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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171780
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20231128BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20231128BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/92
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023146041
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2020511505の分割
【原出願日】2018-12-18
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/084521
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】北村 三矢子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
(57)【要約】      (修正有)
【課題】べたつきがないみずみずしく軽い感触でありながら、長時間持続する保湿効果を発揮できる水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】水性媒体、カルボキシ基と、疎水性ブロック及び親水性ブロックを含み、該親水性ブロック側で主鎖と結合している両親媒性側鎖と、を有するアルカリ溶解性ポリマー、少なくとも1つのC3~C6の直鎖又は環状ポリオール残基、及び6.0~12.0のHLBを有するノニオン界面活性剤、液状油剤、及びペースト状油剤を含有する、水中油型乳化化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水性媒体、
(B)カルボキシ基と、疎水性ブロック及び親水性ブロックを含み、該親水性ブロック側で主鎖と結合している両親媒性側鎖と、を有するアルカリ溶解性ポリマー、
(C)少なくとも1つのC3~C6の直鎖又は環状ポリオール残基、及び6.0~12.0のHLBを有するノニオン界面活性剤、
(D)液状油剤、及び
(E)ペースト状油剤を含有し、
水中油型乳化化粧料がシリコーン系油剤を含有しない条件で、前記液状油剤(D)に対する前記ペースト状油剤(E)の質量比が0より大きく1以下である、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記アルカリ溶解性ポリマーが更にアルコキシカルボニル基を有し、前記両親媒性側鎖は、前記疎水性ブロックとしてのC12~C24の炭化水素骨格と、前記親水性ブロックとしてのポリオキシエチレン骨格とを有する、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記ノニオン界面活性剤は、グリセリン残基、ソルビトール残基又はスクロース残基、及び6.0~12.0のHLBを有する、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記液状油剤及び前記ペースト状油剤のいずれか又は両方が極性油剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化物は、油剤を本質的に含まない可溶化型の透明製剤に対して、みずみずしく軽い感触を維持しながら肌を保湿することが可能な化粧料であり、この理由のために多種のスキンケア製品に使用されている。
【0003】
水中油型乳化物は一般的に、水性成分、油性成分、及び油性成分を乳化するための界面活性剤を含有し、水性成分は通常ポリオール、多糖類といった成分を含む(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-31092号公報
【発明の概要】
【0005】
水性成分には、ポリオール又は多糖類に加えて、一般的に合成系水溶性ポリマー、バッファー、及び水溶性美容成分が含まれ、これらは保湿効果をもたらすが、本発明者らは、そのような成分が、少量が添加されたときであっても、重くべたつきのある感触をも引き起こすことを発見した。
【0006】
このような化粧品の処方に関するこの問題は、みずみずしさと保湿効果があり、べたつきが少ない水中油型乳化化粧料の開発に技術的な障害をもたらし、そのような製品は未だ市場にもたらされていない。
【0007】
本発明の目的は、べたつきがないみずみずしく軽い感触でありながら、長時間持続する保湿効果を発揮できる水中油型乳化化粧料を提供することにある。
【0008】
本発明は、(A)水性媒体、(B)カルボキシ基と、疎水性ブロック及び親水性ブロックを含み、該親水性ブロック側で主鎖と結合している両親媒性側鎖と、を有するアルカリ溶解性ポリマー、(C)少なくとも1つのC3~C6の直鎖又は環状ポリオール残基、及び6.0~12.0のHLBを有するノニオン界面活性剤、(D)液状油剤、及び(E)ペースト状油剤を含有し、水中油型乳化化粧料がシリコーン系油剤を含有しない条件で、液状油剤(D)に対する前記ペースト状油剤(E)の質量比が0より大きく1以下である、水中油型乳化化粧料を提供する。
「(A)水性媒体」を以下において単に「(A)成分」と呼ぶ場合があり、他の成分についても同様に表す。
親水性ブロックは疎水性ブロックに結合することができる。
【0009】
本発明の水中油型乳化化粧料は、優れたみずみずしさとべたつきのなさにより、使用中に満足できる感触を示し、持続する保湿効果を有する。シリコーン系油剤を含まない乳化化粧料は、更にさらさら感を防ぐ。乳化状態も長時間安定である。大多数の消費者は、スキンケア製品に保湿効果に関する要求を持ちながら、みずみずしく軽い感触も望んでおり、本発明の水中油型乳化化粧料はこれらの要求を満たしている。
【0010】
成分(B)は側鎖に親水性ブロックを有し、カルボキシ基を含むが、水へ膨潤、分散又は溶解しやすく、中性からアルカリ性の条件下で良好な水溶性を示す。
一方、成分(B)は側鎖の末端に疎水性ブロックも有するため、その疎水性部分とノニオン界面活性剤の疎水基(C3~C6の直鎖又は環状ポリオール残基)とが集合して、成分(A)中で会合体を形成する。本発明の水中油型乳化化粧料は、べたつきがなく軽い感触を生み出し、その効果は、会合性ポリマー(成分(B))と成分(C)との間の組み合わせに起因する。
【0011】
成分(B)は、水中油型乳化化粧料に粘性を付与するだけでなく、油剤の乳化能力も有する会合性の水溶性ポリマーであるが、粘性及び乳化能力を付与するためにそれが単独で添加された場合、他の水溶性ポリマーが使用された場合と同じように、肌上でべたつきをもたらす。しかしながら、本発明によれば、成分(B)と成分(C)が会合体を生じるため、(B)を少量添加しても高い乳化能力を発揮でき、その結果べたつきが生じない。
【0012】
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(D)と成分(E)とを組み合わせた油剤をも含有し、長時間持続する保湿効果を発揮する。油剤の添加は、おそらく会合体の形成を引き起こすと共に粘度を増加させ、これにより保湿効果が向上し、化粧料の安定性も増大する。
【0013】
水中油型乳化化粧料中の油剤はべたつきを生じさせずに保湿効果をもたらすが、油剤を水性媒体に安定的に乳化、分散させることは難しい。この問題の一般的な解決策は、過剰量の界面活性剤を添加すること、又は界面活性助剤及び水溶性増粘剤を使用することである。そのような処方は化粧料を安定化させるが、重さ、べたつきといった望ましくない感触を結局もたらす。
しかしながら、本発明の水中油型乳化化粧料は、過剰量の界面活性剤の添加を必要とせず、乳化安定性を高めるために他の成分を添加することなく十分に高い乳化安定性を提供できる。
【0014】
アルカリ溶解性ポリマーが、アルコキシカルボニル基、及び、疎水性ブロックとしてのC12~C24の炭化水素骨格と、親水性ブロックとしてのポリオキシエチレン骨格とを有する両親媒性側鎖とを有してもよい。ノニオン界面活性剤は、グリセリン残基、ソルビトール残基又はスクロース残基を有してよく、そのHLBは6.0~12.0であってよい。
【0015】
成分(B)及び成分(C)について上記のそれぞれの構成を用いると、会合体を形成する能力が高まり本発明の優れた効果、すなわち、みずみずしさを与えること、べたつきを防ぐこと及び保湿を与えることがもたらされ、優れた乳化安定性も発揮される。
【0016】
液状油剤に対するペースト状油剤の質量比は、0より大きく1以下であってよい。
ペースト状油剤は、液状油剤と比較して保湿及びべたつきの低減の効果は大きいが、エマルションの安定化の観点から、過剰量添加することが好ましくない場合がある。ペースト状油剤の質量比が上記の範囲内であると、水中油型乳化化粧料は非常に良好な安定性を発揮する。
【0017】
液状油剤及びペースト状油剤のいずれか又は両方が極性油剤であってよい。すなわち、極性液状油剤及び/又は極性ペースト状油剤が使用され得る。このような油剤の使用により、保湿効果が更に持続する。
【0018】
本発明によれば、べたつきがないみずみずしく軽い感触でありながら、十分に長時間持続する保湿効果を発揮できる水中油型乳化化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を説明するが、それらは本発明を限定することを意図したものではない。
【0020】
本実施形態の水中油型乳化化粧料における成分(A)は、成分(B)~(E)の媒体として、少なくとも水を含有する水性媒体である。成分(A)は、水のみからなっていてよく、水中の他の水溶性成分を含んでもよい。
【0021】
水溶性成分は、ポリオール、モノアルコール、多糖類、成分(C)以外のノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、バッファー、防腐剤、合成系水溶性ポリマー、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、抗菌剤、抗炎症剤、香料、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、ビタミン、アミノ酸、植物抽出物を含む。
【0022】
ポリオールの例には、ブチレングリコール、ペンチレングリコール及びグリセリンが含まれ、多糖類の例には硫酸化多糖類が含まれる。使用可能なノニオン界面活性剤(成分(Cを除く)には、ポリソルベート20(HLB:16.7)、ポリソルベート60(HLB:14.9)、ポリソルベート80(HLB:15)のようなソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、及びセスキオレイン酸ソルビタン(HLB:5)のようなソルビタン脂肪酸エステルを用いることができる。
【0023】
リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、EDTA二ナトリウムは使用可能な典型的なバッファーであり、フェノキシエタノールは典型的な保存剤であり、エタノールは典型的なモノアルコールである。
【0024】
水中油型乳化化粧料における成分(B)は、カルボキシ基と、疎水性ブロック及び親水性ブロックを含み、該親水性ブロック側で主鎖と結合した両親媒性側鎖と、を有するアルカリ溶解性ポリマーである。
【0025】
すなわち、成分(B)は少なくともカルボキシ基と両親媒性側鎖とを有し、両親媒性側鎖は、疎水性ブロック及び親水性ブロックを含み、親水性ブロック側で主鎖と結合している。
【0026】
疎水性ブロックとは、1を超す炭素原子の長さを持ち、それ自体が疎水性であり、典型的には炭化水素骨格である。疎水性ブロックは、好ましくは12~24個の炭素原子の炭化水素骨格であり、より好ましくはC12~C24のアルキル基である。このようなアルキル基には、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)が含まれる。アルキル基は、好ましくは偶数の炭素を有し、好ましくはドデシル基、オクタデシル基、又はドコシル基である。
【0027】
親水性ブロックとは、1を超す炭素原子の長さを持ち、それ自体が親水性であり、典型的にはポリオキシアルキレン骨格である。親水性ブロックは、ポリオキシエチレン骨格で構成され、オキシエチレンの繰り返し数は10~30であり得る。すなわち、親水性ブロックは、好ましくは-(CHCHO)-の骨格を有し、nは10~30であることが好ましく、より好ましくは12~25であり、更に好ましくは20~25である。親水性ブロックは、主鎖に直接結合してよく、リンカーを介して結合してもよい。リンカーはオキシカルボニル基(-CO-O-)であってよく、-O-部分がポリオキシアルキレン骨格の炭素原子と結合することが好ましい。
【0028】
成分(B)は、アルコキシカルボニル基を有していてもよく、アルコキシカルボニル基中のアルキル基は、C1~C24のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)が含まれる。
【0029】
成分(B)は、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、上述した両親媒性基を有するエチレン性不飽和化合物とを繰返し単位として有するポリマーであることが好ましく、上述したアルコキシカルボニル基を有するエチレン性不飽和化合物を更なる繰返し単位として有してもよい。より好ましいポリマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルエステルを繰返し単位として有するポリマーである[すなわち(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸POEモノアルキルエーテルエステル共重合体]。なお(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリロイルといった他の類似の骨格にも適用される。
【0030】
成分(B)は、化粧料に粘性を付与するだけでなく油剤の乳化能も有する、アルカリ溶解性の水溶性ポリマーである。具体的には、製剤の水性媒体中に分散させ、水酸化ナトリウム等の塩基にて中和して用いられることができる。成分(B)は疎水性変性アルカリ溶解性ポリマーと呼ぶこともできる。成分(B)の例は、ダウ・ケミカル社製、アキュリンTM22、アキュリンTM28である。
【0031】
急激な粘度の上昇は、成分(C)と組み合わせた成分(B)によってもたらされる。この現象は、成分(B)と成分(C)における疎水性残基(アルキル基等)が水中油型乳化化粧料中で相互作用し会合体を形成するために生じる。少量の成分(B)及び成分(C)によっても形成されるこの会合体は、肌に塗布した際に、瞬時にゲルから液体の形状に変化するといった特徴的な感触をもたらす。
【0032】
水中油型乳化化粧料における成分(C)は、C3~C6の直鎖又は環状ポリオール残基を少なくとも1つ有し、6.0~12.0のHLBを持つノニオン界面活性剤である。すなわち、成分(C)は、C3~C6の直鎖ポリオール残基又はC3~C6の環状ポリオール残基を少なくとも1つ有し、そのHLBは上記で示された範囲にある。HLBが6.0未満の場合、水性媒体への溶解性が低下して乳化安定性が低下する。さらに、本発明の効果(みずみずしく軽い感触でべたつきがないにもかかわらず、長時間持続する十分な保湿効果)を得ることができない。逆に、HLBが12.0を超える場合、みずみずしさ、べたつきのなさ、乳化安定性等に劣り、上述の効果を得ることができない。
【0033】
HLBは、界面活性剤の分野で一般に使用されている親水性-親油性のバランスであり、小田・寺村により発表された下記のような従来の計算式を用いて計算することができる。
HLB=(Σ無機性値)×10/(Σ有機性値)
ノニオン界面活性剤が市販品である場合には、市販品のカタログに記載されているHLBの数値を使用できる。
【0034】
グリセリン残基はC3の直鎖ポリオール残基の例であり、ソルビトール残基はC6の直鎖ポリオール残基の例である。スクロース残基は、C6の環状ポリオール残基を2つ有するものである。
【0035】
成分(C)は、C3~C6の直鎖又は環状ポリオールのオキシエチレン付加物の脂肪エステルであってよい。脂肪酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。脂肪酸のアルキル部分は、C6~C24のアルキル基であってよく、その例にはヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)が含まれる。このタイプの成分(C)としては、ポリオキシエチレン(20)グリセリルトリイソステアレート(例えば、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル)が挙げられる。
【0036】
あるいは、成分(C)は、C3~C6の直鎖又は環状ポリオールのオキシエチレン付加物の脂肪酸エステルであってよい。このタイプの成分(C)の例には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びソルビトールのオキシエチレン付加物の脂肪酸エステルも含まれる。ポリオキシエチレン水添ヒマシ油の例としては、PEG-10水添ヒマシ油が挙げられる。また、ソルビトールのオキシエチレン付加物の脂肪酸エステルの例としては、ソルビトールのオキシエチレン付加物のオレイン酸エステル(テトラオレイン酸ソルベス-6、テトラオレイン酸ソルベス-30等)が挙げられる。
【0037】
成分(C)のHLBは、好ましくは7.0~12.0、より好ましくは8.0~12.0である。成分(C)がこの中程度の範囲のHLBを有する場合、成分(B)と成分(C)の疎水性残基の間の良好な相互作用が得られるため、水中油型乳化化粧料は、べたつきがなくみずみずしく軽い感触をもたらす。
【0038】
水中油型乳化化粧料における成分(D)及び成分(E)は、油剤であり、それぞれ液状油剤及びペースト状油剤である。ペースト状油剤としては、25℃においてペースト状で化粧料に用いられるものであれば特に限定されず用いることができるが、ブルックフィールド型回転粘度計で測定して、25℃において10,000mPa・s以上の粘度を有するエステル油及び/又は炭化水素油を用いることが好ましい。液状油剤は同条件下で粘度が10,000mPa・s未満のものである。粘度が非常に大きい場合は、30℃での稠度(JIS-K-2220準拠)が150より大きい場合にペースト状油剤であると判断される場合がある。
【0039】
そのような油剤を加えることは、相乗的に粘度を増加させる会合体の形成が進み、その安定性を維持する水中油型乳化化粧料をもたらす。この水中油型乳化化粧料は、べたつきのないみずみずしく軽い感触で、長時間の保湿効果を持続する。シリコーン系の油性成分を除き、一般的な油剤は、水溶性成分に比して肌の角質層に浸透しやすい性質を有しているため、より高い保湿効果を付与することができるが、油剤を含まない製剤と比較して水中油型乳化化粧料の安定性の担保が困難である傾向がある。しかし、本発明によれば、会合体の形成により上記のような効果が得られ、液状油剤とペースト状油剤を組み合わせることにより、べたつきを更に抑えながら保湿効果を高めることができる。
【0040】
液状油剤には、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ポリグリセル-2、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、オクタカプリル酸ポリグリセリル-6が含まれる。
【0041】
他の液状油剤には、乳酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパンオリゴエステル、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸トレハロースエステルズ、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ポリヒドロキシステアリン酸、流動パラフィン、スクワラン、α-オレフィンオリゴマー、イソドデカン、イソヘキサデカンが含まれる。
【0042】
ペースト状油剤には、野菜油、シア脂(Butyrospermum Parkii)、マンゴー種子脂(MangiferaIndica)、アボカド脂(Persea Gratissima)、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、水添パーム油、ワセリン、ヘキサ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリチルが含まれる。
【0043】
保湿効果の持続の観点から、液状油剤及びペースト状油剤のいずれにおいても、非極性油よりも極性油が好ましい。液状油剤のうち好ましい極性油は、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシルが挙げられ、ペースト状油のうち好ましい極性油としては、ペースト状の植物油、特に、野菜油、シア脂、マンゴー種子脂、アボカド脂を含む。
【0044】
液状油剤に対するペースト状油剤の質量比は、好ましくは0より大きく1以下であり、より好ましい範囲は0.1~0.8であり、更に好ましくは0.2~0.5である。ペースト状油剤の質量比がこの範囲である場合、水中油型乳化化粧料に非常に良好な安定性を付与できる。
【0045】
成分(B)の含有量は、好ましくは0.05~2.0質量%、成分(C)の含有量は、好ましくは0.05~5.00質量%であり、成分(D)と成分(E)の含有量の合計は、好ましくは1~40質量%である。成分(A)の含有量は残分を構成する。これらの含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量に基づいている。
【0046】
25℃における水中油型乳化化粧料の粘度は、好ましくは1000mPa・s以上である。この粘度は、より好ましくは1000~10000mPa・sであり、更に好ましくは1000~5000mPa・sである。この範囲の粘度は、水中油型乳化化粧料の安定性を向上させ、使用中に優れた感触を与える。
【0047】
水中油型乳化化粧料は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)を混合及び撹拌することにより、若しくは成分(A)に成分(B)を混合及び中和し、次いで(C)成分、(D)成分及び(E)成分を添加及び撹拌することにより得ることができる。
【実施例0048】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
表1~3に列挙された組成を用いて、水性媒体(A欄)と、油剤(B欄)、ノニオン界面活性剤(C欄)、界面活性助剤及びポリマー成分(D欄)を混合、撹拌して、実施例1~6及び比較例1~12に係る水中油型乳化化粧料を調製した。調製のために、水性媒体にポリマー成分を混合及び中和し、油剤及びノニオン界面活性剤の混合物を添加して撹拌することで、水中油型乳化化粧料を得た。各原料の含有量(質量%)は、表1~3に示すとおりである。
【0050】
<官能評価>
実施例及び比較例の水中油型乳化化粧料において、保湿効果の持続感、みずみずしさ、べたつきのなさを、本発明者らが所属する組織の化粧品専門評価パネルによる肌への単回使用試験において、以下の基準にて評価した。
(1)保湿効果の持続感、みずみずしさ
A:強く認められる
B:認められる
C:あまり認められない
D:認められない
(2)べたつきのなさ
A:べたつきを全く感じない
B:べたつきをほとんど感じない
C:べたつきをやや感じる
D:べたつきを感じる
【0051】
<経時安定性の評価>
実施例及び比較例の水中油型乳化化粧料の乳化安定性を評価した。透明容器に各化粧料を収容し、蓋をして密閉し、50℃で1か月保管した。保管後の油相と水相の分離の有無が観察された。保管後の油相と水相の分離の程度を、程度が小さいものから大きい順にA~Dの4段階で評価した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】

【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水性媒体、
(B)カルボキシ基と、疎水性ブロック及び親水性ブロックを含み、該親水性ブロック側で主鎖と結合している両親媒性側鎖と、を有するアルカリ溶解性ポリマー、
(C)少なくとも1つのC3~C6の直鎖又は環状ポリオール残基、及び6.0~12.0のHLBを有するノニオン界面活性剤、
(D)ブルックフィールド型回転粘度計で測定される、25℃における粘度が10,000mPa・s未満である液状油剤、及び
(E)ブルックフィールド型回転粘度計で測定される、25℃における粘度が10,000mPa・s以上であるか、30℃での稠度(JIS-K-2220準拠)が150より大きいペースト状油剤を含有し
記液状油剤(D)に対する前記ペースト状油剤(E)の質量比が0.1~0.8である、シリコーン系油剤を含有しない水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記アルカリ溶解性ポリマーが更にアルコキシカルボニル基を有し、前記両親媒性側鎖は、前記疎水性ブロックとしてのC12~C24の炭化水素骨格と、前記親水性ブロックとしてのポリオキシエチレン骨格とを有する、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記ノニオン界面活性剤は、グリセリン残基、ソルビトール残基又はスクロース残基、及び6.0~12.0のHLBを有する、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記液状油剤及び前記ペースト状油剤のいずれか又は両方が極性油剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
前記水中油型乳化化粧料の全質量を基準として、前記成分(B)の含有量が0.05~2.0質量%であり、前記(C)成分の含有量が0.05~5.00質量%であり、前記成分(D)と前記成分(E)の含有量の合計が1~40質量%であり、前記成分(A)の含有量が残分を構成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
25℃における前記水中油型乳化化粧料の粘度が1000~10000mPa・sである、請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項7】
前記液状油剤(D)に対する前記ペースト状油剤(E)の質量比が0.2~0.5である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項8】
前記ノニオン界面活性剤は、グリセリン残基を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【外国語明細書】