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  • 特開-粘着ラベル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017192
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】粘着ラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/10 20060101AFI20230131BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230131BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20230131BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20230131BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20230131BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20230131BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20230131BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20230131BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G09F3/10 B
C09J7/38
C09J7/25
C09J7/40
C09J167/00
B65D23/08 B
B65D23/00 H
B65D25/20 Q
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121274
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森田 和明
【テーマコード(参考)】
3E062
3E086
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AC02
3E062AC08
3E062BB06
3E062DA01
3E062DA02
3E062DA07
3E062JB04
3E062JC10
3E086AB01
3E086AD04
3E086AD05
3E086AD30
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB23
3E086BB35
4J004AA15
4J004AB01
4J004CA06
4J004DB03
4J004EA01
4J040ED001
4J040ED031
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA03
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA06
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】ポリエステル系容器から剥がすことなくポリエステル系容器のリサイクル処理を可能とするとともに、ポリエステル系容器に対して高速で貼付する際に、好適に貼付できる粘着ラベルを提供する。
【解決手段】ポリエステル系容器に貼付される粘着ラベルであって、ポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系粘着剤層と、前記ポリエステル系粘着剤層の、前記樹脂基材が設けられる反対側の面に配置される剥離ライナーと、を有し、前記剥離ライナーの前記ポリエステル系粘着剤側の表面粗さRaは0.7μm以下である、粘着ラベル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系容器に貼付される粘着ラベルであって、
ポリエステル系の樹脂基材と、
ポリエステル系粘着剤層と、
前記ポリエステル系粘着剤層の、前記樹脂基材が設けられる反対側の面に配置される剥離ライナーと、を有し、
前記剥離ライナーの前記ポリエステル系粘着剤層側の表面粗さRaは0.7μm以下である、粘着ラベル。
【請求項2】
前記剥離ライナーは、
剥離基材と、
前記ポリエステル系粘着剤層に隣り合うように配置される剥離剤層と、を有する、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項3】
前記剥離基材は、ポリエステル系フィルムである、請求項2に記載の粘着ラベル。
【請求項4】
前記剥離基材は、紙基材に熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙である、請求項2に記載の粘着ラベル。
【請求項5】
前記剥離ライナーの厚みは、25~100μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項6】
前記樹脂基材の厚みは、25~100μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項7】
前記ポリエステル系粘着剤層の貯蔵弾性率は、23℃、周波数1Hzにおいて、1×10~100×10Paである、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着ラベルが貼付されてなる、ポリエステル系容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染、石油資源の枯渇などの問題から、ポリエステル系容器のリサイクル化が強く望まれている。ポリエステル系容器の中でも、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのリサイクル化が望まれている。
【0003】
ポリエステル系容器のマテリアルリサイクル化においては、通常容器をペレット状に破砕した後、加熱溶融して全体を均質化し、得られた再生樹脂をポリエステル系容器の素材として用いるものである。
【0004】
通常、PETボトルのようなポリエステル系容器には、その表面に様々な情報が記録された粘着ラベル(ラベルとも称する)が貼付されている。このようなラベル付PETボトルなどのポリエステル系容器をマテリアルリサイクル化する際に、ラベルの樹脂基材とポリエステル系容器を構成する樹脂とが相溶性を有しない場合には、ラベルを構成する樹脂基材および粘着剤が異物として作用し、再生樹脂の機械特性が低下するという問題が生じる。したがって、このような場合には、ポリエステル系容器に貼付されているラベルを剥離してから、ペレット状に破砕し、加熱溶融することが必要である。しかしながら、ポリエステル系容器からラベルを剥離する操作は、極めて煩雑で手間がかかるとともにリサイクル処理費が高くなり、作業上も経済上も不利になるという問題が生じている。
【0005】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、被着体であるポリエステル系容器と相溶性を有するポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系の樹脂基材の片面に配置されるポリエステル系粘着剤と、を有する粘着ラベルが開示されている。このように構成されたラベルによれば、ポリエステル系容器と同素材からなる樹脂基材および粘着剤を使用することにより、ポリエステル系容器からラベルを剥がすことなくリサイクルが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-10489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粘着ラベルを容器に貼付する際、生産効率の点から、公知のラベリング装置を使用することがある。しかし、ポリエステル系粘着剤を用いたラベルの場合、ラベリング装置を用いて高速で貼付する際に、粘着力が低いことに起因して、ラベルの浮きが発生するなど好適に貼付できない場合があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、ポリエステル系容器から剥がすことなくポリエステル系容器のリサイクル処理を可能とするとともに、ポリエステル系容器に対して高速で貼付する際に、好適に貼付できる粘着ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る粘着ラベルは、ポリエステル系容器に貼付される粘着ラベルであって、ポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系粘着剤層と、前記ポリエステル系粘着剤層の、前記樹脂基材が設けられる反対側の面に配置される剥離ライナーと、を有する。前記剥離ライナーの前記ポリエステル系粘着剤層側の表面粗さRaは0.7μm以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着ラベルによれば、ポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系粘着剤層と、を有するため、粘着ラベルをポリエステル系容器から剥がすことなくポリエステル系容器のリサイクル処理が可能である。また、剥離ライナーの前記ポリエステル系粘着剤層側の表面粗さRaが0.7μm以下であるため、公知のラベリング装置によって粘着ラベルをポリエステル系容器に対して高速で貼付する際に好適に貼付できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る粘着ラベルを示す断面模式図である。
図2】本実施形態に係る粘着ラベルの剥離ライナーを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で測定する。
【0014】
粘着ラベル1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのようなポリエステル系容器に貼付される。以下、粘着ラベル1が貼付される被着体として、PETボトルを例に挙げて説明する。粘着ラベル1の形状としては、特に限定されないが、積層方向から視て、長方形であることが一般的である。なお、粘着ラベルの形状は、三角形や円形状であってもよい。また、ポリエステル系粘着剤層20は、例えば樹脂基材10の全面に配置されている。
【0015】
粘着ラベル1の粘着力は、PETボトルへの接着性を考慮すると、3N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましい。また、粘着ラベル1の粘着力は、特に上限値の設定の必要はないが、30N/25mm以下であってもよく、20N/25mm以下であってもよい。なお、被着体への粘着力は、粘着ラベル1のポリエステル系粘着剤層20面をポリエチレンテレフタレート板に貼付し、24時間後にJIS Z0237:2009に従い、引張試験機により、180°方向に試験速度0.3m/分で測定する。より詳細には、被着体への粘着力は、以下の方法によって測定された値である;粘着ラベル1を24時間標準環境下(23℃50%RH)に静置し、剥離ライナー30を剥がしてポリエチレンテレフタレート板にポリエステル系粘着剤層20面を貼付する。24時間標準環境下に静置後、JIS Z0237:2009にしたがい粘着力を測定する。具体的には、引張試験機により、180°方向に試験速度0.3m/分で粘着ラベルを引き剥がし、粘着力を測定する。数値は、フィルム幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)である。以下、図1図2を参照して、粘着ラベル1の構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る粘着ラベル1の断面概略図である。図2は、本実施形態に係る粘着ラベル1の剥離ライナー30を示す断面模式図である。本発明の実施形態に係る粘着ラベル1は、図1に示すように、上から順に、樹脂基材10と、ポリエステル系粘着剤層20と、剥離ライナー30と、を有する。なお、粘着ラベル1は、樹脂基材10上、または各層間に他の機能層を有していてもよい。他の機能層としては、印刷層、プライマー層などが挙げられる。
【0017】
「ラベル」の概念には、フィルム、シート、テープ等と称されるものが包含される。
【0018】
<樹脂基材10>
樹脂基材として、被着体のPETボトルと相溶性を有する同じ素材であるポリエステル系フィルムを使用することが必要である。しかし、再生樹脂の機械特性などの品質の点から、ポリエステル系フィルムの樹脂基材としては、PETボトルに使用されている樹脂の組成に近いものを用いることが特に有利である。このポリエステル系フィルムに使用される樹脂基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂を挙げることができ、これらの中から、被着体のPETボトルに使用されている樹脂の種類に応じて、それと相溶性のある樹脂基材が得られるように、一種又は二種以上を適宜選択して用いればよい。
【0019】
ここで、相溶性とは、PETボトルを加熱溶融する際の温度で溶融し、かつ溶融したPETボトルの樹脂基材と相溶性よく混和し、その再生品の特性を低下させないことを意味する。なお、PETボトルを構成する樹脂基材が、相溶性のある樹脂二種以上の混合物である場合、樹脂基材10の樹脂としては、PETボトルを構成する樹脂混合物の中の1つの樹脂を用いることができる。
【0020】
樹脂基材10の厚さは特に制限はなく、用途などに応じて適宜選定されるが、一般には25~100μmの範囲であることが好ましい。樹脂基材10の厚みを25μm以上とすることで、ラベリング工程での剥離ライナー30からの粘着ラベルの剥離性に優れる。また、樹脂基材10の厚みを100μm以下とすることで、ラベリング装置に設置するロールの巻き長を十分に長くでき、ロールの交換頻度を下げて、作業効率を高めることができる。この樹脂基材10としては、従来公知の方法、例えば押出し法、カレンダー法、溶液コーティング法、キャスティング法など、いずれの製膜方法により得られたものであってもよい。
【0021】
本発明においては、この樹脂基材10には、その上に設けられるコート層や、反対面に設けられるポリエステル系粘着剤層20との密着性を向上させる目的で、所望により、片面あるいは両面に表面処理を施すことができる。この表面処理方法としては、例えばサンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などが挙げられる。本発明においては、樹脂基材10の片面に、印刷適性を有するコート層(印刷受理層)が設けられてもよい。この結果、樹脂基材10の片面に印刷適性が付与されることとなる。このコート層は、樹脂基材10の製膜時に混入した樹脂の未溶解部分による突起(フィッシュアイ)に起因する印刷時の抜けの発生を防止するとともに、印刷インキの密着性を向上させる効果を有している。
【0022】
<ポリエステル系粘着剤層20>
次に、ポリエステル系粘着剤層20について説明する。ポリエステル系粘着剤層20は、ポリエステル系樹脂(A)を主成分とするポリエステル系粘着剤組成物から形成される。
【0023】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、構成原料として、多価カルボン酸成分(A1)及びポリオール成分(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られる。
【0024】
〔多価カルボン酸成分(A1)〕
本発明で用いられる多価カルボン酸成分(A1)としては、例えば、
テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4、4′-オキシジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;
マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2、2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;
1、3-シクロペンタンジカルボン酸、1、2-シクロヘキサンジカルボン酸、1、3-シクロペンタンジカルボン酸、1、4-シクロヘキサンジカルボン酸、2、5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;
等の二価カルボン酸があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0025】
これらの中でも、凝集力を付与する点から、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましい。
【0026】
かかる芳香族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、50モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは5~40モル%、更に好ましくは10~30モル%である。かかる含有割合が多すぎるとガラス転移温度が高くなり、充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
【0027】
また、タック感を付与する点からは、脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましく、特には炭素数が4~12の脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましい。
【0028】
かかる脂肪族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、20モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは50モル%~95モル%、更には70~90モル%である。かかる含有割合が低すぎるとガラス転移温度が高くなり充分な粘着力が得られなくなる傾向があり、かかる含有割合が高すぎると密着成分が少なくなることにより、極性被着体への粘着力が低下する傾向がある。
【0029】
本発明においては、粘着物性のバランスの点から、多価カルボン酸成分(A1)として、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を併用することが好ましく、含有比率(モル比)としては、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=1/99~90/10であることが好ましく、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=5/95~49/51、更に好ましくは芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=10/90~30/70である。
【0030】
なお、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸を用いることもでき、かかる三価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、アダマンタントリカルボン酸、トリメシン酸等があげられる。中でも比較的、ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸を用いることが好ましい。かかる三価以上の多価カルボン酸の含有割合としては、粘着剤の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0031】
〔ポリオール成分(A2)〕
本発明で用いられるポリオール成分(A2)としては、例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3-プロパンジオール、2、4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1、3-ジオール、2-メチル-1、3-プロパンジオール、2、2-ジメチル-1、3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1、3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1、3-プロパンジオール、1、3-ブタンジオール、1、4-ブタンジオール、1、5-ペンタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、3-メチル-1、5-ペンタンジオール、2、2、4-トリメチル-1、6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;
1、2-シクロヘキサンジメタノール、1、3-シクロヘキサンジメタノール、1、4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2、2、4、4-テトラメチル-1、3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;
4、4′-チオジフェノール、4、4′-メチレンジフェノール、4、4′-ジヒドロキシビフェニル、o-、m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、2、5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール及びそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール;
等の二価アルコールが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0032】
これらの中でも、反応性に優れる点で、脂肪族ジオール、脂環族ジオールが好ましく、特に好ましくは、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、1、3-プロパンジオール、2-メチル-1、3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4-ブタンジオール、1、5-ペンタンジオール、1、6-ヘキサンジオールであり、脂環族ジオールとしては1、2シクロヘキサンジメタノール、1、3シクロヘキサンジメタノール、1、4シクロヘキサンジメタノールである。
【0033】
また、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で三価以上の多価アルコールを用いることもでき、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1、3、6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等があげられる。かかる三価以上の多価アルコールの含有割合としては、ポリオール成分(A2)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有割合が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造が困難となる傾向がある。
【0034】
多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)の配合割合としては、多価カルボン酸成分(A1)1当量あたり、ポリオール成分(A2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール成分(A2)の含有割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0035】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、上記多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)を任意に選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
【0036】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量は、凝集力、耐熱性、機械的強度、粘着性などの観点から、5000~100000であることが好ましく、特に好ましくは10000~100000、更に好ましくは15000~80000である。
【0037】
なお、上記の数平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、「HLC-8220 GPC」)に、カラム:TSK gel GMHXLの2本直列を用いることにより測定されるものである。
【0038】
通常はポリエステル系樹脂(A)を架橋剤を用いて架橋させることにより凝集力に優れたものとなり、粘着剤としての性能を発揮する。かかる架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物など、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基および/またはカルボキシル基と反応する官能基を有する化合物があげられる。これらの中でも初期粘着性と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特に好ましくはポリイソシアネート化合物である。
【0039】
かかるポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートがあげられ、また、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート付加物やイソホロンジイソシアネート付加物などのイソシアネート付加物などがあげられる。なお、上記ポリイソシアネート化合物は、フェノール、ラクタムなどでイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの架橋剤は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0040】
かかる架橋剤の配合量は、ポリエステル系樹脂(A)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基および/またはカルボキシル基の1当量に対して、架橋剤に含まれる反応性基が、0.2~10当量となる割合で架橋剤を含有することが好ましく、特に好ましくは0.5~5当量、更に好ましくは0.5~3当量である。かかる架橋剤に含まれる反応性基の当量数が小さすぎると充分な凝集力が得られず、貼付後にズレが発生する傾向があり、大きすぎると柔軟性が低下し、初期粘着性が低下し、貼付直後に剥がれる傾向がある。
【0041】
ポリエステル系粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の、加水分解抑制剤、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、粘着付与剤などの添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状などの添加剤を配合することができる。
【0042】
ポリエステル系粘着剤層20の貯蔵弾性率は、23℃、周波数1Hzにおいて、好ましくは1×10~100×10Pa、より好ましくは5×10~50×10Paの範囲である。ポリエステル系粘着剤層20の貯蔵弾性率G’が100×10Pa以下であれば、粘着力が担保されやすい。一方、粘着剤層の貯蔵弾性率G’が1×10Pa以上であれば、凝集力が担保されやすい。粘着剤層の貯蔵弾性率G’は、粘着剤層に含まれる重合体(粘着剤)を構成するモノマーの種類、分子量及び配合比、並びに重合体の重合度、さらに架橋剤を含む場合には、架橋剤量(重合体の架橋密度)などを適宜変更することによって調整することができる。
【0043】
粘着剤層の貯蔵弾性率G’は、動的粘弾性測定装置ARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて決定する。2枚の剥離ライナー間に500μm~1mmの厚み(例えば、800μm)の粘着剤層を形成した積層体を直径8mmの円盤状に打抜き、剥離ライナーを除去した後のものを、粘着剤層試料とする。-50℃~150℃の温度範囲において5℃/分の昇温速度及び周波数1Hzの剪断モードで測定を行ったときの、23℃における貯蔵弾性率G’(Pa)を記録する。
【0044】
<剥離ライナー30>
剥離ライナー30は、図2に示すように、剥離基材31と、剥離剤層32と、を有する。
【0045】
剥離剤層32のポリエステル系粘着剤側の表面粗さRaは、0.7μm以下である。
【0046】
剥離ライナーの粘着剤層面の表面粗さRaが0.7μmを超えると、剥離ライナーと接触したポリエステル系粘着剤のポリエステル系容器への粘着力が低下し、ラベリング適性が得られない。本発明者らは、ポリエステル系粘着剤を用いたラベルを、ラベリング装置を用いて高速で貼付する際に、好適に貼付できないことから、その原因を鋭意検討した。その結果、剥離ライナーの粘着剤層面の表面粗さがポリエステル系粘着剤の粘着力に影響を及ぼし、表面が粗いと高い粘着力が発現せず、それがラベリング時の不具合につながることを見出したのである。ポリエステル系粘着剤は、剥離ライナーの凹凸が粘着剤層に転写された場合に、被着体に貼付した後も転写された凹凸形状が維持され、ポリエステル系容器への接触面積が下がることとなり、粘着力の低下へとつながるものと考えられる。通常の粘着剤、例えば、アクリル系粘着剤では、凹凸形状が粘着剤層に転写されたとしても、被着体に貼付された後に濡れ広がりやすいために、粘着力の低下にはつながらない。ゆえに、上記課題は、ポリエステル系粘着剤に特有の課題とも言える。
【0047】
剥離剤層32のポリエステル系粘着剤側の表面粗さRaは、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。このように、剥離剤層32のポリエステル系粘着剤側の表面粗さRaを、0.7μm以下とすることによって、粘着剤層に転写される凹凸が小さくなり、ポリエステル系容器への接触面積が向上して、ポリエステル系粘着剤の粘着力が向上する。このため、公知のラベリング装置によって粘着ラベルをポリエステル系容器に対して高速で貼付する際に好適に貼付できる。なお、剥離剤層32のポリエステル系粘着剤側の表面粗さRaは小さければ小さいほど好ましいが、効果の飽和と生産上の歩留まりを考慮すると、0.01μm以上であることが好ましい。
【0048】
表面粗さRa(算術平均粗さRa)は、ISO 25178に準じて走査型白色干渉顕微鏡(日立ハイテクサイエンス社製、VS1550)で測定することができる。
【0049】
剥離基材としては、紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、またはポリエステル系フィルムが挙げられる。所望のRaに制御しやすいことから、剥離基材は、ポリエステル系フィルムである、または紙基材に熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙であることが好ましい。
【0050】
上記ラミネートされた熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα-オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;熱可塑性ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂はポリオレフィンであることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。熱可塑性樹脂のラミネート層の厚みは、例えば、10~40μmである。
【0051】
ラミネート紙における紙基材としては、グラシン紙、上質紙などが挙げられる。
【0052】
ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等を用いることができる。
【0053】
剥離ライナー30の厚みは、25~100μmであることが好ましい。剥離ライナー30の厚みを25μmとすることで、粘着ラベルの抜き加工適性に優れる。また、剥離ライナー30の厚みを100μmとすることで、ラベリング工程での剥離ライナー30のポリエステル系粘着剤層20に対する剥離性に優れる。
【0054】
剥離剤層32としては、例えば、シリコーン、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、長鎖アルキルアクリレート系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの中では、シリコーンが好ましい。剥離剤層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0055】
<製造方法>
本発明の粘着ラベルの製造方法は、特に限定されるものではないが、粘着ロールまたはシートを作製した後、必要に応じ印刷、半抜き加工、カス上げを行い、粘着ラベルを製造する方法が挙げられる。粘着ロールまたはシートの製造方法は、(1)剥離ライナー上にポリエステル系粘着剤組成物を塗工してポリエステル系粘着剤層を形成した後、これを樹脂基材に貼り合わせる方法、(2)樹脂基材上にポリエステル系粘着剤組成物を直接塗工してポリエステル系粘着剤層を形成した後に剥離ライナーを貼り合わせる方法等が挙げられる。
【0056】
粘着剤組成物の樹脂基材または剥離ライナーへの塗工方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。
【0057】
<ポリエステル系容器>
本発明は、上記粘着ラベルが貼付されてなる、ポリエステル系容器をも提供する。ポリエステル系容器とは、ポリエステル系樹脂から構成される容器を指す。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。容器は、ポリエステル系樹脂を射出成形、真空成形、圧空成形等することにより製造することができる。
【0058】
<ラベリング方法>
次に、ラベリング方法について説明する。粘着ラベル1のポリエステル系容器に対するラベリングは、例えば特許第5956220号に開示されているようなラベリング装置を用いて行われる。
【0059】
ラベリングの際、剥離ライナー30に貼られた状態の粘着ラベル1が搬送されていき、粘着ラベルを剥離ライナーから剥離する際に、剥離ライナーが折り返される。このとき、粘着剤層が露出し、露出した粘着剤層をポリエステル系容器に対して貼付する。ここで、樹脂基材10の厚みが薄すぎる、または剥離ライナー30の厚みが厚すぎる場合には、剥離ライナー30が折り返されても、ポリエステル系粘着剤層20が露出しにくく、粘着ラベルをポリエステル系容器に貼付できない場合がある。なお、ラベリング装置の粘着ラベル1の搬送速度(ラベリング速度)は、特に限定されないが、20~150m/分である。
【実施例0060】
次に実施例について説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0061】
<実施例1>
ポリエステル系樹脂(三菱ケミカル社製、商品名「NP-110S50EO」)100質量部(固形分)に対し、架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)2質量部(固形分)、酢酸エチル40質量部を添加・混合して粘着剤組成物を調製した。
【0062】
得られた粘着剤組成物を、ポリエチレンラミネートグラシン紙上にシリコーン系剥離剤を塗工した剥離ライナー(Ra:0.29μm、厚さ:88μm)上にナイフコーターにより乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗布した後、90℃下で1分間乾燥させ粘着剤層を形成した。
【0063】
粘着剤層上に50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、巻きとり、23℃下で7日間静置し、実施例1の粘着ラベルに対応する粘着ロールを得た。
【0064】
<実施例2>
剥離ライナーを、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にシリコーン系剥離剤を塗工した剥離ライナー(Ra:0.026μm、厚さ:38μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の粘着ラベルに対応する粘着ロールを得た。
【0065】
<実施例3>
剥離ライナーを、ポリエチレンラミネートグラシン紙上にシリコーン系剥離剤を塗工した剥離ライナー(Ra:0.48μm、厚さ:88μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の粘着ラベルに対応する粘着ロールを得た。
【0066】
<比較例1>
剥離ライナーを、グラシン紙上にシリコーン系剥離剤を塗工した剥離ライナー(Ra:0.98μm、厚さ:66μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の粘着ラベルに対応する粘着ロールを得た。
【0067】
(測定方法1:粘着力)
実施例および比較例で得た粘着ロールから必要量を切り出し、シート形状にした。粘着シートを24時間標準環境下に静置した後、剥離ライナーを剥がしてポリエチレンテレフタレート板に粘着剤層面を貼付した。貼付した直後、および貼付して24時間標準環境下に静置した後に、粘着力を測定した。具体的には、引張試験機により、180°方向に試験速度0.3m/分でシートを引き剥がし、粘着力を測定した。数値は、シート幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)である。結果を表1に示す。結果を表1に示す。
【0068】
(測定方法2:接触面積率)
実施例および比較例で得た粘着ロールから必要量を切り出し、シート形状にした。剥離ライナーを剥がしてポリエチレンテレフタレート板に粘着剤層面を貼付した。ポリエチレンテレフタレート板側からデジタル顕微鏡でデジタル画像を撮影し、得られたデジタル画像をデジタル顕微鏡に付随するデータ解析装置に取り込み、粘着剤の接触面と非接触面とのデジタル画像の輝度の差から解析ソフトにより2値化処理して粘着剤の接触面積率を算出した。
【0069】
(測定方法3:ラベリング)
さらに、実施例および比較例で得た粘着ロールを、長さ300m、幅60mmに裁断し、ラベルサイズ35mm×35mm、ラベル間隔が3mmとなるように抜き加工を行った。これらの粘着ロールを用いてラベリング装置によって、ラベリング速度100m/分で、PETボトルに対して貼付した。貼付後、PETボトル上のラベルの端部浮きの有無を確認した。
〇:ラベルの端部に浮きが生じなかった。
×:ラベルの端部に浮きが生じた。
【0070】
【表1】
【0071】
上記で示されるように、実施例の粘着ラベルは、接触面積率及び粘着力が高く、また、ラベリング適性も良好であった。
【符号の説明】
【0072】
1 粘着ラベル、
10 樹脂基材、
20 ポリエステル系粘着剤層、
30 剥離ライナー、
31 剥離基材、
32 剥離剤層。
図1
図2