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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171811
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/854 20230101AFI20231128BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231128BHJP
   H10K 50/80 20230101ALI20231128BHJP
   H10K 59/40 20230101ALI20231128BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20231128BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231128BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H10K50/854
H10K59/10
H10K50/80
H10K59/40
G02B5/02 B
G09F9/30 365
G09F9/00 366A
G09F9/00 313
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151946
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2022112324の分割
【原出願日】2018-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下杉 翔太
(72)【発明者】
【氏名】牛田 浩明
(57)【要約】
【課題】有機EL表示装置において、円偏光板を用いなくても外光の内部反射による表示性能の低下を防止可能にすると共に、円偏光板を用いた場合に比べて、消費電力を抑制しながら有機発光層からの光取出し効率を向上可能にする。
【解決手段】有機EL表示装置は、第1基板と、第1基板における一方の面側に配置された複数の第1電極と、複数の第1電極の第1基板側とは反対側で、複数の第1電極の各々と重ねて配置された複数の有機発光層と、複数の有機発光層の第1基板側とは反対側で、複数の有機発光層と重ねて配置された第2電極と、第2電極の第1基板側とは反対側で、第1電極、有機発光層、及び第2電極を介して、第1基板に対向配置された第2基板と、を備える。複数の有機発光層は、複数の発光色の有機発光層を含み、表示画面側の表面のヘイズ値が、60%以上100%以下の値に設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に回路が設けられた第1基板と、
前記第1基板における前記一方の面側に配置されて前記回路と接続された複数の第1電極と、
前記複数の第1電極の前記第1基板側とは反対側で、前記複数の第1電極の各々と重ねて配置された複数の有機発光層と、
前記複数の有機発光層の前記第1基板側とは反対側で、前記複数の有機発光層と重ねて配置された第2電極と、
前記第2電極の前記第1基板側とは反対側で、前記第1電極、前記有機発光層、及び前記第2電極を介して、前記第1基板に対向配置された第2基板と、を備え、
前記複数の有機発光層は、複数の発光色の前記有機発光層を含み、
外気と接触するように配置された表示画面側の表面のヘイズ値が、65%以上80%以下の範囲の値に設定され、前記複数の有機発光層において生じた光が、前記第2基板側から画面表示に供されるトップエミッション型であり、
外気と接触するように配置された表示画面側の表面部分が、マトリクス樹脂と、前記マトリクス樹脂に分散された複数の微粒子と、を含み、
前記複数の有機発光層において生じた光の光路上の円偏光板の配置が省略されている、有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第1基板及び前記第2基板に対して重ねて配置されたタッチパネルユニットを更に備え、
前記表示画面側の前記表面が、前記タッチパネルユニットの入力側の表面である、請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記表示画面側の前記表面の入射角60°におけるグロス値が、0%以上10%以下の範囲の値に設定されている、請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記表示画面側の前記表面は、前記マトリクス樹脂の内部において、前記複数の微粒子が、互いに分散して外方に突出することにより形成された複数の凹凸を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(OLED)表示装置は、例えば特許文献1に開示されるように、一方の面に回路が形成された基板に、複数の陽極、複数の有機発光層、及び陰極が積層された構造を有する。各陽極及び各有機発光層は、例えば、基板の表面に沿って格子状に配置される。複数の有機発光層には、異なる発光色の有機発光層が含まれる。
【0003】
有機EL表示装置では、外光の映り込みによる表示性能の低下を防止することが望まれている。この問題に対して、例えば特許文献1には、外光が装置内で反射されて装置外へ出射される(以下、この現象を内部反射と称する。)のを円偏光板により防止し、表示性能の低下を防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5752283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円偏光板を用いた場合、有機発光層において生じる光量に比べて、有機EL表示装置外に取り出される有機発光層の光量が大幅に減少する。このような有機発光層からの光取出し効率の低下を考慮して、有機EL表示装置の出力を高める必要が生じる。これにより、有機EL表示装置の消費電力が増大する。従って、有機EL表示装置をバッテリで駆動する場合には駆動時間が短縮されたり、有機EL表示装置の負荷が増大したりするおそれがある。
【0006】
また有機EL表示装置では、ポータブルデバイスへの用途等、比較的強い外光に曝される環境においてバッテリで駆動される用途が拡大している。そのため、このような問題が顕著になるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、有機EL表示装置において、円偏光板を用いなくても外光の内部反射による表示性能の低下を防止可能にすると共に、円偏光板を用いた場合に比べて、消費電力を抑制しながら有機発光層からの光取出し効率を向上可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、一方の面に回路が設けられた第1基板と、前記第1基板における前記一方の面側に配置されて前記回路と接続された複数の第1電極と、前記複数の第1電極の前記第1基板側とは反対側で、前記複数の第1電極の各々と重ねて配置された複数の有機発光層と、前記複数の有機発光層の前記第1基板側とは反対側で、前記複数の有機発光層と重ねて配置された第2電極と、前記第2電極の前記第1基板側とは反対側で、前記第1電極、前記有機発光層、及び前記第2電極を介して、前記第1基板に対向配置された第2基板と、を備え、前記複数の有機発光層は、複数の発光色の前記有機発光層を含み、表示画面側の表面のヘイズ値が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されている。
【0009】
上記構成の有機EL表示装置では、表示画面側の表面のヘイズ値が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されている。このため、装置内から装置外へ出射される外光の反射光を、表示画面側の表面において効率よく散乱させることができる。これにより、表示画面に外光が映り込みにくくすることができる。従って、円偏光板を用いなくても、外光の内部反射による表示性能の低下を防止できる。
【0010】
また、有機発光層からの光取出し効率が円偏光板により減少するのを回避できる。このため、円偏光板を用いた場合に比べて、消費電力を抑制しながら、有機発光層からの光取出し効率を大幅に向上できる。
【0011】
前記第1基板及び前記第2基板に対して重ねて配置されたタッチパネルユニットを更に備え、前記表示画面側の前記表面が、前記タッチパネルユニットの入力側の表面であってもよい。これにより、タッチパネルユニットの入力側が表示画面側である場合でも、外光の内部反射による表示性能の低下を防止できる。また、消費電力を抑制しながら有機発光層からの光取出し効率を確保できる。
【0012】
前記第1基板と重ねて配置されたフィルム部材を更に備え、前記フィルム部材の一方の面が、前記表示画面側の前記表面であってもよい。これにより、フィルム部材の前記面におけるヘイズ値を、60%以上100%以下の範囲の値に設定することで、外光の内部反射による表示性能の低下を防止できる。また、消費電力を抑制しながら有機発光層からの光取出し効率を確保できる。
【0013】
また、前記フィルム部材の全光線透過率が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されていてもよい。また、前記フィルム部材の入射角60°におけるグロス値が、0%以上10%以下の範囲の値に設定されていてもよい。このように、フィルム部材の全光線透過率及び入射角60°におけるグロス値を上記範囲の値に設定することで、外光の内部反射による表示性能の低下を一層防止できる。
【0014】
前記フィルム部材は、複数の樹脂成分を含み且つ前記複数の樹脂成分の相分離により形成されていてもよい。これにより、例えば、フィルム部材の表面に複数の樹脂成分の相分離により多数の微細な凹凸をランダムに形成し、フィルム部材のヘイズ値を設定し易くすることができる。また、フィルム部材内を透過する光の散乱を防止し、表示装置の良好な表示性能を得ることができる。
【0015】
前記フィルム部材は、前記複数の樹脂成分中に分散された複数の微粒子を更に含んでいてもよい。このように、前記相分離構造と共に複数の微粒子を用いることで、フィルム部材のヘイズ値を設定し易くすることができる。
【0016】
前記フィルム部材は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子とを含んでいてもよい。このように、マトリクス樹脂中に複数の微粒子を分散することにより、比較的簡単な方法で、フィルム部材のヘイズ値を設定し易くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有機EL表示装置において、円偏光板を用いなくても外光の内部反射による表示性能の低下を防止できると共に、円偏光板を用いた場合に比べて、消費電力を抑制しながら有機発光層からの光取出し効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る有機EL表示装置の断面図である。
図2図1のフィルム部材の一部拡大断面図である。
図3】第2実施形態に係るフィルム部材の一部拡大断面図である。
図4】第3実施形態に係るフィルム部材の製造方法を示す図である。
図5】第4実施形態に係る有機EL表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
1.有機EL表示装置1の構成
【0020】
本発明の第1実施形態について、図を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る有機EL表示装置1(以下、表示装置1とも称する。)の断面図である。表示装置1は、ディスプレイユニット2と、ディスプレイユニット2に重ねて配置されたタッチパネルユニット3とを備える。
【0021】
ディスプレイユニット2は、表示装置1の駆動時に画面を表示する。ディスプレイユニット2は、第1基板4、複数の第1電極5、複数のホール注入層6、複数の有機発光層7、複数の電子注入層8、第2電極9、封止層10、第2基板11、及びバンク12を備える。
【0022】
表示装置1は、一例としてトップエミッション型であり、有機発光層7において生じた光が、第2基板11側から画面表示に供される。即ち、表示装置1の表示画面側は、第2基板11の第1基板4側とは反対側である。
【0023】
第1基板4は、一方の面(以下、第1面4aと称する。)に回路(一例としてTFT回路)が設けられている。この回路には、複数のTFTが含まれている。このTFTは、各第1電極5と対応する位置に配置されている。第1基板4の他方の面(第2面)4bは、平坦面である。
【0024】
第1電極5は、第1基板4における第1面4a側に配置されて前記回路と接続されている。第1電極5は、一例として金属材料からなる。第1電極5は、反射電極である。第1電極5は、有機発光層7において生じた光を第2基板11側に向けて反射する。複数の第1電極5は、第1基板4の第1面4aに沿って格子状に配置されている。本実施形態の第1電極5は、陽極である。ホール注入層6は、第1電極5と重ねて配置され、有機発光層7にホールを注入する。
【0025】
有機発光層7は、第1電極5の第1基板4側とは反対側で、第1電極5と重ねて配置されている。有機発光層7は、外部より供給されるホールと電子との再結合により発光する。
【0026】
ここで、ディスプレイユニット2が有する複数の有機発光層7は、複数の発光色の有機発光層7を含む。各有機発光層7は、第1基板4の第1面4aに沿った一方向に配列されている。
【0027】
具体的に表示装置1は、第1基板4の第1面4aに沿って格子状に配置された複数の画素20を有する。画素20は、第1基板4の第1面4aに沿って前記一方向に並列された複数のサブ画素21を有する。
【0028】
表示装置1では、第1電極5と有機発光層7とが、表示装置1の表示画面側から見て、サブ画素21に対応する位置に配置され、且つ、画素20中の複数のサブ画素21が、異なる発光色で発光する。
【0029】
一例として、画素20は、前記一方向(図1では紙面左右方向)に配列された3つのサブ画素21を有する。この3つのサブ画素21は、赤色に発光する有機発光層7Rと、緑色に発光する有機発光層7Gと、青色に発光する有機発光層7Bとを有する。表示装置1では、有機発光層7R,7G,7Bが、前記一方向の一方側から他方側に向けて、7R,7G,7Bの順に繰り返し並列されている。
【0030】
電子注入層8は、第1電極5と重ねて配置され、有機発光層7に電子を注入する。第2電極9は、複数の有機発光層7の第1基板4側とは反対側に配置されている。第2電極9は、一例として透明電極材料からなる。第2電極9は、透明電極である。第2電極9は、有機発光層7において生じた光を第2基板11側に向けて透過させる。
【0031】
第2電極9は、第1基板4の第1面4aに沿って配置されて電子注入層8と接続されている。本実施形態の第2電極9は、陰極である。封止層10は、第2電極9と重ねて配置され、第2電極9と第2基板11との間を封止する。封止層10は、一例として透明樹脂を含む。
【0032】
第2基板11は、第2電極9の第1基板4側とは反対側で、第1電極5、各層6~8、及び第2電極9を介して、第1基板4に対向配置されている。バンク12は、第1基板4の第1面4aに沿って、前記一方向と垂直な方向に延び、前記一方向に隣接する各層6~8を区画する。
【0033】
タッチパネルユニット3は、表示装置1におけるディスプレイユニット2の表示画面側から、ユーザの入力操作を受け付ける。タッチパネルユニット3は、第1基板4及び第2基板11に対して重ねて配置されている。
【0034】
タッチパネルユニット3は、ユニット本体14と、フィルム部材15とを有する。ユニット本体14とフィルム部材15とは、透明である。ディスプレイユニット2において有機発光層7により生じた光は、タッチパネルユニット3内を透過して表示装置1の表示画面側から外部へ出射される。
【0035】
ユニット本体14は、シート状に形成され、第2基板11の第1基板4側とは反対側に重ねて配置されている。ユニット本体14は、フィルム部材15を介して、ユーザからの入力と、その入力位置とを検出する。ユニット本体14の入力方式は、一例として静電容量方式であるが、これに限定されない。ユニット本体14の入力方式は、その他、例えば、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、又は電磁誘導方式のいずれでもよい。
【0036】
フィルム部材15は、透明材料からなり、ユニット本体14の第2基板11側とは反対側の面に重ねて配置されている。これによりフィルム部材15は、第1基板4と重ねて配置されている。フィルム部材15は、ユニット本体14を保護する。フィルム部材15は、表示装置1の表示画面側の最表層である。表示装置1では、フィルム部材15の一方の面(ユニット本体14側とは反対側の面であり、以下、第1面15aと称する)が、表示画面側の表面となっている。
【0037】
フィルム部材15は、アンチグレア(AG)フィルム部材である。フィルム部材15は、全光線透過率が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されている。フィルム部材15の第1面15aは、ヘイズ値が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されている。またフィルム部材15の第1面15aは、入射角60°におけるグロス値が0%以上10%以下の値に設定されている。
【0038】
なお全光線透過率は、JIS K7361に準拠する方法に基づいて測定可能である。またヘイズ値は、JIS K7136に準拠する方法に基づき、ヘイズメーターを用いて測定可能である。またグロス値は、JlS Z8741に準拠する方法(鏡面光沢度測定方法)に基づき、グロスメータを用いて、試料面に規定された入射角(ここでは60°)で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束を受光器で測ることにより測定可能である。
【0039】
フィルム部材15の他方の面(第2面15b)は、ユニット本体14のディスプレイユニット2側とは反対側の面に、粘着層を介して対向配置されている。フィルム部材15は、この粘着層によりユニット本体14に固定されている。
【0040】
図2は、図1のフィルム部材15の一部拡大断面図である。図2に示すように、フィルム部材15の第1面15aには、多数の微細な凹凸がランダムに形成されている。本実施形態のフィルム部材15は、ヘイズ値が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されている。また、フィルム部材15は、一例として、複数の樹脂成分を含み且つ複数の樹脂成分の相分離により形成されている。またフィルム部材15は、内部ヘイズ値が、5%未満の値に設定されている。フィルム部材15の最大厚み寸法は、適宜設定可能である。
【0041】
表示装置1の駆動時には、第1基板4のTFT回路により選択された第1電極5と、第2電極9とに電力が供給される。このとき、ホールが第1電極5からホール注入層6を介して有機発光層7に注入されると共に、電子が第2電極9から電子注入層8を介して有機発光層7に注入される。これにより、有機発光層7内においてホールと電子との再結合(キャリア再結合)が行われることで、有機発光層7が発光する。
【0042】
有機発光層7において生じた光は、電子注入層8、第2電極9、第2基板11、及びタッチパネルユニット3の各内部を通過して、表示装置1の表示画面側から外部に出射され、映像出力光として画面表示に供される。有機発光層7の第1基板4側に生じた光は、反射電極である第1電極5により反射されることで、表示装置1の表示画面側から外部に出射され、画面表示に有効利用される。
【0043】
ここで、従来の有機EL表示装置は、例えば、有機発光層により生じた光の光路上に配置された円偏光板を備える。円偏光板は、有機EL表示装置の表示画面に入射された外光の内部反射を防止する。これにより、有機EL表示装置の表示性能の低下が防止される。
【0044】
しかしながら円偏光板は、その特性上、有機発光層により生じる光に対しても一部の光しか透過しない。このため、円偏光板を備える有機EL表示装置では、有機発光層からの光取出し効率を補償して良好な表示性能を得る目的で、出力を高める必要が生じる。これにより、有機EL表示装置の消費電力が増大する。従って、有機EL表示装置をバッテリにより駆動する場合には、駆動時間が短縮される。また、有機EL表示装置の負荷が増大される。これにより、有機EL表示装置の寿命が短縮される。このような問題は、有機EL表示装置のスマートフォンやタブレット等のポータブルデバイスへの用途が拡大するにつれて、顕著になるおそれがある。
【0045】
これに対して表示装置1では、表示画面側の表面のヘイズ値が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されている。このため、表示装置1内から表示装置1外へ出射される外光の反射光を、表示画面側の表面において効率よく散乱させることができる。これにより、表示画面に外光を映り込みにくくすることができる。従って、円偏光板を用いなくても、外光の内部反射による表示性能の低下を防止できる。また、全光線透過率を低く設定することで、外光の反射光はフィルム部材15を2度通過するため、反射光をより抑制できる。
【0046】
また、表示装置1の表示画面側の表面のヘイズ値が上記範囲の値に設定されているため、当該表面において反射される外光を散乱させることができる。これにより、表示画面に外光を一層映り込みにくくすることができる。
【0047】
また、有機発光層7からの光取出し効率が円偏光板により減少するのを回避できる。このため、円偏光板を用いた場合に比べて、消費電力を抑制しながら、有機発光層7からの光取出し効率を大幅に向上できる。
【0048】
具体的に本実施形態では、フィルム部材15の全光線透過率が60%以上100%以下の範囲の値に設定されている。このため、円偏光板を用いた場合に比べて、有機発光層7からの光取出し効率を数十%以上向上できる。
【0049】
また、表示装置1の消費電力を抑制できる。よって、表示装置1をバッテリにより駆動する場合には、バッテリを小型化・小容量化できる。これにより、表示装置1を小型化・軽量化し易くすることができる。
【0050】
また表示装置1では、表示画面側の表面が、タッチパネルユニット3の入力側の表面となっている。このように、タッチパネルユニット3の入力側が表示画面側である場合でも、外光による表示性能の低下を防止できる。また、消費電力を抑制しながら有機発光層7からの光取出し効率を向上できる。
【0051】
また表示装置1では、フィルム部材15の第1面15aが、表示画面側の表面となっている。これにより、フィルム部材15の第1面15aのヘイズ値を、60%以上100%以下の範囲の値に設定することで、外光による表示性能の低下を防止できる。また、消費電力を抑制しながら有機発光層7からの光取出し効率を向上できる。
【0052】
また表示装置1では、フィルム部材15の全光線透過率が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されている。また、フィルム部材15の入射角60°におけるグロス値が、0%以上10%以下の範囲の値に設定されている。このように、フィルム部材15の全光線透過率及び入射角60°におけるグロス値を上記範囲の値に設定することで、外光の内部反射による表示性能の低下を一層防止できる。
【0053】
なお表示装置1は、第1電極5と有機発光層7との間に配置されたその他の層(例えばホール輸送層)を備えていてもよい。また表示装置1は、有機発光層7と第2電極9との間に配置されたその他の層(例えば電子輸送層)を備えていてもよい。
【0054】
また表示装置1は、有機発光層7において生じた光が、第1基板4側から画面表示に供されるボトムエミッション型でもよい。この場合、第1基板4を透明基板とし且つ第1電極5を透明電極とすると共に、第2電極9を反射電極とする必要がある。また、第1電極5を陰極とし、第2電極9を陽極としてもよい。この場合、ホール注入層6と電子注入層8とは、第1基板4の板厚方向に互いに逆に配置する必要がある。また表示装置1は、1つのサブ画素21において、複数の有機発光層7が重ねて配置されていてもよい。
【0055】
また表示装置1は、タッチパネルユニット3がディスプレイユニット2の厚み方向内部に配置される構造を有していてもよい。このように、タッチパネルユニット3が表示装置1の外部に露出しない場合でも、表示装置1の表示画面側の表面のヘイズ値が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されていればよい。この場合の表面とは、表示装置1がボトムエミッション型であれば、例えば第1基板4の第1電極5側とは反対側の面(第2面4b)であり、表示装置1がトップエミッション型であれば、例えば第2基板11の第2電極9側とは反対側の面である。
【0056】
なお、全光線透過率を調整するため、フィルム部材15は、基材フィルムを有していてもよい。またフィルム部材15は、少なくとも一方の面に全光線透過率を調整するための層を有していてもよい。この層としては、公知の染料又は顔料を含むものであってもよい。また該層は、表面に凹凸が形成されていてもよい。次に、フィルム部材15の具体的構成等について説明する。
【0057】
2.フィルム部材の具体的構成
第1実施形態のフィルム部材15は、複数の樹脂成分の相分離構造を有する。フィルム部材15は、一例として、複数の樹脂成分の相分離構造により、複数の長細状(紐状又は線状)凸部が第1面15aに形成されている。長細状凸部は分岐しており、密な状態で共連続相構造を形成している。
【0058】
フィルム部材15は、複数の長細状凸部と、隣接する長細状凸部間に位置する凹部とにより、表示装置1内で反射されて表示装置1の表示画面側から出射する外光を散乱させる。表示装置1は、このようなフィルム部材15を備えることで、優れた外光の映り込み防止効果を有するものとなっている。フィルム部材15の第1面15aは、長細状凸部が略網目状に形成されることにより、網目状構造、言い換えると、連続し又は一部欠落した不規則な複数のループ構造を有する。
【0059】
またフィルム部材15は、複数の樹脂成分を含み且つ複数の樹脂成分の相分離により形成されている。また、フィルム部材15の内部ヘイズ値は、5%未満の値に設定されている。
【0060】
これにより、フィルム部材15の第1面15aに相分離構造により多数の凹凸をランダムに形成することで、フィルム部材15のヘイズ値を適切に設定できる。また、内部ヘイズ値を5%未満の値に抑えることで、フィルム部材15内を透過する光の散乱を防止し、表示装置1の良好な表示性能を得ることができる。
【0061】
複数の長細状凸部は、互いに独立していてもよいし、繋がっていてもよい。フィルム部材15の相分離構造は、後述するように、フィルム部材15の原料となる溶液を用いて、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成される。フィルム部材15の詳細については、例えば、特開2014-085371号公報の記載を参照できる。
【0062】
フィルム部材15が含む複数の樹脂成分は、相分離可能なものであればよいが、長細状凸部が形成され且つ高い耐擦傷性を有するフィルム部材15を得る観点では、ポリマー及び硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0063】
フィルム部材15が含むポリマーとしては、熱可塑性樹脂を例示できる。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6-キシレノールの重合体等)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類等)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等)等を例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上の組み合わせで使用できる。
【0064】
またポリマーとしては、硬化反応に関与する官能基、又は、硬化性化合物と反応する官能基を有するものも例示できる。このポリマーは、官能基を主鎖又は側鎖に有していてもよい。
【0065】
前記官能基としては、縮合性基や反応性基(例えば、ヒドロキシル基、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基又はイミノ基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基等)、重合性基(例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリル基等のC2-6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニル基等のC2-6アルキニル基、ビニリデン基等のC2-6アルケニリデン基、又はこれらの重合性基を有する基((メタ)アクリロイル基等)等)等を例示できる。これらの官能基のうち、重合性基が好ましい。
【0066】
またフィルム部材15には、複数種類のポリマーが含まれていてもよい。これらの各ポリマーは、液相からのスピノーダル分解により相分離可能であってもよいし、互いに非相溶であってもよい。複数種類のポリマーに含まれる第1のポリマーと第2のポリマーとの組み合わせは特に制限されないが、加工温度付近で互いに非相溶なものを使用できる。
【0067】
例えば、第1のポリマーがスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等)である場合、第2のポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル類)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリC2-4アルキレンアリレート系コポリエステル等)等を例示できる。
【0068】
また例えば、第1のポリマーがセルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル類)である場合、第2のポリマーとしては、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等)、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリC2-4アルキレンアリレート系コポリエステル等)等を例示できる。
【0069】
複数種類のポリマーには、少なくともセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースC2-4アルキルカルボン酸エステル類)が含まれていてもよい。
【0070】
ここで、フィルム部材15の相分離構造は、フィルム部材15の製造時に、複数の樹脂成分に含まれていた硬化性樹脂の前駆体が活性エネルギー線(紫外線又は電子線等)や熱等により硬化することで固定される。また、このような硬化性樹脂により、フィルム部材15に耐擦傷性及び耐久性が付与される。
【0071】
フィルム部材15の耐擦傷性を得る観点から、複数種類のポリマーに含まれる少なくとも一つのポリマーは、硬化性樹脂前駆体と反応可能な官能基を側鎖に有するポリマーであることが好ましい。相分離構造を形成するポリマーとしては、上記した互いに非相溶な2つのポリマー以外に、熱可塑性樹脂や他のポリマーが含まれていてもよい。第1のポリマーの重量M1と第2のポリマーの重量M2との重量比M1/M2、及び、ポリマーのガラス転移温度は、適宜設定可能である。
【0072】
硬化性樹脂前駆体としては、活性エネルギー線(紫外線又は電子線等)や熱等により反応する官能基を有し、この官能基により硬化又は架橋して樹脂(特に硬化樹脂又は架橋樹脂)を形成する硬化性化合物を例示できる。
【0073】
このような化合物としては、熱硬化性化合物又は熱硬化性樹脂(エポキシ基、重合性基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基等を有する低分子量化合物(例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等))、紫外線や電子線等により硬化する光硬化性(電離放射線硬化性)化合物(光硬化性モノマー、オリゴマー等の紫外線硬化性化合物等)等を例示できる。
【0074】
好ましい硬化性樹脂前駆体としては、紫外線や電子線等により短時間で硬化する光硬化性化合物を例示できる。このうち、特に紫外線硬化性化合物が実用的である。耐擦傷性等の耐性を向上させるため、光硬化性化合物は、分子中に2以上(好ましくは2~15、更に好ましくは4~10程度)の重合性不飽和結合を有することが好ましい。具体的に光硬化性化合物は、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体であることが好ましい。
【0075】
硬化性樹脂前駆体には、その種類に応じた硬化剤が含まれていてもよい。例えば熱硬化性樹脂前駆体には、アミン類、多価カルボン酸類等の硬化剤が含まれていてもよく、光硬化性樹脂前駆体には、光重合開始剤が含まれていてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類等を例示できる。
【0076】
また硬化性樹脂前駆体には、硬化促進剤が含まれていてもよい。例えば光硬化性樹脂前駆体には、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステル等)、ホスフィン系光重合促進剤等が含まれていてもよい。
【0077】
フィルム部材15の製造工程では、フィルム部材15の原料となる溶液に含まれるポリマーと硬化性樹脂前駆体のうち、少なくとも2つの成分を、加工温度付近で互いに相分離させる組み合わせとして使用する。相分離させる組み合わせとしては、例えば、(a)複数種類のポリマー同士を互いに非相溶で相分離させる組み合わせ、(b)ポリマーと硬化性樹脂前駆体とを非相溶で相分離させる組み合わせ、又は、(c)複数の硬化性樹脂前駆体同士を互いに非相溶で相分離させる組み合わせ等が挙げられる。これらの組み合わせのうち、通常は、(a)複数種類のポリマー同士の組み合わせや、(b)ポリマーと硬化性樹脂前駆体との組み合わせが挙げられ、特に(a)複数種類のポリマー同士の組み合わせが好ましい。
【0078】
ここで通常、ポリマーと、硬化性樹脂前駆体の硬化により生成した硬化樹脂又は架橋樹脂とは、互いに屈折率が異なる。また通常、複数種類のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率も互いに異なる。ポリマーと、硬化樹脂又は架橋樹脂との屈折率差、及び、複数種類のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率差は、フィルム部材15に要求される光学特性に合わせて、適宜設定可能である。
【0079】
フィルム部材15には、光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤等が含まれていてもよい。
【0080】
フィルム部材15の製造方法は、一例として、調製工程、形成工程、及び硬化工程を有する。調製工程では、フィルム部材15の原料となる溶液(以下、単に溶液とも称する。)を調製する。形成工程では、調製工程で調製した溶液を所定の支持体の表面に塗布して溶液中の溶媒を蒸発させると共に、液相からのスピノーダル分解により相分離構造を形成する。硬化工程では、形成工程後に硬化性樹脂前駆体を硬化させる。
【0081】
[調製工程]
調製工程では、溶媒と、フィルム部材15を構成するための樹脂組成物とを含む溶液を調製する。溶媒は、前述したフィルム部材15に含まれるポリマー及び硬化性樹脂前駆体の種類及び溶解性に応じて選択できる。溶媒は、少なくとも固形分(複数種類のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できるものであればよい。
【0082】
溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等を例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。
【0083】
樹脂組成物としては、前記熱可塑性樹脂、光硬化性化合物、光重合開始剤、前記熱可塑性樹脂、及び光硬化性化合物を含む組成物が望ましい。或いは樹脂組成物としては、前記互いに非相溶な複数種類のポリマー、光硬化性化合物、及び光重合開始剤を含む組成物が望ましい。
【0084】
溶液中の溶質(ポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、複数の樹脂成分の相分離が生じる範囲、及び、溶液の流延性やコーティング性等を損なわない範囲において調整できる。
【0085】
ここで、フィルム部材15のグロス値は、溶液中の複数の樹脂組成物の組み合わせや重量比、或いは、調製工程、形成工程、及び硬化工程の施工条件等によって変化しうる。従って、各条件を変化させてフィルム部材の試験体を形成し、得られた試験体の物性を予め測定・把握しておくことで、所望のグロス値を有するフィルム部材15を得ることができる。
【0086】
[形成工程]
形成工程では、調製工程で調製した溶液を、支持体の平滑な表面に流延又は塗布する。溶液の流延方法又は塗布方法としては、慣用の方法、例えば、スプレー、スピナー、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター等を例示できる。
【0087】
支持体の表面に流延又は塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。この蒸発過程における溶液の濃縮に伴って、複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離を生じさせ、相間距離(ピッチ又は網目径)が比較的規則的な相分離構造を形成する。長細状凸部の共連続相構造は、溶媒蒸発後の樹脂成分の溶融流動性がある程度高くなるような乾燥条件や処方を設定することにより形成できる。
【0088】
溶媒の蒸発は、フィルム部材15の第1面15aに長細状凸部を形成し易くする観点から、加熱乾燥により行うのが好ましい。溶媒の乾燥温度が低過ぎたり、乾燥時間が短か過ぎると、樹脂成分に対する熱量の付与が不十分となり、樹脂成分の溶融流動性が低下して、長細状凸部の形成が困難となるおそれがあるため留意する。
【0089】
溶媒の乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎると、一旦形成された長細状凸部が流動して高さが低下する場合があるものの、長細状凸部の構造は維持される。そのため、長細状凸部の高さを変える手段として、乾燥温度及び乾燥時間を利用できる。また形成工程では、溶媒の蒸発温度を高くしたり、樹脂成分に粘性の低い成分を用いたりすることにより、相分離構造が繋がった共連続相構造を形成できる。
【0090】
複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離の進行に伴って、共連続相構造が形成されて粗大化すると、連続相が非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状等の独立相の海島構造)が形成される。ここで、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。溶媒除去後、外表面に多数の微細な凹凸を有する層が形成される。
【0091】
このように、相分離により外表面に多数の微細な凹凸を形成することで、フィルム部材15中に微粒子を分散させなくてもフィルム部材15のグロス値を調整できる。また、フィルム部材15中に微粒子を分散させなくて済むことから、外部ヘイズ値に比べて内部ヘイズ値を抑制しながらフィルム部材15のグロス値を調整し易くすることができる。なお、調製工程において溶液に微粒子を添加することで、微粒子を含むフィルム部材15を形成することもできる。
【0092】
[硬化工程]
硬化工程では、溶液中の硬化性樹脂前駆体を硬化させることで、形成工程で形成された相分離構造を固定化し、フィルム部材15を形成する。硬化性樹脂前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱又は活性エネルギー線の照射、或いはこれらの方法の組み合わせにより行う。照射する活性エネルギー線は、光硬化成分等の種類に応じて選択する。
【0093】
活性エネルギー線の照射は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。活性エネルギー線が紫外線である場合、光源として、遠紫外線ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザ光源(ヘリウム-カドミウムレーザ、エキシマレーザ等の光源)等を用いることができる。以上の各工程を経ることによりフィルム部材15が製造される。
【0094】
3.変形例
第1実施形態の変形例として、フィルム部材15は、複数の樹脂成分中に分散された複数の微粒子を更に含むことができる。このように、相分離構造と共に複数の微粒子を用いることで、フィルム部材15のヘイズ値を設定し易くすることができる。
【0095】
この場合の微粒子は、有機系微粒子及び無機系微粒子のいずれでも良い。またフィルム部材15は、複数種類の微粒子を含んでいてもよい。有機系微粒子としては、架橋アクリル粒子や架橋スチレン粒子を例示できる。また無機系微粒子としては、シリカ粒子及びアルミナ粒子を例示できる。微粒子の平均粒径は特に限定されない。微粒子は、中実でもよいし、中空でもよい。
【0096】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係るフィルム部材115の一部拡大断面図である。図3に示すように、第2実施形態に係るフィルム部材115は、マトリクス樹脂116と、マトリクス樹脂116中に分散された複数の微粒子117を含む。微粒子117は、ここでは中実の真球状に形成されている。フィルム部材115には、微粒子117が一次粒子として分散して配置されている。
【0097】
なお微粒子117は、歪な球状や、楕円体状に形成されていてもよい。また微粒子117は、中空に形成されていてもよい。微粒子117が中空に形成されている場合、微粒子117の中空部には、空気或いはその他の気体が充填されていてもよい。またフィルム部材115には、複数の微粒子117が凝集して形成された複数の二次粒子が分散されていてもよい。
【0098】
微粒子117の粒径のバラツキは、小さい方が望ましい。例えば、フィルム部材115に含まれる微粒子117の粒径分布において、フィルム部材115に含まれる微粒子117の50重量%以上の平均粒径(コールターカウンター法における50%体積平均粒径)が、1.0μm以内のバラツキに収められていることが望ましい。フィルム部材115が複数の微粒子117を含むことにより、フィルム部材115の第1面115aには、適度なサイズの多数の凹凸がランダムに形成されている。
【0099】
このように第2実施形態では、マトリクス樹脂116中に複数の微粒子117を分散することにより、比較的簡単な方法で、フィルム部材115のヘイズ値を設定し易くすることができる。
【0100】
フィルム部材115におけるマトリクス樹脂116の重量と複数の微粒子117の総重量との比は、適宜設定することが可能である。また微粒子117は、無機系及び有機系のいずれでもよいが、良好な透明性を有するものが好ましい。
【0101】
有機系の微粒子117としては、プラスチックビーズを例示できる。プラスチックビーズとしては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル-スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等を例示できる。スチレンビーズは、架橋スチレンビーズでもよく、アクリルビーズは、架橋アクリルビーズでもよい。プラスチックビーズは、表面に疎水基を有するものが望ましい。このようなプラスチックビーズとしては、スチレンビーズを例示できる。
【0102】
マトリクス樹脂116としては、活性エネルギー線により硬化する光硬化性樹脂、塗工時に添加した溶剤の乾燥により硬化する溶剤乾燥型樹脂、及び、熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを例示できる。
【0103】
光硬化性樹脂としては、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー、プレポリマー、反応性希釈剤を例示できる。
【0104】
これらの具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を例示できる。
【0105】
光硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサントン類を例示できる。また光硬化性樹脂には、光増感剤を混合して用いることも好ましい。光増感剤としては、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等を例示できる。
【0106】
溶剤乾燥型樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を例示できる。この熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマー等を例示できる。溶剤乾燥型樹脂としては、有機溶媒に可溶であって、特に、成形性、製膜性、透明性、及び耐候性に優れる樹脂が望ましい。このような溶剤乾燥型樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)を例示できる。
【0107】
ここで、溶剤乾燥型樹脂に用いられる熱可塑性樹脂としては、セルロース系樹脂を例示できる。このセルロース系樹脂は、ニトロセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体を例示できる。
【0108】
また、溶剤乾燥型樹脂としては、その他、ビニル系樹脂、アセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリカーボネート樹脂等を例示できる。
【0109】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を例示できる。マトリクス樹脂116として熱硬化性樹脂を用いる場合、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、及び粘度調整剤等の少なくともいずれかを併用してもよい。
【0110】
第2実施形態におけるフィルム部材115の製造方法は、一例として、第1実施形態と同様に、調製工程と、塗布工程と、硬化工程とを有する。調製工程では、フィルム部材115の原料となる溶液を調製する。塗布工程では、調製工程で調製した溶液を所定の支持体の表面に塗布する。硬化工程では、塗布した溶液中の樹脂を硬化させる。
【0111】
[調製工程]
調製工程では、溶媒と、フィルム部材115を構成するための樹脂組成物と、微粒子117とを含む溶液を調製する。溶媒としては、アルコール類(イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等)、ケトン類(メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)の少なくともいずれかを例示できる。溶液には、更に公知のレベリング剤を添加してもよい。例えば、フッ素系やシリコーン系のレベリング剤を用いることにより、フィルム部材115に良好な耐擦傷性を付与できる。
【0112】
[塗布・硬化工程]
塗布工程では、調製工程で調製した溶液を、第1実施形態と同様の方法により、支持体の表面に流延又は塗布する。支持体の表面に流延又は塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。
【0113】
マトリクス樹脂116が光硬化性樹脂である場合、塗布工程後に、一例として紫外線又は電子線による硬化工程を行う。紫外線源としては、各種水銀灯、紫外線カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプの光源を例示できる。また紫外線の波長域としては、例えば、190nm以上380nm以下の範囲の波長域を例示できる。
【0114】
また電子線源としては、公知の電子線加速器を例示できる。具体的には、ヴァンデグラフ型、コッククロフト・ウォルトン型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を例示できる。
【0115】
溶液に含まれていたマトリクス樹脂116が硬化することにより、マトリクス樹脂116中の微粒子117の位置が固定される。これにより、マトリクス樹脂116中に複数の微粒子117が分散され、第1面115aに複数の微粒子117による多数の凹凸が形成された構造のフィルム部材115を得ることができる。
【0116】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態に係るフィルム部材215の製造方法を示す図である。フィルム部材215は、表面に凹凸形状が賦形された構造を有する。フィルム部材215は、樹脂フィルムで構成されている。
【0117】
具体的にフィルム部材215は、所定の基材フィルム上に硬化性樹脂を含むコート層を形成し、このコート層の表面を凹凸形状に賦形した後、コート層を硬化することにより製造される。図4の例では、硬化性樹脂として紫外線硬化樹脂を用いている。
【0118】
図4に示すように、この製造方法では、基材フィルム40が、図示しない巻出ロールから巻き出され、所定方向に搬送される。基材フィルム40の搬送方向下流端部は、一対のロール31,32のニップ点N1に挿通される。
【0119】
ロール32の周面には、ロール32に隣接して軸支されたロール33の周面から紫外線硬化樹脂前駆体が付着させられる。基材フィルム40がニップ点N1を通過する際、この紫外線硬化樹脂前駆体が、基材フィルム40の一方の面に塗布される。
【0120】
基材フィルム40に塗布された紫外線硬化樹脂前駆体の層(以下、コート層と称する。)は、ロール31,34のニップ点において、基材フィルム40と共に押圧される。ロール34は、周面に微細な凹凸が形成されたロール状金型(エンボスロール)であり、ロール31,34のニップ点N2を通過する際にコート層の表面に凹凸形状を転写する。
【0121】
ロール34により表面に凹凸形状が転写されたコート層は、ロール31,34の下方に設けられた不図示の紫外線ランプから照射される紫外線により硬化される。これにより、基材フィルム40上にフィルム部材215が形成される。このようにして製造されたフィルム部材215と基材フィルム40との積層体は、ロール34に隣接して軸支されたロール35によりロール34からリリースされ、所定方向へ搬送される。フィルム部材215は、基材フィルム40より剥離される。
【0122】
ここで、ロール34の表面の凹凸部は、ブラスト法により、所定の粒径のブラスト粒子を衝打させて形成されており、ブラスト粒径を調整することで、フィルム部材215に形成される凹凸形状を調整できる。
【0123】
基材フィルム40は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムが好適に用いることができる。
【0124】
このように、フィルム部材215の作製方法は、基材フィルム40に硬化性樹脂前駆体を塗布するステップ(a)と、ブラスト粒子を衝打させて硬化性樹脂前駆体の表面に凹凸形状を有するロール状金型を作製するステップ(b)と、このロール状金型を用いて、基材フィルム40に塗布した硬化性樹脂前駆体の表面に凹凸形状を転写するステップ(c)と、凹凸形状を転写した硬化性樹脂前駆体を硬化させて、表面に凹凸形状を有するフィルム部材215を形成するステップ(d)とを有する。
【0125】
ステップ(b)において使用するブラスト粒子の平均粒径は、適宜設定可能であるが、一例として、10μm以上50μm以下の範囲の値に設定できる。ブラスト粒子の平均粒径は、20μm以上45μm以下の範囲の値が一層望ましく、30μm以上40μm以下の範囲の値がより望ましい。これにより、表面に凹凸形状が賦形されたフィルム部材215が得られる。
【0126】
なお、第3実施形態において使用する金型は、ロール状金型以外でもよく、例えば、板状金型(エンボス板)でもよい。また、基材フィルムの一方の面にコート層(樹脂層)を形成した後、このコート層の表面を金型により賦形し、コート層を硬化することで、フィルム部材215を形成してもよい。また、上記例では、コート層の表面を賦形した後にコート層を硬化させたが、コート層の賦形と硬化とを並行して行ってもよい。
【0127】
金型の材質は、一例として、金属、プラスチック、及び木を例示できる。金型のコート層との接触面には、金型の耐久性(耐摩耗性)を向上させるために被膜を設けてもよい。
【0128】
ブラスト粒子の材質は、一例として、金属、シリカ、アルミナ、及びガラスを例示できる。ブラスト粒子は、例えば、気体又は液体の圧力により金型の表面に衝打させることができる。また、硬化樹脂前駆体が電子線硬化型であれば、紫外線ランプの代りに電子線加速器等の電子線源を利用でき、熱硬化性であれば、紫外線ランプの代りにヒーター等の加熱源を利用できる。
【0129】
なおフィルム部材215は、樹脂層と、樹脂層の表面に配置された上層を更に有していてもよい。この上層を設けることで、フィルム部材215の外部ヘイズ値を調整し易くすることができると共に、フィルム部材215を外部から保護し易くすることができる。
【0130】
上層の厚みは、適宜設定可能であるが、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲の値に設定できる。上層の厚みは、2.0μm以上12μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、3.0μm以上8.0μm以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0131】
(第4実施形態)
図5は、第4実施形態に係る有機EL表示装置100の断面図である。図5に示すように、表示装置100は、タッチパネルユニット3を備えていない。また表示装置100が備えるディスプレイユニット102は、ボトムエミッション型である。即ち、第1基板104、第1電極105が透明であり、第2電極109は、反射電極である。
【0132】
表示装置100は、第1基板104の第1電極105とは反対側の面が表示画面側である。表示装置100では、フィルム部材15が、第1基板104の第1電極105とは反対側の面に重ねて配置されている。このような構成を有する表示装置100においても、第1実施形態の表示装置1と同様の効果が奏される。
【0133】
なお、フィルム部材15の代わりにフィルム部材115を用いてもよい。また表示装置100は、トップエミッション型でもよい。この場合、フィルム部材15は、第2基板111の第2電極109とは反対側の面に重ねて配置することができる。
【0134】
また第2実施形態では、表示装置100がフィルム部材15を備える構成としたが、フィルム部材15は省略してもよい。この場合、表示装置100の表示画面側の表面のヘイズ値が、60%以上100%以下の範囲の値に設定されていればよい。この場合の表面とは、表示装置100がボトムエミッション型であれば、例えば第1基板104の第1電極105側とは反対側の面であり、表示装置100がトップエミッション型であれば、例えば第2基板111の第2電極109側とは反対側の面である。即ち、第1基板104及び第2基板111のうち表示画面側となる基板において、その表示画面側の面のヘイズ値を、60%以上100%以下の範囲の値に設定することができる。
【0135】
(確認試験)
第1実施形態におけるフィルム部材15を実施例1として作製した。第2実施形態におけるフィルム部材115を実施例2として作製した。第3実施形態におけるフィルム部材215を実施例3として作製した。TAC、ポリビニルアルコール(PVA)、TAC、及び粘着層を順に積層してなる偏光板(日東電工(株)製、厚み寸法203μm)を比較例として作製した。
【0136】
実施例1~3及び比較例について、JIS K7136に準拠する方法に基づき、ヘイズ値(%)を測定した。また実施例1~3及び比較例について、JIS K7361に準拠する方法に基づき、全光線透過率(%)を測定した。また実施例1~3及び比較例について、JlS Z8741に準拠する方法に基づき、入射角60°におけるグロス値(%)を測定した。
【0137】
また実施例1~3及び比較例について、以下の方法で発光輝度(%)を測定した。同様の構成のディスプレイユニット2の光取出し側に、実施例1~3のフィルム部材又は比較例の偏光板を重ねて配置し、同一駆動条件下で、実施例1~3のフィルム部材又は比較例の偏光板を介したディスプレイユニット2の発光輝度をCCDカメラにより測定した。そして、実施例1~3及び比較例の発光輝度の測定値を、実施例1を100%としたときの相対値に変換した。これらの測定結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
表1に示す結果から、実施例1~3は、比較例に比べて、ほぼ同様に高い発光輝度を有していると共に、高い全光線透過率を有することで、有機発光層により生じた光を画面表示に有効利用できることが確認された。また実施例1~3は、入射角60°におけるグロス値(%)が少なくとも9%以下の値であり、比較例に比べて大幅に低いことが確認された。これにより実施例1~3では、表示画面に外光を映り込みにくくできることが分かった。
【0140】
なお、本願発明者らの別の検討により、実施例1~3のフィルム部材の各々において、入射角60°におけるグロス値(%)を0%以上10%以下の範囲で変化させた場合でも、ほぼ同等の優れた性能が得られることが分かった。
【0141】
また、実施例1~3のフィルム部材の各々において、ヘイズ値を60%以上100%以下の範囲で変化させた場合、及び、全光線透過率を60%以上100%以下の範囲で変化させた場合でも、ほぼ同等の優れた性能が得られることが分かった。
【0142】
本発明は、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除できる。表示装置の画面表示側の表面に凹凸を形成する方法としては、例えば、周面に凹凸が形成された賦形ロール等の賦形部材を用いて、表示装置の画面表示側の表面に凹凸を転写する方法でもよい。
【0143】
また、フィルム部材15,115,215は、入射光と反射光とを干渉させて打ち消し合うことにより外光の反射を防止するアンチリフレクション(AR)フィルム部材であってもよい。この場合、フィルム部材15,115,215は、例えば、表示画面側に配置されるベースフィルムと、このベースフィルムに積層される反射防止膜とを有するように構成できる。またこの場合、反射防止膜のベースフィルム側とは反対側の面が、表示装置の画像表示側の表面となる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上のように本発明は、有機EL表示装置において、円偏光板を用いなくても外光の内部反射による表示性能の低下を防止できると共に、円偏光板を用いた場合に比べて、消費電力を抑制しながら有機発光層からの光取出し効率を向上できる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できる有機EL表示装置に本発明を広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0145】
1,100 有機EL表示装置
3 タッチパネルユニット
4,104 第1基板
5,105 第1電極
7,7R,7G,7B 有機発光層
9,109 第2電極
11,111 第2基板
15,115,215 フィルム部材
116 マトリクス樹脂
117 微粒子
図1
図2
図3
図4
図5