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特開2023-171756ワクチン効力を改善するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171756
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ワクチン効力を改善するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20231128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/09 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/118 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/21 20060101ALI20231128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/125 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/15 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/155 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/205 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/23 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/235 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/275 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/29 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/13 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231128BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231128BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A61K39/00 G
A61K48/00 ZNA
A61P31/12
A61P31/22
A61P31/18
A61P31/04
A61P35/00
A61P31/20
A61P1/16
A61K39/12
A61K39/245
A61K39/09
A61K39/118
A61K39/21
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K39/00 Z
A61K39/125
A61K39/145
A61K39/15
A61K39/155
A61K39/205
A61K39/215
A61K39/23
A61K39/235
A61K39/275
A61K39/29
A61K39/13
A61K39/39
A61K47/34
A61K9/16
C12N15/12
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145029
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2019536560の分割
【原出願日】2018-01-05
(31)【優先権主張番号】62/442,903
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522256406
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・シュテファン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワクチンの効力を増加させるシステム及び方法を提供する。
【解決手段】ワクチン抗原を有する又はワクチン抗原を受けることになっている対象を同定するこことと、ワクチン抗原の受け取りの臨床的に関連するタイムウィンドウ内で対象に治療有効量のナノ粒子(NP)を投与することとを含み、前記NPは、(i)ワクチン抗原に特異的に結合するT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチド(PN);並びに(ii)T細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA)を含み、それによって、ワクチン抗原単独の投与と比べてワクチン接種の効力を改善する、方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてワクチン接種の効力を改善する方法であって、
ワクチン抗原を有する又はワクチン抗原を受けることになっている対象を同定するこことと、
ワクチン抗原の受け取りの臨床的に関連するタイムウィンドウ内で対象に治療有効量のナノ粒子(NP)を投与することとを含み、
前記NPは、(i)ワクチン抗原に特異的に結合するT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチド(PN);並びに(ii)T細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA)を含み、
それによって、ワクチン抗原単独の投与と比べてワクチン接種の効力を改善する、方法。
【請求項2】
ワクチン抗原がメソセリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
年齢又は免疫状態に起因して、対象がワクチン効力を改善される必要がある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
免疫状態が低T細胞数である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ワクチン接種が、AIDS、マラリア、ヘルペス、クラミジア、エプスタインバーウイルス、肺炎球菌又はB型肝炎の治療を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ワクチン接種によりがんの治療が提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
TCRがクラスI制限である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
TCRがクラスII制限である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
TCRがクラスI制限であり、改善されたワクチン効力が、T細胞傷害性応答を改善するCD8+Tヘルパー細胞活性に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
TCRがクラスII制限であり、改善されたワクチン効力が、抗体応答を改善するCD4+Tヘルパー細胞活性に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
TCRが、配列番号1、4、18、21、23、25、27、29~32、34及び36から選択されるα鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
TCRが、配列番号2、3、19、22、24、26、28、33、35及び37から選択されるβ鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
TCRが、配列番号5~12、15、16及び39から選択される配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ワクチン抗原が、ウイルス抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ウイルス抗原が、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニアウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス又はトガウイルスに由来する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ウイルス抗原が、サイトメガロウイルス、風邪ウイルス、エプスタインバーウイルス、フルウイルス、A型、B型、又はC型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ウエストナイルウイルス又はジカウイルスにより発現されるペプチドである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ウイルス抗原が、
エンベロープ糖タンパク質B及び/若しくはCMV pp65から選択されるサイトメガロウイルス抗原;
EBV EBNAI、EBV P18及び/若しくはEBV P23から選択されるエプスタインバー抗原;
B型肝炎ウイルスのS、M及び/若しくはLタンパク質又はプレS抗原から選択される肝炎ワクチン抗原;
糖タンパク質Dから選択される単純ヘルペスワクチン抗原;
HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36、Nefタンパク質及び/若しくはHIV逆転写酵素から選択されるヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチン抗原;
L1タンパク質から選択されるヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス抗原;
赤血球凝集素及びノイラミニダーゼから選択されるインフルエンザワクチン抗原;
タンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1若しくはNS1-NS2Aから選択される日本脳炎ワクチン抗原;
サーカムスポロゾイト(CSP)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ若しくはフルクトース二リン酸アルドラーゼから選択されるマラリアワクチン抗原;
麻疹ウイルス融合タンパク質から選択される麻疹ワクチン抗原;
狂犬病糖タンパク質若しくは狂犬病核タンパク質から選択される狂犬病ワクチン抗原;
RSV融合タンパク質若しくはM2タンパク質から選択される呼吸器合胞体ワクチン抗原;
VP7scから選択されるロタウイルスワクチン抗原;
タンパク質E1若しくはE2から選択される風疹ワクチン抗原;
gpl若しくはgpllから選択される水痘帯状疱疹ワクチン抗原;又は
前膜、エンベロープ(E)、Eタンパク質のドメインIII若しくは非構造タンパク質1、2、3、4、若しくは5から選択されるジカワクチン抗原
である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ウイルス抗原が、Nef(66~97)、Nef(116~145)、Gag p17(17~35)、Gag p17~p24(253~284)、Pol325~355(RT 158~188)、CSPセントラルリピート領域又はEタンパク質ドメインIIIから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ウイルス抗原が、配列番号128~134から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
ワクチン抗原が、がん抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
がん抗原が、PSMA、PSCA、メソセリン、CD19、CD20、ROR1若しくはWT1又はPSMA、PSCA、メソセリン、CD19、CD20、ROR1若しくはWT1の断片を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
がん抗原が、配列番号135~141から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ワクチン抗原を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
臨床的に関連するタイムウィンドウ内でワクチンアジュバントを投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
ワクチンアジュバントが、(i)CpG、Cpg-28、ポリ(I:C)、α-ガラクトセラミド、MPLA、VTX-2337、EMD1201081)イミキモド、MGN1703、G100、CBLB502、ヒルトノール及びイミキモド、並びに/又は(ii)17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ワクチンアジュバントが、STINGアゴニストである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
STINGアゴニストが、c-diGMP、c-diAMP、c-GAMP、c-AIMP、(3’、2’)c-AIMP、(2’、2’)c-AIMP、(2’、3’)c-AIMP、c-AIMP(S)、c-(dAMP-dIMP)、c-(dAMP-2’FdIMP)、c-(2’FdAMP-2’FdIMP)、(2’,3’)c-(AMP-2’FdIMP)、c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)]、c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)](POM)及び/又はDMXAAから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ポリヌクレオチドが、プラスミド、ミニサークルプラスミド又は自己複製mRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
投与が筋肉内注射を介して為される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
ナノ粒子がポリ(β-アミノエステル)ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
ナノ粒子が脂質コーティングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
脂質コーティングが、リポソーム、脂質二重層又はポリマーミセルである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ナノ粒子が、ポリ(β-アミノエステル)ポリマー及びPGAコーティングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
T-DAが、ポリ(β-アミノエステル)ポリマーに共有結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
T-DAが、T細胞にインビボで選択的に結合する結合ドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
T-DAが、CD4+又はCD8+T細胞にインビボ及びエクスビボで選択的に結合する結合ドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
T-DAが、配列番号41~58から選択される配列を含む結合ドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
ナノ粒子が、エンドソーム放出剤(ERA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
ERAが配列番号40及び59~80又はこの組合せのいずれか1つから選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ナノ粒子が、核ターゲティング剤(NTA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
NTAが、配列番号81~127又はこの組合せのいずれか1つから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ナノ粒子が、iPB7トランスポサーゼ、S/MARエレメント、PiggyBacトランスポサーゼ含有プラスミド、Sleeping Beautyトランスポサーゼ含有プラスミド、ホモサピエンストランスポゾン由来Buster1トランスポサーゼ様タンパク質遺伝子;ヒト内在性レトロウイルスHプロテアーゼ/インテグラーゼ由来ORF1;ホモサピエンスCas-Br-M(マウス)エコトロピックレトロウイルス形質転換配列;ホモサピエンス内在性レトロウイルス配列K;ホモサピエンス内在性レトロウイルスファミリーW配列;ホモサピエンスLINE-1タイプトランスポサーゼドメイン;又はホモサピエンスpogo転位因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
iPB7トランスポサーゼが配列番号142を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
投与することにより、投与の10日以内に、9日以内に、8日以内に、7日以内に、6日以内に、5日以内に、4日以内に又は3日以内にT細胞が選択的にポリヌクレオチドを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
ワクチン抗原、及びT細胞により発現されるとワクチン抗原に結合するT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチド(PN)を含むキット。
【請求項46】
ポリヌクレオチドがナノ粒子内にある、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
コードされたTCRがクラスI制限である、請求項45に記載のキット。
【請求項48】
コードされたTCRがクラスII制限である、請求項45に記載のキット。
【請求項49】
コードされたTCRが、配列番号1、4、18、21、23、25、27、29~32、34及び36から選択されるα鎖を含む、請求項45に記載のキット。
【請求項50】
コードされたTCRが、配列番号2、3、19、22、24、26、28、33、35及び37から選択されるβ鎖を含む、請求項45に記載のキット。
【請求項51】
コードされたTCRが配列番号5~12、15、16及び39から選択される配列を含む、請求項45に記載のキット。
【請求項52】
ワクチン抗原がウイルス抗原を含む、請求項45に記載のキット。
【請求項53】
ウイルス抗原が、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニアウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス又はトガウイルスに由来する、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
ウイルス抗原が、サイトメガロウイルス、風邪ウイルス、エプスタインバーウイルス、フルウイルス、A型、B型、又はC型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ウエストナイルウイルス又はジカウイルスにより発現されるペプチドである、請求項52に記載のキット。
【請求項55】
ウイルス抗原が、
エンベロープ糖タンパク質B及び/若しくはCMV pp65から選択されるサイトメガロウイルス抗原;
EBV EBNAI、EBV P18及び/若しくはEBV P23から選択されるエプスタインバー抗原;
B型肝炎ウイルスのS、M及び/若しくはLタンパク質又はプレS抗原から選択される肝炎ワクチン抗原;
糖タンパク質Dから選択される単純ヘルペスワクチン抗原;
HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36、Nefタンパク質及び/若しくはHIV逆転写酵素から選択されるヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチン抗原;
L1タンパク質から選択されるヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス抗原;
赤血球凝集素及びノイラミニダーゼから選択されるインフルエンザワクチン抗原;
タンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1若しくはNS1-NS2Aから選択される日本脳炎ワクチン抗原;
サーカムスポロゾイト(CSP)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ若しくはフルクトース二リン酸アルドラーゼから選択されるマラリアワクチン抗原;
麻疹ウイルス融合タンパク質から選択される麻疹ワクチン抗原;
狂犬病糖タンパク質若しくは狂犬病核タンパク質から選択される狂犬病ワクチン抗原;
RSV融合タンパク質若しくはM2タンパク質から選択される呼吸器合胞体ワクチン抗原;
VP7scから選択されるロタウイルスワクチン抗原;
タンパク質E1若しくはE2から選択される風疹ワクチン抗原;
gpl若しくはgpllから選択される水痘帯状疱疹ワクチン抗原;又は
前膜、エンベロープ(E)、Eタンパク質のドメインIII若しくは非構造タンパク質1、2、3、4、若しくは5から選択されるジカワクチン抗原
である、請求項52に記載のキット。
【請求項56】
ウイルス抗原が、Nef(66~97)、Nef(116~145)、Gag p17(17~35)、Gag p17~p24(253~284)、Pol325~355(RT 158~188)、CSPセントラルリピート領域又はEタンパク質ドメインIIIから選択される、請求項52に記載のキット。
【請求項57】
ウイルス抗原が、配列番号128~134の1つを含む、請求項52に記載のキット。
【請求項58】
ワクチン抗原ががん抗原である、請求項45に記載のキット。
【請求項59】
がん抗原が、PSMA、PSCA、メソセリン、CD19、CD20、ROR1又はWT1を含む、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
がん抗原が、配列番号135~141の1つを含む、請求項58に記載のキット。
【請求項61】
ワクチンアジュバントをさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項62】
ワクチンアジュバントが、(i)CpG、Cpg-28、ポリ(I:C)、α-ガラクトセラミド、MPLA、VTX-2337、EMD1201081)イミキモド、MGN1703、G100、CBLB502、ヒルトノール及びイミキモド、並びに/又は(ii)17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)から選択される、請求項61に記載のキット。
【請求項63】
ワクチンアジュバントがSTINGアゴニストを含む、請求項61に記載のキット。
【請求項64】
STINGアゴニストが、c-diGMP、c-diAMP、c-GAMP、c-AIMP、(3’、2’)c-AIMP、(2’、2’)c-AIMP、(2’、3’)c-AIMP、c-AIMP(S)、c-(dAMP-dIMP)、c-(dAMP-2’FdIMP)、c-(2’FdAMP-2’FdIMP)、(2’,3’)c-(AMP-2’FdIMP)、c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)]、c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)](POM)及び/又はDMXAAから選択される、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
ポリヌクレオチドが、プラスミド、ミニサークルプラスミド又は自己複製mRNAを含む、請求項45に記載のキット。
【請求項66】
筋肉内注射用の注射器をさらに含む、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
ナノ粒子が、ポリ(β-アミノエステル)ポリマーを含む、請求項46に記載のキット。
【請求項68】
ナノ粒子が、脂質コーティングを含む、請求項46に記載のキット。
【請求項69】
脂質コーティングが、リポソーム、脂質二重層又はポリマーミセルである、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
ナノ粒子が、ポリ(β-アミノエステル)ポリマー及びPGAコーティングを含む、請求項46に記載のキット。
【請求項71】
T-DAをさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項72】
ナノ粒子が、ポリマー及びポリマーに共有結合しているT-DAを含む、請求項46に記載のキット。
【請求項73】
T-DAが、T細胞にインビボで選択的に結合する結合ドメインを含む、請求項71又は72に記載のキット。
【請求項74】
T-DAが、CD4+又はCD8+T細胞にインビボ及びエクスビボで選択的に結合する結合ドメインを含む、請求項71又は72に記載のキット。
【請求項75】
ナノ粒子が、エンドソーム放出剤(ERA)を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項76】
ERAが、配列番号40及び59~80又はこの組合せのいずれか1つから選択される、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
ナノ粒子が、核ターゲティング剤(NTA)を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項78】
NTAが、配列番号81~127又はこの組合せのいずれか1つから選択される、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
ナノ粒子が、iPB7トランスポサーゼ、S/MARエレメント、PiggyBacトランスポサーゼ含有プラスミド、Sleeping Beautyトランスポサーゼ含有プラスミド;ホモサピエンストランスポゾン由来Buster1トランスポサーゼ様タンパク質遺伝子;ヒト内在性レトロウイルスHプロテアーゼ/インテグラーゼ由来ORF1;ホモサピエンスCas-Br-M(マウス)エコトロピックレトロウイルス形質転換配列;ホモサピエンス内在性レトロウイルス配列K;ホモサピエンス内在性レトロウイルスファミリーW配列;ホモサピエンスLINE-1タイプトランスポサーゼドメイン;又はホモサピエンスpogo転位因子を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項80】
iPB7トランスポサーゼが配列番号142を含む、請求項79に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年1月5日に提出された米国仮特許出願第62/442,903号明細書の優先権を主張し、前記特許文献は、本明細書に完全に記述されているかのようにその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
「F053-0055PCT配列表_ST25.txt」と題する、2018年1月5日に又はそのころに作成された、ファイルサイズ114KBのコンピュータ読取り可能テキストファイルは、本出願のための配列表を含有しており、それによりその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0003】
本開示は、T細胞媒介免疫を必要とするか又はT細胞媒介免疫をより効果的にする、ワクチンの効力を高めるシステム及び方法を提供する。このシステム及び方法は、投与されたワクチン抗原に特異的であるT細胞受容体を発現するように、T細胞を遺伝的に改変するポリヌクレオチドを利用する。
【背景技術】
【0004】
リンパ球は、免疫記憶に基づく自己/非自己認識及び後天性長期免疫に関与している免疫系の細胞である。リンパ球は、B細胞又はT細胞として広く特徴付けることが可能である。B細胞は、可溶性抗原に結合する受容体として務める膜結合免疫グロブリン(抗体)分子の存在により特徴付けられる。T細胞は、膜結合T細胞受容体(TCR)の存在により特徴付けられる。TCRは、抗原が主要組織適合性複合体(MHC)分子に会合している時だけ抗原に結合する(すなわち、抗原は可溶性ではない)。T細胞応答の特異性は、特定の抗原に結合する特定のTCRにより与えられる。
【0005】
Tリンパ球はCD4+T細胞及びCD8+T細胞を含む。これらのタイプのT細胞は、それぞれ細胞表面分子CD4及びCD8の発現により一部区別される。しかし、これらの細胞は異なる機能も有する。CD4+細胞は、ヘルパーT細胞(T)とも呼ばれ、他の細胞型の活性を促進する。例えば、CD4+ TH1細胞は、細胞傷害性T細胞及びマクロファージを活性化して貪食された微生物を抱える細胞を破壊させる種々のサイトカインを分泌する。CD4+ TH2細胞は、B細胞を活性化して抗体を産生させるサイトカインを分泌する。CD8+細胞は、異常な又は感染細胞を直接死滅させることが可能な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。
【0006】
ワクチンは、特定の病原体(例えば、感染性微生物)又は異常な細胞型(例えば、がん細胞)に対する免疫系応答を、病原体又は異常な細胞型の抗原に先制して免疫系を曝すことにより引き起こす製剤である。病原体抗原は、病原体のインタクトではあるが非感染性の形態(例えば、加熱殺菌した形態)であり得る。抗原は、病原体のタンパク質若しくはタンパク質断片であってもよく、又は異常な細胞型により優先的に発現されるタンパク質若しくはタンパク質断片であってもよい。免疫系が先制曝露に続いてワクチン抗原を認識すると、抗原に再び遭遇した場合、免疫系が効果的な応答を迅速で効果的に開始することができるように、免疫系は長期免疫記憶をもたらすことが可能である。
【0007】
ワクチンが対象に送達されると、免疫系の抗原提示細胞(APC)が抗原成分を取り入れて、抗原成分又はその断片をB細胞及びT細胞に提示する。提示された抗原に特異的である受容体を発現するB細胞は、身体中を循環する抗体を産生し分泌して、後になって再び抗原に遭遇した場合、迅速で頑強な免疫応答を誘発することになる。標準ワクチンは、B細胞により作り出されるそのような抗体応答を介して機能するように設計される。しかし、B細胞免疫の有効性は可溶性の(すなわち、細胞外)病原体に限られる。細胞内に存在する病原体(例えば、AIDS、マラリア、ヘルペス、及びクラミジアを引き起こす病原体)及び細胞表面に結合している病原体(例えば、がん抗原)は、B細胞抗体にとってそれほど感受性ではない。さらに、B細胞免疫の有効性は、ワクチン抗原がCD4+ヘルパーT細胞により同様に認識されると増強される。
【0008】
細胞結合性のままである抗原では、効果的な免疫化にはT細胞媒介免疫が必要である。しかしながら、T細胞媒介免疫を必要とするワクチンは失敗することが多い。なぜならば、宿主(例えば、ヒト、研究動物)には、提示されたワクチン抗原を認識して結合する特定のTCRを発現するT細胞がないからである。免疫系が低下した人(例えば、年配者)は特にこの問題を受けやすい。なぜならば、彼らは新しいT細胞の産生が減少しているので彼らのTCRレパートリーに「穴」が生じているからである。これらの問題点に起因して、ワクチンは無効になり、患者は細胞結合性抗原(例えば、細胞内感染症及びがん)に伴う状態に対する防御が不十分なままになることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、医師がT細胞媒介免疫を必要とする感染症及びがんを治療するのに使用することが可能な信頼できるワクチンは全くない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本開示は、T細胞媒介免疫を必要とし、これによって効力が増すワクチンの有効性を、高めるシステム及び方法を提供する。システム及び方法は、対象に投与されるワクチン抗原を認識して結合するT細胞受容体(TCR)を発現するよう、T細胞を遺伝的に改変することに依存している。対象が、ワクチン抗原を認識して結合するTCRを発現するT細胞を有することを確実にすることにより、T細胞媒介ワクチン接種の有効性は大いに拡大される。
【0011】
特定の実施形態は、対象に投与されるワクチン抗原に結合するTCRをコードするポリヌクレオチドを対象に投与することを含む。
【0012】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドはナノ粒子(NP)の一部として対象に投与される。NPは、ポリヌクレオチドの送達及び/又は発現を増強する特長を含むことが可能である。例えば、特定の実施形態では、NPはポリヌクレオチドを濃縮して酵素的分解から保護する担体分子を含む。特定の実施形態では、NPはカプセル化ポリヌクレオチドを遮蔽しオフターゲット結合を低減する又は防ぐコーティングを含む。
【0013】
特定の実施形態では、NPは選択的T細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA)を含む。T-DAはNPが対象に送達されるのを可能にし、ポリヌクレオチドを選択されたT細胞へ選択的に送達する。CD4+T細胞をTCRを発現するように選択的に改変するのは、B細胞媒介ワクチン接種の効力を改善するのに特に有用である。CD8+細胞傷害性T細胞をTCRを発現するように選択的に改変するのは、T細胞媒介ワクチン接種を改善するのに特に有用である。両方のアプローチが、T細胞にワクチン抗原認識能力を与える。重要なのは、T-DAを組み込む実施形態では、対象の既存のT細胞を、例えば、NPの筋肉内投与に続いてインビボで改変可能なことである。
【0014】
NPは、対象のT細胞に送達されるポリヌクレオチドの発現を促進する他の特長も含むことが可能である。例えば、NPはエンドソーム放出剤及び/又は核ターゲティング剤を含むことが可能である。エンドソーム放出剤は、標的にされたT細胞のエンドソームからの送達されたポリヌクレオチドの逃避を促進する。核ターゲティング剤はポリヌクレオチドを標的にされた細胞の核の方に及び/又はその中に向ける。
【0015】
特定の実施形態はこれらの特長の態様を組み合わせる。例えば、NPは、(i)対象に投与されるワクチン抗原に結合するTCRをコードするポリヌクレオチド;(ii)濃縮する担体分子;(iii)コーティング;(iv)限定されたT細胞(例えば、CD4+又はCD8+T細胞)にNPを選択的に向けるT-DA;(v)エンドソーム放出剤;及び(iv)核ターゲティング剤を含んでもよい。このNPは、ワクチン抗原を受ける臨床的に関連するタイムウィンドウ内で対象に投与することが可能である。
【0016】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、強力なT細胞免疫を必要とする慢性状態を治療するワクチンの効力を高めるのに特に有用である。そのような慢性状態の例は、慢性感染症(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)、マラリア、ヘルペス、クラミジア、エプスタインバーウイルス(EBV)、肺炎球菌、及びB型肝炎)及びがんを含む。
【0017】
本明細書に提出されている図面の多くはカラーの方がよく理解される。出願者らは、図面のカラー版を最初の提出物の一部と考え、後の手続きにおいて図面のカラー画像を提出する権利を留保する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】理論上の、T細胞受容体プログラミングを通じてワクチン失敗を予防する全体的アプローチを図解する、概略図である。ナノ粒子(NP)を使用して、操作されたTCR遺伝子を循環宿主T細胞中に導入し、T細胞に抗原認識能力を付与し、次にこの能力は移されたTCRにより認識されるペプチドワクチンを使用して選択的に拡大される。
図2】従来のワクチンに対する開示されたシステム及び方法の利点を図解する概略図である。上パネルは、免疫された個人が有する適切な受容体のあるT細胞があまりに少ないためにワクチン抗原/アジュバントの注射が失敗することがいかに多いのかを示している。中パネルは、NPをどのように使用すれば、操作されたTCR遺伝子を循環T細胞中に導入し、T細胞に抗原認識能力を付与することができるかを図解している。次に、これらの能力は移されたTCRにより認識されるペプチドワクチンを使用して選択的に拡大される。下パネルは、ワクチン特異的TCRを有するプログラミングCD4ヘルパーT細胞が、高親和性記憶B細胞を生み出すことにより保護的抗体の産生をブーストすることが可能になる様子を示している。
図3A】DNA保有ナノ粒子(NP)の筋肉内注射により、ワクチン特異的TCRを末梢性T細胞レパートリー中に効率的に導入することが可能になる。記載される実験で使用されるT細胞標的DNAナノ粒子の概略図である。NPは、プラスミドDNAをポリ(β-アミノエステル)ポリマーと混合することにより調製し、このポリマーはプラスミドDNAをナノサイズ複合体に濃縮する。粒子は、抗CD8抗体をポリグルタミン酸(PGA)に連結させ、粒子に静電気的に吸着されたコンジュゲートを形成することにより標的にした。挿入図はNPの電子顕微鏡写真であり;スケールバーは100nm。2つのナノ粒子カプセル化プラスミドも描かれており、プラスミドはOVA特異的OT-1 TCR及び機能亢進性iPB7トランスポサーゼをコードしている。
図3B】DNA保有ナノ粒子(NP)の筋肉内注射により、ワクチン特異的TCRを末梢性T細胞レパートリー中に効率的に導入することが可能になる。流入領域リンパ節でのリンパ球の細胞数測定分析。それぞれのパネルの下左4分の1区及び下右4分の1区の細胞のパーセントは、それぞれ:82.7及び17.3(ワクチンのみ、0日目);75.1及び24.8(ワクチンのみ、7日目);85.3及び14.7(ワクチンのみ、30日目);85.3及び14.7(OVA TCRナノ粒子のみ、0日目);84.2及び15.7(OVA TCRナノ粒子のみ、7日目);87.5及び12.4(OVA TCRナノ粒子のみ、30日目);86.7及び13.2(ワクチン+OVA TCRナノ粒子、0日目);80.3及び16.7(ワクチン+OVA TCRナノ粒子、7日目);80.6及び19.1(ワクチン+OVA TCRナノ粒子、30日目)である。
図3C】DNA保有ナノ粒子(NP)の筋肉内注射により、ワクチン特異的TCRを末梢性T細胞レパートリー中に効率的に導入することが可能になる。30日目のNPプログラムされたOVA反応性記憶T細胞の絶対数を示すプロット。
図4A】TCR1045をコードするT細胞標的NPをメソセリン(MSLN)ワクチンと組み合わせると、確立した膵管腺癌を抱えたKrasLSL-G12D/+;Trp53LSL-R172H/+;p48Cre/+(KPC)マウスの生存を有意に延ばす。生後4か月KPCマウスの膵臓における腫瘍塊の例。
図4B】TCR1045をコードするT細胞標的NPをメソセリン(MSLN)ワクチンと組み合わせると、確立した膵管腺癌を抱えたKrasLSL-G12D/+;Trp53LSL-R172H/+;p48Cre/+(KPC)マウスの生存を有意に延ばす。TCR1045をコードするT細胞標的NP、MSLNワクチン、又は両方を受けるKPCマウスの生存。対照は何の治療も受けない。ms=平均生存。
図5】CD4膜貫通ドメインをコードする代表的な遺伝子配列(配列番号40)。
図6】マウスコドン最適化piggyBacトランスポサーゼをコードする代表的なcDNA配列(GenBank受託番号:EF587698;配列番号142)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
リンパ球は、自己/非自己認識及び免疫記憶に基づく後天性長期免疫に関与している免疫系の細胞である。リンパ球は、B細胞又はT細胞として広く特徴付けることが可能である。B細胞は、可溶性抗原に結合する受容体として務める膜結合免疫グロブリン(抗体)分子の存在により特徴付けられる。T細胞は、膜結合T細胞受容体(TCR)の存在により特徴付けられる。TCRは、抗原が主要組織適合性複合体(MHC)分子に会合している時だけ抗原に結合する(すなわち、抗原は可溶性ではない)。T細胞応答の特異性は、特定の抗原に結合する特定のTCRにより与えられる。
【0020】
Tリンパ球は、CD4+T細胞及びCD8+T細胞を含む。これらのタイプのT細胞は、それぞれ細胞表面分子CD4及びCD8の発現により一部区別される。しかし、これらの細胞は異なる機能も有する。CD4+T細胞は、ヘルパーT細胞(T)とも呼ばれ、他の細胞型の活性を促進する。例えば、CD4+ TH1細胞は、細胞傷害性T細胞及びマクロファージを活性化して貪食された微生物を抱える細胞を破壊させる種々のサイトカインを分泌する。CD4+ TH2細胞は、B細胞を活性化して抗体を産生させるサイトカインを分泌する。CD8+細胞は、異常な又は感染細胞を直接死滅させることが可能な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。
【0021】
ワクチンは、特定の抗原に対する免疫系応答を、抗原に先制して免疫系を曝すことにより引き起こす製剤である。病原体抗原は、病原体のインタクトではあるが非感染性の形態(例えば、加熱殺菌した)が可能である。抗原は、病原体のタンパク質若しくはタンパク質断片又は異常な細胞型(例えば、がん細胞)により発現されるタンパク質若しくはタンパク質断片でも可能である。免疫系が先制曝露に続いて抗原を認識すると、抗原に再び遭遇した場合、免疫系が効果的な応答を迅速で効果的に開始することができるように、免疫系は長期免疫記憶をもたらすことが可能である。
【0022】
ワクチンが対象に送達されると、免疫系の抗原提示細胞(APC)が抗原成分を取り入れて、抗原成分又はその断片をB細胞及びT細胞に提示する。提示された抗原に特異的である受容体を発現するB細胞は、身体中を循環する抗体を産生し分泌して、後になって再び抗原に遭遇した場合、迅速で頑強な免疫応答を誘発することになる。標準ワクチンは、B細胞により作り出されるそのような抗体応答を介して機能するように設計される。しかし、B細胞免疫の有効性は可溶性(すなわち、細胞外)病原体に限られる。細胞内に存在する(例えば、AIDS、マラリア、ヘルペス、及びクラミジアを引き起こす病原体)又は細胞結合性のままである(例えば、がん細胞抗原)病原体はB細胞抗体にとってそれほど感受性ではない。さらに、B細胞免疫の有効性は、ワクチン抗原がCD4+ヘルパーT細胞により同様に認識されると増強される。
【0023】
細胞結合性(例えば、細胞内又は膜結合)である抗原では、効果的な免疫化にはT細胞媒介免疫が必要である。しかしながら、T細胞媒介免疫を必要とするワクチンは失敗することが多い。なぜならば、宿主(例えば、ヒト、研究動物)には、提示されたワクチン抗原を認識して結合する特定のTCRを発現するT細胞がないからである。免疫系が低下した人(例えば、年配者)は特にこの問題を受けやすい。なぜならば、彼らは新しいT細胞の産生が減少しているので彼らのTCRレパートリーに「穴」が生じているからである。これらの問題点に起因して、ワクチンは無効になり、患者は細胞内病原体による感染及び/又はがんに対する防御が不十分なままになることがある。
【0024】
現在、医師がT細胞媒介免疫を必要とする感染症及びがんを治療するのに使用することが可能な信頼できるワクチンは全くない。
【0025】
本開示は、T細胞媒介免疫を必要とし、これによって効力が増すワクチンの有効性を高めるシステム及び方法を提供する。システム及び方法は、対象に投与されるワクチン抗原を認識して結合するT細胞受容体(TCR)を発現するようT細胞を遺伝的に改変することに依存している。対象が、ワクチン抗原を認識して結合するTCRを発現するT細胞を有することを確実にすることにより、T細胞媒介ワクチン接種の有効性は大いに拡大される。
【0026】
特定の実施形態は、対象に投与されるワクチン抗原に結合するTCRをコードするポリヌクレオチドを対象に投与することを含む。
【0027】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドはナノ粒子(NP)の一部として対象に投与される。NPは、ポリヌクレオチドの送達及び/又は発現を増強する特長を含むことが可能である。例えば、特定の実施形態では、NPはポリヌクレオチドを濃縮して酵素的分解から保護する担体分子を含む。本明細書の他の場所でさらに詳細に開示されるように、そのような担体は正電荷を帯びた脂質及び/又はポリマーを含むことが可能である。特定の実施形態では、ポリ(β-アミノエステル)が利用される。
【0028】
特定の実施形態では、NPはカプセル化ポリヌクレオチドを遮蔽しオフターゲット結合を低減する又は防ぐコーティングを含む。オフターゲット結合は、NPの表面電荷を中性又は負に下げることにより低減される又は防がれる。本明細書の他の場所でさらに詳細に開示されるように、コーティングは中性若しくは負のポリマー及び/又はリポソームベースのコーティングを含むことが可能である。特定の実施形態では、NPコーティングとしてポリグルタミン酸(PGA)が利用される。使用する場合、コーティングは必ずしも全NPを被覆する必要はないが、NPによるオフターゲット結合を低減するのに十分でなければならない。
【0029】
特定の実施形態では、NPは選択的T細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA)を含む。T-DAはNPが対象に送達されるのを可能にし、ポリヌクレオチドを選択されたT細胞へ選択的に送達する。CD4+T細胞をTCRを発現するように選択的に改変するのは、B細胞媒介ワクチン接種の効力を改善するのに特に有用である。CD8+細胞傷害性T細胞をTCRを発現するように選択的に改変するのは、T細胞媒介ワクチン接種を改善するのに特に有用である。両方のアプローチが、T細胞にワクチン抗原認識能力を与える。重要なのは、T-DAを組み込む実施形態では、対象の既存のT細胞を、例えば、NPの筋肉内投与に続いてインビボで改変可能なことである。
【0030】
NPは、対象のT細胞に送達されるポリヌクレオチドの発現を促進する他の特長も含むことが可能である。例えば、NPはエンドソーム放出剤及び/又は核ターゲティング剤を含むことが可能である。エンドソーム放出剤は、標的にされたT細胞のエンドソームからの送達されたポリヌクレオチドの逃避を促進する。核ターゲティング剤はポリヌクレオチドを標的にされた細胞の核の方に及び/又はその内部に向ける。
【0031】
特定の実施形態はこれらの特長の態様を組み合わせる。例えば、NPは、(i)対象に投与されるワクチン抗原に結合するTCRをコードするポリヌクレオチド;(ii)正電荷を帯びた担体;(iii)中性又は負電荷を帯びたコーティング;(iv)限定されたT細胞(例えば、CD4+又はCD8+T細胞)にNPを選択的に向けるT-DA;(v)エンドソーム放出剤;及び(iv)核ターゲティング剤を含むことが可能である。このNPは、ワクチン抗原を受ける臨床的に関連するタイムウィンドウ内で対象に投与することが可能である。
【0032】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、強力なT細胞免疫を必要とする慢性感染症及びがんを治療するワクチンの効力を高めるのに特に有用である。そのような慢性感染症の例は、後天性免疫不全症候群(AIDS)、マラリア、ヘルペス、クラミジア、エプスタインバーウイルス(EBV)、肺炎球菌、及びB型肝炎を含む。
【0033】
図2は、本明細書に開示されるシステム及び方法の根底にある模式図を提供する。上の3つのパネルは、従来のワクチン抗原投与で観察される不十分なT細胞プライミングを描いている。中の3つのパネルは、投与されたワクチン抗原を認識して増加したT細胞プライミングをもたらしT細胞媒介免疫を支援するCD8+T細胞の遺伝子再プログラミングを描いている。下の3つのパネルは、投与されたワクチン抗原を認識して増加したT細胞プライミングをもたらし、B細胞による頑強な抗体産生を助け支援するCD4+T細胞の遺伝子再プログラミングを描いている。したがって、特定の実施形態は、対象に投与されるワクチン抗原に結合するTCRを発現するようにT細胞を遺伝的に再プログラミングするポリヌクレオチドを対象に投与することを含む。
【0034】
本開示の態様は、今やさらに詳細に、以下の順で記載される:(I)TCR;(II)操作されたTCRをコードするポリヌクレオチド(PN);(III)ナノ粒子(NP);(IV)T細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA);(V)エンドソーム放出剤(ERA);(VI)核ターゲティング剤(NTA);(VII)ワクチン抗原;(VIII)ワクチンアジュバント;(IX)組成物;(X)キット;及び(XI)使用方法。
【0035】
I.T細胞受容体(TCR)。示されているように、TCRは、T細胞の表面に見出され、主要組織適合性複合体(MHC)分子に会合している抗原を認識して結合する分子である。
【0036】
それぞれのTCRは、2つのジスルフィド連結ヘテロ二量体膜貫通タンパク質を含む。すなわち、それぞれのTCRはヘテロ二量体である。末梢血中のT細胞の95%において、それぞれのTCRはアルファ(α)鎖及びベータ(β)鎖を含む。末梢血中のT細胞の残りの5%は、ガンマ(γ)鎖及びデルタ(Δ)鎖を含む。
【0037】
それぞれのTCR鎖は可変ドメインを含み、これがT細胞の抗原特異性を与える。これらの可変ドメインはIg可変(V)鎖のドメインに類似している。
【0038】
鎖の他の部分は、定常ドメイン、膜貫通ドメイン及び短い細胞質側テイルのようないくつかの不変のドメインを含む。膜アンカーC末端ドメインはIg定常(C)ドメインに類似している。
【0039】
機能的形態を達成するため、TCRはCD3に非共有結合的に会合して、TCR-CD3膜複合体を形成する。CD3は、TCRのシグナル伝達エレメントであり、γ、Δ、イプシロン(Ε)、ゼータ(Ζ)及びイータ(Η)鎖と呼ばれる不変タンパク質の群で構成されている。γ、Δ、及びΕ鎖は構造的に関係しており、それぞれがIg様細胞外定常ドメイン、続いて膜貫通領域及び40アミノ酸を超える細胞質ドメインを含有する。Z及びH鎖ははっきり異なる構造を有し、両方とも9アミノ酸のみの非常に短い細胞外領域、膜貫通領域並びにZ及びH鎖でそれぞれ113及び115アミノ酸を含む長い細胞質側テイルを有する。CD3複合体中の不変タンパク質鎖は会合して、E鎖とγ鎖(Eγ)の若しくはE鎖とΔ鎖(EΔ)の又はZとH鎖(ZH)の非共有結合ヘテロ二量体、又は2つのZ鎖(ZZ)のジスルフィド連結ホモ二量体を形成する。CD3複合体の90%はZZホモ二量体を組み入れている。
【0040】
CD3鎖の細胞質領域は、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)と名付けられたモチーフを含む。このモチーフは、B細胞受容体複合体のIg-α/Ig-βヘテロ二量体並びにIgE及びIgGに対するFc受容体を含むいくつかの他の受容体に見出される。ITAM部位は細胞質チロシンキナーゼと会合し、TCR媒介トリガーに続くシグナル伝達に関与する。CD3では、γ、Δ及びE鎖はそれぞれがITAMの単一コピーを含有し、Z及びH鎖はその長い細胞質領域に3つのITAMを抱える。実際、T細胞活性化シグナル伝達経路において主要な役割はZ及びH鎖に帰されてきた。
【0041】
開示されたシステム及び方法の特定の適用内での使用のために特定のTCRを同定し選択する数多くの方法がある。例えば、特定の抗原断片に結合する数多くのTCRの配列は公知であり一般に公開されている。
【0042】
TCRは、例えば、特定のワクチン抗原/MHC複合体に結合するT細胞を単離し、その複合体に結合するTCR鎖を配列決定することにより、特定のワクチンでの使用のために同定することも可能である。例として、抗原特異的T細胞は、抗原/MHC複合体の存在下で単離されたヒトT細胞をインビトロ培養することにより誘導してもよい。抗原/MHC複合体に結合するTCRをコードするTCR遺伝子は、TCRα鎖遺伝子及びTCRβ鎖遺伝子に特有の配列に対応するプライマーを使用する5’RACE手順により容易にクローニングすることが可能である。
【0043】
特定のペプチド抗原に結合しているMHC分子の細胞外ドメインを含む天然のTCRリガンドの種々の類似体が作成されてきた。いくつかのそのような類似体は、リンパ球膜の洗剤抽出物として精製される又は組換えタンパク質として産生されてきた(例えば、Sharmaら、PNAS.88:11465~69頁、1991年;Kozonoら、Nature 369:151~54頁、1994年;Arimilliら、J.Biol.Chem.270:971~77頁、1995年;Nag、PNAS 90:1604~08頁、1993年;Nagら、J.Biol.Chem.271:10413~18頁、1996年;Rhodeら、J.Immunol.157:4885~91頁、1996年;Fremontら、Science 272:1001頁、1996年;Sharmaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:11405頁、1991年;Nicolleら、J.Clin.Invest.93:1361頁、1994年;Spackら、CNS Drug Rev.4:225頁、1998年参照)。そのような類似体を使用すれば、特定の適用のためにT細胞を単離し、次に目的のTCRを配列決定することが可能になる。
【0044】
特定の実施形態では、配列決定に続いてTCR鎖を対にする(すなわち、ペアード鎖分析を実施する)ことが必要である場合がある。種々の方法を利用して、対合により遺伝的に改変されたT細胞により発現されると抗原/MHC複合体に結合するTCRが生じるように、抗原/MHC複合体に結合する単離されたαとβ鎖を対にすることが可能である。特定の実施形態では、例えば、仮に単細胞から配列決定する場合のような、αとβ鎖対合情報が手順において失われない実施形態では、配列決定後対合は不必要である又は比較的単純である場合がある。特定の実施形態では、鎖対合はコンピュータ方法によりin silicoで支援されてもよい。例えば、特殊化した、一般に公開されている免疫学遺伝子整列ソフトウェアがIMGT、JOINSOLVER、VDJSolver、SoDA、iHMMune-align、又はVDJ遺伝子セグメントに注釈を付けるための他の類似するツールから入手可能である。
【0045】
特定の実施形態では、鎖対合はVDJ抗体を使用して実施してもよい。例えば、同定されたセグメントに対する抗体を得て、その抗体を使用して、その(表面)受容体中でその遺伝子セグメントを発現する細胞のサブセットを、(例えば、FACS、又はマイクロビーズを用いた免疫磁気選択を使用して)精製してもよい。次に、所望の遺伝子セグメントについて精製された細胞のこのサブセットから配列決定してもよい。必要であれば、この二次配列決定は第1ラウンドの配列決定よりも深く(すなわち、より高い分解能で)行ってもよい。この二次配列データセットでは、誘導されるクロノタイプの数ははるかに少なくなり、鎖対合の作業は大いに楽になる。遺伝子セグメントに応じて、例えば、誘導されるα鎖は1つ及び誘導されるβ鎖は1つだけになる可能性がある。
【0046】
特定の実施形態では、鎖対合はマルチウェル配列決定を使用して実施してもよい。例えば、遺伝子セグメント精製細胞又は非精製細胞をマイクロウェルプレートに単離してもよく、それぞれのマイクロウェルは非常に少ない数の細胞を有する。それぞれのウェルにおいて細胞を個々に増幅し配列決定することが可能であり、これは、単細胞ベースで配列決定することにより目的の鎖を対合する別の手段を提供し、誘導されたαとβ鎖の対合を促進する。PairSEQ(登録商標)(Adaptive Biotechnologies Corp.、Seattle、WA)のようなアッセイも開発されている。
【0047】
特定のワクチン適用のための目的のTCRの選択及び/又は同定に続いて、遺伝的に改変されたT細胞により発現された場合、発現されたTCRが意図されるワクチン/MHC複合体に結合しT細胞が活性化される限り、TCRのいかなる部分でも使用することが可能でありTCRのバリアントを使用することが可能である。
【0048】
特定の実施形態では、操作されたTCRは、目的の標的(例えば、ペプチド-MHC複合体)に特異的なVα/β及びCα/β鎖(例えば、Vα-Cα、Vβ-Cβ、Vα―Vβ)を含む又はVα-Cα、Vβ-Cβ、Vα―Vβ対を含む一本鎖T細胞受容体(scTCR)を含む。
【0049】
特定の実施形態では、操作されたTCRは、公知の又は同定されたTCR Vα、Vβ、Cα、又はCβのアミノ酸配列に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一である配列を含み、それぞれのCDRは目的の標的に特異的に結合するTCR又はこの断片若しくは誘導体からゼロ変化又は1つ、2つ、若しくは3つ以下の変化を含む。
【0050】
特定の実施形態では、操作されたTCRは、公知の又は同定されたTCR(例えば、高親和性TCR)のVα、Vβ、Cα、又はCβに由来する又はこれに基づくVα、Vβ、Cα、又はCβ領域を含み、公知の又は同定されたTCRのVα、Vβ、Cα、又はCβと比べた場合、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)挿入、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)欠失、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換又は非保存的アミノ酸置換)、又は上記変化の組合せを含む。挿入、欠失又は置換は、それぞれのCDRがゼロ変化又は1つ、2つ、若しくは3つ以下の変化を含むという条件で、及び改変Vα、Vβ、Cα、又はCβ領域を含有する標的結合ドメインが野生型に類似する親和性及び作用でそれでもその標的に特異的に結合することが可能であるという条件で、これらの領域のアミノ末端若しくはカルボキシ末端又は両末端でを含む、Vα、Vβ、Cα又はCβ領域のいかなる場所でもよい。
【0051】
TCRが結合することが可能であるMHC分子には、MHCクラスI分子及びMHCクラスII分子の2種類がある。本明細書に記載される発現されたTCR及び特定の使用という文脈では、MHCクラスI制限又はMHCクラスII制限TCRを発現するのが有用でありうる。したがって、これらの異なるクラスのMHC分子の考察を行う。
【0052】
MHCクラスI分子は、βミクログロブリン(βm)と呼ばれる12kDaの単形性(ヒトでは)非MHCコード軽鎖タンパク質と非共有結合している多形性の重鎖(α)を含む。重α鎖は、それぞれが90アミノ酸(N末端にα、α及びα)を含む3つの細胞外ドメイン、40アミノ酸の膜貫通領域及び30アミノ酸の細胞質側テイルを含む、45kDaの多形性膜貫通糖タンパク質である。α及びαドメイン、膜末梢部ドメインが、8~10アミノ酸のペプチドに結合するのに十分なサイズを有するペプチド結合溝又は間隙を形成し、αドメインは細胞膜の近位である。βmは細胞膜に留められていない単一の免疫グロブリン(Ig)様ドメインを有し、α鎖と主に相互作用し、αは特徴的なIg折重なりも有する。ヒトでは、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cと呼ばれる3つのα鎖遺伝子があり、その遺伝子ごとに複対立遺伝子が同定されている。マウスでは、H-2K、H-2D及びH-2Lと呼ばれる3つのα鎖遺伝子がある。
【0053】
MHCクラスII分子は、2つの異なるポリペプチド鎖、33kDのα鎖及び28kDaのβ鎖を含み、この2つの鎖は非共有結合的相互作用により会合する。クラスI MHC分子と同様、クラスII MHC分子は、細胞外ドメイン、膜貫通セグメント及び細胞質側テイルを含有する膜結合糖タンパク質である。これらの非共有結合ヘテロ二量体複合体中のそれぞれの鎖は、2つの細胞外ドメイン:αとαドメイン及びβとβドメインを含む。クラスII分子の膜末梢部ドメインはα1及びβ1ドメインで構成されペプチドに結合するのに十分なサイズを有するペプチド結合溝又は間隙を形成し、このペプチドは典型的には13~18アミノ酸である。膜近位ドメイン、α2及びβ2はIg定常(C)ドメインに構造的類似性を有する。
【0054】
哺乳動物において会合してMHC複合体を形成する種々のポリペプチド鎖をコードする遺伝子は、広範囲に詳細に研究され記載されてきた。ヒトでは、MHC分子(クラスI βmの例外はあるが)は第6染色体上に位置するゲノムのHLA領域にコードされている。HLA-A、HLA-B及びHLA-Cと呼ばれる3つのクラスI MHCα鎖コード遺伝子座がある。MHCクラスIIタンパク質の場合には、HLA-DR(A及びB)、HLA-DP(A及びB)、及びHLA-DQ(A及びB)と呼ばれるαとβ鎖遺伝子座の3つの対がある。ラットでは、クラスIα遺伝子はRT1.Aと呼ばれ、クラスII遺伝子はRT1.Bα及びRT1.Bβと呼ばれる。MHC複合体の構造、機能及び遺伝学に関するさらに詳細な記述は、例えば、免疫生物学:The Immune System in Health and Disease by Janeway and Travers、Current Biology Ltd./Garland Publishing、Inc.(1997)、及びin Bodmerら、(1994)「Nomenclature for factors of the HLA system」Tissue Antigens 44巻、1~18頁に見出すことができる。
【0055】
T細胞発生中、胸腺中のT細胞はペプチド/HLA複合体を提示されこの相互作用に基づいて選択を受ける。T細胞選択により、HLA拘束性として公知の、特定のクラスのHLA分子との相互作用に制限されるT細胞をもたらすことが可能である。例えば、選択中、T細胞はTCRとペプチド/HLAクラスI複合体の間の効果的な相互作用に起因して分化してクラスI制限CD8+T細胞になることが可能である、又はTCRとペプチド/HLAクラスII複合体の間の効果的な相互作用に起因してクラスII制限CD4+T細胞になることが可能である。TCRの相補性領域1~3(CDR1~3)はペプチド/HLA複合体に結合する。したがって、CDR1~3のアミノ酸配列は、T細胞がHLAクラスI又はHLAクラスII制限かどうかの決定要因となりうる。共受容体発現もT細胞クラス制限の重要な特長である。抗原に応答してT細胞活性化のためのシグナル伝達を始めるため、HLAクラスI分子はCD4+共受容体と相互作用することが可能であり、HLAクラスII分子はCD8+共受容体と相互作用することが可能である。したがって、ペプチド/HLAクラスI複合体に結合するTCRを発現するように操作されたT細胞は、共受容体CD8を発現する場合は活性化することが可能であり、ペプチド/HLAクラスII複合体に結合するTCRを発現するように操作されたT細胞は共受容体CD4を発現する場合は活性化することが可能である。
【0056】
したがって、以下のことを改変する遺伝子操作がなければ、CD8+T細胞はMHCクラスI分子を認識し、CD4+T細胞はMHCクラスII分子を認識する。次に特定の実施形態では、CD8+T細胞はHLAクラスI制限TCRを発現するように遺伝的に改変することが可能であり、CD4+T細胞はHLAクラスII制限TCRを発現するように遺伝的に改変することが可能である。
【0057】
特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0058】
【化1】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0059】
【化2】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0060】
【化3】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0061】
【化4】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRは:
【0062】
【化5】
の配列を有するヒトα鎖可変ドメインを含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRは:
【0063】
【化6】
の配列を有するヒトβ鎖可変ドメインを含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはCLLRNHDKLIF(配列番号9)又はCAVGNYGGSQGNLIF(配列番号10)のCDR3配列を有するヒトα鎖可変ドメインを含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはCASSQDSYNEQFF(配列番号11)又はCASSLAGGYGDTQYF(配列番号12)のCDR3配列を有するヒトβ鎖可変ドメインを含むことが可能である。これらのα及びβ CDR3、可変ドメイン並びに/又は鎖配列を含むTCRは、メソセリン(MSLN)ペプチド-HLA複合体に結合する。特定の実施形態では、これらのα及びβ CDR3、可変ドメイン並びに/又は鎖配列を含むTCRは、SLLFLLFSL(配列番号13):HLA-A201複合体又はVLPLTVAEV(配列番号14):HLA-A201複合体に結合する。MSLNは、悪性中皮腫並びに膵臓、卵巣及び肺腺癌を含む、多くのヒトがんにおいて高度に発現される腫瘍抗原である。MSLNは、その正常な発現が中皮細胞に限られているのでがん免疫療法の魅力的な標的であり、この細胞はそれほど重要ではない。特定の実施形態では、MSLNに特異的であるヒトTCRのα及びβ遺伝子はコドン最適化されておりブタテッショウウイルス-1 2Aエレメントにより連結されている。ヒトMSLNに特異的なTCR配列はStromnes、IMら、(2015)Cancer cell 28(5):638~652頁及び国際公開第2017/112944号に記載されている。
【0064】
特定の実施形態では、TCRは、Stromnes、IMら、(2015)上記に記載されるLDYANKMI(配列番号15)のCDR3配列を有するマウスVα4鎖及びPQDTQYFF(配列番号16)のCDR3配列を有するVβ9鎖を含むことが可能である。マウスTCRは、TCR1045と呼ばれるが、組換えマウスMslnを発現するように操作されMsln406~414エピトープに特異的であるMsln-/-マウスのT細胞クローンに由来していた。TCR1045はMsln406~414ペプチド(GQKMNAQAI、配列番号17)に高親和性で結合する。特定の実施形態では、TCR1045のVα4及びVβ9遺伝子はコドン最適化されておりブタテッショウウイルス-1 2Aエレメントにより連結されている。
【0065】
特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0066】
【化7】
を含むことが可能である。このαとβ鎖組合せはHIV GagペプチドSL9(SLYNTVATL(配列番号20))に結合し、CD8+T細胞に抗HIV活性を与える(例えば、Varela-Rohena、ら、2008年.Nature Medicine.14(12):1390~1395頁参照)。
【0067】
特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0068】
【化8】
を含むことが可能である。このαとβ鎖組合せはEBV抗原に結合する(例えば、Kobayashi、ら、2013年.Nature Medicine 19:1542~1546頁参照)。
【0069】
特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0070】
【化9】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0071】
【化10】
を含むことが可能である。これらのαとβ鎖組合せはヒトWilms腫瘍タンパク質1(WT-1)抗原に結合する(例えば、米国特許出願公開第2016/0083449号参照)。WT1は、急性骨髄性白血病及び非小細胞肺がん、乳がん、膵臓がん、卵巣がん並びに結腸直腸がんを含むいくつかのがんにおいて過剰発現される細胞内タンパク質である。WT-1エピトープに結合するTCRで操作されたT細胞が、再発急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、又は慢性骨髄性白血病の高いリスクを抱え、以前ドナー幹細胞移植で治療を受けた患者に対する臨床試験で調べられている(トライアル番号NCT01640301)。
【0072】
特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0073】
【化11】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0074】
【化12】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0075】
【化13】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0076】
【化14】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0077】
【化15】
を含むことが可能である。これらのαとβ鎖組合せはMAGE A3/MAGE A6抗原に結合する(例えば、米国特許出願公開第2015/0246959号参照)。MAGE Aタンパク質は、その発現が多くのがんで上方調節されている精巣特異的E3ユビキチンリガーゼ成分である。MAGE A3及びA6は、膀胱がん、食道がん、頭頚部がん、肺がん及び卵巣がんを含む一般的な固形腫瘍で頻繁に過剰発現されている。MAGE A3/MAGE A6抗原に結合するTCRで操作されたT細胞が、HLA-DPB104:01陽性であり、その腫瘍がMAGE A3及び/又はMAGE A6陽性である患者に対する臨床試験で調べられている(トライアル番号NCT03139370)。
【0078】
特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0079】
【化16】
を含むことが可能である。特定の実施形態では、TCRはα鎖:
【0080】
【化17】
を含むことが可能である。これらのαとβ鎖組合せはSLLMWITQC(配列番号38)-HLA-A0201複合体に結合する。SLLMWITQC(配列番号38)ペプチドはがん/精巣ファミリーのヒト腫瘍抗原NY-ESO-1に由来する。NY-ESO-1は、がんワクチン又は免疫療法の考えられる標的として研究中である。NY-ESO-1は多くの予後不良メラノーマにおいて高度に発現される。SLLMWITQC(配列番号38)-HLA-A0201複合体に結合するTCRで操作されたT細胞が、卵巣がんを抱えた患者の臨床試験で調べられている(トライアル番号NCT01567891)。Robbins PFら、(2008)The Journal of Immunology 180(9):6116~6131頁及び米国特許第8,008,438号は、SLLMWITQC(配列番号38)-HLA-A0201複合体に結合するTCR α及びβ鎖配列を開示している。
【0081】
特定の実施形態では、TCRは国際公開第2011039507号に記載されているTCRのような操作されたTCRを含むことが可能である。そのようなTCRは内部自己開裂ブタテッショウウイルス 2A配列により分離されているα鎖とβ鎖を含み、ヒトヘルペスウイルス-5、又はサイトメガロウイルス(CMV)抗原に結合する。一例は抗CMV人工TCR:
【0082】
【化18】
を含む。
【0083】
II.TCRをコードするポリヌクレオチド(PN)。PNは、T細胞中に導入されると、PNがコードされたTCRの発現を引き起こすように、抗原/MHC複合体に結合するTCRをコードする核酸配列を含む核酸分子を記述している。投与されたPNは遺伝子を含むことが可能である。用語「遺伝子」とは、本明細書に記載されるシステム又は方法において使用するためのTCRをコードする核酸配列のことである。「遺伝子」の定義は、種々の配列多形性、突然変異及び/又はバリアントを含み、そのような変更はコードされたTCRの機能に著しい影響を与えない。用語「遺伝子」は、コード配列だけではなく、プロモーター、エンハンサー及び終止領域などの調節領域も含んでいてよい。この用語は、mRNA転写物からスプライスされたすべてのイントロン及び他のDNA配列を、別のスプライス部位から生じるバリアントと共に含むことがさらに可能である。TCRをコードする核酸配列には、TCRの発現を指示するDNA又はRNAが可能である。これらの核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖配列でもタンパク質に翻訳されるRNA配列でもよい。核酸配列は、完全長核酸配列並びに完全長タンパク質に由来する非完全長配列の両方を含む。配列は、導入されて特定のT細胞でコドン選択を与えることがある天然の配列(単数又は複数)の縮重コドンも含むことが可能である。TCRをコードする多くの遺伝子配列が一般に公開されているデータベース及び出版物で入手可能である。当業者であれば、目的のTCRの同定に基づいてそのような遺伝子配列を引き出すことも可能である。
【0084】
「コードする」とは、プラスミド、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのPN中のヌクレオチドの配列の特性のことである。PNは、例えば、遺伝子により作成されるmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物系においてタンパク質を産生するならば、タンパク質をコードすることが可能である。
【0085】
特定の実施形態では、PNは、TCRを発現するための遺伝子を含むプラスミド、cDNA又はmRNAを含む。適切なプラスミドは、遺伝子をT細胞に移入するのに使用することが可能な標準プラスミドベクター及びミニサークルプラスミドを含む。PN(例えば、ミニサークルプラスミド)は遺伝物質(例えば、抗原に特異的なTCRをコードする配列)のT細胞への移入を促進するいかなる追加の配列情報でもさらに含むことが可能である。例えば、PNは、一般的プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞特異的プロモーター及び/又は核若しくは細胞質に特異的なプロモーターのようなプロモーターを含むことが可能である。プロモーター及びプラスミド(例えば、ミニサークルプラスミド)は当技術分野では一般的に周知であり、従来の技法を使用して調製することが可能である。
【0086】
さらに本明細書に記載されるように、PNを使用してT細胞をトランスフェクトすることが可能である。他の方法で明記されていなければ、用語トランスフェクトする(transfect)、トランスフェクトされた(transfected)、又はトランスフェクトする(transfecting)は、T細胞中での外来性PN又はそこから発現されたポリペプチドの存在を示すのに使用することが可能である。当技術分野では公知であるように、いくつかのベクターはリンパ球へのPNの移入を媒介することができることが公知である。
【0087】
特定の実施形態では、トランスフェクトされたPNは、オフターゲットバイスタンダー細胞に影響を与えずにT細胞の抗原特異性を編集する(すなわち、本明細書に記載される選択的送達を提供する)ことが可能である。例えば、送達された遺伝子はT細胞特異的プロモーターの制御下で発現させることが可能である。特定の実施形態では、そのようなプロモーターは非ウイルス遺伝子移入のための高次コイルのDNA分子の一形態であるミニサークルプラスミドに含めることが可能であり、このプラスミドには細菌の複製起点も抗生物質耐性マーカーもない。したがって、このプラスミドは、遺伝子治療で現在使用されている標準プラスミドよりも小さく潜在的に安全である。
【0088】
例えば、急速に分裂するT細胞において移入されたTCR遺伝子の発現を維持するため、スキャフォールド/マトリックス結合領域をPN中に挿入することも可能である。S/MARエレメントに連結されている発現カセットを含むPNは、分裂中の細胞において染色体外的に自己複製することが可能である。特定の実施形態では、PiggyBac又はSleeping Beautyトランスポサーゼ含有プラスミドを使用してTCR遺伝子をトランスフェクトされた細胞のゲノム中に安定的に組み込むことも可能である。発現を維持する他の選択肢は、ホモサピエンストランスポゾン由来Buster1トランスポサーゼ様タンパク質遺伝子;ヒト内在性レトロウイルスHプロテアーゼ/インテグラーゼ由来ORF1;ホモサピエンスCas-Br-M(マウス)エコトロピックレトロウイルス形質転換配列;ホモサピエンス内在性レトロウイルス配列K;ホモサピエンス内在性レトロウイルスファミリーW;ホモサピエンスLINE-1タイプトランスポサーゼドメイン;及びホモサピエンスpogo転位因子を含む。特定の実施形態は機能亢進性iPB7トランスポサーゼを利用することが可能である。
【0089】
送達されるPNがmRNAである場合、骨格改変はmRNAの安定性を高め、早すぎる開裂に抵抗性にすることが可能である。
【0090】
特定の実施形態では、自己複製mRNA構築物を使用すれば、宿主ゲノム組み込みを必要とせずに持続的なトランス遺伝子発現を確実にすることが可能である。自己複製RNAとは、翻訳すると、シスコード化遺伝子が元の鋳型分子から新たなRNAコピーを作成できるように、RNA複製機構をコードするRNA分子を指すことが可能である。自己複製RNAは、アルファウイルス及びペスチウイルスなどのRNAウイルス由来の配列を使用して設計することが可能である。mRNAの送達のための自己複製RNA分子を設計し使用する技法は、例えば、国際公開第2011/005799号、国際公開第2009/146867号、及びGeall、Aら 2012年.Proc Natl Acad Sci USA.109(36):14604~14609頁に見出すことができる。
【0091】
特定の実施形態では、PNは合成mRNAを含む。特定の実施形態では、合成mRNAは5’-キャッピングを使用して細胞内安定性が高まるように設計される。複数の異なる5’-キャップ構造体を使用すれば、合成mRNA分子の5’-キャップを作成することが可能である。例えば、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)キャップは、1つのグアニンがN7メチル基並びに3’-O-メチル基を含有する5’-5’三リン酸グアニン-グアニン結合を含有する。合成mRNA分子は、5’-キャップ構造体を作成する原因となる酵素を使用して転写後にキャップしてもよい。例えば、組換えワクシニアウイルスキャッピング酵素及び組換え2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素は、mRNAの最も5’にあるヌクレオチドとグアニンヌクレオチドの間にキャノニカル5’-5’三リン酸結合を作り出すことが可能であり、そこではグアニンはN7メチル化を含有し、最終5’-ヌクレオチドはCap1構造を生み出す2’-O-メチルを含有する。これにより、さらに高い翻訳能力及び細胞安定性を有するキャップが得られ、細胞炎症誘発性サイトカインの活性化が低下する。
【0092】
合成mRNA又は他のPNは環状にしてもよい。PNは環化される又はコンカテマー化されて、翻訳能力のある分子を生み出し、ポリA結合タンパク質と5’-末端結合タンパク質の間の相互作用を支援してもよい。環状化又はコンカテマー化の機構は少なくとも3つの異なる経路:1)化学的、2)酵素的、及び3)リボザイム触媒される、を通じて起こることがある。新たに形成された5’-/3’-結合は分子内でも分子間でもよい。
【0093】
第1の経路では、PNの5’-末端及び3’-末端は、互いに近づくと、分子の5’-末端と3’-末端の間で新たな共有結合を形成する化学的反応基を含有することができる。有機溶媒中で合成PN分子の3’-末端で3’-アミノ終結ヌクレオチドが5’-NHS-エステル部分に求核攻撃を受けて新たな5’-/3’-アミド結合を形成するように、5’-末端はNHS-エステル反応基を含有していてもよく、3’-末端は3’-アミノ終結ヌクレオチドを含有していてもよい。
【0094】
第2の経路では、T4 RNAリガーゼを使用して、5’-リン酸化PNを核酸の3’-ヒドロキシル基に酵素的に連結させて新たなホスホロジエステル結合を形成してもよい。例での反応では、1μgの核酸分子を、1~10ユニットのT4 RNAリガーゼ(New England Biolabs、Ipswich、Mass.)と一緒に製造業者のプロトコルに従って37℃で1時間インキュベートすることが可能である。ライゲーション反応は、5’-及び3’-領域両方と近位で塩基対合して酵素的ライゲーション反応を支援することができるスプリットオリゴヌクレオチドの存在下で起きてもよい。
【0095】
第3の経路では、cDNA鋳型の5’-又は3’-末端は、インビトロでの転写中、結果としての核酸分子が核酸分子の5’-末端を核酸分子の3’-末端にライゲートすることができる活性なリボザイム配列を含有することができるように、リガーゼリボザイム配列をコードする。リガーゼリボザイムは、グループIイントロン、グループIイントロン、デルタ型肝炎ウイルス、ヘアピンリボザイム由来でもよく、又はSELEX(試験管内進化法)により選択してもよい。リボザイムリガーゼ反応は0~37℃の温度で1~24時間かかる場合がある。
【0096】
特定の実施形態では、PNは、目的の抗原/MHC複合体に特異的に結合するTCR α及びβ鎖をコードする、すなわち、PNはTCR α及びβ鎖可変領域をコードする。特定の実施形態では、PNは、TCR定常ドメイン、膜貫通ドメイン及び/又は細胞質側テイルをさらにコードすることが可能である。TCRのこれらの部分の配列及び構造は当業者には公知であり、公開データベースで容易にアクセスすることが可能である。一例として、配列番号40はCD4膜貫通ドメインをコードする代表的遺伝子配列を提供する(図5参照)。特定の実施形態では、PNはインバリアントCD3鎖(すなわち、γ、Δ、Σ、Z、H)及び/又はITAMモチーフ(例えば、CD3-Z、FeR-γ、CD3-γ、CD3-Δ、CD3-Σ、CD5、CD22、CD79a、CD79b及び/又はCD66dに由来する)をコードすることが可能である。
【0097】
特定の実施形態では、PNはスペーサー領域をコードする配列を含むことが可能である。スペーサー配列の長さは、標的認識、結合及びT細胞活性化を最適化するように個々の抗原/MHC複合体についてカスタマイズすることが可能である。特定の実施形態では、スペーサー長は、抗原/MHC複合体エピトープの位置、エピトープに対するTCRの親和性並びに/又は抗原/MHC複合体認識に応答してインビトロ及び/若しくはインビボで増殖するTCRを発現しているT細胞の能力に基づいて選択することが可能である。
【0098】
典型的には、スペーサー領域は、TCRのα及びβ鎖とTCRの膜貫通ドメインの間に見出される。スペーサー領域はα及びβ鎖の柔軟性を提供することが可能であり、遺伝的に改変されたT細胞において高発現レベルを可能にする。特定の実施形態では、スペーサー領域は、少なくとも10~250アミノ酸、少なくとも10~200アミノ酸、少なくとも10~150アミノ酸、少なくとも10~100アミノ酸、少なくとも10~50アミノ酸、又は少なくとも10~25アミノ酸及び収載されている範囲のいずれかの終点間のいかなる整数でも含むことが可能である。特定の実施形態では、スペーサー領域は、250アミノ酸若しくはそれよりも少ない;200アミノ酸若しくはそれよりも少ない;150アミノ酸若しくはそれよりも少ない;100アミノ酸若しくはそれよりも少ない;50アミノ酸若しくはそれよりも少ない;40アミノ酸若しくはそれよりも少ない;30アミノ酸若しくはそれよりも少ない;20アミノ酸若しくはそれよりも少ない;又は10アミノ酸若しくはそれよりも少ない、アミノ酸を有する。
【0099】
特定の実施形態では、スペーサー領域は、免疫グロブリン様分子のヒンジ領域、例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3若しくはヒトIgG4由来のヒンジ領域のすべて又は一部に由来することが可能である。特定の実施形態では、ヒンジ領域のすべて又は一部は、免疫グロブリンの定常領域の1つ以上のドメインと組み合わせることが可能である。例えば、ヒンジ領域の一部は、CH2若しくはCH3ドメイン又はそのバリアントのすべて又は一部と組み合わせることが可能である。
【0100】
特定の実施形態では、T細胞へのPNの導入は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、遺伝子配列を含有するウイルス又はバクテリオファージベクターを用いた感染、受容体媒介エンドサイトーシス、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、微小核体媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合、等を含む、当技術分野で公知のいかなる方法でも実行することが可能である。細胞中への外来遺伝子の導入のためには数多くの技法が当技術分野では公知であり(例えば、Loeffler and Behr、Meth.Enzymol、217、599~618頁(1993);Cohenら、Meth.Enzymol、217、618~644頁(1993);Cline、Pharmac.Ther、29、69~92頁(1985)参照)、T細胞の必要な発生及び生理的機能が破壊されないという条件で、本開示に従って使用してもよい。特定の実施形態では、技法により、遺伝子が細胞によって発現可能であり好ましくは遺伝性でありその細胞子孫により発現可能であるように、T細胞への遺伝子の安定な移入が提供される。特定の実施形態では、技法により、細胞内での遺伝子の一時的な発現が提供される。T細胞を遺伝的に改変するのに使用することが可能な組換えDNA技法の当技術分野で一般的に公知の方法は、例えば、Ausubelら、(編)、1993年、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY;及びKriegler、1990年、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、Stockton Press、NYに記載されている。
【0101】
III.ナノ粒子(NP)。特定の実施形態では、PNはナノ粒子(NP)を使用してT細胞に投与される。特定のNP実施形態は正電荷担体を含む。担体は、PNを濃縮し酵素分解から保護するように機能する。担体として使用するのに特に有用な物質は、正電荷脂質及び/又はポリ(β-アミノエステル)を含むポリマーを含む。
【0102】
正電荷脂質の追加の例は、ジパルミトイルホスファチジン酸又はジステアロイルホスファチジン酸とヒドロキシエチレンジアミンとのエステルのようなホスファチジン酸とアミノアルコールとのエステルを含む。正電荷脂質のさらに詳細な例は、3β-[N-(N’,N’-ヂメチルアミノエチル)カルバモイル)コレステロール(DC-chol);N,N’-ジメチル-N,N’-ジオクトアシルアンモニウムブロマイド(DDAB);N,N’-ジメチル-N,N’-ジオクトアシルアンモニウムクロライド(DDAC);1,2-ジオレオイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムクロライド(DORI);1,2-ジオレオイルオキシ-3-[トリメチルアンモニオ]-プロパン(DOTAP);N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA);ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジオクタデシルオキシ-3-[トリメチルアンモニオ]-プロパン(DSTAP);及び、例えば、Martinら、Current Pharmaceutical Design 2005年、11、375~394頁に記載されているカチオン性脂質を含む。
【0103】
本開示内で担体として使用可能な正電荷ポリマーの例は、ポリアミン;ポリ有機アミン(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンイミンセルロース);ポリ(アミドアミン)(PAMAM);ポリアミノ酸(例えば、ポリリジン(PLL)、ポリアルギニン);多糖(例えば、セルロース、デキストラン、DEAEデキストラン、デンプン);スペルミン、スペルミジン、ポリ(ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム)、ポリ(4-ビニル-N-アルキル-ピリジニウム)、ポリ(アクリロイル-トリアルキルアンモニウム)、及びTatタンパク質を含む。
【0104】
前記を限定せずに、本明細書に開示される特定の実施形態は、多孔質網状組織を形成することができるいかなる物質からでも構築される多孔質NPも利用することが可能である。例示的物質は、生体適合性ポリマー、金属、遷移金属及びメタロイドを含む。例示的生体適合性ポリマーは、寒天、アガロース、アルギネート、アルギネート/カルシウムホスフェートセメント(CPC)、β-ガラクトシダーゼ(β-GAL)、(1,2,3,4,6-ペンタアセチル α-D-ガラクトース)、セルロース、キチン、キトサン、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、ヒアルロン酸コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシ-ヘキサン酸)(PHBHHx)、ポリ(ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、絹、ダイズタンパク質及びダイズタンパク質分離物を単独で又は他の任意のポリマー組成物と組み合わせて、いかなる濃度でも及びいかなる比でも含む。種々のグレードを使用して異なるポリマータイプを異なる比で混ぜ合わせると、寄与しているポリマーのそれぞれから借りる特徴を得ることができる。種々の末端基の化学的特徴も取り入れることが可能である。
【0105】
特定の実施形態では、NPはカプセル化PNを遮蔽しオフターゲット結合を低減する又は防ぐコーティングを含む。オフターゲット結合は、NPの表面電荷を中性又は負に下げることにより低減する又は防がれる。コーティングは、中性又は負電荷ポリマー及び/又はリポソームベースのコーティングを含むことが可能である。特定の実施形態では、コーティングは、カプセル化核酸を選択された細胞中に放出する前に環境に暴露されるのを妨げるのに十分な親水性及び/又は電荷的に中性の親水性ポリマーの高密度表面コーティングである。特定の実施形態では、コーティングは、NPの表面の少なくとも80%又は少なくとも90%を覆う。特定の実施形態では、コーティングは、ポリグルタミン酸(PGA)を含む。
【0106】
コーティングとして使用可能な追加の電荷的に中性のポリマーの例は、ポリエチレングリコール(PEG);ポリ(プロピレングリコール);及びポリアルキレンオキシドコポリマー(PLURONIC(登録商標)、BASF Corp.、Mount Olive、NJ)を含む。
【0107】
電荷的に中性のポリマーは双性イオン性ポリマーも含む。双性イオン性とは、正と負の電荷の両方を有しつつ全体的には電荷的中性という特性のことである。双性イオン性ポリマーは細胞とタンパク質の付着に抵抗する細胞膜の領域のような振る舞いをすることが可能である。
【0108】
双性イオン性ポリマーは、双性イオン性基を有するペンダント基(すなわち、ポリマー骨格から吊り下がっている基)を含む双性イオン性構成単位を含む。例示的な双性イオン性ペンダント基はカルボキシベタイン基(例えば、-Ra-N+(Rb)(Rc)-Rd-CO2-、Raはポリマー骨格をカルボキシベタイン基のカチオン性窒素中心に共有結合的に連結させるリンカー基であり、Rb及びRcは窒素置換基であり、Rdはカチオン性窒素中心をカルボキシベタイン基のカルボキシ基に共有結合的に連結させるリンカー基である)を含む。
【0109】
負電荷ポリマーの例は、アルギン酸;カルボン酸多糖;カルボキシメチルセルロース;カルボキシメチルセルロースシステイン;カラゲナン(例えば、Gelcarin(登録商標)209、Gelcarin(登録商標)379);コンドロイチン硫酸;グリコサミノグリカン;ムコ多糖;負電荷多糖(例えば、デキストラン硫酸);ポリ(アクリル酸);ポリ(D-アスパラギン酸);ポリ(L-アスパラギン酸);ポリ(L-アスパラギン酸)ナトリウム塩;ポリ(D-グルタミン酸);ポリ(L-グルタミン酸);ポリ(L-グルタミン酸)ナトリウム塩;ポリ(メタクリル酸);アルギン酸ナトリウム(例えば、Protanal(登録商標)LF 120M、Protanal(登録商標)LF 200M、Protanal(登録商標)LF 200D);カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC);硫酸化多糖(ヘパリン、アガロペクチン);ペクチン、ゼラチン及びヒアルロン酸を含む。
【0110】
特定の実施形態では、本明細書で開示されるポリマーは「星形ポリマー」を含むことが可能であり、これは2つ以上のポリマー分岐がコアから伸びている分岐状ポリマーのことである。コアは、そこから分岐が重合により伸びることが可能である2つ以上の官能基を有する原子の群である。
【0111】
特定の実施形態では、分岐は双性イオン性又は負電荷ポリマー分岐である。星ポリマーでは、分岐前駆体は、加水分解、紫外線照射又は熱を介して双性イオン性又は負電荷ポリマーに変換することが可能である。ポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、光重合、開環重合(ROP)、縮合、マイケル付加、分岐生成/伸長反応又は他の反応を含む、不飽和単量体の重合に効果的ないかなる重合法によって得てもよい。
【0112】
リポソームは、少なくとも1つの同心円状脂質二重層を含む微小な小胞である。脂質を形成する小胞は、最終複合体の流動性又は強剛性の指定された程度を達成するように選択される。特定の実施形態では、リポソームは粒子を取り囲む外層である脂質組成物を提供する。
【0113】
リポソームは、中性(コレステロール)又は双極性でも可能であり、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)及びスフィンゴミエリン(SM)のようなリン脂質並びにジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含む他のタイプの双極性脂質を含み、炭化水素鎖長は14~22の範囲で飽和している、又は1つ以上の二重C=C結合を有する。安定なリポソームを、単独で又は他の脂質成分と組み合わせて作成することができる脂質の例は、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミド-メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)のようなリン脂質である。リポソーム中に組み込まれることが可能な追加のリン無含有脂質は、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ミリスチン酸イソプロピル、トリエタノールアミン-ラウリルサルフェート、アルキルアリルサルフェート、アセチルパルミテート、グリセロールリシノレエート、ヘキサデシルステレエート、両性アクリルポリマー、ポリエトキシル化脂肪酸アミド、DDAB、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、DOTAP、DOTMA、DC-Chol、ホスファチジン酸(PA)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、DOPG、及びジセチルホスフェートを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示されるリポソームを作成するのに使用される脂質は、コレステロール、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)及び誘導体化小胞形成脂質PEG-DSPEを含む。
【0114】
リポソームを形成する方法は、例えば、米国特許第4,229,360号、米国特許第4,224,179号、米国特許第4,241,046号、米国特許第4,737,323号、米国特許第4,078,052号、米国特許第4,235,871号、米国特許第4,501,728号及び米国特許第4,837,028号、並びにSzokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467頁(1980)及びHopeら、Chem.Phys.Lip.40:89頁(1986)に記載されている。
【0115】
NPは、楕円体、立方状、ピラミッド形、長方形、円柱状、ドーナツ形及び同類のものを含む、種々の異なる形状が可能である。PNは種々の方法でNP中に含めることが可能である。例えば、PNはNP中にカプセル化することが可能である。他の態様では、PNは、NPの表面に又は表面のすぐ下の近傍に会合させる(例えば、共有結合的に及び/又は非共有結合的に)ことが可能である。特定の実施形態では、PNはNP中に組み入れる、例えば、NPの材料中に組み込むことが可能である。例えば、PNはポリマーNPのポリマーマトリックス中に組み入れることが可能である。当業者であれば、細胞へのPNの送達を可能にするようにPNを運ぶ種々の方法を認識する。
【0116】
NPのサイズは、広い範囲にわたり変動することが可能であり、異なる方法で測定することが可能である。例えば、NPは最小寸法100nmを有することが可能である。NPは、500nmに等しい若しくはそれ未満、150nm未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満、又は10nm未満の最小寸法を有することも可能である。特定の実施形態では、NPは、5nm~500nm、10nm~100nm、20nm~90nm、30nm~80nm、40nm~70nm、及び40nm~60nmの範囲に及ぶ最小寸法を有することが可能である。特定の実施形態では、寸法はNP又は被覆NPの直径である。特定の実施形態では、NPの集団は500nmに等しい若しくはそれ未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満、又は10nm未満の平均最小寸法を有することが可能である。特定の実施形態では、組成物中のNPの集団は、5nm~500nm、10nm~100nm、20nm~90nm、30nm~80nm、40nm~70nm、及び40nm~60nmの範囲に及ぶ平均直径を有することが可能である。NPの寸法は、例えば動的光散乱及び/又は電子顕微鏡などの従来の技法を使用して決定することが可能である。
【0117】
IV.T細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA)。特定の実施形態では、NPは、インビボ又はエクスビボでの選ばれた細胞型へのPNの選択的送達を可能にするT細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA)を含む。
【0118】
T-DAは目的のT細胞に選択的に結合する。特定の実施形態では、T-DAは、T細胞型により発現されるマーカーを標的にすることにより受容体媒介エンドサイトーシスを通じて特定のT細胞集団へのNPの選択的送達を達成する。例えば、以前示されたように、CD4+T細胞はその表面にCD4タンパク質を発現し、CD8+T細胞はその表面にCD8タンパク質を発現する。
【0119】
本明細書で使用される「ナイーブ」T細胞とは、非ナイーブT細胞と比べた場合、CD62L及びCD45RAを発現しCD45ROを発現しない非抗原経験T細胞のことである。特定の実施形態では、ナイーブT細胞は、CD62L、CCR7、CD28、CD127及びCD45RAを含む表現型マーカーの発現によりさらに特徴付けることが可能である。T-DAはCD62L、CCR7、CD28、CD127及び/又はCD45RAに結合して、ナイーブT細胞へのPNの選択的送達を達成することが可能である。
【0120】
CD3はすべての成熟T細胞上で発現される。したがって、T-DAはCD3に結合してすべての成熟T細胞へのPNの選択的送達を達成することが可能である。活性化T細胞は4-1BB(CD137)を発現する。したがって、T-DAは4-1BBに結合して活性化T細胞へのPNの選択的送達を達成することが可能である。CD5及びトランスフェリン受容体もT細胞上で発現され、これらを使用すればT細胞へのPNの選択的送達を達成することが可能である。
【0121】
本明細書で使用される「セントラルメモリー」T細胞(又は「TCM」)とは、ナイーブ細胞と比べた場合、その表面でCD62L又はCCR7及びCD45ROを発現するがCD45RAを発現しない又はその発現が減少している抗原経験CTLのことである。特定の実施形態では、セントラルメモリー細胞は、ナイーブ細胞と比べた場合、CD62L、CCR7、CD25、CD127、CD45RO及びCD95の発現に陽性でありCD45RAの発現が減少している。T-DAは、CD62L、CCR7、CD25、CD127、CD45RO及び/又はCD95に結合してTCMへのポリヌクレオチドの選択的送達を達成することが可能である。
【0122】
本明細書で使用される「エフェクターメモリー」T細胞(又は「TEM」)とは、セントラルメモリー細胞と比べた場合、その表面でCD62Lを発現しない又はその発現が減少しており、ナイーブ細胞と比べた場合、CD45RAを発現しない又はその発現が減少している抗原経験T細胞のことである。特定の実施形態では、エフェクターメモリー細胞は、ナイーブ細胞又はセントラルメモリー細胞と比べて、CD62L及びCCR7の発現に陰性であり、CD28及びCD45RAの発現が変化しやすい。エフェクターT細胞は、メモリー又はナイーブT細胞と比べて、グランザイムB及びパーフォリンに陽性である。T-DAはグランザイムB及び/又はパーフォリンに結合してTEMへのPNの選択的送達を達成することが可能である。
【0123】
リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)はすべてのT細胞、B細胞及び単球/マクロファージにより発現される。したがって、T-DAはLFA-1に結合して、T細胞、B細胞及び単球/マクロファージへのPNの選択的送達を達成することが可能である。
【0124】
「選択的送達」とは、PNが送達され1つ以上の選択された細胞集団により発現されることを意味する。特定の実施形態では、選択的送達は選択されたT細胞集団に限定されている。特定の実施形態では、投与されたPNの少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%は送達され及び/又はT細胞集団により発現される。特定の実施形態では、選択的送達は、選択されていない細胞が送達されたPNを発現しないことを保証する。例えば、PNがTCRをコードしている場合、T細胞のみがTCR発現に必要なZ鎖を有するために選択性を保証することが可能である。選択的送達は、選択されていない細胞中へのPN取り込みがないことに基づいている又はPNがプラスミドDNAを含む場合PN配列内の特異的プロモーターの存在に基づいていることも可能である。例えば、プラスミドDNAは、T細胞のための末梢lckプロモーターのようなT細胞特異的プロモーターを含むことが可能である。特定の実施形態では、標的T細胞へのT-DAの選択的結合に起因して選択的送達が観察される。
【0125】
示されるように、T-DAは、T細胞上に見出されるモチーフに対する結合ドメインを含むことが可能である。T-DAは、選択されたT細胞中への選択的取り込みを可能にするいかなる選択的結合機構でも含むことが可能である。特定の実施形態では、T-DAは、T細胞受容体モチーフ;T細胞α鎖;T細胞β鎖;CCR7;CD3;CD4;CD8;CD28;CD45RA;CD62L;CD127;LFA-1;及びその組合せに対する結合ドメインを含む。
【0126】
特定の実施形態では、結合ドメインは、細胞マーカーリガンド、受容体リガンド、抗体、ペプチド、ペプチドアプタマー、核酸、核酸アプタマー、スピーゲルマー(spiegelmers)又はこの組合せを含む。T-DAという文脈内では、結合ドメインは、別の物質に結合してエンドサイトーシスを媒介することができる複合体を形成するいかなる物質でも含む。
【0127】
「抗体」は結合ドメインの一例であり、全抗体又は抗体の結合断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc及び一本鎖Fv断片(scFv)若しくは選択された細胞により発現されるモチーフに特異的に結合する免疫グロブリンの任意の生物学的に効果的な断片を含む。抗体又は抗原結合断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ミニボディ及び線形抗体のすべて又は一部を含む。
【0128】
ヒト起源又はヒト化抗体由来の抗体はヒトでの免疫原性が低下している又はなく、非ヒト抗体と比べて非免疫原性エピトープの数が少ない。抗体及びその断片は一般的に、ヒト対象における抗原性のレベルが低い又はないように選択される。
【0129】
T細胞により発現されるモチーフに特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体を得る方法、ファージディスプレイの方法、ヒト若しくはヒト化抗体を産生する方法又は当技術分野の当業者には公知である抗体を産生するように操作されたトランスジェニック動物若しくは植物を使用する方法(例えば、米国特許第6,291,161号及び米国特許第6,291,158号参照)を使用して調製することが可能である。部分的な又は完全な合成抗体のファージディスプレイライブラリーは入手可能であり、T細胞モチーフに結合することが可能な抗体又はその断片を求めてスクリーニングすることが可能である。例えば、結合ドメインは、目的の標的に特異的に結合するFab断片を求めてFabファージライブラリーをスクリーニングすることにより同定してもよい(Hoetら、Nat.Biotechnol.23:344頁、2005年参照)。ヒト抗体のファージディスプレイライブラリーも入手可能である。さらに、簡便な系(例えば、マウス、HuMAbマウス(登録商標)、TCマウス(商標)、KM-マウス(登録商標)、ラマ、ニワトリ、ラット、ハムスター、ウサギ、等)で免疫原として目的の標的を使用するハイブリドーマ発生のための従来の戦略を使用すれば、結合ドメインを発生させることが可能である。特定の実施形態では、抗体は選択されたT細胞により発現されるモチーフに特異的に結合し、非特異的構成要素又は無関係な標的とは交差反応しない。同定された後は、抗体をコードするアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を単離する及び/又は決定することが可能である。
【0130】
特定の実施形態では、選択されたT-DAの結合ドメインは、T細胞受容体モチーフ抗体;T細胞α鎖抗体;T細胞β鎖抗体;CCR7抗体;CD3抗体;CD4抗体;CD8抗体;CD28抗体;CD45RA抗体;CD62L抗体;CD127抗体;及び/又はLFA-1抗体を含む。これらの結合ドメインは、前述の抗体のscFv断片からなることも可能である。
【0131】
特定の実施形態では、T-DAはCD4に結合する抗体又は抗体断片を含む。CD4に結合する抗体の例は、米国特許出願公開第20130195881号に記載されている、TNX-355である。TNX-355抗CD4抗体は、GYTFTSYVIH(配列番号41)を含むCDRH1配列、YINPYNDGTDYDEKFKG(配列番号42)を含むCDRH2配列及びEKDNYATGAWFAY(配列番号43)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにKSSQSLLYSTNQKNYLA(配列番号44)を含むCDRL1配列、WASTRES(配列番号45)を含むCDRL2配列及びQQYYSYRT(配列番号46)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。特定の実施形態では、CD4に結合する抗体は市販の抗体を含む。市販の抗CD4抗体の例は、BioXCell(West Lebanon、NH)社製のClone GK1.5、カタログ番号BE0003-1である。
【0132】
特定の実施形態では、T-DAはCD8に結合する抗体又は抗体断片を含む。CD8に結合する抗体の例はOKT8であり、この配列は米国特許出願公開第20160176969号に記載されている。OKT8抗CD8抗体は、FNIKDTY(配列番号47)を含むCDRH1配列、DPANDN(配列番号48)を含むCDRH2配列及びGYGYYVFDH(配列番号49)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにRSISQY(配列番号50)を含むCDRL1配列、SGSTLQS(配列番号51)を含むCDRL2配列及びHNENPLT(配列番号52)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。特定の実施形態では、CD8に結合する抗体は市販の抗体を含む。市販の抗CD8抗体の例は、BioXCell(West Lebanon、NH)社製のClone2.43、カタログ番号BP0061である。
【0133】
特定の実施形態では、T-DAはCD3に結合する抗体又は抗体断片を含む。CD3に結合する抗体の例はOKT3であり、この配列は米国特許第6,491,916号に記載されている。OKT3抗CD3抗体は、RYTMH(配列番号53)を含むCDRH1配列、YINPSRGYTNYNQKFKD(配列番号54)を含むCDRH2配列及びYYDDHYCLDY(配列番号55)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにSASSSVSYMN(配列番号56)を含むCDRL1配列、DTSKLAS(配列番号57)を含むCDRL2配列及びQQWSSNPFT(配列番号58)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。特定の実施形態では、CD3に結合する抗体は市販の抗体を含む。市販の抗CD3抗体の例は、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)社製のClone KT3、カタログ番号MA5-16763である。
【0134】
特定の実施形態では、結合ドメインVH領域は公知のモノクローナル抗体のVHに由来する又はこれに基づくことが可能であり、公知の抗体のVHと比べた場合、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)の挿入、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)の欠失、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換又は非保存的アミノ酸置換)又は上記変化の組合せを含有することが可能である。挿入、欠失又は置換は、それぞれのCDRがゼロ変化又は1つ、2つ、又は3つ以下の変化を含むという条件で、及び改変VH領域を含有する結合ドメインがそれでも野生型結合ドメインに類似する親和性でその標的に特異的に結合することが可能であるという条件で、アミノ末端若しくはカルボキシ末端又はこの領域の両末端を含むVH領域のいかなる場所にあってもよい。
【0135】
特定の実施形態では、結合ドメイン中のVL領域は公知のモノクローナル抗体のVLに由来する又はこれに基づいており、公知のモノクローナル抗体のVLと比べた場合、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)の挿入、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)の欠失、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)又は上記変化の組合せを含有する。挿入、欠失又は置換は、それぞれのCDRがゼロ変化又は1つ、2つ、又は3つ以下の変化を含むという条件で、及び改変VL領域を含有する結合ドメインがそれでも野生型結合ドメインに類似する親和性でその標的に特異的に結合することが可能であるという条件で、アミノ末端若しくはカルボキシ末端又はこの領域の両末端を含むVL領域のいかなる場所にあってもよい。
【0136】
特定の実施形態では、結合ドメインは、軽鎖可変領域(VL)の若しくは重鎖可変領域(VH)の、又は両方のアミノ酸配列に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は100%同一である配列を含む又は配列であり、それぞれのCDRは、目的の標的に特異的に結合するモノクローナル抗体又はこの断片若しくは誘導体から、ゼロ変化又は1つ、2つ、若しくは3つ以下の変化を含む。
【0137】
ペプチドアプタマーは、両末端でタンパク質スキャフォールドに結合しているペプチドループ(標的タンパク質に特異的である)を含む。この二重の構造上の制約はペプチドアプタマーの結合親和性を抗体に匹敵するレベルまで大いに高める。可変ループ長は典型的には8~20アミノ酸(例えば、8~12アミノ酸)であり、スキャフォールドは、安定していて、可溶性であり、小さく、及び非毒性であるいかなるタンパク質でもよい(例えば、チオレドキシン-A、ステフィンA三重変異体、緑色蛍光タンパク質、エグリンC、及び細胞転写因子Spl)。ペプチドアプタマー選択は、酵母ツーハイブリッドシステム(例えば、Gal4酵母ツーハイブリッドシステム)又はLexAインターラクショントラップシステムなどの異なるシステムを使用して行うことが可能である。
【0138】
核酸アプタマーは、Osborneら、Curr.Opin.Chem.Biol.1:5~9頁、1997年;及びCerchiaら、FEBS Letters 528:12~16頁、2002年により記載されるように、標的タンパク質又は他の分子に高親和性及び特異性で結合するよう指示する特定の球状構造に折り畳まれることにより機能する一本鎖核酸(DNA又はRNA)リガンドである。特定の実施形態では、アプタマーは小さい(15KD;又は15~80ヌクレオチド若しくは20~50ヌクレオチド)。アプタマーは一般に、SELEX(試験管内進化法;例えば、Tuerkら、Science、249:505~510頁、1990年;Greenら、Methods Enzymology.75~86頁、1991年;及びGoldら、Annu.Rev.Biochem.、64:763~797頁、1995年参照)と名付けられた手法により1014~1015ランダムオリゴヌクレオチド配列からなるライブラリーから単離される。アプタマーを作成するさらなる方法は、例えば、米国特許第6,344,318号;米国特許第6,331,398号;米国特許第6,110,900号;米国特許第5,817,785号;米国特許第5,756,291号;米国特許第5,696,249号;米国特許第5,670,637号;米国特許第5,637,461号;米国特許第5,595,877号;米国特許第5,527,894号;米国特許第5,496,938号;米国特許第5,475,096号;及び米国特許第5,270,16号に記載されている。スピーゲルマーは、少なくとも1つのβリボース単位がβ-D-デオキシリボース又は、例えば、β-D-リボース、α-D-リボース、β-L-リボースから選択される改変糖単位により置き換えられていることを除くと、核酸アプタマーに類似している。
【0139】
結合ドメインは、アフィボディ(affibodies);アフィリン(affilin)(Ebersbachら、J.Mol.Biol.372:172頁、2007年);アルマジロリピートタンパク質(例えば、Madhurantakamら、Protein Sci.21:1015頁、2012年;PCT特許出願公開番号WO2009/040338参照);アトリマー(atrimers);アビマー(avimers);C型レクチンドメイン(Zelensky and Gready、FEBS J.272:6179頁、2005年;Beavilら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:753頁、1992年及びSatoら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)100:7779頁、2003年);細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質-4(Weidleら、Cancer Gen.Proteo.10:155頁、2013年);設計アンキリンリピートタンパク質(designed ankyrin repeat proteins)(DARPins)(Binzら、J.Mol.Biol.332:489頁、2003年及びBinzら、Nat.Biotechnol.22:575頁、2004年);フィブリノーゲンドメイン(例えば、Weiselら、Science 230:1388頁、1985年参照);フィブロネクチン結合ドメイン(アドネクチン又はモノボディ)(Richardsら、J.Mol.Biol.326:1475頁、2003年;Parkerら、Protein Eng.Des.Selec.18:435頁、2005年及びHackelら、(2008)J.Mol.Biol.381:1238~1252頁);フィノマー(fynomers);クニッツドメイン(例えば、米国特許第6,423,498号参照);ロイシンリッチリピートドメイン(Stumppら、J.Mol.Biol.332:471頁、2003年);リポカリンドメイン(例えば、国際公開第2006/095164号、Besteら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)96:1898頁、1999年及びSchonfeldら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)106:8198頁、2009年参照);mAb2又はFcab(商標)(例えば、PCT特許出願公開番号WO2007/098934;WO2006/072620);scTCR(例えば、Lakeら、Int.Immunol.11:745頁、1999年;Maynardら、J.Immunol.Methods 306:51頁、2005年;米国特許第8,361,794号参照);テトラトリコペプチドリピートドメイン(Mainら、Structure 11:497頁、2003年及びCortajarenaら、ACS Chem.Biol.3:161頁、2008年);V様ドメイン(例えば、米国特許出願公開第2007/0065431号参照);又は同類のもの(例えば、Nordら、Protein Eng.8:601頁、1995年;Nordら、Nat.Biotechnol.15:772頁、1997年;Nordら、Euro.J.Biochem.268:4269頁、2001年;Binzら、Nat.Biotechnol.23:1257頁、2005年;Boersma and Pluckthun、Curr.Opin.Biotechnol.22:849頁、2011年参照)から選択することも可能である。
【0140】
ポリ(エチレンイミン)/DNA(PEI/DNA)複合体のようなT細胞による内部移行及び/又はT細胞のトラスフェクションを促進することが可能な他の作用物質も使用することが可能である。
【0141】
V.エンドソーム放出剤(ERA)。エンドソーム放出剤(ERA)は、T細胞のエンドソームからのカーゴ退出を促進するいかなる化合物又はペプチドをも含む。例示的なERAは、イミダゾール、ポリ又はオリゴイミダゾール、PEI、ペプチド、融合誘導ペプチド、ポリカルボキシレート、ポリカチオン、マスクオリゴ又はポリカチオン又はアニオン、アセタール、ポリアセタール、ケタール/ポリケタール、オルトエステル、マスク又は非マスクカチオン又はアニオン電荷を有するポリマー、両親媒性ブロックコポリマー及びマスク又は非マスクカチオン又はアニオン電荷を有するデンドリマーを含む。
【0142】
多くのERAが、エンドソームからの脱出を促進しポリヌクレオチドをインタクトで核中に送達するウイルスエレメントから改作される。一特定の例として、H5WYGペプチドを使用すれば低pHで膜の溶解を誘導することが可能である。ヒスチジンリッチペプチドH5WYGは、アミノ酸の5つがヒスチジン残基で置き換えられているインフルエンザウイルス赤血球凝集素のHA-2サブユニットのN末端配列の誘導体である。H5WYGは、ヒスチジン残基がプロトン化されているので、わずかに酸性pHで膜を選択的に不安定化することができる。セムリキ森林ウイルス由来のE1タンパク質も有用なERAである。
【0143】
特定の実施形態では、ERAは疎水性膜トランスロケーション配列(MTS)を含む。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号59)を有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP(配列番号60))も使用することが可能である。
【0144】
追加の例示的ERAは、以下を含む。
【0145】
【表1】
【0146】
VI.核ターゲティング剤。核ターゲティング剤(NTA)とは、細胞の核への細胞輸送及び/又は核中への進入を増強する配列のことである。一般に、NTAは3~100アミノ酸長、3~50、4~30、又は4~20アミノ酸長の短いアミノ酸配列のクラスである。
【0147】
微小管関連配列(MTAS)NTAは、微小管との相互作用を促進して核への輸送を増強する配列を含む。例示的なMTASはPLKTPGKKKKGKPGKRKEQEKKKRRTR(配列番号81)を含む。
【0148】
核移行シグナル(NLS)NTAは、核輸送機械との相互作用を促進する配列を含む。例示的なNLS配列は、GRYLTQETNKVETYKEQ PLKTPGKKKKGKP(配列番号82)を含む。
【0149】
特定の実施形態は、ヒト副甲状腺ホルモン関係タンパク質(PTHrP、UniProt ID:P12272)に由来するNTAを利用し、これはオーバーラップMTAS及びNLS配列を含むタンパク質である。特定の実施形態では、オーバーラップMTAS及びNLS配列を含むNTAは、GRYLTQETNKVETYKEQPLKTPGKKKKGKPGKRKEQEKKKRRTR(配列番号83;Narayananら、Sci Rep.2013年;3:2184頁参照)を含む。
【0150】
追加の例示的NLS配列は、(i)SV40ラージT抗原NLS(PKKKRKV)(配列番号84)により例証されるモノパータイトNLS;(ii)可変数のスペーサーアミノ酸により分離されている2つの塩基性ドメインを含み、ゼノパスヌクレオプラスミンNLS(KRXXXXXXXXXXKKKL)(配列番号85)により例証されるバイパータイトNLS;並びに(iii)hnRNP A1タンパク質のM9、インフルエンザウイルス核タンパク質NLS及び酵母Ga14タンパク質NLSのような非カノニカル配列(Dingwall and Laskey、Trends Biochem Sci 16:478~481頁、1991年)を含む。特定の実施形態では、NLSは高度にカチオン性又は塩基性ペプチドでありうる。特定の実施形態では、NLSは2つ以上のArg又はLysアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、NLSはインポーチン及びカリオフェリンのようなサイトゾルタンパク質に結合することが可能であり、これらのタンパク質はNLS含有配列を認識してこれを核膜孔複合体に輸送する。
【0151】
特定の実施形態では、送達されたPN、特にプラスミドDNAの核中への移入を指示するため、PN(例えば、ナノ粒子カプセル化プラスミド)をSV40 T-Ag-由来NLSペプチドにコンジュゲートすることが可能である。例示的なSV40 T-Ag-由来NLSペプチドは、PKKKRKV(配列番号86);PKKKRMV(配列番号87);PKKKRKVEDP(配列番号88);PKKGSKKA(配列番号89);PKTKRKV(配列番号90);CGGPKKKRKVG(配列番号91);PKKKIKV(配列番号92);CYDDEATADSQHSTPPKKKRKVEDPKDFESELLS(配列番号93);及びCGYGPKKKRKVGG(配列番号94)を含む。
【0152】
追加の例示的NLS配列は以下を含む。
【0153】
【表2】
【0154】
例示的なNLSは、Cokolら、2000年、EMBO Reports、1(5):411~415頁;Boulikas、1993年、Crit.Rev.Eukaryot.Gene Expr.、3:193~227頁;Collasら、1996年、Transgenic Research、5:451~458頁;Collas and Alestrom、1997年、Biochem.Cell Biol.75:633~640頁;Collas and Alestrom、1998年、Transgenic Research、7:303~309頁;Collas and Alestrom、1996年、Mol.Reprod.Devel.、45:431~438頁、並びに、米国特許第7,531,624号、米国特許第7,498,177号、米国特許第7,332,586号及び米国特許第7,550,650号にも記載されている。
【0155】
特定の実施形態では、NTAは、NP、例えば、PBAEのポリマーに共有結合している。
【0156】
VII.ワクチン抗原。本開示の教示内では、T細胞は遺伝的に改変されて、対象に投与されるワクチン抗原に特異的なTCRを発現する。ワクチン抗原は、身体に導入されると、T細胞活性化及び/又は抗体産生のような免疫応答を刺激する物質である。ワクチン抗原は、死滅した細菌若しくはウイルスのような天然のインタクトの病原体、又は生きた弱毒化ウイルスを含むことが可能であり、又は単一ウイルス若しくは細菌タンパク質のような病原体の一部、若しくはサブユニットだけを含むことが可能である。ワクチン抗原は、がん抗原又はこの断片を含むことも可能である。
【0157】
例示的ウイルスワクチン抗原は、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニアウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス又はトガウイルスに由来することが可能である。特定の実施形態では、ワクチン抗原は、CMV、EBV、インフルエンザウイルス、A型、B型、又はC型肝炎、単純ヘルペス、HIV、インフルエンザ、日本脳炎、麻疹、ポリオ、狂犬病、呼吸器合胞体、風疹、天然痘、水痘帯状疱疹、ウエストナイル及び/又はジカを含むウイルスにより発現されるペプチドを含む。
【0158】
全病原体由来であるワクチン抗原の例は、OPVポリオワクチンに使用される弱毒化ポリオウイルス及びIPVポリオワクチンに使用される死滅したポリオウイルスを含む。
【0159】
さらなる特定の例として、CMVワクチン抗原は、エンベロープ糖タンパク質B及びCMV pp65を含み;EBVワクチン抗原は、EBV EBNAI、EBV P18及びEBV p23を含み;肝炎ワクチン抗原は、B型肝炎ウイルスのS、M及びLタンパク質、B型肝炎ウイルスのプレS抗原、HBCAG DELTA、HBV HBE、C型肝炎ウイルスRNA、HCV NS3並びにHCV NS4を含み;単純ヘルペスワクチン抗原は最初期タンパク質及び糖タンパク質Dを含み;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチン抗原は、HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36、Nefタンパク質及び逆転写酵素のようなgag、pol及びenv遺伝子の遺伝子産物を含み;ヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス抗原はL1タンパク質を含み;インフルエンザワクチン抗原は赤血球凝集素及びノイラミニダーゼを含み;日本脳炎ワクチン抗原は、タンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1、NS1-NS2A及び80% Eを含み;マラリアワクチン抗原は、プラスモジウムタンパク質サーカムスポロゾイト(CSP)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ及びフルクトース二リン酸アルドラーゼを含み;麻疹ワクチン抗原は麻疹ウイルス融合タンパク質を含み、狂犬病ワクチン抗原は、狂犬病糖タンパク質及び狂犬病核タンパク質を含み;呼吸器合胞体ワクチン抗原は、RSV融合タンパク質及びM2タンパク質を含み;ロタウイルスワクチン抗原はVP7scを含み;風疹ワクチン抗原はタンパク質E1及びE2を含み;水痘帯状疱疹ワクチン抗原はgpl及びgpllを含み;並びにジカワクチン抗原は、前膜、エンベロープ(E)、Eタンパク質のドメインIII及び非構造タンパク質1-5を含む。
【0160】
追加の特定の例示的ウイルス抗原配列は以下を含む。
【0161】
【表3】
ウイルス抗原の追加の例はFundamental Virology、Second Edition、編者.Fields、B.N.及びKnipe、D.M.(Raven Press、New York、1991年)を参照されたい。
【0162】
特定の実施形態では、ワクチン抗原は細菌感染に関連する細胞により発現される。例示的な細菌は、炭疽菌;グラム陰性桿菌、クラミジア、ジフテリア、ヘモフィリスインフルエンザ、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(mycobacterium tuberculosis)、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、ストレプトコッカス及び破傷風を含む。
【0163】
細菌ワクチン抗原の特定の例として、炭疽菌ワクチン抗原は、炭疽菌防御抗原を含み;グラム陰性桿菌ワクチン抗原はリポ多糖を含み;ヘモフィリスインフルエンザワクチン抗原は莢膜多糖を含み;ジフテリアワクチン抗原はジフテリア毒素を含み;マイコバクテリウム・ツベルクローシスワクチン抗原はミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDaメジャー分泌タンパク質及び抗原85Aを含み;百日咳毒素ワクチン抗原は赤血球凝集素、パータクチン、FIM2、FIM3及びアデニル酸シクラーゼを含み;肺炎球菌ワクチン抗原はニューモリシン及び肺炎球菌莢膜多糖を含み;リケッチアワクチン抗原はrompAを含み;ストレプトコッカスワクチン抗原はMタンパク質を含み;並びに破傷風ワクチン抗原は破傷風毒素を含む。
【0164】
特定の実施形態では、ワクチン抗原は多剤耐性「スーパーバグス」に由来する。スーパーバグスの例は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)及びエンテロバクテリアセエ科(Enterobacteriacea)(エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)を含む)を含む。
【0165】
ワクチン抗原は、免疫系を刺激してがんと闘うために、がん細胞により特異的に又は優先的に発現されるタンパク質も含むことが可能である。がん抗原の例は、A33;BAGE;B細胞成熟抗原(BCMA);Bcl-2;β-カテニン;CA19-9;CA125;カルボキシ-アンヒドラーゼ-IX(CAIX);CD5;CD19;CD20;CD21;CD22;CD24;CD33;CD37;CD45;CD123;CD133;CEA;c-Met;CS-1;サイクリンB1;DAGE;EBNA;EGFR;エフリンB2;エストロゲン受容体;FAP;フェリチン;葉酸結合タンパク質;GAGE;G250;GD-2;GM2;gp75、gp100(Pmel 17);HER-2/neu;HPV E6;HPV E7;Ki-67;L1-CAM;LRP;MAGE;MART;メソセリン;MUC;MUM-1-B;myc;NYESO-1;p53、PRAME;プロゲステロン受容体;PSA;PSCA;PSMA;ras;RORl;サバイビン;SV40 T;テネイシン;TSTAチロシナーゼ;VEGF;及びWT1を含む。
【0166】
さらに詳細な例として、がんワクチン抗原は以下のものを含む又はこれに由来することが可能である。
【0167】
【表4】
【0168】
VIII.ワクチンアジュバント。ワクチンはワクチンアジュバントと一緒に投与される場合が多い。用語「アジュバント」とは、抗原に対する免疫応答を増強し、本明細書ではこの用語の慣用で使用される材料をいう。正確な作用様式がすべてのアジュバントについて理解されているわけではないが、そのように理解されていないからといって多種多様なワクチンのためのその臨床使用の妨げとはならない。
【0169】
例示的なワクチンアジュバントは、任意の種類のToll様受容体リガンド若しくはこの組合せ(例えば、CpG、Cpg-28(TLR9アゴニスト)、ポリリボイノシンポリリボシチジル酸(ポリ(I:C))、α-ガラクトセラミド、MPLA、モトリモド(VTX-2337、VentiRxにより開発された新規のTLR8アゴニスト)、IMO-2055(EMD1201081)、TMX-101(イミキモド)、MGN1703(TLR9アゴニスト)、G100(TLR4アゴニストグルコピラノシル脂質Aの安定化エマルジョン)、エントリモド(CBLB502としても公知のサルモネラフラジェリンの誘導体)、ヒルトノール(Hiltonol)(TLR3アゴニスト)、及びイミキモド)、及び/又は17-DMAG(17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)のような熱ショックタンパク質90(Hsp90)の阻害剤を含む。
【0170】
特定の実施形態では、スクアレンベースのアジュバントが使用可能である。スクアレンはトリテルペンとして公知の分子の群の一部であり、トリテルペンはすべて30炭素分子を有する炭化水素である。スクアレンは、米糠、小麦麦芽、アマランサス種子及びオリーブのようなある特定の植物源由来、並びにサメ肝油のような動物源由来が可能である。特定の実施形態では、スクアレンベースのアジュバントはMF59(登録商標)(Novartis、Basel、Switzerland)である。MF59(登録商標)に類似するが臨床前研究使用のために設計されているスクアレンベースのアジュバントの例は、Addavax(商標)(インビボGen、San Diego、CA)である。MF59はインフルエンザワクチンでの使用がFDA承認されており、研究によれば、MF59は妊娠中の使用は安全であることが示されている(Tsai T、ら、Vaccine.2010年.17:28(7):1877~80頁;Heikkinen T、ら、Am J Obstet Gynecol.2012年.207(3):177頁)。特定の実施形態では、スクアレンベースのアジュバントは、0.1%~20%(v/v)スクアレンオイルを含むことが可能である。特定の実施形態では、スクアレンベースのアジュバントは、5%(v/v)スクアレンオイルを含むことが可能である。
【0171】
特定の実施形態では、アジュバントミョウバンが使用可能である。ミョウバンとは、2つの硫酸基、一価カチオン及びアルミニウム又はクロムのような三価金属を含有する塩のファミリーである。ミョウバンはFDA承認アジュバントである。特定の実施形態では、ワクチンはミョウバンを1~1000ug/用量又は0.1mg~10mg/用量の量で含むことが可能である。特定の実施形態では、アジュバントVaxfectin(登録商標)(Vical、Inc.、San Diego、CA)が使用可能である。Vaxfectin(登録商標)はカチオン性脂質ベースのアジュバントである。
【0172】
特定の実施形態では、1つ以上のSTINGアゴニストがワクチンアジュバントとして使用される。「STING」は「インターフェロン遺伝子の刺激物質」の略語であり、この物質は「小胞体インターフェロン刺激物質(ERIS)」、「IRF3活性化の媒介物(MITA)」、「MPYS」又は「膜貫通タンパク質173(TM173)」としても公知である。STINGは膜貫通受容体タンパク質であり、ヒトでは遺伝子TMEM173によりコードされている。STINGの活性化により、IRF3(インターフェロン調節因子3)経路を介して1型インターフェロン(例えば、IFN-a及びIFN-β)が産生され、NF-κB経路及び/又はNLRP3インフラマソームを介して炎症性サイトカイン(例えば、TNF-a及びIL-1β)が産生される。
【0173】
ヒト及びマウスSTINGは天然には、侵入細菌又は古細菌により放出される外来性(3’、3)環状ジヌクレオチド(c-diGMP、c-diAMP及びc-GAMP)の結合を介して;及び外来性二重鎖DNA(例えば、侵入細菌、ウイルス又は原虫により放出される外来性二重鎖DNA)の存在下で酵素環状GMP-AMPシンターゼ(cGAS;C6orfl50又はMB21D1としても公知である)により産生される内在性環状ジヌクレオチドである(2’、3’)環状グアノシンモノホスフェート-アデノシンモノホスフェート((2’、3’)c-GAMP)の結合を介しての2つの方法で活性化される。
【0174】
用語「STINGアゴニスト」とは、インビトロ又はインビボでSTIG受容体を活性化する物質のことである。化合物は、(i)STINGを含有するヒト又は動物細胞においてインビトロで1型インターフェロンを誘導する;及び(ii)STINGを含有しない又は機能性STINGを含有しないヒト又は動物細胞においてインビトロで1型インターフェロンを誘導しない場合は、STINGアゴニストと見なすことが可能である。リガンドがSTINGアゴニストかどうかを確かめる典型的な試験は、野生型ヒト又は動物細胞系において及びSTINGコード遺伝子が少数の塩基又はもっと長い欠失により遺伝的に不活化されている対応する細胞系(例えば、ホモ接合性STINGノックアウト細胞系)においてリガンドをインキュベートすることである。STINGのアゴニストは野生型細胞では1型インターフェロンを誘導するが、STINGが不活化されている細胞では1型インターフェロンを誘導しない。
【0175】
特定の実施形態では、STINGアゴニストは、2つのヌクレオチド間に1つ若しくは2つのリン酸ジエステル結合及び/又は1つ若しくは2つのホスホロチオエートジエステル結合のある環状分子を含む。これは、(3’、5’)-(3’、5’)ヌクレオチド結合((3’、3’)と略記される);(3’、5’)-(2’、5’)ヌクレオチド結合((3’、2’)と略記される);(2’、5’)-(3’、5’)ヌクレオチド結合((2’、3’)と略記される);及び(2’、5’)-(2’、5’)ヌクレオチド結合((2’、2’)と略記される)を含む。「ヌクレオチド」とは糖部分の5’、3’又は2’位でリン酸基に連結している任意のヌクレオシドのことである。
【0176】
特定の実施形態では、STINGアゴニストは式:
【0177】
【化19】
の化合物を含む。
【0178】
特定の実施形態では、R1及びR2は、以下に示すように、独立して9-プリン、9-アデニン、9-グアニン、9-ヒポキサンチン、9-キサチンチン、9-尿酸、又は9-イソグアニンでもよい。
【0179】
【化20】
【0180】
特定の実施形態では、STINGアゴニストは、ジチオ-(RP、RP)-[環状[A(2’、5’)pA(3’、5’)p]](2’-5’、3’-5’混合リン酸ジエステル結合(ML)RR-S2 c-ジ-AMP又はML RR-S2 CDAとしても公知である)、ML RR-S2-c-ジ-GMP(ML-CDG)、ML RR-S2 cGAMP又はこの任意の混合物を含むことが可能である。
【0181】
c-ジGMPの構造は:
【0182】
【化21】
を含む。
【0183】
c-ジAMPの構造は:
【0184】
【化22】
を含む。
【0185】
c-GAMPの構造は:
【0186】
【化23】
を含む。
【0187】
STINGアゴニストの追加の特定の例は、c-AIMP;(3’、2’)c-AIMP;(2’、2’)c-AIMP;(2’、3’)c-AIMP;c-AIMP(S);c-(dAMP-dIMP);c-(dAMP-2’FdIMP);c-(2’FdAMP-2’FdIMP);(2’、3’)c-(AMP-2’FdIMP);c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)];c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)](POM)2;及びDMXAAを含む。STINGアゴニストの追加の例は、国際公開第2016/145102号に記載されている。
【0188】
他の免疫刺激物質もワクチンアジュバントとして使用可能である。追加の例示的小分子免疫刺激物質は、TGF-β阻害剤、SHP阻害剤、STAT-3阻害剤及び/又はSTAT-5阻害剤を含む。免疫抑制シグナル又は発がん過程(krasのような)を下方調節することができる例示的なsiRNAを使用可能であり、免疫刺激性タンパク質をコードするいかなるプラスミドDNA(ミニサークルDNAのような)も使用可能である。
【0189】
例示的なサイトカインは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFN-α、IFN-β、IFN-γ又はGM-CSFを含む。特定の実施形態では、免疫刺激物質は、サイトカイン及び/又はIFN-α、IFN-β若しくはIFN-γ又はGM-CSFと組み合わせたIL-2、IL-12若しくはIL-15のようなサイトカインの組合せ、又はこの任意の効果的な組合せ、又はサイトカインの他の任意の効果的な組合せでもよい。上で同定されたサイトカインはT1応答を刺激するが、IL-4、IL-10、IL-11、又はこの任意の効果的な組合せのようなT2応答を刺激するサイトカインを使用してもよい。その上、T1応答を刺激するサイトカインをT2応答を刺激するサイトカインと共に組み合わせたものを使用してもよい。
【0190】
先行する段落で言及した分子由来の免疫刺激物質も使用可能である。例えば、RLIはIL-15単独の50倍の効力を示すIL-15-IL-15受容体-α融合タンパク質である。IL-15は抗腫瘍免疫応答に複数の点で特に影響を与える。IL-15は単球を刺激性抗原提示細胞に分化させ;腫瘍反応性T細胞のエフェクター機能及び増殖を促進し;NK細胞を動員し活性化することが可能である。
【0191】
IX.組成物。本明細書で開示されるポリヌクレオチド、NP、ワクチン抗原及び/又はワクチンアジュバント(個別に、合わせて、又は「活性成分」と呼ばれるグループ化された組合せで)は、対象への投与のために処方される組成物の一部として提供することが可能である。
【0192】
特定の実施形態では、活性成分は、例えば、少なくとも0.1%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも1%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも10%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも20%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも30%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも40%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも50%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも60%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも70%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも80%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも90%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);少なくとも95%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可);又は少なくとも99%w/v若しくはw/wの活性成分(複数可)を含むことが可能な組成物の一部として提供される。
【0193】
細胞がエクスビボで遺伝的に改変されている場合、組成物は10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、1010よりも多い細胞、又は1011よりも多い細胞を含むことが可能である。特定の実施形態では、組成物は、対象に投与される場合、キログラムあたり100万~2000万の遺伝的に改変された細胞を提供するように目盛定めすることが可能である。
【0194】
本明細書で開示される組成物は、例えば、注射、吸入、輸注、灌流、洗浄又は摂取による投与のために処方することが可能である。組成物は、例えば、静脈内、皮内、動脈内、結節内、リンパ内、腹腔内、病巣内、前立腺内、膣内、直腸内、局所的、クモ膜下腔内、腫瘍内、筋肉内、小胞内、経口及び/又は皮下投与のために、さらに詳しくは、静脈内、皮内、動脈内、結節内、リンパ内、腹腔内、病巣内、前立腺内、膣内、直腸内、局所的、クモ膜下腔内、腫瘍内、筋肉内、小胞内、経口及び/又は皮下注射によりさらに処方することが可能である。
【0195】
注射では、組成物は、ハンクス液、リンガー液又は生理食塩水を含む緩衝液のような水溶液として処方することが可能である。水溶液は、懸濁、安定化及び/又は分散剤のような調合剤を含有することが可能である。代わりに、製剤は、使用前の適切な媒体、例えば、発熱性物質除去蒸留水での構成のために凍結乾燥及び/又は粉末形態が可能である。
【0196】
経口投与では、組成物は、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液及び同類のものとして処方することが可能である。例えば、粉末、カプセル及び錠剤のような経口固体製剤では、適切な賦形剤は、結合剤(トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン)、糖、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール及びソルビトールのような充填剤;リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム;トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース標品;造粒剤;並びに結合剤を含む。必要に応じて、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、架橋ポリビニルピロリドン、寒天若しくはアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムのようなこの塩のような崩壊剤を添加することが可能である。必要に応じて、固体剤形を、標準技法を使用して糖衣をかける又は腸溶性にすることが可能である。ペパーミント、冬緑油、チェリーフレーバリング、オレンジフレーバリング、等のような香味剤も使用可能である。
【0197】
吸入による投与では、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切な気体を使用して、加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレーとして処方することが可能である。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するバルブを提供することにより投薬単位を決定してもよい。治療薬とラクトース又はデンプンのような適切な粉末基剤の粉末混合物を含有する、吸入器又は注入器での使用のためのゼラチンのカプセル及びカートリッジを処方してもよい。
【0198】
本明細書で開示されるいかなる組成製剤も、研究のためであれ、予防及び/又は治療治療のためであれ、投与の利益に勝る著しく有害な、アレルギー性の又は他の都合の悪い反応を起こさない担体を含む他のいかなる薬学的に許容される担体でも有利に含むことが可能である。例示的な薬学的に許容される担体及び製剤はRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990年に開示されている。さらに、製剤は、生物学的標準品の米国FDA事務所及び/又は他の関連する外国規制当局が要求する無菌性、発熱性、総括安全及び純度標準を満たすように調製することが可能である。
【0199】
例示的な一般に使用される薬学的に許容される担体は、あるとあらゆる増量剤若しくは充填剤、溶媒若しくは共溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、保存剤、等張剤、吸収遅延剤、塩、安定化剤、緩衝剤、キレート剤(例えば、EDTA)、ゲル、結合剤、崩壊剤及び/又は滑沢剤を含む。
【0200】
例示的な緩衝剤は、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液及び/又はトリメチルアミン塩を含む。
【0201】
例示的な保存剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、ベンザルコニウムハライド、塩化ヘキサメトニウム、メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール及び3-ペンタノールを含む。
【0202】
例示的な等張剤は、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール又はマンニトールのような三価又はそれよりも高い糖アルコールを含む多価糖アルコールを含む。
【0203】
例示的な安定化剤は、有機糖、多価糖アルコール、ポリエチレングリコール;含硫黄還元剤、アミノ酸、低分子量ポリペプチド、タンパク質、免疫グロブリン、親水性ポリマー又は多糖を含む。
【0204】
組成物はデポ標品としても処方することが可能である。デポ標品は、ポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容性油中の乳剤として)又はイオン交換樹脂を用いて、又はやや難溶性誘導体として、例えば、やや難溶性塩として処方することが可能である。
【0205】
さらに、組成物は、少なくとも1つの活性成分を含有する固体ポリマーの半透明マトリックスを利用して徐放性システムとして処方することが可能である。種々の徐放性材料が確立されており、当業者には周知である。徐放性システムは、その化学的性質に応じて、数週間から100日以上までの間投与に続いて活性成分を放出することができる。
【0206】
X.キット。活性成分の組合せはキットとしても提供することが可能である。キットは、本明細書に記載され個別に又は種々の組合せで処方される1つ以上のPN、NP、ワクチン抗原及び/又はワクチンアジュバントを含む容器を含むことが可能である。一般的に、キットは、本明細書の別の場所に記載されている病原体又はがん抗原のような特定の感染病原体又はがん抗原に対するワクチン効力を増強するのに特有のPN、NP、ワクチン抗原及び/又はワクチンアジュバントを含む。
【0207】
キットは、医薬品又は生物由来物質の製造、使用又は販売を規制する政府機関により規定される形態で通知書も含むことが可能であり、この通知書はヒト投与のための製造、使用又は販売についての政府機関による承認を反映している。通知書は、提供されている活性成分を対象に投与することが可能であると表明してもよい。キットは、さらにキットを使用するための説明書、例えば、投与のためのPN、NP、ワクチン抗原及び/又はワクチンアジュバントの準備;関連廃棄物の適正処理;及び同類のものに関する説明書を含むことが可能である。説明書はキット内に提供される印刷された説明書の形態が可能であり、又は説明書はキット自体の一部に印刷することが可能である。説明書は、シート、パンフレット、小冊子、CD-Rom若しくはコンピュータ読取り可能デバイスの形態でもよく、又はウェブサイトのような遠隔地で説明書への指示を提供することが可能である。特定の実施形態では、キットは、注射器、アンプル、管類、マスク、注射キャップ、スポンジ、無菌アドヘシブストリップ、クロラプレップ、手袋及び同類のもののようなキットを効果的に使用するために必要な必須の医療用品の一部又はすべてを含むことも可能である。本明細書に記載されるキットのいずれかの内容物に変化を加えることが可能である。キットの説明書は、本明細書に記載される新しい臨床用途を実現するための活性成分の使用を指示する。
【0208】
XI.使用方法。組成物は、形成された後、対象においていくつかの適用に利用される。対象は、ヒト対象、獣医動物(イヌ、ネコ、爬虫類、鳥、等及び動物園にいる動物も含む)、家畜(ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、等)及び研究動物(サル、ラット、マウス、魚、等)を含む。「治療を必要とする対象」は、状態(例えば、感染症、がん)を抱えた対象のような治療を必要とする対象、並びに、状態(例えば、感染症、がん)を有する若しくは発症する傾向がある対象、又は病原体への曝露若しくはがん再発について高いリスクのグループにいる対象のような状態を予防するべき対象を含む。
【0209】
当業者であれば、免疫系はワクチン接種に続いて自然免疫応答及び適応免疫応答を生じることを認識している。自然免疫応答は一般に、実質的に抗原特異性ではなく及び/又は免疫記憶を生じないと特徴付けることが可能である。適応免疫応答は、実質的に抗原特異性であり、時間をかけて成熟する(例えば、抗原に対する親和性及び/又は結合活性を増加させる)と特徴付けることが可能であり、免疫記憶を生じることが可能である。自然と適応免疫の間のこれらの及び他の機能的な違いは識別することが可能であるが、当業者であれば、自然及び適応免疫系は統合することが可能であり、したがって、歩調を合わせることが可能であることは認識している。
【0210】
特定の実施形態では、適応免疫応答は、ワクチン抗原への「無感作」対象の最初の曝露により起こる免疫応答を指す「一次免疫応答」が可能である。例えば、一次抗体応答の場合、例えば、組成物、用量及び対象に応じて3~14日の遅延又は潜伏期の後、ワクチン抗原に対する抗体を産生することが可能である。一般に、IgM産生は数日間続き、続いてIgGが産生され、IgM応答は減少することがある。抗体産生は数週間後に終わるが、記憶細胞を生み出すことが可能である。一次免疫応答はCD4+及びCD8+T細胞活性化及び増殖の引き金も引く。特定の実施形態では、適応免疫応答は、本明細書で開示されるワクチン抗原への対象の2度目の及びそれに続く曝露により起こる免疫応答を指す「二次免疫応答」、「既往応答」、又は「ブースター応答」が可能である。一般に、二次免疫応答では、記憶細胞はワクチン抗原に応答し、したがって、二次免疫応答は定性的に及び/又は定量的に一次免疫応答とは異なることが可能である。例えば、一次免疫応答と比べて、二次免疫応答の遅延期はもっと短くなることがあり、ピーク応答はもっと高くなることがあり、もっと高い親和性抗体及びTCRを産生することがあり、及び/又は応答はもっと長い期間持続することがある。特定の実施形態では、「免疫応答」は、記憶T細胞(例えば、TCM及び/又はTEM)の増殖、持続、及び/又は活性により測定可能である。
【0211】
特定の実施形態では、ワクチン接種の効力を改善することにより、臨床的に関連するタイムウィンドウ内で治療有効量の本明細書で開示される組成物の投与後以下のうちの少なくとも1つが生じる:CD4+及び/若しくはCD8+T細胞の活性化及び/若しくは増殖が増加する、記憶T細胞(例えば、TCM及び/又はTEM)の産生及び保持が増加する、二次免疫応答前の遅延期が短縮する、二次免疫応答中のピーク応答がもっと高くなる、並びに/又は二次免疫応答の持続性が大きくなる。
【0212】
特定の実施形態では、ワクチン接種の効力を改善することにより、臨床的に関連するタイムウィンドウ内で治療有効量の本明細書で開示される組成物の投与後以下のうち:予防処置が改善される及び/又は治療処置が改善される、の少なくとも1つが生じる。
【0213】
予防処置は、潜在的な障害若しくは疾患の発生若しくは重症度を予防する若しくは低減する又は潜在的な障害若しくは疾患の発症を減速する若しくは少なくする。予防ワクチン処置は、感染性病原体又はがんのタイプに対して対象の免疫を増加する。したがって、特定の実施形態では、ワクチンは、例えば、免疫学的に無感作である(例えば、感染性病原体又はがんに対し以前曝露も経験もない)対象に予防的に投与してもよい。
【0214】
組成物は、状態(例えば、HIV、マラリア、ヘルペス、クラミジア、EBV、肺炎球菌及び/若しくは肝炎により引き起こされる感染症又はがん)を発症するリスクのある又はそのような感染症をもたらす病原体に暴露されたことがある対象において、感染症又は関連する疾患の発症を予防する、低減する又は遅らせるために予防的に投与することが可能である。例えば、組成物は、HIV、マラリア、ヘルペス、クラミジア、EBV、肺炎球菌及び/若しくは肝炎に暴露された可能性のある対象に、又はHIV、マラリア、ヘルペス、クラミジア、EBV、肺炎球菌及び/若しくは肝炎への曝露又はがん再発の高リスクがある対象に投与することが可能である。
【0215】
治療処置は、既存の障害又は疾患を低減する、除去する、又はこの進行を減速することを含む。特定の実施形態では、ワクチンは感染性病原体又はがんに暴露されたことのある対象に治療的に投与してもよい。したがって、ワクチンを使用すれば、HIV感染及びAIDSという文脈でのT細胞数の減少のような感染性病原体に伴う症状を寛解することが可能になる。
【0216】
特定の実施形態では、ワクチン接種の効力を改善することにより改善された抗感染症効果が提供される。抗感染症効果は、感染する細胞の数を低減し、細胞が感染するまでの時間を延ばし、より高い感染レベルになるのを予防し、感染細胞の数を減らし、感染組織の体積を減らし、平均余命を増やし、免疫クリアランスに対する感染細胞の感受性を誘導し、感染症に伴う疼痛を低減し、及び/又は治療されている感染症に伴う症状を予防する、低減する、遅らせる、若しくは除去することが可能である。
【0217】
特定の実施形態では、ワクチン接種の効力を改善することにより改善された抗ガン効果が提供される。抗ガン効果は、がん細胞の発生の減少、がん細胞の数の減少、転移の発生の減少、転移の数の減少、腫瘍量の減少、平均余命の増加、免疫クリアランスに対するがん細胞の感受性の誘導、がん細胞増殖の阻害、腫瘍成長の阻害、対象寿命の延長、がんに伴う疼痛の低減及び/又は治療に続くがんのぶり返し若しくは再発の低減若しくは遅延を含むことが可能である。
【0218】
特定の対象に投与される活性成分の実際の用量は、標的、体重、感染症又はがんの存在及び/又は重症度、感染症又はがんの段階、以前の又は同時的な治療介入、対象の特発性、並びに投与経路を含む身体的及び生理的要因のようなパラメータを考慮に入れて、医師、獣医師、又は研究者が決定することが可能である。
【0219】
投与では、治療有効量(本明細書では用量とも呼ばれる)は、最初にインビトロアッセイ及び/又は動物モデル研究の結果に基づいて見積もることが可能である。
【0220】
組成物の例示的な用量は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240又は250μg/kg体重又はmg/kg体重を含むが、これよりも高い及び/又は低い用量を使用することが可能である。時間の関数としての投与することが可能な用量の数は、1、2、3、4、5又は6週間にわたり1から2、3、4又は5用量が可能であるが、少なくとも一部対象の免疫状態に応じて増やす又は減らすことが可能である。
【0221】
遺伝的に改変された細胞が組成物の一部として投与される場合、投与する例示的な治療有効量は、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、10よりも多い細胞、1010よりも多い細胞、又は1011よりも多い細胞を含むことが可能である。特定の実施形態では、治療有効量は、キログラムあたり100万~2000万の細胞を含む。
【0222】
特定の実施形態では、組成物は最初に投与され、その後、さらなる投与により維持されることが可能である。例えば、組成物は筋肉内注射により投与することが可能である。次に、対象のレベルは経口剤形により維持されるが、患者の状態に応じて、他の投与形態を使用してもよい。ワクチン及びNP組成物の例では、組成物は単一用量として投与してもよく、又は組成物はセットのブースター用量を組み込んでもよい。例えば、ブースター用量は、感染性病原体の複数の分岐群に対する保護を提供するためにワクチン抗原及びTCRのバリアントを含んでいてもよい。
【0223】
特定の実施形態では、1つ以上の組成物中の投与のための活性成分は、(i)PN及び/又はNP内のPN、(ii)ワクチン抗原並びに(iii)ワクチンアジュバントが可能である。特定の実施形態では、組み合わせて含まれる場合、組合せ中の置換成分は、1対1対1;1対2対1;1対3対1;1対4対1;1対5対1;1対10対1;1対2対2;1対2対3;1対3対4;1対4対2;1対5対3;9対10対20;5対2対1;5対3対11;5対4対1;5対5対1;5対100対1;5対20対2;5対2対3;5対14対200;5対10対20のような例示的な比;又は意図している効果に到達するための組合せ中の置換成分の数及び同一性に応じて、追加の有利な比で提供することが可能である。当業者であれば理解するように、組合せ中の置換成分は、同じ組成物内で又は異なる組成物内で提供することが可能である。
【0224】
治療有効量は、治療レジメンの過程で(例えば、QID、TID、BID、毎日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、毎月1回、2か月に1回、3か月に1回、4か月に1回、5か月に1回、6か月に1回、7か月に1回、8か月に1回、9か月に1回、10か月に1回、11か月に1回、又は毎年1回)単一又は複数用量を投与することにより達成することが可能である。
【0225】
特定の実施形態では、PN(種々の開示された形態のいずれかで(例えば、裸で又はNP内で))は、ワクチン抗原の1か月以内に、ワクチン抗原の3週間以内に、ワクチン抗原の2週間以内に、ワクチン抗原の1週間以内に、ワクチン抗原の7日以内に、ワクチン抗原の6日以内に、ワクチン抗原の5日以内に、ワクチン抗原の4日以内に、ワクチン抗原の3日以内に、ワクチン抗原の2日以内に、ワクチン抗原の24時間以内に、ワクチン抗原の22時間以内に、ワクチン抗原の20時間以内に、ワクチン抗原の18時間以内に、ワクチン抗原の16時間以内に、ワクチン抗原の14時間以内に、ワクチン抗原の12時間以内に、ワクチン抗原の10時間以内に、ワクチン抗原の8時間以内に、ワクチン抗原の6時間以内に、ワクチン抗原の4時間以内に、ワクチン抗原の2時間以内に、又はワクチン抗原の1時間以内に投与される。「以内に」はワクチン投与の前又は後を含み、これらの時間のそれぞれが臨床的に関連するタイムウィンドウを提供することが可能である。
【0226】
特定の実施形態では、増強されたワクチン効力は対象の状態の発症を減らす。状態は、血液検査、生検組織の評価及び状態の症状のような臨床エンドポイントを通じて熱、悪寒、発疹、関節痛、悪心、嘔吐、赤目、がん再発、等として評価することが可能である。
【0227】
他の方法で示されていなければ、本開示の実行は、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学及び組換えDNAの従来の技法を用いることが可能である。これらの方法は以下の出版物に記載されている。例えば、Sambrook、ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、(1989);F.M.Ausubel、ら、編、Current Protocols in Molecular Biology、(1987);the series Methods IN Enzymology(Academic Press、Inc.);M.MacPherson、ら、PCR:A Practical Approach、IRL Press at Oxford University Press(1991);MacPhersonら、編、PCR 2:Practical Approach、(1995);Harlow and Lane、編.Antibodies、A Laboratory Manual、(1988);及びR.I.Freshney、編.Animal Cell Culture(1987)を参照されたい。
【0228】
公開されているデータベースが提供する配列情報を使用すれば、本明細書に開示されるシステム及び方法を用いて使用することが可能な追加の遺伝子及びタンパク質配列を同定することが可能である。
【0229】
本明細書に開示される及び参照される配列のバリアントも含まれる。タンパク質のバリアントは、1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するタンパク質を含むことが可能である。本明細書で使用されるように、「保存的置換」は、以下の保存的置換群:群1:アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr);群2:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu);群3:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln);群4:アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His);群5:イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、バリン(Val);及び群6:フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)の1つに見出される置換を含む。
【0230】
さらに、アミノ酸は、類似する機能又は化学構造若しくは組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、硫黄含有)により保存的置換群にグループ分けすることが可能である。例えば、脂肪族グループは、置換を目的に、Gly、Ala、Val、Leu、及びIleを含むことができる。互いに保存的置換と見なされるアミノ酸を含有する他の群は:硫黄含有:Met及びシステイン(Cys);酸性:Asp、Glu、Asn、及びGln;小脂肪族、非極性又はわずかに極性残基:Ala、Ser、Thr、Pro、及びGly;極性、負電荷残基及びそのアミド:Asp、Asn、Glu、及びGln;極性、正電荷残基:His、Arg、及びLys;大きな脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、及びCys;並びに大きな芳香族残基:Phe、Tyr、及びTrpを含む。追加の情報はCreighton(1984)Proteins、W.H.Freeman and Companyに見出せる。
【0231】
他の場所で示したように、遺伝子配列のバリアントは、コードされた産物の機能に統計的に有意な程度に影響を与えないコドン最適化バリアント、配列多形性、スプライスバリアント及び/又は突然変異を含むことが可能である。
【0232】
本明細書に開示されるタンパク質、核酸及び遺伝子配列のバリアントは、本明細書に開示されるタンパク質、核酸又は遺伝子配列に少なくとも70%配列同一性、80%配列同一性、85%配列同一性、90%配列同一性、95%配列同一性、96%配列同一性、97%配列同一性、98%配列同一性、又は99%配列同一性を有する配列も含む。
【0233】
「%配列同一性」とは、配列を比較することにより決定される場合、2つ以上の配列の間の関係のことである。当技術分野では、「同一性」とは、一連のそのような配列間の適合により決定されるタンパク質、核酸、又は遺伝子配列の間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」(「類似性」と呼ばれることが多い)は、Computational Molecular Biology(Lesk、A.M.、編)Oxford University Press、NY(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith、D.W.、編)Academic Press、NY(1994);Computer Analysis of Sequence Data、Part I(Griffin、A.M.、and Griffin、H.G.、編)Humana Press、NJ(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(Von Heijne、G.、編)Academic Press(1987);及びSequence Analysis Primer(Gribskov、M.and Devereux、J.、編)Oxford University Press、NY(1992)に記載される方法を含む、公知の方法により容易に計算することが可能である。同一性を決定するのに好ましい方法は、試験される配列間で最良の適合を与えるように設計される。同一性及び類似性を決定するための方法は一般に入手可能なコンピュータプログラムに成文化されている。配列アライメント及びパーセント同一性計算は、LASERGENEバイオインフォマティックスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR、Inc.、Madison、Wisconsin)を使用して実施してもよい。配列の複数のアライメントも、デフォルトパラメータ(ギャップペナルティー=10、ギャップ長ペナルティー=10)を用いてアライメントのClustal法(Higgins and Sharp CABIOS、5、151~153頁(1989))を使用して実施することが可能である。関連するプログラムは、プログラムのGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、Wisconsin);BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul、ら、J.Mol.Biol.215:403~410頁(1990);DNASTAR(DNASTAR、Inc.、Madison、Wisconsin);及びスミスウォーターマンアルゴリズムを組み込んでいるFASTAプログラム(Pearson、Comput.Methods Genome Res.、[Proc.Int.Symp.](1994)、Meeting Date 1992年、111~20頁.編者:Suhai、Sandor.Publisher:Plenum、New York、N.Y.)も含む。本開示の文脈内では、配列分析ソフトウェアが分析のために使用される場合、分析の結果は参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づいていることは理解される。本明細書で使用されるように、「デフォルト値」は任意のセットの値又はパラメータを意味し、これらは最初に初期化されるときにソフトウェアと一緒に本来ロードされる。
【0234】
例示的な実施形態及び下の実施例は、本開示の特定の実施形態を実証するために含まれる。当業者であれば、本開示に照らせば、本明細書に開示される特定の実施形態には多くの変化を加えることが可能であり、それでも本開示の精神と範囲から逸脱することなく同様の又は類似の結果が得られることを認識するはずである。
【0235】
例示的な実施形態
1.T細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチドの治療有効量を対象に投与し、コードされたTCRは投与の臨床的に関連するタイムウィンドウ内に対象に投与されたワクチン抗原に特異的に結合し、それによって対象をワクチン接種することを含む、対象をワクチン接種する方法。
2.投与が、ワクチン抗原単独の投与と比べた場合、ワクチン接種の効力を改善する、実施形態1の方法。
3.年齢又は免疫状態に起因して、対象がワクチン効力を改善される必要がある、実施形態1又は2の方法。
4.免疫状態が低T細胞数を含む、実施形態3の方法。
5.ワクチン接種が、AIDS、マラリア、ヘルペス、クラミジア、エプスタインバーウイルス、肺炎球菌又はB型肝炎の治療を提供する、実施形態1~4のいずれかの方法。
6.TCRがクラスI制限である、実施形態1~5のいずれかの方法。
7.TCRがクラスII制限である、実施形態1~5のいずれかの方法。
8.TCRがクラスI制限であり、改善されたワクチン効力がT細胞傷害性応答を改善するCD8+Tヘルパー細胞活性に起因する、実施形態6の方法。
9.TCRがクラスII制限であり、改善されたワクチン効力がB細胞抗体応答を改善するCD4+Tヘルパー細胞活性に起因する、実施形態7の方法。
10.TCRが、α鎖及びβ鎖の可変領域を含む、実施形態1~9のいずれかの方法。
11.TCRが、α鎖及びβ鎖の定常領域を含む、実施形態1~10のいずれかの方法。
12.TCRが、膜貫通ドメイン及び細胞質側テイルを含む、実施形態1~11のいずれかの方法。
13.TCRが、配列番号1、4、18、21、23、25、27、29~32、34及び36から選択されるα鎖を含む、実施形態1~12のいずれかの方法。
14.TCRが、配列番号2、3、19、22、24、26、28、33、35及び37から選択されるβ鎖を含む、実施形態1~13のいずれかの方法。
15.TCRが、配列番号5~12、15、16及び39から選択される配列を含む、実施形態1~12のいずれかの方法。
16.ワクチン抗原が、ウイルス抗原を含む、実施形態1~15のいずれかの方法。
17.ウイルス抗原が、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニアウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス又はトガウイルスに由来する、実施形態16の方法。
18.ウイルス抗原が、サイトメガロウイルス、風邪ウイルス、エプスタインバーウイルス、フルウイルス、A型、B型、又はC型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ウエストナイルウイルス又はジカウイルスにより発現されるペプチドを含む、実施形態16又は17の方法。
19.ウイルス抗原が、エンベロープ糖タンパク質B及び/若しくはCMV pp65から選択されるサイトメガロウイルス抗原;EBV EBNAI、EBV P18及び/若しくはEBV p23から選択されるエプスタインバー抗原;B型肝炎ウイルスのS、M及び/若しくはLタンパク質又はプレS抗原から選択される肝炎ワクチン抗原;糖タンパク質Dから選択される単純ヘルペスワクチン抗原;HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36、Nefタンパク質及び/若しくはHIV逆転写酵素から選択されるヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチン抗原;L1タンパク質から選択されるヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス抗原;赤血球凝集素及びノイラミニダーゼから選択されるインフルエンザワクチン抗原;タンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1若しくはNS1-NS2Aから選択される日本脳炎ワクチン抗原;サーカムスポロゾイト(CSP)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ若しくはフルクトース二リン酸アルドラーゼから選択されるマラリアワクチン抗原;麻疹ウイルス融合タンパク質から選択される麻疹ワクチン抗原;狂犬病糖タンパク質若しくは狂犬病核タンパク質から選択される狂犬病ワクチン抗原;RSV融合タンパク質若しくはM2タンパク質から選択される呼吸器合胞体ワクチン抗原;VP7scから選択されるロタウイルスワクチン抗原;タンパク質E1若しくはE2から選択される風疹ワクチン抗原;gpl若しくはgpllから選択される水痘帯状疱疹ワクチン抗原;又は前膜、エンベロープ(E)、Eタンパク質のドメインIII若しくは非構造タンパク質1、2、3、4若しくは5から選択されるジカワクチン抗原を含む、実施形態16~18のいずれかの方法。
20.ウイルス抗原が、Nef(66~97)、Nef(116~145)、Gag p17(17~35)、Gag p17~p24(253~284)、Pol325~355(RT 158~188)、CSPセントラルリピート領域又はEタンパク質ドメインIIIから選択される、実施形態16~18のいずれかの方法。
21.ウイルス抗原が、配列番号128~134のいずれか1つを含む、実施形態16~20のいずれかの方法。
22.ワクチン抗原が、がん抗原を含む、実施形態1~15のいずれかの方法。
23.がん抗原が、A33;BAGE;Bcl-2;β-カテニン;CA125;CA19-9;CD5;CD19;CD20;CD21;CD22;CD33;CD37;CD45;CD123;CEA;c-Met;CS-1;サイクリンB1;DAGE;EBNA;EGFR;エフリンB2;エストロゲン受容体;FAP;フェリチン;葉酸結合タンパク質;GAGE;G250;GD-2;GM2;gp75、gp100(Pmel 17);HER-2/neu;HPV E6;HPV E7;Ki-67;LRP;メソセリン;p53、PRAME;プロゲステロン受容体;PSA;PSMA;MAGE;MART;メソセリン;MUC;MUM-1-B;myc;NYESO-1;ras;RORl;サバイビン;テネイシン;TSTAチロシナーゼ;VEGF;又はWT1を含む、実施形態22の方法。
24.がん抗原が、PSMA、PSCA、メソセリン、CD19、CD20、ROR1又はWT1を含む、実施形態22又は23の方法。
25.がん抗原が配列番号135~141のいずれか1つを含む、実施形態22~24のいずれかの方法。
26.ワクチンアジュバントを投与することをさらに含む、実施形態1~25のいずれかの方法。
27.ワクチンアジュバントが、(i)CpG、Cpg-28、ポリ(I:C)、α-ガラクトセラミド、MPLA、VTX-2337、EMD1201081)イミキモド、MGN1703、G100、CBLB502、ヒルトノール及びイミキモドから選択されるToll様受容体リガンド、並びに/又は(ii)17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)を含む、実施形態26の方法。
28.ワクチンアジュバントがSTINGアゴニストを含む、実施形態26の方法。
29.STINGアゴニストが、c-diGMP、c-diAMP、c-GAMP、c-AIMP、(3’、2’)c-AIMP、(2’、2’)c-AIMP、(2’、3’)c-AIMP、c-AIMP(S)、c-(dAMP-dIMP)、c-(dAMP-2’FdIMP)、c-(2’FdAMP-2’FdIMP)、(2’,3’)c-(AMP-2’FdIMP)、c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)]、c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)](POM)及び/又はDMXAAを含む、実施形態28の方法。
30.ポリヌクレオチドが、プラスミド、ミニサークルプラスミド又は自己複製mRNA分子を含む、実施形態1~29のいずれかの方法。
31.投与が筋肉内注射を介してを含む、実施形態1~30のいずれかの方法。
32.ポリヌクレオチドがナノ粒子内にある、実施形態1~31のいずれかの方法。
33.ナノ粒子が、リポソーム、ポリマー粒子、金属粒子、ポリマーミセル、ポリエチレンイミン(PEI)/DNA複合体又はこの組合せを含む、実施形態32の方法。
34.ナノ粒子がポリ(β-アミノエステル)ポリマーを含む、実施形態32又は33の方法。
35.ナノ粒子が脂質コーティングを含む、実施形態32~34のいずれかの方法。
36.脂質コーティングがリポソーム、脂質二重層又はポリマーミセルを含む、実施形態35の方法。
37.ナノ粒子がPGAコーティングを有するポリ(β-アミノエステル)を含む、実施形態32~36のいずれかの方法。
38.ナノ粒子がT細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA)を含む、実施形態32~37のいずれかの方法。
39.T-DAが、T細胞にインビボで選択的に結合する結合ドメインを含む、実施形態38の方法。
40.T-DAが、T細胞受容体モチーフ;T細胞α鎖;T細胞β鎖;CCR7;CD3;CD4;CD8;CD28;CD45RA;CD62L;CD127;又はLFA-1に選択的に結合する結合ドメインを含む、実施形態38の方法。
41.T-DA結合ドメインがCD4に選択的に結合する、実施形態40の方法。
42.T-DA結合ドメインが配列番号41~46のいずれか1つを含む、実施形態41の方法。
43.T-DA結合ドメインがCD8に選択的に結合する、実施形態40の方法。
44.T-DA結合ドメインが配列番号47~52のいずれか1つを含む、実施形態43の方法。
45.T-DA結合ドメインがCD3に選択的に結合する、実施形態40の方法。
46.T-DA結合ドメインが配列番号53~58のいずれか1つを含む、実施形態45の方法。
47.T-DAがCD4+又はCD8+T細胞にインビボ及びエクスビボで選択的に結合する結合ドメインを含む、実施形態38~40のいずれかの方法。
48.T-DA結合ドメインが、T細胞受容体モチーフ抗体;T細胞α鎖抗体;T細胞β鎖抗体;CCR7抗体;CD3抗体;CD4抗体;CD8抗体;CD28抗体;CD45RA抗体;CD62L抗体;CD127抗体;LFA-1抗体;又は前述の抗体の効果的な断片を含む、実施形態39~47のいずれかの方法。
49.ナノ粒子がエンドソーム放出剤(ERA)を含む、実施形態32~48のいずれかの方法。
50.ERAが配列番号40及び59~80又はこの組合せのいずれか1つを含む、実施形態49の方法。
51.ナノ粒子が核ターゲティング剤(NTA)を含む、実施形態32~50のいずれかの方法。
52.NTAが配列番号81~127又はこの組合せのいずれか1つを含む、実施形態51の方法。
53.ナノ粒子が、iPB7トランスポサーゼ、S/MARエレメント、PiggyBacトランスポサーゼ含有プラスミド、Sleeping Beautyトランスポサーゼ含有プラスミド、ホモサピエンストランスポゾン由来Buster1トランスポサーゼ様タンパク質遺伝子;ヒト内在性レトロウイルスHプロテアーゼ/インテグラーゼ由来ORF1;ホモサピエンスCas-Br-M(マウス)エコトロピックレトロウイルス形質転換配列;ホモサピエンス内在性レトロウイルス配列K;ホモサピエンス内在性レトロウイルスファミリーW配列;ホモサピエンスLINE-1タイプトランスポサーゼドメイン;又はホモサピエンスpogo転位因子を含む、実施形態32~52のいずれかの方法。
54.iPB7トランスポサーゼが配列番号142を含む、実施形態53の方法。
55.投与することにより、投与の10日以内に、9日以内に、8日以内に、7日以内に、6日以内に、5日以内に、4日以内に又は3日以内にT細胞が選択的にポリヌクレオチドを発現する、実施形態1~54のいずれかの方法。
56.ワクチン抗原、及びT細胞により発現されるとワクチン抗原に結合するT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチド(PN)を含むキット。
57.TCRがクラスI制限である、実施形態56のキット。
58.TCRがクラスII制限である、実施形態56のキット。
59.TCRがα鎖及びβ鎖の可変領域を含む、実施形態56~58のいずれかのキット。
60.TCRがα鎖及びβ鎖の定常領域を含む、実施形態56~59のいずれかのキット。
61.TCRが膜貫通ドメイン及び細胞質側テイルを含む、実施形態56~60のいずれかのキット。
62.TCRが配列番号1、4、18、21、23、25、27、29~32、34及び36を含むα鎖を含む、実施形態56~61のいずれかのキット。
63.TCRが配列番号2、3、19、22、24、26、28、33、35及び37を含むβ鎖を含む、実施形態56~62のいずれかのキット。
64.TCRが配列番号5~12、15、16及び39を含む、実施形態56~61のいずれかのキット。
65.ワクチン抗原がウイルス抗原を含む、実施形態56~64のいずれかのキット。
66.ウイルス抗原が、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニアウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス又はトガウイルスに由来する、実施形態65のキット。
67.ウイルス抗原が、サイトメガロウイルス、風邪ウイルス、エプスタインバーウイルス、フルウイルス、A型、B型、又はC型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ウエストナイルウイルス又はジカウイルスにより発現されるペプチドを含む、実施形態65のキット。
68.ウイルス抗原が、エンベロープ糖タンパク質B及び/若しくはCMV pp65から選択されるサイトメガロウイルス抗原;EBV EBNAI、EBV P18及び/若しくはEBV P23から選択されるエプスタインバー抗原;B型肝炎ウイルスのS、M及び/若しくはLタンパク質又はプレS抗原から選択される肝炎ワクチン抗原;糖タンパク質Dから選択される単純ヘルペスワクチン抗原;HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36、Nefタンパク質及び/若しくはHIV逆転写酵素から選択されるヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチン抗原;L1タンパク質から選択されるヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス抗原;赤血球凝集素及びノイラミニダーゼから選択されるインフルエンザワクチン抗原;タンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1若しくはNS1-NS2Aから選択される日本脳炎ワクチン抗原;サーカムスポロゾイト(CSP)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ若しくはフルクトース二リン酸アルドラーゼから選択されるマラリアワクチン抗原;麻疹ウイルス融合タンパク質から選択される麻疹ワクチン抗原;狂犬病糖タンパク質若しくは狂犬病核タンパク質から選択される狂犬病ワクチン抗原;RSV融合タンパク質若しくはM2タンパク質から選択される呼吸器合胞体ワクチン抗原;VP7scから選択されるロタウイルスワクチン抗原;タンパク質E1若しくはE2から選択される風疹ワクチン抗原;gpl若しくはgpllから選択される水痘帯状疱疹ワクチン抗原;又は前膜、エンベロープ(E)、Eタンパク質のドメインIII若しくは非構造タンパク質1、2、3、4若しくは5から選択されるジカワクチン抗原を含む、実施形態65~67のいずれかのキット。
69.ウイルス抗原が、Nef(66~97)、Nef(116~145)、Gag p17(17~35)、Gag p17~p24(253~284)、Pol325~355(RT 158~188)、CSPセントラルリピート領域又はEタンパク質ドメインIIIを含む、実施形態65~68のいずれかのキット。
70.ウイルス抗原が配列番号128~134のいずれかを含む、実施形態65~69のいずれかのキット。
71.ワクチン抗原ががん抗原を含む、実施形態56~70のいずれかのキット。
72.がん抗原が、A33;BAGE;Bcl-2;β-カテニン;CA125;CA19-9;CD5;CD19;CD20;CD21;CD22;CD33;CD37;CD45;CD123;CEA;c-Met;CS-1;サイクリンB1;DAGE;EBNA;EGFR;エフリンB2;エストロゲン受容体;FAP;フェリチン;葉酸結合タンパク質;GAGE;G250;GD-2;GM2;gp75、gp100(Pmel 17);HER-2/neu;HPV E6;HPV E7;Ki-67;LRP;メソセリン;p53、PRAME;プロゲステロン受容体;PSA;PSMA;MAGE;MART;メソセリン;MUC;MUM-1-B;myc;NYESO-1;ras;RORl;サバイビン;テネイシン;TSTAチロシナーゼ;VEGF;又はWT1を含む、実施形態71のキット。
73.がん抗原が、PSMA、PSCA、メソセリン、CD19、CD20、ROR1又はWT1を含む、実施形態71又は72のキット。
74.がん抗原が配列番号135~141のいずれか1つを含む、実施形態73のキット。
75.ワクチンアジュバントを投与することをさらに含む、実施形態56~74のいずれかのキット。
76.ワクチンアジュバントが、STINGアゴニストを含む、実施形態75のキット。
77.ポリヌクレオチドが、プラスミド、ミニサークルプラスミド又は自己複製mRNA分子を含む、実施形態56~76のいずれかのキット。
78.ポリヌクレオチドがナノ粒子内にある、実施形態56~77のいずれかのキット。
79.ナノ粒子が、リポソーム、ポリマー粒子、金属粒子、ポリマーミセル、ポリエチレンイミン(PEI)/DNA複合体又はこの組合せを含む、実施形態78のキット。
80.ナノ粒子がポリ(β-アミノエステル)ポリマーを含む、実施形態78のキット。
81.ナノ粒子が脂質コーティングを含む、実施形態78~80のいずれかのキット。
82.脂質コーティングがリポソーム、脂質二重層又はポリマーミセルを含む、実施形態81のキット。
83.ナノ粒子がPGAコーティングを有するポリ(β-アミノエステル)ポリマーを含む、実施形態78~82のいずれかのキット。
84.ナノ粒子がT細胞ターゲティング及び送達剤(T-DA)を含む、実施形態78~83のいずれかのキット。
85.T-DAが、T細胞受容体モチーフ;T細胞α鎖;T細胞β鎖;CCR7;CD3;CD4;CD8;CD28;CD45RA;CD62L;CD127;又はLFA-1に選択的に結合する結合ドメインを含む、実施形態84のキット。
86.T-DA結合ドメインがCD4に選択的に結合する、実施形態85のキット。
87.T-DA結合ドメインが配列番号41~46のいずれか1つを含む、実施形態86のキット。
88.T-DA結合ドメインがCD8に選択的に結合する、実施形態85のキット。
89.T-DA結合ドメインが配列番号47~52のいずれか1つを含む、実施形態88のキット。
90.T-DA結合ドメインがCD3に選択的に結合する、実施形態85のキット。
91.T-DA結合ドメインが配列番号53~58のいずれか1つを含む、実施形態90のキット。
92.T-DAがCD4+又はCD8+T細胞にインビボ及びエクスビボで選択的に結合する結合ドメインを含む、実施形態84又は85のキット。
93.T-DA結合ドメインが、T細胞受容体モチーフ抗体;T細胞α鎖抗体;T細胞β鎖抗体;CCR7抗体;CD3抗体;CD4抗体;CD8抗体;CD28抗体;CD45RA抗体;CD62L抗体;CD127抗体;LFA-1抗体;又は前述の抗体の効果的な断片を含む、実施形態85~92のいずれかのキット。
94.ナノ粒子がエンドソーム放出剤(ERA)を含む、実施形態56~93のいずれかのキット。
95.ERAが配列番号40及び59~80、又はこの組合せのいずれか1つを含む、実施形態94のキット。
96.ナノ粒子が核ターゲティング剤(NTA)を含む、実施形態56~95のいずれかのキット。
97.NTAが配列番号81~127、又はこの組合せのいずれか1つを含む、実施形態96のキット。
98.ナノ粒子が、iPB7トランスポサーゼ、S/MARエレメント、PiggyBacトランスポサーゼ含有プラスミド、Sleeping Beautyトランスポサーゼ含有プラスミド、ホモサピエンストランスポゾン由来Buster1トランスポサーゼ様タンパク質遺伝子;ヒト内在性レトロウイルスHプロテアーゼ/インテグラーゼ由来ORF1;ホモサピエンスCas-Br-M(マウス)エコトロピックレトロウイルス形質転換配列;ホモサピエンス内在性レトロウイルス配列K;ホモサピエンス内在性レトロウイルスファミリーW配列;ホモサピエンスLINE-1タイプトランスポサーゼドメイン;又はホモサピエンスpogo転位因子を含む、実施形態56~97のいずれかのキット。
99.iBP7トランスポサーゼが配列番号142を含む、実施形態98のキット。
100.ワクチン抗原認識能力を対象のT細胞に提供するための実施形態1~99のいずれかの方法又はキットの使用。
101.対象の免疫系をワクチン抗原に応答性にするための実施形態1~99のいずれかの方法又はキットの使用。
102.ワクチン抗原に応答性の対象の免疫系を増加するための実施形態1~99のいずれかの方法又はキットの使用。
【実施例0236】
多くのワクチンは、ワクチン抗原と反応するTCRを産生するようにT細胞をプログラムする薬剤と同時送達すれば、その影響を増強することが可能である。この前提は、CD8標的ナノ粒子(NP)に卵白アルブミン(OVA)特異的OT-I TCRをコードするプラスミドを充填することにより試験した(図3A)。これらのDNA保有NPの設計は、腫瘍認識能力を循環リンパ球中にプログラムするように開発されたバージョンに基づいており、それらの研究では、NPにリンパ球ターゲティングリガンドを供給すると、キメラ抗原受容体遺伝子が宿主T細胞中にトランスフェクトされることが実証された。このNPプラットフォームは、T細胞がワクチン特異的TCRを発現するように宿主T細胞をプログラムするように改作された。P14 TCRトランスジェニックマウス(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに特異的であるCD8 T細胞のみを含有する)は、OVA特異的OT-1 TCRをコードする遺伝子を送達する1011のT細胞標的NPの単一用量を、mycタグ及び機能亢進性iPB7トランスポサーゼと一緒に筋肉内に注射した。これらのNPは単独で又はOVAペプチドワクチンと組み合わせて注射された。対照として、マウスはOVAワクチンのみで免疫される、又は非治療のままにした。NPプログラム(OVA-テトラマー+)T細胞のパーセントをフローサイトメトリーにより定量化することができるように、免疫化後7日目及び30日目に流入領域リンパ節を単離した。筋肉内に注射されたNPが操作されたTCR遺伝子を宿主T細胞中に効果的に送達し、その結果T細胞がワクチン抗原を認識することが見出された(図3B)。その急速なワクチン誘導増殖に続いて、NPプログラムT細胞は長命の記憶T細胞に分化する(図3B、3C)。
【0237】
KrasLSL-G12D/+;Trp53LSL-R172H/+;p48Cre/+(KPC)マウスモデルを利用して、臨床的に関連するインビボ試験システムにおいてNPワクチン戦略を試験した。KPCモデルは、膵臓腫瘍形成を駆動することが公知の内在性遺伝子座で突然変異Kras及びp53を発現する。このモデルは、分子進行、病理組織学及び臨床症候群を含む、ヒト膵管腺癌(PDA)の基本的な特長を再現する(図4A)。規定された腫瘍量(2~5mm径、高解像度超音波により決定した場合)を保有するKPCマウスに、腫瘍抗原メソセリン(MSLN)-特異的受容体TCR1045(Stromnes、IM、ら(2015)、上記)をコードする遺伝子を送達する1013のT細胞標的NPの単一用量を、mycタグ及び機能亢進性iPB7トランスポサーゼと一緒に筋肉内に注射した(「カット及びペースト」機構を経由する染色体中へのベクターの効率的組み込みを確実にするため)。特定の実施形態では、機能亢進性iPB7トランスポサーゼは、マウスコドン最適化piggyBacトランスポサーゼcDNA(GenBank受託番号:EF587698、Cadinanos、J and Bradley、A(2007)Nucleic Acids Res 35:e87、図6参照、配列番号142)である。これらのNPは、単独で、又はMSLNワクチン(マウスMSLNを発現している弱毒化組換えアデノウイルスの5×10pfu)と組み合わせて注射した。対照として、マウスはMSLNワクチンのみで免疫する、又は治療しなかった。TCR1045NPとMSLNワクチンの両方の組合せで治療した動物のみが腫瘍退縮を示し、生存も平均27日改善した(図4B)。
【0238】
当業者であれば理解するように、本明細書に開示されるそれぞれの実施形態は、その特定の記述されている要素、ステップ、成分又は構成要素を含む、本質的にからなる又はからなることが可能である。本明細書で使用されるように、移行用語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」は含む(includes)を意味するが、不特定の要素、ステップ、成分、又は構成要素を包含することに限定されず、これを多量にさえ包含することが可能である。移行句「からなる(consisting of)」は明記されていないいかなる要素、ステップ、成分又は構成要素も排除する。移行句「本質的にからなる(consisting essentially of)」は、実施形態の範囲を明記された要素、ステップ、成分、又は構成要素に、及びその実施形態に実質的な影響を与えない要素、ステップ、成分、又は構成要素に限定する。本明細書で使用されるように、重大な影響がでれば、ワクチン投与の7日以内にワクチン抗原に対する対象の免疫系応答を増加させる能力が統計的に有意に減少すると考えられる。
【0239】
他の方法に示されていなければ、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、反応条件のような特性、その他を表す数はすべて、あらゆる場合に用語「約(about)」が修飾していると理解されるべきである。したがって、反対の指示がなければ、明細書及び添付の特許請求の範囲で述べられている数のパラメータは、本発明が得ようとしている所望の特性に応じて変動する場合がある近似値である。何はともあれ、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとする企てとしてではなく、それぞれの数のパラメータは、少なくとも、報告されている有効数字の数に照らして、及び通常の切り上げ法を適用することにより解釈するべきである。さらに明快さが求められる場合、用語「約(about)」は、表示されている数値又は範囲と併せて使用される場合、当業者により合理的にその用語に帰せられる意味を有する、すなわち、表示されている数値又は範囲よりも幾分多く又は幾分少なく、表示されている値の±20%;表示されている値の±19%;表示されている値の±18%;表示されている値の±17%;表示されている値の±16%;表示されている値の±15%;表示されている値の±14%;表示されている値の±13%;表示されている値の±12%;表示されている値の±11%;表示されている値の±10%;表示されている値の±9%;表示されている値の±8%;表示されている値の±7%;表示されている値の±6%;表示されている値の±5%;表示されている値の±4%;表示されている値の±3%;表示されている値の±2%;又は表示されている値の±1%の範囲以内を意味する。
【0240】
本発明の広い範囲を示す数の範囲及びパラメータは近似値であるけれども、特定の実施例で示される数値はできる限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値もそのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本来含有する。
【0241】
本発明を説明するという文脈で(特に、以下の特許請求の範囲という文脈で)使用される用語「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」及び類似の指示対象は、本明細書で他の方法で指示されていなければ又は明らかに文脈に矛盾しなければ、単数と複数の両方を包含すると解釈するべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、その範囲内に収まるそれぞれ別々の値に個々に言及する速記方法としての役割を果たすことを意図しているだけである。本明細書で他の方法で指示されていなければ、それぞれ個々の値は、それが本明細書で個別に列挙されるかの如く明細書に組み込まれる。本明細書に記載される方法はすべて、本明細書で他の方法で指示されていなければ又は明らかに文脈に矛盾しなければ、いかなる適切な順番で実施することも可能である。本明細書で提供されるありとあらゆる実施例、又は例示的言語(例えば、「のような」)の使用は、本発明をもっとよく明らかにするためだけに意図されており、他の方法で請求される本発明の範囲を制限しない。本明細書の言語は、本発明の実行に不可欠ないかなる請求されていない要素も示していないと解釈されるべきである。
【0242】
本明細書で開示される本発明の代わりの要素又は実施形態のグループ分けは限定として解釈するべきではない。それぞれのグループのメンバーは、個別に又は本明細書に見出されるグループの他のメンバー又は他の要素と任意に組み合わせて言及し請求してもよい。グループの1つ以上のメンバーは、便宜上及び/又は特許要件という理由でグループに含まれても、グループから削除してもよいことは予想される。いかなるそのような包含又は削除が起きた場合でも、本明細書は、改変されたグループを含有し、したがって添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの書面による明細を満たすと見なされる。
【0243】
本発明を実行するために発明者らが公知の最良の様式を含む、本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されている。当然のことながら、前述の説明を読めば、これらの記載されている実施形態の変動は当業者に明らかになる。発明者らは当業者であればそのような変動を適切だとして用いることを予測しており、発明者らは、本発明が、本明細書に具体的に記載される以外の方法で実施されることを予定している。したがって、本発明は、準拠法が認めるように、ここに添付される特許請求の範囲に列挙される主題のあらゆる改変及び等価物を含む。さらに、この考え得るあらゆる変動における上記の要素のいかなる組合せも、本明細書で他の方法で指示されていなければ又は明らかに文脈に矛盾しなければ、本発明により包含される。
【0244】
さらに、本明細書全体で特許及び印刷された出版物を数多く参照してきた。上に挙げる参考文献及び印刷された出版物のそれぞれを参照によりその全体を本明細書に個別に組み込む。
【0245】
最後に、本明細書で開示される本発明の実施形態が本発明の原理を説明していることは理解されるべきである。用いてもよい他の改変は本発明の範囲内である。したがって、例として、しかし限定せずに、本発明の代わりの構成は本明細書の教えに従って利用してもよい。したがって、本発明は正確に示され記載されている発明に限定されない。
【0246】
本明細書に示される特徴は、本発明の好ましい実施形態の例として及び実例となる議論のみを目的としており、本発明の種々の実施形態の原理及び概念上の態様の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されている。これに関して、本発明の根本的な理解に必要である以上に詳細に本発明の構造的詳細を明らかにしようと試みてはおらず、本発明のいくつかの形態を当業者にとって明らかにする図面及び/又は実施例を用いた説明は実際に具体化してもよい。
【0247】
本開示において使用される定義及び説明は、以下の実施例で明白に曖昧さを残さず改変されなければ又はその意味の適用がいかなる解釈も無意味にする若しくは本質的に無意味にする場合、いかなる将来の解釈においても、支配的であることを意味し意図している。用語の解釈が用語を無意味にする若しくは本質的に無意味にすると考えられる場合、Webster’s Dictionary、第3版又はthe Oxford Dictionary of Biochemistry及びMolecular Biology(編者.Anthony Smith、Oxford University Press、Oxford、2004年)のような当業者に公知である辞書からその定義を採用するべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
【配列表】
2023171756000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を遺伝子改変してワクチン抗原に結合するT細胞受容体(TCR)を発現させるための方法に使用するための、ナノ粒子を含む組成物であって、前記ナノ粒子は、
(i)TCRをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)前記ナノ粒子の表面に暴露された抗体又はその結合断片
を含み、
前記方法は、
対象がワクチン抗原を接種されてから臨床的に関連する時間内で、有効量のナノ粒子を前記対象に投与することを含み、
前記ナノ粒子は、投与後に前記細胞を遺伝子改変する、組成物。
【請求項2】
対象が、ナノ粒子の投与の前又は後に、ワクチン抗原を接種される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
対象が、ナノ粒子の投与の後に、ワクチン抗原を接種される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
対象が、ナノ粒子の投与の前に、ワクチン抗原を接種される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
抗体が、抗CD4抗体又は抗CD8抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
抗体が、
(i)配列番号41のCDRH1、配列番号42のCDRH2及び配列番号43のCDRH3を含む可変重鎖、並びに配列番号44のCDRL1配列番号45のCDRH2及び配列番号46のCDRL3を含む可変軽鎖、
(ii)配列番号47のCDRH1、配列番号48のCDRH2及び配列番号49のCDRH3を含む可変重鎖、並びに配列番号50のCDRL1、配列番号51のCDRH2、及び配列番号52のCDRL3を含む可変軽鎖、又は
(iii)配列番号53のCDRH1、配列番号54のCDRH2、及び配列番号55のCDRH3を含む可変重鎖、並びに配列番号56のCDRL1、配列番号57のCDRH2、及び配列番号58のCDRL3を含む可変軽鎖
を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
対象が、感染又はがんの治療を必要とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
対象が、感染若しくはがんを有する、又は感染若しくはがんの傾向がある、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ワクチン抗原が、
i)前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、メソセリン、CD19、CD20、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、ウィルムス腫瘍タンパク質1(WT1)、若しくはそれらの断片から選択されるがん抗原、又は、
ii)Nef(66~97)、Nef(116~145)、Gag p17(17~35)、Gag p17~p24(253~284)、Pol325~355(RT 158~188)、スポロゾイト周囲タンパク(CSP)セントラルリピート領域及びEタンパク質ドメインIIIから選択されるウイルス抗原
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ワクチン抗原が、配列番号135~141から選択されるがん抗原、又は、配列番号128~134から選択されるウイルス抗原である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
コードされたTCRが、配列番号1、4、18、21、23、25、27、29~32、34及び36から選択されるα鎖を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
コードされたTCRが、配列番号2、3、19、22、24、26、28、33、35及び37から選択されるβ鎖を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
コードされたTCRが、配列番号5~12、15、16及び39から選択される配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
さらにワクチンアジュバントと共に対象に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ワクチンアジュバントが、CpG、Cpg-28、ポリリボイノシンポリリボシチジル酸(ポリ(I:C))、α-ガラクトセラミド、MPLA、モタリミド、EMD1201081、イミキモド、MGN1703、G100、エントリモド、ヒルトノール、17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、及び、STINGアゴニストから選択され、前記STINGアゴニストは、c-diGMP、c-diAMP、c-GAMP、c-AIMP、(3’、2’)c-AIMP、(2’、2’)c-AIMP、(2’、3’)c-AIMP、c-AIMP(S)、c-(dAMP-dIMP)、c-(dAMP-2’FdIMP)、c-(2’FdAMP-2’FdIMP)、(2’,3’)c-(AMP-2’FdIMP)、c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)]、c-[2’FdAMP(S)-2’FdIMP(S)](POM)2、及び、DMXAAから選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ポリヌクレオチドが、正電荷を帯びたポリマーマトリックスに封入されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
正電荷を帯びたポリマーマトリックスが、ポリ-β-アミノエステル(PBAE)を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
正電荷を帯びたポリマーマトリックスが、負電荷を帯びたコーティングに囲まれている、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
負電荷を帯びたコーティングが、ポリグルタミン酸(PGA)を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
結合断片が、配列番号41~58から選択される配列を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
ナノ粒子が、配列番号142を含むiPB7トランスポザーゼを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
対象が、低T細胞数を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。