(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171801
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20231128BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231128BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231128BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231128BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231128BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231128BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231128BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231128BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20231128BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M10/052
H01M4/36 C
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01G11/36
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149725
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2022147923の分割
【原出願日】2015-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2014217227
(32)【優先日】2014-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】池沼 達也
(72)【発明者】
【氏名】川上 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】門馬 洋平
(72)【発明者】
【氏名】落合 輝明
(57)【要約】
【課題】グラフェンを導電助剤として含む蓄電池用電極の製造において、穏和な条件で酸
化グラフェンを還元する反応の効率を高め、蓄電池のサイクル特性、及びレート特性を向
上させる。
【解決手段】活物質と、酸化グラフェンと、溶媒と、を有する第1の混合物を作製し、第
1の混合物に還元剤を添加し、酸化グラフェンを還元して第2の混合物を作製し、第2の
混合物に結着剤を混合して第3の混合物を作製し、第3の混合物を集電体に塗布して、前
記溶媒を蒸発させることにより活物質層を形成する蓄電池用電極の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、を備えたリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質と、前記正極活物質を被覆する領域を有する第1の多層グラフェンと、を有し、
前記正極をハーフセルに組み込み、前記ハーフセルの定電流充電時に電流の休止を行って、前記電流の休止直後の電圧と前記電流の休止3秒後の電圧との差を用いて電流休止法抵抗の測定を行った場合に、休止時の容量が195mAh/g以上240mAh/g以下の範囲において前記電流休止法抵抗が50.5オーム以上82.6オーム以下である、リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
正極と、負極と、を備えたリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質と、前記正極活物質を被覆する領域を有する第1の多層グラフェンと、を有し、
前記負極は、負極集電体と、負極活物質層とを有し、
前記負極活物質層は、負極活物質と、前記負極活物質を被覆する領域を有する第2の多層グラフェンと、を有し、
前記正極をハーフセルに組み込み、前記ハーフセルの定電流充電時に電流の休止を行って、前記電流の休止直後の電圧と前記電流の休止3秒後の電圧との差を用いて電流休止法抵抗の測定を行った場合に、休止時の容量が195mAh/g以上240mAh/g以下の範囲において前記電流休止法抵抗が50.5オーム以上82.6オーム以下である、リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
正極と、負極と、を備えたリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質と、前記正極活物質を被覆する領域を有する第1の多層グラフェンと、前記第1の多層グラフェンと接する領域を有する第3の多層グラフェンと、を有し、
前記負極は、負極集電体と、負極活物質層とを有し、
前記負極活物質層は、負極活物質と、前記負極活物質を被覆する領域を有する第2の多層グラフェンと、前記第2の多層グラフェンと接する領域を有する第4の多層グラフェンと、を有し、
前記正極をハーフセルに組み込み、前記ハーフセルの定電流充電時に電流の休止を行って、前記電流の休止直後の電圧と前記電流の休止3秒後の電圧との差を用いて電流休止法抵抗の測定を行った場合に、休止時の容量が195mAh/g以上240mAh/g以下の範囲において前記電流休止法抵抗が50.5オーム以上82.6オーム以下である、リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
正極と、負極と、を備えたリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質と、前記正極活物質を被覆する領域を有する第1の多層グラフェンと、針状、繊維状、又は粒状をなす第1の導電助剤と、を有し、
前記正極をハーフセルに組み込み、前記ハーフセルの定電流充電時に電流の休止を行って、前記電流の休止直後の電圧と前記電流の休止3秒後の電圧との差を用いて電流休止法抵抗の測定を行った場合に、休止時の容量が195mAh/g以上240mAh/g以下の範囲において前記電流休止法抵抗が50.5オーム以上82.6オーム以下である、リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
正極と、負極と、を備えたリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質と、前記正極活物質を被覆する領域を有する第1の多層グラフェンと、針状、繊維状、又は粒状をなす第1の導電助剤と、を有し、
前記負極は、負極集電体と、負極活物質層とを有し、
前記負極活物質層は、負極活物質と、前記負極活物質を被覆する領域を有する第2の多層グラフェンと、針状、繊維状、又は粒状をなす第2の導電助剤と、を有し、
前記正極をハーフセルに組み込み、前記ハーフセルの定電流充電時に電流の休止を行って、前記電流の休止直後の電圧と前記電流の休止3秒後の電圧との差を用いて電流休止法抵抗の測定を行った場合に、休止時の容量が195mAh/g以上240mAh/g以下の範囲において前記電流休止法抵抗が50.5オーム以上82.6オーム以下である、リチウムイオン二次電池。
【請求項6】
正極と、負極と、を備えたリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、正極集電体と、正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質と、前記正極活物質を被覆する領域を有する第1の多層グラフェンと、前記第1の多層グラフェンと接する領域を有する第3の多層グラフェンと、針状、繊維状、又は粒状をなす第1の導電助剤と、を有し、
前記負極は、負極集電体と、負極活物質層とを有し、
前記負極活物質層は、負極活物質と、前記負極活物質を被覆する領域を有する第2の多層グラフェンと、前記第2の多層グラフェンと接する領域を有する第4の多層グラフェンと、針状、繊維状、又は粒状をなす第2の導電助剤と、を有し、
前記正極をハーフセルに組み込み、前記ハーフセルの定電流充電時に電流の休止を行って、前記電流の休止直後の電圧と前記電流の休止3秒後の電圧との差を用いて電流休止法抵抗の測定を行った場合に、休止時の容量が195mAh/g以上240mAh/g以下の範囲において前記電流休止法抵抗が50.5オーム以上82.6オーム以下である、リチウムイオン二次電池。
【請求項7】
請求項5又は請求項6において、前記針状の第2の導電助剤は、気相成長炭素繊維である、リチウムイオン二次電池。
【請求項8】
請求項5又は請求項6において、前記繊維状の第2の導電助剤は、カーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブである、リチウムイオン二次電池。
【請求項9】
請求項5又は請求項6において、前記粒状の第2の導電助剤は、カーボンブラックである、リチウムイオン二次電池。
【請求項10】
請求項4乃至請求項9のいずれか一において、前記針状の第1の導電助剤は、気相成長炭素繊維である、リチウムイオン二次電池。
【請求項11】
請求項4乃至請求項9のいずれか一において、前記繊維状の第1の導電助剤は、カーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブである、リチウムイオン二次電池。
【請求項12】
請求項4乃至請求項9のいずれか一において、前記粒状の第1の導電助剤は、カーボンブラックである、リチウムイオン二次電池。
【請求項13】
請求項2、請求項3、請求項5乃至請求項12のいずれか一において、
前記負極活物質は、シリコンを有する、リチウムイオン二次電池。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一において、
前記正極活物質は、Mn、Ni及びCoを有する、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、蓄電池用電極、及びその製造方法、蓄電池、並びに電子機器に関する
。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の
一態様は、物、方法、又は製造方法に関する。本発明の一態様は、プロセス、マシン、マ
ニュファクチャ、又は組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。そのため、よ
り具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装
置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、又は、それらの製造方法を一例
として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
近年の携帯電話、スマートフォン、電子書籍端末(電子ブック)、携帯型ゲーム機等の携
帯型電子機器の著しい普及に伴い、その駆動電源である二次電池の小型化・大容量化の要
求が高まっている。携帯型電子機器に用いられる二次電池として、高いエネルギー密度、
大容量といった利点を有するリチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池が広く
利用されている。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、非水系二次電池の中でも高エネルギー密度を有することで広
く普及している。リチウムイオン二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)やリ
ン酸鉄リチウム(LiFePO4)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・
放出が可能な黒鉛等の活物質を含む負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネー
トなどの有機溶媒に、LiBF4やLiPF6等のリチウム塩からなる電解質を溶解させ
た非水電解液などにより構成される。リチウムイオン二次電池の充放電は、二次電池中の
リチウムイオンが非水電解液を介して正極-負極間を移動し、正極負極の活物質にリチウ
ムイオンが挿入脱離することにより行われる。
【0005】
正極又は負極には、活物質と活物質、及び活物質層と集電体とを結着させるために、結着
剤(バインダともいう。)を混入する。結着剤は、絶縁性のポリフッ化ビニリデン(PV
dF)等の高分子有機化合物が一般的であるため電気伝導性が極めて低い。このため、活
物質量に対して結着剤の割合を増加させると、電極中の活物質量の割合が相対的に低下す
るため、結果として二次電池の放電容量が低下してしまう。
【0006】
そこで、アセチレンブラック(AB)やグラファイト(黒鉛)粒子などの導電助剤を混合
することで活物質間又は活物質層-集電体間の電気伝導性を向上させている。これにより
電気伝導性の高い活物質層の提供を可能としている(特許文献1参照)。
【0007】
また、グラフェンを導電助剤として含む電極が開発されている。特許文献2には、酸化グ
ラフェン(GO(Graphene Oxideの略記)ともいう。)、活物質、及び結
着剤を混合した後に、GOを還元する工程を有する電極の製造方法が開示されている。こ
の製造方法により、少量の導電助剤で高い電気伝導性を有する活物質層を提供することが
できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-110162号公報
【特許文献2】特開2014-7141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
導電助剤としてグラフェンを有する蓄電池の性能を向上させるため、十分に酸化グラフェ
ンを還元することのできる電極の製造方法の開発が求められている。また、蓄電池の量産
を容易にするため、電極の製造方法の簡略化が求められている。
【0010】
そこで、本発明の一態様は、酸化グラフェンを効率よく還元することのできる蓄電池用電
極の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、内部抵抗が小さい
蓄電池用電極の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、蓄電池
のサイクル特性を向上させることを課題とする。また、本発明の一態様は、蓄電池のレー
ト特性を向上させることを課題とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、グラフェンを導電助剤として含む蓄電池用電極の製造方法を簡
略化することを課題とする。また、本発明の一態様は、穏和な条件で酸化グラフェンを還
元する蓄電池用電極の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、
蓄電池の製造方法を簡略化することを課題とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、均一な厚みを有する蓄電池用電極を提供することを課題とする
。また、本発明の一態様は、強度が高い蓄電池用電極及び蓄電池を提供することを課題と
する。
【0013】
または、本発明の一態様は、新規な電極、新規な蓄電池、または、新規な電極の製造方法
などを提供することを課題とするものである。なお、これらの課題の記載は、他の課題の
存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを
解決する必要はない。また、本発明の一態様では、上記課題の少なくとも一を解決するも
のとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明
らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出
することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、活物質と、酸化グラフェンと、溶媒と、を有する第1の混合物を形成
し、第1の混合物に還元剤を添加して第2の混合物を形成し、第2の混合物に結着剤を混
合して第3の混合物を形成し、第3の混合物を集電体に塗布して、前記溶媒を蒸発させる
ことにより活物質層を形成する蓄電池用電極の製造方法である。
【0015】
また、本発明の一態様は、上記構成において、室温以上100℃以下の温度で加熱するこ
とにより前記溶媒を蒸発させる蓄電池用電極の製造方法である。
【0016】
また、本発明の一態様は、集電体と、活物質層と、を有し、該活物質層は、活物質と、グ
ラフェンを有する導電助剤と、結着剤と、還元剤と、を有する蓄電池用電極である。
【0017】
また、本発明の一態様は、集電体と、活物質層と、を有し、該活物質層は、活物質と、グ
ラフェンを有する導電助剤と、結着剤と、還元剤の酸化誘導体と、を有する蓄電池用電極
である。
【0018】
また、本発明の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、を有し、第1の電極は、上記各
構成の電極であり、第1の電極は、正極または負極の一方として動作する機能を有し、第
2の電極は、正極または負極の他方として動作する機能を有する蓄電池である。
【0019】
また、本発明の一態様は、上記構成の蓄電池と、表示パネル、光源、操作キー、スピーカ
、またはマイクと、を搭載する電子機器である。
【0020】
上記各構成において、還元剤は、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒ
ドロキノン、水素化硼素ナトリウム(NaBH4)、水素化アルミニウムリチウム(Li
AlH4)、又はN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの少なくともいずれか一であると
好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様により、活物質層に含まれる酸化グラフェンを効率よく還元することがで
きる。また、本発明の一態様により、活物質層中に三次元の電気伝導経路のネットワーク
を構築することができる。上記の効果によって、本発明の一態様は、内部抵抗の小さい電
極を提供することができる。また、本発明の一態様は、蓄電池のサイクル特性を向上させ
ることができる。また、本発明の一態様は、蓄電池のレート特性を向上させることができ
る。
【0022】
また、本発明の一態様により、グラフェンを導電助剤として含む電極の製造方法を簡略化
することができる。また本発明の一態様により、穏和な条件で酸化グラフェンを還元する
電極の製造方法を提供することができる。上記の効果によって、本発明の一態様は、蓄電
池の製造方法を簡略化することができる。
【0023】
また、本発明の一態様により、活物質層を形成するための混合物が強塩基性になるのを抑
制することができる。また、本発明の一態様により、活物質層において活物質が凝集する
ことを抑制することができる。また、本発明の一態様は、結着剤のゲル化を抑制すること
ができる。上記の効果によって、本発明の一態様は、均一な厚みを有する活物質層を有す
る電極を提供することができる。また、本発明の一態様は、強度が高い電極及び蓄電池を
提供することができる。
【0024】
また、本発明の一態様により、新規な電極、新規な蓄電池、または、新規な電極の製造方
法などを提供することができる。なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げる
ものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要は
ない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らか
となるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出する
ことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図17】本発明の一態様を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異
なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態
及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同
一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の
機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0028】
なお、本明細書で説明する各図において、膜や層、基板などの厚さや領域等の各構成要素
の大きさは、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも
各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定され
ない。
【0029】
なお、本明細書等において、第1、第2などとして付される序数詞は、便宜上用いるもの
であって工程の順番や積層の順番などを示すものではない。そのため、例えば、「第1の
」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明
細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は
一致しない場合がある。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電池用電極について、
図2及び
図3を用いて
説明する。
図2(A)に電極の斜視図を、
図2(B)に活物質層の平面図を、
図2(C)
及び
図3に、活物質層の縦断面図を示す。
【0031】
図2(A)は、電極200の斜視図である。
図2(A)では電極200を矩形のシート形
状で示しているが、電極200の形状はこれに限らず、任意の形状を適宜選択することが
できる。
図2(A)においては、活物質層202は集電体201の一方の面にのみ形成し
ているが、活物質層202は集電体201の両面に形成してもよい。また、活物質層20
2は集電体201の全面に形成する必要はなく、タブと接続するための領域等、非塗布領
域を適宜設ける。
【0032】
集電体201には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等の金
属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない
材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブ
デンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる
。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコン
と反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム
、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッ
ケル等がある。集電体201は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、
エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体201は、厚みが10
μm以上30μm以下のものを用いるとよい。また、集電体201の表面に、グラファイ
トなどを用いてアンダーコート層を設けてもよい。
【0033】
図2(B)及び
図2(C)は、活物質層202の上面及び縦断面をそれぞれ示した模式図
である。活物質層202は、導電助剤としてのグラフェン204と、粒状の活物質203
と、結着剤(バインダともいう。図示せず)と、を含む。活物質層202は、グラフェン
以外の導電助剤(第2の導電助剤ともいう。図示せず)を有していてもよい。
【0034】
図2(B)に示す活物質層202の上面図のように、複数の粒状の活物質203は、複数
のグラフェン204によって被覆されている。一枚のシート状のグラフェン204は、複
数の粒状の活物質203と接続する。特に、グラフェン204がシート状であるため、粒
状の活物質203の表面の一部を包むように面接触することができる。活物質と点接触す
るアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン204は接触抵抗の低い
面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の活物質
203とグラフェン204との電気伝導性を向上させることができる。
【0035】
また、複数のグラフェン204どうしも面接触している。これはグラフェン204の形成
に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散
した酸化グラフェンを含有する混合物から溶媒を蒸発させて除去し、酸化グラフェンを還
元してグラフェンとするため、活物質層202に残留するグラフェン204は部分的に重
なり合い、互いに面接触する程度に分散している。これによって、活物質層202におい
て、電気伝導の経路が形成されている。
【0036】
図2(B)に示す活物質層202の上面図において、グラフェン204は必ずしも活物質
層202の表面でのみ他のグラフェンと重なり合うものではなく、グラフェン204の一
部は活物質層202の間に設けられる。また、グラフェン204は炭素分子の単層又はこ
れらの積層で構成される極めて薄い膜(シート)であるため、個々の粒状の活物質203
の表面をなぞるようにその表面の一部を覆って接触しており、活物質203と接していな
い部分は複数の粒状の活物質203の間で撓み、皺となり、あるいは引き延ばされて張っ
た状態を呈する。
【0037】
活物質層202の縦断面においては、
図2(C)に示すように、活物質層202の内部に
おいて概略均一にシート状のグラフェン204が分散する。
図2(C)においてはグラフ
ェン204を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有
する薄膜である。活物質層202の上面についての説明と同様に、複数のグラフェン20
4は、複数の粒状の活物質203を包むように、あるいは覆うように形成されているため
、互いに面接触している。また、グラフェン204どうしも互いに面接触することで複数
のグラフェン204により電気伝導のネットワークを形成している。
図2(C)をさらに
拡大した模式図が
図3である。複数の粒状の活物質203の表面上に張り付くようにグラ
フェン204が被覆するとともに、グラフェンどうしもまた接触してネットワークを形成
している。
【0038】
図2(B)、
図2(C)及び
図3で示したように、シート状の複数のグラフェン204は
活物質層202の内部において三次元的に分散しており、これらが互いに面接触すること
で、三次元の電気伝導性のネットワークを形成している。また、それぞれのグラフェン2
04は、複数の粒状の活物質203を被覆し面接触している。
【0039】
グラフェン204は、実施の形態2で説明する蓄電池用電極の製造方法において、還元剤
を用いて酸化グラフェンを還元することによって形成される。なお、該蓄電池用電極の製
造方法においては、活物質層202を形成するときに還元剤を使用するため、活物質層2
02に還元剤が残存していてもよい。また、還元剤は、酸化グラフェンを還元するのと同
時に酸化される。従って、活物質層202は、還元剤が酸化されることにより生成される
誘導体(以下、還元剤の酸化誘導体と呼ぶ)を含んでいてもよい。
【0040】
活物質層202に還元剤又は還元剤の酸化誘導体が存在することは、EDX(Energ
y Dispersive X-ray spectrometry)分析、XPS(X
-ray Photoelectron Spectroscopy)、又はToF-S
IMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Sp
ectrometry)等の分析手段により検出することができる。
【0041】
還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、水
素化硼素ナトリウム(NaBH4)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、ま
たはN,N-ジエチルヒドロキシルアミン、あるいはそれらの誘導体を用いることができ
る。特に、アスコルビン酸及びヒドロキノンは、ヒドラジンや水素化硼素ナトリウムに比
べ還元力が弱いため安全性が高く、工業的に利用しやすい点において好ましい。
【0042】
還元剤は、酸化グラフェンを還元する反応により、還元剤の酸化誘導体となる。ここでは
例として、アスコルビン酸の酸化還元反応について説明する。アスコルビン酸は、酸化さ
れてデヒドロアスコルビン酸となる。従って、還元剤としてアスコルビン酸を用いた場合
は、還元剤の酸化誘導体として、デヒドロアスコルビン酸が活物質層202に残存してい
てもよい。また、還元剤としてアスコルビン酸を用いる場合に限らず、還元剤の酸化誘導
体が活物質層202に残存していてもよい。
【0043】
グラフェンは、炭素が形成する六角形の骨格を平面状に延ばした結晶構造をもつ炭素材料
である。グラフェンはグラファイト結晶の一原子面を取り出したものであり、電気的、機
械的又は化学的な性質に驚異的な特徴を有することから、グラフェンを利用した高移動度
の電界効果トランジスタや高感度のセンサ、高効率な太陽電池、次世代向けの透明導電膜
など、様々な分野での応用が期待され注目を浴びている。
【0044】
本明細書において、グラフェンは単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グ
ラフェンを含むものである。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子の
シートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物の
ことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェ
ンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存してもよい。実施
の形態2で説明する蓄電池用電極の製造方法を使用することにより、酸化グラフェンの還
元反応の反応効率を高めることができる。なお、グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素
の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2atomic%以上20atom
ic%以下、好ましくは3atomic%以上10atomic%以下である。上記に述
べたように、シート状の複数のグラフェン204は活物質層202の内部において三次元
的に分散しており、これらが互いに面接触することで、三次元の電気伝導性のネットワー
クを形成している。従って、酸化グラフェンの還元反応の反応効率を高めることにより、
活物質層202及び電極200の内部抵抗を小さくすることができる。
【0045】
酸化グラフェンは、Hummers法と呼ばれる酸化法を用いて作製することができる。
Hummers法は、グラファイト粉末に、過マンガン酸カリウムの硫酸溶液、過酸化水
素水等を加えて酸化反応させて酸化グラファイトを含む混合液を作製する。酸化グラファ
イトは、グラファイトの炭素の酸化により、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基
、ヒドロキシル基等の官能基が結合する。このため、複数のグラフェンの層間距離がグラ
ファイトと比較して長くなり、層間の分離による薄片化が容易となる。次に、酸化グラフ
ァイトを含む混合液に、超音波振動を加えることで、層間距離が長い酸化グラファイトを
劈開し、酸化グラフェンを分離するとともに、酸化グラフェンを含む混合液を作製するこ
とができる。そして、酸化グラフェンを含む混合液から溶媒を取り除くことで、粉末状の
酸化グラフェンを得ることができる。
【0046】
酸化グラフェンは、過マンガン酸カリウム等の酸化剤の量を適宜調整することで形成して
もよい。例えば、グラファイト粉末に対して酸化剤の量を増加させることで、酸化グラフ
ェンの酸化度(炭素に対する酸素の原子数比)を高めることができる。従って、製造する
酸化グラフェンの量に合わせて、原料となるグラファイト粉末に対する酸化剤の量を決定
すればよい。
【0047】
なお、酸化グラフェンの作製は過マンガン酸カリウムの硫酸溶液を用いたHummers
法に限られず、例えば硝酸、塩素酸カリウム、又は硝酸ナトリウム等を使用するHumm
ers法、又はHummers法以外の酸化グラフェンの作製方法を適宜用いてもよい。
【0048】
また、酸化グラファイトの薄片化は、超音波振動の付加の他、マイクロ波やラジオ波、又
は熱プラズマの照射や、物理的応力の付加により行ってもよい。
【0049】
作製した酸化グラフェンは、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル
基等を有する。酸化グラフェンは、極性溶媒中においては、これらの官能基の有する酸素
が負電荷を帯びるため、極性溶媒と相互作用する。その一方で、異なる酸化グラフェンど
うしは、反発し、凝集しにくいため、極性溶媒中においては、酸化グラフェンは、均一に
分散しやすい。
【0050】
また、酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう。)は50nm以上100
μm以下、好ましくは800nm以上20μm以下である。酸化グラフェンのフレークサ
イズを調製することで、活物質層中のグラフェンのフレークサイズを制御することができ
る。グラフェンのフレークサイズが粒状の活物質203の平均粒径よりも大きい場合、複
数の活物質203との面接触がしやすくなるとともに、グラフェン相互の接続が容易にな
るため、活物質層202の電気伝導性の向上に効果的である。
【0051】
活物質203は、原料化合物を所定の比率で混合し焼成した焼成物を、適当な手段により
粉砕、造粒及び分級した、平均粒径や粒径分布を有する二次粒子からなる粒状の活物質で
ある。このため、
図2(B)及び
図2(C)においては、活物質203を模式的に球で示
しているが、この形状に限られるものではない。
【0052】
電極200を蓄電池の正極として用いる場合には、活物質203としては、リチウムイオ
ンの挿入及び脱離が可能な材料を用いることができる。例えば、オリビン型の結晶構造、
層状岩塩型の結晶構造、又はスピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物
等が挙げられる。
【0053】
オリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩としては、例えば、一般式LiMPO4(M
は、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)のうちの一以上)が挙げ
られる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、Li
CoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、Li
FeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以
下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMn
ePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<
1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0
<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
【0054】
特にLiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、高電位、初期酸化(充電)時に引
き抜けるリチウムイオンの存在等、活物質に求められる事項をバランスよく満たしている
ため、好ましい。
【0055】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合ケイ酸塩としては、例えば、LiCoO
2、LiNiO2、LiMnO2、Li2MnO3、LiNi0.8Co0.2O2等の
NiCo系(一般式は、LiNixCo1-xO2(0<x<1))、LiNi0.5M
n0.5O2等のNiMn系(一般式は、LiNixMn1-xO2(0<x<1))、
LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo系(NMCともいう。一般式
は、LiNixMnyCo1-x-yO2(x>0、y>0、x+y<1))が挙げられ
る。さらに、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li2MnO3-Li
MO2(M=Co、Ni、Mn)等も挙げられる。
【0056】
特に、LiCoO2は、容量が大きい、LiNiO2に比べて大気中で安定である、Li
NiO2に比べて熱的に安定である等の利点があるため、好ましい。
【0057】
スピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物としては、例えば、LiMn
2O4、Li1+xMn2-xO4(0<x<2)、LiMn2-xAlxO4(0<x
<2)、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
【0058】
LiMn2O4等のスピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物に、少量
のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1-xMxO2(0<x<1)(M=C
o、Al等))を混合すると、マンガンの溶出を抑制する、電解液の分解を抑制する等の
利点があり好ましい。
【0059】
また、正極活物質として、一般式Li(2-j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn
(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、jは0以上2以下)で表される複合酸
化物を用いることができる。一般式Li(2-j)MSiO4の代表例としては、Li(
2-j)FeSiO4、Li(2-j)NiSiO4、Li(2-j)CoSiO4、L
i(2-j)MnSiO4、Li(2-j)FekNilSiO4、Li(2-j)Fe
kColSiO4、Li(2-j)FekMnlSiO4、Li(2-j)NikCol
SiO4、Li(2-j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l
<1)、Li(2-j)FemNinCoqSiO4、Li(2-j)FemNinMn
qSiO4、Li(2-j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m
<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2-j)FerNisCotMnuSiO4(
r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等が挙げ
られる。
【0060】
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、M
n、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナ
シコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)
3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等が挙げられる。また、正極活物質
として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般
式で表される化合物、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の
金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル
型の結晶構造を有するリチウムバナジウム含有複合酸化物、バナジウム酸化物系化合物(
V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を
用いることができる。
【0061】
正極活物質の粒径は、例えば5nm以上100μm以下が好ましい。
【0062】
また、正極活物質として、組成式LixMnyMzOwで表されるリチウムマンガン複合
酸化物を用いることもできる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた
金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであるとより好まし
い。また、x/(y+z)は、0以上2未満、かつzは、0より大きく、かつ(y+z)
/wは、0.26以上0.5未満を満たすことが好ましい。なお、リチウムマンガン複合
酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、
アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム
、銅、チタン、ニオブ、シリコン、及びリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種
の元素を含んでいてもよい。また、リチウムマンガン複合酸化物は、層状岩塩型の結晶構
造を有するものであることが好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物は、層状岩塩
型の結晶構造及びスピネル型の結晶構造を有するものであってもよい。また、リチウムマ
ンガン複合酸化物は、例えば、平均粒子径が、5nm以上50μm以下であることが好ま
しい。
【0063】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類
金属イオンの場合、正極活物質として、上記リチウム化合物及びリチウムマンガン複合酸
化物において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)
またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム
、マグネシウム等)を用いてもよい。
【0064】
また、製造する蓄電池用電極を蓄電池の負極として用いる場合には、活物質203として
、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料を用いる
ことができる。
【0065】
リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料としては、
炭素系材料が挙げられる。炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン
)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボン
ブラック等がある。
【0066】
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ
系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
【0067】
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)に
リチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1以上0.3V以下 vs.Li/Li+
)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、
黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム
金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0068】
また、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料とし
て、他には、例えば、Ga、Si、Al、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Zn、
Cd、In等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は
炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは、理論容量が4200mAh/gと高い。こ
のような元素を用いた材料としては、例えば、Mg2Si、Mg2Ge、Mg2Sn、S
nS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3S
n、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、Co
Sb3、InSbおよびSbSn等がある。
【0069】
また、負極活物質として、SiO、SnO、SnO2、二酸化チタン、リチウムチタン酸
化物、リチウム-黒鉛層間化合物、五酸化ニオブ、酸化タングステンまたは酸化モリブデ
ン等の酸化物を用いることができる。
【0070】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつ
Li3-xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6
Co0.4Nを用いたリチウムイオン二次電池は、大きな充放電容量(900mAh/g
、1890mAh/cm3)を示すため、好ましい。
【0071】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、
正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせ
ることができ、好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合で
も、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質と
してリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0072】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば
、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウム
と合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反
応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O
3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、G
e3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3
等のフッ化物を用いることもできる。
【0073】
粒状の活物質203は、一次粒子の平均粒径が、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置
で測定した場合に、500nm以下、好ましくは50nm以上500nm以下のものを用
いるとよい。この粒状の活物質203の複数と面接触するために、グラフェン204は一
辺の長さが50nm以上100μm以下、より好ましくは800nm以上20μm以下で
あるとよい。
【0074】
活物質層202に含まれる結着剤(バインダ)には、代表的なポリフッ化ビニリデン(P
VdF)の他、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、エチ
レンプロピレンジエンポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジ
エンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンまた
はニトロセルロース等を用いることができる。
【0075】
また、活物質層202は、第2の導電助剤を有してもよい。活物質層202が、グラフェ
ンと第2の導電助剤を有する場合、活物質層中の電気伝導の三次元のネットワークをより
複雑な形状にすることができる。したがって、蓄電装置の使用中に活物質層202中の電
気伝導経路が切断するのを抑制することができる。第2の導電助剤としては、例えば、天
然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛または炭素繊維などを用いることがで
きる。また、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末もしくは金属繊維また
は導電性セラミックス材料等を用いることができる。
【0076】
炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の
炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボ
ンナノチューブなどを用いることができる。また、炭素繊維として、気相成長炭素繊維(
VGCF:Vapor-Grown Carbon Fiber)(登録商標)を用いる
ことができる。VGCF(登録商標)の代表値は、繊維径150nm、繊維長10μm以
上20μm以下、真密度2g/cm3、比表面積13m2/gである。なお、繊維径とは
、SEM(Scanning Electron Microscope)で観察して、
二次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面
に外接する真円の径のことを指す。また、真密度とは、物質自身が占める体積だけを密度
算定用の体積とする密度のことを指す。また、比表面積とは、対象物について単位質量あ
たりの表面積または単位体積あたりの表面積のことである。
【0077】
針状の形状を有するVGCF(登録商標)は、高い導電性を有するという優れた電気特性
、及び高い機械的強度を有するという優れた物理特性を有する。そのため、VGCF(登
録商標)を導電助剤として用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大さ
せることができる。
【0078】
また、導電助剤として粒状の材料を用いることもできる。粒状の材料としては、代表的に
は直径3nm以上500nm以下のアセチレンブラックや、ケッチェンブラック(登録商
標)などのカーボンブラックを用いることができる。
【0079】
薄片状や、針状、繊維状の導電助剤は、活物質どうしをつなぐ役目を果たし、電池の劣化
を抑制する。また、これらの材料は、活物質層202の形状を維持する構造体、或いは緩
衝材としても機能する。活物質層202の形状を維持する構造体、或いは緩衝材としても
機能するということは、活物質の膨張、収縮が繰り返される場合や、二次電池を曲げた時
などで、集電体と活物質との間で剥がれが生じにくくなる。また、上記材料に代えてアセ
チレンブラックや、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラックを用いても
よいが、VGCF(登録商標)を用いると、活物質層202の形状を維持するための強度
が大きくできるため、好ましい。活物質層202の形状を維持するための強度が大きくで
きると、二次電池の曲げなどの変形による劣化を防止することができる。
【0080】
以上に示した活物質層202は、活物質層202の総重量に対して、活物質203を80
wt%以上95wt%以下、グラフェンを0.1wt%以上8wt%以下、結着剤を1w
t%以上10wt%以下の割合で含有することが好ましい。また、活物質層202が、第
2の導電助剤を有する場合は、グラフェンと第2の導電助剤を合計した重量が、活物質層
202の総重量に対して、0.1wt%以上8wt%以下であると好ましい。
【0081】
本実施の形態に示すように、粒状の活物質203の平均粒径よりも大きいグラフェン20
4が、活物質層202中において、隣接する他のグラフェン204の一以上と互いに面接
触する程度に分散し、粒状の活物質203の表面の一部を包むように面接触していること
で、少量の導電助剤で、充填量が高く高密度化された活物質層を含む蓄電池用電極を提供
することができる。
【0082】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態
において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定さ
れない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載され
ているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様と
して、グラフェンを蓄電池用電極に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、こ
れに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、グラフェンまたは酸化グラ
フェンは、容量が非常に大きいキャパシタであるスーパーキャパシタのための電極として
用いたり、酸素還元電極触媒として用いたり、潤滑油より低摩擦な分散液の材料として用
いたり、表示装置や太陽電池などのための透明電極として用いたり、ガスバリア材として
用いたり、機械的強度が高くて軽量なポリマー材料として用いたり、放射能汚染水に含ま
れるウランやプルトニウムを検出するための高感度ナノセンサの材料として用いたり、ま
たは放射性物質を取りのぞくための材料として用いたりすることができる。または例えば
、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様として、グラフェンを蓄電池
用電極に適用しなくてもよい。
【0083】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0084】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で例示した活物質、導電助剤、結着剤を用いて、活物質
層202を含む電極200を製造する方法について、
図1を参照して説明する。
【0085】
まず、活物質、酸化グラフェン、及び溶媒を混練し、第1の混合物を形成する(ステップ
S101)。このとき、第2の導電助剤を加えてもよい。活物質、酸化グラフェン、第2
の導電助剤については、実施の形態1で説明した材料を用いることができる。
【0086】
混合物形成のための溶媒としては、極性溶媒を用いることができる。例えば、メタノール
、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DM
F)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか
一種又は二種以上の混合液を用いることができる。特にNMPは、酸化グラフェンをよく
分散させることができるため、好ましい。
【0087】
次に、第1の混合物に固練り(高粘度の状態で混練)を行うことで、酸化グラフェン及び
活物質の凝集をほどくことができる。また、酸化グラフェンは、極性溶媒中において官能
基の酸素が負電荷を帯びるため、異なる酸化グラフェンどうしで凝集しにくい。このため
、活物質と酸化グラフェンをより均一に分散させることができる。
【0088】
次に、第1の混合物に還元剤を添加し混合することにより酸化グラフェンを還元して第2
の混合物を形成する(ステップS102)。還元剤は少量の溶媒で溶かしてから第1の混
合物に添加すると、混合が容易になり好ましい。このステップにより、酸化グラフェンを
還元し、グラフェンとすることができる。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱
離されず、一部の酸素は、グラフェンに残存してもよい。
【0089】
還元剤としては、実施の形態1で説明した材料を用いることができる。
【0090】
還元剤を溶解させる溶媒としては、還元剤の溶解性が高く、沸点が低い溶媒を用いること
ができる。たとえば、水、メタノールまたはエタノール等を使用すればよい。
【0091】
還元剤を添加した混合物を、30℃以上200℃以下、好ましくは50℃以上100℃以
下で加熱してもよい。加熱により酸化グラフェンの還元反応を促進することができる。な
お、雰囲気は特に限定されない。
【0092】
なお、還元剤を添加せず、酸化グラフェンを有する混合物を加熱することにより酸化グラ
フェンを還元することができる。ただし、加熱によって酸化グラフェンを十分に還元させ
るためには、高温での加熱が必要となる。従って、電極作製に用いる材料又は装置の耐熱
温度等の制限によって、酸化グラフェンを十分高温に加熱することができず、還元が不十
分になる場合がある。一方、本発明の一態様では、還元剤を添加することで、高温で加熱
をしなくても酸化グラフェンを還元することができる。従って、ステップS102に示す
方法により、穏和な条件で酸化グラフェンを還元する反応の効率を高めることができる、
といえる。
【0093】
還元剤の重量は、第1の混合物に含まれる酸化グラフェンの重量に対して、5wt%以上
500wt%以下の割合とするとよい。また、還元剤の重量は、ステップS101で使用
した酸化グラフェンの酸化度に応じて変更してもよい。
【0094】
ここで、高密度な活物質を用いると、活物質層202の密度が高くなることがある。高密
度な活物質としては、例えば、組成式LixMnyMzOwで表されるリチウムマンガン
複合酸化物、LiCoO2、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo
系等が挙げられる。活物質層202を形成した後に酸化グラフェンの還元処理を行うと、
酸化グラフェンを十分に還元することができない場合がある。これは活物質層202内の
空隙が非常に少なく、還元剤が活物質の深層にまで十分に浸透しないことが原因であると
考えられる。
【0095】
一方、本発明の一態様では、ステップS102に示すように、活物質層を形成する前の第
1の混合物に還元剤を添加することで、酸化グラフェンを還元する。第1の混合物中に還
元剤を添加することで、還元剤が混合物中に広く行き渡るため、第2の混合物に含まれる
酸化グラフェンを、高い反応効率で還元することができる。従って、後のステップS10
4において、酸化グラフェンが高い反応効率で還元された活物質層202を形成すること
ができる。
【0096】
また、電極作製後に、電極それぞれにおいて酸化グラフェンを還元する場合に比べて、第
1の混合物中に還元剤を添加して、酸化グラフェンを還元する方が、一度に大量の酸化グ
ラフェンを還元することができる場合がある。つまり、本発明の一態様は、工程の簡略化
や量産性の向上が可能な方法であるといえる。
【0097】
なお、活物質として塩基性を有する活物質を用いると、第2の混合物が塩基性となる場合
がある。この場合に、続くステップS103において、PVdFを第2の混合物に加える
と、PVdFがゲル化し、第3の混合物を均一に混練することが困難になる場合がある。
一方、活物質として塩基性を有する活物質を用いる場合でも、ステップS102において
、還元剤として酸を添加すると、第2の混合物が強い塩基性となるのを抑制することがで
きる。従って、続くステップS103において、PVdFのゲル化を抑制することができ
るため、均一に混練された第3の混合物を作製することができる。従って、結着剤が均一
に分布した活物質層を形成することができるため、均一な厚みを有する電極を作製するこ
とができる。また、強度が高く、例えば外的な衝撃によって破壊されにくい電極を作製す
ることができる。
【0098】
塩基性を有する活物質としては、例えば組成式LixMnyMzOwで表されるリチウム
マンガン複合酸化物等が挙げられる。
【0099】
還元剤として用いることのできる酸としては、例えばアスコルビン酸、ヒドロキノン等が
挙げられる。
【0100】
また、酸に対して不安定な活物質や、結着剤を用いる場合は、ステップS102において
、還元剤として塩基を用いると、より好ましい。酸に対して不安定な活物質としては、例
えば、LiCoO2、LiFePO4等が挙げられる。また、酸に対して不安定な結着剤
としては、例えば、SBR等が挙げられる。また、還元剤として用いることのできる塩基
としては、例えば、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、水素化硼素ナトリウム、又はN,
N-ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
【0101】
このように、本発明の一態様では、還元剤として酸を用いることで、塩基性を有する活物
質と、強い塩基性の混合物中でゲル化する結着剤とを組み合わせて、均一な厚みを有する
電極や強度が高い電極を作製することができる。また、還元剤として塩基を用いることで
、酸に対して不安定な活物質や、結着剤を用いた電極を作製することもできる。本発明の
一態様を適用することで、活物質や結着剤に用いる材料やその組み合わせの選択の幅が広
がり、好ましい。
【0102】
ここで、第2の混合物を、減圧雰囲気下、20℃以上80℃以下、5分以上10時間以下
で加熱することにより、還元剤とともに添加した溶媒を除去する操作を行ってもよい。
【0103】
次に、第2の混合物に結着剤を加え、固練りを行い、第3の混合物(ペーストともいう)
を形成する(ステップS103)。結着剤としては、実施の形態1で説明した材料を用い
ることができる。
【0104】
次に、第3の混合物を集電体に塗布して、溶媒を蒸発させることにより活物質層を形成す
る(ステップS104)。より具体的には、第3の混合物および集電体を、20℃以上1
70℃以下、1分以上10時間以下加熱して、第3の混合物に含まれる溶媒を蒸発させる
ことによって、活物質層を形成することができる。なお、雰囲気は特に限定されない。
【0105】
以上の工程により、活物質203とグラフェン204が均一に分散された活物質層202
を有する電極200を作製することができる。なお、この工程の後、電極200に対して
、加圧工程を行っても良い。
【0106】
本実施の形態で説明したように、活物質と、酸化グラフェンと、溶媒を含む第1の混合物
に、還元剤を添加し加熱することにより、穏和な条件で酸化グラフェンを還元することが
できる。また、酸化グラフェンを還元する反応の効率を高めることができる。また、グラ
フェンを含む第2の混合物を用いて第3の混合物を作製し、集電体に塗布し、溶媒を蒸発
させることによって、穏和な条件でグラフェンを導電助剤として含む電極を作製すること
ができる。また、均一な厚みを有する電極を作製することができる。また、強度が高く、
外的な衝撃によって破壊されにくい電極を作製することができる。従って、本実施の形態
で説明した電極の製造方法を用いて蓄電池を作製することにより、蓄電池のサイクル特性
及びレート特性を向上させることができる。また、蓄電池の製造方法を簡略化することが
できる。また、強度が高く、例えば外的な衝撃によって破壊されにくい蓄電池を作製する
ことができる。
【0107】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0108】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で示した製造方法により製造した蓄電池用電極を用いた
蓄電池の構造について、
図4乃至
図7を参照して説明する。
【0109】
(コイン型蓄電池)
図4(A)は、コイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、
図4(B)は、その断
面図である。
【0110】
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶3
02とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正
極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306に
より形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けら
れた負極活物質層309により形成される。正極活物質層306と負極活物質層309と
の間には、セパレータ310と、電解液(図示せず)とを有する。
【0111】
正極304又は負極307の少なくとも一方は、実施の形態2で示した本発明の一形態に
係る蓄電池用電極の製造方法を用いて作製することができる。
【0112】
正極304又は負極307のいずれか一方に、実施の形態2で示した蓄電池用電極の製造
方法を用いない場合の、正極活物質層306又は負極活物質層309の構成を示す。
【0113】
正極活物質層306は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(バ
インダ)、正極活物質層306の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
【0114】
正極活物質、結着剤、及び導電助剤としては、実施の形態1で説明した材料を用いること
ができる。
【0115】
負極活物質層309は、負極活物質の他、負極活物質の密着性を高めるための結着剤(バ
インダ)、負極活物質層309の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
【0116】
負極活物質、結着剤、及び導電助剤としては、実施の形態1で説明した材料を用いること
ができる。
【0117】
また、負極活物質層309の表面に、酸化物等の被膜を形成してもよい。充電時において
電解液の分解等により形成される被膜は、その形成時に消費された電荷量を放出すること
ができず、不可逆容量を形成する。これに対し、酸化物等の被膜をあらかじめ負極活物質
層309の表面に設けておくことで、不可逆容量の発生を抑制又は防止することができる
。
【0118】
このような負極活物質層309を被覆する被膜には、ニオブ、チタン、バナジウム、タン
タル、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、クロム、アルミニウム若
しくはシリコンのいずれか一の酸化膜、又はこれら元素のいずれか一とリチウムとを含む
酸化膜を用いることができる。このような被膜は、従来の電解液の分解生成物により負極
表面に形成される被膜に比べ、十分緻密な膜である。
【0119】
例えば、五酸化ニオブ(Nb2O5)は、電気伝導度が10-9S/cmと低く、高い絶
縁性を示す。このため、酸化ニオブ膜は、充電時に、負極活物質と電解液とが接触するこ
とにより起きる電解液等の電気化学的な分解反応を阻害する。一方で、酸化ニオブのリチ
ウム拡散係数は10-9cm2/secであり、高いリチウムイオン伝導性を有する。こ
のため、リチウムイオンを透過させることが可能である。また、酸化シリコンや酸化アル
ミニウムを用いてもよい。
【0120】
負極活物質層309を被覆する被膜の形成には、例えばゾル-ゲル法を用いることができ
る。ゾル-ゲル法とは、金属アルコキシドや金属塩等からなる溶液を、加水分解反応・重
縮合反応により流動性を失ったゲルとし、このゲルを焼成して薄膜を形成する方法である
。ゾル-ゲル法は液相から薄膜を形成する方法であるから、原料を分子レベルで均質に混
合することができる。このため、溶液の段階の金属酸化膜の原料に、黒鉛等の負極活物質
を加えることで、容易にゲル中に活物質を分散させることができる。このようにして、負
極活物質層309の表面に被膜を形成することができる。当該被膜を用いることで、蓄電
体の容量の低下を防止することができる。
【0121】
セパレータ310は、セルロース(紙)、ポリプロピレンまたはポリエチレン等の、空孔
を有する絶縁体を用いることができる。
【0122】
電解液として、支持電解質を含む電解液の他、固体電解質や、電解液の一部をゲル化させ
たゲル電解質を用いる事が出来る。
【0123】
支持電解質としてキャリアイオンを有する材料を用いる事が出来る。支持電解質の代表例
としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、
Li(CF3SO2)2NおよびLi(C2F5SO2)2N等のリチウム塩がある。こ
れらの電解質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用
いてもよい。
【0124】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属
イオンの場合、電解質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ
金属(例えばナトリウムやカリウム)、アルカリ土類金属(例えばカルシウム、ストロン
チウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
【0125】
また、電解液の溶媒としては、キャリアイオンが移動可能な材料を用いる事が出来る。電
解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例
としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネ
ート、ジエチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメト
キシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができ
る。また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対す
る安全性が高まる。また、蓄電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子
材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエ
チレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等
がある。また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(特に常温溶
融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度
が上昇しても、蓄電池の破裂や発火等を防ぐ事が出来る。イオン液体は、カチオンとアニ
オンからなる。イオン液体を構成する有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、
三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオン
や、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオンといった芳香族カチオンが挙げら
れる。また、イオン液体を構成するアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメ
チド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオ
ン、テトラフルオロボレート、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェ
ート、またはパーフルオロアルキルホスフェートが挙げられる。
【0126】
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、P
EO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができ
る。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電
池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0127】
正極缶301、負極缶302には、二次電池の充放電時において電解液などの液体に対し
て耐腐食性を有するニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、当該金属の合金、当該金
属と他の金属との合金(例えば、ステンレスなど)、当該金属の積層、当該金属と前述の
合金との積層(例えば、ステンレス\アルミニウムなど)、当該金属と他の金属との積層
(例えば、ニッケル\鉄\ニッケルなど)を用いることができる。正極缶301は正極3
04と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
【0128】
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解質に含浸させ、
図4(B)に
示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極
缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して
圧着してコイン型の蓄電池300を製造する。
【0129】
(ラミネート型蓄電池)
図5はラミネート型の蓄電池500の外観図を示す。また、
図6(A)及び
図6(B)は
、
図5に一点鎖線で示すA1-A2断面及びB1-B2断面を示す。ラミネート型の蓄電
池500は、正極集電体501及び正極活物質層502を有する正極503と、負極集電
体504及び負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液5
08と、外装体509と、を有する。正極503と負極506との間にセパレータ507
が設置されている。また、外装体509で囲まれた領域内には電解液508が注入されて
いる。
【0130】
図5に示すラミネート型の蓄電池500において、正極集電体501及び負極集電体50
4は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体501
及び負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置される。
【0131】
ラミネート型の蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリカーボネート、アイオノマーまたはポリアミド等の材料からなる膜上に、
アルミニウム、ステンレス、銅またはニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さら
に該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂等の絶
縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。このよう
な三層構造とすることで、電解液や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し、併
せて耐電解液性を有する。
【0132】
(円筒型蓄電池)
次に、円筒型の蓄電池の一例について、
図7を参照して説明する。円筒型の蓄電池600
は、
図7(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底
面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)60
2とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0133】
図7(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶6
02の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回
された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回
されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、
二次電池の充放電時において電解液などの液体に対して耐腐食性を有するニッケル、アル
ミニウム、チタン等の金属、当該金属の合金、当該金属と他の金属との合金(例えば、ス
テンレスなど)、当該金属の積層、当該金属と前掲した合金との積層(例えば、ステンレ
ス\アルミニウムなど)、当該金属と他の金属との積層(例えば、ニッケル\鉄\ニッケ
ルなど)を用いることができる。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレー
タが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。
また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入され
ている。非水電解液は、コイン型やラミネート型の蓄電池と同様のものを用いることがで
きる。
【0134】
正極604及び負極606は、上述したコイン型の蓄電池の正極及び負極と同様に製造す
ればよいが、円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物
質を形成する点において異なる。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接
続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子60
3及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正
極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗
溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperatu
re Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続され
ている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャッ
プ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611
は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を
制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTi
O3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0135】
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、ラミネート型及び円筒型の蓄電池を
示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができ
る。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレ
ータが捲回された構造であってもよい。
【0136】
本実施の形態で示すコイン型の蓄電池300、蓄電池500、蓄電池600の正極又は負
極には、本発明の一態様に係る蓄電池用電極の製造方法により作製された電極が用いられ
ている。そのため、コイン型の蓄電池300、蓄電池500、蓄電池600の放電容量を
高めることができる。
【0137】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。ただし、本発明の一態様
は、これらに限定されない。つまり、本実施の形態では、様々な発明の態様が記載されて
いるため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様とし
て、リチウムイオン二次電池に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに
限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、様々な二次
電池、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニ
ッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、もしくは、酸
化銀・亜鉛蓄電池、一次電池、キャパシタ、または、リチウムイオンキャパシタ、などに
適用してもよい。また、固体電池または空気電池等に適用してもよい。または例えば、場
合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に適
用しなくてもよい。
【0138】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0139】
(実施の形態4)
本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池は、電力により駆動する様々な電気機
器の電源として用いることができる。
【0140】
本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池を用いた電気機器の具体例として、テ
レビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型あるいはノート型のパーソナルコ
ンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Dis
c)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、ポータブルC
Dプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛
け時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、
電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍端末、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメ
ラ、デジタルスチルカメラ、玩具、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気
炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナ、
加湿器、除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電
気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソー
等の電動工具、煙感知器、透析装置等の医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信
号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム
、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、
蓄電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれ
るものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併
せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらの
タイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自
動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型又は大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航
空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
【0141】
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための主電源として、本発明の一態様
に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池を用いる事が出来る。あるいは、上記電気機器は、上
記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行な
う事が出来る無停電電源として、本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池を用
いる事が出来る。あるいは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への
電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行なうための補助電源として、本発明
の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池を用いる事が出来る。
【0142】
図8に、上記電気機器の具体的な構成を示す。
図8において、表示装置700は、本発明
の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池704を用いた電気機器の一例である。具体
的に、表示装置700は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体701、表示部70
2、スピーカ部703、蓄電池704等を有する。本発明の一態様に係る蓄電池用電極を
用いた蓄電池704は、筐体701の内部に設けられている。表示装置700は、商用電
源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電池704に蓄積された電力を用いること
もできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発
明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池704を無停電電源として用いることで、
表示装置700の利用が可能となる。
【0143】
表示部702には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装
置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Devic
e)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field E
mission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0144】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など
、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0145】
図8において、据え付け型の照明装置710は、本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用
いた蓄電池713を用いた電気機器の一例である。具体的には、照明装置710は筐体7
11、光源712、蓄電池713等を有する。
図8では、蓄電池713が、筐体711及
び光源712が据え付けられた天井714の内部に設けられている場合を例示しているが
、蓄電池713は、筐体711の内部に設けられていても良い。照明装置710は、商用
電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電池713に蓄積された電力を用いるこ
ともできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本
発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池713を無停電電源として用いることで
、照明装置710の利用が可能となる。
【0146】
なお、
図8では天井714に設けられた据え付け型の照明装置710を例示しているが、
本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池は、天井714以外、例えば側壁71
5、床716、窓717等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、
卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0147】
また、光源712には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる
。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素
子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0148】
図8において、室内機720及び室外機724を有するエアコンディショナは、本発明の
一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池723を用いた電気機器の一例である。具体的
に、室内機720は、筐体721、送風口722、蓄電池723等を有する。
図8では、
蓄電池723が、室内機720に設けられている場合を例示しているが、蓄電池723は
室外機724に設けられていても良い。あるいは、室内機720と室外機724の両方に
、蓄電池723が設けられていても良い。エアコンディショナは、商用電源から電力の供
給を受けることもできるし、蓄電池723に蓄積された電力を用いることもできる。特に
、室内機720と室外機724の両方に蓄電池723が設けられている場合、停電などに
より商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電池用電極
を用いた蓄電池723を無停電電源として用いることで、エアコンディショナの利用が可
能となる。
【0149】
なお、
図8では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナを例示
しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディ
ショナに、本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池を用いる事も出来る。
【0150】
図8において、電気冷凍冷蔵庫730は、本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄
電池734を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫730は、筐体7
31、冷蔵室用扉732、冷凍室用扉733、蓄電池734等を有する。
図8では、蓄電
池734が、筐体731の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫730は、商用電源か
ら電力の供給を受ける事も出来るし、蓄電池734に蓄積された電力を用いる事も出来る
。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態
様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池734を無停電電源として用いる事で、電気冷凍冷
蔵庫730の利用が可能となる。
【0151】
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気
機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助
するための補助電源として本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池を用いる事
で、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐ事が出来る。
【0152】
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量の
うち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電
池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑える事
が出来る。例えば、電気冷凍冷蔵庫730の場合、気温が低く、冷蔵室用扉732、冷凍
室用扉733の開閉が行われない夜間において、蓄電池734に電力を蓄える。そして、
気温が高くなり、冷蔵室用扉732、冷凍室用扉733の開閉が行われる昼間において、
蓄電池734を補助電源として用いる事で、昼間の電力使用率を低く抑える事が出来る。
【0153】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施する事が可能である。
【0154】
(実施の形態5)
次に、電気機器の一例である携帯情報端末について、
図9を用いて説明する。
【0155】
図9(A)及び
図9(B)に2つ折り可能なタブレット型端末800を示す。
図9(A)
は、開いた状態であり、タブレット型端末800は、筐体801、表示部802a、表示
部802b、表示モード切り替えスイッチ803、電源スイッチ804、省電力モード切
り替えスイッチ805、操作スイッチ807、を有する。
【0156】
表示部802aは、一部をタッチパネルの領域808aとすることができ、表示された操
作キー809にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部802aにお
いては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチ
パネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部802aの全て
の領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部802aの全面
をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部802bを表示画面として用い
ることができる。
【0157】
また、表示部802bにおいても表示部802aと同様に、表示部802bの一部をタッ
チパネルの領域808bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り
替えボタン810が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部80
2bにキーボードボタン表示することができる。
【0158】
また、タッチパネルの領域808aとタッチパネルの領域808bに対して同時にタッチ
入力することもできる。
【0159】
また、表示モード切り替えスイッチ803は、縦表示または横表示などの表示の向きを切
り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイ
ッチ805は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光
量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだ
けでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵
させてもよい。
【0160】
また、
図9(A)では表示部802bと表示部802aの表示面積が同じ例を示している
が特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質
も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとして
もよい。
【0161】
図9(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末800は、筐体801、太陽電池8
11、充放電制御回路850、バッテリー851、DCDCコンバータ852を有する。
なお、
図9(B)では充放電制御回路850の一例としてバッテリー851、DCDCコ
ンバータ852を有する構成について示しており、バッテリー851は、上記実施の形態
で説明した本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池を有している。
【0162】
なお、タブレット型端末800は2つ折り可能なため、未使用時に筐体801を閉じた状
態にすることができる。従って、表示部802a、表示部802bを保護できるため、耐
久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末800を提供するこ
とができる。
【0163】
また、この他にも
図9(A)及び
図9(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(
静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表
示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機
能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することが
できる。
【0164】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池811によって、電力をタッチパネル、表
示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池811は、筐体
801の片面又は両面に設けることができ、バッテリー851の充電を効率的に行なう構
成とすることができる。
【0165】
また、
図9(B)に示す充放電制御回路850の構成、及び動作について
図9(C)に示
したブロック図を用いて説明する。
図9(C)には、太陽電池811、バッテリー851
、DCDCコンバータ852、コンバータ853、スイッチSW1乃至SW3、表示部8
02について示しており、バッテリー851、DCDCコンバータ852、コンバータ8
53、スイッチSW1乃至SW3が、
図9(B)に示す充放電制御回路850に対応する
箇所となる。
【0166】
まず、外光により太陽電池811により発電がされる場合の動作の例について説明する。
太陽電池で発電した電力は、バッテリー851を充電するための電圧となるようDCDC
コンバータ852で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部802の動作に太陽電池
811からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ853で表
示部802に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部802での表
示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー851の充電を
行なう構成とすればよい。
【0167】
なお、太陽電池811については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧
電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッ
テリー851の充電を行なう構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受
信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行なう構
成としてもよい。
【0168】
また、上記実施の形態で説明した本発明の一態様に係る蓄電池用電極を用いた蓄電池を具
備していれば、
図9に示した電気機器に特に限定されない事は言うまでもない。
【0169】
(実施の形態6)
さらに、電気機器の一例である移動体の例について、
図10を用いて説明する。
【0170】
先の実施の形態で説明した蓄電池を制御用のバッテリーに用いる事が出来る。制御用のバ
ッテリーは、プラグイン技術や非接触給電による外部からの電力供給により充電をする事
が出来る。なお、移動体が鉄道用電気車両の場合、架線や導電軌条(導電レール)からの
電力供給により充電をする事が出来る。
【0171】
図10(A)及び(B)は、電気自動車の一例を示している。電気自動車860には、バ
ッテリー861が搭載されている。バッテリー861の電力は、制御回路862により出
力が調整されて、駆動装置863に供給される。制御回路862は、図示しないROM、
RAMおよびCPU等を有する処理装置864によって制御される。
【0172】
駆動装置863は、直流電動機若しくは交流電動機単体、又は電動機と内燃機関と、を組
み合わせて構成される。処理装置864は、電気自動車860の運転者の操作情報(加速
、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報
など)の入力情報に基づき、制御回路862に制御信号を出力する。制御回路862は、
処理装置864の制御信号により、バッテリー861から供給される電気エネルギーを調
整して駆動装置863の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示してい
ないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
【0173】
バッテリー861は、プラグイン技術による外部からの電力供給により充電することがで
きる。例えば、商用電源から電源プラグを通じてバッテリー861に充電する。充電は、
AC/DCコンバータ等の変換装置を介して、一定の電圧値を有する直流定電圧に変換し
て行なうことができる。バッテリー861として、本発明の一態様に係る蓄電池用電極を
用いた蓄電池を搭載することで、電池の高容量化などに寄与することができ、利便性を向
上させることができる。また、バッテリー861の特性の向上により、バッテリー861
自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、燃費を向上させる事が出来る
。
【0174】
なお、本発明の一態様の蓄電池を具備していれば、上記で示した電気機器に特に限定され
ない事は言うまでもない。
【0175】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施する事が可能である。
【0176】
(実施の形態7)
上記実施の形態で説明した材料を含む電池セル(たとえば、実施の形態3で説明した蓄電
装置)と組み合わせて用いることができる電池制御ユニット(Battery Mana
gement Unit:BMU)、及び該電池制御ユニットを構成する回路に適したト
ランジスタについて、
図11乃至
図17を参照して説明する。本実施の形態では、特に直
列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットについて説明する。
【0177】
直列に接続された複数の電池セルに対して充放電を繰り返していくと、電池セル間の特性
のばらつきに応じて、容量(出力電圧)が異なってくる。直列に接続された電池セルでは
、全体の放電時の容量が、容量の小さい電池セルに依存する。容量にばらつきがあると放
電時の容量が小さくなる。また、容量が小さい電池セルを基準にして充電を行うと、充電
不足となる虞がある。また、容量の大きい電池セルを基準にして充電を行うと、過充電と
なる虞がある。
【0178】
そのため、直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットは、充電不足
や、過充電の原因となる、電池セル間の容量のばらつきを揃える機能を有する。電池セル
間の容量のばらつきを揃える回路構成には、抵抗方式、キャパシタ方式、あるいはインダ
クタ方式等あるが、ここではオフ電流の小さいトランジスタを利用して容量のばらつきを
揃えることのできる回路構成を一例として挙げて説明する。
【0179】
オフ電流の小さいトランジスタとしては、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトラ
ンジスタ(OSトランジスタ)が好ましい。オフ電流の小さいOSトランジスタを蓄電装
置の電池制御ユニットの回路構成に用いることで、電池セルから漏洩する電荷量を減らし
、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。
【0180】
チャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、In-M-Zn酸化物(Mは、Ga、Sn、
Y、Zr、La、Ce、またはNd)を用いる。酸化物半導体膜を成膜するために用いる
ターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると
、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1
/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以
上6以下とすることで、酸化物半導体膜としてCAAC-OS膜が形成されやすくなる。
【0181】
ここで、CAAC-OS膜について説明する。
【0182】
CAAC-OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
【0183】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micro
scope)によって、CAAC-OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(
高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。
一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC-OS膜は、結
晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0184】
試料面と略平行な方向から、CAAC-OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、
結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、
CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した
形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0185】
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC-OS膜の平面の高分解能TEM像を観察す
ると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認で
きる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0186】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略
垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0187】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性
を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍に
ピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0188】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、
シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコ
ンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化
物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる
要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径
(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の
原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純
物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0189】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物
半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによって
キャリア発生源となることがある。
【0190】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または
実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜
は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、
当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(
ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導
体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとな
る。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要す
る時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が
高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定と
なる場合がある。
【0191】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性
の変動が小さい。
【0192】
なお、OSトランジスタは、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(Siト
ランジスタ)に比べてバンドギャップが大きいため、高電圧を印加した際の絶縁破壊が生
じにくい。直列に電池セルを接続する場合、数100Vの電圧が生じることになるが、蓄
電装置においてこのような電池セルに適用される電池制御ユニットの回路構成には、前述
のOSトランジスタで構成することが適している。
【0193】
図11には、蓄電装置のブロック図の一例を示す。
図11に示す蓄電装置1000は、端
子対1001と、端子対1002と、切り替え制御回路1003と、切り替え回路100
4と、切り替え回路1005と、変圧制御回路1006と、変圧回路1007と、直列に
接続された複数の電池セル1009を含む電池部1008と、を有する。
【0194】
また、
図11の蓄電装置1000において、端子対1001と、端子対1002と、切り
替え制御回路1003と、切り替え回路1004と、切り替え回路1005と、変圧制御
回路1006と、変圧回路1007とにより構成される部分を、電池制御ユニットと呼ぶ
ことができる。
【0195】
切り替え制御回路1003は、切り替え回路1004及び切り替え回路1005の動作を
制御する。具体的には、切り替え制御回路1003は、電池セル1009毎に測定された
電圧に基づいて、放電する電池セル(放電電池セル群)、及び充電する電池セル(充電電
池セル群)を決定する。
【0196】
さらに、切り替え制御回路1003は、当該決定された放電電池セル群及び充電電池セル
群に基づいて、制御信号S1及び制御信号S2を出力する。制御信号S1は、切り替え回
路1004へ出力される。この制御信号S1は、端子対1001と放電電池セル群とを接
続させるように切り替え回路1004を制御する信号である。また、制御信号S2は、切
り替え回路1005へ出力される。この制御信号S2は、端子対1002と充電電池セル
群とを接続させるように切り替え回路1005を制御する信号である。
【0197】
また、切り替え制御回路1003は、切り替え回路1004、切り替え回路1005、及
び変圧回路1007の構成を踏まえ、端子対1001と放電電池セル群との間、または端
子対1002と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士が接続されるように、制御
信号S1及び制御信号S2を生成する。
【0198】
切り替え制御回路1003の動作の詳細について述べる。
【0199】
まず、切り替え制御回路1003は、複数の電池セル1009毎の電圧を測定する。そし
て、切り替え制御回路1003は、例えば、所定の閾値以上の電圧の電池セル1009を
高電圧の電池セル(高電圧セル)、所定の閾値未満の電圧の電池セル1009を低電圧の
電池セル(低電圧セル)と判断する。
【0200】
なお、高電圧セル及び低電圧セルを判断する方法については、様々な方法を用いることが
できる。例えば、切り替え制御回路1003は、複数の電池セル1009の中で、最も電
圧の高い、又は最も電圧の低い電池セル1009の電圧を基準として、各電池セル100
9が高電圧セルか低電圧セルかを判断してもよい。この場合、切り替え制御回路1003
は、各電池セル1009の電圧が基準となる電圧に対して所定の割合以上か否かを判定す
る等して、各電池セル1009が高電圧セルか低電圧セルかを判断することができる。そ
して、切り替え制御回路1003は、この判断結果に基づいて、放電電池セル群と充電電
池セル群とを決定する。
【0201】
なお、複数の電池セル1009の中には、高電圧セルと低電圧セルが様々な状態で混在し
得る。例えば、切り替え制御回路1003は、高電圧セルと低電圧セルが混在する中で、
高電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を放電電池セル群とする。また、切
り替え制御回路1003は、低電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を充電
電池セル群とする。また、切り替え制御回路1003は、過充電又は過放電に近い電池セ
ル1009を、放電電池セル群又は充電電池セル群として優先的に選択するようにしても
よい。
【0202】
ここで、本実施の形態における切り替え制御回路1003の動作例を、
図12を用いて説
明する。
図12は、切り替え制御回路1003の動作例を説明するための図である。なお
、説明の便宜上、
図12では4個の電池セル1009が直列に接続されている場合を例に
説明する。
【0203】
まず、
図12(A)の例では、電池セルa乃至dの電圧を電圧Va乃至電圧Vdとすると
、Va=Vb=Vc>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する3つの高電
圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え
制御回路1003は、連続する3つの高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定す
る。また、切り替え制御回路1003は、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する
。
【0204】
次に、
図12(B)の例では、Vc>Va=Vb>>Vdの関係にある場合を示している
。つまり、連続する2つの低電圧セルa、bと、1つの高電圧セルcと、1つの過放電間
近の低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路1003は、
高電圧セルcを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路1003は、連
続する2つの低電圧セルa及びbではなく、過放電間近である低電圧セルdを充電電池セ
ル群として優先的に決定する。
【0205】
最後に、
図12(C)の例では、Va>Vb=Vc=Vdの関係にある場合を示している
。つまり、1つの高電圧セルaと、連続する3つの低電圧セルb乃至dとが直列に接続さ
れている。この場合、切り替え制御回路1003は、高電圧セルaを放電電池セル群と決
定する。また、切り替え制御回路1003は、連続する3つの低電圧セルb乃至dを充電
電池セル群として決定する。
【0206】
切り替え制御回路1003は、上記
図12(A)乃至(C)の例のように決定された結果
に基づいて、切り替え回路1004の接続先である放電電池セル群を示す情報が設定され
た制御信号S1と、切り替え回路1005の接続先である充電電池セル群を示す情報が設
定された制御信号S2を、切り替え回路1004及び切り替え回路1005に対してそれ
ぞれ出力する。
【0207】
以上が、切り替え制御回路1003の動作の詳細に関する説明である。
【0208】
切り替え回路1004は、切り替え制御回路1003から出力される制御信号S1に応じ
て、端子対1001の接続先を、切り替え制御回路1003により決定された放電電池セ
ル群に設定する。
【0209】
端子対1001は、対を成す端子A1及びA2により構成される。切り替え回路1004
は、この端子A1及びA2のうち、いずれか一方を放電電池セル群の中で最も上流(高電
位側)に位置する電池セル1009の正極端子と接続し、他方を放電電池セル群の中で最
も下流(低電位側)に位置する電池セル1009の負極端子と接続することにより、端子
対1001の接続先を設定する。なお、切り替え回路1004は、制御信号S1に設定さ
れた情報を用いて放電電池セル群の位置を認識することができる。
【0210】
切り替え回路1005は、切り替え制御回路1003から出力される制御信号S2に応じ
て、端子対1002の接続先を、切り替え制御回路1003により決定された充電電池セ
ル群に設定する。
【0211】
端子対1002は、対を成す端子B1及びB2により構成される。切り替え回路1005
は、この端子B1及びB2のうち、いずれか一方を充電電池セル群の中で最も上流(高電
位側)に位置する電池セル1009の正極端子と接続し、他方を充電電池セル群の中で最
も下流(低電位側)に位置する電池セル1009の負極端子と接続することにより、端子
対1002の接続先を設定する。なお、切り替え回路1005は、制御信号S2に設定さ
れた情報を用いて充電電池セル群の位置を認識することができる。
【0212】
切り替え回路1004及び切り替え回路1005の構成例を示す回路図を
図13及び
図1
4に示す。
【0213】
図13では、切り替え回路1004は、複数のトランジスタ1010と、バス1011及
び1012とを有する。バス1011は、端子A1と接続されている。また、バス101
2は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ1010のソース又はドレインの
一方は、それぞれ1つおきに交互に、バス1011及び1012と接続されている。また
、複数のトランジスタ1010のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの
電池セル1009の間に接続されている。
【0214】
なお、複数のトランジスタ1010のうち、最上流に位置するトランジスタ1010のソ
ース又はドレインの他方は、電池部1008の最上流に位置する電池セル1009の正極
端子と接続されている。また、複数のトランジスタ1010のうち、最下流に位置するト
ランジスタ1010のソース又はドレインの他方は、電池部1008の最下流に位置する
電池セル1009の負極端子と接続されている。
【0215】
切り替え回路1004は、複数のトランジスタ1010のゲートに与える制御信号S1に
応じて、バス1011に接続される複数のトランジスタ1010のうちの1つと、バス1
012に接続される複数のトランジスタ1010のうちの1つとをそれぞれ導通状態にす
ることにより、放電電池セル群と端子対1001とを接続する。これにより、放電電池セ
ル群の中で最も上流に位置する電池セル1009の正極端子は、端子対の端子A1及びA
2のいずれか一方と接続される。また、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セ
ル1009の負極端子は、端子対の端子A1及びA2のいずれか他方、すなわち正極端子
と接続されていない方の端子に接続される。
【0216】
トランジスタ1010には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジス
タはオフ電流が小さいため、放電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減
らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高
電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、放電電池セル群の出力電圧が大き
くても、非導通状態とするトランジスタ1010が接続された電池セル1009と端子対
1001とを絶縁状態とすることができる。
【0217】
また、
図13では、切り替え回路1005は、複数のトランジスタ1013と、電流制御
スイッチ1014と、バス1015と、バス1016とを有する。バス1015及び10
16は、複数のトランジスタ1013と、電流制御スイッチ1014との間に配置される
。複数のトランジスタ1013のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互
に、バス1015及び1016と接続されている。また、複数のトランジスタ1013の
ソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セル1009の間に接続され
ている。
【0218】
なお、複数のトランジスタ1013のうち、最上流に位置するトランジスタ1013のソ
ース又はドレインの他方は、電池部1008の最上流に位置する電池セル1009の正極
端子と接続されている。また、複数のトランジスタ1013のうち、最下流に位置するト
ランジスタ1013のソース又はドレインの他方は、電池部1008の最下流に位置する
電池セル1009の負極端子と接続されている。
【0219】
トランジスタ1013には、トランジスタ1010と同様に、OSトランジスタを用いる
ことが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、充電電池セル群に属しない
電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することがで
きる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、
充電電池セル群を充電するための電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタ10
13が接続された電池セル1009と端子対1002とを絶縁状態とすることができる。
【0220】
電流制御スイッチ1014は、スイッチ対1017とスイッチ対1018とを有する。ス
イッチ対1017の一端は、端子B1に接続されている。また、スイッチ対1017の他
端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバス1015に接続され、他方の
スイッチはバス1016に接続されている。スイッチ対1018の一端は、端子B2に接
続されている。また、スイッチ対1018の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方
のスイッチはバス1015に接続され、他方のスイッチはバス1016に接続されている
。
【0221】
スイッチ対1017及びスイッチ対1018が有するスイッチは、トランジスタ1010
及びトランジスタ1013と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。
【0222】
切り替え回路1005は、制御信号S2に応じて、トランジスタ1013、及び電流制御
スイッチ1014のオン/オフ状態の組み合わせを制御することにより、充電電池セル群
と端子対1002とを接続する。
【0223】
切り替え回路1005は、一例として、以下のようにして充電電池セル群と端子対100
2とを接続する。
【0224】
切り替え回路1005は、複数のトランジスタ1013のゲートに与える制御信号S2に
応じて、充電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セル1009の正極端子と接続さ
れているトランジスタ1013を導通状態にする。また、切り替え回路1005は、複数
のトランジスタ1013のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で
最も下流に位置する電池セル1009の負極端子に接続されているトランジスタ1013
を導通状態にする。
【0225】
端子対1002に印加される電圧の極性は、端子対1001と接続される放電電池セル群
、及び変圧回路1007の構成によって変わり得る。また、充電電池セル群を充電する方
向に電流を流すためには、端子対1002と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同
士を接続する必要がある。そこで、電流制御スイッチ1014は、制御信号S2により、
端子対1002に印加される電圧の極性に応じてスイッチ対1017及びスイッチ対10
18の接続先をそれぞれ切り替えるように制御される。
【0226】
一例として、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対1002に印加
されている状態を挙げて説明する。この時、電池部1008の最下流の電池セル1009
が充電電池セル群である場合、スイッチ対1017は、制御信号S2により、当該電池セ
ル1009の正極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対1017の
バス1016に接続されるスイッチが、オン状態となり、スイッチ対1017のバス10
15に接続されるスイッチが、オフ状態となる。一方、スイッチ対1018は、制御信号
S2により、当該電池セル1009の負極端子と接続されるように制御される。すなわち
、スイッチ対1018のバス1015に接続されるスイッチが、オン状態となり、スイッ
チ対1018のバス1016に接続されるスイッチが、オフ状態となる。このようにして
、端子対1002と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そ
して、端子対1002から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるよ
うに制御される。
【0227】
また、電流制御スイッチ1014は、切り替え回路1005ではなく、切り替え回路10
04に含まれていてもよい。この場合、電流制御スイッチ1014は、制御信号S1に応
じて、端子対1001に印加される電圧の極性を制御することにより、端子対1002に
印加される電圧の極性を制御する。そして、電流制御スイッチ1014は、端子対100
2から充電電池セル群に流れる電流の向きを制御する。
【0228】
図14は、
図13とは異なる、切り替え回路1004及び切り替え回路1005の構成例
を示す回路図である。
【0229】
図14では、切り替え回路1004は、複数のトランジスタ対1021と、バス1024
及びバス1025とを有する。バス1024は、端子A1と接続されている。また、バス
1025は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ対1021の一端は、それ
ぞれトランジスタ1022とトランジスタ1023とにより分岐している。トランジスタ
1022のソース又はドレインの一方は、バス1024と接続されている。また、トラン
ジスタ1023のソース又はドレインの一方は、バス1025と接続されている。また、
複数のトランジスタ対の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セル1009の間に接続さ
れている。なお、複数のトランジスタ対1021のうち、最上流に位置するトランジスタ
対1021の他端は、電池部1008の最上流に位置する電池セル1009の正極端子と
接続されている。また、複数のトランジスタ対1021のうち、最下流に位置するトラン
ジスタ対1021の他端は、電池部1008の最下流に位置する電池セル1009の負極
端子と接続されている。
【0230】
切り替え回路1004は、制御信号S1に応じてトランジスタ1022及びトランジスタ
1023の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対1021の接
続先を、端子A1又は端子A2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタ1
022が導通状態であれば、トランジスタ1023は非導通状態となり、トランジスタ対
1021の接続先は端子A1になる。一方、トランジスタ1023が導通状態であれば、
トランジスタ1022は非導通状態となり、トランジスタ対1021の接続先は端子A2
になる。トランジスタ1022及びトランジスタ1023のどちらが導通状態になるかは
、制御信号S1によって決定される。
【0231】
端子対1001と放電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対1021が用
いられる。詳細には、制御信号S1に基づいて、2つのトランジスタ対1021の接続先
がそれぞれ決定されることにより、放電電池セル群と端子対1001とが接続される。2
つのトランジスタ対1021のそれぞれの接続先は、一方が端子A1となり、他方が端子
A2となるように、制御信号S1によって制御される。
【0232】
切り替え回路1005は、複数のトランジスタ対1031と、バス1034及びバス10
35とを有する。バス1034は、端子B1と接続されている。また、バス1035は、
端子B2と接続されている。複数のトランジスタ対1031の一端は、それぞれトランジ
スタ1032とトランジスタ1033とにより分岐している。トランジスタ1032のソ
ース又はドレインの一方は、バス1034と接続されている。また、トランジスタ103
3のソース又はドレインの一方は、バス1035と接続されている。また、複数のトラン
ジスタ対1031の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セル1009の間に接続されて
いる。なお、複数のトランジスタ対1031のうち、最下流に位置するトランジスタ対1
031の他端は、電池部1008の最下流に位置する電池セル1009の負極端子と接続
され、複数のトランジスタ対1031のうち、最上流に位置するトランジスタ対1031
の他端は、電池部1008の最上流に位置する電池セル1009の負極端子と接続されて
いる。
【0233】
切り替え回路1005は、制御信号S2に応じてトランジスタ1032及びトランジスタ
1033の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対1031の接
続先を、端子B1又は端子B2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタ1
032が導通状態であれば、トランジスタ1033は非導通状態となり、トランジスタ対
1031の接続先は端子B1になる。逆に、トランジスタ1033が導通状態であれば、
トランジスタ1032は非導通状態となり、トランジスタ対1031の接続先は端子B2
になる。トランジスタ1032及びトランジスタ1033のどちらが導通状態となるかは
、制御信号S2によって決定される。
【0234】
端子対1002と充電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対1031が用
いられる。詳細には、制御信号S2に基づいて、2つのトランジスタ対1031の接続先
がそれぞれ決定されることにより、充電電池セル群と端子対1002とが接続される。2
つのトランジスタ対1031のそれぞれの接続先は、一方が端子B1となり、他方が端子
B2となるように、制御信号S2によって制御される。
【0235】
また、2つのトランジスタ対1031のそれぞれの接続先は、端子対1002に印加され
る電圧の極性によって決定される。具体的には、端子B1が正極、端子B2が負極となる
ような電圧が端子対1002に印加されている場合、上流側のトランジスタ対1031は
、トランジスタ1032が導通状態となり、トランジスタ1033が非導通状態となるよ
うに、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対1031は、ト
ランジスタ1033が導通状態、トランジスタ1032が非導通状態となるように、制御
信号S2によって制御される。また、端子B1が負極、端子B2が正極となるような電圧
が端子対1002に印加されている場合は、上流側のトランジスタ対1031は、トラン
ジスタ1033が導通状態となり、トランジスタ1032が非導通状態となるように、制
御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対1031は、トランジス
タ1032が導通状態、トランジスタ1033が非導通状態となるように、制御信号S2
によって制御される。このようにして、端子対1002と充電電池セル群との間で、同じ
極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対1002から流れる電流の方向が、充
電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
【0236】
変圧制御回路1006は、変圧回路1007の動作を制御する。変圧制御回路1006は
、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数と、充電電池セル群に含まれる電池
セル1009の個数とに基づいて、変圧回路1007の動作を制御する変圧信号S3を生
成し、変圧回路1007へ出力する。
【0237】
なお、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数が充電電池セル群に含まれる電
池セル1009の個数よりも多い場合は、充電電池セル群に対して過剰に大きな充電電圧
が印加されることを防止する必要がある。そのため、変圧制御回路1006は、充電電池
セル群を充電できる範囲で放電電圧(Vdis)を降圧させるように変圧回路1007を
制御する変圧信号S3を出力する。
【0238】
また、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数が、充電電池セル群に含まれる
電池セル1009の個数以下である場合は、充電電池セル群を充電するために必要な充電
電圧を確保する必要がある。そのため、変圧制御回路1006は、充電電池セル群に過剰
な充電電圧が印加されない範囲で放電電圧(Vdis)を昇圧させるように変圧回路10
07を制御する変圧信号S3を出力する。
【0239】
なお、過剰な充電電圧とする電圧値は、電池部1008で使用される電池セル1009の
製品仕様等に鑑みて決定することができる。また、変圧回路1007により昇圧及び降圧
された電圧は、充電電圧(Vcha)として端子対1002に印加される。
【0240】
ここで、本実施の形態における変圧制御回路1006の動作例を、
図15(A)乃至(C
)を用いて説明する。
図15(A)乃至(C)は、
図12(A)乃至(C)で説明した放
電電池セル群及び充電電池セル群に対応させた、変圧制御回路1006の動作例を説明す
るための概念図である。なお
図15(A)乃至(C)は、電池制御ユニット1041を図
示している。電池制御ユニット1041は、端子対1001と、端子対1002と、切り
替え制御回路1003と、切り替え回路1004と、切り替え回路1005と、変圧制御
回路1006と、変圧回路1007とにより構成される。
【0241】
図15(A)に示される例では、
図12(A)で説明したように、連続する3つの高電圧
セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、
図12(A
)を用いて説明したように、切り替え制御回路1003は、高電圧セルa乃至cを放電電
池セル群として決定し、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。そして、変圧制
御回路1006は、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数を基準とした時の
、充電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数の比に基づいて、放電電圧(Vdi
s)から充電電圧(Vcha)への変換比Nを算出する。
【0242】
なお放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数が、充電電池セル群に含まれる電
池セル1009の個数よりも多い場合に、放電電圧を変圧せずに端子対1002にそのま
ま印加すると、充電電池セル群に含まれる電池セル1009に、端子対1002を介して
過剰な電圧が印加される可能性がある。そのため、
図15(A)に示されるような場合で
は、端子対1002に印加される充電電圧(Vcha)を、放電電圧よりも降圧させる必
要がある。さらに、充電電池セル群を充電するためには、充電電圧は、充電電池セル群に
含まれる電池セル1009の合計電圧より大きい必要がある。そのため、変圧制御回路1
006は、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数を基準とした時の、充電電
池セル群に含まれる電池セル1009の個数の比よりも、変換比Nを大きく設定する。
【0243】
変圧制御回路1006は、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数を基準とし
た時の、充電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数の比に対して、変換比Nを1
%以上10%以下程度大きくするのが好ましい。この時、充電電圧は充電電池セル群の電
圧よりも大きくなるが、実際には充電電圧は充電電池セル群の電圧と等しくなる。ただし
、変圧制御回路1006は変換比Nに従い充電電池セル群の電圧を充電電圧と等しくする
ために、充電電池セル群を充電する電流を流すこととなる。この電流は変圧制御回路10
06に設定された値となる。
【0244】
図15(A)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数が3
個で、充電電池セル群に含まれる電池セル1009の数が1個であるため、変圧制御回路
1006は、1/3より少し大きい値を変換比Nとして算出する。そして、変圧制御回路
1006は、放電電圧を当該変換比Nに応じて降圧し、充電電圧に変換する変圧信号S3
を変圧回路1007に出力する。そして、変圧回路1007は、変圧信号S3に応じて変
圧された充電電圧を、端子対1002に印加する。そして、端子対1002に印加される
充電電圧によって、充電電池セル群に含まれる電池セル1009が充電される。
【0245】
また、
図15(B)や
図15(C)に示される例でも、
図15(A)と同様に、変換比N
が算出される。
図15(B)や
図15(C)に示される例では、放電電池セル群に含まれ
る電池セル1009の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数以下で
あるため、変換比Nは1より大きくなる。よって、この場合は、変圧制御回路1006は
、放電電圧を昇圧して充電電圧に変換する変圧信号S3を出力する。
【0246】
変圧回路1007は、変圧信号S3に基づいて、端子対1001に印加される放電電圧を
充電電圧に変換する。そして、変圧回路1007は、変換された充電電圧を端子対100
2に印加する。ここで、変圧回路1007は、端子対1001と端子対1002との間を
電気的に絶縁している。これにより、変圧回路1007は、放電電池セル群の中で最も下
流に位置する電池セル1009の負極端子の絶対電圧と、充電電池セル群の中で最も下流
に位置する電池セル1009の負極端子の絶対電圧との差異による短絡を防止する。さら
に、変圧回路1007は、上述したように、変圧信号S3に基づいて放電電池セル群の合
計電圧である放電電圧を充電電圧に変換する。
【0247】
また、変圧回路1007は、例えば絶縁型DC(Direct Current)-DC
コンバータ等を用いることができる。この場合、変圧制御回路1006は、絶縁型DC-
DCコンバータのオン/オフ比(デューティー比)を制御する信号を変圧信号S3として
出力することにより、変圧回路1007で変換される充電電圧を制御する。
【0248】
なお、絶縁型DC-DCコンバータには、フライバック方式、フォワード方式、RCC(
Ringing Choke Converter)方式、プッシュプル方式、ハーフブ
リッジ方式、及びフルブリッジ方式等が存在するが、目的とする出力電圧の大きさに応じ
て適切な方式が選択される。
【0249】
絶縁型DC-DCコンバータを用いた変圧回路1007の構成を
図16に示す。絶縁型D
C-DCコンバータ1051は、スイッチ部1052とトランス部1053とを有する。
スイッチ部1052は、絶縁型DC-DCコンバータの動作のオン/オフを切り替えるス
イッチであり、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconduc
tor Field-Effect Transistor)やバイポーラ型トランジス
タ等を用いて実現される。また、スイッチ部1052は、変圧制御回路1006から出力
される、オン/オフ比を制御する変圧信号S3に基づいて、絶縁型DC-DCコンバータ
1051のオン状態とオフ状態を周期的に切り替える。なお、スイッチ部1052は、使
用される絶縁型DC-DCコンバータの方式によって様々な構成を取り得る。トランス部
1053は、端子対1001から印加される放電電圧を充電電圧に変換する。詳細には、
トランス部1053は、スイッチ部1052のオン/オフ状態と連動して動作し、そのオ
ン/オフ比に応じて放電電圧を充電電圧に変換する。この充電電圧は、スイッチ部105
2のスイッチング周期において、オン状態となる時間が長いほど大きくなる。なお、絶縁
型DC-DCコンバータを用いる場合、トランス部1053の内部で、端子対1001と
、端子対1002とは、互いに絶縁することができる。
【0250】
本実施の形態における蓄電装置1000の処理の流れを、
図17を用いて説明する。
図1
7は、蓄電装置1000の処理の流れを示すフローチャートである。
【0251】
まず、蓄電装置1000は、複数の電池セル1009毎に測定された電圧を取得する(ス
テップS1101)。そして、蓄電装置1000は、複数の電池セル1009の電圧を揃
える動作の開始条件を満たすか否かを判定する(ステップS1102)。この開始条件は
、例えば、複数の電池セル1009毎に測定された電圧の最大値と最小値との差分が、所
定の閾値以上か否か等とすることができる。この開始条件を満たさない場合は(ステップ
S1102:NO)、各電池セル1009の電圧のバランスが取れている状態であるため
、蓄電装置1000は、以降の処理を実行しない。一方、開始条件を満たす場合は(ステ
ップS1102:YES)、蓄電装置1000は、各電池セル1009の電圧を揃える処
理を実行する。この処理において、蓄電装置1000は、測定されたセル毎の電圧に基づ
いて、各電池セル1009が高電圧セルか低電圧セルかを判定する(ステップS1103
)。そして、蓄電装置1000は、判定結果に基づいて、放電電池セル群及び充電電池セ
ル群を決定する(ステップS1104)。さらに、蓄電装置1000は、決定された放電
電池セル群を端子対1001の接続先に設定する制御信号S1、及び決定された充電電池
セル群を端子対1002の接続先に設定する制御信号S2を生成する(ステップS110
5)。蓄電装置1000は、生成された制御信号S1及び制御信号S2を、切り替え回路
1004及び切り替え回路1005へそれぞれ出力する。そして、切り替え回路1004
により、端子対1001と放電電池セル群とが接続され、切り替え回路1005により、
端子対1002と放電電池セル群とが接続される(ステップS1106)。また、蓄電装
置1000は、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数と、充電電池セル群に
含まれる電池セル1009の個数とに基づいて、変圧信号S3を生成する(ステップS1
107)。そして、蓄電装置1000は、変圧信号S3に基づいて、端子対1001に印
加される放電電圧を充電電圧に変換し、端子対1002に印加する(ステップS1108
)。これにより、放電電池セル群の電荷が充電電池セル群へ移動される。
【0252】
また、
図17のフローチャートでは、複数のステップが順番に記載されているが、各ステ
ップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。
【0253】
以上、本実施の形態によれば、放電電池セル群から充電電池セル群へ電荷を移動させる際
、キャパシタ方式のように、放電電池セル群からの電荷を一旦蓄積し、その後充電電池セ
ル群へ放出させるような構成を必要としない。これにより、単位時間あたりの電荷移動効
率を向上させることができる。また、切り替え回路1004及び切り替え回路1005に
より、放電電池セル群及び充電電池セル群のうち、変圧回路と接続する電池セルを、個別
に切り替えられる。
【0254】
さらに、変圧回路1007により、放電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数と
充電電池セル群に含まれる電池セル1009の個数とに基づいて、端子対1001に印加
される放電電圧が充電電圧に変換され、端子対1002に印加される。これにより、放電
側及び充電側の電池セル1009がどのように選択されても、問題なく電荷の移動を実現
できる。
【0255】
さらに、トランジスタ1010及びトランジスタ1013にOSトランジスタを用いるこ
とにより、充電電池セル群及び放電電池セル群に属しない電池セル1009から漏洩する
電荷量を減らすことができる。これにより、充電及び放電に寄与しない電池セル1009
の容量の低下を抑制することができる。また、OSトランジスタは、Siトランジスタに
比べて熱に対する特性の変動が小さい。これにより、電池セル1009の温度が上昇して
も、制御信号S1、S2に応じた導通状態と非導通状態の切り替えといった、正常な動作
をさせることができる。
【0256】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施する事が可能である。
【実施例0257】
以下、本発明の一態様について実施例を用いて具体的に説明する。本実施例では、実施の
形態2で示した方法により、正極を作製した結果について説明する。なお、本発明は以下
の実施例のみに限定されるものではない。
【0258】
(正極活物質の合成)
まず、正極活物質としてリチウムマンガン複合酸化物の合成を行った。出発材料としてL
i2CO3とMnCO3とNiOを用い、Li2CO3:MnCO3:NiO=0.84
:0.8062:0.318(モル比)となるようにそれぞれを秤量した。次に、これら
の粉末にアセトンを加えた後、ボールミルで混合して混合粉末を調製した。
【0259】
次いで、アセトンを蒸発させるための加熱を行い、混合原料を得た。
【0260】
次いで、坩堝に混合原料を入れ、焼成することにより、材料を合成した。ここでは100
0℃、10時間の条件で焼成を行った。焼成の雰囲気は空気とし、ガス流量は10L/分
とした。
【0261】
次いで、焼成した粒子の焼結を解くために解砕処理を行った。解砕処理は、焼成した粒子
に、アセトンを加えた後、ボールミルで混合することにより行った。
【0262】
次いで、解砕処理後にアセトンを蒸発させるための加熱を行い、ニッケルを有するリチウ
ムマンガン複合酸化物を得た。
【0263】
(電極Aの作製)
電極Aの作製には、正極活物質としてリチウムマンガン複合酸化物、還元剤としてL-ア
スコルビン酸、導電助剤の原料として酸化グラフェン(GO)、第2の導電助剤としてア
セチレンブラック(AB)、結着剤としてPVdF、溶媒としてNMPを用いた。まず、
リチウムマンガン複合酸化物、GO、AB、及びNMPを混練し、第1の混合物を作製し
た。次に、第1の混合物に対し、少量の水に溶解させたL-アスコルビン酸を加えて混練
し、80℃で1時間加熱することによりGOを還元し第2の混合物を作製した。さらに、
第2の混合物に対し、PVdFを加えて混練することにより正極ペーストを作製した。な
お、正極ペーストの配合比が、リチウムマンガン複合酸化物:グラフェン:AB:L-ア
スコルビン酸:PVdF=89:0.5:4.5:1:5(重量比)となるように、各材
料の量を調製した。該正極ペーストを集電体(アルミニウム)に塗布し、250℃で加熱
して正極ペーストに含まれる溶媒を蒸発させることで電極Aを作製した。集電体に対する
正極ペーストの担持量は、6mg/cm2とした。
【0264】
(比較例Bの作製)
比較として、還元剤を使用せず、加熱のみによりGOを還元することで、比較例Bを作製
した。まず、リチウムマンガン複合酸化物、GO、AB及びNMPを混練し、第1の混合
物を作製した。次に、第1の混合物に対し、PVdFを加えて混練することにより正極ペ
ーストを作製した。なお、正極ペーストの配合比が、リチウムマンガン複合酸化物:GO
:AB:PVdF=90:0.5:4.5:5となるように、各材料の量を調製した。該
正極ペーストを集電体(アルミニウム)に塗布し、250℃に加熱して溶媒を蒸発させる
のと同時にGOを還元することで比較例Bを作製した。集電体に対する正極ペーストの担
持量は、6mg/cm2とした。
【0265】
(ハーフセルの作製)
作製した電極A及び比較例Bをハーフセルに組み込み、それぞれのセルの充放電特性を測
定するのに用いた。なおハーフセルとは、正極にLi金属以外の活物質を用い、負極にL
i金属を用いたリチウムイオン二次電池のセルを示す。負極にはリチウム金属を用い、セ
パレータにはポリプロピレン(PP)を用い、電解液はエチレンカーボネート(EC)と
、ジエチルカーボネート(DEC)と、を体積比で1:1の割合で混合した混合溶液中に
、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解させたものを
用いた。
【0266】
(サイクル特性の評価)
充放電容量を測定した結果を
図18に示す。
図18において、縦軸を容量(mAh/g)
、横軸をサイクル数とした。充電条件は、定電流充電、充電レート0.2C、終止電圧4
.8Vであった。放電条件は、定電流放電、放電レート0.2C、終止電圧2.0Vであ
った。サイクル数は、10サイクルまで測定した。
図18(A)に、電極Aを組み込み作
製したハーフセルのサイクル特性を示し、
図18(B)に、比較例Bを組み込み作製した
ハーフセルのサイクル特性を示す。
【0267】
ここで、充電レート及び放電レートについて説明する。充電レート1Cとは、セルを定電
流充電して、ちょうど1時間で充電終了となる電流値のことである。本実施例では、ハー
フセルの理論容量を150mAh/gとするため、1Cは150mA/gである。また、
0.2Cはセルを定電流充電して、ちょうど5時間で充電終了となる電流値のことであり
、上述の理論容量のハーフセルでは、30mA/gである。同様に、放電レート1Cとは
、セルを定電流放電して、ちょうど1時間で放電終了となる電流値のことであり、本実施
例で作製したハーフセルでは、1Cは150mA/gであり、0.2Cは30mA/gで
ある。
【0268】
図18(A)、(B)からわかるように、電極Aを用いたハーフセルにおいては、比較例
Bを用いたハーフセルと比較して、サイクル数の増加に伴う容量の減少が抑制されている
。このことから、電極Aは、比較例Bよりも、電気伝導性が高いことがわかった。従って
、作製時に還元剤を添加し、加熱して、GOを還元してから正極活物質層を形成すること
で、高い反応効率でGOが還元され、活物質層中に三次元の電気伝導経路のネットワーク
が構築されたことが推測された。
【0269】
(レート特性の評価)
図19に、電極A、比較例Bそれぞれを組み込み作製したハーフセルについて、放電レー
トを変えて測定した放電曲線を示す。縦軸に電圧(V)、横軸に充放電容量(mAh/g
)を示す。充電条件は、定電流充電、充電レート0.2Cとした。
図19(A)に、放電
レートを0.2Cとした場合の充電曲線及び放電曲線を示す。また、
図19(B)に放電
レートを0.5Cとした場合の充電曲線及び放電曲線を示す。また、
図19(C)に放電
レートを1.0Cとした場合の充電曲線及び放電曲線を示す。
【0270】
図19(A)、(B)、及び(C)より、比較例Bを組み込んだハーフセルは、放電レー
トの増加に伴って放電容量と電圧が大きく低下することが明らかとなった。一方、電極A
を組み込んだハーフセルは、放電レートを増加させても放電容量と電圧が低下しにくいこ
とがわかった。従って、電極Aは、比較例Bと比較すると、抵抗が小さいことが明らかと
なった。このことから、正極活物質層を形成する前に、GOを還元剤により還元すること
で、GOを還元する反応の効率を高めることができると示唆された。
【0271】
(電流休止法抵抗の測定)
次に、電流休止法抵抗の測定を行うことにより電極A及び比較例Bを評価した。ここで、
電流休止法抵抗について説明する。電池の充電の際、充電を休止すると、電圧が降下する
挙動が見られる。この電圧降下の原因として、電池の有する内部抵抗が挙げられる。{(
休止直後の電圧)-(休止3秒後の電圧)}/電流という計算式により、電極Aを組み込
んだハーフセルと、比較例Bを組み込んだハーフセルの内部抵抗のオーム成分を求め、比
較した。充電条件は、定電流充電、充電レート0.2Cである。充電の休止は、15mA
h/g充電する毎に行うこととした。電池の充電容量が195mAh/g、210mAh
/g、225mAh/g、240mAh/gに達したときに電流の休止を行い、内部抵抗
のオーム成分を計算した結果を表1に示す。
【0272】
【0273】
表1の結果より、電極Aを組み込んだハーフセルは、比較例Bを組み込んだハーフセルよ
りも内部抵抗オーム成分が小さいことがわかった。このことから、電極Aは比較例Bより
も抵抗が小さいことが明らかとなった。従って、正極活物質層を作製するときに還元剤を
添加することで、GOを還元する反応の効率を高めることができ、内部抵抗オーム成分の
小さい電極を作製することができると示唆された。