(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171942
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせを用いた神経系障害の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20231128BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20231128BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231128BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20231128BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P5/14
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K38/22
A61K31/198
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173286
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2021001350の分割
【原出願日】2016-10-31
(31)【優先権主張番号】62/249,216
(32)【優先日】2015-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518150220
【氏名又は名称】アイオー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】チャンドララトナ、ロシャンサ エイ
(72)【発明者】
【氏名】サンダース、マーティン イー
(57)【要約】
【課題】再髄鞘形成、神経保護、および免疫調節を誘発することにより神経系障害を治療する医薬組成物を提供する。
【解決手段】中枢神経系障害に関連する脱髄又は神経炎症の治療において、甲状腺ホルモンと組み合わせて使用されるための治療的有効量のRXRアゴニストを含む医薬組成物であって、前記RXRアゴニストは、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸、であり、前記RXRアゴニストは甲状腺ホルモンと組み合わせて使用されることで、前記RXRアゴニストまたは前記甲状腺ホルモン単独よりも大きな中枢神経系障害の改善をもたらす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系障害に関連する脱髄又は神経炎症の治療において、甲状腺ホルモンと組み合わせて使用されるための治療的有効量のRXRアゴニストを含む医薬組成物であって、
前記RXRアゴニストは、式IIIの構造を有する3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸
【化1】
であり、
前記RXRアゴニストは甲状腺ホルモンと組み合わせて使用されることで、前記RXRアゴニストまたは前記甲状腺ホルモン単独よりも大きな中枢神経系障害の改善をもたらす、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2015年10月31日に出願された米国仮特許出願第62/249,216号明細書の優先権を主張する。この出願の全内容は、本願明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、レチノイドX受容体(RXR)アゴニストを甲状腺ホルモンと組み合わせて使用して、再髄鞘形成、神経保護、および免疫調節を誘発することにより神経系障害を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
神経系疾患のケア治療の現在の標準は、患者の炎症/免疫応答を調節することによって臨床的利益を促進するいくつかの抗炎症性および免疫調節性薬物を含む。これらの療法は疾患の進行を遅らせるが、それらは病理を逆転させることも、神経機能を回復することもできない。神経系障害患者のケアの現在の標準において有意な進歩を達成する1つの方法は、再髄鞘形成もしくは神経保護、またはその両方を促進し、それによって健康な軸索およびニューロンを再生または維持することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
レチノイドX受容体(RXR)アゴニストを甲状腺ホルモンと組み合わせて使用して、再髄鞘形成、神経保護、および免疫調節を誘発することにより神経系障害を治療する方法が本願明細書に開示されている。
【0005】
具体的には、本明細書に開示されているのは、神経系障害を治療するための方法であって、当該治療を必要とする個体に、治療的有効量のRXRアゴニストおよび治療的有効量の甲状腺ホルモンを投与することを含み、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせの投与は、RXRアゴニストまたは甲状腺ホルモン単独による治療よりも効果的に個体の神経系障害を治療する方法である。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせは、ニューロンの再髄鞘形成および神経保護を促進することならびに個体の免疫系を調節することの両方によって個体における神経系障害を治療する。
【0006】
いくつかの実施形態では、RXRアゴニストは、選択的RXRアゴニストであり、かつ3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸を含み、かつ式III:
【化1】
の構造を有する。
【0007】
他の実施形態では、RXRアゴニストは、ベキサロテンまたはLG268である。
【0008】
特定の実施形態では、神経系障害は、中枢神経系(CNS)障害である。特定の実施形態では、神経系障害は、多発性硬化症(MS)の再発/寛解型一次進行型および二次進行型形態、早期幼児のびまん性白質損傷、神経鞘炎、急性播種性脳脊髄炎、マールブルグ多発性硬化症、びまん性骨髄硬化性硬化症(シェダー病)、バロ同心硬化症、孤立性硬化症、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、白質異栄養症(複数の変種、例えば、副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄ニューロパチー)、パーキンソン病、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、脳卒中、外傷性脳損傷および外傷性脊髄損傷を含むCNS外傷、放射線誘発性神経炎症、放射線症候群、デヴィック病、炎症性脱髄疾患、CNSニューロパチー、中枢性橋状ミエリン溶解、背側索(梅毒性脊髄症)、進行性多巣性白質脳症、白質萎縮症、うつ病、統合失調症、てんかん、偏頭痛、および認知症である。
【0009】
特定の実施形態では、神経系障害は、多発性硬化症または放射線誘発性神経系炎症などの脱髄関連障害である。
【0010】
いくつかの実施形態では、脱髄関連障害は、ギランバレー症候群、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、脱髄性糖尿病性ニューロパチー、進行性炎症性ニューロパチー、例えば化学療法誘発ニューロパチーもしくは有機リン酸塩誘発ニューロパチーのような薬物誘発もしくは毒素誘発ニューロパチー、抗MAG末梢ニューロパチー、シャルコー・マリー・トゥース病、または銅欠乏などの末梢神経系障害である。
【0011】
いくつかの実施形態では、RXRアゴニストの治療的有効量は、約0.001mg/日~約100mg/日である。他の実施形態では、RXRアゴニストの治療的有効量は、約1mg/日~約20mg/日である。いくつかの実施形態では、甲状腺ホルモンは、チロキシンである。ある特定の実施形態では、チロキシンの治療的有効量は、約12.5μg/日~約250μg/日である。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストは、経鼻投与によって投与される。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストおよびチロキシンの両方は、経鼻投与によって投与される。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストは、経口投与される。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストおよびチロキシンは、実質的に同時に投与される。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストおよびチロキシンは、異なるスケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、甲状腺ホルモンは、経口または皮下投与される。
【0012】
特定の実施形態では、RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、神経系障害の少なくとも1つの症状を低減し、低減される少なくとも1つの症状は、炎症、疲労、めまい、頭痛、倦怠感、高熱および高体温、手足の冷たさに対する極端な感受性、筋肉および関節の弱さおよび硬さ、体重の変化、消化器もしくは胃腸の問題、低血圧もしくは高血圧、過敏性、不安、もしくはうつ病、ぼやけたもしくは複視、運動失調、クローヌス、構音障害、疲労、粗相、手の麻痺、片頭痛、性器無感症、協調運動障害、感覚異常、眼の麻痺、筋肉協調障害、衰弱(筋肉)、感覚の喪失、視覚障害、神経学的症状、不安定歩行、痙性不全麻痺、失禁、聴覚障害、または発話の問題である。他の実施形態では、RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、神経系障害の少なくとも2つの症状を低減する。他の実施形態では、RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、神経系障害の少なくとも5つの症状を低減する。
【0013】
いくつかの実施形態では、方法は、遊離血清チロキシンを測定することと、チロキシンの濃度を甲状腺機能正常の範囲に保つためにチロキシンの用量を調節することと、をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、神経系疾患の治療のためのRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンと組み合わせた神経栄養因子または神経栄養因子模倣物の投与をさらに含む。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNF、GDNF、NGF、NT-3、bFGF、CNTF、NT-4/5、IGF、もしくはインスリン、またはそれらの模倣物である。
【0015】
特定の実施形態では、神経系の疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、視神経炎、脳卒中、CNS外傷、筋萎縮性側索硬化症、ニューロパチー、神経系低酸素症、CNS毒性、認知症、網膜症、ハンチントン病、シヌクレイノパチー、てんかん、自閉症、統合失調症、うつ病、または老化関連CNS変性である。
【0016】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、GDNFまたはGDNF模倣物であり、神経系疾患は、パーキンソン病である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、GDNFまたはGDNF模倣物であり、神経系疾患は、筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNFであり、神経系疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、インスリンまたはインスリン様成長因子であり、神経系疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNFであり、神経系疾患は、多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNFであり、神経系疾患は、脳卒中、神経系外傷、老化、または認知症である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNF、GDNF、またはインスリンであり、神経系疾患は、老化関連神経系神経変性である。特定の実施形態において、神経栄養因子または模倣物は、経口、非経口、経鼻、または局所経路によって、あるいは制御放出によって投与される。
【0017】
また、本明細書に開示されているのは、ニューロンまたはグリア細胞の生存または成長をin vitroで促進するための、その後の神経系障害の患者の神経系への移植のための、RXRアゴニスト、甲状腺ホルモン、および神経栄養因子または神経栄養因子模倣物の組み合わせの使用である。
【0018】
また、本明細書に開示されているのは、神経系障害の患者のニューロンまたはグリア細胞の生存または修復を促進する方法であって、当該治療を必要とする個体に、治療的有効量の本明細書に記載のRXRアゴニストおよび治療的有効量の本明細書に記載の甲状腺ホルモンを投与することを含み、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせの投与は、個体の神経系障害を治療する方法である。
【0019】
特定の実施形態では、ニューロンまたはグリア細胞の生存または修復を促進する方法は、神経系障害の患者のニューロンまたはグリア細胞の生存または修復を促進するための神経栄養因子または神経栄養因子模倣物の投与をさらに含む。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNF、GDNF、NGF、NT-3、bFGF、CNTF、NT-4/5、IGF、もしくはインスリン、またはそれらの模倣物である。
【0020】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、GDNFまたはGDNF模倣物であり、神経系疾患は、パーキンソン病である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、GDNFまたはGDNF模倣物であり、神経系疾患は、筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNFであり、神経系疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、インスリンまたはインスリン様成長因子であり、神経系疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNFであり、神経系疾患は、多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNFであり、神経系疾患は、脳卒中、神経系外傷、老化、または認知症である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、BDNF、GDNF、またはインスリンであり、神経系疾患は、老化関連神経系神経変性である。特定の実施形態において、神経栄養因子または模倣物は、経口、非経口、経鼻、または局所経路によって、あるいは制御放出によって投与される。
【0021】
また、本明細書に開示されているのは、多発性硬化症を治療する方法であって、方法は、治療を必要とする個体に治療的有効量の3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸(式IIIの化合物)および治療的有効量のチロキシンを投与することを含み、組み合わせの投与は、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸または甲状腺ホルモンの単独での治療よりも効果的に個体における多発性硬化症を治療する、方法である。
【0022】
また、本明細書に開示されているのは、神経系障害を治療する方法であって、方法は、治療を必要とする個体に治療的有効量の3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸および治療的有効量のチロキシンを投与することを含み、組み合わせの投与は、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸または甲状腺ホルモンの単独での治療よりも効果的に個体における神経系障害を治療し、RXRアゴニストが、硬膜内投与、硬膜外投与、頭蓋内注射もしくは移植、または経鼻投与により、個体の神経系に直接送達される、方法である。
【0023】
また、本明細書に開示されているのは、パーキンソン病を治療する方法であって、方法は、治療を必要とする個体に治療的有効量の3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸および治療的有効量のチロキシンを投与することを含み、組み合わせの投与は、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸または甲状腺ホルモンの単独での治療よりも効果的に個体におけるパーキンソン病を治療する、方法である。
【0024】
また、本明細書に開示されているのは、アルツハイマー病を治療する方法であって、方法は、治療を必要とする個体に治療的有効量の3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸および治療的有効量のチロキシンを投与することを含み、組み合わせの投与は、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸または甲状腺ホルモンの単独での治療よりも個体におけるアルツハイマー病をより効果的に治療する、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】トランス活性化アッセイを用いて、RXRα、RXRβ、RXRγ、RARα、RARβおよびRARγからの転写のRXRアゴニスト活性化を示す。
【
図2】甲状腺ホルモンと組み合わせたRXRアゴニストが、C57BL/6マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を減弱させることを示す。
【
図3A】RXRアゴニストが、中枢神経系への白血球浸潤を低減させることを示す。
図3Aは、CD4
+細胞の数を示す。
【
図3B】RXRアゴニストが、中枢神経系への白血球浸潤を低減させることを示す。
図3Bは、ビヒクル対照に対して選択的RXRアゴニストIRX4204(4204)で治療したマウスにおけるCD11c
+CD11b
+細胞(骨髄性DC)の数を示す。
【
図4】RXRアゴニストがSJLマウスにおいてEAEを減弱させることを示す。
【
図5A】IRX4204がRXR-Nurr1ヘテロ二量体を選択的に活性化することを示す。ファルネソイドX受容体FXRについてのIRX4204(194204、式III)のトランス活性化アッセイ。
【
図5B】IRX4204がRXR-Nurr1ヘテロ二量体を選択的に活性化することを示す。肝臓X受容体LXRαおよびLXRβについてのIRX4204(194204、式III)のトランス活性化アッセイ。
【
図5C】IRX4204がRXR-Nurr1ヘテロ二量体を選択的に活性化することを示す。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体PPARγについてのIRX4204(194204、式III)のトランス活性化アッセイ。
【
図5D】IRX4204がRXR-Nurr1ヘテロ二量体を選択的に活性化することを示す。RXRの存在下または非存在下でのNurr1受容体についてのIRX4204(194204、式III)のトランス活性化アッセイ。
【
図6】IRX4204および甲状腺ホルモンによる胚性マウス脳由来の希突起膠細胞前駆細胞の培養後の緑色蛍光タンパク質(EGFP)陽性乏突起膠細胞のパーセンテージを示す。
【
図7】マウスにおけるEAEに対する選択的RXRアゴニストIRX4204の効果を示す。
【
図8A】200μg/日のIRX4204または対照で治療したEAEマウス由来の脾細胞に対するCCR6の発現を示す。
【
図8B】200μg/日のIRX4204または対照で治療したEAEマウス由来の脾細胞に対するCD49dの発現を示す。
【
図9A】200μg/日のIRX4204または対照で治療したEAEマウス由来の脾細胞におけるCD4+CD25hi細胞の定量化を示す。
【
図9B】200μg/日のIRX4204または対照で治療したEAEマウス由来の脾細胞におけるCD4+CD25hi細胞の頻度を示す。
【
図9C】200μg/日のIRX4204または対照で治療したEAEマウス由来の脾細胞におけるフェクターおよびメモリーCD4 T細胞の総数を示す。
【
図9D】200μg/日のIRX4204または対照で治療したEAEマウス由来の脾細胞における活性化CD4 T細胞の総数を示す。
【
図10】200μg/日のIRX4204または対照で治療したEAEマウスのCNSにおける浸潤性CD4 T細胞の総数を示す。
【
図11A】インターフェロンガンマ(IFNγ)の発現を決定するための
図10の浸潤リンパ球の再刺激を示す。
【
図11B】IL-17Aの発現を決定するための
図10の浸潤リンパ球の再刺激を示す。
【
図11C】腫瘍壊死因子(TNF)の発現を決定するための
図10の浸潤リンパ球の再刺激を示す。
【
図11D】L-4の発現を決定するための
図10の浸潤リンパ球の再刺激を示す。
【
図12A】IL-17AおよびIFNγではない(
図12A)を発現する
図10のCD4 T細胞によるIFNγおよびIL-17Aの共発現の定量化を示す。
【
図12B】IL-17AおよびIFNγ(
図12B)を発現する
図10のCD4 T細胞によるIFNγおよびIL-17Aの共発現の定量化を示す。
【
図12C】IFNγおよびIL-17Aではない(
図12C)を発現する
図10のCD4 T細胞によるIFNγおよびIL-17Aの共発現の定量化を示す。
【
図13】本明細書に記載の化合物および組み合わせでの治療によるパーキンソン病のラット6-OHDA誘発モデルにおける足載せ行動の変化を示す(一元配置ANOVA後のダネット試験を用いた*P<0.05対ビヒクル)。
【
図14】希突起膠細胞をIRX4204、甲状腺ホルモンおよびビタミンDで治療した後のEGFP+希突起膠細胞のパーセントおよび倍率変化を示す(*:P<0.05、DMSO対照に対するステューデントt検定;エラーバー、SD)。
【
図15A】希突起膠細胞をIRX4204および甲状腺ホルモンで治療した後のEGFP+希突起膠細胞のパーセント変化を示す(
図15A:10nMIRX4204)。***P<0.0001;**P<0.01。
【
図15B】希突起膠細胞をIRX4204および甲状腺ホルモンで治療した後のEGFP+希突起膠細胞のパーセント変化を示す(
図15B:1nMIRX4204)。***P<0.0001;**P<0.01。
【
図15C】突起膠細胞をIRX4204および甲状腺ホルモンで治療した後のEGFP+希突起膠細胞のパーセント変化を示す(
図15C:0.1nMIRX4204)。***P<0.0001;**P<0.01。
【
図16A】クプリゾン誘発脱髄モデルにおける再髄鞘形成に対するIRX4204の効果を示す。
図16Aは、海馬における再髄鞘形成を示す。
【
図16B】クプリゾン誘発脱髄モデルにおける再髄鞘形成に対するIRX4204の効果を示す。
図16Bは、皮質における再髄鞘形成を示す。
【
図17A】髄鞘軸索のサイズの定量化を示す。Image J.により6週間の治療後の髄鞘軸索のサイズを定量化した。軸索サイズ分布のヒストグラムは、IRX4204治療軸索におけるより大きな軸索直径への分布のシフトを示す。
【
図17B】髄鞘軸索のサイズの定量化を示す。Image J.により6週間の治療後の髄鞘軸索のサイズを定量化した。約0.7μmの軸索の第3四分位の日付の検討は、上位四分位の軸索の大きさにおいて有意な増加(P<0.0001)を示す。
【
図18】ビヒクル、IRX4204、またはIRX4204およびT4(**P<0.005対ビヒクルおよびナイーブ対照)を受けた動物における末梢循環血清T4濃度を示す。
【
図19】ビヒクル、IRX4204、またはIRX4204およびT4を6週間投与した動物における脳梁内のSMI32陽性卵巣の定量化を示す(*P<0.05対Veh+Veh対照)。
【
図20A】明細書に記載の組み合わせによるin vivo治療後の脳梁の髄鞘形成の定量化、ならびに潜在的応答者および非応答者へのデータの分離を示す(Tukeyの複数比較による一元配置ANOVA、*P<0.05 **P<0.01、****P<0.001)。
図20Aは、CC単位当たりの髄鞘軸索を示す。
【
図20B】明細書に記載の組み合わせによるin vivo治療後の脳梁の髄鞘形成の定量化、ならびに潜在的応答者および非応答者へのデータの分離を示す(Tukeyの複数比較による一元配置ANOVA、*P<0.05 **P<0.01、****P<0.001)。
図20Bは、髄鞘軸索の密度(10,000μm
2当たり)を示す。
【
図20C】明細書に記載の組み合わせによるin vivo治療後の脳梁の髄鞘形成の定量化、ならびに潜在的応答者および非応答者へのデータの分離を示す(Tukeyの複数比較による一元配置ANOVA、*P<0.05 **P<0.01、****P<0.001)。
図20Cは、SM132+卵巣(250,000μm
2当たり)の密度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
多くの神経系の疾患は、軸索およびニューロンの脱髄に関連する。そのような脱髄の障害は、自己免疫疾患または他の病因の障害であり得る。多発性硬化症(MS)は、脱髄にも関連する自己免疫疾患の一例である。したがって、MSの治療のための最適な薬物または薬物の組み合わせは、疾患の自己免疫態様に対処すると同時に、脱髄を予防することにより、再髄鞘形成を増強し、神経保護を提供する。MSは、現在、患者の免疫応答を調節し、抗炎症効果を生じることによって臨床的利益をもたらすいくつかの免疫調節薬によって治療されている。これらの薬物は、疾患の進行を遅延させるが、損傷したニューロンの髄鞘形成を回復させることにより疾患病理を逆転させず、神経機能を回復させない。同時に甲状腺ホルモンと併用すると、IRX4204(194204、式III)、RXRホモ二量体およびRXR-Nurr1ヘテロ二量体の選択的活性化因子であるという特有の作用機構を有するレチノイドX受容体(RXR)リガンドは、免疫調節活性を提供し、また、再髄鞘形成および神経保護を促進する。IRX4204は、抑制性Treg細胞の分化を促進すると同時に、炎症促進性Th17細胞の分化を阻害し、これにより、MSなどのヒト自己免疫疾患の根底にある異常に偏ったTh17/Treg細胞比に好影響を与える(同時係属中の米国特許出願公開第2015/0038585号明細書を参照されたい。これは、RXRアゴニストに関して開示されている全てについて参考により組み込まれる)。したがって、Th17/Treg細胞比に対するその効果のために、IRX4204は、MSにおける現在のケア治療水準と同様の臨床的利点を有するであろう。さらに、IRX4204は、脱髄を予防することによって、脱髄されたニューロンの再髄鞘形成および神経保護を促進する。甲状腺ホルモンと組み合わせたIRX4204は、さらに、脱髄されたニューロンのさらなる再髄鞘形成を増強し、脱髄をより効果的に予防することによってより大きな神経保護をもたらし得る。したがって、甲状腺ホルモンおよびIRX4204、ならびに同じ受容体活性化プロファイルを有する他のRXRリガンド、免疫調節活性を提供すると共に再髄鞘形成および神経保護(および再生)を促進する化合物同士の組み合わせは、MSにおける疾患の進行を遅らせるだけでなく、健康な軸索およびニューロンを保護および再生することによって神経の維持および回復をもたらすだろう。IRX4204は、甲状腺ホルモンとともに、脱髄にも関連するMSおよび他の自己免疫疾患の治療のための最適な薬物組み合わせであると予期される。
【0027】
レチノイン酸受容体(RAR)およびRXRならびにそれらの同種リガンドは、異なる機構によって機能する。RARは常にRXRとヘテロ二量体を形成し、これらのRAR/RXRヘテロ二量体は標的遺伝子のプロモーター領域の特異的応答因子に結合する。RARアゴニストのヘテロ二量体のRAR受容体への結合は、標的遺伝子の転写の活性化をもたらし、レチノイド効果をもたらす。一方、RXRアゴニストはRAR/RXRヘテロ二量体を活性化しない。RAR/RXRのようなRXRヘテロ二量体複合体は、リガンド結合に起因する転写の活性化が非RXRタンパク質(例えば、RAR)でのみ起こるので、非許容性RXRヘテロ二量体と呼ばれ得る;リガンド結合による転写の活性化は、RXRでは起こらない。RXRはまた、RAR以外の核内受容体と相互作用し、RXRアゴニストは、そのようなRXR/受容体複合体に結合することによって、その生物学的効果の一部を引き起こし得る。これらのRXR/受容体複合体は、リガンド結合に起因する転写の活性化がRXR、他の受容体、または両方の受容体で起こり得るので、許容性RXRヘテロ二量体と呼ばれ得る。許容性RXRヘテロ二量体の例には、限定されないが、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体/RXR(PPAR/RXR)、ファルネシルX受容体/RXR(FXR/RXR)、核内受容体関連-1タンパク質(Nurr1/RXR)および肝臓X受容体/RXR(LXR/RXR)が挙げられる。あるいは、RXRは、RXRアゴニストによって活性化されてレキシノイド効果をもたらし得るRXR/RXRホモ二量体を形成し得る。また、RXRは、核内受容体以外のタンパク質と相互作用し、そのようなタンパク質複合体内のRXRに結合するリガンドはまた、レキシノイド効果を引き起こし得る。これらの作用機構の違いにより、RXRアゴニストおよびRARアゴニストは、異なる生物学的結果を引き起こし、同様の生物学的効果を媒介する場合でさえ、異なる機構によってそうなる。さらに、炎症促進性応答または皮膚粘膜毒性のようなレチノイドの望ましくない副作用は、1つ以上のRAR受容体サブタイプの活性化によって媒介される。別の言い方をすれば、RXR経路を介して媒介される生物学的効果は、炎症促進性応答を誘発せず、したがって望ましくない副作用をもたらさないであろう。
【0028】
したがって、本明細書の態様は、部分的にRXRアゴニストを提供する。本明細書で使用される場合、用語「RXRアゴニスト」は、RXR応答要素を介して遺伝子転写を引き起こす様式で、RXRα、RXRβ、またはRXRγのような1つ以上のRXR受容体に結合する化合物を指す。使用する場合、用語「選択的RXRアゴニスト」は、RXRアゴニストのあるタイプのRXRヘテロ二量体への結合の際のRXR(例えば、PPARまたはLXR)に対するヘテロ二量体パートナーの識別的な活性化を指し、別のタイプには結合しない。
【0029】
一実施形態では、選択的RXRアゴニストは、許容性ヘテロ二量体PPAR/RXR、FXR/RXR、およびLXR/RXRをいかなる感知可能な程度まで活性化しない。別の実施形態では、RXRアゴニストは、許容ヘテロ二量体Nurr1/RXRを活性化するが、他の許容性RXRヘテロ二量体は活性化しない。そのような選択的RXRアゴニストの一例は、本願明細書に開示された、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸(IRX4204、194204)であり、式IIIに示される構造である。この実施形態の他の態様では、RXRアゴニストは、同じ許容性ヘテロ二量体を活性化する活性化RXRアゴニストの能力と比較して、1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、6%以下、7%以下、8%以下、9%以下、または10%以下だけ、許容性ヘテロ二量体PPAR/RXR、FXR/RXR、またはLXR/RXRを活性化する。PPAR/RXR、FXR/RXR、またはLXR/RXRの1つ以上を活性化するRXRアゴニストの例としては、例えば、LGD1069(ベキサロテン)およびLGD268が挙げられる。
【0030】
IRX4204は、いくつかの他のRXRリガンドと同様に、RAR/RXRなどの非許容ヘテロ二量体を活性化しない。しかし、IRX4204は、Nurr1/RXRヘテロ二量体を特異的に活性化し、PPAR/RXR、FXR/RXR、およびLXR/RXRなどの他の許容性RXRヘテロ二量体を活性化しない点で特有である。他のRXRリガンドは概して、これらの許容性RXRヘテロ二量体を活性化する。したがって、全てのRXRリガンドを1つのクラスに属するものとして分類し得ない。IRX4204は、RXRホモ二量体および許容性RXRヘテロ量体の1つだけ、すなわちNurr1/RXRヘテロ二量体を特異的および選択的に活性化する特有のクラスのRXRリガンドに属する。この特有な受容体プロファイルは、IRX4204が免疫調節性および神経回復特性の両方を有することを可能にする。
【0031】
RXRアゴニストは、甲状腺機能を抑制することが知られている。ヒト対象者を特定のRXRアゴニストIRX4204で治療すると、まずTSHの血漿濃度が低下し、続いて血中チロキシン濃度が低下する。IRX4204の患者が機能的甲状腺機能低下症のために有害な臨床症状を発症した場合、そのような臨床症状は、薬理学的用量のチロキシンで患者を治療することによって解決され得る。しかし、甲状腺ホルモンによるRXRアゴニスト治療の補充は、治療的に利用されていない。驚くべきことに、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせは、RXRアゴニスト単独の使用よりも予想外に優れた有効性をもたらし、血漿甲状腺ホルモン濃度の調節とは無関係に神経系障害の治療においてRXRアゴニストと甲状腺ホルモンとの間の相乗作用を示す。
【0032】
したがって、IRX4204のような選択的RXRホモ二量体、Nurr1/RXR活性化剤の甲状腺ホルモンとの併用は、神経系障害を治療する特有の有効な方法を提供する。
【0033】
結合特異性は、RXR受容体とその結合部位を含まない受容体(例えば、RAR受容体)とを識別するRXRアゴニストの能力である。特定のRXRアゴニストは、RXRホモ二量体ならびにほとんどの許容性RXRヘテロ二量体(例えば、RXR/PPAR、RXR/LXR、RXR/Nurr1)を活性化し得る;そのようなRXRアゴニストは、非選択的RXRアゴニストとして知られている。特定の他のRXRアゴニストは、RXRホモ二量体を活性化し、予想外に、1つまたは少数のRXRヘテロ二量体のみを活性化する。そのようなRXRアゴニスト(例えば、IRX4204)は、選択的RXRアゴニストとして知られている。
【0034】
したがって、本明細書に開示されているのは、式Iの構造を有する選択的RXRアゴニストである。
【化2】
式中、R
4は、1~6個の炭素の低級アルキルであり;Bは、-COOHまたは-COOR
8であり、ここでR
8は、1~6個の炭素の低級アルキルであり、シクロプロパン環の構造は、シスであり、シクロプロパン環に結合したペンタジエン酸またはエステル鎖の二重結合の構造は、各二重結合においてトランスであり、あるいは化合物の薬学的に許容される塩である。
【0035】
例示的な実施形態では、選択的RXRアゴニストは、式IIの構造を有する化合物である:
【化3】
式中、Rは、Hまたは1~6個の炭素の低級アルキルである。
【0036】
さらなる例示的実施形態では、選択的RXRアゴニストは、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸(IRX4204)であり、かつ式III:
【化4】
の構造を有する。
【0037】
特定の実施形態では、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸のエステル形態は、本開示の範囲内ではない。
【0038】
特定の実施形態では、非選択的RXRアゴニストは、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標)、4-[1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)エテニル]安息香酸、Mylan Pharmaceuticals, Inc.)。
【化5】
【0039】
他の実施形態では、RXRアゴニストは、LG268(LG100268、2-[1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル)シクロプロピル]ピリジン-5-カルボン酸)である。
【化6】
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「甲状腺ホルモン」は、チロキシンおよびトリヨードチロニンを指す。チロキシン(甲状腺ホルモンT4、レボチロキシンナトリウム)は、甲状腺によって産生されるチロシン系ホルモンであり、主に代謝の調節に関与する。チロキシンは、トリヨードチロニン(T3)のプロホルモンである。RXRアゴニストは、甲状腺機能を抑制することが知られている。この甲状腺機能低下症に関連する臨床症状は、甲状腺ホルモンで治療され得る。しかし、RXRアゴニストの有効性を高める甲状腺ホルモンによるRXRアゴニスト治療の補充は、治療的に利用されていない。
【0041】
本明細書中に開示されたように、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせは、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンによる治療の非存在下での髄鞘形成濃度と比べて、少なくとも約10%~少なくとも約25%、少なくとも約10%~少なくとも約50%、少なくとも約10%~少なくとも約75%、少なくとも約10%~少なくとも約100%、少なくとも約10%~少なくとも約200%、少なくとも約10%~少なくとも約300%、少なくとも約10%~少なくとも約400%、少なくとも約10%~少なくとも約500%、少なくとも約25%~少なくとも約50%、少なくとも約25%~少なくとも約75%、少なくとも約25%~少なくとも約100%、少なくとも約25%~少なくとも約200%、少なくとも約25%~少なくとも約300%、少なくとも約25%~少なくとも約400%、少なくとも約25%~少なくとも約500%、少なくとも約50%~少なくとも約100%、少なくとも約50%~少なくとも約200%、少なくとも約50%~少なくとも約300%、少なくとも約50%~少なくとも約400%、または少なくとも約50%~少なくとも約500%だけ、中枢もしくは末梢神経系における髄鞘形成を増加させ、または脱髄を予防することによる神経保護を提供する。
【0042】
この実施形態のさらに他の態様では、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせは、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンによる治療の非存在下での分化濃度と比べて、少なくとも約10%~少なくとも約25%、少なくとも約10%~少なくとも約50%、少なくとも約10%~少なくとも約75%、少なくとも約10%~少なくとも約100%、少なくとも約10%~少なくとも約200%、少なくとも約10%~少なくとも約300%、少なくとも約10%~少なくとも約400%、少なくとも約10%~少なくとも約500%、少なくとも約25%~少なくとも約50%、少なくとも約25%~少なくとも約75%、少なくとも約25%~少なくとも約100%、少なくとも約25%~少なくとも約200%、少なくとも約25%~少なくとも約300%、少なくとも約25%~少なくとも約400%、少なくとも約25%~少なくとも約500%、少なくとも約50%~少なくとも約100%、少なくとも約50%~少なくとも約200%、少なくとも約50%~少なくとも約300%、少なくとも約50%~少なくとも約400%、または少なくとも約50%~少なくとも約500%だけ、希突起膠細胞前駆細胞の中枢または末梢神経系における機能性希突起膠細胞への分化を増加させる。
【0043】
本明細のさらに別の態様では、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせは、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンによる治療の非存在下でのミエリン回復率と比べて、少なくとも約10%~少なくとも約25%、少なくとも約10%~少なくとも約50%、少なくとも約10%~少なくとも約75%、少なくとも約10%~少なくとも約100%、少なくとも約10%~少なくとも約200%、少なくとも約10%~少なくとも約300%、少なくとも約10%~少なくとも約400%、少なくとも約10%~少なくとも約500%、少なくとも約25%~少なくとも約50%、少なくとも約25%~少なくとも約75%、少なくとも約25%~少なくとも約100%、少なくとも約25%~少なくとも約200%、少なくとも約25%~少なくとも約300%、少なくとも約25%~少なくとも約400%、少なくとも約25%~少なくとも約500%、少なくとも約50%~少なくとも約100%、少なくとも約50%~少なくとも約200%、少なくとも約50%~少なくとも約300%、少なくとも約50%~少なくとも約400%、または少なくとも約50%~少なくとも約500%だけ、ミエリン回復率を増加させる。
【0044】
本明細書の態様は、部分的に、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンを含む組成物を提供する。例示的なRXRアゴニストは、IRX4204、ベキサロテン、およびLG268である。また、IRX4204およびチロキシンの組み合わせによる神経系疾患の治療方法が提供される。
【0045】
本開示の態様は、部分的には、脱髄関連障害などの神経系障害の治療を提供する。脱髄関連障害は、ニューロンのミエリンシースが損傷した神経系の任意の疾患または障害である。この損傷は、冒された神経におけるシグナルの伝達を損なう。次に、伝導能力の低下は、どの神経が関与するかに応じて、感覚、運動、認知、または他の機能の欠損を引き起こす。中枢神経系および末梢神経系の両方が関与し得る。
【0046】
いくつかの脱髄関連障害は、遺伝、感染因子または毒素によるもの、自己免疫反応によるもの、放射線損傷によるもの、未知の要因によるものなどがある。神経弛緩薬は、脱髄を引き起こし得る。脱髄の正確な機構ははっきりとは分かっていないが、身体の免疫系が少なくとも部分的な原因であり、脱髄関連障害が自己免疫障害と考えられることを引き起こすという重要な証拠がある。
【0047】
いくつかの神経系および脱髄障害を含む自己免疫障害は、体内に通常存在する物質および組織に対する身体の過度の免疫応答から生じ、自己抗原に対する耐性の崩壊をもたらす。言い換えれば、免疫系が病原体として身体の一部を間違えてそれを攻撃するため、身体は実際に自分の細胞を攻撃する。標的器官または組織に浸潤する病原性T細胞集団の発生によって特徴付けられると、自己免疫疾患は、特定の器官に限定されてもよく、または異なる場所に特定の組織に関与し得る。
【0048】
神経系障害は、最も影響を受ける臓器に応じて、中枢神経系障害および末梢神経系障害に大別され得る。中枢神経系障害には、限定されないが、多発性硬化症(MS)の再発/寛解型一次進行型および二次進行型形態、早期幼児のびまん性白質損傷、神経鞘炎、急性播種性脳脊髄炎、マールブルグ多発性硬化症、びまん性骨髄硬化性硬化症(シェダー病)、バロ同心硬化症、孤立性硬化症、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、白質異栄養症(複数の変種、例えば、副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄ニューロパチー)、パーキンソン病、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、脳卒中、脳および脊髄外傷を含む外傷性CNS損傷、放射線誘発性神経炎症、放射線症候群、デヴィック病、炎症性脱髄疾患、ビタミンB12欠乏症によって産生されるものと同様なCNSニューロパチー、中枢性橋状ミエリン溶解、背側索(梅毒性脊髄症)のようなミエロパシー、進行性多巣性白質脳症のような白質脳症、放射線誘発性中枢神経系炎症および白質萎縮症が挙げられる。末梢神経系障害には、限定されないが、ギランバレー症候群、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、脱髄性糖尿病性ニューロパチー、進行性炎症性ニューロパチー、薬物または毒素誘発性ニューロパチー、例えば、化学療法誘発ニューロパチーまたは放射線誘発性ニューロパチーまたは有機リン酸誘発性ニューロパチー、抗MAG末梢ニューロパチー、シャルコー・マリー・トゥース病、放射線誘発性ニューロパチー、銅欠乏症、うつ病、統合失調症、てんかん、片頭痛、および認知症が挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、障害は、悪液質ではない。
【0050】
特定の実施形態では、神経系障害は、アルツハイマー病である。他の実施形態では、障害は、アルツハイマー病ではない。
【0051】
一実施形態では、脱髄関連障害は、MSである。多発性硬化症は、現在、患者の免疫応答を調節し、抗炎症効果を生じることによって臨床的利益をもたらすいくつかの免疫調節薬によって治療されている。これらの薬物は、疾患の進行を遅延させるが、脱髄を予防し、神経保護をもたらすことによって疾患の進行を予防せず、または損傷したニューロンの髄鞘形成を回復させることにより疾患病理を逆転させず、または神経機能を回復させない。選択的RXRアゴニストIRX4204は、それがRXRホモ二量体およびRXR/Nurr1ヘテロ二量体の特異的活性化剤であり、特に甲状腺ホルモンと組み合わせて使用する場合、同時に、免疫調節活性を与え、再髄鞘化を促進し、脱髄を予防するという点で特有の作用機構を有する。IRX4204は、抑制性Treg細胞の分化を促進すると同時に、炎症促進性Th17細胞の分化を阻害し、これにより、MSなどのヒト自己免疫疾患の根底にある異常に偏ったTh17/Treg細胞比に好影響を与える。したがって、Th17/Treg細胞比に対するその効果のために、IRX4204および甲状腺ホルモンの組み合わせは、MSにおける現在のケア治療水準と同様またはよりよい臨床的利点を有することが期待される。さらに、甲状腺ホルモンと組み合わせたIRX4204は、脱髄されたニューロンの再髄鞘形成を促進し、脱髄を予防することによって神経保護を与えるのに、より効果的である。したがって、IRX4204および甲状腺ホルモンの組み合わせは、MSにおける疾患の進行を遅らせるだけでなく、健康な軸索およびニューロンを再生することによって神経回復にも影響する。
【0052】
本開示の態様は、部分的には、神経系障害に関連する少なくとも1つの症状を低減することを含む。本明細書に開示された神経系障害と関連する実際の症状はよく知られており、限定されないが、神経系障害の位置、神経系障害の原因、神経系障害の重症度、神経系によって影響される組織または器官、炎症に関連した神経系含む要因を考慮して当業者により決定され得る。本明細書に開示された神経系障害を治療する方法により低減される症状の非限定的な例は、炎症、疲労、めまい、頭痛、倦怠感、高熱および高体温、手足の冷たさに対する極端な感受性、筋肉および関節の弱さおよび硬さ、体重の変化、消化器もしくは胃腸の問題、低血圧もしくは高血圧、過敏性、不安、うつ病、ぼやけたもしくは複視、運動失調、クローヌス、構音障害、粗相、手の麻痺、片頭痛、性器無感症、協調運動障害、感覚異常、眼の麻痺、筋肉協調障害、衰弱(筋肉)、感覚の喪失、視覚障害、神経学的症状、不安定歩行、痙性不全麻痺、失禁、聴覚障害、および発話の問題が挙げられる。特定の実施形態では、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせによる治療は、神経系障害の少なくとも1つの症状、少なくとも2つの症状、少なくとも3つの症状、少なくとも4つの症状、または少なくとも5つの症状を低減する。
【0053】
特定の実施形態では、RXRアゴニストは、MSを治療し、これらに限定されないが、背中や目の痛み、震え、筋肉の痙攣、歩行困難、素早く動きを変えるための能力の低下、不随意運動、筋肉麻痺、筋肉の硬さ、筋力低下、(筋肉の動きの)協調の問題、筋肉の硬さ、不器用さ、筋肉のけいれん、過活動反射、疲労、めまい、熱不耐性、悪いバランス、空間識失調、衰弱、夜間の過剰な排尿、尿漏れ、持続的な尿意切迫感、尿滞留、しびれてピリピリする感覚、味の異常、不快なうずきと焼け、ぼやけた視界、複視、視力喪失、勃起不全、性機能障害、不安、気分のむら、不明瞭言語、声の障害、発作、便秘、うつ病、嚥下困難、思考と理解の困難、頭痛、重い足、無感覚、顔のしびれ、無意識の早い眼球運動、睡眠不足、舌のしびれ、足上困難などのMSの1つ以上の症状を低減する。
【0054】
本明細書に開示される化合物または組み合わせのMSにおける有効性は、限定されないが、Expanded Disability Status Scale(EDSS; Kurtzkeスケール)、Functional System Score(FSS)、MS Progression:Disease Steps(DS)、および MS Progression:Multiple Sclerosis Functional Composite(MSFC)を含むMSの1つ以上の認識されたスケールの改善によって決定され得る。
【0055】
特定の実施形態では、RXRアゴニストは、パーキンソン病を治療し、震え(休息時、手足、四肢に起こり得る、または姿勢になり得る)のようなパーキンソン病、凝った筋肉、起立困難、歩行困難、身体の動きの困難、不随意運動、筋肉の硬さ、(筋肉の動きの)協調の問題、リズミカルな筋収縮、ゆっくりとした身体運動、スローシャッフル歩行、昼間の眠気、早起き、悪夢、不穏な睡眠、疲労、めまい、悪いバランス、落ち着き、健忘症、夕方の混乱、認知症、思考と理解の困難さ、声の障害、ソフトスピーチ、ボイスボックスの痙攣、不安、無関心、歪んだ嗅覚、匂いの喪失、尿のドリブル、尿漏れ、顎の硬さ、顔の表情の低減、ぽかんとした顔、便秘、うつ病、嚥下困難、流涎症、落ち込み、落ち込みへの恐れ、コントラスト感度の喪失、首の緊張感、小さな手書き、震え、または意図しない苦しみなどのパーキンソン病の1つ以上の症状を低減し得る。
【0056】
パーキンソン病における本明細書に開示されている化合物または組合せの有効性は、例えば、限定されないが、Multiple Sclerosis Functional Composite(MSFC)、Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)、HoehnおよびYahrスケール、SchwabおよびEnglandの日常生活活動スケールを含むパーキンソン病の1つ以上の認識されたスケールの改善によって決定され得る。
【0057】
特定の実施形態では、RXRアゴニストは、アルツハイマー病を治療し、限定されないが、精神的な低下、思考と理解の困難さ、夕方の混乱、妄想、混乱、忘れられないこと、作り話をすること、精神的な混乱、集中困難、新しい記憶を作り出すことができないこと、簡単な計算をすることができないこと、ありふれたものを認識できないこと、攻撃、かき乱し、セルフケアの難しさ、過敏性、無意味な自分の言葉の繰り返し、人格の変化、自制の欠如、さまよって迷子になること、怒り、無関心、一般的な不満、孤独、気分のむら、うつ病、幻覚、パラノイア、食欲低減、落ち着きのなさ、筋肉の動きを組み合わせることができないこと、混乱した会話のようなアルツハイマー病の1つ以上の症状を低減する。
【0058】
アルツハイマー病における本明細書に開示される化合物または組み合わせの有効性は、限定されないが、Dementia Severity Rating Scale(DSRS)、Mini-Mental State Examination(MMSE)、ADAS-cogを含むAlzheimer’s Disease Assessment Scale(ADAS)、Neuropsychological Test Battery(NTB)、Severe Impairment Battery(SIB)、Activities of Daily Living Scale、Clinical Global Impression(CGI)スケール、BEHAVE-AD、Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)、Alzheimer Disease Related Quality of Life(ADRQL)、Dementia Quality of Life Instrument(DQoL)、Quality of Life-Alzheimer’s Disease(QoL-AD)、およびQuality of Life in Late-Stage Dementia Scale(QUALID)を含むアルツハイマー病の1つ以上の認知されたスケールの改善によって決定され得る。また、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせによる他の障害の治療も本開示の範囲内である。そのような障害には、癌のタイプ、自己免疫疾患、および筋肉疾患に限定されない癌が含まれる。
【0059】
本開示の方法の態様には、部分的には哺乳動物の治療が含まれる。哺乳動物はヒトを含み、ヒトは患者であり得る。本開示の他の態様は、部分的に個体を提供する。個体は哺乳動物およびヒトを含み、ヒトは患者であり得る。
【0060】
本明細書に開示されたRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンとの組み合わせは概して、医薬組成物として個体に投与される。医薬組成物は、有効成分として、治療的有効量の少なくとも1つのRXRアゴニストおよび1つの甲状腺ホルモン、またはその薬学的に許容される酸付加塩と、従来の許容される医薬賦形剤と組み合わせ、かつ治療的使用に適した単位剤形の調製によって調製され得る。本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、例えば、本明細書に開示された任意の化合物などの活性化合物の治療的有効濃度を指す。好ましくは、医薬組成物は、個体に投与されたときに、有害な、アレルギー性の、または他の有害な反応もしくは望ましくない反応を生じない。本明細書に開示された医薬組成物は、医学および獣医学の用途に有用である。医薬組成物は、単独で、または他の補助活性化合物、薬剤、薬物またはホルモンと組み合わせて個体に投与され得る。医薬組成物は、限定されないが、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、ゲル化、乳化、カプセル化、封入、および凍結乾燥を含む様々な任意の方法を用いて製造され得る。医薬組成物は、限定されないが、無菌溶液、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥物、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル、粉末、シロップ、エリキシル、または投与に適した他の剤形を含む様々な任意の形態を取り得る。
【0061】
本明細書に開示された方法を使用して生成される医薬組成物は、液体製剤、半固体製剤、または固体製剤であり得る。本明細書に開示された製剤は、例えば油または固体のような1つの相を形成する様式で生成され得る。あるいは、本明細書に開示された製剤は、例えばエマルジョンのような二相を形成するように生成され得る。そのような投与を意図した本明細書に開示された医薬組成物は、医薬組成物の製造のための本分野で公知の任意の方法に従って調製され得る。
【0062】
非経口注射または経鼻スプレーに適した液体製剤は、生理学的に許容される滅菌水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、および滅菌注射溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含み得る。経鼻投与に適した製剤は、生理学的に許容される滅菌水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョンを含み得る。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロールなど)、それらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合には必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0063】
吸入による投与に適した医薬製剤には、様々なタイプの定量、用量加圧エアロゾル、噴霧器、または吸入器によって生成され得る微粒子粉塵またはミストが含まれる。
【0064】
局所投与に適した半固体製剤には、限定されないが、軟膏、クリーム、軟膏、およびゲルが挙げられる。そのような固体製剤において、活性化合物は、脂質および/またはポリエチレングリコールなどの少なくとも1つの慣用の不活性賦形剤(または担体)と混合され得る。
【0065】
経口投与に適した固体製剤としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末剤および顆粒が挙げられる。そのような固形製剤において、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような少なくとも1つの慣用の不活性賦形剤(または担体)、または(a)例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸のような充填剤または増量剤、(b)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアのような結合剤、(c)グリセロールのような保湿剤、(d)例えば寒天-寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩炭酸ナトリウムのような崩壊剤、(e)例えばパラフィンのような溶液遅延剤、(f)例えば第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤、(g)例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートのような湿潤剤、(h)例えばカオリンおよびベントナイトのような吸着剤、ならびに(i)例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたはそれらの混合物のような潤滑剤と混合され得る。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝液を含み得る。
【0066】
液体および半固体製剤では、RXRアゴニストの濃度は、典型的には約50mg/mL~約1,000mg/mLの間であり得る。本実施形態の態様では、本明細書に開示された治療化合物の治療的有効量は、例えば、約50mg/mL~約100mg/mL、約50mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約300mg/mL、約50mg/mL~約400mg/mL、約50mg/mL~約500mg/mL、約50mg/mL~約600mg/mL、約50mg/mL~約700mg/mL、約50mg/mL~約800mg/mL、約50mg/mL~約900mg/mL、約50mg/mL~約1,000mg/mL、約100mg/mL~約200mg/mL、約100mg/mL~約300mg/mL、約100mg/mL~約400mg/mL、約100mg/mL~約500mg/mL、約100mg/mL~約600mg/mL、約100mg/mL~約700mg/mL、約100mg/mL~約800mg/mL、約100mg/mL~約900mg/mL、約100mg/mL~約1,000mg/mL、約200mg/mL~約300mg/mL、約200mg/mL~約400mg/mL、約200mg/mL~約500mg/mL、約200mg/mL~約600mg/mL、約200mg/mL~約700mg/mL、約200mg/mL~約800mg/mL、約200mg/mL~約900mg/mL、約200mg/mL~約1,000mg/mL、約300mg/mL~約400mg/mL、約300mg/mL~約500mg/mL、約300mg/mL~約600mg/mL、約300mg/mL~約700mg/mL、約300mg/mL~約800mg/mL、約300mg/mL~約900mg/mL、約300mg/mL~約1,000mg/mL、約400mg/mL~約500mg/mL、約400mg/mL~約600mg/mL、約400mg/mL~約700mg/mL、約400mg/mL~約800mg/mL、約400mg/mL~約900mg/mL、約400mg/mL~約1,000mg/mL、約500mg/mL~約600mg/mL、約500mg/mL~約700mg/mL、約500mg/mL~約800mg/mL、約500mg/mL~約900mg/mL、約500mg/mL~約1,000mg/mL、約600mg/mL~約700mg/mL、約600mg/mL~約800mg/mL、約600mg/mL~約900mg/mL、または約600mg/mL~約1,000mg/mLであり得る。
【0067】
半固体および固体製剤では、RXRアゴニストの量は、典型的には約0.01重量%~約45重量%の間であり得る。本実施形態の態様では、本明細に開示された治療化合物の量は、例えば、約0.1重量%~約45重量%、約0.1重量%~約40重量%、約0.1重量%~約35重量%、約0.1重量%~約30重量%、約0.1重量%~約25重量%、約0.1%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、約1重量%~約45重量%、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約35重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約25重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約45重量%、約10重量%~約40重量%、約10重量%~約35重量%、約10重量%~約30重量%、約10重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、約10重量%~約15重量%、約15重量%~約45重量%、約15重量%~約40重量%、約15重量%~約35重量%、約15重量%~約30重量%、約15重量%~約25重量%、約15重量%~約20重量%、約20重量%~約45重量%、約20重量%~約40重量%、約20重量%~約35重量%、約20重量%~約30重量%、約20重量%~約25重量%、約25重量%~約45重量%、約25重量%~約40重量%、約25重量%~約35重量%、または約25重量%~約30重量%であり得る。
【0068】
本明細書に開示される医薬組成物は、活性化合物の薬学的に許容される組成物への加工を容易にする薬学的に許容される担体を任意に含み得る。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内にあり、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または合理的な利益/リスク比に見合った他の問題の合併症のない、ヒトおよび動物の組織との接触に適しているこれらの化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。本明細書中で使用される場合、用語「薬理学的に許容される担体」は、「薬理学的担体」と同義であり、投与された場合に長期間または永久的な有害作用を実質的に有さず、「薬理学的に許容されるビヒクル、安定剤、希釈剤、添加剤、補助剤、または賦形剤」のような用語を包含する。そのような担体は概して、活性化合物と混合されるか、または活性化合物を希釈または封入することを可能にし、固体、半固体または液体の薬剤であり得る。活性化合物は、可溶性であり得るか、または所望の担体または希釈剤中に懸濁した懸濁液として送達され得ることが理解される。限定されないが、例えば水、生理食塩水、グリシン、ヒアルロン酸などのような水性媒体、例えば、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、ラクトース、トレハロース、炭酸マグネシウムなどのような固体担体、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤、または他の不活性成分を含む種々の薬学的に許容される任意の担体を使用し得る。薬理学的に許容される担体の選択は、投与様式に依存し得る。任意の薬理学的に許容される担体が活性化合物と不相溶である場合を除いて、薬学的に許容される組成物におけるその使用が意図される。そのような医薬担体の特定の用途の非限定的な例は、 Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Howard C. Ansel et al., eds., Lippincott Williams & Wilkins Publishers, 7th ed. 1999); Remington: The Science and Practice of Pharmacy(Alfonso R. Gennaro ed., Lippincott, Williams & Wilkins, 20th ed. 2000); Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(Joel G. Hardman et al., eds., McGraw-Hill Professional, 10th ed. 2001); and Handbook of Pharmaceutical Excipients(Raymond C. Rowe et al.,APhA Publications, 4th edition 2003)に見出され得る。これらのプロトコルは日常的であり、任意の改変は、当業者の範囲内および本明細書の教示から可能である。
【0069】
本明細書中に開示される医薬組成物は任意に、限定されないが、緩衝液、防腐剤、張力調節剤、塩、抗酸化剤、浸透圧調整剤、生理的物質、薬理学的物質、増量剤、乳化剤、湿潤剤、甘味剤または着香剤などを含む他の薬学的に許容される成分(または薬学的成分)を限定されることなく含み得る。得られる調製物が薬学的に許容されるならば、様々な緩衝液およびpH調節手段を用いて、本明細書に開示される医薬組成物を調製し得る。そのような緩衝液としては、限定されないが、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、中性緩衝生理食塩水、およびリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。酸または塩基は、必要に応じて組成物のpHを調整するために使用され得ることが理解される。薬学的に許容される抗酸化剤としては、限定されないが、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。有用な防腐剤には、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、例えば、亜塩素酸ナトリウムのような安定したオキシクロロ組成物、およびDTPAまたはDTPA-ビスアミド、カルシウムDTPA、およびCaNaDTPA-ビスアミドなどのキレート剤が挙げられる。薬学的組成物に有用な張力調節剤には、限定されないが、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリンおよび他の薬学的に許容される張力調節剤などの塩が挙げられる。医薬組成物は、塩として提供され得、限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むが多くの酸と共に形成され得る。塩は、水性または他のプロトン性溶媒中で、対応する遊離塩基形態よりも可溶性が高い傾向にある。薬理学の分野で知られているこれらおよび他の物質は、本発明において有用な医薬組成物に含められ得ることが理解される。
【0070】
RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせはまた、経時的に制御された放出プロファイルを達成するために、薬物送達プラットフォームに組み込まれ得る。そのような薬物送達プラットフォームは、ポリマーマトリックス、典型的には生分解性、生侵食性、および/または生体吸収性ポリマーマトリックス中に分散された本明細書に開示された組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、用語「ポリマー」は、合成ホモ-またはコポリマー、天然ホモ-またはコポリマー、ならびに直鎖、分岐または星構造を有するその合成修飾または誘発体をさす。コポリマーは、例えば、ランダム、ブロック、セグメント化、テーパー状ブロック、グラフト、またはトリブロックなどの任意の形態で配置され得る。ポリマーは、一般に縮合ポリマーである。ポリマーは、架橋剤を導入することまたは側部残基の疎水性を変化させることによって、それらの機械的または分解特性を増強するためにさらに修飾され得る。架橋される場合、ポリマーは、通常5%未満架橋され、通常1%未満架橋される。
【0071】
好適なポリマーには、限定されないが、アルギネート、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリアミドエステル、ポリ無水物、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシ脂肪族カルボン酸、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリペプチド、ポリホスファゼン多糖類、およびポリウレタンが挙げられる。ポリマーは通常、少なくとも約10%(w/w)、少なくとも約20%(w/w)、少なくとも約30%(w/w)、少なくとも約40%(w/w)、少なくとも約50%(w/w)、少なくとも約60%(w/w)、少なくとも約70%(w/w)、少なくとも約80%(w/w)、または少なくとも約90%(w/w)の薬物送達プラットフォームを含む。薬物送達プラットフォームを作製するのに有用な生分解性、生分解性および/または生体吸収性ポリマーおよび方法の例は、例えば、米国特許第4,756,911号明細書、米国特許第5,378,475号明細書、米国特許第7,048,946号明細書、米国特許出願公開第2005/0181017号明細書、米国特許出願公開第2005/0244464号明細書、米国特許公開第2011/0008437号明細書に記載され、これらの各々は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0072】
この実施形態の態様では、マトリックスを構成するポリマーは、例えばシルクフィブロイン、ケラチン、またはコラーゲンなどのポリペプチドである。この実施形態の他の態様では、マトリックスを構成するポリマーは、多糖類、例えば、セルロース、アガロース、エラスチン、キトサン、キチン、またはグリコサミノグリカン様硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、硫酸ケラタン、またはヒアルロン酸である。この実施形態のさらに他の態様では、マトリックスを構成するポリマーは、ポリエステル、例えばD-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、およびそれらの組み合わせである。
【0073】
当業者は、適切な開示された薬物送達プラットフォームを形成するのに適したポリマーの選択がいくつかの要因に依存することを理解する。適切なポリマー(1または複数)の選択におけるより関連する因子は、限定されないが、ポリマーと薬物との相溶性、薬物の所望の放出動態、移植部位におけるプラットフォームの所望の生分解動態、移植部位におけるプラットフォームの所望の生侵食動態、移植部位におけるプラットフォームの所望の生体再吸収動態、インビボでのプラットフォームの機械的性能、処理温度、プラットフォームの生体適合性、および患者の耐容性が挙げられる。ポリマーのin vitroおよびin vivoの挙動をある程度決定する他の関連因子には、化学組成、構成要素の空間分布、ポリマーの分子量および結晶化度が挙げられる。
【0074】
薬物送達プラットフォームは、持続放出薬物送達プラットフォームおよび徐放薬物送達プラットフォームの両方を含む。本明細書で使用される場合、用語「持続放出」は、約7日以上にわたる本明細書に開示される化合物または組合せの放出を指す。本明細書で使用される場合、用語「徐放」は、約7日間未満の期間にわたる本明細書に開示される化合物または組合せの放出を指す。
【0075】
この実施形態の態様では、持続放出性薬物送達プラットフォームは、例えば投与後約7日、投与後約15日、投与後約30日、投与後約45日、投与後約60日、投与後約75日、または投与後約90日の期間にわたって実質的に一次放出動態でRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせを放出する。この実施形態の他の態様では、持続放出性薬物送達プラットフォームは、例えば少なくとも投与後約7日、少なくとも投与後約15日、少なくとも投与後約30日、少なくとも投与後約45日、少なくとも投与後約60日、少なくとも投与後約75日、または少なくとも投与後約90日の期間にわたって実質的に一次放出動態で本明細書に開示される組み合わせを放出する。
【0076】
この実施形態の態様では、薬物送達プラットフォームは、例えば投与の約1日後、投与後約2日、投与後約3日、投与後約4日、投与後約5日、または投与後約6日の期間にわたって実質的に一次放出動態で本明細書に開示される組み合わせを放出する。この実施形態の他の態様では、薬物送達プラットフォームは、例えば最長投与後約1日、最長投与後約2日、最長投与後約3日、最長投与後約4日、最長投与後約5日、または最長投与後約6日の期間にわたって実質的に一次放出動態で本明細書に開示される組み合わせを放出する。
【0077】
本開示の態様は部分的に、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせを投与することを含む。本明細書中で使用される場合、用語「投与する」は、臨床的、治療的または実験的に有益な結果をもたらす可能性がある個体に本明細書に開示される化合物または組み合わせを提供する任意の送達機構を意味する。
【0078】
本明細書中に開示される組み合わせの投与には、限定されないが、例えば、錠剤、液体、カプセル、粉末などのような任意の許容される形態の経口投与;例えば、ドロップ、スプレー、クリーム、ゲルまたは軟膏のような許容される任意の形態の局所投与;任意の許容される形態の頬、経鼻、および/または吸入投与;任意の許容される形態の直腸投与;任意の許容される形態の膣内投与;例えば静脈内ボーラス注射、静脈内注入、動脈内ボーラス注射、動脈内注入および血管系へのカテーテル点滴などの任意の許容される形態の血管内投与;例えば、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮下注入、眼内注射、網膜注射、または網膜下注射もしくは硬膜外注射などの任意の許容される形態の組織周囲および組織内投与;例えばカテーテル点滴などの任意の許容される形態の膀胱内投与;例えば、インプラント、ステント、パッチ、ペレット、カテーテル、浸透圧ポンプ、坐剤、生侵食性送達システム、非生体侵食性送達システム、または移植された徐放または持続放出系などの配置装置によるものを含む様々な経腸または非経口のアプローチが挙げられる。生分解性ポリマーおよび使用方法の例示的リストは、例えばHandbook of Biodegradable Polymers(Abraham J. Domb et al., eds., Overseas Publishers Association, 1997)に記載される。
【0079】
本明細書に開示される組み合わせは、様々な経路を用いて哺乳動物に投与され得る。本明細書に開示される脱髄関連障害の治療に適した投与経路には、局所投与および全身投与の両方が含まれる。局所投与は、哺乳動物の全身への投与と比較して特定の位置への組合せの有意により多くの送達をもたらすが、全身投与は、本質的に個体の全身への組合せの送達をもたらす。本明細書中に開示される神経系障害の治療に適した投与経路には、中枢および末梢投与の両方が含まれる。中枢投与は、本質的に個体の中枢神経系への組み合わせの送達をもたらし、例えば、経鼻投与、くも膜下腔内投与、硬膜外投与および頭蓋内注射または移植を含む。末梢投与は、中枢神経系以外の個体の本質的に任意の領域への化合物または組み合わせの送達をもたらし、脊椎または脳への直接投与以外の任意の投与経路を包含する。使用される本明細書中に開示される化合物または組合せの実際の投与経路は、限定されないが、神経系障害のタイプ、神経系障害の位置、神経系障害の原因、神経系障害の重症度、所望の治療期間、所望の救済の程度、所望の救済の期間、使用される特定の化合物または組み合わせ、使用される化合物または組み合わせの排泄速度、使用される化合物または組み合わせの薬力学、組み合わせに含まれる他の化合物の性質、特定の投与経路、特定の特性、個体の病歴と危険因子、例えば、年齢、体重、一般的な健康状態など、治療に対する個体の反応、またはそれらの任意の組合せを含む要因を考慮して当業者により決定され得る。したがって、本明細書に開示された化合物または組み合わせの有効投与量は、全ての基準を考慮し、個体に代わって当業者の最良の判断を利用して、当業者によって容易に決定され得る。
【0080】
一実施形態では、本明細書に開示される組み合わせは、哺乳動物に全身投与される。別の実施形態では、本明細書に開示される組み合わせは、哺乳動物に局所投与される。この実施形態の一態様では、本明細書中に開示される組み合わせは、哺乳動物の神経系障害の部位に投与される。この実施形態の別の態様では、本明細書中に開示される組み合わせは、哺乳動物の神経系障害の領域に投与される。
【0081】
他の実施形態では、組み合わせは、髄腔内投与、硬膜外投与、頭蓋内注射または移植、あるいは経鼻投与によって神経系に直接投与される。
【0082】
他の実施形態では、RXRアゴニストは、経口的に、口腔的に、経鼻により、および/または吸入投与、血管内に、静脈内に、腹腔内注射により、筋肉内に、皮下に、眼内注射、硬膜外注射により、または膀胱内投与により投与され、甲状腺ホルモンは経口投与される。RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンは、同じ経路または同じ投与スケジュールで投与する必要はない。
【0083】
本明細書の態様は部分的に、治療的有効量のRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせを投与することを提供する。本明細書で使用される場合、用語「治療的有効量」は「治療的有効用量」と同義であり、神経系障害の治療に関して使用される場合、所望の治療効果を達成するのに必要な組み合わせの最小用量を意味し、神経系障害に関連する少なくとも1つの症状を軽減するのに十分な用量を含む。この実施形態の態様では、治療的有効量の組み合わせは、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%まで、神経系障害に関連する少なくとも1つの症状を低減する。この実施形態の他の態様では、治療的有効量の本明細書に開示された化合物または組み合わせは、例えば、最大10%、最大20%、最大30%、最大40%、最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、最大90%、または最大100%まで、神経系障害に関連する少なくとも1つの症状を低減する。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示されている治療的有効量の化合物または組み合わせは、例えば、約10%~約100%、約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約20%~約100%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約20%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約30%~約100%、約30%~約90%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、または約30%~約50%だけ、神経系障害に関連する少なくとも1つの症状を低減する。この実施形態のさらなる他の態様では、治療的有効量の組み合わせは、例えば、少なくとも1週、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、または少なくとも12ヶ月の間、神経系障害に関連する少なくとも1つの症状を軽減するのに十分な用量である。
【0084】
さらなる実施形態では、組み合わせによる治療は、神経系障害の少なくとも1つの症状、少なくとも2つの症状、少なくとも3つの症状、少なくとも4つの症状、または少なくとも5つの症状を低減する。
【0085】
神経系障害を治療するための、本明細書に開示された組み合わせにおける活性成分の量は、適切な投与量が得られるように変化され得る。哺乳動物に投与される、本明細書に開示される実際の治療的有効量の組み合わせは、限定されないが、脱髄関連障害のタイプ、神経系障害の位置、神経系障害の原因、神経系障害の重症度、所望の治療期間、所望の救済の程度、所望の救済の期間、使用される特定の組み合わせ、組み合わせの排泄速度、組み合わせの薬力学、組み合わせに含まれる他の化合物の性質、特定の投与経路、特定の特性、個体の病歴と危険因子、例えば、年齢、体重、一般的な健康状態など、治療に対する個体の反応、またはそれらの任意の組合せを含む要因を考慮して当業者により決定され得る。したがって、本明細書に開示された化合物または組み合わせの有効投与量は、全ての基準を考慮し、個体にかわって当業者の最良の判断を利用して、当業者によって容易に決定され得る。
【0086】
さらに、本明細書に開示される組み合わせの反復投与が使用される場合、本明細書に開示される化合物、組成物または組み合わせの実際の有効量は、限定されないが、本明細書に開示される化合物、組成物、または組み合わせの投与の頻度、半減期、またはそれらの任意の組み合わせを含む要因にさらに依存するだろう。ヒトに投与する前に、動物モデルを用いたin vitroアッセイおよびin vivo投与試験から、本明細書に開示される化合物または組み合わせの有効量を外挿することができることは、当業者には知られている。様々な投与経路の異なる効率を考慮して、必要な有効量の広範な変動が予期される。例えば、経口投与は概して、静脈内または硝子体内注射による投与よりも高い用量濃度を必要とすると予期されよう。これらの投与量濃度の変動は、当業者に周知の最適化の標準的な経験的ルーチンを使用して調整され得る。正確な治療上有効な用量濃度およびパターンは、好ましくは、上記の要因を考慮して医師によって決定される。
【0087】
非限定的な例として、本明細書に開示されるRXRアゴニストを哺乳動物に投与する場合、治療的有効量は概して、約0.001mg/kg/日~約100.0mg/kg/日の範囲である。この実施形態の態様では、本明細書に開示された化合物の有効量は、例えば、約0.01mg/kg/日~約0.1mg/kg/日、約0.03mg/kg/日~約3.0mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約3.0mg/kg/日、または約0.3mg/kg/日~約3.0mg/kg/日であり得る。この実施形態のさらに別の態様では、本明細書に記載される化合物の治療的有効量は、例えば、少なくとも0.001mg/kg/日、少なくとも0.01mg/kg/日、少なくとも0.1mg/kg/日、少なくとも1.0mg/kg/日、少なくとも10mg/kg/日、または少なくとも100mg/kg/日であり得る。この実施形態のさらに別の態様では、本明細書に記載される化合物の治療的有効量は、例えば、最大0.001mg/kg/日、最大0.01mg/kg/日、最大0.1mg/kg/日、最大1.0mg/kg/日、最大10mg/kg/日、または最大100mg/kg/日であり得る。
【0088】
他の実施形態では、RXRアゴニストは、概して、約0.001mg/日~約100mg/日、約0.1mg/日~約50mg/日、約0.5mg/日~約40mg/日、約1mg/日~約30mg/日、または約1mg/日~約20mg/日の範囲の治療的有効量で哺乳動物に投与される。
【0089】
適切なチロキシン用量は、概して、必要に応じて2~4週間ごとに増やしつつ最初に経口的に約5μg/日~約250μg/日である。他の実施形態では、適切なチロキシン用量は、約5μg/日~約225μg/日、約7.5μg/日~約200μg/日、約10μg/日~約175μg/日、約12.5μg/日~約150μg/日、約15μg/日~約125μg/日、約17.5μg/日~約100μg/日、約20μg/日~約100μg/日、約22.5μg/日~約100μg/日、約25μg/日~約100μg/日、約5μg/日~約200μg/日、約5μg/日~約100μg/日、約7.5μg/日~約90μg/日、約10μg/日~約80μg/日、約12.5μg/日~約60μg/日、または約15μg/日~約50μg/日である。用量の増加は、概して、約5μg/日、約7.5μg/日、約10μg/日、約12.5μg/日、約15μg/日、約20μg/日、または約25μg/日の増分でなされる。特定の実施形態では、適切な甲状腺ホルモン用量は、試験室の正常範囲の上位50%、上位60%、上位70%、上位80%、または上位90%のT4の血清濃度を生成することができる用量である。試験室によってT4濃度の正常範囲が異なることがあるため、目標T4濃度は、特定の試験室ごとに定められた正常範囲に基づいている。
【0090】
用量は、単回用量または累積用量(逐次投薬)であり得、当業者によって容易に決定され得る。例えば、神経系障害の治療は、本明細書に開示された組み合わせの有効用量の1回投与を含み得る。非限定的な例として、本明細書に開示される組み合わせの有効量は、例えば、神経系障害の症状を示す部位でもしくはその付近での単一注射または付着としてあるいは組み合わせの単一経口投与として哺乳動物に一回投与され得る。あるいは、神経系障害の治療は、例えば、毎日、数日に1回、毎週、毎月または毎年のような期間の範囲にわたって実施される本明細書に開示される組み合わせの有効用量の複数回投与を含み得る。非限定的な例として、本明細書に開示された組み合わせは、哺乳動物に1週間に1回または2回投与され得る。投与のタイミングは、哺乳動物の症状の重篤度などの要因に応じて、哺乳動物毎に異なり得る。例えば、本明細書に開示された組み合わせの有効用量は、月に一度、不定期に、または哺乳動物がもはや治療を必要としなくなるまで、哺乳動物に投与され得る。当業者であれば、哺乳動物の状態を治療経過を通して監視することができ、投与される本明細書に開示された組み合わせの有効量をそれに応じて調整できることを認識するであろう。さらに、組み合わせの各要素、例えばRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンは、異なる経路および異なるスケジュールで投与され得、場合により別々に個体に投与されるが、両方の組成物(RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモン)は、両方の化合物の血漿濃度が同時に検出可能であるように個体に投与される。
【0091】
本明細書に開示されるように本明細書に開示される組み合わせはまた、治療の全体的な治療効果を増加させるために、他の治療化合物と組み合わせて哺乳動物に投与され得る。兆候を治療するための複数の化合物の使用は、副作用の存在を減らしながら有益な効果を増加し得る。
【0092】
また、本明細書に開示されるのは、限定されないが、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、線維芽細胞増殖因子、塩基性(bFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、神経栄養因子-4/5(NT-4/5)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン;または別の神経栄養因子;またはBDNF、GDNF、NGF、NT-3、bFGF、CNTF、NT-4/5、IGF、インスリンまたは別の神経栄養因子と同様の生物学的活性をもたらす合成模倣分子を含む1つ以上の神経栄養因子と共投与される、RXRアゴニストと、甲状腺ホルモンとの組み合わせである。
【0093】
神経栄養因子または神経栄養因子模倣物とのRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせの投与は、神経保護、すなわち様々なタイプの神経系細胞(ニューロンおよびグリア細胞を含む)の生存の増強に効果を及ぼすために使用され得る。
【0094】
さらに、神経栄養因子または神経栄養因子模倣物とのRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせの投与は、神経突起伸長の促進によって明らかにされるように、損傷した神経系細胞(ニューロンおよびグリア細胞を含む)の回復を行うために使用され得、神経結合の形成および/または回復をもたらし;あるいは最適な神経シグナル伝達および神経系機能を支持するために不可欠である、ニューロン周辺のミエリン鞘のような神経膠構造の形成または回復をもたらす。
【0095】
神経栄養因子または神経栄養因子模倣物とのRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせの使用の特定の例には、限定されないが、パーキンソン病もしくはドーパミン作動性ニューロンの疾患の患者における、ドーパミン作動性ニューロンの生存を増強する、またはドーパミン作動性ニューロンの回復もしくは復元を促進するための甲状腺ホルモンと、IRX4204またはベキサロテンのようなRXRアゴニストとの組み合わせの、GDNFまたはGDNF模倣物との共投与;筋萎縮性側索硬化症の患者における、運動ニューロン生存を増強し、または運動ニューロンの回復もしくは復元を促進するためのGDNFもしくはGDNF模倣物との共投与;アルツハイマー病における、皮質もしくは海馬ニューロンの生存を増強するか、または皮質もしくは海馬ニューロンを回復もしくは復元を促進するためのBDNFもしくはBDNF模倣物と、またはインスリンもしくはインスリン様増殖因子との共投与;あるいは末梢ニューロパチーの患者における、感覚ニューロンの生存を増強する、または感覚ニューロンの回復または復元を促進するためのNGFとの共投与を含む。他の神経栄養因子もしくは神経栄養因子模倣物とのRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの他の組合せは、限定されないが、再発性寛解または進行性多発性硬化症を含む様々な形態の多発性硬化症;視神経炎;様々な病因の脳卒中;様々なタイプの神経系外傷;様々な病因のニューロパチー;神経系低酸素;様々なタイプの神経系の毒性の傷害;様々な病因の認知症;様々な病因の網膜症;ハンチントン病、進行性核上麻痺などの様々なシヌクレイノパチー;てんかん;自閉症;統合失調症;うつ病、もしくは加齢に関連する神経系の劣化を含む、中枢神経系もしくは末梢神経系のさらなる疾患の神経細胞またはグリア細胞の生存を増強させ、または修復もしくは回復を促進させることに使用され得る。
【0096】
上記実施形態では、神経栄養因子または神経栄養因子模倣物は、患者に経口的に、または非経口経路によって、または経鼻などの局所経路によって、または吸入薬剤として送達され得、あるいは、移植可能なまたは着用可能な持続放出製剤または遅い送達装置を用いて送達され得る。
【0097】
様々なタイプのニューロンまたはグリア細胞の生存または成長をin vitroで促進するための、その後の神経疾患の患者の神経系への移植のための、RXRアゴニスト、および甲状腺ホルモン、ならびに神経栄養因子または神経栄養因子模倣物の組み合わせも使用され得る。
【0098】
本明細書の態様は、以下のように記載することもできる。
【0099】
(実施例)
以下の非限定的な実施例は、現在企図されている代表的な実施形態のより完全な理解を容易にするためにのみ例示的目的で提供される。これらの実施例は、本明細書に開示される甲状腺ホルモンと組み合わせたRXRアゴニストを使用して、自己免疫障害、ニューロパチー、および/または脱髄関連障害、を治療する方法に関連するもの、医薬品を製造するための、ならびに/あるいは自己免疫障害、神経系障害、および/または脱髄関連障害を治療するための本明細書に開示されるRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの使用に関連するものを含む、本明細書に記載された任意の実施形態を限定するものと解釈されるべきではない。
【0100】
(実施例1)
選択的RXRアゴニスト、IRX4204、RXRシグナル伝達によるその生物学的効果を発揮する
RXRアゴニストがRXRα受容体ホモ二量体、RXRβ受容体ホモ二量体、RXRγ受容体ホモ二量体、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいは対応するRAR/RXRヘテロ二量体を介してその効果を媒介することができるかどうかを決定するために、受容体媒介トランス活性化アッセイを行った。RXRホモ二量体シグナル伝達を評価するトランス活性化アッセイのために、CV-1細胞を、1)全長RXRα、RXRβ、またはRXRγを含む発現構築物;および2)ルシフェラーゼ遺伝子に連結されたRXRホモ二量体特異的RXRE/DR1応答要素を含むrCRBPII/RXRE-tk-Lucレポーター構築物でトランスフェクトした。RAR/RXRヘテロ二量体シグナル伝達を評価するトランス活性化アッセイのために、CV-1細胞を、1)RARα、RARβまたはRARγのリガンド結合ドメインに連結されたエストロゲン受容体(ER)DNA結合ドメインを含む融合タンパク質を含む発現構築物、および2)ルシフェラーゼ遺伝子に連結されたエストロゲン受容体応答要素を含むERE-tk-Lucレポーター構築物でトランスフェクトした。ER-RAR融合タンパク質は、トランスフェクトされたER-RARのみの正確な読み取りを提供した。トランスフェクト後、ルシフェラーゼ活性を測定する前に、CV-1細胞をRXRアゴニストIRX4204で20時間漸増濃度で処理した。ルシフェラーゼ活性は、RXRについて1μMのRXRアゴニストIRX4204およびRARについて1μMの全トランス-レチノイン酸(ATRA)を用いて得られた最大活性のパーセントとして表される(表1)。データは、5回の独立した実験からの平均値±SEである。
【表1】
【0101】
これらの結果は、RXRアゴニストIRX4204が、3つのRXRサブタイプの全てについて非常に高い効力(EC
50<0.5nM)でRXR受容体を活性化したことを示している(表1)。対照的に、RARに対するRXRアゴニストのEC
50は>1000nMであり、最小活性は1μM以上で検出された。この差は、機能的トランス活性化アッセイにおいて、RARよりもRXRの>2000倍の選択性を表す。さらに、これらのデータは、RXRアゴニストIRX4204がRAR受容体ではなくRXR受容体を活性化する際に1000倍超強力であることを示している。これらの結果は、Treg分化がRXRシグナル伝達経路を介して媒介され、RARシグナル伝達経路を介して媒介されなかったことを示す。また、適切な受容体およびレポーター構築物を用いて、RXRアゴニストIRX4204は、いわゆる「許容性RXRヘテロ二量体」PPAR/RXR、FXR/RXRおよびLXR/RXR(
図1A~C)をトランス活性化しないことが示された。これに関して、RXRアゴニストIRX4204は、他のRXRアゴニストとは異なる。さらに、IRX4204は、Nurr1/RXR許容性ヘテロ二量体を選択的に活性化する(
図1D)。したがって、RXRアゴニストIRX4204は、それがRXRホモ二量体およびNurr1/RXRヘテロ二量体のみを選択的に活性化する点で特有のプロファイルを有する。
【0102】
(実施例2)
RXRアゴニストの結合親和性
RXRアゴニストに対する結合親和性を決定するために、競合的置換アッセイを行った。RXRα、RXRβ、RXRγ、RARα、RARβ、またはRARγは、バキュロウイルス発現系を用いてSF21細胞で発現させ、得られたタンパク質を精製した。RXRに対するRXRアゴニストの結合親和性を決定するために、精製したRXRα、RXRβおよびRXRγを10nMの[3H]-9CRAと共にインキュベートし、RXRアゴニストIRX4204の結合親和性を受容体からの[3H]-9CRAの競合置換によって決定した。RARに対するRXRアゴニストの結合親和性を決定するために、精製したRARα、RARβおよびRARγを別々に5nMの[3H]-ATRAと共にインキュベートし、RXRアゴニストIRX4204の結合親和性を受容体からの[3H]-ATRAの競合置換によって決定した。Ki値は、少なくとも2つの独立した実験の平均値である(表2)。独立した実験の間の標準誤差(±)が示される。
【0103】
表2に示すように、RXRアゴニストIRX4204は、RXRα、RXRβおよびRXRγに対して高い親和性を示し、Ki値はそれぞれ1.7、16および43nMであった。対照的に、RXRアゴニストIRX4204は、各RARに対して非常に低い親和性で結合した(Ki値は>1000nMであった)。これらのデータは、IRX4204がRARに比べてRXRに対して高い選択性を有することを示す。
【表2】
【0104】
(実施例3)
RXRアゴニストは、B6マウスにおけるEAEを減弱させる
RXRアゴニストが多発性硬化症を減弱させることができるかどうかを決定するために、125μgのミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質ペプチド(35~55)(MOGペプチド;Peptides International, Louisville, KY)および不完全フロイントアジュバントとリン酸緩衝生理食塩水(PBS)との混合物中に乳化した400μgの生存していないM.結核菌H37乾燥物を含有する200μLのアジュバントを脊椎の基部に皮下(s.c.)注射することによりC57BL/6(B6)マウスを免疫化して(0日目)実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘発した。マウスには、MOGエマルジョン注射(0日目)および2日後(2日目)と同じ日に腹腔内(i.p.)注射によって投与されたPBS中の200ngの百日咳毒素も与えられた。免疫化後7日目から、実験の期間中、マウスに、RXRアゴニストIRX4204(50μg)、ビヒクル対照(ip)、チロキシン(T4)、またはIRX4204+チロキシンを隔日投与した(n=6~7マウス/群)。統計は、マンホイットニー検定(処置開始から実験終了までの分析)の結果を示す。マウスを以下のスケールを用いて採点した:0-マウスには疾患はない、1-マウスは、末端が弱弱しい尾または片後脚の衰弱(麻痺)を有する、1.5-マウスは末端が弱弱しい尾および片後脚の衰弱を有する、2-マウスは全体が弱弱しい尾および片後脚の衰弱を有する、2.5-マウスは全体が弱弱しい尾および両後脚に衰弱を有する、3-マウスは全体が弱弱しい尾および両後脚に麻痺を有する、3.5-マウスは全体が弱弱しい尾、両後脚に麻痺および前肢に衰弱を有する。3.5のスコアを受けたマウスを直ちに安楽死させた。
【0105】
図2は、時間経過に伴う疾患重症度のスコアを示す。結果は、50μgでのRXRアゴニストIRX4204の投与が、マウスにおけるEAEの症状を有意に低減させることを示す。最初の投与後(7日目)にRXRアゴニストの有効性が観察され、試験の経過中(20日目)ずっと維持された。しかし、IRX4204およびチロキシンの組み合わせは、マウスにおけるEAEの症状をさらに大きく低下させた(
図2)。
【0106】
用量滴定実験もEAEマウスで行った。上記のようにMOG/CFAおよびPTを有する28のB6マウスにおいてEAEを誘発した。上記のようにマウスを7日目に採点し、スコアによってグループに分けて平均ができるだけ等しくなるようにした。8日目から毎日、マウスを採点し、ビヒクル対照またはIRX4204(50μg、100μg、または200μg)を注射した。
【0107】
実験開始時にマウスの体重を測定し、2.5以上のスコアを有したならば毎日マウスの体重を測定し、マウスの体重の15%以上が失われた場合、マウスを安楽死させた。IRX4204で処置した全てのマウスは、疾患全体が有意に低かった(
図7)。実験の終了時に、ビヒクル対照および200μg/日群を安楽死させ、脾臓およびCNSサンプルを得た。
【0108】
脾臓サンプルをCD49d(
図8A)およびCCR6(
図8B)について評価し、IRX4204処置はCD4 T細胞でCCR6発現を低下させたが、CD49d発現を低下させなかった。さらに、頻度は変化しなかったが、CD4+CD25hi細胞(一般にTRegからなる)は減少した(
図9Aおよび9B)。エフェクターおよびメモリーCD4 T細胞の総数は、CD44発現によって示されるように、IRX4204処置で減少し(
図12C)、最近活性化されたCD4 T細胞の総数は、CD69およびCD44の両方の発現によって示されるように、IRX4204処置でも減少した(
図9D)。
【0109】
CNSでは、IRX4204処置により浸潤性CD4 T細胞の総数が減少した(
図10)。PMA/イオノマイシンによる再刺激を用いて、サイトカイン産生を検出した。IFNγ(
図11Aおよび11B)ならびにTNF(
図11Cおよび11D)の両方が、処置によって有意に減少した。CNSにおけるCD4 T細胞によるIFNgおよびIL-17Aの共発現を定量化したが、群間で有意差はなかった(
図12A~12C)。
【0110】
(実施例4)
RXRアゴニスト処置マウスは、中枢神経系浸潤細胞を減少させた
RXRアゴニストが中枢神経系(CNS)浸潤細胞を減少させることができるかどうかを決定するために、C57BL/6(B6)マウスを実施例6に記載のように処置した。免疫後20日目に、マウスを屠殺し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で灌流した。脳および脊髄組織を単離し、DNaseおよびLIBERASE DL(登録商標)(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN)で30分間消化し、70ミクロンのナイロンメッシュフィルターでホモジナイズした。得られた細胞をPercoll勾配上に置き、ミエリンを除去した。残りの細胞(ミクログリアおよびCNS浸潤細胞)を計数し、対象の分子について染色し、フローサイトメーターで分析した。これらの細胞集団のFACSにより得られた頻度に基づいて、CD4+T細胞およびCD11c+CD11b+骨髄樹状細胞(DC)を含むCD45を発現するCNS浸潤白血球の総細胞数を計算した。
【0111】
図3は、ビヒクル対照に対してRXRアゴニストIRX4204で処置したマウスにおけるCD4
+細胞(
図3A)またはCD11c
+CD11b
+細胞(骨髄DC;
図3B)の数を示す。対照と比較してRXRアゴニストで処置した動物において、CNSへのCD4
+細胞およびCD11c
+CD11b
+細胞の両方の浸潤に有意な低減があった。マウスをIRX4204とチロキシンとの組み合わせで処置すると、CNSへのこれらの細胞の浸潤がさらに低減することが予期される。CNSに浸潤しCD11c
+CD11b
+細胞によって再活性化されるCD4
+細胞を介してCNSに疾患が伝播するので、これは、このモデルにおける作用機構の一部はCNS内の細胞の存在を制限することを示唆する。
【0112】
(実施例5)
RXRアゴニストは、SJLマウスにおけるEAEを減弱させる
RXRアゴニストが多発性硬化症を減弱させることができるかどうかを決定するために、200μgのプロテオリピッドタンパク質(139-151))(PLPペプド; Peptides International, Louisville, KY)ならびに不完全フロイントアジュバントおよびPBSの混合物中で乳化した400μgの生存していないM.結核菌H37乾燥物を含有する200μLのアジュバントを脊柱の基部にs.c.注射することにより、SJLマウスを免疫化してEAEを誘発した。マウスには、PLPエマルジョン注射と同じ日および2日後にPBSi.p.中で150ngの百日咳毒素も投与した。免疫化後7日目から、実験の期間中、マウスにRXRアゴニストIRX4204(50μg)またはビヒクル対照ipを隔日投与した(n=6マウス/群)。実施例3に記載のスケールを用いてマウスを採点した。
【0113】
結果は、RXRアゴニストIRX4204の投与が、マウスにおけるEAEの症状を有意に低減させることを示す。表3は、SLJマウスにおけるRXRアゴニストIRX4204処置の特徴を示す。
図4は、時間経過に伴う疾患重症度のスコアを示す。2回目の投与後(8日目)にRXRアゴニストの有効性が観察され、試験の経過中(14日目)ずっと維持された。IRX4204をチロキシン処置と組み合わせて投与した場合、EAEの症状および疾患の重篤度スコアがさらに低下することが予期される。
【表3】
【0114】
(実施例6)
Nurr1/RXR許容性ヘテロ二量体の選択的活性化剤としてのRXRアゴニストIRX4204
RXRアゴニストIRX4204によってどの許容性RXRヘテロ二量体が活性化されているかを決定するために、PPARγ/RXR、FXR/RXR、LXRα/RXR、LXRβ/RXR、およびNurr1/RXRについて以下のように受容体トランス活性化アッセイを行った。PPARγについて:CV-1細胞を、3x(rAOX/DR1)-tk-Lucレポーター遺伝子およびPPARγの発現ベクターでトランスフェクトした。FXRについて:CV-1細胞を、3x(IBABP/IRI)-tk-Lucレポーター遺伝子ならびにFXRおよびRXRαのベクターでトランスフェクトした。LXRについて:CV-1細胞を、LXRαまたはLXRβのベクターと共に3x(PLTP/LXRE)-tk-Lucレポーター遺伝子でトランスフェクトした。Nurr1について:COS7細胞を、3xNBRE-tk-lucレポーター遺伝子および完全長RXRαプラスミドの有無にかかわらない完全長Nurr-1でトランスフェクトした。次いで、細胞をビヒクルまたはIRX4204で20時間処置した。ルシフェラーゼデータを、同時トランスフェクトされたβ-gal活性に対して正規化した。ルシフェラーゼ活性は、特異的アゴニストを用いて得られた最大活性のパーセントとして表した。ロシグリタゾン(PPARγ)、GW4064(FXR)、T0901317(LXR)。データは、IRX4204がFXR/RXR(
図5A)、LXRα/RXRもしくはLXRβ/RXR(
図5B)、またはPPARγ/RXR(
図5C)を活性化しないことを示す。対照的に、IRX4204は強力に(EC
50<1nm)、Nurr1/RXRヘテロ二量体を活性化する。これらのデータは、Nurr1/RXRヘテロ二量体を選択的に活性化するが、PPARγ/RXR、FXR/RXRまたはLXR/RXRヘテロ二量体を選択的に活性化しないという点で、IRX4204が特有なRXRアゴニストであることをまとめて示している。
【0115】
(実施例7)
希突起膠細胞前駆細胞分化に対するRXRアゴニストの効果
この研究の目的は、希突起膠細胞前駆細胞(OPC)の希突起膠細胞への分化に対するIRX4204の効果を評価することであった。OPCは、E14.5 PLP-EGFP(C57BL/6Jバックグラウンドで)マウスの脳のニューロスフェア培養物から生成された。OPCの希突起膠細胞への分化と相関する緑色蛍光タンパク質(EGFP)の発現を評価するために、単離されたOPCをIRX4204および/またはT3で処置した。EGFP発現細胞を、Cellomicsニューロンプロファイリングアルゴリズムで定量化した。陽性(T3)対照は、期待されるOPCの分化を示した。結果は、IRX4204が、陰性対照(DMSO)と比較してEGFP陽性細胞の数の増加によって示されるように、希突起神経膠細胞へのOPC分化を促進することを示す。最も低い濃度(1
-6μM)を除いて試験した全ての濃度は、希突起神経膠細胞へのOPC分化の有意な増加を示した(
図6)。しかしながら、IRX4204で処置した培養物にT3を添加すると、より高い濃度のEGFR+希突起神経膠細胞が誘発され、IRX4204および甲状腺ホルモンの組み合わせの有意な利益が示された。
【0116】
対照および全ての化合物中のEGFP発現細胞を、Cellomicsニューロンプロファイリングアルゴリズムで定量した。この実験は、陰性対照(DMSO;2.3%)と比較して陽性対照(T3;8.5%)における%EGFP細胞の有意な増加によって実証されるように成功した。IRX4204は、陰性対照(DMSO)と比較してEGFP陽性細胞の数の用量依存的増加によって実証されるように、稀突起神経膠細胞へのOPC分化を促進する。IRX4204は、対照と比較して、総細胞数および熱核細胞においていかなる差も示さなかった。この研究の結果は、IRX4204がOPC分化を促進することを示す。データは、陰性対照と比較して、EGFP細胞のパーセンテージの用量依存的増加を示す。これらのデータは、IRX4204が細胞培養におけるミエリン形成細胞の成長を促進することを示す。
【0117】
(実施例8)
IRX4204は、再髄鞘形成プロセスに直接作用することにより、in vivoモデルにおける中枢神経系(CNS)の再髄鞘形成を増強する
IRX4204の免疫調節効果とは無関係に、急性脱髄に対するIRX4204の直接作用を確認するために、脱髄の焦点毒素(臭化エチジウム)誘発ラットモデルを使用する。そのようなラットが効率よくは再髄鞘形成を受けないのでこの実験では比較的高年齢(1歳)のラットを使用し、それにより、多発性硬化症または他の脱髄疾患を有するヒト患者の臨床的処置にさらに関連するデータを提供する。
【0118】
尾側小脳斑点(CCP)に両側の様式で5μlの臭化エチジウム溶液(生理食塩水中0.01%vol/vol)を定位的に注射することにより、1齢のラット(体重約300g)に局所脱髄を誘発する。臭化エチジウムの注射の7日後に開始して、ラットを、10mg/kg/日のIRX4204(DMSOおよびトウモロコシ油中)で14日間(臭化エチジウム処理後7日目~21日目)、経口強制飼養によって処置し、あるいは同じ用量の経口IRX4204+20ng/gの皮下チロキシン、またはビヒクル(DMSOおよびトウモロコシ油+チロキシンビヒクル)で14日間処置する。定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)および顕微鏡検査による再髄鞘形成の分析のために、臭化エチジウム処理後24日目にラットを殺す。
【0119】
病変の分析により、Olig2+希突起膠細胞系統細胞およびCC1+分化希突起膠細胞の密度は、ビヒクル処置動物と比較してIRX4204処置動物で増加し、IRX4204+チロキシン動物でさらに増加したことと、Nkx2.2+希突起膠細胞前駆細胞(OPC)は、ビヒクル処置病変と比較してIRX4204処理病変で増加し、IRX4204+チロキシン処置病変で最も高かったこととが明らかになった。また、病変サンプルのリアルタイムqPCR分析は、Mbp発現の増加およびPdgfra発現の増加を示し、IRX4204処置動物におけるミエリン再生のより高い濃度を示すが、最も高い濃度のMbpおよびPdgfra発現はIRX4204およびチロキシン動物に見られた。CCP病変の超微細構造解析は、IRX4204+チロキシン処置がIRX4204単独処置よりも動物においてより多くの再髄鞘形成軸索をもたらし、ビヒクル処置よりも再髄鞘形成軸索をもたらすことをさらに示す。AG比の分析(この比は、軸索直径対有髄軸索の比である)もまた、IRX4204処置動物は、ビヒクルで処置した動物よりも低いG-比を有し、このより低い比は、IRX4204-処置動物において軸索を取り囲むより厚く再髄鞘形成したシースの形成によるものであることも示す。G比は、IRX4204およびチロキシンの組み合わせで処置した動物でさらに低減した。これらの知見の全ては、IRX4204処置動物におけるCNS再髄鞘形成の増加およびIRX4204+チロキシン処置動物の最適増加と一致する。
【0120】
(実施例9)
甲状腺ホルモンと組み合わせたIRX4204は、毒性脱髄のクプリゾン/ラパマイシンマウスモデルにおける再髄鞘形成を促進する
クプリゾン(ビス-シクロヘキサノンオキサルジヒドラゾン)モデルは、白質および灰白質の両方におけるミエリンパラメータの信頼性、再現性および明白な分析を容易にする。クプリゾンモデルは、有毒な脱髄のモデルである。このモデルでは、若いマウスに銅キレート剤クプリゾンを与え、希突起神経膠細胞死およびその後の可逆的な脱髄をもたらす。mTORおよび自発的再髄鞘形成を遮断する薬物であるラパマイシンと共にクプリゾンを摂取したマウスは、希突起膠細胞の代謝回転のより良い定量化を可能にする。急性のクプリゾンパラダイムでは、6~9週齢の雄のC57BL/6マウスに、6週間にわたって0.2%クプリゾンを混合した食餌を与える。クプリゾン摂食の3週目までに、マウスの脳における最大の白質路である脳梁で一貫した脱髄が観察され得る。脱髄は、5または6週で最大に達する。C57BL/6マウスに12週間クプリゾン摂取を維持した場合、慢性脱髄が誘発され得る。
【0121】
この研究の目的は、有害な脱髄のマウスモデルにおけるIRX4204の再髄鞘形成能力を評価することであった。以前の研究は、MSのEAEモデルにおけるIRX4204の有効性を示している。また、以前のデータは、IRX4204がin vitroで有意なオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)分化を誘発し得ることを示す。現在の研究は、再髄鞘形成および神経保護に関するMSのクプリゾンモデルにおけるIRX4204のCNS効果をさらに調査するために行われる。
【0122】
動物(8週齢雄C57BL/6Jマウス)に、クプリゾン食餌+ラパマイシン注射(CR、10mg/kg)を12週間行い、白質(CC、脳梁)の脱髄を誘発した。12週間後、CRを中止し、ビヒクル(経口IRX4204ビヒクル)またはIRX4204(10mg/kg、PO)のいずれかで、動物のサブセットを6週間毎日処置した。全ての動物を白質(脳梁)および灰白質(海馬および皮質)のミエリンを評価するために、CRの12週間後または処置のさらに6週間後に屠殺にした。さらに、有髄軸索の大きさを定量化し、3D-電子顕微鏡法(3D-EM)により、より大きな有髄軸索をさらに評価した。
【0123】
MSなどの脱髄疾患は、ミエリン喪失、慢性炎症、およびCNSにおける軸索および希突起膠細胞喪失を特徴とする。MSの病因は未知のままであるが、この疾患は概して、散発性の急性のエピソードから始まり、時間経過に伴い、慢性および進行性の状態に発展する。MSの急性および慢性脱髄病変は、クプリゾン投与の期間に重症度に依存するクプリゾン食餌誘発マウスモデルにおいて示され得る。クプリゾンは、成体マウスの脳において広範な脱髄を誘発し、ラパマイシンの同時投与は、希突起膠細胞の分化を遮断し、脱髄期の間に自発的な遮断再髄鞘形成を予防する。このモデルはまた、MSにおける海馬脱髄を示す。クプリゾン+ラパマイシン(CR)が中止されると、このモデルで定量可能な自発的な再髄鞘形成が起こり、これは再髄鞘形成プロセスにおける薬物介入によって修飾され得る。12週間の脱髄CRモデルは、マウスの脳における再髄鞘形成を促進する新薬の処置可能性を評価する機会を提供する。
【0124】
全部で40匹の動物が研究に含まれ、40匹全てが12週間にわたってCR脱髄を受けた。脱髄後、動物のサブセット(n=10)をベースライン脱髄を評価するための対照として利用するために屠殺する。残りの動物をグループ(n=15)に分け、それらを経口IRX4204(10mg/kg)またはIRX4204のための経口ビヒクルで6週間毎日処置する。
【0125】
いずれの群においても、体重に関して有意な差はなかった。
【0126】
灰白質、海馬(
図16A)および皮質(
図16B)におけるミエリンを視覚化および定量化するために、浮遊脳切片をミエリンプロリピドタンパク質(PLP)で免疫染色する。脱髄レジメンの中断後にビヒクルのみで処置した動物におけるPLP染色によってカバーされる面積のパーセンテージは、CR脱髄直後に屠殺された、自発性再髄鞘形成の発生を示す動物におけるものより有意に大きい。
【0127】
この研究では、12週間の脱髄モデルを使用して、甲状腺ホルモン補充の有無にかかわらず、6週間の処置後のIRX4204のCNSの影響を評価する。この研究からの結果は、IRX4204が脳梁における有髄軸索のサイズを有意に増加させることを示す(
図17)。さらに、これらの大きな髄鞘繊維は健康な表現型を示す。したがって、IRX4204は髄鞘ニューロンに対する神経保護効果を有する。
【0128】
さらに、IRX4204+チロキシンは、脳梁において有髄軸索のサイズを増加させることに加えて、白質および灰白質における有髄軸索の数および密度を増加させる。
【0129】
(実施例10)
非免疫媒介性脱髄のマウスモデルにおけるIRX4204およびIRX4204+チロキシンの神経保護能の評価
改変されたクプリゾンモデル(クプリゾン+ラパマイシン)は、脱髄によって引き起こされる神経変性の信頼性、再現性、および明確な分析を容易にする。SMI-32免疫染色により、脳梁中の腫脹および切断された軸索(卵形)の視覚化および定量化が可能になり、軸索変性の程度の評価が可能になる。この研究では、マウスの4つの群:クプリゾン+ラパマイシン(CR)のみ(n=6)、CR+ビヒクル(n=12)、CR+IRX4204(n=12)、およびCR+IRX4204+チロキシン(n=12)があった。試験物質をCRと同時に6週間投与した。IRX4204を10mg/kg体重で1日1回経口投与した。チロキシン(T4)処置は、IRX4204処置の開始後1日に開始された。T4を毎日20ng/g体重で皮下(SC)投与した。CR+ビヒクル群は、IRX4204ビヒクル(経口)およびT4ビヒクル(SC)を受けた。全ての動物に血漿T4濃度を測定するための終末血液採取を施した。屠殺後、単位面積当たりのSMI-32陽性卵形の密度を各群について決定した。SMI-32陽性卵形密度が高いほど、軸索変性の程度が大きい。ビヒクル群と比べて、IRX4204群ではSMI-32+卵巣が13.3%減少し、IRX4204単独によるいくらかの神経保護を示した。しかし、IRX4204+チロキシン群は、ビヒクル群と比較して37.5%減少し、IRX4204+チロキシンの組み合わせが、CR誘発性神経毒性からかなりの程度の神経保護を提供することを示した。
【0130】
(実施例11)
パーキンソン病におけるIRX4204の効果を実証するためのヒト臨床試験
IRX4204で処置した早期パーキンソン病患者のオープンラベル、シングルサイト臨床試験は、PDの疾患改変薬としてのIRX4204の前臨床的な裏付けが、Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)測定および安全性評価によって決定されたIRX4204による初期PD患者の処置時の臨床的設定に変換されるどうかを決定するために行われた。UPDRSスコアの変化は、血中チロキシン濃度と相関していた。
【0131】
この試験の目的は、早期患者におけるIRX4204の安全性および耐性、特にT4濃度の低下をさらに特徴づけること、ならびにUPDRSによって測定されるPDの運動症状に対するIRX4204での処置の効果を評価することであった。
【0132】
試験のエンドポイントは、(1)投与終了時(17日目)からの運動試験スコアの変化、および(2)T4濃度の変化であった。
【0133】
(a)設計の概要
これは、約2週間の早期PD患者のコホートにおけるIRX4204の3用量濃度の有効性(UPDRSスコアの低下)および安全性を調べるために設計された単一サイトのオープンラベル試験であった。3つのコホートにおいて、各対象は少なくとも3つの機会に臨床研究サイトに報告した:
・スクリーニング(訪問1)-適格性を決定するためのスクリーニング(ベースライン訪問の前の30日まで)
・ベースライン期間(訪問2)-IRX4204による処置は、1日目に開始された。
・2週目(訪問3)-対象は安全性と有効性評価のためにIRX4204の開始から約17日後に診療所に戻った。
【0134】
臨床検査、ECG、身体検査、神経学的検査および有害事象の評価のための血液および尿サンプルを含む全ての研究訪問を通じて、安全性および耐性を評価した。
【0135】
試験参加の資格を得るために、対象は次の基準を満たさなければならなかった:40~80歳、英国の脳バンク基準に基づくPDの臨床的診断を有する;参加者はHoehnおよびYahrステージ<3;参加者は、スクリーニング訪問の前の少なくとも30日間、安定した用量でPD症候治療で処置され得ることを含む。PDの対症療法の用量濃度は、試験を通して安定したままであろう;インフォームドコンセントを提供する意思と能力がなければならない;女性は出産能力がない、または研究薬物の最後の投薬の4週間前および4週間後に医学的に許容される避妊薬を使用して妊娠を避ける意思がなければならないことのいずれかでなければならない。
【0136】
以下の基準のいずれかを満たした対象は、試験に含まれなかった:特発性PD以外の任意の形態のパーキンソニズムを有する;現在、PDの後期段階を反映する運動の変動(投与の終わりに消耗(wearing off)または運動障害)を経験している;認知症または重大な認知機能障害の証拠を有する;臨床的に有意な異常な検査値および/または臨床的に有意な不安定な医学的または精神医学的疾患を有する;対象は、薬物の吸収、分布、代謝または排泄を妨げる可能性のある任意の障害を有する;対象は、臨床的に重要な胃腸管、心血管、肝臓、肺、または他の障害または疾患の証拠を有する;妊娠または授乳中。
【0137】
臨床サイトでは、対象ごとに正しい用量(20mg/日、10mg/日または5mg/日)のIRX4204を分注することによる投与のための試験薬を調製した。1日目に、対象はIRX4204の初回投与を受けた。1日目の後、IRX4204の薬物投与が毎日自宅で行われた。患者は、毎日ほぼ同じ時間、好ましくは午前8時から午前10時の間、食べ物と共に1日用量の試験薬を服用した。1日目に、対象は、IRX4204の15日間の供給を20mg、10mgまたは5mgの1日1回の用量で受けた。3つの用量濃度のそれぞれについて、5人の対象を募集した。全15人の対象全てが15日間の投薬を終えた。
【0138】
全ての対象(n=52トータル、n=12-13/用量濃度)は、15日間の投薬を完了し、血漿チロキシン(T4)濃度の決定を含むUPDRSスコア決定および安全性評価のために2週目(第15-17日)の終わりに診療所に戻った。トータルモータースコア、トータルUPDRSスコアおよび血漿T4値のパーセンテージ変化を以下に従って決定した:パーセンテージ変化=(ベースライン値-2週目値)×100/ベースライン値。
【0139】
3つの投与量濃度のトータルモーターおよびトータルUPDRSスコアの平均パーセンテージ変化を表4に示す。負のスコアは、包括的なUPDRS評価によって測定される疾患の改善を示す。IRX4204の最も低い用量(5mg/日)について、トータルモータースコア(-31.4%)によって測定されるIRX4204処置に対する最大の治療応答が得られた。驚くべきことに、10mg/日(11.7%)および20mg/日(-14.5%)の高用量のそれぞれで、トータルモータースコアによって測定された有効性はより少なかった。トータルUPDRSスコアを考慮した場合も同様の結果が得られた。最良の処置応答は、5mg/日コホート(-18.7%)で得られた。より高用量の10mg/日および20mg/日のそれぞれは、次第に有効性が低く、トータルUPDRS変化はそれぞれ-13.6%および6.6%であった。
【表4】
【0140】
3つのコホートについての血漿T4濃度の平均パーセンテージ変化を表5に示す。用量濃度と血漿チロキシン(T4)の減少パーセンテージとの関係は直接的であった:IRX4204の用量が高いほど、T4濃度の低下が大きかった。20mg/日の用量のIRX4204は、血漿T4のほぼ完全な排除をもたらす(98.8%の減少)。興味深いことに、この高用量のIRX4204は、最も有効性が低い(トータルUPDRSスコアにおけるわずか6.6%の減少)。
【表5】
【0141】
ヒト臨床試験におけるこれらのデータは、IRX4204を投与した際の甲状腺ホルモン濃度の低下がIRX4204の治療上の利点に悪影響を与えることを明確に示している。臨床試験データは、甲状腺軸の抑制(TSH、甲状腺刺激ホルモンの抑制によって示される)とトータルモータースコアおよびUPDRSのベースラインからの臨床的改善との間に逆の関係を示す。
【0142】
(実施例12)
再発寛解型多発性硬化症患者におけるミエリン回復に対するIRX4204とチロキシンの組み合わせの効果を実証するためのヒト臨床試験
再発寛解型MS患者のミエリン回復に対するIRX4204の直接作用を実証するために、多発性硬化症(MS)患者において、IRX4204とチロキシンとの組み合わせの概念臨床試験の二重盲検、プラセボ対照臨床実証が実施される。再発寛解型MSの患者は、臨床試験に参加するよう募集され、参加のリスクおよび潜在的利益を説明するインフォームドコンセントが提供される。MS患者は、1mg/日~40mg/日の範囲のいくつかの用量濃度のうちの1つの用量濃度のIRX4204で処置され、例えば、カプセル剤として経口投与される5mg/日、1日1回およびチロキシン、12.5μg/日~250μg/日、例えば50μg/日で経口投与される。一部の患者は、IRX4204またはチロキシンを含まないマッチングカプセルを使用してプラセボ投与を受けるように無作為化されている。患者には、最低30日間、そして180日まで投与される。患者は、脳、脊髄および/または視神経にこの期間にわたって生じるMS病変におけるミエリン損傷の状態および脱髄の回復速度について評価される。ミエリンの損傷および修復の定量化は、神経系のこれらの部分でミエリンの損傷と回復を特異的に調べ、定量化する特殊なイメージング法を使用する投薬を通して、ベースラインで、および定期的に行われる。そのような方法には、限定されないが、アミロイド斑にも結合するチオフラビン-T誘発体2-(4’-メチルアミノフェニル)-6-ヒドロキシベンゾチアゾール(PIB)のような造影剤を利用する陽電子放射断層撮影(PET)が含まれる。この化合物は、ミエリン回復の定量に有用である。あるいは、ミエリンの損傷もしくは回復の領域の外観に結合するかもしくはその外観を増強する特別な造影剤を使用する磁気共鳴イメージング(MRI)が利用され;またはIRX4204およびチロキシン処置患者におけるミエリン損傷および回復を、プラセボ処置患者と比較して定量化するために、磁化移動イメージングもしくは拡散テンソルイメージングなどの特別なMRI分析アルゴリズムが利用される。ミエリンの保護または回復に対するIRX4204/チロキシンの組合せの用量反応関係を、様々な用量濃度のIRX4204およびチロキシンで処置した患者のコホートにわたって分析する。イメージング法によるミエリン損傷および回復の定量化に加えて、MS患者の疾患進行の臨床状態は、Expanded Disability Status Scale(EDSS)などのMS臨床試験の標準臨床エンドポイントを用いて予備評価される。EDSSは、歩行、嚥下、腸および膀胱機能など、日常生活の身体活動を評価することによって、MS患者の障害レベルを定量化する10ポイントスケールである。さらに、視神経におけるミエリン損傷および回復に対するIRX4204/チロキシンの組み合わせの効果を定量するために、視力検査が行われる。ビヒクル組合せ群と比較して、IRX4204およびチロキシンの組み合わせで処置した群において、上記の1つ以上の技術によって測定される実質的な臨床的利益が観察される。IRX4204+チロキシンビヒクルの組み合わせで処置した群では、陽性ではあるものの、それほど実質的ではない臨床的利益が得られる。
【0143】
(実施例13)
再発寛解型疾患を有する多発性硬化症患者における障害の進行に対するIRX4204とチロキシン処置の組み合わせの効果を実証するためのヒト臨床試験
再発寛解型MSを有するMS患者において、MSにおける障害の進行に対するIRX4204/チロキシン処置の利益の証拠を示す二重盲検、プラセボ対照の臨床試験が実施される。再発寛解型MSの患者は、臨床試験に参加するよう募集され、参加のリスクおよび潜在的利益を説明するインフォームドコンセントが提供される。MS患者は、経口的に投与される1~40mg/日の範囲での用量濃度のIRX4204、および用量濃度(12.5μg/日~250μg/日の経口)のチロキシンまたはマッチするプラセボで24ヶ月間処置するために無作為化される。主な臨床的有効性の出力指標は、歩行、嚥下、腸および膀胱機能など、日常生活の身体活動を評価することによって、MS患者の障害レベルを定量化するEDSS、10ポイントスケールである。臨床試験は、処置の24ヶ月の終わりに、IRX4204/チロキシン処置群とプラセボ処置群との間の少なくとも1ポイントの経時的な平均EDSSの変化の差である統計的に有意なレベルまで示すために選択されたサンプルサイズを使用する。さらに、この臨床試験では、視神経におけるミエリン損傷および回復に対するIRX4204/チロキシンの影響を定量するために、視力検査を実施する。処置の24ヶ月の終わりに、IRX4204/チロキシン処置群とプラセボ処置群との間の標準的な視力チャートの少なくとも1つの線の経時的な視力の変化の差である統計的に有意なレベルまで示すサンプルサイズが選択される。
【0144】
(実施例14)
パーキンソン病における臨床的改善に対するIRX4204およびチロキシン処置の組み合わせの効果を示すヒト臨床試験
パーキンソン病(PD)における障害の進行に対するIRX4204/チロキシン処置の利益の証拠を示す二重盲検プラセボ対照臨床試験は、参加のリスクと潜在的利益を記述したインフォームドコンセントを提供した患者において実施される。PD患者は、経口的に投与される1~40mg/日の範囲での用量濃度のIRX4204、およびチロキシンの用量濃度(12.5μg/日~250μg/日の経口)またはマッチするプラセボで24ヶ月間処置するために無作為化される。主要な臨床的有効性の結果の測定値は、Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)である。UPDRSは、PDの経時的経過に従う評価ツールである。それは、1)欲求、行動、および気分、2)日常生活の活動(ADL)および3)運動セクションから構成される。これらはインタビューによって評価される。一部のセクションでは、各四肢に割り当てられた複数の等級を必要とする。全199ポイントが与えられ、199は最悪(合計)障害を表し、0は障害なしを示す。
【0145】
臨床試験は、処置の24ヶ月の終わりに、IRX4204/チロキシン処置群とプラセボ処置群との間の経時的な平均UPDRSの変化の差である統計的に有意なレベルを示すために選択されたサンプルサイズを使用する。
【0146】
(実施例15)
アルツハイマー病における臨床的改善に対するIRX4204およびチロキシンの併用療法の効果を示すヒト臨床試験
アルツハイマー病(AD)における認識機能障害の進行に対するIRX4204/チロキシン処置の利益の証拠を示す二重盲検プラセボ対照臨床試験は、参加のリスクと潜在的利益を記述したインフォームドコンセントを提供した患者において実施される。AD患者は、経口的に投与される1~40mg/日の範囲での用量濃度のIRX4204、およびチロキシンの用量濃度(12.5μg/日~250μg/日の経口)またはマッチするプラセボで24ヶ月間処置するために無作為化される。主な臨床的有効性の出力スケールは、Mini-Mental State Examination(MMSE)であり、Functional Assessment Questionnaire(FAQ)、Physical Self-Maintenance Scale(PSMS)、およびNeuropsychiatric Inventory(NPI)の1つ以上を任意に含む。臨床試験は、処置の24ヶ月の終わりに、IRX4204/チロキシン処置群とプラセボ処置群との間の経時的な平均MMSEの変化の差である統計的に有意なレベルを示すために選択されたサンプルサイズを使用する。
【0147】
(実施例16)
パーキンソン病モデルにおけるIRX4204の効果
この研究の目的は、ラット6-OHDA誘発性パーキンソン病(PD)モデルにおける行動障害の改善のためのIRX4204処置を評価することであった。PDのラットモデルは、神経毒6-ヒドロキシドパミン(6-OHDA)の片側線条体注射により生成された。この注射は、対側のDAニューロンを使わずに、注入側でドーパミン作動性(DA)ニューロン喪失を生じる。試験設計を表6に示す。
【表6】
【0148】
足の配置(シリンダー試験)を用いて損傷の評価を行った。この試験は、体を円筒形の囲いの壁に対して支持するためにラットの独立した前肢の使用を評価する。この試験では、後肢で立って周囲の壁に向かって傾くことにより、新しい環境を模索する動物の本来の運動を利用した。
【0149】
この試験を行うために、ラットを個々にガラスシリンダー(直径21cm、高さ34cm)に置き、壁の探査を3分間記録した。記録に先立ってシリンダーを慣れさせた。
【0150】
統計学的分析は、無傷の足と障害のある足の間の比(R/L比)として行った。この比は、無傷の右+両前肢の値を、障害のある左前肢+両前肢の値で割った値として表した。この比の値が低いほど、6-OHDA誘発脳損傷の治癒がより大きくなることを意味する。
【0151】
全ての処置動物は、試験中ずっと体重が増加した。TA2のビヒクル(群2)またはチロキシンおよびトリヨードチロニン(TA2;群4)と組み合わせた試験項目IRX4204(TA1)で処置した動物の平均体重は、試験17日目および24日目おけるビヒクル処置群より有意に高かった(24日目において、ビヒクル群は142.62±2.93%;p<0.05)に対して、第2群は157.17±2.93%、第4群は157.61±3.54%。
【0152】
R/L比>1.5を有する全ての動物を研究に含めた(完全な足(R)と障害のある足(L)との間の比率は、完全な右+両前肢の値を障害のある左後肢+両前肢の値に分けた値として表した)。
【0153】
IRA4204処置の1日前であった病変の誘発前(ベースライン)および6-OHDA注射の3日後に足の配置を測定した。3週間のうちの1週間に1回(試験日10,17および24)、動物を足の配置試験でその性能について再試験した。
【0154】
損傷した側と完全な側との平均比がベースラインレベル(手術前1.01±0.01vs.手術後3日目6.49±0.59)に対して増加した場合に、試験3日目のR/L比に基づいて動物をあらかじめ選択した。
【0155】
図13に示すように、試験10日目のビヒクル処置群(群1)と比較して、TA2のビヒクル(群2)と、またはチロキシンおよびトリヨードチロニン(TA2;群4)と組み合わせたIRX4204(TA1)での処置は、平均計算されたR/L比を有意に減少させた(ビヒクル群で6.33±1.41;p<0.05に対して、2群で2.76±0.57、4群で2.86±0.76)。
【0156】
計算された平均比は、試験日17および24においてもビヒクル群と比較してこれらの群でより低かったが、この比は統計的に有意ではなかった。
【0157】
比率の平均値は、3日目、10日目、17日目および24日目の4つの値から計算した。グループ2およびグループ4の計算値は、それぞれ3.79および3.14である。これは、グループ4(IRX4204とチロキシンおよびトリヨードチロニンとの組み合わせ)がグループ2(IRX4204)単独よりも効果的であることを示している。
【0158】
(実施例17)
ビタミンDの存在下でのマウス分化希突起膠細胞前駆細胞の分化
この試験の目的は、マウス希突起膠細胞前駆細胞(OPC)の希突起膠細胞への分化に対する、ビタミンD、またはビタミンDおよびトリヨードチロニン(T3)と組み合わせたIRX4204の潜在的な効果を評価することであった。OPCは、plp-EGFP発現マウス由来であった。
【0159】
治療剤を96ウェルプレートで試験した(濃度当たり6ウェル)。陰性および陽性対照(DMSOまたは10ng/ml T3甲状腺ホルモン)を各プレートに含めた。全ての培地は、0.1%DMSOおよび0.1%EtOHを含有した。5日間の処置の終わりに、細胞をCellomics上で2つのチャネルに画像化し、核およびEGFP+希突起膠細胞を計数するためにアルゴリズムを使用した。
【0160】
驚くべきことに、IRX4204と組み合わせた異なる用量のビタミンDが希突起膠細胞産生において負の効果を示したことが観察された(
図14)。3つのレジメン処置(IRX4204、ビタミンDおよびT3)に応答する稀突起神経膠細胞の産生は、T3を含まない処置(IRX4204およびビタミンD)よりわずかに高かった。これは、3つのレジメンの組み合わせにおけるT3の相加的効果を示唆する。
【0161】
(実施例18)
マウス希突起膠細胞前駆細胞の分化
この試験の目的は、マウス希突起膠細胞前駆細胞(OPC)の希突起膠細胞への分化に対する、トリヨードチロニン(T3)と組み合わせたIRX4204の潜在的な効果を評価することであった。OPCは、plp-EGFP発現マウス由来であった。
【0162】
治療剤を96ウェルプレートで試験した(濃度当たり6ウェル)。陰性および陽性対照(DMSOまたは10ng/ml T3甲状腺ホルモン)を各プレートに含めた。全ての培地は0.1%DMSOを含有した。5日間の処置の終わりに、細胞をCellomics上で2つのチャネルに画像化し、核およびEGFP+希突起膠細胞を計数するためにアルゴリズムを使用した。
【0163】
図15A~
図15Cは、異なる用量のIRX4204およびT3に応答する希突起膠細胞産生における明確な用量応答を示す。IRX4204とT3との組み合わせ処置に応答した希突起膠細胞の産生は、全ての条件において個々の処置単独よりも高かった。これは、IRX4204とT3との間の希突起膠細胞前駆細胞の分化を促進する上での相加的、または潜在的に相乗的な効果を示唆する。同様の結果が、細胞をMBP抗体で染色し、定量化した場合に得られた(データは示されていない)。これらのデータは、IRX4204とT3(またはT4)の組み合わせが再髄鞘形成において最適であることを示唆している。
【0164】
(実施例19)
脱髄のマウスモデルにおけるIRX4204の神経保護効果
この研究の目的は、非免疫媒介性脱髄のマウスモデルにおけるIRX4204の神経保護効果を評価することであった。
【0165】
この研究では、6週間の脱髄モデルを用いて、脱髄中の6週間の同時処置後のIRX4204の神経保護能力を評価した。動物のサブグループをIRX4204と共にT4で処置した。この研究の結果は、IRX4204が脳梁の脱髄の程度を低下させることなく神経保護を促進することを示す。
【0166】
動物(8週齢の雄C57BL/6Jマウス)に、クプリゾン食餌+ラパマイシン注射(CR)を6週間行い、脱髄を誘発した。脱髄の間、6週間全体にわたって、ビヒクルまたはIRX4204(10mg/kg、PO)またはIRX4204+T4(10mg/kg、PO、および20ng/g、SQ)のいずれかで動物を毎日処置した。6週間のCR後に全ての動物を屠殺して、白質(脳梁、CC)における軸索の完全性およびミクログリア/マクロファージ活性を評価した。2つの群(ビヒクル群およびIRX4204+T4)を、CCにおける髄鞘形成の程度に対する任意の保護効果についてさらに試験した。
【0167】
IRX4204+T4で処置した動物におけるSMI32陽性軸索卵巣の数の減少によって示されるように、軸索切断の有意な低減があった。しかし、ミクログリア/マクロファージの活性化と、ビヒクル群とIRX4204+T4群との間のCCにおける髄鞘形成された軸索の数との間に差はなかった。これらの知見は、脱髄化軸索に対する潜在的な直接作用によって媒介されるIRX4204の神経保護的役割を支持する。
【0168】
全部で50匹の動物が研究に含まれ、43匹が6週間にわたってCR脱髄を受けた。脱髄の間、動物のサブセット(n=7)は、ナイーブな年齢調整対照として役立つように正常食で維持された。残りの動物は、CR中に同時にIRX4204(n=14)またはビヒクル(n=14)またはIRX4204+T4(n=15)を6週間投与した。生存段階では死亡例はなかった。さらに、処置段階では健康上の懸念事項は見られなかった。全ての動物は注意を喚起し、適切なグルーミング行動を示した。複数の群を比較したANOVA分析は、IRX4204群またはビヒクル群の間の最終体重において有意差を示さなかった。
【0169】
甲状腺ホルモン濃度を評価するために、T4の濃度を定量するために終末血液採取を行った。IRX4204単独で処置した動物は、ビヒクル対照動物と比較した場合、T4濃度のおよそ50%の減少を示した。T4での外因性処置は、IRX4204+T4群のT4濃度の上昇によって示されるように、甲状腺ホルモン濃度を補正した。
【0170】
浮遊脳切片をSMI-32で免疫染色し、CCにおける軸索卵形を可視化および定量化した。CRに供した動物は、ナイーブ動物と比較して、CCにおいてSMI32で染色された軸索卵巣の数が有意に高かった。ビヒクル群と比較してIRX4204およびT4の両方で処置された動物における軸索卵巣の数の有意な減少があった。IRX4204単独では、軸索卵巣数の減少傾向が見られたが、ビヒクル群と統計的に差はなかった。
【0171】
浮遊脳切片をIba-1で免疫染色し、CCにおけるミクログリア/マクロファージを視覚化および定量化した。CRに供し、ビヒクル群で処置した動物は、ナイーブ動物と比較して、CCにおけるIba1染色の堅固な増加を示した。ビヒクルと比較して、IRX4204またはIRX4204+T4処置動物におけるIba1染色濃度に差はなかった。
【0172】
CRおよびビヒクル群またはIRX4204+T4を投与された動物由来のEpon包埋CC組織の半薄型(1μm)切片を用いて、CCにおける髄鞘軸索の数および密度を視覚化および定量化した。CRおよびビヒクルを投与された動物は、CCの強力な脱髄を示した。ビヒクルと比較した場合、IRX4204+T4処置動物における髄鞘軸索の数および密度に有意差はなかった。
【0173】
T4なしのIRX4204単独での処置は、軸索卵形の減少傾向を示したが、統計学的にはビヒクルとは異ならなかった。しかし、IRX4204を投与された動物に外因性T4が補充された場合、ビヒクルと比較して軸索卵巣の数が有意に減少した。このデータは、我々の以前のin vivoでの知見と共に、IRX4204の神経保護効果を支持する。軸索卵巣の減少があったが、ビヒクル群およびIRX4204+T4群の脳梁におけるミクログリア/マクロファージの活性化および髄鞘形成に有意差はなかった。
【0174】
IRX4204が補助的なT4を有する群においてのみ神経保護効果を示したという知見は、IRX4204単独よりも組み合わせの効果が増強することを示唆している。
【0175】
脳梁中の髄鞘軸索の定量化は潜在的な応答者および非応答者を示す。
図20A~Cは、軸索卵形の数と髄鞘軸索の数との間の高い相関を示す(すなわち、非常に少ない卵形を有する動物は、脳梁において非常に高い髄鞘軸索の数および密度を有していた)。
【0176】
最後に、本明細書の態様は、特定の実施形態を参照することによって強調されているが、当業者は、これらの開示された実施形態が本明細書に開示される主題の原理の単なる例示であることを容易に理解するであろう。したがって、開示される主題は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、および/または試薬などに決して限定されないことを理解されたい。したがって、本明細書の精神から逸脱することなく、本明細書の教示に従って、開示された主題の様々な改変または変更または代替構成を行うことができる。最後に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものではない。したがって、本発明は図示され説明されたものに厳密に限定されるものではない。
【0177】
本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む、本発明の特定の実施形態を本明細書に記載する。当然のことながら、これらの記載された実施形態の変形は、上記の説明を読むことによって当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がこのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明を実施しようとする。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題の全ての改変物および均等物を含む。さらに、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、全ての可能な変形例における上記実施形態の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0178】
本発明の代替の実施形態、要素、または工程のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、または本明細書に開示される他のグループメンバーと任意の組み合わせで参照され、特許請求され得る。利便性および/または特許性の理由から、1つ以上のグループのメンバーがグループに含まれるか、グループから削除されることが予期される。そのような包含または削除が生じた場合、明細書は改変されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュグループの記述を満たすものとみなされる。
【0179】
他に指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴、項目、量、パラメータ、特性、用語などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「約」は、特性、項目、量、パラメータ、特性、または用語は、記載された特性、項目、量、パラメータ、特性、または用語の値の±10%の範囲を包含する。したがって、反対に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲と均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値表示は少なくとも報告された有効桁数と通常の端数切り捨て技術を適用して解釈すべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲および値は近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値範囲および値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、数値範囲または数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。本明細書における数値の範囲の列挙は、その範囲内の各別個の数値を個別に参照する簡略な方法として役立つことを単に意図するものである。本明細書で別段の指示がない限り、数値範囲の個々の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0180】
本明細書中に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明を説明する文脈において(特に添付の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」、「an」、「the」および類似の指示対象は、単数形および複数形の両方を包含するものと解釈されるべきである。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意のおよび全ての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく示すことを意図しており、別段の特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0181】
本明細書で開示された特定の実施形態は、言語からなるか、または本質的に言語からなることを使用する特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲において使用される場合、出願時または補正で加えられたかにかかわらず、「からなる」という移行用語は、特許請求の範囲に記載されていない要素、工程または成分を排除する。「から本質的になる」という移行用語は、特定の材料または工程、および基本的かつ新規な特性(複数)に重大な影響を及ぼさないものに、特許請求の範囲を限定する。そのように特許請求された本発明の実施形態は、本質的にまたは明示的にここで説明され、本明細書で可能にされる。
【0182】
本明細書において参照され識別された全ての特許、特許刊行物、および他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るそのような刊行物に記載された組成物および方法論を記載および開示する目的のために、その全体が参照により個々にかつ明示的に本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、本願の出願日前の開示のためにのみ提供される。この点に関するいずれも、発明者が、先行発明により、または他の何らかの理由で、そのような開示に先行する権利を有していないことを認めたとして解釈されない。これらの文書の内容に関する日付または表現に関する全ての記述は、申請者が利用可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性についての承認を構成するものではない。
【0183】
(付記)
(付記1)
神経系障害を治療する方法であって、当該治療を必要とする個体に治療的有効量のRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンを投与することを含み、前記RXRアゴニストおよび前記甲状腺ホルモンの組み合わせの投与は、前記個体における神経系障害を治療し、前記選択的RXRアゴニストは、式IIIの構造を有する3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸
【化7】
、ベキサロテン、またはLG268であり、
RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせは、前記選択的RXRアゴニストまたは前記甲状腺ホルモン単独よりも大きな神経系障害の改善をもたらす、方法。
【0184】
(付記2)
前記RXRアゴニストは、選択的RXRアゴニストであり、かつ3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸を含む、付記1に記載の方法。
【0185】
(付記3)
前記RXRアゴニストは、ベキサロテンである、付記1に記載の方法。
【0186】
(付記4)
前記RXRアゴニストは、LG268である、付記1に記載の方法。
【0187】
(付記5)
RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせは、ニューロンの再髄鞘形成および神経保護を促進することならびに個体の免疫系を調節することの両方によって前記個体における神経系障害を治療する、付記1に記載の方法。
【0188】
(付記6)
前記神経系障害は、中枢神経系(CNS)障害である、付記1に記載の方法。
【0189】
(付記7)
前記神経系障害は、多発性硬化症(MS)の再発/寛解型一次進行型および二次進行型形態、早期幼児のびまん性白質損傷、神経鞘炎、急性播種性脳脊髄炎、マールブルグ多発性硬化症、びまん性骨髄硬化性硬化症(シェダー病)、バロ同心硬化症、孤立性硬化症、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、白質異栄養症(複数の変種、例えば、副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄ニューロパチー)、パーキンソン病、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、脳卒中、外傷性脳損傷および外傷性脊髄損傷を含むCNS外傷、放射線誘発性神経炎症、放射線症候群、デヴィック病、炎症性脱髄疾患、CNSニューロパチー、中枢性橋状ミエリン溶解、背側索(梅毒性脊髄症)、進行性多巣性白質脳症、白質萎縮症、うつ病、統合失調症、てんかん、または認知症である、付記1に記載の方法。
【0190】
(付記8)
前記神経系障害は、パーキンソン病である、付記1に記載の方法。
【0191】
(付記9)
前記神経系障害は、アルツハイマー病である、付記1に記載の方法。
【0192】
(付記10)
前記神経系障害は、脱髄関連障害である、付記1に記載の方法。
【0193】
(付記11)
前記脱髄関連障害は、多発性硬化症である、付記11に記載の方法。
【0194】
(付記12)
前記脱髄関連障害は、放射線誘発性中枢神経系炎症である、付記11に記載の方法。
【0195】
(付記13)
前記神経系障害は、末梢神経系障害である、付記1に記載の方法。
【0196】
(付記14)
前記末梢神経系障害は、ギランバレー症候群、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、脱髄性糖尿病性ニューロパチー、進行性炎症性ニューロパチー、例えば化学療法誘発ニューロパチーもしくは有機リン酸塩誘発ニューロパチーのような薬物誘発もしくは毒素誘発ニューロパチー、抗MAG末梢ニューロパチー、シャルコー・マリー・トゥース病、または銅欠乏である、付記13に記載の方法。
【0197】
(付記15)
前記RXRアゴニストの前記治療的有効量は、約0.001mg/日~約100mg/日である、付記1に記載の方法。
【0198】
(付記16)
前記RXRアゴニストの前記治療的有効量は、約1mg/日~約20mg/日である、付記1に記載の方法。
【0199】
(付記17)
前記甲状腺ホルモンは、チロキシンである。付記1に記載の方法。
【0200】
(付記18)
チロキシンの用量は、約12.5μg/日~約250μg/日である、付記17に記載の方法。
【0201】
(付記19)
前記RXRアゴニストは、経鼻投与によって投与される、付記1に記載の方法。
【0202】
(付記20)
前記RXRアゴニストおよびチロキシンの両方は、経鼻投与によって投与される、付記19に記載の方法。
【0203】
(付記21)
前記RXRアゴニストは、経口投与される、付記1に記載の方法。
【0204】
(付記22)
前記RXRアゴニストおよび前記チロキシンの両方は、実質的に同時に投与される、付記1に記載の方法。
【0205】
(付記23)
前記RXRアゴニストおよび前記チロキシンの両方は、異なるスケジュールで投与される、付記1に記載の方法。
【0206】
(付記24)
前記甲状腺ホルモンは、経口または皮下投与される、付記1に記載の方法。
【0207】
(付記25)
RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、前記CNS障害の少なくとも1つの症状を低減し、低減される前記少なくとも1つの症状は、炎症、疲労、めまい、倦怠感、高熱および高体温、手足の冷たさに対する極端な感受性、筋肉および関節の弱さおよび硬さ、体重の変化、消化器もしくは胃腸の問題、低血圧もしくは高血圧、過敏性、不安、もしくはうつ病、ぼやけたもしくは複視、運動失調、クローヌス、構音障害、疲労、粗相、手の麻痺、片頭痛、性器無感症、協調運動障害、感覚異常、眼の麻痺、筋肉協調障害、衰弱(筋肉)、感覚の喪失、視覚障害、神経学的症状、不安定歩行、痙性不全麻痺、失禁、聴覚障害、または発話の問題である、付記1に記載の方法。
【0208】
(付記26)
RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、前記CNS障害の少なくとも2つの症状を低減する、付記25に記載の方法。
【0209】
(付記27)
RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、前記CNS障害の少なくとも5つの症状を低減する、付記25に記載の方法。
【0210】
(付記28)
多発性硬化症を治療する方法であって、当該治療を必要とする個体に治療的有効量の3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸およびチロキシンを投与することを含み、組み合わせの投与は、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸またはチロキシンの単独での治療よりも効果的に前記個体における前記多発性硬化症を治療する、方法。
【0211】
(付記29)
CNS障害を治療する方法であって、当該治療を必要とする個体に治療的有効量の3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸およびチロキシンを投与することを含み、組み合わせの投与は、前記個体における前記CNS障害を治療し、前記RXRアゴニストは、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸またはチロキシンの単独での治療よりも効果的に、髄腔内投与、硬膜外投与、頭蓋内注射もしくは移植、または経鼻投与により前記個体のCNSに直接送達される、方法。
【0212】
(付記30)
パーキンソン病を治療する方法であって、当該治療を必要とする個体に治療的有効量の3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸およびチロキシンを投与することを含み、組み合わせの投与は、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸またはチロキシンの単独での治療よりも効果的に前記個体における前記パーキンソン病を治療する、方法。
【0213】
(付記31)
アルツハイマー病を治療する方法であって、当該治療を必要とする個体に治療的有効量の3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸およびチロキシンを投与することを含み、組み合わせの投与は、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸またはチロキシンの単独での治療よりも効果的に前記個体における前記アルツハイマー病を治療する、方法。
【0214】
(付記32)
遊離血清チロキシンを測定することと、
チロキシンの濃度を甲状腺機能正常の範囲に保つためにチロキシンの用量を調節することと、
をさらに含む、付記1、28、29、30、または31のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
(付記33)
神経栄養因子または神経栄養因子模倣物の投与をさらに含む、付記1、28、29、30、または31のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
(付記34)
前記神経栄養因子は、BDNF、GDNF、NGF、NT-3、bFGF、CNTF、NT-4/5、IGF、もしくはインスリン、またはそれらの模倣物である、付記33に記載の方法。
【0217】
(付記35)
前記中枢神経系の前記疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、視神経炎、脳卒中、神経系外傷、筋萎縮性側索硬化症、ニューロパチー、神経系低酸素症、神経系毒性、認知症、網膜症、ハンチントン病、シヌクレイノパチー、てんかん、自閉症、統合失調症、うつ病、または老化関連神経系変性である、付記31に記載の方法。
【0218】
(付記36)
前記神経栄養因子は、GDNF、またはGDNF模倣物であり、前記神経系疾患は、パーキンソン病または筋萎縮性側索硬化症である、付記35に記載の方法。
【0219】
(付記37)
前記神経栄養因子は、BDNFであり、前記神経系疾患は、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳卒中、神経系外傷、老化、または認知症である、付記31に記載の方法。
【0220】
(付記38)
前記神経栄養因子は、インスリンまたはインスリン様成長因子であり、前記神経系疾患は、アルツハイマー病である、付記31に記載の方法。
【0221】
(付記39)
前記神経栄養因子は、BDNF、GDNF、またはインスリンであり、前記神経系疾患は老化関連CNS神経変性である、付記31に記載の方法。
【0222】
(付記40)
前記神経栄養因子または模倣物は、経口、非経口、経鼻、もしくは局所経路によって、またはこれらの投与経路のいずれかを用いた制御放出製剤によって投与される、付記31に記載の方法。
【0223】
(付記41)
ニューロンまたはグリア細胞の生存または成長をin vitroで促進するための、その後の神経系障害の患者の神経系への移植のための、RXRアゴニスト、甲状腺ホルモン、および神経栄養因子または神経栄養因子模倣物の組み合わせの使用。
【0224】
(付記42)
神経系障害の患者におけるニューロンまたはグリア細胞の生存または修復を促進する方法であって、当該治療を必要とする個体に、治療的有効量のRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンを投与することを含み、前記RXRアゴニストは、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸、ベキサロテン、またはLG268であり、前記RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせの投与は、前記RXRアゴニストまたは前記甲状腺ホルモン単独での治療よりも効果的に前記個体のニューロンまたはグリア細胞の生存または修復を促進する、方法。
【0225】
(付記43)
前記神経系障害は、中枢神経系(CNS)障害、脱髄関連障害、または末梢神経系障害である、付記42に記載の方法。
【0226】
(付記44)
前記神経系障害は、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、またはアルツハイマー病である、付記43に記載の方法。
【0227】
(付記45)
前記RXRアゴニストの前記治療的有効量は、約0.001mg/日~約100mg/日である、付記42に記載の方法。
【0228】
(付記46)
前記RXRアゴニストの前記治療的有効量は、約1mg/日~約20mg/日である、付記42に記載の方法。
【0229】
(付記47)
前記甲状腺ホルモンは、チロキシンである。付記42に記載の方法。
【0230】
(付記48)
チロキシンの用量は、約12.5μg/日~約250μg/日である、付記47に記載の方法。
【0231】
(付記49)
RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、前記神経系障害の少なくとも1つの症状を低減し、低減される前記少なくとも1つの症状は、炎症、疲労、めまい、倦怠感、高熱および高体温、手足の冷たさに対する極端な感受性、筋肉および関節の弱さおよび硬さ、体重の変化、消化器もしくは胃腸の問題、低血圧もしくは高血圧、過敏性、不安、もしくはうつ病、ぼやけたもしくは複視、運動失調、クローヌス、構音障害、疲労、粗相、手の麻痺、片頭痛、性器無感症、協調運動障害、感覚異常、眼の麻痺、筋肉協調障害、衰弱(筋肉)、感覚の喪失、視覚障害、神経学的症状、不安定歩行、痙性不全麻痺、失禁、聴覚障害、または発話の問題である、付記42に記載の方法。
【0232】
(付記50)
RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、前記神経系障害の少なくとも2つの症状を低減する、付記49に記載の方法。
【0233】
(付記51)
RXRアゴニストおよびチロキシンの組み合わせによる治療は、前記神経系障害の少なくとも5つの症状を低減する、付記49に記載の方法。