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特開2023-171782細胞により発現される生物学的活性を調節する結合分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171782
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】細胞により発現される生物学的活性を調節する結合分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20231128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231128BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20231128BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231128BHJP
【FI】
C07K16/46
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023146178
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2020500083の分割
【原出願日】2018-07-06
(31)【優先権主張番号】17180064.2
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】510340757
【氏名又は名称】メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セシリア・アンナ・ヴィルヘルミナ・ゲウイェン
(72)【発明者】
【氏名】リンセ・クローステル
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス・アドリアーン・デ・クライフ
(72)【発明者】
【氏名】パウルス・ヨハンネス・タッケン
(72)【発明者】
【氏名】マルク・スロスビー
(72)【発明者】
【氏名】トン・ルグテンベルグ
(57)【要約】
【課題】
細胞の生物学的活性を阻害するための手段及び方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、細胞の生物学的活性を阻害するための手段及び方法を提供する。一実施形態では、本発明は、互いに結合パートナーである2つの膜タンパク質の結合により媒介される第1又は第2の細胞の生物学的活性を阻害するための方法に関する。上述の生物学的活性は、上述の結合パートナーの各々に結合することができる抗体又は抗体様分子を細胞に提供することにより阻害され、この結合は、2つの結合パートナーの結合を阻止し、それにより上述の生物学的活性を阻害する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体又は前記抗体の結合特異性を維持する前記抗体の変異体であって、
- CD28ファミリーのタンパク質(第1の膜タンパク質)の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び
- B7ファミリーのタンパク質(第2の膜タンパク質)の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含み、前記第1及び第2の膜タンパク質は、結合パートナー(つまり、リガンド及び受容体対)であり、前記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、前記第1の膜タンパク質と前記第2の膜タンパク質との結合を阻止し、及び/又は前記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、前記第1の膜タンパク質と前記第2の膜タンパク質との結合を阻止する、抗体又はその変異体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合分子の分野に関する。詳しくは、本発明は、異常細胞が関与する疾患を治療するための治療用結合分子の分野に関する。より詳しくは、本発明は、2つ又はそれよりも多くの異なる膜結合タンパク質の細胞外部分に結合し、それにより細胞により発現される生物学的活性を調節する結合分子に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、この疾患の治療に数々の進歩がなされており、がんに結び付く分子事象に関する知識が増加しているにも関わらず、依然として世界における主要な死因である。例えば、結腸直腸がん(CRC)は、世界で3番目に最も一般的ながんである。2008年には、123万人がこの疾患を有すると診断された。これは、欧州では2番目に最も一般的ながんであり、2012年には約447,000件の新しい症例が診断された(全体の13%)。結腸直腸がんは、がんによる死亡の4番目に最も一般的な原因であり、年間608,000件(EU、148,000件)の死亡の原因であると推測されている。幾つかの新しい治療がCRCにおいて進められてきたが、多くは臨床試験が成功せず、転移性CRCは、従来の治療では依然として大部分が不治性である。非常に高頻繁に生じるがんの別の例は、黒色腫である。このがんは、十分初期に検出されないと、転移してしまう可能性が高く、その段階では治療が非常に困難である。免疫介入治療が、転移した黒色腫を有する患者の少なくとも一部に有効であることが示されている。非小細胞肺がんは、外科手術ができる初期段階で発見されることが希ながんタイプである。こうしたタイプのがんでも、免疫介入治療による治療が成功している。
【0003】
伝統的に、ほとんどのがん創薬は、必須細胞機能を阻止し、分裂細胞を死滅させる作用剤に着目している。しかしながら、進行がんの場合、化学療法は、いかに積極的に適用してとしても、患者が治療から生命に関わる副作用を被る程度でさえ、完全な治癒をもたらすことはほとんどない。ほとんどの場合、患者の腫瘍は、成長を停止するか又は一時的退縮するが(寛解と呼ばれる)、時にはより迅速に再び増殖を開始し(再発と呼ばれる)、治療がますますより困難になってしまうだけである。より最近では、がん創薬の焦点は、幅広く細胞毒性である化学療法から、より毒性が少ない標的化細胞増殖抑制療法へと移っている。進行がんの治療は、白血病及び一部の他のがんにおいて臨床的に検証されている。しかしながら、癌腫の大多数では、標的化手法は、やはり、大多数の患者においてがんを完全に消滅させるほどには有効でないことが判明しつつある。
【0004】
がんの標的化は、例えば、がんが生存及び/又は成長するために依存するシグナル伝達タンパク質に対する小分子、腫瘍特異的タンパク質を有するワクチン、腫瘍細胞を活発に死滅させる免疫細胞及び細胞毒性分子を腫瘍へと標的化する抗体による細胞療法、シグナル伝達の妨害すること、及び/又は宿主の免疫系を腫瘍細胞へと(再)方向付けすることを含む、様々な異なる方法を使用して達成される。CTLA-4又はPD-1を阻止するモノクローナル抗体は、黒色腫、NSCLC、腎細胞癌を有していた対象、及び尿路上皮癌患者において持続的な臨床応答を誘導することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/157953号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/009618号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2013/157954号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/157771号パンフレット
【特許文献5】国際公開第1998/050431号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願第13/866,747号明細書(現在は米国特許第9,248,181号として特許付与)
【特許文献7】米国特許出願第14/081,848(現在は米国特許第9,358,286号として特許付与)
【特許文献8】PCT/NL2013/050294(国際公開第2013/157954号パンフレットとして公開)
【特許文献9】米国特許第9,248,181号明細書
【特許文献10】米国特許第9,358,286号明細書
【特許文献11】国際公開第2009/126920号パンフレット
【特許文献12】米国通常出願第13/866,747号明細書
【特許文献13】PCT出願PCT/NL2013/05029号パンフレット(国際公開第2013/157954号A1パンフレット)
【特許文献14】CA 02607147
【特許文献15】WO2010077634A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kraanら、British Journal of Cancer(2014年)111巻、149~156頁
【非特許文献2】Xuら、2011年; Immunobiology 216巻(2011年)1311~1317頁
【非特許文献3】Hofmeyerら、2009年、PNAS 105巻;10277~10278頁
【非特許文献4】Brandtら、2009年 J Exp Med. 2009年7月6日;206巻(7号):1495~503頁
【非特許文献5】Janakiramら、Clin Cancer Res;21巻(10号):2359~66頁;2015年5月15日
【非特許文献6】Armourら、1999年、Eur J Immunol.、29巻(8号):2613~24頁
【非特許文献7】Shieldsら、2001年、J Biol Chem.、276巻(9号):6591~604頁
【非特許文献8】Idusogieら、2000年、J Immunol.、164巻(8号):4178~84頁
【非特許文献9】Labrijnら、2009年、Nat Biotechnol.、27巻(8号):767~71頁
【非特許文献10】Morrison、(2007年)、Nat. Biotechnol、25巻:1233~34頁
【非特許文献11】J.C.Almagro1及びJ.Fransson(2008年)Frontiers in Bioscience、13巻、1619~1633頁
【非特許文献12】Marksら(J Mol Biol.、1991年12月5日;222(3):581~97頁)
【非特許文献13】de Haardら(J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、免疫系成分を(再)方向付けするための新規な手段及び方法を提供する。また、本発明は、細胞により発現される生物学的活性を調節するための手段及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、第1の細胞上の第1の膜タンパク質と第2の細胞上の第2の膜タンパク質との結合により媒介される第1又は第2の細胞の生物学的活性を阻害するための方法であって、上記第1及び第2の膜タンパク質は、結合パートナー(つまり、リガンド及び受容体対)であり、上記方法は、
- 上記第1及び第2の細胞を含む系に、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を提供する工程;及び
- 上記第1又は第2の細胞が、上記抗体又はその変異体が存在しない場合に上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合により媒介される上記生物学的活性を発現することを可能にする条件下で、上記系をインキュベートする工程
を含み、
- 上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止し、及び/又は上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止する方法を提供する。
【0009】
一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法であってもよく又はex vivo法であってもよい。
【0010】
上記抗体又はその変異体の結合は、好ましくは、上記第1の細胞における受容体-リガンド対の結合の活性を低減する。上記結合は、好ましくは、上記第1の細胞における受容体-リガンド対の結合の阻害活性を低減する。阻害活性を示すCD28ファミリー及びB7ファミリーの受容体-リガンド対は、いわゆる共阻害性受容体-リガンド対でもある。
【0011】
また、本発明は、第1の細胞上のCD28ファミリーのメンバー(第1の膜タンパク質)と第2の細胞上のB7ファミリーのメンバー(第2の膜タンパク質)との結合により媒介される第1又は第2の細胞の生物学的活性を阻害するための方法であって、上記第1及び第2の膜タンパク質は、結合パートナー(つまり、リガンド及び受容体対)であり、上記方法は、
- 上記第1及び第2の細胞を含む系に、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を提供する工程;及び
- 上記第1又は第2の細胞が、上記抗体又はその変異体が存在しない場合に上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合により媒介される上記生物学的活性を発現することを可能にする条件下で、上記系をインキュベートする工程
を含み、
- 上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止し、及び/又は上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止する方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法又はex vivo法である。
【0013】
上記抗体又はその変異体の結合は、好ましくは、上記第1の細胞における受容体-リガンド対の結合の活性を低減する。上記結合は、好ましくは、上記第1の細胞における受容体-リガンド対の結合の阻害活性を低減する。阻害活性を示す受容体-リガンド対は、いわゆる共阻害性受容体-リガンド対である。
【0014】
また、第1の細胞上の第1の膜タンパク質と第2の細胞上の第2の膜タンパク質との結合により媒介される第1又は第2の細胞の生物学的活性を増強するための方法であって、
- 上記第1及び第2の細胞を含む系に、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を提供する工程;及び
- 上記第1又は第2の細胞が、上記抗体又はその変異体が存在しない場合に上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合により媒介される上記生物学的活性を発現することを可能にする条件下で、上記系をインキュベートする工程
を含み、
- 上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止せず、及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止しない方法が提供される。
【0015】
一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法又はex vivo法である。
【0016】
第1の膜タンパク質は、好ましくは、プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、B-及びT-リンパ球アテニュエーター(BTLA、B- and T-lymphocyte attenuator)、又は膜貫通型免疫グロブリンドメイン含有2(TMIGD2、Transmembrane And Immunoglobulin Domain Containing 2)である。
【0017】
第2の膜タンパク質は、好ましくは、プログラム細胞死1リガンド1タンパク質(PD-L1)、プログラム細胞死1リガンド2タンパク質(PD-L2)、ICOSL、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、TNFRSF14、B7-H6、又はB7-H7である。好ましい実施形態では、第2の膜タンパク質は、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、B7-H4、TNFRSF14、又はB7-H7である。特に好ましい実施形態では、第2の膜タンパク質は、PD-L1又はPD-L2、好ましくはPD-L1である。特に好ましい実施形態では、第1の膜タンパク質はPD-1であり、第2の膜タンパク質はPD-L1である。本発明の分子は、好ましくは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用、及びPD-L1とPD-1及び/又はCD80との相互作用を阻止することが可能な二重特異性抗体である。好ましくは、本発明の分子は、PD-1とPD-L1又はPD-L2との間並びにPD-L1とPD-1及びCD80との間を含む、全PD-1軸(full PD-1 axis)をブロックすることできる。図33を参照されたい。
【0018】
また、本発明は、第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体であって、上記第1及び第2の膜タンパク質は、結合パートナー(つまり、リガンド及び受容体対)であり、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止し、及び/又は上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止する、抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を提供する。
【0019】
また、本発明は、抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体であって、
- CD28ファミリーのタンパク質(第1の膜タンパク質)の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び
- B7ファミリーのタンパク質(第2の膜タンパク質)の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含み、上記第1及び第2の膜タンパク質は結合パートナー(つまり、リガンド及び受容体対)であり、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止し、及び/又は上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止する、抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を提供する。上記抗体又はその変異体の結合は、好ましくは、上記第1の細胞における受容体-リガンド対の結合の活性を低減する。上記結合は、好ましくは、上記第1の細胞における受容体-リガンド対の結合の阻害活性を低減する。阻害活性を示す受容体-リガンド対は、いわゆる共阻害性受容体-リガンド対である。
【0020】
上記抗体又はその変異体は、好ましくは二重特異性抗体である。
【0021】
好ましい実施形態では、抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体は、
- PD-1、CTLA-4、BTLA、又はTMIGD2の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及び
- PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、B7-H4、TNFRSF14、又はB7-H7の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含む。
【0022】
好ましい実施形態では、抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体は、
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及び
- PD-L1又はPD-L2の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含む。
【0023】
好ましくは、PD-1に結合することができる可変ドメインの結合は、PD-1とPD-L1との結合を阻止する。
【0024】
好ましくは、PD-1に結合することができる可変ドメインの結合は、PD-1とPD-L2との結合も阻止する。
【0025】
好ましくは、PD-1に結合することができる可変ドメインの結合は、PD-1とPD-L1及びPD-L2との結合も阻止する。
【0026】
PD-L1に結合することができる可変ドメインの結合は、PD-L1とPD-1との結合を阻止することができる。
【0027】
PD-L1に結合することができる可変ドメインの結合は、PD-L1とCD80との結合を阻止することができる。
【0028】
PD-L1に結合することができる可変ドメインの結合は、PD-L1とPD-1との結合を阻止することができ、PD-L1とCD80との結合を阻止することもできる。
【0029】
更に、本発明の1つ又は複数の抗体又はその変異体を含む組成物又はキットオブパーツ又は医薬組成物が提供される。
【0030】
また、本発明の抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体の少なくとも1つのCDR領域、好ましくは重鎖可変領域をコードする核酸分子が提供される。また、本発明の抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体をコードする核酸分子又は核酸分子のコレクションが提供される。更に、本発明の核酸分子を含むベクターが提供される。
【0031】
また、本発明の抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を単独で又は共にコードする1つ又は複数の核酸分子を含む細胞又は非ヒト動物が提供される。また、本発明の抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を、記載されている細胞を使用して産生するための方法であって、好ましくは、上記抗体又はその変異体が上記細胞の培養から回収されることが伴う方法が提供される。
【0032】
更に、本発明の抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を含む細胞系が提供される。
【0033】
また、がん等の異常細胞が関与する疾患を有するか又はウイルス若しくは寄生虫等による慢性感染症を有する個体を治療するための方法であって、本発明の抗体又は本発明の抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を、それを必要とする個体に投与する工程を含む方法が提供される。抗体又はその変異体は、好ましくはPD-1及びPD-L1に結合することができる。PD-1に結合する可変ドメインは、好ましくは、PD-1とPD-L1との結合を阻止する。PD-L1に結合する可変ドメインは、好ましくは、PD-1とPD-L1との結合を阻止する。抗体又はその変異体は、好ましくは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用、並びにPD-L1とPD-1及び/又はCD80との相互作用を阻止することが可能な二重特異性抗体である。好ましくは、本発明の分子は、PD-1とPD-L1又はPD-L2との間並びにPD-L1とPD-1及びCD80との間を含む、全PD-1軸をブロックすることできる。
【0034】
更に、薬剤として使用するための、本発明の抗体若しくはその変異体又は核酸分子が提供される。
【0035】
本発明は、がん等の異常細胞が関与する疾患を有するか、又はウイルス若しくは寄生虫による感染症等の感染症を有する個体の治療に使用するための、本発明の抗体又は本発明の抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を更に提供する。
【0036】
更に、がん、及び/又はウイルス若しくは寄生虫による感染症等の感染症を治療又は予防するための薬剤を調製するための、本発明による抗体又は変異体の使用が提供される。
【0037】
寄生虫は、細胞内寄生虫であってもよい。
【0038】
更に、個体の異常細胞に対する上記個体の免疫応答を誘導及び/又は刺激するための方法であって、上記個体に、本発明の抗体又は上記抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を提供する工程を含む方法が提供される。異常細胞は、好ましくは、がん細胞、ウイルス感染細胞、寄生虫、又は寄生虫感染細胞である。好ましい実施形態では、細胞は、がん細胞又は新生細胞である。
【0039】
CD28ファミリー受容体は、適応免疫応答のコントロールに役割を果たす。CD28ファミリーのメンバーとしては、PD-1、CTLA-4、BTLA、TMIGD2、ICOS、CD28、及びNKp30が挙げられる。CD28及びICOS等、このファミリーの一部のメンバーは、対応するB7ファミリーメンバー(リガンド)に結合すると共刺激シグナルを誘導し、他のメンバー、特にCTLA4及びPD-1は、B-7ファミリーメンバー(CD80、CD86、PD-L1、又はPD-L2)に結合すると阻害シグナルを誘導する。
【0040】
プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)は、CD28ファミリー受容体に属し、T細胞及びプロB細胞上に発現される細胞表面受容体である。PD-1は、現在、2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2に結合することが知られている。PD-1は、免疫チェックポイントとして機能し、T細胞活性化の阻害による免疫系の下方制御に重要な役割を果たし、それにより、引いては自己免疫を低減し、自己寛容を促進する。PD-1の阻害効果は、リンパ節の抗原特異的T細胞でのアポトーシス(プログラム細胞死)を促進し、同時に制御性T細胞(サプレッサーT細胞)でのアポトーシスを低減する二重機序により達成されると考えられる。また、PD-1は、PDCD1、プログラム細胞死1;、全身性エリテマトーデス感受性2、タンパク質PD-1、HPD-1、PD1、プログラム細胞死1タンパク質、CD279抗原、CD279、HPD-L、HSLE1、SLEB2、及びPD-1等、幾つかの異なる別名でも知られている。PD-1の外部Idは、HGNC:8760、Entrez Gene:5133、Ensembl:ENSG00000188389、OMIM:600244、及びUniProtKB:Q15116である。PD-1の活性を阻止する新しいクラスの薬物であるPD-1阻害剤は、免疫系を活性化して腫瘍を攻撃するため、一部のタイプのがんの治療に使用されており、成功をおさめている。
【0041】
細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)は、免疫チェックポイントとして機能するタンパク質受容体である。CD28ファミリー受容体のメンバーは、動物での免疫応答の下方制御に関与する。このタンパク質は、抗原提示細胞の表面上のCD80又はCD86に結合すると、「オフ」スイッチとして作用する。CTLA4は、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4、インスリン依存性糖尿病12;、セリアック病3、CD152、リガンド及び膜貫通型スプライス細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(Ligand And Transmembrane Spliced Cytotoxic T Lymphocyte Associated Antigen 4)、細胞毒性Tリンパ球関連抗原4、CD152抗原、CELIAC3、IDDM12、ALPS5、GRD4、GSE、及びCD等、幾つかの他の名称で知られている。CTLA4の外部Idは、HGNC:2505、Entrez Gene:1493、Ensembl:ENSG00000163599、OMIM:123890、及びUniProtKB:P16410である。
【0042】
B-及びT-リンパ球アテニュエーター(BTLA)は、CD28ファミリータンパク質の別のメンバーである。これは、T細胞の活性化中に誘導される。BTLAは、Th1細胞上で発現されるが、Th2細胞では発現されない。BTLAは、B7-H4の結合パートナーである。このファミリーの他のメンバーとは異なり、BTLAは、非B7ファミリーメンバーと相互作用することができる。BTLAは、腫瘍壊死ファミリー受容体(TNF-R)との相互作用によりT細胞阻害を示す。BTLAは、腫瘍壊死因子(受容体)スーパーファミリー、メンバー14(TNFRSF14)のリガンドであり、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)としても知られている。BTLA-HVEM複合体は、T細胞免疫応答を負に制御する。BTLAの他の名称は、B及びTリンパ球関連タンパク質、CD272抗原、BTLA1、及びCD272である。BTLAの外部Idは、HGNC:21087、Entrez Gene:151888、Ensembl:ENSG00000186265、OMIM:607925、及びUniProtKB:Q7Z6A9である。
【0043】
膜貫通型免疫グロブリンドメイン含有2(TMIGD2)は、CD28ファミリータンパク質のメンバーである。このタンパク質は、上皮及び内皮由来の細胞にて検出することができ、内皮細胞株により過剰発現されると、血管新生をin vitroで増強することができる。TGMID2は、未感作T細胞上で発現される刺激性受容体であることが報告されている。この受容体のリガンドは、HHLA2(B7-H7)である。後者は、幅広く様々ながん細胞上に発現される。TMIGD2は、膜貫通型免疫グロブリンドメイン含有2、免疫グロブリン含有プロリンリッチ受容体-1(Immunoglobulin-Containing And Proline-Rich Receptor-1)、CD28ホモログ2、CD28ホモログ、IGPR-1、CD28H、及びIGPR1等、幾つかの他の名称で知られている。TMIGD2の外部Idは、HGNC:28324、Entrez Gene:126259、Ensembl:ENSG00000167664、OMIM:614715、及びUniProtKB:Q96BF3である。
【0044】
ICOS(誘導性T細胞共刺激因子)又はCD278は、活性化T細胞上で発現されるCD28ファミリー共刺激性分子である。これは、特にTh2細胞にとって重要であると考えられる。このタンパク質は、ホモ二量体を形成し、細胞間シグナル伝達、免疫応答、及び細胞増殖の制御に重要な役割を果たす。野生型未感作T細胞と比較して、プレート結合抗CD3で活性化されたICOSノックアウトT細胞は、増殖及びIL-2分泌を低減させた。イピリムマブ(CTLA-4に結合するモノクローナル抗体)で治療された患者は、腫瘍組織及び血液中でICOS+T細胞を増加させた。この増加は、抗CTLA-4治療の薬力学バイオマーカーとしての役目を果たした。ICOSは、活性化誘導性リンパ球免疫調節性分子(Activation-Inducible Lymphocyte Immunomediatory Molecule)、AILIM、誘導性共刺激因子、CD278抗原、CD278、及びCVID1等、幾つかの異なる名称で知られている。ICOSの外部Idは、HGNC:5351、Entrez Gene:29851、Ensembl:ENSG00000163600、OMIM:604558、及びUniProtKB:Q9Y6W8である。
【0045】
CD28(分化抗原群28)は、T細胞活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを提供するT細胞上で発現されるタンパク質の1つである。T細胞受容体(TCR)に加えてCD28によるT細胞刺激は、種々のインターロイキン(特に、IL-6)を産生するための強力なシグナルを提供することができる。CD28は、CD80(B7.1)及びCD86(B7.2)タンパク質の受容体である。トール様受容体リガンドにより活性化されると、抗原提示細胞(APC)でのCD80発現が上方制御される。抗原提示細胞上でのCD86発現は、構成的である(発現は環境要因に依存しない)。CD28は、未感作T細胞上で構成的に発現されるB7受容体である。未感作T細胞のTCRが、CD28:B7相互作用なしにMHC:抗原複合体と会合することにより、アネルギー性のT細胞がもたらされると考えられる。CD28は、CD28分子、CD28抗原、Tp44、T細胞特異的表面糖タンパク質、及びCD28抗原(Tp44)等、幾つかの異なる名称で知られている。CD28の外部Idは、HGNC:1653、Entrez Gene:940、Ensembl:ENSG00000178562、OMIM:186760、及びUniProtKB:P10747である。
【0046】
NKp30は、CD28ファミリーのメンバーである。これは、NKp30、NKp44、及びNKp46を含む天然細胞毒性受容体(NCR)のメンバーである。ナチュラルキラー(NK)細胞は、腫瘍及びウイルス感染細胞を抗体非依存的な様式で認識及び破壊する。NK細胞の制御は、NK細胞表面上の受容体の活性化及び阻害により媒介される。受容体を活性化する1つのファミリーは、NCRファミリーである。NCRは、がん細胞上のヘパラン硫酸を認識することにより、腫瘍標的指向性を惹起する。NKp30は、高度に荷電されたHS/ヘパリン構造と相互作用する。NKp30のリガンドの1つはB7-H6である。B7-H6は共刺激分子である。B7-H6は、通常、正常細胞上では発現されないが、腫瘍細胞上では高度に発現される場合がある。また、これは、誘導により抗原提示細胞(APC)上に発現させることができる。NK細胞は、NKp30とB7-H6との相互作用の結果として活性化され、TNFα及びIFNγを放出することができる。NKp30は、天然細胞毒性誘発受容体3(NCR3)、ナチュラルキラー細胞P30関連タンパク質、活性化ナチュラルキラー受容体P30、リンパ球抗原117、NK-P30、LY117、1C7、活性化NK-A1受容体、CD337抗原、CD337、又はMALS等、幾つかの異なる名称で知られている。NKp30の外部Idは、HGNC:19077、Entrez Gene:259197、Ensembl:ENSG00000204475、OMIM:611550、及びUniProtKB:O14931である。
【0047】
B7ファミリーは、免疫応答を制御するリンパ球上の受容体に結合する幾つかの構造的に関連する細胞表面タンパク質を含む。リンパ球の活性化は、細胞表面の抗原特異的T細胞受容体又はB細胞受容体のエンゲージメントにより惹起される。B7リガンドにより同時に送達される追加シグナルは、こうした細胞の免疫応答を更に決定する。こうしたいわゆる「共刺激性」又は「共阻害性」シグナルは、リンパ球上のCD28ファミリー受容体を介してB7ファミリーメンバーにより送達される。B7ファミリーメンバーと共刺激性受容体との結合は、免疫応答を増大させ、共阻害性受容体との結合は、免疫応答を減弱させる。現在、このファミリーには7つのメンバー:B7.1(CD80)、B7.2(CD86)、誘導性共刺激因子リガンド(ICOS-L)、プログラム死-1リガンド(PD-L1)、プログラム死-2リガンド(PD-L2)、B7-H3、及びB7-H4があることが知られている。B7ファミリーメンバーは、リンパ組織及び非リンパ組織で発現される。免疫応答の制御に対するメンバーの効果は、B7ファミリー遺伝子に突然変異を有するマウスでの免疫不全及び自己免疫疾患の発症にて示される。B7リガンドにより送達されるシグナルの操作は、自己免疫、炎症性疾患、及びがんの治療に有望であることが示されている。
【0048】
CD80は、T細胞活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを提供する、活性化B細胞及び単球上に見出されるタンパク質である。CD80は、T細胞表面上の2つの異なるタンパク質:CD28及びCTLA-4のリガンドである。CD80は、CD28に結合すると共刺激に関連するが、CTLA4に結合すると免疫応答の減弱に関連する。CD80は、CD86と協力して働いて、T細胞を活性化する。CD80は、PD-L1にも結合することが報告されている。CD80は、CD80分子、CD80抗原、CD28抗原リガンド1、B7-1抗原、Bリンパ球活性化抗原B7、CTLA-4対抗受容体B7.1、活性化B7-1抗原、CD28LG1、CD28LG、LAB7、BB1、B7、共刺激因子CD80、CD80抗原、及びB7-1等、幾つかの他の名称で知られている。CD80の外部Idは、HGNC:1700、Entrez Gene:941、Ensembl:ENSG00000121594、OMIM:112203、及びUniProtKB:P33681である。
【0049】
CD86は、抗原提示細胞上に発現されるタンパク質である。CD86は、T細胞活性化及び生存のための共刺激シグナルを提供することができる。CD86は、T細胞表面上の2つの異なるタンパク質のリガンドであり、T細胞表面上の2つの異なるタンパク質:CD28及びCTLA-4のリガンドである。CD86は、CD28に結合すると共刺激に関連するが、CTLA4に結合すると免疫応答の減弱に関連する。CD86は、CD80と協力して働いて、T細胞を活性化する。CD86は、CD86分子、CD86抗原、CD28抗原リガンド2、B7-2抗原、CTLA-4対抗受容体B7.2、CD28LG2、FUN-1、BU63、B70、B-リンパ球活性化抗原B7-2、B-リンパ球抗原B7-2、活性化B7-2抗原、CD86抗原、LAB72、及びB7-2等、幾つかの異なる名称で知られている。CD86の外部Idは、HGNC:1705、Entrez Gene:942、Ensembl:ENSG00000114013、OMIM:601020、及びUniProtKB:P42081である。
【0050】
PD-L1は、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、及び肝炎等の他の疾患状態等の特定の事象中の免疫応答抑制に役割を果たす1型の膜貫通型タンパク質である。PD-L1は、NSCLC、黒色腫、腎細胞癌、胃がん、肝細胞性がん、並びに種々の白血病及び多発性骨髄腫を含む種々のタイプのがんで発現される。PD-L1は、がん細胞の細胞質及び原形質膜に存在するが、全てのがん又は腫瘍内の全ての細胞がPD-L1を発現するとは限らない。複数の腫瘍微小環境細胞が、PD-L1発現の上方制御による免疫抑制に寄与する。この効果は、腫瘍が、活性化T細胞により産生されるIFN-γに応答してPD-L1を誘導することによりそれ自体を防御するため、「適応性免疫耐性」と呼ばれる。また、PD-L1は、オンコジーンにより制御される場合があり、この機序は、先天性免疫耐性として知られている。腫瘍微小環境内では、PD-L1は、骨髄性細胞及び活性化T細胞上でも発現される。PD-L1の発現は、I及びII型IFN-γ、TNF-α、LPS、GM-CSF、及びVEGF、並びにサイトカインIL-10及びIL-4を含む、複数の炎症促進性分子により誘導される。PD-L1とPD-1又はB7.1(CD80)との結合は、PD-1発現T細胞の増殖を低減させる阻害シグナルを伝達する。PD-1は、アポトーシスにより、外来性抗原特異的T細胞の蓄積をコントロールすることができると考えられる。PD-L1は、様々ながん細胞により発現され、その発現は、少なくとも部分的には、がん細胞に対する免疫応答の減衰の原因であると考えられる。PD-L1は、B7ファミリータンパク質のメンバーであり、CD274分子、CD274抗原、B7ホモログ1、PDCD1リガンド1、PDCD1LG1、PDCD1L1、B7H1、PDL1、プログラム細胞死1リガンド1、プログラム死リガンド1、B7-H1、及びB7-H等、様々な他の名称で知られている。CD274の外部Idは、HGNC:17635、Entrez Gene:29126、Ensembl:ENSG00000120217、OMIM:605402、及びUniProtKB:Q9NZQ7である。
【0051】
PD-L2は、PD-1の第2のリガンドである。PD-L2によるPD-1のエンゲージメントは、T細胞受容体(TCR)媒介性増殖及びT細胞によるサイトカイン産生を阻害する。低抗原濃度では、PD-L2/PD-1結合は、B7-CD28シグナルを阻害する。高抗原濃度では、PD-L2/PD-1結合は、サイトカイン産生を低減する。抗原提示細胞上のPD-L1発現は、インターフェロンガンマ処置により上方制御される。PD-L2は、一部の正常組織及び様々な腫瘍で発現される。PD-L1及びPD-L2は、機能が重複しており、T細胞応答を制御すると考えられる。タンパク質PD-L2は、プログラム細胞死1リガンド2、B7樹状細胞分子、プログラム死リガンド2、ブチロフィリンB7-DC、PDCD1リガンド2、PD-1リガンド2、PDCD1L2、B7-DC、CD273、B7DC、PDL2、PD-1-リガンド2、CD273抗原、BA574F11.2、及びBtdc等、幾つかの他の名称で知られている。PD-L2の外部Idは、HGNC:18731、Entrez Gene:80380、Ensembl:ENSG00000197646、OMIM:605723、及びUniProtKB:Q9BQ51である。
【0052】
誘導性T細胞共刺激因子リガンド(ICOSL又はCD275)は、APC並びに幾つかの非血液組織により構成的に発現される。発現は、進行中の炎症により下方制御される場合がある。ICOSLは、現在、ヒトにおいてICOS、CD28、及びCTLA-4と相互作用することが知られている。ICOSL/CD28相互作用は、同種抗原に対するヒトT細胞の一次応答及び記憶リコール応答(memory recall response)を共刺激すると考えられる。ICOSL/CTLA-4は、共阻害シグナルをもたらすと考えられる。ICOSLは、ICOSLG、B7関連タンパク質1、B7ホモログ2、B7様タンパク質Gl50、B7ホモログ2、B7RP-1、B7-H2、B7RP1、B7H2、膜貫通型タンパク質B7-H2 ICOSリガンド、CD275抗原、KIAA0653、ICOS-L、LICOS、及びGL50としても知られている。ICOSLの外部Idは、HGNC:17087、Entrez Gene:23308、Ensembl:ENSG00000160223、OMIM:605717、及びUniProtKB:O75144である。
【0053】
CD276(又はB7-H3)発現は、種々の悪性病変にて増加し、正常循環内皮細胞と腫瘍由来循環内皮細胞との区別をもたらす(Kraanら、British Journal of Cancer(2014年)111巻、149~156頁)。受容体の刺激は、ヒト骨髄間質細胞の骨芽細胞への分化を方向付ける(Xuら、2011年;Immunobiology 216巻(2011年)1311~1317頁)。このタンパク質は、ヒトでは4つのIg様ドメインを含むが、マウスタンパク質は、そのようなドメインを2つ有すると考えられる。このタンパク質は、骨髄細胞で発現される誘発性受容体(TREM、triggering receptor expressed on myeloid cells)様トランスクリプト2(TLT-2又はTREMML2)の最初に特定されたリガンドであると考えられる。後者のタンパク質は、B7-H3(4Ig-B7-H3)に結合し、CD8 T細胞の活性化を共刺激する(Hofmeyerら、2009年、PNAS 105巻;10277~10278頁)。CD276は、広く発現される。これは、T細胞共刺激因子として作用する。CD276は、CD276分子、共刺激分子、CD276抗原、B7ホモログ3、4Ig-B7-H3、B7-H3、B7H3、及びB7RP-2等、幾つかの他の名称でも知られている。CD276の外部Idは、HGNC:19137、Entrez Gene:80381、Ensembl:ENSG00000103855、OMIM:605715、及びUniProtKB:Q5ZPR3である。
【0054】
B7-H4(VTCN1)mRNAは、広く発現されると考えられるが、膜上にこのタンパク質を活発に発現するのは少数の細胞に過ぎない。このタンパク質の膜上での発現及び活性化T細胞との結合は、細胞周期停止によるT細胞エフェクター機能の阻害、増殖減少、及びIL-2産生低減をもたらす。B7-H4は、様々なヒトがんでは、がん細胞及び免疫抑制性腫瘍関連マクロファージ(TAM)の表面上で上方制御される。B7-H4は、BTLAの結合パートナーである。B7-H4経路によるシグナル伝達は、TCR媒介性CD4+及びCD8+T細胞増殖、細胞周期進行、及びIL-2産生の阻害に結び付く。B7-H4は、V-Setドメイン含有T細胞活性化阻害剤1、免疫共刺激タンパク質B7-H4、T細胞共刺激分子B7x、B7スーパーファミリーメンバー1;、B7ホモログ4、B7h.5、B7H4、T細胞共刺激分子B7x、B7ファミリーメンバーH4、タンパク質B7S1、PRO1291、VCTN1、B7S1、B7X、及びH4 2等、幾つかの他の名称でも知られている。B7-H4の外部Idは、HGNC:28873、Entrez Gene:79679、Ensembl:ENSG00000134258、OMIM:608162、及びUniProtKB:Q7Z7D3である。
【0055】
B7-H6は、B7ファミリーに属し(MIM605402を参照)、腫瘍細胞上に選択的に発現される。B7-H6とNKp30(NCR3;MIM611550)との結合は、ナチュラルキラー(NK)細胞活性化及び細胞毒性をもたらす(Brandtら、2009年 J Exp Med. 2009年7月6日;206巻(7号):1495~503頁)。ナチュラルキラー(NK)細胞は、腫瘍の排除に参加する自然免疫系のリンパ球である。B7-H6は、抗腫瘍NK細胞細胞毒性及びサイトカイン分泌を誘発するヒト受容体であるNKp30に結合する腫瘍細胞表面分子である。B7-H6の他の名称は、NCR3LG1、ナチュラルキラー細胞細胞毒性受容体3リガンド1、B7ホモログ6、B7H6、推定Ig様ドメイン含有タンパク質DKFZp686O24166/DKFZp686I21167、及びDKFZp686O24166である。B7-H6の外部Idは、HGNC:42400、Entrez Gene:374383、Ensembl:ENSG00000188211、OMIM:613714、及びUniProtKB:Q68D85である。
【0056】
B7-H7(HHLA2)タンパク質は、胎盤の栄養膜細胞、並びに腸、腎臓、胆嚢、及び胸部の上皮に検出されたが、ほとんどの他の臓器では検出されなかった。HHLA2タンパク質は、胸部、肺、甲状腺、黒色腫、膵臓、卵巣、肝臓、膀胱、結腸、前立腺、腎臓、及び食道のヒトがんで広く発現される。高HHLA2発現は、局所リンパ節転移及び病期に関連する(Janakiramら、Clin Cancer Res;21巻(10号):2359~66頁;2015年5月15日)。TMIGD2は、HHLA2の受容体の1つであることが特定されている。B7-H7は、HERV-H LTR関連2、ヒト内在性レトロウイルス-Hロングターミナルリピート関連タンパク質2(Human Endogenous Retrovirus-H Long Terminal Repeat-Associating Protein 2)、B7H7、及びB7y等、幾つかの異なる名称で知られている。B7-H7の外部Idは、HGNC:4905、Entrez Gene:11148、Ensembl:ENSG00000114455、OMIM:604371、及びUniProtKB:Q9UM44である。
【0057】
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14(TNFRSF14)は、TNF受容体スーパーファミリーのヒト細胞表面受容体である。このタンパク質は、元々は、ヘルペスウイルス侵入メディエーターA(HveA)として知られていた。TNFRSF14は、分化抗原群分類ではCD270としても知られている。TNFRSF14は、単純ヘルペスウイルス(HSV)侵入の細胞メディエーターであることが特定された。HSVウイルスエンベロープ糖タンパク質D(gD)とこの受容体タンパク質との結合は、ウイルス侵入機構の一部であることが示されている。この受容体の細胞質領域は、免疫応答を活性化するシグナル伝達経路を媒介することができる幾つかのTRAFファミリーメンバーに結合することが見出された。TNFRSF14は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14(ヘルペスウイルス侵入メディエーター)、ヘルペスウイルス侵入メディエーターA、HVEA、HVEM、TR2、腫瘍壊死因子受容体様遺伝子2、腫瘍壊死因子受容体様2、ヘルペスウイルス侵入メディエーターA、ヘルペスウイルス侵入メディエーター、CD40様タンパク質、CD270抗原、LIGHTR、CD270、及びATAR等、幾つかの異なる名称で知られている。TNFRSF14の外部Idは、HGNC:11912、Entrez Gene:8764、Ensembl:ENSG00000157873、OMIM:602746、及びUniProtKB:Q92956である。
【0058】
配列識別子への言及は、どのタンパク質が標的とされるかを特定するためになされている。本発明の抗体又はその変異体等のその変異体は、典型的には、対応する可変ドメインにより認識されるエピトープが影響を受けない限り、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、及びそれらの突然変異変異体等、その少なくとも一部の変異体も認識する。代替的名称の一部は、他のタンパク質を参照するためにも使用されている場合があり、又は使用されていない場合もある。名称は、参照の目的で与えられているに過ぎない。本発明の抗体又はその変異体等のその変異体は、細胞上に発現されるタンパク質に結合する。また、それは、抗体が結合するエピトープが利用可能である限り、タンパク質の変異体に結合することができる。したがって、スプライス変異体又は突然変異タンパク質(該当する場合)も、エピトープが利用可能な限り、抗体又はその変異体に結合するだろう。抗体又はその変異体が表記のタンパク質に結合するという事実は、それが特性としてタンパク質に結合することができることを意味するが、抗体又はその変異体が実際に標的に結合していることを必ずしも示唆しない。また、それは、可変ドメインが他のタンパク質に結合することができないことを必ずしも意味しない。
【0059】
本発明は、第1の細胞上の第1の膜タンパク質と第2の細胞上の第2の膜タンパク質との結合により媒介される第1又は第2の細胞の生物学的活性を阻害するための方法であって、
- 上記第1及び第2の細胞を含む系に、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体を提供する工程;及び
- 上記抗体又はその変異体が存在しない場合に上記生物学的活性の発現を可能にする条件下で、上記系をインキュベートする工程
を含み、
- 上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止し、及び/又は上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止する方法を提供する。一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法である。上記方法で使用される抗体は、2つの結合パートナーに結合し、2つが互いに結合することを阻止する。上記方法では、結合パートナーを発現する2つの細胞は、互いに、近くに接近し及び/又は近くに接近したままになるが、同時に結合パートナーの結合が阻害される。これは、可変ドメインを含む2つのモノクローナル単一特異性抗体の組合せとは異なる。また、それらは、2つの結合パートナーの結合を阻止するが、細胞は近くに接近せず及び/又は近くに接近したままにはならない。本発明の抗体、特に本発明の二重特異性抗体の特殊な活性は、3つ又はそれよりも多くの異なる細胞タイプを含む複雑な環境において特に顕著である。
【0060】
また、本発明は、第1の細胞上の第1の膜タンパク質と第2の細胞上の第2の膜タンパク質との結合により媒介される第1又は第2の細胞の生物学的活性を増強するための方法であって、
- 上記第1及び第2の細胞を含む系に、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体を提供する工程;及び
- 上記抗体又はその変異体が存在しない場合に上記生物学的活性の発現を可能にする条件下で、上記系をインキュベートする工程
を含み、
- 上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止せず、及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止しない方法を提供する。
【0061】
一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法又はex vivo法である。
【0062】
本発明は、第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体であって、上記第1及び第2の膜タンパク質は、結合パートナー(つまり、結合対又はリガンド及び受容体対のメンバー)であり、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止し、及び/又は上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止する、抗体又はその変異体を更に提供する。そのような抗体は、本明細書に記載のような、上記第1の膜タンパク質及び上記第2の膜タンパク質の結合により媒介される生物学的活性を阻害するための方法に有用である。
【0063】
本発明は、第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体であって、上記第1及び第2の膜タンパク質は、結合パートナー(つまり、結合対又はリガンド及び受容体対のメンバー)であり、上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止せず、及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインの結合は、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を阻止しない、抗体又はその変異体を更に提供する。そのような抗体は、上記第1の膜タンパク質及び上記第2の膜タンパク質の結合により媒介される生物学的活性を増強するための方法に有用である。
【0064】
第1の膜タンパク質及び第2の膜タンパク質は、少なくとも細胞外部分を有する細胞膜タンパク質である。この2つの結合は、第1の細胞、第2の細胞、又はその両方で生物学的活性の発現をもたらすことができる。本発明の方法では、第1及び第2の細胞は、好ましくは異なる細胞である。異なる細胞は、同じタイプの細胞であってもよいが、典型的には異なる。生物学的活性は、第1及び/又は第2の細胞にて又は細胞を取り囲む培地にて測定可能な、第1及び第2の膜タンパク質の結合に応答して細胞により発現される活性である。生物学的活性が両細胞により発現される場合、活性は、同じであってもよいが、典型的には異なる。第1及び第2のタンパク質のそのような結合は、受容体-リガンド結合と呼ばれることが多い。本発明では、受容体及びリガンドは両方とも、それぞれの細胞の細胞膜の細胞外部側に付随しており、少なくとも部分的に接近可能である。用語「受容体」は、典型的には、リガンドと結合すると細胞の生物学的活性を誘発するタンパク質に使用される。用語「リガンド」は、典型的には、受容体に結合するタンパク質に使用される。また、本発明におけるリガンドは、膜タンパク質であり、リガンドと受容体との結合は、リガンドを含む細胞の生物学的活性を誘発することができる。そのようないわゆる双方向効果の非限定的な例は、HVEM/BTLA結合対の相互作用である。HVEMとBTLAとの結合は、HVEM発現細胞の生物学的活性及びBTLA発現細胞の生物学的活性を誘導する。したがって、本発明では、用語「リガンド」の使用は、受容体とリガンドとの結合が、細胞膜上にリガンドを含む細胞の生物学的活性を誘発することができないことを必ずしも意味しない。タンパク質は、それが存在する細胞の細胞膜に存在する膜貫通領域を有する場合、細胞上の膜タンパク質であると言われる。タンパク質は、更なる膜貫通領域を有していてもよい。そのような場合、細胞膜に存在する膜貫通領域は全て、同じ細胞の細胞膜に存在する。
【0065】
受容体及びリガンドは、典型的には、非共有結合により互いに相互作用する(結合する)特異的結合パートナーである。結合は、受容体及びリガンドが、典型的には、生理学的条件下にて互いにのみ結合し、他のタンパク質には結合しないだろうという点で特異的である。一部の受容体及びリガンドは、限られた数の他の結合パートナーに特異的に結合することができる。非限定的な例は、結合パートナーPD-L1及びPD-L2と相互作用することができる受容体PD-1である。
【0066】
誘発される生物学的活性のタイプは、結合パートナーに依存する。結合は、成長を誘導することができ、細胞の活性化状態を変化させることができ、1つ又は複数のサイトカインの分泌を誘発又は阻害することができ、細胞の細胞溶解機能に影響を及ぼすこと等ができる。生物学的活性は、典型的に、受容する(受容体発現)細胞による結合に対する応答を測定することにより測定される。PD-1/PD-L1結合は、例えば、典型的には、PD-1発現細胞の生物学的活性を検出することより測定される。そのリガンドPD-L1又はPD-L2によるPD-1の相互作用は、T細胞増殖の阻害、サイトカイン産生の阻害、及び細胞溶解機能の阻害等の生物学的活性を誘導する。
【0067】
生物学的活性は、抗体又はその変異体の存在下で測定された生物学的活性が、抗体又はその変異体が存在しないこと以外は同一の条件下で測定された生物学的活性よりも低い場合、阻害されている。生物学的活性は、少なくとも10、20、30、40、50、又は好ましくは少なくとも60%阻害されてもよい。生物学的活性は、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%阻害される。生物学的活性は、抗体又はその変異体の存在下で測定された生物学的活性が、抗体又はその変異体が存在しないこと以外は同一の条件下で測定された生物学的活性よりも、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%低い場合、それぞれ少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%阻害されている。生物学的活性は、典型的には、本発明の抗体の可変ドメインの1つが、その標的と標的の結合パートナーとの結合を阻止することができる場合、阻害される。生物学的活性は、典型的には、抗体が、標的の上述の結合パートナーに結合し、結合パートナーと標的との結合を阻止する可変ドメインを更に含む場合、更に阻害される。
【0068】
生物学的活性は、抗体又はその変異体の存在下で測定された生物学的活性が、抗体又はその変異体が存在しないこと以外は同一の条件下で測定された生物学的活性よりも高い場合、誘発及び/又は増強されている。生物学的活性は、少なくとも10、20、30、40、50、又は好ましくは少なくとも60%増強されてもよい。生物学的活性は、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%増強される。生物学的活性は、抗体又はその変異体の存在下で測定された生物学的活性が、抗体又はその変異体が存在しないこと以外は同一の条件下で測定された生物学的活性よりも、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%高い場合、それぞれ少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%増強されている。生物学的活性は、典型的には、本発明の抗体の可変ドメインが両方とも、それらの標的と互いとの結合を阻止しない場合、増強される。
【0069】
好適な系は、第1の細胞及び第2の細胞が提供される細胞培養である。別の好適な系は、第1の細胞及び第2の細胞を含む動物である。他の好適な系は、細胞が活性形態で維持されるが、細胞の成長が必ずしも促進されないex vivo系である。第1及び第2の細胞は、例えば、成長を必ずしも促進しないが、生物学的活性の測定を可能にするアッセイ条件下で共にインキュベートすることができる。
【0070】
細胞が、上記第1の膜タンパク質及び上記第2の膜タンパク質の結合により媒介される上記生物学的活性を発現することを可能にする条件下で上記系をインキュベートすることは、第1及び第2の細胞が結合パートナーの結果として生物学的活性を示すことができる条件下で系を維持することを意味する。in vivoインキュベーションは、生物学的活性が明白になることを可能にするのに十分な時間よりも長期間経過させることを含む必要はない。
【0071】
上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を「阻止」する可変ドメインは、上記第1の膜タンパク質と上記第2の膜タンパク質との結合を妨害する。そのような可変ドメインは、上記第1の膜又は第2の膜タンパク質に結合することができる。例えば、第1の膜タンパク質に結合する阻止性可変ドメインは、上記第1の膜タンパク質のエピトープに結合することができ、エピトープに対する結合を上記第2の膜タンパク質と競合する場合がある。また、そのような阻止性可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質は、上記第1の膜タンパク質の異なるエピトープに結合してもよい。そのような場合、阻止活性は、例えば、上記第2の膜タンパク質の結合消失によるものであってもよく、上記第1の膜タンパク質と既に結合している場合は、第2の膜タンパク質の置換によるものであってもよく、又は立体障害により上記第1の膜タンパク質との結合を防止してもよい。全てのこうした機序及び他の機序は、少なくとも部分的には、上記第2の膜タンパク質が上記第1の膜タンパク質に結合し得ることを防止することができる。上記第1の膜タンパク質又は上記第2の膜タンパク質に結合する可変ドメインは、結合パートナーの結合を阻止することができる。
【0072】
本明細書に記載のような、膜タンパク質の特異的結合対の結合を阻止する可変ドメインは、典型的には、可変ドメインの非存在下での結合と比較して、対の結合を低減する。これは、典型的には、可変ドメインを含む抗体を用いて測定される。これは、好ましくはin vitroアッセイで測定される。典型的には、これは、可変ドメインを、それが結合し得る膜タンパク質と共にインキュベートし、続いて混合物を対の他方のメンバーと共にインキュベートすることにより行われる。その後、対の結合を、上記可変ドメインの非存在下での対の結合と比較する。可変ドメインは、第1の膜タンパク質と第2の膜タンパク質との結合を完全に防止することができる。また、可変ドメインは、対の結合を部分的に防止することができる。膜タンパク質の特異的結合対の結合を阻止する可変ドメインは、可変ドメインの非存在下での結合と比較して、好ましくは、対の結合を、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、及びより好ましくは少なくとも90%低減する。可変ドメインによる結合の阻止は、本明細書では、上記可変ドメインと同じものを2つ含む二価モノクローナル抗体を使用して得られる阻止であると定義される。可変ドメインは、無論、上記可変ドメイン及び第2の標的に結合する可変ドメインを含む抗体に存在する場合も結合を阻止し、第2の標的は、第1の可変ドメインが結合する標的と同じであってもよく異なっていてよい。PD-1の細胞外ドメインに結合することができ、PD1とPD-L1との結合を少なくとも部分的に阻止することができる具体的な可変ドメインは、MF6076、MF6236、MF6256、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、MF6982、MF6929、MF7699、MF7698、MF7687、MF7686、MF7685、又はMF7684のVHのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)を含む可変ドメインである。
【0073】
PD-L1の細胞外ドメインに結合することができ、PD1とPD-L1との結合を阻止することができる具体的な可変ドメインは、MF5359、MF5377、MF5382、MF5424、MF5426、MF5439、MF5442、MF5553、MF5557、MF5561、MF5576、MF5594、MF5708、MF5442、MF7691、MF7690、MF7689、MF7688、MF7700、MF7701、MF7703、MF7694、MF7693、MF7692、MF7697、MF7696、又はMF7695のVHのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)を含む可変ドメインである。
【0074】
本明細書に記載のような、膜タンパク質の特異的結合対の結合を阻止しない可変ドメインは、典型的には、可変ドメインの非存在下での結合と比較して、対の結合を低減しない。これは、典型的には、可変ドメインを含む抗体を用いて測定される。これは、好ましくはin vitroアッセイで測定される。典型的には、これは、可変ドメインを、それが結合し得る膜タンパク質と共にインキュベートし、続いて混合物を対の他方のメンバーと共にインキュベートすることにより行われる。その後、対の結合を、可変ドメインの非存在下での対の結合と比較する。
【0075】
PD-L1の細胞外ドメインに結合することができ、PD1とPD-L1との結合を阻止しない具体的な可変ドメインは、MF5361のVHのアミノ酸配列(図3)を含む可変ドメインである。
【0076】
抗原に対する結合、受容体リガンド相互作用の阻止能力、可変ドメインの生物学的活性等の、可変ドメインの必ずしも量的ではない質的な機能的側面は、種々の方法で決定することができる。好適なフォーマットは、FAB断片又は抗体である。好適な抗体フォーマットは、可変ドメインを2つ含む単一特異性二価抗体である。別の好適なフォーマットは、例えば、試験しようとする可変ドメイン及び別の可変ドメインを含む二重特異性抗体である。他方の可変ドメインは、好ましくは、実施しようとするアッセイに関して中立的特異性を有する可変ドメインである。好適な中立的可変ドメインは、破傷風トキソイドに結合することができる可変ドメインである。
【0077】
本発明の抗体又はその変異体は、好ましくは、その標的膜タンパク質とその結合パートナーとの結合を阻止する可変ドメインを含む。この好ましい実施形態では、抗体又はその変異体の更なる可変ドメインは、標的膜タンパク質の結合パートナーに結合する。この結合パートナーに結合する可変ドメインは、結合パートナーと標的膜タンパク質との結合を阻止することができるか、又は結合パートナーと標的膜タンパク質との結合を阻止しない。好ましい実施形態では、この結合パートナーに結合する可変ドメインは、結合パートナーと標的膜タンパク質との結合を阻止することができる。
【0078】
別の実施形態では、本発明の抗体又はその変異体は、その標的膜タンパク質とその結合パートナーとの結合を阻止しない可変ドメインを含む。この好ましい実施形態では、抗体又はその変異体の更なる可変ドメインは、標的膜タンパク質の結合パートナーに結合する。この結合パートナーに結合する可変ドメインは、結合パートナーと標的膜タンパク質との結合を阻止することができるか、又は結合パートナーと標的膜タンパク質との結合を阻止しない。好ましい実施形態では、この結合パートナーに結合する可変ドメインは、結合パートナーと標的膜タンパク質との結合を阻止しない。
【0079】
本発明は、免疫細胞の免疫応答を誘導又は刺激するための方法であって、
- 細胞膜上に第1の膜タンパク質、好ましくはCD28ファミリーのメンバーを有する免疫細胞(第1の細胞)、
- 細胞膜上に第2の膜タンパク質、好ましくはB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14を有する第2の細胞
を準備する工程;
- 上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体を準備する工程
を含み、上記第1の細胞及び上記第2の細胞を上記抗体と共にインキュベートし、それにより上記第1の細胞の免疫応答を誘導又は刺激する工程を更に含む方法を更に提供する。
【0080】
本発明は、免疫細胞の免疫応答を誘導又は刺激するための方法であって、
- 細胞膜上に第1の膜タンパク質、好ましくはCD28ファミリーのメンバーを有する免疫細胞(第1の細胞)、
- 細胞膜上に第2の膜タンパク質、好ましくはB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14を有する第2の細胞
を準備する工程;
- 上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体(第1の抗体)を準備する工程;
- 上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む更なる抗体又はその変異体(第2の抗体)を準備する工程
を含み、
上記第1及び第2の抗体は、
- 上記第1の膜タンパク質の異なるエピトープ、
- 上記第2の膜タンパク質の異なるエピトープ、又は
- 上記第1の膜タンパク質の異なるエピトープ及び
上記第1の膜タンパク質の異なるエピトープ
に結合し、
上記方法は、上記第1の細胞及び上記第2の細胞を上記第1及び第2の抗体と共にインキュベートし、それにより上記第1の細胞の免疫応答を誘導又は刺激する工程を更に含む方法を更に提供する。
【0081】
本発明は、免疫細胞の免疫応答を誘導又は刺激するための方法であって、
- 細胞膜上にPD-1を有する免疫細胞(第1の細胞)、
- 細胞膜上にPD-L1を有する第2の細胞
を準備する工程;
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体を準備する工程
を含み、
上記第1の細胞及び上記第2の細胞を上記記抗体と共にインキュベートし、それにより上記第1の細胞の免疫応答を誘導又は刺激する工程を更に含む方法を更に提供する。一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法又はex vivo法である。
【0082】
本発明は、免疫細胞の免疫応答を誘導又は刺激するための方法であって、
- 細胞膜上にPD-1を有する免疫細胞(第1の細胞)、
- 細胞膜上にPD-L1を有する第2の細胞
を準備する工程;
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体(第1の抗体)を準備する工程;
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む更なる抗体又はその変異体(第2の抗体)を準備する工程
を含み、
上記第1及び第2の抗体は、
- PD-1の異なるエピトープ、
- PD-L1の異なるエピトープ、又は
- PD-1の異なるエピトープ及びPD-L1の異なるエピトープ
に結合し、
上記方法は、上記第1の細胞及び上記第2の細胞を上記第1及び第2の抗体と共にインキュベートし、それにより上記第1の細胞の免疫応答を誘導又は刺激する工程を更に含む方法を更に提供する。一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法である。
【0083】
上記免疫応答は、T細胞受容体(TCR)媒介姓であってもよく又はなくともよい。好ましい実施形態では、上記免疫応答は、TCR受容体媒介性である。上記免疫応答は、好ましくは、免疫細胞による炎症性サイトカイン放出を測定することにより測定される。好ましい実施形態では、サイトカインはIL-2である。抗体が存在しない場合と比較したIL-2レベルの変化は、免疫応答が抗体により影響を受けたか否かを示す。増加は、免疫応答が刺激されることを示した。検出不能から検出可能なIL-2への変化は、免疫応答の誘導を示す。
【0084】
第1の細胞は、好ましくは免疫細胞である。免疫細胞は、好ましくはT細胞又はNK細胞である。一実施形態では、上記免疫細胞は、T細胞である。第2の細胞は、好ましくは、抗原提示細胞、新生細胞、ウイルス感染細胞、又は細胞内寄生虫感染細胞である。第1の細胞は、その細胞膜上に上記第1の膜タンパク質を発現する細胞である。第2の細胞は、その細胞膜上に上記第2の膜タンパク質を発現する細胞である。細胞膜は、原形質膜又は細胞質膜としても知られており、細胞の内部と外部環境とを隔てる生体膜である。
【0085】
本発明は、組成物又はキットオブパーツであって、第1の膜タンパク質、好ましくはCD28ファミリーのメンバーの細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び第2の膜タンパク質、好ましくはB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体(第1の抗体)、並びに上記第1の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及び上記第2の膜タンパク質の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む更なる抗体又はその変異体(第2の抗体)を含む、2つ又はそれよりも多くの抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含み、
上記第1及び第2の抗体は、
- 上記第1の膜タンパク質の異なるエピトープ、
- 上記第2の膜タンパク質の異なるエピトープ、又は
- 上記第1の膜タンパク質の異なるエピトープ及び
上記第2の膜タンパク質の異なるエピトープ
に結合する組成物又はキットオブパーツを更に提供する。
【0086】
同じ第1及び第2の膜タンパク質に結合する可変ドメインを有する2つ又はそれよりも多くの抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含む方法、使用、組成物、又はキットオブパーツを含む実施形態は、「Oligoclonics」実施形態とも呼ばれる。そのようなOligoclonics実施形態の例は、上記第1及び第2の抗体による実施形態である。「Oligoclonics」は登録商標である。そのようなOligoclonics(登録商標)産物を製作するための基本方法は、国際公開第2013/157953号パンフレット及び国際公開第2004/009618号パンフレットに開示されており、これら文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
Oligoclonics実施形態では、第1及び第2の抗体は、CD28ファミリーの同じメンバー、例えばPD-1、及びB7ファミリーの同じメンバー又はTNFRSF14、例えばPD-L1に結合する可変ドメインを含む。本明細書に記載のようなファミリーのメンバーを含む膜は、典型的には、膜上に幾つかの及び多くの場合は多数の、そのメンバーの個々のタンパク質を含む。ファミリーの同じメンバーに結合する可変ドメインを有する抗体は、同じ個々のタンパク質に結合することができるが、これは必ずしもそうとは限らない。TNa膜タンパク質に結合する本発明の抗体は、上記膜タンパク質のエピトープに結合する。エピトープは、抗原、この場合は抗体により認識される膜タンパク質の一部である。膜タンパク質の異なるエピトープに結合する第1及び第2の抗体は、膜上の同じ個々のタンパク質に結合することができる。そのため、異なるエピトープは、好ましくは非重複エピトープである。言い換えれば、異なるエピトープは、2つの抗体が同じ個々のタンパク質に同時に結合することができるように、膜タンパク質上において十分に隔てられている。驚くべきことに、Oligoclonics(第1及び第2又はそれよりも多くの抗体の組合せ)は、同量の各々の抗体のみよりも効果的であり得ることが見出された。
【0088】
CD28ファミリーのメンバーに結合することができる第1の抗体の可変ドメインは、好ましくは、上記メンバーと、B7ファミリー又はTNFRSF14におけるその結合パートナーとの結合を阻止する。B7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14に結合することができる第1の抗体の可変ドメインは、好ましくは、上記メンバーと、CD28ファミリーにおけるその結合パートナーとの結合を阻止する。CD28ファミリーのメンバーに結合することができる第2の抗体の可変ドメインは、好ましくは、上記メンバーと、B7ファミリー又はTNFRSF14におけるその結合パートナーとの結合を阻止する。B7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14に結合することができる第2の抗体の可変ドメインは、好ましくは、上記メンバーと、CD28ファミリーにおけるその結合パートナーとの結合を阻止する。上記第1及び第2の抗体の阻止性及び非阻止性可変ドメインの好ましい組合せは、本明細書の下記に示されている。
【0089】
【表1】
【0090】
上記組合せは、好ましい組合せである。上記組合せでは、第1の抗体の可変ドメインが、CD28ファミリーのメンバーとB7ファミリー又はTNFRSF14におけるその結合パートナーとの結合を阻止する可変ドメインであると指定されている。第2の抗体は、この相互作用を阻止しない1つ又は複数の可変ドメインを有してもよい。Oligoclonics実施形態を分析する場合、2つの阻止性可変ドメインを含む抗体に「第1の抗体」の属性が割り当てられる。Oligoclonics実施形態が、2つの阻止性可変ドメインを有する2つ又はそれよりも多くの抗体を含む場合、それらの1つに「第1の抗体」の属性が割り当てられる。CD28ファミリーのメンバー又はB7ファミリーのメンバー若しくはTNFRSF14の公知の結合パートナーは、本明細書の上記に示されている。
【0091】
第1の膜タンパク質は、好ましくは、CD28ファミリーのメンバーである。CD28ファミリーのメンバーは、単一の細胞外免疫グロブリン可変様(IgV)ドメイン、その後に続く短い細胞質側末端を有する。こうしたメンバーは、構成的又は誘導のいずれかで免疫系の細胞上に発現される。このファミリーのメンバーとしては、CD28、CTLA-4、PD-1、ICOS、BTLA、NKp30、及びTMIGD2が挙げられる。第1の膜タンパク質は、好ましくは、PD-1、CTLA-4、BTLA、又はTMIGD2であり、好ましくはPD-1である。
【0092】
第2の膜タンパク質は、好ましくは、B7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14である。上記「B7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14」という語句は、B7ファミリーのタンパク質及びTNFRSF14からなるタンパク質の群から選択されるメンバーを意味する。好ましい実施形態では、第2の膜タンパク質は、B7ファミリーのメンバーである。B7ファミリーは、免疫応答を制御するリンパ球上のタンパク質(CD28ファミリーメンバー)に結合する、構造的に関連する細胞表面タンパク質のコレクションである。B7ファミリーメンバーは、典型的にはリガンドと呼ばれ、CD28ファミリーのメンバーは受容体と呼ばれる。T及びBリンパ球の活性化は、細胞表面の抗原特異的T細胞受容体又はB細胞受容体のエンゲージメントにより惹起されるが、1つ又は複数のB7リガンドにより同時に送達される追加シグナルが、最終免疫応答を決定する。こうした「共刺激性」又は「共阻害性」シグナルは、リンパ球上のCD28ファミリー受容体を介してB7リガンドにより送達される。B7ファミリーメンバーと共刺激性受容体との結合は、免疫応答を増大させ、共阻害性受容体との結合は、免疫応答を減弱させる。B7ファミリーの好ましいメンバーは、CD80、CD86、ICOS-L、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、及びB7-H7である。B7リガンドは、リンパ組織及び非リンパ組織で発現される。共阻害シグナルを伝達するB7リガンドは、新生物、ウイルス感染細胞、及び細胞内寄生虫感染細胞と相関し、それらに対する免疫応答を回避又は少なくとも減衰する能力をそれらに提供する。B7リガンドにより送達されるシグナルの操作は、自己免疫、炎症性疾患、及びがんの治療に活性を示している。好ましい実施形態では、第2の膜タンパク質は、PD-L1、PD-L2、ICOSL、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、TNFRSF14、B7-H6、又はB7-H7である。好ましい実施形態では、第2の膜タンパク質は、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、B7-H4、TNFRSF14、又はB7-H7である。特に好ましい実施形態では、第2の膜タンパク質は、PD-L1又はPD-L2であり、好ましくはPD-L1である。
【0093】
特に好ましい実施形態では、第1の膜タンパク質はPD-1であり、第2の膜タンパク質はPD-L1である。
【0094】
第1の膜タンパク質がCD28である場合、第2の膜タンパク質は、CD80、CD86、又はICOSL、好ましくはCD80であることが好ましい。したがって、抗体又はその変異体は、好ましくは、CD28の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及びCD80の細胞外部分、CD86の細胞外部分、又はICOSLに結合する細胞外部分、好ましくはCD80の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体である。CD28及びCD80は、結合パートナーである。CD28及びCD86は結合パートナーであり、CD28及びICOSLは結合パートナーである。
【0095】
第1の膜タンパク質がCTLA-4である場合、第2の膜タンパク質は、CD80、CD86、又はICOSL、好ましくはCD80であることが好ましい。したがって、抗体又はその変異体は、好ましくは、CTLA-4の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及びCD80の細胞外部分又はCD86の細胞外部分、好ましくはCD80の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体である。CTLA-4及びCD80は、結合パートナーである。CTLA-4及びCD86は結合パートナーであり、CTLA-4及びICOSLは結合パートナーである。
【0096】
第1の膜タンパク質がICOSである場合、第2の膜タンパク質は、ICOSLであることが好ましい。したがって、抗体又はその変異体は、好ましくは、ICOSの細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びICOSLの細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体である。ICOS及びICOSLは結合パートナーである。
【0097】
第1の膜タンパク質がBTLAである場合、第2の膜タンパク質は、B7-H4又はTNFRSF14、好ましくはTNFRSF14であることが好ましい。したがって、抗体又はその変異体は、好ましくは、BTLAの細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及びB7-H4の細胞外部分又はTNFRSF14の細胞外部分、好ましくはTNFRSF14の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体である。BTLA及びB7-H4は結合パートナーであり、BTLA及びTNFRSF14は結合パートナーである。
【0098】
第1の膜タンパク質がNKp30である場合、第2の膜タンパク質は、B7-H6であることが好ましい。したがって、抗体又はその変異体は、好ましくは、NKp30の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びB7-H6の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体である。NKp30及びB7-H6は、結合パートナーである。
【0099】
第1の膜タンパク質がTMIGD2である場合、第2の膜タンパク質は、B7-H7(HHLA2)であることが好ましい。したがって、抗体は、好ましくは、TMIGD2の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びB7-H7(HHLA2)の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体である。TMIGD2及びB7-H7は、結合パートナーである。
【0100】
第1の膜タンパク質がPD-1である場合、第2の膜タンパク質は、PD-L1又はPD-L2、好ましくはPD-L1であることが好ましい。PD-1及びPD-L1は、結合パートナーである。PD-1及びPD-L2は、結合パートナーである。PD-L1及びCD80は、結合パートナーである。抗体又は変異体は、好ましくは、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及びPD-L1の細胞外部分又はPD-L2の細胞外部分、好ましくはPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む。PD-1/PD-L1抗体又はその変異体及びPD-1/PD-L2抗体又はその変異体は、好ましくは、上記PD-1に結合する可変ドメインを2つ含む二価モノクローナル抗体として提供される場合、ジャーカット細胞のT細胞受容体媒介性活性化のPD-1/PD-L1媒介性阻害を、ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して20~150%の範囲で阻害するPD-1結合可変ドメインを有する抗体又はそれらの変異体である。一部の実施形態は、本発明による抗体又は変異体であって、二価単一特異性抗体フォーマット中に存在する場合、ジャーカット細胞のT細胞受容体媒介性活性化のPD-1/PD-L1媒介性阻害を、抗体ニボルマブと比較してより高い程度に減殺するPD1結合可変ドメインを含む抗体又は変異体を提供する。PD-1の細胞外部分に結合する可変ドメインは、上記PD-1に結合する可変ドメインを2つ含む二価単一特異性抗体フォーマット中に存在する場合、ジャーカット細胞のT細胞受容体媒介性活性化のPD-1/PD-L1媒介性阻害を、ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して20~150%の範囲で阻害する可変ドメインであると定義される。
【0101】
ジャーカット細胞のTCR媒介性活性化のPD-1阻害の阻害は、好ましくは、上記ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して、50~150%、好ましくは80~150%、より好ましくは100~150%の範囲である。好ましい実施形態では、阻害は、上記ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して、少なくとも100%である。ジャーカット細胞のTCR媒介性活性化のPD-1阻害は、好ましくは、抗体又はその変異体が存在した場合にT細胞受容体を介して活性化されることになる条件下でインキュベートされたジャーカット細胞におけるPD-1/PD-L1結合の免疫減衰効果を測定することにより測定される。阻害の決定に好適なアッセイは、実施例に記載されている。好適なジャーカット細胞株は、実施例に記載されている。
【0102】
PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、好ましくは、一価モノクローナル抗体に存在する場合、表面プラズモン共鳴法(SPR)により測定して0.1~14nMのKDでPD-L1に結合する可変ドメインであり、好ましくは、可変ドメインは、SPRにより測定して0.5~14nMのKD、好ましくは1~14nMのKD、好ましくは1~12nMのKD、好ましくは2~12nMのKDを有する。一部の好ましい実施形態では、本発明による抗体又は変異体は、PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含み、上記可変ドメインは、破傷風トキソイド等の無関連抗原に結合する第2の可変ドメインを有する二重特異性抗体に存在する場合、表面プラズモン共鳴法(SPR)により測定して、4.27nM以下、好ましくは1.31nM以下、好ましくは1.27nM以下のKDでPD-L1に結合する。好ましくは、上記PD-L1特異的可変ドメインは、破傷風トキソイド等の無関連抗原に結合する第2の可変ドメインを有する二重特異性抗体に存在する場合、0.9~4.27nMのKDで、好ましくは0.94~4.27nMのKDで、又は0.9~1.31nMのKDで、好ましくは0.94~1.31nMのKDでPD-L1に結合する。PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及びPD-L1の細胞外部分又はPD-L2の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む本発明による抗体又は変異体は、好ましくは、PD-1の細胞外部分に結合することができ、PD-1とPD-L1との結合を阻止する可変ドメインを含む抗体又はその変異体である。PD-L1の細胞外部分又はPD-L2の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、PD-1とPD-L1又はPD-L2との結合をそれぞれ阻止する可変ドメインであることが好ましい。PD-1に結合することができ、PD-1とPD-L1との結合を阻止する可変ドメインは、好ましくは、PD-1とPD-L2との結合も阻止するドメインである。本発明の可変ドメインは、PD-L1に結合することができ、PD-L1とPD-1との結合及び/又はPD-L1とCD80との結合を阻止するものであってもよい。これは、こうした抗体が、PD-1/PD-L2経路を介する治療に対する腫瘍耐性を減殺することもできるという利点を提供する。
【0103】
本発明による抗体又はその変異体は、好ましくは、結合対の結合の活性を低減する。活性の低減は、典型的には、結合対が互いに結合する能力を阻止することにより達成される。この能力は、結合対のメンバーのいずれか一方又は好ましくは両方を阻止することにより阻止することができる。結合対が共阻害性である場合、阻止により阻害性又は共阻害活性が低減される。結合対が共刺激性である場合、共刺激活性は、阻止により低減される。
【0104】
CD28ファミリーのメンバー及びB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14の優先度は、Oligoclonics実施形態では同じである。
【0105】
また、本発明は、T細胞をエンゲージメント及び/又は活性化するための方法であって、T細胞と上記T細胞にエンゲージメント及び活性化する細胞とを含む系を準備する工程、並びにCD28ファミリーのメンバーに結合することができる可変ドメイン及びB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを各々含む1つ又は複数の抗体を上記系に提供する工程、並びにT細胞がエンゲージメント及び/又は活性化されることを可能にする条件下で上記系をインキュベートする工程を含む方法を提供する。一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法である。一部の実施形態は、T細胞をエンゲージメント及び/又は活性化するための方法であって、T細胞と上記T細胞にエンゲージメント及び活性化する細胞とを含む系を準備する工程、並びにPD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを各々含む1つ又は複数の抗体を上記系に提供する工程、並びにT細胞がエンゲージメント及び/又は活性化されることを可能にする条件下で上記系をインキュベートする工程を含む方法を提供する。上記T細胞にエンゲージメント又は活性化する細胞は、好ましくは、免疫細胞、例えば抗原提示細胞、マクロファージ、新生細胞、ウイルス感染細胞、又は細胞内寄生虫感染細胞である。T細胞のエンゲージメント及び/又は活性化は、T細胞を特定の標的へと方向付ける。T細胞の活性化は、上記T細胞のT細胞受容体の活性化である。T細胞のエンゲージメントは、典型的にはT細胞の活性化である。また、エンゲージメントは、既に活性化されたT細胞を、抗体により特定された標的へと方向付ける。上記T細胞が活性化及び/又はエンゲージメントされることを可能にする条件は、典型的には培養条件であるが、動物中でのインキュベーションであってもよく、したがって、特に治療方法を包含することができる。条件は、典型的には、抗体の非存在下でT細胞がエンゲージメントされないような条件である。T細胞のコレクションが測定される場合、コレクションがエンゲージメント又は活性化されていない十分なT細胞を含んでいる限り、それらの一部は、既にエンゲージメント又は活性化されていてもよい。
【0106】
本発明の抗体は、2つの細胞を互いに、近くに接近させ、それにより、本発明の抗体が結合する受容体-リガンド対以外のタンパク質により媒介される細胞間の相互作用を可能にすることができる。1つのそのような相互作用は、一方の細胞のT細胞受容体と他方の細胞のMHCとの相互作用である。
【0107】
PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体は、好ましくは、MF6076、MF6236、MF6256、MF6226、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、MF6982、MF6929、MF7699、MF7698、MF7687、MF7686、MF7685、又はMF7684の可変重鎖領域(図3及び/又は図13)のCDR3領域のアミノ酸配列を含むCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。
【0108】
PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体は、好ましくは、MF6076、MF6236、MF6256、MF6226、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、MF6982、MF6929、MF7699、MF7698、MF7687、MF7686、MF7685、又はMF7684について示されているVH(図3及び/又は図13)の1つの可変重鎖領域のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、好ましくは、同じVH領域から選択される。
【0109】
PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体は、好ましくは、MF6076、MF6256、MF6226、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、MF6982、MF6929、MF7699、MF7698、MF7687、MF7686、MF7685、又はMF7684の可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、MFのVHのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む。アミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せは、もし存在する場合でも、好ましくはCDR領域のアミノ酸配列には存在しない。
【0110】
PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体は、好ましくは、MF5359、MF5361、MF5377、MF5382、MF5424、MF5426、MF5439、MF5442、MF5553、MF5557、MF5561、MF5576、MF5594、MF5708、MF5442、MF7691、MF7690、MF7689、MF7688、MF7700、MF7701、MF7703、MF7694、MF7693、MF7692、MF7697、MF7696、又はMF7695の可変重鎖領域(図3及び/又は図13)のCDR3領域のアミノ酸配列を含むCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。
【0111】
PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体は、好ましくは、MF5359、MF5361、MF5377、MF5382、MF5424、MF5426、MF5439、MF5442、MF5553、MF5557、MF5561、MF5576、MF5594、MF5708、MF5442、MF7691、MF7690、MF7689、MF7688、MF7700、MF7701、MF7703、MF7694、MF7693、MF7692、MF7697、MF7696、又はMF7695について示されているVH(図3及び/又は図13)の1つの可変重鎖領域のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、好ましくは、同じVH領域から選択される。
【0112】
PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体は、好ましくは、MF5359、MF5361、MF5377、MF5382、MF5424、MF5426、MF5439、MF5442、MF5553、MF5557、MF5561、MF5576、MF5594、MF5708、MF5442、MF7691、MF7690、MF7689、MF7688、MF7700、MF7701、MF7703、MF7694、MF7693、MF7692、MF7697、MF7696、又はMF7695の可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、上記表記のMFのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する重鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。アミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せは、もし存在する場合でも、好ましくはCDR領域のアミノ酸配列には存在しない。
【0113】
抗体又はその変異体は、好ましくは、PD-1の細胞外部分に結合することができ、PD-1とPD-L1との結合を阻止する可変ドメイン、及びPD-L1の細胞外部分に結合することができ、PD-1とPD-L1との結合を阻止する可変ドメインを含む。PD-1に結合することができ、PD-1とPD-L1との結合を阻止する可変ドメインは、好ましくは、PD-1とPD-L2との結合も阻止する。PD-L1に結合することができ、PD-1とPD-L1との結合を阻止する可変ドメインは、好ましくは、PD-L1とCD80との結合も阻止する。これは、PD-1とCD80との相互作用を介した腫瘍細胞による免疫抑制も減殺することができるという利点を提供する。
【0114】
本発明の抗体又はその変異体、例えば二重特異性抗体又はその変異体は、好ましくは、PD-1の細胞外部分に結合することができ、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用を阻止する可変ドメインを含み、PD-L1の細胞外部分に結合することができ、PD-L1とPD-1及び/又はCD80との相互作用を阻止する可変ドメインを含む。好ましくは、本発明のそのような分子は、PD-1とPD-L1又はPD-L2との間並びにPD-L1とPD-1及びCD80との間を含む、全PD-1軸をブロックすることできる。
【0115】
そのような抗体又はその変異体の、PD-L1の細胞外部分に結合する可変ドメインは、好ましくは、MF5359、MF5377、MF5382、MF5424、MF5426、MF5439、MF5442、MF5553、MF5557、MF5561、MF5576、MF5594、MF5708、MF5442、MF7691、MF7690、MF7689、MF7688、MF7700、MF7701、MF7703、MF7694、MF7693、MF7692、MF7697、MF7696、又はMF7695のVH(図3及び/又は図13)の1つのCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含む。好ましい実施形態では、PD-L1の細胞外部分に結合する可変ドメインは、MF5359、MF5377、MF5382、MF5424、MF5426、MF5439、MF5442、MF5553、MF5557、MF5561、MF5576、MF5594、MF5708、MF5442、MF7691、MF7690、MF7689、MF7688、MF7700、MF7701、MF7703、MF7694、MF7693、MF7692、MF7697、MF7696、又はMF7695のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含む。
【0116】
この抗体又はその変異体の、PD-1の細胞外部分に結合する可変ドメインは、好ましくは、MF6076、MF6236、MF6256、MF6226、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、MF6982、MF6929、MF7699、MF7698、MF7687、MF7686、MF7685、又はMF7684のVH(図3及び/又は図13)の1つのCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含む。好ましい実施形態では、PD-1の細胞外部分に結合する可変ドメインは、MF6076、MF6236、MF6256、MF6226、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、MF6982、MF6929、MF7699、MF7698、MF7687、MF7686、MF7685、又はMF7684のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含む。アミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せは、もし存在する場合でも、好ましくはCDR領域のアミノ酸配列には存在しない。この抗体又はその変異体での特に好ましい組合せは、MF5382及びMF6256の表記の配列又はその変異体を含む可変ドメインの組合せである。
【0117】
一部の実施形態は、本発明による抗体又は変異体であって、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含み、スタフィロコッカス(Staphylococcus)エンテロトキシンB(SEB)アッセイにおいて、
- 上記PD-1に結合する可変ドメインを2つ含む二価単一特異性抗体、及び
- 上記PD-L1に結合する可変ドメインを2つ含む二価単一特異性抗体の等モル混合物と比較して、より強力なCD4+T細胞活性化能力を有する抗体又はその変異体を提供する。そのより強力なCD4+T細胞活性化能力を鑑みると、こうした実施形態による抗体又は変異体は、親抗体の等モル混合物よりも好ましい。
【0118】
一部の実施形態は、本発明による抗体又は変異体であって、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含み、抗原特異的CD4+T細胞アッセイにおいて、ベンチマーク抗体5C4又はベンチマーク抗体YW243.55.S70又はベンチマーク抗体5C4及びYW243.55.S70の組合せよりも強力にT細胞を活性化することができる抗体又は変異体を提供する。そのより強力な抗原特異的CD4+T細胞活性化能力を鑑みると、この実施形態による抗体又は変異体は、抗PD-1ベンチマーク抗体ニボルマブ及び抗PD-L1ベンチマーク抗体アテゾリズマブよりも好ましい。特筆すべきことには、こうした実施形態による抗体又は変異体は、ニボルマブ及びアテゾリズマブの組合せと比べた場合でさえ、好ましい。
【0119】
一部の実施形態は、本発明による抗体又は変異体であって、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含み、混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、ニボルマブに基づくベンチマーク抗体5C4又はアテゾリズマブに基づくベンチマーク抗体YW243.55.S70と比較して、より強力なCD4+T細胞活性化能力を有する抗体又は変異体を提供する。特筆すべきことには、そのより強力なCD4+T細胞活性化能力を鑑みると、こうした実施形態による抗体又は変異体は、ニボルマブ及びアテゾリズマブよりも好ましい。
【0120】
一部の実施形態は、本発明による抗体又は変異体であって、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含み、CD4+及び/又はCD8+腫瘍浸潤性T細胞の増殖を増強することが可能である抗体又は変異体を提供する。その腫瘍浸潤性T細胞活性化能力を鑑みると、こうした実施形態による抗体又は変異体は、特に、T細胞媒介性抗腫瘍応答の誘導又は増加に好適である。
【0121】
一部の実施形態は、本発明による抗体又は変異体であって、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含み、ペムブロリズマブに基づくベンチマーク抗体MK-3475及びアテゾリズマブに基づくベンチマーク抗体YW243.55.S70の組合せと比較して、より強力なT細胞媒介性抗腫瘍応答をin vivoで誘導することが可能である抗体又は変異体を提供する。したがって、こうした実施形態による抗体又は変異体は、特に、in vivoでのT細胞媒介性抗腫瘍応答の誘導又は増加に好適である。特筆すべきことには、そのより強力なT細胞活性化能力を鑑みると、こうした実施形態による抗体又は変異体は、ペムブロリズマブ及びアテゾリズマブよりも好ましい。
【0122】
Table 4(表6)に示されているように、PD-1特異的Fabアーム6076を、PD-L1特異的FabアームMF5553、MF5359、MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382と組み合わせた場合、PD-1/PD-L1レポーターアッセイ二重特異性抗体において少なくとも60%の阻止を示す二重特異性抗体が形成された。
【0123】
本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6076のVHのCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5553、MF5359、MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5359、MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5359、MF5424、MF5561、又はMF5442、好ましくはMF5359、MF5424、又はMF5442、好ましくはMF5359又はMF5442、好ましくはMF5442のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0124】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6076のVHのアミノ酸配列であって、MF6076のVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5553、MF5359、MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5359、MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5359、MF5424、MF5561、又はMF5442、好ましくはMF5359、MF5424、又はMF5442、好ましくはMF5359又はMF5442、好ましくはMF5442のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0125】
Table 4(表6)に示されているように、PD-1特異的FabアームMF6236を、PD-L1特異的FabアームMF5561、MF5442、又はMF5382と組み合わせた場合、PD-1/PD-L1レポーターアッセイにおいて少なくとも60%の阻止を示す二重特異性抗体が形成された。本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6236のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5561又はMF5442、好ましくはMF5442のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0126】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6236のVHのアミノ酸配列であって、MF6236のVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5561又はMF5442、好ましくはMF5442のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0127】
Table 4(表6)に示されているように、PD-1特異的FabアームMF6974を、PD-L1特異的FabアームMF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382と組み合わせた場合、PD-1/PD-L1レポーターアッセイにおいて少なくとも60%の阻止を示す二重特異性抗体が形成された。本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6974のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5424、MF5561、又はMF5442、好ましくはMF5424又はMF5442、好ましくはMF5442のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0128】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6974のVHのアミノ酸配列であって、MF6974のVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5424、MF5561、又はMF5442、好ましくはMF5424又はMF5442、好ましくはMF5442のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0129】
Table 4(表6)に示されているように、PD-1特異的FabアームMF6935を、PD-L1特異的FabアームMF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382と組み合わせた場合、PD-1/PD-L1レポーターアッセイにおいて少なくとも60%の阻止を示す二重特異性抗体が形成された。本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6935のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5442又はMF5382、好ましくはMF5382のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0130】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6935のVHのアミノ酸配列であって、MF6935のVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5442又はMF5382、好ましくはMF5382のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0131】
Table 4(表6)に示されているように、PD-1特異的FabアームMMF6936を、PD-L1特異的FabアームMF5576、MF5424、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382と組み合わせた場合、PD-1/PD-L1レポーターアッセイにおいて少なくとも60%の阻止を示す二重特異性抗体が形成された。本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6936のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5576、MF5424、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5424、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5442又はMF5382、好ましくはMF5382のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0132】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6936のVHのアミノ酸配列であって、MF6936のVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5576、MF5424、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5424、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5424、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5442、又はMF5382、好ましくはMF5382のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0133】
Table 4(表6)に示されているように、PD-1特異的FabアームMF6256を、PD-L1特異的FabアームMF5576、MF5424、MF5561、MF5557、MF5439、MF5442、又はMF5382と組み合わせた場合、PD-1/PD-L1レポーターアッセイにおいて少なくとも60%の阻止を示す二重特異性抗体が形成された。本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6256のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5576、MF5424、MF5561、MF5557、MF5439、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5576、MF5424、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5576、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5576、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5576、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5442、又はMF5382、好ましくはMF5382のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0134】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6256のVHのアミノ酸配列であって、MF6256のVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5576、MF5424、MF5561、MF5557、MF5439、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5576、MF5424、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5576、MF5561、MF5557、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5576、MF5561、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5576、MF5442、又はMF5382、好ましくはMF5442、又はMF5382、好ましくはMF5382のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0135】
一部の好ましい実施形態では、本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、
- MF6076のVHのCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5442、MF7691、MF7690、MF7689、MF7688、MF7700、MF7701、MF7703、MF7694、MF7693、MF7692、MF7697、MF7696、又はMF7695、好ましくはMF7703又はMF7689のVH(図3及び/又は図13)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0136】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6076のVHのアミノ酸配列であって、MF6076のVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5442、MF7691、MF7690、MF7689、MF7688、MF7700、MF7701、MF7703、MF7694、MF7693、MF7692、MF7697、MF7696、又はMF7695、好ましくはMF7703又はMF7689のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0137】
一部の好ましい実施形態では、本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、
- MF6974のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF7703又はMF7689、好ましくはMF7703又はMF7689、より好ましくはMF7689のVH(図3及び/又は図13)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0138】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF6974のVHのアミノ酸配列であって、MF6974のVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF7703又はMF7689、好ましくはMF7703又はMF7689、より好ましくはMF7689のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0139】
一部の好ましい実施形態では、本明細書に記載のような抗体又はその変異体は、
- MF7686のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5359、MF5361、MF5377、MF5382、MF5424、MF5426、MF5439、MF5442、MF5553、MF5557、MF5561、MF5576、MF5594、MF5708、MF7703、又はMF7689、好ましくはMF7703又はMF7689、より好ましくはMF7703のVH(図3及び/又は図13)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0140】
抗体又はその変異体は、好ましくは
- MF7686のVHのアミノ酸配列であって、MF7686のVHのアミノ酸配列(図3)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-1結合可変ドメイン、及び
- MF5359、MF5361、MF5377、MF5382、MF5424、MF5426、MF5439、MF5442、MF5553、MF5557、MF5561、MF5576、MF5594、MF5708、MF7703、又はMF7689、好ましくはMF7703又はMF7689、より好ましくはMF7703のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのVHのアミノ酸配列(図3及び/又は図13)に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を有するVH領域を含むPD-L1結合可変ドメイン
を含む。
【0141】
一部の好ましい実施形態は、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む本発明による抗体又はその変異体であって、上記PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、
- MF6974、MF6076、及びMF7686からなる群から選択される可変領域の重鎖CDR3配列と同一である重鎖CDR3配列、又は
- MF6974若しくはMF6076若しくはMF7686の重鎖CDR3配列から、3つ以下、好ましくは2つ以下、より好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR3配列、又は
- MF6974、MF6076、及びMF7686からなる群から選択される可変領域の重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列と同一である重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は
- MF6974若しくはMF6076若しくはMF7686の重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列から、3つ以下、好ましくは2つ以下、より好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列
を含む、抗体又はその変異体を提供する。
【0142】
一部の好ましい実施形態は、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む本発明による抗体又はその変異体であって、上記PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、
- MF6974若しくはMF6076若しくはMF7686のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は
- MF6974若しくはMF6076若しくはMF7686のアミノ酸配列と少なくとも80%、若しくは少なくとも85%、若しくは少なくとも90%、若しくは少なくとも91%、若しくは少なくとも92%、若しくは少なくとも93%、若しくは少なくとも94%、若しくは少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を有する重鎖可変領域
を含む、抗体又はその変異体を提供する。
【0143】
一部の好ましい実施形態は、PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む本発明の抗体又はその変異体であって、上記PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、
- MF7689及びMF7703からなる群から選択される可変領域の重鎖CDR3配列と同一である重鎖CDR3配列、又は
- MF7689若しくはMF7703の重鎖CDR3配列から、3つ以下、好ましくは2つ以下、より好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR3配列、又は
- MF7689及びMF7703からなる群から選択される可変領域の重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列と同一である重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列、又は
- MF7689若しくはMF7703の重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列から、3つ以下、好ましくは2つ以下、より好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列
を含む、抗体又はその変異体を提供する。
【0144】
一部の好ましい実施形態は、PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む本発明による抗体又はその変異体であって、上記PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、
- MF7689若しくはMF7703のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は
- MF7689若しくはMF7703のアミノ酸配列と少なくとも80%、若しくは少なくとも85%、若しくは少なくとも90%、若しくは少なくとも91%、若しくは少なくとも92%、若しくは少なくとも93%、若しくは少なくとも94%、若しくは少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を有する重鎖可変領域
を含む、抗体又はその変異体を提供する。
【0145】
一部の好ましい実施形態は、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む本発明による抗体又はその変異体であって、上記PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、MF6974、MF6076、及びMF7686からなる群から選択される可変領域の重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列と同一である重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、上記PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、MF7689及びMF7703からなる群から選択される可変領域の重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列と同一である重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列を含む、抗体又はその変異体を提供する。
【0146】
一部の好ましい実施形態は、PD-Lの細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む本発明による抗体又はその変異体であって、上記PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、MF6974の重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列と同一である重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、上記PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、MF7689の重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列と同一である重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列を含む、抗体又はその変異体を提供する。実施例に示されているように、この実施形態による抗体又は変異体は、良好なPD-1/PD-L1阻止活性及び強力なT細胞活性化能力を有する。
【0147】
一部の実施形態は、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む本発明による抗体又はその変異体であって、上記PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、MF7686の重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列と同一である重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、上記PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、MF7703の重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列と同一である重鎖CDR1及びCDR2及びCDR3配列を含む、抗体又はその変異体を提供する。実施例に示されているように、この実施形態による抗体又は変異体は、良好なPD-1/PD-L1阻止活性及び強力なT細胞活性化能力を有する。
【0148】
別の実施形態では、抗体又はその変異体は、PD-1とPD-L1との結合を阻止しない、PD-L1の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む。この抗体又はその変異体の、PD-L1の細胞外部分に結合する可変ドメインは、好ましくは、MF5361のVH(図3)のCDR3のアミノ酸配列又はCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、PD-L1の細胞外部分に結合する可変ドメインは、MF5361のVHのアミノ酸配列であって、表記のMFのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するVHのアミノ酸配列を含む。
【0149】
上述のH、VH、L及びVL領域における上述の最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換であり、挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せは、好ましくは、H、VH、L、又はVL鎖のCDR3領域には存在せず、好ましくは、VH又はVL鎖のCDR1、CDR2、又はCDR3領域には存在せず、好ましくはFR4領域には存在しない。
【0150】
本明細書に記載のような方法では、好ましくは、本明細書に記載のような抗体又はその変異体が使用される。
【0151】
本発明による抗体又はその変異体、例えば、その一部、誘導体、若しくは類似体は、好ましくは、記載のような2つの可変ドメインを含む。そのような抗体は、好ましくは二重特異性抗体又はその変異体である。2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの変異体は、共に連結されてもよい。種々の方法が当技術分野で公知である。好適な方法はコンジュゲーションである。加えて、通常の単一特異性抗体と同じ全体的構造を有するが、抗体の2つのアームが各々異なる標的に結合する二重特異性抗体をも含む多重特異性抗体を製作するための技術が進歩している。二重特異性抗体又はその変異体は、好ましくは、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの重鎖を有する。軽鎖は、好ましくは共通軽鎖である。一部の実施形態は、本発明による抗体又は変異体であって、上記抗体又は変異体の抗原結合部位は、PD-1の細胞外部分に結合することができる1つの免疫グロブリン可変ドメイン及びPD-L1又はPD-L2の細胞外部分に結合することができる1つの免疫グロブリン可変ドメインからなる、抗体又はその変異体を提供する。本発明による抗体は、好ましくは、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの重鎖からなる全長二重特異性抗体である。一部の実施形態では、本発明による抗体は、IgG、好ましくは、IgG1又はIgG3又はIgG4、より好ましくはIgG1又はIgG4、最も好ましくはIgG1である。IgGフォーマットは、典型的には、他のフォーマットと比較して、より長い半減期及び/又は低減された免疫原性という利点を提供する。
【0152】
一部の実施形態では、本発明による抗体又は変異体は、PD-1に対して一価であり、PD-L1に対して一価である。
【0153】
本発明による抗体又は変異体の軽鎖は、好ましくは共通軽鎖である。
【0154】
本明細書で使用される場合、用語「コンジュゲート」は、共有結合で、任意選択で連結領域により接合されている2つ又はそれよりも多くの分子を指す。例えば、一部の実施形態では、コンジュゲートは、連結領域により第2のタンパク質又は非タンパク質部分に接合された第1のタンパク質又は非タンパク質部分である。例えば、本発明の結合分子の一部の実施形態では、コンジュゲートは、共有結合で接合されている2つ又はそれよりも多くの抗体を含むか又はからなる。コンジュゲートは、第1及び第2の部分に限定されず、一部の実施形態では、更なる連結領域により接合された第3、第4、又はそれよりも多くの部分を更に有してもよい。本出願の他所に記載されているように、タンパク質部分の例としては、これらに限定されないが、ポリペプチド、ペプチド模倣体、又は抗体(又は本出願の他所に記載のような抗体部分、誘導体、又は類似体)が挙げられる。非タンパク質部分の例としては、これに限定されないが、アプタマーが挙げられる。多数のタイプのリンカーを使用することができ、リンカーは、コンジュゲート中にある分子タイプ及びリンカーの所望の特性(長さ、可撓性、プロテアーゼ活性に対する耐性、及び他の類似の特徴)に応じて適切に選択されることになる。そのようなリンカーは、ヌクレオチド、ポリペプチド、又は好適な合成物質を含んでいてもよい。例えば、リンカーは可撓性ペプチドリンカーであってもよい。ある特定の実施形態では、リンカーは、コンジュゲートの部分を互いに分離することが可能である切断可能なリンカーであってもよい。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、ヘリカルリンカー(helical linker)であってもよい。タンパク質及び他の分子を連結するための種々の例及びキットが、当技術分野で周知である。本明細書で使用される場合、用語「融合タンパク質」は、組換えによりDNAレベルで接合されており、単一ポリペプチドとして共に発現される2つ又はそれよりも多くのポリペプチド又はタンパク質を含むタンパク質を指す。また、融合タンパク質は、これもDNAによりコードされ、融合タンパク質と共に発現されるペプチド連結領域を含んでいてもよい。融合タンパク質の一部であるペプチドリンカーは、可撓性、親水性、プロテアーゼ耐性、切断性等の特定の特徴を有するように設計されてもよい。こうした特性は全て、DNA配列内に設計することができ、リンカーの設計方法は、当技術分野で周知である。例えば、抗体を、当技術分野で周知の及び本明細書に記載の方法により共に連結して、二重特異性又は多重標的指向性抗体を形成することができる。更に、二重特異性抗体は、当技術分野で公知の種々の方法により、例えば、Biclonics(登録商標)(例えば、国際公開第2013/157954号パンフレットを参照)等の技術を使用することにより構築することができる。二重特異性モノクローナル抗体(BsMAb、BsAb)は、典型的には、2つの異なるモノクローナル抗体の結合ドメインを含み、したがって、2つの異なるエピトープに結合する。Biclonics(登録商標)分子は、しかしながら他の全長IgG二重特異性抗体も、scFvのFabの全長IgG分子の2つの異なる可変領域によりコードされる2つの異なる抗原結合特異性を有する。Biclonics(登録商標)は、本明細書の他所で詳述されているような2つの異なる共通軽鎖(cLC)抗体をコードする遺伝子構築体による個々の細胞の同時トランスフェクションにより産生することができる。CH3遺伝子操作により、効率的なヘテロ二量体化及び本質的に純粋な二重特異性抗体の形成が保証される。
【0155】
本発明の抗体は、好ましくは二重特異性抗体である。抗体は、典型的には、いわゆる抗原結合部位を介してそれらの標的に結合する。未修飾抗原結合部位は、典型的には、抗体の可変ドメインにより形成され、そこに存在する。可変ドメインは抗原結合部位を含む。抗原に結合することができる可変ドメインは、抗原に結合することができる抗原結合部位を含む可変ドメインである。
【0156】
抗体可変ドメインは、典型的には、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合部位は、VH/VL可変ドメインの組合せに存在してもよく、又はVH領域のみに若しくはVL領域のみに存在してもよい。抗原結合部位が可変ドメインの2つの領域の一方に存在する場合、対応する可変領域は、結合性可変領域のフォールディング及び/又は安定性に寄与することができるが、抗原の結合自体には著しくは寄与しない。
【0157】
本明細書で使用される場合、抗原結合は、その抗原に対する抗体の典型的な結合能を指す。抗原に対する抗体の結合は、種々の様式で評価することができる。1つの方法は、抗体を抗原(好ましくは、抗原を発現する細胞)と共にインキュベートし、未結合抗体を除去し(好ましくは洗浄ステップにより)、結合抗体に結合する標識抗体により結合抗体を検出することである。
【0158】
抗体による抗原結合は、典型的には、抗体の相補性決定領域(CDR)、並びに抗原及び可変ドメインの両方の特定の三次元構造により媒介され、これら2つの構造が、タンパク質のランダムで非特異的な付着とは対照的に、互いに精密に結合すること(鍵及び鍵穴に類似する相互作用)を可能にする。抗体は、典型的には、抗原のエピトープと呼ばれる抗原の一部を認識し、そのようなエピトープは、他の化合物にも同様に存在する場合があるため、本発明による抗体は、そのような他の化合物が同じエピトープを含む場合、他のタンパク質を認識する場合がある。したがって、用語「結合」は、同じエピトープを含む別の1つ又は複数のタンパク質に対する抗体の結合を除外しない。そのような他のタンパク質は、好ましくはヒトタンパク質ではない。
【0159】
抗体は、典型的には、出生後の、好ましくは成人ヒトの細胞の膜上にある指定の標的タンパク質以外の他のタンパク質には結合しない。
【0160】
CD28ファミリーのメンバーの細胞外部分に結合することができる本発明の抗体又はその変異体の可変ドメインは、指定のメンバーに結合し、同じ種のCD28ファミリーの別のメンバーの細胞外部分に対しては、それ以外は同一の条件下で少なくとも100倍弱く結合する。例えば、PD-1に結合する抗体又はその変異体の可変ドメインは、PD-1に結合し、同じ種のCD28、CTLA4、ICOS、BTLA、NKp30、及びTMIGD2に対しては、それ以外は同一の条件下で少なくとも100倍弱く結合する。無論、抗体又はその変異体が、ファミリーの2つ又はそれよりも多くのメンバーに結合するように設計されている場合、2つ又はそれよりも多くのメンバーとの結合は、本質的に同じであり得る。本発明では、それぞれの抗体が各々、CD28ファミリーメンバーのうちの1つのメンバーのみに結合することが好ましい。CD28ファミリーは細胞表面分子のファミリーであることを考慮すると、結合は、典型的には、細胞表面上にメンバーを発現する細胞上で評価される。
【0161】
B7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14の細胞外部分に結合することができる本発明の抗体又はその変異体の可変ドメインは、指定の分子に結合し、同じ種のB7ファミリーの別のメンバー又はTNFRSF14の細胞外部分に対しては、それ以外は同一の条件下で少なくとも100倍弱く結合する。例えば、PD-L1に結合する抗体又はその変異体の可変ドメインは、PD-L1に結合し、同じ種のCD80、CD86、ICOSL、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、及びB7-H7に対しては、それ以外は同一の条件下で少なくとも100倍弱く結合する。無論、抗体又はその変異体が、ファミリーの2つ又はそれよりも多くのメンバーに結合するように設計されている場合、2つ又はそれよりも多くのメンバーとの結合は、本質的に同じであり得る。本発明では、それぞれの抗体が各々、B7ファミリーメンバーのうちの1つのメンバーのみ又はTNFRSF14に結合することが好ましい。B7ファミリーは細胞表面分子のファミリーであることを考慮すると、結合は、典型的には、細胞表面上にメンバーを発現する細胞上で評価される。
【0162】
メンバーとその結合パートナーの1つ又は複数との結合を阻止する本明細書に記載のような抗体又はその変異体のCD28ファミリーメンバー結合性可変ドメインは、上述の結合パートナーに結合すると、そうでなければメンバーを含む細胞により発現されるはずである生物学的活性を阻害する。上記可変ドメインを含む抗体は、質的には同じであるが、量的には必ずしも同じであるとは限らない活性を有する。
【0163】
メンバー又はTNFRSF14とその結合パートナーの1つ又は複数との結合を阻止する本明細書に記載のような抗体又はその変異体のB7ファミリーメンバー又はTNFRSF14結合性可変ドメインは、典型的には、上述の結合パートナーに結合すると、そうでなければメンバー又はTNFRSF14を含む細胞により発現されるはずである生物学的活性を阻害する。上記可変ドメインを含む抗体は、質的には同じであるが、量的には必ずしも同じであるとは限らない活性を有する。
【0164】
CD28ファミリーメンバーの細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びB7ファミリー又はTNFRSF14から選択されるその結合パートナーに結合することができる可変ドメインを含み、両可変ドメインは、CD28ファミリーメンバーと上記結合パートナーとの結合を阻止しない抗体は、典型的には、上述の結合パートナーに結合すると、そうでなければCD28ファミリーメンバー又はB7ファミリーメンバー若しくはTNFRSF14を含む細胞により発現されるはずである生物学的活性を阻害しない。
【0165】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、免疫グロブリンクラスのタンパク質に属し、抗原のエピトープに結合する1つ又は複数の可変ドメインを含み、そのようなドメインは、抗体の可変ドメインと配列相同性を共有するタンパク質性分子を意味する。療法に使用するための抗体は、治療しようとする対象の天然抗体にできる限り近いことが好ましい(例えば、ヒト対象の場合はヒト抗体)。抗体結合は、特異性及び親和性の点で表すことができる。特異性は、どの抗原又はそのエピトープが、結合ドメインにより特異的に結合されるかを決定する。親和性は、特定の抗原又はエピトープとの結合強度の尺度である。本発明の二重特異性抗体等の抗体は、典型的には、天然抗体の定常ドメイン(Fc部分)を含み、例えば、ADCC及び/又はCDC活性を低減するために他所に記載のように遺伝子操作されてもよい。本発明の抗体は、典型的には、好ましくはヒトIgGサブクラスの二重特異性全長抗体である。
【0166】
用語「可変ドメイン」、「VH/VL対」、「VH/VL」は、本明細書では同義的に使用される。可変ドメインは、重鎖の可変領域及び軽鎖の可変領域で構成される。重鎖の可変領域は、典型的には、再編成されたVDJ領域により形成される。軽鎖の可変領域は、典型的には、再編成されたVJ領域により形成される。VDJ/VJ領域は、今では、例えば、機能性抗体に関して入手可能である大量の配列情報を使用して人工的に産生することもできる。
【0167】
本発明の抗体は、好ましくは全長抗体である。本発明による用語「全長」は、例えば、追加の抗原結合部位又は追加の活性化部位又は追加のリガンド又は追加のリガンド結合部位等の、20個アミノ酸残基よりも大きなサイズの1つ又は複数の人工的に付加された部分を有していない本質的に完全な抗体を含むと定義される。しかしながら、全長抗体は、無傷抗体の全ての機能を必ずしも有するとは限らない。曖昧さを回避するためだが、全長抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。各鎖は、定常領域(C)及び可変(V)領域を含み、それらは、重鎖ではCH1、CH2、CH3、VH、及び軽鎖ではCL、VLと称されるドメインに分割することができる。重鎖のドメインは、好ましくは、天然抗体の順序で存在する(VH-CH1-CH2-CH3、これは、VHドメインが、CH1ドメインに隣接し、その後にCH2ドメイン、次いでその後にCH3ドメイン続くことを意味する)。また、軽鎖のドメインは、好ましくは、天然抗体の順序で存在する(VL-CL、これは、VLドメインがCLドメインに隣接することを意味する)。抗体は、Fab断片部分に含まれる可変ドメインを介して抗原に結合する。抗体は、定常ドメインを介して、ほとんどはFc部分を介して、免疫系の分子及び細胞と相互作用することができる。
【0168】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、IgG、好ましくは全長IgGである。全長IgG抗体が好ましい。それは、典型的にはそれらの半減期が有利であり、免疫原性の理由で完全に自家(ヒト)由来の分子に近いままであることが望ましいためである。一部の実施形態では、本発明の抗体は、全長IgG1、全長IgG2、全長IgG3、又は全長IgG4抗体である。
【0169】
本発明による全長抗体は、所望の特徴を提供するか又は元の鎖にあったものの単なる代替である突然変異が存在してもよい抗体を包含する。そのような突然変異は、領域のいずれかのかなりの部分の欠失であるべきでない。しかしながら、1つ又は幾つかのアミノ酸残基が、その結果生じる抗体の抗原結合特徴を本質的に変更せずに挿入され、欠失され、置換され、又はそれらの組合せを受けた酸である抗体は、用語「全長抗体」内に包含される。例えば、IgG抗体は、定常領域に1~20個のアミノ酸残基挿入、置換、欠失、又はそれらの組合せを有していてもよい。
【0170】
本発明の抗体又はその変異体は、好ましくは、二重特異性抗体又はその変異体である。好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその変異体は、エフェクター機能が低減された二重特異性IgG抗体である。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、二重特異性全長抗体である。本発明の抗体は、好ましくは、エフェクター機能を低減するために好ましくはCH2/下部ヒンジ領域が突然変異された二重特異性全長IgG抗体である。エフェクター機能を低減するためにCH2/下部ヒンジ領域が突然変異されたIgG1は、ヒトにおける循環半減期が長いため、好ましい。ヒトにおける任意の免疫原性を防止するため、本発明による二重特異性抗体は、ヒト抗体であることが好ましい。
【0171】
用語「二重特異性」(bs)は、抗体(上記に定義されるような)の1つの部分が、抗原の1つのエピトープに結合するが、第2の部分は、同じ抗原又は異なる抗原のいずれかの異なるエピトープに結合することを意味する。異なるエピトープは、典型的には、異なる抗原に存在する。しかしながら、また、異なるエピトープは、同じ抗原に存在してもよい。本発明によると、上記第1及び第2の抗原は、実際には、2つの異なるタンパク質である。好ましい二重特異性抗体は、2つの異なるモノクローナル抗体の部分を含み、したがって、好ましくは2つの異なる抗原にある2つの異なるエピトープに結合することができる抗体である。二重特異性抗体により認識される2つの抗原の発現レベル、細胞(内)局在化、及び化学量論に応じて、抗体の両Fabアームは、それらのエピトープに同時に結合してもよく又はしなくともよい。二重特異性抗体の一方のアームは、典型的には1つの抗体の可変ドメインを含み、他方のアームは別の抗体の可変ドメインを含む(つまり、二重特異性抗体の一方のアームは、1つの軽鎖と対合した1つの重鎖により形成され、他方のアームは、軽鎖と対合した異なる重鎖により形成される)。本発明の二重特異性抗体の重鎖可変領域は、典型的には互いに異なるが、本発明の二重特異性抗体の軽鎖可変領域は、好ましくは同じである。異なる重鎖可変領域が同じ又は共通の軽鎖可変領域に付随する二重特異性抗体は、共通軽鎖可変領域(cLcv)を有する二重特異性抗体とも呼ばれる。軽鎖定常領域も同じであることが好ましい。そのような二重特異性抗体は、共通軽鎖(cLc)を有すると言われる。したがって、両アームが共通軽鎖を含む本発明による二重特異性抗体が更に提供される。
【0172】
本明細書に記載のような二重特異性抗体は、好ましくは、共通軽鎖可変ドメイン、好ましくは共通軽鎖を含む。本発明による用語「共通軽鎖」は、同一であってもよく、又は幾つかのアミノ酸配列差異を有してもよいが、全長抗体の結合特異性が影響を受けていない軽鎖を指す。例えば、重鎖と対合した場合、結合特異性に寄与しないか又は部分的にしか寄与しない領域に保存的アミノ酸変更、アミノ酸変更を導入し、試験することにより、例えば、本明細書で使用される場合の共通軽鎖の定義の範囲内にある、同一ではないが、依然として機能的に等価である軽鎖を調製又は見出すことが可能である。用語「共通軽鎖」、「共通LC」、「cLC」、「単一軽鎖」は全て、用語「再編成された」が追加されているか又はされていないかに関わらず、本明細書では同義的に使用される。用語「共通軽鎖可変領域」、「共通VL」、「共通LCv」、「cLCv」、「単一VL」は全て、用語「再編成された」が追加されているか又はされていないかに関わらず、本明細書では同義的に使用される。二重特異性抗体は、結合特異性が異なる少なくとも2つ、好ましくは複数の重鎖(可変領域)と組み合わせると、機能性結合ドメインを有する抗体を形成することができる共通軽鎖(可変領域)を有することが、本発明の好ましい態様である(国際公開第2004/009618号パンフレット、国際公開第2009/157771号パンフレット、Merchantら、1998年及びNissimら、1994年)。共通軽鎖(可変領域)は、好ましくはヒト軽鎖(可変領域)である。共通軽鎖(可変領域)は、好ましくは生殖系配列を有する。好ましい生殖系配列は、ヒトレパートリーに高頻度で使用され、良好な熱力学的安定性、収率、及び溶解性を有する軽鎖可変領域である。好ましい生殖系軽鎖はO12である。共通軽鎖は、好ましくは、再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1ー39*01/IGJκ1*01(図1A)である。共通軽鎖可変領域は、好ましくは、再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01の可変領域である。共通軽鎖は、好ましくは、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する、図1B又は図1Dに示されるような軽鎖可変領域を含む。共通軽鎖は、好ましくは、軽鎖定常領域、好ましくはカッパ軽鎖定常領域を更に含む。共通軽鎖をコードする核酸は、共通軽鎖タンパク質を発現するために使用される細胞系用にコドン最適化されてもよい。コード核酸は、生殖系核酸配列とは異なっていてもよい。
【0173】
好ましい実施形態では、軽鎖は、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する、図1Aに示されるようなO12/IgVκ1-39*01遺伝子セグメントのアミノ酸配列を含む軽鎖領域を含む。語句「O12軽鎖」は、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する、図1Aに示されるようなO12/IgVκ1-39*01遺伝子セグメントのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖の略称として、明細書の全体にわたって使用されるだろう。IgVκ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子の略称である。この遺伝子は、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139、IGKV1-39、O12a、又はO12としても知られている。この遺伝子の外部Idは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930、Ensembl:ENSG00000242371である。IgVκ1-39の好ましいアミノ酸配列は、図1Eに示されている。これには、V領域の配列が列挙されている。V領域は、5つのJ領域の1つと組み合わせることができる。図1B及び図1Dには、J領域と組み合わされているIgVκ1-39の2つの好ましい配列が記載されている。接合された配列は、IGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5と表記されており、代替名称は、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01である(ワールドワイドウェブimgt.orgにおけるIMGTデータベースによる命名法)。
【0174】
軽鎖可変領域を含むO12/IgVκ1-39*01は生殖系配列であることが好ましい。軽鎖可変領域を含むIGJκ1*01又は/IGJκ5*01は、生殖系配列であることが更に好ましい。好ましい実施形態では、IGKV1-39/jk1又はIGKV1-39/jk5軽鎖可変領域は、生殖系配列である。
【0175】
好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、生殖系O12/IgVκ1-39*01を含む。好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01を含む。好ましい実施形態では、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01である。軽鎖可変領域は、好ましくは、生殖系カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又は生殖系カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ5*01、好ましくは生殖系IgVκ1-39*01/IGJκ1*01を含む。
【0176】
O12軽鎖を有する抗体を産生する成熟B細胞は、生殖系配列、つまり生物の非リンパ球細胞の通常配列に対して1つ又は複数の突然変異を起こしている軽鎖を産生することが多い。こうした突然変異の原因であるプロセスは、体細胞性(高頻度)突然変異と呼ばれることが多い。その結果生じた軽鎖は、親和性成熟軽鎖と呼ばれる。そのような軽鎖は、O12生殖系配列に由来する場合、O12由来軽鎖である。本明細書では、語句「O12軽鎖」は、O12由来軽鎖を含むことになる。無論、体細胞性高頻度突然変異により導入される突然変異は、実験室で人工的に導入することもできる。また、実験室では、質的であり、必ずしも量的ではない軽鎖の特性に影響を及ぼさずに、他の突然変異を導入することができる。軽鎖は、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する図1A図1B図1D、又は図1Eに示されるような配列を含む場合、少なくともO12軽鎖である。好ましい実施形態では、O12軽鎖は、0~9個、0~8個、0~7個、0~6個、0~5個、0~4個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する図1A図1B図1D、又は図1Eに示されるような配列を含む軽鎖である。好ましい実施形態では、O12軽鎖は、0~5個、好ましくは0~4個、より好ましくは0~3個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する図1A図1B図1D、又は図1Eに示されるような配列を含む軽鎖である。好ましい実施形態では、O12軽鎖は、0~2個、より好ましくは0~1個、最も好ましくは0個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する図1A図1B図1D、又は図1Eに示されるような配列を含む軽鎖である。好ましい実施形態では、O12軽鎖は、上述のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する図1A又は図1Bに示されるような配列を含む軽鎖である。好ましい実施形態では、軽鎖は、図1Aの配列を含む。好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、図1Bの配列を含む。
【0177】
共通軽鎖(可変領域)はラムダ軽鎖であってもよく、したがって本発明の状況ではこれも提供される。しかしながら、カッパ軽鎖が好ましい。本発明の共通軽鎖の定常部分は、カッパ又はラムダ軽鎖の定常領域であってもよい。本発明の共通軽鎖の定常部分は、好ましくはカッパ軽鎖の定常領域であり、好ましくは、上記共通軽鎖は、生殖系軽鎖、好ましくはIgVκl-39遺伝子セグメントを含む再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖、最も好ましくは再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκl-39*01/IGJκl*01(図1)である。再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01、IGKV1-39/IGκJ1、huVκ1-39軽鎖、又は略してhuVκ1-39、又は単に1-39という用語は、本出願の全体にわたって同義的に使用される。当業者であれば、「共通」は、アミノ酸配列が同一ではない軽鎖の機能的等価物も指すことを認識するだろう。上記軽鎖には、機能性結合領域の形成に影響を及ぼさない突然変異(欠失、置換、付加)が存在する多数の変異体が存在する。
【0178】
IgVκ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子の略称である。この遺伝子は、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139、IGKV1-39、O12a、又はO12としても知られている。この遺伝子の外部Idは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930、Ensembl:ENSG00000242371である。IgVκ1-39の好ましいアミノ酸配列は、図1に示されている。これには、V領域の配列が列挙されている。V領域は、5つのJ領域の1つと組み合わせることができる。図1には、J領域と組み合わされたIgVκ1-39の2つの好ましい配列が記載されている。接合された配列は、IGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5と表記されており、代替名称は、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01である(ワールドワイドウェブimgt.orgにおけるIMGTデータベースによる命名法)。
【0179】
共通軽鎖可変領域は、好ましくは、カッパ軽鎖定常領域に連結されている。好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01を含む。好ましい実施形態では、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01を含む。
【0180】
共通軽鎖を産生する細胞は、例えば、再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01、及びラムダ定常領域に融合された上述の軽鎖の可変領域を含む軽鎖を産生することができる。本明細書において生殖系配列が参照される場合、可変領域は生殖系配列であることが好ましい。
【0181】
本明細書に記載のような二重特異性抗体又はその変異体は、好ましくは、CD28ファミリーのメンバーの細胞外部分に結合する1つの重鎖可変領域/軽鎖可変領域(VH/VL)組合せ、及びB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14の細胞外部分に結合する第2のVH/VL組合せを有する。好ましい実施形態では、上記第1のVH/VL組合せのVLは、上記第2のVH/VL組合せのVLと類似している。より好ましい実施形態では、第1及び第2のVH/VL組合せのVLは同一である。好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、CD28ファミリーのメンバーの細胞外部分に結合する1つの重鎖/軽鎖(H/L)組合せ、及びB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14の細胞外部分に結合する1つのH/L鎖組合せを有する全長抗体である。好ましい実施形態では、上記第1のH/L鎖組合せの軽鎖は、上記第2のH/L鎖組合せの点で軽鎖と類似している。より好ましい実施形態では、第1及び第2のH/L鎖組合せの軽鎖は同一である。
【0182】
二重特異性抗体の産生に有利な、又はその逆に単一特異性抗体の産生に有利な幾つかの方法が発表されている。本発明では、細胞において、二重特異性抗体の産生が、対応する単一特異性抗体の産生よりも有利であることが好ましい。それは、典型的には、細胞において、ホモ二量体化よりもヘテロ二量体化(つまり、他の重鎖/軽鎖組合せの重鎖との二量体化)が有利となるように、重鎖の定常領域を修飾することにより達成される。好ましい実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの異なる免疫グロブリン重鎖を含む。種々の適合性ヘテロ二量体化ドメインは、当技術分野に記載されている。適合性ヘテロ二量体化ドメインは、好ましくは、適合性免疫グロブリン重鎖CH3ヘテロ二量体化ドメインである。野生型CH3ドメインが使用される場合、2つの異なる重鎖(A及びB)及び共通軽鎖の同時発現は、3つの異なる抗体種、AA、AB、及びBBをもたらすことになる。AA及びBBは、2つの単一特異性二価抗体を表し、ABは、二重特異性抗体を表す。所望の二重特異性産物(AB)のパーセンテージを増加させるためには、CH3遺伝子操作を使用することができ、又は言い換えれば、下記で定義されるような、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する重鎖を使用することができる。当技術分野には、重鎖のそのようなヘテロ二量体化を達成することができる種々の方法が記載されている。1つの方法は「ノブ-イントゥ-ホール(knob into hole)」二重特異性抗体を生成することである。国際公開第1998/050431号パンフレット(Arathoonら)を参照されたい。
【0183】
用語「適合性ヘテロ二量体化ドメイン」は、本明細書で使用される場合、遺伝子操作ドメインA'が、優先的に遺伝子操作ドメインB'とのヘテロ二量体を形成することになり、その逆も同様であり、A'-A間及びB'-B間のホモ二量体化が減少するように遺伝子操作されているタンパク質ドメインを指す。
【0184】
米国特許出願第13/866,747号明細書(現在は米国特許第9,248,181号として特許付与)、米国特許出願第14/081,848号明細書(現在は米国特許第9,358,286号として特許付与)、国際公開第2013/157953号パンフレット、及びPCT/NL2013/050294(国際公開第2013/157954号パンフレットとして公開)には、適合性ヘテロ二量体化ドメインを使用して二重特異性抗体を産生するための方法及び手段が開示されている。これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。こうした手段及び方法も、本発明において好ましく使用することができる。具体的には、本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、本質的に二重特異性全長IgG分子のみを産生するための突然変異を含む。好ましい突然変異は、第1のCH3ドメインのアミノ酸置換L351K及びT366K(EU付番)(「KK変異体」重鎖)並びに第2のドメインのアミノ酸置換L351D及びL368E(「DE変異体」重鎖)であるか、又はその逆である。DE変異体及びKK変異体が優先的に対合してヘテロ二量体を形成すること(いわゆる「DEKK」二重特異性分子)が、本発明者らの米国特許第9,248,181号明細書及び米国特許第9,358,286号明細書の特許並びに国際公開第2013/157954号パンフレットPCT出願において以前に示された。DE変異体重鎖のホモ二量体化(DEDEホモ二量体)は、同一重鎖間のCH3-CH3インターフェースの荷電残基間の反発のため、ほとんど生じない。
【0185】
二重特異性抗体は、軽鎖と、効率的なヘテロ二量体化及び二重特異性抗体の形成を保証するように遺伝子操作されたCH3である2つの異なる重鎖とをコードするプラスミドの(一過性)トランスフェクションにより生成することができる。単一細胞におけるこうした鎖の産生は、単一特異性抗体の形成よりも有利な二重特異性抗体の形成に結び付く。
【0186】
したがって、本発明による抗体又は変異体を単一細胞から産生するための方法であって、上記抗体又はその変異体は、インターフェースを形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、上記方法は、
- a)PD-1の細胞外部分を特異的に認識し、第1のCH3ドメインを含むIgG重鎖をコードする第1の核酸分子、及びb)PD-L1の細胞外部分を特異的に認識し、第2のCH3ドメインを含むIgG重鎖をコードする第2の核酸分子を有する細胞を準備する工程を含み、上記核酸配列には、上記第1及び第2のCH3ドメインの優先的対合のための突然変異が提供されており、上記方法は、上記細胞を培養する工程、及び上記核酸配列の発現を可能にする工程、及び上記抗体又はその変異体を上記培養から回収する工程を更に含む方法が更に提供される。一部の好ましい実施形態では、上記細胞は、共通軽鎖、好ましくは再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01をコードする第3の核酸配列を有する。
【0187】
本質的に二重特異性全長IgG1分子のみを産生するための好ましい突然変異は、第1のCH3ドメインの351位及び366位におけるアミノ酸置換、例えばL351K及びT366K(EU付番による付番)(「KK変異体」重鎖)及び第2のCH3ドメインの351位及び368位におけるアミノ酸置換、例えばL351D及びL368E(「DE変異体」重鎖)であるか、又はその逆である。したがって、本発明による抗体又は変異体を単一細胞から産生するための本発明による方法であって、上記第1のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351K及びL366K(EU付番による付番)を含み、上記第2のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351D及びL368E(EU付番による付番)を含み、上記細胞を培養する工程、及び上記核酸配列の発現を可能にする工程、及び上記抗体又はその変異体を上記培養から回収する工程を更に含む方法が更に提供される。
【0188】
一実施形態では、PD-1に結合する可変ドメインを含む重鎖/軽鎖組合せは、重鎖のDE変異体を含む。この実施形態では、PD-1以外の抗原に結合することができる可変ドメインを含む重鎖/軽鎖組合せは、重鎖のKK変異体を含む。
【0189】
Fc領域は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存細胞性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)等の、抗体のエフェクター機能を媒介する。療法用抗体又はFc融合タンパク質の応用に応じて、エフェクター機能の低減又は増加のいずれかが望ましい場合がある。本発明では、エフェクター機能の低減が好ましい。本発明の実施形態の一部と同様に、免疫応答を活性化、増強、又は刺激しようとする場合、エフェクター機能の低減が望ましい。エフェクター機能が低減されている抗体を使用して、中でも、免疫細胞の細胞表面分子を標的とすることができる。
【0190】
IgGとFcγR又はC1qとの結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基を必要とすることが見出された。CH2ドメインの2つの領域(図2D)は、FcγR及びC1q結合に関連する。233位~236位のIgG2残基並びに327位、330位、及び331位のIgG4残基のヒトIgG1への置換は、ADCC及びCDCを大幅に低減することが示された(Armourら、1999年、Eur J Immunol.、29巻(8号):2613~24頁;Shieldsら、2001年、J Biol Chem.、276巻(9号):6591~604頁)。更に、Idusogieらは、K322を含む、異なる位置におけるアラニン置換が、補体活性化を著しく低減することを示した(Idusogieら、2000年、J Immunol.、164巻(8号):4178~84頁)。
【0191】
IgG4抗体は、それらのエフェクター機能が低減されているため、細胞を枯渇させずに受容体を阻止するためのIgGサブクラスである。IgG4分子は、Fabアーム交換と名付けられる動力学的プロセスにおいて分子の半分を交換することができる。この現象は、療法用抗体と内因性IgG4との間で生じる場合がある。S228P突然変異は、Fabアーム交換の能力低減を保証する突然変異の例である。(Labrijnら、2009年、Nat Biotechnol.、27巻(8号):767~71頁)。
【0192】
エフェクター機能が低減されている抗体は、好ましくは、例えばFc受容体相互作用を低減するか又はC1q結合を低減するように修飾されたCH2/下部ヒンジ領域を含むIgG抗体である。一部の実施形態では、本発明の抗体は、突然変異体CH2及び/又は下部ヒンジドメインを有し、二重特異性IgG抗体とFcガンマ受容体との相互作用が低減されているIgG抗体である。突然変異体CH2領域を含む抗体は、好ましくは、IgG1抗体である。そのような突然変異体IgG1 CH2及び/又は下部ヒンジドメインは、好ましくは、235位及び/又は236位(EU付番)におけるアミノ置換、好ましくはL235G及び/又はG236R置換を含む(図2E)。
【0193】
本明細書に記載のような抗体又は二重特異性抗体の変異体は、抗体又は二重特異性抗体の機能性部分、誘導体、及び/又は類似体を含んでいてもよい。変異体は、典型的には、二重特異性抗体等の抗体の結合特異性を維持する。変異体は、典型的には、二重特異性抗体等の抗体の結合特異性を維持する。変異体は、好ましくは、本明細書に記載のような抗体又は二重特異性抗体の機能性部分又は誘導体である。変異体は、好ましくは機能性部分である。
【0194】
結合特異性は、CD28ファミリーのメンバーの細胞外部分及びB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14の細胞外部分に結合する能力により規定され、この場合、メンバーは結合パートナー(つまり、受容体リガンド対)である。
【0195】
本明細書に記載のような抗体の機能性部分又は好ましくは二重特異性抗体の機能性部分は、CD28ファミリーのメンバー、好ましくはPD-1の細胞外部分に結合する可変ドメイン、及びB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14、好ましくはPD-L1の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む部分である。好適な部分は、例えば、ペプシンによる二重特異性抗体の消化により生成されるようなF(ab')2断片である。上記可変ドメインを含む他の部分は、本発明に含まれる。
【0196】
本明細書に記載のような抗体の機能性誘導体又は好ましくは二重特異性抗体の機能性誘導体は、CD28ファミリーのメンバー、好ましくはPD-1の細胞外部分に結合する可変ドメイン、及びB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14、好ましくは連結領域により連結されているPD-L1の細胞外部分に結合する可変ドメインを含むタンパク質である。可変ドメインは、Fab断片等の可変ドメイン、又はリンカーを介して互いに連結されているVH及びVLを含む単鎖Fv断片等の可変ドメイン様分子であってもよい。可変ドメイン様分子の他の例は、いわゆる単一ドメイン抗体断片である。単一ドメイン抗体断片(sdAb)は、単一の単量体可変抗体領域を有する抗体断片である。これは、抗体全体の場合と同様に、特定の抗原と選択的に結合することができる。単一ドメイン抗体断片は、わずか12~15kDaの分子量しか有しておらず、2つの重鎖タンパク質及び2つの軽鎖で構成される一般的な抗体(150~160kDa)よりもはるかに小型であり、Fab断片(約50kDa、1つの軽鎖及び重鎖の半分)及び単鎖可変断片(約25kDa、2つの可変領域、1つは軽鎖由来であり、1つは重鎖由来である)よりもさえ小型である。単一ドメイン抗体自体は、通常抗体(典型的には90~100kDaである)と比べて、それほど小型ではない。単一ドメイン抗体断片は、ほとんどが、ラクダに見出される重鎖抗体から遺伝子操作されており、それらはVHH断片(ナノボディ(登録商標))と呼ばれる。また、一部の魚類は、重鎖のみの抗体(IgNAR、「免疫グロブリン新抗原受容体(immunoglobulin new antigen receptor)」)を有し、それらからVNAR断片と呼ばれる単一ドメイン抗体断片を得ることができる。代替手法は、ヒト又はマウスに由来する一般的な免疫グロブリンG(IgG)に由来する二量体可変ドメインを単量体へと分断することである。現在、単一ドメイン抗体に関するほとんどの研究は、重鎖可変ドメインに基づくが、軽鎖に由来するナノボディも、標的エピトープに特異的に結合することが示されている。可変ドメイン様分子の他の非限定的な例は、VHH、ヒトドメイン抗体(dAb)、及びユニボディ(Unibody)である。好ましい機能性部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む可変ドメインを含む部分である。そのような可変ドメインの非限定的な例は、F(ab)断片及び単鎖Fv断片である。可変ドメイン(様)連結のための二重特異性フォーマットは、例えば、2つの異なるscFvに結合されたヒト血清アルブミン(Albumine)(HSA)、scFv断片の二量体化をもたらす二量体化モチーフ又はヘリックスバンドル若しくはコイルドコイル等の自己会合性二次構造により互いに結合されている2つの異なるscFvを含む二重特異性ミニ抗体である(Morrison、(2007年)、Nat. Biotechnol、25巻:1233~34頁)。好適なHSAリンカー及びscFvをリンカーにカップリングするための方法の例は、国際公開第2009/126920号パンフレットに記載されている。
【0197】
本明細書に記載のような抗体の機能性類似体又は好ましくは二重特異性抗体の機能性類似体は、CD28ファミリーのメンバー、好ましくはPD-1の細胞外部分に対する結合部位、及びB7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14、好ましくはPD-L1の細胞外部分に対する結合部位を含む分子である。機能性誘導体は、抗体模倣体、ポリペプチド、アプタマー、又はそれらの組合せであってもよい。こうしたタンパク質又はアプタマーは、典型的には1つの標的に結合する。本発明のタンパク質は、2つ又はそれよりも多くの標的に結合する。そうした抗体、抗体模倣体、ポリペプチド、及びアプタマーの任意の組合せは、当技術分野で公知の方法により互いに連結することができることが理解されるべきである。例えば、一部の実施形態では、本発明の結合分子は、コンジュゲート又は融合タンパク質である。抗体の場合、通常の単一特異性抗体と同じ全体的構造を有するが、抗体の2つのアームが各々異なる標的に結合する二重特異性抗体をも含む多重特異性抗体を製作するための技術が進歩している。
【0198】
抗体模倣体は、抗体と同様に、抗原に特異的に結合することができるが、構造的には抗体と関連しないポリペプチドである。抗体模倣体は、通常は、約3~20kDaのモル質量を有する人工ペプチド又はタンパク質である。抗体に優る一般的な利点は、より良好な溶解性、組織透過性、熱及び酵素に対する安定性、及び比較的低い生産コストである。抗体模倣体の非限定的な例は、アフィボディ分子(典型的にはプロテインAのZドメインに基づく)、アフィリン(affilin)(典型的にはガンマ-Bクリスタリン(crystalline)又はユビキチンに基づく)、アフィマー(affimer)(典型的にはシスタチンに基づく)、アフィチン(affitin)(典型的にはスルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)に由来するSac7dに基づく)、アルファボディ(alphabody)(典型的には三重らせんコイルドコイルに基づく)、アンチカリン(anticalin)(典型的にはリポカリンに基づく)、アビマー(avimer)(典型的には、種々の膜受容体のAドメインに基づく)、DARPin(典型的にはアンキリンリピートモチーフに基づく)、フィノマー(fynomer)(典型的にはFyn 7のSH3ドメインに基づく)、クニッツドメインペプチド(kunitz domain peptide)(典型的には種々のプロテアーゼ阻害剤のクニッツドメインに基づく)、及びモノボディ(monobody)(典型的にはフィブロネクチンのIII型ドメインに基づく)である。
【0199】
モノボディは、分子スキャフォールドとしてフィブロネクチンIII型ドメイン(FN3)を使用して構築される合成結合タンパク質である。モノボディは、標的結合タンパク質を生成するための、単純でロバストな抗体代替物である。用語「モノボディ」は、ヒトフィブロネクチンの10番目のFN3ドメインを使用してモノボディ概念が実証された最初の論文を発表したKoideグループにより1998年に造語された。
【0200】
モノボディ及び他の抗体模倣体は、典型的には、スキャフォールドの部分が、ファージディスプレイ、mRNAディスプレイ、及び酵母表面ディスプレイ等の分子ディスプレイ及び定向進化技術を使用して多様化されたコンビナトリアルライブラリーから生成される。多数の抗体模倣体が、それらの対応する標的に対して高親和性及び高特異性を有する。
【0201】
アプタマーは、特定の標的分子に結合するオリゴヌクレオチド又はペプチド分子である。アプタマーは、通常、大規模ランダム配列プールからそれらを選択することにより生成されるが、天然アプタマーはリボスイッチにも存在する。アプタマーは、巨大分子として基礎研究及び臨床目的の両方に使用することができる。
【0202】
本明細書で使用される場合、用語「コンジュゲート」は、共有結合で、任意選択でリンカーとも呼ばれる連結領域により接合されている2つ又はそれよりも多くの分子を指す。例えば、一部の実施形態では、コンジュゲートは、連結領域により第2のタンパク質又は非タンパク質部分に接合された第1のタンパク質又は非タンパク質部分である。例えば、本発明の結合分子の一部の実施形態では、コンジュゲートは、共有結合で接合されている2つ又はそれよりも多くの抗体を含むか又はからなる。コンジュゲートは、第1及び第2の部分に限定されず、一部の実施形態では、更なる連結領域により接合された第3、第4、又はそれよりも多くの部分を更に有してもよい。本出願の他所に記載されているように、タンパク質部分の例としては、これらに限定されないが、ポリペプチド、ペプチド模倣体、又は抗体(又は本出願の他所に記載のような抗体部分、誘導体、又は類似体)が挙げられる。非タンパク質部分の例としは、これに限定されないが、アプタマーが挙げられる。多数のタイプのリンカーを使用することができ、リンカーは、コンジュゲート中にある分子タイプ及びリンカーの所望の特性(長さ、可撓性、プロテアーゼ活性に対する耐性、及び他の類似の特徴)に応じて適切に選択されることになる。そのようなリンカーは、ヌクレオチド、ポリペプチド、又は好適な合成物質を含んでいてもよい。例えば、リンカーは可撓性ペプチドリンカーであってもよい。ある特定の実施形態では、リンカーは、コンジュゲートの部分を互いに分離することが可能である切断可能なリンカーであってもよい。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、ヘリカルリンカーであってもよい。タンパク質及び他の分子を連結するための種々の例及びキットが、当技術分野で公知である。本明細書で使用される場合、用語「融合タンパク質」は、組換えによりDNAレベルで接合されており、単一ポリペプチドとして共に発現される2つ又はそれよりも多くのポリペプチド又はタンパク質を含むタンパク質を指す。また、融合タンパク質は、これもDNAによりコードされ、融合タンパク質と共に発現されるペプチド連結領域を含んでいてもよい。融合タンパク質の部分であるペプチドリンカーは、可撓性、親水性、プロテアーゼ耐性、切断性等の特定の特徴を有するように設計されてもよい。こうした特性は全て、DNA配列内に設計することができ、リンカーの設計方法は、当技術分野で周知である。例えば、抗体を、当技術分野で周知の及び本明細書に記載の方法により共に連結して、二重特異性又は多重標的指向性抗体を形成することができる。更に、二重特異性抗体は、当技術分野で公知の種々の方法により、例えば、BiClonics(登録商標)等の技術を使用することにより構築することができる。二重特異性モノクローナル抗体(BsMAb、BsAb)は、典型的には、2つの異なるモノクローナル抗体の結合ドメインを含み、したがって、2つの異なるエピトープに結合する。Biclonics(登録商標)分子は、しかしながら他の全長IgG二重特異性抗体も、scFvのFabの全長IgG分子の2つの異なる可変領域によりコードされる2つの異なる抗原結合特異性を有する。Biclonics(登録商標)は、本明細書の他所で詳述されるような2つの異なる共通軽鎖(cLC)抗体をコードする遺伝子構築体による個々の細胞の同時トランスフェクションにより産生することができる。CH3遺伝子操作により、効率的なヘテロ二量体化及び本質的に純粋な二重特異性抗体の形成が保証される。
【0203】
また、本発明は、薬剤として使用するための本発明による抗体又は変異体を提供する。更に、がん、又はウイルス若しくは寄生虫等の病原体による感染症を治療するための方法に使用するための本発明による抗体又は変異体が提供される。
【0204】
また、本発明は、がんを有する個体を治療するための方法であって、それを必要とする個体に、二重特異性抗体等の本発明の抗体又は変異体等のその変異体を投与する工程を含む方法を提供する。個体は、好ましくは、がんを有する個体である。一部の実施形態では、がんは、上記第2の膜タンパク質を発現するがん細胞を含むがんである。好ましい実施形態では、がんは、B7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14を発現するがん細胞を含むがんである。がんは、好ましくは腺癌である。好ましいがんは、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、黒色腫、精巣がん、尿路上皮がん、腎臓がん、胃がん、又はカルチノイドがんである。好ましい実施形態では、がんは、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、又は黒色腫である。特に好ましい実施形態では、がんは、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、又は肝臓がんである。特に好ましい実施形態では、がんは消化管がんである。好ましい実施形態では、がんは結腸直腸がんである。この実施形態では、抗体又はその変異体は、好ましくは、PD-1に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1に結合することができる可変ドメインを有する抗体である。可変ドメインは、好ましくは、各々がPD-1とPD-L1との結合を阻止する。
【0205】
本発明による抗体又は変異体及び第1の細胞及び第2の細胞を含むex vivo系が更に提供される。第1及び第2の細胞は、好ましくは、それぞれ上記第1及び上記第2の膜タンパク質を細胞膜上に発現する。系は、好ましくは、上記第1の細胞の維持及び/又は成長に好適な細胞系である。細胞系は、好ましくは、上記第2の細胞の維持及び/又は成長に好適である。そのような系は、例えば、異常細胞に向けて方向付けられる免疫細胞の産生及び/又は増加に好適である。そのような免疫細胞は、その後、それを必要とする個体、例えばがん患者に投与することができる。免疫細胞は、好ましくは、T細胞又はNK細胞、好ましくは細胞毒性T細胞を含む。免疫細胞は、好ましくは、それを必要とする個体に対して自家性である。
【0206】
更に、個体の異常細胞に対する上記個体の免疫応答を誘導及び/又は刺激するための方法であって、上記個体に、本発明の抗体又はその変異体を提供する工程を含む方法が提供される。異常細胞は、好ましくは、がん細胞、ウイルス感染細胞、寄生虫、又は寄生虫感染細胞である。好ましい実施形態では、細胞は、がん細胞又は新生細胞である。この実施形態では、抗体又はその変異体は、好ましくは、PD-1に結合することができる可変ドメイン及びPD-L1に結合することができる可変ドメインを有する抗体である。可変ドメインは、好ましくは、各々がPD-1とPD-L1との結合を阻止する。
【0207】
新生物は、組織の異常成長であり、固塊を形成する場合、一般的に腫瘍とも呼ばれる。本発明の新生物は、典型的には固塊を形成する。新生細胞は、固塊を形成した新生物に由来する細胞である。世界保健機構(WHO)は、新生物を4つの主要なグループ:良性新生物、in situ新生物、悪性新生物、及び挙動が不明確又は未知の新生物に分類している。悪性新生物は、単にがんとしても知られている。
【0208】
免疫応答の誘導及び/又は刺激は、免疫応答を誘導すること及び既に存在する免疫応答を増強することを包含する。個体の免疫応答は、該当する場合、個体の腫瘍負荷、個体のウイルス負荷、個体の寄生虫負荷を測定することにより測定することができる。
【0209】
上記ウイルス感染細胞は、好ましくは、免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス、好ましくは単純ヘルペスウイルス、水痘-帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、又はエプスタインバーウイルス、パピローマウイルス、ヘパティス(hepatis)ウイルス、好ましくはA型、B型、若しくはC型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、又はアデノウイルスに感染した細胞である。ウイルスは、好ましくは、個体中で持続することができることが知られているウイルスである。持続感染は、ウイルスが除去されないが、感染個体の特定細胞に残存するものであると特徴付けられる。持続感染は、静止感染及び増殖性感染の両方の段階を含むことができ、宿主細胞を迅速に死滅させず、又は宿主細胞の過度の損傷をさえもたらさない。持続的ウイルス-宿主相互作用は、潜伏感染、慢性感染、及び/又は遅延感染であってもよい。
【0210】
寄生虫感染細胞は、細胞内寄生虫に感染した細胞である。そのような寄生虫は、宿主の細胞内部で成長及び繁殖することが可能な寄生微生物である。一部の細胞内寄生虫は、細胞の外部でも生存することができる。そのような寄生虫は、いわゆる通性細胞内寄生虫である。非限定的な例は、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、レジオネラ(Legionella)、ミコバクテリウム(mycobacterium)のある特定の種、及びクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)である。好ましい細胞内寄生虫は、宿主細胞の外部で成長することができない寄生虫であり、好ましい例は、クラミジア(Chlamydia)及び近縁種、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)等のミコバクテリウムのある特定の種、アピコンプレクサ類(Apicomplexan)(プラスモジウム(Plasmodium spp.)種、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、及びクリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、及びトリパノソマチド(trypanosomatid)を含むある特定の原生動物である。
【0211】
本発明の抗体若しくはその変異体又は好ましくは二重特異性抗体若しくはその変異体は、好ましくはヒトに使用される。そのため、本発明の抗体又はその変異体は、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体である。ポリペプチドに対するヒトの寛容性は、多数の異なる局面により左右される。免疫は、T細胞媒介性であれ、B細胞媒介性であれ、又はその他のものであれ、ポリペプチドに対するヒトの寛容性に包含される変数の1つである。好ましくは、本発明の二重特異性抗体の定常領域は、好ましくは図2に示されるような配列を含むヒト重鎖定常領域、及び好ましくは図1Cに示されるような配列を含むヒト軽鎖定常領域を含む。定常領域は、天然に存在するヒト抗体の定常領域と比べて、1個又は複数の、好ましくは10個以下の、好ましくは5個以下のアミノ酸差異を含んでいてもよい。定常部分は全体が、天然に存在するヒト抗体に由来することが好ましい。本明細書で産生される種々の抗体は、国際公開第2009/157771号パンフレットに記載のような、対応する標的で免疫された共通軽鎖マウスに由来する。本明細書で産生される種々の抗体は、ヒト抗体可変ドメインライブラリーに由来する。したがって、そうした可変ドメインはヒトである。固有CDR領域は、ヒト由来であってもよく、合成であってもよく、又は別の生物に由来してもよい。可変領域は、CDR領域を除いて、天然に存在するヒト抗体の可変領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する場合、少なくともヒト可変領域である。そのような実施形態では、CD28ファミリーメンバー又はB7ファミリーの膜結合メンバー若しくはTNFRSF14に結合する抗体の可変ドメインのVH、又は本発明の抗体の軽鎖は、CDR領域のアミノ酸配列における考え得る差異は数えずに、天然に存在するヒト抗体の可変領域と比べて、1個又は複数の、好ましくは10個以下の、好ましくは5個以下のアミノ酸差異を含んでいてもよい。そのような突然変異は、自然界では、体細胞性高頻度突然変異の状況でも生じる。
【0212】
抗体は、少なくとも重鎖可変領域に関しては、種々の動物種に由来してもよい。そのような、例えばマウス重鎖可変領域をヒト化することは、よく行われていることである。これを達成することができる方法は種々のものが存在する。それらの中には、以下のものがある:マウス重鎖可変領域の3D構造と一致する3D構造を有するヒト重鎖可変領域へのCDR移植、好ましくはマウス重鎖可変領域から既知の又は推測されるT-又はB-細胞エピトープを除去することにより行われるマウス重鎖可変領域の脱免疫化。除去は、典型的には、エピトープ内のアミノ酸の1つ又は複数を、別の(典型的には保存的な)アミノ酸に置換して、エピトープの配列が、もはやT-又はB細胞エピトープではなくなるように修飾することによる。
【0213】
脱免疫化マウス重鎖可変領域は、元のマウス重鎖可変領域ほどヒト免疫原性ではない。好ましくは、本発明の可変領域又はドメインは、例えばベニアリング等で、更にヒト化されている。ベニアリング技法を使用することにより、免疫系と直ちに遭遇する外面残基がヒト残基と選択的に置き換えられ、免疫原性が弱いか又は実質的に非免疫原性のいずれかであるベニアリング表面を含むハイブリッド分子がもたらされる。動物は、本発明で使用される場合、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくは霊長類であり、最も好ましくはヒトである。
【0214】
本発明による抗体又は二重特異性抗体又はそれらの変異体は、好ましくは、ヒト抗体の定常領域を含む。それらの重鎖定常ドメインにおける差異に従って、抗体は、5つのクラス又はアイソタイプ:IgG、IgA、IgM、IgD、及びIgEに分類される。こうしたクラス又はアイソタイプは、対応するギリシャ文字で指定される上記重鎖の少なくとも1つを含む。好ましい実施形態では、本発明は、本発明による抗体であって、上記定常領域がIgG定常領域の群から選択される、つまり、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される抗体を提供する。好ましくは、上記定常領域は、IgG4又はIgG1定常領域(図2)であり、より好ましくは突然変異IgG1定常領域である。IgG1の定常領域では、その結果生じる抗体の免疫学的特性を変更せずに、ある程度の変異が自然に生じるか及び/又は許容される。典型的には、定常領域では約1~10個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せが許容される。効率的なヘテロ二量体化を可能にするために、エフェクター機能を低減するために、又は半減期及び安定性等を含む他の理由のために、定常領域を、本明細書で示されるように突然変異させてもよい。
【0215】
ヒト状況における非ヒト残基の含有量を最小限に抑えるための理論的根拠に基づく方法が発展している。種々の方法を利用して、抗体の抗原結合特性を別の抗体へと首尾良く移植することが可能である。抗体の結合特性は、主にCDR3領域の正確な配列にあり、多くの場合、可変ドメイン全体の適切な構造と組み合わされた可変ドメインのCDR1領域及びCDR2領域の配列により支援される場合がある。現在、種々の方法を利用して、CDR領域を別の抗体の好適な可変ドメインに移植することが可能である。こうした方法の一部は、J.C.Almagro1及びJ.Fransson(2008年)Frontiers in Bioscience、13巻、1619~1633頁に概説されている。この文献は、参照により本明細書に含まれる。
【0216】
図3及び/又は図13に示されるような可変重鎖配列を含む可変ドメインの軽鎖可変領域は、好ましくはO12の又はO12に基づく生殖系軽鎖、好ましくは再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はそれらの断片若しくは機能性誘導体である(ワールドワイドウェブimgt.orgにおけるIMGTデータベースによる命名法)。再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01、IGKV1-39/IGKJ1、huVκ1-39軽鎖、又は略してhuVκ1-39という用語が使用される。軽鎖は、1、2、3、4、又は5つのアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有してもよい。上述の1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換であり、挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せは、好ましくは、VL鎖のCDR3領域には存在せず、好ましくは、VL鎖のCDR1、CDR2、若しくはCDR3領域、又はFR4領域には存在しない。共通軽鎖の好ましい配列は、図1に示されている。
【0217】
種々の方法を利用して、二重特異性抗体を産生することが可能である。1つの方法は、2つの異なる重鎖及び2つの異なる軽鎖を細胞内で発現させる工程、及び細胞により産生された抗体を収集する工程を含む。このようにして産生された抗体は、典型的には、異なる組合せの重鎖及び軽鎖を有し、それらの一部が所望の二重特異性抗体である抗体のコレクションを含むことになる。その後、コレクションから二重特異性抗体を精製することができる。細胞により産生される二重特異性抗体の他の抗体に対する比を、種々の様式で増加させることができる。本発明の好ましい実施形態では、2つの異なる軽鎖ではなく、2つの本質的に同一の軽鎖を細胞で発現させることより、この比を増加させる。2つの本質的に同一の軽鎖は、本質的に同じ軽鎖可変領域及び異なる軽鎖定常領域又は好ましくは2つの本質的に同一の軽鎖定常領域を有する軽鎖であってもよい。この概念は、当技術分野では「共通軽鎖」法とも呼ばれる。本質的に同一の軽鎖が、2つの異なる重鎖と共に働いて、異なる抗原結合部位及びそれに伴って異なる結合特性を有する可変ドメインの形成を可能する場合、細胞により産生される二重特異性抗体の他の抗体に対する比は、2つの本質的に異なる軽鎖の発現よりも著しく向上する。細胞により産生される二重特異性抗体の比は、2つの同一の重鎖の対合よりも、2つの異なる重鎖の互いの対合を刺激することにより更に向上させることができる。当技術分野には、重鎖のそのようなヘテロ二量体化を達成することができる種々の様式が記載されている。好ましい方法は、米国特許仮出願第61/635,935号明細書に記載されており、その後、米国通常出願第13/866,747号明細書及びPCT出願PCT/NL2013/050294号パンフレット(国際公開第2013/157954号A1パンフレット)がそれに続いている。これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。二重特異性抗体を産生する(単一細胞から)ための方法及び手段であって、単一特異性抗体の形成よりも二重特異性抗体の形成を有利にする手段が提供される方法及び手段が開示されている。こうした方法も、本発明にて好ましく使用することができる。したがって、本発明は、本発明による二重特異性抗体を産生する(単一細胞から)ための方法であって、上記二重特異性抗体は、インターフェースを形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、上記方法は、上記細胞に、a)重鎖を含む第1のCH3ドメインをコードする第1の核酸分子、及びb)重鎖を含む第2のCH3ドメインをコードする第2の核酸分子を提供する工程を含み、上記核酸分子には、重鎖を含む上記第1及び第2のCH3ドメインの優先的対合のための手段が提供されており、上記方法は、上記宿主細胞を培養する工程、及び上記2つの核酸分子の発現を可能にする工程、及び上記二重特異性抗体を上記培養から回収する工程を更に含む方法を提供する。上記第1及び第2の核酸分子は、同じ核酸分子、ベクター、又は遺伝子送達媒体の一部であってもよく、宿主細胞ゲノムの同じ部位に組み込まれてもよい。或いは、上記第1及び第2の核酸分子は、上記細胞に別々に提供される。宿主細胞は、少なくとも1つの軽鎖、好ましくは共通軽鎖を含む。
【0218】
好ましい実施形態は、本発明による二重特異性抗体を単一細胞から産生するための方法であって、上記二重特異性抗体は、インターフェースを形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、上記方法は、
- a)CD28ファミリーの膜結合メンバーの細胞外部分に結合することができる抗原結合部位を含み、第1のCH3ドメインを含む重鎖をコードする第1の核酸分子、及びb)B7ファミリーの膜結合メンバー又はTNFRSF14の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位を含み、第2のCH3ドメインを含む重鎖をコードする第2の核酸分子を有する細胞を準備する工程を含み、上記核酸分子には、上記第1及び第2のCH3ドメインの優先的対合のための手段が提供されており、
上記方法は、上記細胞を培養する工程、及び上記2つの核酸分子によりコードされるタンパク質の発現を可能にする工程、及び上記二重特異性IgG抗体を上記培養から回収する工程を更に含む方法を提供する。特に好ましい実施形態では、上記細胞は、共通軽鎖をコードする第3の核酸分子を更に有する。上記第1、第2、及び第3の核酸分子は、同じ核酸分子、ベクター、又は遺伝子送達媒体の一部であってもよく、宿主細胞ゲノムの同じ部位に組み込まれてもよい。或いは、上記第1、第2、及び第3の核酸分子は、上記細胞に別々に提供される。好ましい共通軽鎖は、O12に基づき、好ましくは、上記に記載のような、再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1 39*01/IGJκ1*01である。上記第1及び上記第2のCH3ドメイン優先的対合のための手段は、好ましくは、重鎖コード領域のCH3ドメインにおける対応する突然変異である。本質的に二重特異性抗体のみを産生するための好ましい突然変異は、第1のCH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351K及びT366K(EU付番による付番)及び第2のCH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351D及びL368Eであるか、又はその逆である(図2)。したがって、二重特異性抗体を産生するための本発明による方法であって、上記第1のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351K及びL366K(EU付番による付番)を含み、上記第2のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351D及びL368Eを含み、上記方法は、上記細胞を培養する工程、及び上記核酸分子によりコードされるタンパク質の発現を可能にする工程、及び上記二重特異性抗体を上記培養から回収する工程を更に含む方法が更に提供される。また、二重特異性抗体を産生するための本発明による方法であって、上記第1のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351D及びL368E(EU付番による付番)を含み、上記第2のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351K及びT366Kを含み、上記方法は、上記細胞を培養する工程、及び上記核酸分子の発現を可能にする工程、及び上記二重特異性抗体を上記培養から回収する工程を更に含む方法が提供される。こうした方法により産生することができる抗体も、本発明の一部である。CH3ヘテロ二量体化ドメインは、好ましくは、IgG1ヘテロ二量体化ドメインである。CH3ヘテロ二量体化ドメインを含む重鎖定常領域は、好ましくは、IgG1定常領域である。
【0219】
また、本発明は、本発明による抗体重鎖可変領域の少なくとも一部をコードする核酸分子を提供する。本明細書には、本発明による抗体又は変異体の少なくとも1つのCDR領域をコードする、少なくとも15個ヌクレオチドの長さを有する核酸分子が提供される。更に、本発明による抗体又は変異体の少なくとも重鎖可変領域をコードする核酸分子が提供される。
【0220】
核酸分子(典型的には、in vitroの単離又は組換え核酸分子)は、好ましくは、図3及び/若しくは図13に示されるような重鎖可変領域又は1、2、3、4、若しくは5つのアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組合せを有する図3及び/若しくは図13に示されるような重鎖可変領域のいずれか1つをコードする。一部の実施形態は、本発明による抗体又は変異体をコードする核酸分子を提供する。核酸分子には、好ましくは、使用される抗体産生細胞での発現に最適化されているコドンが使用される。好ましくは、図3及び/若しくは図13に示されるような重鎖可変領域、又は1、2、3、4、若しくは5つのアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組合せを有する図3及び/若しくは図13に示されるような重鎖可変領域をコードする核酸は、ヒト細胞、好ましくはPer.C6(商標)又はチャイニーズハムスター細胞、好ましくはCHOでの発現にコドン最適化されている。本発明は、図2の重鎖定常領域と共に上述の重鎖可変領域をコードする核酸分子を更に提供する。
【0221】
核酸分子は、本発明で使用される場合、典型的には、しかながら排他的にではないが、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)である。当業者であれば、例えばロックド核酸(LNA)及びペプチド核酸(PNA)等の代替核酸が利用可能である。
【0222】
更に、本発明による核酸分子を含むベクターが提供される。
【0223】
本発明による核酸分子は、例えば細胞に含まれる。上記核酸分子が上記細胞で発現されると、上記細胞は、本発明による抗体又は変異体を産生することができる。したがって、本発明は、一実施形態では、本発明による抗体又は変異体及び/又は本発明による核酸分子及び/又は本発明によるベクターを含む細胞を提供する。上記細胞が重鎖及び軽鎖を産生すると、抗体が産生される。本発明の抗体を産生することができる細胞が提供される。細胞は、好ましくは、共通軽鎖と組み合わせると上記第1の膜タンパク質に結合することができる抗体重鎖可変領域を含む抗体重鎖をコードする核酸分子を含む。上記細胞は、好ましくは、共通軽鎖と組み合わせると上記第2の膜タンパク質に結合することができる抗体重鎖可変領域を含む抗体重鎖をコードする核酸分子を更に含む。上記細胞は、好ましくは、共通軽鎖をコードする核酸分子を更に含む。上記細胞は、好ましくは動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは霊長類細胞、最も好ましくはヒト細胞である。本発明の目的では、好適な細胞は、好ましくは、本発明による抗体及び/又は本発明による核酸を含むことが可能であり、好ましくは産生することが可能である任意の細胞である。
【0224】
本発明は、本発明による抗体を含む細胞を更に提供する。また、本発明の抗体を単独で又は共にコードする1つ又は複数の核酸分子を含む細胞が提供される。1つ又は複数の核酸分子は、発現可能な核酸分子であり、これは、タンパク質コードドメインのRNA転写及び翻訳に必要なシスシグナルを含むことを意味する。好ましくは、上記細胞(典型的にはin vitroの単離又は組換え細胞)は、上記抗体を産生する。好ましい実施形態では、上記細胞は、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、又はPER-C6(商標)細胞である。特に好ましい実施形態では、上記細胞はCHO細胞である。更に、本発明による細胞を含む細胞培養が提供される。種々の機関及び会社により、例えば臨床に使用するための抗体を大規模生産するための細胞株が開発されている。そのような細胞株の非限定的な例は、CHO細胞、NS0細胞、又はPER.C6(商標)細胞である。こうした細胞は、タンパク質の産生等の他の目的にも使用される。タンパク質及び抗体の工業規模生産のために開発された細胞株は、本明細書では、工業細胞株とも呼ばれる。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、本発明の抗体を産生するための、抗体の大規模生産のために開発された細胞株の使用を提供する。本発明は、図3図13図1及び/又は図2に示されるようなVH、VL、及び/又は重鎖をコードする核酸分子を含む抗体を産生するための細胞を更に提供する。好ましくは、上記核酸分子は、図1及び図2に示されるような配列を含む。
【0225】
本発明は、抗体を産生するための方法であって、本発明の細胞を培養する工程、及び上記抗体を上記培養から回収する工程を含む方法を更に提供する。好ましくは、上記細胞は、無血清培地で培養される。好ましくは、上記細胞は、懸濁成長に適合している。更に、本発明による抗体を産生するための方法により取得可能な抗体が提供される。抗体は、好ましくは、培養の培地から精製される。好ましくは、上記抗体は、親和性精製される。
【0226】
本発明の細胞は、臨床目的の抗体産生、特にヒト投与に使用される抗体の産生に好適である、例えば、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞、293F細胞、NS0細胞、又は当技術分野で公知の任意の他の細胞タイプである。特に好ましい実施形態では、上記細胞は、ヒト細胞、好ましくはアデノウイルスE1領域により形質転換される細胞、又はその機能性等価物である。そのような細胞株の好ましい例は、PER.C6(商標)細胞株又はその等価物である。特に好ましい実施形態では、上記細胞は、CHO細胞又はその変異体、好ましくは、抗体の発現にグルタミンシンテターゼ(GS)ベクター系を使用する変異体である。
【0227】
本発明による抗体又は変異体は、非ヒト動物でも産生することができる。したがって、本発明による抗体及び/又は本発明による核酸分子及び/又は本発明によるベクターを含む非ヒト動物が更に提供される。一部の実施形態では、上記非ヒト動物は、げっ歯動物又はウサギ、好ましくはマウス又はラットを含む。
【0228】
本発明は、本発明による少なくとも1つの抗体又は変異体を含む組成物又はキットオブパーツを更に提供する。本発明は、本発明による1つ又は複数の抗体又はその変異体を含む医薬組成物を更に提供する。医薬組成物は、好ましくは、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体を含む。
【0229】
本発明の抗体又はその変異体は、標識、好ましくはin vivo撮像用の標識を更に含んでいてもよい。そのような標識は、典型的には、療法応用に必ずしも必要ではない。例えば、標識は、診断設定において有用であり得る。例えば、体内の標的細胞の視覚化に。種々の標識が好適であり、多数が当技術分野で周知である。好ましい実施形態では、標識は、検出用の放射性標識である。別の好ましい実施形態では、標識は、赤外線標識である。好ましくは、赤外線標識は、in vivo撮像に好適である。当業者であれば種々の赤外線標識が利用可能である。好ましい赤外線標識は、例えば、IRDye 800、IRDye 680RD、IRDye 680LT、IRDye 750、IRDye 700DX、IRDye 800RS IRDye 650、IRDye 700ホスホラミダイト、IRDye 800ホスホラミダイト(LI-COR USA社、スーペリア通り4647、リンカーン市、ネブラスカ州)。
【0230】
患者に投与される本発明による抗体の量は、典型的には治療濃度域にあり、これは、療法効果を得るために十分な量が使用されるが、その量は、許容できない程の副作用に結び付く閾値を超えないことを意味する。治療濃度域は、典型的には、所望の療法効果を得るのに必要な抗体の量が低いほど大きくなるだろう。したがって、低投薬量で十分な療法効果を発揮する本発明による抗体が好ましい。投薬量は、ニボルマブの投薬レジメンの範囲にあってもよい。また、投薬量は、より低量であり得る。
【0231】
本発明による抗体又はその変異体並びに特に二重特異性抗体又はその変異体は、可変ドメインを有する二価単一特異性抗体の組合せよりも少ない副作用を有し得る。阻害性及び/又は共刺激性分子を阻止する抗体の組合せは、既存の免疫療法に応答しない患者の利益になる。しかしながら、免疫調節受容体(iMOD)の二重阻止は、免疫関連毒性を増加させることが示されている。本発明による抗体又はその変異体並びに特に二重特異性抗体又はその変異体は、モノクローナル抗体の組合せでは再現することができない機能的活性を発揮することができ、特定の細胞集団をより選択的に標的とすることができるため、iMODの二重阻止に対処し、それにより患者における安全性障害を低減するのに適している。
【0232】
抗体は、重鎖のヘテロ二量体化を駆動する突然変異をCH3領域に含む補完的発現ベクターにそれらをクローニングすることにより、二重特異性抗体として産生した。多数の二重特異性抗体を小規模で産生し、がん細胞株での結合及び機能アッセイで試験した。本発明の抗体、特に本発明の二重特異性抗体は、低毒性プロファイルを高い有効性と組み合わせることができる。本発明の抗体は、種々のタイプ及び系統の免疫標的療法に有用である。本発明の抗体は、両アームで同じ抗原に結合する抗体と比較して、増加した治療濃度域を有することができる。
【0233】
更に、異常細胞、がん性細胞、腫瘍、及び/又は転移の形成を治療又は予防するための薬剤を調製するための、本発明による二重特異性抗体又はその変異体の使用が提供される。上記転移が由来する腫瘍は、好ましくは、B7ファミリーのメンバー又はTNFRSF14が陽性である腫瘍である。
【0234】
本発明の抗体は、懸濁293F細胞の一過性形質移入後に、>50mg/Lのレベルで産生させることができる。二重特異性抗体は、収率が>70%で、98%を超える純度に精製することができる。分析的特徴付け研究は、二価単一特異性lgG1と同様である二重特異性lgGl抗体プロファイルを示す。
【0235】
また、本発明は、CD28ファミリーの膜結合メンバーの細胞外部分、及びB7のメンバーの膜結合メンバー又はTNFRSF14の細胞外部に結合することができる二重特異性抗体又はその変異体を提供する。
【0236】
また、がん又は病原体による感染症を有する個体を治療するための方法であって、本発明による抗体若しくは変異体、又は本発明による組成物、又は本発明による核酸分子、又は本発明によるベクターの治療有効量を、それを必要とする個体に投与する工程を含む方法が提供される。
【0237】
本発明は、がんを有する個体の治療に使用するための、本発明のタンパク質又は本発明の二重特異性抗体を更に提供する。
【0238】
更に、本発明の抗体又は二重特異性抗体又はそれらの変異体、及びCD28ファミリーの膜結合メンバーを発現する第1の細胞、及びB7ファミリーの膜結合メンバー又はTNFRSF14を発現する第2の細胞を含む細胞系が提供される。
【0239】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Aに示されているVH鎖MF5708のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Aに示されているMF5708のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0240】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Bに示されているVH鎖MF5594のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Bに示されているMF5594のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0241】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Cに示されているVH鎖MF5576のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Cに示されているMF5576のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0242】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Dに示されているVH鎖MF5561のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Dに示されているMF5561のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0243】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Eに示されているVH鎖MF5557のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Eに示されているMF5557のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0244】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Fに示されているVH鎖MF5553のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Fに示されているMF5553のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0245】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Gに示されているVH鎖MF5442のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Gに示されているMF5442のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0246】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Hに示されているVH鎖MF5439のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Hに示されているMF5439のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0247】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Iに示されているVH鎖MF5426のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Iに示されているMF5426のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0248】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Jに示されているVH鎖MF5424のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Jに示されているMF5424のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0249】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Kに示されているVH鎖MF5382のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Kに示されているMF5382のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0250】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Lに示されているVH鎖MF5377のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Lに示されているMF5377のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0251】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Mに示されているVH鎖MF5359のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Mに示されているMF5359のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0252】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Nに示されているVH鎖MF5361のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Nに示されているMF5361のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0253】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF5442のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF5442のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0254】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7691のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7691のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0255】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7690のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7690のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0256】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7689のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7689のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0257】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7688のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7688のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0258】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7700のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7700のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0259】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7701のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7701のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0260】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7703のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7703のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0261】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7694のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7694のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0262】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7693のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7693のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0263】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7692のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7692のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0264】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7697のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7697のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0265】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7696のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7696のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0266】
また、本発明は、PD-L1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7695のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7695のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0267】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Oに示されているVH鎖MF6982のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Oに示されているMF6982のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0268】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Pに示されているVH鎖MF6974のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Pに示されているMF6974のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0269】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Qに示されているVH鎖MF6972のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Qに示されているMF6972のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0270】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Rに示されているVH鎖MF6936のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Rに示されているMF6936のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0271】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Sに示されているVH鎖MF6935のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Sに示されているMF6935のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0272】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Tに示されているVH鎖MF6932のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Tに示されているMF6932のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0273】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Uに示されているVH鎖MF6076のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Uに示されているMF6076のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0274】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Vに示されているVH鎖MF6236のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Vに示されているMF6236のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0275】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Wに示されているVH鎖MF6256のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Wに示されているMF6256のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0276】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Yに示されているVH鎖MF6226のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Wに示されているMF6226のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0277】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図3Xに示されているVH鎖MF6930のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図3Wに示されているMF6930のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0278】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF6929のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF6929のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0279】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7699のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7699のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0280】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7698のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7698のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0281】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7687のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7687のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0282】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7686のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7686のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0283】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7685のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7685のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0284】
また、本発明は、PD-1に結合する可変ドメインを含む二価抗体又はその変異体であって、可変ドメインのVH鎖は、図13に示されているVH鎖MF7684のアミノ酸配列であって、上記VHに対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有するアミノ酸配列を含む二価抗体又はその変異体を提供する。好ましい実施形態では、上記VH鎖は、図13に示されているMF7684のアミノ酸配列を含む。この抗体の好ましい実施形態では、抗体は単一特異性である。
【0285】
単一特異性抗体は、本明細書で使用される場合、1つのエピトープのみに結合することができる抗体である。その結果、1種類の抗原のみが結合される。二価抗体は、本明細書で使用される場合、同じエピトープに結合することができる2つの可変ドメインを含む。単一特異性二価抗体は、典型的にはモノクローナル抗体と呼ばれる。そのような単一特異性二価抗体は、表記のMFのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び本明細書で定義されるような共通軽鎖を各々が有する2つの可変ドメインを有する。
【0286】
二重特異性抗体又はその変異体は、異なるエピトープに結合する2つの可変ドメインを含む。2つの異なるエピトープは、典型的には、2つの異なる抗原又はタンパク質に存在する。二重特異性抗体は、特定のエピトープに結合する能力が一価性である。二重特異性抗体は、2つの結合相互作用の能力を有するという意味で二価性である。
【0287】
本発明は、以下の例において更に説明される。こうした例は、本発明の範囲を限定せず、本発明を明白するための役目を果たすに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0288】
図1】A. 単一及び二重特異性IgGにおいて使用される共通軽鎖の図である。共通軽鎖アミノ酸配列。B. 単一及び二重特異性IgGにおいて使用される共通軽鎖の図である。共通軽鎖可変ドメインDNA配列及び翻訳(IGKV1-39/jk1)。C. 単一及び二重特異性IgGにおいて使用される共通軽鎖の図である。共通軽鎖定常領域DNA配列及び翻訳。D. 単一及び二重特異性IgGにおいて使用される共通軽鎖の図である。IGKV1-39/jk5共通軽鎖可変ドメイン翻訳。E. 単一及び二重特異性IgGにおいて使用される共通軽鎖の図である。V領域IGKV1-39A。
図2】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖の図である。A. VHは、図3において描写されるMFについてのアミノ酸配列をコードする核酸である。B. 二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖の図である。CH1領域。C. 二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖の図である。ヒンジ領域。D. 二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖の図である。CH2領域。E. 二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖の図である。L235G及びG238Rサイレンシング置換を含有するCH2。F. 二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖の図である。置換L351K及びT366K(KK)を含有するCH3ドメイン。G. 二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖の図である。置換L351D及びL368E(DE)を含有するCH3ドメイン。
図3】重鎖可変領域のアミノ酸配列の図である。記号MFは、描写される重鎖可変領域及び共通軽鎖を含有するfabを指す。軽鎖のアミノ酸配列は、図1Aにおいて示される。下線を引いた配列は、アミノ酸配列毎に、それぞれ、CDR1、CDR2及びCDR3領域を示す。
図4】pIRES-Neo3(MV1363)のベクターマップ及び特性の図である。
図5】pVAX1のベクターマップ及び特性の図である。
図6】「免疫」ファージディスプレイライブラリーを作製するため使用したファージミドベクターMV1473のベクターマップ及び特性の図である。
図7】二重特異性IgG生成のためのKK-変異体重鎖におけるPD-1及びPD-L1特異的Fabアームの発現のため使用したIgG発現ベクターMV1452のベクターマップ及び特性の図である。
図8】MF1337としての共通軽鎖と組み合わされたときテタヌス毒素特異的であり、PD-L1xTT及びPD-1xTT二重特異性IgG分子を作製するために使用したDE-変異体重鎖に存在するVH遺伝子のアミノ酸配列の図である。下線を引いた配列は、アミノ酸配列毎に、それぞれ、CDR1、CDR2及びCDR3領域を示す。
図9】二重特異性IgG生成のためのDE-変異体重鎖におけるTT特異的FabアームMF1337の発現のため使用した、IgG発現ベクターMV1377のベクターマップ及び特性の図である。
図10】PD-1/PD-L1ブロッキングアッセイのグラフである。濃度10μg/ml二重特異性IgGにおいてPD-L1のコーティングされたPD-1への相互作用をブロックする抗PD-L1及び抗PD-1抗体パネルの能力の評価。データを、濃度10μ/mlにおいて二価ベンチマークPD-L1抗体MPDL3280Aを用いて得たデータ(100%ブロッキング)に対して正規化した。PD-L1(上のグラフ)及びPD-1(下のグラフ)パネルである、代表例を示す。最大結合(0%ブロッキングに対して正規化)を、非PD-1/PD-L1特異的ヒトアイソタイプ抗体とのインキュベーションにより確立した。図3において描写し、ここでは表していないMF配列を含む全てのPD-1及びPD-L1可変ドメインは、PD-1/PD-L1相互作用を>70%ブロックする。
図11】PD-1/PD-L1-lucレポーターシステムにおける用量タイトレーションにおいての抗体のパネルのPD-1/PD-L1機能的活性のグラフである。
図12】PBMCにおけるSEBにより誘導したIL-2産生が、用量に依存した方法でPD-1xPD-L1抗体により増強されることを示すグラフである。PB組成物をTable 5(表7、表8)において列挙する。IL-2産生を、陰性対照抗体(対照Ab)に関する刺激指数として示す。
図13】重鎖可変領域のアミノ酸配列の図である。記号MFは、描写した重鎖可変領域及び共通軽鎖を含有するfabを指す。軽鎖のアミノ酸配列を、図1Aにおいて描写する。下線を引いた配列は、アミノ酸配列毎に、それぞれ、CDR1、CDR2及びCDR3領域を示す。
図14-1】PD-1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-1に結合する。
図14-2】PD-1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-1に結合する。
図14-3】PD-1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-1に結合する。
図14-4】PD-1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-1に結合する。
図14-5】PD-1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-1に結合する。
図14-6】PD-1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-1に結合する。
図14-7】PD-1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-1に結合する。
図15-1】PD-L1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-L1に結合する。
図15-2】PD-L1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-L1に結合する。
図15-3】PD-L1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-L1に結合する。
図15-4】PD-L1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-L1に結合する。
図15-5】PD-L1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-L1に結合する。
図15-6】PD-L1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-L1に結合する。
図15-7】PD-L1への結合のグラフである。全ての二重特異性IgGは、ELISAにおいてPD-L1に結合する。
図16】FACSアッセイが、CHO細胞により発現された抗原への結合を確かにすることのグラフである。上部のパネル、CHO-PD-L1細胞への結合;下部のパネル右、CHO-PD1細胞への結合。
図17】FACSアッセイが、活性化したT細胞における抗原へのリード候補PD-1×PD-L1二重特異性lgGの結合を確かにすることのグラフである。
図18】PD-1/PD-L2ブロッキングアッセイのグラフである。in vitro遮断レポーターアッセイにおける抗PD-1/PD-L1抗体及びそれらの親二価抗体のPD-L2とPD-1との間の相互作用をブロックする能力の評価。
図19】PD-L1ブロッキングアッセイのグラフである。PD-L1ブロッキングアッセイにおける抗PD-1/PD-L1二重特異性抗体及びその親二価抗体の、PD-L1のコーティングされたPD-1又はCD80との相互作用をブロックする能力の評価。
図20】PD-1xPD-L1抗体が、それらの親二価単一特異性抗体の等モルの混合物と比べて、PBMCによるSEBにより誘導したIL-2産生を増強することの図である。データは、増大する濃度の抗体の存在下での4人の独立したドナー由来のPBMCによる平均IL-2産生を表す。PGコードは、2つの二重特異性抗体のそれぞれについてのそれぞれの親二価抗体を示す(PBにより示す)。IL-2産生を、AlphaLISAにおいて測定した相対的光単位(RLU)として示す。
図21-1】抗原-特異的T細胞IFNγ/IL-2放出の二重特異性PD-1xPD-L1抗体によるin vitro増強のグラフである。グラフは、上清に存在するIL-2(上側のパネル)又はIFNγ(下側のパネル)のレベルを示す。全てのグラフは、2連のウェル平均値を示す。点線は、抗原(Ag)の存在下でのサイトカインレベルを示す。点線を示していない場合のみ、正確な濃度(Ag=pg/ml)を示す。
図21-2】図21-1の続きである。
図22】二重特異性PD-1xPD-L1抗体が、in vitroでのT細胞の応答性を増強することのグラフである。棒は、同種iMLRから収集した上清に存在するIFNγの平均レベルを示し、エラーバーは、S.E.M.(n=6)を示す。シダックスの試験後解析を用いた一方向ANOVAにより、アイソタイプ対照抗体(*)、又はビヒクル対照(#)を用いて得たものと、試験抗体を用いて得た平均レベルを比較した。*P<0.05、**P<0.01、##p<0.01、###P<0.001、####P<0.0001。点線は、ビヒクルのみを用いて得た平均IFNγレベルを示す。iMLR:未成熟の混合リンパ球反応。
図23】肝癌(HCC)を有する5人の患者からもたらされた腫瘍浸潤CD4+(左)及びCD8+T細胞(右)の増殖に対するPD-1xPD-L1の効果のグラフである。
図24】MF7686xMF7703が、抗腫瘍応答を誘導することのグラフである。
図25】MF7686xMF7703が、腫瘍においてT細胞数を増すことのグラフである。
図26】MF7686xMF7703が、腫瘍細胞と共培養した腫瘍特異的T細胞によるIFNγ放出を増強することのグラフである。
図27】MF7686xMF7703が、腫瘍細胞と共培養した腫瘍特異的T細胞の細胞毒性を増強することのグラフである。
図28】MF7686xMF7703が、抗腫瘍応答を誘導することのグラフである。
図29】MF7686xMF7703が、腫瘍における腫瘍特異的(NY-ESO-1-特異的)CD8+T細胞数を増すことのグラフである。
図30】PD-1xPD-L1抗体が、同時刺激依存性初代ヒトT細胞活性化アッセイにおけるヒト組換えPD-L1-Fcの阻害効果をブロックすることのグラフである。データは、示した(左から右)通りの増大する濃度の抗体についての、1人のPBMCドナー(1058)を用いた実験において行った、2倍の培養物の平均刺激指数(SI)を表す。PGコードは、2つの二重特異性抗体のそれぞれの親二価抗体を示す。
図31-1】同時刺激依存性初代ヒトT細胞活性化アッセイにおけるPD-1xPD-L1二重特異性抗体のブロッキング効果は、親抗体の組合せ又はベンチマーク抗体の組合せの物より高い。データは、示した(左から右)通りの増大する濃度の抗体についての、1人のPBMCドナー(1058)を用いた実験において行った、2倍の培養物の平均刺激指数(SI)を表す。PGコードは、2つの二重特異性抗体のそれぞれの親二価抗体を示す。
図31-2】図31-1の続きである。
図32】同時刺激依存性初代ヒトT細胞活性化アッセイにおけるT細胞が、抗CD3及び抗CD28を用いた活性化後の増大する量のPD-1及びPD-L1を表すグラフである。平均蛍光指数(MFI)は、抗CD3及び抗CD28抗体を用いた活性化の24、48及び72時間後に回収したT細胞上のPD-1又はPD-L1の発現のレベルを表す。
図33】D1軸を完全にブロッキングする能力がある二重特異性PD1xPDL1抗体のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0289】
本明細書において使用される、「MFXXXX」(Xは、独立した数0~9である)は、可変ドメインを含むFabを指し、VHが、4桁により同定されるアミノ酸配列を有する。別段示されない限り、可変ドメインの軽鎖可変領域は、典型的には、図1A、典型的には、図1Bの配列を有する。「MFXXXX VH」は、4桁により同定されるVHのアミノ酸配列を指す。MFは、更に、軽鎖の定常領域及び軽鎖の定常領域と通常相互作用する重鎖の定常領域を含む。PGは、同一の重鎖及び軽鎖を含む単一特異性抗体を指す。PBは、2つの異なる重鎖を有する二重特異性抗体を指す。重鎖の可変領域は、異なり、典型的にはまた、CH3領域であり、重鎖の一方が、そのCH3ドメインのKK変異を有し、他方が、そのCH3ドメインの相補的なDE変異を有する(PCT/NL2013/050294(国際公開第2013/157954号パンフレットとして公開)を参照)。
【0290】
(実施例1)
選択及びスクリーニングのための物質の生成
細胞株の培養
ヒトES-2細胞(カタログ番号CRL-1978)を、ATCCから購入し、10%FBS(Lonza社)を補充したMcCoy's 5A(Gibco)において慣習的に維持した。フリースタイルの293F細胞(カタログ番号p/n51-0029)を、Invitrogen社から得て、293フリースタイル培地において慣習的に維持した。HEK293T(カタログ番号ATCC-CRL-11268)、CHO-K1(カタログ番号DSMZ ACC110)細胞株を、ATCCから購入し、L-グルタミン(Gibco)及びFBS(Lonza社)を補充したDMEM/F12(Gibco社)において慣習的に維持し、CHO-S(カタログ番号11619-012)細胞株を、Gibcoから購入し、L-グルタミンを補充したフリースタイルのCHO発現培地(Invitrogen社)において慣習的に維持した。
【0291】
免疫化及び安定な細胞株の生成のためのPD-1及びPD-L1発現ベクターの生成
クローニングのための固有の制限酵素部位及び効率的な翻訳のためのコザック共通配列を含むそれぞれの標的の全長cDNAを、合成するか、又はクローニングのための固有の制限酵素部位及び効率的な翻訳のためのコザック共通配列を導入した特異的プライマーを用いて、標的cDNAを含有する、市販の発現コンストラクト上でのPCR増幅を介して得た。それぞれの標的のcDNAを、NheI/EcoRIを介してpIRES-Neo3(Clontech社;図4)又はpVAX1(Thermo Fisher Scientific社;図5)のような真核生物の発現コンストラクトにクローニングし、それぞれ、pIRES-Neo3_[TARGET_NAME]及びpVAX1_[TARGET_NAME]を得た。挿入配列を、NCBI参照アミノ酸配列との比較により検証した。pIRES-Neo3コンストラクトを、安定な細胞株の生成のため使用した。pVAX1コンストラクトを、免疫目的のため使用した。得られたコンストラクトの名称の概要については、TABLE 1(表3)を参照のこと。
【0292】
細胞表面上での発現のためのアミノ酸配列全長huPD-1挿入物(pIRES-Neo3中とpVAX1中の両方)(GenBank: NP_005009.2と同一):
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWRPGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLVVGVVGGLLGSLVLLVWVLAVICSRAARGTIGARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPVPCVPEQTEYATIVFPSGMGTSSPARRGSADGPRSAQPLRPEDGHCSWPL
その内:
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWR:シグナルペプチド。
PGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLV:huPD-1のECD。
VGVVGGLLGSLVLLVWVLAVI:予想TM領域。
CSRAARGTIGARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPVPCVPEQTEYATIVFPSGMGTSSPARRGSADGPRSAQPLRPEDGHCSWPL:細胞内尾部。
【0293】
細胞表面での発現のためのアミノ酸配列全長マカク(カニクイザル(macaca fascicularis))PD-1挿入物(pIRES-Neo3中とpVAX1中の両方)(GenBank:ABR15751.1と同一):
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWRPGWFLESPDRPWNAPTFSPALLLVTEGDNATFTCSFSNASESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTRLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQALVVGVVGGLLGSLVLLVWVLAVICSRAAQGTIEARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPAPCVPEQTEYATIVFPSGLGTSSPARRGSADGPRSPRPLRPEDGHCSWPL
その内:
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWR:シグナルペプチド。
PGWFLESPDRPWNAPTFSPALLLVTEGDNATFTCSFSNASESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTRLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQALV:maPD-1のECD。
VGVVGGLLGSLVLLVWVLAVI:予想TM領域。
CSRAAQGTIEARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPAPCVPEQTEYATIVFPSGLGTSSPARRGSADGPRSPRPLRPEDGHCSWPL:細胞内尾部。
【0294】
細胞表面での発現のためのアミノ酸配列全長huPD-L1挿入物(pIRES-Neo3中とpVAX1中の両方)(GenBank:AAI13735.1と同一):
MRIFAVFIFMTYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET
その内:
MRIFAVFIFMTYWHLLNA:シグナルペプチド。
FTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNER:huPD-L1のECD。
THLVILGAILLCLGVALTFIF:予想TM領域。
RLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET:細胞内尾部。
【0295】
細胞表面の発現のためのアミノ酸配列全長マカク(アカゲザル(macaca mulatta))PD-L1挿入物(pIRES-Neo3中とpVAX1中の両方)(GenBank:ABO33161.1と同一):
MRIFAVFIFTIYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECRFPVEKQLGLTSLIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSNYRQRAQLLKDQLSLGNAALRITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLLNVTSTLRINTTANEIFYCIFRRLGPEENHTAELVIPELPLALPPNERTHLVILGAIFLLLGVALTFIFYLRKGRMMDMKKSGIRVTNSKKQRDTQLEET
その内:
MRIFAVFIFTIYWHLLNA:シグナルペプチド。
FTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECRFPVEKQLGLTSLIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSNYRQRAQLLKDQLSLGNAALRITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLLNVTSTLRINTTANEIFYCIFRRLGPEENHTAELVIPELPLALPPNER:maPD-L1のECD。
THLVILGAIFLLLGVALTFIF:予想TM領域。
YLRKGRMMDMKKSGIRVTNSKKQRDTQLEET:細胞内尾部。
【0296】
PD-1又はPD-L1を発現する安定な細胞株の生成
pIRES-Neo3_[TARGET_NAME]発現コンストラクト(TABLE 1(表3))を使用して、それぞれのタンパク質を安定的に発現するCHO-S又はCHO-K1クローンを作製した。コンストラクトを、リポフェクタミントランスフェクションを使用して、又はCHO-S細胞についてはPEIトランスフェクションを使用して、CHO-K1細胞において一過性に遺伝子導入し、それぞれのタンパク質との抗体反応を使用したFACSによりスクリーニングした。発現の確認後、一過性に遺伝子導入した細胞を、限界希釈において播種し、使用した発現コンストラクトに関連する選択圧下で培養して、安定な細胞クローンを得た。選択の2~3週間後、クローンを、FACSによりスクリーニングした。選択したクローンを、連続継代により拡大し、FACSにおいて再試験し、-150℃まで凍結させた。異種性タンパク質を安定的に発現するクローンの名称は、CHO-K1_[標的_名称]細胞又はCHO-S_[標的_名称]細胞である。安定な細胞株を作製するために使用したコンストラクト及びそれらの得られた名称の概要については、TABLE 1(表3)を参照のこと。
【0297】
(実施例2)
免疫化、選択及びスクリーニング
免疫化に使用したマウス
huPD-1及びhuPD-L1へのヒト抗体結合の生成のため、ヒトVK1-39軽鎖(共通軽鎖マウス、国際公開第2009/157771号パンフレットを参照)及びヒト重鎖(HC)小型遺伝子座(ヒトV遺伝子セグメント、全てのヒトD及び全てのヒトJの選択を含む)についての遺伝子導入マウスを、以下で簡単に記載する通り、組換えタンパク質又はタンパク質をコードするDNAのいずれかで免疫した。これらのマウスを、「MeMo(登録商標)」マウスと呼ぶ。
【0298】
タンパク質免疫化
「MeMo(登録商標)」マウスを、組換えタンパク質及びGerbuアジュバントMM(Gerbu Biotechnik社 c#3001)を用いた皮下注射により免疫した。組換えhuPD-L1-His(SinoBiological社;カタログ番号10084-H08H)及びhuPD-1-Fc(R&D社;カタログ番号1086-PD)タンパク質を、免疫のため使用した。マウスを、総体積100μlにおいてアジュバント40μlと混合したPBS中の組換えタンパク質40μgを用いて免疫した。続いて、マウスを、14及び28日目に、総体積50μlにおいてアジュバント20μlと一緒にPBS中の組換えタンパク質20μgを用いてブーストした。マウス血清を、35日目に回収して、血清タイターを決定した。低い血清タイターを有するマウスは、追加サイクルのブースター免疫及び血清解析を受けた。それぞれの解析は、PBS 50μl中の組換えタンパク質20μgを使用した2回の週1回の免疫、続いて、1週間後、タイター解析のための血清収集からなっていた。ヒトに対して高い血清タイターを示すが、マカク相同体には示さないマウスは、マカク抗原タンパク質を用いたブースター免疫を受けた。ヒト及びマカク標的に対して高い血清タイターを示すマウスは、連続する3日間、PBS 50μl中の組換えタンパク質20μgを用いた毎日の注射からなる最終ブースト免疫を受けた。最後の注射の1日後、マウスリンパ組織を回収した。
【0299】
DNA免疫化
MeMo(登録商標)マウスを、マイクロ色素沈着装置を使用したDNA刺青により、免疫した。DNA刺青免疫を、標的抗原(pVAX1_[標的_名称]、Table 1(表3))をコードするプラスミドDNA 20μgを用いて行った。マウスを、ヒト標的のみ(PD-1、PD-L1)をコードするDNAを用いて免疫した。PD-L1免疫のため、Treg細胞を、抗CD25抗体PC61.5(Bioceros社)0.5mgを用いたマウスの注射による免疫の開始前4日間、枯渇させて、寛容を壊した。マウスを、0、3、6、14、17、28及び31日目に免疫した。マウス血清を35日目に回収して、血清タイターを決定した。低血清反応性を有するマウスは、追加サイクルのブースター免疫及び血清解析を受けた。それぞれのサイクルは、2回の週1回の免疫、続いて、1週間後、タイター解析のための血清収集からなっていた。ヒト及びマカク標的を発現する細胞に対する強力な血清反応性を示すマウスは、最後のブースト免疫化、続いて、3日間後、リンパ組織の収集を受けた。
【0300】
血清タイターの決定
血清タイターを、ヒト及びマカク標的抗原を発現する細胞株を使用したFACS解析により決定した(Table 1(表3))。
【0301】
免疫したマウスの組織由来のRT-PCRによる「免疫」ファージFabライブラリーの生成
脾臓及び流入リンパ節を、有意な液性応答をそれぞれの標的タンパク質に対して観察したマウスから取り除いた。単一の細胞懸濁液を、脾臓と鼠蹊部リンパ節の両方から作製し、続いて、これらの組織をトリゾールLS試薬(Thermo Scientific社 c#10296028)において溶解し、使用まで-80℃において保存した。
【0302】
首尾よく免疫したマウスから、鼠蹊部リンパ節を、「免疫」ファージ抗体レパートリーの構築のため使用した。RNAをリンパ節組織の単一細胞懸濁液から抽出した。総RNAの1μgを、IgG-CH1特異的プライマーを使用したRT反応において使用した。次に、得られたcDNAを使用して、Marksら(J Mol Biol.、1991年12月5日;222(3):581~97頁)において本質的に記載される社内適応VH特異的プライマーを使用したVHをコードするcDNAのポリクローナルプールを増幅した。次に、得られたPCR産物を、軽鎖(図1A及び図1B)が全ての抗体について同じであり、ベクターによりコードされることを除き、de Haardら(J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)において記載された通り、ファージ上のFabフラグメントのディスプレイのためファージミドベクター(図6)にクローニングした。ライゲーション後、ファージミドを使用して、大腸菌(E.coli)TG1細菌を形質転換し、形質転換された細菌を、アンピシリン及びグルコースを含有するLB寒天プレートに播種した。全てのファージライブラリーは、>4×105形質転換体を含有し、挿入頻度>90%を有していた。一晩成長後、細菌を回収し、それを使用して、確立したプロトコール(de Haardら、J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)に従い、ファージを調製した。
【0303】
組換えタンパク質を使用した「免疫」ファージFabライブラリーからヒト標的タンパク質に特異的に結合するFabフラグメントを有するファージの選択
作製したファージFabライブラリーを使用して、直接コーティングした組換えタンパク質上のファージディスプレイを使用して標的特異的Fabを選択した。PD-L1について、huPD-L1-His(Sinobiological社;カタログ番号10084-H08H)、huPD-L1-Fc(R&D社;カタログ番号156-B7)及びmaPD-L1-His(Sinobiological社;カタログ番号90251-C08H)を使用した。PD-1について、huPD-1-Fc(R&D者;カタログ番号1086-PD)及びhuPD-1ビオチン(BPS bioscience社;カタログ番号71109)を使用した。
【0304】
非ビオチン化組換えタンパク質を用いた選択(「パニング選択」)のため、タンパク質を、MAXISORP(商標)ELISAプレートのウェル上にコーティングした。MAXISORP(商標)ELISAプレートを、PBS中の4%の乾燥スキムミルク(Marvel)を用いてブロッキングした。ファージFabライブラリーをまた、4%Marvelを用いてブロッキングし、Fcタグ標識組換えタンパク質を使用した場合にはまた、過剰のヒトIgGを用いて、コーティングした抗原へのファージライブラリーの添加に先立ち、Fc領域結合剤を枯渇させた。
【0305】
コーティングしたタンパク質とのファージライブラリーのインキュベーションを、1.5時間室温において振盪条件下で行った。次に、プレート又はチューブをPBS中の0.05%Tween-20を用いて15回洗浄し、続いて、PBSを用いて5回洗浄した。結合したファージを、トリプシンを使用して20分間溶出し、その後、トリプシンを、AEBSFトリプシン阻害剤(Sigma社)を用いて中和した。
【0306】
ビオチン化タンパク質(「溶液中選択」)を用いた選択のため、ニュートラアビジンを、MAXISORP(商標)ELISプレートのウェル上にコーティングした。MAXISORP(商標)ELISAプレートを、PBS中の1%カゼインを用いてブロッキングした。並行して、ビオチン化タンパク質及びファージFabライブラリーを、別個のエッペンドルフチューブ中に過剰のヒトIgGを含有する、PBS中の0.5%カゼインにおいて30分間ブロッキングした。その後、ブロッキングしたファージ及びビオチン化タンパク質を混合し、2時間室温でインキュベートした。その後、混合物を、ニュートラアビジンコーティングしたウェルに加えて20分間おき、ビオチン化タンパク質に結合したファージFab粒子を捕捉した。次に、プレートを、PBS中の0.05% Tween-20を用いて15回洗浄し、続いて、PBSを用いて5回洗浄した。結合したファージを、トリプシンを使用して20分間溶出し、その後、トリプシンを、AEBSFトリプシン阻害剤(Sigma社)を用いて中和した。
【0307】
両方の選択ストラテジー(「パンニング及び溶液中」)の溶出液を、大腸菌TG-1に加え、ファージ感染のため37℃でインキュベートした。続いて、感染した細菌を、アンピシリン及びグルコースを含有する寒天プレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。選択出力由来の単一のクローンを、標的に依存してELISA又はFACSにおける標的結合のためスクリーニングした。
【0308】
標的タンパク質を安定的に発現する細胞を使用した「免疫」ファージFabライブラリー由来の、ヒト標的に特異的に結合するFabフラグメントを有するファージの選択
標的免疫化マウスから作製したファージFabライブラリーを、それぞれの標的を発現する細胞上のファージディスプレイを使用して選択した。PD-1又はPD-L1を発言する安定な細胞株(Table 1(表3))を、1回目のラウンドの選択のため使用した。細胞を、PBS中の10% FBSを用いてブロッキングした。ブロッキング後、救出したファージを、ブロッキングした細胞とインキュベートした。細胞プラスファージを、1時間4℃においてインキュベートした。細胞の洗浄(5回)を、PBS中の10%FBS 1mlを使用して行った。結合したファージを、トリプシンを使用して20分間溶出させ、その後、トリプシンを、AEBSFトリプシン阻害剤(Sigma社)を用いて中和した。溶出液を、大腸菌TG-1に加え、ファージ感染のため37℃においてインキュベートした。続いて、ファージ感染した細菌を、アンピシリン及びグルコースを含有する寒天プレート上に播種し、37℃にて一晩インキュベートした。
【0309】
PD-L1について、huPD-L1を内在性に発現するES-2細胞を用いた2回目のラウンドの選択を、1回目のラウンドの選択のため使用したのと同じプロトコールを用いて行った。選択後、単一クローンを、FACSにおいて標的結合についてスクリーニングした。
【0310】
ELISAにおける標的特異的Fabクローンについてのスクリーニング
単一クローンのうち、溶解性Fabを、記載(J Mol Biol.、1991年12月5日;222(3):581~97頁;J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)の通り調製した。これらは、PBS中の4%乾燥スキムミルク(Marvel)における1:5希釈液(ブロックバッファー)であり、ELISAにおいて、選択のため使用したのと同じ抗原を用いたコーティングしたウェルへの結合について試験した。結合したFabを、ブロックバッファー中1:1000希釈した抗myc抗体(Roche社;カタログ番号11667203001)を用いた染色により、検出し、続いて、ブロックバッファー中1:5000希釈したHRPコンジュゲート抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch社;カタログ番号715-035-150)により検出した。それぞれの抗体染色後、ウェルを、PBS-T(PBS-0.05%v/v Tween20)を用いて洗浄した。結合した2次抗体を、TMB/H2O2染色により可視化し、染色を、OD450nmの測定値により定量した。OD450nmが、陰性対照Fabを用いて得たバックグラウンドのシグナルの少なくとも3倍を上回る場合、クローンは、標的に結合するとみなした。
【0311】
全ての標的特異的クローンのVHをコードするcDNAを配列決定した。次に、配列同一性及びクラスター解析に基づく固有のクローンの選択を、細胞選択出力から得たクローンについて以下に記載する通り、細胞上で発現したPD-L1への結合についてFACSにおいて解析した。
【0312】
FACSにおける標的特異的Fabクローンについてのスクリーニング
それぞれの標的を発現する細胞上の選択した単一クローンのうち、溶解性Fabを、記載(J Mol Biol.、1991年12月5日;222(3):581~97頁;J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)される通り調製した。これらを、FACSにおいて、FACSバッファー(PBS中の0.5% HI-FBS)中1:1000希釈した抗myc抗体(Gentaur社;カタログ番号04-CMYC-9E10)との1:5希釈したFab試料の混合液とのインキュベーションにより、ヒト及びマカク標的を発現する細胞(Table 1(表3))への結合について試験した。結合したFab/抗myc複合体を、FACSバッファー中1:500希釈したAPCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体(BD Bioscience社;カタログ番号550826)とのインキュベーションにより検出した。それぞれの抗体インキュベーション後、ウェルを、FACSバッファーを用いて3回洗浄した。染色した細胞を、FACS Accuri C6装置(Becton and Dickinson社)を使用して解析した。平均蛍光強度が、陰性対照Fabを用いて得たバックグラウンドシグナルの少なくとも3倍を上回る場合、クローンは、陽性であるとみなした。
【0313】
(実施例3)
IgGフォーマットのhuPD-L1及びhuPD-1特異的Fabクローンの特徴決定
ヒトPD-L1及びPD-1特異的FabのIgGフォーマットへの再クローニング
細胞上で発現したヒト及びマカク標的タンパク質に結合した、CDR3配列及びVH生殖系列の相異に基づく選択された固有のクローンは次に、標準化した分子生物学的技術に従い、Sfi1-BstEII消化、及び消化したcDNAのプールのライゲーションを使用して、共通軽鎖(図1)を含有する、MV1452(図7)のようなIgG発現プラスミドに再クローニングした。
【0314】
ヒトPD-L1又はヒトPD-1特異的Fab及びテタヌス毒素特異的Fabを含有する二重特異性IgGの発現
二重特異性抗体の効率的なヘテロ-二量体化及び形成を確実にするための専用のCH3遺伝子操作テクノロジーを使用して、異なるVHドメインを有するIgGをコードする2つのプラスミドの一過性の同時遺伝子導入により、二重特異性抗体を作製した。重鎖を含有する両方のプラスミドに存在する共通の軽鎖をまた、同じ細胞に同時遺伝子導入する。本発明者らの同時係属出願(例えば、国際公開第2013/157954号パンフレット及び国際公開第2013/157953号パンフレット;参照により本明細書に組み込まれる)において、本発明者らは、単一の細胞から二重特異性抗体を産生する方法及び手段を開示し、これにより、単一特異性抗体の形成より二重特異性抗体の形成を好ましくする手段が提供される。これらの方法はまた、本発明において好ましく用いられ得る。具体的には、本質的には二重特異性全長IgG分子のみを産生する好ましい変異は、第1のCH3ドメイン(「KK変異体」重鎖)における351位及び366位におけるアミノ酸置換、例えば、L351K及びT366K(EUナンバリングに従ったナンバリング)及び第2のCH3ドメイン(「DE変異体」重鎖)における351位及び368位におけるアミノ酸置換、例えば、L351D及びL368Eであり、又は逆も同様である(図2)。本発明者らの同時係属出願において、負に荷電したDE変異体重鎖及び正に荷電したKK変異体重鎖が優先的には対形成して、ヘテロダイマー(いわゆる、「DEKK」二重特異性分子)を形成することを既に実証した。DE変異体重鎖(DE-DEホモダイマー)又はKK変異体重鎖(KK-KKホモダイマー)のホモダイマー形成は、同一の重鎖間でのCH3-CH3干渉における荷電した残基間の強力な反発に起因して、ほとんど生じない。
【0315】
上で記載したヒトPD-L1及びPD-1に結合する抗体をコードするVH遺伝子を、正に荷電したCH3ドメインをコードするMV1452 IgG発現ベクターにクローニングした。テタヌス毒素(TT)標的指向性抗体(図8)を、負に荷電したCH3ドメインをコードするMV1377 IgG発現ベクター(図9)にクローニングした。懸濁成長に適合した293Fフリースタイルの細胞を、振動器上のT125フラスコにおいて、密度3.0×106個の細胞/mlのプラトーまで培養した。細胞を、24深底ウェルのプレートのそれぞれのウェルにおいて密度0.3~0.5×106個の生細胞/mlにて播種した。細胞を、専用のベクターシステムにクローニングした異なる抗体をコードする2つのプラスミドの混合物を用いて一過性に遺伝子導入した。遺伝子導入の7日後、細胞上清を回収し、0.22μMのフィルター(Sartorius社)を通して濾過した。無菌の上清を、抗体の精製まで4℃にて保存した。
【0316】
二重特異性IgGの精製
IgGの精製を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、小スケール(<500μg)にて行った。小スケールの精製を、無菌条件下、24ウェルプレートにおいて濾過を使用して行った。まず、培地のpHを、pH8.0に調節し、続いて、IgGを含有する上清を、プロテインAセファロースCL-4Bビーズ(50%v/v)(Pierce社)と共に、2時間、25℃にて、振盪プラットフォーム上、600rpmにおいてインキュベートした。次に、ビーズを、濾過により回収した。ビーズを、PBS pH7.4を用いて2回洗浄した。次に、結合したIgGを、pH3.0において0.1Mクエン酸バッファーを用いて溶出し、溶出液を、トリスpH8.0を使用して直ちに中和した。バッファー交換を、マルチスクリーンUltracel 10マルチプレート(Millipore社)を使用して遠心分離により行った。最後に、試料を、PBS中pH7.4に回収した。IgG濃度を、オクテットを使用して測定した。タンパク質試料を、4℃にて保存した。
【0317】
オクテットを使用したIgG定量化
精製したIgGの量を決定するために、抗体の濃度を、トータルのヒトIgG(Sigma Aldrich社、カタログ番号I4506)を標準として使用したプロテインAバイオセンサー(Forte-Bio社、供給者の推奨に従い)を使用してオクテット解析により決定した。
【0318】
特異性解析huPD-L1×TT及びhuPD-1×TT二重特異性IgG
二重特異性抗体を、FACSにおいて、関連のヒト及びマカクオルソログ(Table 1(表3))を発現する安定な細胞株及び野生型細胞への結合について試験した。それ故、細胞を回収して、FACSバッファー(PBS/0.5% BSA/0.5mM EDTA)において106個の細胞/mlに希釈した。1~2×105個の細胞を、U底96ウェルプレートにおけるそれぞれのウェルに加えた。細胞を、2分間、300gにおいて4℃にて遠心分離した。プレートを逆さにすることにより、上清を捨てた。濃度10μg/mlのそれぞれのIgG試料50μlを加え、1時間氷上でインキュベートした。細胞を1回遠心分離し、上清を取り除き、細胞をFACSバッファー150μlを用いて2回洗浄した。1:400希釈したヤギ抗ヒトIgG PE(Invitrogen社)50μlを加え、30分間、氷上で暗所にてインキュベートした。FACSバッファーを加えた後、細胞を1回遠心分離し、上清を取り除き、細胞をFACSバッファーを用いて2回洗浄した。細胞を、FACSCantoフローサイトメーター(Becton and Dickinson社)上HTS設定において解析した。抗体の細胞への結合を、染色した細胞集団の平均蛍光強度(MFI)を測定することにより、評価した。MFIが、(陰性対照)非結合抗体(テタヌス毒素に対する)を用いて染色した同じ細胞集団のものの少なくとも5倍であるとき、抗体は、それらの標的に結合するとみなした。
【0319】
リガンドブロッキング能に対するPD-L1×TT及びPD-1×TT二重特異性IgGに存在するhuPD-L1及びhuPD-1特異的Fabアームのビニング
huPD-L1及びhuPD-1結合クローンを、PD-L1のPD-1との相互作用をブロックするそれらの能力について試験した。PD-L1 Fabアームについて、PD-L1とCD80との間の相互作用をブロックする能力も評価した。それ故、PD1-Fc(R&D systems社;カタログ番号1086-PD)又はCD80-Fc(R&D systems社;カタログ番号140-B1)を、それぞれ、1及び3μg/mlでマキシソーププレートにコーティングした。コーティングしたウェルを、PBS中の4%BSAを用いてブロックした。その後、0.55μg/mlビオチン化PD-L1(BPS bioscience社;カタログ番号71105)を、0.15~20μg/mlの範囲のIgGの存在又は非存在下で加えた。結合したビオチン化PD-L1を、ブロックバッファーにおいて1:2000希釈したHRPコンジュゲートストレプトアビジン(BD bioscience社:カタログ番号554066)を用いて検出した。それぞれのインキュベーション工程後、ELISAプレートを、PBS-T(PBS-0.05%v/v Tween20)を用いて3回洗浄した。結合したストレプトアビジンを、TMB/H2O2染色により視覚化し、染色を、OD450nm測定により定量化した。ELISAシグナルが、TT特異的競合抗体を加えた対照と比較して、IgG(PD-L1×TT又はPD-1×TT)濃度10μg/mlにおいて70%より低減したとき、クローンは、PD-1のPD-L1との相互作用をブロックするとみなした。PD-1×TT又はPD-L1×TT二重特異性分子として試験したPD-1及びPD-L1抗体パネルの代表的選択を用いて得た結果について、図10を参照。
【0320】
PD-L1×TT及びPD-1×TT二重特異性IgGに存在するhuPD-L1及びhuPD-1特異的Fabアームの親和性ランキング
FACSにおいてそれぞれのヒト及びマカクオルソログに結合することを示した二重特異的抗体を、FACSにおける両方のオルソログについての明らかな親和性についてランキングした。それ故、それぞれのオルソログを発現する安定な細胞株(Table 1(表3))を回収し、FACSバッファー(PBS/0.5% BSA/0.5mM EDTA)中106個の細胞/mlに希釈した。細胞を、2分間、300gにおいて4℃にて遠心分離した。プレートを逆さにすることにより、上清を捨てた。10~0.01μg/mlの範囲にある11段階の2倍連続希釈におけるそれぞれのIgG試料50μlを加え、1時間、氷上でインキュベートした。細胞を1回遠心分離し、上清を取り除き、細胞を、FACSバッファー150μlを用いて2回洗浄した。1:400希釈したヤギ抗ヒトIgG PE(Invitrogen社)50μlを加え、30分間、氷上、暗所でインキュベートした。FACSバッファーを加えた後、細胞を1回遠心分離し、上清を取り除き、細胞を、FACSバッファーを用いて2回洗浄した。細胞を、FACSCantoフローサイトメーター(Becton and Dickinson社)上、HTS設定において解析した。抗体の細胞への結合を、染色した細胞集団の平均蛍光強度(MFI)を測定することにより、評価した。MFIが、(陰性対照)非結合抗体(テタヌス毒素に対する)を用いて染色した同じ細胞集団のものの少なくとも5倍であるとき、抗体は、それらの標的に結合するとみなした。
【0321】
PBMC単離
ヒト全血を、バフィーコート(Sanquin社)から得て、PBSを用いて1:1希釈した。Leucosepチューブ(Greiner Bio-One社カタログ番号227 290)を、室温(RT)にて温めた17.5m Ficoll-Paque Plus(Amersham Biosciences社カタログ番号17-1440-02)を用いて充填した。Ficoll-Paque Plusを、30秒間、1000×gにおいてRTにてスピンダウンした。希釈した全血30mlを、上部に注いだ。チューブを、1000×gにおいて10分間、RTにてスピンし、単核PBMC界面を回収し、PBSにおいて2回洗浄し、PBS 250μlにおいて再懸濁した。PBMCをカウントし、組織培養培地(10% FCSを含むDMEM)中1×106個の細胞/mlに再調節し、等量の氷冷凍結培地(80%培養培地/20% DMSO)を加えることにより、凍結した。細胞を、更なる使用まで、1mlのアリコートで-150℃において保存した。
【0322】
SEBアッセイ
二重特異性抗体の機能的活性を、ブドウ球菌エンテロトキシン(Staphylococcus enterotoxin)B(SEB)により刺激したPBMCを使用することにより、決定した。SEBは、Vβ3、12、14、15、17及び20T細胞受容体鎖を発現するT細胞を特異的に活性化する。3人のドナー由来のPBMCを解凍し、洗浄し、カウントし、培養培地(RPMI1640及び10%熱不活化FBS)に濃度2×106個の細胞/mlまで再懸濁した。細胞を、平底96ウェルプレート(2×105個の細胞/ウェル)においてSEB(2000又は125ng/ml)の存在下で播種した。20μg/mlで始まる抗体の連続希釈液を加えた。それぞれのプレートは、参照対照として働く陰性(TT特異的PG1337)及び陽性対照抗体イピリムマブ(ipilumumab)、ニボルマブ(PD-1×PD-L1)、LAG3.5(LAG-3×PD-1)の連続希釈液を含有していた。抗原のサイトカイン分泌及び/又は細胞表面発現についての試験に先立ち、細胞を、3日間、37℃、5%CO2、95%相対湿度において刺激した。
【0323】
サイトカインアッセイ
ELISA:様々な回数でのT細胞又はPBMCの刺激後、プレートを遠心分離し、培地を除去した。サイトカインレベルを、製造元の指示(Perkin Elmer社)に従い、AlphaLISAにより検出した。標準曲線に基づき、濃度を計算した。
【0324】
ルミネックスアッセイ:in vitroでサイトカイン産生を決定するために使用する別の方法は、eBioscience社が開発した複数解析を使用することであった。IFN-γ、IL-2、及びTNF-αのレベルを、製造元の指示に従い、培養上清において測定した。eBioscience社解析ソフトウエアにより、結果を解析した。
【0325】
参照抗体
PD-1及びPD-L1の機能を阻害する抗体は、当該技術分野において公知である。モノクローナル二価抗体を、公開された情報に従い構築し、CHO-S細胞において発現させた。抗PD-1抗体ニボルマブを、CA 02607147に開示された情報に基づき作製した。抗PD-L1抗体MPDL3280Aは、WO2010077634A1、Genentech Inc社に開示の情報に基づくものであった。
【0326】
PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイ
Promega社が、使用したPD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイを開発し、それは、2つの細胞系;PD-L1、及びT細胞活性化因子を発現するCHO細胞並びにPD-1を過剰発現するジャーカット/NFAT-REレポーター細胞株に基づく。PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイを、解凍物を使用して行い、Promegaのフォーマットを使用した。PD-L1発現細胞(カタログ番号C187103)を、細胞回復培地(10% FBSを含有するDMEM/F12)14.5mlにおいて解凍した。次に、細胞懸濁液50μlを、96ウェルハーフエリアプレート(Corning社、カタログ番号3688)の内部ウェルに加えた。プレートを、一晩、37℃、5% CO、95%相対湿度においてインキュベートした。翌日、培養培地を除去し、連続希釈(開始濃度10μg/ml)でのアッセイ培地(4% FBSを含有するRPMI1640)の試験抗体20μlを、それぞれのウェルに加えた。それぞれのプレートは、参照対照として働く陰性(TT特異的PG1337)及び陽性対照抗体(5C4として本明細書において言及される、ニボルマブに基づく1つの対照、及びMPDL3280A又はYW243.55.S70として本明細書において言及される、アテゾリズマブに基づく1つの対照)の連続希釈液を含有していた。PD-1エフェクター細胞(カタログ番号C187105)を、アッセイ培地5.9mlにおいて解凍し、細胞懸濁液20μlを、それぞれのウェルに加えた。プレートを、6時間又は一晩、37℃、5% CO、95%相対湿度においてインキュベートした。ルシフェラーゼ(Bio-Glo社ルシフェラーゼアッセイシステム、カタログ番号G794L)40μlを、翌日加え、ルシフェラーゼ活性の量を、BioTek社シナジー2マルチモードマイクロプレートリーダーを使用して測定した。効力を、陰性対照抗体との比較におけるルシフェラーゼ活性として測定した。
【0327】
(実施例4)
PD1×PD-L1抗体パネルのスクリーニング
抗体重鎖の発現の際、重鎖のヘテロ二量体化を強制し、遺伝子導入後に二重特異性抗体の生成をもたらすように、PD-1及びPD-L1抗体パネル由来のVHを、荷電した遺伝子操作したFcサイレンスベクターにクローニングした。PD-1 Fabアームを、MV1625ベクターにクローニングし、一方、PD-L1 Fabアームを、MV1624ベクターに再クローニングした。PD-1及びPD-L1抗体を、Fabアームを標的にするMF1337 TTと合わせて、一価の様式でPD-1又はPD-L1を標的にする二重特異性抗体を作製した。二重特異的抗体を、PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイにおいてセミログ連続タイトレーション(開始濃度10μg/ml)中で試験して、ブロッキング効力について抗体をランク付けした。一価フォーマットでのPD-L1抗体のパネルを、ランク付けすることができた一方、一価フォーマットでのPD-1抗体のパネルは、PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイにおいてランク付けするのに不十分なブロッキング能を示した。それ故、PD-1抗体を、二価フォーマットで産生させ、PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイにおいて再度試験した。
【0328】
活性データに基づき、抗体を、続くPD1×PD-L1二重特異性スクリーニングのためPD-1又はPD-L1抗体パネルから選択した。レポーターアッセイにおいて選択した候補の活性を、それぞれ、Table 2(表4)及びTable 3(表5)において示す。PD-1 Fabパネルは、3種の抗体クラスター内の機能的活性変異体、すなわち、A、B及びC、並びに非機能的変異体Dで構成される一方、PD-L1 Fabパネルは、11種の抗体クラスターからもたらされる抗体で構成されていた。PD-1とPD-L1抗体パネルの両方は、1つの機能的に不活性な抗体を含んでいた。
【0329】
10種の異なるPD-1 Fabアーム及び12種の異なるPD-L1 Fabアームを含む合計120種のPD-1×PD-L1二重特異性抗体を、24ウェルフォーマットで産生し、IgG精製した。全ての抗体を、PD-1/PD-L1-lucレポーターシステムにおける連続タイトレーションで用量依存性ルシフェラーゼ発現を誘導するそれらの能力について試験した。ニボルマブ又はMPDL3280Aを、参照抗体として含めた。図11は、様々な応答を示す二重特異性抗体の選択のルシフェラーゼ誘導を示す。
【0330】
Table 4(表6)は、MPDL3280Aとの比較における二重特異性抗体のパーセンテージ活性を示す。1つの非機能的Fabアームを含有するPD-1×PD-L1組合せは、最も低い有効性であった。更に、最も強力なPD-L1 Fabの最も強力なPD-1 Fabとの組合せは、最も強力な二重特異性PD-1×PD-L1抗体を生じなかった。様々なPD-1 Fabアームを含む、MF5561、MF5442及びMF5382のような幾つかのPD-L1 Fabアームは、非常に強力である一方、例えば、MF5359はそうではない。幾つかのPD-L1 Fabアームを含む、最高の活性を有するPD-1 Fabアームは、強力な活性を誘導した。
【0331】
最も強力なPD-1×PD-L1二重特異性抗体を、SEBアッセイにおいて連続タイトレーションで試験した。図12は、2μg/ml SEBを用いて刺激した3人のドナーにおいて行ったSEBアッセイの代表的な実験を示す。試験した全てのPD-1×PD-L1の組合せは、IL-2及びγ-IFNの用量に関連した誘導を示した(示していない)。得られた最高の誘導IL-2レベルは、50~100ng/mlの範囲内であった。PD-1×PD-L1二重特異性抗体の大部分は、ニボルマブとの比較においてより高い効力を示した。10μg/ml未満のPD-1×PD-L1二重特異性抗体の大部分は、イピリムマブとの比較においてより強力であった。したがって、PD-1×PD-L1抗体は、T細胞応答の刺激において非常に有効である。
【0332】
(実施例5)
PD-1×PD-L1 Fab変異体のクローニング及び発現
合計15種のPD-1及び25種のPD-L1 Fabアームを組み合わせて、65種の二重特異性抗体を作製した。Fabアームの配列を、図3及び図13において描写する。
抗体の発現が、重鎖のヘテロ二量体化を強制し、遺伝子導入後に二重特異性抗体の生成をもたらすように、PD-L1及びPD-1 Fabパネル由来の65種のVH領域を遺伝子操作した発現ベクターに再クローニングした。PD-1 FabアームのVH領域を、ベクターMV1625にクローニングし、PD-L1 Fabアームのものを、ベクターMV1624にクローニングした。両方のベクターは、IgGタンパク質のCH2及びCH3コード領域において余分な変異を有し:MV1625とMV1624の両方は、得られた抗体のFcγ受容体及びC1q相互作用を妨げるL235G及びG236R置換を含有する。MV1625はまた、CH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351D及びL368Eを含有する(「DE変異体」重鎖)一方、MV1624は、CH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351K及びT366Kを含有する(「KK変異体」重鎖)。
【0333】
関連のベクターへのクローニング後、DNA配列を、PCRにより確認した。ミディプレップDNAを、全てのコンストラクトについて調製した。一方のベクターは抗PD-1クローンを有し、他方は抗PD-L1クローンを有する、異なる対のベクターを、2連でフリースタイル293-F細胞に同時遺伝子導入して、二重特異性タンパク質(合計65種)を産生した。次に、24ウェルプレートのそれぞれのウェルにおいて産生したIgGを、精製し、バッファーを、製造元の指示に従い、Zeba脱塩カラムを使用して交換し、次に、タンパク質収量を、ナノドロップを使用してOD280により定量化した。
【0334】
PB番号及びそれらのMF組成の概要。
【0335】
【表2】
【0336】
(実施例6)
ELISAによるPD-1及びPD-L1 Fabの抗原結合の確認
PD-1又はPD-L1についての抗原ELISAの限界
二重特異性IgGに存在するPD-1及びPD-L1 Fabの結合を確認するために、抗原タイトレーションELISAを行った。このELISAにおいて、PD-1又はPD-L1抗原の連続希釈液を、96ウェルプレートにコーティングした。次に、プレートを、試験抗体と共にインキュベートし、容易に視認できる色素に無色の基質を変換する、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートした2次マウス抗ヒト抗体を使用して検出した。陰性TT特異的対照抗体PG1337を、全てのプレート上に含めた。ベンチマーク抗huPD-1抗体5C4(ニボルマブに基づく)を、PD-1タンパク質を用いてコーティングした全てのプレート上の陽性対照として含み、ベンチマーク抗huPD-L1抗体YW243.55.S70(アテゾリズマブに基づく)は、PD-L1タンパク質を用いてコーティングした全てのプレート上の陽性対照として含んだ。
【0337】
この最後に、96ウェルNunc Maxisorpプレートを、一晩、4℃にて、プレートのそれぞれのカラムにおいてPBS中の10μg/mLから0.014μg/mLに下がる7段階の3倍連続希釈においてヒトPD-L1-Fc(R&D systems社、カタログ番号156-B7)又はヒトPD-1-Fc(R&D systems社、カタログ番号1086-PD)を用いてコーティングした。翌日、ELISAプレートを、PBST 300μLを用いて3回洗浄し、ウェルをPBS中の2% BSAで充填し、1時間、RTでインキュベーションすることによりブロックした。プレートを空にし、PD-1×PD-L1抗体及び対照抗体PG1337、5C4及びYW243.55.S70を、抗体毎に1つのカラムでPBS-2% BSA中の5μg/mL(50μL/ウェル)にて加えた。1時間、室温にてインキュベーション後、ウェルをPBST 300μLを用いて3回洗浄し、その後、PBS-2% BSA中の1:2000希釈したHRPコンジュゲートマウス抗ヒトlgG(BD社、カタログ番号555788)の形態の2次抗体50μLを加えた。1時間、室温にてインキュベーション後、ウェルを、PBST 300μLを用いて3回洗浄し、その後、1ウェル毎に50μLの、1:1の比でTMBペルオキシダーゼ基質A(BD社、カタログ番号51-2506KC)及びB(BD社、カタログ番号51-2607KC)を加えた。最長10分後、50μL/ウェルで1MのH2SO4溶液を加えることにより、反応を停止させた。次に、ELx808マイクロプレートリーダーが、波長450nMでの光学密度(OD)を測定した。
【0338】
PD-1についての特異的ヒトIgG ELISAの限界の結果を、図14に示し、PD-L1についてのものを、図15に示す。グラフは、増大する濃度のコーティング抗原についてマイクロプレートリーダーにより測定した450nMにおける光学密度(OD)を示す。試験した全てのFabアームは、PD-1及びPD-L1に十分に結合し、結合のレベルは、ベンチマーク抗体のものと類似し、これにより、二重特異性PD-1×PD-L1抗体における使用に適した全てのFabアームを作製した。
【0339】
(実施例7)
PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイにおける抗体の活性
作製した二重特異性PD-1×PD-L1抗体のブロッキング活性を、Promega Corporation社、米国が開発した生理的に関連するPD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイにおいてin vitroで試験した。アッセイは、PD-L1及びT細胞受容体活性化因子を発現するCHO細胞を、PD-1を過剰発現するジャーカット/NFAT-REレポーター細胞株と共培養する、2細胞システムに基づく。ジャーカットT細胞は、NFAT(活性化T細胞の核因子)経路を通じて活性化し得るルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する。PD-1のPD-L1との相互作用は、この経路の活性化を阻害する。しかしながら、PD-1又はPD-L1に対する抗体を用いたPD-1/PD-L1相互作用のブロッキングは、NFAT経路を活性化し得る。それ故、PD-1/PD-L1遮断の程度が高くなるほど、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性化が高くなる。このために、それぞれの抗体の連続希釈液を、PD-Ll発現CHO細胞に加え、その後、PD-1を過剰発現するジャーカット/NFAT-REレポーター細胞を加えた。
【0340】
方法
PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイ
使用したPD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイは、Promega社が開発し、2つの細胞システム:PD-L1及びT細胞活性化因子を発現するCHO細胞、及びPD-1を過剰発現するジャーカット/NFAT-REレポーター細胞株に基づく。解凍物を使用して、PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイを行い、Promega社のフォーマットを使用する。PD-L1を発現する細胞(カタログ番号C187103)を、細胞回復培地(10% FBSを含有するDMEM/F12)14.5mLにおいて解凍した。次に、細胞懸濁液50μLを、96ウェルハーフエリアプレート(Corning社、カタログ番号3688)の内部ウェルに加えた。プレートを、一晩、37℃、5% CO2、95%相対湿度においてインキュベートした。翌日、培養培地を取り除き、連続希釈(開始濃度10μg/mL)でのアッセイ培地(4% FBSを含有するRPMI1640)中の試験抗体20μLを、それぞれのウェルに加えた。それぞれのプレートは、参照対照として働くテタヌス毒素に対する陰性抗体(PG1337)及び陽性対照抗PD-L1抗体(YW243.55.S70;アテゾリズマブに基づく)の連続希釈液を含有していた。PD-1エフェクター細胞(カタログ番号C187105)を、アッセイ培地5.9mlにおいて解凍し、細胞懸濁液20μLを、それぞれのウェルに加えた。プレートを、24時間、37℃、5% CO2、95%相対湿度においてインキュベートした。ルシフェラーゼ基質(Bio-Glo社ルシフェラーゼアッセイシステム、カタログ番号G794L)40μLを、翌日加え、ルシフェラーゼ活性の量をBioTek社シナジー2マルチモードマイクロプレートリーダーを使用して測定した。効力を、陽性対照抗体、YW243.55.S70との比較においてルシフェラーゼ活性として測定した。
【0341】
結果
24時間後の遮断の程度を、Table 6(表9)において示し、データは、抗体を加えていないウェルにおいて測定した活性と比較して、ルシフェラーゼ活性の関連する誘導を示す。パーセンテージ活性を、陽性対照抗PD-L1抗体YW243.55.S70と比べ、曲線下面積(AUC)に基づき計算した。全ての試験した二重特異性PD-1×PD-L1抗体は、明確なブロッキング活性を示した。
【0342】
(実施例8)
PD-1×PD-L1二重特異性lgGの抗原発現細胞へのFACS結合
2つのPD-1×PD-L1二重特異性抗体を、それぞれの抗原を安定的に発現するCHO細胞株上のPD-1及びPD-L1への結合について試験した。このFACSのため使用した細胞株は、CHO-huPD-L1、CHO-S-huPD-1、及び遺伝子導入していないCHO細胞(陰性細胞)であった。簡単に述べると、これらの細胞株を、増大する濃度の二重特異性IgG、親IgG又は対照IgGを用いて染色し、続いて、ヤギ抗ヒトIgG-PEを用いて検出した。陽性対照は、ベンチマーク抗huPD-1抗体5C1(ニボルマブに基づく)及びベンチマーク抗huPD-L1抗体YW243.55.S70(アテゾリズマブに基づく)であり、陰性対照は、抗テタヌス毒素抗体PG1337であった。
【0343】
このために、安定なCHO-huPD-L1細胞(MC0866)及びCHO-S-huPD-1細胞(MC0617)を、回収し、FACSバッファー(PBS/0.5% BSA/2mM EDTA)中106個の細胞/mLまで希釈した。0.5~2×105個の細胞を、U底96ウェルプレート(BD社、カタログ番号353910)におけるそれぞれのウェルに加えた。細胞を、3分間、300g、4℃にて遠心分離した。プレートを逆さにすることにより、上清を捨てた。氷冷FACSバッファー200μLを加えることにより、細胞を洗浄した。細胞を、3分間、300g、4℃にて再度遠心分離し、前と同様に、上清を捨てた。それぞれのIgG試料40μLを加え(10μg/mLにて始まる9段階の3倍連続希釈)、細胞を、30分間、氷上、暗所にてインキュベートした。次に、細胞を、氷冷FACSバッファー200μLの直接添加で始め、続いて、3分間、300g、4℃にて遠心分離し、上清を取り除いて、2回洗浄した。ヤギ抗ヒトIgG-PE(3μg/mL;Invitrogen社、カタログ番号H10104)40μLを加え、プレートを、30分間、氷上、暗所でインキュベートすることにより、2次抗体染色を行った。細胞を、氷冷FACSバッファー200μLを用いて2回再度洗浄し、FACSバッファー50~200μLにおいて再懸濁した。細胞を、高処理試料採取(HTS)設定のFACSCantoフローサイトメーター(Becton and Dickinson社)上で解析した。抗体の細胞への結合を、染色した細胞集団の平均蛍光強度(MFI)を測定することにより、評価した。MFIが、陰性対照抗体を用いて染色した同じ細胞集団のものの少なくとも5倍であるとき、抗体は、それらの標的に結合するとみなした。
【0344】
結果
2つの二重特異性IgGのPD-L1及びPD-1への結合及び参照抗体のものを、図16において示す。データは、増大する濃度の二重特異性IgG又は対照IgGを用いて染色したPD-L1及びPD-1を発現するCHO細胞上のFACSにより検出したMFIを示す。これらの結果は、両方の二重特異性IgGが、CHO細胞上で発現したとき、両方の標的を認識し、結合の程度は、参照抗体のものと同様であるか、又はそれより良好であったことを示す。
【0345】
(実施例9)
PD-1×PD-L1二重特異性lgGの活性化T細胞へのFACS結合
ヒト活性化T細胞を使用したFACS結合アッセイ
2つのPD-1×PD-L1二重特異性抗体をまた、活性化T細胞上のPD-1及びPD-L1への結合について試験した。簡単に述べると、96ウェルプレートを、一晩、抗CD3抗体を用いてコーティングした。次に、1人のドナー由来の精製したT細胞を加え、3日間培養した。3日後、活性化したT細胞を回収し、プールし、FACSアッセイにおいて使用して、二重特異性IgGの結合をそれらの親単一特異性二価IgGのものと比較した。陽性対照は、ベンチマーク抗huPD-1抗体5C4、ベンチマーク抗huPD-L1抗体YW243.55.S70であり、陰性対照は、抗テタヌス毒素抗体PG1337であった。
【0346】
方法
T細胞精製
健常ドナー由来の末梢血液単核細胞(PBMC)を解凍し、9容積の培養培地(10%熱不活化(hi)FBSを含むRPMI1640)を滴下添加した。細胞を、10分間、200g、RTにて遠心分離した。細胞ペレットを、培養培地10mLにおいて再懸濁し、細胞を、一晩、37℃、5% CO2、95%相対湿度においてインキュベートすることにより、休ませた。翌日、Tリンパ球を、製造元(Stem cell Technologies社、カタログ番号19051)が記載した通り、EasySep T細胞濃縮(汎CD3)精製法を使用して単離した。EasySep法は、陰性選択を使用する。簡単に述べると、PBMCを、10分間、200g、RTにて遠心分離した。細胞ペレットを、EasySepバッファーにおいて濃度5×107個の細胞/mLにて再懸濁した。細胞容積1mL当たりEasySepヒトT細胞濃縮カクテル50μLを加え、混合し、10分間、RTにてインキュベートした。次に、細胞容積1mL当たりEasySep D磁気粒子50μLを加え、5分間、RTにてインキュベートした。総容積を、EasySepバッファーで2.5mLにし、混合後、細胞懸濁液を5mLの丸底ファルコンチューブ(BD Biosciences社、カタログ番号352235)に移した。次に、チューブを、不所望の細胞分画を磁気に結合させるのを可能にする磁石に、5分間、RTに置いた。次に、チューブを反転し、精製したT細胞分画を、培養培地7.5mLを含有する新しいチューブに注いだ。200g、RTでの10分間の遠心分離により、細胞を回収し、続いて、培養培地中1×106個の細胞/mLの濃度で再懸濁した。
【0347】
FACS結合アッセイ
アッセイの開始の1日前に、96ウェル平底プレート(Cellstar、カタログ番号655180)を、一晩、4℃にて、5μg/mL抗CD3(クローンOKT3、eBioscience社、カタログ番号16-0037-85)を用いてコーティングした。翌日、培養プレートを、PBSを用いて2回洗浄し、T細胞懸濁液100μLを、それぞれのウェルに加えた(100,000個の細胞/ウェル)。プレートを、37℃、5% CO2にて、3日間インキュベートした。次に、活性化したT細胞を、複数チャンネルのピペットを使用して数回、優しくピペットで上げ下げすることにより、回収した。細胞をプールし、混合し、1個のウェル毎に0.2~5×105個の細胞にて、U底96ウェルFACSアッセイプレート(BD社、カタログ番号353910)に移した。
【0348】
FACS解析のため、細胞を、3分間、300g、4℃にて遠心分離した。プレートを逆さにすることにより、上清を捨てた。氷冷FACSバッファー200μLを加えることにより、細胞を洗浄した。細胞を、3分間、300g、4℃にて再度遠心分離し、上清を、前の通り捨てた。それぞれの二重特異性IgG、親IgG又は対照IgG試料40μLを加え(20μg/mLにて始まる8段階セミログタイトレーション)、細胞を、30分間、氷上、暗所でインキュベートした。次に、細胞を、氷冷FACSバッファー200μLの直接添加で開始し、続いて、3分間、300g、4℃で遠心分離し、上清を取り除いて、2回洗浄した。ヤギ抗ヒトIgG-PE(3μg/mL;Invitrogen社、カタログ番号H10104)40μLを加え、プレートを、30分間、氷上、暗所でインキュベートすることにより、2次抗体染色を行った。細胞を、氷冷FACSバッファー200μLを用いて2回再度洗浄し、FACSバッファー50~200μLにおいて再懸濁した。細胞を、高処理試料採取(HTS)設定のFACSCantoフローサイトメーター(Becton and Dickinson社)上で解析した。抗体の細胞への結合を、染色した細胞集団の平均蛍光強度(MFI)を測定することにより、評価した。MFIが、陰性対照抗体を用いて染色した同じ細胞集団のものの少なくとも5倍であるとき、抗体は、それらの標的に結合するとみなした。
【0349】
結果
FACS結合アッセイの結果を、図17において提供する。データは、増大する濃度のIgGを用いて染色したヒト活性化T細胞上でのFACSにより検出したMFIを示す。グラフは、2つの二重特異性IgG及びそれらの親IgGの結合を比較し、全ての特異的IgGが、活性化T細胞に結合したことを示す。二重特異性IgGについての最高レベルの結合は、親単一特異性二価IgGと陽性対照IgGのいずれのものより高かった。
【0350】
(実施例10)
SPRによるPD-L1についての抗PD-L1 Fabアームの親和性決定
抗PD-L1 FabアームのPD-L1についての親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して決定した。親和性作用を回避するために、親和性を、PD-L1に特異的な1つのアームのみを有する二重特異性IgG、すなわち、一価のフォーマットの関係において測定した。
【0351】
抗PD-L1 Fabアームの抗原への結合の速度論を決定するために、BIAcore T100を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)を使用した。組換え体である、精製した、FcタグヒトPD-L1(R&D Systems社、カタログ番号156-B7-100)を、CM5センサーチップのフローセル(FC)2(FC1は、差分のブランクとして働き、活性化され、次に、エタノールアミンを使用して直接的に不活化した)に、およそ200共鳴単位(RU)のレベルで、pH5.0(NaAcバッファー)のNHS/EDC化学、2μg/mlの抗原濃度及び10μl/分の流速を使用して、カップリングした。次に、抗PD-L1 Fabアーム及び無関連のFabアームで構成された二重特異的IgGを、30μl/分の速度論的実行において異なる濃度(100nM及びHBS中の連続2倍希釈、6希釈液)でFC1及び2の表面上を走らせた。無関連のFabアームは、PD-1に特異的である。水中の50mM HClのパルス(流速10μl/分において15μl)を使用して、再生を行った。得られたセンサーグラムを、BIAevaluationソフトウエアを使用して評価し、速度論的結合及び解離速度定数を決定した。
【0352】
数日、異なるサイズの異なる表面上で、幾つかの測定を行った。異なる測定は、非常に類似する結果を与え、それらの妥当性を強調する。全ての測定を、25℃にて行った。
【0353】
結果
親和性判定の結果を、Table 7(表10)において提供し、それは、全ての試験した抗PD-L1 Fabアームが良好な親和性を有することを示す。
【0354】
(実施例11)
PD-1×PD-L1抗体を介したPD-L2遮断
PD-1及びPD-L1に対する治療抗体は、がん処置において有効であることが知られている一方、抗がん免疫におけるPD-L2の役割は、現在明らかでない。PD-L1遮断は、PD-L2をアップレギュレーションすることにより、処置に対する腫瘍抵抗性を強力に促進する可能性がある。PD-L1及びPD-L2は、PD-1の広い重複領域と相互作用するので、PD-1とPD-L1との間の相互作用をブロックする抗PD-1抗体がまた、PD-1とPD-L2との間の相互作用をブロックすると予測する。それ故、幾つかのPD-1/PD-L1二重特異性抗体が、PD-1/PD-L2経路をブロックし得るかどうかを決定することに決定した。
【0355】
このブロッキング活性を、2つの細胞系:PD-L2及びT細胞受容体活性化因子を発現するCHO細胞、及びPD-1を過剰発現するジャーカット/NFAT-REレポーター細胞株に基づく、Promega社が開発した生理的に関連するPD-1/PD-L2遮断レポーターアッセイにおいてin vitroで試験した。ジャーカットT細胞は、NFAT(活性化T細胞の核因子)経路を通じて活性化し得るルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する。PD-1のPD-L2との相互作用は、この経路の活性化を阻害する。しかしながら、PD-1又はPD-L2に対する抗体を用いたPD-1/PD-L2相互作用のブロッキングは、NFAT経路を活性化することができるが、PD-L1に対する抗体を用いたPD-1/PD-L2相互作用のブロッキングは、NFAT経路を活性化することができない。これは、PD-1/PD-L2遮断の程度が高いほど、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性化が高いことを意味する。
【0356】
PD-1/PD-L2遮断レポーターアッセイを、Promega社の解凍物を使用して、行い、フォーマットを使用する。PD-L2発現細胞(カタログ番号CS187127)を、細胞回復培地(10% FBSを含有するDMEM/F12)14.5mlにおいて解凍した。次に、細胞懸濁液100μlを、2枚の96ウェルアッセイプレート(Costar社、カタログ番号3917)の内部ウェルに加えた。プレートを、一晩、37℃、5% CO2、95%相対湿度においてインキュベートした。翌日、培養培地を、取り除き、連続希釈(開始濃度25μg/ml)でのアッセイ培地(4% FBSを含有するRPMI 1640)中の試験抗体40μlを、それぞれのウェルに加えた。それぞれのプレートは、参照対照として働く陰性対照(RSV G特異的抗体PG2708)及び陽性対照(5C4として本明細書において言及される、ニボルマブに基づく抗PD-1治療抗体)の連続希釈液を含有していた。PD-1エフェクター細胞(カタログ番号CS187105)を、アッセイ培地5.9mlにおいて解凍し、細胞懸濁液40μlを、それぞれのウェルに加えた。プレートを、6時間、37℃、5% CO2、95%相対湿度においてインキュベートした。次に、Bio-Glo試薬(Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム、カタログ番号G7941、G7940)80μlを加え、ルシフェラーゼ活性の量を、BioTek社シナジー2マルチモードマイクロプレートリーダーを使用して測定した。誘導の倍数を、抗体を含まないウェルに測定したものと比べて、誘導後のルシフェラーゼ活性として計算した。
【0357】
結果
試験した2つのPD-1×PD-L1二重特異性IgGは、PD-1とPD-L2との間の相互作用を減らすことができた(図18)。これは、PD-1/PD-L2経路を介した処置に対する腫瘍抵抗性を、これらの抗体が減殺するという利点をもたらす。
【0358】
陰性対照抗RSV G抗体PG2708は、PD-1とPD-L2との間の相互作用を防ぐことができなかった。
【0359】
(実施例12)
PD-1×PD-L1抗体を介したCD80遮断
免疫抑制性PD-1/PD-L1経路は、近年、広く研究されており、治療抗体ブロッキングPD-1又はPD-L1は、がんに対する有効な処置である。免疫抑制はまた、PD-1とその代替のリガンドPD-L2との間の相互作用を介して、及びCD80(B7-1)へのPD-L1結合を介して誘導されると考えられる。PD-L1上のCD80結合部位が、PD-1結合部位と重複すると思われるので、大部分の市販の抗PD-L1抗体は、PD-L1のPD-1とCD80の両方との相互作用をブロックすることを示した。しかしながら、1つの先行技術抗体(MIH3)は、PD-1:PD-L1相互作用をブロックするが、CD80:PD-L1相互作用をブロックしないように見える(Butteら、2008年)。それ故、本発明者らは、本発明者らの二重特異性抗体が、PD-L1のPD-1及びCD80との相互作用をブロックし得るかどうかを試験することを決定した。
【0360】
本実施例において、二重特異性抗体(MF7686×MF7703)を、PD-1とPD-L1との両方に対するその特異性に起因して直接試験できないので、二重特異性抗体MF7686×MF7703のブロッキング活性を、親抗PD-1(PG7686)及び抗PD-L1(PG7703)IgGも含んだPD-L1ブロッキングELISAにおいて試験した。PD-L1のPD-1又はCD80との相互作用をブロックするこれらの親IgGの能力を、抗PD-1ベンチマーク抗体5C4(ニボルマブに基づく)及び抗PD-L1ベンチマーク抗体YW243.55.S70(アテゾリズマブに基づく)のものと比較した。抗RSV G抗体PG2708を、陰性競合対照としてそれぞれのプレートにおいて使用した。
【0361】
このELISAのため、PD1-Fc(R&D systems社;カタログ番号1086-PD)又はCD80-Fc(R&D systems社;カタログ番号140-B1)を、それぞれ、1及び3μg/mlにおいてマキシソーププレートにコーティングした。コーティングしたウェルを、PBS中の4% BSAを用いてブロックした。その後、0.55μg/mlビオチン化PD-L1(BPS bioscience社;カタログ番号71105)を、PBS中の2% BSAにおいて希釈した、0.08~10μg/ml(プレートにおける最終濃度)の範囲内のIgGの存在又は非存在下で加えた。結合したビオチン化PD-L1を、PBS中の2% BSAにおいて1:2000希釈したHRPコンジュゲートストレプトアビジン(BD bioscience: カタログ番号554066)を用いて検出した。それぞれのインキュベーション工程後、ELISAプレートを、PBS-T(PBS-0.05%v/v Tween20)を用いて3回洗浄した。結合したストレプトアビジンを、TMB/H2O2染色により視覚化し、染色を、マイクロプレートリーダーを使用して450nmにおける光学密度(OD)を測定することにより、定量化した。
【0362】
結果
PD-1/PD-L1競合アッセイにおいて、二重特異性抗体のPD-L1:PD-1相互作用をブロックする能力を決定することは可能でなかった(図19、左側のパネル)。しかしながら、二重特異性抗体(MF7686及びMF7703)の両方のアームは、二価IgGフォーマットで試験したとき、PD-L1:PD-1相互作用をブロックした。PD-L1親IgG PG7703は、ベンチマークPD-L1抗体(YW243.55.S70)より強力に相互作用をブロックした。抗PD-1 IgGは、相互作用をより高い程度まで阻害し、PD-1親IgG PG7686は、PD-1ベンチマークIgG(5C4)より良好に作用する。
【0363】
CD80競合アッセイにおいて、試験した二重特異性抗体(MF7686×MF7703)は、CD80とPD-L1との間の相互作用をブロックした。これは、PD-1とCD80との間の相互作用を介した免疫抑制を、この抗体が減殺するという利点をもたらす。
【0364】
PD-1 IgGは、この相互作用を阻害することができなかった。
【0365】
(実施例13)
SEBアッセイ:混合した親と比較した二重特異性
両方の親IgGの等モル混合物とのPD-1×PD-L1二重特異性IgGの機能的比較
二重特異性抗体を、それらの親IgGの混合物と比較するために、SEBアッセイを行った。末梢血液単核細胞(PBMC)を、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)により刺激した。SEBは、Vβ3、12、14、15、17及び20 T細胞受容体鎖を発現するT細胞を特異的に活性化し、細胞が放出したIL-2のレベルは、T細胞活性化の指標である。
【0366】
本実験において、2人のドナー由来のPBMCを解凍し、洗浄し、カウントし、培養培地(RPMI1640及び10%熱不活化FBS)において濃度2×106個の細胞/mlまで再懸濁した。細胞を、平底96ウェルプレート(2×105個の細胞/ウェル)において、SEB(2000ml)の存在下で播種し、続いて、20μg/mlで始まる、抗体の6段階の10倍連続希釈液を加えた。細胞を、3日間、37℃、5% CO2、95%相対湿度において刺激し、その後、上清を収集した。プレートを、350gにおいて5分間遠心分離し、IL-2AlphaLISA(PerkinElmer社、カタログ番号AL221C)のため、上清140μlを集め、それを、製造元の指示に従い、行った。次の二重特異性抗体を試験した:PB16666(MF7686×MF7703)及びPB16672(MF6974×7689)。
【0367】
結果
図20における結果は、試験した二重特異性抗体が、T細胞を活性化することができることを示す。注目すべきは、PBMCによるSEBにより誘導したIL-2産生は、それらの親二価単一特異性抗体の等モル混合物と共にインキュベーションする場合より、細胞を、PD-1/PD-L1二重特異性抗体とインキュベーションする場合により高い。故に、試験した二重特異性抗体のそれぞれは、それらの親二価単一特異性抗体の等モル混合物と比較して、より強いT細胞活性化能を有する。
【0368】
(実施例14)
PD-1×PD-L1 T細胞応答
前の実施例のSEBアッセイにおいて、全ての試験した二重特異性PD-1×PD-L1抗体は、親IgGのものより強い免疫応答(IL-2産生)、及び親IgGの等モルの混合物のものより強い応答さえ誘導することを見出した。これらの結果は、このアッセイにおいて、PD-1とPD-L1との両方のブロッキングが、同時に、PD-1/PD-L1経路における1つの標的のみをブロッキングするより有効であることを示唆する。続く工程は、二重特異性抗体がまた、抗原-特異的CD4+T細胞アッセイにおいて既存のPD-1又はPD-L1治療抗体より有効であるかどうかを決定することであった。
【0369】
SEBアッセイにおいて、T細胞を、抗原提示細胞上に存在するT細胞受容体及びMHC-II分子の架橋結合を介して強く活性化する。しかしながら、ある特定の抗原を特異的に認識するT細胞の数は、一般に、SEBに応答するT細胞の数よりずっと少ない。抗原特異的細胞の活性化をより密接に模倣するために、抗原特異的CD4+T細胞アッセイを使用した。このアッセイにおいて、PBMCを、ドナー個体の免疫系が、共通して応答する抗原の混合物を用いて刺激する。T細胞の活性化を、IL-2及びIFNγの産生を測定することにより、評価する。
【0370】
このために、3人の健常なドナー由来のPBMCを、密度勾配により区別し、1ウェル当たり2×105個の細胞を、96ウェルプレートにおいて培養し、試験抗体の存在又は非存在下で、混合した抗原(インフルエンザ及びテタヌス毒素)を用いて刺激した。上清を、5日目に回収し、Luminexアッセイによるサイトカイン産生の解析まで、-80℃において保存した。抗体を、4箇所の用量応答曲線(10、100、1000及び10000ng/ml)に渡り試験した。それぞれのドナーについて、二重特異性PD-1×PD-L1抗体(MF7686×MF7703)の作用を、二価抗PD-L1抗体(YW243.55.S70、アテゾリズマブに基づく)及び二価抗PD-1抗体(5C4、ニボルマブに基づく)又はこれらの2つの対照抗体の1:1混合物のものと比較した。陰性対照は、抗RSV-G抗体PG2708p217であった。
【0371】
結果
図21において説明する通り、二重特異性PD-1×PD-L1抗体は、ベンチマーク対照抗体が誘導したものより高いIL-2及びIFNγのレベルを誘導した。注目すべきは、二重特異性抗体はまた、2つのベンチマーク抗体、特に、より低い濃度の2つのベンチマーク抗体の組合せにより誘導したそれらのレベルと比較して、より高いIL-2及びIFNγレベルを誘導した。これらの結果は、二重特異性PD-1×PD-L1抗体が、CD4+T細胞による抗原由来のサイトカイン放出の増強に関して、既存のPD-1若しくはPD-L1治療抗体、又はその混合物より有効であることを示す。
【0372】
(実施例15)
PD-1×PD-L1混合リンパ球反応
二重特異的PD-1×PD-L1抗体は混合リンパ球反応においてT細胞によるIFNγ産生を増強する
混合リンパ球反応(MLR)アッセイを共通して使用して、T細胞活性化及び増殖に対する抗体の作用を理解する。かかるアッセイは、かかる化合物が、腫瘍微小環境におけるかかる応答を開始するT細胞の能力に影響するかどうかの理解を目的とする。
【0373】
故に、本発明者らは、未成熟のDCを用いる同種MLRプロトコールを使用して、ベンチマーク参照抗体のものと比較して、T細胞によるIFNγ産生を増強する二重特異性PD-1×PD-L1抗体の能力を決定した。T細胞の応答性を、培養上清におけるIFNγのレベルを測定することにより、定量化した。
【0374】
このために、健常ドナー由来のヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を、バフィーコートから調製した。未成熟な単球由来樹状細胞(Mo-DC)を、磁気活性化細胞分取(MACS)を使用してCD14+細胞(EasySep Stemcell、ロット番号16C69672)を単離し、これらを分化培地において7日間培養することにより、調製した。Mo-DCについて使用したものと異なるドナー由来の応答T細胞を、T細胞単離キット(EasySep Stemcell、ロット番号16D70573)を使用して、要求される日に凍結保存したPBMCから調製して、未接触のT細胞を得た。6種の別個のMLRを行い、生物学的複製物をもたらした。
【0375】
アッセイのため、1×104個の未熟Mo-DCを、1×105個のT細胞と4日間、終濃度10μg/mLにて試験抗体の存在又は非存在下で共培養した。培養を3連で行った。上清を、培養期間の終わりに集め、製造元の指示に従い、450nmでのプレートリーダーを用いて、ELISA(R&D BioTechne社、ロット番号342687)によりIFNγについて評価した。
【0376】
結果
図22は、このアッセイの結果を示し、二価抗PD-L1抗体(YW243.55.S70)及び二価抗PD-1抗体(5C4)のものと比較して、T細胞によるIFNγ産生を増強する二重特異性PD-1×PD-L1抗体の能力を説明する。応答性におけるこの増大はまた、ベンチマーク対照抗体の存在下で見られるが、その程度はより少なかった。故に、試験した二重特異性抗体は、ベンチマーク抗体YW243.55.S70(アテゾリズマブに基づく)及び5C4(ニボルマブに基づく)と比較して、より強いT細胞活性化能力を有する。これらの結果は、二重特異性抗体が、腫瘍微小環境における免疫応答を開始するT細胞の能力を増大させること、及び二重特異性抗体の作用が、ベンチマーク抗体と比較して、より明白であることを示す。
【0377】
(実施例16)
腫瘍浸潤T細胞の増殖に対する二重特異性PD-1×PD-L1抗体の作用
腫瘍関連設定における本発明者らの二重特異性抗体を試験するために、本発明者らは、患者腫瘍材料から単離したT細胞に基づく最近開発されたex vivoアッセイの使用を作製した。Zhouらは、肝細胞癌(HCC)を有する患者から新鮮な腫瘍物質を得て、腫瘍浸潤細胞(骨髄系及びリンパ系細胞)を単離し、これにより、腫瘍浸潤T細胞の機能に対する免疫チェックポイント阻害を標的にする抗体の作用を試験する方法を提供する方法を開発した(Zhouら、2017)。ここで、本発明者らは、HCCを有する患者から材料を得て、抗PD-1×PD-L1二重特異性抗体MF7686×MF7703が、これらの患者からもたらされた腫瘍浸潤CD4+及びCD8+T細胞と反応し得るかどうかを試験した。
【0378】
このために、新鮮腫瘍材料を、腫瘍の外科的切除に好適なHCCを有する5人の患者から得た。患者のうち、手術の少なくとも3カ月前に、化学療法又は免疫抑制処置を受けたものはいなかった。Zhouら(2017)により記載される方法は、次の通りであった:腫瘍浸潤骨髄系及びリンパ系細胞を、それを、小さなピースに切断し、続いて、20~30分間、37℃、0.5mg/mLコラゲナーゼIV(Sigma-Aldrich社、セントルイス、ミズリー州)及び0.2mg/mL DNAse I(Roche社、インディアナポリス、インディアナ州)において消化することにより、新鮮組織から単離した。得られた細胞懸濁液を、100μmのポアセル濾過器(BD Biosciences社、エーレムボーデゲム、ベルギー)を通して濾過し、単核白血球を、Ficoll密度勾配遠心分離により得た。生存率を、トリプシンブルー除外により決定した。次に、細胞を、0.1μM蛍光色素カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社)を用いて標識し、10%ヒトAB血清、2mM L-グルタミン、50mM HEPESバッファー、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、5mMピルビン酸ナトリウム及び1%最小必須培地非必須アミノ酸(MEM NEAA)を補充したRPMI培地において懸濁した。次に、100μL中の1×106個の細胞を、96ウェル丸底プレートのそれぞれのウェルに移した。
【0379】
次に、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を刺激して、試験抗体の非存在又は存在下で、試験抗体及び拡大し、その後、全長腫瘍抗原グリピカン-3(GPC3)をコードするmRNAを用いて遺伝子導入した103個の自己CD40活性化B細胞芽細胞を含有する同じ培地100μLを加えることにより、活性化を誘導した。これらの細胞を、6日間、共インキュベートした。
【0380】
同時インキュベーション後、CFSE標識した細胞を回収し、抗CD8、抗CD4、及び抗CD3抗体を用いて染色した。死んだ細胞を、7-アミノアクチノマイシンD(7AAD;Invitrogen社、ペーズリー、英国)を使用して取り除き、T細胞増殖を、CFSE希釈に基づき、フローサイトメトリー解析により決定した。細胞を、FACSCanto IIフローサイトメーター(BD Biosciences社、サンディエゴ、米国)により測定し、FlowJoソフトウエアを使用して解析した。
【0381】
PD-1×PD-L1二重特異性抗体MF7686×MF7703を、抗PD-L1参照抗体YW243.55.S70(アテゾリズマブに基づく)、及び無関連の抗原、すなわち、呼吸器合胞体ウイルスG(RSV-G)に対する陰性対照抗体PG2708と比較した。抗体を含まない試料を、対照として含め、全ての条件を、IgG濃度10μg/mLでの2連で試験した。結果を、平均±SEMとして提示した。P<0.05なら、差は、統計上有意であるとみなした。
【0382】
結果
結果を、図23において示す。それぞれの個体ドナー由来のCD4+TIL(左のパネル)及びCD8+TIL(右のパネル)の増殖を、陰性対照抗体の存在下で増殖するT細胞(低レベルのCFSE)のパーセンテージを測定することにより、決定した。GPC発現B細胞を含有するが、抗体(GPC B細胞)及び非遺伝子導入B細胞(陰性対照B細胞)を含有しない対照ウェルも示す。値は、平均±SEMである(n=5)。
【0383】
本発明者らの二重特異性PD-1×PD-L1抗体を用いた又はYW243.55.S70を用いたPD-1/PD-L1経路のブロッキングは、CD4+及びCD8+TIL増殖を増強すると思われる。重要なことには、本発明者らの試験したPD-1×PD-L1抗体は、YW243.55.S70以外のトナーにおいてTILを活性化する。PD-1×PD-L1に対する増殖性GPC3特異的応答を、患者腫瘍における状況を模倣するHCC由来のこれらのTILにおいて観察した。
【0384】
これらの実験は、二重特異性フォーマットのPD-1×PD-L1 IgGを使用する加えた値、及び二重特異性PD-1×PD-L1抗体が、肝細胞癌を有する患者からもたらされたCD4+及びCD8+TILの増殖を増強し得ることを実証する。
【0385】
(実施例17)
PD-1×PD-L1のin vivo有効性研究huCD34-MDA-MB-231
本発明者らの二重特異性抗体のin vivo活性を試験するために、T細胞介在性抗腫瘍応答を誘導する二重特異性抗体MF7686×MF7703の能力を、PD-L1を発現するトリプルネガティブな乳がん(TNBC)細胞株である、3×106個のMDA-MB-231腫瘍細胞(ATCC、カタログ番号HTB-26)を皮下接種した臍帯血由来のヒトCD34+造血幹細胞(19週齢;The Jackson Laboratory、バーハーバー、メイン州)を用いて再構成したメスの免疫不全NODスキッドガンマ(NSG)マウスにおいてin vivoで研究した。血清を含まないDMEM培養培地(Life technologies社、カタログ番号10566-016)及びマトリゲルメンブレンマトリックス(Fisher Scientific社、カタログ番号CB354248)の1:1懸濁液100μlにおけるこれらの3×106個の細胞を接種した。腫瘍体積が、170~180mm3に達したとき、細胞株接種の7日後に、腫瘍担持マウスの処置を開始した。次に、マウスを、0.5又は5mg/kg MF7686×MF7703二重特異性抗体を用いて5日毎に腹腔内処置した。対照マウスを、未処置のままにするか、又は5mg/kg RSV-G抗原に特異的な陰性対照抗体(Fcサイレンシング変異を有するIgG1)を用いて5日毎に処置した。腫瘍体積を、研究ログシステムを使用して1週間に2回記録した。37日目、すなわち、処置の開始の30日後の研究のin vivoフェーズの終結の際、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、フローサイトメトリー解析により解析した。このために、腫瘍を回収し、顕微解剖し、製造元の指示に従い、腫瘍分離キット(Miltenyi Biotec社)を使用して消化した。赤血球細胞溶解後、細胞を、生存度色素及びマーカー特異的蛍光色素コンジュゲート抗体を使用したFACS解析のため染色した。細胞を、BD LSR Fortessaフローサイトメトリー解析装置を使用して走らせ、FlowJoソフトウエアパッケージを使用して解析した。生きているTILを、生存度色素陰性細胞として同定し、CD45及びCD3特異的抗体(BD Biosciences社、カタログ番号564307)について陽性染色した。続いて、T細胞分画を、CD4(BD Biosciences社、カタログ番号557852)及びCD8(BD Biosciences社、カタログ番号557834)の発現について特徴付けた。細胞を、BD LSR Fortessaフローサイトメトリー解析装置を使用して走らせ、FlowJoソフトウエアパッケージを使用して解析した。
【0386】
結果
MF7686×MF7703処置群の両方における腫瘍体積は、対照マウス群におけるものより低かったので、MF7686×MF7703二重特異性抗体は、より少ない用量の丁度0.5mg/kgにおいてでさえ、抗腫瘍応答を誘導した(図24)。フローサイトメトリー解析による、MF7686×MF7703で処置したマウス及び対照マウスにおけるTIL組成の比較は、5mg/kg MF7686×MF7703が、CD4とCD8T細胞数の両方を増す能力を有することを明らかにした(図25)。まとめると、これらのデータは、PD-L1陽性腫瘍を有するCD34+ヒト化マウスモデルにおいて、本発明者らの二重特異性抗体MF7686×MF7703が、TILの数を増す能力、並びに抗腫瘍応答を誘導する能力を有したことを示す。
【0387】
(実施例18)
PD-1×PD-L1のin vitro及びin vivo有効性研究(A549)
抗原TCR特異的シグナル伝達の関係において腫瘍細胞のT細胞仲介性細胞毒性を増強するMF7686×MF7703二重特異性抗体の能力を、A549-A2-ESO-1腫瘍細胞及びNY-ESO-1-特異的T細胞を使用してin vitroで研究した。A549-A2-ESO腫瘍細胞は、非小細胞性肺癌(NSCLC)細胞株からもたらされ、Moonら(2016)により記載される、PD-L1及びHLA-A2拘束性NY-ESO-1ペプチド抗原を発現する。NY-ESO-1-特異的T細胞を、Moonら(2016)に従い調製した。A549-A2-ESO-1腫瘍細胞(ルシフェラーゼを過剰発現する)を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)(HyClone社、カタログ番号SH30071.03)を補充したRPMI1640培地(Gibco社、カタログ番号11875-085)中のNY-ESO-1-特異的T細胞と共培養した。A549-NY-ESO-1細胞を、96ウェル平底プレートに加え、続いて、異なるエフェクター対標的(E:T)比(1:1、0.5:1、0.25:1及び0.125:1)においてNY-ESO-1特異的Ly95T細胞を加えた。細胞を、72時間、37℃にて、抗体処置あり又はなしで共培養し、これにより、MF7686×MF7703を、抗PD-1対照抗体MK-3475(ペムブロリズマブに基づく)、抗PD-L1対照抗体YW243.55.S70(アテゾリズマブに基づく)、又はMK-3475+YW243.55.S70の組合せ(10μg/mLの終濃度の全抗体)と比較した。72時間後、共培養物由来の上清を集め、製造元の指示に従い、IFNγQuantikine ELISAキット(R&D Systems社、カタログ番号DIF50)を使用して、IFNγ分泌について解析した。NY-ESO-1-特異的T細胞により誘導した細胞毒性の程度を、ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社、カタログ番号E1501)を使用して、SpectraMaxマルチモードプレートリーダーにおいて残りの発光を測定することにより、定量化した。
【0388】
結果
MF7686×MF7703及び対照抗体を用いて処理した共培養物の比較は、MF7686×MF7703が、低いE:T比においてでさえ、IFNγ放出における増大により影響される機能的T細胞の分画(図26)と、A549-NY-ESO-1腫瘍細胞に対するT細胞毒性の程度(図27)の両方を増強することを示した。注目すべきは、二重特異性抗体MF7686×MF7703は、全てのE:T比において、対照抗体YW243.55.S70と比較して、より高いIFNγ放出をもたらした。より低いE:T比において、MF7686×MF7703により誘導されたIFNγ放出は、比較可能であり、対照抗体MK-3475又は対照抗体YW243.55.S70とMK-3475の組合せにより誘導されたIFNγ放出と比較して高くさえあった。
【0389】
次に、MF7686×MF7703のT細胞仲介性抗腫瘍応答を増強する能力を、免疫不全NODスキッドガンマ(NSG)マウス(13週齢;The Jackson Laboratory、バーハーバー、メイン州)においてin vivoで研究した。マウスに、血清を含まない培養培地100μl及び等容量のマトリゲルメンブレンマトリックス(Corning社)に懸濁した5×106個のA549-A2-ESO腫瘍細胞を用いてまず皮下接種した。腫瘍が確立した(体積80~100mm3)後、マウスを、6つの群に無作為に分け、これにより、1つの群が、PBS単独の1回のIV(尾静脈)注射を受け、5つの群に、10×106個のNY-ESO1反応性Ly95 TCRコンストラクト発現ヒトT細胞を含有するPBSを注射した。腫瘍特異的遺伝子導入Ly95T細胞を含む養子移植を受けた5つの群を、続いて、PBS、MK-3475(5mg/kg)、YW243.55.S70(5mg/kg)、MF7686×MF7703(5mg/kg)、又はMK-3475(5mg/kg)+YW243.55.S70(5mg/kg)の組合せを用いて、5日毎に腹腔内処置した。4週間の期間に渡り、腫瘍体積を、研究ログシステムを使用して1週間に2回記録した。35日目、すなわち、処置の開始の28日後の研究のin vivoフェーズの終結の際、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、フローサイトメトリー解析により解析した。このために、腫瘍を回収し、顕微解剖し、製造元の指示に従い、腫瘍分離キット(Miltenyi Biotec社)を使用して消化した。赤血球細胞溶解後、細胞を、生存度色素及びマーカー特異的蛍光色素コンジュゲート抗体を使用したFACS解析のため染色した。細胞を、BD LSR Fortessaフローサイトメトリー解析装置を使用して測定し、FlowJoソフトウエアパッケージを使用して解析した。生きているTILを、生存度色素について陰性染色として同定し、CD45及びCD3特異的抗体(BD Biosciences社、カタログ番号564307)について陽性染色した。続いて、T細胞分画を、CD4(BD Biosciences社、カタログ番号557852)、CD8(BD Biosciences社、カタログ番号557834)及びGITR(eBiosciences社、カタログ番号46-5875-42)、並びにVβ13.1 TCR鎖(Miltenyi Biotec社、カタログ番号130-108-742)の発現について特徴付けて、NY-ESO-1-特異的T細胞を同定した。
【0390】
結果
図28において示す通り、MF7686×MF7703処置群における腫瘍体積が、対照マウス群におけるものより低かったので、MF7686×MF7703二重特異性抗体は、抗腫瘍応答を誘導した。注目すべきは、このMF7686×MF7703により誘導した抗腫瘍応答は、等価用量の単一の参照抗体(YW243.55.S70又はMK-347)を用いて処置したマウスにおいて観察した応答より高く、等価用量の合わせた参照抗体(YW243.55.S70+MK-3475;図28)の2倍を与えたマウスにおいて観察した応答に匹敵した。故に、二重特異性抗体MF7686×MF7703を使用したとき、腫瘍塊における同じ低減を、YW243.55.S70とMK-3475との組合せと比較して、半分のみの投薬量を用いて得た。
【0391】
フローサイトメトリー解析によるTILの解析は、参照抗体を用いて処置した群と比べて、MF7686×MF7703が、高いパーセンテージのGITR+CD8 T細胞により反映される、活性化されているものの大部分である、CD8 T細胞の総数を増す(図29)ことを示した。MF7686×MF7703を用いて処置したマウスの腫瘍は、最大のパーセンテージの総CD8 T細胞ばかりでなく、最大のパーセンテージのNY-ESO-1抗原に特異的なCD8陽性TILを有していた。注目すべきは、CD8陽性TILのパーセンテージは、PD-L1特異的対照抗体YW243.55.S70とPD-1特異的対照抗体MK-3475との組合せを用いた処置と比較して、二重特異性抗体MF7686×MF7703を用いた処置後により高かった。
【0392】
まとめると、これらのデータは、MF7686×MF7703が、T細胞の活性化を増強し、これにより、増強したT細胞仲介性細胞毒性をもたらすことを示す。in vivoで、MF7686×MF7703は、より多数のTIL、並びに参照抗体YW243.55.S70又はMK-3475を用いた1回の処置について見られた応答より高い抗腫瘍応答を誘導し、等価用量の組み合わせた参照抗体YW243.55.S70及びMK-3475の2倍見られた応答と匹敵することを示し、これにより、より少ない投薬量のMF7686×MF7703が、比較可能な抗腫瘍応答を達成するのに十分であることを示す。
【0393】
(実施例19)
PD-1×PD-L1二重特異性抗体は同時刺激依存性の様式でPD-1/PD-L1シグナル伝達をブロックする
本発明者らは、2つのPD-1×PD-L1二重特異性抗体MF7686×MF7703及びMF6974×MF7689の、活性化T細胞サイトカイン産生に対するPD-L1/PD-1エンゲージメントを阻害する能力を試験した。本発明者らは、抗CD3/抗CD28刺激を使用して、T細胞を活性化し、組換えヒトPD-L1-Fcとの共培養により、同時刺激をもたらし、それが、T細胞上のPD-1とエンゲージメントする。このPD-1/PD-L1相互作用は、細胞活性化を阻害するので、PD-1又はPD-L1に対する抗体を用いたPD-1/PD-L1相互作用のブロッキングは、細胞を再活性化し、IL-2産生をもたらす。
【0394】
二重特異性抗体のPD-L1のPD-1との相互作用をブロックする能力を、単独と組合せの両方での親抗PD-1及び抗PD-L1抗体のものと、及び単独と組合せの両方での抗PD-1ベンチマーク抗体(5C4、ニボルマブに基づく)及び抗PD-L1ベンチマーク抗体(YW243.55.S70、アテゾリズマブに基づく)のものと比較した。抗RSV抗体PG2708を、陰性対照としてそれぞれのプレート上で使用した。
【0395】
方法
同時刺激依存性T細胞活性化アッセイ
健常ドナー由来の末梢血液単核細胞(PBMC)を解凍し、9容量の培養培地(10%熱不活化(hi)FBSを有するRPMI1640)を滴下添加した。細胞を、10分間、200g、RTにて遠心分離した。細胞ペレットを、培養培地10mLにおいて再懸濁し、細胞を、一晩、37℃、5% CO2、95%相対湿度においてインキュベートすることにより、休ませた。翌日、Tリンパ球を、製造元(Stemcell Technologies社、カタログ番号19051)が記載した通りEasySep T細胞濃縮(汎CD3)精製法を使用して単離した。EasySep法は、陰性選択を使用する。簡単に述べると、PBMCを、10分間、200g、RTにて遠心分離した。細胞ペレットを、濃度5×107個の細胞/mLでEasySepバッファーにおいて再懸濁した。EasySepヒトT細胞濃縮細胞体積1mL当たりカクテル50μLを加え、混合し、10分間、RTにてインキュベートした。次に、細胞体積1mL当たりEasySep D磁気粒子50μLを加え、5分間、RTにてインキュベートした。総体積を、EasySepバッファーで2.5mLにし、細胞を混合した後、懸濁液を、5mLの丸底ファルコンチューブ(BD Biosciences社、カタログ番号352235)に移した。次に、チューブを、不所望の細胞分画を磁気に結合させるのを可能にする磁石に、5分間、RTにて置いた。次に、チューブを反転し、精製したT細胞分画を、培養培地7.5mLを含有する新しいチューブに注いだ。細胞を、200g、RTでの10分間の遠心分離により、細胞を回収し、続いて、培養培地中1×106個の細胞/mLの濃度で再懸濁した。
【0396】
アッセイの開始の1日前に、96ウェル平底プレート(Cellstar、カタログ番号655180)を、一晩、4℃にて、1ウェル当たり50μLの、PBS中の4μg/mL抗CD3抗体(クローンOKT3、eBioscience社、カタログ番号16-0037-85)及び8μg/mL組換えヒトPD-L1-Fc(R&D Systems社、カタログ番号156-B7)を用いてコーティングした。翌日、アッセイプレートを、PBSを用いて2回洗浄し、アッセイプレートの外側のウェルを、PBS 100μlで充填した。抗CD28抗体(クローン28.2、BD社、カタログ番号555725)を、濃度2μg/mL(終濃度1μg/mL)にてT細胞懸濁液に加えた。このT細胞/抗CD28懸濁液50μLを、アッセイプレートの全ての内部ウェルに加え(50,000個の細胞/ウェル)、続いて、開始濃度20μg/mL又は1μg/mLを有する、アッセイ培地(RPMI1640+10% hiFBS)中の抗体の予め調製した5段階の10倍連続希釈液50μLを加えた。プレートを覆い、72時間、インキュベーターにおいて、37℃、5% CO2、95%湿度においてインキュベートした。上清中のIL-2の濃度を、AlphaLISA(Perkin Elmer社、カタログ番号AL221F)により決定した。
【0397】
PD-1及びPD-L1の発現を、IgGを加えなかった別個のアッセイにおいてフローサイトメトリーにより決定した。細胞を、24、48及び72時間後に回収し、抗PD1又は抗PD-L1抗体を用いて染色した。次に、細胞を、2次抗体(抗ヒトIgG-PE)を用いて染色し、FACSにより解析した。
【0398】
結果
図30及び31は、抗体を含有するウェルにおいて測定したIL-2カウントの、抗体を含まないウェルにおけるものに対する比として計算した刺激指数(SI)を示す。SIは、細胞を、陰性対照抗体PG2708、又は単独(図30)及び組合せ(図31)の両方における親二価抗体と共にインキュベートした場合より、2つのPD-1×PD-L1二重特異性抗体の存在下でより高かった。注目すべきは、SIはまた、細胞を、抗PD-1ベンチマーク抗体(5C4)及び抗PD-L1ベンチマーク抗体(YW243.55.S70)単独及び組合せの両方と共にインキュベートした場合より、2つのPD-1×PD-L1二重特異性抗体の存在下でより高かった。これは、全ての試験した二重特異性抗体が、親抗体と比較して、及びベンチマーク抗体と比較して、より強い同時刺激依存性T細胞活性化活性を有することを示す。二重特異性抗体により誘導したT細胞活性化は、ベンチマーク抗体の混合物により誘導したT細胞活性化より強かった。
【0399】
図32は、抗CD3/抗CD28活性化の際にT細胞に対する経時的PD-1及びPD-L1発現における増大を示す。
【0400】
表:
【0401】
【表3】
【0402】
【表4】
【0403】
【表5】
【0404】
【表6】
【0405】
【表7】
【0406】
【表8】
【0407】
【表9】
【0408】
【表10】
【0409】
参考文献
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【外国語明細書】