(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171925
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】制御装置、演算装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
B23H 7/02 20060101AFI20231128BHJP
B23H 7/06 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B23H7/02 R
B23H7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172603
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2022072877の分割
【原出願日】2019-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大輝
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】久保田 里歩
(72)【発明者】
【氏名】田村 光
(57)【要約】
【課題】加工精度を向上させる。
【解決手段】放電システム100は、ワイヤ放電加工機10と、演算装置60とを備える。演算装置60は、測定寸法に示されるテストピースの形状が加工プログラムで規定される所定の加工形状となるように、第1ダイスガイド16aでの実際のワイヤ電極12の支持位置Paを示す第1実情報、および、第2ダイスガイド16bでの実際のワイヤ電極12の支持位置Pbを示す第2実情報を計算する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行方向に沿って走行するワイヤ電極と加工対象物との極間に放電を生じさせることで、前記加工対象物を加工するワイヤ放電加工機の制御装置であって、
前記ワイヤ電極を前記加工対象物に案内する第1ダイスガイドでの前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1情報、および、前記加工対象物から送られる前記ワイヤ電極を案内する第2ダイスガイドでの前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2情報が記憶される記憶部と、
前記第1情報および前記第2情報と、所定の加工形状に加工するための加工プログラムとを用いて、前記走行方向に対して所定の角度に前記ワイヤ電極が傾斜するように、前記加工対象物であるテストピースに対して前記第1ダイスガイドおよび前記第2ダイスガイドの少なくとも一方を相対移動させる移動制御部と、
前記ワイヤ電極が傾斜する状態で加工された前記テストピースの形状の辺の長さを示す測定寸法を取得する寸法取得部と、
前記測定寸法に基づいて、前記第1ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1実情報、および、前記第2ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2実情報を計算する計算部と、
前記第1情報と前記第1実情報とが異なる場合には前記第1情報を前記第1実情報に書き換え、前記第2情報と前記第2実情報とが異なる場合には前記第2情報を前記第2実情報に書き換える補正部と、
を備え、
加工された前記テストピースの前記形状は、
第1辺と第2辺とを有する矩形の上面と、
前記第1辺と長さが等しく前記第1辺と平行な第3辺と、前記第2辺と長さが異なり前記第2辺と平行な第4辺とを有する矩形の底面と、
を含み、
前記加工プログラムで規定される前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さは、前記第3辺の長さと同じであり、
前記寸法取得部は、前記測定寸法として前記第1辺~前記第4辺の長さと、前記底面から前記上面までの高さを取得し、
前記計算部は、前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さと前記第3辺の長さとの差分と、前記第2辺の長さと、前記第4辺の長さと、前記高さとに基づいて、前記第1実情報および前記第2実情報を計算する、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記寸法取得部は、前記測定寸法を入力するための寸法入力画面を表示部に表示させる、制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記寸法取得部は、加工後の前記テストピースの外観を示す外観画面を前記寸法入力画面とともに表示させる、制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記角度および前記テストピースの厚さを取得する条件取得部と、
前記角度および前記テストピースの厚さに基づいて、前記テストピースを加工するためのテスト用の前記加工プログラムを作成するプログラム作成部と、
を備え、
前記移動制御部は、前記第1情報および前記第2情報と前記テスト用の前記加工プログラムとを用いて、前記テストピースに対して前記第1ダイスガイドおよび前記第2ダイスガイドの少なくとも一方を相対移動させる、制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、
前記条件取得部は、前記角度および前記テストピースの厚さを入力するための条件入力画面を表示部に表示させる、制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記計算部は、前記第1実情報および前記第2実情報を表示部に表示させる、制御装置。
【請求項7】
所定の加工形状に加工するための加工プログラムを用いて、ワイヤ電極の走行方向に対して所定の角度に前記ワイヤ電極が傾斜する状態で加工されたテストピースの形状の辺の長さを示す測定寸法を取得する寸法取得部と、
前記測定寸法に基づいて、前記ワイヤ電極を加工対象物に案内する第1ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1実情報を計算する第1計算部と、
前記測定寸法に基づいて、前記加工対象物から送られる前記ワイヤ電極を案内する第2ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2実情報を計算する第2計算部と、
前記第1実情報および前記第2実情報を、前記テストピースを加工したワイヤ放電加工機の制御装置に出力する出力部と、
を備え、
加工された前記テストピースの前記形状は、
第1辺と第2辺とを有する矩形の上面と、
前記第1辺と長さが等しく前記第1辺と平行な第3辺と、前記第2辺と長さが異なり前記第2辺と平行な第4辺とを有する矩形の底面と、
を含み、
前記加工プログラムで規定される前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さは、前記第3辺の長さと同じであり、
前記寸法取得部は、前記測定寸法として前記第1辺~前記第4辺の長さと、前記底面から前記上面までの高さを取得し、
前記第1計算部および前記第2計算部は、前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さと前記第3辺の長さとの差分と、前記第2辺の長さと、前記第4辺の長さと、前記高さとに基づいて、前記第1実情報および前記第2実情報を計算する、演算装置。
【請求項8】
所定の走行方向に沿って走行するワイヤ電極と加工対象物との極間に放電を生じさせることで、前記加工対象物を加工するワイヤ放電加工機の制御方法であって、
前記ワイヤ電極を前記加工対象物に案内する第1ダイスガイドでの前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1情報、および、前記加工対象物から送られる前記ワイヤ電極を案内する第2ダイスガイドでの前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2情報を記憶部から読み出す読出ステップと、
前記第1情報および前記第2情報と、所定の加工形状に加工するための加工プログラムとを用いて、前記走行方向に対して所定の角度に前記ワイヤ電極が傾斜するように、前記加工対象物であるテストピースに対して前記第1ダイスガイドおよび前記第2ダイスガイドの少なくとも一方を相対移動させる移動制御ステップと、
前記ワイヤ電極が傾斜する状態で加工された前記テストピースの形状の辺の長さを示す測定寸法を取得する寸法取得ステップと、
前記測定寸法に基づいて、前記第1ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1実情報、および、前記第2ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2実情報を計算する計算ステップと、
前記第1情報と前記第1実情報とが異なる場合には前記第1情報を前記第1実情報に書き換え、前記第2情報と前記第2実情報とが異なる場合には前記第2情報を前記第2実情報に書き換える補正ステップと、
を含み、
加工された前記テストピースの前記形状は、
第1辺と第2辺とを有する矩形の上面と、
前記第1辺と長さが等しく前記第1辺と平行な第3辺と、前記第2辺と長さが異なり前記第2辺と平行な第4辺とを有する矩形の底面と、
を含み、
前記加工プログラムで規定される前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さは、前記第3辺の長さと同じであり、
前記寸法取得ステップは、前記測定寸法として前記第1辺~前記第4辺の長さと、前記底面から前記上面までの高さを取得し、
前記計算ステップは、前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さと前記第3辺の長さとの差分と、前記第2辺の長さと、前記第4辺の長さと、前記高さとに基づいて、前記第1実情報および前記第2実情報を計算する、制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の制御方法であって、
前記寸法取得ステップは、前記測定寸法を入力するための寸法入力画面を表示部に表示させる、制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の制御方法であって、
前記寸法取得ステップは、加工後の前記テストピースの外観を示す外観画面を前記寸法入力画面とともに表示させる、制御方法。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の制御方法であって、
前記角度および前記テストピースの厚さを取得する条件取得ステップと、
前記角度および前記テストピースの厚さに基づいて、前記テストピースを加工するためのテスト用の前記加工プログラムを作成するプログラム作成ステップと、
を含み、
前記移動制御ステップは、前記第1情報および前記第2情報と前記テスト用の前記加工プログラムとを用いて、前記テストピースに対して前記第1ダイスガイドおよび前記第2ダイスガイドの少なくとも一方を相対移動させる、制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法であって、
前記条件取得ステップは、前記角度および前記テストピースの厚さを入力するための条件入力画面を表示部に表示させる、制御方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の制御方法であって、
前記計算ステップは、前記第1実情報および前記第2実情報を表示部に表示させる、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ電極を用いて加工対象物を加工するワイヤ放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ放電加工機は、ワイヤ電極の走行方向に対して所定の角度に傾斜されたワイヤ電極を用いて加工対象物を加工する場合がある。この場合の加工精度を向上させる方法として、下記の特許文献1がある。
【0003】
下記の特許文献1の方法では、入力されたテーパ加工形状の実測寸法と目標寸法との誤差から、ワイヤ放電加工機における複数の軸(X軸、Y軸、U軸、V軸)の各々に対する移動の補正値が演算され、その補正値にしたがって、当該軸の移動量が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ワイヤ電極の走行方向またはその逆方向に、ワイヤ放電加工機の制御装置において定義された機械座標系に基づくワイヤ電極の位置と、実際のワイヤ電極の位置とがずれていた場合、加工プログラムで指定される角度とは異なる角度でワイヤ電極が傾斜する。したがって、上記の特許文献1の方法で軸の移動量が補正されたとしても、加工精度は向上しない。
【0006】
そこで、本発明は、加工精度を向上させ得る制御装置、演算装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、所定の走行方向に沿って走行するワイヤ電極と加工対象物との極間に放電を生じさせることで、前記加工対象物を加工するワイヤ放電加工機の制御装置であって、前記ワイヤ電極を前記加工対象物に案内する第1ダイスガイドでの前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1情報、および、前記加工対象物から送られる前記ワイヤ電極を案内する第2ダイスガイドでの前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2情報が記憶される記憶部と、前記第1情報および前記第2情報と、所定の加工形状に加工するための加工プログラムとを用いて、前記走行方向に対して所定の角度に前記ワイヤ電極が傾斜するように、前記加工対象物であるテストピースに対して前記第1ダイスガイドおよび前記第2ダイスガイドの少なくとも一方を相対移動させる移動制御部と、前記ワイヤ電極が傾斜する状態で加工された前記テストピースの形状の辺の長さを示す測定寸法を取得する寸法取得部と、前記測定寸法に基づいて、前記第1ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1実情報、および、前記第2ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2実情報を計算する計算部と、前記第1情報と前記第1実情報とが異なる場合には前記第1情報を前記第1実情報に書き換え、前記第2情報と前記第2実情報とが異なる場合には前記第2情報を前記第2実情報に書き換える補正部と、を備え、加工された前記テストピースの前記形状は、第1辺と第2辺とを有する矩形の上面と、前記第1辺と長さが等しく前記第1辺と平行な第3辺と、前記第2辺と長さが異なり前記第2辺と平行な第4辺とを有する矩形の底面と、を含み、前記加工プログラムで規定される前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さは、前記第3辺の長さと同じであり、前記寸法取得部は、前記測定寸法として前記第1辺~前記第4辺の長さと、前記底面から前記上面までの高さを取得し、前記計算部は、前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さと前記第3辺の長さとの差分と、前記第2辺の長さと、前記第4辺の長さと、前記高さとに基づいて、前記第1実情報および前記第2実情報を計算する。
【0008】
本発明の第2の態様は、所定の加工形状に加工するための加工プログラムを用いて、ワイヤ電極の走行方向に対して所定の角度に前記ワイヤ電極が傾斜する状態で加工されたテストピースの形状の辺の長さを示す測定寸法を取得する寸法取得部と、前記測定寸法に基づいて、前記ワイヤ電極を加工対象物に案内する第1ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1実情報を計算する第1計算部と、前記測定寸法に基づいて、前記加工対象物から送られる前記ワイヤ電極を案内する第2ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2実情報を計算する第2計算部と、前記第1実情報および前記第2実情報を、前記テストピースを加工したワイヤ放電加工機の制御装置に出力する出力部と、を備え、加工された前記テストピースの前記形状は、第1辺と第2辺とを有する矩形の上面と、前記第1辺と長さが等しく前記第1辺と平行な第3辺と、前記第2辺と長さが異なり前記第2辺と平行な第4辺とを有する矩形の底面と、を含み、前記加工プログラムで規定される前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さは、前記第3辺の長さと同じであり、前記寸法取得部は、前記測定寸法として前記第1辺~前記第4辺の長さと、前記底面から前記上面までの高さを取得し、前記第1計算部および前記第2計算部は、前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さと前記第3辺の長さとの差分と、前記第2辺の長さと、前記第4辺の長さと、前記高さとに基づいて、前記第1実情報および前記第2実情報を計算する。
【0009】
本発明の第3の態様は、所定の走行方向に沿って走行するワイヤ電極と加工対象物との極間に放電を生じさせることで、前記加工対象物を加工するワイヤ放電加工機の制御方法であって、前記ワイヤ電極を前記加工対象物に案内する第1ダイスガイドでの前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1情報、および、前記加工対象物から送られる前記ワイヤ電極を案内する第2ダイスガイドでの前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2情報を記憶部から読み出す読出ステップと、前記第1情報および前記第2情報と、所定の加工形状に加工するための加工プログラムとを用いて、前記走行方向に対して所定の角度に前記ワイヤ電極が傾斜するように、前記加工対象物であるテストピースに対して前記第1ダイスガイドおよび前記第2ダイスガイドの少なくとも一方を相対移動させる移動制御ステップと、前記ワイヤ電極が傾斜する状態で加工された前記テストピースの形状の辺の長さを示す測定寸法を取得する寸法取得ステップと、前記測定寸法に基づいて、前記第1ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第1実情報、および、前記第2ダイスガイドでの実際の前記ワイヤ電極の支持位置を示す第2実情報を計算する計算ステップと、前記第1情報と前記第1実情報とが異なる場合には前記第1情報を前記第1実情報に書き換え、前記第2情報と前記第2実情報とが異なる場合には前記第2情報を前記第2実情報に書き換える補正ステップと、を含み、加工された前記テストピースの前記形状は、第1辺と第2辺とを有する矩形の上面と、前記第1辺と長さが等しく前記第1辺と平行な第3辺と、前記第2辺と長さが異なり前記第2辺と平行な第4辺とを有する矩形の底面と、を含み、前記加工プログラムで規定される前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さは、前記第3辺の長さと同じであり、前記寸法取得ステップは、前記測定寸法として前記第1辺~前記第4辺の長さと、前記底面から前記上面までの高さを取得し、前記計算ステップは、前記第2辺および前記第4辺のうち短い方の辺の長さと前記第3辺の長さとの差分と、前記第2辺の長さと、前記第4辺の長さと、前記高さとに基づいて、前記第1実情報および前記第2実情報を計算する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワイヤ電極を傾斜させたときに加工プログラムで指定される角度とは異なる角度で加工されることを低減でき、この結果、加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態におけるワイヤ放電加工機の一部の構成を示す模式図である。
【
図2】実際のワイヤ電極の支持位置と、制御装置で認識されるワイヤ電極の支持位置との相違を示す図である。
【
図5】寸法入力画面および外観画面を例示する図である。
【
図6】第1ダイスガイドの支点位置と、第2ダイスガイドの支点位置との距離に関する図である。
【
図8】制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例における放電システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0013】
[実施の形態]
図1は、実施の形態におけるワイヤ放電加工機10の一部の構成を示す模式図である。ワイヤ放電加工機10は、所定の走行方向に沿って走行するワイヤ電極12と加工対象物Wとの極間に放電を生じさせることで、加工対象物Wを加工するものである。このワイヤ放電加工機10は、ワイヤ電極12、テーブル14、ダイスガイド16、ワイヤ送り部18、電圧供給部20、駆動部22および制御装置30を有する。
【0014】
図1では、制御装置30で定義される機械座標系のX方向(U方向)、Y方向(V方向)およびZ方向が示される。なお、X方向、Y方向およびZ方向は互いに直交し、X方向とU方向とは同方向であり、Y方向とV方向とは同方向である。
【0015】
ワイヤ電極12は、タングステン系、銅合金系、黄銅系などの金属により線状に形成されたものである。テーブル14は、加工対象物Wを設置するためのものである。
【0016】
ダイスガイド16は、ワイヤ電極12を案内するものであり、ワイヤ電極12を加工対象物Wに案内する第1ダイスガイド16aと、加工対象物Wから送られるワイヤ電極12を後方に案内する第2ダイスガイド16bとを有する。
【0017】
第1ダイスガイド16aは、テーブル14(加工対象物W)を基準としてワイヤ電極12の一端側(Z方向側)に設けられており、第1ダイスガイド16aには、ワイヤ電極12を支持する支持部Saが設けられる。第2ダイスガイド16bは、テーブル14(加工対象物W)を基準としてワイヤ電極12の他端側(-Z方向側)に設けられており、第2ダイスガイド16bには、ワイヤ電極12を支持する支持部Sbが設けられる。
【0018】
ワイヤ送り部18は、第1ダイスガイド16aに向けてワイヤ電極12を送り出すものであり、ワイヤ電極12を送るためのローラと、ローラを駆動する送り用モータとを有する。
【0019】
電圧供給部20は、ワイヤ電極12と、テーブル14に設置される加工対象物Wとの間にパルス電圧を供給するものであり、ワイヤ電極12およびテーブル14に接続されたパルス電源を有する。
【0020】
駆動部22は、テーブル14、第1ダイスガイド16aおよび第2ダイスガイド16bの各々を個別に駆動するものである。この駆動部22は、X方向用およびY方向用のモータと、当該モータのそれぞれの回転力をX方向およびY方向の直動力に変換して伝達する動力伝達機構とを有する。また駆動部22は、第1ダイスガイド16aおよび第2ダイスガイド16bの各々に対し、U方向用およびV方向用のモータと、当該モータのそれぞれの回転力をU方向およびV方向の直動力に変換して伝達する動力伝達機構とを有する。
【0021】
制御装置30は、ワイヤ送り部18、電圧供給部20および駆動部22を制御するものである。制御装置30は、ワイヤ送り部18を制御する場合、ワイヤ送り部18の送り用モータを制御することで、走行方向(-Z方向)に沿って所定の速度でワイヤ電極12を走行させる。
【0022】
制御装置30は、電圧供給部20を制御する場合、電圧供給部20のパルス電源を制御することで、ワイヤ電極12とテーブル14に設置された加工対象物Wとの極間に放電を生じさせる。
【0023】
制御装置30は、駆動部22を制御する場合、機械座標系に基づいて、テーブル14、第1ダイスガイド16aおよび第2ダイスガイド16bの少なくとも1つが駆動するように駆動部22を制御する。具体的には、制御装置30は、加工プログラムにしたがって、駆動部22のX方向用、Y方向用、U方向用およびV方向用のモータの少なくとも1つを制御することで、テーブル14に設置された加工対象物Wに対してワイヤ電極12を相対移動させる。
【0024】
図2は、実際のワイヤ電極12の支持位置Pa、Pbと、制御装置30で認識されるワイヤ電極12の支持位置P´a、P´bとの相違を示す図である。ワイヤ電極12は、加工中に、ワイヤ電極12の走行方向に対して所定の角度θに傾斜される場合がある。この場合、ワイヤ電極12は、第1ダイスガイド16aの支持部Saと、第2ダイスガイド16bの支持部Sbとで折れ曲がる。このワイヤ電極12の折れ曲がった部位が、実際のワイヤ電極12の支持位置Pa、Pbとなる。
【0025】
しかし、実際のワイヤ電極12の支持位置Pa、Pbと、制御装置30で認識されるワイヤ電極12の支持位置P´a、P´bとは、ワイヤ電極12の走行方向(-Z方向)またはその逆方向(Z方向)にずれる場合がある。この場合、実際に傾斜しているワイヤ電極12の角度θが、加工プログラムで指定される角度θ´と異なってしまう。
【0026】
そこで、本実施の形態では、実際のワイヤ電極12の支持位置Pa、Pbとなるように補正する機能が制御装置30に設けられる。
図3は、制御装置30の一部の構成を示す模式図である。
【0027】
制御装置30は、入力部32、表示部34、記憶部36および信号処理部38を有する。入力部32は、情報を入力するものである。入力部32の具体例として、マウス、キーボード、表示部34の表示面上に配置されるタッチパネルなどが挙げられる。表示部34は、情報を表示するものである。表示部34の具体例として、液晶ディスプレイなどが挙げられる。記憶部36は、情報を記憶するものである。記憶部36の具体例として、ハードディスクなどが挙げられる。
【0028】
記憶部36には、第1ダイスガイド16aでのワイヤ電極12の支持位置P´aを示す第1情報、および、第2ダイスガイド16bでのワイヤ電極12の支持位置P´bを示す第2情報が予め記憶される。また、記憶部36には、第1情報および第2情報を補正するための補正プログラムが予め記憶される。第1情報および第2情報は、制御装置30で定義される機械座標系にしたがって生成される。
【0029】
第1情報は、具体的には、±Z方向(ワイヤ電極12の走行方向または逆方向)に沿った基準位置からの支持位置P´aの距離であってもよく、支持位置P´aの座標であってもよい。本実施の形態では、
図1に示すように、第1ダイスガイド16aの送出側端面を基準位置とし、Z方向に沿った基準位置からの支持位置P´aの距離z1´を第1情報とする。
【0030】
第2情報は、具体的には、±Z方向(ワイヤ電極12の走行方向または逆方向)に沿った基準位置からの支持位置P´bの距離であってもよく、支持位置P´bの座標であってもよい。本実施の形態では、
図1に示すように、加工対象物Wが設置されるテーブル14の設置面を基準位置とし、-Z方向に沿った基準位置からの支持位置P´bの距離z2´を第2情報とする。
【0031】
信号処理部38は、
図3に示すように、プロセッサを有する。このプロセッサが記憶部36に記憶された補正プログラムを実行することで、信号処理部38は条件取得部40、プログラム作成部42、移動制御部44、寸法取得部46、計算部48および補正部50として機能する。
【0032】
条件取得部40は、テストピースの加工条件を取得するものである。条件取得部40は、加工条件として、ワイヤ電極12の走行方向に対する角度と、テストピースの厚さとを少なくとも取得する。条件取得部40は、入力部32を用いてオペレータが指定した加工条件を取得してもよく、記憶部36に予め記憶された加工条件を取得してもよい。
【0033】
本実施の形態では、条件取得部40は、入力部32を用いてオペレータが指定した加工条件を取得するものとする。すなわち、条件取得部40は、例えば
図4に示すように、ワイヤ電極12の走行方向に対する角度と、テストピースの厚さとを入力するための条件入力画面SCN1を表示部34に表示させる。これにより、オペレータに対して、テスト用の加工プログラムの作成に必要な加工条件を明確に把握させることができる。
【0034】
なお、条件入力画面SCN1は、ワイヤ電極12の走行方向に対する角度を入力するための入力項目IT1と、テストピースの厚さを入力するための入力項目IT2と、当該入力項目IT1およびIT2に入力された値を用いてプログラムの作成を開始させる作成ボタンBN1とを有する。オペレータは、入力部32を用いて、入力項目IT1およびIT2の各々に値を指定し、指定後に、作成ボタンBN1を操作する。
【0035】
プログラム作成部42は、条件取得部40が取得した加工条件に基づいてテスト用の加工プログラムを作成するものである。このプログラム作成部42は、加工条件として条件取得部40が取得したワイヤ電極12の走行方向に対する角度と、テストピースの厚さとに基づいて、テスト用の加工プログラムを作成する。これにより、テスト用の加工プログラムを作成するオペレータの時間や労力を省くことができる。
【0036】
本実施の形態では、プログラム作成部42は、作成ボタンBN1をオペレータが操作すると、テスト用の加工プログラムを作成する。また本実施の形態では、プログラム作成部42は、直方体状のテストピースの一部を、オペレータが指定した角度で切断して1つの傾斜面を有する四角錐台状のテストピースを得るためのテスト用の加工プログラムを作成する。したがって、実際の製品を加工する場合に比べて加工時間や加工負荷を低減することができる。
【0037】
移動制御部44は、駆動部22を制御するものである。この移動制御部44は、テスト用の加工プログラムで指定された角度θ´(
図2)と、記憶部36に記憶された第1情報および第2情報とを用いて、駆動部22のU方向用およびV方向用のモータの少なくとも1つを制御する。これにより、移動制御部44は、テスト用の加工プログラムで指定された角度θ´にワイヤ電極12が傾斜するように、テストピースに対して第1ダイスガイド16aおよび第2ダイスガイド16bの少なくとも一方を相対移動させる。なお、テスト用の加工プログラムで指定された角度θ´は、オペレータが入力部32を用いて入力項目IT1(
図4)に入力することにより指定した角度である。
【0038】
移動制御部44は、ワイヤ電極12が傾斜するように、テストピースに対して第1ダイスガイド16aおよび第2ダイスガイド16bの少なくとも一方を相対移動させ終わると、加工を開始する。移動制御部44は、具体的には、テスト用の加工プログラムにしたがって駆動部22のX方向用、Y方向用、U方向用およびV方向用のモータの少なくとも1つを制御してテストピースに対してワイヤ電極12を相対移動させ、所定の形状にテストピースを加工する。
【0039】
寸法取得部46は、テストピースの測定寸法を取得するものである。この寸法取得部46は、ワイヤ電極12が傾斜する状態で加工されたテストピースの測定寸法を取得する。寸法取得部46は、入力部32を用いてオペレータが入力した測定寸法を取得してもよく、所定の測定装置から測定寸法を取得してもよい。
【0040】
本実施の形態では、寸法取得部46は、入力部32を用いてオペレータが入力した測定寸法を取得するものとする。すなわち、寸法取得部46は、例えば
図5に示すように、加工されたテストピースの測定寸法を入力するための寸法入力画面SCN2を表示部34に表示させる。したがって、オペレータに対して、計算に必要な測定寸法の詳細を明確に把握させることができる。
【0041】
なお、寸法入力画面SCN2は、1つの傾斜面を有する四角錐台状に加工されたテストピースの測定寸法を入力するための複数の入力項目IT3~IT6と、当該入力項目IT3~IT6に入力された値を用いて計算を開始させる計算ボタンBN2とを有する。オペレータは、入力部32を用いて、複数の入力項目IT3~IT6の各々に、対応する測定寸法を入力し、入力後に、計算ボタンBN2を操作する。
【0042】
本実施の形態では、寸法取得部46は、上記の寸法入力画面SCN2とともに加工後のテストピースの外観を示す外観画面SCN3を表示部34に表示させる。これにより、寸法入力画面SCN2に対する測定寸法の誤入力を抑制することができる。
【0043】
なお、入力項目IT3には、測定寸法として、1つの傾斜面を有する四角錐台状に加工されたテストピースの厚さ(
図5の「測定寸法A」)が入力される。入力項目IT4には、測定寸法として、1つの傾斜面を有する四角錐台状に加工されたテストピースの上底(
図5の「測定寸法B」)が入力される。入力項目IT5には、測定寸法として、1つの傾斜面を有する四角錐台状に加工されたテストピースの下底(
図5の「測定寸法C」)が入力される。入力項目IT6には、測定寸法として、1つの傾斜面を有する四角錐台状に加工されたテストピースの奥行き(
図5の「測定寸法D」)が入力される。
【0044】
計算部48は、第1ダイスガイド16aでの実際のワイヤ電極12の支持位置Pa(
図2)を示す第1実情報、および、第2ダイスガイド16bでの実際のワイヤ電極12の支持位置Pb(
図2)を示す第2実情報を計算するものである。この計算部48は、第1実情報を計算する第1計算部48aと、第2実情報を計算する第2計算部48bとを有する。
【0045】
図1に示すように、本実施の形態では、第1情報は、+Z方向に沿った第1ダイスガイド16aの送出側端面からの支持位置P´aの距離z1´である。このため、
図6に示すように、第1実情報は、+Z方向に沿った第1ダイスガイド16aの送出側端面からの実際の支持位置Paの距離z1である。また、
図1に示すように、第2情報は、-Z方向に沿ったテーブル14の設置面からの支持位置P´bの距離z2´である。このため、
図6に示すように、第2実情報は、-Z方向に沿ったテーブル14の設置面からの実際の支持位置Pbの距離z2である。なお、
図1と
図6とでは、便宜上、視点が異なっている。
【0046】
第1計算部48aは、寸法取得部46が取得した測定寸法と、入力部32を用いてオペレータが指定した角度(テスト用の加工プログラムで指定される角度θ´)とに基づいて、例えば次式にしたがって第1実情報(距離z1)を計算する。
【0047】
【0048】
なお、(1)式の「A」は、入力項目IT3に入力される値であり、(1)式の「B」は、入力項目IT4に入力される値であり、(1)式の「C」は、入力項目IT5に入力される値である。また、(1)式の「z3」は、加工対象物Wの設置面と、第1ダイスガイド16aの送出側端面との間の実際の距離である。
【0049】
第2計算部48bは、寸法取得部46が取得した測定寸法と、入力部32を用いてオペレータが指定した角度(テスト用の加工プログラムで指定される角度θ´)とに基づいて、例えば次式にしたがって第2実情報(距離z2)を計算する。
【0050】
【0051】
(2)式では、実際のワイヤ電極12の支持位置Pbと、制御装置30で認識されるワイヤ電極12の支持位置P´bとがずれたことに起因して、加工されたテストピースの傾斜部の角度、垂直加工部とワイヤ傾斜加工部のずれが発生したときを考慮して距離z2が計算されている。(2)式の前半部では傾斜角度を修正するための計算を行い、(2)式の後半部ではワイヤ傾斜加工部と垂直加工部が同じ寸法で加工されるように支点位置を修正するための計算を行っている。なお、(2)式の「D」は、入力項目IT6に入力される値である。また、(2)式において(1)式と同じ記号の内容は、(1)式で説明した内容と同じである。
【0052】
計算部48は、第1実情報(距離z1)および第2実情報(距離z2)を計算すると、
図7に示すように、計算した第1実情報(距離z1)および第2実情報(距離z2)を含む計算結果画面SCN4を表示部34に表示させる。これにより、オペレータに対して、第1実情報(距離z1)および第2実情報(距離z2)を把握させることができる。
【0053】
補正部50は、記憶部36に記憶された第1情報および第2情報を補正するものである。補正部50は、記憶部36に記憶された第1情報(距離z1´)と、第1計算部48aが計算した第1実情報(距離z1)とを比較する。ここで、第1情報と第1実情報とが一致する場合には、補正部50は、第1情報を補正しない。一方、第1情報と第1実情報とが異なる場合には、補正部50は、第1情報を第1実情報に書き換える。
【0054】
同様に、補正部50は、記憶部36に記憶された第2情報(距離z2´)と、第2計算部48bが計算した第2実情報(距離z2)とを比較する。ここで、第2情報と第2実情報とが一致する場合には、補正部50は、第2情報を補正しない。一方、第2情報と第2実情報とが異なる場合には、補正部50は、第2情報を第2実情報に書き換える。
【0055】
このように補正部50は、記憶部36に記憶された第1情報および第2情報の少なくとも一方が測定寸法から計算されたものと異なっていた場合には、当該第1情報および第2情報を、測定寸法から計算されたものに書き換える。これにより、ワイヤ電極12を傾斜させたときにテスト用の加工プログラムで指定される角度θ´とは異なる角度で加工されることを低減でき、この結果、加工精度を向上させることができる。
【0056】
次に、ワイヤ放電加工機10の制御方法に関し、制御装置30の制御処理について説明する。
図8は、制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
例えば、入力部32を用いてテスト加工の実行を命令する操作が行われると、ステップS1において、条件取得部40は、ワイヤ電極12の走行方向に対する角度と、テストピースの厚さとを入力するための条件入力画面SCN1(
図4)を表示部34に表示させる。ここで、オペレータは、入力部32を用いて条件入力画面SCN1に対して入力することによりワイヤ電極12の走行方向に対する角度と、テストピースの厚さとを指定する。条件取得部40は、オペレータが指定したワイヤ電極12の走行方向に対する角度と、テストピースの厚さとを取得すると、ステップS2に進む。
【0058】
ステップS2において、プログラム作成部42は、ステップS1で条件取得部40が取得したワイヤ電極12の走行方向に対する角度と、テストピースの厚さとに基づいて、テスト用の加工プログラムを作成し、ステップS3に進む。
【0059】
ステップS3において、移動制御部44は、記憶部36に記憶された第1情報(距離z1´)および第2情報(距離z2´)を読み出し、ステップS4に進む。
【0060】
ステップS4において、移動制御部44は、ステップS3で読み出した第1情報および第2情報を用いて、ステップS2で作成されたテスト用の加工プログラムが指定する角度θ´にワイヤ電極12が傾斜するように、テストピースに対してダイスガイド16を相対移動させる。その後、移動制御部44は、ステップS2で作成されたテスト用の加工プログラムにしたがって、テストピースに対してワイヤ電極12を相対移動させることにより、テストピースを加工(テスト加工)し、ステップS5に進む。
【0061】
ステップS5において、寸法取得部46は、ステップS4で加工されたテストピースの測定寸法を入力するための寸法入力画面SCN2(
図5)を、当該テストピースの外観を示す外観画面SCN3(
図5)とともに表示部34に表示させる。ここで、オペレータは、外観画面SCN3を見ながら、入力部32を用いて寸法入力画面SCN2に対してテストピースの測定寸法を入力する。寸法取得部46は、オペレータが入力したテストピースの測定寸法を取得すると、ステップS6に進む。
【0062】
ステップS6において、計算部48は、ステップS5で寸法取得部46が取得した測定寸法と、記憶部36に記憶される第1情報(距離z1´)および第2情報(距離z2´)とに基づいて、第1実情報(z1)および第2実情報(z2)を計算し、ステップS7に進む。
【0063】
ステップS7において、計算部48は、ステップS6で計算した第1実情報(z1)および第2実情報(z2)を含む計算結果画面SCN4(
図7)を表示部34に表示させ、ステップS8に進む。
【0064】
ステップS8において、補正部50は、記憶部36に記憶された第1情報(距離z1´)と、ステップS6で計算された第1実情報(z1)とが異なる場合に、第1情報(距離z1´)を第1実情報(z1)に書き換える。また、補正部50は、記憶部36に記憶された第2情報(距離z2´)と、ステップS6で計算された第2実情報(z2)とが異なる場合に、第2情報(距離z2´)を第2実情報(z2)に書き換える。その後、制御処理は終了する。
【0065】
なお、寸法取得部46は、寸法入力画面SCN2(
図5)および外観画面SCN3(
図5)を、ステップS1において条件入力画面SCN1と同一画面上で表示させてもよい。
【0066】
また、計算部48は、計算結果画面SCN4(
図7)を、ステップS1において条件入力画面SCN1と同一画面上で表示させてもよく、ステップS5において寸法入力画面SCN2(
図5)および外観画面SCN3(
図5)と同一画面上で表示させてもよい。この場合、ステップS7において、計算部48は、ステップS1またはS5で既に表示部34に表示した計算結果画面SCN4内の所定位置に、ステップS6で計算した第1実情報(z1)および第2実情報(z2)を表示させる。
【0067】
[変形例]
上記の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
【0068】
図9は、変形例における放電システム100の構成を示す模式図である。
図9では、上記の実施の形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、上記の実施の形態と重複する説明は省略する。
【0069】
放電システム100は、ワイヤ放電加工機10と、演算装置60とを備える。ワイヤ放電加工機10の制御装置30では、上記の信号処理部38の機能として有していた条件取得部40、プログラム作成部42、移動制御部44、寸法取得部46、計算部48および補正部50のうち、寸法取得部46および計算部48が省かれる。
【0070】
演算装置60は、ワイヤ放電加工機10に接続されており、制御装置30で省かれた寸法取得部46および計算部48と、出力部62とを有する。出力部62は、加工されたテストピースの測定寸法に基づいて計算部48が計算した第1実情報および第2実情報を、当該テストピースを加工したワイヤ放電加工機10の制御装置30に出力する。
【0071】
したがって、制御装置30は、記憶部36に記憶される第1情報および第2情報を、演算装置60から出力された第1実情報および第2実情報に書き換えることができる。これにより、上記の実施の形態と同様に、ワイヤ電極12を傾斜させたときにテスト用の加工プログラムで指定される角度θ´とは異なる角度で加工されることを低減でき、この結果、加工精度を向上させることができる。
【0072】
なお、上記の放電システム100では、演算装置60が、1つのワイヤ放電加工機10に接続されていたが、複数のワイヤ放電加工機10にネットワークを介して接続されていてもよい。この場合、演算装置60は、ワイヤ放電加工機10ごとに、加工されたテストピースの測定寸法に基づいて第1実情報および第2実情報を計算し、当該テストピースを加工したワイヤ放電加工機10の制御装置30にネットワークを介して出力する。これにより、複数のワイヤ放電加工機10における加工精度を、1台の演算装置60で一括して向上させるができる。
【0073】
[実施の形態から得られる発明]
上記の実施の形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0074】
(第1の発明)
第1の発明は、所定の走行方向に沿って走行するワイヤ電極(12)と加工対象物(W)との極間に放電を生じさせることで、加工対象物(W)を加工するワイヤ放電加工機(10)の制御装置(30)である。
【0075】
この制御装置(30)は、ワイヤ電極(12)を加工対象物(W)に案内する第1ダイスガイド(16a)でのワイヤ電極(12)の支持位置(P´a)を示す第1情報、および、加工対象物(W)から送られるワイヤ電極(12)を案内する第2ダイスガイド(16b)でのワイヤ電極(12)の支持位置(P´b)を示す第2情報が記憶される記憶部(36)と、第1情報および第2情報を用いて、走行方向に対して所定の角度にワイヤ電極(12)が傾斜するように、加工対象物(W)であるテストピースに対して第1ダイスガイド(16a)および第2ダイスガイド(16b)の少なくとも一方を相対移動させる移動制御部(44)と、ワイヤ電極(12)が傾斜する状態で加工されたテストピースの測定寸法を取得する寸法取得部(46)と、測定寸法に基づいて、第1ダイスガイド(16a)での実際のワイヤ電極(12)の支持位置(Pa)を示す第1実情報、および、第2ダイスガイド(16b)での実際のワイヤ電極(12)の支持位置(Pb)を示す第2実情報を計算する計算部(48)と、第1情報と第1実情報とが異なる場合には第1情報を第1実情報に書き換え、第2情報と第2実情報とが異なる場合には第2情報を第2実情報に書き換える補正部(50)と、を備える。
【0076】
これにより、ワイヤ電極(12)を傾斜させたときに加工プログラムで指定される角度とは異なる角度で加工されることを低減でき、この結果、加工精度を向上させることができる。
【0077】
寸法取得部(46)は、測定寸法を入力するための寸法入力画面(SCN2)を表示部(34)に表示させてもよい。これにより、オペレータに対して、計算部(48)での計算に必要な測定寸法の詳細を明確に把握させることができる。
【0078】
寸法取得部(46)は、加工後のテストピースの外観を示す外観画面(SCN3)を寸法入力画面(SCN2)とともに表示させてもよい。これにより、寸法入力画面(SCN2)に対する誤入力を抑制することができる。
【0079】
制御装置(30)は、角度およびテストピースの厚さを取得する条件取得部(40)と、角度およびテストピースの厚さに基づいて、テストピースを加工するためのテスト用の加工プログラムを作成するプログラム作成部(42)と、を備え、移動制御部(44)は、第1情報および第2情報とテスト用の加工プログラムとを用いて、テストピースに対して第1ダイスガイド(16a)および第2ダイスガイド(16b)の少なくとも一方を相対移動させてもよい。これにより、オペレータの時間や労力を省くことができる。
【0080】
条件取得部(40)は、角度およびテストピースの厚さを入力するための条件入力画面(SCN1)を表示部(34)に表示させてもよい。これにより、オペレータに対して、テスト用の加工プログラムの作成に必要な加工条件を明確に把握させることができる。
【0081】
計算部(48)は、第1実情報および第2実情報を表示部(34)に表示させてもよい。これにより、オペレータに対して、第1実情報および第2実情報を把握させることができる。
【0082】
(第2の発明)
第2の発明は、演算装置(60)である。この演算装置(60)は、ワイヤ電極(12)の走行方向に対して所定の角度にワイヤ電極(12)が傾斜する状態で加工されたテストピースの測定寸法を取得する寸法取得部(46)と、測定寸法に基づいて、ワイヤ電極(12)を加工対象物(W)に案内する第1ダイスガイド(16a)での実際のワイヤ電極(12)の支持位置(Pa)を示す第1実情報を計算する第1計算部(48a)と、測定寸法に基づいて、加工対象物(W)から送られるワイヤ電極(12)を案内する第2ダイスガイド(16b)での実際のワイヤ電極(12)の支持位置(Pb)を示す第2実情報を計算する第2計算部(48b)と、第1実情報および第2実情報を、テストピースを加工したワイヤ放電加工機(10)の制御装置(30)に出力する出力部(62)と、を備える。
【0083】
したがって、制御装置(30)は、記憶部(36)に記憶される第1情報および第2情報を、演算装置(60)から出力された第1実情報および第2実情報に書き換えることができる。これにより、ワイヤ電極(12)を傾斜させたときに加工プログラムで指定される角度とは異なる角度で加工されることを低減でき、この結果、加工精度を向上させることができる。
【0084】
(第3の発明)
第3の発明は、所定の走行方向に沿って走行するワイヤ電極(12)と加工対象物(W)との極間に放電を生じさせることで、加工対象物(W)を加工するワイヤ放電加工機(10)の制御方法である。
【0085】
この制御方法は、ワイヤ電極(12)を加工対象物(W)に案内する第1ダイスガイド(16a)でのワイヤ電極(12)の支持位置(P´a)を示す第1情報、および、加工対象物(W)から送られるワイヤ電極(12)を案内する第2ダイスガイド(16b)でのワイヤ電極(12)の支持位置(P´b)を示す第2情報を記憶部(36)から読み出す読出ステップ(S3)と、第1情報および第2情報を用いて、走行方向に対して所定の角度にワイヤ電極(12)が傾斜するように、加工対象物(W)であるテストピースに対して第1ダイスガイド(16a)および第2ダイスガイド(16b)の少なくとも一方を相対移動させる移動制御ステップ(S4)と、ワイヤ電極(12)が傾斜する状態で加工されたテストピースの測定寸法を取得する寸法取得ステップ(S5)と、測定寸法に基づいて、第1ダイスガイド(16a)での実際のワイヤ電極(12)の支持位置(Pa)を示す第1実情報、および、第2ダイスガイド(16b)での実際のワイヤ電極(12)の支持位置(Pb)を示す第2実情報を計算する計算ステップ(S6)と、第1情報と第1実情報とが異なる場合には第1情報を第1実情報に書き換え、第2情報と第2実情報とが異なる場合には第2情報を第2実情報に書き換える補正ステップ(S8)と、を含む。
【0086】
これにより、ワイヤ電極(12)を傾斜させたときに加工プログラムで指定される角度とは異なる角度で加工されることを低減でき、この結果、加工精度を向上させることができる。
【0087】
寸法取得ステップ(S5)は、測定寸法を入力するための寸法入力画面(SCN2)を表示部(34)に表示させてもよい。これにより、オペレータに対して、計算ステップ(S6)での計算に必要な測定寸法の詳細を明確に把握させることができる。
【0088】
寸法取得ステップ(S5)は、加工後のテストピースの外観を示す外観画面(SCN3)を寸法入力画面(SCN2)とともに表示させてもよい。これにより、寸法入力画面(SCN2)に対する誤入力を抑制することができる。
【0089】
制御方法は、角度およびテストピースの厚さを取得する条件取得ステップ(S1)と、角度およびテストピースの厚さに基づいて、テストピースを加工するためのテスト用の加工プログラムを作成するプログラム作成ステップ(S2)と、を含み、移動制御ステップ(S4)は、第1情報および第2情報とテスト用の加工プログラムとを用いて、テストピースに対して第1ダイスガイド(16a)および第2ダイスガイド(16b)の少なくとも一方を相対移動させてもよい。これにより、オペレータの時間や労力を省くことができる。
【0090】
条件取得ステップ(S1)は、角度およびテストピースの厚さを入力するための条件入力画面(SCN1)を表示部(34)に表示させてもよい。これにより、オペレータに対して、テスト用の加工プログラムの作成に必要な加工条件を明確に把握させることができる。
【0091】
計算ステップ(S6)は、第1実情報および第2実情報を表示部(34)に表示させてもよい。これにより、オペレータに対して、第1実情報および第2実情報を把握させることができる。
【符号の説明】
【0092】
10…ワイヤ放電加工機 12…ワイヤ電極
14…テーブル 16…ダイスガイド
16a…第1ダイスガイド 16b…第2ダイスガイド
18…ワイヤ送り部 20…電圧供給部
22…駆動部 30…制御装置
32…入力部 34…表示部
36…記憶部 38…信号処理部
40…条件取得部 42…プログラム作成部
44…移動制御部 46…寸法取得部
48…計算部 48a…第1計算部
48b…第2計算部 50…補正部
60…演算装置 62…出力部