(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171828
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】電子機器用ばね部材
(51)【国際特許分類】
F16F 1/18 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
F16F1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156354
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2022158951の分割
【原出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/035025
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(31)【優先権主張番号】P 2022019988
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】島村 槙一
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】相澤 弘康
(57)【要約】
【課題】金属箔から形成されたばね部材における厚さ方向での幅のばらつきを抑えることを可能とした電子機器用ばね部材を提供する。
【解決手段】ばね部材用金属箔10を用いた電子機器用ばね部材であって、ばね部材用金属箔10の圧延方向における厚さの標準偏差から、圧延方向に直交する幅方向における厚さの標準偏差を減算した差分値の絶対値が、0.15μm以下である。第1領域10R1において、第1最大値から第2最大値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である。ばね幅の標準偏差が、2.1μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね部材用金属箔を用いた電子機器用ばね部材であって、
前記ばね部材用金属箔の圧延方向における厚さの標準偏差から、前記圧延方向に直交する幅方向における厚さの標準偏差を減算した差分値の絶対値が、0.15μm以下であり、
前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの最大値が第1最大値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値が第2最大値であり、前記第1最大値から前記第2最大値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であり、
ばね幅の標準偏差が2.1μm以下である
電子機器用ばね部材。
【請求項2】
前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項3】
前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項4】
前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項5】
前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、
前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項6】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項7】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項8】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、
前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項9】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項10】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、
前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項11】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、
前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項12】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項13】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、
前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項14】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、
前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項15】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、
前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項16】
前記ばね部材用金属箔において、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であり、
前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、
前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である
請求項1に記載の電子機器用ばね部材。
【請求項17】
前記ばね部材用金属箔は、ステンレス合金、ベリリウム銅、ニッケル錫銅、リン青銅、コルソン合金、および、チタン銅から構成される群から選択されるいずれかを含む
請求項1から16のいずれか一項に記載の電子機器用ばね部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器用ばね部材に関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット端末やスマートフォンなどのカメラ付き電子機器が備えるカメラモジュールは、オートフォーカスやズームを可能とするための駆動機構を備えている。駆動機構には、レンズ駆動方式と、センサー駆動方式とが知られている。レンズ駆動方式の駆動機構は、レンズの光軸方向におけるレンズの位置を変更することを可能にする板ばねを備えている。これに対して、センサー駆動方式の駆動機構は、レンズの光軸方向におけるイメージセンサーの位置を変更することを可能にする板ばねを備えている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-059345号公報
【特許文献2】特開2020-170170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、板ばねには、限られた容積のなかで特定のばね荷重またはたわみを満たすことが求められる。ばね荷重およびたわみに対する要求を満たすためには、板ばねは硬度の高い金属から形成される必要がある。
【0005】
ばね荷重およびたわみには、板ばねが有する幅と厚さとが大きく寄与する。板ばねの原料である金属箔は、圧延によって所定の厚さまで薄くされる。金属箔は硬度の高い金属から形成されるから、硬度の低い金属から形成される場合に比べて、圧延によって金属箔の厚さを均一化することが難しい。
【0006】
一方、板ばねは、金属箔のウェットエッチングによって形成される。金属箔における厚さのばらつきはエッチング量のばらつきを生じさせ、これによって板ばね厚さ方向において幅におけるばらつきを生じさせる。板ばねの厚さ方向における幅のばらつきは、板ばねが有するばね荷重およびたわみのばらつきを生じさせるから、厚さ方向におけるばね幅のばらつきを抑えることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための電子機器用ばね部材は、ばね部材用金属箔を用いた電子機器用ばね部材である。前記ばね部材用金属箔の圧延方向における厚さの標準偏差から、前記圧延方向に直交する幅方向における厚さの標準偏差を減算した差分値の絶対値が、0.15μm以下である。前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの最大値が第1最大値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値が第2最大値であり、前記第1最大値から前記第2最大値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である。ばね幅の標準偏差が2.1μm以下である。
【0008】
上記電子機器用ばね部材によれば、第1標準偏差から第2標準偏差を減算した差分値の絶対値が0.15μm以下であり、かつ、第1最大値から第2最大値を減算した差分値の絶対値が0.8μm以下であるから、ばね部材用金属箔における厚さのばらつきが抑えられる。そのため、ばね部材用金属箔のウェットエッチングによって形成さればね部材において、厚さ方向での幅のばらつきが抑えられる。
【0009】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であってもよい。
【0010】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であってもよい。
【0011】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であってもよい。
【0012】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であってよい。
【0013】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であってよい。
【0014】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であってよい。
【0015】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であってよい。
【0016】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であってよい。
【0017】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であってよい。
【0018】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であってよい。
【0019】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm以下であり、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であってよい。
【0020】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であってよい。
【0021】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であってよい。
【0022】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であってよい。
【0023】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔において、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの前記標準偏差から、前記幅方向における前記厚さの前記標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下であり、前記圧延方向における前記厚さの分散から、前記幅方向における前記厚さの分散を減算した差分値が、0.15μm2以下であり、前記圧延方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第1差分値であり、前記幅方向における前記厚さの最大値から最小値を減算した差分値が第2差分値であり、前記第1差分値から前記第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下であってよい。
【0024】
上記各構成によれば、ばね部材用金属箔が、以下に記載の条件のうちの少なくとも1つを満たす。
・第1分散から第2分散を減算した差分値の絶対値が0.15μm2以下である。
・第1標準偏差から第2標準偏差を減算した差分値が0.15μm2以下である。
・第1分散から第2分散を減算した差分値が0.15μm2以下である。
・第1差分値から第2差分値を減算した差分値の絶対値が0.8μm以下である。
【0025】
これにより、ばね部材用金属箔における厚さのばらつきが抑えられるから、ばね部材用金属箔のウェットエッチングによって形成されるばね部材において厚さ方向での幅のばらつきが抑えられる。
【0026】
上記ばね部材用金属箔において、前記ばね部材用金属箔は、ステンレス合金、ベリリウム銅、ニッケル錫銅、リン青銅、コルソン合金、および、チタン銅から構成される群から選択されるいずれかを含んでもよい。
【0027】
上記ばね部材用金属箔の製造方法において、前記ばね部材用金属箔は、ステンレス合金、ベリリウム銅、ニッケル錫銅、リン青銅、コルソン合金、および、チタン銅から構成される群から選択されるいずれかを含んでもよい。
【0028】
上記電子機器用ばね部材において、前記ばね部材用金属箔は、ステンレス合金、ベリリウム銅、ニッケル錫銅、リン青銅、コルソン合金、および、チタン銅から構成される群から選択されるいずれかを含んでよい。
【0029】
上記各構成によれば、ばね部材用金属箔が高い硬度を有することが可能であるから、ばね部材用金属箔から形成されたばね部材の耐久性を高めることが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、金属箔から形成されたばね部材の厚さ方向におけるばね幅のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、一実施形態におけるばね部材用金属箔の構造を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、同実施形態における電子機器用ばね部材の構造を示す平面図である。
【
図3】
図3は、同実施形態におけるばね部材用金属箔の製造方法を説明するための工程図である。
【
図4】
図4は、同実施形態におけるばね部材用金属箔の製造方法を説明するための工程図である。
【
図5】
図5は、同実施形態におけるばね部材用金属箔の製造方法を説明するための工程図である。
【
図6】
図6は、
図2が示す電子機器用ばね部材の製造方法を説明するための工程図である。
【
図7】
図7は、
図2が示す電子機器用ばね部材の製造方法を説明するための工程図である。
【
図8】
図8は、
図2が示す電子機器用ばね部材の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、
図2が示す電子機器用ばね部材の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、
図2が示す電子機器用ばね部材の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】
図11は、ばね部材用金属箔における厚さの測定箇所を説明するための平面図である。
【
図12】
図12は、実施例および比較例の金属箔における測定結果を示す表である。
【
図13】
図13は、第1絶対値とばね幅の差分値との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14は、第4絶対値とばね幅の差分値との関係を示すグラフである。
【
図15】
図15は、第2絶対値とばね幅の差分値との関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、第3絶対値とばね幅の差分値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1から
図16を参照して、ばね部材用金属箔、ばね部材用金属箔の製造方法、および、電子機器用ばね部材における一実施形態を説明する。
[ばね部材用金属箔]
図1を参照して、ばね部材用金属箔を説明する。
【0033】
図1が示すばね部材用金属箔(以下、金属箔とも称する)10において、ばね部材が形成されるための領域が第1領域10R1である。第1領域10R1は、一辺の長さが300mmである正方形状を有している。金属箔10は、ばね部材に求められるばね荷重またはたわみを実現することが可能な程度に高い硬度を有した金属から形成された圧延材である。金属箔10は、圧延方向DRに沿って延びる帯状を有している。圧延方向DRに直交する方向が、幅方向DWである。金属箔10が有する厚さTは、例えば150μm以下であり、好ましくは50μm以上120μm以下である。金属箔10の厚さは、基材の厚さの平均値に対する、金属箔10の厚さTの最大値と厚さの最小値の差分値の比率が3%以下であるような均一性を有する。
【0034】
金属箔10は、以下の条件1を満たす。
(条件1)圧延方向DRにおける厚さの標準偏差から、幅方向DWにおける厚さの標準偏差を減算した差分値の絶対値が、0.15μm以下であり、かつ、第1最大値から第2最大値を減算した差分値の絶対値が0.8μm以下である。
【0035】
圧延方向DRにおける厚さの標準偏差が第1標準偏差であり、幅方向DWにおける厚さの標準偏差が第2標準偏差である。第1標準偏差から第2標準偏差を減算した差分値の絶対値は、第1絶対値である。なお、第1標準偏差は、圧延方向DRに沿って延びる直線上の各点での厚さにおける標準偏差である。また、第2標準偏差は、幅方向DWに沿って延びる直線上の各点での厚さにおける標準偏差である。
【0036】
第1最大値は、圧延方向DRにおける厚さの最大値である。第2最大値は、幅方向DWにおける厚さの最大値である。なお、第1最大値から第2最大値を減算した差分値の絶対値は、第4絶対値である。
【0037】
第1絶対値が0.15μm以下であり、かつ、第4絶対値が0.8μm以下であるから、金属箔10における厚さのばらつきが抑えられる。そのため、金属箔10のウェットエッチングによって形成されたばね部材において、厚さ方向におけるばね幅のばらつきが抑えられる。
【0038】
金属箔10は、表面10Fと、表面10Fとは反対側の面である裏面10Bとを備えている。金属箔10の厚さTは、表面10Fと裏面10Bとの間の距離である。圧延方向DRにおける厚さの最大値および最小値は、以下のように特定される。すなわち、第1領域10R1に対して、圧延方向DRに沿って延びる帯状を有した第1測定領域R1Rが設定される。幅方向DWにおける第1測定領域R1Rの長さは、例えば20mmである。第1測定領域R1Rに含まれる直線上おける複数の点のそれぞれにおいて測定された金属箔10の厚さのうち、最も大きい値が最大値であり、最も小さい値が最小値である。
【0039】
幅方向DWにおける厚さの最大値および最小値は、以下のように特定される。すなわち、第1領域10R1に対して、幅方向DWに沿って延びる帯状を有した第2測定領域R1Wが設定される。圧延方向DRにおける第2測定領域R1Wの長さは、例えば20mmである。第2測定領域R1Wに含まれる直線上おける複数の点のそれぞれにおいて測定された金属箔10の厚さのうち、最も大きい値が最大値であり、最も小さい値が最小値である。
【0040】
金属箔10において、圧延方向DRでの厚さのばらつきは、金属箔10を製造するための材料に対して圧延が繰り返されるほど小さくなる。そのため、圧延方向DRでのばらつきを抑える観点では、金属箔10の製造時に行われる圧延の回数を増やすことが好ましい。しかしながら、ばね部材用の金属箔10には、ばね部材に求められるばね荷重またはたわみを実現する観点において、所定以上の厚さを有する必要がある。そのため、ばね部材用の金属箔10では、圧延方向DRでの厚さのばらつきを解消することが可能な回数の圧延を金属箔10の製造において行い難い。これに対して、金属箔10において、幅方向DWでの厚さのばらつきは、圧延に用いられる圧延ローラーの表面状態によって支配されるから、圧延の回数によらず、ばらつきが抑えられる傾向を有する。それゆえに、金属箔10は、第2標準偏差が、第1標準偏差以下になりやすい傾向を有する。また、金属箔10は、第2最大値が、第1最大値以下になりやすい傾向を有する。
【0041】
一方、金属箔10の厚さ方向に沿って金属箔10を貫通する貫通孔を形成するためのウェットエッチングが金属箔10に行われた場合には、金属箔10において厚さが薄い部分ほど、貫通孔が形成されるまでに要する時間が短い。そして、金属箔10に形成された貫通孔は、金属箔10の表面10Fと裏面10Bとの間におけるエッチング液の流れを形成する一方で、貫通する方向に対して垂直な方向への金属箔10の等方的なエッチングの進行にはほとんど寄与しない。これに対して、金属箔10において厚さが厚い部分ほど、貫通孔が形成されるまでに要する時間が長い。そのため、金属箔10において厚さが厚い部分は、金属箔10の等方的なエッチングの進行に大きく寄与する。
【0042】
それゆえに、金属箔10の厚さにおいて、第1標準偏差および第1最大値を、圧延方向DRにおいて等方的なエッチングの生じやすさの指標とすることが可能である。また、金属箔10の厚さにおいて、第2標準偏差および第2最大値を、幅方向DWにおいて等方的なエッチングの生じやすさの指標とすることが可能である。さらには、第1絶対値および第4絶対値を、等方的なエッチングの生じにくい幅方向DWに対する、圧延方向DRにおいて等方的なエッチングの生じやすさの指標とすることが可能である。
【0043】
この点、金属箔10が上述した条件1を満たす場合には、幅方向DWにおける等方的なエッチングの生じやすさを基準とした場合に、圧延方向DRでの等方的なエッチングの生じやすさが過剰に大きくなることが抑えられる。そのため、金属箔10のエッチングによって形成されるばね部材において、所望の形状が得られやすくなる。
【0044】
第1領域10R1において、圧延方向DRにおける厚さTの分散が第1分散である。すなわち、第1分散は、圧延方向DRに沿った1つの直線上の各点における厚さTにおける分散である。第1領域10R1において、幅方向DWにおける厚さTの分散が第2分散である。すなわち、第2分散は、幅方向DWに沿った1つの直線上の各点における厚さTにおける分散である。
【0045】
第1領域10R1において、圧延方向DRにおける厚さTの最大値と最小値との差分値が第1差分値である。すなわち、圧延方向DRに沿った1つの直線上の各点における厚さTが第1の厚さであり、第1の厚さのうちの最大値と最小値との差分値が第1差分値である。第1領域10R1において、幅方向DWにおける厚さTの最大値と最小値との差分値が第2差分値である。すなわち、幅方向DWに沿った1つの直線上の各点における厚さが第2の厚さであり、第2の厚さのうちの最大値と最小値との差分値が第2差分値である。
【0046】
金属箔10は、以下の条件2から条件5の少なくとも一方を満たすことが好ましい。すなわち、金属箔10は、条件2から条件5のうちの1つのみを満たしてもよいし、条件2から条件5から選択される2つ以上を満たしてもよい。
【0047】
(条件2)第1分散から第2分散を減算した差分値の絶対値が、0.15μm2以下である。
なお、第1分散から第2分散を減算した差分値の絶対値は、第2絶対値である。
【0048】
(条件3)第1標準偏差から第2標準偏差を減算した差分値が、0.15μm以下である。
なお、第1標準偏差から第2標準偏差を減算した差分値が、第3差分値である。
【0049】
(条件4)第1分散から第2分散を減算した差分値が、0.15μm2以下である。
なお、第1分散から第2分散を減算した差分値が、第4差分値である。
(条件5)第1差分値から第2差分値を減算した差分値の絶対値が、0.8μm以下である。
【0050】
なお、第1差分値から第2差分値を減算した差分値の絶対値は、第3絶対値である。
金属箔10が条件2から条件5を満たす場合も、条件1を満たす場合と同様に、幅方向DWにおける等方的なエッチングの生じやすさを基準とした場合に、圧延方向DRでの等方的なエッチングの生じやすさが過剰に大きくなることが抑えられる。そのため、金属箔10のエッチングによって形成されるばね部材において、所望の形状が得られやすくなる。
【0051】
上述したように、金属箔10は、金属箔10を用いて製造されたばね部材に求められるばね荷重またはたわみを実現することが可能な程度に高い硬度を有した金属から形成されている。金属箔10は、例えば、ステンレス合金または銅合金から形成されてよい。ステンレス合金は、例えば、JIS G 4313:2011「ばね用ステンレス鋼帯」に規定されるステンレス合金であってよい。銅合金は、例えば、JIS H 3130:2018「ばね用のベリリウム銅、チタン銅、りん青銅、ニッケル-すず銅及び洋白の板及び条」に規定される銅合金であってよい。
【0052】
金属箔10は、ステンレス合金、ベリリウム銅、ニッケル錫銅、リン青銅、コルソン合金、および、チタン銅から構成される群から選択されるいずれかを含むことが好ましい。これにより、金属箔10が高い硬度を有することが可能であるから、金属箔10から形成されたばね部材の耐久性を高めることが可能である。
【0053】
[ばね部材]
図2を参照して、ばね部材を説明する。
図2は、ばね部材が広がる平面と対向する視点から見たばね部材の平面構造を模式的に示している。
【0054】
図2が示すように、ばね部材20は、外枠部21、内枠部22、および、ばね部23を備えている。ばね部材20は、板ばねである。
図2が示す例では、外枠部21の外形は八角形状を有し、かつ、内枠部22の外形は円形状を有している。ばね部23は、折線状を有している。なお、外枠部21の外形および内枠部22の外形は、ばね部材20が搭載されるカメラモジュールの駆動機構が備える他の部材、すなわちばね部材20以外の部材が有する形状に応じて変更されてよい。内枠部22は、外枠部21が画定する領域内に位置している。ばね部23は、外枠部21に内枠部22を接続している。
【0055】
レンズ駆動方式の駆動機構では、レンズの光軸方向において、一対のばね部材20がレンズを挟むように配置される。光軸方向において、各外枠部21に対するその外枠部21に接続された内枠部22の位置が変わることによって、レンズの光軸方向におけるレンズの位置が変わる。これにより、レンズ駆動方式の駆動機構によって、手振れを補正することが可能である。
【0056】
これに対して、センサー駆動方式の駆動機構では、レンズの光軸方向において、一対のばね部材20が撮像センサーを挟むように配置される。光軸方向において、各外枠部21に対するその外枠部21に接続された内枠部22の位置が変わることによって、レンズの光軸方向における撮像センサーの位置が変わる。これにより、センサー駆動方式の駆動機構によって、手振れを補正することが可能である。
【0057】
ばね部材20において、ばね部材20が広がる平面と対向する平面視において、外枠部21が有する各辺が延びる方向と直交する方向での長さが、外枠部21におけるばね部材20の幅である。また、ばね部材20が広がる平面と対向する平面視において、内枠部22の径方向に沿う内枠部22の長さが、内枠部22におけるばね部材20の幅である。また、ばね部材20が広がる平面と対向する平面視において、ばね部23における折線の平面視における線幅が、ばね部23の幅、つまり、ばね幅SWである。
【0058】
ばね部材20を備えるカメラモジュールが搭載される電子機器は、例えば、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット型端末、および、ノート型パーソナルコンピューターなどであってよい。
【0059】
[ばね部材用金属箔の製造方法]
図3から
図5を参照して、金属箔10の製造方法を説明する。
金属箔10の製造方法は、母材を圧延することと、母材の圧延によって得られた圧延材を複数準備した後、複数の圧延材から金属箔10を選別することとを含む。金属箔10を選別することでは、複数の圧延材から、上述した条件1を満たす圧延材を金属箔10として選別する。また、金属箔10の製造方法は、複数の圧延材から金属箔10を選別する際の条件に、上述した条件2から条件5のうちの少なくとも一方をさらに含んでよい。すなわち条件2から条件5のうちの1つのみを含んでもよいし、条件2から条件5から選択される2つ以上を含んでもよい。
【0060】
以下、図面を参照して、金属箔10の製造方法をより詳しく説明する。
図3および
図4は、金属箔10を形成するための母材を圧延する工程を模式的に示している。
【0061】
図3が示すように、金属箔10が製造される際には、まず、圧延方向DRに沿って延びる帯状を有した母材BM1を準備する。次いで、母材BM1の圧延方向DRと、母材BM1を搬送する搬送方向とが平行になるように、母材BM1を一対の圧延ローラーRL1,RL2を備える圧延装置REに向けて搬送方向に沿って搬送する。
【0062】
母材BM1が一対の圧延ローラーRL1,RL2の間に到達すると、母材BM1が一対の圧延ローラーRL1,RL2によって圧延される。これにより、母材BM1の厚さが低減され、かつ、母材BM1が搬送方向に沿って伸ばされることで、圧延材BM2を得ることができる。圧延材BM2はコアCに巻き取られる。なお、圧延材BM2は、コアCに巻き取られることなく、帯形状に伸ばされた状態で取り扱われてもよい。圧延材BM2の厚さは、例えば150μ以下であり、好ましくは、50μm以上120μm以下である。
【0063】
図4が示すように、母材BM1の圧延によって形成された圧延材BM2の内部に蓄積された残留応力を取り除くために、アニール装置AEを用いて圧延材BM2をアニールする。これにより、アニール後の圧延材BM3が得られる。圧延材BM2のアニールは、圧延材BM2を搬送方向に沿って引っ張りながら行うため、アニール前の圧延材BM2に比べて残留応力が低減された圧延材BM3を得ることができる。
【0064】
なお、母材BM1を形成する材料は、上述したように、ステンレス合金、ベリリウム銅、ニッケル錫銅、リン青銅、コルソン合金、および、チタン銅から構成される群から選択されるいずれかを含んでよい。これらの金属は高い硬度を有するから、言い換えれば、より低い硬度を有する金属、すなわちより柔らかい金属に比べて延びにくいから、圧延される度合いにおけるばらつきが母材BM1内において生じやすい。また、複数の母材BM1間においても、圧延度合いにばらつきが生じやすい。そのため、母材BM1の圧延によって形成された金属箔10の選別条件が、上述した条件1を含むことによる実効性が高い。
【0065】
図5は、圧延工程を経て形成された金属箔10の厚さを測定する工程を模式的に示している。
図5が示すように、圧延を経て得られた圧延材BM3を複数準備した後、各圧延材BM3においてばね部材20を形成するための第1領域について、測定装置MEを用いて厚さを測定する。これにより、各圧延材BM3の第1領域について、上述した第1絶対値を少なくとも算出する。そして、複数の圧延材BM3のうち、上述した第1条件を満たす圧延材BM3を金属箔10として選別し、選別された金属箔10をばね部材20の製造に用いる。
【0066】
なお、各圧延材BM3の第1領域について、上述した第1分散、第2分散、第2絶対値および、第3絶対値を算出してもよい。そして、圧延材BM3から金属箔10を選別する条件に、上述した条件2から条件5の少なくとも一方を加えてもよい。すなわち、圧延材BM3から金属箔10を選別する条件に、条件2から条件5のうちの1つのみを加えてもよいし、条件2から条件5から選択される2つ以上を加えてもよい。また、測定装置MEには、接触式の測定装置を用いてもよいし、非接触式の測定装置を用いてもよい。
【0067】
接触式の測定装置には、例えば長さゲージを用いることができる。非接触式の測定装置には、例えば、X線を照射する照射部と、蛍光X線を検出する検出部とを備える測定装置を用いることができる。この測定装置を用いる場合には、まず、照射部を用いて金属箔10にX線を照射し、これによって金属箔10から放出される蛍光X線を検出部を用いて検出する。検出部によって検出された蛍光X線の強度は、金属箔10の厚さに依存するから、蛍光X線の強度から、金属箔10の厚さを把握することが可能である。
【0068】
なお、第1標準偏差、第2標準偏差、第1分散、第2分散、第1差分値、および、第2差分値を、以下の少なくとも1つを変更することによって、変更することが可能である。圧延ローラーRL1,RL2の回転速度、圧延ローラーRL1,RL2の間での押圧力、圧延ローラーRL1,RL2の温度、および、圧延ローラーRL1,RL2の数量の少なくとも1つを変更することによって、上述した値を変更することができる。すなわち、圧延ローラーRL1,RL2の回転速度、圧延ローラーRL1,RL2の間での押圧力、圧延ローラーRL1,RL2の温度、および、圧延ローラーRL1,RL2の数量のうちの1つのみが変更されてもよい。あるいは、圧延ローラーRL1,RL2の回転速度、圧延ローラーRL1,RL2の間での押圧力、圧延ローラーRL1,RL2の温度、および、圧延ローラーRL1,RL2の数量のうちの任意の2つ以上が変更されてもよい。
【0069】
[ばね部材の製造方法]
図6から
図10を参照して、ばね部材20の製造方法を説明する。
図6が示すように、ばね部材20を製造する際には、まず、金属箔10の表面10Fに第1レジスト層PR1を形成し、かつ、裏面10Bに第2レジスト層PR2を形成する。なお、
図6から
図10を用いて説明する例では、各レジスト層PR1,PR2がポジ型のフォトレジストから形成されているが、各レジスト層PR1,PR2はネガ型のフォトレジストから形成されてもよい。
【0070】
次いで、
図7が示すように、第1レジスト層PR1上に第1フォトマスクPM1を配置し、かつ、第2レジスト層PR2上に第2フォトマスクPM2を配置する。そして、第1レジスト層PR1を第1フォトマスクPM1を用いて露光し、かつ、第2レジスト層PR2を第2フォトマスクPM2を用いて露光する。
【0071】
図8が示すように、露光したレジスト層PR1,PR2を現像し、これによって、第1レジスト層PR1から第1レジストマスクRM1を形成し、かつ、第2レジスト層PR2から第2レジストマスクRM2を形成する。
【0072】
図9が示すように、レジストマスクRM1,RM2を用いて金属箔10をウェットエッチングする。この際に、金属箔10を表面10Fおよび裏面10Bの両方からエッチングする。これにより、金属箔10の厚さ方向に沿って貫通する貫通孔が金属箔10に形成され、結果として、外枠部21と、外枠部21から離れた内枠部22と、内枠部22を外枠部21に接続するばね部23とが形成される。
【0073】
この際に、金属箔10が条件1を満たすから、金属箔10の厚さ方向において、所望の形状を有したばね部材20が得られやすい。また、金属箔10が条件1を満たすから、金属箔10の厚さにおけるばらつきに応じてウェットエッチングの条件を変更せずとも、ばね部材20の厚さ方向におけるばね幅のばらつきが所定の範囲内に抑えられたばね部材20を得ることが可能である。そのため、ばね部材20の製造において、厚さのばらつきに応じてウェットエッチングの条件を変更することが不要であるから、厚さのばらつきとウェットエッチングの条件との組み合わせにおける誤りを無くすことも可能である。
【0074】
図10が示すように、レジストマスクRM1,RM2をエッチング後の金属箔10から取り除いた後、エッチング後の金属箔10からばね部材20を切り出すことによって、ばね部材20を得ることができる。
【0075】
[実施例]
図11から
図16を参照して、実施例および比較例を説明する。
[実施例1]
まず、チタン銅を材料とする母材に圧延工程を施して圧延材を形成した。次いで、圧延材にアニール工程を施した。これによって、厚さの設計値が120μmである実施例1の金属箔を得た。
【0076】
[実施例2から実施例8、および、比較例1から比較例3]
実施例1において、母材を圧延する際に、圧延ローラーの回転速度、圧延ローラーの間での押圧力、圧延ローラーの温度、および、圧延ローラーの数量の少なくとも1つを変更する一方で、それ以外は実施例1と同様とすることによって、実施例2から実施例8、および、比較例1から比較例3の金属箔を得た。
【0077】
[評価方法]
[厚さの測定]
図11を参照して、金属箔10における厚さの測定方法を説明する。
【0078】
図11が示すように、各実施例および各比較例の金属箔から、一辺の長さが300mmである正方形状を有した測定用金属箔30を切り出した。各測定用金属箔30の第1の一辺が延びる方向と金属箔の圧延方向DRとが平行であり、かつ、各測定用金属箔30の第2の一辺が延びる方向と金属箔の幅方向DWとが垂直であるように、各金属箔から測定用金属箔30を切り出した。各測定用金属箔30において、測定用金属箔30の中央を含み、正方形状を有する測定領域30Aと、測定領域30Aを取り囲む矩形枠状を有した周辺領域30Bとを設定した。この際に、周辺領域30Bの幅W3を10mmに設定した。
【0079】
また、圧延方向DRに沿って延びる帯状を有する第1測定領域R1Rと、幅方向DWに沿って延びる帯状を有する第2測定領域R1Wとを測定領域30A内に設定した。この際に、第1測定領域R1Rにおける幅方向DWの長さである幅W1を20mmに設定し、かつ、第2測定領域R1Wにおける圧延方向DRの長さである幅W2を20mmに設定した。
【0080】
そして、第1測定領域R1Rを圧延方向DRにおいて14等分した領域の全てにおいて金属箔の厚さを測定した。また、第2測定領域R1Wを幅方向DWにおいて14等分した領域の全てにおいて測定用金属箔30の厚さを測定した。
【0081】
各領域のうち、対向する2つの角部を結ぶ対角線同士が交わる点において厚さを測定した。すなわち、同一の直線上に位置する各点において厚さを測定した。測定用金属箔ごとに、圧延方向DRにおける14点、および、幅方向DWにおける14点において厚さを測定した。ただし、第1測定領域R1Rと第2測定領域R1Wとが交わる領域では、圧延方向DRにおける測定点と幅方向DWにおける測定点とが同一の点であるため、各測定用金属箔について、合計で27点において厚さの測定を行った。そして、測定された値を小数第二位において四捨五入し、これによって、各領域での厚さの測定値とした。
【0082】
これら測定値から、第1標準偏差、第2標準偏差、第1分散、および、第2分散を算出した。また、第1標準偏差から第2標準偏差を減算した差分値である第3差分値と、第3差分値の絶対値である第1絶対値とを算出した。また、第1分散から第2分散を減算した差分値である第4差分値と、第4差分値の絶対値である第2絶対値とを算出した。また、第1差分値から第2差分値を減算した差分値の絶対値である第3絶対値と、圧延方向DRにおける厚さの最大値から幅方向DWにおける厚さの最大値を減算した差分値の絶対値である第4絶対値とを算出した。
【0083】
測定用金属箔30における厚さの測定には、接触式の厚さ測定器((株)Nikon製、MH-15M)を用いた。厚さを測定する際には、まず、測定子を底盤に接触させた状態で測定器に付属する板厚測定機カウンターの電源を入れ、これによってゼロ点合わせを行った。その後、測定子と底盤との間に測定用金属箔を設置し、次いで、測定子を降下させることによって測定用金属箔における各部の厚さを測定した。
【0084】
[エッチングパターンの評価]
各測定用金属箔30の表面と裏面とに対して、ばね部材20の形状に対応した複数の開口を有するレジストマスクを形成し、2つのレジストマスクを用いて測定用金属箔30を表面と裏面との両方からウェットエッチングした。なお、測定領域30Aに、1つのばね部材20に対応し、かつ、20mm四方の正方形状を有した単位領域を、圧延方向DRと幅方向DWとの両方において敷き詰められるように、格子状に配置した。そのため、各レジストマスクにも、1つのばね部材20の形状に対応する単位パターンを、圧延方向DRと幅方向DWとの両方において敷き詰められるように、格子状に配置した。
【0085】
単位パターンでは、ばね部材20のうち、折線状を有するばね部23を形成する部分において、ばね部23において互いに平行であり、かつ、隣り合う線分の間隙に対応するレジストパターンの開口幅を100μmに設定し、かつ、隣り合う線分のピッチを200μmに設定した。ここで、隣り合う線分のピッチとは、エッチングパターンの設計において、互いに平行であり、かつ、隣り合う線分において、各線分に設定される中央線間の距離を指す。
【0086】
なお、各レジストマスクには、測定用金属箔30の表面と対向する平面視において、測定用金属箔30の表面に位置するレジストマスクが有する1つの単位パターンの全体が、測定用金属箔30の裏面に位置するレジストマスクにおける1つの単位パターンの全体に重なるように、各レジストマスクに複数の単位パターンを形成した。
【0087】
こうしたレジストマスクを用いて、測定用金属箔30において、ばね部材20の形状に対応するエッチングパターンを複数形成した。エッチングパターンにおいて、ばね部23の平面視におけるばね幅の設計値を30μmに設定した。
【0088】
エッチング後の各測定用金属箔30に存在するばね部材20のばね部23を合成樹脂を用いて包埋した。そして、ミクロトームを用いて包埋後のばね部23を切断することによって、ばね部が含む線分が延びる方向に直交する平面でのばね部23の断面を露出させた。
【0089】
ばね部23の断面において、以下の位置におけるばね幅を測定した。すなわち、ばね部23において、測定用金属箔30の表面におけるばね幅、測定用金属箔30の裏面におけるばね幅、および、ばね部23を厚さ方向において4等分する平面のうち、測定用金属箔30の表面と裏面とに挟まれる3つの平面でのばね幅を測定した。すなわち、測定用金属箔30の表面における深さを0μmに設定する場合に、エッチングパターンにおいて、深さが0μmでのばね幅、深さが約30μmでのばね幅、深さが約60μmでのばね幅、深さが約90μmでのばね幅、および、深さが約120μmでのばね幅を測定した。ばね部23のばね幅を測定する際には、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VHX‐7000)を用い、かつ、デジタルマイクロスコープにおいて対物レンズの倍率を200倍に設定した。
【0090】
また、各実施例および各比較例の測定用金属箔30から得られたエッチングパターンについて、第1規格値、ばね幅の標準偏差、第2規格値、ばね幅の平均値に対する3σの百分率、および、ばね幅の分散を算出した。
【0091】
なお、測定用金属箔30が含む各単位パターンについて、ばね部23が含む全てのばねにおいて、厚さ方向における上述した5箇所でのばね幅を測定した。そして、ばね毎に最大値と最小値とを特定し、最大値から最小値を減算した差分値を算出し、かつ、ばね幅の平均値を算出した。次いで、全てのばねについて特定した最大値から最大値の平均値を算出し、当該平均値をその測定用金属箔30でのばね幅の最大値に設定した。また、全てのばねについて特定した最小値から最小値の平均値を算出し、当該最小値をその測定用金属箔30でのばね幅の最小値に設定した。また、全てのばねについて算出した差分値から差分値の平均値を算出し、当該平均値をその測定用金属箔30の差分値に設定した。また、全てのばねについて算出した平均値について平均値を算出し、当該平均値をその測定用金属箔30の平均値に設定した。
【0092】
また、各実施例および各比較例の測定用金属箔30から得られたエッチングパターンについて、第1規格値、ばね幅の標準偏差、第2規格値、および、ばね幅の平均値に対する3σの百分率を算出した。ばね幅の平均値に対する3σの百分率を算出する際には、各測定用金属箔30に対して設定された平均値を用いた。なお、第1規格値は、ばね幅の設計値に対するばね幅の差分値の百分率である。第1規格値の算出には、各測定用金属箔30に対して設定された差分値を用いた。また、第2規格値は、ばね幅の設計値に対するばね幅の標準偏差の百分率である。
【0093】
ばね幅の標準偏差を算出する際には、まず、ばね毎に測定した5箇所の厚さからばね幅の標準偏差を算出した。次いで、全てのばねについて算出した標準偏差から標準偏差の平均値を算出し、当該平均値をその測定用金属箔30でのばね幅の標準偏差に設定した。また、第2規格値の算出には、各測定用金属箔30に対して設定された標準偏差を用いた。
【0094】
ばね幅の分散を算出する際には、まず、ばね毎に測定した5箇所の厚さからばね幅の分散を算出した。次いで、全てのばねについて算出した分散から分散の平均値を算出し、当該平均値をその測定用金属箔30でのばね幅の分散に設定した。
【0095】
[評価結果]
図12から
図14を参照して、測定用金属箔30の厚さ、および、エッチングパターンのばね幅における評価結果を説明する。
【0096】
図12は、各測定用金属箔30の厚さを測定した結果、および、各測定用金属箔30をウェットエッチングすることによって形成したエッチングパターンのばね幅における測定の結果を示している。なお、
図12において、第4絶対値は、圧延方向DRにおける厚さの最大値から幅方向DWにおける厚さの最大値を減算した差分値の絶対値である。
【0097】
図12が示すように、第1標準偏差は、実施例1において0.313μmであり、実施例2において0.291μmであり、実施例3において0.389μmであり、実施例4において0.261μmであることが認められた。また、第1標準偏差は、実施例5において0.516μmであり、実施例6において0.421μmであり、実施例7において0.532μmであり、実施例8において0.524μmであることが認められた。また、第1標準偏差は、比較例1において0.766μmであり、比較例2において0.571μmであり、比較例3において0.498μmであることが認められた。
【0098】
第2標準偏差は、実施例1において0.243μmであり、実施例2において0.303μmであり、実施例3において0.332μmであり、実施例4において0.184μmであることが認められた。また、第2標準偏差は、実施例5において0.447μmであり、実施例6において0.311μmであり、実施例7において0.420μmであり、実施例8において0.412μmであることが認められた。第2標準偏差は、比較例1において0.260μmであり、比較例2において0.218μmであり、比較例3において0.307μmであることが認められた。
【0099】
これにより、第3差分値が、実施例1において0.069μmであり、実施例2において-0.012μmであり、実施例3において0.057μmであり、実施例4において0.077μmであることが認められた。また、第3差分値が、実施例5において0.068μmであり、実施例6において0.110μmであり、実施例7において0.112μmであり、実施例8において0.111μmであることが認められた。また、第3差分値が、比較例1において0.507μmであり、比較例2において0.353μmであり、比較例3において0.191μmであることが認められた。
【0100】
また、第1絶対値が、実施例1において0.069μmであり、実施例2において0.012μmであり、実施例3において0.057μmであり、実施例4において0.077μmであることが認められた。また、第1絶対値が、実施例5において0.068μmであり、実施例6において0.110μmであり、実施例7において0.112μmであり、実施例8において0.111μmであることが認められた。また、第1絶対値が、比較例1において0.507μmであり、比較例2において0.353μmであり、比較例3において0.191μmであることが認められた。
【0101】
このように、実施例1から実施例8の測定用金属箔30では、第1絶対値が0.15μm以下である一方で、比較例1から比較例3の測定用金属箔30では、第1絶対値が0.15μmよりも大きいことが認められた。詳細には、実施例1から実施例8の測定用金属箔30では、第1絶対値が0.012μm以上0.112μm以下である一方で、比較例1から比較例3の測定用金属箔30では、第1絶対値が0.191μm以上0.507μm以下であることが認められた。また、実施例1、実施例3から実施例8の測定用金属箔30、および、比較例1から比較例3の測定用金属箔30では、第1標準偏差が第2標準偏差よりも大きい一方で、実施例2では、第1標準偏差が第2標準偏差よりも小さいことが認められた。
【0102】
また、第1分散は、実施例1において0.098μm2であり、実施例2において0.085μm2であり、実施例3において0.151μm2であり、実施例4において0.068μm2であることが認められた。第1分散は、実施例5において0.266μm2であり、実施例6において0.177μm2であり、実施例7において0.283μm2であり、実施例8において0.274μm2であることが認められた。第1分散は、比較例1において0.587μm2であり、比較例2において0.326μm2であり、比較例3において0.248μm2であることが認められた。
【0103】
第2分散は、実施例1において0.059μm2であり、実施例2において0.092μm2であり、実施例3において0.110μm2であり、実施例4において0.034μm2であることが認められた。第2分散は、実施例5において0.200μm2であり、実施例6において0.096μm2であり、実施例7において0.176μm2であり、実施例8において0.170μm2であることが認められた。第2分散は、比較例1において0.067μm2であり、比較例2において0.048μm2であり、比較例3において0.095μm2であることが認められた。
【0104】
これにより、第4差分値が、実施例1において0.039μm2であり、実施例2において-0.007μm2であり、実施例3において0.041μm2であり、実施例4において0.034μm2であることが認められた。第4差分値が、実施例5において0.066μm2であり、実施例6において0.081μm2であり、実施例7において0.107μm2であり、実施例8において0.104μm2であることが認められた。また、第4差分値が、比較例1において0.520μm2であり、比較例2において0.278μm2であり、比較例3において0.154μm2であることが認められた。
【0105】
また、第2絶対値は、実施例1において0.039μm2であり、実施例2において0.007μm2であり、実施例3において0.041μm2であり、実施例4において0.034μm2であることが認められた。第2絶対値が、実施例5において0.066μm2であり、実施例6において0.081μm2であり、実施例7において0.107μm2であり、実施例8において0.104μm2であることが認められた。また、第2絶対値が、比較例1において0.520μm2であり、比較例2において0.278μm2であり、比較例3において0.154μm2であることが認められた。このように、実施例1から実施例8の測定用金属箔30において、第2絶対値が0.15μm2以下である一方で、比較例1から比較例3の測定用金属箔30において、第2絶対値が0.15μm2よりも大きいことが認められた。詳細には、実施例1から実施例8の測定用金属箔30では、第2絶対値が0.007μm2以上0.107μm2以下である一方で、比較例1から比較例3の測定用金属箔30での第2絶対値が0.154μm2以上0.520μm2以下であることが認められた。
【0106】
また、第3絶対値は、実施例1において0.2μmであり、実施例2において0μmであり、実施例3において0.3μmであり、実施例4において0.3μmであることが認められた。また、第3絶対値は、実施例5において0.5μmであり、実施例6において0.4μmであり、実施例7において0.2μmであり、実施例8において0.4μmであることが認められた。また、第3絶対値は、比較例1において1.6μmであり、比較例2において1.2μmであり、比較例3において0.9μmであることが認められた。
【0107】
また、第4絶対値は、実施例1において0μmであり、実施例2において0μmであり、実施例3において0.4μmであり、実施例4において0μmであることが認められた。第4絶対値は、実施例5において0.8μmであり、実施例6において0.5μmであり、実施例7において0.4μmであり、実施例8において0.6μmであることが認められた。第4絶対値は、比較例1において1.5μmであり、比較例2において1.1μmであり、比較例3において0.9μmであることが認められた。
【0108】
一方、ばね幅における差分値は、実施例1において8.4μmであり、実施例2において8.4μmであり、実施例3において8.2μmであり、実施例4において7.0μmであることが認められた。また、ばね幅における差分値は、実施例5において7.5μmであり、実施例6において9.1μmであり、実施例7において8.4μmであり、実施例8において9.7μmであることが認められた。また、ばね幅における差分値は、比較例1において12.5μmであり、比較例2において13.7μmであり、比較例3において14.3μmであることが認められた。
【0109】
また、第1規格値は、実施例1において27.9%であり、実施例2において28.0%であり、実施例3において27.4%であり、実施例4において23.1%であることが認められた。また、第1規格値は、実施例5において24.9%であり、実施例6において30.3%であり、実施例7において28.1%であり、実施例8において32.3%であることが認められた。第1規格値は、比較例1において41.6%であり、比較例2において45.6%であり、比較例3において47.5%であることが認められた。
【0110】
ばね幅の標準偏差は、実施例1において2.0μmであり、実施例2において1.7μmであり、実施例3において1.9μmであり、実施例4において1.4μmであることが認められた。ばね幅の標準偏差は、実施例5において1.4μmであり、実施例6において1.9μmであり、実施例7において2.0μmであり、実施例8において2.1μmであることが認められた。ばね幅の標準偏差は、比較例1において2.5μmであり、比較例2において2.6μmであり、比較例3において2.6μmであることが認められた。
【0111】
第2規格値は、実施例1において6.6%であり、実施例2において5.7%であり、実施例3において6.3%であり、実施例4において4.7%であることが認められた。第2規格値は、実施例5において4.7%であり、実施例6において6.3%であり、実施例7において6.6%であり、実施例8において7.1%であることが認められた。第2規格値は、比較例1において8.2%であり、比較例2において8.5%であり、比較例3において8.5%であることが認められた。
【0112】
ばね幅の平均値に対する3σの百分率は、実施例1において17.8%であり、実施例2において16.0%であり、実施例3において18.3%であり、実施例4において13.0%であることが認められた。ばね幅の平均値に対する3σの百分率は、実施例5において13.0%であり、実施例6において18.1%であり、実施例7において18.3%であり、実施例8において18.8%であることが認められた。ばね幅の平均値に対する3σの百分率は、比較例1において24.8%であり、比較例2において26.4%であり、比較例3において22.0%であることが認められた。
【0113】
ばね幅の分散は、実施例1において3.9μm2であり、実施例2において2.9μm2であり、実施例3において3.6μm2であり、実施例4において2.0μm2であることが認められた。ばね幅の分散は、実施例5において2.0μm2であり、実施例6において3.6μm2であり、実施例7において4.0μm2であり、実施例8において4.5μm2であることが認められた。ばね幅の分散は、比較例1において6.0μm2であり、比較例2において6.5μm2であり、比較例3において6.6μm2であることが認められた。
【0114】
このように、実施例1から実施例8のばね部材用金属箔では、比較例1から比較例3のばね部材用金属箔に比べて、第1規格値、標準偏差、第2規格値、平均値に対する3σの百分率、および、分散の全てが小さいことが認められた。そのため、実施例1から実施例8のばね部材用金属箔によれば、比較例1から比較例3のばね部材用金属箔に比べて、厚さ方向におけるばね幅のばらつきが抑えられているといえる。
【0115】
図13は、第1絶対値と、ばね幅の差分値と関係を示すグラフである。
図13が示すように、第1絶対値が0.15μm以下である場合には、エッチングパターンのばね幅における差分値が、6.0μm以上10.0μm以下の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、第1絶対値が0.15μmよりも大きい場合には、エッチングパターンのばね幅における差分値が、12μmを超えることが認められた。このように、第1絶対値では、0.15μmを境界としてエッチングパターンのばね幅におけるばらつきが大きく異なることが認められた。
【0116】
図14は、第4絶対値と、ばね幅の差分値との関係を示すグラフである。
図14が示すように、第4絶対値が0.8μm以下である場合には、エッチングパターンのばね幅における差分値が、6.0μm以上10.0μm以下の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、第4絶対値が0.8μmよりも大きい場合には、エッチングパターンのばね幅における差分値が、12μmを超えることが認められた。このように、第4絶対値では、0.8μmを境界としてエッチングパターンのばね幅におけるばらつきが大きく異なることが認められた。
【0117】
図15は、第2絶対値と、ばね幅の差分値との関係を示すグラフである。
図15が示すように、第2絶対値が0.15μm
2以下である場合には、エッチングパターンのばね幅における差分値が、6.0μm以上10.0μm以下の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、第2絶対値が0.15μm
2よりも大きい場合には、エッチングパターンのばね幅における差分値が、12μmを超えることが認められた。このように、第2絶対値では、0.15μm
2を境界としてエッチングパターンのばね幅におけるばらつきが大きく異なることが認められた。
【0118】
図16は、第3絶対値と、ばね幅の差分値との関係を示すグラフである。
図16が示すように、第3絶対値が0.8μm以下である場合には、エッチングパターンのばね幅における差分値が、6.0μm以上10.0μm以下の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、第3絶対値が0.8μmよりも大きい場合には、エッチングパターンのばね幅における差分値が、12μmを超えることが認められた。このように、第3絶対値では、0.8μmを境界としてエッチングパターンのばね幅におけるばらつきが大きく異なることが認められた。
【0119】
以上説明したように、ばね部材用金属箔、ばね部材用金属箔の製造方法、および、電子機器用ばね部材における一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)金属箔10が条件1を満たすから、金属箔10における厚さのばらつきが抑えられる。そのため、金属箔10のウェットエッチングによって形成されたばね部材20において、厚さ方向でのばね幅のばらつきが抑えられる。
【0120】
(2)金属箔10が条件2から条件5の少なくとも1つを満たすから、金属箔10における厚さのばらつきが抑えられる。そのため、金属箔10のウェットエッチングによって形成されたばね部材20の厚さ方向において幅のばらつきが抑えられる。
【0121】
(3)金属箔10が高い硬度を有することが可能であるから、金属箔10から形成されたばね部材20の耐久性を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0122】
10…ばね部材用金属箔
10R1…第1領域
20…ばね部材