(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017176
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】同調機能付き共吊り連動クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20230131BHJP
B66C 23/00 20060101ALI20230131BHJP
B66D 1/40 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B66C13/22 L
B66C23/00 B
B66D1/40 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121239
(22)【出願日】2021-07-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
(72)【発明者】
【氏名】本間 清忠
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA01
3F204DD01
3F205AA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】3個以上のフックを共吊り連動させ、各フックの負荷分担が同調する巻上同調機能付きクレーンを提供する。
【解決手段】複数のフックH11~H41の巻上げモータIMの速度制御を、巻上げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなるように、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように、制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3個以上の複数のフックで共吊り連動を行うクレーンにおいて、
前記複数のフックの巻上げモータの速度制御を、巻上げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなるように、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように、それぞれ制御することにより、
巻上げ共吊り連動時においては、他のフックより荷重分担が大きなフックは他のフックより速度が遅くなり、他のフックより荷重分担が小さなフックは他のフックより速度が速くなるように、巻下げ共吊り連動時においては、他のフックより荷重分担が大きなフックは他のフックより速度が速くなり、他のフックより荷重分担が小さなフックは他のフックより速度が遅くなるように、それぞれ動作させるようにして、
複数フックの共吊り連動時に複数のフックが互いに荷重を分担し合うようにする
ことを特徴とする同調機能付き共吊り連動クレーン。
【請求項2】
前記複数のフックの巻上げ制御装置の設定を、複数のフックの巻上げ装置の容量が等容量の場合は、モータ負荷に対する速度の変化率を同一にし、複数のフックの巻上げ装置の容量が異なる場合は、各フックの巻上げ装置の容量の大きさの比に応じて、モータ負荷に対する速度の変化率を小さく設定することにより、各フックの巻上げ装置の容量に対する負荷分担が均等になるように制御を行うようにすることを特徴とする請求項1に記載の同調機能付き共吊り連動クレーン。
【請求項3】
前記巻上げ共吊り連動時又は巻下げ共吊り連動時に、モータ始動時の出力速度特性を、巻上げ時においては、過負荷状態では速度が出ない特性とし、負荷が下がると低速が出る特性とし、巻下げ時においては、負荷がゼロの時には速度が出ない特性とし、負荷が掛かると低速が出る特性とし、ブレーキ解放後のすべてのフックの負荷分担の連動が取れる時間を待ってから加速をするようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の同調機能付き共吊り連動クレーン。
【請求項4】
前記巻上げ共吊り連動時又は巻下げ共吊り連動時に、各々のクレーンを定格速度まで一旦加速し、定格速度での負荷トルクにより出力可能な軽負荷高速の速度を各々のクレーンで算出し、該速度を共吊り連動を行う他のクレーンに送信し合い、各々のクレーンから送信された軽負荷高速の速度を受信し、それに自身のクレーンの軽負荷高速の速度を含めた中で最も遅い速度を速度指令値として高速運転をさせるに当たり、軽負荷高速運転を行う際に、巻上げ時においては、モータ負荷が大きくなるにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなるように、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように、それぞれ制御することにより、軽負荷高速運転中に負荷分担がズレないようにする機能を有するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の同調機能付き共吊り連動クレーン。
【請求項5】
第1のクレーンの第1のフックと隣接する第2のクレーンの第1のフックとで第1の天秤を共吊りし、第1のクレーンの第2のフックと隣接する第2のクレーンの第2のフックとで第2の天秤を共吊りし、第1の天秤と第2の天秤で第1の玉掛けワイヤロープを吊るし、第3のクレーンの第1のフックと隣接する第4のクレーンの第1のフックとで第3の天秤を共吊りし、第3のクレーンの第2のフックと隣接する第4のクレーンの第2のフックとで第4の天秤を共吊りし、第3の天秤と第4の天秤で第2の玉掛けワイヤロープを吊るし、第1の玉掛けワイヤロープと第2の玉掛けワイヤロープで長尺物の吊荷を吊り下げるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の同調機能付き共吊り連動
クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフックで共吊り連動を行うことで、長尺物や重量物を運搬するようにした共吊り連動クレーンに関し、特に、そのための同調機能を備えた共吊り連動クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺物や重量物を運搬する場合、2台のクレーンで共吊りを行う場合がある。例えば、鉄道車両のように、長尺で荷重ポイントが両端部付近にあるものは、2台の共吊り連動クレーンで合理的な運搬ができる。
また、巨大な重量物を搬送する場合には、巨大なクレーン1台で吊るよりも、2台のクレーンで吊る方が、建屋や基礎に掛かる荷重を各クレーンを介して広い範囲に分散することで、建屋や基礎を低コストにできる。
また、天井クレーンの場合、建屋天井を低くできたり建屋端部へのクレーンの寄りが良くなる。
そして、重量物の搬送を行わない場合は、各々のクレーン毎に分割して作業ができるので、作業効率が高い等の様々なメリットがある。
【0003】
そして、このような2台のクレーンで共吊りを行うニーズに対応するために、従来から様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7―237885号公報
【特許文献2】特開平8―217378号公報
【特許文献3】特開2016―147726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吊り上げる運搬物がさらに長尺で巨大化すると、2台のクレーン(2個のフック)で吊り上げるのではなく、3台以上のクレーン(3個以上のフック)を用いた方がクレーンのコスト的には安価なシステムになる場合があり、そのようなニーズが出てきている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~3に開示された技術で3台以上のクレーン(3個以上のフック)で共吊り連動での吊り上げを行うと、何れかのフックが過荷重になったり、何れかのフックが浮いてしまう等の現象が発生し、3個以上のフックでの共吊り連動は従来技術で実現が困難で、3個以上のフックを共吊り連動させるための新たな技術が必要であった。
【0007】
ここで、3個以上のフックを共吊り連動させる場合に、複数台のクレーンに同時に巻上げ/巻下げ指令を与えるのに無線や光などを媒体にしたシリアル通信装置を用いることで合理的に各クレーンへの信号を送信することができるが、シリアル通信を用いた場合、それぞれのクレーンが信号を受け取るタイミングが僅かにズレるため、起動のタイミングに僅かなズレが生じてしまい、3台以上のフックの負荷分担の不均衡が発生する。
【0008】
また、巻上げ制御には、吊荷が軽い時に定格速度を超えて増速する軽負荷高速運転制御を採用する場合があるが、定格速度を超えた状態はモータトルクが低下している状態であ
るため、高速運転中に連動するフックの荷重の分担率が変化してしまうとトルク不足になる危険性があり、共吊り連動運転時の軽負荷高速運転は採用しない場合が多かった。
【0009】
本発明は、上記従来の3個以上のフックにより共吊り連動させる場合の問題点に鑑み、3個以上のフックにより共吊り連動させるための同調機能を備えた共吊り連動クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンは、従来の共吊り連動クレーンに採用されている位置や速度を揃える方式ではなく、位置や速度はある一定の変化を許容し、連動するそれぞれの巻上げモータが発生するトルクが均等になるように制御を行うことにより、3個以上のフックによる共吊り連動を可能としたものである。
具体的には、3個以上の複数のフックで共吊り連動を行うクレーンにおいて、前記複数のフックの巻上げモータの速度制御を、巻上げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなるように、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように、それぞれ制御することにより、巻上げ共吊り連動時においては、他のフックより荷重分担が大きなフックは他のフックより速度が遅くなり、他のフックより荷重分担が小さなフックは他のフックより速度が速くなるように、巻下げ共吊り連動時においては、他のフックより荷重分担が大きなフックは他のフックより速度が速くなり、他のフックより荷重分担が小さなフックは他のフックより速度が遅くなるように、それぞれ動作させるようにして、複数フックの共吊り連動時に複数のフックが互いに荷重を分担し合うようにすることを特徴とするものである。
【0011】
この場合において、前記複数のフックの巻上げ制御装置の設定を、複数のフックの巻上げ装置の容量が等容量の場合は、モータ負荷に対する速度の変化率を同一にし、複数のフックの巻上げ装置の容量が異なる場合は、各フックの巻上げ装置の容量の大きさの比に応じて、モータ負荷に対する速度の変化率を小さく設定することにより、各フックの巻上げ装置の容量に対する負荷分担が均等になるように制御を行うようにすることができる。
【0012】
また、前記巻上げ共吊り連動時又は巻下げ共吊り連動時に、モータ始動時の出力速度特性を、巻上げ時においては、過負荷状態では速度が出ない特性とし、負荷が下がると低速が出る特性とし、巻下げ時においては、負荷がゼロの時には速度が出ない特性とし、負荷が掛かると低速が出る特性とし、ブレーキ解放後のすべてのフックの負荷分担の連動が取れる時間を待ってから加速をするようにすることにより、運転信号として用いるシリアル通信のクレーン間での受信タイミングのズレやブレーキ解放の特性ズレ等による動作タイミングのズレにより、共吊り連動する何れかの巻上げ装置に過負荷が掛かることを防ぐことができる。
【0013】
また、前記巻上げ共吊り連動時又は巻下げ共吊り連動時に、各々のクレーンを定格速度まで一旦加速し、定格速度での負荷トルクにより出力可能な軽負荷高速の速度を各々のクレーンで算出し、該速度を共吊り連動を行う他のクレーンに送信し合い、各々のクレーンから送信された軽負荷高速の速度を受信し、それに自身のクレーンの軽負荷高速の速度を含めた中で最も遅い速度を速度指令値として高速運転をさせるに当たり、軽負荷高速運転を行う際に、巻上げ時においては、モータ負荷が大きくなるにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなるように、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように、それぞれ制御することにより、軽負荷高速運転中に負荷分担がズレないようにする機能を有するようにすることができる。
すなわち、連動運転時の軽負高速運転を行うのに当たり、前記の制御により、各フック
の荷重分担が均等に制御されている。
この状況において、まず、各フックが各々定格速度まで加速させ、その時の各フックの巻上げモータが発生しているトルク値をサンプリングし増速可能な速度を他のクレーンに向けて発信する。そして、各クレーンが発信してきた各クレーンの増速可能な速度に自身のクレーンを含めて、そのうちから最も遅い速度をそのクレーンの増速可能な速度に設定し、各クレーンを高速運転する。この時、巻上げ時においてはモータ負荷が大きくなるにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなり、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように制御することにより各フック間の荷重分担率がトルクのサンプリング時から変わるのを防ぐことで、軽負荷高速運転中における負荷分担率の変化に伴うモータトルクの不足を防止する。
【0014】
また、クレーン間のフック間に天秤を用いることによりクレーン間の連動ズレを機械的に許容する構造とすることで、クレーン内のみの連動を取る構造とし、連動の信頼性を向上し、例えば、長尺物に生じる捻じれを防止することができる。
具体的には、第1のクレーンの第1のフックと隣接する第2のクレーンの第1のフックとで第1の天秤を共吊りし、第1のクレーンの第2のフックと隣接する第2のクレーンの第2のフックとで第2の天秤を共吊りし、第1の天秤と第2の天秤で第1の玉掛けワイヤロープを吊るし、第3のクレーンの第1のフックと隣接する第4のクレーンの第1のフックとで第3の天秤を共吊りし、第3のクレーンの第2のフックと隣接する第4のクレーンの第2のフックとで第4の天秤を共吊りし、第3の天秤と第4の天秤で第2の玉掛けワイヤロープを吊るし、第1の玉掛けワイヤロープと第2の玉掛けワイヤロープで長尺物の吊荷を吊り下げるようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンによれば、3個以上のフックの共吊り連動を行い、それぞれのフックが適切に負荷分担をするようにすることができ、巨大な製品や非常に長い製品等を3個以上のフック(3台以上のクレーン)が、過負荷状態になることなく安全に荷の巻上げ下げを行うことができる。
これにより、建屋に掛かる荷重が分散できたり、巨大な製品がない時は、クレーンを分散して複数の作業ができるようになるので、クレーン作業効率が向上する。
さらに、3個以上のフックの共吊り連動時、モータトルクに余裕がある時は定格速度を超えて運転することができる。そして軽負荷高速運転中に負荷分担が変化しないようにできるので、何れのモータも過負荷になることなく軽負荷高速運転の効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンの全体システムの説明図である。
【
図3】本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンの速度制御系の制御ブロック図である。
【
図4】本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンのモータ特性の説明図である。
【
図5】起動時ブレーキ解放時の同調制御の説明図である。
【
図7】本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンの使用例を示す説明図である。
【
図8】本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンの天秤を用いた使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンの実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンの全体システムの説明図である。
従来より、共吊り連動は、2個のフックにより行われてきた。
それが本実施例のように3個以上の数(本実施例では4個)のフックで吊り上げた場合において、例えば、巻上げ操作時に1個のフックの起動が遅れると、そのフックは荷重を分担しなくなり、逆に1個のフックの起動が速くなると4個のうちの他の2個のフックが荷重を分担しなくなる。
本発明は、このような3個以上のフックで吊り上げる場合に、負荷分担の同調を行うものである。
【0019】
ここで、
図1の構成は4台のクレーンで、各クレーンに1個ずつのフックが装備された構成の実施例で記載しているが、フックが3個以上のものの連動を行うのが本発明の適用範囲であり、1台のクレーンに複数個のフックが装備されるクレーンの場合であったり、或いはクレーンやフックの数量が5個以上であるものも本発明の適用範囲となる。
【0020】
1号クレーンCR1から4号クレーンCR4までのそれぞれの4台のクレーンでは、シーケンサPLCから速度制御装置INVへの指令に基づき、パルスジェネレータPGの検出器の速度フィードバックバックによりモータIMを制御し、モータIMの動力はブレーキBR、減速機GRを介してワイヤドラムDRに伝達し、ワイヤドラムDRに巻き付けられたワイヤロープWRでフックが吊り下げられ、それぞれのクレーンから吊り下げられた4個のフックは共に吊荷Wを共吊りしている。各フックには、それぞれのフックに掛かる荷重を検出する荷重計LCが装備されており、それぞれのフックの荷重分担が不均衡になることによる過荷重を検出するようになっている。しかしながら、荷重計LCは反応速度が遅く、過荷重状態になった後にそれを検出することができても、過荷重になることを未然に防止することはできない。
本実施例では、速度制御装置INVによるモータIMの制御により、荷重計LCが作動するようなフック間の荷重分担の不均衡状態になることを未然に防ぎ、フック間の荷重分担の同調を行う。
【0021】
図2に本クレーンの連動操作運転の通信形態について記載する。
4台のクレーンを操作するために、連動用無線制御器TCXが1台あり、これに相応する連動操作用受信器RCXが各クレーンに設置され、クレーン運転士OPが連動用無線制御器TCXを操作すると、各クレーンで同じ信号を受信できるようになっている。
そして、各クレーンCR1~CR4には、各クレーン用に対比する各無線制御器TC1~TC4及び各操作受信器RC1~RC4が設置されている。
連動用無線制御器TCXは、どのクレーンを動かすか、何台のクレーンを動かすかを選択できるようになっており、連動用無線制御器TCXで選択されなかったクレーンは、各クレーンの無線制御器TC1~TC4と操作受信器RC1~RC4が操作権を確保することができ、連動運転から切り離し、単独でクレーンを動かすことができる。また、逆に各クレーンの無線制御器TC1~TC4と操作受信器RC1~RC4が操作権を確保しているクレーンについては、連動用無線制御器TCX及び動操作用受信器RCXで連動を選択できないように相互に操作権のインターロックが掛かっている。
そして、各クレーン間の通信には、各クレーン間通信送信器TM1~TM4及び各クレーン間通信受信器RM1~RM4が設けられており最低限のクレーン間の信号確認が行われている。
このシステムの特長としては、無線構成とすることで、連動運転にしたり、連動運転から離脱したりすることが、容易に行える特徴がある。
【0022】
図3に本発明の同調機能付きクレーンの速度制御系の制御ブロック図を示す。
図2に記載の連動用無線制御器TCXにより連動の選択が行われ、運転指令、速度指令
を受けると、速度制御装置INV内部の速度制御系部分に速度指令値V
*が発せられ、線形加速変換器LADを通り、加速時間或いは減速時間に沿ったその瞬時の速度目標値ω
*が作られる。速度目標値ω
*からパルスジェネレータPGで検出した実速度検出値ωを減算し速度偏差量を算出し、その速度偏差量を自動速度設定器ASRで比例制御PCに掛け、リミッタLMを通し上限をカットした値をトルク目標値T
*としてモータの電流制御を行う。
これにより、
図4に示すようにトルクが大きくなると速度が遅くなり、マイナス側にトルクが大きくなると速度が速くなる特性を得ることができる。
この
図4に示す特性をクレーンの巻上げ動作に置き換えると、トルクがプラス側が巻上げを意味し、トルクがマイナス側が巻下げを意味する。
【0023】
図4に示す特性を各モータIMに与えることで、巻上げ時においてはモータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなるように、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように、それぞれ制御する。
これにより、巻上げ共吊り連動時には、他のフックより荷重分担が大きなフックは他のフックより速度が遅くなり、他のフックより荷重分担が少ないクレーンは他のフックより速度が速くなるように、巻下げ共吊り連動時においては、他のフックより荷重分担が大きなフックは他のフックより速度が速くなり、他のフックより荷重分担が小さなフックは他のフックより速度が遅くなるように、それぞれ動作させることにより、複数フックの共吊り連動時に、これら複数のフックが互いに荷重を分担し合うように動作する。
【0024】
この時、共吊り連動する巻上げ装置の容量が等容量の場合は、各巻上げ装置の速度制御装置の制御定数の設定を、
図4に示す特性の傾きが同一になるように設定することで、各モータの負荷に対する速度の変化率を同一にし、共吊り連動する各フックの負荷分担を均等にすることができる。
【0025】
また、各巻上げ装置の容量が異なる場合は、各巻上げ装置の容量の大きさの比に応じて、
図4に示す特性の傾きを小さく設定することで、モータの速度の変化率に対する負荷分担が大きくなるように設定する。これにより、各巻上げ装置の容量に対する負荷分担が均等になるように制御を行うことができる。
例えば、巻上げ装置の容量が2倍の装置と共吊り連動する場合、その速度制御装置の
図4の傾きを半分にすれば、その巻上げ装置の負荷分担を2倍にすることができる。
【0026】
ところで、連動用無線制御器TCXが発信した巻上げ/巻下げ指令信号を、各クレーンの連動操作用受信器RCXが受信する各クレーンでの僅かな受信タイミングのズレや、各クレーンのブレーキの開閉タイミングの僅かなズレによる同期ズレを解消するため、巻上げ時には、
図5(2)の特性とし、
図5(2)の傾き特性でトルクのリミッタLM(通常は150%)に達した時に速度がゼロになるように速度目標値ω
*の値を設定する。この状態で、
図5(1)に示す巻上げ起動合わせSUの時間だけ待ってから加速に移す。
これにより、他のフックより速くブレーキの解放をしてしまったフックは、トルクのリミッタ値(通常は150%)に達しゼロ速度で停止する。
そして、その他のフックもブレーキが開き、巻上げトルクが発生しだすと、最初にブレーキを解放したフックの荷重分担が下がりだし、巻上げ速度を発生し、他のフックと低速で負荷を均等に分担するようになる。そして、その負荷が均等に分担するまでの時間(予め設定した時間)を経過すると加速ACに移行する。
このように起動時にゼロ速度から低速の範囲で負荷分担を同調させてから加速ACに移行することで、回転部の慣性力等が発生することを防ぎ、
図3の速度制御系に組み込まれたリミッタLM(通常150%)により、モータが発生するトルクはリミッタLM(通常
150%)以下のトルクに抑制し、起動タイミングのズレにより、トルクのリミッタLM値を超える負荷が掛かるのを防ぎ、起動タイミングのズレによる巻上げ装置等の機械的損傷を防止することができる。
一方、巻下げ時には、
図5(3)の特性とし、ブレーキが先に解放したものが少し動いた状態で負荷分担がなくなってしまい、トルクゼロの速度ゼロの状態で停止状態になる。そして他のフックのブレーキが解放していった時に負荷分担が均等化し低速の速度が同調をする。そして、
図5(1)の巻下げ起動合わせSDの予め設定された時間を経過した後に加速ACする。
これにより、巻上げ時と同様に巻下げ時の起動タイミングのズレに対しても、モータが発生するトルクのリミッタLM(通常150%)の範囲以下のトルクに抑えることができるので巻上げ装置等の機械的損傷を防止することができる。
【0027】
このような起動時に発生した同調ズレを補正する方法として、特許文献3には、2つのフックの位置のズレを検出すると2つのフックの速度制御装置の速度指令値V*に差を付けたり、インチング時や加速時に検出した位置のズレに対しては線形加速変換器LADのカーブを変更して位置のズレを修正する技術が記載されている。この技術では、線形加速変換器LADに支配されるので高速の同調制御の応答は期待できない。
これに対して、3フック以上の同調を行う本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンにおいては、高速で制御ループを回さないと負荷分担の同調が崩れてしまうので、速度指令値V*や線形加速変換器LADで調節するのではなく、線形加速変換器LADを通過した後の速度目標値ω*に対し、逐次負荷変動により変化して入力されるパルスジェネレータPGの実速度検出値ωとの速度偏差量を自動速度設定器ASRの高速の演算ループで行うので、高速で補正が掛かると同時にインチング時や線形加速時に生じるズレも逐次補正がなされることとなる。
【0028】
本実施例では、負荷が小さい時にモータの余力を利用して定格速度100%を超えて速度を増速するシステムを装備している。
定格速度を超えるとモータの出力トルクが低下するので、負荷トルクTと速度Vの関係は式(1)により2乗低減で抑えるようにしている。
V=(1/T)
1/2 ・・・式(1)
位置や速度の同調をする従来の同調では、定格速度を超えた運転をしている時に、負荷分担が変わると片側のモータが過負荷になるリスクがあったが、本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンでは、負荷分担が等しくなるように同調制御を行うので、前記のようなリスクがなく、定格速度を超えて安全に動作させることができる。
ただし、各クレーンで速度を増速するのに当たり、各々のクレーンが式(1)の計算結果に基づき速度Vを決定すると、負荷トルクTの検出誤差などの影響で各クレーンの速度Vの値がばらばらになってしまう。また、全クレーンの軽負荷高速の速度を統一するため、式(1)の演算結果をそのままクレーン間で通信すると、通信データ量が増えるので、
図6に示すように、T1~T5に対するVH1~VH5に段階的に区切り、VH1~VH5の何れの軽負荷高速の速度が出せるか、或いは出せないかを算出する。
まず、巻上げUP或いは巻下げDWを行うと、
図5に示すように、加速ACを行い、定格速度に到達したところで負荷トルク検出HCの時間、モータ出力トルクのサンプリングを行う。各クレーンがそのサンプリングしたトルクから
図6により軽負荷高速VH1~VH5を算出し、その結果を
図2に示す各クレーン間通信送信器TM1~TM4により送信する。
ここで、定格速度で加速ACを止めてモータ出力トルクのサンプリングを行うのは、速度が速いほどモータトルクの検出精度が高いことと、加速中より定速運転中の方がモータトルクの検出精度が高いことと、低速で加速を止めるより、より速い速度で加速を止める方が搬送時間に対する負荷トルク検出HCの時間が与える影響が少ないためである。
各クレーンは、各クレーン間通信受信器RM1~RM4により軽負荷高速VH1~VH
5の受信結果を受け取ると、自身のクレーンの軽負荷高速VH1~VH5を含めて、それらの結果の中から最も速度の低くかった結果を各クレーンが巻上げの速度制御装置INVの速度指令値V
*に書き込み、
図5に示す軽負荷高速度VHXまで増速する。この処理は、各クレーンが独立して行うが、同じデータを基に行うので全クレーンとも同じ結果が導き出される。
この時、定格速度から軽負荷高速度VHXへの加速AC移行する各クレーンのタイミングは、各クレーンが各クレーン間通信受信器RM1~RM4により軽負荷高速VH1~VH5の受信結果を受け取り、それにシーケンサPLCの演算時間が加わったタイミングで、すべてのクレーンがほぼ同時に同じ軽負荷高速度VHXへの加速が行われるが、僅かにタイミングがズレる。この僅かなタイミングのズレは速度差として出るので、それが負荷トルク変動として表れ、
図3に示す速度目標値ω
*と実速度検出値ωの偏差量として表れ自動速度設定器ASRの比例制御PCの制御により吸収され、各クレーンのトルク分担の均衡が保たれる。
【0029】
ところで、長尺で巨大な吊荷Wを対象とする場合、
図1に示す方式のほか、
図7に示すように、4台のクレーンCR1~CR4、各クレーンCR1~CR4上の2台のクラブにそれぞれ搭載されたワイヤドラムDR11~DR42及びワイヤドラムDR11~DR42に吊られたフックH11~H42を備えた設備を用いることがある。
【0030】
さらに、クレーン間の同調の信頼性を上げるために、
図8に示すように、天秤を用いることができる。
具体的には、1号クレーンCR1と2号クレーンCR2については、11号フックH11と12号フックH12の位置ズレは1号天秤BL1が機械的に解消し、21号フックH21と22号フックH22の位置ズレは2号天秤BL2が機械的に解消する。
また、3号クレーンCR3と4号クレーンCR4については、31号フックH31と41号フックH41の位置ズレは3号天秤BL3が機械的に解消し、32号フックH32と42号フックH42の位置ズレは4号天秤BL4が機械的に解消する。
そして、1号クレーンCR1と2号クレーンCR2のグループと、3号クレーンCR3と4号クレーンCR4のグループと間の位置ズレは、1号天秤BL1と2号天秤BL2で吊られた玉掛けワイヤ1 SL1と、3号天秤BL3と4号天秤BL4で吊られた玉掛けワイヤ2 SL2とにより吊られた吊荷W自身が天秤となり解消するものとなる。
これにより、連動用無線制御器TCXの運転信号を各クレーン搭載の連動操作用受信器RCXのクレーン間での受信ズレや、各クレーン間通信の送受信器のクレーン間での受信ズレ等に基づくクレーン間のズレ要因を機械的に解消することができる。
【0031】
しかしながら、
図8に示す天秤によるクレーン間の位置ズレを機械的に解消する方法も、クレーン内部の、例えば、11号フックH11と12号フックH12間の位置ズレは機械的に解消してくれない。例えば、同調がズレて11号フックH11に対し12号フックH12の位置が高くなってしまった場合、吊荷Wが軽い物体の場合は吊荷Wと玉掛けワイヤ1 SL1との間でスリップし、その摩擦で吊荷Wや玉掛けワイヤ1 SL1を傷付けてしまったり、吊荷Wが捻じり耐力がない物体の場合は玉掛けワイヤ1 SL1と玉掛けワイヤ2 SL2の間で吊荷Wが捻じられてしまい吊荷Wが歪んでしまったり、吊荷Wが重くて捻じりにも強い物体の場合は、12号フックH12と22号フックH22と31号フックH31と41号フックH41が過負荷になってしまう。
【0032】
この
図8の天秤により構成する方式においても、本発明の同調機能を用いることにより、前記の吊荷Wと玉掛けワイヤ間のスリップしようとする力や吊荷Wが捻じられようとする力や捻じりにより過負荷が生じようとする力に対し負荷分担の均衡を取る方向に同調効果が発揮されるので、吊荷Wと玉掛けワイヤ間のスリップや吊荷Wの捻じりや過負荷が生じることを防止することができる。
【0033】
このように、本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンを用いることで、3個以上の複数のフックでも共吊り同調ができることになり、例えば、
図1、
図7及び
図8に示すように、4台のクレーンで吊荷Wを吊ることで、クレーンと吊荷の荷重が建屋に加える荷重を建屋の広い範囲に分散することができる。
また、多くの台数のクレーンで吊ることにより、1台のクレーンの寸法が小さくなり、建屋も天井が小さくできたり、クレーンのフックが建屋の端に寄れるようになる。また、吊荷が大きな集合体になる前は小さい物体から組み上げられていくので、最終組み上げ前の小さいブロックの時には、クレーンを分割して作業ができ、
図7及び
図8の実施例では、4か所に分散して作業ができるので、作業効率が高くできる。
また、本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンは、2台のクレーンの場合でも、3台のクレーンの場合でも、4台でも、或いはそれ以上の台数でも、同様にクレーン台数を足しながらそれぞれが負荷分担の同調をすることが可能となるので、作業の進行状態に伴い重量が増加していく吊荷を、順次クレーンの台数を増やしながら効率よく作業を進めることができる。
【0034】
本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンは、共吊り連動するクレーンの巻上げ装置同士が信号をやり取りしながら同調するのではなく、それぞれの巻上げ装置が独立して別の巻上げ装置に合わせるように動作するのが特徴で、独立したクレーン内部で閉じられて制御されているので、共吊り連動クレーンに加わったり、或いは単独動作のクレーンになったり、共吊り連動クレーンの台数を変更したり自在に変更するのが容易なシステムになっている。
【0035】
以上、本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の同調機能付き共吊り連動クレーンによれば、3個以上のフックの共吊りを負荷分担の同調を行うことにより可能としたことで、小さいクレーンを多数連動して大きな吊荷を吊ることが可能になり、それに伴い2台のクレーンで吊る場合に比較し、建屋に掛かる荷重を分散したり、クレーンの寄り寸法を改善したり、建屋の天井を低くできたり、吊荷が大きな集合体になる前には、クレーンを分散して作業ができる等、様々なメリットがあり、産業上の利用価値が非常に高いものである。
【符号の説明】
【0037】
CR1 1号クレーン
CR2 2号クレーン
CR3 3号クレーン
CR4 4号クレーン
H11 11号フック
H12 12号フック
H21 21号フック
H22 22号フック
H31 31号フック
H32 32号フック
H41 41号フック
H42 42号フック
W 吊荷
WR ワイヤロープ
DR ワイヤドラム
LC 荷重計
GR 減速機
BR ブレーキ
IM モータ
INV 速度制御装置
PG パルスジェネレータ
PLC シーケンサ
OP クレーン運転士
TCX 連動用無線制御器
TC1 1号無線制御器
TC2 2号無線制御器
TC3 3号無線制御器
TC4 4号無線制御器
RCX 連動操作用受信器
RC1 1号操作受信器
RC2 2号操作受信器
RC3 3号操作受信器
RC4 4号操作受信器
TM1 1号クレーン間通信送信器
TM2 2号クレーン間通信送信器
TM3 3号クレーン間通信送信器
TM4 4号クレーン間通信送信器
RM1 1号クレーン間通信受信器
RM2 2号クレーン間通信受信器
RM3 3号クレーン間通信受信器
RM4 4号クレーン間通信受信器
V* 速度指令値
LAD 線形加速変換器
ω* 速度目標値
ω 実速度検出値
ASR 自動速度設定器
PC 比例制御
LM リミッタ
T* トルク目標値
T 負荷トルク
BRA ブレーキ開閉
BRC ブレーキ閉
BRO ブレーキ開
SU 巻上げ起動合わせ
SD 巻下げ起動合わせ
UP 巻上げ
DW 巻下げ
AC 加速
DC 減速
HC 負荷トルク検出
VHX 軽負荷高速度
V 速度
T1 トルク値1(25%)
T2 トルク値2(35%)
T3 トルク値3(45%)
T4 トルク値4(60%)
T5 トルク値5(75%)
VH1 軽負荷高速1(200%)
VH2 軽負荷高速2(169%)
VH3 軽負荷高速3(149%)
VH4 軽負荷高速4(129%)
VH5 軽負荷高速5(115%)
DR11 1号ワイヤドラム1
DR12 1号ワイヤドラム2
DR21 2号ワイヤドラム1
DR22 2号ワイヤドラム2
DR31 3号ワイヤドラム1
DR32 3号ワイヤドラム2
DR41 4号ワイヤドラム1
DR42 4号ワイヤドラム2
BL1 1号天秤
BL2 2号天秤
BL3 3号天秤
BL4 4号天秤
SL1 玉掛けワイヤ1
SL2 玉掛けワイヤ2
SL3 玉掛けワイヤ3
SL4 玉掛けワイヤ4
【手続補正書】
【提出日】2021-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3個以上の複数のフックで共吊り連動を行うクレーンにおいて、
前記複数のフックの巻上げモータの速度制御を、巻上げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなるように、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるとそれにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように、それぞれ制御することにより、
巻上げ共吊り連動時においては、他のフックより荷重分担が大きなフックは他のフックより速度が遅くなり、他のフックより荷重分担が小さなフックは他のフックより速度が速くなるように、巻下げ共吊り連動時においては、他のフックより荷重分担が大きなフックは他のフックより速度が速くなり、他のフックより荷重分担が小さなフックは他のフックより速度が遅くなるように、それぞれ動作させるようにして、
複数のフックの共吊り連動時に複数のフックが互いに荷重を分担し合うようにし、
かつ、前記複数のフックの巻上げ制御装置の設定を、複数のフックの巻上げ装置の容量が等容量の場合は、モータ負荷に対する速度の変化率を同一にし、複数のフックの巻上げ装置の容量が異なる場合は、各フックの巻上げ装置の容量の大きさの比に応じて、モータ負荷に対する速度の変化率を小さく設定することにより、各フックの巻上げ装置の容量に対する負荷分担が均等になるように制御を行うようにする
ことを特徴とする同調機能付き共吊り連動クレーン。
【請求項2】
前記巻上げ共吊り連動時又は巻下げ共吊り連動時に、モータ始動時の出力速度特性を、巻上げ時においては、過負荷状態では速度が出ない特性とし、負荷が下がると低速が出る特性とし、巻下げ時においては、負荷がゼロの時には速度が出ない特性とし、負荷が掛かると低速が出る特性とし、ブレーキ解放後のすべてのフックの負荷分担の連動が取れる時間を待ってから加速をするようにしたことを特徴とする請求項1に記載の同調機能付き共吊り連動クレーン。
【請求項3】
前記巻上げ共吊り連動時又は巻下げ共吊り連動時に、各々のクレーンを定格速度まで一旦加速し、定格速度での負荷トルクにより出力可能な軽負荷高速の速度を各々のクレーンで算出し、該速度を共吊り連動を行う他のクレーンに送信し合い、各々のクレーンから送信された軽負荷高速の速度を受信し、それに自身のクレーンの軽負荷高速の速度を含めた中で最も遅い速度を速度指令値として高速運転をさせるに当たり、軽負荷高速運転を行う
際に、巻上げ時においては、モータ負荷が大きくなるにつれて速度が遅くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が速くなるように、巻下げ時においては、モータ負荷が大きくなるにつれて速度が速くなり、モータ負荷が小さくなるとそれにつれて速度が遅くなるように、それぞれ制御することにより、軽負荷高速運転中に負荷分担がズレないようにする機能を有するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の同調機能付き共吊り連動クレーン。
【請求項4】
第1のクレーンの第1のフックと隣接する第2のクレーンの第1のフックとで第1の天秤を共吊りし、第1のクレーンの第2のフックと隣接する第2のクレーンの第2のフックとで第2の天秤を共吊りし、第1の天秤と第2の天秤で第1の玉掛けワイヤロープを吊るし、第3のクレーンの第1のフックと隣接する第4のクレーンの第1のフックとで第3の天秤を共吊りし、第3のクレーンの第2のフックと隣接する第4のクレーンの第2のフックとで第4の天秤を共吊りし、第3の天秤と第4の天秤で第2の玉掛けワイヤロープを吊るし、第1の玉掛けワイヤロープと第2の玉掛けワイヤロープで長尺物の吊荷を吊り下げるようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の同調機能付き共吊り連動クレーン。