(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171773
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】心臓機能を改善するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/00 20060101AFI20231128BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20231128BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20231128BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20231128BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20231128BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20231128BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A61L27/00
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/24
A61L27/26
A61L27/16
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145797
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2020500643の分割
【原出願日】2018-07-07
(31)【優先権主張番号】62/530,015
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518073309
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ランカスター,ジョーダン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】コエヴァリー,ジェニファー ダヴリュー.
(72)【発明者】
【氏名】チニェーレ,イケオチュニェ アール.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】心臓機能を改善するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】本発明が、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する患者を、構築物、または治療細胞に結び付く構築物、または線維芽細胞および治療細胞に結び付く構築物と接触させることを含み、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する被験体を処置するための組成物および方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する被験体を処置するための方法であって、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する患者をスキャホールド(scaffold)と接触させる工程を含み、前記スキャホールドは、生体適合性のある非生体材料を含む基材である方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は2017年7月7日に出願された米国仮出願第62/530,015号の優先権および利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、心臓機能を改善するための組成物および方法を提供する。具体的には、本発明は、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する患者を、構築物、または治療細胞に結合する構築物と接触させることを含み、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する被験体を処置するための組成物および方法を提供する。
【0003】
〔背景〕
心臓リズムの問題(不整脈)は、心拍を調整する電気インパルスに機能不全がある場合に生じる。米国人400万人以上、ほとんどが60歳以上、が、息切れ、失神、心臓の機能の喪失、呼吸の喪失、および死につながり得る意識の喪失を含み得る危険な症状を引き起こし得る心臓の不整脈を経験する。約220万人の米国人が、心房細動を経験し、それを共通の医療上の重大な不整脈としている。VTは、右心房の洞結節からではなく、心室の1つの部位から生じる迅速で規則的な心拍である。しばしば、この部位は、心臓発作からの損傷によって引き起こされる、心臓の筋肉壁中の傷の組織の領域である。先天性の状態、冠状動脈疾患および心筋症(しばしば心臓発作から生じる)は、不整脈のリスク因子である。世界中で2600万人が慢性心不全(CHF)と診断されている。毎年5,000回の心臓移植しか行われていないため、これらの個々の予後は不良であり、新しい治療の選択肢が必要である。35%未満の駆出率を有する患者は、一般に、埋め込み型除細動器(ICD)を埋め込まれる。
【0004】
不整脈の処置は、心拍数を正常範囲内に制御し、異常な拍動を引き起こす状態を処置することに焦点を当てている。処置は、投薬、迷走神経操作、電気除細動(ショック)、またはカテーテルアブレーションを含んでもよい。現在の処置は、疾患の根元を常に処置することができるわけではなく、処置後に不整脈が起こり続けることがある。カテーテルアブレーションは、例えば、必ずしも心臓内の正しい位置を目標とするわけではなく、あるいは不整脈が1つの領域が処置された後に別の場所で発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、この必要性に取り組んでいる。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明のための実施形態を開発する過程で行われた実験は、心臓の機能を改善するための人工移植片の使用を調査した。このような実験は、移植片単独、異なる治療細胞集団を用いて操作された移植片、または異なる治療細胞集団および繊維芽細胞を用いて操作された移植片の治療上の利点を比較して試験した。改善された心臓機能の結果は、単独の移植片、異なる治療細胞集団で操作された移植片、または異なる治療細胞集団および繊維芽細胞で操作された移植片の各々について実証された。
【0007】
したがって、本発明は、心臓機能を改善するための組成物および方法を提供する。具体的には、本発明が異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する患者を、構築物、または治療細胞に結合する構築物と接触させることを含み、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する被験体を処置するための組成物および方法を提供する。
【0008】
特定の実施形態、本発明において、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する被験体を処置するための方法を提供する。本発明は、提供される治療方法に関連する具体的な技術に限定されない。
【0009】
いくつかの実施形態において、このような方法は、異常な心臓組織機能に関連する障害または状態を有する被験体をスキャホールド(scaffold)と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態において、スキャホールドが生体適合性の非生体材料を含む基材である。
【0010】
このような方法は、異常な心臓組織機能に結び付く特定の障害または状態を処置することに限定されない。いくつかの実施形態において、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態は、心臓の不整脈である。いくつかの実施形態において、心臓の不整脈は、頻拍、徐脈、心室頻拍、心室細動、心房細動といった上室頻拍といった心臓の上室から生成される不整脈、および完全心臓ブロックといった房室結節組織の疾患からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、心臓の不整脈は、心室頻拍である。
【0011】
いくつかの実施形態において、線維芽細胞集団といった治療細胞集団は、スキャホールドと結合する。いくつかの実施形態において、追加の治療細胞集団は、スキャホールドと結合する。いくつかの実施形態において、複数の(すなわち、3つ以上の)治療細胞集団は、スキャホールドと結合する。いくつかの実施形態において、治療細胞集団は、スキャホールドに接着される。いくつかの実施形態において、細胞は、1つのドナー、または2つの異なるドナー、または多数の異なるドナーに由来し得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、治療細胞集団は、心臓細胞、またはその前駆細胞、または幹細胞、または幹細胞に由来する細胞、または多数の型の細胞などの中胚葉系列細胞である。いくつかの実施形態において、治療細胞集団が心室筋細胞(VM)集団、心房筋細胞集団、結節筋細胞集団、不均一心筋細胞(hetCM)、心臓前駆細胞集団、幹細胞集団、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、hetCMは、心室、心房、および結節性心筋細胞の混合物を含む。いくつかの実施形態において、hetCMは、50%~90%の心室心筋細胞、および10%~50%の心房および結節心筋細胞、または約60%の心室、ならびに約40%の心房および結節筋細胞を含む。いくつかの実施形態において、治療細胞集団がhiPSC由来の不均一心筋細胞(hetCM)および/または心室純粋筋細胞(VM)を含む。いくつかの実施形態において、治療細胞集団は、hiPSC(ヒト誘導多能性幹細胞)もしくは胚性幹細胞、もしくは初代細胞に由来するか、または初代細胞に由来する。いくつかの実施形態において、治療細胞は、前駆心臓細胞、最終分化した心臓細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、治療細胞集団は、1.3×105細胞/cm2および2.95×106細胞/cm2の間の密度でスキャホールドの表面上にある。いくつかの実施形態において、治療細胞集団は、1.3×105細胞/cm2および6×106細胞/cm2の間の密度でスキャホールドの表面上にある。いくつかの実施形態において、治療細胞集団は、2.9×105細胞/cm2および5.5×106細胞/cm2の間の密度でスキャホールドの表面上にある。
【0014】
いくつかの実施形態において、治療細胞集団は、ヒト細胞、イヌ細胞、ウマ細胞、ネコ細胞、ウシ細胞といった哺乳動物起源のものである。
【0015】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、血管系前駆細胞をさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、治療細胞は、CD40および/またはHLAの発現を減少または排除するように、またはHLAに適合するように操作される。
【0017】
いくつかの実施形態において、治療細胞は、誘導性多能性幹細胞(iPSCs)または胚性幹細胞に由来する。
【0018】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、被験体の心外膜に付着される。
【0019】
いくつかの実施形態において、接触は、スキャホールドを対象の左心室、右心室、左心房、または右心房に接触させることを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、治療細胞は、心外膜との接触時に増殖性である。いくつかの実施形態において、治療細胞は、心外膜との接触時に非増殖性である。
【0021】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象の心臓を、1つ以上のチモシンベータ-4(TB4)、aktマウス胸腺腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(AKT1)、間質細胞由来因子-1アルファ(SDF-1)、および肝細胞成長因子(HGF)または細胞成長、分化または移動/動員に影響を及ぼす他の因子と接触させることをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態は、虚血誘発性心不全、慢性心不全(CHF)、心不全を伴わない虚血、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、心停止、うっ血性心不全、安定狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、冠動脈疾患、心臓弁膜症、虚血性心疾患、駆出率低下、心筋血流低下、心臓リモデリング不全、左心室リモデリング不全、左心室機能低下、左心不全、右心不全、後方心不全、前方心不全、収縮機能障害、拡張機能障害、体血管抵抗の増加または減少、低拍出心不全、高拍出性心不全、激しい活動時の呼吸困難、休息時の呼吸困難、起坐呼吸、頻呼吸、発作性夜間呼吸困難、めまい、混乱、休息時の冷えた四肢、運動不耐性、易疲労性、末梢性浮腫、夜間頻尿、腹水症、肝腫脹、肺水腫、チアノーゼ、側方に変位した心尖拍動、ギャロップリズム、心雑音、傍胸骨台起性拍動、及び胸水、からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、処置は、伝導速度を改善すること、伝導振幅を改善すること、異常な拍動を低減すること、左心室機能を改善すること、左心室拡張終期圧(EDP)を低減すること、心筋血流を改善すること、心筋細胞で心臓壁を再集団化すること、CHF被験体における不適応な左心室リモデリングを逆転させること、左心室受動充満と、活性充満と、心室コンプライアンスと、心不全のパラメータとを改善し、E’(mm/s)の増加、E/E’の減少、LV dP/dt(mmHg/sec)の増加、およびTau(msec)の減少を含むが、これらに限定されないこと、のうちの1つ以上のことを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、スキャホールドの材料が合成、生物学的、分解性、非分解性、多孔質などであり、編まれている、織られている、結合されている、紡がれている、印刷されている、分解性がある、非分解性がある、異質遺伝子型である、自系である、異種移植片、細孔(均一な間隔、不均一な間隔、様々なサイズ)、細胞外マトリックスなどのうちの1つ以上を含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、三次元構造に形成される。
【0025】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、生体吸収性メッシュである。
【0026】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、生体内の電気生理学的分析を行って、hiPSC-CMパッチ統合および宿主心筋への電気機械的結合を評価した。表面心電図(ECG)、LV電圧マップ、ローカルECGおよび活性化マップを各群から収集した。電圧マッピングおよび活性化マッピングは、カスタムエンジニアリングされたソフトウェアプログラムを用いて行った。アスタリスクは、活性化マッピングのみのためのおおよその心外膜ペーシング位置を示す。偽、CHF、およびCHF+iPSC-CMパッチ心臓の上の囲みは、電圧および活性化マッピングのためのカラーマップを生成するためにマッピングされた組織領域を示す。ギリシャ文字は、電圧または活性化マップに関する各群からのローカル心電図の焦点領域を示す。表面およびローカルECGおよび電圧マッピングをミリボルトで報告する。活性化マッピングは、ミリ秒で報告される。hiPSC-CMパッチ移植組織の移植は、以前の虚血組織を横切る電圧振幅と活性化時間を改善する。
【0027】
図2は、誘導性動物の画分を含むECGのサンプルである。各ストリップは、洞律動で始まる。これらの群は、hetCMおよびVM移植片の不整脈惹起性の質を評価するための操作として役立った。*は、ペーシング電極のおおよその位置を示す。
【0028】
図3は、hiPSC-hetCM心臓移植片により処置した4匹のラットの各々からのECGである。4匹のラットのうちの1匹(25%)は、持続性心室頻拍を経験する。各ストリップは洞律動で始まる。
【0029】
図4は、hiPSC-VM心臓移植片で処置した3匹のラットの各々からのECGである。3匹のラットのうちの1匹(33%)は、持続性心室頻拍を経験する。各ストリップは、洞律動で始まる。
【0030】
〔詳細な説明〕
上述のように、本発明のための実施形態を開発する過程で行われた実験は、心臓機能を改善するための人工移植片を使用して調査した。このような実験は、移植片単独、および異なる治療細胞集団を用いて操作された移植片の治療上の利点を比較して、試験した。改善された心臓機能の結果は、移植片単独の各々および異なる治療細胞集団を用いて操作された移植片について実証された。
【0031】
したがって、本発明は、心臓機能を改善するための、および/または心臓組織を治療するための組成物および方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、心臓機能を改善し、および/または心臓組織を治療するためのスキャホールドを提供する。このような実施形態において、提供されたスキャホールドは、心臓組織(例えば、被験体(例えば、哺乳動物被験体)(例えば、ヒト被験体)の心臓組織)の部位に接着される。いくつかの実施形態において、心臓組織は、心外膜組織である。いくつかの実施形態において、心臓組織は、心内膜組織である。いくつかの実施形態において、心臓組織は、異常な機能(例えば、異常な心臓機能)を経験する心臓組織である。いくつかの実施形態において、心臓組織は、左心室、右心室、左心房、右心房、および/またはそれらの多数の領域内にある。
【0032】
このような実施形態は、特定タイプのスキャホールドに限定されない。実際、本発明は、編まれている、織られている、結合されている、紡がれている、印刷でされている、分解性がある、非分解性がある、異質遺伝子型である、自系である、異種移植片、細孔(均一な間隔、不均一な間隔、様々なサイズ)、細胞外マトリックスなどのうちの1つ以上を含み得る、合成、生物学的、分解性、非分解性、多孔質の任意のおよび全ての材料を含むが、これらに限定されない、任意の好適なスキャホールドの使用を検討する。
【0033】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、生体適合性の非生体材料を含む基材である。このようなスキャホールドは、特定の構造に限定されない。いくつかの実施形態において、スキャホールドは、三次元構造に形成される。いくつかの実施形態において、スキャホールドは、スキャホールド中の細胞によって架橋された間隙空間を有する三次元構造に形成される。いくつかの実施形態において、スキャホールドは、生体吸収性メッシュである。いくつかの実施形態において、スキャホールドは、様々なタイプの生体組織(例えば、任意の種類の心臓組織)とかかわりあい、付着するように構成される。
【0034】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、適用および身体組織(例えば、心臓組織)との接着のために構成されたパッチである。したがって、心臓スキャホールドまたは心臓パッチは、心臓組織に取り付けるために構成された任意のタイプまたは種類のパッチである。そのようなスキャホールド、パッチ、心臓スキャホールド、および心臓パッチは、追加の細胞を有することができ、もしくは追加の細胞を有さないことができる。
【0035】
スキャホールドを支持する三次元支援フレームワークは、(a)細胞がそれに付着することを可能にする(または細胞がそれに付着することを可能にするように改変され得る)、および(b)細胞が1つ以上の層で増殖することを可能にする、任意の材料および/または形状であり得る。多くの異なる材料を使用してフレームワークを形成でき、タンパク質(例えば、コラーゲン)、炭水化物、ペプチド、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリエステル(例えば、ダクロン)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル化合物(例えば、ポリ塩化ビニル;PVC)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;TEFLON(登録商標))、サーマノックス(TPX)、ニトロセルロース、綿、ポリグリコール酸(PGA)、ネコ腸縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストランなどを含むが、これらに限定されない。これらの物質のいずれかをメッシュに織って、三次元フレームワークを形成することができる。ナイロン、ポリスチレン等といった特定の材料は、細胞接着のためには、不十分な基板である。これらの材料は、三次元支援フレームワークとして使用される場合、フレームワークへのそれらの付着を増強するために、細胞の接種の前にフレームワークを前処置することが望ましい。例えば、細胞を接種する前に、ナイロンスクリーンを0.1M酢酸で処理し、ポリリジン、ウシ胎仔血清、および/またはコラーゲン中で培養して、ナイロンを被膜することができる。ポリスチレンは、硫酸を用いて同様に処理することができた。
【0036】
構築物が生体内で直接移植される場合、ペプチド、PLA、PCL、PGA、腸縫合材料、コラーゲン、ポリ乳酸、またはヒアルロン酸などの生分解性スキャホールド材料を使用することが好ましい場合がある。例えば、これらの材料は、コラーゲンスポンジまたはコラーゲンゲルなどの三次元フレームワークに織り込まれてもよい。培養物を長期間維持するか、または低温で保存しようとする場合には、ナイロン、ダクロン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、テフロン(登録商標)、綿、などといった非分解物質が好ましいであろう。本発明に従って使用することができる便利なナイロンメッシュは、140μmの平均孔径および90μmの平均ナイロン繊維直径を有するナイロン濾過メッシュである(#3-210/36、Tetko,Inc.、ニューヨーク)。
【0037】
この構築物は、任意の適切な様式で心臓と接触されて、付着を促進し得る。この構築物は、心外膜、心筋および心内膜、最も好ましくは心外膜を含み、心臓上の種々の位置に付着され得る。取り付けのための手段としては、構築物と心臓組織との間の直接的な取り付け、生物学的接着剤、縫合糸、合成接着剤、レーザー色素、またはヒドロゲルが挙げられるが、これらに限定されない。市販されている止血剤およびシーラントには、サージカル(SURGICAL(登録商標))(酸化セルロース)、アクチフォアム(ACTIFOAM(登録商標))(コラーゲン)、フィブラックス(FIBRX(登録商標))(光活性化フィブリンシーラント)、ボヘール(BOHEAL(登録商標))(フィブリンシーラント)、フィブロカプス(FIBROCAPS(登録商標))(ドライパウダーフィブリンシーラント)、多糖類高分子p-GlcNAc(SYVEC(登録商標)パッチ;マリン高分子技術)、高分子27CK(プロテインポリマーテック)などがある。手術室において120mlの患者の血液から1時間半で自己繊維質封止剤を調製するための医療デバイスおよび装置も知られている(例えば、Vivostat System)。
【0038】
直接付着を利用する別の実施形態において、構築物は、心臓上に直接置かれ、生成物を自然の細胞付着によって付着させる。さらなる別の実施形態において、構築物は、外科用接着剤、好ましくはフィブリン接着剤などの生物学的接着剤を使用して心臓に取り付けられる。外科用接着剤としてフィブリン接着剤を使用することは、周知である。フィブリン接着剤の組成物は、公知であり(例えば、米国特許第4,414,971号;第4,627,879号および第5,290,552号を参照のこと)、そして誘導フィブリンは自己由来でありえる(例えば、米国特許第5,643,192号を参照のこと)。接着剤組成物はまた、1つ以上の薬剤または薬物を含有するリポソーム(例えば、米国特許第4,359,049号および同第5,605,541号を参照のこと)といった追加構成を含み得、そして注入を介すること(例えば、米国特許第4,874,368号を参照のこと)または噴霧すること(例えば、米国特許第5,368,563号および同第5,759,171号を参照のこと)を含む。キットはまた、フィブリン糊組成物を適用するために利用可能である(例えば、米国特許第5,318,524号を参照のこと)。
【0039】
別の実施形態において、レーザー色素を心臓、構築物、またはその両方に適用し、適切な波長のレーザーを用いて活性化して組織に接着させる。別の実施形態において、レーザー色素が、組織の機能または完全性を変化させない活性化頻度を有する。例えば、800nmの光は、組織および赤血球を通過する。レーザー色素としてインドシアングリーン(ICG)を使用すると、組織を通過するレーザー波長を使用することができる。5mg/mlのICGの水溶液を三次元間質組織(または標的部位)の表面に塗布し、ICGを組織のコラーゲンに結合させる。800nm付近のピーク強度を有する光を放出するレーザーからの5msパルスを使用してレーザー色素を活性化し、隣接する組織のエラスチンを修飾表面に融合させるコラーゲンの変性を生じる。
【0040】
別の実施形態において、構築物は、ヒドロゲルを使用して心臓に付着される。適切なヒドロゲル組成物を形成するためには、多くの天然および合成ポリマー材料で十分である。例えば、多糖類、例としてアルギネートを二価カチオンで架橋することができ、ポリホスファゼンおよびポリアクリレートをイオン的にまたは紫外重合によって架橋する(米国特許第5,709,854号)。あるいは、2-オクチルシアノアクリレート(「DERMABOND」、Ethicon、Inc.、Somerville、NJ)などの合成外科用接着剤を使用して、三次元間質組織を付着させてもよい。
【0041】
本発明の他の実施形態において、構築物は、1つ以上の縫合を使用して心臓に固定され、これには5-O、6-O、および7-Oプロリン縫合(エチコンカタログ番号8713H、8714H、および8701H)、ポリグリセプロン、ポリジオキサノン、ポリグラクチン、または他の適切な非生分解性または生分解性縫合材が含まれるが、これらに限定されない。縫合する場合、必ずしもそうではないが、二重アーム針が通常は、使用される。
【0042】
上記のように、本発明のための実施形態を発症する過程の間に行われた実験は、心臓組織上へのスキャホールドの接着によって改善された心臓機能を実証した。このような実験は、さらに、さらなる細胞集団を用いて操作されたスキャホールドを用いて、改善された心臓機能を実証した。いくつかの実施形態において、さらなる細胞集団で操作されたスキャホールドは、線維芽細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、さらなる細胞集団で操作されたスキャホールドは、線維芽細胞をさらに含まない。
【0043】
細胞を有するスキャホールドを含む実施形態は、胎児または成体起源であってもよく、皮膚、心筋、平滑筋、骨格筋、肝臓、膵臓、脳、脂肪組織(脂肪)などの好適な供給源に由来してもよい。このような組織および/または器官は、適切な生体検査により、または検死解剖により、得ることができる。いくつかの実施形態において、細胞は、ヒト細胞である。
【0044】
細胞は、筋肉細胞(骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞などの心筋細胞)またはその前駆細胞、内皮前駆細胞、骨髄細胞、骨髄細胞、間葉幹細胞、臍帯血細胞、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない任意の所望の型であり得る。このような細胞は、当該分野で標準的な技術を使用して単離されるか、または商業的供給源から得られる。
【0045】
いくつかの実施形態において、さらなる細胞集団は内皮細胞を含むが、これに限定されない間質細胞を含む(例えば、米国特許出願公開第2009/0269316号および米国特許第4,963,489号を参照のこと)。
【0046】
いくつかの実施形態において、追加の細胞集団は、治療細胞を含む。このような実施形態は、特異的な型の治療細胞に限定されない。いくつかの実施形態において、治療細胞は、任意の供給源(例えば、胎児組織、新生児組織、成体組織、幹細胞、前駆細胞集団、胚細胞、または誘導多能性幹細胞(iPSC))によって(例えば、ウイルス、mRNA、エピソームベクターなどを介して)再プログラムされた体細胞に由来するが、これらに限定されない。治療細胞が心臓細胞である場合、心臓細胞は、最終的に分化した心臓細胞であってよく、または特定の心臓細胞経路のための非終末分化細胞であってもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。細胞は、げっ歯類、霊長類細胞、イヌ細胞、ウマ細胞、ヒト細胞を含むが、これらに限定されず、哺乳類などの任意の適切な生物由来であってもよい。細胞は、男性または女性被験者に由来し得るか、または男性および女性被験者由来の細胞を組み合わせ得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、治療細胞は、線維芽細胞、hiPSC由来の不均一心筋細胞(hetCM)、または心臓前駆細胞(CPCs)を含む。いくつかの実施形態において、治療細胞は、線維芽細胞とhetCMと、VMと、またはCPC集団との組合せを含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、追加の細胞は、心筋細胞および/または心臓幹細胞などのそれら前駆細胞を含む。成熟成人心臓には限られた数の内因性心幹細胞が存在し、これらは自己再生性、クローン形成性、および多能性であり、その結果、これらは心筋細胞に、そしてより少ない程度で平滑筋細胞および内皮細胞に分化する。心臓幹細胞を単離し、無期限に培養物中で増殖させることができる。一実施形態において、心臓幹細胞は、細胞表面マーカー:Lin-、c-Kit+、CD45-、CD34-によって特徴付けられる。
【0049】
いくつかの実施形態において、追加の細胞は、所定の用途のために、目的の遺伝子産物を発現し得る組換え細胞を含む。例えば、いくつかの実施形態において、追加の細胞は、1つ以上のチモシンベータ-4(TB4)、アキットマウス胸腺腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(AKT1)、間質細胞由来因子-1アルファ(SDF-1)、および肝細胞増殖因子(HGF)を発現するように操作された心筋細胞を含む。異種遺伝子産物を発現するように細胞を操作するための技術は当該分野で周知であり、そして核酸コード領域または遺伝子を、遺伝子産物の発現を達成し得る任意のプロモーターに作動可能に連結する組換え発現ベクターによる細胞トランスフェクションを利用する。従って、種々の実施形態において、追加の細胞は、ポリペプチド配列をエンコードする核酸配列をエンコードする組換え発現ベクターを含む。哺乳動物系において開示される核酸配列の発現を駆動するために使用されるプロモーター配列は、構成的(CMV、SV40、RSV、アクチン、EFなどを含むが、これらに限定されない種々のプロモーターのいずれかによって駆動される)または誘導性(テトラサイクリン、エクジソン、ステロイド応答性を含むが、これらに限定されない多数の誘導性プロモーターのいずれかによって駆動される)であり得る。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、の中の「分子クローニング」、研究所マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;「遺伝子転移およびプロトコル発現」、109-128ページ、ed E.JMurray、The Humana Press Inc、Clifton、NJ)およびAmbion 1998 Catalog(Ambion、Austin、TX)を、参照されたい。
【0050】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、構築物中の細胞によって架橋された間隙を有する三次元構造に形成された生体適合性の非生体材料を含む三次元基材上で増殖された線維芽細胞を含む三次元線維芽細胞構築物(3DFC)である。
【0051】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、生きている、代謝的に活性な組織を産生するために、新生皮膚線維芽細胞のヒト皮膚構築物と共に生体外で培養された基質である。そのような実施形態において、線維芽細胞は、メッシュを横切って増殖し、ヒト皮膚コラーゲン、フィブロネクチン、およびグリコサミノグリカン(GAGs)を含む多種多様な増殖因子およびサイトカインを分泌し、自己産生皮膚基質に包埋する。培養において、線維芽細胞は、血管新生増殖因子:VEGF(血管内皮増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、およびアンギオポエチン-1を産生する(例えば、J. Anat.(2006)209、pp527-532を参照のこと)。
【0052】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、パッチの上部に追加の細胞および/または線維芽細胞を有するパッチを含む。この実施形態において、パッチの頂部は、心臓といった関心面に取り付けることができる。他の実施形態において、細胞は、パッチの底部または両側にある。
【0053】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、培養され、「新鮮(fresh)」に適用されてもよく、またはいくつかの実施形態において、適用前に凍結保存および解凍されてもよい。
【0054】
スキャホールド(線維芽細胞の有無にかかわらず培養される)をスキャホールド上に播種される細胞の懸濁液と接触させることは、細胞をスキャホールドと接触させる力の適用を容易にするために、以下に記載される条件を含むが、これらに限定されない、任意の適切な条件下で行われ得る。1つの代替の実施形態において、スキャホールドは、0.1~5mlの培地(好ましくは0.25ml~2ml、より好ましくは0.5ml~1.0mlの培地)中に配置され、そして細胞懸濁液の容量が、スキャホールドが配置される培地の容量の約2倍であるように、細胞が懸濁液中に導入される。本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる、1つの代替の実施形態において、接触は、約37℃で起こる。本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができるさらなる代替実施形態において、細胞懸濁液は播種されるべき細胞は、収縮性細胞(例えば、心筋細胞またはその前駆細胞)である少なくとも3×106細胞/mlの濃度を有する。本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる、さらなる代替の実施形態において、細胞懸濁液は、少なくとも4×106細胞/mlおよび5×106細胞/mlの濃度を有する。
【0055】
1つの実施形態において、播種される各々のスキャホールドは、ウェルの基部を覆い、そして平らに置かれるように、ウェルに配置される。本発明者らは、スキャホールドが、ウェルの基部を覆わない場合(ウェルに配置されたスキャホールドを播種する場合)、細胞の保持の減少が起こり、そして細胞の集塊化および凝集のために、パッチを横切る細胞の不均等な分布を生じることを発見した。
【0056】
懸濁液中の細胞を、当該細胞をスキャホールドに接触させる力にさらすことは遠心力および電場によって生成される電気力、またはそのような力の組み合わせを含むが、これらに限定されない、任意の適切な力の使用を含み得る。代替の実施形態において、遠心力が使用される。適用される遠心力は、種々の因子(例えば、スキャホールド上に播種される細胞型)に依存する。本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる1つの代替の実施形態において、構築物を1200rpm~1600rpmの間で、2~10分間遠心分離する。別の実施形態において、播種されるべきすべての構築物は、ウェル内に水平配置で配置され(垂直ではなく)、その結果、各々ウェルは同じ半径で回転される。
【0057】
1つの代替の実施形態において、力は、細胞懸濁液を適切な培養培地中のスキャホールドと接触させた後、0~300秒以内に適用され得る。
【0058】
細胞は、好ましくはスキャホールド上に播種するために利用可能な全ての位置を飽和させる量で懸濁液中に存在し得るので、懸濁液中の全ての細胞が力の適用の結果としてスキャホールドに接触することは必要条件ではないことが当業者によって理解される。1つの代替の実施形態において、播種された細胞は多数の細胞層がスキャホールドの上に提供されるように、互いに接する。心筋細胞またはその前駆体が使用される実施形態において、播種された細胞は、スキャホールド上の繊維の間の「谷(valleys)」に存在することが好ましい。
【0059】
細胞がスキャホールドに接着するのに適した状態下で細胞を培養することは、任意の培地および所与の用途に適した状態、例えば、以下の実施例におけるものの使用を含み得る。ウシ胎児血清(5~15%;好ましくは10%)および他の適切な因子(重炭酸ナトリウムおよび抗生物質を含むが、これらに限定されない)を補充したDMEM-LGを含むが、これらに限定されない、任意の有用な培地は、使用され得る。細胞は、好ましくはスキャホールド上への付着のために、利用可能な全ての位置を飽和させる量で懸濁液中に存在し得るので、懸濁液中の全ての細胞が力の適用の結果としてスキャホールドに付着することは必要条件ではないことが、当業者によって理解される。基礎培地、例えば、RPMI 1640または類似のものといったもの、が使用され、そしてB27またはアルブミンまたはヘパリンなどが補充される。
【0060】
いくつかの実施形態において、細胞は、0.5×106細胞/cm2および5×106細胞/cm2の間(例えば、1×106細胞/cm2及び4×106細胞/cm2の間)(例えば、1.5×106細胞/cm2および3×106細胞/cm2の間)の範囲の細胞密度でスキャホールドに接着される。
【0061】
いくつかの実施形態において、スキャホールドは、パッチを含み、細胞はパッチの上部にある。この実施形態において、パッチの頂部は、心臓といった関心面に取り付けることができる。他の実施形態において、細胞は、パッチの底部または両側にある。
【0062】
いくつかの実施形態において、追加の細胞(例えば、治療細胞)は、2×105細胞/cm2および6×106細胞/cm2の間の濃度で構築物の上に存在する。別の実施形態において、心臓細胞が2×106細胞/cm2および6×106細胞/cm2の間の密度で構築物上にある。様々な更なる実施形態において、心臓細胞は、2×105細胞/cm2および5×106細胞/cm2の間、2×105細胞/cm2および4×106細胞/cm2の間、2×105細胞/cm2および3×106細胞/cm2の間、5×105細胞/cm2および5×106細胞/cm2の間、5×105細胞/cm2および4×106細胞/cm2の間、5×105細胞/cm2および3×106細胞/cm2の間、1×106細胞/cm2および5×106細胞/cm2の間、1×106細胞/cm2および4×106細胞/cm2の間、1×106細胞/cm2および3×106細胞/cm2の間、2×105細胞/cm2および2.95×106細胞/cm2の間;5×105細胞/cm2および2.95×106細胞/cm2の間;1×106細胞/cm2および2.95×106細胞/cm2の間;1.5×106細胞/cm2および2.95×106細胞/cm2の間;1.3×105細胞/cm2および2.5×106細胞/cm2の間;または1.3×105細胞/cm2および2×106細胞/cm2の間の密度で構築物上に存在する。
【0063】
いくつかの実施形態において、追加の細胞(例えば、治療細胞)は、非終末分化細胞と終末分化細胞との組合せを含む。1つのこのような実施形態において、非終末分化細胞および終末分化心臓細胞は、約1:1および約50:1の間の比率で構築物上に存在する。他の実施形態において、この比率が約1:1および約40:1の間、約1:1および約30:1の間、約1:1および約20:1の間、約1:1および約10:1の間、約1:1および約5:1の間、または約1:1および約1:2の間である。
【0064】
さらなる実施形態において、治療細胞は、CD40および/またはHLAの発現を減少または排除するように、またはHLAに適合するように操作される。この実施形態は、免疫プロファイルの減少のために選択された細胞を提供し、これは宿主における移植細胞のより良好な保持を可能にし、これはとりわけ同種移植に適している。
【0065】
さらなる実施形態において、治療細胞は、誘導性多能性幹細胞(iPSCs)または胚性幹細胞に由来する。非限定的な実施形態において、最終的に分化した心臓細胞は、本明細書中に記載される方法を使用して構築物上に生成され得る。
【0066】
一実施形態において、治療細胞は、非終末分化細胞を含む。本明細書中で使用されるように、「非終末分化細胞(non-terminally differentiated cells)」は目に見えるサルコメアを欠く。種々の実施形態において、「終末分化心筋細胞(terminaly differentiated cardiomyocytes)」と比較して、非終末分化細胞は以下の特性の1つ以上を有する:
・細胞サイズが、形態学的に、より小さい;
・筋原線維密度の低下;
・電気生理学的に抑制/減少した活動電位振幅;
・MYH7(ベータミオシン重鎖)、MYH6(アルファミオシン重鎖)、SCN5A、GJA1(コネキシン43)、HCN4(過分極活性化K+チャネル)、KCNJ2(内向き整流カリウムイオンチャネル)、SERCA2a(筋小胞体ATPase)、アルファアクチニン、心筋トロポニンI(cTnI)、心筋トロポニンT(cTnT)の遺伝子および/またはタンパク質発現の減少である。
【0067】
別の実施形態において、治療細胞は、最終的に分化した心筋細胞を含む。本明細書中で使用される場合、「終末分化心筋細胞(terminally differentiated cardiomyocytes)」は目に見えるサルコメアを有する。様々な実施形態において、「非終末分化心筋細胞(non-terminally differentiated cardiomyocytes)」と比較して、末端分化心筋細胞は以下の特性の1つ以上を有する:
・細胞サイズが、形態学的に、より大きい;
・筋原線維密度の上昇;
・電気生理学的に活性な活動電位振幅;
・MYH7(ベータミオシン重鎖)、MYH6(アルファミオシン重鎖)、SCN5A、GJA1(コネキシン43)、HCN4(過分極活性化K+チャネル)、KCNJ2(内向き整流カリウムイオンチャネル)、SERCA2a(筋小胞体ATPase)、アルファアクチニン、心筋トロポニンI(cTnI)、心筋トロポニンT(cTnT)の遺伝子および/またはタンパク質発現の増加である。
【0068】
いくつかの実施形態において、非終末分化細胞および/または終末分化細胞心筋細胞は、線維芽細胞(例えば、3DFCS)を有する構築物の中または表面上に、1.3×105細胞/cm2および6×106細胞/cm2の間の密度で存在し、心臓細胞は、線維芽細胞を有する約1:7および約50:1の間の比率により、3DFCSの中または表面上に存在する。別の実施形態において、非末端分化心筋細胞および/または末端分化心筋細胞は、1.2×106細胞/cm2および4×106細胞/cm2の間の合計密度で構築物の中または表面上にある。種々の実施形態において、構築物は、治療的使用のために、2.9×105細胞/cm2、1.2×106細胞/cm2または6×106細胞/cm2の投与幅の心筋細胞を含む。心筋細胞集団は、100%の最終分化心筋細胞または100%の非終末分化細胞、50%の最終分化心筋細胞および50%の非終末分化細胞、またはそれらの任意の適切な変異体であり得る。
【0069】
特定の実施形態において、このような方法は、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を患う被験体を処置するために使用される。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0070】
このような方法は、異常な心臓組織機能に結び付く特定のタイプまたは種類の障害または状態に限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態において、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態は、慢性心不全(CHF)である。本明細書中で使用される場合、「心不全(CHF)」は、身体の必要性を満たすために適切な血液を供給する心臓の能力の慢性的な(急速な発症とは対照的に)障害である。慢性心不全は心停止、心筋梗塞、および心筋症によって引き起こされ得るが、これらとは異なる。1つの代替の実施形態において、被験体は、うっ血性心不全に罹患する。本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる種々のさらなる代替の実施形態において、対象の心不全は、左心不全、右心不全、後方心不全(静脈背圧の増加)、前方心不全(十分な動脈潅流を提供するための不全)、収縮機能不全、拡張機能不全、全身血管抵抗、低拍出心不全、高拍出性心不全を含む。本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる種々のさらなる代替実施形態において、対象の心不全は、ニューヨーク心臓協会機能分類によるクラスI~IVのいずれかであってもよく、より好ましくはクラスIIIまたはIVである。
【0072】
クラスI:いかなる活動においても制限は経験されず、通常の活動からの症状はない。
【0073】
クラスII:わずかで軽度の活動制限;患者は安静時または軽度の労作時に快適である。
【0074】
クラスIII:任意の活動の顕著な限定;患者は安静時にのみ快適である。
【0075】
クラスIV:任意の身体活動が不快感をもたらし、症状が安静時に生じる。
【0076】
本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる更なる代替の実施形態において、被験体は、ニューヨーク心臓協会機能分類に従って心不全と診断されている。本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる更なる代替の実施形態において、被験体は、高血圧、肥満、喫煙、糖尿病、弁膜心疾患、および虚血性心疾患のうちの1つ以上によってさらに特徴付けられる。
【0077】
いくつかの実施形態において、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態は、心不整脈である。本明細書で使用される「心臓不整脈(cardiac arrhythmia)」は、原因にかかわらず、異常な心調律または心拍数である。
【0078】
いくつかの実施形態において、心臓不整脈は、頻拍、徐脈、心室頻拍、心室細動、心房細動などの上室頻拍などの心臓の上室から生成される不整脈、および完全心臓ブロックなどの房室結節組織の疾患からなる群から選択される。
【0079】
本明細書で使用される「頻脈(tachycardia)」は、加速した心拍数(すなわち、100拍/分を超える)である。上室頻拍には心房細動、心房粗動、発作性上室頻拍、発作性心房頻拍、すべての上室再入頻拍、バイパス消化頻拍が含まれるが、これらに限定されない。心室性不整脈には、心室細動および心室頻拍が含まれる。
【0080】
本明細書で使用されるように、「徐脈(bradycardia)」は、遅すぎる(すなわち、60拍/分未満)心拍数である。
【0081】
本明細書で使用される場合、「完全な心臓ブロック(complete heart block)」は、心臓のアトリウム内の洞房結節(SA結節)において生成されるインパルスが心室に伝播しない状態である。これは、モビッツ(Mobitz)I型およびII型ブロックを含むウェンケバッハ(Wenckebach)心臓を含むが、これらに限定されない、全ての形態の心房-心室(A-V)ブロックを含む。
【0082】
本明細書中で使用される場合、以下のうちの1つ以上を達成する手段に、「処置する(treat)」または「処置(treating)」は、以下のうちの1つ以上を達成する:(a)障害の重篤度を減少させる(例えば、慢性心不全被験体についてのクラスIIIへの状態を改善するためのクラスIV被験体の処置);(b)この障害に特徴的な症状の発症を制限または予防する;(c)この障害に特徴的な症状の悪化を阻害する;(d)この障害について以前に症候性であった患者における症状の再発を制限または予防する。慢性心不全に特徴的な徴候には駆出率の低下、心筋潅流の低下、適応不良心臓リモデリング(左心室リモデリングなど)、左心室機能の低下、激しい活動時の呼吸困難、安静時の呼吸困難、起坐呼吸、頻呼吸、発作性夜間呼吸困難、めまい、錯乱、安静時の冷却四肢、運動不耐性、易疲労性、末梢性浮腫、夜間頻尿、腹水、肝腫大、肺水腫、チアノーゼ、横方向に変位した心尖拍動、ギャロップリズム、心雑音、傍胸骨台起性拍動、および胸水が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
1つの実施形態において、本明細書中に記載される構築物は、虚血性心臓組織の治癒を促進する際の使用を発見する。虚血組織の治癒を促進する構築物の能力は、部分的には虚血の重症度に依存する。当業者には理解されるように、虚血の重症度は、部分的には組織から酸素が奪われた時間の長さに依存する。そのような活動の中には、虚血組織のリモデリングの減少または予防がある。本明細書において「リモデリング(remodeling)」とは、(1)虚血組織の漸進的な薄化、(2)虚血組織を供給する血管の数または数の減少、および/または(3)虚血組織を供給する血管の1つ以上の閉塞、および虚血組織が筋肉組織を含む場合、(4)筋肉組織の収縮性の減少のうちの1つ以上の存在を意味する。処置されていないリモデリングは、典型的には虚血組織の弱体化をもたらし、その結果、対応する健康な組織と同じレベルで、もはや機能することができない。心血管虚血は、一般的に、冠状動脈疾患の直接的な結果であり、そして通常、冠状動脈におけるアテローム硬化性プラークの破裂によって引き起こされ、血栓の形成をもたらし、これは、冠状動脈を閉塞または閉塞することが可能であり、それによって、下流の心筋から酸素を奪う。長期の虚血は、細胞死または壊死をもたらすことが可能であり、そして死んだ組織の領域は、一般に梗塞と呼ばれる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法のための候補被験体は、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態に罹患している患者である。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法のための被験体は、安定狭心症および可逆性心筋虚血を有する患者である。安定狭心症は、激しい運動時またはストレス時に生じる胸痛を収縮させることを特徴とし、安静または舌下のニトログリセリンによって軽減される。安定狭心症患者の冠動脈造影は、通常、少なくとも1つの冠動脈の50~70%の閉塞を示す。安定狭心症は、通常、臨床症状および心電図変化の評価によって診断される。安定狭心症の患者は、一過性のSTセグメント異常を有し得るが、安定狭心症に結び付くこれらの変化の感度および特異性は低い。
【0086】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法の候補は、不安定狭心症および可逆性心筋虚血を有する患者である。不安定狭心症は、舌下のニトログリセリンにより軽減される安静時の収縮性胸痛を特徴とする。血管性胸痛は、通常、舌下のニトログリセリンによって軽減され、疼痛は通常、30分以内に治まる。不安定狭心症の重症度には3つのクラスがある:新たな発症、重症、または促進狭心症として特徴付けられるクラスI;ニトログリセリンの重症度、持続時間、または要件の増加によって特徴付けられる安静時の亜急性狭心症であるクラスII;および安静時の急性狭心症として特徴付けられるクラスIIIである。不安定狭心症は、安定狭心症と急性心筋梗塞(AMI)との間の臨床状態を表し、主に、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈痙攣、または非閉塞性プラークへの出血の重症度および程度の進行に起因すると考えられている。不安定狭心症患者の冠動脈造影は、通常、少なくとも1つの冠動脈の90%以上の閉塞を明らかにし、その結果、ベースラインの心筋酸素要求量さえ満たす酸素供給が不可能になる。安定なアテローム性動脈硬化プラークの成長が遅いか、または不安定なアテローム性動脈硬化プラークが破裂し、続いて血栓が形成されると、不安定な狭心症を引き起こすことがある。これらの原因の両方は、冠状動脈の重大な狭窄をもたらす。不安定狭心症は、通常、アテローム硬化性プラーク破裂、血小板活性化、および血栓形成に結び付く。不安定狭心症は、通常、臨床症状、ECG変化、および心臓マーカーの変化によって診断される。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法の候補は、冠状動脈バイパス移植(CABG)処置を受けている左心室機能不全および可逆性心筋虚血を有するヒト患者であり、これらは少なくとも1つの移植可能な冠状血管およびバイパスまたは経皮的冠状動脈インターベンションに従わない少なくとも1つの冠状血管を有する。
【0088】
いくつかの実施形態において、虚血組織への構築物の適用は、レーザードップラーイメージングを使用して測定されるように、虚血組織中に存在する血管の数を増加させる(例えば、Newtonら、2002, J Foot Ankle Surg,41(4):233-7を参照のこと)。いくつかの実施形態において、血管の数は、1%、2%、5%増加し;他の実施形態において、血管の数は10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%までさえ増加し;いくつかの実施形態において、血管の数はさらに増加し、中間値が許容される。
【0089】
いくつかの実施形態において、虚血性心臓組織への構築物の適用は、駆出率を増加させる。健康な心臓では、駆出率は約65~95%である。虚血組織を含む心臓において、いくつかの実施形態において、駆出率は、約20~40%である。従って、いくつかの実施形態において、構築物による処置は、処置前の駆出率と比較して、駆出率における0.5~1%の絶対的な向上を生じる。他の実施形態において、構築物による治療が、駆出率の絶対的な向上を1%以上もたらす。いくつかの実施形態において、治療は、治療前の駆出率と比較して、1.5%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、もしくはそれ以上の絶対的な向上を生じる。例えば、処置前の駆出率が40%であった場合、41%~59%またはそれ以上の間の処置後駆出率は、これらの実施形態で観察される。さらに他の実施形態において、構築物による処置は、処置前の駆出率と比較して、10%を超える駆出率の向上をもたらす。
【0090】
いくつかの実施形態において、虚血性心臓組織への構築物の適用は、心拍出量(CO)(状態前処置と比較して55%以上までの増加)、左心室拡張終期容積指数(LVEDVI)、左心室収縮終期容積指数(LVESVI)、および収縮期壁肥厚(SWT)のうちの1つ以上を増加させる。これらのパラメータは、例えば、放射性核種心室造影法(RNV)または複数ゲート獲得法(MUGA)などの核スキャン、およびX線を含む、当技術分野で標準的な診療手順によって測定される。
【0091】
いくつかの実施形態において、虚血性心臓組織への構築物の適用は、クレアチンキナーゼ(CK)、血清グルタミン酸シュウ酸トランスアミナーゼ(SGOT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(例えば、米国特許出願公開第2005/0142613号を参照のこと)、トロポニンIおよびトロポニンTといった、心臓損傷の徴候として臨床的に使用される1つ以上のタンパク質マーカーの血中濃度の顕著な向上を引き起こし、トロポニンIおよびトロポニンTは心筋損傷を診断するために使用され得る(例えば、米国特許出願公開第2005/0021234号を参照のこと)。さらに他の実施形態において、アルブミンのN末端に影響を及ぼす改変を測定することができる(例えば、米国特許出願公開第2005/0142613号、同第2005/0021234号、および同第2005/0004485号を参照されたい;これらの開示はその全体が引用により本明細書に組み込まれる)。
【0092】
さらに、培養された三次元組織は、心臓ポンプ、血管内ステント、血管内ステント移植片、左心室補助装置(LVADs)、両心室心臓ペースメーカー、人工心臓、および強化外部カウンターパルセーション(EECP)を含む、心臓疾患を治療するために使用される治療装置と共に使用することができる。
【0093】
本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる更なる代替の実施形態において、治療は、被験体における新たな心筋細胞および新たな血管の産生をもたらす。本明細書中の任意の他の実施形態と組み合わせることができる更なる代替の実施形態において、治療は、左心室機能の向上、拡張末期圧(EDP)の低下(前の状態の治療と比較して50~60%以上の低下)、心筋潅流、心筋細胞による前壁の再形成、および/または被験体における不適応左心室リモデリングの逆転をもたらす。
【0094】
左心室の収縮を補助するために心臓上に同期して拍動する構築物が配置される1つの非限定的な代替の実施形態において、有益な処置は、駆出率の向上によって実証され得る。さらなる非限定的な代替実施形態において、心臓の収縮を補助するために、非拍動性構築物は、心臓上に配置され、次いで心臓上で自発的に拍動を開始する。
【0095】
本明細書中で使用される場合、語句「有効な量(an amount effective)」は、本明細書中で議論されるように、障害を処置するために有効な構築物の量を意味する。当業者に明らかであるように、この方法は、機能する心筋細胞の欠如によって特徴付けられる障害を処置するための、列挙された構築物の1つ以上の使用を包含する。1つの実施形態において、この方法は、心臓の1つ以上の虚血領域、好ましくは心臓の全ての虚血領域を覆うのに役立つ1つ以上の構築物の量と心臓を接触させることを含む。この構築物は、機能する心筋細胞の欠如を特徴とする障害と診断された個体において、弱化または損傷した心臓組織の組織治癒および/または血管再生を促進するのに有効な量で使用される。投与される構築物の量は、障害の重症度、構築物が注射可能な組成物として使用されるかどうか(その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20060154365号を参照のこと)、存在する種々の増殖因子および/またはWntタンパク質の濃度、構築物を含む生存細胞の数、および/または処置される心臓組織へのアクセスの容易さに部分的に依存する。有効用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。適切な動物モデル、例えば、米国特許出願公開第20060292125号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるイヌモデルは、心臓の特定の組織に対する投与量の有効性を試験するために使用され得る。
【0096】
本明細書中で使用される場合、「投与(dose)」は、うっ血性心不全と診断された個々の心臓に適用される構築物の凝集片の数をいう。典型的な凝集片は約21.24cm2である。当業者によって理解されるように、凝集片の絶対寸法は機能する心筋細胞の欠乏を特徴とする障害と診断された個体において、弱くなった、または損傷した心臓組織の治癒を促進するのに充分な数の細胞を含む限り、変化し得る。したがって、本明細書に記載される方法による使用に適切な凝集片は、大きさが15cm2~50cm2に及ぶことができる。
【0097】
構築物の2つ以上の凝集片の適用は、本明細書中に記載される方法によって処置可能な心臓の面積を増加させるために使用され得る。例えば、2つの片の粘着性構築物を使用する実施形態において、処置可能な領域は、約2倍の大きさである。構築物の3つの凝集片を使用する実施形態に、処置可能な領域は、大きさがほぼ3倍である。構築物の4つの凝集片を使用する実施形態に、処置可能な領域は、大きさがほぼ4倍である。構築物の5つの粘着性片を用いた実施形態において、処置可能面積はほぼ5倍、すなわち、21.24cm2から175cm2である。
【0098】
いくつかの実施形態において、構築物の1つの凝集片は、機能する心筋細胞の欠乏を特徴とする障害と診断された個体の心臓の領域に付着させる。
【0099】
他の実施形態において、構築物の2つの凝集片は、機能している心筋細胞がないことを特徴とする障害と診断された個体の心臓の領域に付着させる。
【0100】
他の実施形態において、構築物の3つの凝集片は、機能している心筋細胞がないことを特徴とする障害と診断された個体の心臓の領域に付着させる。
【0101】
他の実施形態において、構築物の4つ、5つ、またはそれ以上の凝集片は、機能する心筋細胞の欠乏を特徴とする障害と診断された個体の心臓の部位に付着させる。
【0102】
構築物の2つ以上の凝集片が投与される実施形態において、機能する心筋細胞の欠乏によって特徴付けられる障害の重症度、処置される領域の程度、および/または処置される心臓組織への接近の容易さに部分的に依存して、1つの片の別の片への接近を調節することができる。例えば、いくつかの実施形態において、1つの片の1つまたは複数のエッジは、第2の片の1つまたは複数のエッジに接するように、構築物の片を互いにすぐ隣に配置することができる。他の実施形態において、片は、1つの片のエッジが別の片のエッジに接触しないように、心臓組織に取り付けることができる。これらの実施形態において、片は、被験者によって提示される解剖学的および/または疾病状態に基づいて、適切な距離で互いに分離され得る。1つの片の他の片への近接性の決定は、十分に当業者の能力の範囲内であり、そして所望される場合、適切な動物モデル、例えば米国特許出願公開第20060292125号に記載されるイヌモデル、を使用して試験され得る。
【0103】
構築物の複数の片を含む実施形態において、片のいくつかまたは全ては、心臓の同じ領域または異なった領域に取り付けることができる。
【0104】
構築物の複数の片を含む実施形態において、片は、心臓に同時に付着されるか、または並行して付着される。
【0105】
いくつかの実施形態において、構築物の片は、経時的に投与される。投与の頻度および間隔は、障害の重症度、構築物が注射可能な組成物として使用されるかどうか(その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20060154365号を参照のこと)、存在する種々の増殖因子および/またはWntタンパク質の濃度、スキャホールドを含む生存細胞の数、および/または処置される心臓組織へのアクセスの容易さに部分的に依存する。投与の頻度および連続適用の間の持続時間の決定は十分に当業者の能力の範囲内であり、そして所望される場合、適切な動物モデル、例えば、米国特許出願公開第20060292125号に記載されるイヌモデル、を使用して試験され得る。
【0106】
さらなる代替の実施形態において、1つ以上の構築物を左心室と接触させる。さらなる代替の実施形態において、1つ以上の構築物は、心臓全体を覆う。
【0107】
構築物の複数の片を含む実施形態において、片のいくつかまたは全ては、心臓を含む領域に取り付けることができる。他の実施形態において、1つ以上の構築物の片を、損傷した心筋を含まない領域に取り付けることができる。例えば、いくつかの実施形態において、1つの片は、虚血組織を含む領域に取り付けることができ、第2の片は、虚血組織を含まない近接領域に取り付けることができる。これらの実施形態において、近接領域は、損傷した又は欠陥のある組織を含むことができる。本明細書中で使用される「損傷した(Damaged)」または「欠陥のある(defective)」組織は虚血組織を開始した事象を含むが、これに限定されない、内部および/または外部事象によって引き起こされ得る組織における異常状態をいう。虚血性、損傷または欠陥組織をもたらし得る他の事象には、疾患、手術、環境曝露、損傷、老化、および/またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0108】
培養された三次元組織の複数の片を含む実施形態において、構築物の片は、虚血組織に同時に付着され得るか、または並行して付着され得る。
【0109】
本明細書中に記載される方法および組成物は、種々の医薬品の投与および外科的処置といった従来の処置と組み合わせて使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、培養された三次元組織は、機能する心筋細胞の欠乏によって特徴付けられる障害を処置するために使用される1つ以上の薬物と共に投与される。本明細書中に記載される方法における使用に適切な薬物としては、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、エナラプリル、リシノプリル、およびカプトプリル)、アンギオテンシンII(A-II)受容体遮断薬(例えば、ロサルタンおよびバルサルタン)、利尿薬(例えば、ブメタニド、フロセミド、およびスピロノラクトン)、ジゴキシン、ベータ遮断薬、およびネシリチドが挙げられる。
【0110】
さらに、この構築物は、心臓ポンプ、左心室補助デバイス(LVADs)とも呼ばれる、両心室心臓ペースメーカー、心臓ラップ手術、人工心臓、および増強された外部カウンターパルセーション(EECP)、および心臓ラップ手術(例えば、米国特許第6,425,856号、同第6,085,754号、同第6,572,533号、および同第6,730,016号、これらの内容は、本明細書中で参考として援用される)を含み、機能する心筋細胞の欠損を特徴とする障害を処置するために使用される他の選択肢とともに使用され得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、構築物は、心臓ラップ外科手術と組み合わせて使用される。これらの実施形態において、可変性パウチまたは外被を使用して、損傷した、または弱くなった心臓組織の上に置く前に、パウチの内側に置くか、またはパウチ内に埋め込むことができる構築物を送達および/または取り付ける。他の実施形態において、パウチと3DFCとを一緒に接合することができる。例えば、パウチ及び構造体は、伸縮可能な縫い目の集合体を用いて、一緒に接合することができる。他の実施形態において、構造体が枠組みをパウチに接合するのに役立つねじ山を備えるように構成することができる。米国特許6,416,459と、同第5,702,343と、同第6,077,218と、同第6,126,590と、同第6,155,972と、同第6,241,654と、同第6,425,856と、同第6,230,714と、同第6,241,654と、同第6,155,972と、同第6,293,906と、同第6,425,856と、同第6,085,754と、同第6,572,533と、同第6,730,016と、及び米国特許公報番号第2003/0229265と、同第2003/0229261号との内容は、本書に盛り込まれており、搬入および/または構造物の取り付けに使用できるパウチおよびジャケット、例えば、心臓制約装置の種々の実施形態を記述している。
【0112】
いくつかの実施形態において、構造物に加えて、他のデバイス、例えば、除細動のための電極層、外被が心臓上で所望の程度の張力に調整されるときを示すための張力インジケーターは、パウチに取り付けられ、本明細書に記載される方法および組成物において使用される。米国特許、例えば、第6,169,922号および同第6,174,279号を見ると、その内容は参考までに盛り込んでいる。
【0113】
多くの方法を使用して、構築物の取り付けの前後の対象における心臓の機能の変化を測定することができる。例えば、心エコー図を使用して、心臓が圧送している能力を決定することができる。各心拍で左心室から送り出される血液の割合は駆出率と呼ばれる。健康な心臓では、駆出率は約60%である。左心室が激しく収縮することができないことによって引き起こされる慢性心不全、すなわち収縮期心不全を有する個体において、駆出率は、通常、40パーセント未満である。心不全の重症度および原因に応じて、駆出率は、典型的には40パーセント未満~15パーセント、もしくはそれ以下の範囲である。心エコー図はまた、収縮期心不全と拡張期心不全とを区別するために使用され得、ここで、ポンピング機能は正常であるが、心臓は硬い。
【0114】
いくつかの実施形態において、心エコー図を使用して、構築物を用いた治療の前後の駆出率を比較する。特定の実施形態において、構築物を用いた治療は、3~5%の駆出率の改善をもたらす。他の実施形態において、構築物による治療が5~10%の駆出率の改善をもたらす。さらに他の実施形態において、構築物による治療は、10%を超える駆出率の改善をもたらす。
【0115】
放射性核種心室造影法(RNV)または複数ゲート取得(MUGA)スキャニングなどの核スキャンを使用して、心臓が各拍動でどれだけの血液を送り出すかを決定することは、できる。これらの検査は、個々の静脈に注入された少量の色素を使用して行われ、心臓を通って流れる放射性物質を検出するために特別なカメラが使用される。その他の検査は、X線検査や血液検査を含む。胸部X線は、心臓の大きさ、および肺に体液が蓄積しているかどうかを判定するために使用することができる。血液検査を用いて、うっ血性心不全、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の特異的指標を調べることができる。BNPは、過剰に働いている場合、心臓によって高レベルで分泌される。したがって、血液中のBNPのレベルの変化を使用して、治療レジメンの有効性をモニターすることができる。
【0116】
さらなる態様において、本発明は、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を処置するためのキットであって、上記に開示されるような適切な構築物および構築物を心臓または臓器に付着させるための手段を含むキットを提供する。取り付けのための手段は、例えば、微細縫合のための外科用接着剤、ハイドロゲル、またはプレロードされたプロレン針といった、上記のような任意の取り付け装置を含んでもよい。
【0117】
〔実験〕
治療された心臓組織の電気的機能の改善を評価する実験を実行した。具体的には、電圧特性、プログラム電気刺激(PES)および活動電位持続時間(APD)を研究した。
【0118】
ミリボルテージ測定値は、より高い電圧がより健康な組織を表す場合に、組織がどれだけの電圧を生成することができるかを反映する。プログラムされた電気刺激は、潜在的に致死的な不整脈に対する心臓の感受性を研究するために使用される技術であり、具体的には、PESが心室頻拍(VT)を誘導して、生命を脅かす心室性不整脈、すなわち、VTまたは換気細動(VF)を有する患者または動物の感受性を決定するために使用される。不整脈に容易に誘導されるが、特にVTである心臓組織は、疾患組織を示す。活動電位持続時間は、電気インパルスが組織を通って移動するのにどれくらいの時間を要するかを測定する。持続時間が長ければ長いほど、組織はより罹患している。
【0119】
パッチの移植後のミリ電圧振幅の改善が実証された。これらの改善は、1)生体材料を通した伝導(すなわち、生体材料は伝導性である)、2)細胞が宿主組織に統合される(永久的または一時的に)、3)パッチが組織の内因性修復を誘導する、または4)以前に損傷を受けた組織における細胞/組織塊の増加(心筋細胞の有無にかかわらず)が起こるなど、独立して、または一緒になって、いくつかの異なるメカニズムによって仲介され得るが、これらに限定されない。パッチの移植はまた、PESの間のVTの誘導の感受性を減らし、そして活動電位持続時間を減少させ、これは、心臓の梗塞領域を通る電気的活性の速度の改善を意味する。このような結果は、本発明のパッチが心臓における電気的機能を全体的に改善することを示す。
【0120】
これらの実験のために、多数のグループを試験した。偽およびCHFの制御は、メッシュ単独に加えて、線維芽細胞を用いたメッシュあるいは線維芽細胞および以下の異なる誘導多能性幹細胞(iPSC)、最終分化異種CM(HetCMs)、心室純粋(VM)CMsおよび心臓前駆細胞(CPCs)を用いたメッシュにより実行された。全ての治療グループは、心臓の電気的機能/性能の改善を示した。
【0121】
改善された収縮機能、改善された拡張機能、および破滅的な心臓のリモデリングの減衰を含むが、これらに限定されない他の機能的利点と共に、心臓パッチは、病気の心臓組織における電気的病理を治療するために使用され得る。これらは、心室不整脈、心室頻脈、心室細動、および心房または心房細動などの心臓の上部チャンバから生成される不整脈といった上室不整脈、ならびに完全心臓ブロックを含む、任意の程度の心房-心室(A-V)ブロックといった房室結節組織の疾患などの心室不整脈といった後天性あるいは先天的な病理を含むが、これらに限定されない。心臓パッチは、これらの表示のための生物学的治療であり得、そして不整脈を治療するために、移植可能な除細動器、ペースメーカー、およびアブレーション治療を使用する現在の臨床標準に挑戦する。これらの心臓パッチの前処置は、独立して、または現在の標準的な医療と組み合わせて使用され得る。
【0122】
図1は、生体内電圧振幅、伝導速度、心室頻拍(VT)の感受性を決定する電気生理学的方法を示す。
【0123】
表1:持続性心室頻拍(sVT)の感受性を、各候補細胞集団およびメッシュ単独により処置したラットにおいて決定した。研究の終了部分で、sVTを誘導するために、ラットをプログラムされた電気刺激装置に供した。このプロトコルは、偽手術動物と比較して、sVTに入る慢性心不全(CHF)動物の感受性の72%の増加をもたらし、その0%がsVTを発症した。メッシュ単独、メッシュ+線維芽細胞、メッシュ+線維芽細胞+不均質(HetCM)、メッシュ+線維芽細胞+心室純粋(VM)心筋細胞、メッシュ+線維芽細胞+心臓前駆細胞(CPCs)で作製したパッチでラットを処置すると、sVTの感受性が低下した。持続性VT(sVT)は、15を超える早期心室収縮(PVCs)を有することによって定義される。
【0124】
【0125】
表1 凡例:
データは、平均±標準誤差として示す。Sham n=15、CHF n=29、メッシュ単独 n=5、メッシュ+線維芽細胞 n=12、メッシュ+線維芽細胞+HetCM CM n=4、メッシュ+線維芽細胞+VM CMs n=3、メッシュ+線維芽細胞+CPCs、である。
【0126】
略語:HetCm=異種心筋細胞、VM=心室筋細胞、CPC=心臓前駆細胞、CHF=慢性心不全、sVT=持続性心室頻拍、ERP=有効不応期、PVC=早期心室収縮、EF=駆出率、EDP=拡張終末期圧、である。誘発された持続性心室頻拍の割合の統計分析は、有意水準0.05のイェーツ補正を用いた両側カイ二乗検定によって、実行された。*は、「偽(SHAM)」に対して統計的に有意な差を示す。平均有効不応期の統計解析は、有意水準が0.05の、次のホルム-シダック(Holm-Sidak)検定を用いた一元配置分散分析(ANOVA)を使用して実行された。#サインは、「偽(SHAM)」に対する統計的有意差を示す。@は、「慢性心不全(CHF)」に対して統計的に有意な差を示す。平均駆出率の統計解析は、有意水準0.05により、次のホルム-シダック検定を伴う分散の一元配置分散分析(ANOVA)を用いて行った。†サインは、「偽(SHAM)」に対する統計的有意差を示す。平均拡張終末期圧の統計解析は、有意水準0.05により、次のホルム-シダック検定を伴う一元配置分散分析(ANOVA)を用いて実行された。φは、「偽(SHAM)」に対する統計的有意差を示す。
【0127】
心臓移植片を、hetCM、VM、またはCPCを用いて、ヒト皮膚線維芽細胞との3D生体吸収性メッシュへの共培養によって作製した。hetCMは、60%の心室、40%の心房および結節性の心筋細胞を含む。VMは、90%の心室および10%の心房心筋細胞を含む。移植片を6日間培養して評価した。
【0128】
成体雄スプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラットに永久左冠動脈結紮を施し、SHAM、CHF、または移植片の処置を無作為化した。左心室(LV)血行力学測定および心室頻拍(VT)誘導研究を、実験室で開発された方法を使用して、移植後3週間(結紮後6週間)に行った。本発明者らは、持続性VTを、15を超える連続的な早期心室収縮(PVCs)と定義した(
図2)。
【0129】
hetCMおよびVM由来の心臓移植片は共に、培養48時間後に同期収縮および自発収縮を示し、平均収縮速度(±平均誤差)をそれぞれ67±6および71±9拍/分に維持した(群あたりn=10)。心臓前駆細胞の移植片は、自然に収縮しなかった。hetCM VM、CPC移植片の移植は、左心室拡張末期圧(EDP)をそれぞれ40%、40%および35%改善し(p<0.05)、VT誘導に対する感受性をそれぞれ65%、54%および44%減少させた(表1、
図3および4)。
【0130】
hetCMs、VMsまたはCPCsで操作され、ラット慢性心不全モデルに移植された心臓移植片は、誘導VTの感受性を減少させながら、生体内でLV EDPを低下させることができる。この手法は、hiPSC由来の操作された心臓移植片が慢性心不全を有する患者におけるVTの処置として使用され得る可能性を提起する。これらのデータはまた、移植片単独(細胞なし)または線維芽細胞単独もまた、CHF患者におけるVTの処置としての治療的可能性を有し得ることを支持する。
【0131】
〔参考〕
本明細書で参照される特許文献および科学論文のそれぞれの開示全体は、すべての目的のために参照により組み込まれる。
【0132】
〔同等物〕
本発明は、その精神または本質的特性から逸脱することなく、他の特定の形態内で実施されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載された実施形態を限定するのではなく、すべての点で例示的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明ではなく、添付の特許請求の範囲、およびその範囲内に入るすべての変更によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1】
図1は、生体内の電気生理学的分析を行って、hiPSC-CMパッチ統合および宿主心筋への電気機械的結合を評価した。表面心電図(ECG)、LV電圧マップ、ローカルECGおよび活性化マップを各群から収集した。電圧マッピングおよび活性化マッピングは、カスタムエンジニアリングされたソフトウェアプログラムを用いて行った。アスタリスクは、活性化マッピングのみのためのおおよその心外膜ペーシング位置を示す。偽、CHF、およびCHF+iPSC-CMパッチ心臓の上の囲みは、電圧および活性化マッピングのためのカラーマップを生成するためにマッピングされた組織領域を示す。ギリシャ文字は、電圧または活性化マップに関する各群からのローカル心電図の焦点領域を示す。表面およびローカルECGおよび電圧マッピングをミリボルトで報告する。活性化マッピングは、ミリ秒で報告される。hiPSC-CMパッチ移植組織の移植は、以前の虚血組織を横切る電圧振幅と活性化時間を改善する。
【
図2】
図2は、誘導性動物の画分を含むECGのサンプルである。各ストリップは、洞律動で始まる。これらの群は、hetCMおよびVM移植片の不整脈惹起性の質を評価するための操作として役立った。*は、ペーシング電極のおおよその位置を示す。
【
図3】
図3は、hiPSC-hetCM心臓移植片により処置した4匹のラットの各々からのECGである。4匹のラットのうちの1匹(25%)は、持続性心室頻拍を経験する。各ストリップは洞律動で始まる。
【
図4】
図4は、hiPSC-VM心臓移植片で処置した3匹のラットの各々からのECGである。3匹のラットのうちの1匹(33%)は、持続性心室頻拍を経験する。各ストリップは、洞律動で始まる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する被験体を処置する用途の構築物であって、異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態を有する患者に接触させるためのスキャホールド(scaffold)を含み、前記スキャホールドは、生体適合性のある非生体材料を含む基材であり、
1つ以上の治療細胞集団が、前記スキャホールドに結合しており、
前記1つ以上の治療細胞集団が、hiPSC由来の不均一心筋細胞(hetCM)であり、
前記hetCMが、50%~90%の心室心筋細胞を含む、構築物。
【請求項2】
異常な心臓組織機能に結び付く障害または状態が、心臓の不整脈である、請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記心臓の不整脈が、頻拍、徐脈、心室頻拍、心室細動、心房細動といった上室頻拍といった心臓の上室から発生する不整脈、および完全心臓ブロックといった房室結節性組織の疾患からなる群から選択される、請求項2に記載の構築物。
【請求項4】
前記1つ以上の治療細胞集団が、前記心臓に接着される、請求項1に記載の構築物。
【請求項5】
前記hetCMが、心室、心房、および結節性心筋細胞の混合物を含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項6】
前記1つ以上の治療細胞集団が、1.3×10
5
細胞/cm
2
および2.95×10
6
細胞/cm
2
の間の密度で前記スキャホールド上にある、請求項1に記載の構築物。
【請求項7】
前記1つ以上の治療細胞集団が、1.3×10
5
細胞/cm
2
および6×10
6
細胞/cm
2
の間の密度でスキャホールド上にある、請求項1に記載の構築物。
【請求項8】
前記1つ以上の治療細胞集団が、2.9×10
5
細胞/cm
2
および5.5×10
6
細胞/cm
2
の間の密度でスキャホールド上にある、請求項1に記載の構築物。
【請求項9】
前記1つ以上の治療細胞集団が、ヒト細胞、イヌ細胞、ウマ細胞、ネコ細胞、ウシ細胞といった哺乳動物起源のものである、請求項1に記載の構築物。
【請求項10】
前記スキャホールドが、血管系前駆細胞をさらに含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項11】
前記1つ以上の治療細胞集団が、CD40および/またはHLAの発現を減少または排除するように、および/またはHLAと一致させるように操作される、請求項1に記載の構築物。
【請求項12】
前記スキャホールドが、前記被験体の心外膜に付着される、請求項1に記載の構築物。
【請求項13】
前記接触が、前記スキャホールドを前記被験体の左心室、右心室、左心房、または右心房に接触させることを含む、請求項1に記載の構築物。