(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171829
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】深いHOMO(最高被占分子軌道)発光体デバイス構造
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20231128BHJP
H10K 50/18 20230101ALI20231128BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20231128BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20231128BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20231128BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20231128BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231128BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20231128BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20231128BHJP
H10K 101/10 20230101ALN20231128BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20231128BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20231128BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K50/18
H10K50/16
H10K50/17
H10K85/30
H10K85/60
H10K59/10
H10K50/15
C09K11/06 660
H10K101:10
H10K101:30
H10K101:40
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156586
(22)【出願日】2023-09-22
(62)【分割の表示】P 2019189100の分割
【原出願日】2019-10-16
(31)【優先権主張番号】62/749,290
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/596,948
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴァディム・アダモヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・エー・マルグリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-ルク・ティー・ブードロー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】600nm以上であるピーク最大波長を有する発光を有し、発光効率が高い有機発光ダイオードを提供する。
【解決手段】アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された発光層と、発光層(emissive)とカソードとの間に配置された正孔ブロッキング層と、を有する有機発光ダイオード(OLED)であって、発光層は、リン光ドーパントを含むことができ、リン光ドーパントは、PMMA(ポリ(メチルメタクリラート))に0.5%ドープした薄膜において室温で600nm以上であるピーク最大波長を有する発光を有する。リン光ドーパントの最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーは、-5.1eV以下であることができ、正孔ブロッキング層のHOMOのエネルギーは、リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.1eV低い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと;
カソードと;
前記アノードと前記カソードとの間に配置された発光層と;
前記発光層(emissive)と前記カソードとの間に配置された正孔ブロッキング層と、
を有する有機発光ダイオード(OLED)であって、
前記発光層が、リン光ドーパントを含み、
前記リン光ドーパントが、PMMA(ポリ(メチルメタクリラート))に0.5%ドープした薄膜において室温で600nm以上であるピーク最大波長を有する発光を有し、
前記リン光ドーパントの最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーが、-5.1eV以下であり、
前記正孔ブロッキング層のHOMOのエネルギーが、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.1eV低いことを特徴とする有機発光ダイオード(OLED)。
【請求項2】
前記リン光ドーパントのピーク最大波長が、610nm以上である請求項1に記載のOLED。
【請求項3】
前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーが、-5.2eV以下である請求項1に記載のOLED。
【請求項4】
前記正孔ブロッキング層のHOMOのエネルギーが、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.2eV低い請求項1に記載のOLED。
【請求項5】
前記正孔ブロッキング層が、式Iの化合物を含む下記からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載のOLED。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、モノから最大許容置換を表す、又は無置換を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素である、又は重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基であり、
Yは、O、S、Se、NAr
4、CAr
4Ar
5、SiAr
4Ar
5、フルオレン(C-Ar
1Ar
2)、及びケイ素(Si-Ar
1Ar
2)からなる群から選択され、Ar
1及びAr
2は、同じ又は異なるアリール基であり、
Ar
1~Ar
5は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、及びこれらの組合せからなる群から選択され、
Lは、直接結合又は少なくとも1つの芳香族環を含むリンカーである。)
【請求項6】
前記リン光ドーパントが、金属-炭素結合を有する金属配位錯体であり、
前記金属が、Ir、Os、Pt、Pd、Ag、Au、及びCuからなる群から選択される請求項1に記載のOLED。
【請求項7】
前記金属配位錯体が、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジンからなる群から選択される化学的部分を含む配位子を含む請求項6に記載のOLED。
【請求項8】
前記金属配位錯体が、M(L
1)
x(L
2)
y(L
3)
zの式を有し、
L
1、L
2、及びL
3は、同じでも異なっていることもでき、
xは、1、2、又は3であり、
yは、0、1、又は2であり、
zは、0、1、又は2であり、
x+y+zは、前記Mの酸化状態であり、
前記Mは、Irであり、
L
1、L
2、及びL
3は、それぞれ独立して、下記からなる群から選択され、
【化2】
【化3】
L
2及びL
3はまた、下記:
【化4】
であることができる請求項6に記載のOLED。
(式中、Y
1~Y
13は、それぞれ独立して、炭素及び窒素からなる群から選択され、
Y’は、BR
e、NR
e、PR
e、O、S、Se、C=O、S=O、SO
2、CR
eR
f、SiR
eR
f、及びGeR
eR
fからなる群から選択され;
R
e及びR
fは、任意に縮合又は結合して環を形成し、R
a、R
b、R
c、及びR
dは、それぞれ独立して、モノ置換から置換の最大可能数を表してもよい、又は無置換を表してもよく、
R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、及びR
fは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せからなる群から選択され、
R
a、R
b、R
c、及びR
dの任意の2つの隣接する置換基は、任意に縮合又は結合し、環を形成する又は多座配位子を形成する。)
【請求項9】
電子ブロッキング層を含み、
前記電子ブロッキング層が、式IIの化合物を含む請求項1に記載のOLED。
【化5】
(式中、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、モノから最大許容置換を表す、又は無置換を表し、
R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、水素である、又は重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基であり、
Ar
5及びAr
6は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、及びこれらの組合せからなる群から選択される。)
【請求項10】
有機発光ダイオード(OLED)を含む消費者製品であって、前記有機発光ダイオード(OLED)が、
アノードと;
カソードと;
前記アノードと前記カソードとの間に配置された発光層と;
前記発光層と前記カソードとの間に配置された正孔ブロッキング層と、
を有し、
前記発光層が、リン光ドーパントを含み、
前記リン光ドーパントが、PMMA(ポリ(メチルメタクリラート))に0.5%ドープした薄膜において室温で600nm以上であるピーク最大波長を有する発光を有し、
前記リン光ドーパントの最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーが、-5.1eV以下であり、
前記正孔ブロッキング層のHOMOのエネルギーが、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.1eV低いことを特徴とする消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その開示内容の全体を参照によって援用する、2018年10月23日出願の米国特許出願第62/749,290号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、発光体として使用するための化合物、及びそれを含む有機発光ダイオードなどのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
有機材料を利用する光電子デバイスは、いくつもの理由から、次第に望ましいものとなりつつある。そのようなデバイスを作製するために使用される材料の多くは比較的安価であるため、有機光電子デバイスは無機デバイスを上回るコスト優位性の可能性を有する。加えて、柔軟性等の有機材料の固有の特性により、該材料は、フレキシブル基板上での製作等の特定用途によく適したものとなり得る。有機光電子デバイスの例は、有機発光ダイオード/デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池及び有機光検出器を含む。OLEDについて、有機材料は従来の材料を上回る性能の利点を有し得る。例えば、有機発光層が光を放出する波長は、概して、適切なドーパントで容易に調整され得る。
【0004】
OLEDはデバイス全体に電圧が印加されると光を放出する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明及びバックライティング等の用途において使用するためのますます興味深い技術となりつつある。数種のOLED材料及び構成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1、特許文献2及び特許文献3において記述されている。
【0005】
リン光性発光分子の1つの用途は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイの業界標準は、「飽和(saturated)」色と称される特定の色を放出するように適合された画素を必要とする。特に、これらの標準は、飽和した赤色、緑色及び青色画素を必要とする。若しくは、OLEDは、白色光を照射するように設計することができる。従来の、白色バックライトからの液晶ディスプレイ発光は、吸収フィルターを用いてフィルタリングされ、赤色、緑色、及び青色発光を生成する。同様の技術は、OLEDでも用いられることができる。白色OLEDは、単一のEMLデバイス又は積層体構造のいずれかであることができる。色は、当技術分野において周知のCIE座標を使用して測定することができる。
【0006】
本明細書において使用される場合、用語「有機」は、有機光電子デバイスを製作するために使用され得るポリマー材料及び小分子有機材料を含む。「小分子」は、ポリマーでない任意の有機材料を指し、且つ「小分子」は実際にはかなり大型であってよい。小分子は、幾つかの状況において繰り返し単位を含み得る。例えば、長鎖アルキル基を置換基として使用することは、「小分子」クラスから分子を排除しない。小分子は、例えばポリマー骨格上のペンダント基として、又は該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。小分子は、コア部分上に構築された一連の化学的シェルからなるデンドリマーのコア部分として役立つこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であってよい。デンドリマーは「小分子」であってよく、OLEDの分野において現在使用されているデンドリマーはすべて小分子であると考えられている。
【0007】
本明細書において使用される場合、「頂部」は基板から最遠部を意味するのに対し、「底部」は基板の最近部を意味する。第1の層が第2の層「の上に配置されている」と記述される場合、第1の層のほうが基板から遠くに配置されている。第1の層が第2の層「と接触している」ことが指定されているのでない限り、第1の層と第2の層との間に他の層があってもよい。例えば、間に種々の有機層があるとしても、カソードはアノード「の上に配置されている」と記述され得る。
【0008】
本明細書において使用される場合、「溶液プロセス可能な」は、溶液又は懸濁液形態のいずれかの液体媒質に溶解、分散若しくは輸送されることができ、且つ/又は該媒質から堆積されることができるという意味である。
【0009】
配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合、「光活性」と称され得る。配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に寄与していないと考えられる場合には「補助」と称され得るが、補助配位子は、光活性配位子の特性を変化させることができる。
【0010】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるように、第1の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位に近ければ、第2のHOMO又はLUMOエネルギー準位「よりも大きい」又は「よりも高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位と比べて負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(あまり負でないIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(あまり負でないEA)に相当する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりもそのような図の頂部に近いように思われる。
【0011】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるように、第1の仕事関数がより高い絶対値を有するならば、第1の仕事関数は第2の仕事関数「よりも大きい」又は「よりも高い」。仕事関数は概して真空準位と比べて負数として測定されるため、これは「より高い」仕事関数が更に負であることを意味する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は、真空準位から下向きの方向に遠く離れているものとして例証される。故に、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に準ずる。
【0012】
OLEDについての更なる詳細及び上述した定義は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献4において見ることができる。
【発明の概要】
【0013】
実施形態によれば、有機発光ダイオード/デバイス(OLED)も提供される。前記OLEDは、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された有機層とを含むことができる。実施形態によれば、前記有機発光デバイスは、消費者製品、電子部品モジュール、及び/又は照明パネルから選択される1以上のデバイスに組み込まれる
【0014】
開示された主題の実施形態は、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された発光層と、前記発光層(emissive)と前記カソードとの間に配置された正孔ブロッキング層とを有する有機発光ダイオード(OLED)を提供することができる。前記発光層は、リン光ドーパントを含むことができる。前記リン光ドーパントは、PMMA(ポリ(メチルメタクリラート))に0.5%ドープした薄膜において室温で600nm以上であるピーク最大波長を有する発光を有する。前記リン光ドーパントの最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーは、-5.1eV以下であることができ、前記正孔ブロッキング層のHOMOのエネルギーは、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.1eV低くてもよい。
【0015】
前記リン光ドーパントのピーク最大波長は、610nm以上、620nm以上、630nm以上、650nm以上、700nm以上、750nm以上、又は800nm以上であることができる。
【0016】
前記OLEDは、前記発光層上に配置された前記正孔ブロッキング層を有することができる。
【0017】
前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーは、-5.2eV以下、-5.3eV以下、又は-5.4eV以下であることができる。前記正孔ブロッキング層のHOMOのエネルギーは、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.2eV低くてもよい、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.3eV低くてもよい、又は前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.4eV低くてもよい。
【0018】
前記正孔ブロッキング層は、式Iの化合物を含む下記の1以上であることができる。
【化1】
式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、モノから最大許容置換を表してもよい、又は無置換を表してもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素又は重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及び/又はこれらの組合せであってもよい。Yは、O、S、Se、NAr
4、CAr
4Ar
5、及びSiAr
4Ar
5であってもよい。Ar
1~Ar
5は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、及び/又はこれらの組合せから選択されてもよく、Lは、直接結合又は少なくとも1つの芳香族環を含むリンカーであってもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、又はアリール、ヘテロアリール、及び/又はこれらの組合せ等の置換基であってもよい。Yは、O、S、及び/又はNAr
4であってもよい。幾つかの実施形態においては、式Iの化合物は、前記正孔ブロッキング層における唯一の化合物であることができる。
【0019】
式Iの化合物は、下記の1以上であることができる。
【化2】
【0020】
前記リン光ドーパントは、室温でデバイスにおいて三重項励起状態から基底一重項状態へ発光することができる。前記リン光ドーパントは、金属-炭素結合を有する金属配位錯体であることができる。前記金属は、Ir、Os、Pt、Pd、Ag、Au、又はCuであることができる。前記金属配位錯体は、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及び/又はトリアジンの化学的部分を有する配位子を含むことができる。前記金属配位錯体は、M(L
1)
x(L
2)
y(L
3)
zの式を有することができ、L
1、L
2、及びL
3は、同じでも異なっていてもよく、xは、1、2、又は3であり、yは、0、1、又は2であり、zは、0、1、又は2であり、x+y+zは、前記金属Mの酸化状態であり、L
1、L
2、及びL
3は、それぞれ独立して、下記から選択されることができ、
【化3】
【化4】
L
2及びL
3はまた、下記:
【化5】
であることができ、Y
1~Y
13は、それぞれ独立して、炭素及び窒素から選択され、Y’は、BR
e、NR
e、PR
e、O、S、Se、C=O、S=O、SO
2、CR
eR
f、SiR
eR
f、及びGeR
eR
fの少なくとも1つであってもよく、R
e及びR
fは、任意に縮合又は結合して環を形成してもよく、R
a、R
b、R
c、及びR
dは、それぞれ独立して、モノ置換から置換の最大可能数を表してもよい、又は無置換を表してもよく、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、及びR
fは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せから選択され、R
a、R
b、R
c、及びR
dの任意の2つの隣接する置換基は、任意に縮合又は結合し、環を形成する又は多座配位子を形成する。
【0021】
前記金属配位錯体は、Ir(LA)3、Ir(LA)(LB)2、Ir(LA)2(LB)、Ir(LA)2(LC)、又はIr(LA)(LB)(LC)の式を有することができ、LA、LB、及びLCは、互いに異なる。前記金属配位錯体は、Pt(LA)(LB)の式を有することができ、LA及びLBは、同じでも異なっていることもでき、LA及びLBは、任意に結合し、四座配位子を形成してもよい。
【0022】
前記金属配位錯体は、Ir(L
A)
2(L
C)の式を有することができ、L
Aは、下記から選択され、
【化6】
L
Cは、下記:
であり、R
A及びR
Bは、それぞれ独立して、モノ置換から置換の最大可能数を表してもよい、又は無置換を表してもよい。R
A及びR
Bは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せから選択されてもよい。R
A及びR
Bの任意の2つの隣接する置換基は、任意に縮合又は結合して環を形成してもよい、又は多座配位子を形成してもよい。
【0023】
前記金属配位錯体は、下記から選択されることができる。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
前記金属配位錯体は、四座配位子を有するPt錯体であることができる。前記四座配位子は、(2つのアニオン性C、2つの中性N);(1つのアニオン性C、1つのカルベンC、1つの中性N、及び1つのアニオン性N);(2つのアニオン性C、1つのカルベンC、1つの中性N);(1つのアニオン性C、1つのアニオン性N、2つの中性N);(1つのアニオン性C、1つのアニオン性O、2つの中性N);(2つのカルベンC、2つのアニオン性N)から選択される4つの配位原子を有することができる。前記電子ブロッキング層は、式IIの化合物を有することができる。
【化12】
式中、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、モノから最大許容置換を表してもよい、又は無置換を表してもよく、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、水素であってもよい、又は重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及び/又はこれらの組合せから選択される置換基であってもよく、Ar
5及びAr
6は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、及び/又はこれらの組合せから選択されてもよい。R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、水素であってもよい、又はアリール、ヘテロアリール、及び/又はこれらの組合せから選択される置換基であってもよい。
【0024】
開示された主題の実施形態においては、前記デバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、メディカルモニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全又は部分透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、タブレット、ファブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ウェアラブルデバイス、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ビューファインダー、2インチ以下の主対角線の作用面積を有するマイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、バーチャルリアリティ又は拡張現実ディスプレイ、車両、共に並べた多重ディスプレイを含むビデオウォール(video wall)、劇場又はスタジアムのスクリーン、及び看板から選択される少なくとも1つのタイプであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【0026】
【
図2】
図2は、別の電子輸送層を有さない、反転された有機発光デバイスを示す。
【0027】
【
図3】
図3は、開示された主題の実施形態に係る例示的なデバイス構造を示す。
【0028】
【
図4】
図4は、開示された主題の実施形態に係るOLED(有機発光ダイオード)デバイスに用いられる例示的な材料を示す。
【0029】
【
図5】
図5は、開示された主題の実施形態に係る例示的なPHOLED(リン光有機発光ダイオード)構造のエネルギー準位を示す。
【0030】
【
図6】
図6は、開示された主題の実施形態に係るRD1発光体及びRD2発光体を有するデバイスに関する外部量子効率(EQE)対電流密度のグラフを示す。
【0031】
【
図7】
図7は、開示された主題の実施形態に係るデバイス材料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
概して、OLEDは、アノード及びカソードの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードが正孔を注入し、カソードが電子を有機層(複数可)に注入する。注入された正孔及び電子は、逆帯電した電極にそれぞれ移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が緩和した際に、光電子放出機構を介して放出される。幾つかの事例において、励起子はエキシマー又はエキサイプレックス上に局在し得る。熱緩和等の無輻射機構が発生する場合もあるが、概して望ましくないとみなされている。
【0033】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号において開示されている通り、その一重項状態から光を放出する発光分子(「蛍光」)を使用していた。蛍光発光は、概して、10ナノ秒未満の時間枠で発生する。
【0034】
ごく最近では、三重項状態から光を放出する発光材料(「リン光」)を有するOLEDが実証されている。参照によりその全体が組み込まれる、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、395巻、151~154、1998;(「Baldo-I」)及びBaldoら、「Very high-efficiency green organic light emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、3号、4~6(1999)(「Baldo-II」)。リン光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号5~6段において更に詳細に記述されている。
【0035】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含み得る。カソード160は、第1の導電層162及び第2の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6~10段において更に詳細に記述されている。
【0036】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板-アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5、844、363号において開示されている。p-ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、50:1のモル比でm-MTDATAにF4-TCNQをドープしたものである。発光材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n-ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を有するMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。保護層についての記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において見ることができる。
【0037】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることができる。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、幾つかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0038】
図1及び
図2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本発明の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。1つの実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び
図2に関して記述されている異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0039】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び
図2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号において記述されているメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号において記述されているくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0040】
本明細書中に開示される幾つかの実施形態においては、それぞれ
図1及び
図2に示される発光層135及び発光層220等の発光層又は材料は、量子ドットを含むことができる。明示的に、又は当業者の理解に応じて文脈によって反対に示されない限り、本明細書中に開示される「発光層」又は「発光材料」は、量子ドット又は相当の構造を含む有機発光材料及び/又は発光材料を含むことができる。このような発光層は、別の発光材料又は他の発光体によって放出された光を変換する量子ドット材料のみを含むことができる、又は前記別の発光材料又は他の発光体も含むことができる、又は電流の印加から直接光そのものを放出することができる。同様に、色変換層、カラーフィルター、アップコンバージョン層又は構造、又はダウンコンバージョン層又は構造は、量子ドットを含む材料を含むことができるが、そのような層は、本明細書中で開示される「発光層」と見なされないことがある。一般に、「発光層」又は材料は、初期光を発するものであり、デバイス内で初期光を放出することはないが、発光層によって放出される初期光(initial light)に基づいて、異なるスペクトル内容の変更された光を再放出することができるカラーフィルターや他の色変換層等の他の層によって変換されることができる。
【0041】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号及び同第6,087,196号において記述されているもの等の熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,431,968号において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸着を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及びOVJD等の堆積法の幾つかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、小分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3~20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける小分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0042】
本発明の実施形態に従って製作されたデバイスは、バリア層を更に含んでいてよい。バリア層の1つの目的は、電極及び有機層を、水分、蒸気及び/又はガス等を含む環境における有害な種への損傷性暴露から保護することである。バリア層は、基板、電極の上、下若しくは隣に、又はエッジを含むデバイスの任意の他の部分の上に堆積し得る。バリア層は、単層又は多層を含んでいてよい。バリア層は、種々の公知の化学気相堆積技術によって形成され得、単相を有する組成物及び多相を有する組成物を含み得る。任意の適切な材料又は材料の組合せをバリア層に使用してよい。バリア層は、無機若しくは有機化合物又は両方を組み込み得る。好ましいバリア層は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,968,146号、PCT特許出願第PCT/US2007/023098号及び同第PCT/US2009/042829号において記述されている、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物を含む。「混合物」とみなされるためには、バリア層を含む前記のポリマー及び非ポリマー材料は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積されるべきである。非ポリマー材料に対するポリマー材料の重量比は、95:5から5:95の範囲内となり得る。ポリマー材料及び非ポリマー材料は、同じ前駆体材料から作製され得る。一例において、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物は、ポリマーケイ素及び無機ケイ素から本質的になる。
【0043】
本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、種々の電気製品又は中間部品に組み込まれることができる多種多様な電子部品モジュール(又はユニット)に組み込まれることができる。このような電気製品又は中間部品としては、エンドユーザーの製品製造者によって利用されることができるディスプレイスクリーン、照明デバイス(離散的光源デバイス又は照明パネル等)が挙げられる。このような電子部品モジュールは、駆動エレクトロニクス及び/又は電源を任意に含むことができる。本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、組み込まれた1つ以上の電子部品モジュール(又はユニット)を有する多種多様な消費者製品に組み込まれることができる。OLEDの有機層に本開示の化合物を含むOLEDを含む消費者製品が開示される。このような消費者製品は、1つ以上の光源及び/又は1つ以上のある種の表示装置を含む任意の種類の製品を含む。このような消費者製品の幾つかの例としては、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、メディカルモニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全又は部分透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、タブレット、ファブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDAs)、ウェアラブルデバイス、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ビューファインダー、マイクロディスプレイ(対角で2インチ未満のディスプレイ)、3-Dディスプレイ、バーチャルリアリティ又は拡張現実ディスプレイ、車両、共に並べた多重ディスプレイを含むビデオウォール(video walls)、劇場又はスタジアムのスクリーン、及び看板を含む。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む種々の制御機構を使用して、本発明に従って製作されたデバイスを制御することができる。デバイスの多くは、18Cから30C、より好ましくは室温(20C~25C)等、ヒトに快適な温度範囲内での使用が意図されているが、この温度範囲外、例えば、-40C~+80Cで用いることもできる。
【0044】
本明細書において記述されている材料及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有し得る。例えば、有機太陽電池及び有機光検出器等の他の光電子デバイスが、該材料及び構造を用い得る。より一般的には、有機トランジスタ等の有機デバイスが、該材料及び構造を用い得る。
【0045】
開示された主題の実施形態は、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された発光層と、前記発光層と前記カソードとの間に配置された正孔ブロッキング層と、を有する有機発光ダイオード(OLED)を提供することができる。前記発光層は、リン光ドーパントを含むことができる。前記リン光ドーパントは、PMMA(ポリ(メチルメタクリラート))に0.5%ドープした薄膜において室温で600nm以上であるピーク最大波長を有する発光を有することができる。前記リン光ドーパントの最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーは、-5.1eV以下であることができ、前記正孔ブロッキング層のHOMOのエネルギーは、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.1eV低くてもよい。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、前記発光層の上に配置された前記正孔ブロッキング層を有することができる。
【0046】
前記リン光ドーパントのピーク最大波長は、610nm以上、620nm以上、630nm以上、650nm以上、700nm以上、750nm以上、又は800nm以上であることができる。
【0047】
前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーは、-5.2eV以下、-5.3eV以下、又は-5.4eV以下であることができる。前記正孔ブロッキング層のHOMOのエネルギーは、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.2eV低くてもよい、前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.3eV低くてもよい、又は前記リン光ドーパントのHOMOのエネルギーよりも少なくとも0.4eV低くてもよい。
【0048】
前記正孔ブロッキング層は、式Iの化合物を含む下記の1以上であることができる。
【化13】
式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、モノから最大許容置換を表してもよい、又は無置換を表してもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素又は重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及び/又はこれらの組合せであってもよい。Yは、O、S、Se、NAr
4、CAr
4Ar
5、SiAr
4Ar
5、フルオレン(C-Ar
1Ar
2)、及び/又はケイ素(Si-Ar
1Ar
2)であってもよく、Ar
1及びAr
2は、同じ又は異なるアリール基であってもよい。Ar
1~Ar
5は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、及び/又はこれらの組合せから選択されてもよく、Lは、直接結合又は少なくとも1つの芳香族環を含むリンカーであってもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、又はアリール、ヘテロアリール、及び/又はこれらの組合せ等の置換基であってもよい。Yは、O、S、及び/又はNAr
4であってもよい。幾つかの実施形態においては、式Iの化合物は、前記正孔ブロッキング層における唯一の化合物であることができる。
【0049】
前記式Iの化合物は、下記の1以上であることができる。
【化14】
【0050】
幾つかの実施形態においては、前記式Iの化合物は、下記の1以上であることができる。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【0051】
前記リン光ドーパントは、室温でデバイスにおいて三重項励起状態から基底一重項状態へ発光することができる。前記リン光ドーパントは、金属-炭素結合を有する金属配位錯体であることができる。前記金属は、Ir、Os、Pt、Pd、Ag、Au、又はCuであることができる。前記金属配位錯体は、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及び/又はトリアジンの化学的部分を有する配位子を含むことができる。前記金属配位錯体は、M(L
1)
x(L
2)
y(L
3)
zの式を有することができ、L
1、L
2、及びL
3は、同じでも異なっていてもよく、xは、1、2、又は3であり、yは、0、1、又は2であり、zは、0、1、又は2であり、x+y+zは、前記金属Mの酸化状態であり、L
1、L
2、及びL
3は、それぞれ独立して、下記から選択されることができ、
【化28】
【化29】
L
2及びL
3はまた、下記:
【化30】
であることができ、Y
1~Y
13は、それぞれ独立して、炭素及び窒素から選択され、Y’は、BR
e、NR
e、PR
e、O、S、Se、C=O、S=O、SO
2、CR
eR
f、SiR
eR
f、及びGeR
eR
fの少なくとも1つであってもよく、R
e及びR
fは、任意に縮合又は結合して環を形成してもよく、R
a、R
b、R
c、及びR
dは、それぞれ独立して、モノ置換から置換の最大可能数を表してもよい、又は無置換を表してもよく、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、及びR
fは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せから選択され、R
a、R
b、R
c、及びR
dの任意の2つの隣接する置換基は、任意に縮合又は結合し、環を形成する又は多座配位子を形成する。
【0052】
前記金属配位錯体は、Ir(LA)3、Ir(LA)(LB)2、Ir(LA)2(LB)、Ir(LA)2(LC)、又はIr(LA)(LB)(LC)の式を有することができ、LA、LB、及びLCは、互いに異なる。前記金属配位錯体は、Pt(LA)(LB)の式を有することができ、LA及びLBは、同じでも異なっていることもでき、LA及びLBは、任意に結合し、四座配位子を形成してもよい。
【0053】
前記金属配位錯体は、Ir(L
A)
2(L
C)の式を有することができ、L
Aは、下記から選択される。
【化31】
L
Cは、下記:
【化32】
であり、R
A及びR
Bは、それぞれ独立して、モノ置換から置換の最大可能数を表してもよい、又は無置換を表してもよい。R
A及びR
Bは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組合せから選択されてもよい。R
A及びR
Bの任意の2つの隣接する置換基は、任意に縮合又は結合して環を形成してもよい、又は多座配位子を形成してもよい。
【0054】
幾つかの実施形態においては、前記金属配位錯体は、下記から選択されることができる。
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【0055】
前記金属配位錯体は、四座配位子を有するPt錯体であることができる。前記四座配位子は、(2つのアニオン性C、2つの中性N);(1つのアニオン性C、1つのカルベンC、1つの中性N、及び1つのアニオン性N);(2つのアニオン性C、1つのカルベンC、1つの中性N);(1つのアニオン性C、1つのアニオン性N、2つの中性N);(1つのアニオン性C、1つのアニオン性O、2つの中性N);(2つのカルベンC、2つのアニオン性N)から選択される4つの配位原子を有することができる。
【0056】
前記電子ブロッキング層は、式IIの化合物を有することができる。
【化38】
式中、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、モノから最大許容置換を表してもよい、又は無置換を表してもよく、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、水素であってもよい、又は重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボン酸、エーテル、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及び/又はこれらの組合せから選択される置換基であってもよく、Ar
5及びAr
6は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、及び/又はこれらの組合せから選択されてもよい。R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、水素であってもよい、又はアリール、ヘテロアリール、及び/又はこれらの組合せから選択される置換基であってもよい。
【0057】
前記電子ブロッキング層は、下記から選択される化合物を含むことができる。
【化39】
【化40】
【化41】
【0058】
幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、可撓性があること、丸めることができること、折り畳むことができること、伸ばすことができること、曲げることができることからなる群から選択される1つ以上の特性を有する。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、透明又は半透明である。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、カーボンナノチューブを含む層を更に含む。
【0059】
幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、遅延蛍光発光体を含む層を更に含む。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、RGB画素配列又は白色及びカラーフィルター画素配列を含む。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、モバイルデバイス、ハンドヘルドデバイス、又はウェアラブルデバイスである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、10インチ未満の対角線又は50平方インチ未満の面積を有するディスプレイパネルである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、少なくとも10インチの対角線又は少なくとも50平方インチの面積を有するディスプレイパネルである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、照明パネルである。
【0060】
発光領域の幾つかの実施形態においては、前記発光領域は、ホストを更に含む。
【0061】
幾つかの実施形態においては、前記化合物は、発光ドーパントであることができる。幾つかの実施形態においては、前記化合物は、リン光、蛍光、熱活性化遅延蛍光、即ちTADF(E型遅延蛍光とも呼ばれる)、三重項-三重項消滅、又はこれらの過程の組合せを介して、発光を生成することができる。
【0062】
本明細書中に開示される前記OLEDは、消費者製品、電子部品モジュール、及び照明パネルの1つ以上に組み込まれることができる。前記有機層は、発光層であることができ、幾つかの実施形態においては、前記化合物は、発光ドーパントであることができ、他の実施形態においては、前記化合物は、非発光ドーパントであることができる。
【0063】
前記有機層は、ホストを含むこともできる。幾つかの実施形態においては、2つ以上のホストが好ましい。幾つかの実施形態においては、使用される前記ホストは、a)双極性(bipolar)材料、b)電子輸送材料、c)正孔輸送材料、又はd)電荷輸送の役割がほとんどないワイドバンドギャップ材料であることができる。幾つかの実施形態においては、前記ホストは、金属錯体を含むことができる。
他の材料との組合せ
【0064】
有機発光デバイス中の特定の層に有用として本明細書において記述されている材料は、デバイス中に存在する多種多様な他の材料と組み合わせて使用され得る。例えば、本明細書において開示されている発光性ドーパントは、多種多様なホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極、及び存在し得る他の層と併せて使用され得る。以下で記述又は参照される材料は、本明細書において開示されている化合物と組み合わせて有用となり得る材料の非限定的な例であり、当業者であれば、組み合わせて有用となり得る他の材料を特定するための文献を容易に閲覧することができる。
【0065】
本明細書中に開示されている様々な発光層及び非発光層、並びに配置のために、様々な材料を用いることができる。好適な材料の例は、その開示内容の全体を参照によって援用する、米国特許出願2017/0229663号に開示される。
伝導性(導電性)ドーパント:
【0066】
電荷輸送層は、伝導性ドーパントでドープされ、電荷キャリアの密度を大きく変え、それによりその伝導性を変えることとなる。伝導性は、マトリックス材料中の電荷キャリアを生成することで、又はドーパントのタイプに応じて増加され、半導体のフェルミ準位における変化も達成することができる。正孔輸送層は、p型伝導性ドーパントでドープされることができ、n型伝導性ドーパントは、電子輸送層中に用いられる。
HIL/HTL:
【0067】
本発明において使用される正孔注入/輸送材料は特に限定されず、その化合物が正孔注入/輸送材料として典型的に使用されるものである限り、任意の化合物を使用してよい。
EBL:
【0068】
電子ブロッキング層(EBL)は、発光層から出る電子及び/又は励起子の数を減らすために使用されることができる。デバイス中のそのようなブロッキング層の存在は、ブロッキング層を欠く同様のデバイスと比較して、大幅に高い効率及び/又はより長い寿命をもたらし得る。また、ブロッキング層を使用して、OLEDの所望の領域に発光を制限することもできる。幾つかの実施形態においては、EBL材料は、EBLインターフェースに最も近接した発光体よりも高いLUMO(真空準位により近い)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。幾つかの実施形態においては、EBL材料は、EBLインターフェースに最も近接したホストの1つ以上よりも高いLUMO(真空準位により近い)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。1つの態様においては、EBL中に用いられる前記化合物は、下記に記載されるホストの1つとして用いられる、同じ分子又は同じ官能基を含む。
ホスト:
【0069】
本発明の有機ELデバイスの発光層は、発光材料として少なくとも金属錯体を含むことが好ましく、前記金属錯体をドーパント材料として用いたホスト材料を含むことができる。前記ホスト材料としては特に限定されず、前記ホストの三重項エネルギーがドーパントのものよりも大きければ、任意の金属錯体又は有機化合物が用いられることができる。いずれのホスト材料も、三重項の基準が満たされる限り、任意のドーパントと共に用いられることができる。
HBL:
【0070】
正孔ブロッキング層(HBL)を使用して、発光層から出る正孔及び/又は励起子の数を低減させることができる。デバイス中のそのようなブロッキング層の存在は、ブロッキング層を欠く同様のデバイスと比較して大幅に高い効率及び/又はより長い寿命をもたらし得る。また、ブロッキング層を使用して、OLEDの所望の領域に発光を制限することもできる。幾つかの実施形態においては、HBL材料は、HBLインターフェースに最も近接した発光体よりも低いHOMO(真空準位から更に離れて)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。幾つかの実施形態においては、HBL材料は、HBLインターフェースに最も近接したホストの1つ以上よりも低いHOMO(真空準位から更に離れて)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。
ETL:
【0071】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送することができる材料を含み得る。電子輸送層は、真性である(ドープされていない)か、又はドープされていてよい。ドーピングを使用して、伝導性を増強することができる。ETL材料の例は特に限定されず、電子を輸送するために典型的に使用されるものである限り、任意の金属錯体又は有機化合物を使用してよい。
電荷発生層(CGL)
【0072】
タンデム型、又は積層型のOLED中で、CGLは、性能において重要な役割を果たし、それぞれ、電子及び正孔の注入ためのn-ドープ層及びp-ドープ層からなる。電子及び正孔は、前記CGL及び電極から供給される。前記CGL中の消費された電子及び正孔は、それぞれカソード及びアノードから注入された電子及び正孔によって再び満たされ、その後バイポーラ電流が徐々に安定した状態に達する。典型的なCGL材料は、輸送層で用いられるn型及びp型伝導性ドーパントを含む。
実験
【0073】
深いHOMO発光体は、狭いスペクトル、高いLE/EQE(発光効率/外部量子効率)比、長い寿命、所定量を超えるEQE値を有するPHOLED(リン光有機発光ダイオード)発光体であることができる。例えば、前記深いHOMO発光体の狭いスペクトルは、50nm未満、45nm未満、40nm未満等の半値全幅(FHWM)値を有することができる。狭いエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルのために、670nmを超える不可視範囲でのフォトン放出の量は、従来の広い赤色発光体と比較して最小限にすることができるので、フォトン損失が少なくなることができる。放出されたフォトンの殆どは、可視範囲にあることができ、狭いEL発光体における同じEQEでより高い輝度効率を提供することができる。
【0074】
多くの狭いEL発光体は、広い発光体のHOMO準位(例えば、約-5.1eV)と比較すると、より深いHOMO準位(例えば、約-5.3eV)を有することができる。これにより、デバイス内の発光体の異なる挙動を引き起こすことができる。開示された主題の実施形態は、深いHOMO赤色発光体等、深いHOMO発光体のための効率的なデバイス構造構築のための異なるアプローチを提供することができる。
【0075】
深いHOMO発光体の多くのファミリーは、狭いスペクトル、高いLE/EQE比、長い寿命、及び潜在的に非常に高いEQEを有する望ましいPHOLED性能を有することができる。狭いELスペクトルのために、670nmを超える不可視範囲でのフォトン放出の量は、従来の広い赤色発光体と比較して最小限にすることができるので、フォトン損失が少なくなる。放出されたフォトンの殆どは、可視範囲にあることができるので、狭いEL発光体における同じEQEでより高い輝度効率を提供することができる。
【0076】
多くの狭いEL発光体は、広い発光体のHOMO準位(例えば、約-5.1eV)と比較すると、より深いHOMO準位(例えば、約-5.3eV)を有することができる。これにより、デバイス内の発光体の異なる挙動を引き起こすことができ、深いHOMO発光体のための異なるデバイス構造構築を用いることができる。
【0077】
狭い赤色発光体に加えて、望ましい性能と深いHOMO(例えば、>5.2eV)を有する緑色発光体のファミリーがある場合があり、同様のデバイス構造構築を用いることができる。
【0078】
開示された主題の実施形態は、深いHOMO発光体のための効率的なデバイス構造の設計を提供する。同じデバイス構造における発光体RD1と発光体RD2との間で、デバイスの性質に違いがある場合がある(例えば、
図6及び表2に示されるように)。違いは、EMLにおける再結合領域(RZ)の位置に起因することができる。正孔ブロッキング層(HBL)は、深いHOMOのRD1発光体デバイスの効率に影響を及ぼすことができ、一方電子ブロッキング層(EBL)は、効率に影響を及ぼすことができない(例えば、表2の実施例1、実施例2、実施例3、及び実施例4に示されるように)。発光体RD2について、HBLによるデバイス効率の違いはないことがあるが、EBLによる違いがある場合がある(例えば、表2の実施例5、実施例6、実施例7、及び実施例8を参照)。
【0079】
RD1デバイスは、EML(発光層)のHBL側近くに再結合領域を有することができる。HBLは、励起子消失(quenching)とETL(電子輸送層)への電子漏れを防ぐことにより、RD1デバイスの効率を改善させることができる。同じ理由で、RD2デバイスは、EBL近接に再結合領域(RZ)を有することができ、EBLは、励起子消失とHTL(正孔輸送層)への正孔漏れを防ぐことにより、デバイスの効率を改善させることができる。深いHOMOのRD1は、正孔の捕獲が少ないことがあるので、EMLのHBL側への改善された正孔輸送を提供することができる。対照に、参照の浅いHOMOのRD2は、より多くの正孔の捕獲があるので、EMLを通る十分な正孔輸送を提供しないことがある。RZは、EBLの近接になるように局在化させることができる。
【0080】
開示された主題の実施形態は、改善されたデバイスの効率を提供するために、深いHOMO発光体とHBLの組合せを提供することができる。輝度の増加に伴う効率のロールオフは、リン光デバイスにとって問題になることあり、より高い輝度で増加したデバイスの効率を提供するために、効率のロールオフの低減は、重要であることがある。EQEロールオフは、同じデバイスにおける1ma/cm
2におけるEQEに対する10mA/cm
2におけるEQEの比率として算出されることができる(例えば、表2の最後の列を参照)。表2及び
図6におけるデータは、HBLがRD1の深いHOMO発光体における効率的なロールオフの低減を提供することができ(例えば、表2における実施例1対実施例2、及び実施例3対実施例4を参照)、RD2発光体を有するデバイスにおいてロールオフ効果がない、又は最小限のロールオフ効果しか有しないことを示す(例えば、表2における実施例6対実施例5、及び実施例7対実施例8を参照)。
【0081】
実施例デバイスはいずれも高真空下(<10-7Torr)における熱蒸着で作製した。アノード電極は、1,150Åの酸化インジウムスズ(ITO)であった。カソードは、10ÅのLiq(8-ヒドロキシキノリンリチウム)と1,000ÅのAlとからなった。デバイスはいずれも、作製後直ちに、窒素グローブボックス(<1ppmのH2O及びO2)中で、エポキシ樹脂で封止したガラス製の蓋で封入し、水分ゲッターをパッケージに入れた。デバイス実施例の有機積層体は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として100ÅのHAT-CN(ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル)と;正孔輸送層(HTL)として400Å又は450ÅのHTM(正孔輸送材料)と;電子ブロッキング層(EBL)として50ÅのEBM(電子ブロッキング材料)(もしあれば)と;赤色ホストH1及び3%のRD1又はRD2赤色発光体を含む400Åの発光層(EML)と;正孔ブロッキング層(HBL)として50ÅのHBM(もしあれば)と;ETLとして、35%のETMでドープした300Å(HBLを有する)又は350Å(HBLを有さない)のLiq(8-ヒドロキシキノリンリチウム)と、を順次含んだ。
【0082】
図3は、開示された主題の実施形態に係るデバイス構造を示す。デバイスは、カソードと、電子注入層(electron ejection layer)(EIL)と、電子輸送層(ETL)と、任意の正孔ブロッキング層(HBL)と、発光層(EML)と、任意の電子ブロッキング層(EBL)と、正孔輸送層(HTL)と、正孔注入層(HIL)と、アノードと、を含むことができる。
【0083】
使用するEBLを含まない場合、HTLの厚みは50Å厚く、HBLを含まない場合、ETLの厚みは50Å厚かったので、合計のデバイスの厚みは同じままで、異なる層の厚みによって起こり得るデバイス性能の歪みを防止した。
【0084】
表1は、デバイス層の厚み及び材料を示す。デバイス材料の化学構造は、
図4に示される。
【化42】
【0085】
製造時に、デバイスは、EL及びJVL(電流密度、電圧、及び輝度)を試験した。デバイスの性能データを表2に纏める。
【化43】
【0086】
デバイスの性能を理解するために、材料のHOMO-LUMO及びT1エネルギー準位が使用されている。エネルギー準位は、溶液サイクリックボルタンメトリー及び微分パルスボルタンメトリーによって決定された。無水ジメチルホルムアミド溶媒及び支持電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファートを用いて、CH機器モデル6201Bポテンショスタットを用いて、測定を実施した。ガラス状炭素、白金線、及び銀線を、それぞれ作用電極、対電極、参照電極として使用した。電気化学ポテンシャルは、内部フェロセン-フェロセニウム酸化還元対(Fc/Fc+)を参照にして、微分パルスボルタンメトリーからピーク電位差を測定した。対応する最高被占分子軌道(HOMO)エネルギーと最低空分子軌道(LUMO)エネルギーは、フェロセンに対する陽イオン及び陰イオンの酸化還元電位を参照して決定した(4.8eV対真空)。即ち、
HOMO=-(CV ox)-4.8(eV)
LUMO=-(CV red)-4.8(eV)
【0087】
T1準位を決定するために、1mg未満の物質を2mLの2-メチルテトラヒドロフラン溶媒に超音波処理して溶解した。2ミクロンフィルターに通して溶液を石英管に濾過した。管をゴム製セプタムで密閉し、酸素によるクエンチを防ぐために、気泡を窒素で脱気した。リン光スペクトルは、77K付近の低温でキセノンランプを装備したHoriba Jobin Yvon Fluorolog-3システムで実施した。T1は、77KにおけるPLを用いて決定される。即ち、
T1(eV)=1240/三重項波長[nm]
【0088】
HOMO-LUMO準位及びT1準位は、下記表3に示され、
図5は、開示された主題の実施形態に係るデバイス材料のHOMO-LUMO準位を示す。
【化44】
【0089】
HBMのための算出されたエネルギー準位は、以下に示され、化合物Hとの類似点を有することができる。
【化45】
【0090】
同じデバイス構造内の発光体RD1及び発光体RD2間のデバイスの性質に違いがある場合があり(例えば、
図6及び表2を参照)、EMLにおける再結合領域(RZ)の位置に基づくことができる。HBLは、深いHOMOのRD1発光体デバイスの効率に影響を及ぼすことができ、一方EBLは効率に影響を及ぼすことができない(例えば、表2の実施例1、実施例2、実施例3、及び実施例4を参照)。
【0091】
これに対して、参照発光体RD2においては、HBLによるデバイス効率の違いがないことがあるが、EBLによる違いがある場合がある(例えば、表2に示される実施例5、実施例6、実施例7、及び実施例8を参照)。RD1デバイスは、EMLのHBL側近接に再結合領域を有することができ、HBLは、励起子消失とETLへの電子漏れを防ぐことによってRD1デバイスの効率を改善することができる。RD2デバイスがEBL近接に再結合領域RZを有する場合、EBLは、励起子消失とHTLへの正孔漏れを防止することで、デバイスの効率を改善することができる。
【0092】
深いHOMOのRD1は、より少ない正孔の捕獲及び/又は改善された正孔輸送を示すことができ、EMLのカソード側近傍でより多くの励起子数を提供することができる。これに対して、参照の浅いHOMOのRD2は、より強い正孔捕獲及び/又はEMLを通した正孔輸送がより少なくなり、EBL近接に局在化されたRZを提供することができる。開示された主題の実施形態においては、深いHOMO発光体とHBLの組合せにより、望ましいデバイス効率を提供することができる。
【0093】
輝度の増加に伴う効率のロールオフは、リン光デバイスにとって問題になることある。効率のロールオフの低減は、より高い輝度でより高いデバイス効率を提供することができる。EQEのロールオフは、同じデバイスにおける1mA/cm2のEQEに対する10mA/cm2におけるEQEの比率として算出された(例えば、表2における最後の列を参照)。表2及び
図6におけるデータは、HBLが、RD1の深いHOMO発光体における効率的なロールオフの低減を提供することを示し(例えば、表2における実施例1対実施例2、及び実施例3対実施例4を参照)、RD2発光体を備えたデバイスにおけるロールオフ効果がない、又は最小限のロールオフ効果しか有さない(例えば、表2に示される実施例6対実施例5、及び実施例7対実施例8を参照)。
【0094】
正孔輸送層(HTM)は、良好な正孔輸送特性を有することができる(例えば、HOMO 5.16eV)。電子ブロッキング層(EBL)は、HTLへの電子漏れを防ぐための浅いLUMO準位(例えば、1.84eV)、EMLからHTLへの励起子漏れを防ぐのに十分な高いT1エネルギー(例えば、452nm)、及び合理的な正孔輸送特性(例えば、HOMO 5.38eV)を有することができる。
【0095】
開示された主題の実施形態においては、EBLのT1は、発光体のT1よりも高いことがある。より浅いHOMO準位を有する発光体の非存在下で、ホスト(ホスト1)は、EML(例えば、LUMO 2.88eV)を介した電子輸送、及び正孔輸送(例えば、HOMO 5.43eV)を提供することができる。開示された主題の実施形態は、1つ以上のホスト(例えば、単一ホスト、2つのホスト等)を含むことができる。
【0096】
例えば、RD2(HOMO 5.05eV)等の浅いHOMO発光体は、より多くの正孔捕獲を提供でき、RD1(HOMO 5.32eV)等の深いHOMO発光体は、EMLを通してより多くの正孔輸送を提供することができる。これにより、発光体に応じてEMLにおける再結合領域をシフトすることができる。深いHOMO発光体の場合、再結合領域はHBLに向かってシフトすることができる。デバイス効率におけるHBL効果は、RD1の深いHOMO発光体によってより顕著となることができる。RD2は、より多くの正孔捕獲を提供することができ、それによってEMLを通る正孔輸送が少なくなるので、RZは、EBLインターフェースに向かってシフトされることができる。EBLは、RD2発光体デバイスの効率に影響を及ぼすことができる。
【0097】
深いHOMO発光体のためのHOMOは、5.1eV~5.6eVの範囲、より好ましくは5.15eV~5.55eVの範囲、更により好ましくは5.2eV~5.5eVの範囲であることができる。
【0098】
正孔の捕獲は、発光体-ホストHOMOエネルギーギャップの関数であることができる。発光体-ホストHBLエネルギーギャップは、0.15eV未満であることができる。正孔ブロッキング材料(HBM)は、深いHOMO(5.96eV)を有することができ、それによって正孔がETLへ漏れることをブロックすることができ、高いT1エネルギー(例えば、484nm)を有し、ETLへの励起子の漏れを防ぐことができる。開示された主題の実施形態においては、HBLは、5.5eVより深いHOMO準位を有することができる。
【0099】
ETMは、ETLを通ってEMLに向かう電子輸送を提供することができる(例えば、LUMO 2.71eV)。
【0100】
開示された主題のデバイス及び/又は構造における深いHOMO発光体R1とHBLの組合せにより、増加した効率、最小化された効率のロールオフ、及び増加した電力効率を提供することができる。
【0101】
開示された主題の実施形態は、深いHOMOを有する下記のタイプの赤色発光体を提供することができる。
【化46】
【0102】
開示された主題の実施形態は、発光配位子のための深いHOMO赤色配位子構造を提供することができる。
【化47】
【化48】
CF3含有補助配位子は、より深いHOMOを提供することができる。
【化49】
上記は、1つ以上の他の発光配位子と組み合わされ、HOMOを0.1eV~0.15eV(それ以上、複数のCF
3基がある)分シフトすることができる。
【0103】
幾つかの実施形態においては、OLEDは、下記に示される発光体の群から選択される少なくとも1つの発光体を含むことができる。
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【0104】
追加のデバイスデータが得られ、ブロッキング層を有する深いHOMO赤色発光体デバイスの性能の改善を提供することができる化合物のブロッキング層材料及びホストのクラスを示す。深いHOMO発光体RD1及び浅いHOMO発光体RD2を有するデバイスにおいて、2つのホスト、単一のホスト1、及び2つのホスト2:ホスト3(4:1)、並びに3つのブロッキング層材料(例えば、HBL1、HBL2、HBL3)を用いた。両方の発光体は、略同じ彩度を有するが、異なるタイプのエネルギー準位を有する。
【0105】
デバイスの製造は上記と同じであり、
図7は、開示された主題の実施形態に係るデバイス材料を示す。
【0106】
実験データを以下の表4に纏め、デバイスにおけるデバイスEQEとのブロッキング層の相関関係を示す。
【化56】
【0107】
深いHOMOのRD1発光体を有するデバイスのEQEは、BL(ブロッキング層)に影響されることができ、BLを有さないデバイスのEQEに対して約10%高くなることができる。単一のホストの場合、実施例9、実施例10、及び実施例11に示されるように、ブロッキング層構造のEQEは、約20%であることができる。これに対して、実施例12は、BLを有さない参照構造は、約18%のEQEを有することができることを示す。
【0108】
RD1の深いHOMO発光体を有する2つのホストでのデバイスは、同様にBLに影響されることができる。実施例13、実施例14、及び実施例15においては、BL構造は、約24%のEQEを有する。実施例16においては、BL構造を有さないデバイスは、約22%のEQEを有することができる。
【0109】
RD2の浅いHOMO発光体を有するデバイスのEQEは、HBLによって影響されないことができる。単一のホストの実施例17、18、及び19においては、BLデバイスは、BLを有さないデバイスのEQE(例えば、EQEが約24%である実施例20)と同様のEQEを有することができる。実施例21、実施例22、及び実施例23におけるBLを含む2つのホストのデバイスのEQEは、BLを有さない実施例24のデバイスのEQE(例えば、約25%)と同じであることができる。
【0110】
BL材料の種々のクラスが、HOMO発光体と用いられることができる。例えばのBL1、BL2、BL3、及び/又はHBMは、下記の材料のクラス:アルミニウムキノリン錯体、アザ-ジベンゾチオフェン(dibenzothiopene)誘導体、インドロ[2,3-a]カルバゾール誘導体、4,6-二置換ジベンゾチオフェンに属することができる。これらの種々のクラスは、深いHOMO赤色発光体PHOLEDデバイスのためのBL材料として機能することができる。
【0111】
追加のホスト及びブロッキング層のエネルギー準位は、表3において上記に示される。表3は、デバイス実施例で用いられる材料全てのエネルギー準位を示す。
【0112】
本明細書において記述されている種々の実施形態は、単なる一例としてのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば、本明細書において記述されている材料及び構造の多くは、本発明の趣旨から逸脱することなく他の材料及び構造に置き換えることができる。したがって、特許請求されている通りの本発明は、当業者には明らかとなるように、本明細書において記述されている特定の例及び好ましい実施形態からの変形形態を含み得る。なぜ本発明が作用するのかについての種々の理論は限定を意図するものではないことが理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【符号の説明】
【0114】
100 有機発光デバイス
110 基板
115 アノード
120 正孔注入層
125 正孔輸送層
130 電子ブロッキング層
135 発光層
140 正孔ブロッキング層
145 電子輸送層
150 電子注入層
155 保護層
160 カソード
162 第1の導電層
164 第2の導電層
170 バリア層
200 反転させたOLED、デバイス
210 基板
215 カソード
220 発光層
225 正孔輸送層
230 アノード