(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171821
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231128BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20231128BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155487
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2021508819の分割
【原出願日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2019064059
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】錦織 克聡
(72)【発明者】
【氏名】森 秀斗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 準也
(72)【発明者】
【氏名】中島 浩光
(57)【要約】 (修正有)
【課題】次世代露光技術を適用した場合に感度や焦点深度、プロセスマージンを十分なレベルで発揮可能な感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法を提供する。
【解決手段】フェノール性水酸基を有する構造単位を含む樹脂、及び下記式(1)で表される化合物を含む感放射線性樹脂組成物。
(式(1)中、Arは置換又は非置換の炭素数6~20の芳香族環である。nは2~4の整数である。Z
+は1価のオニウムカチオンである。複数のYはそれぞれ独立して極性基である。ただし、複数のYのうち少なくとも1つはCOO
-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する-OH基又は-SH基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を有する構造単位を含む樹脂、及び
下記式(1)で表される化合物
を含む感放射線性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは置換又は非置換の炭素数6~20の芳香族環である。nは2~4の整数である。Z
+は1価のオニウムカチオンである。複数のYはそれぞれ独立してヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又はエステル結合を有する基である。ただし、複数のYのうち少なくとも1つはCOO
-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する-OH基又は-SH基である。)
【請求項2】
上記COO-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する極性基が-OH基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
上記式(1)で表される化合物が、下記式(1-1)で表される化合物である請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】
(式(1-1)中、R
p1は、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子又はアミノ基である。mは0~3の整数である。mが2又は3である場合、複数のR
p1は互いに同一又は異なる。n及びZ
+は上記式(1)と同義である。qは0~2の整数である。qが0である場合、m+nは5以下である。ただし、少なくとも1つのOH基は、COO
-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する。)
【請求項4】
上記式(1-1)におけるqが0又は1である請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
上記式(1-1)におけるnが2又は3である請求項3又は4に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
上記式(1)におけるオニウムカチオンが、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである請求項1~5のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
上記式(1)で表される化合物から発生する酸よりpKaが小さい酸を発生する感放射線性酸発生剤をさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
上記感放射線性酸発生剤の含有量が、上記樹脂100質量部に対し10質量部以上である請求項7に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
上記感放射線性酸発生剤の含有量が、上記樹脂100質量部に対し10質量部以上60質量部以下である請求項8に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項10】
上記式(1)で表される化合物の含有量の上記感放射線性酸発生剤の含有量に対するモル比が、3モル%以上250モル%以下である請求項8又は9に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項11】
上記フェノール性水酸基を有する構造単位が、ヒドロキシスチレンに由来する構造単位である請求項1~10のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項12】
上記樹脂中の上記フェノール性水酸基を有する構造単位の含有割合が、5モル%以上70モル%以下である請求項1~11のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成する工程、
上記レジスト膜を露光する工程、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターンの形成方法。
【請求項14】
上記露光を極端紫外線又は電子線を用いて行う請求項13に記載のレジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子における微細な回路形成にレジスト組成物を用いるフォトリソグラフィー技術が利用されている。代表的な手順として、例えば、レジスト組成物の被膜に対するマスクパターンを介した放射線照射による露光で酸を発生させ、その酸を触媒とする反応により露光部と未露光部とにおいて樹脂のアルカリ系や有機系の現像液に対する溶解度の差を生じさせることで、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
上記フォトリソグラフィー技術ではArFエキシマレーザー等の短波長の放射線を利用したり、さらに露光装置のレンズとレジスト膜との間の空間を液状媒体で満たした状態で露光を行う液浸露光法(リキッドイマージョンリソグラフィー)を用いたりしてパターン微細化を推進している。
【0004】
さらなる技術進展に向けた取り組みが進む中、レジスト組成物に感光性クエンチャーを配合し、未露光部まで拡散した酸をイオン交換反応により捕捉してArF露光によるリソグラフィー性能を向上させる技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
次世代露光技術として、電子線、X線及びEUV(極端紫外線)等のより短波長の放射線を用いたリソグラフィーも検討されつつある。こうした次世代露光技術でも感度や焦点深度等の点で従来と同等以上のレジスト諸性能が要求され、またパターン微細化のための条件の制御を容易にするプロセスマージンが望まれるものの、既存の感放射線性樹脂組成物ではそれらの特性は十分なレベルで得られていない。
【0007】
本発明は、次世代露光技術を適用した場合に感度や焦点深度、プロセスマージンを十分なレベルで発揮可能な感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記構成を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一実施形態において、フェノール性水酸基を有する構造単位を含む樹脂、及び
下記式(1)で表される化合物
を含む感放射線性樹脂組成物に関する。
【化1】
(式(1)中、Arは置換又は非置換の炭素数6~20の芳香族環である。nは2~4の整数である。Z
+は1価のオニウムカチオンである。複数のYはそれぞれ独立して極性基である。ただし、複数のYのうち少なくとも1つはCOO
-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する-OH基又は-SH基である。)
【0010】
当該感放射線性樹脂組成物では、特定構造を有する上記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(B)」ともいう。)をクエンチャーとして配合することで、優れた感度、焦点深度及びプロセスマージンを発揮することができる。この理由はいかなる理論にも束縛されないものの、以下のように推測される。露光量が必要量を下回る場合(underdoseの場合)、樹脂の酸解離性基の脱保護が不十分となるため、露光部の現像液への溶解性が低下する傾向となり、ブリッジ欠陥やスカム発生の原因となることがある。化合物(B)に複数の極性基を導入して極性を高めることで、露光量不足部分でのアルカリ現像液に対する溶解性が高まり、上記不具合を抑制することができる。また、デフォーカス時に露光部のパターン断面形状がT字状又は逆楔形の状態(上部に対して底部が細い状態)となった場合、パターン倒れが起きやすくなる。パターンの上部の分厚い部分は脱保護が不十分な部分と考えられるため、過少露光量の場合と同様、化合物(B)の極性を高めることでパターン上部の溶解性が高まり、上記不具合が抑制される。このように、化合物(B)の配合により低露光量ないしデフォーカス時の露光部における溶解性不足を補うことにより、当該感放射線性樹脂組成物は感度、焦点深度及びプロセスマージンを十分なレベルで発揮することができると推察される。
【0011】
一実施形態において、上記COO-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する極性基が-OH基であることが好ましい。極性基として-OH基を採用することで化合物(B)の極性をより高めることができるので、感度、焦点深度及びプロセスマージンをより高いレベルで発揮することができる。
【0012】
一実施形態において、上記式(1)で表される化合物が、下記式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
(式(1-1)中、R
p1は、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子又はアミノ基である。mは0~3の整数である。mが2又は3である場合、複数のR
p1は互いに同一又は異なる。n及びZ
+は上記式(1)と同義である。qは0~2の整数である。qが0である場合、m+nは5以下である。ただし、少なくとも1つのOH基は、COO
-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する。)
【0013】
化合物(B)として上記式(1-1)で表される化合物(以下、「化合物(b)」ともいう。)を採用することで、化合物(B)の極性を効率的に高めることができ、感度、焦点深度及びプロセスマージンを効率的に向上させることができる。
【0014】
一実施形態において、上記式(1-1)におけるqが0又は1であることが好ましい。これにより樹脂(A)との親和性を維持しつつ、化合物(b)のアルカリ現像液に対する溶解性を高めることができる。
【0015】
一実施形態において、上記式(1-1)におけるnが2又は3であることが好ましい。これにより化合物(b)の極性や安定性等を高めることができる。
【0016】
一実施形態において、上記式(1)で表される化合物の含有量が、上記樹脂100質量部に対し3質量部以上30質量部以下であることが好ましい。これにより化合物(B)の溶解性向上作用を十分なレベルで得ることができ、感度、焦点深度及びプロセスマージンをより高いレベルで発揮することができる。
【0017】
一実施形態において、上記式(1)におけるオニウムカチオンが、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンであることが好ましい。
【0018】
一実施形態において、当該感放射線性樹脂組成物は、上記式(1)で表される化合物から発生する酸よりpKaが小さい酸を発生する感放射線性酸発生剤をさらに含むことが好ましい。当該感放射線性樹脂組成物が具体的に感放射線性酸発生剤を含むことで、樹脂(A)中の保護基の脱保護が可能となり、リソグラフィープロセスを好適に進行させることができる。
【0019】
一実施形態において、上記感放射線性酸発生剤の含有量が、上記樹脂100質量部に対し10質量部以上であることが好ましい。また、上記感放射線性酸発生剤の含有量が、上記樹脂100質量部に対し10質量部以上60質量部以下であることが好ましい。これにより感度、焦点深度及びプロセスマージンのさらなる向上を図ることができる。
【0020】
一実施形態において、上記フェノール性水酸基を有する構造単位が、ヒドロキシスチレンに由来する構造単位であることが好ましい。EUV等による露光を採用する場合には、これまでのArFエキシマレーザー光による露光等で問題となっていたベース樹脂による光吸収は問題とならないので、耐エッチング性の高いヒドロキシスチレンに由来する構造単位を効率的に導入することができる。
【0021】
一実施形態において、上記樹脂中の上記フェノール性水酸基を有する構造単位の含有割合が、5モル%以上70モル%以下であることが好ましい。これにより、得られるパターンの耐エッチング性をより向上させることができる。
【0022】
本発明は、別の実施形態において、当該感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成する工程、
上記レジスト膜を露光する工程、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターンの形成方法に関する。
【0023】
当該レジストパターンの形成方法では、感度、焦点深度及びプロセスマージンに優れる上記感放射線性樹脂組成物を用いているので、高品位のレジストパターンを効率的に形成することができる。
【0024】
別の実施形態において、優れた感度、焦点深度及びプロセスマージンを有する上記感放射線性樹脂組成物の採用により、上記露光を極端紫外線又は電子線を用いて好適に行うことができ、所望の微細パターンを効率的に形成することができる。
【0025】
本発明は、さらに別の実施形態において、酸解離性基を有する構造単位を含み、かつフェノール性水酸基を有する構造単位を含まない樹脂、
下記式(1)で表される化合物、及び
上記化合物から発生する酸よりpKaが小さい酸を発生する感放射線性酸発生剤
を含み、
上記感放射線性酸発生剤の含有量が、上記樹脂100質量部に対して10質量部以上である感放射線性樹脂組成物に関する。
【化3】
(式(1)中、Arは置換又は非置換の炭素数6~20の芳香族環である。nは2~4の整数である。Z
+は1価のオニウムカチオンである。複数のYはそれぞれ独立して極性基である。ただし、複数のYのうち少なくとも1つはCOO
-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する-OH基又は-SH基である。)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0027】
《第1実施形態》
<感放射線性樹脂組成物>
本実施形態に係る感放射線性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、樹脂(A)及び化合物(B)を含む。さらに必要に応じて、感放射線性酸発生剤(C)及び溶剤(D)を含む。上記組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の任意成分を含んでいてもよい。
【0028】
(樹脂(A))
樹脂(A)は、フェノール性水酸基を有する構造単位(a1)を有する重合体の集合体である(以下、この樹脂を「ベース樹脂」ともいう。)。ベース樹脂たる樹脂(A)は、構造単位(a1)以外に、酸解離性基を有する構造単位(a2)やその他の構造単位を有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0029】
[構造単位(a1)]
構造単位(a1)は、フェノール性水酸基を含む構造単位である。樹脂(A)は、構造単位(a1)及び必要に応じその他の構造単位を有することで、現像液への溶解性をより適度に調整することができ、その結果、上記感放射線性樹脂組成物の感度等をより向上させることができる。また、レジストパターン形成方法における露光工程で照射する放射線として、KrFエキシマレーザー光、EUV、電子線等を用いる場合には、樹脂(A)が構造単位(a1)を有することで、構造単位(a1)はエッチング耐性の向上と、露光部と未露光部との間の現像液溶解性の差(溶解コントラスト)の向上に寄与する。特に、電子線やEUVといった波長50nm以下の放射線による露光を用いるパターン形成に好適に適用することができる。
【0030】
また、本実施形態の感放射線性樹脂組成物においては、上記構造単位(a1)が、ヒドロキシスチレン由来の構造単位とすることができる。
【0031】
上記構造単位(a1)としては、例えば、下記式(af)で表される構造単位等をあげることができる。
【0032】
【0033】
上記式(af)中、RAF1は、水素原子又はメチル基である。LAFは、単結合、-COO-、-O-又は-CONH-である。RAF2は、炭素数1~20の1価の有機基である。nf1は、0~3の整数である。nf1が2又は3の場合、複数のRAF2は同一でも異なっていてもよい。nf2は、1~3の整数である。ただし、nf1+nf2は、5以下である。nafは、0~2の整数である。
【0034】
上記RAF1としては、構造単位(a1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子であることが好ましい。
【0035】
LAFとしては、単結合及び-COO-であることが好ましい。
【0036】
なお、樹脂(A)における有機基とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0037】
上記RAF2で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基、当該基及び上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等をあげることができる。
【0038】
上記RAF2で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの鎖状炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基などの脂環式炭化水素基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基等をあげることができる。
【0039】
上記RAF2としては、鎖状炭化水素基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基及びシクロアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基及びアダマンチル基がさらに好ましい。
【0040】
上記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば、-O-、-CO-、-CO-O-、-S-、-CS-、-SO2-、-NR’-、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基等をあげることができる。R’は、水素原子又は1価の炭化水素基である。
【0041】
上記1価のヘテロ原子含有基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、スルファニル基(-SH)等をあげることができる。
【0042】
これらの中で、1価の鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0043】
上記nf1としては、0~2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0044】
上記nf2としては、1及び2が好ましく、1がより好ましい。
【0045】
上記nafとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0046】
上記構造単位(a1)としては、下記式(a1-1)~(a1-6)で表される構造単位等であることが好ましい。
【0047】
【0048】
上記式(a1-1)~(a1-6)中、RAF1は、上記式(af)と同様である。
【0049】
これらの中で、構造単位(a1-1)及び(a1-2)が好ましく、(a1-1)がより好ましい。
【0050】
樹脂(A)中、構造単位(a1)の含有割合の下限としては、樹脂(A)を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましく、20モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、70モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、55モル%がさらに好ましく、50モル%が特に好ましい。構造単位(a1)の含有割合を上記範囲とすることで、上記感放射線性樹脂組成物は、感度、焦点深度及びプロセスマージンのさらなる向上を図ることができる。
【0051】
ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基を有するモノマーを直接ラジカル重合させようとすると、フェノール性水酸基の影響により重合が阻害される場合がある。この場合、アルカリ解離性基等の保護基によりフェノール性水酸基を保護した状態で重合させておき、その後加水分解を行って脱保護することにより構造単位(a1)を得るようにすることが好ましい。加水分解により構造単位(a1)を与える構造単位としては、下記式(4)で表されることが好ましい。
【0052】
【0053】
上記式(4)中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R12は、炭素数1~20の1価の炭化水素基又はアルコキシ基である。R12の炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、炭素数1~20の1価の炭化水素基をあげることができる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等をあげることができる。
【0054】
上記R12としては、アルキル基及びアルコキシ基が好ましく、中でもメチル基、tert-ブトキシ基がより好ましい。
【0055】
[構造単位(a2)]
構造単位(a2)は、酸解離性基を含む構造単位である。中でも構造単位(a2)における酸解離性基は環状構造を含むことが好ましい。環状構造を含む酸解離性基としては、例えば、第三級アルキルエステル部分を有する構造単位、フェノール性水酸基の水素原子が第三級アルキル基で置換された構造を有する構造単位、アセタール結合を有する構造単位等をあげることができるが、上記感放射線性樹脂組成物のパターン形成性の向上の観点から、下記式(5)で表される構造単位(以下、「構造単位(a2-1)」ともいう)が好ましい。
【0056】
なお、本発明において、「酸解離性基」とは、カルボキシ基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、スルホ基等が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。上記感放射線性樹脂組成物は、樹脂が構造単位(a2)を有することで、パターン形成性に優れる。
【0057】
【0058】
上記式(5)中、R7は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R8は、水素原子、又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R9及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基を表す。なお、R8~R10のうち、単独または複数が互いに組み合わさり、少なくとも1つ以上の環状構造を有するものとする。L1は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0059】
上記R7としては、構造単位(a2-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0060】
上記R8で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等をあげることができる。
【0061】
上記R8~R10で表される炭素数1~10の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖飽和炭化水素基、又は炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖不飽和炭化水素基をあげることができる。
【0062】
上記R8~R10で表される炭素数3~20の脂環式炭化水素基としては、単環若しくは多環の飽和炭化水素基、又は単環若しくは多環の不飽和炭化水素基をあげることができる。単環の飽和炭化水素基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が好ましい。単環の不飽和炭化水素基としてはシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基が好ましい。多環のシクロアルキル基としてはノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の有橋脂環式炭化水素基が好ましい。なお、有橋脂環式炭化水素基とは、脂環を構成する炭素原子のうち互いに隣接しない2つの炭素原子間が1つ以上の炭素原子を含む結合連鎖で結合された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0063】
上記R8で表される炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などをあげることができる。
【0064】
上記R8としては、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0065】
上記R8~R10のいずれか複数が互いに組み合わさり、少なくとも1つ以上の環状構造を有する場合、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基は、上記炭素数の単環又は多環の脂環式炭化水素の炭素環を構成する同一炭素原子から2個の水素原子を除いた基であれば特に限定されない。単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基のいずれでもよく、多環式炭化水素基としては、有橋脂環式炭化水素基及び縮合脂環式炭化水素基のいずれでもよく、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれでもよい。なお、縮合脂環式炭化水素基とは、複数の脂環が辺(隣接する2つの炭素原子間の結合)を共有する形で構成された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0066】
単環の脂環式炭化水素基のうち飽和炭化水素基としては、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロオクタンジイル基等が好ましく、不飽和炭化水素基としてはシクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基、シクロヘプテンジイル基、シクロオクテンジイル基、シクロデセンジイル基等が好ましい。多環の脂環式炭化水素基としては、有橋脂環式飽和炭化水素基が好ましく、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,2-ジイル基(ノルボルナン-2,2-ジイル基)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,2-ジイル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-2,2-ジイル基(アダマンタン-2,2-ジイル基)等が好ましい。
【0067】
上記L1で表される2価の連結基としては、例えば、アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、アルケンジイル基、*-RLAO-、*-RLBCOO-等をあげることができる(*は酸素側の結合手を表す。)。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0068】
上記アルカンジイル基としては、炭素数1~8のアルカンジイル基が好ましい。
【0069】
上記シクロアルカンジイル基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の単環のシクロアルカンジイル基;ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の多環のシクロアルカンジイル基等をあげることができる。上記シクロアルカンジイル基としては、炭素数5~12のシクロアルカンジイル基が好ましい。
【0070】
上記アルケンジイル基としては、例えば、エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等をあげることができる。上記アルケンジイル基としては、炭素数2~6のアルケンジイル基が好ましい。
【0071】
上記*-RLAO-のRLAとしては、上記アルカンジイル基、上記シクロアルカンジイル基、上記アルケンジイル基等をあげることができる。上記*-RLBCOO-のRLBとしては、上記アルカンジイル基、上記シクロアルカンジイル基、上記アルケンジイル基、アレーンジイル基等をあげることができる。アレーンジイル基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等をあげることができる。上記アレーンジイル基としては、炭素数6~15のアレーンジイル基が好ましい。
【0072】
R9及びR10と共に構成される上記脂環式基が不飽和結合を含み、かつL1が単結合である場合、R8は水素原子であることが好ましい。
【0073】
また、上記構造単位(a2-1)としては、例えば、下記式(5-1)~(5-4)で表される構造単位(以下、「構造単位(a2-1-1)~(a2-1-4)」ともいう)等を挙げることができる。
【0074】
【0075】
上記式(5-1)中、R7及びR8は、上記式(5)と同様である。iは1~4の整数である。
【0076】
上記式(5-2)中、R7は、上記式(5)と同様である。R8は水素原子である。R2Tは、水素原子、又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。iは1~4の整数である。
【0077】
上記式(5-3)、(5-4)中、R7、R9及びR10は、上記式(5)と同様である。R2Tは、水素原子、又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。iは1~4の整数である。
【0078】
構造単位(a2-1)としては、これらの中で、構造単位(a2-1-1)、構造単位(a2-1-2)が好ましく、シクロペンタン構造を有する構造単位、シクロヘキサン構造を有する構造単位、シクロペンテン構造を有する構造単位及びシクロヘキセン構造を有する構造単位がより好ましい。
【0079】
樹脂(A)は、構造単位(a2)を1種又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0080】
構造単位(a2)の含有割合の下限としては、ベース樹脂たる樹脂(A)を構成する全構造単位に対して、15モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましく、30モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、75モル%がさらに好ましく、70モル%が特に好ましい。構造単位(a2)の含有割合を上記範囲とすることで、上記感放射線性樹脂組成物のパターン形成性をより向上させることができる。
【0081】
[構造単位(a3)]
構造単位(a3)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位である。ベース樹脂は、構造単位(a3)をさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物は、解像性等のリソグラフィー性能を向上させることができる。また、ベース樹脂から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0082】
構造単位(a3)としては、例えば、下記式(T-1)~(T-10)で表される構造単位等が挙げられる。
【0083】
【0084】
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RL2~RL5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ジメチルアミノ基である。RL4及びRL5は、互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~8の2価の脂環式基であってもよい。L2は、単結合又は2価の連結基である。Xは、酸素原子又はメチレン基である。kは0~3の整数である。mは1~3の整数である。
【0085】
上記RL4及びRL5が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~8の2価の脂環式基としては、上記式(5)中のR9及びR10で表される鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基のうち炭素数が3~8の基が挙げられる。この脂環式基上の1つ以上の水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0086】
上記L2で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数1~10の2価の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数4~12の2価の脂環式炭化水素基、又はこれらの炭化水素基の1個以上と-CO-、-O-、-NH-及び-S-のうちの少なくとも1種の基とから構成される基等が挙げられる。
【0087】
構造単位(a2)としては、これらの中で、ラクトン構造を含む構造単位が好ましく、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位がより好ましく、ノルボルナンラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
【0088】
樹脂(A)が構造単位(a2)を有する場合の含有割合の下限としては、ベース樹脂を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、40モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は解像性等のリソグラフィー性能及び形成されるレジストパターンの基板との密着性をより向上させることができる。
【0089】
[構造単位(a4)]
樹脂(A)は、上記構造単位(a1)~(a3)以外のその他の構造単位(構造単位(a4)ともいう。)を適宜有してもよい。構造単位(a4)としては、例えば、フッ素原子、アルコール性水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等を有する構造単位などをあげることができる。これらの中で、フッ素原子を有する構造単位、アルコール性水酸基を有する構造単位及びカルボキシ基を有する構造単位が好ましく、フッ素原子を有する構造単位及びアルコール性水酸基を有する構造単位がより好ましい。
【0090】
構造単位(a4)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0091】
【0092】
上記式中、RAは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0093】
樹脂(A)が構造単位(a4)を有する場合、樹脂(A)を構成する全構造単位に対する構造単位(a4)の含有割合の下限としては、1モル%が好ましく、3モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、50モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。その他の構造単位の含有割合を上記範囲とすることで、樹脂(A)の現像液への溶解性をより適度にすることができる。その他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、パターン形成性が低下する場合がある。
【0094】
なお、上記構造単位(a2)~(a4)及びその他の構造単については、それらの構造単位から上記構造単位(a1)に該当するものを除く。
【0095】
樹脂(A)の含有量としては、上記感放射線性樹脂組成物の全固形分中、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。ここで「固形分」とは、上記感放射線性樹脂組成物中に含まれる成分のうち溶媒を除いた全ての成分をいう。
【0096】
(樹脂(A)の合成方法)
ベース樹脂たる樹脂(A)は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、適当な溶剤中で重合反応を行うことにより合成できる。
【0097】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;
ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等をあげることができる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0098】
上記重合反応に使用される溶剤としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール等のアルコール類等をあげることができる。これらの重合反応に使用される溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0099】
上記重合反応における反応温度としては、通常40℃~150℃であり、50℃~120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間~48時間であり、1時間~24時間が好ましい。
【0100】
ベース樹脂たる樹脂(A)の分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上15,000以下がさらに好ましく、4,000以上12,000以下が特に好ましい。樹脂(A)のMwが上記下限未満だと、得られるレジスト膜の耐熱性が低下する場合がある。樹脂(A)のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0101】
ベース樹脂たる樹脂(A)のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0102】
本明細書における樹脂のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶剤:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0103】
樹脂(A)の含有量としては、上記感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0104】
(他の樹脂)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、他の樹脂として、上記ベース樹脂よりもフッ素原子の質量含有率が大きい樹脂(以下、「高フッ素含有量樹脂」ともいう。)を含んでいてもよい。上記感放射線性樹脂組成物が高フッ素含有量樹脂を含有する場合、上記ベース樹脂に対してレジスト膜の表層に偏在化させることができ、その結果、レジスト膜表面の状態やレジスト膜中の成分分布を所望の状態に制御することができる。
【0105】
高フッ素含有量樹脂としては、例えば、上記ベース樹脂における構造単位(a1)及び構造単位(a2)を有するとともに、下記式(6)で表される構造単位(以下、「構造単位(a5)」ともいう。)を有することが好ましい。
【化11】
【0106】
上記式(6)中、R13は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SO2ONH-、-CONH-又は-OCONH-である。R14は、炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0107】
上記R13としては、構造単位(a5)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0108】
上記GLとしては、構造単位(a5)を与える単量体の共重合性の観点から、単結合及び-COO-が好ましく、-COO-がより好ましい。
【0109】
上記R14で表される炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0110】
上記R14で表される炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、炭素数3~20の単環又は多環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0111】
上記R14としては、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基及び5,5,5-トリフルオロ-1,1-ジエチルペンチル基がさらに好ましい。
【0112】
高フッ素含有量樹脂が構造単位(a5)を有する場合、構造単位(a5)の含有割合の下限としては、高フッ素含有量樹脂を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、60モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。構造単位(a5)の含有割合を上記範囲とすることで、高フッ素含有量樹脂のフッ素原子の質量含有率をより適度に調整してレジスト膜の表層への偏在化をさらに促進することができる。
【0113】
高フッ素含有量樹脂は、構造単位(a5)以外に、下記式(f-1)で表されるフッ素原子含有構造単位(以下、構造単位(a6)ともいう。)を有していてもよい。高フッ素含有量樹脂は構造単位(f-1)を有することで、アルカリ現像液への溶解性が向上し、現像欠陥の発生を抑制することができる。
【化12】
【0114】
構造単位(a6)は、(x)アルカリ可溶性基を有する場合と、(y)アルカリの作用により解離してアルカリ現像液への溶解性が増大する基(以下、単に「アルカリ解離性基」とも言う。)を有する場合の2つに大別される。(x)、(y)双方に共通して、上記式(f-2)中、RCは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RDは単結合、炭素数1~20の(s+1)価の炭化水素基、この炭化水素基のRE側の末端に酸素原子、硫黄原子、-NRdd-、カルボニル基、-COO-若しくは-CONH-が結合された構造、又はこの炭化水素基が有する水素原子の一部がヘテロ原子を有する有機基により置換された構造である。Rddは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。sは、1~3の整数である。
【0115】
構造単位(a6)が(x)アルカリ可溶性基を有する場合、RFは水素原子であり、A1は酸素原子、-COO-*又は-SO2O-*である。*はRFに結合する部位を示す。W1は単結合、炭素数1~20の炭化水素基又は2価のフッ素化炭化水素基である。A1が酸素原子である場合、W1はA1が結合する炭素原子にフッ素原子又はフルオロアルキル基を有するフッ素化炭化水素基である。REは単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。sが2又は3の場合、複数のRE、W1、A1及びRFはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位(a6)が(x)アルカリ可溶性基を有することで、アルカリ現像液に対する親和性を高め、現像欠陥を抑制することができる。(x)アルカリ可溶性基を有する構造単位(a6)としては、A1が酸素原子でありW1が1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-メタンジイル基である場合が特に好ましい。
【0116】
構造単位(a6)が(y)アルカリ解離性基を有する場合、RFは炭素数1~30の1価の有機基であり、A1は酸素原子、-NRaa-、-COO-*又は-SO2O-*である。Raaは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。*はRFに結合する部位を示す。W1は単結合又は炭素数1~20の2価のフッ素化炭化水素基である。REは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。A1が-COO-*又は-SO2O-*である場合、W1又はRFはA1と結合する炭素原子又はこれに隣接する炭素原子上にフッ素原子を有する。A1が酸素原子である場合、W1、REは単結合であり、RDは炭素数1~20の炭化水素基のRE側の末端にカルボニル基が結合された構造であり、RFはフッ素原子を有する有機基である。sが2又は3の場合、複数のRE、W1、A1及びRFはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位(a6)が(y)アルカリ解離性基を有することにより、アルカリ現像工程においてレジスト膜表面が疎水性から親水性へと変化する。この結果、現像液に対する親和性を大幅に高め、より効率的に現像欠陥を抑制することができる。(y)アルカリ解離性基を有する構造単位(a6)としては、A1が-COO-*であり、RF若しくはW1又はこれら両方がフッ素原子を有する
ものが特に好ましい。
【0117】
RCとしては、構造単位(a6)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0118】
REが2価の有機基である場合、ラクトン構造を有する基が好ましく、多環のラクトン構造を有する基がより好ましく、ノルボルナンラクトン構造を有する基がより好ましい。
【0119】
高フッ素含有量樹脂が構造単位(a6)を有する場合、構造単位(a6)の含有割合の下限としては、高フッ素含有量樹脂を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましく、35モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、75モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。構造単位(a6)の含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光時のレジスト膜の撥水性をより向上させることができる。
【0120】
高フッ素含有量樹脂のMwの下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、3,000がさらに好ましく、5,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、30,000がより好ましく、20,000がさらに好ましく、15,000が特に好ましい。
【0121】
高フッ素含有量樹脂のMw/Mnの下限としては、通常1であり、1.1がより好ましい。上記Mw/Mnの上限としては、通常5であり、3が好ましく、2がより好ましく、1.7がさらに好ましい。
【0122】
高フッ素含有量樹脂の含有量の下限としては、上記感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対して、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましく、1.5質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、7質量%が特に好ましい。
【0123】
高フッ素含有量樹脂の含有量の下限としては、上記ベース樹脂100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、1.5質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、8質量部がさらに好ましく、5質量部が特に好ましい。
【0124】
高フッ素含有量樹脂の含有量を上記範囲とすることで、高フッ素含有量樹脂をレジスト膜の表層へより効果的に偏在化させることができ、その結果、液浸露光時におけるレジスト膜の表面の撥水性をより高めることができる。上記感放射線性樹脂組成物は、高フッ素含有量樹脂を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0125】
(高フッ素含有量樹脂の合成方法)
高フッ素含有量樹脂は、上述のベース樹脂の合成方法と同様の方法により合成することができる。
【0126】
(化合物(B))
化合物(B)は、露光前又は未露光部における酸を捕捉するクエンチャー(光崩壊性塩基)として機能し得る。化合物(B)は、下記式(1)で表される。
【化13】
(式(1)中、Arは置換又は非置換の炭素数6~20の芳香族環である。nは2~4の整数である。Z
+は1価のオニウムカチオンである。複数のYはそれぞれ独立して極性基である。ただし、複数のYのうち少なくとも1つはCOO
-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する-OH基又は-SH基である。)
【0127】
化合物(B)を含むことにより、アルカリ現像液への樹脂溶解性の向上による露光量又はフォーカス位置の変動による不具合の抑制を通じて、感放射線性樹脂組成物に高いレベルでの感度、焦点深度及びプロセスマージンを付与することができる
【0128】
上記式(1)中、置換又は非置換の炭素数6~20の芳香族環としては特に限定されず、単環又は多環を問わず、骨格を形成する炭素原子がヘテロ原子で置換された芳香族複素環構造を有していてもよく、炭素原子上の水素原子が上記極性基以外の他の置換基で置換されていてもよい。
【0129】
上記芳香族環としては、例えばベンゼン環構造、ナフタレン環構造、フェナントレン環構造、アントラセン環構造等を有する基が挙げられる。
【0130】
上記芳香族複素環構造におけるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
上記芳香族複素環構造としては、例えば、フラン環構造、ピラン環構造、ベンゾフラン環構造、ベンゾピラン環構造等の酸素原子含有複素環構造;
ピリジン環構造、ピリミジン環構造、インドール環構造等の窒素原子含有複素環構造;
チオフェン環構造等の硫黄原子含有複素環構造等が挙げられる。
げられる。
【0131】
上記極性基としては、例えばヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、エステル結合を有する基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0132】
上記置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
【0133】
上記1価のオニウムカチオンとしては、例えば、S、I、O、N、P、Cl、Br、F、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi等の元素を含む放射線分解性オニウムカチオンが挙げられ、例えばスルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ジアゾニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等が挙げられる。中でも、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンが好ましい。スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンは、好ましくは下記式(X-1)~(X-5)で表される。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
上記式(X-1)中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数3~12の単環若しくは多環のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ヒドロキシ基、-OSO2-RP、-SO2-RQ若しくは-S-RTであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。RP、RQ及びRTは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5~25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0~5の整数である。Ra1~Ra3並びにRP、RQ及びRTがそれぞれ複数の場合、複数のRa1~Ra3並びにRP、RQ及びRTはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0140】
上記式(X-2)中、Rb1は、置換若しくは非置換の炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2~8のアシル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~8の芳香族炭化水素基、又はヒドロキシ基である。nkは0又は1である。nkが0のとき、k4は0~4の整数であり、nkが1のとき、k4は0~7の整数である。Rb1が複数の場合、複数のRb1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRb1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。Rb2は、置換若しくは非置換の炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の芳香族炭化水素基である。k5は、0~4の整数である。Rb2が複数の場合、複数のRb2は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRb2は互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。qは、0~3の整数である。
【0141】
上記式(X-3)中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。
【0142】
上記式(X-4)中、Rd1及びRd2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、ニトロ基であるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。k6及びk7は、それぞれ独立して0~5の整数である。Rd1及びRd2がそれぞれ複数の場合、複数のRd1及びRd2
はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0143】
上記式(X-5)中、Re1及びRe2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。k8及びk9は、それぞれ独立して0~4の整数である。
【0144】
上記化合物(B)は、下記式(1-1)で表される化合物(すなわち、化合物(b))であることが好ましい。
【化19】
(式(1-1)中、R
p1は、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子又はアミノ基である。mは0~3の整数である。mが2又は3である場合、複数のR
p1は互いに同一又は異なる。n及びZ
+は上記式(1)と同義である。qは0~2の整数である。qが0である場合、m+nは5以下である。ただし、少なくとも1つのOH基は、COO
-基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合する。)
【0145】
化合物(B)として上記式(1-1)で表される化合物(b)を採用することで、極性を高めることができ、感度、焦点深度及びプロセスマージンを効率的に向上させることができる。
【0146】
上記式(1-1)中、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
上記アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0147】
上記式(1-1)におけるmは0~2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。qは0又は1であることが好ましい。さらに、nは2又は3であることが好ましい。
【0148】
上記式(1-1)で表される化合物の具体例としては、下記式(1-1a)~(1-1i)が好適に挙げられる。
【0149】
【0150】
化合物(B)の含有量は、上記樹脂100質量部に対し0.5質量部以上100質量部以下であることが好ましい。上記含有量の上限は50質量部がより好ましく、25質量部がさらに好ましい。上記含有量の下限は、1質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましい。化合物(B)の含有量は、使用する樹脂(A)の種類、露光条件や求められる感度、後述する感放射線性酸発生剤(C)の種類や含有量に応じて適宜選択される。これにより樹脂(A)の溶解性を十分なレベルで得ることができ、感度、焦点深度及びプロセスマージンをより高いレベルで発揮することができる。
【0151】
本実施形態に係る感放射線性樹脂組成物が後述の感放射線性酸発生剤を含む場合、化合物(B)の含有量の感放射線性酸発生剤の含有量に対するモル比の上限としては、250モル%が好ましく、200モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましく、50モル%が特に好ましい。一方、上記モル比の下限は、3モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、15モル%が特に好ましい。
【0152】
(化合物(B)の合成方法)
化合物(B)は、代表的には、アニオン部に対応する安息香酸誘導体を塩基性条件下、カチオン部に対応するスルホニウムクロライドと反応させて塩交換を進行させることにより合成することができる。他の構造を有する化合物(B)についても同様にアニオン部及びカチオン部に対応する前駆体を適宜選択することで合成することができる。
【0153】
(感放射線性酸発生剤(C))
感放射線性酸発生剤(C)は、露光により酸を発生する成分である。樹脂が酸解離性基を有する構造単位(a2)を含む場合、露光により発生した酸は該構造単位(a2)の有する酸解離性基を解離させ、カルボキシ基等を発生させることができる。この機能は、上記感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成条件において、樹脂の構造単位(a2)等が有する酸解離性基などを実質的に解離させず、未露光部において上記感放射線性酸発生剤(C)から発生した酸の拡散を抑制するという化合物(B)の機能とは異なる。感放射線性酸発生剤(C)から発生する酸は、化合物(B)から発生する酸より相対的に強い酸(pKaが小さい酸)であるということができる。化合物(B)及び感放射線性酸発生剤(C)の機能の別は、樹脂の構造単位(a2)等が有する酸解離性基が解離するのに必要とするエネルギー、および感放射線性樹脂組成物を用いてパターンを形成する際に与えられる熱エネルギー条件等によって決まる。感放射線性樹脂組成物における感放射線性酸発生剤の含有形態としては、それ単独で化合物として存在する(重合体から遊離した)形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよいものの、単独で化合物として存在する形態が好ましい。
【0154】
感放射線性樹脂組成物が上記感放射線性酸発生剤(C)を含有することにより、露光部の樹脂の極性が増大し、露光部における樹脂が、アルカリ水溶液現像の場合は現像液に対して溶解性となり、一方、有機溶媒現像の場合は現像液に対して難溶性となる。
【0155】
感放射線性酸発生剤(C)としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。これらのうち、スルホニウム塩、ヨードニウム塩が好ましい。
【0156】
露光により発生する酸としては、露光によりスルホン酸を生じるものをあげることができる。このような酸として、スルホ基に隣接する炭素原子に1以上のフッ素原子またはフッ素化炭化水素基が置換した化合物を挙げることができる。中でも、感放射線性酸発生剤(C)としては、環状構造を有するものが特に好ましい。
【0157】
これらの感放射線性酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。感放射線性酸発生剤の含有量としては、レジストとしての感度及び現像性を確保する観点から、樹脂100質量部に対して、5質量部以上であってもよいものの、感度、焦点深度及びプロセスマージンの点から10質量部以上が好ましい。上記含有量の下限は、12質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限は60質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、40質量部がさらに好ましい。
【0158】
(溶剤(D))
本実施形態に係る感放射線性樹脂組成物は、溶剤(D)を含有する。溶剤(D)は、少なくとも樹脂(A)及び化合物(B)、並びに所望により含有される感放射線性酸発生剤(C)等を溶解又は分散可能な溶剤であれば特に限定されない。
【0159】
溶剤(D)としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0160】
アルコール系溶剤としては、例えば、
iso-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ジアセトンアルコール等の炭素数1~18のモノアルコール系溶剤;
エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶剤;
上記多価アルコール系溶剤が有するヒドロキシ基の一部をエーテル化した多価アルコール部分エーテル系溶剤等が挙げられる。
【0161】
エーテル系溶剤としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶剤;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶剤;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶剤;
上記多価アルコール系溶剤が有するヒドロキシ基をエーテル化した多価アルコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0162】
ケトン系溶剤としては、例えばアセトン、ブタノン、メチル-iso-ブチルケトン等の鎖状ケトン系溶剤:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶剤:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0163】
アミド系溶剤としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶剤;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶剤等が挙げられる。
【0164】
エステル系溶剤としては、例えば、
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶剤;
γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶剤;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;
ジ酢酸プロピレングリコール、酢酸メトキシトリグリコール、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、フタル酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒が挙げられる。
【0165】
炭化水素系溶剤としては、例えば
n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;
ベンゼン、トルエン、ジ-iso-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0166】
これらの中で、エステル系溶剤、ケトン系溶剤が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶剤、環状ケトン系溶剤、ラクトン系溶剤がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトンがさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、溶剤を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0167】
(その他の任意成分)
上記感放射線性樹脂組成物は、上記成分以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、架橋剤、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等をあげることができる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0168】
(架橋剤)
架橋剤は2つ以上の官能基を有する化合物であり、一括露光工程後のベーク工程において、酸触媒反応により(1)重合体成分において架橋反応を引き起こし、(1)重合体成分の分子量を増加させることで、パターン露光部の現像液に対する溶解度を低下させるものである。上記官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等をあげることができる。
【0169】
(偏在化促進剤)
偏在化促進剤は、上記高フッ素含有量樹脂をより効率的にレジスト膜表面に偏在させる効果を有するものである。上記感放射線性樹脂組成物にこの偏在化促進剤を含有させることで、上記高フッ素含有量樹脂の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って、上記感放射線性樹脂組成物のリソグラフィー性能を維持しつつ、レジスト膜から液浸媒体への成分の溶出をさらに抑制したり、高速スキャンにより液浸露光をより高速に行うことが可能になり、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の疎水性を向上させることができる。このような偏在化促進剤として用いることができるものとしては、例えば、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物をあげることができる。このような化合物としては、具体的には、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等をあげることができる。
【0170】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等をあげることができる。
【0171】
上記カーボネート化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等をあげることができる。
【0172】
上記ニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル等をあげることができる。
【0173】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン等をあげることができる。
【0174】
偏在化促進剤の含有量の下限としては、上記感放射線性樹脂組成物における樹脂の総量100質量部に対して、10質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましく、25質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、300質量部が好ましく、200質量部がより好ましく、100質量部がさらに好ましく、80質量部が特に好ましい。上記感放射線性樹脂組成物は、偏在化促進剤を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0175】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(以上、旭硝子工業製)等をあげることができる。上記感放射線性樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0176】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0177】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば、
1-アダマンタンカルボン酸、2-アダマンタノン、1-アダマンタンカルボン酸t-ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t-ブチル、デオキシコール酸t-ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2-エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t-ブチル、リトコール酸t-ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2-エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3-〔2-ヒドロキシ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.1(2,5).1(7,10)]ドデカン、2-ヒドロキシ-9-メトキシカルボニル-5-オキソ-4-オキサ-トリシクロ[4.2.1.0(3,7)]ノナン等をあげることができる。上記感放射線性樹脂組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常5質量部以下である。
【0178】
(増感剤)
増感剤は、感放射線性酸発生剤等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、上記感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0179】
増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等をあげることができる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。上記感放射線性樹脂組成物における増感剤の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0180】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
上記感放射線性樹脂組成物は、例えば、樹脂(A)、化合物(B)、感放射線性酸発生剤(C)、必要に応じて高フッ素含有量樹脂等、及び溶剤(D)を所定の割合で混合することにより調製できる。上記感放射線性樹脂組成物は、混合後に、例えば、孔径0.05μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。上記感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%~50質量%であり、0.5質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましい。
【0181】
<レジストパターン形成方法>
本発明におけるレジストパターン形成方法は、
基板上に直接又は間接に上記感放射線性樹脂組成物を塗布してレジスト膜を形成する工程(1)(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(2)(以下、「露光工程」ともいう)、及び、
露光された上記レジスト膜を現像する工程(3)(以下、「現像工程」ともいう)を含む。
【0182】
上記レジストパターン形成方法によれば、露光工程における感度や焦点深度、プロセスマージンに優れた上記感放射線性樹脂組成物を用いているため、高品位のレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0183】
[レジスト膜形成工程]
本工程(上記工程(1))では、上記感放射線性樹脂組成物でレジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウェハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等をあげることができる。また、例えば、特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗布方法としては、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等をあげることができる。塗布した後に、必要に応じて、塗膜中の溶剤を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度としては、通常60℃~140℃であり、80℃~120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm~1,000nmが好ましく、10nm~500nmがより好ましい。
【0184】
液浸露光を行う場合、上記感放射線性樹脂組成物における上記高フッ素含有量樹脂等の撥水性重合体添加剤の有無にかかわらず、上記形成したレジスト膜上に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を避ける目的で、液浸液に不溶性の液浸用保護膜を設けてもよい。液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶剤により剥離する溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006-227632号公報参照)、現像工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005-069076号公報、WO2006-035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。ただし、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0185】
また、次工程である露光工程を波長50nm以下の放射線にて行う場合、上記組成物中のベース樹脂として上記構造単位(a1)及び構造単位(a2)を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0186】
[露光工程]
本工程(上記工程(2))では、上記工程(1)であるレジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光する。露光に用いる放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、EUV(極端紫外線)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などをあげることができる。これらの中でも、遠紫外線、電子線、EUVが好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、電子線、EUVがより好ましく、次世代露光技術として位置付けされる波長50nm以下の電子線、EUVがさらに好ましい。
【0187】
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸液としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等をあげることができる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0188】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により感放射線性酸発生剤から発生した酸による樹脂等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差が生じる。PEB温度としては、通常50℃~180℃であり、80℃~130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。
【0189】
[現像工程]
本工程(上記工程(3))では、上記工程(2)である上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0190】
上記現像に用いる現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等をあげることができる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0191】
また、有機溶剤現像の場合、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等の有機溶剤、又は有機溶剤を含有する溶剤をあげることができる。上記有機溶剤としては、例えば、上述の感放射線性樹脂組成物の溶剤として列挙した溶剤の1種又は2種以上等をあげることができる。これらの中でも、エステル系溶剤、ケトン系溶剤が好ましい。エステル系溶剤としては、酢酸エステル系溶剤が好ましく、酢酸n-ブチル、酢酸アミルがより好ましい。ケトン系溶剤としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶剤の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶剤以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等をあげることができる。
【0192】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等をあげることができる。
【0193】
《別の実施形態》
以下、別の実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。別の実施形態として、構造単位(a2)を含みかつフェノール性水酸基を有する構造単位を含まない樹脂、化合物(B)及び感放射線性酸発生剤(C)を含み、感放射線性酸発生剤(C)の含有量が樹脂100質量部に対して10質量部以上である感放射線性樹脂組成物、並びに当該感放射線性樹脂組成物とArFエキシマレーザー光とを用いるレジストパターン形成方法が挙げられる。この実施形態において、樹脂としては構造単位(a2)と、構造単位(a3)及び構造単位(a4)からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位とを含む樹脂が好ましい。これらの構造単位の含有割合は、樹脂(A)中の含有割合に基づき、樹脂(A)から構造単位(a1)を除いた分を100モル%として各構造単位に比例配分すればよい。感放射線性酸発生剤(C)の含有量は樹脂100質量部に対して10質量部以上である点を除き、上記含有量の好適な下限値及び上限値は第1実施形態と同様である。また化合物(B)、溶剤(D)及びその他の任意成分の種類や含有量の好ましい態様は、第1実施形態と同様である。当該感放射線性樹脂組成物を用いるレジストパターン形成方法について、工程(2)においてArFエキシマレーザー光を用いること以外は、工程(1)~工程(3)の好ましい態様は第1実施形態と同様である。
【実施例0194】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における物性値は下記のようにして測定した。
【0195】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
東ソー製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、G4000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0196】
<樹脂(A)の合成>
各実施例及び比較例並びに参考例における各樹脂(A)の合成で用いた単量体を以下に示す。
【化21】
【0197】
[合成例1]樹脂(A-1)の合成
化合物(M-1)及び化合物(M-3)をモル比率が40/60となるよう1-メトキシ-2-プロパノール(全モノマー量に対して200質量部)に溶解した。次に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマーに対して6モル%添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器に1-メトキシ-2-プロパノール(全モノマー量に対して100質量部)を加え、攪拌しながら85℃に加熱した。次に、上記で調製した単量体溶液を3時間かけて滴下し、その後さらに3時間85℃で加熱し、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を室温に冷却した。
【0198】
ヘキサン(重合溶液に対して500質量部)中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を重合溶液に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、ろ別し、1-メトキシ-2-プロパノール(300質量部)に溶解した。次に、メタノール(500質量部)、トリエチルアミン(50質量部)及び超純水(10質量部)を加え、撹拌しながら70℃で6時間加水分解反応を実施した。
【0199】
反応終了後、残溶媒を留去し、得られた固体をアセトン(100質量部)に溶解させた。500質量部の水中に滴下して樹脂を凝固させ、得られた固体をろ別した。50℃、12時間乾燥させて白色粉末状の樹脂(A-1)を合成した。
【0200】
[合成例2~9]
樹脂(A-2)~(A-9)についてもモノマー種と比率を表1に示した組成に変更したこと以外は上記合成例1と同様に合成した。
【0201】
【0202】
[合成例10]
(樹脂(A-10)の合成)
単量体(M-3)、単量体(M-12)を、モル比率が60/40となるよう2-ブタノン(全モノマー量に対して200質量部)に溶解し、開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)(使用した全モノマーの合計100モル%に対して3モル%)を添加して単量体溶液を調製した。空の反応容器に2-ブタノン(全モノマー量に対して100質量部)を入れ、30分窒素パージした後、反応容器内を80℃とし、撹拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をメタノール(2,000質量部)中に投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で24時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-10)を得た(収率:80%)。重合体(A-10)のMwは7,800であり、Mw/Mnは1.51であった。また、13C-NMR分析の結果、(M-3)、(M-12)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ58.9モル%、41.1モル%であった。
【0203】
[合成例11~12]
樹脂(A-11)、(A-12)についてもモノマー種と比率を表2に示した組成に変更した以外は上記合成例10と同様に合成した。
【0204】
【0205】
<化合物(B)の合成>
(化合物(B-1)の合成)
下記反応スキームにしたがって、化合物(B-1)を合成した。
【化22】
【0206】
反応容器に炭酸水素ナトリウム97.4mmol、水200gを加えた。溶解を確認後、2,6-ジヒドロキシ安息香酸64.9mmolを加えた。室温で1時間撹拌後、ジクロロメタンを300g、トリフェニルスルホニウムクロライド64.9mmolを加えた。室温で2時間撹拌後、有機層を分離した。得られた有機層を水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、再結晶することで目的化合物(B-1)を得た。
【0207】
(化合物(B-2)~(B-9)の合成)
前駆体を適宜選択し、実施例1と同様の処方を選択することで、下記式(B-2)~(B-6)で表されるオニウム塩化合物を合成した。
【化23】
【0208】
比較例における酸拡散制御剤として下記式(CB-1)で表される化合物を用いた。
【化24】
【0209】
<感放射線性酸発生剤(C)>
感放射線性酸発生剤(C)として、下記式(C-1)~(C-6)で表される化合物をそれぞれ用いた。
【化25】
【0210】
<溶剤(D)>
溶剤(D)として下記の溶剤を用いた。
D-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
D-2:プロピレングリコール1-モノメチルエーテル
Dー3:シクロヘキサノン
D-4:γ-ブチロラクトン
【0211】
[実施例1]
樹脂(A-1)100質量部、感放射線性酸発生剤としての(C-1)20質量部、酸拡散制御剤としての化合物(B-1)を(C-1)に対して20モル%、溶剤(D)としての(D-1)4,800質量部、並びに(D-2)2,000質量部を配合して感放射線性樹脂組成物(R-1)を調製した。
【0212】
[実施例2~21及び比較例1]
下記表3に示す種類及び配合量の各成分を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、感放射線性樹脂組成物(R-2)~(R-21)及び(CR-1)を調製した。
【0213】
【0214】
<レジストパターンの形成(1)>(EUV露光、アルカリ現像)
膜厚20nmの下層膜(AL412(Brewer Science社製))が形成された12インチのシリコンウエハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、上記調製した感放射線性樹脂組成物を塗布し、130℃で60秒間PBを行った後、23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、EUV露光機(型式「NXE3300」、ASML製、NA=0.33、照明条件:Conventional s=0.89、マスクimecDEFECT32FFR02)を用いてEUV光を照射した。上記レジスト膜に130℃で60秒間PEBを行った。次いで、2.38wt%のTMAH水溶液を用い、23℃で30秒間現像しポジ型の32nmラインアンドスペースパターンを形成した。
【0215】
<評価>
上記形成した各レジストパターンについて、下記方法に従って測定することにより、各感放射線性樹脂組成物の感度、焦点深度及びプロセスウィンドウを評価した。なお、レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CG-4100」)を用いた。評価結果を下記表4に示す。
【0216】
[感度]
上記レジストパターンの形成(1)において、32nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm2)とした。感度は、30mJ/cm2以下の場合は「良好」と、30mJ/cm2を超える場合は「不良」と評価できる。
【0217】
[焦点深度]
上記最適露光量において解像されるレジストパターンにおいて、深さ方向にフォーカスを変化させた際の寸法を観測し、ブリッジや残渣が無いままパターン寸法が基準の90%~110%に入る深さ方向の余裕度を測定し、この測定結果を焦点深度とした。焦点深度は、50nmを超える場合は良好と、50nm以下の場合は不良と評価できる。
【0218】
[プロセスウィンドウ]
32nmラインアンドスペース(1L/1S)を形成するマスクを用いて、低露光量から高露光量までのパターンを形成した。一般的に低露光量側ではパターン間の繋がりが、高露光量側ではパターン倒れなどの欠陥が見られる。これら欠陥が見られないレジスト寸法の上限値と下限値の差を「CDマージン」とし、CDマージンが30nm以上の場合は良好、30nm未満の場合は不良と判定した。CDマージンの値が大きいほど、プロセスウィンドウも広いと考えられる。
【0219】
【0220】
表4の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物ではいずれも、感度、焦点深度及びプロセスウインドウ(プロセスマージン)が比較例の感放射線性樹脂組成物に対して良好であった。
【0221】
[参考例1]
樹脂としての(A-10)100質量部、感放射線酸発生剤としての(C-1)12質量部、酸拡散抑制剤としての(B-1)を(C-1)に対して20モル%、溶媒として(D-1)2,240質量部、(D-3)960質量部及び(D-4)30質量部を混合し、0.2μmのメンブランフィルターで濾過することにより、感放射線性樹脂組成物(R‐22)を調製した。
【0222】
[参考例2~6]
下記表5に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は参考例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(R-23)~(R-24)及び(CR-1)~(CR-3)を調製した。
【0223】
【0224】
<レジストパターンの形成(2)>(ArF露光、アルカリ現像)
12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して各感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で50秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、この塗膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(ASML社の「TWINSCAN XT-1900i」)を用い、NA=1.35、Dipole35X(σ=0.97/0.77)の光学条件にて、38nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターン形成用のマスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で50秒間PEBを行った。その後、2.38質量%TMAH水溶液を用い、23℃で30秒間パドル現像を行い、次に、超純水を用いて7秒間リンスし、その後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、40nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターンを形成した。
【0225】
<評価>
形成したレジストパターンについて下記方法に従って測定することにより、各感放射線性樹脂組成物の感度、CDU、LWR評価を行った。なお、レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CG‐5000」)を用いた。評価結果を下記表6に示す。
【0226】
[感度]
上記レジストパターンの形成(2)において、ターゲット寸法が40nmラインアンドスペースのパターン形成用のマスクパターンを介して形成した線幅が40nmのラインを形成する露光量を最適露光量(Eop)とした。
【0227】
[CDU性能]
上記で求めたEopと同じ露光量を照射して形成したホールパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。一辺400nm四方の範囲でホール径を16点測定してその平均値を求め、その平均値を任意のポイントで計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをCDU性能(nm)とした。CDU性能は、その値が小さいほど、長周期でのホール径のばらつきが小さく良好である。CDU性能として、6.0nm以下の場合は「良好」と、6.0nmを超える場合は「不良」と評価した。
【0228】
[LWR性能]
レジストパターンの形成で求めたEopと同じ露光量を照射して形成したラインアンドスペースパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅のばらつきを計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能(nm)とした。LWR性能は、その値が小さいほど、ラインのがたつきが小さく良好である。LWR性能として、4.0nm以下の場合は「良好」と、4.0を超える場合は「不良」と評価した。
【0229】
【0230】
上記表6の結果から明らかなように、参考例1~3の感放射線性樹脂組成物では、感度、CDU性能、LWR性能が良好であった。
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、従来よりも感度、焦点深度及びプロセスマージンを向上することができる。従って、これらは半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程における微細なレジストパターン形成に好適に用いることができる。