(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171846
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ポリペプチドの定量化方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20231128BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20231128BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231128BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20231128BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20231128BHJP
C07K 16/26 20060101ALI20231128BHJP
C12N 9/04 20060101ALI20231128BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231128BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231128BHJP
C12N 9/76 20060101ALN20231128BHJP
C12N 9/48 20060101ALN20231128BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N27/62 V
C07K16/28
C07K16/40
C07K16/24
C07K16/26
C12N9/04 Z
C12N15/13
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/68
C12N9/76
C12N9/48
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023164188
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2020538618の分割
【原出願日】2019-01-11
(31)【優先権主張番号】62/617,080
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・モーガン
(72)【発明者】
【氏名】シャオクゥイ・ヂィアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サンプル(例えば、血漿または血清サンプル)中に存在する抗体の一部分を含むポリペプチドの量を定量化するための方法の提供
【解決手段】サンプル中の、操作された突然変異を含む定常領域(例えば、重鎖または軽鎖定常領域)を含む抗体を消化し、消化されたサンプルをマススペクトロメトリーによって分析して、ペプチド断片の量を判定することにより、サンプル中の抗体定常領域の一部分を含むポリペプチドの量を判定する方法。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドの量を定量化するための方法であって、
(a)抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを含むサンプルを消化することであり、ここで、抗体重鎖定常領域の一部分は、操作された突然変異を含み、消化は、5~26アミノ酸長であり操作された突然変異を含む抗体重鎖定常領域に由来するペプチド断片をもたらす、消化することと、
(b)消化されたサンプルをマススペクトロメトリーによって分析して、ペプチド断片の量を判定することにより、サンプル中の抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドの量を判定することと
を含む前記方法。
【請求項2】
ペプチド断片は、メチオニン(M)またはシステイン(C)を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペプチド断片は、グリシン(G)またはセリン(S)が続くアスパラギン(N)を含まない、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
消化されたサンプルをマススペクトロメトリー分析の前に精製および濃縮することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
消化されたサンプルは、固相抽出(SPE)によって精製および濃縮される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
消化されたサンプルは、SISCAPA(安定同位体標準物質および抗ペプチド抗体による捕捉)によって精製および濃縮される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
サンプルは、全血サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、または組織サンプルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
サンプルは、マウス、非ヒト霊長類、またはヒトに由来する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
非ヒト霊長類は、カニクイザルまたはアカゲザルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
サンプルは、少なくとも1種の酵素で消化される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の酵素は、トリプシン、キモトリプシン、グルタミルエンドペプチダーゼ、リジルエンドペプチダーゼ、Asp-N、Arg-C、Glu-C、臭化シアン(CnBr)、またはこれらの組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
マススペクトロメトリーは、液体クロマトグラフィータンデムマススペクトロメトリー分析(LC-MS/MS)である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ポリペプチドは、CH1ドメインを含み、CH1ドメインは、操作された突然変異を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ポリペプチドは、CH2ドメインを含み、CH2ドメインは、操作された突然変異を含
む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ポリペプチドは、CH3ドメインを含み、CH3ドメインは、操作された突然変異を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
抗体重鎖定常領域のCH3ドメインにおける操作された突然変異は、T366Y、T366W、T366S、L368A、T394W、T394S、F405A、F405W、Y407T、Y407V、またはY407Aである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
抗体重鎖定常領域のCH3ドメインにおける操作された突然変異は、Y407Vであり、CH3ドメインは、配列番号6(DGSFFLVS)に示すアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
消化は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)、DGSFFLVSKLTV(配列番号8)、またはGSFFLVSKLTVD(配列番号9)を含むペプチド断片をもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
サンプルは、トリプシンで消化され、該消化は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)からなるペプチド断片をもたらす、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
サンプルは、Asp-Nで消化され、該消化は、アミノ酸配列DGSFFLVSKLTV(配列番号8)からなるペプチド断片をもたらす、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
サンプルは、Glu-Cで消化され、該消化は、アミノ酸配列GSFFLVSKLTVD(配列番号9)からなるペプチド断片をもたらす、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
ポリペプチドは、配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列を含む、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
抗体重鎖定常領域のCH3ドメインにおける操作された突然変異は、N434Sである、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
サンプルは、Glu-Cおよびトリプシンで消化され、該消化は、アミノ酸配列ALHSHYTQK(配列番号11)からなるペプチド断片をもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ポリペプチドは、配列番号2または配列番号3に示すアミノ酸配列を含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドは、抗体、Fc融合タンパク質、またはイムノアドヘシンである、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドは、抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗体は、治療用抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
抗体は、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、または多特異性抗体である、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
抗体は、三重特異性抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
三重特異性抗体は、1つまたはそれ以上の抗原標的または標的タンパク質に特異的に結合する3つの抗原結合部位を形成する4つのポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチドは、式:VL2-L1-VL1-L2-CLによって表される構造を含み;第2のポリペプチド鎖は、式:VH1-L3-VH2-L4-CH1-ヒンジ-CH2-CH3によって表される構造を含み;第3のポリペプチド鎖は、式:VH3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3によって表される構造を含み;第4のポリペプチド鎖は、式:VL3-CLによって表される構造を含み、式中、VL1は、第1の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VL2は、第2の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VL3は、第3の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VH1は、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH2は、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH3は、第3の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;CH1は、免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメインであり;L1、L2、L3、およびL4は、アミノ酸リンカーであり;第1および第2のポリペプチドは、交差する軽鎖-重鎖ペアを形成し;第2のポリペプチド鎖または第3のポリペプチド鎖は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)、DGSFFLVSKLTV(配列番号8)、またはGSFFLVSKLTVD(配列番号9)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
第1のポリペプチドは、配列番号12に示すアミノ酸配列を含み;第2のポリペプチドは、配列番号13に示すアミノ酸配列を含み;第3のポリペプチドは、配列番号14に示すアミノ酸配列を含み、第4のポリペプチドは、配列番号15に示すアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
抗体は、薬物または標識にコンジュゲートされている、請求項27~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
薬物は、化学療法剤、細胞傷害剤、または増殖阻害剤から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
標識は、放射性同位体、蛍光色素、または酵素である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗体は、ヒトIgG抗体である、請求項27~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
IgG抗体は、ヒトIgG1抗体またはヒトIgG4抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗体は、A2AR、APRIL、ATPDアーゼ、BAFF、BAFFR、BCMA、BlyS、BTK、BTLA、B7DC、B7H1、B7H4/VTCN1、B7H5、B7H6、B7H7、B7RP1、B7-4、C3、C5、CCL2/MCP-1、CCL3/MIP-1a、CCL4/MIP-1b、CCL5/RANTES、CCL7/MCP-3、CCL8/mcp-2、CCL11/エオタキシン、CCL15/MIP-1d、CCL17/TARC、CCL19/MIP-3b、CCL20/MIP-3a、CCL21/MIP-2、CCL24/MPIF-2/エオタキシン-2、CCL25/TECK、CCL26/エオタキシン-3、CCR3、CCR4、CD3、CD19、CD
20、CD23/FCER2、CD24、CD27、CD28、CD38、CD39、CD40、CD70、CD80/B7-1、CD86/B7-2、CD122、CD137/41BB、CD137L、CD152/CTLA4、CD154/CD40L、CD160、CD272、CD273/PDL2、CD274/PDL1、CD275/B7H2、CD276/B7H3、CD278/ICOS、CD279/PD-1、CDH1/E-カドヘリン、キチナーゼ、CLEC9、CLEC91、CRTH2、CSF-1/M-CSF、CSF-2/GM-CSF、CSF-3/GCSF、CX3CL1/SCYD1、CXCL12/SDF1、CXCL13、CXCR3、DNGR-1、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1、EGFR、ENTPD1、FCER1A、FCER1、FLAP、FOLH1、Gi24、GITR、GITRL、GM-CSF、Her2、HHLA2、HMGB1、HVEM、ICOSLG、IDO、IFNα、IgE、IGF1R、IL2Rベータ、IL1、IL1A、IL1B、IL1F10、IL2、IL4、IL4Ra、IL5、IL5R、IL6、IL7、IL7Ra、IL8、IL9、IL9R、IL10、rhIL10、IL12、IL13、IL13Ra1、IL13Ra2、IL15、IL17、IL17Rb/IL25、IL18、IL22、IL23、IL25、IL27、IL33、IL35、ITGB4/b4インテグリン、ITK、KIR、LAG3、LAMP1、レプチン、LPFS2、MHCクラスII、NCR3LG1、NKG2D、NTPDアーゼ-1、OX40、OX40L、PD-1H、血小板受容体、PROM1、S152、SISP1、SLC、SPG64、ST2/IL33受容体、STEAP2、Sykキナーゼ、TACI、TDO、T14、TIGIT、TIM3、TLR、TLR2、TLR4、TLR5、TLR9、TMEF1、TNFa、TNFRSF7、Tp55、TREM1、TSLP/IL7Ra、TSLPR、TWEAK、VEGF、VISTA、Vstm3、WUCAM、またはXCR/GPR5/CCXCR1に結合する、請求項27~32および34~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
マウス、非ヒト霊長類、およびヒトにおける抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドの薬物動態試験に使用するための、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月12日に出願された米国仮出願第62/617,080号に基づく優先権の利益を主張し、この米国仮出願の内容全体を、参照によって本明細書に組み入れるものである。
【0002】
ASCIIテキストファイルによる配列表の提出
次のASCIIテキストファイルによる提出物の内容全体を、参照によって本明細書に組み入れる:コンピュータ可読形態(CRF)の配列表(ファイル名:183952028240SEQLIST.txt、記録日:2019年1月11日、サイズ:29KB)。
【0003】
発明の分野
本発明は、サンプル中の操作された突然変異を有する抗体定常領域(またはその一部分)を含むポリペプチドの量を定量化するための方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
抗体などのタンパク質は、増加し続ける治療薬のクラスの代表である。前臨床開発では、治療用タンパク質候補を動物モデルで徹底的な分析にかけ、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、および毒物動態学(TK)の各特性を評価し、安全性プロファイルを評価し、ヒト初回投与試験のための安全な用量を判定する。臨床開発では、治療用タンパク質のPK、PD、およびTK特性を、ヒト対象においてさらに分析する。ヒトにおける試験から得たデータは、治療用タンパク質の安全性および効能を評価するため、投薬スケジュールを確立するため、ならびに/または患者の部分集団における投与量を調節するために使用される。したがって、治療用タンパク質を定量化するための方法は、前臨床サンプルおよび臨床サンプルの両方において、信頼度および感度の高いものであることが重要である。
【0005】
リガンド結合アッセイ(LBA)は、感度が高く、コストが低く、スループットが高いため、治療用タンパク質の定量化に従来用いられてきた。これらの利点にもかかわらず、LBAは、限定された線形ダイナミックレンジを有し、代謝物/類似体間の交差反応性のリスクを伴い、マルチプレックス化が困難である。さらに、新規の治療用タンパク質のためにLBAで使用する新たな抗体を開発することは、多大なコストおよび労力の両方を要する。
【0006】
液体クロマトグラフィータンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)は、治療用タンパク質の数量化のための有望なアッセイプラットフォームとして浮上している。前臨床動物試験において治療用タンパク質の生物分析のために使用されるLC-MS/MSアッセイは、治療用タンパク質の代理尺度として、「サロゲートペプチド」(すなわち、配列が治療用タンパク質に特有であり、前臨床種のプロテオームに存在しないペプチド)の数量化に依存することが多い。多くの治療用タンパク質はヒトタンパク質に由来するため、サロゲートペプチドの配列はヒトプロテオーム中に存在する可能性が高く、したがって、ヒト対象から得られたサンプルにおける治療用タンパク質の正確な定量化が妨げられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当該分野では、前臨床(非ヒト)サンプルおよび臨床(ヒト)サンプルの
両方において治療用タンパク質を数量化するためのユニバーサルな方法が依然として必要とされている。本開示は、この必要性および他の必要性を対象とする。
【0008】
本出願に引用した参考文献はすべて、参照によって本明細書に明示的に組み入れる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
サンプル中の抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドの量を定量化するための方法であって、(a)抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを含むサンプルを消化することであり、ここで、抗体重鎖定常領域の一部分は、操作された突然変異を含み、消化は、5~26アミノ酸長であり操作された突然変異を含む抗体重鎖定常領域に由来するペプチド断片をもたらす、消化することと、(b)消化されたサンプルをマススペクトロメトリーによって分析して、ペプチド断片の量を判定することにより、サンプル中の抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドの量を判定することとを含む方法を提供する。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、ペプチド断片は、メチオニン(M)またはシステイン(C)を含まない。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、ペプチド断片は、グリシン(G)またはセリン(S)が続くアスパラギン(N)を含まない。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、本方法は、消化されたサンプルをマススペクトロメトリー分析の前に精製および濃縮することをさらに含む。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、消化されたサンプルは、固相抽出(SPE)によって精製および濃縮される。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、消化されたサンプルは、SISCAPA(安定同位体標準物質および抗ペプチド抗体による捕捉、Stable Isotope Standards and Capture by Anti-Peptide Antibodies)によって精製および濃縮される。
【0010】
上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、サンプルは、全血サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、または組織サンプルである。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、サンプルは、マウス、非ヒト霊長類、またはヒトに由来する。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、非ヒト霊長類は、カニクイザルまたはアカゲザルである。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、サンプルは、少なくとも1種の酵素で消化される。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、少なくとも1種の酵素は、トリプシン、キモトリプシン、グルタミルエンドペプチダーゼ、リジルエンドペプチダーゼ、Asp-N、Arg-C、Glu-C、臭化シアン(CnBr)、またはこれらの組合せである。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、サンプル中のポリペプチドの量を判定するために使用するマススペクトロメトリーは、液体クロマトグラフィータンデムマススペクトロメトリー分析(LC-MS/MS)である。
【0011】
上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、CH1ドメインを含み、CH1ドメインは、操作された突然変異を含む。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、CH2ドメインを含み、CH2ドメインは、操作された突然変異を含む。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、CH3ドメインを含み、CH3ドメインは、操作された突然変異を含む。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域のCH3ドメインにおける操作された突然変異は、T366Y
、T366W、T366S、L368A、T394W、T394S、F405A、F405W、Y407T、Y407V、またはY407Aである。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域のCH3ドメインにおける操作された突然変異は、Y407Vであり、CH3ドメインは、配列番号6(DGSFFLVS)に示すアミノ酸配列を含む。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、消化は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)、DGSFFLVSKLTV(配列番号8)、またはGSFFLVSKLTVD(配列番号9)を含む(例えば、それからなる)ペプチド断片をもたらす。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、サンプルは、トリプシンで消化され、この消化は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)からなるペプチド断片をもたらす。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、サンプルは、Asp-Nで消化され、この消化は、アミノ酸配列DGSFFLVSKLTV(配列番号8)からなるペプチド断片をもたらす。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、サンプルは、Glu-Cで消化され、この消化は、アミノ酸配列GSFFLVSKLTVD(配列番号9)からなるペプチド断片をもたらす。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列を含む。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域のCH3ドメインにおける操作された突然変異は、N434Sである。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、サンプルは、Glu-Cおよびトリプシンで消化され、この消化は、アミノ酸配列ALHSHYTQK(配列番号11)からなるペプチド断片をもたらす。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2または配列番号3に示すアミノ酸配列を含む。
【0012】
上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドは、抗体、Fc融合タンパク質、またはイムノアドヘシンである。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドは、抗体である。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体は、治療用抗体である。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体は、単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、または多特異性抗体である。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体は、三重特異性抗体である。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、三重特異性抗体は、1つまたはそれ以上の抗原標的または標的タンパク質に特異的に結合する3つの抗原結合部位を形成する4つのポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチドは、式:VL2-L1-VL1-L2-CLによって表される構造を含み;第2のポリペプチド鎖は、式:VH1-L3-VH2-L4-CH1-ヒンジ-CH2-CH3によって表される構造を含み;第3のポリペプチド鎖は、式:VH3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3によって表される構造を含み;第4のポリペプチド鎖は、式:VL3-CLによって表される構造を含み、式中、VL1は、第1の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VL2は、第2の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VL3は、第3の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VH1は、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH2は、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH3は、第3の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;CH1は、免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメインであり;L1、L2、L3、およびL4は、アミノ酸リンカーであり;第1および第2のポ
リペプチドは、交差する軽鎖-重鎖ペア(cross-over light chain-heavy chain pair)を形成し;第2のポリペプチド鎖または第3のポリペプチド鎖は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)、DGSFFLVSKLTV(配列番号8)、またはGSFFLVSKLTVD(配列番号9)を含む。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号12に示すアミノ酸配列を含み;第2のポリペプチドは、配列番号13に示すアミノ酸配列を含み;第3のポリペプチドは、配列番号14に示すアミノ酸配列を含み、第4のポリペプチドは、配列番号15に示すアミノ酸配列を含む。
【0013】
上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体は、薬物または標識にコンジュゲートされている。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、薬物は、化学療法剤、細胞傷害剤、または増殖阻害剤から選択される。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、標識は、放射性同位体、蛍光色素、または酵素である。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体は、ヒトIgG抗体である。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、IgG抗体は、ヒトIgG1抗体またはヒトIgG4抗体である。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、抗体は、A2AR、APRIL、ATPDアーゼ、BAFF、BAFFR、BCMA、BlyS、BTK、BTLA、B7DC、B7H1、B7H4/VTCN1、B7H5、B7H6、B7H7、B7RP1、B7-4、C3、C5、CCL2/MCP-1、CCL3/MIP-1a、CCL4/MIP-1b、CCL5/RANTES、CCL7/MCP-3、CCL8/mcp-2、CCL11/エオタキシン、CCL15/MIP-1d、CCL17/TARC、CCL19/MIP-3b、CCL20/MIP-3a、CCL21/MIP-2、CCL24/MPIF-2/エオタキシン-2、CCL25/TECK、CCL26/エオタキシン-3、CCR3、CCR4、CD3、CD19、CD20、CD23/FCER2、CD24、CD27、CD28、CD38、CD39、CD40、CD70、CD80/B7-1、CD86/B7-2、CD122、CD137/41BB、CD137L、CD152/CTLA4、CD154/CD40L、CD160、CD272、CD273/PDL2、CD274/PDL1、CD275/B7H2、CD276/B7H3、CD278/ICOS、CD279/PD-1、CDH1/E-カドヘリン、キチナーゼ、CLEC9、CLEC91、CRTH2、CSF-1/M-CSF、CSF-2/GM-CSF、CSF-3/GCSF、CX3CL1/SCYD1、CXCL12/SDF1、CXCL13、CXCR3、DNGR-1、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1、EGFR、ENTPD1、FCER1A、FCER1、FLAP、FOLH1、Gi24、GITR、GITRL、GM-CSF、Her2、HHLA2、HMGB1、HVEM、ICOSLG、IDO、IFNα、IgE、IGF1R、IL2Rベータ、IL1、IL1A、IL1B、IL1F10、IL2、IL4、IL4Ra、IL5、IL5R、IL6、IL7、IL7Ra、IL8、IL9、IL9R、IL10、rhIL10、IL12、IL13、IL13Ra1、IL13Ra2、IL15、IL17、IL17Rb/IL25、IL18、IL22、IL23、IL25、IL27、IL33、IL35、ITGB4/b4インテグリン、ITK、KIR、LAG3、LAMP1、レプチン、LPFS2、MHCクラスII、NCR3LG1、NKG2D、NTPDアーゼ-1、OX40、OX40L、PD-1H、血小板受容体、PROM1、S152、SISP1、SLC、SPG64、ST2/IL33受容体、STEAP2、Sykキナーゼ、TACI、TDO、T14、TIGIT、TIM3、TLR、TLR2、TLR4、TLR5、TLR9、TMEF1、TNFa、TNFRSF7、Tp55、TREM1、TSLP/IL7Ra、TSLPR、TWEAK、VEGF、VISTA、Vstm3、WUCAM、またはXCR/GPR5/C
CXCR1に結合する。上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)ある特定の実施形態では、本方法は、マウス、非ヒト霊長類、およびヒトにおける抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドの薬物動態試験に使用するためのものである。
【0014】
本明細書に記載する各実施形態は、明らかに別異に解される場合を除き、任意の他の実施形態または複数の実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましいものまたは有利なものとして示される構成または実施形態はいずれも、明らかに別異に解される場合を除き、好ましいものまたは有利なものとして示される任意の他の構成(単数もしくは複数)または実施形態(単数もしくは複数)と組み合わせることができる。本発明のこれらの態様および他の態様は、当業者には明らかになるであろう。本発明のこれらの実施形態および他の実施形態を、下記の詳細な説明によってさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】いくつかの例示的な治療用抗体のFc領域の配列アライメントを示す図である。少なくとも1つのアミノ酸置換を含む予測されるトリプシンペプチドに下線が引かれている。トリプシンペプチド中に存在するシステインは太い矢印で示されている。配列番号2および5は、ノブ突然変異T366Wを含む。配列番号3および4は、ホール突然変異T366S、L368A、およびY407Vを含む。
【
図2】
図2A~2Cは、配列番号2および3に示すアミノ酸配列を有する重鎖を含む、トリプシンで消化された三重特異性構築物(TRI-1)のLC-MS/MS分析の結果を示す図である。配列番号2は、操作された「ノブ」突然変異T366Wを含み、配列番号3は、操作された「ホール」突然変異T366S、L368A、およびY407Vを含む。配列番号3のトリプシン消化は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)を有するペプチド、すなわち、「操作されたTTPPペプチド」をもたらすと予測される。
図2Aは、m/z905.40~907.60に対する抽出イオンクロマトグラムを示す。
図2Bは、全イオンクロマトグラムを示す。
図2Cは、操作されたTTPPペプチドのMS/MSスペクトルを示す。
【
図3-1】
図3A~3Dは、トリプシンで消化されたマウス血清(
図3A)、サル血清(
図3B)、ヒト血清(
図3C)、およびPBST中のTRI-1(
図3D)の抽出イオンクロマトグラムを示す図である。操作されたTTPPに関する実行時間は四角によって示されている。
【
図4-1】
図4A~4Dは、マウス血清(
図4A)、サル血清(
図4B)、ヒト血清(
図4C)、およびPBST(
図4D)における、トリプシンで消化されたTRI-1の抽出イオンクロマトグラムを示す図である。操作されたTTPPに関する実行時間は四角によって示されている。
【
図5】
図5A~5Cは、PBST中のトリプシンで消化されたTRI-1から得た、操作されたTTPPの抽出イオンクロマトグラム(m/z=905.36~905.55)を示す図である。TRI-1の濃度は、20μg/mL(
図5A)、2μg/mL(
図5B)、および0.2μg/mL(
図5C)であった。TTPPペプチドのピーク面積は、44064886(
図5A)、2633166(
図5B)、および368649(
図5C)であった。
【
図6】
図6A~6Cは、PBST中のトリプシンで消化されたTRI-1から得た、非標識FNWYVDGVEVHNAK(配列番号10)(FNWY)の抽出イオンクロマトグラム(m/z=559.90~559.98)を示す図である。TRI-1の濃度は、20μg/mL(
図6A)、2μg/mL(
図6B)、および0.2μg/mL(
図6C)であった。FNWYペプチドのピーク面積は、70091279(
図6A)、1078300(
図6B)、および209110(
図6C)であった。
【
図7】
図7A~7Cは、PBST中のTRI-1消化のための内部標準として使用した、トリプシンで消化されたSILUMABから得た、同位体標識されたFNWY(FNWY(重))の抽出イオンクロマトグラム(m/z=562.58~562.63)を示す図である。TRI-1の濃度は、20μg/mL(
図7A)、2μg/mL(
図7B)、および0.2μg/mL(
図7C)であった。FNWYペプチドのピーク面積は、1369078(
図7A)、343482(
図7B)、および473743(
図7C)であった。
【
図8-1】
図8A~8Dは、マウス血清中のトリプシンで消化されたTRI-1から得た、操作されたTTPPの抽出イオンクロマトグラム(m/z=905.39~905.55)を示す図である。TRI-1の濃度は、0μg/mL(対照)(
図8A)、0.2μg/mL(
図8B)、2μg/mL(
図8C)、および20μg/mL(
図8D)であった。TTPPペプチドのピーク面積は、ND(検出されず)(
図8A)、ND(検出されず)(
図8B)、2168471(
図8C)、および11833127(
図8D)であった。
【
図9-1】
図9A~9Dは、マウス血清中のトリプシンで消化されたTRI-1から得た、非標識FNWYの抽出イオンクロマトグラム(m/z=559.90~559.98)を示す図である。TRI-1の濃度は、0μg/mL(対照)(
図9A)、0.2μg/mL(
図9B)、2μg/mL(
図9C)、および20μg/mL(
図9D)であった。FNWYペプチドのピーク面積は、ND(検出されず)(
図9A)、410330(
図9B)、2500109(
図9C)、および22039621(
図9D)であった。
【
図10-1】
図10A~10Dは、マウス血清中のTRI-1消化のための内部標準として使用した、トリプシンで消化されたSILUMABから得た、FNWY(重)の抽出イオンクロマトグラム(m/z=562.58~562.63)を示す図である。TRI-1の濃度は、0μg/mL(対照)(
図10A)、0.2μg/mL(
図10B)、2μg/mL(
図10C)、および20μg/mL(
図10D)であった。FNWYペプチドのピーク面積は、1184181(
図10A)、2310675(
図10B)、1199642(
図10C)、および967309(
図10D)であった。
【
図11-1】
図11A~11Dは、サル血清中のトリプシンで消化されたTRI-1から得た、操作されたTTPPの抽出イオンクロマトグラム(m/z=905.39~905.55)を示す図である。TRI-1の濃度は、0μg/mL(対照)(
図11A)、0.2μg/mL(
図11B)、2μg/mL(
図11C)、および20μg/mL(
図11D)であった。TTPPペプチドのピーク面積は、ND(検出されず)(
図11A)、ND(検出されず)(
図11B)、1013964(
図11C)、および3751017(
図11D)であった。
【
図12-1】
図12A~12Dは、サル血清中のトリプシンで消化されたTRI-1から得た、非標識FNWYの抽出イオンクロマトグラム(m/z=559.92~559.95)を示す図である。TRI-1の濃度は、0μg/mL(対照)(
図12A)、0.2μg/mL(
図12B)、2μg/mL(
図12C)、および20μg/mL(
図12D)であった。FNWYペプチドのピーク面積は、75675(
図12A)、97731(
図12B)、1298150(
図12C)、および13378187(
図12D)であった。
【
図13-1】
図13A~13Dは、サル血清中のTRI-1消化のための内部標準として使用した、トリプシンで消化されたSILUMABから得た、FNWY(重)の抽出イオンクロマトグラム(m/z=562.58~562.63)を示す図である。TRI-1の濃度は、0μg/mL(対照)(
図13A)、0.2μg/mL(
図13B)、2μg/mL(
図13C)、および20μg/mL(
図13D)であった。FNWYペプチドのピーク面積は、1446203(
図13A)、1216254(
図13B)、1271728(
図13C)、および1344983(
図13D)であった。
【
図14-1】
図14A~14Dは、ヒト血清中のトリプシンで消化されたTRI-1から得た、操作されたTTPPの抽出イオンクロマトグラム(m/z=905.39~905.55)を示す図である。TRI-1の濃度は、0μg/mL(対照)(
図14A)、0.2μg/mL(
図14B)、2μg/mL(
図14C)、および20μg/mL(
図14D)であった。TTPPペプチドのピーク面積は、ND(検出されず)(
図14A)、ND(検出されず)(
図14B)、194065(
図14C)、および1848332(
図14D)であった。
【
図15】
図15A~15Dは、面積比と抗体濃度の比較を示す図である。
図15Aは、PBST中の、操作されたTTPP:FNWY(重)の面積比と、TRI-1の抗体濃度との比較を示す。
図15Bは、PBST中の、非標識FNWY:FNWY(重)の面積比と、TRI-1の抗体濃度との比較を示す。
図15Cは、マウス血清中の、操作されたTTPP:FNWY(重)の面積比と、TRI-1の抗体濃度との比較を示す。
図15Dは、サル血清中の、操作されたTTPP:FNWY(重)の面積比と、TRI-1の抗体濃度との比較を示す。
【
図16】実施例2において数量化した例示的な三重特異性抗体の重鎖および軽鎖の配列を示す図である。LC-MS/MSアッセイにおいて数量化したサロゲートペプチドの配列に下線が引かれている。
【
図17】例示的な三重特異性抗体、および
図16において下線が引かれたサロゲートペプチドの配列が三重特異性抗体中のどこに位置しているかを示す概略図である。
【
図18】TTPPペプチドを使用して三重特異性抗体を数量化する方法の例示的なワークフロー図である。
【
図19】
図19Aは、LLOQ(数量化下限(lowest limit of quantification)、2.5μg/ml)におけるTTPPペプチドの例示的なクロマトグラムを示す図である。
図19Bは、実施例3で内部標準として使用した安定同位体標識TTPPペプチド(標準[
13C11-
15N2]-LTTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号20)の例示的なクロマトグラムを示す図である。
図19Cは、2.5μg/mL~10,000μg/mLの範囲にわたるTTPPペプチドの較正曲線を示す図である。
【
図20】
図20Aは、1/xの重み付けを用いる線形回帰分析を使用して分析した血清の較正曲線を示す図である。
図20Bは、1/xの重み付けを用いる線形回帰分析を使用して分析した第2の血清の較正曲線を示す図である。
図20Aおよび20Bにおける曲線を作図するために使用したサンプルは、実施例3に記載する別々の実験から得た。
【
図21A】
図21Aは、LC-MS/MSにより、三重特異性抗体を投与したマウスから得られた血清中のTTPPペプチドのレベルを測定することによって検出された、三重特異性抗体の相対的レベルの比較を示す図である。
【
図21B】
図21Bは、三重特異性抗体を投与したマウスから得られた血清中の、ELISAによって検出された三重特異性抗体の相対的レベルの比較を示す図である。
【
図22A】
図22Aは、ブランクのラット血清サンプルのLC-MS/MS分析の結果を示す図である。
【
図22B】
図22Bは、三重特異性抗体5μg/mlをスパイクしたラット血清サンプルのMS/MSスペクトルを示す図である。
【
図22C】
図22Cは、ブランクのサル血清サンプルのLC-MS/MS分析の結果を示す図である。
【
図22D】
図22Dは、三重特異性抗体5μg/mlをスパイクしたサル血清サンプルのMS/MSスペクトルを示す図である。
【
図22E】
図22Eは、ブランクのサル血清サンプルのLC-MS/MS分析の結果を示す図である。
【
図22F】
図22Fは、三重特異性抗体5μg/mlをスパイクしたヒト血清サンプルのMS/MSスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本明細書で使用する、「抗体定常領域」とは、抗体のうち比較的保存された領域、例えば、可変ドメインの外側を指す。この用語は、軽鎖定常領域、すなわち、CLドメイン、ヒンジ領域、ならびに重鎖定常ドメインCH1、CH2、CH3、および場合によりCH4を含む場合がある。
【0017】
本明細書で使用する、「操作された突然変異」という用語は、ヒトによる設計によって生み出された突然変異(すなわち、自然要因によって自然発生的に生じたものではない突然変異、および/または意図的なヒトによる操作の結果であった突然変異)を指す。
【0018】
本明細書で使用する、「抗体」という用語は、インタクト抗体、重鎖定常領域の少なくとも一部分を含む抗体断片(限定されるものではないが、Fab、F(ab’)2、Fab’-SH、Fv、scFv、または単一重鎖抗体を含む)(ただし、それらが所望の生物学的活性を呈することを条件とする);モノクローナル抗体;ポリクローナル抗体;単一特異性抗体;多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体および三重特異性抗体);および抗体様タンパク質を指す場合がある。
【0019】
「抗体」という用語は、典型的には、2つの軽(L)鎖および2つの重(H)鎖を含むヘテロ四量体複合体を指す。鎖内ジスルフィド架橋に加えて、可変数のジスルフィド結合が2つの重鎖を連結し、1つのジスルフィド結合が各軽鎖を重鎖に連結している。重鎖は、可変ドメイン(VH)に続いて(N末端からC末端へ)、3つまたは4つの定常ドメインを含む。軽鎖は、可変ドメイン(VL)に続いて1つの定常ドメイン(CL)を含む。典型的に、哺乳動物の軽鎖は、アミノ酸配列に基づく2つのカテゴリー:カッパおよびラムダのうちの1つに分類される。
【0020】
本明細書で使用する、「多特異性」という用語は、抗体または抗体断片に関連して使用される場合、2種またはそれ以上の異なる結合特異性を有する抗体または抗体断片(例えば、二重特異性抗体および三重特異性抗体)を含む。例えば、各結合特異性が、異なる抗原を認識してもよいし、または、各結合特異性が、異なる親和性および/もしくは正確なエピトープを有する同じ抗原を認識してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、第1の結合特異性を有する第1の抗原結合性ドメイン、第2の結合特異性を有する第2の抗原結合性ドメインなどが、多特異性抗体または抗体断片に含まれるように、異なる結合特異性の各々が、1つまたはそれ以上の異なる抗体抗原結合性ドメイン(例えば、可変ドメイン)を含む。種々の例示的な多特異性抗体フォーマット(例えば、二重特異性および三重特異性の抗体フォーマット)が当該分野で公知であり、これらについては、本明細書の他の箇所でさらに詳細に説明する。
【0021】
本開示の実施形態を詳細に説明する前に、本開示は特定の組成物または生物システムに限定されず、これらは当然ながら様々でありうることを理解されたい。また、本明細書で使用する用語法は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される、「a」、「an」、および「the」という単数形は、内容に明らかに別段の定めがある場合を除き、複数の参照対象を含む。したがって、例えば、「1個の分子(a molecule)」への言及は、
場合により、2個またはそれ以上のかかる分子の組合せなどを含む。
【0023】
本明細書で使用する、「約」という用語は、当該技術分野の当業者には容易に分かる、それぞれの値に対する通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」のつく値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に関する実施形態を含む(また、説明する)。
【0024】
本開示の態様および実施形態は、態様および実施形態「を含む」、それら「からなる」、およびそれら「から本質的になる」を含むものと理解される。
【0025】
サンプル中のポリペプチドを定量化するための方法
マススペクトロメトリー(MS)は、例えば、前臨床動物試験から得られたサンプルにおける、治療用タンパク質の定量的分析のためのリガンド結合アッセイ(LBA)に代わる、実行可能な代替策である。MSに基づく数量化の典型的な手順は、各サンプルを消化してペプチド断片を生成し、治療用タンパク質自体のサロゲートとして、治療用タンパク質に由来する特定のペプチドの量を数量化することを必要とする。現在、ヒト抗体の定常領域に由来する「ユニバーサルな」サロゲートペプチドが、非ヒト動物モデルにおけるヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体の数量化のための一般的方法において使用されている。このような一般的方法は、「ユニバーサルな」サロゲートペプチドの配列が、すべてのヒトFcドメインにおいて保存されているが、前臨床効能試験および安全性試験を行う種(例えば、マウス、ラット、イヌ、サルなど)には存在しないという原理に基づいている。しかしながら、「ユニバーサルな」サロゲートペプチドの配列は内因性ヒト抗体にも存在するため、「ユニバーサルな」サロゲートペプチドを使用して、ヒト患者のサンプルにおける、例えば、ヒト抗体の定常領域を含む治療用タンパク質を正確に定量化することは不可能である。
【0026】
ヒト抗体の定常領域を含む多くの治療用タンパク質(例えば、抗体)はまた、例えば、エフェクター機能をモジュレートしたり、血清半減期をモジュレートしたり、ヘテロ二量体化を促進したりするために定常領域に導入されている、操作された突然変異を含む。本出願者らは、操作された突然変異を含む定常領域の一部分に由来するペプチドが、非ヒトおよびヒトの両方のプロテオームバックグラウンドにおいて独特であることを見出した。したがって、本明細書に記載する方法は、前臨床サンプル(すなわち、動物種から得られるもの)と、臨床サンプル(すなわち、ヒト患者から得られるもの)との両方において、治療用タンパク質を定量化するために使用することができる。
【0027】
サンプル中のポリペプチドの量を定量化するための方法であって、ポリペプチドは、抗体重鎖定常領域の一部分を含み、抗体重鎖定常領域の一部分は、操作された突然変異を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は:(a)ポリペプチドを含むことが疑われるサンプルを消化して、操作された突然変異を含むペプチド断片を含む、消化されたサンプルをもたらす工程と;(b)消化されたサンプルをマススペクトロメトリーによって分析して、操作された突然変異を含むペプチド断片の量を判定することにより、ポリペプチドの量を判定する工程とを含む。本明細書に記載する方法を使用して数量化することができるポリペプチド(例えば、融合タンパク質、イムノアドヘシン、および抗体)については、本明細書の他の箇所でさらに詳細に説明する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する方法を、薬物動態試験において(例えば前臨床研究または臨床治験において)使用する。いくつかの実施形態では、本方法は、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを、数量化の前に、例えば前臨床研究中の、動物に投与する工程を含む。操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを投与することができる例示的な非ヒト動物
については、以下に詳細に説明する。いくつかの実施形態では、本方法は、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを、数量化の前に、ヒト、例えば臨床治験中のヒト患者に投与することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを含むサンプルは、動物に由来する、動物から得られる、または動物から分離した生物学的サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルが由来する、得られる、または分離される動物は、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを投与した動物である。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒト(例えば、ヒト患者)、非ヒト霊長類(NHP)(例えば、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、タマリン、クモザル、ヨザル、リスザル、サバンナモンキー、ヒヒなど)、または齧歯類(例えば、マウスまたはラット)である。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する方法によって分析しようとするサンプルは、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを含むことが疑われる任意のサンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、乳、気管支肺胞洗浄液、羊水、唾液、胆汁、もしくは涙を含むがこれらに限定されない体液であるか、または体液に由来する。いくつかの実施形態では、サンプルは、組織または細胞を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、血清および既知量のペプチド(すなわち、「スパイクした」血清)を含む。いくつかの実施形態では、スパイクした血清は、緩衝液をさらに含む。いくつかの実施形態では、スパイクした血清は、動物に由来する、動物から得られる、または動物から分離したサンプル中に存在する、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドの量を数量化するための基準としての機能を果たす。
【0031】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、サンプル中の操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドを濃縮するため、または、例えば、サンプル中の豊富なタンパク質(例えば血液、血清、または血漿サンプル中のアルブミン)を枯渇させるために、消化の前にサンプルを処理することをさらに含む。いくつかの実施形態では、サンプルを処理することは、抗体プルダウンアッセイを行うことを含む。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、サンプルを処理することは、ゲル電気泳動、抽出、沈殿、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、親和性捕捉クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなど)、限外濾過、および/または当業者に公知の1つまたはそれ以上のさらなる分離工程を行うことを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、サンプルを化学的切断によって消化する。ポリペプチド中の特定の部位を切断する例示的な化学試薬としては、例えば、ギ酸、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、およびNTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、サンプルを、酵素、例えばエンドペプチダーゼで消化する。いくつかの実施形態では、酵素は、部位特異的エンドペプチダーゼである。例示的な部位特異的プロテアーゼとしては、トリプシン、キモトリプシン(高特異性、Pの前でないFYWのc末端を切断する)、キモトリプシン(低特異性、Pの前でないFYWMLのc末端を切断する)、グルタミルエンドペプチダーゼ、リジルエンドペプチダーゼ、Asp-Nプロテアーゼ、Arg-Cプロテアーゼ、Lys-Cプロテアーゼ、Lys-Nプロテアーゼ、黄色ブドウ球菌V8(グルタミルエンドペプチダーゼまたはGlu-Cプロテアーゼとしても公知である)、臭化シアン(CnBr)、エラスターゼ、ペプシン(pH=1.3)、ペプシン(pH>2)、ネプリライシン、BNPS-スカトール、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、ク
ロストリパイン、エンテロキナーゼ、第Xa因子、グランザイムB、サーモリシン、プロリン-エンドペプチダーゼ、ブドウ球菌ペプチダーゼI、トロンビン、およびタバコエッチウイルスプロテアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、サンプルを、非特異的エンドペプチダーゼ、例えば、パパインまたはプロテイナーゼKで消化する。いくつかの実施形態では、サンプルを、2種(またはそれ以上)のエンドペプチダーゼ(部位特異的および/または非部位特異的を含む)を含む混合物で消化する。いくつかの実施形態では、2種またはそれ以上のエンドペプチダーゼを同時に使用して、サンプルを消化する。いくつかの実施形態では、2種またはそれ以上のエンドペプチダーゼを連続的に使用して、サンプルを消化する。マススペクトロメトリーによる分析のための製造物中のポリペプチドを消化するための方法は、当該分野において周知である。例示的な方法は、例えば、Gundryら(2009年)Curr Protoc Mol
Biol.doi:10.1002/0471142727.mb1025s88;Hedrickら(2015年)Curr Protoc Chem Biol.7巻(3号):201~222頁;Giansantiら(2016年)Nature Protocols.11巻:993~1006頁;Nordhoffら(Int J Mass
Spect.226巻(1号):163~180頁;およびZhangら(2014年)Curr Protoc Mol Biol.doi:10.1002/0471142727.mb1021s108において提示されている。
【0033】
サンプルの消化は、操作された突然変異を含むペプチド断片をもたらす。いくつかの実施形態では、消化によってもたらされるペプチド断片は、5~40アミノ酸長、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチド断片は、システイン(Cys)残基および/またはメチオニン(M)残基を含まない。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、ペプチドは、グリシン残基(G)またはセリン残基(S)が続くアスパラギン残基(N)(すなわち、NGまたはNS)を含まない。いくつかの実施形態では、ペプチド断片は、近接するエンドペプチダーゼ切断部位、例えば、6、5、4、3、2、または1つのアミノ酸を隔てた、2つまたはそれ以上の部位特異的エンドペプチダーゼ切断部位を含まない。消化(例えば、単一の酵素もしくは化学的切断試薬を用いた消化、または酵素および/もしくは化学的切断試薬の組合せを用いた消化)によってもたらすことができるペプチド集団を予測するために、種々のインシリコツールが開発されてきた。このようなツールは、PChopper、PeptideCutter、MAPPP、IPEP、MS-Digest、およびProtein Digestion Simulatorを含み(ただしこれらに限定されるものではない)、当該分野で周知であり、ワールドワイドウェブなどで公的に利用可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、消化されたサンプルをマススペクトロメトリーによる分析の前に精製および/または濃縮することをさらに含む。いくつかの実施形態では、消化されたサンプルを精製および/または濃縮することは、親和性捕捉クロマトグラフィーまたは固相抽出(SPE)を行うことと、精製および濃縮したサンプルを溶出することとを含む。(例えば、Gudryら(2009年)「Preparation of Proteins and Peptides for Mass Spectrometry Analysis in a Bottom-Up Proteomics Workflow.」Curr Protoc Mol Biol.CHAPTER:Unit10.25.doi:10.1002/0471142727.mb1025s88を参照されたい。)いくつかの実施形態では、消化されたサンプルを精製および/または濃縮することは、安定同位体標準物質および抗ペプチド抗体による捕捉(SISCAPA)を行うことを含む。いくつかの実施形態では、サンプルを抗体プルダウンアッセイに供
し、消化し(例えば、当該分野で公知の1つまたはそれ以上のエンドペプチダーゼを使用して)、SISCAPAによって精製および/または濃縮する。SISCAPAに関する詳細は、例えば、Andersonら(2004年)「Mass spectrometric quantitation of peptides and proteins using Stable Isotope Standards and Capture by Anti-Peptide Antibodies(SISCAPA).J Proteome Res.3巻(2号):235~44頁;米国特許第7,632,686号および同第9,164,089号;Whiteakerら(2011年)「Evaluation of large scale quantitative proteomic assay development using peptide
affinity-based mass spectrometry.」Mol Cell Proteomics.10巻(4号):M110.005645;ならびにRasaviら(2016年)「Multiplexed longitudinal measurement of protein biomarkers in DBS using an automated SISCAPA workflow.」Bioanalysis.8巻(15号):1597~1609頁において提示されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、消化されたサンプルを、液体クロマトグラフィータンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)によって分析する。LC-MS/MSは、サンプル混合物をまず液体クロマトグラフィーによって分離し、その後イオン化し(例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、または大気圧光イオン化(APPI)により)、2つの質量分析計を順番に使用して、質量対電荷比および相対的存在量による特性評価を行う方法である。LC-MS/MSに関する詳細は、例えば、Grebeら(2011年)「LC-MS/MS in the Clinical Laboratory-Where to From Here?」Clin.Biochem Review.32巻(1号):5~31頁;El-Khouryら「Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry in the Clinical Laboratory.」J.Chrom.&Separation Tech.4巻:e115.doi:10.4172/2157~7064.1000e115;Shushanら(2010年)「A review of clinical diagnostic applications
of liquid chromatography-tandem mass spectrometry.」Mass Spec.Rev.29巻:930~944頁、2010年において提示されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する方法を使用して、サンプル中のペプチドを検出することができ、ここで、サンプル中のペプチドの濃度は、約200、150、100、50、15、10、5、1、0.5、0.25、0.1、0.075、0.05、0.025、または0.01ng/ml(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちのいずれか1つである。
【0037】
抗体重鎖定常領域における操作された突然変異
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化されるポリペプチドは、操作された突然変異を含むCH1ドメイン(またはその一部分、例えば、10~50個のアミノ酸)を含む。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、Kabat付番システムによると、抗体重鎖の約残基114から約残基223まで延びる。いくつかの実施形態では、CH1ドメインは、EU付番システムによると、抗体重鎖の約残基118から約残基215まで延びる。例えば、WorldWideWeb.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.htmlにおけるInternational Immunogenetics Inf
ormation System(IMGT)のウェブ資料を参照されたい。これらのアミノ酸残基の位置は、ヒトIgGに基づく;しかしながら、本明細書に提示する方法を、ヒトIgGのCH1ドメイン(またはその一部分)を含むポリペプチドでの使用に限定することを意図するものではない。他のヒトIg由来の対応するCH1ドメイン配列、および他の哺乳動物(例えば、マカク、カニクイザル、マウス、ラットなど)の対応するCH1ドメイン配列は、公的に利用可能である。
【0038】
ある特定の実施形態では、CH1ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドの所望の活性に影響を及ぼさない(または実質的に影響を及ぼさない)アミノ酸置換、挿入、または欠失を含む(例えば、それからなる)。いくつかの実施形態では、置換または挿入は、非天然アミノ酸またはコンジュゲートされたアミノ酸の置換または挿入を含む。アミノ酸の置換、挿入、または欠失は、本明細書の他の箇所でさらに詳細に説明するように、ポリペプチドをコードする核酸を(例えば、部位特異的突然変異誘発によって)変化させることにより、またはペプチド合成により、CH1ドメイン(またはその一部分)に導入することができる。
【0039】
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、ヒトIgG1 CH1ドメイン(またはその一部分)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1CH1ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、Fcヘテロ二量体化を推進する(例えば、二重特異性抗体、多特異性抗体、または1アーム抗体(one-armed antibodies)の生成のため)。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH1ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、K147またはK213における(EU付番システムによる)アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH1ドメインにおける操作された突然変異は、アミノ酸置換K147D、K147E、K213D、またはK213E(EU付番システムによる)を含む(例えば、それからなる)。
【0040】
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、操作された突然変異を含むCH2ドメイン(またはその一部分、例えば、10~50個のアミノ酸)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgGのCH2ドメインは、EU付番システムによると、抗体重鎖の約残基231から約残基340まで延びる。例えば、WorldWideWeb.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.htmlにおけるInternational Immunogenetics Information System(IMGT)のウェブ資料を参照されたい。これらのアミノ酸の位置は、ヒトIgGに基づく;しかしながら、本明細書に提示する方法を、ヒトIgGのCH2ドメイン(またはその一部分)を含むポリペプチドでの使用に限定することを意図するものではない。他のヒトIg由来の対応するCH2ドメイン配列は、他の哺乳動物(例えば、マカク、カニクイザル、ラット、マウスなど)の対応するCH2ドメイン配列と同様に、公的に利用可能である。ある特定の実施形態では、CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドの所望の活性に影響を及ぼさない(または実質的に影響を及ぼさない)アミノ酸置換、挿入、または欠失を含む。いくつかの実施形態では、置換または挿入は、非天然アミノ酸またはコンジュゲートされたアミノ酸の置換または挿入を含む。
【0041】
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、ヒトIgG1 CH2ドメイン(またはその一部分)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、エフェクター機能をモジュレートする。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1
CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次の残基:E2
33、L234、L235、G236、P238、S239、F243、T250、M252、S254、T256、P257、S267、R292、Q295、N297、S298、T299、Y300、Q311、K322、A327、L328、P329、A330、P331、I332、およびE333(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1
CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次のアミノ酸置換:E233P、L234V、L234A、L235V、L235A、G236A、P238D、S239D、F243L、T250Q、T250R、M252Y、S254T、T256E、P257I、S267E、R292P、Q295R、N297Q、N297D、N297A、S298G、S298N、S298C、S298A、S28T、T299A、Y300L、Q311I、K322A、A327G、L328E、L328F、L328W、P329G、P329N、A330S、A330L、A330V、P331S、P331V、I332E、I332Y、E333A、およびE333S(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)を含む。あるいは、またはさらに、ヒトIgG1 CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、ΔG236(EU付番システムによる)を含む(例えば、それからなる)。
【0042】
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、ヒトIgG2 CH2ドメイン(またはその一部分)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG2 CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、エフェクター機能をモジュレートする。いくつかの実施形態では、ヒトIgG2
CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次の残基:K326およびE333(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次のアミノ酸置換:K326WおよびE333S(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、ヒトIgG3 CH2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG3 CH2ドメインにおける操作された突然変異は、エフェクター機能をモジュレートする。いくつかの実施形態では、ヒトIgG3 CH2ドメインにおける操作された突然変異は、E235における(EU付番システムによる)アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、E235Yを含む。
【0044】
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、ヒトIgG4 CH2ドメイン(またはその一部分)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4 CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、エフェクター機能をモジュレートする。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4
CH2ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次の残基:S228、F234、L235、F296、G327、およびP329(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、次のアミノ酸置換:S228P、F234A、F234L、L235A、F296Y、G327A、P329G、およびP329Nのうちの1つ(またはそれ以上)を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、操作された突然変異を含むCH3ドメイン(またはその一部分、例えば、10~50個のアミノ酸)を含む。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、EU付番システムによると、約残基341から約残基447まで延びる。例えば、WorldWideWeb.imgt.org/IMGTScientificChart/Number
ing/Hu_IGHGnber.htmlにおけるInternational Immunogenetics Information System(IMGT)のウェブ資料を参照されたい。これらのアミノ酸の位置は、ヒトIgGに基づく;しかしながら、本明細書に提示する方法を、ヒトIgGのCH3ドメインを含むポリペプチドでの使用に限定することを意図するものではない。他のヒトIg由来の対応するCH3ドメイン配列は、他の哺乳動物(例えば、マカク、カニクイザル、ラット、マウスなど)の他のIg由来の対応するCH3ドメイン配列と同様に、公的に利用可能である。ある特定の実施形態では、CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドの所望の活性に影響を及ぼさない(または実質的に影響を及ぼさない)アミノ酸置換、挿入、または欠失である。いくつかの実施形態では、置換または挿入は、非天然アミノ酸またはコンジュゲートされたアミノ酸の置換または挿入を含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、ヒトIgG4 CH3ドメイン(またはその一部分)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH4ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、エフェクター機能をモジュレートする。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1
CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、残基R409における(EU付番システムによる)アミノ酸置換を含む(例えば、それからなる)。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、アミノ酸置換R409Kを含む(例えば、それからなる)。
【0047】
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって定量化しようとするポリペプチドは、ヒトIgG1 CH3ドメイン(またはその一部分)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、エフェクター機能をモジュレートし、かつ/または血清半減期を向上させる。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次の残基:N343、E380、E382、P396、M428、H433、N434、およびY436(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次のアミノ酸置換:N343A、E380A、E382V、P396L、M428I、M428L、H433K、N434S、N434F、およびY436H(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、Fcヘテロ二量体化を推進する(例えば、二重特異性抗体、多特異性抗体、または1アーム抗体の生成のため)。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次の残基:Y349、S354、R355、D356、E357、K360、T366、L368、K370、K392、T394、D399、F405、Y407、K409、およびK439(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、次のアミノ酸置換:Y349C、S354C、R355D、R355E、D356K、D356R、E357K、E357R、K360D、K360E、T366R、T366K、T366N、T366Q、T366Y、T366W、T366S、T366E、T366G、L368A、L368K、L368Q、L368D、L368E、L368G、L368H、L368I、L368N、L368R、L368S、L368T、L368V、L368W、K370W、K370D、K370E、K392D、K392E、T394W、T394S、D399A、D399G、D399I、D399L、D399M、D399N、D299S、D399T、D399F、D399H、D399K、D399R、D399Y、F405A、F4
05W、Y407T、Y407V、Y407A、K409R、K409A、K409H、K409D、K409E、K409G、K439D、およびK439E(EU付番システムによる)のうちの1つ(またはそれ以上)を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH3ドメイン(またはその一部分)における操作された突然変異は、Y407Vを含む(例えば、それからなる)。いくつかの実施形態では、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドは、配列番号6(DGSFFLVS)に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作されたY407V突然変異を有する抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドを含む(または含むことが疑われる)サンプルの消化は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)、DGSFFLVSKLTV(配列番号8)、またはGSFFLVSKLTVD(配列番号9)を含む(例えば、それからなる)ペプチド断片をもたらす。いくつかの実施形態では、操作されたY407V突然変異を有する抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドを含む(または含むことが疑われる)サンプルは、トリプシンで消化され、この消化は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)を含む(例えば、それからなる)ペプチド断片をもたらす。いくつかの実施形態では、操作されたY407V突然変異を有する抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドを含む(または含むことが疑われる)サンプルは、Asp-Nで消化され、この消化は、アミノ酸配列DGSFFLVSKLTV(配列番号8)を含む(例えば、それからなる)ペプチド断片をもたらす。いくつかの実施形態では、操作されたY407V突然変異を有する抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドを含む(または含むことが疑われる)サンプルは、Glu-Cで消化され、この消化は、アミノ酸配列GSFFLVSKLTVD(配列番号9)を含む(例えば、それからなる)ペプチド断片をもたらす。
【0049】
いくつかの実施形態では、ヒトIgG1 CH3ドメインにおける操作された突然変異は、N434Sを含む(例えば、それからなる)。いくつかの実施形態では、操作されたN434S突然変異を有する抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドを含む(または含むことが疑われる)サンプルは、Glu-Cおよびトリプシンで消化され、この消化は、アミノ酸配列ALHSHYTQK(配列番号11)を含む(例えば、それからなる)ペプチド断片をもたらす。
【0050】
ある特定の実施形態では、操作された突然変異を、当該分野で公知の標準的な分子生物学的技術によって、抗体重鎖定常領域(またはその一部分)に導入する。遺伝子操作のための種々の方法がこれまでに説明されている。このような突然変異誘発方法としては、例えば、組換え前の、エラープローンPCR、ループシャッフリング、オリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発、ランダムヌクレオチド挿入、または他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法に関するさらなる詳細は、例えば、Abou-Nadlerら(2010年)Bioengineered Bugs.1巻、337~340頁;Firthら(2005年)Bioinformatics.21巻、3314~3315頁;Cirinoら(2003年)Methods Mol Biol.231巻、3~9頁;Pirakitikulr(2010年)Protein Sci.19巻、2336~2346頁;Steffensら(2007年)J.Biomol Tech.18巻、147~149頁;および他の文献に記載されている。
【0051】
抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチド
本明細書に提示する方法は、抗体重鎖定常領域の一部分を含む任意のポリペプチドを使用して行うことができ、ここで、抗体重鎖定常領域の一部分は、操作された突然変異を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、CH1ドメイン、CH2ドメイン、および/またはCH3ドメインのすべてまたは一部分(例えば、10~50個のアミノ酸)を含むが、ただし、ドメイン(またはその一部分)が、操作された突然変異(例えば、本明
細書の他の箇所に記載する操作された突然変異)を含むことを条件とする。いくつかの実施形態では、操作された突然変異を含む重鎖定常ドメインの一部分は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラットなど)であるか、またはそれに由来する。いくつかの実施形態では、操作された突然変異を含む重鎖定常領域の一部分は、ヒトIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、ヒトIgA(例えば、IgA1もしくはIgA2)、ヒトIgM、ヒトIgE、もしくはヒトIgDであるか、またはそれに由来する。いくつかの実施形態では、操作された突然変異を含む重鎖定常領域の一部分は、マウス(例えば、マウスIgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、もしくはIgM抗体重鎖定常領域)であるか、またはそれに由来する。
【0052】
ある特定の実施形態では、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、少なくとも1つの操作された突然変異を含む、例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ヒトIgA1、ヒトIgA2、ヒトIgM、ヒトIgE、またはヒトIgDの、定常領域を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、操作された突然変異を有する抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドは、融合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、抗体重鎖定常領域のFcドメイン(すなわち、CH2およびCH3ドメイン)を含む、Fc融合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、イムノアドヘシン、すなわち、結合性タンパク質の機能性ドメイン(例えば、受容体、リガンド、または細胞接着ポリペプチド)が抗体重鎖定常領域の一部分(典型的にはヒンジおよびFcドメイン)に融合している融合ポリペプチドである。
【0054】
抗体
いくつかの実施形態では、操作された突然変異を含む抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、2つの軽(L)鎖および2つの重(H)鎖を含むヘテロ四量体複合体である。いくつかの実施形態では、2つの軽鎖および2つの重鎖は同一である。いくつかの実施形態では、2つの軽鎖は異なるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、2つの重鎖は異なるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、完全長抗体である(例えば、2つの完全長軽鎖および2つの完全長重鎖を含む)。いくつかの実施形態では、抗体は、操作された突然変異を含む重鎖定常ドメインの一部分を含む抗体断片、例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’-SH、Fv、scFv、または単一重鎖抗体である。ある特定の実施形態では、抗体は、哺乳動物抗体(例えば、ヒト抗体、非ヒト霊長類抗体、マウス抗体、ラット抗体など)である。いくつかの実施形態では、抗体は、単一特異性抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、多特異性抗体である。
【0055】
多特異性抗体
多特異性抗体は、2種以上の抗原に対する結合特異性(例えば、2種、3種、または4種以上の結合特異性)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提示する方法を使用して数量化される抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、同じ抗原に対して2種の異なる結合特異性を含む(例えば、異なる結合親和性および/または同じ抗原の特定のエピトープを有する)。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2種の異なる抗原に対する結合特異性を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、完全長抗体またはインタクト抗体である。本明細書に提示する方法は、当該分野で公知の二重特異性または多特異性の抗体フォーマットで使用することが想定される。例示的な二重特異性および多特異性の抗体フォーマットとしては、以下に記載す
るものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
例えば、「ノブイントゥホール」は、抗体重鎖ホモ二量体をヘテロ二量体化するために(例えば、二重特異性抗体、多特異性抗体、または1アーム抗体の生成のために)操作するための設計方策である。一般的に、このような技術は、第1のポリペプチド(例えば第1の抗体重鎖における第1のCH3ドメイン)の界面に隆起(「ノブ」)を導入し、第2のポリペプチド(例えば第2の抗体重鎖における第2のCH3ドメイン)の界面に対応する空洞(「ホール」)を導入することで、隆起が、ヘテロ二量体の形成を促進し、ホモ二量体の形成を妨げるように空洞内に位置することができるようにすることを含む。隆起は、第1のポリペプチド(例えば第1の抗体重鎖における第1のCH3ドメイン)の界面における小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えばアルギニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファン)に置き換えることによって構成される。大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えばアラニン、セリン、バリン、またはスレオニン)に置き換えることにより、隆起と同一または同様のサイズの補整的な空洞が、第2のポリペプチド(例えば第2の抗体重鎖における第2のCH3ドメイン)の界面に生み出される。例えば、米国特許第5,731,168号;同第5,807,706号;同第5,821,333号;同第7,642,228号;同第7,695,936号;同第8,216,805号;および同第8,679,785号を参照されたい。これらの各々の内容全体を、参照によって本明細書に組み入れる。ノブイントゥホール突然変異の例示的なセットとしては、下記の表1に示すものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0057】
【0058】
WO2011/131746は、各CH3ドメインにおける366位、368位、370位、399位、405位、および407位(EU付番による)のうちの1つに非対称突然変異を含む二重特異性抗体について記載している。突然変異は、還元条件下でインキュベーションすると、2つの単一特異性IgG1抗体、IgG4抗体、またはIgG4様抗体間における方向性の「Fabアーム」または「半分子」交換を推進する。
【0059】
US2009/0232811およびSchaeferら(2011年)PNAS USA.108巻(27号):11187~11192頁は、Crossmab技術、すなわち、二重特異性抗体の半分の抗原結合性断片(Fab)における1つまたはそれ以上の重鎖および軽鎖ドメインの交換を伴う二重特異性抗体フォーマットについて記載している。軽鎖およびそれらと同族の重鎖の正しい会合が、二重特異性抗体の半分の抗原結合性断片(Fab)における重鎖および軽鎖ドメインの交換によって達成される。この「交差」は、抗原結合親和性を保持するが、軽鎖のミスペアリングが生じることができなくなるほど、2つのアームを異なるものにする。例示的なCrossmabフォーマットとしては、CrossmabFab(すなわち、CLおよびVLドメインをそれぞれCH1およびVHドメインと交換したもの)、CrossmabVH-VL(すなわち、VLおよびVHドメインを交換したもの)、およびCrossmabCH1-VCL(すなわち、CH
1およびCLドメインを交換したもの)が挙げられる。WO2009/080251、WO2009/080252、WO2009/080253、およびWO2009/080254も参照されたい。これらの各々の内容全体を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0060】
WO2007/147901は、非対称突然変異をFcドメインに(すなわち、K253E、D282K、K322Dを第1のFcドメインに、そしてD239K、E240K、およびK292Dを第2のFcドメインに)、そしてCH/CLドメインに(すなわち、K96EをCH1に、そしてE15KをCLに)導入することを必要とする、抗体重鎖をヘテロ二量体化するために(例えば、二重特異性抗体、多特異性抗体、または1アーム抗体の生成のために)操作するための方策について記載している。このような非対称突然変異は、半抗体のホモ二量体化を安定化させるイオン相互作用を破壊し、なおかつFcドメインのヘテロ二量体化を促進することが報告されている。
【0061】
WO2009/089004は、Fcホモ二量体化を静電気的に好ましくないものにするが、Fcヘテロ二量体化を静電気的に好ましいものにする突然変異の非対称ペアをCH3-CH3界面に含む、ヘテロ多量体タンパク質(例えば、二重特異性抗体、多特異性抗体、または1アーム抗体)について記載している。例えば、WO2009/089004の表2aおよび2bを参照されたい。
【0062】
CODV(交差する二重可変領域(cross-over dual variable))を有するいくつかの抗体様タンパク質が、Steinmetzら(2016年)MABS.8巻(5号):867~878頁、WO2012/135345、WO2016/116626、および米国特許第9,181,349号、同第9,221,917号に記載されている。これらの各々の内容全体を、参照によって本明細書に組み入れる。CODVアーキテクチャは、両方の抗原に対する親抗体の親和性を維持する自立式トラスとして機能する、環状の自己完結型構造をもたらす。CODV抗体様タンパク質は、(a)二価および/もしくは二重特異性;(b)三価および/もしくは三重特異性;(c)三価および/もしくは二重特異性;または(d)四価および/もしくは二重特異性であってもよい。1つの例示的なフォーマットにおいて、ポリペプチドは、式:VL1-L1-VL2-L2-CLによって表される構造を有する2つのポリペプチド鎖を含み、2つのポリペプチド鎖は、式:VH2-L3-VH1-L4-CH1-Fcによって表される構造を有し、式中、VL1は、第1の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VL2は、第2の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VH1は、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH2は、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;CH1は、免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメインであり;Fcは、免疫グロブリンヒンジ領域およびCH2、CH3免疫グロブリン重鎖定常ドメインを含み;L1、L2、L3、およびL4は、アミノ酸リンカーであり;式Iのポリペプチドおよび式IIのポリペプチドは、交差する軽鎖-重鎖ペアを形成する。別の例示的なフォーマットでは、ポリペプチドは、2つの抗原結合部位を形成する2つのポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチドは、式:VL1-L1-VL2-L2-CL-Fcによって表される構造を有し、第2のポリペプチド鎖は、式:VH2-L3-VHI-L4-CH1-Fcによって表される構造を有し、式中:VLIは、第1の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり、;VL2は、第2の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VH1は、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH2は、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;CH1は、免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメインであり;CH2は、免疫グロブリンCH2重鎖定常ドメインであり;CH3は、免疫グロブリンCH3重鎖定常ドメインであり;Fcは、免疫グロブリンヒンジ領域およびCH2、CH3免疫グロブリン重鎖定常ドメインを含み;L1、L2、L3、およびL4は、アミノ酸リンカーであり;第1および第2のポ
リペプチドは、交差する軽鎖-重鎖ペアを形成する。第3の例示的なフォーマットでは、ポリペプチドは、2つの抗原結合部位を形成する3つのポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖は、式:VL1-L1-VL2-L2-CLによって表される構造を有し、第2のポリペプチド鎖は、式:VH2-L3-VHI-L4-CH1-Fcによって表される構造を有し、第3のポリペプチド鎖は、抗体Fc領域を含み、式中:VL1は、第1の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり、;VL2は、第2の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VH1は、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH2は、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;CH1は、免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメインであり;CH2は、免疫グロブリンCH2重鎖定常ドメインであり;CH3は、免疫グロブリンCH3重鎖定常ドメインであり;Fcは、免疫グロブリンヒンジ領域およびCH2、CH3免疫グロブリン重鎖定常ドメインを含み;L1、L2、L3、およびL4は、アミノ酸リンカーであり;第1および第2のポリペプチドは、交差する軽鎖-重鎖ペアを形成する。第4の例示的なフォーマットでは、ポリペプチドは、式:VL1-L1-VL2-L2-CLによって表される構造を含む第1のポリペプチド鎖と、式:VH2-L3-VH1-L4-CH1によって表される構造を含む第2のポリペプチド鎖とを含み、式中:VL1は、第1の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VL2は、第2の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VH1は、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH2は、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;CLは、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;CH1は、免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメインであり;L1、L2、L3、およびL4は、アミノ酸リンカーであり;式Iのポリペプチドおよび式IIのポリペプチドは、交差する軽鎖-重鎖ペアを形成する。
【0063】
四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)または二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)として公知の二重特異性四価免疫グロブリンは、Wuら(2007年)Nat Biotechnol.25巻:1290~7頁に初めて記載された。従来のIgGのように、TBTI-DVD-Igは、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。しかしながら、TBTI-DVD-Igの重鎖および軽鎖はいずれも、既存のモノクローナル抗体のVHおよびVLのN末端に、可動性のある天然に発生するリンカー配列を介して連結した、さらなる可変ドメインを含む。したがって、重鎖および軽鎖を組み合わせると、結果として生じるTBTI-DVD-Igは、4つの抗原認識部位を含む。米国特許第9,029,508号;同第9,109,026号;同第9,035,027号;同第9,046,513号、同第8,388,965号;同第9,732,162号;同第9,738,728号;欧州特許第2573121号B1の他、WO2012/135345も参照されたい。これらの各々の内容全体を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0064】
US2017/00320967およびWO2017/180913(これらの内容全体を参照によって本明細書に明示的に組み入れる)は、3つの抗原結合部位を形成する4つのポリペプチド鎖を含む結合性タンパク質(例えば三価および/または三重特異性抗体)について記載している。いくつかの実施形態では、結合性タンパク質は、三価である。いくつかの実施形態では、結合性タンパク質は、三重特異性である。1つの例示的なフォーマットにおいて、第1のポリペプチド鎖は、式:VL2-L1-VL1-L2-CLによって表される構造を含み;第2のポリペプチド鎖は、式:VH1-L3-VH2-L4-CH1-ヒンジ-CH2-CH3によって表される構造を含み;第3のポリペプチド鎖は、式:VH3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3によって表される構造を含み;第4のポリペプチド鎖は、式:VL3-CLによって表される構造を含み、式中、VL1は、第1の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VL2は、第2の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VL3は、第3の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VH1は、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH2は、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;VH3は、第3の免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;CLは、
免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;CH1は、免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメインであり;L1、L2、L3、およびL4は、アミノ酸リンカーであり;第1および第2のポリペプチドは、交差する軽鎖-重鎖ペアを形成し;第2のポリペプチド鎖または第3のポリペプチド鎖は、アミノ酸配列TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)、DGSFFLVSKLTV(配列番号8)、またはGSFFLVSKLTVD(配列番号9)を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、リンカーL1、L2、L3、およびL4は、アミノ酸がないもの(長さ=0)から、約100アミノ酸長、または100、50、40、30、20、もしくは15アミノ酸未満もしくはそれ以下まで及ぶ。リンカーは、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1アミノ酸長であってもよい。1つの結合性タンパク質におけるL1、L2、L3、およびL4は、すべてが同じアミノ酸配列を有してもよいし、またはすべてが異なるアミノ酸配列を有してもよい。
【0066】
好適なリンカーの例としては、単一のグリシン(Gly)残基;ジグリシンペプチド(Gly-Gly);トリペプチド(Gly-Gly-Gly);4つのグリシン残基を有するペプチド(Gly-Gly-Gly-Gly;配列番号21);5つのグリシン残基を有するペプチド(Gly-Gly-Gly-Gly-Gly;配列番号22);6つのグリシン残基を有するペプチド(Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly;配列番号23);7つのグリシン残基を有するペプチド(Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly;配列番号24);8つのグリシン残基を有するペプチド(Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly;配列番号25)が挙げられる。ペプチドGly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号26)、ペプチドGly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号27)、およびペプチドGly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号28)など、アミノ酸残基の他の組合せを使用してもよい。他の好適なリンカーとしては、単一のSer、およびVal残基;ジペプチドArg-Thr、Gln-Pro、Ser-Ser、Thr-Lys、およびSer-Leu;Thr-Lys-Gly-Pro-Ser(配列番号29)、Thr-Val-Ala-Ala-Pro(配列番号30)、Gln-Pro-Lys-Ala-Ala(配列番号39)、Gln-Arg-Ile-Glu-Gly(配列番号31);Ala-Ser-Thr-Lys-Gly-Pro-Ser(配列番号37)、Arg-Thr-Val-Ala-Ala-Pro-Ser(配列番号32)、Gly-Gln-Pro-Lys-Ala-Ala-Pro(配列番号33)、ならびにHis-Ile-Asp-Ser-Pro-Asn-Lys(配列番号34)が挙げられる。上記に列挙した例は、決して本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、グリシン、およびプロリンからなる群から選択される、ランダムに選択されるアミノ酸を含むリンカーが、結合性タンパク質において好適であることが示されている。
【0067】
リンカー内のアミノ酸残基の同一性および配列は、リンカーにおいて達成することが必要な二次構造要素のタイプに応じて異なりうる。例えば、グリシン、セリン、およびアラニンは、最大の可動性を有するリンカーに最適である。グリシン、プロリン、スレオニン、およびセリンのいくつかの組合せは、より強固で伸長したリンカーが必要な場合に有用である。所望の性質に応じて必要な場合、より大きなペプチドリンカーを構築するように、任意のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基と組み合わせてリンカーとみなすことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、L1の長さは、L3の長さの少なくとも2倍である。いくつ
かの実施形態では、L2の長さは、L4の長さの少なくとも2倍である。いくつかの実施形態では、L1の長さは、L3の長さの少なくとも2倍であり、L2の長さは、L4の長さの少なくとも2倍である。いくつかの実施形態では、L1の長さは、アミノ酸残基3~12個分であり、L2の長さは、アミノ酸残基3~14個分であり、L3の長さは、アミノ酸残基1~8個分であり、L4の長さは、アミノ酸残基1~3個分である。いくつかの実施形態では、L1の長さは、アミノ酸残基5~10個分であり、L2の長さは、アミノ酸残基5~8個分であり、L3の長さは、アミノ酸残基1~5個分であり、L4の長さは、アミノ酸残基1~2個分である。いくつかの実施形態では、L1の長さは、アミノ酸残基7個分であり、L2の長さは、アミノ酸残基5個分であり、L3の長さは、アミノ酸残基1個分であり、L4の長さは、アミノ酸残基2個分である。
【0069】
いくつかの実施形態では、L1、L2、L3、および/またはL4は、配列Asp-Lys-Thr-His-Thr(配列番号35)を含む。いくつかの実施形態では、L1は、配列Asp-Lys-Thr-His-Thr(配列番号35)を含む。いくつかの実施形態では、L3は、配列Asp-Lys-Thr-His-Thr(配列番号35)を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、L1、L2、L3、および/またはL4は、配列Gly-Gln-Pro-Lys-Ala-Ala-Pro(配列番号33)を含む。いくつかの実施形態では、L1は、配列Gly-Gln-Pro-Lys-Ala-Ala-Pro(配列番号33)を含む。いくつかの実施形態では、L1は、配列Gly-Gln-Pro-Lys-Ala-Ala-Pro(配列番号33)を含み、L2は、配列Thr-Lys-Gly-Pro-Ser-Arg(配列番号36)を含み、L3は、配列Serを含み、L4は、配列Arg-Thrを含む。いくつかの実施形態では、L3は、配列Gly-Gln-Pro-Lys-Ala-Ala-Pro(配列番号33)を含む。いくつかの実施形態では、L1は、配列Serを含み、L2は、配列Arg-Thrを含み、L3は、配列Gly-Gln-Pro-Lys-Ala-Ala-Pro(配列番号33)を含み、L4は、配列Thr-Lys-Gly-Pro-Ser-Arg(配列番号36)を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号12に示すアミノ酸配列を含み;第2のポリペプチドは、配列番号13に示すアミノ酸配列を含み;第3のポリペプチドは、配列番号14に示すアミノ酸配列を含み、第4のポリペプチドは、配列番号15に示すアミノ酸配列を含む。(配列番号12、13、14、および15は、それぞれ、WO2017/074878に開示されている配列番号3、4、1、および2に対応する。)さらなる例示的な三重特異性抗体のアミノ酸配列は、WO2017/074878に記載されている。この内容全体を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0072】
非対称かつ二重特異性抗体様分子を生成するように設計された、鎖交換操作ドメイン(SEED、strand-exchange engineered domain)プラットフォームは、保存されたCH3ドメインにおける免疫グロブリンの構造的に関連する配列を交換することに基づく。SEED CH3ドメインにおけるヒトIgAおよびIgG由来の交互になった配列は、AGおよびGAと呼ばれる2つの非対称だが相補的なドメインを生成する。SEED設計は、AG/GAヘテロ二量体の効率的な生成を可能にし、AG/AGおよびGA/GAホモ二量体の形成には不利である。例えば、Mudaら(2011年)Prot Engineering,Design&Selection.24巻(5号):447~454頁、および米国特許第8,871,912号を参照されたい。これらの内容全体を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0073】
他の二重特異性および多特異性抗体のフォーマットについては、Kleinら(201
2年)mAbs 4巻:6号、653~663頁;Spiessら(2015年)「Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.」Mol.Immunol.67巻(2号パートA):95~106頁;Eganら(2017年)mAbs.9巻(1号):68~84頁;Liuら(2017年)Front Immunol.8巻:38号;およびWeidleら(2013年)Cancer Genomics Proteomics.10巻(1号):1~18頁に記載されている。
【0074】
標的抗原
ある特定の実施形態では、本明細書に提示する方法によって数量化しようとするポリペプチド(すなわち、操作された突然変異を含む抗体重鎖定常領域の一部分を含むポリペプチド)は、標的抗原に特異的に結合する。例示的な標的抗原としては、限定されるものではないが、A2AR、APRIL、ATPDアーゼ、BAFF、BAFFR、BCMA、BlyS、BTK、BTLA、B7DC、B7H1、B7H4(VTCN1としても公知である)、B7H5、B7H6、B7H7、B7RP1、B7-4、C3、C5、CCL2(MCP-1としても公知である)、CCL3(MIP-1aとしても公知である)、CCL4(MIP-1bとしても公知である)、CCL5(RANTESとしても公知である)、CCL7(MCP-3としても公知である)、CCL8(mcp-2としても公知である)、CCL11(エオタキシンとしても公知である)、CCL15(MIP-1dとしても公知である)、CCL17(TARCとしても公知である)、CCL19(MIP-3bとしても公知である)、CCL20(MIP-3aとしても公知である)、CCL21(MIP-2としても公知である)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2としても公知である)、CCL25(TECKとしても公知である)、CCL26(エオタキシン-3としても公知である)、CCR3、CCR4、CD3、CD19、CD20、CD23(FCER2、IgE受容体としても公知である)、CD24、CD27、CD28、CD38、CD39、CD40、CD70、CD80(B7-1としても公知である)、CD86(B7-2としても公知である)、CD122、CD137(41BBとしても公知である)、CD137L、CD152(CTLA4としても公知である)、CD154(CD40Lとしても公知である)、CD160、CD272、CD273(PDL2としても公知である)、CD274(PDL1としても公知である)、CD275(B7H2としても公知である)、CD276(B7H3としても公知である)、CD278(ICOSとしても公知である)、CD279(PD-1としても公知である)、CDH1(E-カドヘリンとしても公知である)、キチナーゼ、CLEC9、CLEC91、CRTH2、CSF-1(M-CSFとしても公知である)、CSF-2(GM-CSFとしても公知である)、CSF-3(GCSFとしても公知である)、CX3CL1(SCYD1としても公知である)、CXCL12(SDF1としても公知である)、CXCL13、CXCR3、DNGR-1、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1、EGFR、ENTPD1、FCER1A、FCER1、FLAP、FOLH1、Gi24、GITR、GITRL、GM-CSF、Her2、HHLA2、HMGB1、HVEM、ICOSLG、IDO、IFNα、IgE、IGF1R、IL2Rベータ、IL1、IL1A、IL1B、IL1F10、IL2、IL4、IL4Ra、IL5、IL5R、IL6、IL7、IL7Ra、IL8、IL9、IL9R、IL10、rhIL10、IL12、IL13、IL13Ra1、IL13Ra2、IL15、IL17、IL17Rb(IL25受容体としても公知である)、IL18、IL22、IL23、IL25、IL27、IL33、IL35、ITGB4(b4インテグリンとしても公知である)、ITK、KIR、LAG3、LAMP1、レプチン、LPFS2、MHCクラスII、NCR3LG1、NKG2D、NTPDアーゼ-1、OX40、OX40L、PD-1H、血小板受容体、PROM1、S152、SISP1、SLC、SPG64、ST2(IL33受容体としても公知である)、STEAP2、Sykキナーゼ、TACI
、TDO、T14、TIGIT、TIM3、TLR、TLR2、TLR4、TLR5、TLR9、TMEF1、TNFa、TNFRSF7、Tp55、TREM1、TSLP(IL7Ra共受容体としても公知である)、TSLPR、TWEAK、VEGF、VISTA、Vstm3、WUCAM、およびXCR1(GPR5/CCXCR1としても公知である)が挙げられる。いくつかの実施形態では、上記の抗原標的のうちの1つまたはそれ以上は、ヒト抗原標的である。操作された突然変異を含む抗体重鎖定常領域を含むポリペプチドが二重特異性または多特異性の標的結合性タンパク質である実施形態において、標的抗原は、上記に列挙した例示的な抗原のうちのいずれか2つ(またはそれ以上)であってよい。
【0075】
コンジュゲート
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する方法によって数量化しようとするポリペプチド(すなわち、操作された突然変異を含む抗体重鎖定常領域を含むポリペプチド)は、薬物、例えば、細胞傷害剤、化学療法剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはその断片)にコンジュゲートされている。例示的な薬物としては、限定されるものではないが、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンデシン、BCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチン、および5-フルオロウラシルが挙げられる。例示的な毒素としては、限定されるものではないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシン、ゲルダナマイシン、マイタンシン(または他のマイタンシノイド)、アウリスタチン、ドラスタチン、カリケアマイシン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、マイトジェリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、およびCC1065が挙げられる。細胞傷害剤、および細胞傷害剤を抗体にコンジュゲートするリンカーは、当該分野で公知である;例えば、Parslow,A.C.ら(2016年)Biomedicines 4巻:14号、およびKalim,M.ら(2017年)Drug Des.Devel.Ther.11巻:2265~2276頁を参照されたい。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示する方法によって数量化しようとするポリペプチド(すなわち、操作された突然変異を含む抗体重鎖定常領域を含むポリペプチド)は、検出可能なシグナルを直接的または間接的に生成することができる検出可能な部分にコンジュゲートされている。ある特定の実施形態では、検出可能な標識は、放射性核種である。種々の放射性核種が、臨床および研究の目的で使用するためのラジオコンジュゲートされたポリペプチドの生成のために利用可能である。例としては、13C、15N、17O、19F、32P、90Y、99mTc、111In、123I、125I、131I、131In、153Sm、186Re、188Re、211At、212Bi、212Pb、ならびにLu、Mn、Fe、およびGdの放射性同位体が挙げられる。ある特定の実施形態では、検出可能な標識は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリンなどの蛍光化合物もしくは化学発光化合物;またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素である。
【実施例0077】
前述した説明は、当業者が本発明を実践することを可能にするのに十分であると思われる。下記の実施例は、例示のみを目的として提示するものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。事実、本明細書に示し記載するものに加えて、様々な改変形態が前述の記載から当業者には明らかとなり、それらは添付の特許請求の範囲に含まれる。
次に、マウス、カニクイザル、およびヒトのタンパク質データベースに対する問い合わせ配列として、TTPPVLDSDGSFFLVSK(配列番号7)、すなわち「操作されたTTPPペプチド」を使用してBLAST検索を行い、これらの種のいずれかの天然タンパク質にこのような配列が見出されるかどうかを判定した。操作されたTTPPペプチドと100%のアミノ酸同一性を呈する配列のみが、公知のノブインホール抗体であった。操作されたTTPPペプチドと94%のアミノ酸同一性を呈した他の配列は、Y407V以外のY407置換突然変異を含むヒトFcドメイン、および内因性ヒトFcドメインに対応した。
SOLAμ HRP固相抽出(SPE)プレート(ThermoFisher)のうち必要な数のウェルをアセトニトリル200μLで平衡化し、次に0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液200μLでコンディショニングした。次に、さらに400μLの0.1%TFA水溶液を各ウェルに加えた。サンプル上清をウェルに加え、通過させた。次に、ウェルを0.1%TFA水溶液500μLで洗浄し、次に0.1%ギ酸水溶液500μLで洗浄した。消化されたサンプルを、80%アセトニトリルを含む0.1%ギ酸水溶液25μLで2回溶出させた。この溶出液を0.1%ギ酸水溶液50μLで希釈し、400rpmで手短にボルテックスした。
典型的なペプチドマッピング条件で動作するThermo QExactive質量分析計に連結したWaters H-Class Acquity UPLCを使用した液体クロマトグラフィータンデムマススペクトロメトリーによって、消化された各サンプル50μLを分析した。