(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171767
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】耐指紋性の評価方法、光学部材の生産方法および光学部材
(51)【国際特許分類】
G02B 1/18 20150101AFI20231128BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20231128BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G02B1/18
G02B1/14
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145681
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2018161081の分割
【原出願日】2018-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】星野 弘気
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 昌也
(72)【発明者】
【氏名】大類 知生
(57)【要約】
【課題】耐指紋性を定量的に、かつ高い再現性で評価することのできる耐指紋性の評価方法、当該評価方法を利用した光学部材の生産方法、および耐指紋性に優れた光学部材を提供する。
【解決手段】被評価物の表面の、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を測定し、次いで、被評価物の表面に、オレイン酸希釈液を塗布し、乾燥させた後、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を測定し、オレイン酸希釈液の塗布前後における明度L*を指標として、被評価物の表面の耐指紋性を評価する、耐指紋性の評価方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、最表面にハードコート層とを備えるハードコートフィルムであって、
前記ハードコートフィルムは、指紋の付着し得る物品の当該指紋の付着し得る最表面に、前記ハードコート層が位置するように配置され、
前記ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性成分と、微粒子と、フッ素系化合物である表面調整剤とを含有するコーティング組成物の硬化物であり、
前記活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対する前記表面調整剤の配合割合が、0.01質量部以上、0.2質量部以下である
ことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記表面調整剤が、アダマンタン骨格を有するフッ素系化合物である、請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対する前記微粒子の配合割合が、1質量部以上、30質量部以下である、請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記微粒子の平均粒径が、0.1μm以上、20μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記物品がタッチパネルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のハードコートフィルムを備えるタッチパネルであって、
当該タッチパネルにおいて指紋の付着し得る最表面に、前記ハードコート層が位置するように配置されている、
タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐指紋性の評価方法、当該評価方法を利用した光学部材の生産方法、および光学部材、特に耐指紋性に優れた光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器において、表示装置と入力手段とを兼ねたタッチパネルが多く利用されている。このタッチパネルの表面には、通常、傷付き防止のために、ハードコート層を有するハードコートフィルムが設けられる。
【0003】
かかるタッチパネルは、指で操作されることが多いため、タッチパネルの表面には、指脂による指紋が付着するのが通常である。このようにタッチパネルの表面に指紋が付着すると、外観が悪くなるとともに、表示画像が見難くなってしまう。したがって、上記のハードコートフィルムには、付着した指紋が見難い性能としての耐指紋性が要求される。
【0004】
従来、耐指紋性を評価するための明確な指標はなく、参考として水やオレイン酸の接触角を測定したり、実際に指紋を付着させたときの見え方を官能評価したりするに過ぎなかった。しかしながら、測定された接触角と官能評価との間の相関性は低く、また、目視による官能評価だけでは再現性が低いという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1は、試験体に光を照射し、該試験体で反射又は透過した散乱光を検出して、試験体の表面の汚染度合いを評価する汚染性評価方法を提案している。具体的には、国際照明委員会(CIE)で規定されるL*a*b*カラーモデルにおけるΔE*abを利用し、表面が人為的に汚染された後のΔE*abと、その後洗浄処理を施した後のΔE*abとの差によって、汚染度合いの評価を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/029946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のようにΔE*abを利用した場合、表面が人為的に汚染された後のΔE*abと、その後洗浄処理を施した後のΔE*abとの差が絶対的に小さく、指紋の付着の程度が分かり難かった。したがって、耐指紋性を評価するには十分な指標ではなかった。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、耐指紋性を定量的に、かつ高い再現性で評価することのできる耐指紋性の評価方法、当該評価方法を利用した光学部材の生産方法、および耐指紋性に優れた光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、被評価物の表面の、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を測定し、次いで、前記被評価物の表面に、オレイン酸希釈液を塗布し、乾燥させた後、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を測定し、前記オレイン酸希釈液の塗布前後における前記明度L*を指標として、前記被評価物の表面の耐指紋性を評価することを特徴とする耐指紋性の評価方法を提供する(発明1)。
【0010】
なお、本発明における「耐指紋性」とは、付着した指紋が、目視によって見難い性能をいうものとする。
【0011】
上記発明(発明1)によれば、耐指紋性を定量的に、かつ高い再現性で評価することができる。また、目視による評価との間の相関性も高い。
【0012】
上記発明(発明1)において、オレイン酸希釈液は、オレイン酸を揮発性溶剤によって希釈した液であることが好ましい。また、揮発性溶剤は、アルコール系溶剤であることが好ましく、アルコール系溶剤は、エタノールであることが好ましい。オレイン酸希釈液におけるオレイン酸の濃度は、0.12質量%以上、12質量%以下であることが好ましい。オレイン酸希釈液は、被評価物の表面に、バーコーターにより塗布することが好ましい。
【0013】
上記発明(発明1)においては、前記オレイン酸希釈液の塗布前における前記明度L*を塗布前明度L*とし、前記オレイン酸希釈液の塗布後における前記明度L*を塗布後明度L*とし、前記塗布後明度L*から前記塗布前明度L*を差し引いた変化量ΔL*によって、前記被評価物の表面の耐指紋性を評価するか、前記オレイン酸希釈液の塗布前における前記明度L*を塗布前明度L*とし、前記オレイン酸希釈液の塗布後における前記明度L*を塗布後明度L*とし、下記式によって算出される変化率(%)によって、前記被評価物の表面の耐指紋性を評価することが好ましい(発明2,3)。また、両者によって評価してもよい。
変化率={(塗布後明度L*-塗布前明度L*)/塗布前明度L*}×100
【0014】
上記発明(発明1~3)において、前記被評価物における前記オレイン酸希釈液が塗布される表面には、ハードコート層が存在することが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1~4)においては、前記被評価物が、光学部材であることが好ましい(発明5)。
【0016】
第2に本発明は、光学部材を得る工程と、前記光学部材を被評価物として、前記耐指紋性の評価方法(発明1~5)によって、耐指紋性の評価を行う評価工程とを備えたことを特徴とする光学部材の生産方法を提供する(発明6)。
【0017】
第3に本発明は、オレイン酸希釈液の塗布前における、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を塗布前明度L*とし、オレイン酸希釈液の塗布後における、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を塗布後明度L*としたときに、前記塗布後明度L*から前記塗布前明度L*を差し引いた変化量ΔL*が、0.3未満であることを特徴とする光学部材を提供する(発明7)。
【0018】
第4に本発明は、オレイン酸希釈液の塗布前における、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を塗布前明度L*とし、オレイン酸希釈液の塗布後における、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を塗布後明度L*としたときに、下記式によって算出される変化率が、6%以下であることを特徴とする光学部材を提供する(発明8)。
変化率={(塗布後明度L*-塗布前明度L*)/塗布前明度L*}×100
【0019】
上記発明(発明7,8)において、前記光学部材における前記オレイン酸希釈液が塗布される表面には、ハードコート層が存在することが好ましい(発明9)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る耐指紋性の評価方法によれば、耐指紋性を定量的に、かつ高い再現性で評価することができる。また、本発明に係る光学部材の生産方法によれば、耐指紋性を定量的に、かつ高い再現性で評価した上で、光学部材を生産することができる。さらに、本発明に係る光学部材は、耐指紋性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔耐指紋性の評価方法〕
本発明の一実施形態に係る耐指紋性の評価方法は、被評価物の表面の、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を測定し、次いで、被評価物の表面に、オレイン酸希釈液を塗布し、乾燥させた後、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*を測定し、オレイン酸希釈液の塗布前後における上記明度L*を指標として、被評価物の表面の耐指紋性を評価する。
【0023】
上記の評価方法によれば、耐指紋性を定量的に、かつ高い再現性で評価することができる。また、目視による評価との間の相関性も高い。
【0024】
被評価物の種類としては特に限定されず、上記耐指紋性の評価方法によれば、種々の被評価物について、耐指紋性を評価することができる。そのような被評価物としては、指紋の付着し易い物、または指紋の付着が目立ち易い物が好ましく挙げられ、平滑な表面を有する物が特に好ましく挙げられる。また、当該被評価物は、透明な物であってもよいし、不透明な物であってもよいし、無色の物であってもよいし、有色の物であってもよいが、中でも、透明な物が好ましく、特に無色透明の物が好ましい。具体的な被評価物としては、例えば、光学部材、光ディスク、筐体等が挙げられる。光学部材としては、例えば、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス板;それらの片面または両面に、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)を設けたもの;それらを備えた表示体、タッチパネル、またはそれらの一部材などが挙げられる。上記の中でも、特に、最表面(指が接触する面)にハードコート層を有するプラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス板、表示体、タッチパネル等が好ましい。
【0025】
上記明度L*の測定方法の詳細は後述する通りであるが、被評価物が透明部材(特に透明フィルム)である場合、被評価物を黒色板に貼付した上で測定することが好ましい。これにより、被評価物に付着した指紋を明度L*としてより的確に測定することができる。
【0026】
この場合に使用する黒色板の色味としては、CIE1976L*a*b*表色系により規定される、明度L*が0.1~60であり、色度a*が-40~40であり、色度b*が-40~40であることが好ましく、特に明度L*が1~30であり、色度a*が-20~20であり、色度b*が-20~20であることが好ましく、さらには明度L*が2~15であり、色度a*が-10~10であり、色度b*が-10~10であることが好ましい。
【0027】
上記黒色板の材料は特に限定されず、例えば、プラスチック板、金属板、セラミック板等を使用することができ、中でも上記の黒色の色味を出し易いプラスチック板が好ましい。プラスチック板としては、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル樹脂板等が挙げられ、中でも上記の黒色の色味を出し易いアクリル板が好ましい。
【0028】
被評価物を黒色板に貼付する方法は特に限定されないが、透明度が高く、屈折率が1に近い粘着剤層を有する粘着シートを使用することが好ましい。当該粘着剤層のヘイズ値(JIS K7136:2000に準じて測定した値)は、10%以下であることが好ましく、特に5%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることが好ましい。また、当該粘着剤層の屈折率(JIS K7142によるB法)は、1.2~1.8であることが好ましく、特に1.3~1.6であることが好ましく、さらには1.4~1.55であることが好ましい。
【0029】
被評価物の表面に塗布するオレイン酸希釈液は、オレイン酸を揮発性溶剤によって希釈した液であることが好ましい。揮発性溶剤は、沸点が35~110℃のものが好ましい。かかる揮発性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0030】
上記の中でも、オレイン酸希釈液の塗布後における明度L*を大きくして、耐指紋性の評価をし易くする観点から、アルコール系溶剤が好ましく、特にエタノールが好ましい。
【0031】
上記オレイン酸希釈液におけるオレイン酸の濃度は、下限値として0.12質量%以上であることが好ましく、特に0.15質量%以上であることが好ましく、さらには0.18質量%以上であることが好ましい。これにより、実際の指紋の付着し易さに近いものとなる。また、上記オレイン酸希釈液におけるオレイン酸の濃度は、上限値として12質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましく、特に2質量%以下であることが好ましく、さらには0.5質量%以下であることが好ましい。これにより、実際の指紋の拭き取り易さに近いものとなる。
【0032】
被評価物の表面にオレイン酸希釈液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。上記の中でも、バーコート法、すなわちバーコーターにより塗布することが好ましい。バーコーターによれば、被評価物の平面状の表面にオレイン酸希釈液を均一に塗布することができ、それにより被評価物の表面にオレイン酸層を均一に形成して、オレイン酸希釈液の塗布後における明度L*を正確に測定することが可能となる。バーコーターとしては、特にワイヤーバーが好ましい。
【0033】
被評価物の表面にオレイン酸希釈液を塗布した後は、当該オレイン酸希釈液を乾燥させて、被評価物の表面にオレイン酸層を形成する。乾燥の条件としては、使用した希釈溶媒に応じて適宜決定すればよいが、被評価物の表面にオレイン酸層を均一に形成する観点から、5℃~80℃、特に20℃~40℃で乾燥させることが好ましい。特に、希釈溶媒としてエタノールを使用した場合には、常温常圧(主として23℃、50%RH)で自然乾燥させることが好ましい。
【0034】
上記のようにしてオレイン酸希釈液を乾燥させたら、再度、前述した方法と同じ方法により、被評価物の表面(オレイン酸層が形成された面)の明度L*を測定する。
【0035】
ここで、オレイン酸希釈液の塗布前に測定した明度L*を「塗布前明度L*」といい、オレイン酸希釈液の塗布後に測定した明度L*を「塗布後明度L*」というものとする。本実施形態では、塗布前明度L*および塗布後明度L*を指標として、被評価物の表面の耐指紋性を評価する。
【0036】
具体的には、第1に、塗布後明度L*から塗布前明度L*を差し引いた変化量ΔL*によって、被評価物の表面の耐指紋性を評価することができる。この場合、変化量ΔL*が小さい方が耐指紋性に優れるということができる。優れた耐指紋性を有するというためには、変化量ΔL*は、0.3未満であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、特に0.12以下であることが好ましく、さらには0.04以下であることが好ましい。なお、変化量ΔL*の下限値は0であることが最も好ましいが、通常は、0.01以上であることが好ましく、特に0.02以上であることが好ましい。
【0037】
第2に、下記式によって算出される明度L*の変化率(%)によって、被評価物の表面の耐指紋性を評価することができる。
変化率={(塗布後明度L*-塗布前明度L*)/塗布前明度L*}×100
この場合、変化率が小さい方が耐指紋性に優れるということができる。優れた耐指紋性を有するというためには、明度L*の変化率は、6%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、特に2%以下であることが好ましく、さらには1.0%以下であることが好ましく、0.9%以下であることが最も好ましい。なお、変化率の下限値は0%であることが最も好ましいが、通常は、0.01%以上であることが好ましく、特に0.1%以上であることが好ましい。
【0038】
なお、本発明における塗布前明度L*および塗布後明度L*を指標とした耐指紋性の評価方法は、上記に限定されるものではない。例えば、(塗布後明度L*)2-(塗布前明度L*)2の値や、当該値の平方根等を指標とすることもできる。
【0039】
〔光学部材の生産方法〕
本発明の一実施形態に係る光学部材の生産方法は、光学部材を得る工程と、当該光学部材を被評価物として、前述した耐指紋性の評価方法によって、耐指紋性の評価を行う評価工程とを備えている。かかる光学部材の生産方法によれば、上記評価工程において、耐指紋性を定量的に、かつ高い再現性で評価した上で、光学部材を生産することができる。そのため、耐指紋性に優れた光学部材を高い歩留まりで生産することができる。
【0040】
より具体的には、サンプルとしての光学部材を製造し(光学部材を得る工程)、当該光学部材を被評価物として、前述した耐指紋性の評価方法によって、耐指紋性の評価を行い(評価工程)、耐指紋性に優れていると判断されたサンプルの製造方法と同じ製造方法によって、光学部材を製造する(光学部材を得る工程)ことが好ましい。
【0041】
光学部材の種類としては、前述したものが挙げられる。それらの中でも、特に、最表面(指が接触する面)にハードコート層を有するプラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス板、表示体、タッチパネル等が好ましい。
【0042】
光学部材自体は、従来公知の方法によって製造することができる。ただし、耐指紋性に優れた光学部材については、後述する方法によって製造することが好ましい。
【0043】
〔光学部材〕
本発明の第1の実施形態に係る光学部材は、前述した塗布後明度L*から塗布前明度L*を差し引いた変化量ΔL*が、0.3未満の光学部材である。また、本発明の第2の実施形態に係る光学部材は、前述した塗布後明度L*および塗布前明度L*に基づいて、下記式によって算出される変化率が、6%以下の光学部材である。
変化率={(塗布後明度L*-塗布前明度L*)/塗布前明度L*}×100
【0044】
上記第1の実施形態に係る光学部材および第2の実施形態に係る光学部材は、耐指紋性に優れ、すなわち、付着した指紋が見難い性能に優れる。この優れた耐指紋性は、定量的に、かつ高い再現性で評価されたものである。
【0045】
耐指紋性の観点から、第1の実施形態に係る光学部材における上記変化量ΔL*は、0.2以下であることが好ましく、特に0.12以下であることが好ましく、さらには0.04以下であることが好ましい。また、耐指紋性の観点から、第2の実施形態に係る光学部材における上記変化率は、4%以下であることが好ましく、特に2%以下であることが好ましく、さらには1.0%以下であることが好ましく、0.9%以下であることが最も好ましい。なお、上記変化量ΔL*の下限値は0であることが最も好ましいが、通常は、0.01以上であることが好ましく、特に0.02以上であることが好ましい。また、上記変化率の下限値は0%であることが最も好ましいが、通常は、0.01%以上であることが好ましく、特に0.1%以上であることが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る光学部材の種類としては、前述したものが挙げられる。それらの中でも、特に、最表面(指が接触する面)にハードコート層を有するプラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス板、表示体、タッチパネル等が好ましい。
【0047】
本実施形態に係る光学部材について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る光学部材1は、基材11と、基材11の一方の面に形成されたハードコート層12とからなる。
【0048】
1.各部材
1-1.基材
本実施形態に係る光学部材1の基材11は、特に限定されないが、プラスチックフィルム、プラスチック板およびガラス板が好ましく挙げられる。基材11におけるハードコート層12とは反対側の面には、各種の機能層、例えば、透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等が設けられていてもよい。また、基材11とハードコート層12との間には、各種の機能層、例えば、透明導電膜、金属層、シリカ層、防眩層等が設けられていてもよい。
【0049】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルぺンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルム、ノルボルネン系重合体フィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、環状共役ジエン系重合体フィルム、ビニル脂環式炭化水素重合体フィルム等のプラスチックフィルムまたはそれらの積層フィルムが挙げられる。中でも、機械的強度等の面から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系重合体フィルム等が好ましい。
【0050】
また、上記プラスチックフィルムにおいては、その表面に設けられる層(ハードコート層12や粘着剤層等)との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、プライマー処理、酸化法、凹凸化法等により表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果および操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0051】
プラスチックフィルムの厚さは、通常は15~300μm程度であり、好ましくは30~200μm程度である。
【0052】
プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.3~5mmであり、好ましくは0.5~3mmである。
【0053】
ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~5mmであり、好ましくは0.2~3mmである。
【0054】
1-2.ハードコート層
本実施形態における光学部材1のハードコート層12は、塗布後明度L*および塗布前明度L*を指標とした変化量ΔL*または変化率が、前述した値を満たすものであれば、いかなる材料から形成されてもよいが、好ましくは、以下に説明するコーティング組成物Cを硬化させることにより形成される。コーティング組成物Cによれば、前述した値を満たすハードコート層12を形成し易い。
【0055】
本実施形態におけるコーティング組成物Cは、活性エネルギー線硬化性成分と、微粒子と、所定の表面調整剤とを含有する。
【0056】
(1)各成分
(1-1)活性エネルギー線硬化性成分
コーティング組成物Cが活性エネルギー線硬化性成分を含有することで、当該コーティング組成物Cを活性エネルギー線によって硬化させて得られるハードコート層12は、所望の硬度・耐擦傷性を有するものとなる。
【0057】
活性エネルギー線硬化性成分としては、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系プレポリマー、活性エネルギー線硬化性ポリマー等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性成分として、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーを少なくとも使用することが好ましく、特に、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系プレポリマーを併用することが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0058】
多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。上記の中でも、ジペンタエリスリトール系の(メタ)アクリレートが好ましく、特にジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、さらにはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
一方、(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。これらプレポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0061】
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。
【0062】
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0063】
ポリオールアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0064】
上記の中でも、ウレタンアクリレート系プレポリマー(多官能ウレタン(メタ)アクリレート)が好ましく、特に多官能ウレタンアクリレートが好ましい。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用することが好ましく、特にジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートと併用することが好ましい。
【0065】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートと、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー(特にジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート)とを併用する場合、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー100質量部に対する多官能ウレタン(メタ)アクリレートの配合量は、50質量部以上であることが好ましく、特に80質量部以上であることが好ましく、さらには95質量部以上であることが好ましい。また、当該配合量は、150質量部以下であることが好ましく、特に120質量部以下であることが好ましく、さらには105質量部以下であることが好ましい。
【0066】
(1-2)微粒子
微粒子は、無機系微粒子および有機系微粒子のいずれであってもよいが、塗布前後の明度L*の変化量・変化率が前述した値になり易い無機系微粒子が好ましい。また、微粒子、特に無機系微粒子の形状は、非球状であることが好ましく、特に不定形であることが好ましい。ここでいう「不定形」とは、球状や楕円形状のような規則的な形状ではなく、不規則な多数の角部または面を有する形状をいう。なお、微粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
無機系微粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物などからなる微粒子が挙げられる。上記の中でも、シリカおよび酸化アルミニウムが好ましく、特にシリカが好ましく、さらには不定形のシリカが好ましい。なお、無機系微粒子の表面は、有機化合物等によって化学修飾されていてもよい。
【0068】
微粒子の平均粒径は、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.4μm以上であることが好ましく、さらには0.6μm以上であることが好ましい。また、微粒子の平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、特に4μm以下であることが好ましく、さらには2μm以下であることが好ましい。なお、本明細書における微粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製,製品名「LA-920」)によって測定した値とする。
【0069】
上記微粒子の粒度分布については、下記の式で示される粒径の変動係数(CV値)が、10%以上であることが好ましく、特に50%以上であることが好ましく、さらには80%以上であることが好ましい。また、上記CV値は、300%以下であることが好ましく、200%以下であることがより好ましく、特に150%以下であることが好ましく、さらには100%以下であることが好ましい。
粒径の変動係数(CV値)(%)=(標準偏差粒径/平均粒径)×100
なお、粒径の変動係数(CV値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製,製品名「LA-920」)によって測定した値とする。
【0070】
活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対する上記微粒子の配合割合は、1質量部以上であることが好ましく、特に6質量部以上であることが好ましく、さらには12質量部以上であることが好ましい。また、上記配合割合は、50質量部以下であることが好ましく、特に30質量部以下であることが好ましく、さらには20質量部以下であることが好ましい。微粒子の配合割合が上記の範囲にあることにより、塗布前後の明度L*の変化量・変化率が前述した値になり易い。
【0071】
(1-3)表面調整剤
コーティング組成物Cが含有する表面調整剤は、耐指紋性に優れた光学部材を得るためにも、フッ素系化合物であることが好ましい。フッ素系化合物としては、例えば、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、フルオロアルケニルオリゴマー誘導体、フルオロアダマンタン誘導体等が挙げられる。それらの中でも、耐指紋性の観点から、特にアダマンタン骨格を有するフッ素系化合物が好ましい。
【0072】
また、上記フッ素系化合物は、耐指紋性の観点から、重合性官能基を有するもの、すなわち重合性官能基含有フッ素系化合物であることが好ましい。それらの中でも、耐指紋性の観点から、特にアダマンタン骨格を有する重合性官能基含有フッ素系化合物、すなわち重合性基含有含フッ素アダマンタン誘導体であることが好ましい。なお、表面調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
上記重合性基含有含フッ素アダマンタン誘導体は、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
【化1】
【0074】
上記一般式(I)において、sは1~15、好ましくは1~12の整数、tは1~15、好ましくは4~15の整数、uは0~14、好ましくは0~4の整数であり、かつs+t+u=16である。また、上記一般式(I)において、Fは、フッ素原子を表す。
【0075】
上記一般式(I)において、Yは、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン置換炭化水素基、環式炭化水素基、ハロゲン置換環式炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、及び同一の炭素原子に結合した2つのYが炭素原子と一緒になって形成されたC=Oから選ばれる基を示す。
【0076】
Yで示される炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基などが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基などが挙げられる。ハロゲン置換炭化水素基としては、上記炭化水素基の水素原子が1個以上ハロゲン原子で置換された基、例えばトリフルオロメチル基などが挙げられる。なお、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる(以下同じ)。
【0077】
Yで示される環式炭化水素基としては、例えば、炭素数5~10のシクロアルキル基、具体的にはシクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基などが挙げられる。また、ハロゲン置換環式炭化水素基としては、上記環式炭化水素基の水素原子が1個以上ハロゲン原子で置換された基、例えばフルオロシクロペンチル基、フルオロシクロヘキシル基、トリフルオロメチルシクロペンチル基、トリフルオロメチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0078】
上記一般式(I)において、Z
1は、下記一般式(II)又は(III)で表される基を示す。
【化2】
【0079】
上記一般式(II)又は(III)中、R1~R4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20、好ましくは1~15の脂肪族炭化水素基を示す。n及びmは、0以上の整数である。
【0080】
R1~R4で示される炭素数1~20、好ましくは1~15の脂肪族炭化水素基のうち、ヘテロ原子を含まないものとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アイコシルなどの炭素数1~20、好ましくは炭素数1~15の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基が挙げられる。
【0081】
R1~R4で示される炭素数1~20、好ましくは1~15の脂肪族炭化水素基のうち、ヘテロ原子を含むものとしては、-O-(炭素数1~20、好ましくは炭素数1~15の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基)、-S-(炭素数1~20、好ましくは炭素数1~15の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基)、-CO-(炭素数1~19、好ましくは炭素数1~14の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基)、-NH-(炭素数1~20、好ましくは炭素数1~15の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基)、-N(炭素数1~19、好ましくは炭素数1~7の直鎖もしくは分岐を有するアルキル基)2などの骨格を有するものが挙げられる。
【0082】
ヘテロ原子を含む炭素数1~20、好ましくは1~15の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。
【0083】
上記一般式(II)中、nは、0以上の整数、例えば0~20の整数、好ましくは0~10の整数、より好ましくは0、1、2、3、4又は5である。
【0084】
上記一般式(III)中、mは、0以上の整数、例えば0~20の整数、好ましくは0~10の整数、より好ましくは0、1、2、3、4又は5、特に好ましくは0又は1である。
【0085】
上記一般式(I)において、X
1は、下記一般式(IV)、下記式(V)又は下記一般式(VI)で表される重合性基を示す。
【化3】
【0086】
上記一般式(IV)において、R5は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。また、上記一般式(VI)において、R6は炭素数1~5の炭化水素基を示す。この炭素数1~5の炭化水素基としては、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0087】
上記重合性基含有含フッ素アダマンタン誘導体としては、1-パーフルオロアダマンチルメタクリレート、パーフルオロ-1,3-ビス(アクリロキシエトキシ)アダマンタンおよびパーフルオロ-1,3-アダマンタンジオールジメタクリレートが特に好ましい。
【0088】
上記重合性基含有含フッ素アダマンタン誘導体は、分子内にX1の重合性基、例えば、反応性の(メタ)アクリレート基を有することから、活性エネルギー線の照射により、主剤としての活性エネルギー線硬化性成分と反応し、一体化されたハードコート層12が形成される。このハードコート層12によれば、塗布前後の明度L*の変化量・変化率が前述した値になり易く、かつその物性の持続性が高いものとなる。
【0089】
フッ素系の表面調整剤として市販されている製品としては、例えば、DIC株式会社製のメガファックFシリーズ、メガファックRシリーズ、メガファックRSシリーズ;株式会社ネオス製のフタージェントシリーズ;スリーエムジャパン株式会社製のFC-4430、FC-4432;AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンシリーズ等が挙げられる。
【0090】
活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対する上記表面調整剤の配合割合は、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.08質量部以上であることが好ましく、さらには0.12質量部以上であることが好ましい。また、上記配合割合は、1質量部以下であることが好ましく、特に0.6質量部以下であることが好ましく、さらには0.2質量部以下であることが好ましい。表面調整剤の含有量が上記の範囲にあることにより、塗布前後の明度L*の変化量・変化率が前述した値になり易い。
【0091】
(1-4)光重合開始剤
上記活性エネルギー線硬化性成分を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、コーティング組成物Cは、光重合開始剤を含有することが好ましい。このように光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および紫外線の照射量を少なくすることができる。
【0092】
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対する上記光重合開始剤の配合割合は、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには1質量部以上であることが好ましい。また、上記配合割合は、20質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。
【0094】
(1-5)その他の成分
コーティング組成物Cは、前述した成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
【0095】
(2)ハードコート層の厚さ
ハードコート層12の厚さは、1μm以上であることが好ましく、特に2μm以上であることが好ましく、さらには3μm以上であることが好ましい。ハードコート層12の厚さの下限値が上記の値であることにより、ハードコート層は所望の耐擦傷性および鉛筆硬度を有するものとなる。また、ハードコート層12の厚さは、20μm以下であることが好ましく、特に15μm以下であることが好ましく、さらには10μm以下であることが好ましい。ハードコート層12の厚さの上限値が上記の値であることにより、塗布前後の明度L*の変化量・変化率が前述した値になり易くなる。さらに、塗布前後の明度L*の変化量・変化率がより好ましい値となる観点から、ハードコート層12の厚さは、8μm以下であることが好ましく、特に5μm以下であることが好ましく、さらには4μm以下であることが好ましい。
【0096】
2.光学部材の製造方法
本実施形態に係る光学部材1は、ハードコート層12形成用のコーティング組成物、好ましくはコーティング組成物Cと、所望により溶剤とを含有する塗工液を基材11に対して塗布し、硬化させてハードコート層12を形成することにより製造することができる。
【0097】
溶剤は、塗工性の改良、粘度調整、固形分濃度の調整等のために使用することができ、硬化性成分等が溶解し、微粒子等が分散するものであれば、特に限定なく使用できる。
【0098】
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。上記の中でも、塗工液中の成分の分散性や塗工性の観点から、エーテル類が好ましく、特にプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0099】
塗工液の濃度(固形分濃度)としては、10質量%以上であることが好ましく、特に20質量%以上であることが好ましく、さらには25質量%以上であることが好ましい。また、当該濃度は、60質量%以下であることが好ましく、特に48質量%以下であることが好ましく、さらには42質量%以下であることが好ましい。塗工液の濃度が上記範囲にあると、塗工面(コーティング層表面)の面内均一性が向上し、明度L*の再現性がより一層向上する。
【0100】
コーティング組成物の塗工液の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。コーティング組成物の塗工液を塗布したら、塗膜を40~120℃で30秒~5分程度乾燥させることが好ましい。
【0101】
コーティング組成物Cのようにコーティング組成物が活性エネルギー線硬化性の場合、コーティング組成物の硬化は、コーティング組成物の塗膜に対して紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによって行う。紫外線照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度50~1000mW/cm2、光量50~1000mJ/cm2程度が好ましい。特に、塗工面の面内均一性の向上の観点、および面内均一性の向上による明度L*の再現性向上に伴って塗布前後のL*の変化量・変化率を所望の値とし易くなる観点から、照度200~500mW/cm2、光量200~500mJ/cm2が好ましい。一方、電子線照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0102】
3.光学部材の物性
(1)ヘイズ値
本実施形態に係る光学部材1のヘイズ値は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが特に好ましい。ヘイズ値が30%以下であると、表示体用として好適なものとなる。一方、光学部材1またはハードコート層12に防眩性を付与する場合には、ヘイズ値は、3%以上であることが好ましく、4.5%以上であることがより好ましく、5.4%以上であることが特に好ましい。なお、ヘイズ値は、JIS K7136-2000に準拠して測定した値とする。
【0103】
(2)全光線透過率
本実施形態に係る光学部材1の全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。全光線透過率が70%以上であると、表示体用として好適なものとなる。また、当該全光線透過率の上限値は、特に限定されないが、通常は、100%であることが好ましく、96%以下であることがより好ましく、特に92%以下であることが好ましい。なお、全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定した値とする。
【0104】
(3)算術平均表面粗さ(Ra)
本実施形態に係る光学部材1のハードコート層12の表面の算術平均表面粗さ(Ra)は、0.6μm以下であることが好ましく、特に0.3μm以下であることが好ましく、さらには0.15μm以下であることが好ましい。算術平均表面粗さ(Ra)が0.6μm以下であると、表示体用として好適なものとなる。一方、ハードコート層12に防眩性を付与する場合には、算術平均表面粗さ(Ra)は、0.01μm以上であることが好ましく、特に0.03μm以上であることが好ましく、さらには0.08μm以上であることが好ましい。なお、本明細書における算術平均表面粗さ(Ra)は、JIS B0601-1994に準拠して、接触型粗さ計を用いて測定される粗さ曲線より求められるものとする。
【0105】
(4)像鮮明度
本実施形態に係る光学部材1について測定した0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学櫛の像鮮明度(%)の合計値は、200以上であることが好ましく、特に250以上であることが好ましく、さらには300以上であることが好ましい。これにより、表示体としての画像視認性が良好なものとなる。一方、光学部材1またはハードコート層12に防眩性を付与する場合には、像鮮明度の合計値は、450以下であることが好ましく、特に405以下であることが好ましく、さらには360以下であることが好ましい。
【0106】
ここで、像鮮明度は、試験体を透過した平行光線の光量を、透過部および遮光部を有する光学櫛を通して測定されるものである。光学櫛における透過部と遮光部との幅(櫛幅)が小さいほど、精細度の高い像鮮明度を表す。像鮮明度は、JIS K7374:2007の透過法に準じて測定される。
【0107】
(5)接触角
(5-1)水に対する接触角(水接触角)
本実施形態に係る光学部材1のハードコート層12の表面の水接触角は、下限値として45°以上であることが好ましく、特に55°以上であることが好ましく、さらには65°以上であることが好ましい。これにより、ハードコート層12に指紋が付着し難く、また、付着した指紋が拭き取り易いものとなる。一方、水接触角の上限値は特に限定されないが、90°以下であることが好ましく、85°以下であることがより好ましく、特に80°以下であることが好ましく、さらには75°以下であることが好ましい。
【0108】
なお、水接触角とは、ハードコート層の表面に水の液滴を静置させた状態において、液滴の上記ハードコート層表面の接地部分での液滴の接線と、上記ハードコート層表面とが為す角度のうち、液滴を含む側の角度をいう。水接触角の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0109】
(5-2)オレイン酸に対する接触角(オレイン酸接触角)
本実施形態に係る光学部材1のハードコート層12の表面のオレイン酸接触角は、下限値として10°以上であることが好ましく、特に15°以上であることが好ましく、さらには20°以上であることが好ましい。これにより、ハードコート層12に指紋が付着し難く、また、付着した指紋が拭き取り易いものとなる。一方、オレイン酸接触角の上限値は特に限定されないが、50°以下であることが好ましく、特に40°以下であることが好ましく、さらには30°以下であることが好ましい。
【0110】
なお、オレイン酸接触角とは、ハードコート層の表面にオレイン酸の液滴を静置させた状態において、液滴の上記ハードコート層表面の接地部分での液滴の接線と、上記ハードコート層表面とが為す角度のうち、液滴を含む側の角度をいう。オレイン酸接触角の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0111】
(6)耐擦傷性
本実施形態に係る光学部材1のハードコート層12は、#0000のスチールウールを用いて、250g/cm2の荷重でハードコート層12を10cm、10往復擦り、傷が生じないことが好ましい。このようなスチールウール硬度の評価による耐擦傷性を有することにより、光学部材1をタッチパネルの表面に使用したときに、ハードコート層12に傷が付くことを抑制することができる。
【0112】
(7)鉛筆硬度
本実施形態に係る光学部材1のハードコート層12の鉛筆硬度は、2H以上であることが好ましい。ハードコート層12がこのような鉛筆硬度を有することにより、光学部材1の表面は十分な硬度を有するものとなるため、例えば光学部材1をタッチパネルの表面に使用したときに、優れた表面保護性を発揮することができる。
【0113】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0114】
例えば、光学部材1におけるオレイン酸希釈液が塗布される面は、平面状でなくてもよい。ただし、オレイン酸希釈液は、均一に塗布することが好ましい。
【実施例0115】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0116】
被評価物としてのハードコートフィルムを、次の製造例1~6に従って製造した。
〔製造例1〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部(固形分換算値を表す。以下、その他の成分についても同様とする。)と、多官能ウレタンアクリレート(荒川化学工業社製,製品名「ビームセット575CB」)50質量部と、シリカ微粒子(平均粒径0.8μm,CV値93%,屈折率1.46,不定形)17質量部と、光重合開始剤としてのα-ヒドロキシフェニルケトン3質量部と、表面調整剤としての重合性基含有含フッ素アダマンタン誘導体(ネオス社製,製品名「フタージェント602A」)0.15質量部とを混合し、コーティング組成物を得た。そのコーティング組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分濃度30質量%の塗工液を調製した。
【0117】
基材フィルムとしての、両面に易接着処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,製品名「ルミラーU48」,厚さ:125μm)に、上記で得られた塗工液をワイヤーバー#12で塗布し、70℃で1分間乾燥させた。次いで、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「アイグランテージECS-401GX型」)により下記の条件で紫外線を照射して、厚さ4μmのハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
<紫外線照射条件>
・光源:高圧水銀灯
・ランプ電力:2kW
・コンベアスピード:4.23m/min
・照度:240mW/cm2
・光量:307mJ/cm2
【0118】
〔製造例2〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100質量部と、シリカ微粒子(平均粒径1.5μm,CV値83%,屈折率1.46,不定形)14質量部と、光重合開始剤としてのα-ヒドロキシフェニルケトン3質量部と、表面調整剤としての重合性基含有含フッ素アダマンタン誘導体(ネオス社製,製品名「フタージェント602A」)0.15質量部とを混合し、コーティング組成物を得た。そのコーティング組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分濃度30質量%の塗工液を調製した。得られた塗工液を使用して、製造例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0119】
〔製造例3〕
製造例1と同様にして得たコーティング組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分濃度40質量%の塗工液を調製した。得られた塗工液を使用して、ハードコート層の厚さを6μmとする以外、製造例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0120】
〔製造例4〕
製造例1と同様にして得たコーティング組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分濃度35質量%の塗工液を調製した。得られた塗工液を使用して、ハードコート層の厚さを5μmとする以外、製造例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0121】
〔製造例5〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部と、反応性シリカ微粒子(表面にアクリロイル基を有するシリカ微粒子であって、表面修飾前のシリカ微粒子の平均粒径が40nmであるもの)60質量部と、架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(平均粒径1.5μm,CV値23%,屈折率1.49,球状)4質量部と、分散剤としてのカルボキシル基含有ポリマー変性物(共栄社化学社製,製品名「フローレンG-700」)0.2質量部と、光重合開始剤としてのα-ヒドロキシフェニルケトン3質量部と、表面調整剤としてのアクリル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー社製,製品名「BYK-3550」)0.2質量部とを混合し、コーティング組成物を得た。そのコーティング組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分濃度30質量%の塗工液を調製した。得られた塗工液を使用して、製造例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0122】
〔製造例6〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部と、多官能ウレタンアクリレート(荒川化学工業社製,製品名「ビームセット575CB」)50質量部と、シリカ微粒子(平均粒径0.8μm,CV値93%,屈折率1.46,不定形)15質量部と、光重合開始剤としてのα-ヒドロキシフェニルケトン3質量部と、表面調整剤としてのアクリル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー社製,製品名「BYK-3550」)5質量部とを混合し、コーティング組成物を得た。そのコーティング組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、固形分濃度30質量%の塗工液を調製した。得られた塗工液を使用して、製造例1と同様にしてハードコートフィルムを製造した。
【0123】
〔参考例〕(オレイン酸濃度の選定)
オレイン酸(東京化成工業社製;以下同じ。)自体をサンプル1(オレイン酸濃度:100質量%)とした。
オレイン酸1gにエタノール4gを加え、完全に溶解させたオレイン酸希釈液をサンプル2(オレイン酸濃度:20質量%)とした。
オレイン酸1gにエタノール99gを加え、完全に溶解させたオレイン酸希釈液をサンプル3(オレイン酸濃度:1質量%)とした。
オレイン酸0.2gにエタノール99.8gを加え、完全に溶解させたオレイン酸希釈液をサンプル4(オレイン酸濃度:0.2質量%)とした。
オレイン酸0.1gにエタノール99.9gを加え、完全に溶解させたオレイン酸希釈液をサンプル5(オレイン酸濃度:0.1質量%)とした。
【0124】
各サンプル1~5を、製造例1で得られたハードコートフィルムのハードコート層表面に、指サックを使用して付着させた。一方、製造例1で得られたハードコートフィルムのハードコート層表面に、実際の指紋を付着させた。
【0125】
各サンプル1~5を付着させたハードコートフィルムと、実際の指紋を付着させたハードコートフィルムとを目視により対比した。また、各サンプル1~5を付着させたハードコートフィルムおよび実際の指紋を付着させたハードコートフィルムから、不織布ワイパー(旭化成社製,製品名「ベンコットS-2」)を使用して、各サンプル1~5および実際の指紋を拭き取った。その拭き取り易さを、各サンプル1~5と実際の指紋とで対比した。結果をそれぞれ表1に示す。
【0126】
【0127】
表1の結果から、ハードコートフィルムに対する付着の程度(付着性)およびハードコートフィルムからの拭き取り易さ(拭き取り性)において、オレイン酸濃度0.2質量%のオレイン酸希釈液が、実際の指紋と同等であることが分かった。
【0128】
〔試験例1〕(ヘイズ値・全光線透過率の測定)
各製造例で製造したハードコートフィルムのヘイズ値(%)および全光線透過率(%)を、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-5000」)を用い、それぞれJIS K7136:2000およびJIS K7361-1:1997に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0129】
〔試験例2〕(表面粗さの測定)
各製造例で製造したハードコートフィルムのハードコート層表面の算術平均表面粗さ(Ra;単位μm)を、JIS B0601-1994に準拠して、接触型粗さ計(ミツトヨ社製,製品名「SV3000S4」)を用いて測定される粗さ曲線より求めた。結果を表2に示す。
【0130】
〔試験例3〕(像鮮明度の測定)
各製造例で製造したハードコートフィルムについて、写像性測定器(スガ試験機社製,製品名「ICM-10P」)を使用し、JIS K7374:2007の透過法に準拠して、5種類の光学櫛(櫛幅:0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mm)の像鮮明度(%)を測定し、その合計値を像鮮明度として算出した。結果を表2に示す。
【0131】
〔試験例4〕(接触角の測定)
(1)水接触角の測定
各製造例で製造したハードコートフィルムのハードコート層表面における水接触角を、全自動式接触角測定計(協和界面科学社製,製品名「DM-701」)を使用して以下の条件で測定した。なお、水としては、純水を用いた。結果を表2に示す。
・環境温度:23℃
・水の液滴量:2μl
・測定時間:滴下3秒後
・画像解析法:θ/2法
【0132】
(2)オレイン酸接触角の測定
各製造例で製造したハードコートフィルムのハードコート層表面におけるオレイン酸接触角を、全自動式接触角測定計(協和界面科学社製,製品名「DM-701」)を使用して以下の条件で測定した。なお、オレイン酸としては、東京化成工業社製のオレイン酸を用いた。結果を表2に示す。
・環境温度:23℃
・オレイン酸の液滴量:2μl
・測定時間:滴下3秒後
・画像解析法:θ/2法
【0133】
〔試験例5〕(耐擦傷性の評価)
実施例および比較例で製造したハードコートフィルムのハードコート層表面について、#0000のスチールウールを用いて、250g/cm2の荷重で10cm、10往復擦った。そのハードコート層の表面を、3波長蛍光灯下で目視により確認し、以下の基準で耐擦傷性を評価した。結果を表2に示す。
A:傷が確認されなかった。
B:傷が確認された。
【0134】
〔試験例6〕(鉛筆硬度の測定)
実施例および比較例で製造したハードコートフィルムのハードコート層表面の鉛筆硬度を、電動鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製,製品名「No.553-M1」)を用い、JIS K5600に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0135】
〔試験例7〕(耐指紋性の評価)
(1)評価サンプルの作製
アクリル系透明両面粘着シート(リンテック社製,製品名「OPTERIA MO-3006C」,屈折率:1.49,ヘイズ:<1.0%)を用いて、各製造例で製造したハードコートフィルムの基材フィルム側の面と、黒色アクリル板(L*3.42,a*-0.17,b*0.40)とを貼合し、これを評価サンプルとした。
【0136】
(2)官能評価
上記で得られた評価サンプルのハードコート層表面に、指紋を付着させた。そして、3波長蛍光灯(1000lux.)下にて、付着した指紋を目視し、以下の基準に従って指紋の視認性を評価した。なお、評価3以上が良好と判断される。結果を表2に示す。
5:付着した指紋が非常に目立ち難い
4:付着した指紋が目立ち難い
3:付着した指紋が僅かに目立つ
2:付着した指紋が目立つ
1:付着した指紋が非常に目立つ
【0137】
(3)オレイン酸希釈液の塗布前後における明度L*を指標とした評価
最初に、上記で得られた評価サンプルにおけるハードコート層の表面について、同時測光分光式色度計(日本電色工業社製,製品名「SE6000」)を使用し、以下の条件で、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*(塗布前明度L*)を測定した。結果を表2に示す。
<測定条件>
光源:C光源
測定方法:反射測定
測定面積:φ30mm(直径30mmの円形)
【0138】
一方、オレイン酸0.2gにエタノール99.8gを加えて完全に溶解させ、これをオレイン酸希釈液とした。得られたオレイン酸希釈液を、上記で得られた評価サンプルにおけるハードコート層の表面にワイヤーバー♯2によって塗布し、23℃、50%RHで自然乾燥させて、オレイン酸層を形成した。
【0139】
上記評価サンプルにおけるオレイン酸層が形成された面の明度L*(塗布前後明度L*)を、上記と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0140】
次いで、塗布後明度L*から塗布前明度L*を差し引いた変化量ΔL*を算出した。また、下記式に従って、明度L*の変化率(%)を算出した。結果をそれぞれ表2に示す。
変化率={(塗布後明度L*-塗布前明度L*)/塗布前明度L*}×100
【0141】
【0142】
表2から分かるように、塗布前明度L*および塗布後明度L*を指標とすることにより、官能評価との相関性が高く、また、耐指紋性を定量的に評価することができる。さらに、製造例1~4に係るハードコートフィルムは、耐指紋性に優れるものであった。
【0143】
〔試験例8〕(耐指紋性評価の再現性試験)
製造例1と同様にして、別に2枚ハードコートフィルムを製造した。なお、3枚のハードコートフィルムは、それぞれ異なる日に製造した。得られた各ハードコートフィルムについて、試験例7による耐指紋性評価を行い、その再現性を確認した。製造例1のハードコートフィルムをN=1、2枚目のハードコートフィルムをN=2、3枚目のハードコートフィルムをN=3として、結果を表3に示す。
【0144】
【0145】
表3から分かるように、いずれのハードコートフィルムにおいても、明度L*の変化量ΔL*および明度L*の変化率は一定の範囲に入っており、官能評価と、明度L*の変化量ΔL*および明度L*の変化率との相関性が取れていた。すなわち、上記耐指紋性の評価方法によれば、耐指紋性を定量的に、かつ高い再現性で評価することができた。
本発明に係る耐指紋性の評価方法は、例えばタッチパネル、特にタッチパネルの最表層に位置するハードコートフィルムの耐指紋性を評価するのに好適である。また、本発明に係る光学部材は、例えばタッチパネルの最表層に位置するハードコートフィルムとして好適である。