(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171763
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ニンテダニブを製造するための中間体として公知の2-インドリノン誘導体の合成
(51)【国際特許分類】
C07D 209/34 20060101AFI20231128BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20231128BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C07D209/34
A61K31/496
A61P11/00
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023145396
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2020526869の分割
【原出願日】2018-11-02
(31)【優先権主張番号】20176028
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】506090750
【氏名又は名称】フェルミオン オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーソラ、アンチ
(72)【発明者】
【氏名】トイス、ヤン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】活性医薬成分ニンテダニブの製造における重要な中間体である、メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを、高収率かつ十分な純度で、中間体の単離の必要なく、そして非常に操作的に容易に得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、高い反応温度および反応中に酢酸を共沸除去できる反応溶媒を用いるメチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートからのメチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの製造方法であって、
a)メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを高沸点芳香族炭化水素溶媒中で無水酢酸と反応させ、溶液中にメチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート中間体を生成する工程、
b)反応溶媒混合物の一部を留去する工程、
c)任意に、新しい反応溶媒を反応容器に加え、留去した溶媒を補償する工程、
d)メチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート中間体をトリメチルオルソベンゾエートと反応させる工程、
e)反応溶媒混合物の一部を留去する工程、
f)反応混合物を冷却する工程、および
g)固体生成物を単離する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤において使用される生物学的に活性な分子、特に活性医薬成分ニンテダニブの製造における重要な中間体である、メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式I:
【化1】
を有するニンテダニブエシラート、(Z)-メチル3-(((4-(N-メチル-2-(メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートエタンスルホネートは、突発性肺線維症の治療に有効なトリプルアンギオキナーゼ阻害剤である。ドセタキセルとの組み合わせにおいて、ニンテダニブエシラートは、いくつかの種類の非小細胞肺がんの治療に使用されている(非特許文献1;非特許文献2)。その化合物およびその合成は、例えば特許文献1~4に開示されている。
【0003】
特許文献1は、メチル(E)-1-アセチル-3-(エトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート、メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート中間体のエトキシ類似体の製造などの、6-メトキシカルボニル-および6-エトキシカルボニル-置換インドリノン誘導体、例えばニンテダニブの中間体および合成方法を開示している。エトキシ類似体は、メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートをトリエチルオルソベンゾエートと21.75等量過剰の無水酢酸とで110℃で処理することにより製造した。完全に溶媒を除去したのち、蒸発残差を石油エーテルから再結晶し、乾燥させて中間体を収率61%で得た。
【0004】
非特許文献2は、大規模合成のための段階的な手順を説明している。メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを17.6等量の無水酢酸で8時間、130℃で処理した。冷却後、沈殿したメチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを収率73%で単離し、その後さらに無水酢酸中、120℃で6時間、トリメチルオルソベンゾエートと反応させた。反応完了後、混合物を濃縮して乾燥し、残渣を石油エーテルで粉砕した。ろ過および乾燥後、メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを収率56%で得た。この2つの単離手順の総収率は40.9%であった。
【0005】
特許文献3には、改良された三単離プロセスが開示されている。まず、メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを、トルエン中、3時間還流で無水クロロ酢酸によりN-クロロアセチル化した。冷却およびメチルクロロヘキサン処理後、メチル1-(2-クロロアセチル)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを収率93.5%で単離した。得られたクロロアセチル化中間体を、トルエン中、無水酢酸の存在下、トリメチルオルソベンゾエートでさらに処理した。反応完了後、メチル(E)-1-(2-クロロアセチル)-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを収率91.7%で単離した。塩基により触媒されたクロロアセチルの切断の後、メチル(E)-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを収率94.6%で単離した。この三単離プロセスの総収率は81%であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/27081号
【特許文献2】国際公開第2004/013099号
【特許文献3】国際公開第2009/071523号
【特許文献4】国際公開第2009/071524号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cancer Res., 2008, 68, 4774-4782
【非特許文献2】J. Med. Chem., 2009, 52, 4466-4480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献は、すでにニンテダニブの製造方法を記載しているが、公知の方法は産業規模での使用に容易に適合できないため、当該薬物の合成に有用な中間体の製造のための他の汎用的で簡易な方法の開発に依然として関心が寄せられている。特に問題となるのは、蒸発乾固であるが、無水クロロ酢酸などの有害な試薬の使用および複雑な多段階プロセスにかかるコストも問題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
今回、本発明者らは、メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを高収率かつ十分な純度で、中間体の単離の必要なく、そして非常に操作的に容易に得ることができることを発見した。この改良の鍵は、メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの無水酢酸によるN-アセチル化への溶媒の導入である。この変更が反応の選択性を大きく改善し、トリメチルオルソベンゾエートでの処理前に生成された酢酸の共沸蒸留による部分的な除去を可能とする。トリメチルオルソベンゾエートとの反応中に産生された揮発性物質が留去され、十分に純粋なメチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートが、面倒な蒸発乾固および再結晶または粉砕の必要なく、ろ過により直接的に得られる。
【0010】
本発明は、メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートからのメチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの製造方法に関する。N-アセチル化反応およびエノールエーテルの生成が、酢酸との共沸を形成することが可能な高沸点芳香族炭化水素溶媒中で行われる場合、生成された酢酸を反応段階中に除去することができ、したがって、酢酸が、トリメチルオルソベンゾエートの安息香酸メチルへの分解を誘導するのを防ぐことができるということに気づいた。このように、沈殿した生成物を反応混合物から直接単離でき、高収率および高純度で生成物を得るために、従来技術においては使用される、蒸発乾固や再結晶、または例えばクロマトグラフィー法による付加的な精製などは必要とされない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
驚くべきことに、改善された収率、原料コストの低減および操作簡便性などの顕著な利益がメチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの製造のための本発明の方法により達成できることが見出された。さらに、本方法においては1回の単離工程が必要とされるのみであり、蒸留乾固を省くことができるため、本発明の方法はより大きな産業規模に適している。
【0012】
本発明による方法は、以下の一般的な合成スキーム1に示される。
【化2】
【0013】
本発明を特徴づける性質は、添付の特許請求の範囲に示されている。
【0014】
本明細書に用いられる場合、用語「所望の変換」は、90%超の変換を意味する。
【0015】
本明細書に用いられる場合、用語「還流」は、生成物流れの一部がプロセスに返還され得る化学的プロセスを意味する。
【0016】
本明細書に用いられる場合、用語「還流温度」は、溶媒または溶媒系が還流するまたは沸騰する温度を意味する。
【0017】
本明細書に用いられる場合、用語「高温」は、室温より高い(すなわち25℃より高い)任意の温度を意味する。
【0018】
一実施態様において、本発明は、メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの製造方法であって、
a)メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを高沸点芳香族炭化水素溶媒中で無水酢酸と反応させ、溶液中にメチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート中間体を生成する工程、
b)反応溶媒混合物の一部を留去する工程、
c)任意に、新しい反応溶媒を反応容器に加え、留去した溶媒を補償する工程、
d)メチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート中間体をトリメチルオルソベンゾエートと反応させる工程、
e)反応溶媒混合物の一部を留去する工程、
f)反応混合物を冷却する工程、および
g)固体生成物を単離する工程
を含む方法を提供する。
【0019】
本発明の別の実施態様は、本発明の方法によって製造されたメチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを出発物質として用いるニンテダニブの製造である。
【0020】
本発明によれば、メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートが、適切な溶媒中、無水酢酸によりN-アセチル化される。無水酢酸は、典型的には、メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートに対してモル過剰で、例えば5~12モル等量で、より典型的には8~10モル等量で使用される。その反応に適切な溶媒は、トルエン、キシレンおよびクロロベンゼンなどの酢酸と共沸できる高沸点芳香族炭化水素溶媒である。特に好ましい溶媒はトルエンである。使用される溶媒の量は、典型的には3~7容量、好ましくは3~5容量、なおより好ましくは5容量である。反応は、80~132℃の間、より典型的にはトルエンが溶媒として使用される場合は115~120℃の間、そしてキシレンが溶媒として使用される場合は125~132℃の間の高温で行われる。反応時間は、15~25時間、より好ましくはトルエン中で18~23時間、キシレン中で4~6時間の間である。
【0021】
メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの消費およびメチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの生成後、生成された酢酸の一部を留去する。蒸留を大気圧または真空下で行う。典型的には、1~4容量の溶媒が留去され、より典型的には2~3容量が、なおより典型的には2容量が留去される。蒸留された容量は新しい溶媒で置き換えられる。説明した方法で操作すると、有害な酢酸の量を効率的に減少させることができ、メチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートとトリメチルオルソベンゾエートとの反応から良好な収率が得られる。
【0022】
メチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートとトリメチルオルソベンゾエートとの反応は、高温で行われる。高温は、好ましくは100と140℃との間、より好ましくは110℃と130℃との間である。トリメチルオルソベンゾエートは、加熱した反応に1回で迅速に加えられ、典型的には、メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートに対して、モル過剰、例えば2.5~6モル等量、より典型的には3~4の間のモル等量で使用される。必要な場合、追加の量のトリメチルオルソベンゾエートを後段階でも反応に加えることができる。メチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートとトリメチルオルソベンゾエートとの反応中、溶媒が留去される。典型的には、メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートについて5~8容量の揮発性物質、好ましくは6~8容量の揮発性物質が反応中に留去される。所望の変換は、メチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート中間体の90%超が消費されることを意味し、2~6時間、より好ましくは3~4時間で得られる。
【0023】
上述したように、酢酸がメチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートとトリメチルオルソベンゾエートとの間の反応にかなりネガティブな影響を及ぼすということを発見した。一方、無水酢酸は、トリメチルオルソベンゾエートの活性化に必要とされる。無水酢酸がトリメチルオルソベンゾエートを活性化し、活性種がメチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートと反応する場合、酢酸が生成され、トリメチルオルソベンゾエートの安息香酸メチルへの分解を誘導する。
【0024】
したがって、本発明の別の実施形態は、トリメチルオルソベンゾエートの活性化の間に形成される酢酸の、共沸蒸留による除去である。
【0025】
本発明は以下の非限定的な実施例によりさらに説明される。
【実施例0026】
実施例1.メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート
メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(20g、105mmol)を反応容器に入れた。その容器に温度計、撹拌機およびコンデンサーを取り付けた。トルエン(100ml、5容量)を加え、次に無水酢酸(90ml、954mmol)を加え、混合物を加熱し還流(115~118℃)した。還流を18時間続け、サンプルをメチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートに対してHPLCで分析した(nmt2.0a-%)。メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを消費したら、40ml(2容量)の溶媒を留去し、次いで新しいトルエン(40ml、2容量)を加えた。トリメチルオルソベンゾエート(53.9ml、314mmol)を、温度を110℃超で維持しながら数分間で沸騰している反応に加えた。添加完了後、蒸留が開始し、反応混合物の温度を120℃より高くした。8容量(160ml)の溶媒を留去し、その後反応温度を110~115℃の間に調整した。還流を2時間続け、メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの沈殿が反応中に始まった。HPLCクロマトグラムによると93.6%変換が達成された。反応混合物を5時間のあいだ室温まで冷却し、次いでさらに0℃に冷却し、0℃で2時間撹拌した。沈殿をろ過し、EtOAc(2×20ml、2×1容量)で洗浄し、真空オーブン中、60℃で16時間乾燥し、生成物を黄褐色の粉末として得た(33.99g、90.85%、98.36a-%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.89 (dd, J = 1.5 Hz, J = 0.6 Hz, 1H), 8.0 (dd, J = 8.0 Hz, J = 1.6 Hz, 1H), 7.94 (dd, J = 8.1 Hz, J = 1.6 Hz, 1H), 7.69-7.53 (m, 3H), 7.48-7.33 (m, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 2.57 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 171.6, 171.3, 167.3, 167.2, 136.8, 131.0, 130.9, 129.1, 128.8, 128.5, 128.1, 126.5, 122.6, 116.7, 106.3, 57.9, 52.2, 27.0.
【0027】
実施例2.メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート
メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(20g、105mmol)を反応容器に入れた。その容器に温度計、撹拌機およびコンデンサーを取り付けた。キシレン(100ml、5容量)を加え、次に無水酢酸(90ml、954mmol)を加え、混合物を130℃に加熱した。加熱を5時間続けた。40ml(2容量)の溶媒を留去し、次いで新しいキシレン(40ml、2容量)を加えた。トリメチルオルソベンゾエート(53.9ml、314mmol)を、120℃で反応に加え、次いで130~135℃に加熱した。6容量(120ml)の溶媒を留去し、混合物に結晶腫を入れ(was seeded)、2時間のあいだ室温に冷却した。混合物をさらに0℃に冷却し、0℃で2時間撹拌した。生成物をろ過し、EtOAc(2×20ml、2×1容量)で洗浄し、真空オーブン中、70℃で18時間乾燥した。黄褐色の粉末の重量は31.27gであった(79.29%、93.20a-%)。
【0028】
実施例3.メチル(Z)-3-(((4-(N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート
メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(25g)、N-(4-アミノフェニル)-N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(22.4g、製造については例えば米国特許第6762180号明細書または米国特許第8304541号明細書参照)、メタノール(200ml)およびN,N-ジメチルホルムアミド(50ml)の不均一混合物を撹拌し、加熱して3~4時間還流した。透明な茶色の溶液を得た。サンプルを引き出し、限界出発物質(limiting starting material)の存在を分析した(nmt1%)。次いで、ピペリジン(10.5ml)を加え、混合物を還流下、もう30~60分間撹拌した。生成物を撹拌中に沈殿させた。反応混合物を中間体について分析し、HPLCによる測定としてnmt1%が残っていたら、混合物を0℃まで冷却し、2時間から一晩撹拌した。固体をろ過により単離し、メタノール(1洗浄につき75ml)で2回洗浄し、その後真空オーブン中、40℃で一晩乾燥し、メチル(Z)-3-(((4-(N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(33.7g、88%、99.8a-%)を明るい黄色の固体として得た。
【0029】
実施例4.ニンテダニブエシラート
(Z)-3-(((4-(N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(75g)のメタノール(500ml)および水(6ml)の懸濁液を60℃に加熱し、エタンスルホン酸(70w-%aq.、18.3ml)をその混合物に加えた。透明の溶液を得た。その溶液を50℃に冷却し、結晶種を入れ、2-プロパノール(500ml)を、温度を50℃に維持しながら加えた。得られた懸濁液を0℃に冷却し、1~2時間撹拌し、その後、ろ過により単離し、2-プロパノール(300ml)で洗浄した。固体を真空オーブン中、40℃で一晩乾燥し、ニンテダニブエシラート(84.5g、89%、99.8a-%)を明るい黄色の固体として得た。
【0030】
本発明は、次の実施態様を提供する。
(1)メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの製造方法であって、
a)メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートを高沸点芳香族炭化水素溶媒中で無水酢酸と反応させ、溶液中にメチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート中間体を生成する工程、
b)反応溶媒混合物の一部を留去する工程、
c)任意に、新しい反応溶媒を反応容器に加え、留去した溶媒を補償する工程、
d)メチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート中間体をトリメチルオルソベンゾエートと反応させる工程、
e)反応溶媒混合物の一部を留去する工程、
f)反応混合物を冷却する工程、および
g)固体生成物を単離する工程
を含む方法。
(2)工程a)における高沸点芳香族炭化水素溶媒がトルエン、キシレンまたはクロロベンゼンである上記(1)記載の方法。
(3)工程a)における高沸点芳香族炭化水素溶媒がトルエンである上記(1)記載の方法。
(4)工程a)における反応温度が80℃と132℃との間である上記(1)記載の方法。
(5)工程b)において留去される溶媒の量が、充填したメチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの量に対して1~4容量の溶媒である上記(1)記載の方法。
(6)留去される溶媒の量が、充填したメチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレートの量に対して2~3容量である上記(5)記載の方法。
(7)工程d)における反応温度が100℃と140℃との間である上記(1)記載の方法。
(8)反応温度が反応混合物の還流温度である上記(4)および(7)記載の方法。
(9)工程b)およびe)における反応溶媒の蒸留が、生成された酢酸の共沸蒸留による除去を含む上記(1)記載の方法。
(10)メチル(E)-1-アセチル-3-(メトキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレートをN-(4-アミノフェニル)-N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミドと反応させ、ニンテダニブを生成する工程をさらに含む上記(1)記載の方法。