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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017185
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121255
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】黒田 俊介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB03
3B087BC04
3B087BC07
(57)【要約】
【課題】ロック解除方向と反ロック解除方向との両方向において操作ハンドルのみをロック解除レバーに対して回動できるようにする。
【解決手段】ロック解除レバー131には、操作ハンドル133の後端部の上面169b1に対向する前側上部支持面157a及び後側上部支持面158aが車両前後方向に間隔をおいて設けられ、さらに、前側下部支持面147cが前側上部支持面157aの下方に位置させて設けられる。アッパレール105には、後側下部支持面148aが後側上部支持面158aの下方に位置させて設けられる。前側下部支持面147cと操作ハンドル133の後端部の下面169b3との間には、クリアランスC1が設けられ、後側下部支持面148aと操作ハンドル133の後端部の下面169b3との間には、クリアランスC2が設けられる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に沿って延設されるロアレールと、
前記ロアレールの長手方向に沿って相対移動するアッパレールと、
前記アッパレールに取り付けられ、前記ロアレールに形成された被ロック部に係合するロック方向に付勢されたロック部を備えたロック部材と、
前記アッパレールに対して左右方向の軸周りに回動可能に支持され、ロック解除操作に伴って前記ロック部をロック位置からロック解除位置に移動させるロック解除レバーと、
前記ロック解除レバーの前端部に接続される操作ハンドルと、
前記ロック部をロック方向に付勢する付勢力よりも弱い付勢力により、前記ロック解除レバーの前端部をロック解除方向に付勢する付勢部材と、を有し、
前記ロック解除レバーの前端部には、前記操作ハンドルの端部上面に対向する前側上部支持面及び後側上部支持面が車両前後方向に間隔をおいて設けられ、さらに、前記操作ハンドルの端部下面に対向する前側下部支持面が前記前側上部支持面の下方に位置させて設けられ、
前記アッパレールには、前記操作ハンドルの端部下面に対向する後側下部支持面が前記後側上部支持面の下方に位置させて設けられ、
前記付勢部材は、一端部が前記アッパレールに固定され、他端部が前記前側上部支持面と前記後側上部支持面との間の位置において前記操作ハンドルの端部下面に下方から係合して、前記操作ハンドルを上方に付勢しており、
前記ロック解除レバーに設けられた前記前側下部支持面と、前記操作ハンドルの端部下面との間、及び、前記アッパレールに設けられた前記後側下部支持面と、前記操作ハンドルの端部下面との間には、それぞれ上下方向のクリアランスが設けられている、
シートスライド装置。
【請求項2】
前記ロック部をロック方向に付勢する板ばねを前記アッパレールの下面に固定する固定部材が設けられ、
前記付勢部材は、基部が前記アッパレールの下面に前記板ばねと共に前記固定部材により固定され、中間部の折り返し部が前記基部から車両後方に延びると共にその途中で車両前方に折り返され、先端部が前記固定部材の下方を通って車両前方に延びて、略U字状に形成される、
請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記操作ハンドルの後端部の下面には、車両前後方向に沿って延びる凹溝が設けられ、
前記アッパレールは、左右一対の側壁を備え、
前記後側下部支持面は、左右一対の前記側壁から左右方向内側に向けて突出する突起部に形成され、左右一対の前記突起部の先端相互間には隙間が形成され、
前記付勢部材の前記基部には、前記固定部材が挿入される固定孔が設けられ、前記付勢部材の前記先端部の左右方向の幅は、左右一対の前記突起部相互間の隙間よりも狭く形成される、
請求項2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記操作ハンドルの端部下面にはスリットが設けられ、前記スリットに係合する係止突起が前記付勢部材の前記他端部に設けられ、
前記係止突起は、前記付勢部材の前記他端部に設けられて前記操作ハンドルの後端部の下面を押圧する押圧突起よりも上方に突出するように形成される、
請求項1~3のうちいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記操作ハンドルの端部上面には係止孔が設けられ、前記ロック部材又は前記付勢部材には、前記アッパレールに対する固定位置から車両前方に延びる付勢部と、前記付勢部の先端に設けられ前記係止孔に係合される係止爪とが形成され、
前記ロック解除レバーの前記後側上部支持面は、左右一対に間隔をおいて設けられ、前記付勢部の左右方向の幅は、左右一対の前記後側上部支持面相互間の間隔よりも狭く形成される、
請求項1~3のうちいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用のシートに用いられるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のシートスライド装置は、車体に固定したロアレールに対し、シートに固定したアッパレールをスライド移動自在に設け、アッパレールに取り付けたロック部材のロック歯(ロック部)を、ロアレールのロック溝(被ロック部)に係合させてロック状態となる。特許文献1,2のシートスライド装置は、ロック部をロック解除方向に動作させるロック解除レバーを備え、ロック解除レバーは、その回動中心よりも前側の部分が付勢部材により上方に付勢される。特許文献1,2では、ロック解除レバーの後端とロック部との間にクリアランス(隙間、空間)がない状態で接触するようにロック解除レバーが付勢される。
【0003】
特許文献1では、前述の付勢部材は、ロック解除レバーの前端に挿入される操作ハンドルとロック解除レバーとの間に設けられる。また、ロック解除レバーの回動中心とは異なる左右方向の軸周りに操作ハンドルの後端接続部が揺動可能に支持されると共に、ロック解除レバーに対して操作ハンドルが軸方向に抜け止めされる。
【0004】
その一方、特許文献2では、前述の付勢部材はアッパレールに設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-126184号公報
【特許文献2】特開2018-052401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の付勢部材は、下側支持部による下側被支持部の支持状態、及び、上側支持部による上側被支持部の支持状態を常に維持する方向に付勢する。このため、操作ハンドルを待機位置からロック解除方向に操作した際に、ロック解除レバーがロック部をロック解除方向にすぐに押し始める。操作ハンドルの操作ストロークを小さくできる半面、操作ハンドルの動き出しからロック解除までが短くなることにより、操作フィーリングとして、操作者の感覚よりも早くロックが解除されたように感じられてしまう場合がある。
【0007】
また、特許文献1,2では、操作ハンドルが左右のシートスライド装置を連結する剛体であるため、左右のシートスライド装置の上下方向の位相差(取付位置のずれ又は衝突等による変形)により、ロック解除レバーが待機状態においてロック解除方向に回動し得る。このため、操作ハンドルとロック解除レバーとの間には、操作ハンドルの待機位置から反ロック解除方向(ロック解除方向とは反対側の方向)にクリアランスが設けられている。これにより、操作ハンドルを下方に押す負荷により、操作ハンドルがクリアランスの範囲内で下方に移動しても、ロック解除レバーが回動しないようにしている。
【0008】
そこで、本発明は、より簡単な構造により、非操作状態である操作ハンドルの待機位置に対して、ロック解除方向と反ロック解除方向との両方向において操作ハンドルのみをロック解除レバーに対して回動できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係わるシートスライド装置は、車両前後方向に沿って延設されるロアレールと、ロアレールの長手方向に沿って相対移動するアッパレールと、アッパレールに取り付けられ、ロアレールに形成された被ロック部に係合するロック方向に付勢されたロック部を備えたロック部材と、アッパレールに対して左右方向の軸周りに回動可能に支持され、ロック解除操作に伴ってロック部をロック位置からロック解除位置に移動させるロック解除レバーと、ロック解除レバーの前端部に接続される操作ハンドルと、ロック部をロック方向に付勢する付勢力よりも弱い付勢力により、ロック解除レバーの前端部をロック解除方向に付勢する付勢部材と、を有する。ロック解除レバーの前端部には、操作ハンドルの端部上面に対向する前側上部支持面及び後側上部支持面が車両前後方向に間隔をおいて設けられ、さらに、操作ハンドルの端部下面に対向する前側下部支持面が前側上部支持面の下方に位置させて設けられる。アッパレールには、操作ハンドルの端部下面に対向する後側下部支持面が後側上部支持面の下方に位置させて設けられる。付勢部材は、一端部がアッパレールに固定され、他端部が前側上部支持面と後側上部支持面との間の位置において操作ハンドルの端部下面に下方から係合して、操作ハンドルを上方に付勢する。ロック解除レバーに設けられた前側下部支持面と、操作ハンドルの端部下面との間、及び、アッパレールに設けられた後側下部支持面と、操作ハンドルの端部下面との間には、それぞれ上下方向のクリアランスが設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡単な構造により、非操作状態である操作ハンドルの待機位置に対して、ロック解除方向と反ロック解除方向との両方向において操作ハンドルのみをロック解除レバーに対して回動できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係わるシートスライド装置の分解斜視図である。
図2】アッパレールとロアレールとの間に配置される下方ガイドボール及び上方ガイドボールを含むシートスライド装置の断面図である。
図3】ロアレールの斜視図である。
図4】アッパレールの斜視図である。
図5】ロック部材の斜視図である。
図6】付勢部材の斜視図である。
図7】固定部材の斜視図である。
図8】ロック解除レバーの斜視図である。
図9A】操作ハンドルの一部を示す斜視図である。
図9B】操作ハンドルの一部を下方から見た斜視図である。
図10】ロック解除レバーにロック部材を組み付けた状態を操作ハンドルも含めて示す斜視図である。
図11】第1の実施形態に係わるシートスライド装置の要部拡大の側断面図である。
図12】操作ハンドルをロック解除方向に操作した状態を示すシートスライド装置の要部拡大の側断面図である。
図13】操作ハンドルに反ロック解除方向への負荷が作用した状態を示すシートスライド装置の要部拡大の側断面図である。
図14】第2の実施形態に係わるシートスライド装置の図11に対応する側面断面図である。
図15】第2の実施形態に係わるシートスライド装置の図10に対応する斜視図である。
図16】第3の実施形態に係わるシートスライド装置の図11に対応する側面断面図である。
図17】第3の実施形態に係わるシートスライド装置の図10に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1図2に示す本発明の第1の実施形態に係わるシートスライド装置101は車両用シートの前後方向への調節を手動で行う手動式である。シートスライド装置101は、車両の床面上に設置され、車両前後方向に沿って延設されるロアレール103と、シート座部(図示せず)の裏面に設置され、ロアレール103の長手方向に沿って、ロアレール103内を相対移動自在に組み付けられるアッパレール105とを備えている。ロアレール103とアッパレール105とでレール体106を構成しており、レール体106は左右一対設けられている。なお、以下の説明(第2、第3の実施形態も含む)で、「前」は図1中で左側の車両前方FR側で、「後」は図1中で右側の車両後方RR側であり、「左右」は車両後方から車両前方を見たときの左右方向である。
【0014】
ロアレール103は、図2に示すように、車両前後方向に延びる長方形の板形状を具備するロア底壁103aを備えている。ロア底壁103aの車幅方向の両端縁から、左右一対のロア外側壁103bが、ロア底壁103aから上方に向けて若干外側に傾斜するように立ち上がっている。左右一対の両ロア外側壁103bの下端とロア底壁103aとの間にはロア斜壁103cが形成されている。左右一対の両ロア外側壁103bの上端縁から、互いに近づく方向にロア底壁103aと平行に延在する左右一対のロア上壁103dが設けられている。
【0015】
左右一対のロア上壁103dの内端縁からロア底壁103aに向かって下方に垂下する、左右一対のロア内側壁103eが設けられている。なお、互いに平行な状態で対向するロア内側壁103e間の間隔は、ロアレール103内に収容されるアッパレール105が移動可能なように設定されている。
【0016】
アッパレール105は、車体前後方向に延びる長方形の板形状を具備するアッパ天壁105aを備えている。アッパ天壁105aの車幅方向の両端縁から、左右一対のアッパ側壁105bが下方に向けて垂下している。両アッパ側壁105bの下端縁から、アッパ下方斜壁105cがそれぞれの外側斜め上方に向けて立ち上がっている。左右一対の両アッパ下方斜壁105cの上端縁から、屈曲部105dを介してアッパ上方斜壁105eがロア上壁103dに向かって斜め上方に向けて立ち上がっている。
【0017】
ロアレール103のロア底壁103aとロア斜壁103cとの間の下方円弧部103fと、アッパレール105のアッパ下方斜壁105cとの間に、下方ガイドボール107を転動自在に配置している。ロアレール103のロア外側壁103bとロア上壁103dとの間の上方円弧部103gと、アッパレール105のアッパ上方斜壁105eとの間に上方ガイドボール109を転動自在に配置している。
【0018】
下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109は、図1に示すように、図2では省略しているボールリテーナ111に回転自在に支持されている。ボールリテーナ111は、下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109を2個ずつ、計4個を支持している。これら下方ガイドボール107及び上方ガイドボール109を支持した状態のボールリテーナ111は、ロア外側壁103b、ロア斜壁103c、ロア上壁103d及びロア内側壁103eに囲まれた収容部113(図2)内に、前後2カ所配置され、左右一対のレール体106に対して計4カ所配置される。
【0019】
レール体106を組み立てた状態において、アッパレール105の前方側におけるアッパ天壁105aには、リベット、固定ピン等の固定部材115によってロック部材117を固定している。ロック部材117は、板状のばね部材で構成している。ロック部材117は、固定部材115によって固定される基部としての固定部119に、固定部材115が挿入される固定孔119aを備えている。ところで、アッパレール105のアッパ天壁105aには、アッパ固定孔105fの周辺部分が、他のアッパ天壁105aの部分に対して下方に窪んで形成されている。これにより、固定部材115の頭部がアッパレール105のアッパ天壁105aの他の上面よりも突出しないように設定される。
【0020】
図7は取付け前の固定部材115を示している。固定部材115は、要部拡大の側断面図である図11にも示すように、固定孔119a及びアッパ固定孔105fに下方から挿入される挿入軸部115aと、挿入軸部115aの下部に形成されて後述する付勢部材側固定孔134aが挿入される、挿入軸部115aよりも直径が大きい第2挿入軸部115eと、第2挿入軸部115eの下部に形成されて第2挿入軸部115eよりも直径が大きい大径部115bと、大径部115bの挿入軸部115aと反対側の下部に形成されるフランジ部115cとを備えている。フランジ部115cは、側方に向けて突出する突部を構成している。
【0021】
フランジ部115cは、図11に示すように、後述する図8に示すロック解除レバー131の左右の側壁147に設けてある支持突起147eの下方に位置している。支持突起147eは、図8に示すように、前後方向の中央位置よりも若干前方に位置し、ロック解除レバー131の一部である側壁147から内側に向けて切起こして形成されたものである。
【0022】
支持突起147eは、上部が側壁147につながっていて、下部が側壁147に対して切断され、切断された下端面がフランジ部115cの上面に対向している。支持突起147eの下端面とフランジ部115cの上面との間には上下方向の隙間が形成されている。隙間を備えることで、ロック解除レバー131の固定部材115を設けた部分の揺動支点部151(図10参照)を支点とする前後方向の揺動を可能にしている。
【0023】
図5に示すロック部材117の固定部119は、図1に示すアッパ天壁105aとほぼ平行に前後方向に延在し、固定部119の後端から後方斜め下方に傾斜する後方傾斜部121が形成される。後方傾斜部121の後端から固定部119とほぼ平行に後方に向けて延在する後方弾性変形部123が形成されている。後方弾性変形部123の後端部125は、後方弾性変形部123よりも左右方向の幅が広く、平面視で矩形となっている。後方弾性変形部123は後方付勢部を構成している。
【0024】
後端部125には、左右両側縁部付近に前後方向に沿って二つずつの矩形の孔125aが形成されている。ところで、後端部125における各孔125aの前後方向に隣接する部分は、左右両側方に突出するロック部としてのロック歯125bを構成する。ロック歯125bは、左右両側にそれぞれ三箇所形成される。左右両側のそれぞれ三箇所のロック歯125bは、先端側が、前後方向に延びる接続部125cで接続された構成となる。
【0025】
図4に示すように、アッパレール105の前後方向のほぼ中央付近において、左右両アッパ側壁105bから両アッパ下方斜壁105cにわたり、ロック歯受入凹部129を、前後方向に沿って左右それぞれ三箇所形成している。レール体106を組み立てた状態において、三箇所のロック歯受入凹部129にロック部材117の三つのロック歯125bが下方から入り込んでいる。このとき、ロック歯受入凹部129相互間の突起126が、ロック部材117の孔125aに挿入される。その際、後端部125の接続部125c付近が、アッパレール105に干渉するのを避けるために、ロック歯受入凹部129の下部に連続する開口部128、アッパ上方斜壁105eに形成した切欠開口130を、アッパレール105の左右両側に設けてある。
【0026】
一方、図3に示すように、ロアレール103の左右のロア内側壁103eの前部付近及び後部付近を除く位置には、被ロック部としてのロック溝127を前後方向に沿って複数設けている。ロック溝127にロック部材117のロック歯125bが、ロック歯受入凹部129に位置している状態で下方から入り込むことで、ロック部材117がロアレール103に対してロックした状態となる。これにより、ロック部材117を取り付けてあるアッパレール105は、ロアレール103に対して前後方向の移動が規制される。
【0027】
ロック部材117は、アッパレール105に取り付けた状態で、後方弾性変形部123が上方に弾性力を付与することで、ロック歯125bがロック溝127に入り込んだ状態が維持される。この状態から、図1に示す操作ハンドル133をロック解除方向(上方)に向けて操作することで、ロック解除レバー131を介してロック部材117の後端部125が下方に押され、ロックが解除される。操作ハンドル133は、アッパレール105内に前部から挿入されてロック解除レバー131と連動可能に配置される。
【0028】
ロック部材117は、図5に示すように、固定部119の固定孔119aに対応する位置の左右両側部から、それぞれ側方に向けて突出する被支持部としての軸受突起119bを備えている。軸受突起119bは、固定部119を含むロック部材117の板厚と同じ厚さで側方に突出していて、平面視で矩形状である。
【0029】
図11に示すように、アッパレール105のアッパ天壁105aの下面には、ロック部材117を構成する板ばねと共に付勢部材132が固定部材115により固定されている。この付勢部材132は、基部134がアッパ天壁105aの下面に固定され、中間部の折り返し部135が基部134から後方に延びると共にその途中で前方に折り返され、先端部136が固定部材115の下方を通って前方に延びて、略U字状に形成されている。付勢部材132は、ロック部材117と同様に、板状のばね部材で構成している。
【0030】
図6に示すように、付勢部材132の基部134には、固定部材115の第2挿入軸部115eが挿入される固定孔(付勢部材側固定孔)134aが設けられている。また、付勢部材132の基部134には、固定部材115の挿入軸部115aが通過可能な、付勢部材側固定孔134aの車両前方に連続する切欠開口134bが設けられている。付勢部材132の先端部136は、折り返し部135の先端(下端)から前方に向けて基部134とほぼ平行に延在している。付勢部材132の先端部136は、前方付勢部を構成している。
【0031】
付勢部材132の先端(下端)には、上方に向けて凸となるように湾曲する押圧突起145が形成されている。押圧突起145は、図11に示すように、操作ハンドル133の後端部の下面169b3に設けられた、図9Bに示す凹溝137に下方から入り込んで係合している。付勢部材132の先端部136は、押圧突起145を介して操作ハンドル133を上方に向けて押圧している。付勢部材132の操作ハンドル133に対する押圧力は、後方弾性変形部123のロック歯125bによるロック溝127への押圧力よりも弱く設定している。
【0032】
また、付勢部材132の先端部136には、押圧突起145よりも後方の位置において係止突起138が左右一対に設けられている。図9A図9Bに示す操作ハンドル133の後端部の下面にはスリット139が設けられ、図11に示すように、スリット139に係止突起138が係合する。また、係止突起138は、操作ハンドル133の後端部の下面を押圧する押圧突起145よりも上方に突出するように形成されている。
【0033】
図8に示すように、ロック解除レバー131は、左右の側壁147と、左右の側壁147の後方側の端部付近の領域において、左右の側壁147の上端相互をつなぐ上壁149とを備えている。ロック部材117は、後部付近を除く部位が、ロック解除レバー131の左右の側壁147相互間に配置される。また、付勢部材132は、ロック解除レバー131の左右の側壁147相互間に配置される。すなわち、ロック解除レバー131は、ロック部材117及び付勢部材132とアッパレール105の長手方向及び上下方向で重なる位置に設けられている。
【0034】
ロック解除レバー131の前後方向の中間位置より前方側の側壁147の上側端部には、支持部としての凹所147aを形成している。凹所147aは、支持突起147eの上方に位置しており、上方が開放した円弧形状の凹曲面状となっている。凹所147aは、ロック部材117の左右の軸受突起119bの下側に配置されて、軸受突起119bの下部が凹所147aに係合される。ロック部材117の軸受突起119b及びロック解除レバー131の凹所147aは、ロック解除レバー131と操作ハンドル133とが一体的に上下に揺動する際の揺動支点部151を構成する。揺動支点部151は、ロック部材117によるアッパレール105に対する固定部位と前後方向で一致している。
【0035】
ロック解除レバー131は、上壁149から後方に延びる解除押圧部153を備えている。解除押圧部153の後端側の下部には、下方に湾曲するようにして突出する湾曲凸部153aが形成されている。湾曲凸部153aは、ロック部材117における後方弾性変形部123の後端部125の上面に当接している。上壁149には、上方に向けて切起こしにより形成したストッパ突起149aを形成している。ストッパ突起149aは、ロック解除レバー131及び操作ハンドル133が揺動支点部151を支点として図11中で反時計回り方向に揺動回転するときにアッパレール105のアッパ天壁105aに当接するストッパの役目を果たす。
【0036】
ロック解除レバー131の前端部の上端相互は、前部上壁157によりつながっている。前部上壁157の下面は、前側上部支持面157aを構成している。左右両側壁147の前端下部には、両側壁147から互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する前側下部突起147bが形成されている。左右の前側下部突起147bの先端相互は互いに離間していて相互間には隙間が形成されている。前側下部突起147bの上面は、前側下部支持面147cを構成している。
【0037】
前部上壁157の後方で且つ凹所147aの前方となる両側壁147の上部には、後部上壁158が形成されている。後部上壁158の下面は、後側上部支持面158aを構成している。すなわち、ロック解除レバー131の前端部には、操作ハンドル133の後端部の上面169b1に対向する一対の上部支持面(前側上部支持面157a、後側上部支持面158a)が車両前後方向に間隔をおいて設けられている。さらに、ロック解除レバー131の前端部には、操作ハンドル133の後端部の下面169b3に対向する前側下部支持面147cが前側上部支持面157aの下方に位置させて設けられている。
【0038】
図1に示すように、操作ハンドル133は、左右一対のレール体106に対応して設けられる左右一対のアーム部167と、左右一対のアーム部167同士をつないで車幅方向に延在する把持部168とを備えている。左右一対のアーム部167は、前後方向に延在し、左右それぞれのアッパレール105内に前端から挿入される。把持部168は、操作ハンドル133を乗員が操作するときに把持する。
【0039】
アーム部167は、図10に示すように、後端部が、ロック解除レバー131の左右の側壁147相互間に挿入されている。アーム部167は、把持部168を含めた全体が円筒部材で構成しており、前述した後端部が、円筒部材をプレス成形により加工した形状の後方接続部としての接続端部169となっている。
【0040】
図9A図9Bに示すように、接続端部169は、上面169b1と、上面169b1の左右の両端部から下方に延びる側面169b2と、左右の側面169b2の下端から左右内側に向けて設けられる下面169b3とを備えた略四角形断面となっている。接続端部169の下面169b3には、車両前後方向に沿って延びる凹溝137が設けられている。また、接続端部169の下面169b3には、前述したスリット139と、接続端部169の後端部に設けられて上方に傾斜する下側テーパ面171とが形成されている。
【0041】
図11に示すように、アッパレール105の左右両アッパ側壁105bには、車両前後方向においてアッパ固定孔105fの前方の位置に、両アッパ側壁105bから互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する後側下部突起148が形成され、後側下部突起148の周囲には略U字状のスリット149bが形成されている。左右の後側下部突起148の先端相互は互いに離間していて相互間には隙間が形成されている。後側下部突起148の上面は、後側下部支持面148aを構成している。すなわち、アッパレール105には、操作ハンドル133の後端部の下面169b3に対向する後側下部支持面148aが後側上部支持面158aの下方に位置させて設けられている。また、図6に示す付勢部材132の先端部136の左右方向の幅は、後側下部支持面148aを構成する左右一対の後側下部突起148相互間を通ることができるようにするために、左右一対の後側下部突起148相互間の隙間よりも狭く形成されている。
【0042】
付勢部材132は、前側上部支持面157aと後側上部支持面158aとの間の位置(中間位置)において操作ハンドル133の後端部の下面169b3に下方から係合して、操作ハンドル133を上方に付勢している。これにより、操作ハンドル133の上面169b1が一対の上部支持面(前側上部支持面157a、後側上部支持面158a)に接触している。このとき、ロック解除レバー131に設けられた前側下部支持面147cと、操作ハンドル133の後端部の下面169b3との間、及び、アッパレール105に設けられた後側下部支持面148aと、操作ハンドル133の後端部の下面169b3との間には、それぞれ上下方向のクリアランスC1,C2が設けられている。
【0043】
次に、上記のように構成されたシートスライド装置101の動作を説明する。
【0044】
図11は、ロック部材117のロック歯125bがロアレール103のロック溝127に係合してロックされた待機状態(操作ハンドル133を操作していない非操作状態)である。この状態においては、操作ハンドル133は、付勢部材132の押圧突起145により、一対の上部支持面(前側上部支持面157a、後側上部支持面158a)に押し付けられている。この付勢部材132の押し付け力(付勢力)は、操作ハンドル133が自重により下がろうとする力よりも大きく、ロック部材117をロック方向に付勢する力よりも小さいため、前述の待機状態が維持される。
【0045】
図11に示す状態から、乗員が操作ハンドル133の把持部168を持ち上げる操作をすると、前側上部支持面157aと操作ハンドル133の上面169b1との接点を支点として操作ハンドル133が回動し、操作ハンドル133の後端が付勢部材132の押圧突起145を押し下げて下方に移動する。その状態から、操作ハンドル133の把持部168をさらに持ち上げると、操作ハンドル133の後端部の下面169b3がアッパレール105に設けられた後側下部支持面148aに当接して、後側下部支持面148aと操作ハンドル133の後端部の下面169b3との接点を支点として操作ハンドル133が回動することになる。これにより、操作ハンドル133の上面169b1が、ロック解除レバー131の前側上部支持面157aを上方に持ち上げるように回動し、ロック解除レバー131がロック部材117のロック部をロック解除方向に回動させる(図12参照)。
【0046】
これにより、ロック解除レバー131は、揺動支点部151を中心として図11中で時計回り方向に揺動回転する。このとき、ロック解除レバー131は、揺動回転によって後方の解除押圧部153の湾曲凸部153aが、ロック部材117のロック部周辺に相当する後端部125を下方に押し下げ、後方弾性変形部123が下方に向けて弾性変形する。すなわち、解除押圧部153は、ロック部材117のロック歯125b周辺を押圧可能である。その結果、ロック歯125bがロアレール103のロック溝127から外れてロックが解除される。ロックが解除されることで、図示しないシートをアッパレール105と共に、ロアレール103側の車両の床面に対して前後に移動させることができ、乗員の希望とするシート位置を確保できる。
【0047】
シート位置を決定した状態で、乗員が操作ハンドル133から手を離すと、ロック部材117の後方弾性変形部123が解除押圧部153を上方に押し付け、ロック解除レバー131を揺動回転させて図11の待機状態に戻る。このとき、ロック解除レバー131は、揺動支点部151を中心として図11中で反時計回り方向に揺動回転する。
【0048】
図11の状態で、操作ハンドル133に反ロック解除方向(下方)への負荷が作用した場合には、後側上部支持面158aと操作ハンドル133の上面169b1との接点を支点として操作ハンドル133が回動し、操作ハンドル133の下面169b3と前側下部支持面147cとの間のクリアランスC1の分だけ、操作ハンドル133が下方に移動することができる(図13参照)。さらに、本実施形態では、ロック解除レバー131の支持突起147eが固定部材115のフランジ部115cに接触するまでロック解除レバー131が下方に下がることができる。これにより、操作ハンドル133を下方に押し下げる方向の衝撃を軽減することができる。また、剛体である操作ハンドル133に対して左右のレール体106に位相差が生じた場合でも、この位相差を吸収することができ、位相差により一方のレール体106のロック解除レバー131がロック解除方向に回動してしまうことを抑制することができる。
【0049】
以下、本実施形態に係わるシートスライド装置101の作用効果を説明する。
【0050】
(1)シートスライド装置101は、車両前後方向に沿って延設されるロアレール103と、ロアレール103の長手方向に沿って相対移動するアッパレール105と、アッパレール105に取り付けられ、ロアレール103に形成された被ロック部に係合するロック方向に付勢されたロック部(ロック歯125b)を備えたロック部材117と、アッパレール105に対して左右方向の軸周りに回動可能に支持され、ロック解除操作に伴ってロック部をロック位置からロック解除位置に移動させるロック解除レバー131と、ロック解除レバー131の前端部に接続される操作ハンドル133と、ロック部をロック方向に付勢する付勢力よりも弱い付勢力により、ロック解除レバー131の前端部をロック解除方向に付勢する付勢部材132と、を有する。ロック解除レバー131の前端部には、操作ハンドル133の後端部の上面169b1に対向する前側上部支持面157a及び後側上部支持面158aが車両前後方向に間隔をおいて設けられ、さらに、操作ハンドル133の後端部の下面169b3に対向する前側下部支持面147cが前側上部支持面157aの下方に位置させて設けられる。アッパレール105には、操作ハンドル133の後端部の下面169b3に対向する後側下部支持面148aが後側上部支持面158aの下方に位置させて設けられる。付勢部材132は、一端部がアッパレール105に固定され、他端部が前側上部支持面157aと後側上部支持面158aとの間の位置(中間位置)において操作ハンドル133の後端部の下面169b3に下方から係合して、操作ハンドル133を上方に付勢する。ロック解除レバー131に設けられた前側下部支持面147cと、操作ハンドル133の後端部の下面169b3との間、及び、アッパレール105に設けられた後側下部支持面148aと、操作ハンドル133の後端部の下面169b3との間には、それぞれ上下方向のクリアランスC1,C2が設けられている。
【0051】
待機状態(操作ハンドル133を操作していない非操作状態)では、操作ハンドル133は、付勢部材132により上方に付勢されて、車両前後方向に配置した一対の上部支持面(前側上部支持面157a及び後側上部支持面158a)に押し付けられている。このため、一対の上部支持面の下方に配置された、ロック解除レバー131に設けた前側下部支持面147cと、アッパレール105に設けた後側下部支持面148aに対しては、操作ハンドル133の後端部の下面169b3はクリアランスC1,C2を有して対向する。
【0052】
非操作状態である操作ハンドル133の待機位置からロック解除方向(上方)に操作ハンドル133を持ち上げると、前側上部支持面157aと操作ハンドル133の後端部の上面169b1との接点を支点に、操作ハンドル133の後端部の下面169b3がロアレール103に設けた後側下部支持面148aに接触するまで、操作ハンドル133のみが回動する。そして、操作ハンドル133をさらに上方に持ち上げると、アッパレール105に設けた後側下部支持面148aとの接点を支点に操作ハンドル133が回動することになり、操作ハンドル133の後端部の上面169b1が、ロック解除レバー131の前側上部支持面157aを上方に持ち上げることで、ロック解除レバー131がロック解除方向に回動する。
一方、非操作状態である操作ハンドル133の待機位置から反ロック解除方向(下方)に操作ハンドル133を押し下げると、後側上部支持面158aと操作ハンドル133の後端部の上面169b1の接点を支点に、操作ハンドル133の後端部の下面169b3がロック解除レバー131に設けた前側下部支持面147cに接触するまで、操作ハンドル133のみが回動する。
【0053】
したがって、非操作状態である操作ハンドル133の待機位置からロック解除方向(上方)と反ロック解除方向(下方)との両方向において、その移動初期に操作ハンドル133のみがロック解除レバー131に対して回動できる範囲を設定することができる。
【0054】
このような構造を、ロック解除レバー131をロック解除方向に付勢する付勢部材132のみで構成することができるため、構造が簡単であり、製造コストを抑制することができる。
【0055】
(2)ロック部(ロック歯125b)をロック方向に付勢する板ばね(ロック部材117)をアッパレール105の下面に固定する固定部材115が設けられる。付勢部材132は、基部134がアッパレール105の下面にロック部材117と共に固定部材115により固定され、中間部の折り返し部135が基部134から車両後方に延びると共にその途中で車両前方に折り返され、先端部136が固定部材115の下方を通って車両前方に延びて、略U字状に形成される。
【0056】
固定部材115で固定される付勢部材132の一端部の位置から操作ハンドル133の後端部の下面169b3の位置までを、固定部材115及び操作ハンドル133に干渉することなく、十分な長さをもって配置することができる。また、固定部材115から操作ハンドル133の押し点(押圧突起145の位置)までの前後方向長さが短い場合でも、付勢部材132を容易に配置することができる。これにより、シートスライド装置101において、固定部材115の位置から前方側の寸法を小さくすることができる。
【0057】
(3)操作ハンドル133の後端部の下面169b3には、車両前後方向に沿って延びる凹溝137が設けられ、アッパレール105は、左右一対の側壁147を備える。後側下部支持面148aは、左右一対の側壁147から左右方向内側に向けて突出する突起部(後側下部突起148)に形成され、左右一対の突起部の先端相互間には隙間が形成される。付勢部材132の基部134には、固定部材115が挿入される固定孔(付勢部材側固定孔134a)が設けられ、付勢部材132の先端部136の左右方向の幅は、左右一対の突起部相互間の隙間よりも狭く形成される。
【0058】
付勢部材132の先端部136が、後側下部支持面148aを構成する一対の突起部(後側下部突起148)の間を上下に通ることができると共に、操作ハンドル133の後端部の下面169b3に設けた凹溝137に入ることができる。このため、付勢部材132の先端部136が操作ハンドル133の上方への回動に追従して移動しても後側下部支持面148aに干渉することがない。よって、付勢部材132の先端部136が後側下部支持面148aを大きく逃げるように形成する必要がなく、付勢部材132をコンパクトに配置することができる。
【0059】
また、付勢部材132の先端部136が固定部材115の下方を通るように構成されているが、付勢部材132の先端部136は左右方向の幅が十分に狭い。このため、固定部材115をアッパレール105に固定する際に固定部材115の下面を押さえる治具を用いて、固定部材115をかしめ固定することができる。
【0060】
(4)操作ハンドル133の後端部の下面169b3にはスリット139が設けられ、スリット139に係合する係止突起138が付勢部材132の先端部136に設けられる。係止突起138は、付勢部材132の先端部136に設けられて操作ハンドル133の後端部の下面169b3を押圧する押圧突起145よりも上方に突出するように形成される。
【0061】
係止突起138がスリット139に係合することにより、操作ハンドル133の軸方向の抜け止めを構成することができる。
【0062】
また、操作ハンドル133の後端部をロック解除レバー131の前端部に差し込む際に、操作ハンドル133の後端が付勢部材132の先端部136を下方に押し下げながらロック解除レバー131の前端部に差し込まれる。係止突起138が押圧突起145よりも上方に突出していることにより、押圧突起145がスリット139に係合することがなく、操作ハンドル133の誤組み付けを防止することができる。
【0063】
[第2の実施形態]
図14は、第2の実施形態に係わるシートスライド装置の図11に対応する側面断面図である。図15は、第2の実施形態に係わるシートスライド装置の図10に対応する斜視図である。
【0064】
以下、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0065】
シートスライド装置101Aでは、操作ハンドル133の軸方向の抜け止めを構成する係止爪132aが板ばね(ロック部材117)に設けられている。操作ハンドル133の後端部の上面169b1に設けた係止孔161に係合する係止爪132aをロック部材117の固定部119から前方に延びる前方延長部132bの先端に形成している。操作ハンドル133をロック解除レバー131に差し込む際に係止爪132aを避けるために上側テーパ面172が設けられている。係止爪132aが下向きに形成されている。
【0066】
ロック解除レバー131の左右両側壁147の上部には、両側壁147から互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する後側上部突起147fが形成されている。左右の後側上部突起147fの先端相互は互いに離間していて相互間には隙間が形成されている。後側上部突起147fの下面は、後側上部支持面158aを構成している。すなわち、ロック解除レバー131には、操作ハンドル133の後端部の下面169b3に対向する後側上部支持面158aが後側下部支持面148aの上方に位置させて設けられている。また、ロック部材117の前方延長部132bの左右方向の幅は、後側上部支持面158aを構成する左右一対の後側上部突起147f相互間を通ることができるようにするために、左右一対の後側上部突起147f相互間の隙間よりも狭く形成されている。
【0067】
第2の実施形態では、操作ハンドル133の後端部の上面169b1には係止孔161が設けられる。ロック部材117には、アッパレール105に対する固定位置から車両前方に延びる付勢部(前方延長部132b)と、前方延長部132bの先端に設けられ係止孔161に係合される係止爪132aとが形成される。ロック解除レバー131の後側上部支持面158aは、左右一対に間隔をおいて設けられ、前方延長部132bの左右方向の幅は、左右一対の後側上部支持面158a相互間の間隔よりも狭く形成される。
【0068】
係止爪132aが係止孔161に係合することにより、操作ハンドル133の軸方向の抜け止めを構成することができる。
【0069】
また、ロック解除レバー131がロック解除方向に回動した場合に、ロック解除レバー131の後側上部支持面158aに係止爪132a及び前方延長部132bが干渉しない。このため、係止爪132aがロック解除レバー131の後側上部支持面158aを逃げるように形成する必要がなく、係止爪132a及び前方延長部132bを有するロック部材117をコンパクトに配置することができる。
【0070】
[第3の実施形態]
図16は、第3の実施形態に係わるシートスライド装置の図11に対応する側面断面図である。図17は、第3の実施形態に係わるシートスライド装置の図10に対応する斜視図である。
【0071】
以下、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0072】
シートスライド装置101Bでは、操作ハンドル133の軸方向の抜け止めを構成する係止爪133aが付勢部材132の基部134に設けられている。操作ハンドル133の後端部の上面169b1に設けた係止孔161に係合する係止爪133aを付勢部材132の基部134から前方に延びる前方延長部133bの先端に形成している。操作ハンドル133をロック解除レバー131に差し込む際に係止爪133aを避けるために上側テーパ面172が設けられている。係止爪133aが下向きに形成されている。
【0073】
ロック解除レバー131の左右両側壁147の上部には、両側壁147から互いに対向する側に向けて屈曲するようにして突出する後側上部突起147fが形成されている。左右の後側上部突起147fの先端相互は互いに離間していて相互間には隙間が形成されている。後側上部突起147fの下面は、後側上部支持面158aを構成している。すなわち、ロック解除レバー131には、操作ハンドル133の後端部の下面169b3に対向する後側上部支持面158aが後側下部支持面148aの上方に位置させて設けられている。また、付勢部材132の前方延長部133bの左右方向の幅は、後側上部支持面158aを構成する左右一対の後側上部突起147f相互間を通ることができるようにするために、左右一対の後側上部突起147f相互間の隙間よりも狭く形成されている。
【0074】
第3の実施形態では、操作ハンドル133の後端部の上面169b1には係止孔161が設けられる。付勢部材132には、アッパレール105に対する固定位置から車両前方に延びる付勢部(前方延長部133b)と、前方延長部133bの先端に設けられ係止孔161に係合される係止爪133aとが形成される。ロック解除レバー131の後側上部支持面158aは、左右一対に間隔をおいて設けられ、前方延長部133bの左右方向の幅は、左右一対の後側上部支持面158a相互間の間隔よりも狭く形成される。
【0075】
係止爪133aが係止孔161に係合することにより、操作ハンドル133の軸方向の抜け止めを構成することができる。
【0076】
また、ロック解除レバー131がロック解除方向に回動した場合に、ロック解除レバー131の後側上部支持面158aに係止爪133a及び前方延長部133bが干渉しない。このため、係止爪133aがロック解除レバー131の後側上部支持面158aを逃げるように形成する必要がなく、係止爪133a及び前方延長部133bを有する付勢部材132をコンパクトに配置することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含む。
【符号の説明】
【0078】
101,101A,101B シートスライド装置
103 ロアレール
105 アッパレール
115 固定部材
117 ロック部材
125b ロック歯(ロック部)
131 ロック解除レバー
132 付勢部材
132a 係止爪
133 操作ハンドル
133a 係止爪
134 基部
134a 固定孔(付勢部材側固定孔)
135 折り返し部
136 先端部
137 凹溝
138 係止突起
139 スリット
145 押圧突起
147c 前側下部支持面
148a 後側下部支持面
157a 前側上部支持面
158a 後側上部支持面
169 接続端部
169b1 上面
169b3 下面
C1 クリアランス
C2 クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17