クラスターを選別する選別工程を備え、
前記担持工程では、前記特定質量クラスターを前記担体にランディングする請求項4に記載の担持体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、担持体、及び担持体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の電極触媒として白金(Pt)が広く利用されている。ところが、Ptは非常に高価な貴金属である。しかも、Ptは埋蔵量が十分ではない。よって、燃料電池のコスト低減、及び燃料電池の普及を実現するためには、触媒活性を向上させて、Ptの使用量を低減することが重要である。
これまでに、所定のデンドリマー(樹状高分子)に包含されているPtナノ微粒子等を多孔質炭素材料に担持して、これを触媒として利用する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記技術で得られる担持体では、以下の3点において工業的に不利であった。
すなわち、
(1)デンドリマーの合成のために各種試薬(有機溶媒を含む)が必要であり、工業的に不利である。
(2)そもそもデンドリマーの量産化技術は、未だに確立されていない。
(3)合成後のPt粒子と、炭素材料を組み合わせる工程が別途必要であり、煩雑である。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、工業的に量産可能な、クラスターを担体に担持した担持体を提供することを目的とする。なお、本発明は、幅広い分野での応用が期待される。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕PtとNiとを含んだ合金のクラスターを担体に担持した担持体であって、
Ptの担持量が1×10-14ng/cm2以上1×105ng/cm2以下である、担持体。
【0006】
〔2〕前記担体は、導電性材料からなる〔1〕に記載の担持体。
【0007】
〔3〕前記クラスターの組成が、Pt3Ni、Pt4Ni、Pt6Ni、及びPt6Ni2からなる群より選ばれる1種以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の担持体。
【0008】
〔4〕〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の担持体を製造する製造方法であって、
前記クラスターを生成する生成工程と、
前記クラスターを前記担体にランディングして担持する担持工程と、
を備えた、担持体の製造方法。
【0009】
〔5〕前記クラスターのうち特定範囲の質量を有する特定質量クラスターを選別する選別工程を備え、
前記担持工程では、前記特定質量クラスターを前記担体にランディングする〔4〕に記載の担持体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示の担持体は、比較的容易に製造できるため、工業的に量産できる。
本開示の担持体の製造方法は、従来法に比べて容易であり、工業的な量産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明する。
【
図1】クラスター担持体の製造方法を実施する装置の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0013】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0014】
1.担持体
担持体は、PtとNiとを含んだ合金のクラスターを担体に担持してなる。Ptの担持量は、1×10-14ng/cm2以上1×105ng/cm2以下である。
【0015】
(1)クラスターを構成する元素
クラスターは、実用性の観点から、Pt(白金)及びNi(ニッケル)を含む合金からなる。合金は、Pt、Ni以外のその他の元素として、導電性材料を構成し得る元素を含んでいてもよい。その他の元素は、例えば、Au(金)、Ag(銀)、Pd(パラジウム)、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)、In(インジウム)、Cd(カドミウム)、Zn(亜鉛)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Cu(銅)、Ru(ルテニウム)、Co(コバルト)、Ir(イリジウム)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、V(バナジウム)、Mn(マンガン)、Y(イットリウム)、Tc(テクネチウム)、Ga(ガリウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Zr(ジルコニウム)、Rh(ロジウム)、Os(オスミウム)、Re(レニウム)、Al(アルミニウム)、及びTi(チタン)からなる群より選ばれる1種以上を好適に例示できる。
【0016】
(2)クラスターの組成
クラスターの組成は、Pt(白金)及びNi(ニッケル)を含有していれば、特に限定されない。クラスターの組成は、質量活性が高いという観点から、好ましくは、Pt3Ni、Pt4Ni、Pt6Ni、及びPt6Ni2からなる群より選ばれる1種以上である。
なお、本開示におけるクラスターは、ナノクラスター又はサブナノクラスターである。クラスターの形態は、特に限定されないが、例えば、Pt原子、Ni原子が上記組成に応じた比率で集合した形態とされる。
【0017】
(3)Pt(白金)の担持量
Ptの担持量は、1×10-14ng/cm2以上1×105ng/cm2以下である。担持量がこの範囲内であると、担持体を触媒として用いた場合の活性が高い傾向にある
Pt(白金)の担持量が1×10-14ng/cm2以上1×105ng/cm2以下の場合に質量活性が高い理由は、小サイズ化による比表面積の増加による寄与があるものと推測される。なお、「質量活性」とは、酸素還元反応(ORR:Oxygen Reduction Reaction)に対する質量活性(Pt 1gあたりの酸素還元電流密度)を意味する(以下同じ)。
【0018】
(4)質量活性
合金のクラスターを担体に担持した担持体の質量活性は200A/gよりも大きいことが好ましく、300A/g以上がより好ましく、400A/g以上が更に好ましい。なお、通常、質量活性の上限値は、2×104A/gである。
質量活性が、この範囲であると、燃料電極等の電極触媒として有用である。
【0019】
(5)担体
担体は、特に限定されない。例えば、カーボン、酸化チタン、ビスマステルル、ビスマスセレン、アルミニウム、コンスタンタン、金、銀、銅、黄銅、白金、ニクロム、鉄、チタン、タングステン、酸化タングステン、酸化インジウムスズ、チタン酸ストロンチウム、モリブデン、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛、シリコン、炭化ケイ素、ステンレス、マグネシウム、コバルト、リチウム、クロム、マンガニン、ポリアニリン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホナート)〔PEDOT/PSS〕、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、イオン液体等が例示される。また、これらの例示のうち、他の元素をドーピング可能なものについては、他の元素をドーピングしたものも含まれる。
【0020】
2.担持体の製造方法
担持体の製造方法は、特に限定されない。ここでは、担持体の好適な製造方法を説明する。
この担持体の製造方法は、クラスターを生成する生成工程と、クラスターを担体にランディングして担持する担持工程と、を備える。
【0021】
(1)生成工程
生成工程では、クラスターを生成(発生)する生成方法であれば、特に限定されず、幅広い方法を採用できる。例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンスパッタリング法、イオンビームスパッタ法、レーザ蒸発法等を利用できる。この中でも、イオン量およびその安定性の観点からマグネトロンスパッタリング法が好適に利用される。
生成工程で生成するクラスターは、効率的な触媒反応の観点から、好ましくは原子数が2以上100以下であり、より好ましくは3以上80以下である。
【0022】
クラスターイオンを構成する元素は、少なくともPt(白金)及びNi(ニッケル)を含む。クラスターイオンを構成するその他の元素として、導電性材料を構成し得る元素を含んでいてもよい。その他の元素は、直流マグネトロンスパッタリング法ではターゲットの導電性があることが好ましく、例えば、Au(金)、Ag(銀)、Pd(パラジウム)、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)、In(インジウム)、Cd(カドミウム)、Zn(亜鉛)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Cu(銅)、Ru(ルテニウム)、Co(コバルト)、Ir(イリジウム)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、V(バナジウム)、Mn(マンガン)、Y(イットリウム)、Tc(テクネチウム)、Ga(ガリウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Zr(ジルコニウム)、Rh(ロジウム)、Os(オスミウム)、Re(レニウム)、Al(アルミニウム)、及びTi(チタン)からなる群より選ばれる1種以上を好適に例示できる。なお、レーザー蒸発法や高周波マグネトロンスパッタリング法では、ターゲットの導電性の有無によらず、クラスターイオンを生成することが可能である。
【0023】
(2)担持工程
担持工程では、クラスターを担体にランディングして担持する。
クラスターを担持する担体については、上述の「1.(5)担体」の記載を、そのまま適用することができる。
クラスターの担体へのランディングは、いわゆるソフトランディングが採用される。すなわち、衝突エネルギーが1eV/原子以下が好ましい。このように、クラスターをソフトランディングさせることで、クラスターが破壊されることを抑制できる。
【0024】
(3)その他の工程
担持体の製造方法では、クラスターのうち特定範囲の質量を有する特定質量クラスターを選別する選別工程を備えることができる。選別工程を備えることで、特定質量クラスターが担体にランディングすることになる。この選別工程により、担持体には特定質量クラスターが担持され、担持体の利用価値が向上する。
【0025】
選別工程は、特に限定されない。選別工程は、イオン偏向器及び四重極質量分析器を用いることが好ましい。イオン偏向器を用いて特定の電荷状態のイオンを選別し、更に、四重極質量分析器を用いて特定サイズのクラスターを選別できる。
【0026】
(4)クラスター担持体の製造方法を実施する装置の一例
ここで、上記製造方法を実施するクラスター担持体の製造装置7の一例を説明する(
図1)。
クラスター担持体の製造装置7は、クラスター生成装置10を備えている。クラスター生成装置10は、真空引きされるチャンバ11と、チャンバ11内に設置されるクラスター成長セル12と、クラスター成長セル12内に設置されるスパッタ源13(マグネトロンスパッタ源)を備える。クラスター成長セル12は、その周囲を液体窒素ジャケット14で囲まれており、液体窒素ジャケット14内を液体窒素(N
2)が流通するように構成されている。クラスター生成装置10は、更に、制御システムの構成要素として、制御装置15、スパッタ源用パルス電源16を備える。
【0027】
クラスター生成装置10は、第1不活性ガス供給パイプ17及び第2不活性ガス供給パイプ18を備える。第1不活性ガス供給パイプ17は、プラズマを発生させるための第1不活性ガス(例えば、アルゴンガス(Ar))をスパッタ源13に対して供給する。第2不活性ガス供給パイプ18は、スパッタ源13から発生した金属原子や金属イオンを冷却し凝集させ、クラスターとして成長させるための第2不活性ガス(例えばヘリウムガス(He))をクラスター成長セル12内へ供給する。第2不活性ガス供給パイプ18は、その主要部が、液体窒素ジャケット14内に格納され、液体窒素ジャケット14の内部を螺旋状に周回して、その端部が、クラスター成長セル12の内側に突出している。
【0028】
こうして、液体窒素により冷却されたヘリウム等の第2不活性ガスをクラスター成長セル12内に導入することができる。クラスター成長セル12内の圧力が約10~40Paに維持されるようにする。なお、圧力制御のためにクラスター成長セル12に備えられる圧力計、ガス供給系に備えられるマスフローコントローラ等の装置については、図示を省略している。
クラスター生成装置10は、更にターボ分子ポンプ等からなる排気装置19を備え、この排気装置19により、チャンバ11内が所定の真空度(例えば10-1~10-4Pa)まで排気される。
【0029】
スパッタ源13は、ターゲット131、アノード132、磁石ユニット133から構成され、ターゲット131はカソードとしてスパッタ源用パルス電源16に接続される。第1不活性ガス供給パイプ17からクラスター成長セル12内にArガスが供給され、スパッタ源用パルス電源16からパルス状の電力が供給されることにより、ターゲット131及びアノード132間にグロー放電が生じる。すなわち、ターゲット131とアノード132の間に高電圧がパルス状に印加されることにより、ターゲット131及びアノード132間にグロー放電が生じる。また、磁石ユニット133によりターゲット131の表面付近に磁場を印加することで、本実施形態のクラスター生成装置10はマグネトロンスパッタを行い、更に強いグロー放電を生成することが可能である。
【0030】
第1不活性ガス供給パイプ17の先端は、第1不活性ガスをスパッタ源13のターゲット131とアノード132との間の一箇所または複数の箇所から噴射するように構成されている。ただし、このような構成に限らず、第1不活性ガスを、ターゲット131に向かうように供給できる構成である限り、任意の構成を採用可能である。
スパッタ源13は、クラスター成長セル12内に、管軸方向に移動自在に収容される。これにより、クラスター成長領域の管軸方向の延伸距離を規定する。なお、管軸方向の延伸距離は、成長領域長、すなわち、ターゲット131面からビーム取出し口121までの距離を意味する。
【0031】
クラスターを生成するためには、液体窒素温度に冷却された第2不活性ガスをクラスター成長セル12内に導入した状態で、スパッタ源13に第1不活性ガスを供給するとともに、スパッタ源用パルス電源16からパルス電力を供給する。パルス電力が供給されると、ターゲット131から第2不活性ガス中に、ターゲット131由来の中性原子及びイオン等のスパッタ粒子が集団として放出される。
【0032】
この集団は、スパッタ源13に印加されるパルス電力の繰り返し周波数の間隔で放出されて第2不活性ガスの流れに沿って移動する。このとき、集団を構成する中性の原子及びイオン等のスパッタ粒子は第2不活性ガス中において互いに結合して種々のサイズのクラスターを生成する。生成したクラスターはクラスター成長セル12のビーム取出し口121を通過した後、後段のイオン検出装置等へ進入する。
【0033】
イオン検出装置20は、クラスター成長セル12のビーム取出し口121の近傍外側にイオンガイド電極21を有し、これにより、クラスター成長セル12のビーム取出し口121から放出されるクラスターイオンをガイドする。
図1に示すように、イオン検出装置20は、イオンガイド電極21のビーム取出し口側に設けられる四重極形イオン偏向器22を備える。四重極形イオン偏向器22は、クラスターの内の正イオン又は負イオンの一方のみを偏向させて取り出す。
【0034】
イオン検出装置20は、取り出されたクラスターの質量を分析する四重極質量分析計23を有し、特定の質量のクラスターのみを取り出して、その生成量をバイアスの印加ができるイオン検出器24(ピコアンメーター)により測定する。例えば、イオン検出器24で測定された100pAの電流は、クラスター量としては、0.6×109個/秒(=1fmol/秒)に相当する。イオン検出器24の上に担体を配置して、特定の質量のクラスターのみを担体上に堆積させることができる。
【0035】
3.本実施形態の効果
本実施形態の担持体は、比較的容易に製造できるため、工業的に量産できる。
本実施形態の担持体の製造方法は、デンドリマーを用いた従来法に比べて容易であり、工業的な量産に適している。
【実施例0036】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0037】
1.クラスター担持体の作製、及び評価方法
図1に記載のクラスター担持体の製造装置7を用いてクラスター担持体を作製した。
詳細には、クラスター生成装置10を用いて、マグネトロンスパッタリング法により、PtとNiとを含んだ合金のクラスターを生成した。装置諸元及び実験パラメータは以下のようである。
スパッタ源: Angstrom Sciences社製 ONYX-2
パルス電源: Zpulser社製 AXIA-150
ターゲット: Pt-Ni合金(直径2インチ、純度99.9%以上)
Arガス流量: 40-200sccm
Heガス流量: 60-400sccm
成長セル内圧力: 10-40Pa
成長セル内径: 110 mm
成長領域長さ: 190-290mm
ビーム取出し口径:12 mm
【0038】
合金のクラスターは、四重極形イオン偏向器22によって特定の電荷状態を選別し、四重極質量分析計23(四重極質量分析器)によってサイズを選別した。その後、合金のクラスターイオンを、グラッシーカーボン(ガラス状炭素)の電極(本発明の担体に相当)の上にランディングさせた。電極の直径は、5mmであった。なお、グラッシーカーボンの電極は、バフ上でアルミナ懸濁液(粒子径0.05μm)を用いて研磨し、研磨後に超純水中で超音波を照射して清浄化して、速やかに真空槽内に導入して、合金のクラスターを担持した。担持量は、イオン検出装置20によって測定された電流値から算出した。クラスター担持体におけるクラスターの質量活性(触媒活性)は、回転ディスク電極(RDE(rotating disk electrode))を用いて評価した。
【0039】
2.評価結果
表1,2に、合金のクラスターを担持した場合の結果を示す。なお、担持量(ng-Pt/cm2)は、担持体に担持された合金中のPtの担持量を意味する。
表1,2の結果から、いずれの組成においても、質量活性は、標準触媒(TEC10E50E:田中貴金属工業(株)製)の質量活性299A/gを大きく上回る結果であった。これは、クラスターの小サイズ化による比表面積の増加の寄与があるものと推測される。また、いずれの組成においても、クラスター担持体は、マグネトロンスパッタリング法を用いたクラスター担持体の製造装置7により製造できるので、デンドリマーを用いる場合よりも工業的に有利に量産できる。
【0040】
【0041】
【0042】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は本質から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0043】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、本開示の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
本開示の担持体は、幅広い技術分野において広範な用途で使用できる。例えば、本開示の一例である担持体は、燃料電池電極触媒、有機合成反応触媒、排ガス触媒等に好適に使用できる。本開示の担持体は、触媒活性が高いため、Ptの使用量を削減でき、しかも量産可能であるためコストの削減効果が高く、広く普及させることができる。